IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清オイリオグループ株式会社の特許一覧

特開2024-32632レンジ焼け防止剤、及び電子レンジ加熱用澱粉含有食品の製造方法。
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032632
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】レンジ焼け防止剤、及び電子レンジ加熱用澱粉含有食品の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/013 20060101AFI20240305BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240305BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240305BHJP
   A23D 7/01 20060101ALI20240305BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20240305BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20240305BHJP
【FI】
A23D9/013
A23L5/00 L
A23L5/00 N
A23L5/10 C
A23D7/01
A23L5/00 F
A23L29/10
A23L7/109 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168971
(22)【出願日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2022135544
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 太一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4B046
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK01
4B026DK02
4B026DK03
4B026DK04
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX01
4B035LC03
4B035LG08
4B035LG09
4B035LG10
4B035LG11
4B035LG12
4B035LK14
4B035LP16
4B035LP26
4B035LP43
4B046LA06
4B046LB10
4B046LC01
4B046LG09
4B046LG10
4B046LG11
4B046LG14
4B046LG29
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP56
4B046LP64
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、食品のレンジ焼けを防止する、レンジ焼け防止剤を提供することである。また、レンジ焼けが防止された電子レンジ加熱用澱粉含有食品の製造方法を提供することである。
【解決手段】 電子レンジ加熱で生じる澱粉含有食品のレンジ焼けを防止するためのレンジ焼け防止剤であって、前記レンジ焼け防止剤が、澱粉含有食品の加熱調理工程と、冷凍工程又は冷蔵工程の間で、澱粉含有食品へ塗布するものであり、レンジ焼け防止剤中に油脂を70~99.9質量%、乳化剤を0.1~30質量%含有し、前記乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~8のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、
レンジ焼け防止剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ加熱で生じる澱粉含有食品のレンジ焼けを防止するためのレンジ焼け防止剤であって、
前記レンジ焼け防止剤が、澱粉含有食品の加熱調理工程と、冷凍工程又は冷蔵工程の間で、澱粉含有食品へ塗布するものであり、
レンジ焼け防止剤中に油脂を70~99.9質量%、乳化剤を0.1~30質量%含有し、
前記乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~8のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、
レンジ焼け防止剤。
【請求項2】
前記乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載のレンジ焼け防止剤。
【請求項3】
請求項1に記載のレンジ焼け防止剤を、澱粉含有食品の加熱調理工程後に、澱粉含有食品100質量部に対して0.5~10質量部塗布する工程を経て、冷凍工程又は冷蔵工程を行う、
電子レンジ加熱用澱粉含有食品の製造方法。
【請求項4】
レンジ焼け防止剤中に含まれる乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、請求項3に記載の電子レンジ加熱用澱粉含有食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジ焼け防止剤、及び電子レンジ加熱用澱粉含有食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レストラン、家庭における調理作業を軽減するために、調理された食品を冷凍、チルド、冷蔵で流通、保管し、電子レンジで加熱して、食事に供すことが増えている。特に、フードロスの観点から保存性が高い、冷凍食品が増えている。
【0003】
