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特開2024-31641アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出する方法およびそのための装置、ならびに排ガスから二酸化炭素を回収する方法およびそのためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031641
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出する方法およびそのための装置、ならびに排ガスから二酸化炭素を回収する方法およびそのためのシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/44 20060101AFI20240229BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240229BHJP
   B01J 31/10 20060101ALI20240229BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240229BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240229BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20240229BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01D61/44 500
C01B32/50 ZAB
B01J31/10 M
C25B9/23
C25B9/00 G
C25B3/26
B01D61/46 510
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135312
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】松島 永佳
(72)【発明者】
【氏名】名合 虎之介
(72)【発明者】
【氏名】金澤 颯大
【テーマコード(参考)】
4D002
4D006
4G146
4G169
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA12
4D002EA07
4D002FA01
4D006GA17
4D006HA41
4D006JA42C
4D006JA56Z
4D006KA17
4D006MA03
4D006MA13
4D006PB07
4D006PB64
4D006PC80
4G146JA02
4G146JB06
4G146JC29
4G146JC34
4G169AA03
4G169BA08
4G169BA24
4G169BA43
4G169BC17
4G169BC31
4G169BC32
4G169BC33
4G169BC54
4G169BC59
4G169BC60
4G169BC62
4G169BC66
4G169BC67
4G169BC68
4G169BC70
4G169BC71
4G169BC72
4G169BC73
4G169BC74
4G169BC75
4G169CB81
4K021AA09
4K021BA06
4K021BB01
4K021BB03
4K021DB43
(57)【要約】
【課題】アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出する方法であって、酸素の気泡の生成を抑制できる方法を提供する。
【解決手段】アノード電極と、カソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配置された陽イオン交換膜と、を用意する工程と、二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液を、前記アノード電極と前記陽イオン交換膜との間に充填する工程と、第2アルカリ液を、前記陽イオン交換膜と前記カソード電極との間に充填する工程と、前記アノード電極に水素を供給する工程と、前記アノード電極と前記カソード電極の間に電圧を印加する工程と、を含み、前記アノード電極は、前記陽イオン交換膜側から、触媒層と、第1ガス拡散層と、をこの順に含む、前記第1アルカリ液に溶解した前記二酸化炭素を放出する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極と、カソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配置された陽イオン交換膜と、を用意する工程と、
二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液を、前記アノード電極と前記陽イオン交換膜との間に充填する工程と、
第2アルカリ液を、前記陽イオン交換膜と前記カソード電極との間に充填する工程と、
