(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031692
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】SOIウェーハ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240229BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135404
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥泰
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BA08
5F058BC02
5F058BF07
5F058BF27
5F058BF29
(57)【要約】
【課題】エッチング耐性を向上させつつ、MEMSデバイスに用いて好適なSOIウェーハ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板用シリコンウェーハと、前記支持基板用シリコンウェーハ上の中間層と、前記中間層上の単結晶シリコン層と、を備えるSOIウェーハであって、前記支持基板用シリコンウェーハは裏面にエッチング緩衝層を有し、前記エッチング緩衝層は、SiO
x(0<x≦0.60)である、SOIウェーハ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板用シリコンウェーハと、
前記支持基板用シリコンウェーハ上の中間層と、
前記中間層上の単結晶シリコン層と、を備えるSOIウェーハであって、
前記支持基板用シリコンウェーハは裏面にエッチング緩衝層を有し、
前記エッチング緩衝層は、SiOx(0<x≦0.60)である、SOIウェーハ。
【請求項2】
前記中間層は、SiOy(1.00≦y≦2.00)からなるBOX層を有する、請求項1に記載のSOIウェーハ。
【請求項3】
支持基板用シリコンウェーハと単結晶シリコン層との間に、アモルファスシリコン又は酸化シリコンからなる接着層を有する、
請求項2に記載のSOIウェーハ。
【請求項4】
前記中間層は前記接着層を前記BOX層の直上に有し、
前記接着層は前記アモルファスシリコンからなる、
請求項3に記載のSOIウェーハ。
【請求項5】
前記中間層は前記接着層を前記BOX層の直下に有し、
前記接着層は前記アモルファスシリコンからなる、
請求項3に記載のSOIウェーハ。
【請求項6】
前記中間層は前記接着層を前記BOX層の直上に有し、
前記接着層は前記酸化シリコンからなる、
請求項3に記載のSOIウェーハ。
【請求項7】
前記中間層は前記接着層を前記BOX層の直下に有し、
前記接着層は前記酸化シリコンからなる、
請求項3に記載のSOIウェーハ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法であって、
前記エッチング緩衝層を、プラズマCVD法(PE-CVD)を用いて形成する、SOIウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOIウェーハ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOIウェーハ(Silicon on Insulator)は、支持基板上に、酸化シリコン(SiO2)等の絶縁膜及びデバイス活性層として使用される単結晶シリコン層が順次形成された構造を有する。SOIウェーハの代表的な製造方法の一つに貼り合わせ法がある。この貼り合わせ法は、支持基板及び活性層用基板の少なくとも一方に酸化膜(BOX(Buried Oxide)層)を形成し、次いで、これらの基板を、酸化膜を介して重ね合わせた後、1200℃程度の高温にて接合熱処理を施すことにより、SOIウェーハを製造する方法である。(例えば特許文献1を参照)。近年、加速度センサとして用いられるMEMSデバイスの材料としてもSOIウェーハが用いられつつある。MEMSデバイス用途でSOIウェーハを用いる場合、BOX層には従来の絶縁層としての機能だけでなく、ハンドリング性が求められるなど、これまでにない取り組みが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のSOIウェーハにおいて、支持基板の裏面に設けられる酸化シリコン(SiO2)からなる保護層は、酸に対するエッチング耐性が低い。そのため、MEMSデバイスを作製する際の微細加工の際に、その酸エッチング耐性の低さから、保護層が減厚又は消失してしまう。MEMSデバイス用途でSOIウェーハを用いる場合、この保護層のエッチング耐性の低さは、加工精度に悪影響を与えてしまうため、保護層のエッチング耐性を向上させる必要がある。そこで本発明は、エッチング耐性を向上させつつ、MEMSデバイスに用いて好適なSOIウェーハ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討し、SOIウェーハにおける酸化シリコンからなる保護層として一般的に用いられてきた酸化シリコンに替えて、シリコンリッチなSiOx層(x<2)の利用を検討した。しかしながら、僅かの組成変更では十分にエッチング耐性を向上させることができなかった。そこで本発明者はSiOx層における組成比xとエッチング耐性の関係についてさらに鋭意検討し、MEMSデバイスに用いて好適な保護層(本発明におけるエッチング緩衝層)の組成を見出した。本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0006】