これらの冷凍食品、チルド食品及び冷蔵食品を電子レンジで加熱した際に、「レンジ焼け」が発生する。「レンジ焼け」とは、食品への部分的な過加熱による乾燥や焦げならびに加熱むらである。「レンジ焼け」により、食品の外観や食感が損なわれるため、水・油脂・多価アルコール、及び乳化剤を含む、レンジ焼けを防止するための組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1の乳化物は、水を多く用いることで、コストを抑えることができるが、乳化状態のレンジ焼け防止剤は、水が存在するために腐敗が進みやすい課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-2024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、食品のレンジ焼けを防止する、レンジ焼け防止剤を提供することである。また、レンジ焼けが防止された電子レンジ加熱用澱粉含有食品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、レンジ焼け防止剤として、特定の乳化物を用いることで、レンジ焼けを抑制することを見出し、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[4]を提供する。
[1] 電子レンジ加熱で生じる澱粉含有食品のレンジ焼けを防止するためのレンジ焼け防止剤であって、
前記レンジ焼け防止剤が、澱粉含有食品の加熱調理工程と、冷凍工程又は冷蔵工程の間で、澱粉含有食品へ塗布するものであり、
レンジ焼け防止剤中に油脂を70~99.9質量%、乳化剤を0.1~30質量%含有し、
前記乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~8のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、
レンジ焼け防止剤。

[2] 前記乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、[1]のレンジ焼け防止剤。
[3] [1]のレンジ焼け防止剤を、澱粉含有食品の加熱調理工程後に、澱粉含有食品100質量部に対して0.5~10質量部塗布する工程を経て、冷凍工程又は冷蔵工程を行う、
電子レンジ加熱用冷凍澱粉含有食品の製造方法。
[4] レンジ焼け防止剤中に含まれる乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、[3]の電子レンジ加熱用冷凍澱粉含有食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レンジ加熱による食品のレンジ焼けの発生を防止することができる。特に、冷凍食品のようにレンジ加熱による加熱量が多い食品に対して、より効果的にレンジ焼けの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0010】
[レンジ焼け防止剤]
本発明のレンジ焼け防止剤は、電子レンジ加熱で生じる澱粉含有食品のレンジ焼けを防止するためのレンジ焼け防止剤であって、前記レンジ焼け防止剤が、澱粉含有食品の加熱調理工程と、冷凍工程又は冷蔵工程の間で、澱粉含有食品へ塗布するものであり、レンジ焼け防止剤中に油脂を70~99.9質量%、乳化剤を0.1~30質量%含有し、前記乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~8のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である。
【0011】
<澱粉含有食品>
本発明のレンジ焼け防止剤は、加熱調理工程を経た澱粉含有食品へ塗布し、その後、冷凍工程又は冷蔵工程を行い、冷凍澱粉含有食品とするものであり、冷凍工程の前に塗布することで、レンジ焼け防止効果が得られる。なお、加熱調理工程に本願のレンジ焼け防止剤を用いる場合、澱粉含有食品中に吸収され、十分な効果を得ることが期待できないため、加熱調理工程後に塗布する。
【0012】
加熱調理工程としては、茹で調理、蒸し調理、炒め調理、揚げ調理等が挙げられる。本願のレンジ焼け防止剤の効果が十分発揮されるためには、澱粉含有食品表面に十分な濃度のレンジ焼け防止剤が存在する必要があるため、加熱調理工程を経た澱粉含有食品内に含まれる油脂量は問題ないが、該食品の表面上の油脂が少ないことが好ましい。例えば、加熱調理工程を経た澱粉含有食品の表面上の油脂量が澱粉含有食品の1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。また、茹で調理、蒸し調理したものであることが好ましい。
なお、食品の表面上の油脂量は、ヘキサン等を含む脱脂綿で食品表面を軽くふき取り、脱脂綿へ移行した油分を測定することで確認することができる。
【0013】
澱粉含有食品としては、そば、うどん、中華麺、パスタ等の麺類、及び、ご飯、チャーハン、カレーライス、丼物等の飯類、餃子などの麺皮加工品等が挙げられる。
【0014】
<油脂>
本発明のレンジ焼け防止剤は、油脂を70~99.9質量%含む。油脂としては、動植物油脂、グリセリンと脂肪酸から合成した油脂及びそれらの分別油、エステル交換油、水素添加油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。
動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。
グリセリンと脂肪酸から合成した油脂としては、炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸を含有する油脂、例えば中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などが挙げられる。
分別油としては、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションなどのパーム油の分別油が挙げられる。
エステル交換油としては、パーム油あるいはパーム油の分別油と他の液状油脂のエステル交換油、あるいはMCTと植物油などとのエステル交換油を用いることができる。
水素添加油は、動植物油、動植物油の分別油の水素添加油の他、エステル交換油の水素添加油などが挙げられる。
【0015】
本発明で用いる油脂は、室温で流動性を失うものは、食品の表面への適用時に加熱により溶解させる必要があるので、30℃で流動性を有する態様のものが好ましい。原料油脂の一部が30℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、油脂全体として流動性を有していれば好適に使用できる。本発明で用いる油脂は、20℃で流動性を有する油脂がより好ましく、20℃で液状である油脂がさらに好ましい。特に、融点の低い液状油でありながら、酸化安定性も良好であるという利点を有することから、なたね油、大豆油、コーン油、パームオレイン、油脂の構成脂肪酸に炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸を含有する油脂、これらの混合物などを好適に使用することができる。