前記アノード電極に水素を供給する工程と、
前記アノード電極と前記カソード電極の間に電圧を印加する工程と、
を含み、
前記アノード電極は、前記陽イオン交換膜側から、触媒層と、第1ガス拡散層と、をこの順に含む、前記第1アルカリ液に溶解した前記二酸化炭素を放出する方法。
【請求項2】
前記カソード電極は、前記アノード電極側とは反対側に第2ガス拡散層を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アノード電極は、前記陽イオン交換膜側から、プロトン交換膜と、前記触媒層と、前記第1ガス拡散層と、をこの順に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
排ガス中の二酸化炭素を第1アルカリ液に溶解させる工程と、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法により、前記第1アルカリ液に溶解した前記二酸化炭素を放出する工程と、を含む、排ガスから二酸化炭素を回収する方法。
【請求項5】
アノード電極と、カソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配置された陽イオン交換膜と、前記アノード電極と前記カソード電極の間に電圧を印加可能な電源と、を含み、前記アノード電極は前記陽イオン交換膜側から、触媒層と、第1ガス拡散層と、をこの順に含み、
二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液を、前記アノード電極と前記陽イオン交換膜との間に充填できるように構成されており、
第2アルカリ液を前記陽イオン交換膜と前記カソード電極との間に充填できるように構成されており、
前記アノード電極に水素を供給できるように構成されている、前記第1アルカリ液に溶解した前記二酸化炭素を放出するための装置。
【請求項6】
前記カソード電極は、前記アノード電極側とは反対側に第2ガス拡散層を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記アノード電極は、前記陽イオン交換膜側から、プロトン交換膜と、前記触媒層と、前記第1ガス拡散層と、をこの順に含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
排ガス中の二酸化炭素を第1アルカリ液に溶解できるように構成されている二酸化炭素溶解部と、
請求項5~7のいずれか一項に記載の装置と、を含み、
前記装置における前記二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液は、前記二酸化炭素溶解部から供給できるように構成されている、排ガスから二酸化炭素を回収するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出する方法およびそのための装置、ならびに排ガスから二酸化炭素を回収する方法およびそのためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業界は、製鉄工程で排出する二酸化炭素について2050年に実質ゼロを目標に掲げる。そのため、排ガスから二酸化炭素を高効率に回収可能な技術が必要不可欠である。当該技術としては、アミン吸収液を用いた化学吸収法が最も有力とされ、発電所等への実証研究が為されている。この方法では、排ガスから溶媒へ二酸化炭素を選択的に溶解させ、例えば回収塔にて、溶媒を加熱することにより二酸化炭素を放出可能である(放出された二酸化炭素は、例えば別途貯蓄および有効利用等可能である)。しかし、当該回収塔では多量の熱エネルギーが必要であり、さらに塔内部の材料は高温且つ強アルカリ性のアミン蒸気に暴露されるため、その材料の腐食が大きな問題となる。
【0003】
化学吸収法を代替するものとして、非特許文献1に記載されているような電気エネルギーを使った電気透析法が検討されている。この方法では、アルカリ液に溶解した二酸化炭素を電気化学的に放出でき、例えば使用設備が高温且つ強アルカリ性の蒸気に暴露されることはない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】谷口育雄、「電気透析技術を用いた革新的省エネルギーCO2分離回収法」、日本海水学会誌、2015年、第69巻、第6号、p.363-372
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが検討したところ、非特許文献1に開示されるような従来の電気透析法では、アノード電極側において、下記式(1)で示される水電解反応にて水素イオンが生じることがわかった。

O→2H+1/2O+2e ・・・(1)

