IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特開2024-31475アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム
<>
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図1
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図2
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図3
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図4
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図5
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図6
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図7
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図8
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図9
  • 特開-アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031475
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/27 20200101AFI20240229BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240229BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135047
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石澤 栄俊
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146AA21
5B146DC03
5B146DJ14
5B146DL09
(57)【要約】
【課題】精度よくアンテナ性能を予測する。
【解決手段】アンテナ設計支援装置は、前記アンテナの形状を表すグラフデータを取得する取得部、及び予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測する予測部を含む。前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの設計を支援するアンテナ設計支援装置であって、
前記アンテナの形状を表すグラフデータを取得する取得部と、
予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測する予測部と、を含み、
前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである
アンテナ設計支援装置。
【請求項2】
前記グラフデータは、前記アンテナの形状の情報を含む特徴量を持つ請求項1記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項3】
前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すノードと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すエッジとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各点の位置情報を含む特徴量を持つ請求項2記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項4】
前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すエッジと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すノードとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各線条の位置情報を含む特徴量を持つ請求項2記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項5】
前記アンテナは車両に設けられる、請求項1に記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項6】
前記アンテナは、前記車両の窓ガラスに設けられる、請求項5に記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項7】
前記アンテナは、前記窓ガラスの主面に設けられる二次元形状のパターンを有する、請求項6に記載のアンテナ設計支援装置。
【請求項8】
アンテナのアンテナ性能を予測するためのニューラルネットワークを学習する学習装置であって、
アンテナ性能が予め求められた前記アンテナの形状を表す複数のグラフデータを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記複数のグラフデータと、前記アンテナについて予め求められた前記アンテナ性能とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部と、を含み、
前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである
学習装置。
【請求項9】
前記グラフデータは、前記アンテナの形状の情報を含む特徴量を持つ請求項8記載の学習装置。
【請求項10】
前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すノードと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すエッジとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各点の位置情報を含む特徴量を持つ請求項9記載の学習装置。
【請求項11】