【0016】
本発明のレンジ焼け防止剤は、油脂を70~99.9質量%含有した場合、後述の乳化剤とともに、レンジ焼け防止性が許容できる範囲となる。本発明のレンジ焼け防止剤は、レンジ焼け防止剤中に油脂を90~99.5質量%含有することが好ましい。レンジ焼け防止剤中の油脂量は、95~99.5質量%がより好ましく、97~99.5質量%がさらに好ましく、98~99.5質量%がことさらに好ましい。
【0017】
<乳化剤>
本発明のレンジ焼け防止剤は、特定の乳化剤を0.1質量%以上含むことで、レンジ焼け防止効果を発現することができ。そのため、本発明のレンジ焼け防止剤は、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~6のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である乳化剤を0.1~30質量%含有する。
【0018】
なお、HLBは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。同算出方法では、HLB値は、算術平均として算出される。
【0019】
本発明のレンジ焼け防止剤で用いるプロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~6のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる乳化剤は、低温下での固化を防ぐために、構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であることが好ましい。構成脂肪酸の70~100質量%が不飽和脂肪酸であることがより好ましく、構成脂肪酸の80~98質量%が不飽和脂肪酸であることがさらに好ましい。また、不飽和脂肪酸は、炭素数16~22の直鎖状不飽和脂肪酸を用いることができる。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸から選ばれる1種又は2種以上の不飽和脂肪酸が好ましい。特に好ましくは、構成脂肪酸の65~90質量%がオレイン酸である。乳化剤の不飽和脂肪酸以外の脂肪酸は飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸としては炭素数6~22の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、16~22の直鎖状飽和脂肪酸がより好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸から選ばれる1種又は2種以上を用いることがさらに好ましい。
【0020】
本発明のレンジ焼け防止剤は、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~6のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である乳化剤を、レンジ焼け防止剤中に0.5~10質量%含有することが好ましく、0.5~5質量%含有することがより好ましく、0.5~3質量%含有することがさらに好ましく、0.5~3質量%含有することがことさらに好ましい。
【0021】
本発明のレンジ焼け防止剤は、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である乳化剤を、レンジ焼け防止剤中に0.1~30質量%含有することが好ましく、0.5~10質量%含有することがより好ましく、0.5~5質量%含有することがさらに好ましく、0.5~3質量%含有することがことさらに好ましく、0.5~3質量%含有することが最も好ましい。
【0022】
本発明のレンジ焼け防止剤は、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、HLB1~3のショ糖脂肪酸エステル、HLB2~6のソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である乳化剤を、レンジ焼け防止剤中に0.5~10質量%含有することが好ましく、0.5~5質量%含有することがより好ましく、0.5~3質量%含有することがさらに好ましく、0.5~3質量%含有することがことさらに好ましい。
【0023】
プロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸をエステル化したものであり、市販品を用いてもよいし、従来公知の方法により製造したものを用いてもよい。市販品としては理研ビタミン株式会社製のType BP(HLB4.2)、リケマールPP-100(HLB3.8)、リケマールPO-100V(HLB3.6)、など、を適宜使用できる。なお、プロピレングリコール脂肪酸エステルは、HLB3~10のものを好適に使用することができ、HLB3~5のものがより好ましい。
【0024】
HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸をエステル化したものであり、市販品を用いてもよいし、従来公知の方法により製造したものを用いてもよい。市販品としては太陽化学株式会社製のサンソフトQ-17B(HLB6.5)、サンソフトQ-175S(HLB4.5)、サンソフトQ1710S(HLB3.0)、サンソフトA-173E(HLB7.0))、理研ビタミン株式会社製のポエムDO-100V(HLB7.3)など、が適宜使用できる。
