(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031600
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240229BHJP
【FI】
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135254
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】谷定 知季
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA84
5F142BA23
5F142CA02
5F142CC26
5F142CG25
5F142CG43
5F142DA12
5F142DA22
5F142DA43
5F142DA45
5F142DA48
5F142DA53
5F142DA54
5F142DA73
(57)【要約】
【課題】蛍光体の使用量を低減することが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】凹部を画定する底部と側壁を有する基体と凹部の前記底部に配置される発光素子と発光素子を被覆して凹部に配置される波長変換部材とを備える発光装置である。波長変換部材は、樹脂硬化物と表面処理されたナノ粒子と蛍光体とを含む。表面処理されたナノ粒子は、体積平均粒径が5nm以上40nm以下である。波長変換部材は、表面処理されたナノ粒子の含有量が樹脂硬化物の100質量部に対して6質量部以上15質量部以下である。波長変換部材は、発光素子の側方における凹部の高さ方向に平行な断面において、底部から波長変換部材の高さの1/2までの第1領域と波長変換部材の高さの1/2から波長変換部材の上面までの第2領域とを有し、波長変換部材において第1領域に対する第2領域における蛍光体の含有量の比が1未満であり、表面処理されたナノ粒子が波長変換部材中に分散している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を画定する底部と側壁を有する基体と、前記基体の前記底部に配置される発光素子と、前記発光素子を被覆して前記凹部に配置される波長変換部材と、を備え、
前記波長変換部材は、樹脂硬化物と、表面処理されたナノ粒子と、蛍光体と、を含み、
前記表面処理されたナノ粒子は、体積平均粒径が5nm以上40nm以下であり、
前記波長変換部材は、前記表面処理されたナノ粒子の含有量が、前記樹脂硬化物の100質量部に対して6質量部以上15質量部以下であり、
前記波長変換部材は、前記発光素子の側方における前記凹部の高さ方向に平行な断面において、前記底部から前記波長変換部材の高さの1/2の位置までの第1領域と、前記波長変換部材の高さの1/2の位置から波長変換部材の上面までの第2領域と、を有し、
前記第1領域における前記蛍光体の含有量に対する前記第2領域における前記蛍光体の含有量の比が1未満であり、
前記表面処理されたナノ粒子が、前記波長変換部材中に分散している発光装置。
【請求項2】
前記波長変換部材は、前記樹脂硬化物の100質量部に対して、前記蛍光体を10質量部以上200質量部以下で含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、マンガン(Mn)と、フッ素原子(F)と、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物蛍光体の少なくとも1種を含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記フッ化物蛍光体は、体積平均粒径が5μm以上50μm以下であり、アスペクト比が1以上2以下である請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記蛍光体は、イットリウム(Y)、ルテチウム(Lu)、ガドリニウム(Gd)及びテルビウム(Tb)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第1元素と、アルミニウム(Al)及びガリウム(Ga)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第2元素と、酸素原子(O)と、セリウム(Ce)とを含み、酸素原子のモル数を12とする場合に、第1元素のモル数が2.8以上3.2以下であり、第2元素のモル数が4.8以上5.2以下であり、セリウムのモル数が0.009以上0.6以下である組成を有する酸化物蛍光体の少なくとも1種を更に含む請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記蛍光体は、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第3元素と、アルミニウム(Al)と、ケイ素(Si)と、窒素原子(N)と、ユウロピウム(Eu)とを含み、アルミニウムのモル数を1とする場合に、第3元素のモル数が0.7以上1.2以下であり、ケイ素のモル数が0.8以上1.2以下であり、窒素原子のモル数が2.0以上3.2以下であり、ユウロピウムのモル数が0.002以上0.05以下である組成を有する窒化物蛍光体の少なくとも1種を更に含む請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記表面処理されたナノ粒子は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子の表面に配置され、長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪族カルボン酸、およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤に由来する官能基と、を含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記樹脂硬化物は、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、およびハイブリッドシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂の硬化物を含む請求項1に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、「LED」とも記載する。)を用いて白色系の光を発する発光装置として、例えば、青色に発光するLEDと黄色に発光する蛍光体とを組み合わせた発光装置がある。この発光装置は、LEDの青色光と、その光照射を受けた蛍光体による黄色光と、が混色することにより白色系の光を発する。このような発光装置では、可視光領域における放射強度が強く発光効率は高いが、青緑色領域及び赤色領域における放射強度が充分に得られない場合がある。そのため照射物の色の見え方(以下、「演色性」と呼ぶ。)に更なる改良の余地がある。
【0003】