前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すエッジと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すノードとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各線条の位置情報を含む特徴量を持つ請求項9記載の学習装置。
【請求項12】
前記アンテナは車両に設けられる、請求項8に記載の学習装置。
【請求項13】
アンテナの設計を支援するためのアンテナ設計支援プログラムであって、
コンピュータを、
前記アンテナの形状を表すグラフデータを取得する取得部、及び
予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測する予測部
として機能させるためのアンテナ設計支援プログラムであり、
前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである
アンテナ設計支援プログラム。
【請求項14】
アンテナのアンテナ性能を予測するためのニューラルネットワークを学習するための学習プログラムであって、
コンピュータを、
アンテナ性能が予め求められた前記アンテナの形状を表す複数のグラフデータを取得する取得部、及び
前記取得部により取得された前記複数のグラフデータと、前記アンテナについて予め求められた前記アンテナ性能とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部
として機能させるための学習プログラムであり、
前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである
学習プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、アンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナの設計を支援するアンテナ設計支援装置として、アンテナの形状が複数画素で表された画素データとアンテナの性能を示す性能データとのセットを、訓練データとして深層学習された畳み込みニューラルネットワークを用いて、複数の画素データに基づいてアンテナ性能を予測するアンテナ性能予測部を備えた装置、が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2020/110649
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、畳み込みニューラルネットワークを用いてアンテナ性能を予測するものの、より一層、アンテナ性能の予測精度に優れたアンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラムが求められている。
【0005】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、より一層、精度よくアンテナ性能を予測できるアンテナ設計支援装置、学習装置、及びプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様は、アンテナの設計を支援するアンテナ設計支援装置であって、前記アンテナの形状を表すグラフデータを取得する取得部と、予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測する予測部と、を含み、前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである。
【0007】
本開示の第2態様は、上記第1態様のアンテナ設計支援装置において、前記グラフデータは、前記アンテナの形状の情報を含む特徴量を持つようにしてもよい。
【0008】
本開示の第3態様は、上記第2態様のアンテナ設計支援装置において、前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すノードと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すエッジとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各点の位置情報を含む特徴量を持つようにしてもよい。
【0009】
本開示の第4態様は、上記第2態様のアンテナ設計支援装置において、前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すエッジと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すノードとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各線条の位置情報を含む特徴量を持つようにしてもよい。
【0010】
本開示の第5態様は、上記第1態様~第4態様の何れか1態様のアンテナ設計支援装置において、前記アンテナは車両に設けられてもよい。
【0011】
本開示の第6態様は、上記第5態様のアンテナ設計支援装置において、前記アンテナは、前記車両の窓ガラスに設けられてもよい。
【0012】
本開示の第7態様は、上記第6態様のアンテナ設計支援装置において、前記アンテナは、前記窓ガラスの主面に設けられる二次元形状のパターンを有してもよい。
【0013】
本開示の第8態様は、アンテナのアンテナ性能を予測するためのニューラルネットワークを学習する学習装置であって、アンテナ性能が予め求められた前記アンテナの形状を表す複数のグラフデータを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記複数のグラフデータと、前記アンテナについて予め求められた前記アンテナ性能とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部と、を含み、前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである。
【0014】
本開示の第9態様は、上記第8態様の学習装置において、前記グラフデータは、前記アンテナの形状の情報を含む特徴量を持つようにしてもよい。
【0015】
本開示の第10態様は、上記第9態様の学習装置において、前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すノードと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すエッジとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各点の位置情報を含む特徴量を持つようにしてもよい。
