(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032185
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】磁気センサおよび磁気センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 50/10 20230101AFI20240305BHJP
【FI】
H01L43/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135698
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉嶋 晃士
【テーマコード(参考)】
5F092
【Fターム(参考)】
5F092AA01
5F092AB01
5F092AC04
5F092AD03
5F092AD25
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB43
5F092BB55
5F092BC03
5F092BC04
5F092BC07
5F092BC13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】磁気センサおよび磁気センサの製造方法を提供する。
【解決手段】磁気センサ200は、基板上に設けられ、基板の面内方向に隣り合って設けられた第1磁気センサ部100-1および第2磁気センサ部100-2を備え、第1磁気センサ部および第2磁気センサ部はそれぞれ、第1磁化固定層10-1、10-2と、第1磁化固定層上に設けられた第1非磁性層20-1、20-2と、第1非磁性層上に設けられた磁化自由層30-1、30-2と、磁化自由層上に設けられた第2非磁性層22-1、22-2と、第2非磁性層上に設けられた第2磁化固定層40-1、40-2とを有し、磁化自由層は、第1非磁性層の上方に設けられた第1強磁性層と、第1強磁性層上に設けられた第3非磁性層と、第3非磁性層上に設けられた第2強磁性層と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられ、前記基板の面内方向に隣り合って設けられた第1磁気センサ部および第2磁気センサ部を備え、前記第1磁気センサ部および前記第2磁気センサ部はそれぞれ、
第1磁化固定層と、
前記第1磁化固定層上に設けられた第1非磁性層と、
前記第1非磁性層上に設けられた磁化自由層と、
前記磁化自由層上に設けられた第2非磁性層と、
前記第2非磁性層上に設けられた第2磁化固定層と、
を有し、
前記磁化自由層は、前記第1非磁性層の上方に設けられた第1強磁性層と、前記第1強磁性層上に設けられた第3非磁性層と、前記第3非磁性層上に設けられた第2強磁性層とを含む、
磁気センサ。
【請求項2】
前記第3非磁性層の厚さが、2nmよりも大きい、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第3非磁性層の厚さが、0.7nm以上1.1nm以下である、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第1磁化固定層は、第1反強磁性層と、前記第1反強磁性層上に設けられ前記第1非磁性層の下方に設けられた第3強磁性層とを含み、
前記第2磁化固定層は、前記第2非磁性層の上方に設けられた第4強磁性層と、前記第4強磁性層上に設けられた第2反強磁性層とを含む、
請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第1磁化固定層の磁化は、前記第1磁化固定層の層内方向における第1の方向に固定され、
前記第1の方向における前記磁化自由層の長さが、前記磁化自由層の層内方向において前記第1の方向に交差する方向における前記磁化自由層の長さよりも大きい、
請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1の方向に交差する方向における、前記第1強磁性層の側面と、前記第3非磁性層の側面と、前記第2強磁性層の側面とが、同一平面上にある、請求項5に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記磁化自由層は、
前記第1非磁性層上に設けられた第5強磁性層と、
前記第5強磁性層の上方に設けられ前記第1強磁性層の下方に設けられた第4非磁性層と、
前記第2強磁性層の上方に設けられた第5非磁性層と、
前記第5非磁性層上に設けられ前記第2非磁性層に接して設けられた第6強磁性層と、
をさらに含み、
前記第1磁化固定層は、前記第3強磁性層の上方に設けられた第6非磁性層と、前記第6非磁性層上に設けられ前記第1非磁性層に接して設けられた第7強磁性層とをさらに含み、
前記第2磁化固定層は、前記第2非磁性層上に設けられた第8強磁性層と、前記第8強磁性層上に設けられ前記第4強磁性層の下方に設けられた第7非磁性層とをさらに含む、
請求項4に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記第5強磁性層と前記第7強磁性層とは、同じ物質で形成され、
前記第6強磁性層と前記第8強磁性層とは、同じ物質で形成されている、
請求項7に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記磁化自由層は、
前記第2強磁性層上に設けられた第8非磁性層と、
前記第5非磁性層の下方に設けられ前記第8非磁性層上に設けられた第9強磁性層と、
をさらに含む、請求項7に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記磁化自由層は、
前記第9強磁性層上に設けられた第9非磁性層と、
前記第5非磁性層の下方に設けられ前記第9非磁性層上に設けられた第10強磁性層と、
をさらに含む、
請求項9に記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記第1磁化固定層の磁化は、前記第1磁化固定層の層内方向における第1の方向に固定され、
前記第1の方向に交差する方向における、前記第1強磁性層の側面と、前記第3非磁性層の側面と、前記第2強磁性層の側面とが、同一平面上にあり、
前記第1の方向に交差する方向における、前記第9強磁性層の側面と、前記第9非磁性層の側面と、前記第10強磁性層の側面とが、同一平面上にある、
請求項10に記載の磁気センサ。
【請求項12】
上面視において、前記同一平面上にある前記第1強磁性層の側面、前記第3非磁性層の側面および前記第2強磁性層の側面の位置と、前記同一平面上にある前記第9強磁性層の側面、前記第9非磁性層の側面および前記第10強磁性層の側面の位置とが異なる、請求項11に記載の磁気センサ。
【請求項13】
前記第1磁気センサ部および前記第2磁気センサ部は、前記基板上に設けられたバッファ層をさらに有し、
前記第2磁気センサ部は、前記基板の面内方向に前記第1磁気センサ部と離隔して配置され、
前記バッファ層の上方に、前記第1磁気センサ部の前記第1磁化固定層が設けられ、且つ、前記第2磁気センサ部の前記第1磁化固定層が設けられ、
前記基板の面内方向における前記第1磁気センサ部と前記第2磁気センサ部との間において、前記バッファ層の上面に、前記バッファ層の上面から下面への方向に窪んだ凹部が設けられている、
請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項14】
前記第1磁化固定層の磁化は、前記第1磁化固定層の層内方向における第1の方向に固定され、
前記第1磁気センサ部は、前記基板上に設けられ前記第1磁気センサ部の前記第1磁化固定層の下方に設けられた第1バッファ層をさらに有し、
前記第2磁気センサ部は、前記基板上に設けられ前記第2磁気センサ部の前記第1磁化固定層の下方に設けられ、前記基板の面内方向において前記第1の方向に交差する方向に隣り合って設けられ、記第1バッファ層と絶縁された第2バッファ層をさらに有し、
前記第1磁気センサ部および前記第2磁気センサ部はそれぞれ、前記第2磁化固定層上に設けられた電極層をさらに有し、
前記第1バッファ層と、前記第2磁気センサ部の前記電極層とが、電気的に接続されている、
請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項15】
前記磁化自由層と離隔して配置された磁気収束部をさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項16】
一つの前記磁気収束部が、前記第1磁気センサ部の前記磁化自由層と離隔して配置され、且つ、前記第2磁気センサ部の前記磁化自由層と離隔して配置される、請求項15に記載の磁気センサ。
【請求項17】
上面視において、第1の前記磁気収束部が前記磁化自由層の一方側に配置され、第2の前記磁気収束部が前記磁化自由層の他方側に配置され、
前記磁化自由層の層内方向における、第1の前記磁気収束部から第2の前記磁気収束部への方向に交差する方向に見て、第1の前記磁気収束部から第2の前記磁気収束部への方向における前記磁化自由層の下面の幅が上面の幅よりも小さい、
請求項15に記載の磁気センサ。
【請求項18】
基板上に設けられたバッファ層と、前記バッファ層上に設けられた第1磁化固定層と、前記第1磁化固定層上に設けられた第1非磁性層と、前記第1非磁性層上に設けられた磁化自由層と、前記磁化自由層上に設けられた第2非磁性層と、前記第2非磁性層上に設けられた第2磁化固定層とを有する積層体に対して、
前記積層体の積層方向に、前記第2磁化固定層から前記磁化自由層までをエッチングすることにより、第1の磁気センサ部と、前記バッファ層の層内方向に前記第1の磁気センサ部と離隔した第2の磁気センサ部とを形成するエッチング工程を備える、
磁気センサの製造方法。
【請求項19】
前記エッチング工程は、前記積層体の積層方向に、前記第2磁化固定層から前記第1非磁性層までをエッチングする工程である、請求項18に記載の磁気センサの製造方法。
【請求項20】
前記エッチング工程は、前記積層体の積層方向に、前記第2磁化固定層から前記第1磁化固定層までをエッチングする工程である、請求項19に記載の磁気センサの製造方法。
【請求項21】
前記エッチング工程は、前記積層体の積層方向に、前記第2磁化固定層から、前記バッファ層の一部までをエッチングする工程である、請求項20に記載の磁気センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサおよび磁気センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「第1の磁気トンネル接合(MTJ)スタック、第2のMTJスタックおよび共通の反強磁性結合自由層を有する差動MTJセンサが提供される。」と記載されている。
特許文献2には、「バルクハウゼンノイズの抑制が容易で・・・構造が簡単な差動動作タイプの磁気抵抗効果型ヘッドを提供する。」と記載されている。
特許文献3には、「巨大磁気抵抗効果ヘッドの再生出力を向上するとともに、再生波形の上下非対称性を改善する。」と記載されている。
特許文献4には、「素子サイズを小さくしても、記録に要するパワーを軽減でき、かつ材料選択の幅が広い磁気抵抗効果素子を提供する。」と記載されている。