また、この式(1)の反応で生じる酸素の気泡により、電気抵抗が高くなり消費電力が大幅に増加することに加え、物理的な電極破壊も生じ得ることがわかった。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出する方法であって、酸素の気泡の生成を抑制できる方法、およびそのための装置、ならびに排ガスから二酸化炭素を回収する方法およびそのためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、
アノード電極と、カソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配置された陽イオン交換膜と、を用意する工程と、
二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液を、前記アノード電極と前記陽イオン交換膜との間に充填する工程と、
第2アルカリ液を、前記陽イオン交換膜と前記カソード電極との間に充填する工程と、
前記アノード電極に水素を供給する工程と、
前記アノード電極と前記カソード電極の間に電圧を印加する工程と、
を含み、
前記アノード電極は、前記陽イオン交換膜側から、触媒層と、第1ガス拡散層と、をこの順に含む、前記第1アルカリ液に溶解した前記二酸化炭素を放出する方法である。
【0008】
本発明の態様2は、
前記カソード電極は、前記アノード電極側とは反対側に第2ガス拡散層を有する、態様1に記載の方法である。
【0009】
本発明の態様3は、
前記アノード電極は、前記陽イオン交換膜側から、プロトン交換膜と、前記触媒層と、前記第1ガス拡散層と、をこの順に含む、態様1または2に記載の方法である。
【0010】
本発明の態様4は、
排ガス中の二酸化炭素を第1アルカリ液に溶解させる工程と、
態様1~3のいずれか1つに記載の方法により、前記第1アルカリ液に溶解した前記二酸化炭素を放出する工程と、を含む、排ガスから二酸化炭素を回収する方法である。
【0011】
本発明の態様5は、
アノード電極と、カソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配置された陽イオン交換膜と、前記アノード電極と前記カソード電極の間に電圧を印加可能な電源と、を含み、前記アノード電極は前記陽イオン交換膜側から、触媒層と、第1ガス拡散層と、をこの順に含み、
二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液を、前記アノード電極と前記陽イオン交換膜との間に充填できるように構成されており、
第2アルカリ液を前記陽イオン交換膜と前記カソード電極との間に充填できるように構成されており、
前記アノード電極に水素を供給できるように構成されている、前記第1アルカリ液に溶解した前記二酸化炭素を放出するための装置である。
【0012】
本発明の態様6は、
前記カソード電極は、前記アノード電極側とは反対側に第2ガス拡散層を有する、態様5に記載の装置である。
【0013】
本発明の態様7は、
前記アノード電極は、前記陽イオン交換膜側から、プロトン交換膜と、前記触媒層と、前記第1ガス拡散層と、をこの順に含む、態様5または6に記載の装置である。
【0014】
本発明の態様8は、
排ガス中の二酸化炭素を第1アルカリ液に溶解できるように構成されている二酸化炭素溶解部と、
態様5~7のいずれか1つに記載の装置と、を含み、
前記装置における前記二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液は、前記二酸化炭素溶解部から供給できるように構成されている、排ガスから二酸化炭素を回収するためのシステムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出する方法であって、酸素の気泡の生成を抑制できる方法、およびそのための装置、ならびに排ガスから二酸化炭素を回収する方法およびそのためのシステムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る、アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出するための装置1(模式図)の一例である。
図2】本発明に実施形態に係る、アルカリ液に溶解した二酸化炭素を放出する方法の一例における、電圧印加時の電圧と電流の関係を示す。
図3】本発明の実施形態に係る、排ガスから二酸化炭素を回収するためのシステム10(模式図)の一例である。
図4】本発明の実施形態に係る、排ガスから二酸化炭素を回収する方法の一例のフローチャートである。
図5】実施例における、電圧印加時間と、検出された二酸化炭素の割合の関係を示すグラフである。
図6】実施例における、水素供給量を変化させたときの、印加電圧と電流の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、アルカリ液に溶解した二酸化炭素(CO)を放出する方法であって、酸素の気泡の生成を抑制できる方法を実現するべく、様々な角度から検討した。
非特許文献1では、下記式(2)の反応によって二酸化炭素が放出されることを開示している。