良好な演色性を有する発光装置として、赤色に発光するMn4+賦活のフッ化物蛍光体を用いた発光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一態様は、蛍光体の使用量を低減することが可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、凹部を画定する底部と側壁を有する基体と、基体の底部に配置される発光素子と、発光素子を被覆して凹部に配置される波長変換部材と、を備える発光装置である。波長変換部材は、樹脂硬化物と、表面処理されたナノ粒子と、蛍光体と、を含む。表面処理されたナノ粒子は、体積平均粒径が5nm以上40nm以下である。波長変換部材は、表面処理されたナノ粒子の含有量が、樹脂硬化物の100質量部に対して6質量部以上15質量部以下である。波長変換部材は、発光素子の側方に位置し、凹部の高さ方向に平行な断面において、底部から前記波長変換部材の高さの1/2の位置までの第1領域と、波長変換部材の高さの1/2の位置から波長変換部材の上面までの第2領域と、を有する。波長変換部材では、第1領域における蛍光体の含有量に対する第2領域における蛍光体の含有量の比が1未満であり、表面処理されたナノ粒子が、波長変換部材中に分散している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、蛍光体の使用量を低減することが可能な発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態にかかる発光装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本実施形態にかかる発光装置の別例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、蛍光体又は発光材料の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成物中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体の半値幅は、蛍光体の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、発光装置を例示するものであって、本発明は、以下に示す発光装置に限定されない。
【0010】
発光装置
発光装置は、凹部を画定する底部と側壁を有する基体と、基体の底部に配置される発光素子と、発光素子を被覆して凹部に配置される波長変換部材と、を備える。波長変換部材は、樹脂硬化物と表面処理されたナノ粒子と蛍光体とを含む。表面処理されたナノ粒子は、体積平均粒径が5nm以上40nm以下であり、波長変換部材における含有量が、樹脂硬化物の100質量部に対して6質量部以上15質量部以下である。波長変換部材は、発光素子の側方に位置し、凹部の高さ方向に平行な断面において、底部から波長変換部材の高さの1/2の位置までの第1領域と、波長変換部材の高さの1/2の位置から波長変換部材の上面までの第2領域と、を有する。波長変換部材では、第1領域における蛍光体の含有量に対する第2領域における蛍光体の含有量の比が1未満であり、表面処理されたナノ粒子が、波長変換部材中に分散している。ここで「表面処理されたナノ粒子」は、特に断りのない限り、蛍光体を除く。
【0011】
波長変換部材が、特定の平均粒径を有する表面処理されたナノ粒子を特定の含有量で含むことで、発光素子からの光が波長変換部材中で散乱(例えば、レイリー散乱)されて、蛍光体の励起効率を向上させることができる。これにより蛍光体の使用量を低減することができる。さらに、波長変換部材が、発光素子の近傍における蛍光体の含有量が高くなるように構成されることで、蛍光体の励起効率がより向上して蛍光体の使用量をより低減することができる。
【0012】
本発明の一実施形態である発光装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は発光装置の一例を示す概略断面図である。この発光装置は、表面実装型発光装置の一例である。発光装置100は、発光ピーク波長が例えば435nm以上460nm以下である発光素子10と、発光素子10を載置する基体40と、を有する。基体40は、第一のリード20及び第二のリード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42と、が一体的に成形されてなるものである。基体40は底部と側壁を有する凹部を形成しており、凹部の底部に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は、それぞれ第一のリード20及び第二のリード30と、ワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は波長変換部材50により被覆されている。波長変換部材50は、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70と樹脂硬化物55と表面処理されたナノ粒子80とを含有してなる。
【0013】
波長変換部材50は、発光素子10が発する光を波長変換するだけではなく、外部環境から発光素子10を保護するための部材としても機能する。蛍光体70は波長変換部材50中に偏在しており、発光素子10に接近して蛍光体70が配置されている。このように発光素子10に接近して蛍光体70を配置することにより、発光素子10からの光を効率よく波長変換することができ、発光効率の優れた発光装置とできる。なお、蛍光体70と発光素子10との配置は、それらを接近して配置させる形態に限定されることなく、間隔を空けて配置することもできる。蛍光体70と発光素子10との配置を、間隔を空けて配置することで、発光素子10、蛍光体70それぞれで発生する熱の影響を受けにくくすることができる。また蛍光体70を波長変換部材50の全体に分散されて混合することによって、色ムラがより低減された光を得るようにすることもできる。
【0014】
図2は、発光装置の別の構成例の一例を示す概略断面図である。発光装置200では、波長変換部材50は、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70として第一蛍光体71及び第二蛍光体72と、樹脂硬化物55と、表面処理されたナノ粒子80と、を含有してなる。蛍光体70は例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する第一蛍光体71と、350nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する第二蛍光体72と、を含んでいてよい。発光装置200では、発光素子10からの光と、第一蛍光体71で波長変換された光と、第二蛍光体72で波長変換された光との混色として、白色発光することができる。
図2では、第一蛍光体71及び第二蛍光体72が混合された状態で図示されているが、第一蛍光体71及び第二蛍光体72をそれぞれ層状に積層して配置してもよい。
【0015】
基体は、発光素子が実装される筐体や台座となる部材である。基体は、主として、発光素子と電気的に接続する導電部材と、その導電部材を保持する成形体と、により構成される。導電部材は、例えば、第一のリード及び第二のリードである。基体には、パッケージの形態、配線基板の形態等がある。基体として具体的には、樹脂成形体がリードフレームにトランスファ成形、射出成形などにより一体成形されて成るもの、導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートが積層及び熱処理されて成るものなどが挙げられる。基体の上面は、略平坦であってもよく、湾曲していてもよい。基体の上面には、凹部が形成されている。凹部は、基体自体に窪みが形成されてもよいし、略平坦な基体の上面に枠状の凸部を別途形成することにより、その凸部で囲まれた内側を凹部としてもよい。凹部は、導電部材を含む底部と、樹脂部からなる側壁と、で画定されていてよい。
【0016】
基体の凹部の上面視形状は、矩形、角が丸みを帯びた矩形、円形、楕円形などが挙げられる。凹部の側壁面は、基体が成形金型から離型しやすいように、また発光素子の光を効率良く取り出すために、凹部の底部から上方に向かって凹部が拡径するように傾斜していてもよく、凹部の内側面に凹凸、階段形状等が形成されていてもよい。この傾斜は湾曲を含む。傾斜角は、例えば、凹部底面から95°以上120°以下であってよい。凹部の深さは、例えば0.05mm以上2mm以下であってよく、0.1mm以上1mm以下、又は0.25mm以上0.5mm以下であってもよい。