特許文献5には、「第1のMR磁性層(自由層)と、非磁性中間層と、第2のMR磁性層(自由層)と、がこの順で互いに接して設けられたMR積層体を有する薄膜磁気ヘッド」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 米国特許第6259586号明細書
[特許文献2] 特開平7-85426号公報
[特許文献3] 特開2000-149224号公報
[特許文献4] 特開2001-156358号公報
[特許文献5] 特開2010-33689号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、磁気センサを提供する。磁気センサは、基板上に設けられ、基板の面内方向に隣り合って設けられた第1磁気センサ部および第2磁気センサ部を備える。第1磁気センサ部および第2磁気センサ部はそれぞれ、第1磁化固定層と、第1磁化固定層上に設けられた第1非磁性層と、第1非磁性層上に設けられた磁化自由層と、磁化自由層上に設けられた第2非磁性層と、第2非磁性層上に設けられた第2磁化固定層とを有する。磁化自由層は、第1非磁性層の上方に設けられた第1強磁性層と、第1強磁性層上に設けられた第3非磁性層と、第3非磁性層上に設けられた第2強磁性層とを含む。
【0004】
第3非磁性層の厚さは、2nmより大きくてよい。
【0005】
第3非磁性層の厚さは、0.7nm以上1.1nm以下であってよい。
【0006】
上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁化固定層は、第1反強磁性層と、第1反強磁性層上に設けられ第1非磁性層の下方に設けられた第3強磁性層とを含んでよく、第2磁化固定層は、第2非磁性層の上方に設けられた第4強磁性層と、第4強磁性層上に設けられた第2反強磁性層とを含んでよい。
【0007】
上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁化固定層の磁化は、第1磁化固定層の層内方向における第1の方向に固定されてよく、第1の方向における磁化自由層の長さは、磁化自由層の層内方向において第1の方向に交差する方向における磁化自由層の長さよりも大きくてよい。
【0008】
上記いずれかの磁気センサにおいて、第1の方向に交差する方向における、第1強磁性層の側面と、第3非磁性層の側面と、第2強磁性層の側面とが、同一平面上にあってよい。
【0009】
上記いずれかの磁気センサにおいて、磁化自由層は、第1非磁性層上に設けられた第5強磁性層と、第5強磁性層の上方に設けられ第1強磁性層の下方に設けられた第4非磁性層と、第2強磁性層の上方に設けられた第5非磁性層と、第5非磁性層上に設けられ第2非磁性層に接して設けられた第6強磁性層とをさらに含んでよい。上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁化固定層は、第3強磁性層の上方に設けられた第6非磁性層と、第6非磁性層上に設けられ第1非磁性層に接して設けられた第7強磁性層とをさらに含んでよく、第2磁化固定層は、第2非磁性層上に設けられた第8強磁性層と、第8強磁性層上に設けられ第4強磁性層の下方に設けられた第7非磁性層とをさらに含んでよい。
【0010】
上記いずれかの磁気センサにおいて、第5強磁性層と第7強磁性層とは同じ物質で形成されてよく、第6強磁性層と第8強磁性層とは同じ物質で形成されてよい。
【0011】
上記いずれかの磁気センサにおいて、磁化自由層は、第2強磁性層上に設けられた第8非磁性層と、第5非磁性層の下方に設けられ第8非磁性層上に設けられた第9強磁性層とをさらに含んでよい。
【0012】
上記いずれかの磁気センサにおいて、磁化自由層は、第9強磁性層上に設けられた第9非磁性層と、第5非磁性層の下方に設けられ第9非磁性層上に設けられた第10強磁性層とをさらに含んでよい。
【0013】
上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁化固定層の磁化は、第1磁化固定層の層内方向における第1の方向に固定されてよい。上記いずれかの磁気センサにおいて、第1の方向に交差する方向における、第1強磁性層の側面と、第3非磁性層の側面と、第2強磁性層の側面とは同一平面上にあってよく、第1の方向に交差する方向における、第9強磁性層の側面と、第9非磁性層の側面と、第10強磁性層の側面とは同一平面上にあってよい。
【0014】
上記いずれかの磁気センサにおいて、上面視において同一平面上にある第1強磁性層の側面、第3非磁性層の側面および第2強磁性層の側面の位置と、同一平面上にある第9強磁性層の側面、第9非磁性層の側面および第10強磁性層の側面の位置とは異なっていてよい。
【0015】
上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁気センサ部および第2磁気センサ部は、基板上に設けられたバッファ層をさらに有してよい。上記いずれかの磁気センサにおいて、第2磁気センサ部は、基板の面内方向に第1磁気センサ部と離隔して配置されてよく、バッファ層の上方に、第1磁気センサ部の第1磁化固定層が設けられ、且つ、第2磁気センサ部の第1磁化固定層が設けられてよい。上記いずれかの磁気センサにおいて、基板の面内方向における第1磁気センサ部と第2磁気センサ部との間において、バッファ層の上面に、バッファ層の上面から下面への方向に窪んだ凹部が設けられていてよい。
【0016】
上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁化固定層の磁化は、第1磁化固定層の層内方向における第1の方向に固定されてよい。上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁気センサ部は、基板上に設けられ第1磁気センサ部の第1磁化固定層の下方に設けられた第1バッファ層をさらに有してよく、第2磁気センサ部は、基板上に設けられ第2磁気センサ部の第1磁化固定層の下方に設けられ、基板の面内方向において第1の方向に交差する方向に隣り合って設けられ、第1バッファ層と絶縁された第2バッファ層をさらに有してよい。上記いずれかの磁気センサにおいて、第1磁気センサ部および第2磁気センサ部はそれぞれ、第2磁化固定層上に設けられた電極層をさらに有してよく、第1バッファ層と第2磁気センサ部の電極層とが、電気的に接続されていてよい。
【0017】
上記いずれかの磁気センサは、磁化自由層と離隔して配置された磁気収束部をさらに備えてよい。
【0018】
上記いずれかの磁気センサにおいて、一つの磁気収束部が、第1磁気センサ部の磁化自由層と離隔して配置され、且つ、第2磁気センサ部の磁化自由層と離隔して配置されてよい。
【0019】
上記いずれかの磁気センサにおいて、上面視において第1の磁気収束部が磁化自由層の一方側に配置されてよく、第2の磁気収束部が磁化自由層の他方側に配置されてよい。上記いずれかの磁気センサにおいて、磁化自由層の層内方向における、第1の磁気収束部から第2の磁気収束部への方向に交差する方向に見て、第1の磁気収束部から第2の磁気収束部への方向における磁化自由層の下面の幅が上面の幅よりも小さくてよい。
【0020】
本発明の第2の態様においては、磁気センサの製造方法を提供する。磁気センサの製造方法は、基板上に設けられたバッファ層と、バッファ層上に設けられた第1磁化固定層と、第1磁化固定層上に設けられた第1非磁性層と、第1非磁性層上に設けられた磁化自由層と、磁化自由層上に設けられた第2非磁性層と、第2非磁性層上に設けられた第2磁化固定層とを有する積層体に対して、積層体の積層方向に、第2磁化固定層から磁化自由層までをエッチングすることにより、第1の磁気センサ部と、バッファ層の層内方向に第1の磁気センサ部と離隔した第2の磁気センサ部とを形成するエッチング工程を備える。
【0021】
エッチング工程は、積層体の積層方向に、第2磁化固定層から第1非磁性層までをエッチングする工程であってよい。
【0022】
エッチング工程は、積層体の積層方向に、第2磁化固定層から第1磁化固定層までをエッチングする工程であってよい。
【0023】
エッチング工程は、積層体の積層方向に、第2磁化固定層から、バッファ層の一部までをエッチングする工程であってよい。
【0024】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示される二つの磁気センサ部100のうちの一つをX軸方向から見た場合の一例を示す図である。
【
図3】
図2における磁化自由層30の上面視における図である。
【
図4】複数の磁気センサ部100の配列の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示される磁気センサ200をX軸方向に見た場合の一例を示す図である。
【
図6】複数の磁気センサ部100の配列の他の一例を示す図である。
【
図7】
図6に示される磁気センサ200をX軸方向に見た場合の一例を示す図である。
【
図8】比較例の磁気センサ400の配列を示す図である。
【
図9】
図8に示される磁気センサ400をX軸方向に見た図である。
【
図10A】複数の磁気センサ部100の配列の他の一例を示す図である。
【
図10B】
図10Aに示される磁気センサ200をX軸方向に見た場合の一例を示す図である。
【
図11】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の他の一例を示す斜視図である。
【
図12】比較例の磁気センサ400を示す斜視図である。
【
図13】
図1に示される磁気センサ部100-1をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
【
図14】
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
【
図15】
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
【
図16】
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
【
図17】
図16における磁化自由層30の上面視における図である。
【
図18】
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
【
図19】磁気センサ200をX軸方向から見た他の一例を示す図である。
【
図21A】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の他の一例を示す斜視図である。
【
図21B】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の他の一例を示す斜視図である。
【
図22】
図21Bに示される磁気センサ200の上面視における図である。
【
図23】
図21Bに示される磁気センサ200をY軸方向に見た図である。
【
図24】
図21Bに示される磁気センサ200をY軸方向に見た他の図である。
【
図25】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法の一例を示す図である。
【
図26】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法の一例を示す図である。
【
図27】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法におけるエッチング工程S104の他の一例を示す図である。
