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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031480
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ノンフライ食品用の衣材
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20240229BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240229BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240229BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L13/00 A
A23L5/10 E
A23L5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135053
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】平岡 香織
(72)【発明者】
【氏名】桐山 知樹
(72)【発明者】
【氏名】野上 竜一郎
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB09
4B025LG01
4B025LG02
4B025LG07
4B025LG14
4B025LG24
4B025LG25
4B025LG28
4B025LG32
4B025LG52
4B025LK03
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP12
4B025LP20
4B035LC16
4B035LE19
4B035LG08
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG15
4B035LG21
4B035LG34
4B035LG42
4B035LP02
4B035LP26
4B042AD39
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK12
4B042AP04
4B042AP19
(57)【要約】
【課題】
フライパン等で焼成されたノンフライ食品について、油っぽさを抑制しつつ、より好ましい食感を有するノンフライ食品が得られる衣材を提供する
【解決手段】
穀物を原料とする穀物パフと、融点が10℃未満である油脂(A)と、融点が10℃以上である油脂(B)と、グリセリン脂肪酸エステルと、タンパク質素材とを含む、ノンフライ食品用の衣材であって、衣材中の油脂(B)の含有量が、5質量%以上50質量%以下であるノンフライ食品用の衣材。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を原料とする穀物パフと、
融点が10℃未満である油脂(A)と、
融点が10℃以上である油脂(B)と、
グリセリン脂肪酸エステルと、
タンパク質素材と
を含む、ノンフライ食品用の衣材であって、
前記衣材中の油脂(B)の含有量が、5質量%以上50質量%以下である、前記衣材。
【請求項2】
前記衣材中の前記油脂(A)と前記油脂(B)の合計含有量が、30質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の衣材。
【請求項3】
前記穀物がジャガイモ、トウモロコシおよび米からなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1または2に記載の衣材。
【請求項4】
前記衣材中に、前記穀物パフが5質量%以上50質量%以下含まれる、請求項1または2に記載の衣材。
【請求項5】
前記穀物パフの粒径が、目開き5.6mmの篩下の含有量を90質量%以上100質量%以下である、請求項1または2に記載の衣材。
【請求項6】
前記油脂(B)がパーム油である、請求項1または2に記載の衣材。
【請求項7】
前記タンパク質素材が、卵白タンパク質である、請求項1または2に記載の衣材。
【請求項8】
前記衣材は、さらにレシチンを含む請求項1または2に記載の衣材。
【請求項9】
前記衣材は、さらに澱粉を含む請求項1または2に記載の衣材。
【請求項10】
請求項1または2に記載の衣材を食材にまとわせる工程、および前記工程後の食材に油調以外の加熱調理を施す工程を有する、ノンフライ食品の製造方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の衣材をノンフライ食品の衣材として用いる、ノンフライ食品の衣の油っぽさを抑制する方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の衣材をノンフライ食品の衣材として用いる、ノンフライ食品。
【請求項13】
穀物を原料とする穀物パフと、
油脂(A)と油脂(B)を含む油脂組成物と、
グリセリン脂肪酸エステルと、
タンパク質素材と、
を混合する工程を含む、ノンフライ食品用の衣材の製造方法であって、
前記油脂(A)は融点が10℃未満であり、
前記油脂(B)は融点が10℃以上であり、
前記衣材中の油脂(B)の含有量が、5質量%以上50質量%以下である、前記製造方法。
【請求項14】
前記油脂(B)を予め融点以上に加熱融解する工程を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記穀物パフと前記タンパク質素材を予め混合する工程をさらに含む、請求項13または14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライパン等で焼成するノンフライ食品用の衣材、当該ノンフライ食品用の衣材を含んだノンフライ食品、当該ノンフライ食品用の衣材を用いるノンフライ食品の製造方法、および当該ノンフライ食品用の衣材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理の簡便性や健康志向の観点から、ノンフライ食品の需要が高まってきており、油調をせずにフライ食品と同様に衣の食感が好ましいノンフライ食品が注目されている。