2K+2HCO3- → CO+KCO+HO ・・・(2)
【0018】
本発明者らは、電気透析法における二酸化炭素の放出は、下記式(3)の反応によるものと考えた。

CO 2-+2H → HO+CO ・・・(3)
【0019】
さらに、本発明者らは、非特許文献1に開示されるような従来技術では、式(3)の左辺の水素イオンを、上記式(1)で示される、(酸素発生を伴う)水電解により発生させていることを見出した。
そこで、本発明者らは、アノード電極(例えばアノード電極の第1ガス拡散層)に水素を供給するとともに、アノード電極側における下記式(4)で示す反応により水素イオンを得ることを考えた。

→2H+2e ・・・(4)
【0020】
式(4)の反応により二酸化炭素の放出に必要な水素イオンを得ることで、上記式(1)で示される、(酸素発生を伴う)水電解により水素イオンを得る必要がなくなり、酸素の気泡の生成を抑制できる二酸化炭素の放出方法を実現できた。
なお、上記メカニズムは、本発明の実施形態の技術的範囲を制限するものではない。
【0021】
以下に、本発明の実施形態が規定する各要件の詳細を示す。
【0022】
図1に、本発明の実施形態に係るアルカリ液に溶解した二酸化炭素(CO)を放出するための装置1(以下、「二酸化炭素放出装置1」とも称する)の一例を示す。図1に示すように、二酸化炭素放出装置1は、アノード電極2と、カソード電極3と、アノード電極2とカソード電極3との間に配置された陽イオン交換膜4と、アノード電極2およびカソード電極3の間に電圧を印加可能な電源5と、を含み、アノード電極2は、陽イオン交換膜4側から、第1触媒層2bと、第1ガス拡散層2aと、をこの順に含む。さらに二酸化炭素放出装置1は、二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液6を、アノード電極2と陽イオン交換膜4との間に充填できるように構成されており、第2アルカリ液7を陽イオン交換膜4とカソード電極3との間に充填できるように構成されており、例えば水素供給部(図示せず)により、アノード電極2(例えばアノード電極2の第1ガス拡散層2a)に水素8aを供給できるように構成されている。
【0023】
装置1により、本発明の実施形態に係るアルカリ液中に溶解した二酸化炭素を放出する方法を実施できる。当該方法は、(a)アノード電極2と、カソード電極3と、アノード電極2とカソード電極3との間に配置された陽イオン交換膜4と、を用意する工程と、(b)二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液6を、アノード電極2と陽イオン交換膜4との間に充填する工程と、(c)第2アルカリ液7を、陽イオン交換膜4とカソード電極3との間に充填する工程と、(d)アノード電極2に水素8aを供給する工程と、(e)アノード電極2およびカソード電極3の間に電圧を印加する工程と、を含み、さらにアノード電極2は、陽イオン交換膜4側から、第1触媒層2bと、第1ガス拡散層2aと、をこの順に含む。これにより、酸素の気泡の生成を抑制できる。以下各工程について詳述する。
【0024】
<(a)アノード電極2と、カソード電極3と、アノード電極2とカソード電極3との間に配置された陽イオン交換膜4と、を用意する工程>
アノード電極2は、陽イオン交換膜4側から、第1触媒層2bと、第1ガス拡散層2aと、をこの順に含む。第1ガス拡散層2aと第1触媒層2bは、例えばそれらの間に別の層を有する等により接触していなくてもよいが、接触している方が、上記式(4)の反応を促進する第1触媒層2bに水素8aを到達させやすくなり好ましい。
【0025】
第1ガス拡散層2aは、導電性を有し、且つ第1触媒層2bに水素8aを効率よく拡散させ得る層である。第1ガス拡散層2aは、例えば燃料電池に使用される公知のガス拡散層で構成できる。例えば、第1ガス拡散層2aを構成する材料としては、導電性多孔質膜が好ましく、例えばカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルトのような導電性炭素多孔質体又は金属多孔質体であり得る。第1ガス拡散層2aは、撥水性が付与されていてもよい。撥水処理は、例えば、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン)を用いて行うことができる。
【0026】
第1触媒層2bは、上記式(4)の反応を促進する層である。第1触媒層2bは、例えば燃料電池に使用される公知の触媒層で構成できる。例えば、第1触媒層2bを構成する触媒としては、金、銀、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムの貴金属触媒を用いることができる。また、当該触媒として、鉄、コバルト、ニッケル、チタン、マンガン、銅、アルミニウム、クロム、バナジウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、鉛もしくはそれらの金属の合金、またはそれらの金属もしくは合金の酸化物、などの非貴金属触媒も使用できる。