<1> 支持基板用シリコンウェーハと、支持基板用シリコンウェーハ上の中間層と、中間層上の単結晶シリコン層と、を備えるSOIウェーハであって、支持基板用シリコンウェーハは裏面にエッチング緩衝層を有し、エッチング緩衝層は、SiOx(0<x≦0.60)である、SOIウェーハ。
【0007】
<2> 中間層は、SiOy(1.00≦y≦2.00)からなるBOX層を有する、<1>に記載のSOIウェーハ。
【0008】
<3> 支持基板用シリコンウェーハと単結晶シリコン層との間に、アモルファスシリコン又は酸化シリコンからなる接着層を有する、<2>に記載のSOIウェーハ。
【0009】
<4> 中間層は接着層をBOX層の直上に有し、接着層はアモルファスシリコンからなる、<3>に記載のSOIウェーハ。
【0010】
<5> 中間層は接着層をBOX層の直下に有し、接着層はアモルファスシリコンからなる、<3>に記載のSOIウェーハ。
【0011】
<6> 中間層は接着層をBOX層の直上に有し、接着層は酸化シリコンからなる、<3>に記載のSOIウェーハ。
【0012】
<7> 中間層は接着層をBOX層の直下に有し、接着層は酸化シリコンからなる、<3>に記載のSOIウェーハ。
【0013】
<8> <1>~<7>のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法であって、エッチング緩衝層を、プラズマCVD法(PE-CVD)を用いて形成する、SOIウェーハの製造方法。
【0014】
以下では、上述の支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハのそれぞれに活性化領域を形成して、真空常温下で両者の活性化領域同士で貼り合せる方法を「真空常温接合法」と称する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エッチング耐性を向上させつつ、MEMSデバイスに用いて好適なSOIウェーハ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による、SOIウェーハの概要を説明する模式断面図である。
【
図2】本発明によるSOIウェーハの第1実施形態を説明する模式断面図である。
【
図3】本発明によるSOIウェーハの第2実施形態を説明する模式断面図である。
【
図4】本発明によるSOIウェーハの第3実施形態を説明する模式断面図である。
【
図5】本発明によるSOIウェーハの第4実施形態を説明する模式断面図である。
【
図6】本発明によるSOIウェーハの第5実施形態を説明する模式断面図である。
【
図7】本発明によるSOIウェーハの第6実施形態を説明する模式断面図である。
【
図8】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の一実施形態において、真空常温接合を行う際に用いる装置の一例を示す概念図である。
【
図9】実施例及び比較例に係るSOIウェーハにおけるエッチングレートの評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を順次説明する。各図面では説明の便宜上、各構成の厚さを誇張して示す。そのため、各構成の厚さは、実際の厚さの割合とは異なる。
【0018】
(SOIウェーハ)
図1の模式断面図を参照し、本発明に従うSOIウェーハ1を説明する。SOIウェーハ1は支持基板用シリコンウェーハ10と、支持基板用シリコンウェーハ10上の中間層30と、中間層30上の単結晶シリコン層21とを備える。そして、支持基板用シリコンウェーハ10は裏面に組成がSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層50を有する。
【0019】
<エッチング緩衝層>
支持基板用シリコンウェーハの接合面とは反対側の面(裏面)の表面上に形成する保護層のことを、本発明では特にエッチング緩衝層とよぶ。エッチング緩衝層を構成するSiOxは、組成比xの違いにより酸に対するエッチング耐性が変化する。組成比xが小さいほど、エッチングレートを小さくすることができ、SiOxの組成比xの範囲を0.60以下(0を含まず)とすることで、SOIウェーハ1をMEMSデバイスに加工する際に必要となる裏面側のエッチング耐性を向上させることができる。一方、組成比xが0.60よりも大きいと、エッチングレートを十分に小さくすることが出来ない。したがって、SOIウェーハ1は、SiOx(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層50を有することにより、MEMSデバイス形成時にエッチング液に含侵させて中間層30等の一部を微細加工した場合にも、エッチング緩衝層50の著しい減厚を回避することが出来る。また、このような事情から、組成比xは、0.10以上0.50以下とすることが好ましく、0.10以上0.40以下とすることがより好ましい。
【0020】
<<エッチング緩衝層の組成>>