【0003】
ノンフライ食品の食感を改良するため、特許文献1にはセモリナ、コーングリッツ、パスタ粉砕物などの比較的粒度が粗い素材を衣に配合する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-147781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には油っぽさを低減しつつ、サクサクとした良好な食感を有するノンフライ食品については開示も示唆もされていない。そこで、本発明は、衣材を鶏肉などの食材にまとわせて、フライパン等で焼成されたノンフライ食品について、ノンフライ食品表面の油の口への広がりを抑えることにより、油っぽさを抑制しつつ、表面の水分を飛ばして、より好ましい食感を有するノンフライ食品が得られる衣材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討したところ、衣材中に所定量の穀物パフと高融点油脂、特定の乳化剤及びタンパク質素材を配合することにより、当該衣材をまとわせた食材をフライパン等で焼成しても油っぽさを低減しつつ、サクサクとしたより好ましい食感を有するノンフライ食品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1]
穀物を原料とする穀物パフと、融点が10℃未満である油脂(A)と、融点が10℃以上である油脂(B)と、グリセリン脂肪酸エステルと、タンパク質素材とを含む、ノンフライ食品用の衣材であって、前記衣材中の油脂(B)の含有量が、5質量%以上50質量%以下である、前記衣材。
[2]
前記衣材中の前記油脂(A)と前記油脂(B)の合計含有量が、30質量%以上70質量%以下である、[1]に記載の衣材。
[3]
前記穀物がジャガイモ、トウモロコシおよび米からなる群から選ばれる1種または2種以上である、[1]または[2]に記載の衣材。
[4]
前記衣材中に、前記穀物パフが5質量%以上50質量%以下含まれる[1]記載の衣材。
[5]
前記穀物パフの粒径が、目開き5.6mmの篩下の含有量を90質量%以上100質量%以下である、[1]または[2]に記載の衣材。
[6]
前記油脂(B)がパーム油である、[1]または[2]に記載の衣材。
[7]
前記タンパク質素材が、卵白粉である、[1]または[2]に記載の衣材。
[8]
前記衣材は、さらにレシチンを含む[1]または[2]に記載の衣材。
[9]
前記衣材は、さらに澱粉を含む[1]または[2]に記載の衣材。
[10]
[1]または[2]に記載の衣材を食材にまとわせる工程、および前記工程後の食材に油調以外の加熱調理を施す工程を有する、ノンフライ食品の製造方法。
[11]
[1]または[2]に記載の衣材をノンフライ食品の衣材として用いる、ノンフライ食品の衣の油っぽさを抑制する方法。
[12]
[1]または[2]に記載の衣材をノンフライ食品の衣材として用いる、ノンフライ食品。
[13]
穀物を原料とする穀物パフと、油脂(A)と油脂(B)を含む油脂組成物と、グリセリン脂肪酸エステルと、タンパク質素材と、を混合する工程を含む、ノンフライ食品用の衣材の製造方法であって、前記油脂(A)は融点が10℃未満であり、前記油脂(B)は融点が10℃以上であり、前記衣材中の油脂(B)の含有量が、5質量%以上50質量%以下である、ノンフライ食品用の衣材の製造方法。
[14]
前記油脂(B)を予め融点以上に加熱融解する工程を含む、[13]
に記載の製造方法。
[15]
前記穀物パフと前記タンパク質素材を予め混合する工程をさらに含む、[13]又は[14]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の衣材を食材にまとわせることにより、フライパン等で焼成した場合においても油っぽさを低減しつつ、サクサクとしたより好ましい食感を有するノンフライ食品が得られることできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本明細書における以下の用語を定義する。
「フライ食品」
食材もしくは食材に衣材をまとわせたものを油調して得られる食品を意味する。
「ノンフライ食品」
食材もしくは食材に衣材をまとわせたものを油調以外の加熱調理にて調理して得られるフライ食品様の食品を意味する。当該加熱調理として、焼成調理、オーブン調理、電子レンジ調理、過加熱調理、加熱蒸気調理などが挙げられる。
「フライ食品様の食感」
表面の適度な硬さおよび崩壊感に起因する噛み始めのカリッと感やサクサク感を意味する。
【0010】
以下に、本発明の具体的な態様について説明する。
【0011】
本発明の衣材は、穀物を原料とする穀物パフと、融点が10℃未満である油脂(A)と、融点が10℃以上である油脂(B)と、グリセリン脂肪酸エステルと、タンパク質素材とを含み、前記衣材中の油脂(B)の含有量が、5質量%以上50質量%以下とされているものである。前記油脂(B)の含有量は10質量%以上40質量%以下が好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
【0012】
(穀物パフ)
前記穀物パフは、穀物素材の原料をパフ化したもの(圧力をかけた後に一気に開放することによって膨化したもの)であれば特に原料は限定しない。例えば、ジャガイモ、トウモロコシおよび米から選ばれる1種または2種以上の原料をパフ化処理したものが挙げられる。
【0013】
本発明の衣材中の前記穀物パフの含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましくは、10質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
