(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031858
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】冷凍肉用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
A23L 13/75 20230101AFI20240229BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240229BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240229BHJP
A23B 4/08 20060101ALI20240229BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240229BHJP
【FI】
A23L13/75
A23L13/00 A
A23D9/00 518
A23B4/08 B
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129717
(22)【出願日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022132158
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 明子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 峰子
(72)【発明者】
【氏名】高田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和馬
(72)【発明者】
【氏名】平井 浩
(72)【発明者】
【氏名】徳永 邦彦
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG20
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4B042AK06
4B042AK08
4B042AP03
4B042AP07
4B042AP13
4B042AP18
(57)【要約】
【課題】冷凍解凍による肉類の品質劣化を抑制する冷凍肉用品質改良剤を提供することである。また、当該剤を使用した加工冷凍肉及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】以下の、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂を有効成分とする、冷凍肉用品質改良剤。
(A)構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が5~75質量%である
(B)構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が25~95質量%である
(C)構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が20~90質量%である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂を有効成分とする、冷凍肉用品質改良剤。
(A)構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が5~75質量%である
(B)構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が25~95質量%である
(C)構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が20~90質量%である
【請求項2】
前記油脂を含有する調味液である、請求項1に記載の冷凍肉用品質改良剤。
【請求項3】
冷凍前の、生肉または解凍済み肉に、請求項1または2に記載の冷凍肉用品質改良剤を使用して、冷凍する、加工冷凍肉の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍肉用品質改良剤の使用が、漬け込みである、請求項3に記載の加工冷凍肉の製造方法。
【請求項5】
前記冷凍肉用品質改良剤の使用が、注入である、請求項3に記載の加工冷凍肉の製造方法。
【請求項6】
以下の、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂を有効成分とする冷凍肉用品質改良剤で、生肉または解凍済み肉を処理して冷凍することにより、冷凍解凍後の肉の、柔らかさ及び/又はしっとりさ、を維持する方法。
(A)構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が5~75質量%である
(B)構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が25~95質量%である
(C)構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が20~90質量%である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍肉用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍解凍後の肉類は、冷凍前と比較して、硬くてパサパサした食感となる傾向がある。これまでに、鶏肉、牛肉、豚肉等の加熱調理された食肉の食感を軟らかくするためには、各種乳化剤を配合した品質改良剤が開発されてきた(特許文献1)。また、中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロールを含有することを特徴とする食肉軟化剤が開発されてきた(特許文献2)。