エッチング緩衝層の組成比xは、それぞれEDX分析により同定することができる。本明細書の実施例では、ウェーハ中心の組成をEDX分析(OXFORD Instruments製INCA)により解析した。このとき、エッチング緩衝層表面への電子線の加速電圧は1kVとし、電流値は10μAで加速して100μm×100μmの面積で深さ1μmの領域に照射して、エッチング緩衝層表面で発生したX線を検出した。そして、検出したX線のSi元素成分とO元素成分に対して検出された最大量の比をSiOxにおけるx値として採用することができる。なお、BOX層のSiOyにおけるy値についても同様である。
【0021】
なお、エッチング緩衝層の厚みは、エッチング耐久性の観点から100nm以上とすることが好ましく、SOIウェーハを小型化する観点から上限を20μmと設定することが好ましい。また、両目的を達成するため1μm以上5μm以下であることがより好ましい。BOX層の厚みは、MEMSデバイスの上下駆動領域を十分に確保する観点から、1μm以上とすることが好ましく、SOIウェーハ1を小型化する観点から、上限を20μmと設定することが好ましい。また、SOIウェーハ1の用途に応じて、単結晶シリコン層21の厚みを5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよいし、20μm以下としてもよいし、15μm以下としてもよい。
【0022】
以上説明したとおり、SOIウェーハ1は、上述したエッチング緩衝層50を備えるため、エッチング耐性を向上させつつ、MEMSデバイスに用いて好適である。
【0023】
<中間層>
中間層30の組成は、BOX層として一般的に利用されるSiO2であってもよいし、組成がSiOy(1.00≦y≦2.00)からなるBOX層と、アモルファスシリコン又は酸化シリコンからなる接着層を有してもよい。特に組成比yが1.00以上2.00未満の場合、中間層30が接着層を有することにより、BOX層がシリコンリッチなSiOyからなる層であっても、支持基板用シリコンウェーハ10と、単結晶シリコン層21とを、BOX層を介して接合することが可能となる。なお、BOX層を構成するSiOyも、上記エッチング緩衝層と同様に組成比yの違いによりエッチングレートが変化する。エッチングレートが小さくなりすぎてしまうとMEMSデバイス作製の際に微細構造の形成に適さないため、組成比yは、1.00以上2.00以下とすることが好ましく、1.10以上1.90以下とすることがより好ましい。
【0024】
以下、中間層30の組成比yが1.00以上2.00未満のBOX層を有する場合のSOIウェーハの具体的な実施形態を、
図2~
図7を参照して引き続き説明する。
【0025】
―第1実施形態―
図2を参照する。SOIウェーハ100は、支持基板用シリコンウェーハ110と、支持基板用シリコンウェーハ110上の中間層130と、中間層130上の単結晶シリコン層121とを備え、支持基板用シリコンウェーハ110はその裏面に、裏面にSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層150を有する。ここで中間層130はアモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン接着層132をBOX層131の直上に有する。SOIウェーハ100は以下のように製造することが出来る。
【0026】
まず、支持基板用シリコンウェーハ110の表面に、BOX層131を形成する。BOX層131の組成はSiO
x(1.00≦x≦2.00)とすることが好ましく、後述のPE-CVD法を用いて形成することができる。次に、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面に真空常温下で活性化処理を施して、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面に接着層としてのアモルファスシリコン接着層132を形成する。このアモルファスシリコン接着層132は接着層として機能すればよく、厚さは特に限定されないが、例えば5nm以下のアモルファスシリコンを形成できればよい。さらに、引き続き真空常温下で、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120をアモルファスシリコン接着層132及びBOX層131を接触させて、真空常温接合により接合する。そして、支持基板用シリコンウェーハ110の接合面とは反対側の面(裏面)の表面上に、組成がSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層150をPE-CVD法を用いて形成する。最後に、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を減厚して単結晶シリコン層121を得ることにより最終的な第1実施形態のSOIウェーハ100を得る。なお、エッチング緩衝層150の形成は、真空常温接合の前に行ってもよい。また、本発明で課題とするエッチング緩衝層のエッチング耐性向上の観点からは、BOX層131の組成は特に限定されないが、SiO
y(1.00≦y≦2.00)の範囲であればエッチング緩衝層のエッチング耐性を保ちつつBOX層131のエッチング加工ができるため、好ましい。
図2に各構成とともに、実際に接合面となる個所を破線で示した。