【0017】
導電部材には、発光素子に接続されて導電可能な金属部材を用いることができる。具体的には、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、タングステン、コバルト、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル、パラジウム、又はこれらの合金、燐青銅、鉄入り銅などで形成された、リード、配線等が挙げられる。また、導電部材は、その表層に、銀、アルミニウム、ロジウム、金、銅、又はこれらの合金などのめっき層、光反射膜が設けられていてもよく、なかでも光反射性に最も優れる銀を含む光反射膜が設けられてもよい。光反射膜は少なくとも発光素子が載置される側に配置されてよい。
【0018】
基体を構成する樹脂としては、脂環式ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂などの熱可塑性樹脂;ポリビスマレイミドトリアジン樹脂、エポキシ樹脂、変成エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂;を母材とするものが挙げられる。
【0019】
基体を構成する樹脂は、母材中に充填剤、着色顔料等の粒子又は繊維を含んでいてもよい。充填剤又は着色顔料として、ガラス、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ワラストナイト、マイカ、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、酸化アンチモン、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、カーボンブラックなどを挙げることができる。また、基体は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム又はこれらの混合物を含むセラミックスなどで形成されてもよい。
【0020】
発光素子には、発光ダイオード素子などの半導体発光素子を用いることができる。発光素子は、種々の半導体で構成される素子構造に正負一対の電極が設けられたものであればよい。特に、蛍光体を効率良く励起可能な窒化物半導体(InxAlyGa(1-x-y)N、0≦x、0≦y、x+y≦1)の発光素子が好ましい。このほか、ガリウム砒素系、ガリウム燐系半導体の発光素子でもよい。正負一対の電極が同一面側に設けられた発光素子は、各電極をワイヤで導電部材と接続するフェイスアップ実装されるか、各電極を導電性接着剤で導電部材と接続するフェイスダウン(フリップチップ)実装される。正負一対の電極が互いに反対の面に各々設けられた発光素子は、下面電極が導電性接着剤で導電部材に接着され、上面電極がワイヤで導電部材と接続される。1つの発光装置に搭載される発光素子の個数は1個でも複数個でもよい。発光素子を複数個搭載する場合、複数個を同時点灯してもよく、個別駆動させてもよい。複数の発光素子は、直列又は並列に接続することができる。
【0021】
発光素子は、可視光の短波長領域である380nm以上485nm以下の波長範囲の光を発するものを使用することが好ましい。発光素子は、例えば420nm以上485nm以下の波長範囲、又は440nm以上480nm以下の波長範囲に発光ピーク波長(極大発光波長)を有するものであってよい。
【0022】
波長変換部材が含む樹脂硬化物を形成する樹脂は、電気的絶縁性を有し、発光素子からの光を透過可能な透光性を有していればよく、光透過率は、例えば70%以上であってよい。樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ハイブリッドシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの変成樹脂、ハイブリッド樹脂等が挙げられる。樹脂硬化物は、なかでもシリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂及びハイブリッドシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の硬化物を含んでいてよい。シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂及びハイブリッドシリコーン樹脂の樹脂硬化物は、耐熱性、耐光性等に優れ、硬化後の体積収縮が低減される。
【0023】
波長変換部材は、表面処理されたナノ粒子(以下、単に「ナノ粒子」ともいうこともある)の少なくとも1種を含む。ナノ粒子の体積平均粒径は、例えば5nm以上40nm以下であってよく、好ましくは6nm以上、又は8nm以上であってよく、また好ましくは35nm以下、又は30nm以下であってよい。ナノ粒子が、5nm以上40nm以下の体積平均粒径を有するナノ粒子であることで、レイリー散乱により青色光など短波長光の散乱を増大させることができる。また、そのレイリー散乱の発生により、蛍光体の励起効率が向上し、発光装置における蛍光体の含有量を減らすことができる。さらに、波長変換部材の光透過率が向上し、光の取り出し効率を高めることができる。なお、ナノ粒子の体積平均粒径は、レーザ回折散乱法によって測定される体積基準の累積粒度分布において、体積累積50%に対応する粒径として求められる。
【0024】
ナノ粒子の形状は、不定形破砕状、球状、板状等のいずれであってもよい。例えば、ナノ粒子の形状が球状であると、ナノ粒子間の接触を最小とすることにより、凝集をより効果的に抑えることができる。
【0025】
ナノ粒子の材質は、有機物であっても、無機物であってもよい。ナノ粒子の材質は、発光装置の光取り出し効率の観点から、透光性の物質が好ましい。また、はんだ耐熱性の観点から、融点が例えば、260℃以上であってよい。ナノ粒子の材質として具体的には、有機物としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル及びその共重合物、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン及びその共重合物、架橋ポリスチレン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アモルファスフッ素樹脂などの樹脂が挙げられる。また、これらの中から選ばれる少なくとも1種の樹脂で無機粒子の表面の少なくとも一部を被覆したコア・シェル型の粒子であってもよい。このような有機物の粒子は、共重合によりその屈折率を、波長変換部材を構成する樹脂の屈折率に調整できるため、たとえ凝集しても、透光性を維持できるなど、光学的影響が少ない。無機物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素単体、金属硫化物等を挙げることができる。金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化イリジウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タングステンなどを挙げることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素等が挙げられる。金属炭化物としては、炭化ケイ素等が挙げられる。炭素単体としては、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等が挙げられる。金属硫化物としては、硫化銅、硫化スズ等が挙げられる。このような無機粒子は、耐熱性、耐光性において優れており、また熱伝導性が比較的高い。ナノ粒子は、なかでも、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含んでいてよい。
