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特開2024-32710感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及び、プリント配線板の製造方法
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  • 特開-感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及び、プリント配線板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032710
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及び、プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240305BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240305BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20240305BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240305BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/031
G03F7/029
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218150
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2019197433の分割
【原出願日】2019-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古室 伸仁
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真治
(72)【発明者】
【氏名】代島 雄汰
(72)【発明者】
【氏名】今林 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】大崎 真也
(57)【要約】
【課題】プリント配線板製造に用いられる感光性樹脂組成物に求められる、耐クラック性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性といった基本性能とともに、良好な断面形状を有する解像性や銅基板との密着性に優れ、更に、良好な耐HAST性を有する感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、(C)重合禁止剤、及び、(D)光重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、(C)重合禁止剤、及び、(D)光重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の光重合開始剤が、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びフェニル基からなる群から選ばれる基を少なくとも1つ有するベンゾフェノン化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂が、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)を用いて合成される少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)及び該エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂(a2)を用いて合成される少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するものである、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(a2)が、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びトリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)が、前記エポキシ樹脂(a1)とビニル基含有モノカルボン酸(b)とを反応させてなる樹脂(A1’)に、飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物(c)を反応させてなる樹脂であり、前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)が、前記エポキシ樹脂(a2)とビニル基含有モノカルボン酸(b)とを反応させてなる樹脂(A2’)に、飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物(c)を反応させてなる樹脂である、請求項3又は4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)が、下記一般式(I)で表される構造単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂及び下記一般式(II)で表される構造単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
【化1】

〔一般式(I)中、R11は水素原子又はメチル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。複数のR11は同一でも異なっていてもよく、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基を示す。〕
【化2】

〔一般式(II)中、R12は水素原子又はメチル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。複数のR12は同一でも異なっていてもよく、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基を示す。〕
前記エポキシ樹脂(a2)が、下記一般式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂、下記一般式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノール型エポキシ樹脂及び下記一般式(V)で表される構造単位を有するトリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】

〔一般式(III)中、R13は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、かつ水素原子とグリシジル基とのモル比(水素原子/グリシジル基)は0/100~30/70である。〕
【化4】

〔一般式(IV)中、R14は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、かつ水素原子とグリシジル基とのモル比(水素原子/グリシジル基)は0/100~30/70であり、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよい。〕
【化5】

〔一般式(V)中、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。〕
【請求項7】
前記(A)成分が、少なくとも1種の前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)と、少なくとも1種の前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)とを含有するものである、請求項3~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)が、前記一般式(I)で表される構造単位を有するものであり、かつ前記エポキシ樹脂(a2)が前記一般式(IV)で表される構造単位を含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(A)成分が、少なくとも1種の前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)を含有するものである、請求項3~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂(a2)が、前記一般式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂である、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(B)成分の光重合開始剤が、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チオキサントン骨格を有する光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記(B)成分の光重合開始剤が、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記(B)成分の光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である、請求項1~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
更に、(E)顔料を含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
更に、(F)無機フィラを含有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
キャリアフィルムと、請求項1~15のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いた感光層とを有する、ドライフィルム。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物により形成される永久マスクレジストを具備するプリント配線板。
【請求項18】
前記永久マスクレジストの厚みが、10μm以上である、請求項17に記載のプリント配線板。
【請求項19】
基板上に、請求項1~15のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物、又は請求項16に記載のドライフィルムを用いて感光層を設ける工程、該感光層を用いてレジストパターンを形成する工程、及び該レジストパターンを硬化して永久マスクレジストを形成する工程を順に有する、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造分野において、プリント配線板上に永久マスクレジストを形成することが行われている。永久マスクレジストは、プリント配線板の使用時において、導体層の腐食を防止したり、導体層間の電気絶縁性を保持する役割を有している。近年、永久マスクレジストは、半導体素子をプリント配線板上にはんだを介してフリップチップ実装、ワイヤボンディング実装等を行う工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ、はんだレジスト膜としての役割をも有するようになっている。
【0003】
従来、プリント配線板製造における永久マスクレジストは、熱硬化性樹脂組成物を用いてスクリーン印刷で、又は感光性樹脂組成物を用いて写真法で作製されている。例えば、FC(Flip Chip)、TAB(Tape Automated Bonding)、及びCOF(Chip On Film)といった実装方式を用いたフレキシブル配線板においては、ICチップ、電子部品又はLCD(Liquid Crystal Display)パネル、及び接続配線部分を除いて、熱硬化性樹脂ペーストをスクリーン印刷し、熱硬化して永久マスクレジストを形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電子部品に搭載されているBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等の半導体パッケージ基板においては、(1)半導体パッケージ基板上にはんだを介して半導体素子をフリップチップ実装するために、(2)半導体素子と半導体パッケージ基板とをワイヤボンディング接合するために、又は(3)半導体パッケージ基板をマザーボード基板上にはんだ接合するためには、その接合部分の永久マスクレジストを除去する必要がある。そのため、この永久マスクレジストの形成には、感光性樹脂組成物を塗布乾燥後に選択的に紫外線等の活性光線を照射して硬化させ、未照射部分のみを現像で除去して像形成する写真法が用いられている。写真法は、その作業性の良さから大量生産に適しているため、電子材料業界では感光性樹脂組成物の像形成に広く用いられている(例えば特許文献2、3参照)。照射する際に用いる露光機には、マスク非接触型のプロジェクション露光機やマスク不要の直描露光機が広く知られている。マスク不要の直描露光機は、その生産性の高さから、今後広まっていくと考えられる。更に、年々配線板の小型化・薄型化が進んでいく中で、それに用いられるソルダーレジストは、耐HAST性(High Accelerated Stress Test;高速加速寿命試験)などの高信頼性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-198105号公報