【0027】
―第2実施形態―
図3を参照する。SOIウェーハ200は、支持基板用シリコンウェーハ210と、支持基板用シリコンウェーハ210上の中間層230と、中間層230上の単結晶シリコン層221とを備え、支持基板用シリコンウェーハ210はその裏面に、裏面にSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層250を有する。ここで中間層230はアモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン接着層232をBOX層231の直下に有する。SOIウェーハ200は第1実施形態においてBOX層を支持基板用シリコンウェーハ210の表面上に形成するのに替えて、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220上にBOX層231を形成し、支持基板用シリコンウェーハ210の表面にアモルファスシリコン接着層232を形成することで製造することが出来る。
図3に各構成とともに、実際に接合面となる個所を破線で示した。
【0028】
―第3実施形態―
図4を参照する。SOIウェーハ300は、支持基板用シリコンウェーハ310と、支持基板用シリコンウェーハ310上の中間層330と、中間層330上の単結晶シリコン層321とを備え、支持基板用シリコンウェーハ310はその裏面に、裏面にSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層350を有する。ここで、SOIウェーハ300は以下のように製造することが出来る。
【0029】
まず、支持基板用シリコンウェーハ310に熱酸化処理を施して、支持基板用シリコンウェーハ310の片面にBOX層として機能する酸化シリコン層335aを形成する。このとき、一般的には反対側の面も酸化されて酸化シリコン層335bが形成される。酸化シリコン層335aはBOX層として機能すればよく、厚さは特に限定されないが、例えば1μm以上とすることができる。つぎに、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320の表面に真空常温下で活性化処理を施して、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320の表面に接着層としてのアモルファスシリコン接着層332を形成する。さらに、引き続き真空常温下で、支持基板用シリコンウェーハ310及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320をアモルファスシリコン接着層332及び酸化シリコン層335aを接触させて、真空常温接合により接合する。そして、支持基板用シリコンウェーハ310の接合面とは反対側の面(裏面)の表面上に、組成がSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層350をPE-CVD法を用いて形成する。最後に、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320を減厚して単結晶シリコン層321を得ることにより最終的な第1実施形態のSOIウェーハ300を得る。なお、エッチング緩衝層350の形成は、真空常温接合の前に行ってもよい。
図4に各構成とともに、実際に接合面となる個所を破線で示した。
【0030】
―第4実施形態―
図5を参照する。SOIウェーハ400は、支持基板用シリコンウェーハ410と、支持基板用シリコンウェーハ410上の中間層430と、中間層430上の単結晶シリコン層421とを備え、支持基板用シリコンウェーハ310はその裏面に、裏面にSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層350を有する。また、中間層430は、以下の製造プロセスを参照して説明するとおり、支持基板用シリコンウェーハ410直上の第1のBOX層431bと、単結晶シリコン層421直下の第2のBOX層431aとからなる。
【0031】
まず、支持基板用シリコンウェーハ410の表面に第1のBOX層431bと、単結晶シリコン層421の表面に第2のBOX層431aをPE-CVD法を用いてそれぞれ形成する。その後、真空常温下で、各BOX層表面の第1のBOX層431bと第2のBOX層431aにシリコンターゲットをスパッタリングして両BOX層を接着するための原子サイズレベルのシリコンを蒸着させる。次いで、この蒸着したシリコンを介して第1のBOX層431bと第2のBOX層431aを重ね合わせて真空常温接合する。そして、支持基板用シリコンウェーハ410の接合面とは反対側の面(裏面)の表面上に、組成がSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層450をPE-CVD法を用いて形成する。なお、エッチング緩衝層450の形成は、真空常温接合の前に行ってもよい。ここで、各BOX層の表面に蒸着させたシリコンは、各BOX層同士の接合には寄与するものの、実質的に厚みが無視できるほど薄いため、SOIウェーハ400を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて評価してもその存在を観察することができない。すなわち、SOIウェーハ400において、第1のBOX層431bと第2のBOX層431aの間にはシリコン層が観察されない。なお、この理由により、