【0027】
第1触媒層2bを構成する触媒は、そのまま単独で使用してもよいが、導電性担体に担持させて用いることが好ましい。導電性担体としては、アセチレンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤなどのような導電性炭素粒子であり得る。
【0028】
第1触媒層2bはさらに、触媒(および導電性担体)のバインダであるとともに、プロトン伝導パスとしても機能し得るアイオノマーを含み得る。アイオノマーとしては、Du Pont社製のNafion(登録商標)等のパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂を用いることができる。
【0029】
第1触媒層2b中の触媒および導電性担体の比率としては、10~90質量%であることが好ましく、より好ましくは、30~70質量%である。触媒の担持量としては、0.1mg/cm以上であることが好ましい。上限値は特に制限されないが、2.0mg/cm以下であり得る。
【0030】
アノード電極2は、さらに第1触媒層2b側にプロトン交換膜2cを含んでもよい。すなわち、アノード電極2は、陽イオン交換膜4側から、プロトン交換膜2cと、第1触媒層2bと、第1拡散層2aとをこの順に含み得る。プロトン交換膜2cを介して第1触媒層2bと第1アルカリ液6が接することにより、例えば第1触媒層2bで発生した水素イオンを、第1触媒層2bからより離れた位置で炭酸イオンと反応させて、二酸化炭素を放出させることができる。プロトン交換膜2cとしては、公知のものを使用でき、例えば、Du Pont社製のNafion(登録商標)等のパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂を用いることができる。
【0031】
カソード電極3は、公知の電極を用いて構成できる。カソード電極3では、上記式(4)のアノード電極2側の反応とは逆の、下記式(5)で示される反応が起こり得る。

2H+2e→H ・・・(5)

ここで、カソード電極3では、アノード電極2側とは反対側に第2ガス拡散層3aを有することが好ましい。これにより式(5)で発生する水素8bをアルカリ液7中の気泡として発生させずに、装置1の外側に放出させることが可能となる。カソード電極3は、燃料電池に使用される公知のカソード電極で構成してもよい。具体的には、カソード電極3は、アノード電極2側から、第2触媒層3bおよび第2のガス拡散層3aをこの順に有していてもよく、第2触媒層3bおよび第2ガス拡散層3aは接していなくてもよいが、接している方が好ましい。第2触媒層3bおよび第2ガス拡散層3aは、それぞれ、上述したアノード電極2の第1触媒層2bおよび第1ガス拡散層2aと同様のものを用いることができる。第2触媒層3bおよび第2ガス拡散層3aは、それぞれ、アノード電極2の第1触媒層2bおよび第1ガス拡散層2aと全く同じものを用いても、異なるものを用いてもよい。
【0032】
陽イオン交換膜4は、アノード電極2とカソード電極3との間に配置される。陽イオン交換膜4は、第1アルカリ液6中の過剰な陽イオン6dを第2アルカリ液7中に移動させることが可能である。陽イオン交換膜4としては、公知の材料で構成してよく、例えば公知の樹脂に、アニオン性官能基として、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などを導入したものなどを用いることができる。市販品であれば、Du Pont社製のNafion(登録商標)、アストム社製のネオセプタ(登録商標)等を用いることができる。
【0033】
アノード電極2と、カソード電極3と、アノード電極2とカソード電極3との間に配置された陽イオン交換膜4と、を用意する手段としては、特に制限されず、例えばそれらを購入すること等により用意してもよいし、それらを作製すること等により用意してもよい。
【0034】
<(b)二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液6を、アノード電極2と陽イオン交換膜4との間に充填する工程>
後述する工程(e)において、アノード電極2側で上記式(3)の反応を可能にするように、二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液6を、アノード電極2と陽イオン交換膜4との間に充填する。なお、第1アルカリ液6中に溶解した二酸化炭素は、液中において炭酸イオン(CO 2-)を形成し得る。
二酸化炭素溶解前の第1アルカリ液6としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物(MOH:Mはアルカリ金属)の水溶液であり得、NaOHまたはKOHの水溶液などであり得る。第1アルカリ液6の溶質(例えばMOH)の濃度は、特に制限されないが、例えば0.1~10mol/Lであり得る。例えば溶質がMOHの場合、二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液6は、MHCO及び/又はMCOの水溶液であり得る。