【0026】
ナノ粒子の表面には、表面処理が施されている。これにより、ナノ粒子の凝集が抑制され、言い換えればナノ粒子の分散性が高められ、波長変換部材の基体上面への濡れ広がりを抑えやすい。表面処理されたナノ粒子は、例えば所定の平均粒径を有するナノ粒子と表面処理剤とを接触させることで得ることができる。表面処理剤としては例えば、長鎖脂肪族アミン及びその誘導体、長鎖脂肪族カルボン酸及びその誘導体、シランカップリング剤、シロキサン化合物、シラザン化合物、チタネート化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、リン酸エステル化合物及びその誘導体等が挙げられる。なかでも表面処理剤は、長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪族カルボン酸及びシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0027】
長鎖脂肪族アミンとしては、炭素数10から22、好ましくは11から20の脂肪族基を少なくとも1つ有するアミン化合物が挙げられる。また、長鎖脂肪族カルボン酸としては、炭素数10から23、好ましくは11から20の脂肪族基を少なくとも1つ有するカルボン酸化合物が挙げられる。長鎖脂肪族アミン及び長鎖脂肪族カルボン酸を構成する脂肪族基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また脂肪族基は、飽和脂肪族基であっても不飽和脂肪族基であってもよい。
【0028】
長鎖脂肪族アミンとして具体的には、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン、オレイルアミン、リシノレイルアミン、リノレイルアミン、リノレニルアミン等が挙げられる。また、長鎖脂肪族カルボン酸として具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸、エライジン酸等)、オクタデカジエン酸(リノール酸等)、オクタデカトリエン酸(リノレン酸等)、エイコセン酸、エイコサテトラエン酸(アラキドン酸)、ドコセン酸(エルカ酸、ブラシジン酸)、イソステアリン酸、ヘキシルデカン酸、ヘキシルウンデカン酸、オクチルデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。
【0029】
シランカップリング剤は例えば、ナノ粒子と結合する官能基及び樹脂成分と結合する官能基を有する化合物であってよい。ナノ粒子と結合する官能基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の炭素数が1から6のアルコキシ基を有するトリアルコキシシリル基を挙げることができる。また樹脂成分と結合する官能基としては、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、アミノフェニル基等を挙げることができる。
【0030】
シランカップリング剤として具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
シロキサン化合物としては、アミノ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有するシロキサン化合物、シラノール基、アルコキシ基及びシリル基(ハイドロジェンシリル基)から選ばれる少なくとも1つを有するシロキサン化合物、シラノール基、アルコキシ基及びシリル基(ハイドロジェンシリル基)から選ばれる少なくとも1つとビニルシリル基とを有するシロキサン化合物、モノグリシジルエーテル末端シロキサン化合物、モノヒドロキシエーテル末端シロキサン化合物等が挙げられる。
【0032】
表面処理されたナノ粒子は、無機粒子と、無機粒子の表面に配置される表面処理剤に由来する官能基と、を有するものであってよい。表面処理剤に由来する官能基は、表面処理剤が無機粒子の表面に配位して形成される官能基であってよく、表面処理剤から水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基等の少なくとも1つが除去されて無機粒子の表面と化学結合して形成される官能基であってもよい。
【0033】
波長変換部材における表面処理されたナノ粒子の含有量は、例えば樹脂硬化物の100質量部に対して、6質量部以上15質量部以下であってよい。また好ましくは6.5質量部以上、7質量部以上、8質量部以上、または9質量部以上であってよく、また好ましくは14質量部以下、12質量部以下、又は11質量部以下であってよい。波長変換部材におけるナノ粒子の含有量が前記範囲内であると、蛍光体を波長変換部材中により分散させて分布させることができ、発光装置における色ムラの発生を低減することができる。これは例えば、ナノ粒子が蛍光体に付着することで、波長変換部材における蛍光体の凝集が抑制されるためと考えることができる。
【0034】
表面処理されたナノ粒子は、波長変換部材中に分散した状態で含まれていてよい。ここで分散した状態とは、波長変換部材の任意の断面において、単位面積当たりのナノ粒子の総断面積の変動係数が、20以下、好ましくは10以下であることを意味する。
【0035】
波長変換部材は、蛍光体の少なくとも1種を含む。蛍光体は少なくともフッ化物蛍光体の少なくとも1種を含んでいてよい。フッ化物蛍光体は赤色領域に発光ピーク波長を有していてよい。赤色領域に発光ピーク波長を有する蛍光体として、フッ化物蛍光体の他にCASN蛍光体、SCASN蛍光体、CESN蛍光体のような窒化物蛍光体等がある。フッ化物蛍光体は、窒化物蛍光体に比べて半値全幅が狭い。フッ化物蛍光体は、励起光である発光素子からの所定の波長における光吸収の割合がCASN蛍光体に比べて低いため、フッ化物蛍光体から出射される光量が少なくなる。ここで波長変換部材がナノ粒子を含んでいると、発光素子から出射された光がナノ粒子によって反射され、再びフッ化物蛍光体に照射される。これによりフッ化物蛍光体から出射される光量を多くすることができる。その結果、安価なナノ粒子を使用することにより高価なフッ化物蛍光体の使用量を減らすことができる。
【0036】
フッ化物蛍光体は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、マンガン(Mn)と、フッ素原子(F)と、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有していてよい。
【0037】
フッ化物蛍光体は、少なくともMnで賦活される蛍光性物質を含んでいればよく、Mnで賦活される蛍光性物質のみからなるものであってよい。フッ化物蛍光体の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が、好ましくは0.01以上0.12以下であってよい。またフッ化物蛍光体の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、元素Mのモル数が、好ましくは0.88以上0.99以下であってよい。フッ化物蛍光体の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Fのモル数が、好ましくは5.9以上6.1以下であってよい。フッ化物蛍光体の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析によって測定することができる。