図5においても接合面のシリコンは図示しない。単結晶シリコン層421(420)を減厚する点はその他の実施形態と同様である。
図5に、各構成とともに、実際に接合面となる個所を点線で示した。
【0032】
―第5実施形態―
図6を参照する。SOIウェーハ500は、支持基板用シリコンウェーハ510と、支持基板用シリコンウェーハ510上の中間層530と、中間層530上の単結晶シリコン層521とを備え、支持基板用シリコンウェーハ510はその裏面に、裏面にSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層550を有する。ここで中間層530は酸化シリコンからなる。SOIウェーハ500は第2実施形態において単結晶シリコン層用シリコンウェーハ上にアモルファスシリコン接着層を形成することに替えて、本実施形態においては単結晶シリコン層用シリコンウェーハ520上に酸化シリコン層535bを形成することで製造することができる。
【0033】
また、この第5実施形態では支持基板用シリコンウェーハ510と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ520の接合を真空常温接合で行っているものの、これに替わる第5実施形態の変形態様として、支持基板用シリコンウェーハ510の表面に形成された酸化シリコン層535b及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ520の表面に形成された酸化シリコン層535cを接触させて、貼り合わせ熱処理により接合する以外は、上記第5実施形態と同様の工程を経ることにより、
図6に示すSOIウェーハ500を製造することもできる。
図6に各構成とともに、実際に接合面となる個所を破線で示した。
【0034】
―第6実施形態―
図7を参照する。SOIウェーハ600は、支持基板用シリコンウェーハ610と、支持基板用シリコンウェーハ610上の中間層630と、中間層630上の単結晶シリコン層621とを備え、支持基板用シリコンウェーハ610はその裏面に、裏面にSiO
x(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層650を有する。ここで中間層630は酸化シリコン層635aである。ここで、SOIウェーハ600は以下のように製造することが出来る。
【0035】
まず、支持基板用シリコンウェーハ610に熱酸化処理を施して、支持基板用シリコンウェーハ610の両面に酸化シリコン層635a及び635bを形成する。そして、支持基板用シリコンウェーハ610の表面と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ620の表面に形成された酸化シリコン層635aを接触させて、貼り合わせ熱処理により接合する。単結晶シリコン層621(620)を減厚する点はその他の実施形態と同様である。
図7に、各構成とともに、実際に接合面となる個所を点線で示した。
【0036】
<具体的態様>
以下では、本発明において用いることができる支持基板用シリコンウェーハ、単結晶シリコン層に適用可能なシリコンウェーハの具体的態様を説明する。
【0037】
シリコンウェーハの面方位は任意であり、(100)面のウェーハを用いてもよいし、(110)面のウェーハなどを用いてもよい。
【0038】
シリコンウェーハの厚さは、用いる用途に応じて適宜決定することができ、300μm~1.5mmとすることができる。単結晶シリコン層用シリコンウェーハから得られる単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層の膜厚を100nm~1mmの範囲で適宜定めることは既に述べたとおりである。
【0039】
また、シリコンウェーハにボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などのドーパントがドープされていてもよいし、所望の特性を得るため炭素(C)又は窒素(N)などがドープされていてもよい。
【0040】
シリコンウェーハの直径は何ら制限されない。一般的な直径300mm又は200mmなどのシリコンウェーハに本発明を適用することができる。もちろん、直径300mmよりも直径の大きいシリコンウェーハに対しても、直径の小さいシリコンウェーハに対しても本発明を適用することができる。
【0041】
シリコンウェーハとしてエピタキシャルシリコンウェーハを用いても構わない。なお、シリコンウェーハの表面には数Å程度の膜厚の自然酸化膜が形成されうるが、こうした自然酸化膜があってもよいし、必要に応じて公知の洗浄方法等を用いて除去してもよい。
【0042】
次に、
図2~
図7を参照して説明した本発明に係るSOIウェーハ100~600の作製に適用可能な製造プロセスの具体的態様を説明する。
【0043】
<<PE-CVD法によるエッチング緩衝層の形成>>