【0014】
前記穀物パフは、必要に応じて摩砕等により任意の粒径としていてもよいが、前記穀物パフのJIS-Z8801-1規格における目開き5.6mmの篩の篩下の含有量が90質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。、上限値は特に限定しないが、100質量%であることが好ましい。
【0015】
(油脂(A))
前記油脂(A)は、融点10℃以下の食用油脂である。前記食用油脂に用いられる原料油脂としては、たとえば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、アマニ油、エゴマ油等の植物油脂、魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及びこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂等の内、融点が10℃以下の食用油脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記植物油脂には、高オレイン酸菜種油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸サフラワー油等のオレイン酸含量を高めるように品種改良された油糧由来の油脂を含む。なかでも、本発明の油脂(A)においては、菜種油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、米油、オリーブ油を用いることが好ましく、菜種油、コーン油、大豆油を用いることがより好ましく、大豆油を用いることが特に好ましい。
【0016】
上記食用油脂は、油糧原料から搾油、抽出等して得られた原油から、さらに、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理のうち1種または2種以上の精製処理がなされてなるものであることが好ましく、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理および脱臭処理のすべての精製処理を施されてなるものであることがより好ましい。
【0017】
前記油脂(A)は、融点が10℃以下、好ましくは0℃以下である。なお、本明細書で、融点は、上昇融点を意味する。上昇融点は、基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996に則って測定することができる。
【0018】
(油脂(B))
前記油脂(B)は、融点10℃以上の食用油脂である。前記食用油脂に用いられる原料油脂としては、たとえば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、アマニ油、エゴマ油等の植物油脂、魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及びこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂等の内、融点が10℃以上の食用油脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記植物油脂には、高オレイン酸菜種油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸サフラワー油等のオレイン酸含量を高めるように品種改良された油糧由来の油脂を含む。なかでも、本発明の油脂(B)においては、パーム油を用いることが特に好ましい。
【0019】
前記油脂(B)の食用油脂は、油糧原料から搾油、抽出等して得られた原油から、さらに、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理のうち1種または2種以上の精製処理がなされてなるものであることが好ましく、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理および脱臭処理のすべての精製処理を施されてなるものであることがより好ましい。
【0020】
前記油脂(B)は、好ましくは融点が10℃以上、より好ましくは35℃以上である。
【0021】
本実施形態では、前記衣材中の油脂(B)の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
本実施形態では、前記衣材中の前記油脂(A)と前記油脂(B)の合計含有量は、30質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以上60%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上55質量%以下である。
【0023】
(グリセリン脂肪酸エステル)
本実施形態において、ノンフライ用食品の衣材中に含まれるグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、0.05質量%以上0.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上0.35質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上0.3質量%以下である。
【0024】
前記グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、好ましくは炭素数が12以上22以下の脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が14以上20以下の脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数が18の脂肪酸であり、さらにより好ましくはステアリン酸である。
【0025】
