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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032816
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光学システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240305BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240305BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
G09F9/00 313
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006897
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2021571272の分割
【原出願日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2020004741
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020053180
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020072464
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020082820
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020129658
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020171234
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】米本 隆
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 之人
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼地 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石黒 誠
(57)【要約】
【課題】ゴースト像を排除しつつ、主像の輝度の向上が得られる光学システムの提供を課題とする。
【解決手段】画像を出射する画像表示装置と、画像に関連付けられた光が通過する直線偏光子と、直線偏光子から光を受信する第1の1/4波長板と、ハーフミラーと、反射偏光子と、反射偏光子とハーフミラーとの間にある第2の1/4波長板と、を有する光学システムにおいて、第1の1/4波長板のリターダンスと、第2の1/4波長板のリターダンスとが等しいことにより、課題を解決する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を出射する画像表示装置と、
前記画像表示装置が出射した前記画像を担持する光が通過する直線偏光子と、
前記直線偏光子から前記光を受信する第1の1/4波長板と、
ハーフミラーと、
反射偏光子と、
前記反射偏光子と前記ハーフミラーとの間にある第2の1/4波長板と、
を有する光学システムにおいて、
前記反射偏光子は、前記直線偏光子の透過軸と直交する透過軸を有し、
前記第1の1/4波長板と、前記第2の1/4波長板とが、複数の光学異方性層を有する積層型波長板であって、前記光学異方性層の積層順が前記ハーフミラーを中心として対称の配置となっており、
前記第1の1/4波長板のリターダンスと、前記第2の1/4波長板のリターダンスとが等しいことを特徴とする光学システム。
ここで、リターダンスが等しいとは、正面から光が入射した場合における、前記第1の1/4波長板のリターダンスR1と前記第2の1/4波長板のリターダンスR2とのベクトル和|R1+R2|が、|R1+R2|≦π/30であることを示す。
【請求項2】
前記第1の1/4波長板および前記第2の1/4波長板を構成する複数の光学異方性層のそれぞれの波長分散が、いずれも逆波長分散である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1の1/4波長板および前記第2の1/4波長板は、1/2波長板と、1/4波長板とを有する、請求項1または2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記第1の1/4波長板および前記第2の1/4波長板の少なくとも一方が、3層以上の光学異方性層からなる積層型波長板であり、波長450nmで測定した面内レターデーション値であるRe(450)と、波長550nmで測定した面内レターデーション値であるRe(550)と、波長650nmで測定した面内レターデーションの値であるRe(650)とが、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第1の1/4波長板と、前記第2の1/4波長板とが、それぞれポジティブCプレートを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学システム。
【請求項6】
前記第1の1/4波長板および前記第2の1/4波長板の少なくとも一方が、厚さ方向を螺旋軸とする液晶化合物の捩じれ構造を有する層を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学システム。