【特許文献2】特開2011-133851号公報
【特許文献3】国際公開第2013/022068号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物は、上述したような、高信頼性が要求される用途では、直描露光機に対応する解像性を有するだけでなく、特に耐HAST性を満足させる上では改善の余地があった。
【0007】
更に、近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、永久マスクレジストの穴径の大きさ、及び穴の中心間の距離がより微細化する傾向にあり、例えば、穴径の大きさが100μmかつ穴の中心間の距離100μm、穴径の大きさが80μmかつ穴の中心間の距離80μmという微細なパターンが用いられている。例えば、フリップチップ実装において、最近では、感光性樹脂組成物には、解像性以外にも、耐HAST性や耐クラック性などの信頼性の向上も求められている。
【0008】
本発明の目的は、露光機の種類にとらわれずに、レジストパターン底部がえぐられるアンダーカット及びレジストパターン上部の欠落が発生しにくく、レジストパターン断面の中間部(中心部)及び最深部(底部)の線幅が表面部の線幅に対して大きくなりにくい(すなわち、レジストパターン輪郭の直線性が良好な)、優れたレジスト形状のレジストパターンを形成でき、更に、絶縁信頼性や耐クラック性などの信頼性に優れる感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、光重合開始剤及び光重合性化合物を含有する組成物に、更に、重合禁止剤を配合することにより解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供するものである。
【0010】
[1](A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、(C)重合禁止剤、及び、(D)光重合性化合物、を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(B)成分の光重合開始剤が、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びフェニル基からなる群から選ばれる基を少なくとも1つ有するベンゾフェノン化合物である、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(A)成分の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂が、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)を用いて合成される少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)及び該エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂(a2)を用いて合成される少なくとも1種の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するものである、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記エポキシ樹脂(a2)が、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びトリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[3]に記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)が、前記エポキシ樹脂(a1)とビニル基含有モノカルボン酸(b)とを反応させてなる樹脂(A1’)に、飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物(c)を反応させてなる樹脂であり、前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)が、前記エポキシ樹脂(a2)とビニル基含有モノカルボン酸(b)とを反応させてなる樹脂(A2’)に、飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物(c)を反応させてなる樹脂である、上記[3]又は[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)が、下記一般式(I)で表される構造単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂及び下記一般式(II)で表される構造単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、前記エポキシ樹脂(a2)が、下記一般式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂、下記一般式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノール型エポキシ樹脂及び下記一般式(V)で表される構造単位を有するトリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[3]~[5]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
〔一般式(I)中、R11は水素原子又はメチル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。複数のR11は同一でも異なっていてもよく、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基を示す。〕
〔一般式(II)中、R12は水素原子又はメチル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。複数のR12は同一でも異なっていてもよく、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基を示す。〕
〔一般式(III)中、R13は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、かつ水素原子とグリシジル基とのモル比(水素原子/グリシジル基)は0/100~30/70である。〕
〔一般式(IV)中、R14は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、かつ水素原子とグリシジル基とのモル比(水素原子/グリシジル基)は0/100~30/70であり、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよい。〕
〔一般式(V)中、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。〕
【0013】
[7]前記(A)成分が、少なくとも1種の前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)と、少なくとも1種の前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)とを含有するものである、上記[3]~[6]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)が、前記一般式(I)で表される構造単位を有するものであり、かつ前記エポキシ樹脂(a2)が前記一般式(IV)で表される構造単位を含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である、上記[7]に記載の感光性樹脂組成物。
[9]前記(A)成分が、少なくとも1種の前記酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)を含有するものである、上記[3]~[6]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記エポキシ樹脂(a2)が、前記一般式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂である、上記[9]に記載の感光性樹脂組成物。
[11]前記(B)成分の光重合開始剤が、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チオキサントン骨格を有する光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[12]前記(B)成分の光重合開始剤が、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[13]前記(B)成分の光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[14]更に、(E)顔料を含有する、上記[1]~[13]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[15]更に、(F)無機フィラを含有する、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[16]キャリアフィルムと、上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いた感光層とを有する、ドライフィルム。
[17]上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物により形成される永久マスクレジストを具備するプリント配線板。
[18]前記永久マスクレジストの厚みが、10μm以上である、上記[17]に記載のプリント配線板。
[19]基板上に、上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物、又は上記[16]記載のドライフィルムを用いて感光層を設ける工程、該感光層を用いてレジストパターンを形成する工程、及び該レジストパターンを硬化して永久マスクレジストを形成する工程を順に有する、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レジストパターン底部がえぐられるアンダーカット及びレジストパターン上部の欠落が発生しにくく、レジストパターン輪郭の直線性に優れた(すなわち、優れたレジスト形状で)レジストパターンを形成でき、更に、銅基板との密着性及び流動性に優れ、耐HAST性や耐クラック性などの信頼性の向上した感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】レジストパターン輪郭の直線性に優れたレジスト断面形状を示す模式図である。
図2】レジストパターン輪郭の直線性に劣ったレジスト断面形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[感光性樹脂組成物]
本発明における実施形態(以後、単に本実施形態と称する場合がある。)に係る感光性樹脂組成物は、(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、(C)重合禁止剤、及び、(D)光重合性化合物を含有するものである。本明細書において、これらの成分は、単に(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分等と称することがある。