【
図28】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法におけるエッチング工程S104の他の一例を示す図である。
【
図29】本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法におけるエッチング工程S104の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の一例を示す斜視図である。磁気センサ200は、磁気センサ部100を備える。磁気センサ200は、複数の磁気センサ部100を備えてよい。
図1の例では、二つの磁気センサ部100(磁気センサ部100-1および磁気センサ部100-2)が示されている。
【0028】
複数の磁気センサ部100は、基板90(後述)上に設けられている。複数の磁気センサ部100は、それぞれ第1磁化固定層10を有する。磁気センサ部100は、バッファ層92を有してよい。本例においては、第1磁化固定層10はバッファ層92上に設けられている。
【0029】
本明細書においては、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書においては、基板90(後述)の板面と平行な面をXY面とし、基板90から電極層50(後述)へ向かう方向(基板90に直交する方向)をZ軸とする。本明細書において、基板90の板面の面内方向をXY面内方向とし、XY面内において第1磁化固定層10の磁化が固定される方向をX軸方向とし、XY面内においてX軸に直交する方向をY軸方向とする。Z軸方向は鉛直方向に平行な方向であってよく、XY面は水平面であってよい。本例においては、磁気センサ部100-1と磁気センサ部100-2とは、Y軸方向に並んでいる。
【0030】
本明細書においては、磁気センサ200における電極層50(後述)側を「上」、バッファ層92側を「下」と称する。本明細書において、電極層50(後述)からバッファ層92への方向に見た場合を、上面視と称する。
【0031】
第1磁化固定層10の磁化は、予め定められた第1方向に固定されていてよい。本例においては、当該第1方向はX軸方向である。
【0032】
複数の磁気センサ部100は、それぞれ第1非磁性層20を有する。第1非磁性層20は、第1磁化固定層10上に設けられている。第1非磁性層20は、絶縁体であってよい。第1非磁性層20は、例えばMgO(酸化マグネシウム)で形成される。第1非磁性層20の厚さは、1nm以上10nm以下であってよい。第1非磁性層の厚さは、例えば3nmである。
【0033】
複数の磁気センサ部100は、それぞれ磁化自由層30を有する。磁化自由層30は、第1非磁性層20上に設けられている。磁化自由層30は、軟磁気特性を有してよい。磁化自由層30は、所謂フリー層である。
【0034】
複数の磁気センサ部100は、それぞれ第2非磁性層22を有する。第2非磁性層22は、磁化自由層30上に設けられている。第2非磁性層22は、第1非磁性層20と同じ材料で形成されていてよい。第2非磁性層22は、例えばMgO(酸化マグネシウム)で形成される。第1非磁性層20の厚さと第2非磁性層22の厚さとは、等しくてよく、異なっていてもよい。
【0035】
複数の磁気センサ部100は、それぞれ第2磁化固定層40を有する。第2磁化固定層40は、第2非磁性層22上に設けられている。第2磁化固定層40の磁化は、第1磁化固定層の磁化と同じ方向に固定されていてよい。
【0036】
複数の磁気センサ部100は、それぞれ電極層50を有してよい。電極層50は、金属であってよい。電極層50は、例えばTa(タンタル)とRu(ルテニウム)との積層体である。
【0037】
図2は、
図1に示される二つの磁気センサ部100のうちの一つをX軸方向から見た場合の一例を示す図である。
図2は、磁気センサ部100がTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子である場合の一例である。
【0038】
磁化自由層30は、第1強磁性層31、第2強磁性層32および第3非磁性層33を含む。第1強磁性層31は、第1非磁性層20の上方に設けられている。第3非磁性層33は、第1強磁性層31上に設けられている。第2強磁性層32は、第3非磁性層33上に設けられている。
【0039】
第1強磁性層31および第2強磁性層32は、アモルファス材料で形成されることが好ましい。第1強磁性層31および第2強磁性層32がアモルファス材料で形成されることにより、第1強磁性層の上面および下面の平坦性が向上しやすくなる。第2強磁性層32についても、同様である。第1強磁性層31および第2強磁性層32は、例えばCoFeSiBで形成される。CoFeSiBの組成は、例えばCo70.5Fe4.5Si15B10である。
【0040】
第1強磁性層31および第2強磁性層32の厚さは、20nm以上500nm以下であってよい。第1強磁性層31および第2強磁性層32の厚さは、例えば100nmである。
【0041】
第3非磁性層33の厚さは、2nmよりも大きくてよい。第3非磁性層33の厚さは、2nmより大きく100nm以下であってよい。第3非磁性層33の厚さは、2nmより大きく20nm以下であってもよい。第3非磁性層33の厚さは、例えば10nmである。第3非磁性層33の厚さが2nm以上であることにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とは、第3非磁性層33を介したRKKY相互作用よりも、側面SF11(後述)と側面SF21(後述)とにおける静磁気的な相互作用および側面SF12(後述)と側面SF22(後述)とにおける静磁気的な相互作用により、結合しやすくなる。これにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とは、第1強磁性層31の磁化の向きと第2強磁性層32の磁化の向きとが反平行になるように結合しやすくなる。
【0042】
第3非磁性層33の厚さは、0.7nm以上1.1nm以下であってもよい。第3非磁性層33の厚さが0.7nm以上1.1nm以下であることにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とはRKKY相互作用により反強磁性的に結合しやすくなる。第1強磁性層31と第2強磁性層32とが反強磁性的に結合するとは、第1強磁性層31の磁化の向きと第2強磁性層32の磁化の向きとが反平行に結合することを指す。これにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とは、第1強磁性層31の磁化の向きと第2強磁性層32の磁化の向きとが反平行になるように結合しやすくなる。
【0043】
第3非磁性層33は、金属であってよい。第3非磁性層33は、例えばRu(ルテニウム)で形成される。
【0044】
第1磁化固定層10は、第1反強磁性層11および第3強磁性層12を含んでよい。第3強磁性層12は、第1反強磁性層11上に設けられている。第3強磁性層12は、第1非磁性層20の下方に設けられている。第2磁化固定層40は、第2反強磁性層41および第4強磁性層42を含んでよい。第4強磁性層42は、第2非磁性層22の上方に設けられている。第2反強磁性層41は、第4強磁性層42上に設けられている。
【0045】
第3強磁性層12および第4強磁性層42は、結晶性材料で形成されてよい。第3強磁性層12および第4強磁性層42は、例えばCoFeで形成される。CoFeの組成は、例えばCo75Fe25である。第3強磁性層12の厚さおよび第4強磁性層42の厚さは、10nm未満であってよい。第3強磁性層12の厚さおよび第4強磁性層42の厚さは、例えば2nmである。
【0046】
第1反強磁性層11は、第3強磁性層12の磁化の向きを固定する。第2反強磁性層41は、第4強磁性層42の磁化の向きを固定する。第1反強磁性層11および第2反強磁性層41は、所謂ピニング層である。本例においては、第1反強磁性層11は第3強磁性層12の磁化の向きをX軸方向に固定し、第2反強磁性層41は第4強磁性層42の磁化の向きをX軸方向に固定する。
図2において、第3強磁性層12の磁化の向きおよび第4強磁性層42の磁化の向きが、矢印にて示されている。
【0047】
第1反強磁性層11および第2反強磁性層41は、例えばIrMnで形成される。IrMnの組成は、例えばIr22Mn78である。第1反強磁性層11の厚さおよび第2反強磁性層41の厚さは、2nm以上20nm以下であってよい。第1反強磁性層11の厚さおよび第2反強磁性層41の厚さは、例えば10nmである。
【0048】
磁化自由層30は、第5強磁性層34、第4非磁性層35、第5非磁性層37および第6強磁性層36をさらに含んでよい。第5強磁性層34は、第1非磁性層20上に設けられている。第4非磁性層35は、第5強磁性層34上に設けられている。本例において、第4非磁性層35は第1強磁性層31に接して設けられている。第5非磁性層37は、第2強磁性層32上に設けられている。第6強磁性層36は、第5非磁性層37上に設けられている。本例において、第6強磁性層36は第2非磁性層22に接して設けられている。
【0049】
第5強磁性層34および第6強磁性層36は、例えばCoFeBで形成される。CoFeBの組成は、例えばCo40Fe40B20である。第5強磁性層34の厚さおよび第6強磁性層36の厚さは、10nm未満であってよい。第5強磁性層34の厚さおよび第6強磁性層36の厚さは、例えば3nmである。
【0050】
第4非磁性層35の厚さおよび第5非磁性層37の厚さは、2nm未満であってよい。第4非磁性層35の厚さおよび第5非磁性層37の厚さの一例は、0.4nmである。当該厚さの他の例は、0.9nmである。第4非磁性層35および第5非磁性層37は、金属であってよい。第4非磁性層35および第5非磁性層37は、例えばRu(ルテニウム)で形成される。
【0051】
本例においては、第1強磁性層31および第5強磁性層34は、第4非磁性層35に接している。本例において、第4非磁性層35の厚さは2nm未満である。このため、第1強磁性層31と第5強磁性層34とは強磁性的または反強磁性的に結合し得る。同様に、第2強磁性層32と第6強磁性層36とは強磁性的または反強磁性的に結合し得る。第1強磁性層31と第5強磁性層34とが強磁性的に結合するとは、第1強磁性層31の磁化の向きと第5強磁性層34の磁化の向きとが平行に(同じ向きに)結合することを指す。第4非磁性層35の厚さが0.4nmの場合、第1強磁性層31と第5強磁性層34とは強磁性的に結合し得、第2強磁性層32と第6強磁性層36とは強磁性的に結合し得る。第4非磁性層35の厚さが0.9nmの場合、第1強磁性層31と第5強磁性層34とはRKKY相互作用により反強磁性的に結合し得、第2強磁性層32と第6強磁性層36とはRKKY相互作用により反強磁性的に結合し得る。
【0052】
第1磁化固定層10は、第6非磁性層13および第7強磁性層14をさらに含んでよい。第6非磁性層13は、第3強磁性層12上に設けられている。第7強磁性層14は、第6非磁性層13上に設けられている。本例において、第7強磁性層14は第1非磁性層20に接して設けられている。第2磁化固定層40は、第7非磁性層43および第8強磁性層44をさらに含んでよい。本例において、第8強磁性層44は第2非磁性層22上に設けられている。第7非磁性層43は、第8強磁性層44上に設けられている。第7非磁性層43は、第4強磁性層42に接して設けられている。