【0038】
フッ化物蛍光体の組成におけるアルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。またアルカリ金属は、少なくともカリウム(K)を含み、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するKのモル数の比は、例えば0.90以上であってよく、好ましくは0.95以上、又は0.97以上である。Kのモル数の比の上限は、例えば1又は0.995以下であってよい。フッ化物蛍光体の組成においては、アルカリ金属の一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。アルカリ金属の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0039】
フッ化物蛍光体の組成における元素Mは、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む。第4族元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第13族元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第14族元素としては、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。元素Mは、少なくとも第14族元素の少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含んでいてよく、より好ましくは少なくともSiを含んでいてよい。また、元素Mは、少なくとも第13族元素の少なくとも1種と第14族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは少なくともAlとSi及びGeの少なくとも一方とを含んでいてよく、より好ましくは少なくともAlとSiとを含んでいてよい。
【0040】
フッ化物蛍光体の組成の一態様である第1組成は、元素Mとして第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくはSi及びGeの少なくとも一方を含んでいてよく、さらに好ましくは少なくともSiを含んでいてよい。また、フッ化物蛍光体の第1組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。
【0041】
フッ化物蛍光体の第1組成は、下記式(1a)で表される組成であってもよい。
A1
c[M1
1-bMnbFd] (1a)
【0042】
式(1a)中、A1は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。M1は、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M1
1-bMnbFd]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。
【0043】
式(1a)におけるA1は、少なくともKを含み、Li、Na、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。また、A1はその一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。A1の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるA1の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0044】
式(1a)におけるbは、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。cは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.9以上2.1以下、又は1.95以上2.05以下であってよい。dは好ましくは5.5以上6.5以下、5.9以上6.1以下、5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下であってよい。
【0045】
フッ化物蛍光体の組成の一態様である第2組成は、元素Mとして第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、より好ましくは少なくともSi及びAlを含んでいてよい。また、フッ化物蛍光体の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとAlとMnの総モル数が、0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。さらにフッ化物蛍光体の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、Alのモル数が0を超えて0.1以下であってよく、好ましくは0を超えて0.03以下、0.002以上0.02以下、又は0.003以上0.015以下であってよい。
【0046】
フッ化物蛍光体の第2組成は、下記式(1b)で表される組成であってもよい。
A2
f[M2
1-eMneFg] (1b)
【0047】
式(1b)中、A2は、少なくともKを含み、Li、Na、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。M2は、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M2
1-eMneFg]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。
【0048】
式(1b)におけるA2は、その一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。A2の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるA2の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0049】
式(1b)におけるeは、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。fは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.9以上2.1以下、又は1.95以上2.05以下であってよい。gは好ましくは5.5以上6.5以下、5.9以上6.1以下、5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下であってよい。
【0050】
式(1b)で表される組成を有するフッ化物蛍光体として具体的には、例えば、K2[Si0.946Al0.005Mn0.049F5.995]、K2[Si0.942Al0.008Mn0.050F5.992]、K2[Si0.939Al0.014Mn0.047F5.986]で表される組成を有するフッ化物蛍光体が挙げられる。
【0051】
第2組成を有するフッ化物蛍光体は、その粒子表面に凹凸を有していてもよい。凹凸は点在する凹凸だけでなく、溝を含んでいてもよい。蛍光体表面の状態は、例えば、フッ化物蛍光体からなる粉体の安息角を測定することで評価することができる。第2組成を有するフッ化物蛍光体からなる粉体の安息角は例えば、70°以下であってよく、好ましくは65°以下、又は60°以下であってよい。安息角の下限は例えば30°以上である。安息角は、例えば、注入法によって測定される。