本実施形態の感光性樹脂組成物は上記の構成を有することにより、底部の光硬化性を向上させることができるため、レジストパターン底部がえぐられるアンダーカット及びレジストパターン上部の欠落が発生しにくくなり、紫外線照射の露光量を多くすることがないため、レジストパターン輪郭の直線性に優れる厚いレジストパターンを形成できると考えられる。更に、本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記特定の構成を有することにより、銅基板との密着性に優れ、かつ流動性に優れたものとなる。また、プリント配線板製造に用いられる感光性樹脂組成物に求められる、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐熱衝撃性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐HAST性、耐クラック性といった基本性能にも優れたものになると考えられる。
各成分について、以下説明する。
【0017】
<(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂を含む。(A)成分は、エポキシ樹脂をビニル基含有の有機酸で変性したものであり、例えば、エポキシ樹脂とビニル基含有モノカルボン酸とを反応させて得られる樹脂に、飽和基又は不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させてなるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0018】
(A)成分としては、例えば、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)(以後、(a1)成分と称する場合がある。)を用いて合成される酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A1)(以後、(A1)成分と称する場合がある。)、該エポキシ樹脂(a1)以外のエポキシ樹脂(a2)(以後、(a2)成分と称する場合がある。)を用いて合成される酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A2)(以後、(A2)成分と称する場合がある。)等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び流動性を向上させる観点から、(A)成分は、(a1)成分を用いて合成される少なくとも1種の(A1)成分と、(a2)成分を用いて合成される少なくとも1種の(A2)成分とを含有するものであってもよい。
【0019】
(エポキシ樹脂(a1))
(A)成分として、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び流動性を向上させる観点から、更には薄膜基板の反りを低減し(反り低減性)、耐熱衝撃性、解像性を向上させる観点から、(a1)成分を用いて合成される(A1)成分を含有することが好ましい。これと同様の観点から、(a1)成分としては、下記一般式(I)又は(II)で表される構造単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、一般式(II)で表される構造単位を有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく挙げられる。
【0020】
〔一般式(I)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂〕
(a1)成分の好ましい態様の一つは、下記の一般式(I)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂である。
【0021】
【化2】
【0022】
一般式(I)中、R11は水素原子又はメチル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。複数のR11は同一でも異なっていてもよく、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基を示す。
【0023】
11は、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、解像性を向上させる観点から、水素原子であることが好ましい。また、これと同様の観点、更には耐熱衝撃性、反り低減性を向上させる観点から、Y及びYは、グリシジル基であることが好ましい。
【0024】
一般式(I)で表される構造単位を有する(a1)成分の1分子中の該構造単位の構造単位数は、1以上の数であり、好ましくは、10~100、15~80、又は、15~70から適宜選択すればよい。構造単位数が上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、銅基板との密着性、耐熱性、及び電気絶縁性が向上する。ここで、構造単位の構造単位数は、(a1)成分が単一種の分子からなる場合においては整数値を示し、複数種の分子の集合体である場合においては平均値である有理数を示す。以下、構造単位の構造単位数については同様である。
【0025】
〔一般式(II)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂〕
また、(a1)成分の好ましい態様の他の一つは、下記の一般式(II)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂である。
【0026】
【化3】
【0027】
一般式(II)中、R12は水素原子又はメチル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。複数のR12は同一でも異なっていてもよく、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基を示す。
【0028】
12は、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、解像性を向上させる観点から、水素原子であることが好ましい。
また、これと同様の観点、更には耐熱衝撃性、反り低減性を向上させる観点から、Y及びYは、グリシジル基であることが好ましい。
【0029】
一般式(II)で表される構造単位を有する(a1)成分の1分子中の該構造単位の構造単位数は、1以上の数であり、好ましくは、10~100、15~80、又は、15~70から適宜選択すればよい。構造単位数が上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、銅基板との密着性、耐熱性、及び電気絶縁性が向上する。
【0030】
一般式(II)において、R12が水素原子であり、Y及びYがグリシジル基のものは、例えば、EXA-7376シリーズ(DIC株式会社製、商品名)として、また、R12がメチル基であり、Y及びYがグリシジル基のものは、EPON SU8シリーズ(三菱ケミカル株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0031】
(エポキシ樹脂(a2))
(a2)成分は、(a1)成分とは異なるエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び流動性を向上させ、また解像性を向上させる観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、下記一般式(III)で表される構造単位を有するものが好ましく挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、下記一般式(IV)で表される構造単位を有するものが好ましく挙げられ、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、下記一般式(V)で表される構造単位を有するものが好ましく挙げられる。
【0032】
(a2)成分は、一般式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂、並びに、一般式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、一般式(IV)で表される構造単位を有する樹脂については、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
また、感光特性と絶縁信頼性を両立させる観点からは、(a1)成分を用いてなる(A1)成分を用いず、(a2)成分が前記一般式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂とすることが好ましい。また、耐熱衝撃性、反り低減性、及び解像性を向上させる観点からは、(A)成分が(A1)成分及び(A2)成分を含有し、特に、(a1)成分が前記一般式(II)で表される構造単位を含有するビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、かつ(a2)成分が前記一般式(IV)で表される構造単位を含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂であるという組合せが特に好ましい。ここで、「(A1)成分を用いず」とは、実質的に含有していないことを示し、(A)成分の固形分総量中、(A1)成分の含有量が5質量%未満、1質量%未満、又は、0.5質量%未満のいずれかであることを示す。
【0033】
〔一般式(III)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂〕
(a2)成分としては、下記の一般式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい例として挙げられ、このような構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(III’)で表されるノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
一般式(III)及び(III’)中、R13は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、かつ水素原子とグリシジル基とのモル比(水素原子/グリシジル基)は0/100~30/70である。また、一般式(III’)中、nは1以上の数であり、複数のR13及びYは、同一でも異なっていてもよく、Yの少なくとも一つはグリシジル基を示す。
【0036】
13は、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、解像性を向上させる観点から、水素原子が好ましい。
また、一般式(III)で表される構造単位を有する(a2)成分中、及び、一般式(III’)で表される(a2)成分中、水素原子であるYとグリシジル基であるYとのモル比(水素原子/グリシジル基)は、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、解像性を向上させる観点から、0/100~30/70であり、好ましくは0/100~10/90である。このモル比からもわかるように、Yの少なくとも1つはグリシジル基である。
【0037】
一般式(III)で表される構造単位を有する(a2)成分の1分子中の該構造単位の構造単位数、及び、一般式(III’)中のnが示す数は、1以上の数であり、好ましくは、10~200、30~150、又は、30~100から適宜選択すればよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、銅基板との密着性、耐熱性、及び電気絶縁性が向上する。
【0038】
一般式(III)で表されるノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、公知の方法でフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0039】
一般式(III’)で表されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、YDCN-701、YDCN-702、YDCN-703、YDCN-704、YDCN-704L、YDPN-638、YDPN-602(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名)、CEN-431、CEN-439(以上、ダウケミカル株式会社製、商品名)、EOCN-120、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1025、EOCN-1027、BREN(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、EPN-1138、EPN-1235、EPN-1299(以上、BASF社製、商品名)、N-730、N-770、N-865、N-665、N-673、VH-4150、VH-4240(以上、DIC株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0040】