【0053】
第7強磁性層14および第8強磁性層44は、例えばCoFeBで形成される。CoFeBの組成は、例えばCo40Fe40B20である。第7強磁性層14の厚さおよび第8強磁性層44の厚さは、10nm未満であってよい。第7強磁性層14の厚さおよび第8強磁性層44の厚さは、例えば3nmである。
【0054】
第6非磁性層13の厚さおよび第7非磁性層43の厚さは、2nm未満であってよい。第6非磁性層13の厚さおよび第7非磁性層43の厚さは、例えば0.9nmである。第6非磁性層13および第7非磁性層43は、金属であってよい。第6非磁性層13および第7非磁性層43は、例えばRu(ルテニウム)で形成される。
【0055】
本例においては、第7強磁性層14および第3強磁性層12は、第6非磁性層13に接している。本例において、第6非磁性層13の厚さは2nm未満である。このため、第7強磁性層14と第3強磁性層12とは強磁性的または反強磁性的に結合し得る。第6非磁性層13の厚さが0.9nmの場合、第7強磁性層14と第3強磁性層12とは、RKKY相互作用により反強磁性的に結合し得る。同様に、第7非磁性層43の厚さが0.9nmの場合、第8強磁性層44と第4強磁性層42とは、RKKY相互作用により反強磁性的に結合し得る。
【0056】
第5強磁性層34と第7強磁性層14とは、同じ物質で形成されていてよい。第6強磁性層36と第8強磁性層44とは、同じ物質で形成されていてよい。第5強磁性層34と第7強磁性層14とが同じ物質で形成されることにより、磁気センサ部100のTMR効果が増大しやすくなる。第6強磁性層36と第8強磁性層44とが同じ物質で形成されることにより、磁気センサ部100のTMR効果が増大しやすくなる。
【0057】
第5強磁性層34と、第7強磁性層14と、第6強磁性層36と、第8強磁性層44とは、同じ物質で形成されていてよい。第5強磁性層34と、第7強磁性層14と、第6強磁性層36と、第8強磁性層44とは、例えばCoFeBで形成される。CoFeBの組成は、例えばCo40Fe40B20である。
【0058】
バッファ層92は、基板90上に設けられてよい。基板90は、半導体基板であってよい。バッファ層92は複数の金属層を含んでよい。本例においては、バッファ層92は第1金属層93~第6金属層98を含む。本例において、第1金属層93は基板90上に設けられ、第2金属層94は第1金属層93上に設けられ、第3金属層95は第2金属層94上に設けられ、第4金属層96は第3金属層95上に設けられ、第5金属層97は第4金属層96上に設けられ、第6金属層98は第5金属層97上に設けられている。第1金属層93~第6金属層98は、アモルファス材料で形成されてよい。バッファ層92に含まれる複数の金属層は、結晶性材料であってよい。当該複数の金属層のうち隣接する二つの金属層(例えば第1金属層93と第2金属層94)の結晶構造は、互いに異なっていてよい。当該二つの金属層の結晶構造が互いに異なることにより、バッファ層92が単一の金属層で形成される場合よりも、バッファ層92の上面(本例においては第6金属層98の上面)の平坦性が向上しやすくなる。
【0059】
本例において、第1金属層93、第3金属層95および第5金属層97はTa(タンタル)で形成され、第2金属層94、第4金属層96および第6金属層98はRu(ルテニウム)で形成されている。第1金属層93の厚さ、第3金属層95の厚さおよび第5金属層97の厚さは、2nm以上10nm以下であってよい。第1金属層93の厚さ、第3金属層95の厚さおよび第5金属層97の厚さは、例えば5nmである。第2金属層94の厚さ、第4金属層96の厚さおよび第6金属層98の厚さは、5nm以上50nm以下であってよい。第2金属層94の厚さおよび第4金属層96の厚さは、例えば20nmである。第6金属層98の厚さは、例えば10nmである。
【0060】
第1金属層93~第6金属層98の全てが、同じアモルファス材料で形成されていてもよい。第1金属層93~第6金属層98の全てが同じアモルファス材料で形成される場合、第1金属層93~第6金属層98のそれぞれの厚さは、50nmであってよい。バッファ層92を形成する工程において、基板90上に第1金属層93を50nm形成した後、第1金属層93の上面に逆スパッタリング処理を実施してよい。これにより、第1金属層93の上面の平坦性が向上し得る。当該逆スパッタリング処理は、例えば、0.01Paの圧力のAr(アルゴン)雰囲気中で300Wで600秒間、実施されてよい。
【0061】
電極層50は、第1金属層51および第2金属層52を含んでよい。第1金属層51は、第2反強磁性層41上に設けられてよい。第2金属層52は、第1金属層51上に設けられてよい。第1金属層51は、Ta(タンタル)で形成されてよい。第2金属層52は、Ru(ルテニウム)で形成されてよい。
【0062】
第1磁化固定層10の磁化は、第1磁化固定層10の層内方向における第1の方向に固定されていてよい。当該第1の方向を、方向dr1とする。本例において、第1磁化固定層10の層内方向とはXY面内の方向である。本例において、第1磁化固定層10の層内方向における方向dr1とは、X軸方向である。
【0063】
方向dr1に交差する方向における第1強磁性層31の一方の側面、第2強磁性層32の一方の側面、および、第3非磁性層33の一方の側面を、それぞれ側面SF11、側面SF21および側面SF31とする。本例においては、方向dr1に交差する方向とはY軸方向を指す。本例において、方向dr1に交差する方向における側面とは、XZ面を指す。方向dr1における第1強磁性層31の他方の側面、第2強磁性層32の他方の側面、および、第3非磁性層33の他方の側面を、それぞれ側面SF12、側面SF22および側面SF32とする。
【0064】
側面SF11、側面SF21および側面SF31は、同一平面上にあってよい。本例においては、側面SF11、側面SF21および側面SF31、同一のXZ面上にある。同様に、側面SF12、側面SF22および側面SF32は、同一平面上にあってよい。磁化自由層30においては、側面SF11、側面SF21および側面SF31が同一平面上にあり、且つ、側面SF12、側面SF22および側面SF32が同一平面上にあることが好ましい。これにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とが静磁気的に結合しやすくなる。
【0065】
図3は、
図2における磁化自由層30の上面視における図である。方向dr1における磁化自由層30の長さを、長さL2とする。磁化自由層30の層内方向において、方向dr1に交差する方向における磁化自由層の長さを、長さL1とする。本例においては、磁化自由層30の層内方向とはXY面内の方向であり、方向dr1に交差する当該方向とはY軸方向である。
【0066】
長さL2は、長さL1よりも大きくてよい。長さL2が長さL1よりも大きいことにより、磁化自由層30における、方向dr1に平行な反磁界が低減しやすくなる。
【0067】
図4は、複数の磁気センサ部100の配列の一例を示す図である。複数の磁気センサ部100は、XY面内において行列状に配置されてよい。本例においては、磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-2、磁気センサ部100-5、磁気センサ部100-6、磁気センサ部100-9、磁気センサ部100-10、磁気センサ部100-13および磁気センサ部100-14がY軸方向に配列され、磁気センサ部100-3、磁気センサ部100-4、磁気センサ部100-7、磁気センサ部100-8、磁気センサ部100-11、磁気センサ部100-12、磁気センサ部100-15および磁気センサ部100-16がY軸方向に配列されている。本例においては、磁気センサ部100-1と磁気センサ部100-3とがX軸方向に配列されている。本例において、磁気センサ部100-2と磁気センサ部100-4、等もX軸方向に配置されている。
【0068】
本例において、磁気センサ部100-1および磁気センサ部100-2はバッファ層92-1を有し、磁気センサ部100-3および磁気センサ部100-4はバッファ層92-2を有し、磁気センサ部100-5および磁気センサ部100-6はバッファ層92-3を有し、磁気センサ部100-7および磁気センサ部100-8はバッファ層92-4を有する。本例において、磁気センサ部100-9および磁気センサ部100-10はバッファ層92-5を有し、磁気センサ部100-11および磁気センサ部100-12はバッファ層92-6を有し、磁気センサ部100-13および磁気センサ部100-14はバッファ層92-7を有し、磁気センサ部100-15および磁気センサ部100-16はバッファ層92-8を有する。
【0069】
本例において、磁気センサ部100-2と磁気センサ部100-5とは電極層110により接続されている。本例において、磁気センサ部100-4と磁気センサ部100-7、等も電極層110で接続されている。
【0070】
本例において、Y軸方向に配列される磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-2、磁気センサ部100-5、磁気センサ部100-6、磁気センサ部100-9、磁気センサ部100-10、磁気センサ部100-13および磁気センサ部100-14は直列に接続されている。本例において、Y軸方向に配列される磁気センサ部100-3、磁気センサ部100-4、磁気センサ部100-7、磁気センサ部100-8、磁気センサ部100-11、磁気センサ部100-12、磁気センサ部100-15および磁気センサ部100-16は直列に接続されている。
【0071】
本例において、磁気センサ部100-1を含み直列に接続される八つの磁気センサ部100と、磁気センサ部100-3を含み直列に接続される八つの磁気センサ部100とは、並列に接続されている。本例において、直列に接続される八つの磁気センサ部100の一方側に一の電極パッドが接続され、他方側に他の電極パッドが接続されている。
【0072】
図5は、
図4に示される磁気センサ200をX軸方向に見た場合の一例を示す図である。
図5では、
図4における磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-2、磁気センサ部100-5および磁気センサ部100-6を例に説明する。本例において、磁気センサ部100-2を第1磁気センサ部100-2とし、磁気センサ部100-5を第2磁気センサ部100-5とする。第1磁気センサ部100-2および第2磁気センサ部100-5は、基板90の面内方向に隣り合って設けられている。本例においては、第1磁気センサ部100-2および第2磁気センサ部100-5はY軸方向に隣り合って設けられている。本例においては、第1磁気センサ部100-2の電極層50-2と、第2磁気センサ部100-5の電極層50-5とが電極層110により接続されている。
【0073】
本例の磁気センサ200において、磁気センサ200に電流Iを流した場合における電流Iの経路が
図5に破線矢印で示されている。
図5の磁気センサ200における各磁気センサ部100において、電流IはZ軸に平行な方向に流れる。電流Iは、第1非磁性層20および第2非磁性層22をZ軸に平行な方向に流れる。磁気センサ200は、所謂デュアルスピンバルブ構造である。