【請求項7】
前記直線偏光子と前記反射偏光子との間に、光学補償層を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学システム。
【請求項8】
前記直線偏光子が吸収型の直線偏光子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VR(virtual reality)用ヘッドマウントディスプレイ等に用いる光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現実世界の外光を通さない、いわゆる没入型の仮想現実(VR)を体験するために、使用者に装着されて、画像を使用者の眼に導く光学装置がある。
この光学装置では、画像の遠近感を使用者に認識させるため、画像表示装置から出射された光を、1度、反射偏光子等で反射させた後、再びミラー等を用いて反射させ、使用者の眼に導く構造が採用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、画像表示装置側から直線偏光子、1/4波長板、ハーフミラー、1/4波長板、反射偏光子をこの順で有し、VR用光学装置として使用することのできるヘッドマウントディスプレイ用光学システムが記載されている。
この光学システムでは、ハーフミラーと反射偏光子の間で光を往復させて光路長を長くすることで、画像の遠近感を使用者に認識させている。
【0004】
この光学システムには、2枚の1/4波長板が必要となる。特許文献1には、夫々の1/4波長板は、色収差のない1/4波長板を用いることで、広いスペクトル全域で直線偏光と円偏光の間の変換を行うことができることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2019-526075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の光学システムにおいて、画像表示装置から出射された光は、最初に通過する1/4波長板において、可視域の各波長を完全に円偏光に変換し、かつ、2回目に通過する1/4波長板において、可視域の各波長を完全に直線偏光に変換することで、反射偏光子で完全に光を画像表示装置側に反射させることができる。
しかしながら、いずれかの1/4波長板が可視域の各波長を完全に直線偏光に変換できず、2枚の1/4波長板において偏光機能にズレがある場合には、最初の反射偏光子を一部の光が通過してしまい、本来視認すべき主像との間で2重に像が見えてしまう、いわゆるゴースト像の原因となる。
【0007】
また、いずれかの1/4波長板が可視域の各波長を完全に直線偏光に変換できない場合には、一部の波長の光がハーフミラーと反射偏光子の間で光を往復することができず、主像の輝度が減少して暗く見える課題があった。
【0008】
本発明の課題は、ゴースト像を排除しつつ、主像の輝度の向上が得られる光学システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 画像を出射する画像表示装置と、
画像表示装置が出射した画像を担持する光が通過する直線偏光子と、
直線偏光子から光を受信する第1の1/4波長板と、
ハーフミラーと、
反射偏光子と、
反射偏光子とハーフミラーとの間にある第2の1/4波長板と、
を有する光学システムにおいて、
反射偏光子は、直線偏光子の透過軸と直交する透過軸を有し、
第1の1/4波長板と、第2の1/4波長板とが、複数の光学異方性層を有する積層型波長板であって、光学異方性層の積層順がハーフミラーを中心として対称の配置となっており、
第1の1/4波長板のリターダンスと、第2の1/4波長板のリターダンスとが等しいことを特徴とする光学システム。
ここで、リターダンスが等しいとは、正面から光が入射した場合における、第1の1/4波長板のリターダンスR1と第2の1/4波長板のリターダンスR2のベクトル和|R1+R2|が、|R1+R2|≦π/30であることを示す。
[2] 第1の1/4波長板および第2の1/4波長板を構成する複数の光学異方性層のそれぞれの波長分散が、いずれも逆波長分散である、[1]に記載の光学システム。
[3] 第1の1/4波長板および第2の1/4波長板は、1/2波長板と、1/4波長板とを有する、[1]または[2]に記載の光学システム。
[4] 第1の1/4波長板および第2の1/4波長板の少なくとも一方が、3層以上の光学異方性層からなる積層型波長板であり、波長450nmで測定した面内レターデーション値であるRe(450)と、波長550nmで測定した面内レターデーション値であるRe(550)と、波長650nmで測定した面内レターデーションの値であるRe(650)とが、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の光学システム。
[5] 第1の1/4波長板と、第2の1/4波長板とが、それぞれポジティブCプレートを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の光学システム。
[6] 第1の1/4波長板および第2の1/4波長板の少なくとも一方が、厚さ方向を螺旋軸とする液晶化合物の捩じれ構造を有する層を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の光学システム。
[7] 直線偏光子と反射偏光子との間に、光学補償層を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の光学システム。