〔一般式(IV)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂〕
(a2)成分として、更に、下記一般式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく挙げられ、このような構造単位を有するエポキシ樹脂としては、例えば、一般式(IV’)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0041】
【化5】
【0042】
一般式(IV)及び(IV’)中、R14は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、かつ水素原子とグリシジル基とのモル比(水素原子/グリシジル基)は0/100~30/70である。また、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、一般式(IV’)中、nは1以上の数を示し、nが2以上の場合、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。
【0043】
14は、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、解像性を向上させる観点から、水素原子が好ましい。
また、これと同様の観点、更には耐熱衝撃性、反り低減性を向上させる観点から、Yは、グリシジル基であることが好ましい。
また、一般式(IV)で表される構造単位を有する(a2)成分中、及び、一般式(IV’)で表される(a2)成分中、水素原子であるYとグリシジル基であるYとのモル比(水素原子/グリシジル基)は、耐熱衝撃性と低反り性を向上させる観点から、0/100~30/70であり、好ましくは0/100~10/90である。一般式(IV)中、少なくとも一方のYがグリシジル基であることが好ましい。
【0044】
一般式(IV)で表される構造単位を有する(a2)成分の1分子中の該構造単位の構造単位数、及び、一般式(IV’)中のnで示される数は、1以上の数を示し、好ましくは、10~100、10~80、又は、15~60から適宜選択すればよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、銅基板との密着性、耐熱性、及び電気絶縁性が向上する。
【0045】
一般式(IV’)で表され、Yがグリシジル基であるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂は、例えば、下記一般式(IV’’)で表されるビスフェノールA又はビスフェノールFの水酸基とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0046】
【化6】
【0047】
一般式(IV’’)中、R14及びnは、上記一般式(IV’)と同じ意味を有する。
【0048】
水酸基とエピクロルヒドリンとの反応を促進するためには、反応温度50~120℃でアルカリ金属水酸化物存在下、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で反応を行うことが好ましい。反応温度が上記範囲内であると、反応が遅くなりすぎることがなく、副反応を抑制することができる。
【0049】
一般式(IV’)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、jER807、815、825、827、828、834、1001、1004、1007及び1009(以上、三菱ケミカル株式会社製、商品名)、DER-330、DER-301、DER-361(以上、ダウケミカル株式会社製、商品名)、YD-8125、YDF-170、YDF-170、YDF-175S、YDF-2001、YDF-2004、YDF-8170(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0050】
〔一般式(V)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂〕
(a2)成分としては、更に、下記の一般式(V)で表される構造単位を有するトリフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましく挙げられ、このような構造単位を有するトリフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、一般式(V’)で表されるトリフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。
【0051】
【化7】
【0052】
一般式(V)及び(V’)中、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。また、一般式(V’)中、nは1以上の数を示す。
【0053】
一般式(V)で表される構造単位を有する(a2)成分中、及び、一般式(V’)で表される(a2)成分中、水素原子であるYとグリシジル基であるYとのモル比(水素原子/グリシジル基)は、アンダーカット及びレジスト上部の欠落が発生しにくくなり、レジストパターン輪郭の直線性、解像性を向上させる観点から、好ましくは0/100~30/70であり、この範囲から適宜選択すればよい。このモル比からも分かるように、Yの少なくとも一つはグリシジル基である。
一般式(V)で表される構造単位を有する(a2)成分の1分子中の該構造単位の構造単位数、及び、一般式(V’)中のnで示される数は、1以上の数を示し、好ましくは、10~100、15~80、又は、15~70から適宜選択すればよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、銅基板との密着性、耐熱性及び電気絶縁性が向上する。
【0054】
一般式(V’)で表されるトリフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、FAE-2500、EPPN-501H、EPPN-502H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0055】
(A1)成分及び(A2)成分は、レジストパターン輪郭の直線性、解像性を向上させる観点から、(a1)成分及び(a2)成分(以下、「(a)成分」と称する場合がある。)と、ビニル基含有モノカルボン酸(b)(以下、(b)成分と称する場合がある。)とを反応させてなる樹脂(A1’)及び(A2’)(以下、まとめて「(A’)成分」と称する場合がある。)に、飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物(c)(以下、(c)成分と称する場合がある。)を反応させてなる樹脂であることが好ましい。
【0056】
〔ビニル基含有モノカルボン酸(b)〕
(b)成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、β-スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α-シアノ桂皮酸等のアクリル酸誘導体、水酸基含有アクリレートと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物などが好ましく挙げられる。
【0057】
半エステル化合物は、例えば、水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることで得られる。これらの(b)成分は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0058】
(b)成分の一例である上記半エステル化合物の合成に用いられる水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル、ビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスルトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
上記半エステル化合物の合成に用いられる二塩基酸無水物としては、飽和基を含有するもの、不飽和基を含有するものが挙げられる。二塩基酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0060】
上記(a)成分と(b)成分との反応において、(a)成分のエポキシ基1当量に対して、(b)成分が0.6~1.05当量となる比率で反応させることが好ましく、0.8~1.0当量となる比率で反応させることがより好ましい。このような比率で反応させることで、光重合性が向上する、すなわち光感度が大きくなるので、レジストパターン輪郭の直線性が向上する。
【0061】
(a)成分及び(b)成分は、有機溶剤に溶かして反応させることができる。
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが好ましく挙げられる。
【0062】
更に、(a)成分と(b)成分との反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
触媒の使用量は、(a)成分と(b)成分との合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~2質量部、更に好ましくは0.1~1質量部から適宜選択すればよい。上記の使用量とすると、(a)成分と(b)成分との反応が促進される。
【0063】
また、反応中の重合を防止する目的で、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が挙げられる。
重合禁止剤の使用量は、組成物の貯蔵安定性を向上させる観点から、(a)成分と(b)成分との合計100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.02~0.8質量部、更に好ましくは0.04~0.5質量部から適宜選択すればよい。
【0064】
(a)成分と(b)成分との反応温度は、生産性の観点から、好ましくは60~150℃、より好ましくは80~120℃、更に好ましくは90~110℃の範囲から適宜選択すればよい。
【0065】
このように、(a)成分と、(b)成分とを反応させてなる(A’)成分は、(a)成分のエポキシ基と(b)成分のカルボキシル基との開環付加反応により形成される水酸基を有するものになっていると推察される。
上記で得られた(A’)成分に、更に飽和又は不飽和基含有の(c)成分を反応させることにより、(A’)成分の水酸基((a)成分中に元来存在する水酸基も含む)と(c)成分の酸無水物基とが半エステル化された、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂になっていると推察される。
【0066】
〔多塩基酸無水物(c)〕
(c)成分としては、飽和基を含有するもの、不飽和基を含有するものを用いることができる。(c)成分の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、解像性に優れたパターンを形成できる感光性樹脂組成物を得る観点から、好ましくはテトラヒドロ無水フタル酸である。
【0067】
(A’)成分と(c)成分との反応において、例えば、(A’)成分中の水酸基1当量に対して、(c)成分を0.1~1.0当量反応させることで、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂の酸価を調整することができる。
【0068】
(A)成分の酸価は、好ましくは30~150mgKOH/g、より好ましくは40~120mgKOH/g、更に好ましくは50~100mgKOH/gである。酸価が30mgKOH/g以上であると感光性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性に優れ、150mgKOH/g以下であると硬化膜の電気特性が向上する。
【0069】