【0016】
本開示の第11態様は、上記第9態様の学習装置において、前記グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すエッジと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すノードとを含むグラフであって、前記ノードの各々が、各線条の位置情報を含む特徴量を持つようにしてもよい。
【0017】
本開示の第12態様は、上記第8態様~第11態様の何れか1態様の学習装置において、前記アンテナは車両に設けられてもよい。
【0018】
本開示の第13態様は、アンテナの設計を支援するためのアンテナ設計支援プログラムであって、コンピュータを、前記アンテナの形状を表すグラフデータを取得する取得部、及び予め学習されたニューラルネットワークを用いて、前記取得部により取得された前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測する予測部として機能させるためのアンテナ設計支援プログラムであり、前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである。
【0019】
本開示の第14態様は、アンテナのアンテナ性能を予測するためのニューラルネットワークを学習するための学習プログラムであって、コンピュータを、アンテナ性能が予め求められた前記アンテナの形状を表す複数のグラフデータを取得する取得部、及び前記取得部により取得された前記複数のグラフデータと、前記アンテナについて予め求められた前記アンテナ性能とに基づいて、ニューラルネットワークを学習する学習部として機能させるための学習プログラムであり、前記ニューラルネットワークは、前記グラフデータに基づいて、前記アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークである。
【発明の効果】
【0020】
開示の技術によれば、精度よくアンテナ性能を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のアンテナ設計支援装置及び学習装置として機能するコンピュータの一例の概略ブロック図である。
図2】アンテナの形状の一例を示す図である。
図3】アンテナの形状を表すグラフデータの一例を示す図である。
図4】本実施形態の学習装置の構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態のアンテナ設計支援装置の構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態の学習装置の学習処理ルーチンを示すフローチャートである。
図7】本実施形態のアンテナ設計支援装置のアンテナ設計支援処理ルーチンを示すフローチャートである。
図8】実施例におけるアンテナの形状を示す図である。
図9】実施例におけるアンテナの形状を表すグラフデータを示す図である。
図10】実施例におけるグラフニューラルネットワークの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、この実施形態ではとくに、車両に備わるガラスにアンテナを設ける場合について詳細な説明をするが、この発明が車両用のアンテナに限定されない。
【0023】
<本実施形態に係る学習装置の構成>
図1は、本実施形態の学習装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、学習装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0025】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、ニューラルネットワークを学習するための学習プログラムが格納されている。学習プログラムは、1つのプログラムでも良いし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群でも良い。
【0026】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0027】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0028】
入力部15は、複数のアンテナの各々についての、アンテナの形状を表すグラフデータと、アンテナ性能との組み合わせである学習データを、入力として受け付ける。
【0029】
具体的には、アンテナ性能が予め求められたアンテナの形状から、グラフデータを求める。このとき、グラフデータは、アンテナの形状の情報を含む特徴量を持つ。より具体的には、グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すノードと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すエッジとを含むグラフであって、ノードの各々が、各点の位置情報を含む特徴量を持つ。
【0030】
例えば、図2に示すようなアンテナ100の形状から、図3に示すようなグラフデータを求め、グラフデータと、予め求められたアンテナ性能との組み合わせを、学習データとする。この学習データを、複数のアンテナの各々について用意し、入力部15は、複数のアンテナの各々についての学習データを受け付ける。
【0031】
上記図2は、誘電体である自動車の窓ガラスであるリアガラスの主面に設けられた、導体からなるアンテナ100の形状の一例を示す図である。図2の例では、アンテナ100を構成する給電部(図2左側の長方形状の閉ループ)及び線条のアンテナエレメントが実線で示されている。図3に示すグラフデータでは、エッジが、実線で示され、端点及び交点を表すノードが数字付きの丸印で示されている。なお、アンテナ100は、リアガラス以外の窓ガラスに設けられてもよい。また、アンテナ100は、ガラスの主面に設けられる二次元形状のパターンを有するものに限定されず、ガラスから一定距離隔ててガラス近傍に設けられるものとして三次元形状のパターンを有するものでもよい。上記の「二次元形状のパターン」とは、例えば、車両が備えるガラス曲面に沿って設けられるアンテナのパターンも含まれるものとする。
【0032】
アンテナ性能の測定では、測定装置が利用される。アンテナ性能を表す指標としては、アンテナ利得、リターンロス、指向特性(半値角、前後比(F/B(Front/Back)比)などが挙げられる。アンテナ利得は、具体的に、所定の周波数帯の電波の受信利得(単位:[dB]など)の数値データが挙げられる。さらに、アンテナに求められる仕様に応じて、アンテナ利得は、垂直偏波の受信利得と水平偏波の受信利得のいずれか一方でもよく、両方でもよい。