【0074】
本例において、電流Iは電極層50-1からバッファ層92-1へ流れ、バッファ層92-1から電極層50-2へ流れ、電極層50-5からバッファ層92-3へ流れ、バッファ層92-3から電極層50-6へ流れる。即ち、
図5の例では、第1磁気センサ部100-2を流れる電流Iの向きと、第2磁気センサ部100-5を流れる電流Iの向きとが反平行である。
【0075】
図6は、複数の磁気センサ部100の配列の他の一例を示す図である。本例においては、磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-3、磁気センサ部100-5および磁気センサ部100-7がY軸方向に配列され、磁気センサ部100-2、磁気センサ部100-4、磁気センサ部100-6および磁気センサ部100-8がY軸方向に配列されている。本例においては、磁気センサ部100-1と磁気センサ部100-2とがX軸方向に配列され、磁気センサ部100-3と磁気センサ部100-4とがX軸方向に配置され、磁気センサ部100-5と磁気センサ部100-6とがX軸方向に配置され、磁気センサ部100-7と磁気センサ部100-8とがX軸方向に配置されている。
【0076】
本例において、磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-8は、それぞれバッファ層92-1~バッファ層92-8を有する。
図6における電極層110については、次図で説明する。
【0077】
本例において、Y軸方向に配列される磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-3、磁気センサ部100-5および磁気センサ部100-7は直列に接続され、Y軸方向に配列される磁気センサ部100-2、磁気センサ部100-4、磁気センサ部100-6および磁気センサ部100-8は直列に接続されている。本例において、磁気センサ部100-1を含み直列に接続される四つの磁気センサ部100と、磁気センサ部100-2を含み直列に接続される四つの磁気センサ部100とは、並列に接続されている。本例において、直列に接続される四つの磁気センサ部100の一方側に一の電極パッドが接続され、他方側に他の電極パッドが接続されている。
【0078】
図7は、
図6に示される磁気センサ200をX軸方向に見た場合の一例を示す図である。
図7では、
図6における磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-3、磁気センサ部100-5および磁気センサ部100-7を例に説明する。本例において、磁気センサ部100-1を第1磁気センサ部100-1とし、磁気センサ部100-3を第2磁気センサ部100-3とする。第1磁気センサ部100-1および第2磁気センサ部100-3は、基板90の面内方向に隣り合って設けられている。本例においては、第1磁気センサ部100-1および第2磁気センサ部100-3はY軸方向に隣り合って設けられている。
【0079】
本例において、バッファ層92-1を第1バッファ層92-1とし、バッファ層92-3を第2バッファ層92-3とする。第1バッファ層92-1と第2バッファ層92-3とは、基板90の面内方向において方向dr1に交差する方向に隣り合って設けられている。方向dr1とは、上述したとおり、第1磁化固定層10の磁化が固定された方向(所謂感磁軸の方向)である。本例においては、第1バッファ層92-1と第2バッファ層92-3とはY軸方向に隣り合って設けられている。本例において、第1バッファ層92-1と第2バッファ層92-3とは相互に絶縁されている。
【0080】
本例において、第1磁気センサ部100-1は第1バッファ層92-1を有し、第2磁気センサ部100-3は第2バッファ層92-3を有する。本例において、第1バッファ層92-1は第1磁気センサ部100-1の第1磁化固定層10-1の下方に設けられ、第2バッファ層92-3は第2磁気センサ部100-3の第1磁化固定層10-3の下方に設けられている。本例において、第1磁気センサ部100-1は電極層50-1を有し、第2磁気センサ部100-3は電極層50-3を有する。本例においては、第1バッファ層92-1と、第2磁気センサ部100-3の電極層50-3とが電極層110により接続されている。
【0081】
本例の磁気センサ200において、磁気センサ200に電流Iを流した場合における電流Iの経路が
図7に破線矢印で示されている。本例において、電流Iは電極層50-1から第1バッファ層92-1へ流れ、第1バッファ層92-1から電極層50-3へ流れ、電極層50-3から第2バッファ層92-3へ流れる。即ち、
図7の例では、第1磁気センサ部100-1を流れる電流Iの向きと、第2磁気センサ部100-3を流れる電流Iの向きとが平行(同じ向き)である。
【0082】
図8は、比較例の磁気センサ400の配列を示す図である。磁気センサ400は、磁気センサ部300を備える。後述するとおり、磁気センサ部300は、第1磁化固定層10および第1非磁性層20を備えない。磁気センサ部300-1~磁気センサ部300-16は、
図4における磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-16と同様に配列され、および、電極層110により接続されている。
【0083】
図9は、
図8に示される磁気センサ400をX軸方向に見た図である。
図9では、
図8における磁気センサ部300-1、磁気センサ部300-2、磁気センサ部300-5および磁気センサ部300-6を例に説明する。磁気センサ400では、磁気センサ部300-1の第2非磁性層22-1と磁気センサ部300-3の第2非磁性層22-3とが磁化自由層230-1上に設けられ、磁気センサ部300-5の第2非磁性層22-5と磁気センサ部300-6の第2非磁性層22-6とが磁化自由層230-3上に設けられている。
【0084】
磁気センサ400に電流Iを流した場合における電流Iの経路が、
図9に破線矢印で示されている。磁気センサ400において、電流IはZ軸に平行な方向に電極層50-1から磁化自由層230-1へ流れ、Z軸に平行な方向に磁化自由層230-1から電極層50-3へ流れる。電極層50-1から磁化自由層230-1への電流Iの経路において、電流Iは第2非磁性層22-1をZ軸に平行な方向に流れる。磁化自由層230-1から電極層50-3への電流Iの経路において、電流Iは第2非磁性層22-3をZ軸に平行な方向に流れる。磁気センサ400において、磁気センサ部300-1を流れる電流Iの向きと、磁気センサ部300-3を流れる電流Iの向きとは反平行である。
【0085】
電流Iが通過する非磁性層の数をNとし、当該非磁性層のXY面の面積をAとすると、磁気センサ200および磁気センサ400のノイズNsは下記式1にて表される。
【数1】
式1において、Cは定数である。式1に示されるとおり、ノイズNsは、非磁性層の数Nと当該非磁性層の面積Aとの積の平方根に反比例する。
【0086】
図5、
図7および
図9より、磁気センサ200の非磁性層の数Nは、磁気センサ400の非磁性層の数Nの2倍である。磁気センサ200の非磁性層の面積Aと磁気センサ400の非磁性層の面積Aとが等しい場合、磁気センサ200のノイズNsは、磁気センサ400のノイズNsの約(1/1.41)倍に低減され得る。
【0087】
図10Aは、複数の磁気センサ部100の配列の他の一例を示す図である。本例の磁気センサ200において、磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-16は、XY面内において
図4の磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-16と同様に配列される。本例の磁気センサ200において、磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-16は、
図4の磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-16と異なる態様で電極層110により接続される。本例においては、磁気センサ部100-2と磁気センサ部100-3とが電極層110により接続され、磁気センサ部100-6磁気センサ部100-7とが電極層110により接続され、磁気センサ部100-10磁気センサ部100-11とが電極層110により接続され、磁気センサ部100-14磁気センサ部100-15とが電極層110により接続される。
【0088】
本例においては、磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-4が直列に接続され、磁気センサ部100-5~磁気センサ部100-9が直列に接続され、磁気センサ部100-9~磁気センサ部100-12が直列に接続され、磁気センサ部100-13~磁気センサ部100-16が直列に接続される。本例において、磁気センサ部100-1を含み直列接続される四つの磁気センサ部100と、磁気センサ部100-5を含み直列接続される四つの磁気センサ部100と、磁気センサ部100-9を含み直列接続される四つの磁気センサ部100と、磁気センサ部100-13を含み直列接続される四つの磁気センサ部100とが、並列に接続される。
【0089】
図10Bは、
図10Aに示される磁気センサ200をX軸方向に見た場合の一例を示す図である。磁気センサ部100-1~磁気センサ部100-16は、それぞれ電極層50-1~電極層50-16を有する。
図10Bでは、
図10Aにおける磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-2、磁気センサ部100-5および磁気センサ部100-6を例に説明する。
【0090】
磁気センサ部100-1、磁気センサ部100-2、磁気センサ部100-5および磁気センサ部100-6は、基板90の面内方向に隣り合って設けられている。本例においては、これらの四つの磁気センサ部100は、Y軸方向に隣り合って設けられている。本例においては、磁気センサ部100-2の電極層50-2と、磁気センサ部100-3(
図10A参照)の電極層50-3とが一の電極層110により接続され、磁気センサ部100-4(
図10A参照)の電極層50-4と磁気センサ部100-5の電極層50-5とが他の電極層110により接続されている。
【0091】
図11は、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の他の一例を示す斜視図である。本例においては、磁気センサ部100-1と磁気センサ部100-2とは、Y軸方向に並んでいる。本例において、磁化自由層30は、
図2に示される第1強磁性層31、第2強磁性層32および第3非磁性層33を含むとする。本例において、第3非磁性層33の厚さは2nmよりも大きいとする。
【0092】
上述したとおり、第3非磁性層33の厚さが2nm以上であることにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とは、第3非磁性層33を介したRKKY相互作用よりも、側面SF11と側面SF21とにおける静磁気的な相互作用および側面SF12と側面SF22とにおける静磁気的な相互作用により、結合しやすくなる。このため、本例においては、磁化自由層30に磁区80(後述)が発生しにくい。
【0093】