[8] 直線偏光子が吸収型の直線偏光子である、[1]~[7]のいずれかに記載の光学システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴースト像を排除しつつ、主像の輝度の向上が得られる光学システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の光学システムの一実施態様である。
図2図2は、本発明の光学システムの別の一実施態様である。
図3図3は、本発明に用いられる1/4波長板の一実施態様の断面図である。
図4図4は、実施例における反射偏光子の1つの層構成を概念的に示す図である。
図5図5は、本発明の光学システムの別の一実施形態を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の光学システムについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、角度について「直交」および「平行」とは、厳密な角度±10°の範囲を意味するものとし、ならびに角度について「同一」および「異なる」は、その差が5°未満であるか否かを基準に判断できる。
本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長帯域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長帯域および780nmを超える波長帯域の光である。また、これに限定されるものではないが、可視光のうち、420~490nmの波長帯域の光は青色光であり、495~570nmの波長帯域の光は緑色光であり、620~750nmの波長帯域の光は赤色光である。
【0013】
本明細書において「遅相軸」とは、面内において屈折率が最大となる方向を意味する。
「偏光板」とは、特別な記述がない限り、長尺の偏光板、および表示装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いている。なお、ここでいう「裁断」には「打ち抜き」および「切り出し」等も含むものとする。
また、本明細書において、「偏光板」のうち、特に、λ/4板と偏光膜との積層体を含む形態を「円偏光板」と呼ぶ。
【0014】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。
Re(λ)は、AXOMETRICS社製のAxoScanを用いて、波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定される。
【0015】
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、Re(λ)を、面内の遅相軸(AxoScanにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルムの法線方向に対して法線方向から片側50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にAxoScanにおいて算出される。
【0016】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、AxoScanにおいて算出される。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、以下の数式(1)および数式(2)によりRthを算出することもできる。
【0017】
【数1】
【数2】
【0018】
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
【0019】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(opticaxis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、Re(λ)を、面内の遅相軸(AxoScanにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して-50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値(Re(λ))と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、AxoScanにより算出される。
【0020】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHNWILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。
平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。
主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、AxoScanにおいてnx、ny、nzが算出される。この算出されたnx、ny、nzによりNz=(nx-nz)/(nx-ny)が更に算出される。
【0021】
また、Re(λ)およびRth(λ)は各々、波長λにおける面内の位相差値および厚さ方向の位相差値を表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
Re(λ)、Rth(λ)はAxoScanにおいて、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