【0025】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは3~10が好ましく、乳化剤のHLBは3~8が好ましく、6~8がより好ましい。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として使用されるポリグリセリンは一般には、グリセリンを原料として苛性ソーダなどのアルカリ触媒の存在下、高温にて脱水縮合し、必要に応じて蒸留、脱臭、脱色して得られる。これらポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンは、反応ポリグリセリンとも呼ばれ、重合度の異なるポリグリセリンの混合物であり、重合度分布の広いものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般的に、重合度4以上のものは、単離することが困難なため、様々な重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物であることを許容する。本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンは平均重合度2~40までのものを用いることができる。なお、平均重合度は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの重合度を示すものである。なお、ここでいう平均重合度とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンの水酸基価より計算された値であり、例えば、次式(式1)及び(式2)から平均重合度(n)を導き出すことができる。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
そして、一般のポリグリセリンは、水酸基価を測定して求められる末端基分析法により決定された平均重合度によって、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、デカグリセリン(平均重合度10)等と呼ばれて販売されている。従って、平均重合度は、計算上で求められた値であり、実際の重合度とは異なる値を示す場合がある。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン部分の平均重合度は、2~12がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
【0027】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとしては、市販品を用いてもよいし、従来公知の方法により製造したものを用いてもよい。市販品としては、例えば、阪本薬品工業株式会社製のSYグリスターCR-310、SYグリスターCR-500、SYグリスターCR-ED、SYグリスターCRS-75など、太陽化学株式会社製のサンソフトNo.818DG、サンソフト818R、サンソフト818SK、サンソフト818Hなど、理研ビタミン株式会社製のポエムPR-300、ポエムPR-400など、を適宜使用できる。
【0028】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルのHLBは、3以下が好ましく、HLBが1~2がより好ましい。また、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルのポリグリセリンの平均重合度は、4~12が好ましく、4~10がより好ましい。
【0029】
有機酸モノグリセリドは、脂肪酸モノグリセリドと有機酸のエステルであり、市販品を用いてもよいし、従来公知の方法により製造したものを用いてもよい。有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、特に限定されるものではないが、クエン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、酪酸等を好適に使用できる。特にクエン酸が、高いレンジ焼け防止効果が見られるため好ましい。なお、市販品としては、例えば、太陽化学株式会社製のサンソフトNo.621B、サンソフトNo.623M、サンソフトNo.681NU,サンソフトNo.641Dなど、を適宜使用できる。
【0030】
HLB1~3のショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸をエステル化したものであり、市販品を用いてもよいし、従来公知の方法により製造したものを用いてもよい。市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のリョートーシュガーエステルO-170(HLB1)、リョートーシュガーエステルP-170(HLB1)、リョートーシュガーエステルS-170(HLB1)、リョートーシュガーエステルS-270(HLB2)、リョートーシュガーエステルS-370(HLB3)、リョートーシュガーエステルB-370(HLB3),リョートーシュガーエステルER-290(HLB2)、リョートーシュガーエステルPOS-135(HLB1)など、を適宜使用できる。ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、1~2がより好ましい。
【0031】
HLB2~8のソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンと脂肪酸をエステル化したものであり、市販品を用いてもよいし、従来公知の方法により製造したものを用いてもよい。市販品としては、例えば、理研ビタミン株式会社製のリケマールL250A(HLB7.4)、リケマールOV-250(HLB4.9)、リケマールOR-85(HLB3.0)、ポエムO-80V(HLB4.9)など、を適宜使用できる。ソルビタン脂肪酸エステルのHLBは、3~6がより好ましく、4~5がさらに好ましい。
【0032】
レンジ焼け防止剤中に含まれる乳化剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0033】
<その他の成分>
本発明のレンジ焼け防止剤は、上記成分以外にも、レンジ焼け防止剤に一般的に配合される原材料を使用することができる。具体的には、例えば、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、安定剤、上記以外の乳化剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、レンジ焼け防止剤中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは3質量%以下、より好ましくは0~3質量%、さらに好ましくは0~1質量%含有させることができる。また、水溶性分は、レンジ焼け防止剤に可溶化状態で含むこともできる。
【0034】
<電子レンジ加熱用冷凍澱粉含有食品の製造方法>
本発明の電子レンジ加熱用冷凍澱粉含有食品の製造方法は、前述のレンジ焼け防止剤を、澱粉含有食品の加熱調理工程後に、澱粉含有食品100質量部に対して0.5~10質量部塗布する工程を経て、冷凍工程又は冷蔵工程を行うものである。