【0052】
フッ化物蛍光体の体積基準のメディアン径は、例えば、輝度の向上の観点から、5μm以上50μm以下であってよく、好ましくは10μm以上、又は20μm以上であってよく、また好ましくは45μm以下、又は40μm以下であってよい。フッ化物蛍光体の体積基準のメディアン径は、体積基準の累積粒度分布における体積累積50%に対応する粒径として算出される。フッ化物蛍光体の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよく、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。具体的には、体積基準の粒度分布において、小径側からの体積累積10%に対応する粒径をD10、体積累積90%に対応する粒径をD90とすると、D10に対するD90の比(D90/D10)が、例えば3.0以下であってよい。
【0053】
フッ化物蛍光体のアスペクト比は、例えば1以上2以下であってよい。フッ化物蛍光体のアスペクト比は、フッ化物蛍光体の長径の短径に対する比として算出される。ここで、フッ化物蛍光体の長径は、走査顕微鏡(SEM)画像において、フッ化物蛍光体の粒子の外縁上の2点間の距離の最大値として測定される。また、短径は、長径に直交する直線の外縁との交点間の距離として測定される。
【0054】
フッ化物蛍光体は、例えば、4価のマンガンイオンで賦活された蛍光体であり、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色発光する。励起光は、主に青色領域の光であってよく、励起光のピーク波長は、例えば、380nm以上485nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば、10nm以下であってよい。
【0055】
フッ化物蛍光体は公知の方法で製造することができる。第1組成を有するフッ化物蛍光体の製造方法については、例えば、特開2015-143318号公報、特開2015-188075号公報等を参照することができる。また第2組成を有するフッ化物蛍光体は、例えば特開2010-254933号公報等に記載の製造方法で製造することができる。
【0056】
蛍光体には、フッ化物蛍光体に加えて公知の材料を適用することができる。波長変換部材中の蛍光体には、酸化物蛍光体、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu3(Al,Ga)5O12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb3(Al,Ga)5O12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(PO4)6Cl2:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、Sr4Al14O25:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、Ca8MgSi4O16Cl2:Eu)、シリケート系蛍光体(例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu)、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する量子ドット(例えば、(Cs,FA,MA)(Pb,Sn)(F,Cl,Br,I)3 ここで、FAとMAは、それぞれホルムアミジニウムとメチルアンモニウムを表す。)、II-VI族量子ドット(例えば、CdSe)、III-V族量子ドット(例えば、InP)、又はカルコパイライト構造を有する量子ドット(例えば、(Ag,Cu)(In,Ga)(S,Se)2)等を用いることができる。酸窒化物系蛍光体の例は、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)3(O,N)4:Eu)、又はαサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)等である。窒化物系蛍光体の例は、LSN系蛍光体(例えば、(La,Y)3Si6N11:Ce)、BSESN系蛍光体(例えば、(Ba,Sr)2Si5N8:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl3N4:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)、SCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)、又はMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)等である。酸化物蛍光体は、例えば、イットリウム(Y)、ルテチウム(Lu)、ガドリニウム(Gd)及びテルビウム(Tb)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第1元素と、アルミニウム(Al)及びガリウム(Ga)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第2元素と、酸素原子(O)と、セリウム(Ce)とを含んでいてよい。酸化物蛍光体の組成は、酸素原子のモル数を12とする場合に、第1元素のモル数が2.8以上3.2以下であり、第2元素のモル数が4.8以上5.2以下であり、セリウムのモル数が0.009以上0.6以下であってよい。好ましくは酸化物蛍光体の組成は、酸素原子のモル数を12とする場合に、第1元素のモル数が2.9以上3.1以下であってよく、第2元素のモル数が4.9以上5.1以下であってよく、セリウムのモル数が0.01以上0.1以下であってよい。
【0057】
酸化物蛍光体は、例えば下記式(2)で表される組成を有していてよい。
(Y,Lu,Gd,Tb)x(Al,Ga)yO12:Cez (2)
【0058】
式(2)中、x、y及びzは、2.8≦x≦3.2、4.8≦y≦5.2、及び0.009≦z≦0.6を満たしていてよく、2.9≦x≦3.1、4.9≦y≦5.1、及び0.010≦z≦0.5を満たしていてよい。
【0059】
酸化物蛍光体は、実質的に下記式(2a)で表される理論組成を有する蛍光体を含んでいてよい。
Y3(Al,Ga)5O12:Ce (2a)
【0060】
酸化物蛍光体は、例えば520nm以上545nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてよい。酸化物蛍光体の発光ピーク波長は、好ましくは530nm以上であってよく、また好ましくは540nm以下であってよい。酸化物蛍光体の発光ピークの半値幅は、例えば90nm以上130nm以下であってよく、好ましくは100nm以上であってよく、また好ましくは120nm以下であってよい。
【0061】
波長変換部材は蛍光体として、フッ化物蛍光体及び酸化物蛍光体に加えて、窒化物蛍光体の少なくとも1種を含んでいてよい。窒化物蛍光体は、カルシウム及びストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む第3元素と、アルミニウムと、ケイ素と、窒素原子と、ユウロピウムと、を含む組成を有していてよい。
【0062】
窒化物蛍光体の組成は、アルミニウムのモル数を1とする場合に、第3元素のモル数が0.7以上1.2以下であり、ケイ素のモル数が0.8以上1.2以下であり、窒素原子のモル数が2.0以上3.2以下であり、ユウロピウムのモル数が0.002以上0.05以下であってよい。窒化物蛍光体の組成は、好ましくはアルミニウムのモル数を1とする場合に、第3元素のモル数が0.9以上1.0以下であり、ケイ素のモル数が0.9以上1.1以下であり、窒素原子のモル数が2.3以上3.0以下であり、ユウロピウムのモル数が0.005以上0.01以下であってよい。