図12は、比較例の磁気センサ400を示す斜視図である。本比較例においては、磁気センサ部300-1と磁気センサ部300-2とは、Y軸方向に並んでいる。磁化自由層230は、
図2に示される第1強磁性層31のみを含むとする。磁気センサ400において、第1強磁性層31は他の強磁性層と静磁気的に結合していない。このため、磁気センサ400においては、磁化自由層230に磁区80が発生しやすい。
図12においては、磁化自由層230に四つの磁区80(磁区80-1~磁区80-4)が発生している。四つの磁区80は、四つの磁区80の合成磁場がゼロになるように、それぞれの磁区80の磁化の向きが調整されている。
【0094】
磁気センサ400においては、磁化自由層230に磁区80が発生しやすいので、方向dr1に直交する成分の大きい磁区80における、磁化自由層230の感度が低下しやすい。
図12の比較例では、磁区80-1および磁区80-3の磁化の方向が、方向dr1に平行である。このため、
図12の比較例では、磁化自由層230における、磁区80-1が形成される領域および磁区80-3が形成される領域において、磁化自由層230の感度が低下しやすい。
図11の例では、磁化自由層30に磁区80が発生しにくいので、磁化自由層30の感度が低下する領域が発生しにくい。
図11の例では、磁化自由層30に磁区80が発生しにくいので、一の磁区80と、当該一の磁区80に隣接する他の磁区80との間に磁壁が発生しにくい。このため、
図11の磁気センサ200においては、当該磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズが発生しにくい。
【0095】
図13は、
図1に示される磁気センサ部100-1をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
図13は、磁気センサ部100-1がGMR(Giant Magneto Resistance)素子である場合の一例である。
【0096】
本例においては、第1反強磁性層11はバッファ層92上に設けられている。本例においては、第1非磁性層20は第3強磁性層12上に設けられている。本例においては、第1強磁性層31は第1非磁性層20上に設けられている。本例においては、第2非磁性層22は第2強磁性層32上に設けられている。本例においては、第4強磁性層42は第2非磁性層22上に設けられている。本例においては、第1金属層51は第2反強磁性層41上に設けられている。本例は、これらの点で
図2に示される磁気センサ部100-1と異なる。
【0097】
図14は、
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
図14は、磁気センサ部100がTMR素子である場合の他の一例である。本例においては、磁化自由層30は、第8非磁性層60および第9強磁性層61をさらに含む。本例は、係る点で
図2に示される磁気センサ部100と異なる。
【0098】
第8非磁性層60は、第2強磁性層32上に設けられている。第9強磁性層61は、第5非磁性層37の下方に設けられている。本例においては、第9強磁性層61は第5非磁性層37の下方且つ第5非磁性層37に接して設けられている。第9強磁性層61は、第8非磁性層60上に設けられている。
【0099】
第8非磁性層60は、金属であってよい。第8非磁性層60は、第3非磁性層33と同じ物質により形成されてよい。第8非磁性層60は、例えばRu(ルテニウム)で形成される。
【0100】
本例において、第8非磁性層60の厚さは第3非磁性層33の厚さと等しくてよく、異なっていてもよい。第8非磁性層60の厚さは、2nmよりも大きくてよい。第8非磁性層60の厚さは、2nmより大きく100nm以下であってよい。第8非磁性層60の厚さは、2nmより大きく20nm以下であってもよい。第8非磁性層60の厚さは、例えば10nmである。第8非磁性層60の厚さが2nm以上であることにより、第2強磁性層32と第9強磁性層61とは、第8非磁性層60を介したRKKY相互作用よりも、側面SF21と側面SF41(後述)とにおける静磁気的な相互作用および側面SF22と側面SF42(後述)とにおける静磁気的な相互作用により、結合しやすくなる。これにより、第2強磁性層32と第9強磁性層61とは、第2強磁性層32の磁化の向きと第9強磁性層61の磁化の向きとが反平行になるように結合しやすくなる。
【0101】
第8非磁性層60の厚さは、0.7nm以上1.1nm以下であってもよい。第8非磁性層60の厚さが0.7nm以上1.1nm以下であることにより、第2強磁性層32と第9強磁性層61とはRKKY相互作用により反強磁性的に結合しやすくなる。これにより、第2強磁性層32と第9強磁性層61とは、第2強磁性層32の磁化の向きと第9強磁性層61の磁化の向きとが反平行になるように結合しやすくなる。
【0102】
第9強磁性層61は、第1強磁性層31および第2強磁性層32と同じ物質により形成されてよい。第9強磁性層61の厚さは、第1強磁性層31の厚さと同じであってよい。
【0103】
方向dr1における第9強磁性層61の一方の側面および第8非磁性層60の一方の側面を、それぞれ側面SF41および側面SF51とする。方向dr1における第9強磁性層61の他方の側面および第8非磁性層60の他方の側面を、それぞれ側面SF42および側面SF52とする。
【0104】
側面SF21、側面SF41および側面SF51は、同一平面上にあってよい。本例においては、側面SF21、側面SF41および側面SF51は、同一のXZ面上にある。同様に、側面SF22、側面SF42および側面SF52は、同一平面上にあってよい。これにより、第2強磁性層32と第9強磁性層61とは、静磁気的に結合しやすくなる。
【0105】
側面SF11、側面SF21、側面SF31、側面SF41および側面SF51は、同一平面上にあってよい。同様に、側面SF12~側面SF52は、同一平面上にあってよい。これにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とが静磁気的に結合しやすくなり、第2強磁性層32と第9強磁性層61とが静磁気的に結合しやすくなる。
【0106】
図15は、
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
図15は、磁気センサ部100がTMR素子である場合の他の一例である。本例においては、磁化自由層30は、第9非磁性層63および第10強磁性層62をさらに含む。本例は、係る点で
図14に示される磁気センサ部100と異なる。
【0107】
本例においては、磁気センサ部100-1は二つの磁化自由層30(磁化自由層30-1および磁化自由層30-2)を含む。磁化自由層30-1は、第1強磁性層31、第2強磁性層32および第3非磁性層33を含む。磁化自由層30-2は、第9強磁性層61、第10強磁性層62および第9非磁性層63を含む。
【0108】
第9非磁性層63は第9強磁性層61上に設けられている。第10強磁性層62は、第5非磁性層37の下方に設けられている。本例においては、第10強磁性層62は第5非磁性層37の下方且つ第5非磁性層37に接して設けられている。第10強磁性層62は、第9非磁性層63上に設けられている。
【0109】
本例において、第9非磁性層63の厚さは第3非磁性層33の厚さと等しくてよく、異なっていてもよい。第9非磁性層63の厚さは、2nmよりも大きくてよい。第9非磁性層63の厚さは、2nmより大きく100nm以下であってよい。第9非磁性層63の厚さは、2nmより大きく20nm以下であってもよい。第9非磁性層63の厚さは、例えば10nmである。第9非磁性層63の厚さが2nm以上であることにより、第9強磁性層61と第10強磁性層62とは、RKKY相互作用よりも静磁気的な相互作用により、結合しやすくなる。これにより、第9強磁性層61の磁化の向きと第10強磁性層62の磁化の向きとが反平行に結合しやすくなる。
【0110】
第9非磁性層63の厚さは、0.7nm以上1.1nm以下であってもよい。第9非磁性層63の厚さが0.7nm以上1.1nm以下であることにより、第9強磁性層61と第10強磁性層62とはRKKY相互作用により反強磁性的に結合しやすくなる。これにより、第9強磁性層61と第10強磁性層62とは、第9強磁性層61の磁化の向きと第10強磁性層62の磁化の向きとが反平行になるように結合しやすくなる。
【0111】
第9非磁性層63は、金属であってよい。第3非磁性層33と同じ物質により形成されてよい。第9非磁性層63は、例えばRu(ルテニウム)で形成される。
【0112】
第9強磁性層61および第10強磁性層62は、第1強磁性層31および第2強磁性層32と同じ物質により形成されてよい。第9強磁性層61の厚さは、第1強磁性層31の厚さと同じであってよい。第10強磁性層62の厚さは、第2強磁性層32の厚さと同じであってよい。
【0113】
第8非磁性層60は、金属であってよい。第8非磁性層60は、例えばRu(ルテニウム)で形成される。第8非磁性層60の厚さは、第3非磁性層33の厚さと等しくてよく、異なっていてもよい。第8非磁性層60の厚さが100nmよりも大きいことにより、磁化自由層30-1と磁化自由層30-2とが静磁気的に結合しにくくなる。
【0114】
第5強磁性層34の厚さおよび第6強磁性層36の厚さは、10nm未満であってよい。第5強磁性層34の厚さおよび第6強磁性層36の厚さは、例えば3nmである。
【0115】
方向dr1に交差する方向における第10強磁性層62の一方の側面および第9非磁性層63の一方の側面を、それぞれ側面SF61および側面SF71とする。方向dr1に交差する方向における第10強磁性層62の他方の側面および第9非磁性層63の他方の側面を、それぞれ側面SF62および側面SF72とする。
【0116】
側面SF41、側面SF61および側面SF71は、同一平面上にあってよい。本例においては、側面SF41、側面SF61および側面SF71は、同一のXZ面上にある。同様に、側面SF42、側面SF62および側面SF72は、同一平面上にあってよい。磁化自由層30-2においては、側面SF41、側面SF61および側面SF71が同一平面上にあり、且つ、側面SF42、側面SF62および側面SF72が同一平面上にあることが好ましい。これにより、第9強磁性層63と第10強磁性層62とが静磁気的に結合しやすくなる。
【0117】
側面SF11、側面SF21、側面SF31、側面SF41、側面SF51、側面SF61および側面SF71は、同一平面上にあってよい。同様に、側面SF12~側面SF72は、同一平面上にあってよい。これにより、第1強磁性層31と第2強磁性層32とが静磁気的に結合しやすくなり、第9強磁性層61と第10強磁性層62とが静磁気的に結合しやすくなる。
【0118】
図16は、
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。本例においては、磁化自由層30-1の方向dr1に交差する方向における長さと、磁化自由層30-2の方向dr1に交差する方向における長さとが異なる。本例は、係る点で
図15に示される磁気センサ部100と異なる。
【0119】
本例において、磁化自由層30-1の方向dr1に交差する方向における長さは、長さL1(
図3参照)である。磁化自由層30-2の方向dr1に交差する方向における長さを、長さL1'とする。本例においては、長さL1'は長さL1よりも小さい。