このように、品質改良剤の注入や漬け込みの後に加熱調理することで、食肉の食感を軟らかくする比較検討はなされてきたが、冷凍解凍後の肉類の加熱調理後の品質についての検討は十分になされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-269117号公報
【特許文献2】特開2020-43811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冷凍解凍による肉類の品質劣化を抑制する冷凍肉用品質改良剤を提供することである。また、当該剤を使用した加工冷凍肉及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、特定の構成脂肪酸を有する油脂を含む調味液等を使用することで、冷凍解凍による品質劣化が抑制された肉が得られることを見出した。これにより、本発明は完成された。すなわち、本発明は、以下の態様であり得る。
【0006】
[1]以下の、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂を有効成分とする、冷凍肉用品質改良剤。
(A)構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が5~75質量%である
(B)構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が25~95質量%である
(C)構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が20~90質量%である
[2]前記油脂を含有する調味液である、[1]の冷凍肉用品質改良剤。
[3]冷凍前の、生肉または解凍済み肉に、[1]または[2]の冷凍肉用品質改良剤を使用して、冷凍する、加工冷凍肉の製造方法。
[4]前記冷凍肉用品質改良剤の使用が、漬け込みである、[3]の加工冷凍肉の製造方法。
[5]前記冷凍肉用品質改良剤の使用が、注入である、[3]の加工冷凍肉の製造方法。
[6]以下の、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂を有効成分とする冷凍肉用品質改良剤で、生肉または解凍済み肉を処理して冷凍することにより、冷凍解凍後の肉の、柔らかさ及び/又はしっとりさ、を維持する方法。
(A)構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が5~75質量%である
(B)構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が25~95質量%である
(C)構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が20~90質量%である
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷凍解凍による肉類の品質劣化が抑制された、加工冷凍肉を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様などは、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。
【0009】
まず、本発明の冷凍肉用品質改良剤について説明する。
本発明の冷凍肉用品質改良剤は、少なくとも、以下の条件(A)、(B)、(C)の1つを満たす油脂を有効成分とする。
(A)構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が5~75質量%である
(B)構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が25~95質量%である
(C)構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が20~90質量%である
【0010】
上記条件(A)について説明する。
条件(A)を満たす油脂は、構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を含有する。中鎖脂肪酸は、炭素数が6~12の脂肪酸のことを言う。中鎖脂肪酸は、好ましくは、炭素数6~10の脂肪酸であり、より好ましくは、炭素数が6であるn-ヘキサン酸、炭素数が8(C8)であるn-オクタン酸、及び炭素数が10(C10)であるn-デカン酸、から選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくは、n-オクタン酸及びn-デカン酸、から選ばれる1種又は2種である。中鎖脂肪酸に占める、n-オクタン酸とn-デカン酸との含有質量比(n-オクタン酸:n-デカン酸)は、好ましくは、100:0~10:90であり、より好ましくは、90:10~50:50であり、さらに好ましくは85:15~65:35である。条件(A)を満たす油脂の構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量は、5~75質量%であり、好ましくは10~50質量%であり、さらに好ましくは15~40質量%である。
【0011】