(A’)成分と(c)成分との反応温度は、生産性の観点から、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~120℃、更に好ましくは70~100℃の範囲から適宜選択すればよい。
【0070】
また、必要に応じて、(a)成分として、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一部併用することもできる。更に、(A)成分として、スチレン-無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性物等のスチレン-マレイン酸系樹脂を一部併用することもできる。
【0071】
((A)成分の分子量)
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは3,000~30,000、より好ましくは4,000~25,000、更に好ましくは5,000~18,000である。上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、銅基板との密着性、耐熱性、及び電気絶縁性が向上する。ここで、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定する、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。より具体的には、例えば、下記のGPC測定装置及び測定条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値を重量平均分子量とすることができる。また、検量線の作成は、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(「PStQuick MP-H」及び「PStQuick B」,東ソー株式会社製)を用いる。
(GPC測定装置)
GPC装置:高速GPC装置「HCL-8320GPC」,検出器は示差屈折計又はUV,東ソー株式会社製
カラム :カラムTSKgel SuperMultipore HZ-H(カラム長さ:15cm,カラム内径:4.6mm),東ソー株式会社製
(測定条件)
溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
測定温度 :40℃
流量 :0.35ml/分
試料濃度 :10mg/THF5ml
注入量 :20μl
【0072】
((A)成分の含有量)
感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、塗膜の耐熱性、電気特性及び耐薬品性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、更に好ましくは30~50質量%の範囲から適宜選択すればよい。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる水、希釈剤等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、該樹脂組成物を乾燥させた際に蒸発、揮発せずに残る成分を示し、また25℃付近の室温で液状、水飴状、及びワックス状のものも含む。
【0073】
((A)成分中の(A1)成分及び(A2)成分の合計含有量)
(A)成分として、(A1)成分と(A2)成分とを組み合わせて用いる場合、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分との合計含有量は、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、耐無電解めっき性、及びはんだ耐熱性を向上させる観点から、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%の範囲から適宜選択すればよい。また、(A1)成分、(A2)成分を単独で用いる場合も、上記範囲から適宜選択すればよい。
【0074】
((A1)成分と(A2)成分との質量比)
(A)成分として、(A1)成分と(A2)成分とを組み合わせて用いる場合、その質量比(A1/A2)は、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、耐無電解めっき性、及びはんだ耐熱性を向上させる観点から、好ましくは20/80~90/10、より好ましくは20/80~80/20、更に好ましくは30/70~70/30の範囲から適宜選択すればよい。
【0075】
<(B)光重合開始剤>
本実施形態で用いられる(B)成分としては、後述する(D)成分の光重合性化合物を重合させることができるものであれば、特に制限は無く、通常用いられる光重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チオキサントン骨格を有する光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等、従来公知の光重合開始剤が挙げられ、これらの光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成でき、耐無電解めっき性、及びはんだ耐熱性を向上させる観点からは、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤が好ましく用いられ、特にアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましく用いられる。
【0076】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンジルジメチルケタール系光重合開始剤;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤等が挙げられ、1種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0077】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド基(=P(=O)-C(=O)-基)を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、及びトリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられ、1種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0078】
チオキサントン骨格を有する光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等が挙げられ、1種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0079】
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η-5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等が挙げられ、1種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0080】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノ-プロパノン-1-オン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等の芳香族ケトン類、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体又はその誘導体、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、1種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0081】
((B)成分の含有量)
(B)成分の光重合開始剤の含有量は、レジストパターン輪郭の直線性が向上したレジスト形状を形成できる感光性樹脂組成物を得る観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.2~15質量%、0.4~5質量%、又は、0.6~1質量%から適宜選択すればよい。また、(B)成分の含有量が、0.2質量%以上であると露光部が現像中に溶出しにくくなり、15質量%以下であると耐熱性の低下を抑制できる。
【0082】
<(C)重合禁止剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)成分の光重合開始剤と共に重合禁止剤を含む。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン、4,4’-ブチリデン-ビス(6-tert-ブチル-m-クレゾールを挙げることができる。重合禁止剤は、フェノール系酸化防止剤であることが更に好ましい。
上記重合禁止剤は、現像工程終了後の加熱時において、揮発することを抑える点で、融点が100℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましい。
【0083】
((C)成分である重合禁止剤の含有量)
(C)成分である重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~2質量%、更に好ましくは0.01~0.1質量%の範囲から適宜選択すればよい。0.001質量%以上であると、光感度が低いため露光部が現像中に溶出する傾向を抑制することができ、20質量%以下であると耐熱性の低下を抑制することができる。
【0084】
<(D)光重合性化合物>
(D)成分の光重合性化合物は、光重合性を示す官能基、例えばビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば特に制限はなく、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
なお、本明細書中、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0085】
(D)成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート類、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類、及びメラミン(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。これらの(D)成分は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、前記多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類を含んでもよい。
【0086】
((D)成分の含有量)
(D)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは2~50質量%、より好ましくは3~20質量%、更に好ましくは3~10質量%から適宜選択すればよい。2質量%以上であると、光感度が低いため露光部が現像中に溶出する傾向を抑制することができ、50質量%以下であると耐熱性の低下を抑制することができる。
【0087】
<(E)顔料>
本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、更に(E)顔料を使用配合することができる。(E)成分は、配線を隠蔽する等の際に所望の色に応じて好ましく用いられるものである。(E)成分としては、所望の色を発色する着色剤を適宜選択して用いればよく、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知の着色剤が好ましく挙げられる。
【0088】
((E)成分の含有量)
(E)成分を使用する場合、(E)成分の含有量は、配線をより隠蔽させる観点から、感光性樹脂組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、更に好ましくは0.5~2質量%から適宜選択すればよい。
【0089】
<(F)無機フィラ>
本実施形態の感光性樹脂組成物には、更に、密着性、塗膜硬度等の諸特性を更に向上させる目的で、必要に応じて(F)無機フィラを使用することができる。
(F)成分としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸バリウム(BaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、カーボン(C)等を使用することができる。これらの無機フィラは、単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0090】