【0035】
<(c)第2アルカリ液7を、陽イオン交換膜4とカソード電極3との間に充填する工程>
後述する工程(e)において、第1アルカリ液6中の過剰な陽イオン6dを、陽イオン交換膜4を介して第2アルカリ液7に移動させるように、第2アルカリ液7を、陽イオン交換膜4とカソード電極3との間に充填する。第2アルカリ液7としては、特に限定されるものではないが、第1アルカリ液6と同様に、例えば、アルカリ金属の水酸化物(MOH、Mはアルカリ金属)の水溶液であり得、NaOHまたはKOHの水溶液などであり得る。第2アルカリ液7の溶質は、第1アルカリ液6の溶質と同じでも異なっていてもよいが、同じである方が材料調達及び管理のしやすさ等の観点で好ましい。また、第2アルカリ液7の溶質(例えばMOH)の濃度は、第1アルカリ液6の溶質の濃度よりも低い方が好ましい。これにより、第1アルカリ液6中の過剰な陽イオン6dの第2アルカリ液7への移動を促進し得る。
第2アルカリ液7中の二酸化炭素濃度(炭酸イオン濃度)は、第1アルカリ液6中の当該濃度よりも低くあり得、例えば、第2アルカリ液7中の当該濃度はほぼ0であり得る。第2アルカリ液7として、例えば、二酸化炭素放出後の第1アルカリ液6を使用してもよい。
【0036】
<(d)アノード電極2に水素8aを供給する工程>
後述する工程(e)において、上記式(4)の反応を可能にするように、アノード電極2(例えば第1ガス拡散層2a)に水素8aを供給する。水素8aの供給量としては、特に制限されないが、0ml/分超、30ml/分以下であり得る。
【0037】
<(e)アノード電極2およびカソード電極3の間に電圧を印加する工程>
電源5により、アノード電極2およびカソード電極3の間に電圧を印加する。一例として、図2に本発明に実施形態に係る二酸化炭素放出方法(後述する実施例の水素8aの供給速度が10mL/分の場合)における、工程(e)中の電圧と電流の関係を示す。
【0038】
図2に示すように、電圧を0Vから上昇させると、電流がほぼ増大しない領域A(図2では電圧0~0.7Vの領域)がある。領域Aは、主に装置1の電極間の電気抵抗の影響により、上記式(4)等の反応が進まない状況を反映している。例えば、アノード電極2およびカソード電極3の間隔を短くする等により、領域Aの電圧幅を小さくし、後述する領域Bが開始する電圧を低くすることが可能である。
【0039】
領域A後、電圧増加に伴って電流が増大する領域B(図2では電圧0.7~1.5Vの領域)が存在する。領域Bは、例えば、電流/電圧の傾きが連続して0.2A/V以上の領域であり得る。領域Bは、上記式(4)の反応およびその後の上記式(3)の反応が進んでいる状況を反映している。
【0040】
領域B後さらに電圧を増加すると、電流が増大せず、ほぼ一定電流値を示す領域C(図2では電圧1.5~2.3Vの領域)が存在する。領域Cは、供給した水素8aの全てが上記式(4)の反応に使用され、反応がそれ以上進まない状況を反映している。ここで、水素8aの供給量を増大させると、領域Bの電圧幅が増大し、領域Cが開始する電圧が高くなり得る。
【0041】
領域C後さらに電圧を増加すると、電流が再び増大し始める領域D(図2では電圧2.3V超の領域)が存在する。領域Dは、例えば、電流/電圧の傾きが連続して0.2A/V以上の領域であり得る。領域Dでは、消費電力が増大することに加え、場合によっては、上記式(1)で示す水電解が起きる可能性がある。そのため、本発明の一実施形態では、この領域Dが開始する電圧(すなわち、電流/電圧の傾きが連続して0.2A/V以上となる領域であって且つ電圧範囲が下から2番目に低い領域、が開始する電圧、図2では、2.3V)未満の電圧をアノード電極2およびカソード電極3の間に印加することが好ましい。なお、二酸化炭素をより放出させる観点では、領域Bの開始電圧以上(図2では、0.7V以上)を印加することが好ましく、消費電力をより低減する観点では、領域Bが終了する(すなわち領域Cが開始する)電圧以下(図2では1.5V以下)の電圧を印加することが好ましい。二酸化炭素放出量と消費電力の観点で、より好ましくは、領域Bが終了する電圧(図2では1.5V)を印加することである。
【0042】
工程(e)において、カソード電極3側では上記式(5)の反応により水素8bが発生し得る。本発明の実施形態に係る二酸化炭素放出方法において、この水素8bを回収して、アノード電極2に供給する水素8aとして利用することが好ましい。
【0043】
本発明の実施形態に係る二酸化炭素放出方法は、その目的が達成される範囲内で、他の工程を含んでいてもよい。また、本発明の実施形態に係る二酸化炭素放出装置1は、その目的が達成される範囲内で、他の構成を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の実施形態に係る排ガスから二酸化炭素を回収する方法は、上述の本発明の実施形態に係るアルカリ液中に溶解した二酸化炭素を放出するための方法を含み、具体的には、排ガスから第1アルカリ液中に二酸化炭素を溶解させる工程と、上述の方法により第1アルカリ液中に溶解した二酸化炭素を放出する工程と、を含む。