前記グリセリン脂肪酸エステルのHLBは、2以上10以下であり、3以上8以下であることが好ましく、3以上4以下であることがより好ましい。
【0026】
前記グリセリン脂肪酸エステルの種類としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステルなどが挙げられるが、好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0027】
(タンパク質素材)
前記タンパク質素材としては、食用のタンパク質素材であれば限定しないが、例えば、卵黄タンパク質、卵白タンパク質、全卵タンパク質等の卵タンパク質、大豆タンパク質、乳タンパク質、および小麦タンパク質等が挙げられる。本発明においては、卵タンパク質、大豆タンパク質、乳タンパク質および小麦タンパク質からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましく、卵タンパク質、大豆タンパク質および乳タンパク質からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることがより好ましく、卵タンパク質を用いることがさらに好ましい。
【0028】
前記衣材中のタンパク質素材の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
(レシチン)
前記レシチンは、製造方法またはリン脂質の純度に応じて、クルードレシチン(粗製レシチンやペーストレシチンともいう)、脱油レシチン(粉末レシチンともいう)、分別レシチン(精製レシチンともいう)、および酵素処理レシチンに分別される。
【0030】
クルードレシチンは、油糧油脂から精製油を製造する工程中の脱ガム工程で分離されるガム質を、通常、水分1質量%以下に乾燥することにより得られる。そのようなクルードレシチンは、通常、リン脂質を30~70質量%含む。
【0031】
脱油レシチンは、クルードレシチンを溶液分別にかけて、脂質およびその他の微量成分を除去することにより得られる高純度レシチンである。この脱油レシチンのアセトン可溶物含有量は、通常、10質量%以下でよく、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。そのような脱油レシチンは、通常、リン脂質を50~99質量%含む。
【0032】
分別レシチンは、クルードレシチンまたは脱油レシチンを、溶剤分別およびその他の分別技術により、個々のリン脂質濃度を一定以上まで高めたものである。
【0033】
前記レシチンは、一種単独でも、二種以上の併用でもよい。好ましくは、クルードレシチンである。
【0034】
前記レシチンは、植物由来であることが好ましく、例えば、大豆レシチン、菜種レシチン、ひまわりレシチン、綿実レシチン、トウモロコシレシチン、落花生レシチン、パームレシチン、ゴマレシチン、米レシチン、えごまレシチンおよびあまにレシチン等が挙げられる。好ましくは、大豆レシチン、菜種レシチンおよびひまわりレシチンからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくは大豆レシチンおよび菜種レシチンからなる群から選ばれる1種または2種であり、さらに好ましくは大豆レシチンである。
【0035】
前記レシチンは、市販のものを特に制限なく使用可能である。市販のレシチンの例には、大豆クルードレシチンとして製品名:レシチンCL(株式会社J-オイルミルズ製)等が挙げられる。
【0036】
前記衣材中のレシチンの含有量は、0.05質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
(澱粉)
本実施形態においては、前記衣材は様々な澱粉を含んでもよい。具体的には、用途に応じて一般に市販されている澱粉、たとえば食品用の澱粉であれば、種類を問わないが、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、エンドウ豆澱粉などの豆澱粉および、これらに化学的、物理的および酵素的の1または2以上の加工を施した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましく、未加工澱粉及びα化澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含むことがより好ましく、馬鈴薯澱粉、α化ハイアミロースコーンスターチ及びα化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含むことがさらに好ましい。
【0038】
また、本発明の衣材は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、調味料、抗酸化剤、香料などを含んでもよい。
【0039】
本発明の衣材は、上述の素材を混合することで得ることができる。その混合方法や混合条件については、特に限定しないが、例えば以下の手順にて調製することができる。
(1)穀物パフと澱粉とタンパク質素材及びその他粉末素材を混合し、粉体混合物を得る。
(2)油脂(A)と予め40℃に加熱し融解した油脂(B)を投入後、40℃に加熱し、攪拌する。
(3)(2)を60℃に加熱し、達温したらレシチンを投入後、グリセリン脂肪酸エステルを投入し溶解する。
(4)(3)に粉体混合物を投入し、攪拌する。
(5)(4)を攪拌しながら65℃まで加熱する。
(6)(5)に香料を投入し、なじませる。
(7)(6)を冷却して衣材を得る。
【0040】
上述の本発明の衣材によれば、当該衣材を食材にまとわせることにより、フライパン調理に供した場合においても、油っぽさを低減しつつ、サクサクとしたより好ましい食感を有するノンフライ食品を得ることを可能とする。
【0041】
また、本発明のノンフライ食品の製造方法は、上述の衣材を食材にまとわせる工程、および前記工程後の食材に油調以外の加熱調理を施す工程を有するものである。
【0042】