(F)成分の平均粒径は、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.1~10μm、更に好ましくは0.1~5μm、更に好ましくは0.1~1μmから適宜選択すればよい。平均粒径が20μm以下であると、絶縁信頼性の低下をより抑制することができる。ここで、(F)成分の平均粒径は、例えば動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA-EX150」(日機装株式会社製、商品名)、及びレーザ回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT-3100」(日機装株式会社製、商品名)を用いて測定することができる。
【0091】
(F)成分の中でも、耐熱性を向上できる観点から、シリカを含むことが好ましく、はんだ耐熱性、耐クラック性(耐熱衝撃性)、及び耐PCT試験後のアンダフィル材と硬化膜との接着強度を向上できる観点から、硫酸バリウムを含むことが好ましく、シリカと硫酸バリウムとを組み合わせて含んでもよい。また、無機フィラは、凝集防止効果を向上できる観点から、アルミナ又は有機シラン系化合物で表面処理しているものを適宜選択してもよい。
【0092】
アルミナ又は有機シラン系化合物で表面処理している無機フィラの表面におけるアルミニウムの元素組成は、好ましくは0.5~10原子%、より好ましくは1~5原子%、更に好ましくは1.5~3.5原子%から適宜選択すればよい。また、有機シラン系化合物で表面処理している無機フィラの表面におけるケイ素の元素組成は、好ましくは0.5~10原子%、より好ましくは1~5原子%、更に好ましくは1.5~3.5原子%から適宜選択すればよい。また、有機シラン系化合物で表面処理している無機フィラの表面における炭素の元素組成は、好ましくは10~30原子%、より好ましくは15~25原子%、更に好ましくは18~23原子%から適宜選択すればよい。これらの元素組成は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光法)を用いて測定することができる。
【0093】
アルミナ又は有機シラン系化合物で表面処理している無機フィラとしては、例えば、アルミナ又は有機シラン系化合物で表面処理している硫酸バリウムが、NanoFine BFN40DC(日本ソルベイ株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0094】
((F)成分の含有量)
(F)成分を使用する場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~70質量%、更に好ましくは20~50質量%、更に好ましくは25~40質量%から適宜選択すればよい。上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の硬化物強度、耐熱性、絶縁信頼性、耐熱衝撃性、解像性等をより向上させることができる。
【0095】
(F)成分としてシリカを用いる場合の、シリカの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは5~60質量%、より好ましくは15~55質量%、更に好ましくは15~50質量%から適宜選択すればよい。また、(F)成分として硫酸バリウムを用いる場合の、硫酸バリウムの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは5~30質量%、より好ましくは5~25質量%、更に好ましくは5~20質量%から適宜選択すればよい。上記範囲内であると、はんだ耐熱性及び耐PCT試験後のアンダフィル材と硬化膜の接着強度をより向上させることができる。
【0096】
<希釈剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて希釈剤を用いることができる。希釈剤としては、例えば、有機溶剤等が使用できる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。
【0097】
希釈剤の使用量は、感光性樹脂組成物中の固形分全量の含有量が、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~80質量%、更に好ましくは65~75質量%となる量から適宜選択すればよい。すなわち、希釈剤を用いる場合の感光性樹脂組成物中の希釈剤の含有量は、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%、更に好ましくは25~35質量%から適宜選択すればよい。上記範囲内とすることで、感光性樹脂組成物の塗布性が向上し、より高精細なパターンの形成が可能となる。
【0098】
<(G)硬化剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、(G)硬化剤を含んでいてもよい。(G)成分としては、それ自体が熱、紫外線等で硬化する化合物、あるいは本実施形態の感光性樹脂組成物中の光硬化性成分である(A)成分のカルボキシル基、水酸基と、熱、紫外線等で反応して硬化する化合物が挙げられる。硬化剤を用いることで、最終硬化膜の耐熱性、密着性、耐薬品性等を向上させることができる。
【0099】
(G)成分の硬化剤としては、例えば、熱硬化性化合物が挙げられ、エポキシ化合物、メラミン化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂あるいは、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
メラミン化合物としては、例えば、トリアミノトリアジン、ヘキサメトキシメラミン、ヘキサブトキシ化メラミン等が挙げられる。
中でも、硬化膜の耐熱性をより向上させる観点から、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)を含むことが好ましく、エポキシ化合物とブロック型イソシアネートとを併用することがより好ましい。
【0100】
ブロック型イソシアネートとしては、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。このポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、並びにこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0101】
(G)成分は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いられる。(G)成分を用いる場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは2~40質量%、より好ましくは3~30質量%、更に好ましくは5~20質量%から適宜選択すればよい。上記範囲内にすることにより、良好な現像性を維持しつつ、形成される硬化膜の耐熱性をより向上することができる。
【0102】
<(H)エポキシ樹脂硬化剤>
また、本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じ、最終硬化膜の耐熱性、密着性、耐薬品性等の諸特性を更に向上させる目的で、(H)エポキシ樹脂硬化剤を併用することができる。
このような(H)成分であるエポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体:アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類:ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類:これらの有機酸塩又はエポキシアダクト:三フッ化ホウ素のアミン錯体:エチルジアミノ-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-s-トリアジン等のトリアジン誘導体類などが挙げられる。
【0103】
(H)成分としてのエポキシ樹脂硬化剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができ、使用する場合、感光性樹脂組成物中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、信頼性向上の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%から適宜選択すればよい。
【0104】
<(I)エラストマー>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(I)エラストマーを含有することができる。(I)成分は、特に、本実施形態の感光性樹脂組成物を半導体パッケージ基板に用いる場合に好適に使用することができる。(I)成分を添加することにより、(A)成分の硬化収縮による樹脂内部の歪み(内部応力)に起因した、可とう性、接着強度の低下を抑えることができる。すなわち、感光性樹脂組成物により形成される硬化膜の可とう性、接着強度等を向上させることができる。
【0105】
(I)成分としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー及びシリコーン系エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマーは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分から成り立っており、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性に寄与する。
【0106】
ウレタン系エラストマーは、低分子のグリコールとジイソシアネートからなるハードセグメントと高分子(長鎖)ジオールとジイソシアネートからなるソフトセグメントとの構造単位からなり、高分子(長鎖)ジオールの具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン-1,4-ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6-ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6-ヘキシレン-ネオペンチレンアジペート)等が挙げられる。
高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500~10,000が好ましい。エチレングリコールの他に、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ビスフェノールA等の短鎖ジオールを用いることができ、短鎖ジオールの数平均分子量は、48~500が好ましい。ウレタンエラストマーの具体例として、PANDEX T-2185、T-2983N(DIC株式会社製)、ミラクトランE790(日本ミラクトラン株式会社製)等が商業的に入手可能である。
【0107】
ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ジカルボン酸又はその誘導体及びジオール化合物又はその誘導体を重縮合して得られるものが挙げられる。ジカルボン酸の具体例として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香核の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
これらの化合物は単独で、又は複数種で用いることができる。
【0108】
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等の脂肪族ジオール及び脂環式ジオール、又は、下記一般式(VI)で表される二価フェノール等が挙げられる。
【0109】
【化8】
【0110】
一般式(VI)中、Yは炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~8のシクロアルキレン基、-O-、-S-及び-SO-からなる群から選択される二価の官能基、又は直接ベンゼン環同士が結合することを示し、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~12のアルキル基を示し、l及びmは、各々独立に0~4の整数を示し、pは0又は1を示す。アルキレン基、シクロアルキレン基は直鎖状でも枝分かれ状でもよく、またハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基等により置換されたものであってもよい。