以下、当該回収方法について詳述する。
【0045】
図3は、本発明の実施形態に係る排ガスから二酸化炭素を回収するためシステム10(以下、「二酸化炭素回収システム10」とも称する)の一例を示す。図3に示すように、二酸化炭素回収システム10は、二酸化炭素放出装置1と、排ガス11中の二酸化炭素を第1アルカリ液6に溶解できるように構成されている二酸化炭素溶解部12と、を含む(以下、第1アルカリ液6について、二酸化炭素溶解前を「第1アルカリ液6a」とし、二酸化炭素溶解後を「第1アルカリ液6b」とし、二酸化炭素放出後を「第1アルカリ液6c」と称する)。さらに二酸化炭素回収システム10は、二酸化炭素溶解部12で二酸化炭素を溶解した第1アルカリ液6bを、アノード電極2と陽イオン交換膜4との間に供給できるように構成されている。
二酸化炭素回収システム10により、排ガス11中の二酸化炭素をアルカリ液に溶解し、且つ二酸化炭素放出装置1によりその二酸化炭素を放出できるため、排ガスから二酸化炭素を回収することが可能であり、二酸化炭素放出の際に、酸素の気泡の生成を抑制することができる。
【0046】
図3の二酸化炭素回収システム10は、排ガスから二酸化炭素を繰り返し回収することが可能である。以下、二酸化炭素回収システム10についてより詳細に説明する。
二酸化炭素回収システム10は、二酸化炭素放出後の第1アルカリ液6cと、放出した二酸化炭素11aと、を含む気液混合物から、二酸化炭素11aを分離回収する二酸化炭素分離部13と、二酸化炭素放出後の第1アルカリ液6cを、例えば第2アルカリ液の溶質7aを添加することにより、第2アルカリ液7として再生させる、アルカリ液再生部14と、を含む。二酸化炭素回収システム10は、さらにアルカリ液再生部14で再生された第2アルカリ液7を、陽イオン交換膜4とカソード電極3との間に供給できるように構成されており、陽イオン交換膜4とカソード電極3との間に充填された第2アルカリ液7を、例えば適宜溶質(図示せず)等を添加することにより第1アルカリ液6aとして調整した上で、二酸化炭素溶解部12に供給できるように構成されている。
【0047】
図4に、二酸化炭素回収システム10による、排ガスから二酸化炭素を回収する方法の一例のフローチャートを示す。
まずステップS1では、二酸化炭素溶解部12において、排ガス11中の二酸化炭素を第1アルカリ液6aに溶解させる。
【0048】
ステップS2では、二酸化炭素を溶解した第1アルカリ液6bを装置1のアノード電極2と陽イオン交換膜4との間に充填する。
ステップS3では、アルカリ液再生部14から第2アルカリ液7を供給することにより、装置1のカソード電極3と陽イオン交換膜4との間に第2アルカリ液7を充填する。なお、便宜上ステップS3をステップS2の後に記載しているが、ステップS3を、ステップS2の前に行ってもよく、ステップS2と同時に行ってもよい。
【0049】
ステップS4では、例えば装置1の水素8aを供給できるように構成された水素供給部(図示せず)により、水素8aをアノード電極2(例えば第1ガス拡散層2a)に供給する。
【0050】
ステップS5では、アノード電極2およびカソード電極3の間に電圧を印加する。ステップS5において上記式(3)~(5)の反応が生じ得る。また、第1アルカリ液6bの陽イオン6dが陽イオン交換膜4を介して第2アルカリ液7に移動し得る。二酸化炭素回収システム10は、陽イオン6d移動(濃縮)後の第2アルカリ液7を、必要に応じて追加の溶質を添加する等により、第1アルカリ液6aとして調整でき、ステップS1の第1アルカリ液6aとして利用できるように構成されている。また、カソード電極3側では上記式(5)の反応により水素8bが発生し得るが、二酸化炭素回収システム10は、この水素8bを、例えば水素供給部(図示せず)により回収し、ステップS4の水素8aとして利用できるように構成されている。
なお、上述した好ましい印加電圧(例えば、図2で示す領域Dが開始する電圧未満の電圧等)に調整及び維持するには、装置における水素の提供量、電流値、電圧をモニターし、例えば、予め測定した、装置における図2の関係に照らし合わせることにより当該好ましい電圧に維持することができる。
【0051】
ステップS6では、二酸化炭素放出後(および陽イオン6d移動後)の第1アルカリ液6cと、放出した二酸化炭素11aと、を含む気液混合物から、二酸化炭素11aを分離する。これにより、二酸化炭素11aが回収される。ここで、二酸化炭素放出後の第1アルカリ液6cは、炭酸イオン(CO 2-)が二酸化炭素として消費され、陽イオン6dが移動した後であるため、各イオン濃度が低い(例えば水に近い)液であり得る。
【0052】