また、本発明の製造方法においては、発明の効果を損なわない範囲において、例えば、本発明の衣材を食材にまとわせる工程の後に、パン粉などをさらにまとわせる工程を設けてもよい。
【0043】
前記ノンフライ食品は特に限定するものではないが、例えば、から揚げ、トンカツおよびコロッケ等が挙げられる。
【0044】
食材としては、畜肉、鳥肉、培養肉、代替肉、魚介類,野菜やこれらの加工品が挙げられる。
【0045】
前記油調以外の加熱調理としては、特に限定するものではないが、例えば、フライパン調理、グリル調理、オーブン調理、電子レンジ調理、過加熱調理、加熱蒸気調理などが挙げられる。好ましくは、フライパン調理、グリル調理およびオーブン調理から選ばれる1種であり、より好ましくは、フライパン調理またはグリル調理であり、特に好ましくはフライパン調理である。
【0046】
本発明のノンフライ食品の製造方法によれば、油っぽさを低減しつつ、サクサクとしたより好ましい食感を有するノンフライ食品が得られることできる。
【0047】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【実施例0048】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に用いた素材は以下のとおりである。
【0049】
<穀物パフ>
米パフ:米パフ100KS2(株式会社きのした)
じゃがいもパフ:ソフトコートEP-2(株式会社J-オイルミルズ)
とうもろこしパフ:BBコーン(株式会社きのした)
<澱粉>
・馬鈴薯澱粉:ジェルコールBP-200(株式会社J-オイルミルズ製)
・α化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉:ジェルコールGT-α(株式会社J-オイルミルズ製)
・α化ハイアミロースコーンスターチ:ジェルコールAH-F(株式会社J-オイルミルズ製)
<油脂>
・油脂(A):AJINOMOTO大豆のサラダオイル(株式会社J-オイルミルズ製)
・油脂(B):パーム油(株式会社J-オイルミルズ製)
<グリセリン脂肪酸エステル>
・サンファットPS-68:オクタステアリン酸ヘキサグリセリン、HLB3.5(太陽化学株式会社製)
・ポエムDO-100V:モノオレイン酸ジグリセリン、HLB7.4(理研ビタミン株式会社製)
・サンソフトA-173E:トリオレイン酸ペンタグリセリン、HLB7(太陽化学株式会社製)
<レシチン>
・大豆レシチン:レシチンCL、株式会社J-オイルミルズ製、クルードレシチン
<タンパク質素材>
・卵タンパク質:乾燥卵白Wタイプ、キユーピータマゴ株式会社製
<その他粉末素材>
・調味料1:A-1000、味の素株式会社製
・調味料2:プロアミST、味の素株式会社製
・焦がし醤油パウダー:AID-2027、池田糖化工業株式会社製
・粉末醤油 :IDS-1888B、池田糖化工業株式会社製
<その他香料>
・ジンジャーフレーバー:AJ-6269、長谷川香料株式会社製
【0050】
[試験例1] ノンフライ食品の検討
表1に記載の配合にて比較例および実施例の衣材を調製し、当該衣材を鶏もも肉にまとわせてフライパン調理して得たノンフライ食品について、油っぽさ低減について評価した。
【0051】
比較例および実施例の衣材の調製手順は以下のとおりである。
<衣材の調製手順>
(1)穀物パフと澱粉とタンパク質素材及びその他粉末素材を混合することにより、粉体混合物を得た。
(2)油脂(A)と予め40℃に加熱し融解した油脂(B)を投入後、40℃に加熱し、攪拌した
(3)(2)を60℃に加熱し、達温したらレシチンを投入後、グリセリン脂肪酸エステルを投入し溶解させた。
(4)(3)に粉体混合物を投入し、攪拌した。
(5)(4)を攪拌しながら65℃まで加熱した。
(6)(5)にその他香料を投入し、なじませた。
(7)(6)を冷却して衣材を得た。
【0052】
ノンフライ食品の調製手順は以下のとおりである。
<ノンフライ食品の調製手順>
(1)1個あたり約25gに鶏もも肉をカットした。
(2)ポリ袋に(1)の鶏もも肉4個および衣材20gを投入して揉みこんだ。
(3)180℃に加熱したフライパンに(2)の鶏もも肉が互いに接触しないように並べた。
(4)1分間加熱後、菜箸にて鶏もも肉を裏返した。
(5)さらに数回肉を裏返しながら焼成し、全体で5分間加熱し、ノンフライ食品を得た。
【0053】
ノンフライ食品の評価方法を以下に説明する。
<油っぽさの評価方法>
2名の専門パネラーが、調製後10分後のノンフライ食品を喫食し、喫食した際の衣の食感(油っぽさ、サクミ)について評価を行った。評価値については以下の通りである。
(油っぽさの評価基準)
4:油っぽさが大変抑えられている
3:油っぽさが抑えられている
2:やや油っぽい
1:油っぽい
(サクミの評価基準)
4:適度にサクサク感がある
3:少しサクサク感がある
2:サクサク感があまりない
1:サクサク感がほとんどない
【0054】
評価結果を表1に示す。
【0055】
表1に示したように、実施例1-1乃至1-6の衣材を用いて調製したノンフライ食品の衣は、油っぽさを抑えることができ、サクサクとした咀嚼感を備えたフライ食品に近い好ましい食感を有していた。これに対して、比較例1-1の衣材を用いて調製したノンフライ食品の衣は、やや油っぽく、カリカリしているが、サクサクとした咀嚼感を備えたフライ食品に近い好ましい食感を有してはいなかった。
【0056】
また、穀物パフとして米パフを用いて調整したノンフライ食品の衣は、最も油っぽさを低減でき、かつ、サクサクとした優れた食感を有していることがわかった。
【0057】
【表1】
【0058】
なお、本明細書において数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0059】
本発明の衣材およびノンフライ食品の製造方法は、上述の実施形態及び実施例に限定するものではなく、発明の特徴及び効果を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。