【0111】
一般式(VI)で表される二価フェノールとしては、その具体例として、ビスフェノールA、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、レゾルシン等が挙げられる。これらの化合物は単独で、又は複数種を用いることができる。
また、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることができる。ハードセグメントとソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いによりさまざまなグレードのものがある。具体的には、ハイトレル(東レ・デュポン株式会社製、「ハイトレル」は登録商標)、ペルプレン(東洋紡株式会社製、「ペルプレン」は登録商標)、エスペル(日立化成株式会社製、「エスペル」は登録商標)等が商業的に入手可能である。
【0112】
アクリル系エラストマーとしては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステルを主成分として合成されるものが挙げられる。また、架橋点モノマーとして、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等を用いてもよい。また、更に、アクリロニトリルやエチレンを共重合することもできる。具体的には、例えば、アクリロニトリル-ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0113】
また、上記の熱可塑性エラストマー以外に、ゴム変性したエポキシ樹脂を用いることができる。ゴム変性したエポキシ樹脂は、例えば、上述のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂あるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の一部又は全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン-アクリロニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られる。これらのエラストマーの中で、せん断接着性の観点から、両末端カルボキシル基変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、水酸基を有するポリエステル系エラストマーであるエスペル(日立化成株式会社製、商品名:エスペル1612、1620)が好ましい。
【0114】
(I)成分を使用する場合、その含有量は、(A)成分(固形分)100質量部に対して、好ましくは2~40質量部、より好ましくは4~30質量部、更に好ましくは10~25質量部、更に好ましくは15~22質量部から適宜選択すればよい。上記範囲内とすることにより、硬化膜の高温領域での弾性率がより低くなり、かつ未露光部が現像液でより溶出し易くなる。
【0115】
<その他の添加剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、シランカップリング剤等の公知慣用の各種添加剤を用いることができる。更に、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、及びリン系化合物のホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤を用いることができる。
また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、更に、必要に応じて密着付与材としてメラミン等のトリアジン化合物を用いてもよい。
【0116】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、配合成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。
【0117】
[ドライフィルム]
本実施形態のドライフィルムは、キャリアフィルムと、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いた感光層とを有する。
感光層の厚みは、特に制限はないが、好ましくは10~50μm、より好ましくは15~40μm、更に好ましくは20~30μmから適宜選択すればよい。
【0118】
本実施形態のドライフィルムは、例えば、キャリアフィルム上に、本実施形態の感光性樹脂組成物を、リバースロールコート、グラビアロールコート、コンマコート、カーテンコート等の公知の方法で塗布及び乾燥して、感光層を形成し、製造することができる。
キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンなどが挙げられる。キャリアフィルムの厚さは、特に制限はないが、好ましくは5~100μmの範囲から適宜選択すればよい。また、本実施形態のドライフィルムは、感光層のキャリアフィルムと接する面とは反対側の面に保護層を積層することもできる。保護層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどを用いてもよい。また、上述するキャリアフィルムと同様の重合体フィルムを用いてもよく、異なる重合体フィルムを用いてもよい。
塗膜の乾燥は、熱風乾燥や遠赤外線、又は、近赤外線を用いた乾燥機等を用いることができ、乾燥温度としては、例えば、好ましくは60~120℃、より好ましくは70~110℃、更に好ましくは80~100℃から適宜選択すればよい。また、乾燥時間としては、例えば、好ましくは1~60分、より好ましくは2~30分、更に好ましくは5~20分から適宜選択すればよい。
【0119】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の感光性樹脂組成物により形成される永久マスクレジストを具備する。
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の感光性樹脂組成物より形成される永久マスクレジストを具備するため、底部がえぐられるアンダーカットの発生やレジスト上部の欠落が発生することなく、パターン断面の中間部(中心部)及び最深部(底部)の線幅が表面部の線幅に対して大きくならないので、パターン輪郭の直線性が良くレジスト形状に優れ、解像性に優れたパターンを有する。また、この永久マスクレジストは、近年の電子機器の小型化や高性能化に伴う微細化した穴径の大きさと穴間の間隔ピッチの形成安定性に優れた、パターンを有するものとなる。
【0120】
[プリント配線板の製造方法]
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、基板上に本実施形態の感光性樹脂組成物、又は本実施形態のドライフィルムを用いて感光層を設ける工程、該感光層を用いてレジストパターンを形成する工程、及び該レジストパターンを硬化して永久マスクレジストを形成する工程を順に有する。
具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、銅張り積層板等の金属張積層基板上に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、カーテンコート法、静電塗装法等の方法で、例えば、10~200μm、好ましくは15~150μm、より好ましくは20~100μm、更に好ましくは23~50μmから適宜選択する膜厚で感光性樹脂組成物を塗布し、次に塗膜を好ましくは60~110℃で乾燥させるか、又は保護層を剥がした本実施形態のドライフィルムを前記基板上にラミネーターを用いて熱ラミネートすることにより、基板上に感光層を設ける。
次に、該感光層にネガフィルムを直接接触(又はキャリアフィルム等の透明なフィルムを介して非接触)させて、活性光を、例えば、10~2,000mJ/cm、好ましくは100~1,500mJ/cm、より好ましくは300~1,000mJ/cmから適宜選択する露光量で照射し、その後、未露光部を希アルカリ水溶液で溶解除去(現像)してレジストパターンを形成する。使用される活性光としては電子線、紫外線、X線等が挙げられ、好ましくは紫外線である。また、光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ等を使用することができる。ネガフィルムの代わりに直描露光機を用いて、直描露光によりレジストパターンを形成してもよい。
次に、該感光層の露光部分を後露光(紫外線露光)及び後加熱の少なくとも一方の処理によって十分硬化させて永久マスクレジストを形成する。
後露光の露光量は、好ましくは100~5,000mJ/cm、より好ましくは500~2,000mJ/cm、更に好ましくは700~1,500J/cmから適宜選択すればよい。
後加熱の加熱温度は、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~180℃、更に好ましくは135~165℃から適宜選択すればよい。
後加熱の加熱時間は、好ましくは5分~12時間、より好ましくは10分~6時間、更に好ましくは30分~2時間から適宜選択すればよい。
このようにして形成される永久マスクレジストは、絶縁性や解像性の観点から、厚みが10μm以上であることが好ましく、より好ましくは10~100μmであり、更に好ましくは10~50μmである。
その後、エッチングにて、配線を形成し、プリント配線板が作製される。
【実施例0121】
以下、実施例及び比較例に基づいて本実施態様の目的及び利点をより具体的に説明するが、本実施態様は以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
(合成例1)
ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(a)(EXA-7376、DIC株式会社製、一般式(II)において、Y及びYがグリシジル基、R12が水素原子である構造単位を含有するビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:186)350質量部、アクリル酸(b)70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、カルビトールアセテート120質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌することにより反応させ、混合物を完全に溶解した。次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させ、(A1’)成分を含有する溶液を得た。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)(c)98質量部とカルビトールアセテート85質量部とを加え、80℃に加熱して、6時間反応させた。その後、室温(25℃)まで冷却し、固形分の濃度が73質量%である(A1)成分としてのTHPAC変性ビスフェノールFノボラック型エポキシアクリレートを得た。
【0123】
(合成例2)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(一般式(IV)において、Yが水素原子、R14が水素原子である構造単位を含有するビスフェノールF型エポキシ樹脂)(a)(エポキシ当量:526)1,052質量部、アクリル酸(b)144質量部、メチルハイドロキノン1質量部、カルビトールアセテート850質量部及びソルベントナフサ100質量部を仕込み、70℃で加熱撹拌して、混合物を溶解した。次に、溶液を50℃まで冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部、ソルベントナフサ75質量部仕込み、100℃に加熱し、固形分酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させ、(A2’)成分を含有する溶液を得た。次に、得られた溶液を50℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)(c)745質量部、カルビトールアセテート75質量部及びソルベントナフサ75質量部を仕込み、80℃に加熱して、6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、固形分酸価80mgKOH/g、固形分62質量%である(A2)成分としてのTHPAC変性ビスフェノールF型エポキシアクリレートを得た。
【0124】