SiOx(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層は、プラズマCVD法(PE-CVD)などのCVD法を用いて、支持基板用シリコンウェーハの表面上に成膜することができる。プラズマCVD法では、まず単結晶シリコン層用シリコンウェーハを1×10-4Pa以下の真空度で、300℃以上700℃以下の温度で保持する。そして、プラズマパワーを500W以上としたうえで、導入するソースガスとしてはテトラメチルシランガス(Si(CH3)4)等のシランガスと酸素ガスの混合ガスを用いることが出来る。そしてこの混合ガスの混合比を形成するBOX層の所望のSiOx(0<x≦0.60)の比となるように調整して成膜すれば、(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層を形成することができる。なお、SiOy(1.00≦y≦2.00)からなるBOX層においても同様である。
【0044】
<<真空常温接合法による貼り合わせ>>
図3及び
図8を参照しつつ、上記活性化処理及び接合を行うための、真空常温接合法による貼合せ方法を説明する。真空常温接合法とは、支持基板用シリコンウェーハ210と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220を加熱することなく、両者を常温で貼り合わせる方法である。一例として例示する実施形態2においては、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220に形成したBOX層231の表面と、支持基板用シリコンウェーハ210の表面とのそれぞれに、真空常温下でイオンビームまたは中性原子ビームを照射する活性化処理をして、上記両方の表面をそれぞれ活性化領域とする。これにより、支持基板用シリコンウェーハ210の表面にはごく薄いアモルファスシリコンの領域が形成されるとともにダングリングボンドが現れる。そのため、引き続き真空常温下で上記両方のウェーハを接触させると、瞬時に接合力が働き、上記活性化領域を貼合せ面として、支持基板用シリコンウェーハ210と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220とが強固に貼り合い、両者を接合できる。
【0045】
活性化処理の方法としては、プラズマ雰囲気でイオン化した元素を基板表面へ加速させる方法と、イオンビーム装置から加速したイオン化した元素を基板表面へ加速させる方法が挙げられる。
図8を参照しつつ、この方法を実現する装置の一例を示す概念図を用いて活性化処理方法を説明する。真空常温接合装置930は、プラズマチャンバー931と、ガス導入口932と、真空ポンプ933と、パルス電圧印加装置934と、ウェーハ固定台935a,935bと、を有する。
【0046】
まず、プラズマチャンバー931内のウェーハ固定台935a,935bにそれぞれ支持基板用シリコンウェーハ210及び表面にBOX層231を形成した単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220を載置して、固定する。次に、真空ポンプ933によりプラズマチャンバー931内を減圧し、ついで、ガス導入口932からプラズマチャンバー931内に原料ガスを導入する。続いて、パルス電圧印加装置934によりウェーハ固定台935a,935b(併せて支持基板用シリコンウェーハ210,単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220)に負電圧をパルス状に印加する。これにより、原料ガスのプラズマを生成するとともに、生成したプラズマに含まれる原料ガスのイオンを支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220表面に形成されたBOX層231の表面に向けて加速、照射することができる。
【0047】
なお、照射する元素は、Ar、Ne、Xe、H、He及びSiから選択される少なくとも一種から選択すればよい。
【0048】
図3を参照する。先に述べたとおり、真空常温接合法における活性化処理によって、支持基板用シリコンウェーハ210の表面において、ビームを照射した側の表面から概ね1nmの深さ位置にまで、アモルファスシリコンの領域が形成されるとともに、ダングリングボンドが形成される。本実施形態では支持基板用シリコンウェーハ210には、接着層としてのアモルファスシリコン接着層232が形成される。なお、支持基板用シリコンウェーハ210に形成されたこのアモルファスシリコン接着層232は、ゲッタリング層としても機能する。例えば、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン接着層232は、支持基板用シリコンウェーハ210中の酸素や不純物が単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220に外方拡散するのを抑制することができる点で有用である。
【0049】
―真空常温接合法の具体的態様―
プラズマチャンバー931内のチャンバー圧力は1×10-5Pa以下とすることができる。1×10-5Pa以下であれば、スパッタされた元素が基板表面に再付着することによってダングリングボンドの形成率が低下するおそれがないからである。
【0050】