面内遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((Nx(λ)+Ny(λ))/2-Nz(λ))×d
が算出される。
【0022】
本明細書において逆波長分散性とは、長波長になるほど面内位相差値の絶対値が大きくなる性質を意味する。
具体的には、逆波長分散性とは、波長450nmで測定した面内位相差値であるRe(450)と、波長550nmで測定した面内位相差値であるRe(550)と、波長650nmで測定した面内位相差値であるRe(650)とが、
Re(450)≦Re(550)≦Re(650)
の関係を満たすことを意味する。
【0023】
<光学システム>
図1において、図1Aは本発明の光学システムの基本構成である。
図1Aに示す光学システムは、画像を担持する光(表示画像に関連付けられた光)を出射する画像表示装置1001と、直線偏光子1002と、第1の1/4波長板1003と、ハーフミラー1004と、反射偏光子1006と、反射偏光子1006とハーフミラー1004との間に設けられる第2の1/4波長板1005と、を有する。
なお、図1Aにおいては、ハーフミラー1004、第2の1/4波長板1005および反射偏光子1006を、画像表示装置1001、直線偏光子1002および第1の1/4波長板1003に対して、傾斜して示している。後述するが、図1に示す光学システムは、必要に応じて、例えば画像を拡大するための1以上のレンズなど、その他の光学素子を有してもよい。斜傾して示す部材は、これらの部材のうち少なくとも1つが、レンズ等に応じた曲面形状であることを示している。なお、その他の部材(例えば画像表示装置1001)は平面形状であっても曲面形状であってもよい。
【0024】
本発明の光学システムにおいて使用者に視認される主像1101は、以下のようにして使用者に視認される。
画像表示装置1001が出射した光(画像を担持する光)のうち、直線偏光子1002を通過した直線偏光は、第1の1/4波長板1003によって円偏光に変換され、一部がハーフミラー1004を透過する。
ハーフミラー1004を透過した円偏光は、第2の1/4波長板1005に入射する。第2の1/4波長板1005は、遅相軸を第1の1/4波長板1003と直交して配置される1/4波長板(λ/4板)である。従って、第2の1/4波長板1005に入射した円偏光は、第2の1/4波長板1005によって、第1の1/4波長板1003に入射する前と同じ偏光方向の直線偏光に変換され、反射偏光子1006に入射する。
反射偏光子1006は、直線偏光子1002の透過軸と直交する透過軸を有する反射型の偏光子である。従って、第2の1/4波長板1005によって変換された直線偏光は、基本的に、反射偏光子1006によって反射される。
反射偏光子1006で反射された直線偏光は、第2の1/4波長板1005によって、再度、円偏光に変換され、ハーフミラー1004で、再度、反射される。このハーフミラー1004による反射の際に、円偏光は、旋回方向が逆の円偏光になる。
ハーフミラー1004によって反射された円偏光は、再々度、第2の1/4波長板1005を透過して、直線偏光に変換される。
この円偏光は、ハーフミラーによって旋回方向が逆転された、最初に第2の1/4波長板1005に入射した際と旋回方向が逆の円偏光である。従って、この時点で第2の1/4波長板1005によって変換された円偏光は、最初に反射偏光子1006に入射して反射された直線偏光と、直交する方向の直線偏光に変換される。
そのため、この直線偏光は、反射偏光子1006を透過して、主像1101として、使用者に視認される。
この光学システムでは、ハーフミラー1004と反射偏光子1006の間で光が往復することで、限られた空間の中で光路の長さを稼ぐことができ、光学システムの小型化に寄与している。
【0025】
一方で、画像表示装置1001が出射して、直線偏光子1002を通過し、第1の1/4波長板1003によって円偏光に変換され、ハーフミラー1004を透過して、第2の1/4波長板1005によって、再度、直線偏光に変換されて、反射偏光子1006に入射した光は、一部が、反射偏光子1006で反射されずに透過してしまう。
最初に反射偏光子1006に入射した際に、反射偏光子1006を透過した光は、ゴースト像1102となり、使用者に視認されてしまう。
後述するが、本発明の光学システムにおいては、第1の1/4波長板1003のリターダンスと、第2の1/4波長板1005のリターダンスとが等しいことで、ゴースト像1102を低減することができる。
【0026】
<光学システムを構成する部材>
(画像表示装置)
本発明の光学システムにおいて、画像表示装置1001には、制限はなく、VR用ヘッドマウントディスプレイおよびARグラス等の仮想現実および拡張現実を表示する装置等で用いられている公知の画像表示装置が、各種、利用可能である。
一例として、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、DLP(Digital Light Processing)方式のプロジェクター、および、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いたスキャニング方式ディスプレイ等が例示される。なお、液晶ディスプレイには、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等も含む。