(実施例1~10、比較例1~5)
表1に示す配合組成に従って組成物を配合し、3本ロールミルで混練し感光性樹脂組成物を調製した。固形分濃度が70質量%になるようにカルビトールアセテートを加えて、感光性樹脂組成物を得た。
【0125】
【表1】
【0126】
なお、表1中の各材料の詳細は以下の通りである。
(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂
・A1;合成例1で得た酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(I)(THPAC変性ビスフェノールFノボラック型エポキシアクリレート)
・A2;合成例2で得た酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(II)(THPAC変性ビスフェノールF型エポキシアクリレート)
(B)光重合開始剤
・イルガキュア907:2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]モルフォリノ-1-プロパノン(BASF社製、商品名)[アルキルフェノン系光重合開始剤]
・イルガキュア819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、商品名)[アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤]
・イルガキュア369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(BASF社製、商品名)[アルキルフェノン系光重合開始剤]
・イルガキュアOXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム) (BASF社製、商品名)[オキシムエステル系光重合開始剤]
・イルガキュアTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(BASF社製、商品名)[アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤,オキシムエステル系光重合開始剤]
(C)重合禁止剤
・AW-300(ANTAGE W-300;4,4’-ブチリデン-ビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール、川口化学工業株式会社製、商品名)
(D)光重合性化合物
・DPHA:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名)
(E)顔料
・フタロシアニン系顔料:フタロシアニン系顔料(山陽色素株式会社製)
(F)無機フィラ
・B34:硫酸バリウム粒子(堺化学工業株式会社製、商品名、平均粒径:0.3μm)
・SFP-20M:シリカ粒子(デンカ株式会社、商品名、平均粒径:0.3μm)
(G)硬化剤
・硬化剤:YX4000X(三菱ケミカル株式会社製、商品名、ビフェニル型エポキシ樹脂)
(H)エポキシ樹脂硬化剤
・メラミン:日産化学工業株式会社製
【0127】
次に、上記で得られた感光性樹脂組成物を用いて、下記に示す条件で各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0128】
[試験片の作製方法]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、厚さ0.6mmの銅張積層基板(MCL-E-67、日立化成株式会社製)に、乾燥後の膜厚が35μmになるようにスクリーン印刷法で塗布した後、80℃で20分間熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。次に、所定のパターン(穴径50μm、かつ穴の中心間距離50μmのパターン)を有するネガマスクを塗膜に密着させ、紫外線露光装置を用いて100mJ/cmの露光量で露光した。その後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.765×10Paの圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像した。次に、紫外線露光装置を用いて1000mJ/cmの露光量で後露光し、150℃で1時間後加熱して、永久マスクレジストを有する試験片を作製した。
【0129】
[レジスト形状]
上記作製方法によって作製した試験片をエポキシ樹脂(jER828(三菱ケミカル株式会社製、商品名)にトリエチレンテトラミンを硬化剤として使用)で注型し十分硬化した後に、研磨機(リファインポリッシャー(リファインテック株式会社製))で研磨してパターンの断面を削り出してレジスト形状を金属顕微鏡で観察した。以下の基準で、判断しレジスト形状を評価した。
A:レジスト形状はアンダーカット、レジスト上部の欠落が確認されず、またパターン輪郭の直線形が良かった(図1参照)。
B:レジスト形状はアンダーカット、レジスト上部の欠落が確認される、またパターン輪郭の直線形が悪かった(図2参照)。
【0130】
[密着性]
厚さ35μmの銅箔(日本電解株式会社製)に、実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が35μmになるようにスクリーン印刷法で塗布した後、80℃で20分間熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。次いで、上記ネガマスクを塗膜に密着させ、露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EDi-5008)を用いて、100mJ/cmの露光量で感光層を露光した。その後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.765×10Paの圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像した。次に、紫外線露光装置を用いて1000mJ/cmの露光量で後露光し、150℃で1時間後加熱して、銅箔上に永久マスクレジストを設けた試験片を作製した。得られた試験片の永久マスクレジストを設けた面と、銅張り積層板(MCL-E-67、日立化成株式会社製)とを接着剤(ニチバン株式会社製、商品名:アラルダイト)を用いて硬化させて、接着した。
12時間放置後、銅箔の一端を10mm剥がした。次いで、積層板を固定し、剥がした銅箔をつかみ具でつまみ、銅箔の厚み方向(垂直方向)に引張り速度50mm/分、室温で引き剥がした時の荷重(ピール強度)を8回測定し、8回の測定値から平均値を算出し、密着性(接着強度)の指標とした。なお、密着性(ピール強度)の評価は、JIS C 5016(1994-導体の引きはがし強さ)に準拠して行い、以下の基準で評価した。また、本明細書において、室温とは25℃を示す。
A:ピール強度は、0.5kN/mmより大きかった。
B:ピール強度は、0.3~0.5kN/mmの範囲であった。
C:ピール強度は、0.3kN/mm未満であった。
【0131】
[耐HAST性]
銅張積層基板の代わりに、くし型電極(ライン/スペース=10μm/10μm)が形成されたビスマレイミドトリアジン基板を用いた以外は、上記[試験片の作製方法]に記載の方法と同じく試験片を形成し、これを135℃、85%、5V条件下に晒した。その後、マイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。
A:200時間以上経過しても抵抗値が10-6Ω以下に低下することがなかった。
B:100時間以上200時間未満、抵抗値が10-6Ω以下に低下しなかった。
C:100時間未満に、抵抗値が10-6Ω以下に低下した。
【0132】
[はんだ耐熱性]
上記[試験片の作製方法]に記載の方法と同じく作製した試験片に水溶性フラックスを塗布し、265℃のはんだ槽に10秒間浸漬した。これを1サイクルとして、6サイクル繰り返した後、永久マスクレジストの外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
3:永久マスクレジスト30cm×30cm内に、外観変化はなかった。
2:永久マスクレジスト30cm×30cm内に、塗膜のウキ又はフクレが1個~5個発生した。
1:永久マスクレジスト30cm×30cm内に、塗膜のウキ又はフクレが6個以上発生した。
【0133】
[耐クラック性]
上記[試験片の作製方法]に記載の方法と同じく作製した試験片を、-65℃30分/(常温;25℃)/150℃30分を1サイクルとして、1000サイクル繰り返した後、永久マスクレジストの外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
3:永久マスクレジスト30cm×30cm内に、外観変化はなかった。
2:永久マスクレジスト30cm×30cm内に、塗膜のウキ又はフクレが1個~5個発生した。
1:永久マスクレジスト30cm×30cm内に、塗膜のウキ又はフクレが6個以上発生した。
【0134】
[耐溶剤性]
上記[試験片の作製方法]に記載の方法と同じく作製した試験片をイソプロピルアルコールに室温(25℃、以下同様)で30分間浸漬し、永久マスクレジストの外観に異常がないかを確認後、セロハンテープにより剥離試験を行った。
3:永久マスクレジストの外観に異常がなく、剥離が生じなかった。
2:永久マスクレジストの外観にほんの僅かな変化が生じた。
1:永久マスクレジストの外観に異常があるか、あるいは剥離が生じた。
【0135】
[耐酸性]
上記[試験片の作製方法]に記載の方法と同じく作製した試験片を10質量%塩酸水溶液に室温で30分間浸漬し、永久マスクレジストの外観に異常がないかを確認後、セロハンテープにより剥離試験を行った。
3:永久マスクレジストの外観に異常がなく、剥離が生じなかった。
2:永久マスクレジストの外観にほんの僅かな変化が生じた。
1:永久マスクレジストの外観に異常があるか、あるいは剥離が生じた。
【0136】
[耐アルカリ性]
上記[試験片の作製方法]に記載の方法と同じく作製した試験片を5質量%水酸化ナトリウム水溶液に室温で30分間浸漬し、永久マスクレジストの外観に異常がないかを確認後、セロハンテープにより剥離試験を行った。
3:永久マスクレジストの外観に異常がなく、剥離が生じなかった。
2:永久マスクレジストの外観にほんの僅かな変化が生じた。
1:永久マスクレジストの外観に異常があるか、あるいは剥離が生じた。
【0137】
【表2】
【0138】
表2に示されるとおり、重合禁止剤を含有する感光性樹脂組成物は、レジスト形状に優れたレジストパターンを形成することができた。更に、耐HAST性においても、良好な結果「A」を示した。また、形成されたレジストパターンは、密着性、絶縁性に優れ、更に、はんだ耐熱性、耐クラック性、耐溶剤性、耐酸性及び耐アルカリ性の評価においても「3」の評価であり、優れていることがわかる。これに対して、重合禁止剤を含有しない比較例1~5の感光性樹脂組成物は、レジスト形状と耐HAST性の特性において、効果が劣るものであった。
【0139】
(実施例11~20、比較例6~10)
表1に示す配合割合で調製した実施例1~10、比較例1~5の各感光性樹脂組成物をメチルエチルケトンにて希釈し、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布して90℃で10分乾燥し、厚さ25μmの感光性樹脂組成物からなる感光層を形成した。更にその上にカバーフィルム(厚さ15μmのポリプロピレンフィルム)を貼り合わせて、各々実施例11~20、比較例6~10のドライフィルムを作製した。
【0140】
[ドライフィルム評価]
上記で得られたドライフィルムからカバーフィルムを剥がし、ベタの銅箔基板に、該ドライフィルムを熱ラミネートし、次いで、上記[試験片の作製]に記載の方法と同じく露光して、永久マスクレジストを有する試験片を作製した。
得られた試験片を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0141】
【表3】
【0142】
表3に示されるとおり、重合禁止剤を含有する感光性樹脂組成物は、レジスト形状に優れたレジストパターンを形成することができた。更に、耐HAST性においても、良好な結果「A」を示した。また、形成されたレジストパターンは、密着性、絶縁性に優れ、更に、はんだ耐熱性、耐クラック性、耐溶剤性、耐酸性及び耐アルカリ性の評価においても「3」の評価であり、優れていることがわかる。これに対して、重合禁止剤を含有しない比較例6~10(比較例1~5)の感光性樹脂組成物は、解像性と耐HAST性の特性において、効果が劣るものであった。
図1
図2