条件(A)を満たす油脂は、構成脂肪酸全量に占める中鎖脂肪酸の含有量が5~75質量%であれば、油脂を構成するトリアシルグリセロールの形態は問わない。中鎖脂肪酸は、例えば、構成脂肪酸が全て中鎖脂肪酸である中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、「MCT」ともいう)や、構成脂肪酸が中鎖脂肪酸と炭素数が14以上である長鎖脂肪酸とからなる中長鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(以下、「MLCT」ともいう)、の形態で含有されていてもよい。MCTまたはMLCTの1分子にエステル結合する中鎖脂肪酸は、同一の脂肪酸であってもよいし、異なる脂肪酸であってもよい。また、グリセロール骨格における中鎖脂肪酸の結合位置も問わない。MCTは、公知の方法で製造できる。例えば、ヤシ油やパーム核油由来の炭素数6~12の中鎖脂肪酸とグリセリンとを触媒下、好ましくは無触媒下で、好ましくは減圧下で120~180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。また、MCTは市販品であってもよい。市販品としては、例えば、日清オイリオグループ(株)販売の商品「O.D.O」、「スコレー64G」「スコレーMC」「スコレー8」等が挙げられる。なお、「O.D.O」の構成脂肪酸組成目安(質量比)は、C8:C10=75:25で、「スコレー64G」の構成脂肪酸組成目安(質量比)は、C8:C10=60:40で、スコレーMCの構成脂肪酸組成目安(質量比)は、C8:C10=85:15で、スコレー8の構成脂肪酸組成目安(質量比)は、C8が95%以上である。
【0012】
本発明の実施の形態の1つによれば、条件(A)を満たす油脂は、MCTと、構成脂肪酸全量に占める不飽和脂肪酸の含有量が70質量%以上である油脂(以下、「不飽和油脂」ともいう)と、の混合油脂であってもよい。不飽和油脂の構成脂肪酸全量に占める不飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは80~100質量%であり、より好ましくは85~100質量%である。不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、などが挙げられる。不飽和油脂を構成する不飽和脂肪酸は、1種あるいは2種以上であってもよい。不飽和油脂は、食用に適するものであれば特に限定されない。不飽和油脂としては、具体的には、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、などが挙げられる。不飽和油脂は、1種あるいは2種以上の混合油脂であってもよい。不飽和油脂を構成する不飽和脂肪酸には、好ましくはリノール酸が含まれる。不飽和油脂の構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量は、好ましくは25~95質量%であり、より好ましくは45~90質量%であり、さらに好ましくは60~85質量%であり、ことさらに好ましくは65~80質量%である。MCTと不飽和油脂との質量混合比(MCT:不飽和油脂)は、好ましくは5:95~75:25であり、より好ましくは10:90~50:50であり、さらに好ましくは15:75~40:60である。
【0013】
本発明の実施の形態の1つによれば、条件(A)を満たす油脂は、上記の、MCTと不飽和脂肪酸油脂との混合油脂のエステル交換油脂であってもよい。エステル交換する方法は特に限定されず、例えば、ナトリウムメトキシドを触媒とした化学的エステル交換や、リパーゼ製剤を触媒とした酵素的エステル交換など、通常行われる方法を適用することができる。エステル交換反応後のエステル交換油脂は、食用に適するように必要に応じて、脱酸、脱色、脱臭、等の精製処理が、常法にしたがって行われてもよい。
【0014】
上記条件(B)について説明する。
条件(B)を満たす油脂は、構成脂肪酸としてリノール酸を含有する。条件(B)を満たす油脂の構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量は、25~95質量%であり、好ましくは45~90質量%であり、より好ましくは60~85質量%であり、さらに好ましくは65~80質量%である。条件(B)を満たす油脂は、食用に適するものであれば特に限定されない。条件(B)を満たす油脂としては、具体的には、大豆油、コーン油、ゴマ油、紅花油(リノール種)、ひまわり油(リノール種)、綿実油、ブドウ種子油、米糠油、などが挙げられる。条件(B)を満たす油脂は、1種あるいは2種以上の混合油脂であってもよい。また、構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が高い油脂と、構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が低い油脂と、を混合して、条件(B)を満たす油脂を調製してもよい。また、条件(B)を満たす油脂は、エステル交換、分別、などの処理がなされていてもよい。本発明の実施の形態の1つによれば、条件(B)を満たす油脂は、構成脂肪酸全量に占める不飽和脂肪酸の含有量が70質量%以上である油脂(上記の不飽和油脂)であってもよい。
【0015】
上記条件(C)について説明する。
条件(C)を満たす油脂は、構成脂肪酸としてリノレン酸を含有する。リノレン酸は、好ましくはα-リノレン酸である。条件(C)を満たす油脂の構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量は、20~90質量%であり、好ましくは40~85質量%であり、より好ましくは50~80質量%であり、さらに好ましくは55~75質量%である。条件(C)を満たす油脂は、食用に適するものであれば特に限定されない。条件(C)を満たす油脂としては、具体的には、アマニ油、シソ油、エゴマ油、チアシード油、などが挙げられる。条件(C)を満たす油脂は、1種あるいは2種以上の混合油脂であってもよい。また、構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が高い油脂と、構成脂肪酸全量に占めるリノレン酸の含有量が低い油脂と、を混合して、条件(C)を満たす油脂を調製してもよい。また、条件(C)を満たす油脂は、エステル交換、分別、などの処理がなされていてもよい。本発明の実施の形態の1つによれば、条件(C)を満たす油脂は、構成脂肪酸全量に占める不飽和脂肪酸の含有量が70質量%以上である油脂(上記の不飽和油脂)であってもよい。