【0063】
窒化物蛍光体は、例えば下記式(3)で表される組成を有していてよい。
CapSrqSisAltNu:Eur (3)
【0064】
式(3)中、p、q、r、s、t及びuは、0<p<1、0≦q<1、0.002≦r≦0.05、0.8≦p+q+r≦1.1、0.8≦s≦1.2、0.8≦t≦1.2、1.8≦s+t≦2.2、及び2.5≦u≦3.2を満たしていてよく、好ましくは0.02≦p≦0.1、0≦q≦0.95、0.005≦r≦0.01、0.9≦p+q+r≦1、0.9≦s≦1.1、0.9≦t≦1.1、1.9≦s+t≦2.1、及び2.7≦u≦3.2を満たしていてよい。
【0065】
窒化物蛍光体は、実質的に下記式(3a)で表される理論組成を有する蛍光体を含んでいてよい。
(Sr,Ca)AlSiN3:Eu (3a)
【0066】
窒化物蛍光体は、605nm以上670nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有していてよい。窒化物蛍光体の発光ピーク波長は、好ましくは610nm以上であってよく、また好ましくは620nm以下であってよい。窒化物蛍光体の発光ピークの半値幅は、例えば70nm以上90nm以下であってよく、好ましくは80nm以下であってよい。
【0067】
波長変換部材における蛍光体の総含有量は、例えば樹脂硬化物の100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であってよく、好ましくは20質量部以上、又は100質量部以下であってよい。
【0068】
波長変換部材におけるフッ化物蛍光体の含有量は、例えば樹脂硬化物の100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であってよい。好ましくはフッ化物蛍光体の含有量は、樹脂硬化物の100質量部に対して20質量部以上、又は30質量部以上であってよく、150質量部以下、又は100質量部以下であってよい。また、波長変換部材におけるフッ化物蛍光体の含有量は、表面処理されたナノ粒子の含有量に対する質量比として、例えば1以上20以下であってよい。フッ化物蛍光体の含有量の表面処理されたナノ粒子の含有量に対する質量比は、好ましくは1.5以上、又は2以上であってよく、また好ましくは15以下、又は10以下であってよい。
【0069】
波長変換部材が酸化物蛍光体を含む場合、酸化物蛍光体の含有量は、例えば樹脂硬化物の100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であってよい。好ましくは酸化物蛍光体の含有量は、樹脂硬化物の100質量部に対して20質量部以上、又は25質量部以上であってよく、150質量部以下、又は100質量部以下であってよい。また波長変換部材における酸化物蛍光体の含有量は、フッ化物蛍光体の含有量に対する質量比として、例えば1以上20以下であってよい。酸化物蛍光体の含有量のフッ化物蛍光体の含有量に対する質量比は、好ましくは1以上、又は3以上であってよく、また好ましくは12以下、又は10以下であってよい。
【0070】
波長変換部材が窒化物蛍光体を含む場合、窒化物蛍光体の含有量は、例えば樹脂硬化物の100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であってよい。好ましくは窒化物蛍光体の含有量は、樹脂硬化物の100質量部に対して20質量部以上、又は30質量部以上であってよく、130質量部以下、又は100質量部以下であってよい。また波長変換部材における窒化物蛍光体の含有量は、フッ化物蛍光体の含有量に対する質量比として、例えば1以上20以下であってよい。窒化物蛍光体の含有量のフッ化物蛍光体の含有量に対する質量比は、好ましくは1.5以上、又は2以上であってよく、また好ましくは15以下、又は10以下であってよい。
【0071】
波長変換部材は、発光素子の側方における凹部の高さ方向に平行な断面において、底部から波長変換部材の高さの1/2の位置までの第1領域と、波長変換部材の高さの1/2の位置から波長変換部材の上面までの第2領域と、を有している。ここで発光素子の側方における断面とは、断面中に発光素子の側面及び断面が含まれないことを意味する。すなわち、断面は基体の底部において発光素子が占める領域を通過しない直線上に配置される。
【0072】
波長変換部材は、第1領域における蛍光体の含有量S1に対する第2領域における蛍光体の含有量S2の比(S2/S1)が1未満であってよい。比(S2/S1)は、好ましくは0.9以下、又は0.8以下であってよい。また比(S2/S1)は0以上であってよい。ここで、第1領域における蛍光体の含有量S1は、第1領域の総面積に対する蛍光体の断面の面積の総計であり、第2領域における蛍光体の含有量S2は、第2領域の総面積に対する蛍光体の断面の面積の総計である。
【0073】
発光素子に近い領域における蛍光体の含有量が大きくなるように、波長変換部材が構成されることで、発光素子による蛍光体の励起効率がより向上する傾向がある。
【0074】
第1領域における蛍光体の含有量に対する第2領域における蛍光体の含有量の比が1未満である波長変換部材を備える発光装置は、例えば以下のような製造方法により製造することができる。
【0075】
発光装置の製造方法
未硬化の樹脂と蛍光体と表面処理されたナノ粒子とを含む樹脂組成物を準備する準備工程と、底部に発光素子が載置された基体の凹部に準備した樹脂組成物を付与する付与工程と、樹脂組成物が付与された基体に対して底部に直交する方向に底部に向けて加速度を付与して蛍光体の少なくとも一部を凹部の底部側に沈降させる沈降工程と、樹脂を硬化させて樹脂硬化物と蛍光体と表面処理されたナノ粒子とを含む波長変換部材を形成する硬化工程と、を含む製造方法で製造することができる。
【0076】
準備工程では、未硬化の樹脂と蛍光体と表面処理されたナノ粒子とを含む樹脂組成物を準備する。蛍光体は少なくともフッ化物蛍光体の少なくとも1種を含んでいてよい。フッ化物蛍光体の詳細は既述の通りである。樹脂組成物に含まれる蛍光体は、フッ化物蛍光体に加えて上述した酸化物蛍光体を含んでいてもよく、さらに上述した窒化物蛍光体を含んでいてもよい。樹脂組成物における蛍光体の総含有量は、未硬化の樹脂の100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であってよい。
【0077】
樹脂組成物に含まれる表面処理されたナノ粒子の詳細は既述の通りである。樹脂組成物における表面処理されたナノ粒子の含有量は、例えば未硬化の樹脂の100質量部に対して、6質量部以上15質量部以下であってよく、好ましくは6.5質量部以上、又は7質量部以上であってよく、また好ましくは12質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
【0078】
樹脂組成物は、未硬化の樹脂と蛍光体と表面処理されたナノ粒子とを混合することで調製することができる。混合方法は、通常用いられる混合方法から選択してよく、例えば遠心撹拌機等を用いる混合方法が挙げられる。混合の温度は、例えば20℃以上50℃以下であってよい。
【0079】
付与工程では、底部に発光素子が載置された基体の凹部に準備した樹脂組成物を付与する。基体は、凹部を画定する底部と側壁を有している。基体の底部に載置される発光素子は、発光素子の一対の正負の電極は、基体を構成する導電部材にそれぞれ電気的に接続されていてよい。樹脂組成物は、例えばディスペンサを用いて基体の凹部に付与される。