ステップS7では、アルカリ液再生部14において、第1アルカリ液6cを、適宜第2アルカリ液7の溶質7aを添加することにより、第2アルカリ液7として再生できる。二酸化炭素回収システム10は、この再生された第2アルカリ液7を、ステップS3の第2アルカリ液7として利用できるように構成されている。
【0053】
本発明の実施形態に係る排ガスから二酸化炭素を回収する方法は、その目的が達成される範囲内で、他の工程を含んでいてもよい。また、本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収システム10は、その目的が達成される範囲内で、他の構成を含んでいてもよい。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の実施形態の技術的範囲に包含される。
【0055】
図1に示すような二酸化炭素放出装置1を用いて、二酸化炭素の放出試験を行った。装置1のアノード電極2(第1ガス拡散層2a/第1触媒層2b)、カソード電極3(第2触媒層3b/第2ガス拡散層3a)および陽イオン交換膜4として、固体高分子型燃料電池(PEFC)用のJARI標準セルのアノード電極(ガス拡散層/触媒層)、カソード電極(触媒層/ガス拡散層)および陽イオン交換膜(アストム社製、ネオセプタ(登録商標)CMB)を用いた。さらに、プロトン交換膜2c(Du Pont社製、Nafion(登録商標)NRE212)を、アノード電極2の第1触媒層2b側に配置(圧着)した。アノード電極2と陽イオン交換膜4の間の距離、および陽イオン交換膜4とカソード電極3の間の距離はそれぞれ2mmとした。二酸化炭素が溶解した第1アルカリ液6として、KCO水溶液(1mol/L)を用い、アノード電極2と陽イオン交換膜4の間に充填した。第2アルカリ液7として、KOH水溶液(0.1mol/L)を用い、イオン交換膜4とカソード電極3の間に充填した。第1アルカリ液6および第2アルカリ液7は、それぞれ、送液ポンプを用いて0.9mL/分の流量で循環させた。マスフローコントローラーを用いて、アノード電極2の第1ガス拡散層2aに、水素8aまたは窒素を40mL/分で供給した。そして、アノード電極2とカソード電極3の間に、0~4.0Vの電圧を印加し、各電圧における電流値を計測し、且つ第1アルカリ液6から発生した気体を取り出して、その気体の種類および発生量を四重極型質量分析計(Q-mass)を用いて調査した。
【0056】
図5に、アノード電極2の第1ガス拡散層2aに水素(H)8aを供給したとき(実線)と窒素(N)を供給したとき(破線)の、電圧印加時間と、Q-massで検出された二酸化炭素の割合(二酸化炭素量/(二酸化炭素量+窒素量))の関係を示す。なお、印加電圧は2.0Vとし、図2で示すところの領域Dが始まる電圧を下回る電圧とした。また、Q-massでは酸素などの他のガスも検出できるが、検出されたのは二酸化炭素と窒素のみであったため、図5では、二酸化炭素量/(二酸化炭素量+窒素量)を示すこととした。
図5に示すように、水素8aを供給したときは、時間と共に二酸化炭素の割合が増大しているのに対し、窒素を供給したときは、ほぼ二酸化炭素が検出されなかった。これは、水素8aを供給することにより、上記式(4)およびその後の上記式(3)の反応が進んだためであると考えられる。また、上述したように、水素8aを供給した場合に酸素は検出されず二酸化炭素と窒素のみが検出され、上記式(1)の酸素発生を伴う水電解が起こっていないことが確認された。なお、水素8aを供給したとき、二酸化炭素の割合が約75%でほぼ飽和しているが、これはQ-mass中に残留していた窒素を置換しきれなかったためと考えられる。
【0057】
次に、マスフローコントローラーを用いて、アノード電極2の第1ガス拡散層2aに水素8aを0mL/分、1mL/分、3mL/分、5mL/分、10mL/分および15mL/分で供給して、アノード電極2とカソード電極3の間に、0~4.0Vの電圧を印加したときの、各電圧における電流値を計測した。図6にその結果を示す。図6に示すように、水素供給量増加に伴い、(図2で示すところの)領域Bの電圧幅が増大している。このことから、水素供給量増加により、上記式(4)の反応をさらに進めることができ、二酸化炭素をより放出できることが分かる。
【符号の説明】
【0058】
1 二酸化炭素放出装置
2 アノード電極
2a 第1ガス拡散層
2b 第1触媒層
2c プロトン交換膜
3a 第2ガス拡散層
3b 第2触媒層
4 陽イオン交換膜
5 電源
6 二酸化炭素が溶解された第1アルカリ液
6a 二酸化炭素溶解前の第1アルカリ液
6b 二酸化炭素溶解後の第1アルカリ液
6c 二酸化炭素放出後の第1アルカリ液
6d 第1アルカリ液の陽イオン
7 第2アルカリ液
7a 第2アルカリ液の溶質
8a、8b 水素
10 二酸化炭素回収システム
11 排ガス
11a 二酸化炭素
12 二酸化炭素溶解部
13 二酸化炭素分離部
14 アルカリ液再生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6