【0016】
本発明の実施の形態の1つによれば、本発明の冷凍肉用品質改良剤は、上記の条件(A)、(B)、(C)のうち、2つ以上を満たす油脂を有効成分としてもよい。油脂の構成脂肪酸を確認、定量する方法としては、例えば、油脂の構成脂肪酸をメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィーにより定量分析する方法(例えば、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法2013年版 2.4.2.3-2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」)が挙げられる。
【0017】
本発明の実施の形態の1つによれば、本発明の冷凍肉用品質改良剤は、乳化剤を含有してもよい。乳化剤としては、例えば、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベート、などが挙げられる。乳化剤は、これらの1種又は2種以上が配合されてもよい。
【0018】
本発明の実施の形態の1つによれば、本発明の冷凍肉用品質改良剤は、有効成分である油脂を単独で剤として使用できる。しかし、次に説明をする、有効成分である油脂を含む調味液として使用することもできる。
有効成分である油脂を含む調味液は、油脂に、既に調製された調味液を混合して調製してもよいし、以下に説明するように、油脂と水と後述する調味成分とを混合して製造しても良い。
混合は、プロペラ撹拌機、ホモミキサー等の撹拌機を用いて行うことができ、必要に応じて混合時に加熱をしても良い。
調味液は、水に調味成分を溶解又は分散させたもので、調味成分としては、食塩、タンパク質(大豆、小麦、卵、乳等)、糖類、甘味料、でん粉、加工澱粉、増粘多糖類、リン酸塩、乳化剤、香料、保存料、着色料、酸化防止剤、乳化油脂、有機酸、有機酸塩、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、エリソルビン酸、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等)、ナトリウム塩、カリウム塩などの1価アルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の2価アルカリ金属塩等が挙げられる。調味成分は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
また、例えば、ハム、ソーセージ等の畜肉加工食品の製造によく使用されているピックル液を、調味液として使用することもできる。
【0019】
以下に、各調味成分を例示する。
タンパク質としては、例えば、大豆タンパク、大豆タンパク分解物、大豆粉末、大豆ホエー濃縮物、乾燥卵白、卵黄、加糖卵黄、小麦グルテン、小麦グルテン分解物、乳ホエー、カゼインナトリウム等が挙げられる。タンパク質は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
また、糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトースなどの単糖類、ショ糖(砂糖)、乳糖、麦芽糖などの2~数個の単糖類が結びついてできた少糖類、オリゴ糖、澱粉、加工澱粉、デキストリン、グリコーゲンなどの多糖類等が挙げられる。糖類は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
また、甘味料としては、例えば、トレハロース、マルトトリオース、テトラオース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉加水分解物、還元澱粉糖化物等の甘味料等が挙げられる。甘味料は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
また、高甘味度甘味料としては、例えばアセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン、ラカンカ等が挙げられる。高甘味度甘味料は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
また、澱粉としては、例えば天然澱粉や加工澱粉を使用できる。天然澱粉としては、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、片栗澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、コーン澱粉、米澱粉、小麦澱粉、緑豆澱粉等が挙げられる。加工澱粉としては、これらの天然澱粉を加工したものを使用することができる。加工澱粉としては、例えば、澱粉を無水酢酸等でエステル化した酢酸澱粉、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン等が挙げられる。澱粉は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
また、増粘多糖類としては、例えば、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、タラガム、寒天、CMC、等が挙げられる。増粘多糖類は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
また、リン酸塩としては、例えば、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム等が挙げられる。リン酸塩は、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。