【0120】
図17は、
図16における磁化自由層30の上面視における図である。本例において、磁化自由層30-1の方向dr1における長さは、長さL2(
図3参照)である。磁化自由層30-2の方向dr1における長さを、長さL2'とする。本例においては、長さL2'は長さL2よりも小さい。
【0121】
本例において、同一平面上にある側面SF11、側面SF21および側面SF31の方向dr1に交差する方向における位置を、位置P1とする。本例において、同一平面上にある側面SF41、側面SF51、側面SF61およびSF71の方向dr1に交差する方向における位置を、位置P1'とする。本例において、同一平面上にある側面SF12、側面SF22および側面SF32の方向dr1に交差する方向における位置を、位置P1'とする。本例において、同一平面上にある側面SF42、側面SF52、側面SF62および側面SF72の方向dr1に交差する方向における位置を、位置P2'とする。
【0122】
本例においては、位置P1と位置P1'とが異なる。本例においては、位置P2と位置P2'とが異なる。これにより、磁化自由層30-1と磁化自由層30-2とが静磁気的に結合しにくくなる。
【0123】
図18は、
図1に示される磁気センサ部100をX軸方向から見た場合の他の一例を示す図である。
図18は、磁気センサ部100がTMR素子である場合の他の一例である。本例においては、磁化自由層30は、第10非磁性層82、第11強磁性層83および第12強磁性層84をさらに含む。本例は、係る点で
図2に示される磁気センサ部100と異なる。
【0124】
本例において、第10非磁性層82は第5強磁性層34上に設けられている。第10非磁性層82は、金属であってよい。第10非磁性層82は、例えばTaBで形成される。第10非磁性層82の厚さは、0.1nm以上0.6nm以下であってよい。第10非磁性層82の厚さは、例えば0.2nmである。
【0125】
本例において、第11強磁性層83は第10非磁性層82上に設けられている。第11強磁性層83は、例えばCoFeで形成される。CoFeの組成は、例えばCo75Fe25である。第11強磁性層83の厚さは、0.3nm以上20.0nm以下であってよい。第11強磁性層83の厚さは、例えば0.8nmである。
【0126】
本例において、第4非磁性層35は第11強磁性層83上に設けられている。第4非磁性層35は、上述したとおり例えばRu(ルテニウム)で形成される。本例においては、第4非磁性層35の厚さは0.6nm以上1.2nm以下である。第4非磁性層35の厚さは、例えば0.9nmである。第11強磁性層83がCoFeで形成され、第4非磁性層35がRuで形成される場合、当該CoFeがシード層となるので、当該Ruの結晶配向性が改善されやすい。第1強磁性層31がCoFeSiBで形成され、第4非磁性層35がRuで形成される場合、当該Ruの厚さを0.6nm以上1.2nm以下とすることにより、第11強磁性層83と第1強磁性層31とがRKKY相互作用により磁気的に結合しやすくなる。
【0127】
本例においては、第5強磁性層34上に第10非磁性層82が設けられ、第10非磁性層82上に第11強磁性層83は設けられている。このため、第5強磁性層34と第11強磁性層83とは接しない。第5強磁性層34がCoFeBであり、第10非磁性層82がTaBである場合、第5強磁性層34の結晶構造と第10非磁性層82の結晶構造とは異なる。TaBは、アモルファスである。このため、積層体500(後述)をアニールする工程において、第5強磁性層34は第11強磁性層83をシード層として結晶成長せず、第1非磁性層20をシード層として結晶成長しやすくなる。このため、第5強磁性層34の結晶配向性は、第11強磁性層83をシード層として結晶成長した場合よりも向上しやすくなる。このため、磁気センサ部100のTMR効果が向上しやすくなる。
【0128】
第10非磁性層82の厚さは、上述したとおり、0.1nm以上0.6nm以下であることが好ましい。第10非磁性層の厚さが0.1nm以上0.6nm以下であることにより、第5強磁性層34と第11強磁性層83とは、ピンホールを介した磁気結合をしやすくなる。
【0129】
本例において、第12強磁性層84は第2強磁性層32上に設けられている。本例において、第5非磁性層37は第12強磁性層84上に設けられている。第12強磁性層84は、例えばCoFeで形成される。CoFeの組成は、例えばCo75Fe25である。第12強磁性層84の厚さは、0.3nm以上20.0nm以下であってよい。第12強磁性層84の厚さは、例えば0.8nmである。本例においては、第5非磁性層37の厚さは0.6nm以上1.2nm以下である。第5非磁性層37の厚さは、例えば0.9nmである。第12強磁性層84がCoFeで形成され、第5非磁性層37がRu(ルテニウム)で形成される場合、当該CoFeがシード層となるので、当該Ruの結晶配向性が改善されやすい。
【0130】
図19は、磁気センサ200をX軸方向から見た他の一例を示す図である。本例においては、磁気センサ部100-1と磁気センサ部100-2とがY軸方向に並んでいる。本例においては、磁気センサ部100-1を第1磁気センサ部100-1とし、磁気センサ部100-2を第2磁気センサ部100-2とする。本例において、第1磁気センサ部100-1および第2磁気センサ部100-2は、バッファ層92を有する。即ち、本例においては、第1の磁気センサ部100-1および第2の磁気センサ部100-2が共通のバッファ層92上に設けられている。
【0131】
第2の磁気センサ部100-2は、バッファ層92の層内方向に第1の磁気センサ部100-1と離隔して配置されている。本例において、バッファ層92の層内方向とはXY面内方向である。本例において、第1磁気センサ部100-1は、第2磁気センサ部100-2とY軸方向に離隔して配置されている。本例において、バッファ層92の上方には第1磁気センサ部100-1の第1磁化固定層10-1が設けられ、且つ、第2磁気センサ部100-2の第1磁化固定層10-2が設けられている。
【0132】
本例においては、基板90の面内方向における第1磁気センサ部100-1と第2磁気センサ部100-2との間において、バッファ層92の上面89に凹部87が設けられている。凹部87は、バッファ層の上面89から下面88への方向に窪んでいる。
図19において、凹部87における、Z軸方向の上面89の位置が破線にて示されている。
【0133】
本例においては、バッファ層92の上面89に凹部87が設けられているので、磁気センサ200に電流Iを流した場合、電流Iは、上面89の上方における磁気センサ部100の一部を通過せず、バッファ層92を通過する。このため、磁気センサ部100ごとの抵抗のばらつきが低下しやすくなる。
図19において、電流Iの経路が破線矢印で示されている。
【0134】
図20は、
図19における領域Dの拡大図である。バッファ層92の厚さ方向における凹部87の側面であって、バッファ層92の層内方向における一方の側面を第1側面SFb1とし、第1側面SFb1に対向する他方の側面を第2側面SFb2とする。本例においては、第2側面SFb2はY軸方向に第1側面SFb1に対向する。バッファ層92の厚さ方向における第1の磁気センサ部100-1の側面であって、バッファ層92の層内方向における一方の側面を側面SFa1とし、側面SFa1に対向する他方の側面を側面SFa2とする。本例においては、側面SFa2はY軸方向に側面SFa1に対向する。
【0135】
第1側面SFb1と側面SFa1とは、同一平面上にあってよい。本例においては、第1側面SFb1と側面SFa1とは同一のXZ平面上にある。第2側面SFb2と側面SFa2とは、同一平面上にあってよい。本例においては、第2側面SFb2と側面SFa2とは同一のXZ平面上にある。
【0136】
図21Aは、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の他の一例を示す斜視図である。本例の磁気センサ200においては、第2磁化固定層40の上面視における面積は、磁化自由層30の上面視における面積よりも小さい。本例の磁気センサ200は、係る点で
図1の磁気センサ200と異なる。
【0137】
方向dr1に交差する方向において、磁化自由層の側面SF11~側面SF31の位置(
図2参照)および側面SF12~側面SF22の位置(
図2参照)では磁化自由層30において反磁界が大きくなりやすい。本例においては、第2磁化固定層40の上面視における面積が磁化自由層30の上面視における面積よりも小さい。このため、磁気センサ部100の感度が大きくなりやすい。
【0138】
図21Bは、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の他の一例を示す斜視図である。本例の磁気センサ200は、磁気収束部70をさらに備える点で
図21Aに示される磁気センサ200と異なる。磁気センサ200は、複数の磁気収束部70を備えてよい。本例においては、磁気センサ200は二つの磁気収束部70(第1の磁気収束部70-1および第2の磁気収束部70-2)を備える。
【0139】
磁気収束部70は、磁化自由層30と離隔して配置されてよい。磁気収束部70は、磁化自由層30の上方に配置されてよい。磁気収束部70が磁化自由層30の上方に配置されるとは、磁気収束部70の下面が磁化自由層30の上面よりも上方に配置される場合を指してよい。磁気収束部70が磁化自由層30の上方に配置されるとは、磁気収束部70の下面が磁化自由層30の上面よりも下方に配置され、且つ、磁化自由層30の下面よりも上方に配置される場合を指してもよい。磁気収束部70は、磁化自由層30と離隔し、且つ、磁気収束部70の上面が磁化自由層30の上面よりも下方に配置され、且つ、磁気収束部70の下面が磁化自由層30の下面よりも上方に配置されるように、配置されてもよい。
【0140】
磁気収束部70は、磁化自由層30の上面に平行な平面を有する板状の部材であってよい。磁気収束部70は、強磁性体であってよい。磁気収束部70は、軟磁性体であってよい。磁気収束部70は、例えばNiFe合金(所謂パーマロイ)である。本例の磁気センサ200は磁気収束部70を備えるので、
図1の磁気センサ200よりも磁化自由層30に磁束が集中しやすくなる。このため、本例の磁気センサ200の感度は、
図1の磁気センサ200の感度よりも高くなりやすい。
【0141】
一つの磁気収束部70が、第1磁気センサ部100-1の磁化自由層30と離隔して配置され、且つ、第2磁気センサ部100-2の磁化自由層30と離隔して配置されてよい。本例においては、当該一つの磁気収束部70とは、磁気収束部70-1および磁気収束部70-2の一方を指す。
【0142】
図22は、
図21Bに示される磁気センサ200の上面視における図である。ただし、
図22においては、
図21Bに示される電極層50は省略されている。上面視において、第1の磁気収束部70-1は磁化自由層30の一方側に配置されてよく、第2の磁気収束部70-2は磁化自由層30の他方側に配置されてよい。本例においては、上面視において、第1の磁気収束部70-1は磁化自由層30のX軸方向における一方側に配置され、第2の磁気収束部70-2は磁化自由層30のX軸方向における他方側に配置されている。
【0143】
磁化自由層30の上面視における面積を、面積S1とする。第2磁化固定層40の上面視における面積を、面積S2とする。面積S2は、面積S1よりも小さくてよい。