【0035】
本発明において、電子レンジ加熱用冷凍澱粉含有食品は、冷凍食品及び冷蔵・チルド食品を含む。冷凍食品は、電子レンジで解凍及び/又は加熱され、冷蔵・チルド食品は、電子レンジで加熱されて、食すことができる。
また、電子レンジ加熱用冷凍澱粉含有食品としては、そば、うどん、中華麺、パスタ等の麺類、及び、ご飯、チャーハン、カレーライス、丼物等の飯類、餃子などの麺皮加工品等が挙げられる。
【0036】
加熱調理工程としては、茹で調理、蒸し調理、炒め調理、揚げ調理等が挙げられる。本願のレンジ焼け防止剤の効果が十分発揮されるためには、澱粉含有食品表面に十分な濃度のレンジ焼け防止剤が存在する必要があるため、加熱調理工程を経た澱粉含有食品内に含まれる油脂量は問題ないが、該食品の表面上の油脂が少ないことが好ましい。例えば、加熱調理工程を経た澱粉含有食品の表面上の油脂量が澱粉含有食品の1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。また、茹で調理、蒸し調理したものであることが好ましい。
【0037】
レンジ焼け防止剤を澱粉含有食品へ塗布する工程は、例えば、澱粉含有食品へレンジ焼け防止剤をスプレーする、又は、澱粉含有食品をレンジ焼け防止剤中に浸漬する、又は澱粉含有食品とレンジ焼け防止剤を混合するなどの方法を用いることができる。この工程を経ることで、澱粉含有食品の表面にレンジ焼け防止剤がコーティングされ、本願のレンジ焼け防止効果を発現することができる。レンジ焼け防止剤の澱粉含有食品への塗布量は、澱粉含有食品100質量部に対して、0.5~7質量部となるように塗布することが好ましく、0.8~3.0質量部となるように塗布することがより好ましい。
【0038】
レンジ焼け防止剤は、前述の[レンジ焼け防災剤]で述べた通りである。また、レンジ焼け防止剤中に含まれる乳化剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、HLB2~8のポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0039】
冷凍工程又は冷蔵工程は、従来公知の方法を用いることができる。冷凍工程は澱粉含有食品を0℃以下に冷却する工程であり、-10℃以下で冷凍することがより好ましく、-15℃以下で冷凍することがさらに好ましい。また、冷蔵工程は澱粉含有食品を0~10℃に冷却する工程であり、0~5℃に冷却することがより好ましい。レンジ焼け防止剤を澱粉含有食品の表面に固定化するために、冷凍工程が好ましく、-10℃以下で急速冷凍することがより好ましい。
【実施例0040】
次に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0041】
[レンジ焼け防止剤]
表1~3の配合のレンジ焼け防止剤を準備した。比較例3,実施例1~15は、乳化剤と油脂を加熱混合(40~60℃)してレンジ焼け防止剤とした。なお、用いた、油脂、乳化剤は下記のとおりである。
(油脂)
菜種油(精製キャノーラ油 商品名「日清キャノーラ油」日清オイリオグループ株式会社製)
(乳化剤)
PE(プロピレングリコールオレイン酸エステル 商品名「リケマールPO-100V」理研ビタミン株式会社製:HLB3.6)
PGE1(デカグリセリンデカオレイン酸エステル 商品名「サンソフトQ-1710S」太陽化学株式会社製:HLB3)
PGE2(ジグリセリンモノオレイン酸エステル 商品名「ポエムDO-100V」理研ビタミン株式会社製:HLB7.3)
PGPR1(ペンタグリセリン縮合リシノール酸エステル 商品名「サンソフトNo.818R」太陽化学株式会社製:HLB3以下)
PGPR2(ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル 商品名「SYグリスターCR-500」阪本薬品工業株式会社製:HLB3以下)
有機酸MG(クエン酸モノオレイン酸グリセリン 商品名「サンソフトNo.623M」太陽化学株式会社製:HLB7)
SOE(ソルビタンオレイン酸エステル 商品名「ポエムO-80V」理研ビタミン株式会社製:HLB4.9)
SUE1(ショ糖ステアリン酸エステル 商品名「リョートーシュガーエステルS-170」三菱ケミカル株式会社製:HLB1)
SUE2(ショ糖オレイン酸エステル 商品名「リョートーシュガーエステルO-170」三菱ケミカル株式会社製:HLB1)
SUE3(ショ糖パルミチン酸エステル 商品名「リョートーシュガーエステルP-170」三菱ケミカル株式会社製:HLB1)
SUE4(ショ糖パルミチン酸エステル 商品名「リョートーシュガーエステルS-1670」三菱ケミカル株式会社製:HLB16)
【0042】
[レンジ焼け性能]
(麺の電子レンジ加熱)
市販のパスタ(乾麺:株式会社日清製粉ウェルナ製)を7分間熱湯で茹でた後、冷水で冷却し、水切りを行った。得られたパスタに対して、表1~3の配合量で調整したレンジ焼け防止剤をパスタ100質量部に対して2質量部添加し、混合した(パスタ表面に塗布した)。なお、参考例1は、レンジ焼け防止剤を使用しないで製造した例である。
【0043】
レンジ焼け防止剤を付着させたパスタ60gを容器に入れ、急速冷凍(―30℃)し、冷凍後、―18℃の冷凍庫で12時間保管し、冷凍パスタとした。冷凍パスタ60gを、レンジ焼けしやすくするために、電子レンジで過剰加熱(600W、2分間)し、解凍したパスタを得た。
【0044】
(破断強度)
加熱したパスタの破断強度を測定し、レンジ焼けの評価を行った。破断強度は、Texture Analyzer(型番「TA.XA Plus」、Stable Micro Systems Ltd製)を用いて測定(測定条件:降下速度 1mm/秒、治具 Blade Set、Strain(ひずみ)が98%で停止するよう設定))した。得られた破断強度(98%まで破断した場合の最大強度を測定)を表1~3に示した。
なお、破断強度の数値が高いものほど、レンジ焼けが進み、パスタが硬くなっていることを示している。
破断強度2801g以上 :×(不合格)
破断強度2601~2800g :●(合格)
破断強度2101~2600g :〇(合格:良好)
破断強度2100以下 :◎(合格:優良)
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】

実施例1~15はいずれも、参考例1、比較例1~3に比べて、破断強度が低く、レンジ焼け抑制効果があった。