【0080】
沈降工程では、樹脂組成物が付与された基体に対して底部に直交する方向に底部に向けて加速度を付与して、樹脂組成物に含まれる蛍光体の少なくとも一部を凹部の底部側の領域に沈降させる。加速度の付与方法は、例えば樹脂組成物が付与された基体に対して遠心力を作用させる方法であってよい。加速度の付与は、遠心力と重力との合力の方向を、発光素子を配置する基体の底部に垂直な方向と一致させ、基体の底部に向かう向きに作用させることにより行う。加速度の付与は、形成される波長変換部材における第1領域における蛍光体の含有量S1に対する第2領域における蛍光体の含有量S2の比(S2/S1)が1未満となるように実施する。
【0081】
硬化工程では、未硬化の樹脂を硬化させて樹脂硬化物と蛍光体と表面処理されたナノ粒子とを含む波長変換部材を形成する。樹脂の硬化方法は、樹脂の種類に応じた硬化方法を適宜選択すればよい。例えば、樹脂が熱硬化性である場合、樹脂組成物が付与された基体を熱処理することで未硬化の樹脂を硬化させることができる。
【0082】
本開示に係る発明は、例えば以下の態様を包含していてよい。
[1]凹部を画定する底部と側壁を有する基体と、前記基体の前記底部に配置される発光素子と、前記発光素子を被覆して前記凹部に配置される波長変換部材と、を備え、前記波長変換部材は、樹脂硬化物と、表面処理されたナノ粒子と、蛍光体と、を含み、前記表面処理されたナノ粒子は、体積平均粒径が5nm以上40nm以下であり、前記波長変換部材は、前記表面処理されたナノ粒子の含有量が、前記樹脂硬化物の100質量部に対して6質量部以上15質量部以下であり、前記波長変換部材は、前記発光素子の側方における前記凹部の高さ方向に平行な断面において、前記底部から前記波長変換部材の高さの1/2の位置までの第1領域と、前記波長変換部材の高さの1/2の位置から波長変換部材の上面までの第2領域と、を有し、前記第1領域における前記蛍光体の含有量に対する前記第2領域における前記蛍光体の含有量の比が1未満であり、前記表面処理されたナノ粒子が、前記波長変換部材中に分散している発光装置。
【0083】
[2]前記波長変換部材は、前記樹脂硬化物の100質量部に対して、前記蛍光体を10質量部以上200質量部以下で含む[1]に記載の発光装置。
【0084】
[3]前記蛍光体は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、マンガン(Mn)と、フッ素原子(F)と、を含み、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有するフッ化物蛍光体の少なくとも1種を含む[1]又は[2]に記載の発光装置。
【0085】
[4]前記フッ化物蛍光体は、体積平均粒径が5μm以上50μm以下であり、アスペクト比が1以上2以下である[3]に記載の発光装置。
【0086】
[5]前記蛍光体は、イットリウム(Y)、ルテチウム(Lu)、ガドリニウム(Gd)及びテルビウム(Tb)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第1元素と、アルミニウム(Al)及びガリウム(Ga)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第2元素と、酸素原子(O)と、セリウム(Ce)とを含み、酸素原子のモル数を12とする場合に、第1元素のモル数が2.8以上3.2以下であり、第2元素のモル数が4.8以上5.2以下であり、セリウムのモル数が0.009以上0.6以下である組成を有する酸化物蛍光体の少なくとも1種を更に含む[3]又は[4]に記載の発光装置。
【0087】
[6]前記蛍光体は、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1種を含む第3元素と、アルミニウム(Al)と、ケイ素(Si)と、窒素原子(N)と、ユウロピウム(Eu)とを含み、アルミニウムのモル数を1とする場合に、第3元素のモル数が0.7以上1.2以下であり、ケイ素のモル数が0.8以上1.2以下であり、窒素原子のモル数が2.0以上3.2以下であり、ユウロピウムのモル数が0.002以上0.05以下である組成を有する窒化物蛍光体の少なくとも1種を更に含む[3]から[5]のいずれかに記載の発光装置。
【0088】
[7]前記表面処理されたナノ粒子は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子の表面に配置され、長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪族カルボン酸、およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤に由来する官能基と、を含む[1]から[6]のいずれかに記載の発光装置。
【0089】
[8]前記樹脂硬化物は、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、およびハイブリッドシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂の硬化物を含む[1]から[7]のいずれかに記載の発光装置。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例1
発光装置の作製
フェニルシリコーン100質量部に対し、K
2SiF
6:Mnで表される理論組成を有するフッ化物蛍光体を23質量部、シロキサン化合物で表面処理されたナノ粒子を10質量部準備し、混合して参考例1の樹脂組成物を調製した。シロキサン化合物で表面処理されたナノ粒子は、体積平均粒径が13nmの酸化ジルコニウムを使用した。
図1に示すような凹部を有する成形体を準備し、凹部の底面に発光ピーク波長が450nmである半導体発光素子(LED)を配置し、樹脂組成物を発光素子の上に注入、充填し、さらに加熱することで樹脂組成物を硬化させて実施例1の発光装置を作製した。
【0092】
得られた発光装置について、分光測光装置と積分球を組み合わせた光計測装置を用い、
色度座標を測定したところ、CIE1931表色系における色度座標について、xが0.25付近、yが0.08付近であった。
【0093】
参考例1および2
CIE1931表色系における色度座標について、xが0.25付近、yが0.08付近となるように、フッ化物蛍光体とナノ粒子の使用量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、それぞれ樹脂組成物を調製し、それを用いて発光装置を作製した。
【0094】
比較例1
ナノ粒子を用いずに、CIE1931表色系における色度座標について、xが0.25付近、yが0.08付近となるように、フッ化物蛍光体の使用量を表1に示すように変更したこと以外は参考例1と同様にして樹脂組成物を調製し、それを用いて発光装置を作製した。
【0095】
【0096】
樹脂組成物の評価
上記で調製した樹脂組成物について、樹脂組成物の調製直後に、E型粘度計(東機産業(株)製)を用い、25℃で粘度測定を行った。結果を、比較例1の粘度を基準(100%)にした相対粘度(%)として表1に示す。
【0097】
発光装置について、表面処理されたナノ粒子の添加量を増やすことで、同一の色度座標を得るために要するフッ化物蛍光体の使用量を低減できる。これは例えば、ナノ粒子の含有量を多くすると、フッ化物蛍光体に照射される光量が増えるためと考えることができる。また、表面処理されたナノ粒子の添加量を増やすことで、樹脂組成物の粘度を低下させることができた。樹脂組成物の粘度を低下させることでフッ化物蛍光体の沈降をより速やかに行うことができ、複数の発光装置どうしの色バラツキを低減することができる。