【0144】
上面視において、磁気収束部70の少なくとも一部と磁化自由層30の少なくとも一部とは、重なっていてよい。
図22において、上面視において磁気収束部70における磁化自由層30と重なる領域がハッチングで示され、磁気収束部70と重なる磁化自由層30の一部の外縁が破線で示されている。本例においては、磁気収束部70の一部と磁化自由層30の一部とが、上面視において重なっている。
【0145】
方向dr1における磁気収束部70-1の端部であって上面視において磁化自由層30と重なる端部を端部Emとし、磁気収束部70-2の端部であって上面視において磁化自由層30と重なる端部を端部Em'とする。磁気収束部70により収束された磁束は、端部Emおよび端部Em'から磁化自由層30に出入りしやすい。このため、方向dr1において、端部Emの位置と端部Em'の位置との間における、磁化自由層30の磁束密度は、ハッチングで示された領域における、磁化自由層30の磁束密度よりも大きくなりやすい。
【0146】
磁気センサ部100においては、第2磁化固定層40と磁化自由層30とがZ軸方向に重なる領域(面積S2の領域)で、TMR効果またはGMR効果が生じ得る。本例においては、端部Emおよび端部Em'が、上面視において磁化自由層30と重なっている。このため、端部Emおよび端部Em'は、第2磁化固定層40と磁化自由層30とが重なる領域に近接して配置されやすくなる。このため、磁束密度の大きい、磁化自由層30の一部が、第2磁化固定層40と磁化自由層30とが重なる領域(面積S2の領域)に配置されやすくなる。このため、磁気センサ部100に投入された電力当たりの、磁気センサ部100の感度は、端部Emおよび端部Em'が、上面視において磁化自由層30と重ならない場合よりも、向上しやすくなる。
【0147】
磁気収束部70は、第2磁化固定層40と離隔して配置されてよい。本例においては、磁気収束部70は、第2磁化固定層40とX軸方向に離隔して配置されている。磁気収束部70と第2磁化固定層40とは、上面視において重ならなくてよい。ハッチングの領域と重なる、磁化自由層30の一部には、端部Emおよび端部Em'から出入りする磁束が集中しにくい。このため、ハッチングの領域において磁気収束部70と第2磁化固定層40とが重なる場合、磁気センサ部100に投入された電力当たりの、磁気センサ部100の感度は、ハッチングの領域において磁気収束部70と第2磁化固定層40とが重ならない場合よりも低下しやすくなる。このため、磁気収束部70と第2磁化固定層40とは、上面視において重ならないことが好ましい。
【0148】
図23は、
図21Bに示される磁気センサ200をY軸方向に見た図である。本例においては、Y軸方向は、磁化自由層30の層内方向(XY面内の方向)における、第1の磁気収束部70-1から第2の磁気収束部70-2への方向(X軸方向)に交差する方向である。上述したとおり、本例においては、磁気収束部70の少なくとも一部と磁化自由層30の少なくとも一部とが、上面視において重なる位置に配置されている。これにより、磁化自由層30に磁束が集中しやすくなる。
図23において、当該磁束の経路が太い破線矢印で示されている。
図23において、
図22における磁気収束部70のハッチングの領域と重なる、磁化自由層30と第1非磁性層20との一部が、同様のハッチングで示されている。
【0149】
磁化自由層30のX軸方向の端部であって、Z軸方向において磁化自由層30と第1非磁性層20とが接する位置における二つの端部の一方を下端E11とし、他方を下端E21とする。磁化自由層30のX軸方向の端部であって、Z軸方向における磁化自由層30二つの上端の一方を上端E12とし、他方を上端E22とする。上端E12および上端E22のZ軸方向の位置は、磁化自由層30と第2非磁性層22とが接するZ軸方向の位置である。X軸方向における磁化自由層30の上面38の幅を幅W1とし、下面39の幅を幅W2とする。幅W1は、上端E12と上端E22との間のX軸方向における幅である。幅W2は、下端E11と下端E21との間のX軸方向における幅である。本例においては、幅W1と幅W2とは等しい。
【0150】
図24は、
図21Bに示される磁気センサ200をY軸方向に見た他の図である。本例において、X軸方向における下面39の幅を幅W2'とする。本例は、幅W2'が幅W1よりも小さい点で、
図23の例と異なる。本例の磁気センサ部100における磁化自由層30は、幅W2'が幅W1よりも小さい逆テーパ状である。本例において、端部E11は端部E12よりも磁気センサ部100のX軸方向における中央側に配置され、端部E21は端部E22よりも磁気センサ部100のX軸方向における中央側に配置されている。
【0151】
図24の例において、磁化自由層30の下端E11は、上端E12よりも第1の磁気収束部70-1からZ軸方向に離隔している。磁化自由層30の下端E21は、上端E22よりも第2の磁気収束部70-2からZ軸方向に離隔している。
図23のハッチングの領域には、磁気収束部70により収束された磁束が出入りしにくい。
【0152】
上述したとおり、磁気センサ部100においては、第2磁化固定層40と磁化自由層30とがZ軸方向に重なる領域(
図22における面積S2の領域)で、TMR効果またはGMR効果が生じ得る。方向dr1において、端部Emの位置と端部Em'の位置との間における、磁化自由層30の磁束密度は、
図23のハッチングで示された領域における、磁化自由層30の磁束密度よりも大きくなりやすい。本例では、磁化自由層30の一部分であって下端E11の近傍および下端E21の近傍が削減されている。このため、磁化自由層30の一部分であって磁化自由層30の磁束密度が大きい一部分のみで、TMR効果またはGMR効果が生じやすくなる。このため、
図24の例では、
図23の例よりも磁気センサ部100の感度が向上しやすくなる。
【0153】
図25は、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法の一例を示す図である。工程S100は、積層体500を用意する工程である。積層体500は、基板90上に設けられたバッファ層92と、バッファ層92上に設けられた第1磁化固定層10と、第1磁化固定層10上に設けられた第1非磁性層20と、第1非磁性層20上に設けられた磁化自由層30と、磁化自由層30上に設けられた第2非磁性層22と、第2非磁性層22上に設けられた第2磁化固定層40とを有する。
【0154】
磁気センサ200の製造方法は、素子分離工程S102を備えてよい。素子分離工程S102は、積層体500の積層方向に、積層体500の一部を電極層50からバッファ層92までエッチングすることにより、積層体500-1と積層体500-2を形成する工程である。素子分離工程S102の後、磁気センサ200の製造方法はエッチング工程S104へ進む。
【0155】
図26は、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法の一例を示す図である。磁気センサ200の製造方法は、エッチング工程S104を備える。磁気センサ200の製造方法は、エッチング工程S106を備えてよい。
【0156】
エッチング工程S104は、積層体500(
図25参照)の積層方向に第2磁化固定層40から磁化自由層30までをエッチングすることにより、第1の磁気センサ部100-1と第2の磁気センサ部100-2とを形成する工程である。エッチング工程S104により、第1の磁気センサ部100-1と、バッファ層92の層内方向に第1の磁気センサ部100-1と離隔した第2の磁気センサ部100-2とが形成される。
【0157】
第2磁化固定層40から磁化自由層30までがエッチングされることにより、磁気センサ部100-1を積層方向に流れる電流I(
図19参照)は、磁化自由層30-1から、磁気センサ部100-2の磁化自由層30-2に流れなくなる。当該電流Iは、磁化自由層30-1を流れた後、磁化自由層30-1からバッファ層92への方向に流れる。
【0158】
エッチング工程S106は、第2磁化固定層40をエッチングする工程である。エッチング工程S106により、上面視における第2磁化固定層40の面積S2(
図22参照)は、磁化自由層30の面積S1(
図22参照)よりも小さくなる。
【0159】
エッチング工程S106により、第1非磁性層20、第1磁化固定層10およびバッファ層92の一部もエッチングされてよい。エッチング工程106により、バッファ層92に凹部99が形成されてよい。
【0160】
図27は、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法におけるエッチング工程S104の他の一例を示す図である。エッチング工程S104は、積層体500(
図25参照)の積層方向に、第2磁化固定層40から第1非磁性層20までをエッチングする工程であってもよい。
【0161】
図28は、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法におけるエッチング工程S104の他の一例を示す図である。エッチング工程S104は、積層体500(
図25参照)の積層方向に、第2磁化固定層40から第1磁化固定層10までをエッチングする工程であってもよい。
【0162】
図29は、本発明の一つの実施形態に係る磁気センサ200の製造方法におけるエッチング工程S104の他の一例を示す図である。エッチング工程S104は、積層体500(
図25参照)の積層方向に、第2磁化固定層40からバッファ層92の一部までをエッチングする工程であってもよい。バッファ層92の当該一部とは、積層体500の積層方向における、バッファ層92の上面89からの一部である。エッチング工程106により、バッファ層92に凹部87が形成されてよい。
【0163】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0164】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0165】
10・・・第1磁化固定層、11・・・第1反強磁性層、12・・・第3強磁性層、13・・・第6非磁性層、14・・・第7強磁性層、20・・・第1非磁性層、22・・・第2非磁性層、30・・・磁化自由層、31・・・第1強磁性層、32・・・第2強磁性層、33・・・第3非磁性層、34・・・第5強磁性層、35・・・第4非磁性層、36・・・第6強磁性層、37・・・第5非磁性層、38・・・上面、39・・・下面、40・・・第2磁化固定層、41・・・第2反強磁性層、42・・・第4強磁性層、43・・・第7非磁性層、44・・・第8強磁性層、50・・・電極層、51・・・第1金属層、52・・・第2金属層、60・・・第8非磁性層、61・・・第9強磁性層、62・・・第10強磁性層、63・・・第9非磁性層、70・・・磁気収束部、80・・・磁区、82・・・第10非磁性層、83・・・第11強磁性層、84・・・第12強磁性層、87・・・凹部、88・・・下面、89・・・上面、90・・・基板、92・・・バッファ層、93・・・第1金属層、94・・・第2金属層、95・・・第3金属層、96・・・第4金属層、97・・・第5金属層、98・・・第6金属層、99・・・凹部、100・・・磁気センサ部、110・・・電極層、200・・・磁気センサ、230・・・磁化自由層、300・・・磁気センサ部、400・・・磁気センサ、500・・・積層体