なお、本発明の一態様においては、画像表示装置1001として、白表示時のスペクトル(白表示時における発光のスペクトル)が、少なくとも可視域に極大値を2つ以上有し、かつ、各極大値に対応するピークの半値全幅が60nm以下である光源を用いる画像表示装置、もしくは、自発光型の画像表示装置を用いる。この場合には、後述する反射円偏光子1008(図2参照)を構成するコレステリック液晶層は、必ずしも、後述するピッチグラジエント構造を有する必要は無い。
【0027】
(直線偏光子)
直線偏光子1002は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であれば、特に制限はされず、公知の直線偏光子を利用することができる。
直線偏光子としては、吸収型偏光子であるヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、および、ポリエン系偏光子等が用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できる。中でも、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される直線偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、および、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用することができる。
吸収型偏光子としては、延伸を行わず、液晶の配向性を利用して二色性色素を配向させた直線偏光子は特に好ましい。この偏光子は、厚さが0.1~5μm程度と非常に薄層化できること、特開2019-194685号公報に記載されるように、折り曲げた時のクラックが入りにくく、かつ、熱変形が小さいこと、特許6483486号公報に記載されるように、50%を超えるような透過率の高い偏光板でも耐久性に優れること、ならびに、加熱成形性に優れる等、多くの長所を有する。また、支持体を剥離して偏光子を転写して使用することも可能である。
二色性色素を配向させた直線偏光子は、これらの長所を生かして、高輝度および/または小型軽量が求められる装置、微細な光学系、曲面を有する部位への成形を伴う用途、ならびに、フレキシブルな部位等への利用が可能である。勿論、支持体を剥離して偏光子を転写して使用することも可能である。
前述のように、偏光子は、位相差板と直接組み合わせて反射防止の目的で用いることも好ましいが、ヘッドアップディスプレイ等の車載ディスプレイ光学系、AR眼鏡、VR眼鏡等の光学系やLiDAR、顔認証システム、および、偏光イメージング等の光学センサなどで迷光抑止の目的で、吸収型偏光子を組み込むことも好ましい。
【0028】
(1/4波長板)
1/4波長板は、入射した偏光の位相を、λ/4、動かす位相差板である。
上述のように、画像表示装置1001が出射した画像を担持する光は、まず、直線偏光子1002を透過して所定の偏光方向の直線偏光となり、第1の1/4波長板1003によって円偏光に変換され、ハーフミラー1004を透過した後、第2の1/4波長板1005によって、第1の1/4波長板1003に入射する前と同じ偏光方向の直線偏光に変換される。
【0029】
本発明に用いる1/4波長板は、1層の光学異方性層で構成された単層型でもよいし、それぞれ複数の異なる遅相軸を持つ2層以上の光学異方性層の積層によって構成された積層型の波長板もよい。
積層型の1/4波長板としては、一例として、国際公開第2013/137464号、国際公開第2016/158300号、特開2014-209219号公報、特開2014-209220号公報、国際公開第2014/157079号、特開2019-215416号公報、および、国際公開第2019/160044号等に記載されるものが例示される。なお、本発明において、積層型の1/4波長板は、これらに限定されない。
【0030】
本発明の光学システムは、光路を折り返すハーフミラー1004を挟んで、第1の1/4波長板1003と、第2の1/4波長板1005とを有する。
ここで、本発明においては、第1の1/4波長板1003のリターダンスと、第2の1/4波長板1005のリターダンスとが等しい。本発明の光学システムは、このような構成を有することにより、第1の1/4波長板1003と、第2の1/4波長板1005と、反射偏光子1006とを有する、VR用ヘッドマウントディスプレイ等において、ゴースト像1102の抑制と高透過率とを両立している。
以下に、2つの1/4波長板のリターダンスが等しいことに関して、その内容を詳述する。
【0031】
上述のように、本発明で用いる第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005は、単層型でもよいし、積層型でもよい。
ここで、1/4波長板が、2層以上の光学異方性層の積層体である積層型(積層型波長板)の場合、複数の異なった遅相軸を持つ光学異方性層は、一般にそのトータルとして1つの遅相軸を持たない。すなわち、ポアンカレ球における偏光の遷移で考えると、1つの赤道上の軸の回転では表すことができない。
一般には、1/4波長板(位相差フィルム)による偏光の遷移は、赤道と異なるポアンカレ球のある点での回転で表される。この回転軸と回転角をリターダンスと定義する。式で書くと、リターダンスRは、R=(Rx,Ry,Rz)のベクトルで表される。ここで、Rの絶対値が回転角を表し、Rの単位ベクトルで表されるポアンカレ球上の位置が回転軸となる。
単層型の1/4波長板(位相差フィルム)の場合と異なり、積層型の1/4波長板の場合には、回転軸および回転角ともに波長によって異なる。