支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220に印加するパルス電圧は、基板表面に対する照射元素の加速エネルギーが100eV以上10keV以下となるように設定すればよい。100eV以上であれば、照射した元素が基板表面に堆積するおそれがなく、10keV以下であれば、照射した元素が基板内部へ注入するおそれがないので、ダングリングボンドを安定的に形成することができる。
【0051】
パルス電圧の周波数は、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220にイオンまたは中性原子が照射される回数を決定する。パルス電圧の周波数は、10Hz以上10kHz以下とすればよい。パルス電圧の周波数が10Hz以上であれば、イオンまたは中性原子の照射ばらつきを吸収することができるので、イオンまたは中性原子の照射量が安定する。パルス電圧の周波数が10kHz以下であれば、グロー放電によるプラズマ形成が安定する。
【0052】
パルス電圧のパルス幅は、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220にイオンまたは中性原子が照射される時間を決定する。パルス幅は、1μ秒以上10m秒以下とすることが好ましい。パルス幅が1μ秒以上であれば、イオンまたは中性原子を支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハに安定的に照射することができる。パルス幅が10m秒以下であれば、グロー放電によるプラズマ形成が安定する。
【0053】
なお、前述のとおり、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220は加熱されない。そのため、各ウェーハの温度は常温(通常、30℃~90℃)となる。
【実施例0054】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
(発明例1)
支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハとして、直径:4インチ(101.6mm)、厚み:525μmのp型CZシリコンウェーハ(ドーパント:ボロン)を用意した。次いで、単結晶シリコン層用シリコンウェーハをプラズマCVD装置に導入し、装置内の真空度を1×10-5Pa以下に保持した。そして、ステージ温度を500℃に維持した状態で、プラズマパワーを700Wでソースガスとしてテトラメチルシランガス(Si(CH3)4)を25sccmと酸素ガスを68sccm流し、プラズマCVD法により単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に膜厚2.5μmのBOX層を形成した。
【0056】
そして、形成されたBOX層の表面粗さを低減するために、BOX層が形成され単結晶層用シリコンウェーハのBOX層表面に対して500nmの研磨代となるCMP法による研磨を行った。
【0057】
一方、支持基板用シリコンウェーハをプラズマCVD装置に導入し、装置内の真空度を1×10-5Pa以下に保持した。そして、ステージ温度を500℃に維持した状態で、プラズマパワーを700Wでソースガスとしてテトラメチルシランガス(Si(CH3)4)を25sccmと酸素ガスを1sccm流し、さらにキャリアガスとしてArガスを40sccm流して、プラズマCVD法により支持基板用シリコンウェーハの裏面側(接合面とは反対側の面)に膜厚2.5μmのエッチング緩衝層を形成した。
【0058】
次いで、エッチング緩衝層を形成した支持基板用シリコンウェーハ及びBOX層を形成した単結晶シリコン層用シリコンウェーハの両方をチャンバー内に導入し、真空度を1×10-5Pa以下に保持した。その後、接合面となる支持基板用シリコンウェーハの表面に対し、アルゴンイオンを1.4keVで照射することで活性化処理を施し、支持基板用シリコンウェーハの表面に接着層としての活性化領域(アモルファスシリコン)を形成した。
【0059】
さらに引き続き、両基板を真空常温環境下で単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面のBOX層と支持基板用シリコンウェーハの活性化領域を貼り合わせて接合した。
【0060】
最後に単結晶シリコン層用シリコンウェーハの厚みを10μm残すよう、貼り合せ面とは反対側から、研削及び研磨を行い、発明例1に係るSOIウェーハを得た。
【0061】
また、得られたSOIウェーハのエッチング緩衝層側のウェーハ中心の組成を、先に述べたのと同様、EDX分析(OXFORD Instruments製INCA)により解析した。このとき、エッチング緩衝層への電子線の加速電圧は1kVとし、電流値は10μAで加速して100μm×100μmの面積で深さ1μmの領域に照射して、BOX層表面で発生したX線を検出した。また、BOX層の組成は、BOX層形成直後の単結晶シリコン層用シリコンウェーハのウェーハ中心の組成を評価することにより解析した。そして、検出したX線のSi元素成分とO元素成分に対して検出された最大量の比を求めたところ、発明例1のエッチング緩衝層の組成SiOxにおけるxの値は0.12、BOX層の組成SiOyにおけるyの値は1.42であった。評価結果を表1に示す。
【0062】
(発明例2)