【0033】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として併用して機能させても良い。
【0034】
通信インタフェース17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0035】
次に、学習装置10の機能構成について説明する。図4は、学習装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0036】
学習装置10は、機能的には、図4に示すように、学習用データベース(DB)20、取得部22、学習部24、及びモデル記憶部26を備えている。
【0037】
学習用データベース20には、入力された複数のアンテナの各々についての学習データが記憶されている。
【0038】
取得部22は、学習用データベース20から、複数の学習データを取得する。
【0039】
学習部24は、受け付けた複数のアンテナについての学習データに基づいて、グラフデータを入力とし、アンテナ性能を出力するグラフニューラルネットワークを学習する。
【0040】
モデル記憶部26には、学習されたグラフニューラルネットワークが記憶される。
【0041】
<本実施形態に係るアンテナ設計支援装置の構成>
上記図1は、本実施形態のアンテナ設計支援装置50のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0042】
上記図1に示すように、アンテナ設計支援装置50は、学習装置10と同様の構成であり、ROM12又はストレージ14には、アンテナ性能を予測するためのアンテナ設計支援プログラムが格納されている。
【0043】
入力部15は、予測対象のアンテナの形状について生成されたグラフデータを、入力として受け付ける。例えば、入力部15は、アンテナ100を構成するアンテナ線条の端点及び交点の各々を表すノードと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶエッジとを含むグラフであって、ノードの各々が、端点又は交点の位置情報を含む特徴量を持つグラフデータを、入力として受け付ける。
【0044】
次に、アンテナ設計支援装置50の機能構成について説明する。図5は、アンテナ設計支援装置50の機能構成の例を示すブロック図である。
【0045】
アンテナ設計支援装置50は、機能的には、図5に示すように、モデル記憶部60、取得部62、及び予測部64を備えている。
【0046】
モデル記憶部60には、学習装置10によって学習されたグラフニューラルネットワーク(GNN:Graph Neural Network)が記憶される。
【0047】
取得部62は、入力されたグラフデータを取得する。予測部64は、取得したグラフデータをグラフニューラルネットワークに入力し、アンテナ性能を予測する。
【0048】
<本実施形態に係る学習装置の作用>
次に、本実施形態に係る学習装置10の作用について説明する。
【0049】
図6は、学習装置10による学習処理の流れを示すフローチャートである。図1におけるCPU11が、ROM12又はストレージ14から学習プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、学習処理が行なわれる。また、図4における学習装置10に、複数のアンテナの各々についての、アンテナの形状を表すグラフデータと、アンテナ性能との組み合わせである学習データが入力され、学習用データベース20に格納される。
【0050】
ステップS100で、図1におけるCPU11は、取得部22として、学習用データベース20から、複数の学習データを取得する。
【0051】
ステップS102で、図1におけるCPU11は、学習部24として、受け付けた複数のアンテナについての学習データに基づいて、グラフデータを入力とし、アンテナ性能を出力するグラフニューラルネットワークを学習する。図1におけるCPU11は、学習されたグラフニューラルネットワークをモデル記憶部26に格納し、学習処理を終了する。
【0052】
<本実施形態に係るアンテナ設計支援装置の作用>
次に、本実施形態に係るアンテナ設計支援装置50の作用について説明する。
【0053】
図7は、アンテナ設計支援装置50によるアンテナ設計支援処理の流れを示すフローチャートである。図1におけるCPU11が、ROM12又はストレージ14からアンテナ設計支援プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、アンテナ設計支援処理が行われる。また、図5におけるモデル記憶部60には、学習されたグラフニューラルネットワークが格納されている。そして、図5におけるアンテナ設計支援装置50には、予測対象のアンテナの形状について生成されたグラフデータが入力される。
【0054】
まず、ステップS110で、図1におけるCPU11は、図5における取得部62として、入力されたグラフデータを取得する。
【0055】
次に、ステップS112で、図1におけるCPU11は、図5における予測部64として、取得したグラフデータをグラフニューラルネットワークに入力し、アンテナ性能を予測する。
【0056】
次に、ステップS114で、図1におけるCPU11は、上記ステップS112の予測結果を表示部16により出力し、アンテナ設計支援処理を終了する。
【0057】
<実施例>
上述した学習装置10及びアンテナ設計支援装置50を用いてアンテナ性能を予測する実施例について説明する。
【0058】
図8は、実施例である例1におけるアンテナ100の形状を示す図である。図8では、自動車のリアガラスの主面に、アンテナ100と、窓の曇り止め(防曇)のための電熱線を含むデフォッガ150とが設けられた例を示している。アンテナ100は、2つのチャンネル(1ch、2ch)を有している。
【0059】
ここで、方向と原点は以下のように定義する。車両ボディにリアガラスを取り付けたとき、ガラス板の長辺を水平方向とし、ガラス板の短辺を垂直方向とし、ガラス板の長辺方向の中央を水平方向の原点とし、デフォッガ150の水平最上線中央を垂直方向の原点とする。
【0060】
図9は、例1におけるアンテナの形状を表すグラフデータを示す図である。各ノードは、アンテナ線条の端点もしくはアンテナ線条同士の交点を表している。
【0061】