【0020】
次に、冷凍肉に使用される肉について説明をする。
本発明における冷凍肉に使用される肉は、食用にできる肉であれば特に制限なく使用できる。冷凍肉に使用される肉としては、具体的には、鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉、鹿肉、猪肉、兎肉、魚肉、などが挙げられる、これらの1種又は2種以上が使用されてもよい。特に、鶏むね肉、鶏ささみ肉、魚肉(例えば、旬を外した魚肉)、などの脂肪分が低く(好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下)、色調が薄い肉が好ましい。冷凍肉に使用される肉は、冷凍された履歴のある肉であってもよい。本発明の冷凍肉用品質改良剤を使用することにより、再冷凍解凍、再々冷凍解凍における品質劣化の抑制が期待できる。本発明の実施の形態の1つによれば、本発明の冷凍肉用品質改良剤は、肉を軟らかくするプロテアーゼ等の酵素を使用しなくてもよい。したがって、軟らかい肉質である魚介類の肉であっても組織(形状)を保持しやすい。
【0021】
次に、加工冷凍肉について説明をする。
本発明における加工冷凍肉は、本発明の冷凍肉用品質改良剤で処理された冷凍肉である。ここで、冷凍肉に使用される肉は、上記のとおりである。本発明の実施の形態の1つによれば、冷凍肉用品質改良剤の使用方法としては、漬け込み液として使用する方法(以下、「漬け込みによる方法」とも言う。)や注入液として使用する方法(以下、「注入による方法」とも言う。)、などが挙げられる。
【0022】
本発明の冷凍肉用品質改良剤(有効成分である油脂を含む調味液)を漬け込み液として使用して、加工冷凍肉を製造する方法の例について説明をする。
例えば、食塩、ポリリン酸塩、大豆蛋白、及び水を含有する調味液に、上記の、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂を添加し、ミキサーで混合し、漬け込み液を調製する。
容器に、調製した漬け込み液と冷凍肉用の肉を入れ、肉の周りに漬け込み液が付くように肉を動かす(タンブリングする)。肉の一部又は全部を漬け込み液に漬け込んだ状態で、1~7日程度冷蔵で保管する。保管後、冷凍処理して加工冷凍肉を製造する。
なお、使用する漬け込み液は、容器の中の食肉の全部が浸る量を使用しても良いが、食肉の全部が浸る量ではなくても、漬け込み処理により食肉の周りに液を付着させられる量を使用すれば良い。また、漬け込みは、減圧下で行ってもよいし、タンブリングと減圧開放を繰り返し行ってもよい。
【0023】
このように、本発明の冷凍肉用品質改良剤を漬け込み液として使用する場合、有効成分である条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂の量は、100質量部の冷凍肉用の肉に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部であり、さらに好ましくは1~8質量部である。
また、使用する冷凍肉用品質改良剤(有効成分である油脂を含む調味液の量)は、100質量部の冷凍肉用の肉に対して、好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは2~80質量部であり、さらに好ましくは5~50質量部である。
また、漬け込み後の肉の冷凍温度は、好ましくは-10℃以下であり、より好ましくは-15℃~-30℃である。
【0024】
次に、本発明の冷凍肉用品質改良剤(有効成分である油脂を含む調味液)を注入液として使用して、加工冷凍肉を製造する方法の例について説明をする。
例えば、食塩、ポリリン酸塩、大豆蛋白、及び水を含有する調味液に、上記の、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂を添加し、ミキサーで混合し、注入液を調製する。
調製した注入液を入れた注射器を用いて、冷凍肉用の肉の数カ所~数百カ所に注入液を注入する。
注入液の注入後、減圧処理及び減圧開放タンブリング処理を行った後、冷凍処理して加工冷凍肉を製造する。減圧処理及び減圧開放タンブリング処理は、繰り返し行ってもよい。
【0025】
このように、本発明の冷凍肉用品質改良剤を注入液として使用する場合、有効成分である条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂の量は、100質量部の冷凍肉用の肉に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部であり、さらに好ましくは1~8質量部である。
また、使用する冷凍肉用品質改良剤(有効成分である油脂を含む調味液の量)は、100質量部の冷凍肉用の肉に対して、好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは2~80質量部であり、さらに好ましくは5~50質量部である。
また、注入後の肉の冷凍温度は、好ましくは-10℃以下であり、より好ましくは-15℃~-30℃である。
【0026】
また、本発明の冷凍肉用品質改良剤は、有効成分である油脂を単独で剤として使用できる。例えば、先に説明をした有効成分である油脂と調味液とを含む冷凍肉用品質改良剤を漬け込み液として使用した加工冷凍肉の製造方法において、冷凍加工肉は、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂のみを漬け込み液として使用した方法で製造できる。
このように、有効成分である油脂のみを漬け込み液として使用する場合、使用する冷凍肉用品質改良剤(有効成分である油脂)の量は、100質量部の冷凍肉用の肉に対して、好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは2~80質量部であり、さらに好ましくは5~50質量部である。