発明例1ではプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしてエッチング緩衝層を形成していたところ、発明例2においては、酸素ガスを2sccm流すことによりエッチング緩衝層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で発明例2に係るSOIウェーハを作製した。
【0063】
(発明例3)
発明例1ではプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしてエッチング緩衝層を形成していたところ、発明例3においては、酸素ガスを5sccm流すことによりエッチング緩衝層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で発明例3に係るSOIウェーハを作製した。
【0064】
(発明例4)
発明例1ではプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしてエッチング緩衝層を形成していたところ、発明例3においては、酸素ガスを7sccm流すことによりエッチング緩衝層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で発明例3に係るSOIウェーハを作製した。
【0065】
(発明例5)
発明例1ではプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしてエッチング緩衝層を形成していたところ、発明例3においては、酸素ガスを10sccm流すことによりエッチング緩衝層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で発明例3に係るSOIウェーハを作製した。
【0066】
(発明例6)
発明例1ではプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしてエッチング緩衝層を形成していたところ、発明例3においては、酸素ガスを16sccm流すことによりエッチング緩衝層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で発明例3に係るSOIウェーハを作製した。
【0067】
(比較例1)
発明例1ではプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしてエッチング緩衝層を形成していたところ、比較例1においては、Arガスをキャリアガスとし、酸素ガスを50sccm流すことによりエッチング緩衝層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で比較例1に係るSOIウェーハを作製した。
【0068】
(比較例2)
発明例1ではプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしてエッチング緩衝層を形成していたところ、比較例2においては、Arガスをキャリアガスとし、酸素ガスを57sccm流すことによりエッチング緩衝層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で比較例2に係るSOIウェーハを作製した。
【0069】
(従来例1)
発明例1ではSiOx(0<x≦0.60)からなるエッチング緩衝層を形成すべくプラズマCVD法における酸素ガス流量を1sccmとしていたところ、従来例1においては、Arガスをキャリアガスとし、酸素ガスを100sccm流すことにより酸化膜(SiO2膜)からなるBOX層を形成した以外は、発明例1と同じ条件で従来例1に係るSOIウェーハを作製した。
【0070】
(評価:エッチングレートの評価)
エッチング緩衝層のエッチングレートを正確に評価するため、各実施例におけるエッチング緩衝層形成後のSOIウェーハをチップ状にへき開し、そのチップにおけるエッチングレートを評価した。まず、ウェーハ中心部からサンプリングしたチップ表面のエッチング緩衝層の一部を耐酸テープでマスキングしてフッ酸30%水溶液に含侵させた。そして、10分経過後に耐酸テープを剥がし、段差計でエッチング緩衝層の膜厚を測定することにより、エッチング緩衝層のエッチングレートを評価した。
【0071】
結果を下記表1に記載し、エッチングレートについてはSiO
xの組成比xに対する挙動を示すグラフを
図9に示す。本評価結果から、発明例1~6ではSiO
xの組成比xが小さくなることでエッチングレートが十分に低減されていることが分かる。一方で、比較例1、2及び従来例1では、組成比xが大きくなるにつれてエッチングレートが著しく大きくなり、MEMSデバイス用途としては用いることが出来ないことが分かった。
【0072】
(評価:Siの2pスペクトルのピーク値評価)
また、エッチング緩衝層のSiの酸化状態を評価した。Siの酸化状態は、XPS分析によりエッチング緩衝層中のSiとOの結合状態をSiの2pのピーク位置を確認することにより評価した。すなわち、四面体構造をとるSiO2における2pスペクトルのピークが103eVであることから、エッチング緩衝層中の四面体構造密度を間接的に評価することができる。評価結果を表1に示す。発明例1~6においては、Siの2pのピーク位置が103eV未満であり、四面体構造密度が少ないことがわかった。エッチングレートの評価結果を踏まえ、フッ酸とエッチング反応するSiO2の四面体構造密度が少ないために、フッ酸エッチングレートが減少したと考えられる。
【0073】