また、各ノードの特徴量は、水平方向の座標、垂直方向の座標、左側の車両ボディからノードまでの距離、右側の車両ボディからノードまでの距離、上側の車両ボディからノードまでの距離、及びデフォッガの最上線からノードまでの距離を含む。
【0062】
ここで、車両ボディは基本的には金属でアースされている。そのため、誘電体上に導電線を設けてアンテナとする場合、車両ボディに近づきすぎると、車両ボディと容量結合することで、特性が変化する場合がある。そこで、この例では、特徴量が、車両ボディからノードまでの距離を含んでいる。
【0063】
また、図9の左側のグラフと、右側のグラフとは、全く同じ情報を表している。例えば、左側のグラフと、右側のグラフのどちらも、ノード番号0はノード番号1とノード番号42と接続されている。同様にノード番号1はノード番号0とノード番号2とノード番号5と接続されており、全てのノード番号とその接続先のノード番号は、左側のグラフと、右側のグラフで一致しており、左側のグラフと、右側のグラフで表示の仕方は異なるが、全く同じノードの接続関係の情報を表している。
【0064】
また、図10は、例1におけるグラフニューラルネットワークの構成を示す図である。図10では、入力層ニューロン数が6個であり、出力層ニューロン数が4個であり、隠れ層の数が6層であり、隠れ層のニューロン数が240個である例を示している。入力層ニューロン数は、ノードの特徴量の数に対応している。また、出力層ニューロン数は、アンテナ性能を表す4つの帯域平均値(1chの水平偏波の所定周波数帯域内の平均利得、垂直偏波の所定周波数帯域内の平均利得、2chの水平偏波の所定周波数帯域内の平均利得、垂直偏波の所定周波数帯域内の平均利得)に対応している。
【0065】
また、比較例である例2として、テーブルデータを入力とするニューラルネットワークであるTabNetを用いる。テーブルデータでは、アンテナ形状を表す27個の説明変数を有する。
【0066】
例1のグラフニューラルネットワークGNNを用いた場合と、例2のTabNetとにおける実験結果を表1に示す。表1では、RMSE(Root Mean Squared Error)を示している。
【0067】
【表1】
【0068】
1ch_ave_Hは、第1給電部から給電される第1チャンネル(1ch)における北米仕様FM帯(88MHz~108MHz)の水平偏波の帯域内平均利得であり、1ch_ave_Vは、第1チャンネルにおける北米仕様FM帯の垂直偏波の帯域内平均利得である。また、2ch_ave_Hは、第2給電部から給電される第2チャンネル(2ch)における北米仕様FM帯の水平偏波の帯域内平均利得であり、2ch_ave_Vは、第2チャンネルにおける北米仕様FM帯の垂直偏波の帯域内平均利得である。
【0069】
上記より、例2より、例1のグラフニューラルネットワークGNNを用いた場合の方が良い精度で予測できていることが分かった。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る学習装置は、アンテナ性能が予め求められたアンテナの形状を表す複数のグラフデータを取得し、グラフデータに基づいて、アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークを学習する。これにより、精度よくアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークを学習できる。
【0071】
また、本実施形態に係るアンテナ設計支援装置は、アンテナの形状を表すグラフデータを取得し、グラフデータに基づいて、アンテナのアンテナ性能を予測するためのグラフニューラルネットワークを用いて、アンテナ性能を予測する。これにより、精度よくアンテナ性能を予測できる。
【0072】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0073】
例えば、学習装置とアンテナ設計支援装置とを別々の装置として構成する場合を例に説明したが、これに限定されず、学習装置とアンテナ設計支援装置とを一つの装置として構成してもよい。
【0074】
また、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、学習処理及びアンテナ設計支援処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0075】
また、上記各実施形態では、学習プログラム及びアンテナ設計支援プログラムがストレージ14に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0076】
さらに、アンテナ100は、自動車用のリアガラスをはじめとするガラス板に設ける例を示したが、これに限らない。アンテナ100は、自動車用の誘電体に取り付けられれば、ガラス板に限らず、樹脂上に取り付けられてもよい。アンテナ100は、例えば、スポイラー等のエアロパーツや、ルーフ上に突起を有する筐体内に配置されるいわゆるシャークフィン内に取付けられてもよい。さらに、送受信する電波の周波数帯がGHz帯となる高周波帯域まで及ぶ場合、アンテナ100は、誘電体の主面に二次元的に配置されるアンテナ線条に限らず、導体が所定の平面領域にベタ状又はメッシュ状に配置されてもよい。さらに、アンテナ100は、導体が、三次元形状を構成するアンテナエレメントを有して、例えば、~6GHzの周波数帯の電波の送受信に対応する、第5世代移動通信システム(5G)や6GHz以上の準ミリ波やミリ波の周波数帯の電波の送受信に対応する仕様を有してもよい。
【0077】
さらに、アンテナ線条の端点及び交点をノード、端点及び交点間を結ぶ線条をエッジとしてグラフデータを構成する例を示したが、これに限らない。アンテナ線条の端点及び交点だけでなく線条の途中の点をノードに設定してもよい。また、アンテナ線条の端点及び交点をエッジ、端点及び交点間を結ぶ線条をノードとしてグラフデータを構成してもよい。この場合には、グラフデータは、アンテナ線条の端点及び交点を含む各点を表すエッジと、接続関係にある端点又は交点間を結ぶ各線条を表すノードとを含むグラフであって、ノードの各々が、各線条の位置情報を含む特徴量を持つ。
【符号の説明】
【0078】
10 学習装置
11 CPU
14 ストレージ
15 入力部
16 表示部
20 学習用データベース
22 取得部
24 学習部
26 モデル記憶部
50 アンテナ設計支援装置
60 モデル記憶部
62 取得部
64 予測部
100 アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10