また、例えば、先に説明をした有効成分である油脂と調味液とを含む冷凍肉用品質改良剤を注入液として使用した加工冷凍肉の製造方法において、冷凍加工肉は、条件(A)、(B)、(C)のうち、少なくとも1つを満たす油脂のみを注入液として使用した方法で製造できる。
このように、有効成分である油脂のみを注入液として使用する場合、使用する冷凍肉用品質改良剤(有効成分である油脂)の量は、100質量部の冷凍肉用の肉に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部であり、さらに好ましくは1~8質量部である。
【0027】
本発明の冷凍肉用品質改良剤を使用して製造された加工冷凍肉は、解凍後あるいは冷凍状態のまま、調理に用いられてもよい。調理は、好ましくは加熱調理である。加熱処理は、肉が加熱されれば良く、加熱の方法は限定されない。加熱調理としては、例えば、炒め加熱処理、油ちょう加熱処理、ボイル加熱処理、蒸し加熱処理、電子レンジ加熱処理、などが挙げられる。本発明の冷凍肉用品質改良剤を使用して製造された加工冷凍肉は、冷凍解凍による肉類の品質劣化(例えば、加熱調理で硬くなる、パサパサする、など)が抑制され得る。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
〔使用油脂〕
・MCT(略称:MCT1、商品名「O.D.O」、中鎖脂肪酸含有量100質量%、構成脂肪酸組成(質量比)はn-オクタン酸(C8):n-デカン酸(C10)=75:25、日清オイリオグループ株式会社製)
・菜種油(略称:RSO、商品名「日清キャノーラ油」、リノール酸含有量19.9質量%、不飽和脂肪酸含有量92.5質量%、日清オイリオグループ株式会社製)
・グレープシードオイル(略称:GSO、商品名「日清ピュアグレープシードオイル」、リノール酸含有量70.5質量%、不飽和脂肪酸含有量89.1質量%、日清オイリオグループ株式会社製)
・大豆油(略称:SBO、商品名「日清大豆白絞油」、リノール酸含有量53.2質量%、不飽和脂肪酸含有量84.6質量%、日清オイリオグループ株式会社製)
・MCT菜種混合油(略称:MR-MIX、上記MCT1と菜種油とを質量比2:8で混合した混合油、中鎖脂肪酸含有量20.1質量%、リノール酸含有量15.8質量%)
・MCT大豆混合油(略称:MS-MIX、上記MCT1と大豆油とを質量比45:55で混合した混合油、中鎖脂肪酸含有量45.2質量%、リノール酸含有量29.1質量%)
【0030】
〔漬け込みによる加工冷凍肉の製造1〕
表1に、製造した加工冷凍肉(比較例1、2及び実施例1、2)の原料及び配合量を示した。
加工冷凍肉は、以下の(1)~(3)に従って製造した。
(1)ジッパー付きのビニール袋に、皮を取り除いた鶏むね肉150gと冷凍肉用品質改良剤21g(比較例1は0g)とを入れる。
(2)ビニール袋を軽く揉みこみ、全体を馴染ませる。
(3)30分間静置した後、-20℃で冷凍する。
【0031】
【0032】
〔加工冷凍肉の評価1〕
上記で得られた比較例1、2及び実施例1、2の加工冷凍肉は、-20℃で7日間冷凍後、85℃で30分間湯煎して、解凍した。湯煎(加熱調理)後、室温で30分間静置した解凍肉について、以下の<官能評価>と<硬さ評価>を行った。結果は、表2に示した。
<官能評価>
食品評価経験の豊かな4名のパネラーが、比較例1、2及び実施例1、2の加工冷凍肉の解凍(加熱調理)肉を食した際の、柔らかさとしっとりさ、について、以下の基準で総合的に評価した。
(柔らかさ)
×:比較例1よりも硬い
△:比較例1と同程度の柔らかさである
○:比較例1よりもやや柔らかい
◎:比較例1よりも明らかに柔らかい
(しっとりさ)
×:比較例1よりもパサパサしている
△:比較例1と同程度にしっとりしている
○:比較例1よりもややしっとりしている
◎:比較例1よりも明らかにしっとりしている
<硬さ評価>
比較例1、2及び実施例1、2の加工冷凍肉の解凍肉について、テクスチャーアナライザー(TA.XTplus、英弘精機株式会社製)を使用して、1cm2の円柱プローブを200mm/分の速度で20.0mm侵入させた時の荷重(g)を測定した。結果は、表2に示した。
【0033】
【0034】
〔漬け込みによる加工冷凍肉の製造2〕
表3に、製造した加工冷凍肉(比較例3~5及び実施例3、4)の原料及び配合量を示した。
加工冷凍肉は、以下の(1)~(4)に従って製造した。
(1)ジッパー付きのビニール袋に、表3に記載の、解凍後水気を拭き取った鮭の切り身と漬け込み液とを入れる。
(2)冷蔵庫で12時間浸漬し、全体を馴染ませる。
(3)切り身を取り出し、漬け込み液を拭き取る。
(4)(3)の切り身を-30℃で急速冷凍後、ジッパー付きのビニール袋に入れ、-20℃の冷凍庫で保存する。
【0035】
【0036】
〔加工冷凍肉の評価2〕
上記で得られた比較例3~5及び実施例3、4の加工冷凍肉は、-20℃で10日間冷凍後、そのままIHヒーターにて加熱調理した。加熱調理後、室温で30分間静置した解凍肉について、以下の<官能評価>を行った。結果は、表4に示した。
<官能評価>
食品評価経験の豊かな4名のパネラーが、比較例3~5及び実施例3、4の加工冷凍肉の解凍(加熱調理)肉を食した際の、柔らかさとしっとりさ、について、以下の基準で総合的に評価した。
(柔らかさ)
×:比較例5よりも硬い
△:比較例5と同程度の柔らかさである
○:比較例5よりもやや柔らかい
◎:比較例5よりも明らかに柔らかい
(しっとりさ)
×:比較例5よりもパサパサしている
△:比較例5と同程度にしっとりしている
○:比較例5よりもややしっとりしている
◎:比較例5よりも明らかにしっとりしている
【0037】