本発明における第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005において、偏光の遷移は、このリターダンスで表すことができ、第1の1/4波長板1003のリターダンスと第2の1/4波長板1005のリターダンスとの大きさが等しい点が、本発明の光学システムの特徴である。
ベクトルで表現すると、第1の1/4波長板1003のリターダンスR1=(Rx1,Ry1,Rz1)と、第2の1/4波長板1005のリターダンスR2=(Rx2,Ry2,Rz2)との関係が、R1=-R2になっている。すなわち、第1の1/4波長板1003と、第2の1/4波長板1005とは、リターダンスの大きさは等しく、回転角の正負が逆である。
さらに、この関係が、青450nm、緑550nm、および、赤630nmのどの点でも成り立つ。
これは、後に示す比較例にあるような、複数層で構成される同じ2枚のフィルムを、それぞれの仮想的な遅相軸を90°ずらして配置するものとは異なる。比較例の場合では3つの波長のすべての点でもR1=-R2の関係にならず、その結果、本構成においてゴースト像1102の抑制と高透過率とが両立できない。本発明では、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とが、R1=-R2になるような構成を用いることによりゴースト像1102の抑制と高透過率とが両立できる。
【0032】
すなわち、上述した第1の1/4波長板1003のリターダンスR1と、第2の1/4波長板1005のリターダンスR2とが、R1=-R2の関係を満たす光学系の作用は、以下のようになる。
【0033】
直線偏光子1002を透過して、第1の1/4波長板1003に入射する直線偏光のポアンカレ球上における点を点P1とする。
リターダンスがR1である第1の1/4波長板1003を透過した光は、第1の1/4波長板1003によって、点P1の直線偏光から、リターダンスR1に応じた円偏光に変換される。この円偏光のポアンカレ球上における点を点P2とする。
第1の1/4波長板1003によって変換された点P2の円偏光は、ハーフミラー1004を透過した後、第2の1/4波長板1005によって変換され、点P2から、リターダンスR2に応じた直線偏光に変換される。この直線偏光のポアンカレ球上の点を点P3とする。
第2の1/4波長板1005によって変換された点P3の直線偏光が、次いで、反射偏光子1006に入射する。
【0034】
ここで、上述のように、第1の1/4波長板1003のリターダンスR1と、第2の1/4波長板1005のリターダンスR2とは、R1=-R2の関係を満たす。すなわち、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とは、リターダンスの大きさは等しく、回転角の正負が逆である。
従って、リターダンスがR2である第2の1/4波長板1005によって、点P2の円偏光から変換された点P3の直線偏光は、元の点P1の直線偏光と同じ直線偏光となる。すなわち、点P3=点P1であり、第2の1/4波長板1005で変換された直線偏光は、画像表示装置1001から出射され、直線偏光子1002を透過した直線偏光と同じ偏光方向の直線偏光となる。
言い換えれば、第1の1/4波長板1003と、第2の1/4波長板1005と、反射偏光子1006とを有し、両1/4波長板のリターダンスが等しい本発明の光学システムでは、直線偏光子1002を透過した直線偏光を、第1の1/4波長板1003で円偏光に変換し、第2の1/4波長板1005によって、元の直線偏光子1002を透過した状態の直線偏光に戻して、反射偏光子1006に入射させる。
【0035】
上述のように、反射偏光子1006は、直線偏光子1002の透過軸と直交する透過軸を有する反射型の偏光子である。また、図1Aに示す光学システムでは、反射偏光子1006を透過した光が、ゴースト像1102となる。
ここで、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とのリターダンスが異なっている場合には、第2の1/4波長板1005で変換された円偏光が、直線偏光子1002を透過した直線偏光とは異なる直線偏光、例えば楕円偏光の成分を含む直線偏光になってしまう。すなわち、第2の1/4波長板1005によって、点P2の円偏光から変換された点P3の直線偏光が、点P1とは異なる位置の直線偏光になってしまう。その結果、楕円偏光の成分が、反射偏光子1006を透過して、ゴースト像1102となってしまう。
これに対して、本発明の光学システムでは、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とのリターダンスが等しいので、上述のように、第2の1/4波長板1005によって変換された直線偏光は、直線偏光子1002を透過した直線偏光と同じ偏光方向の直線偏光となる(点P1=点P3)。
従って、直線偏光子1002の透過軸と直交する透過軸を有する反射偏光子1006に入射した光は、殆ど、反射偏光子1006を透過することは無く、反射偏光子1006によって反射され、再度、第2の1/4波長板1005に入射する。
そのため、本発明の光学システムによれば、例えばVRを表示するヘッドマウントディスプレイにおいて、ゴースト像の抑制と高透過率とが両立できる。
【0036】
本発明の光学システムにおいては、少なくとも1/4波長板の正面から入射した光に対して、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とのリターダンスが等しい。以下の説明において、単にリターダンスと言った場合には、正面から入射した光に対するリターダンスを示す。
なお、1/4波長板の正面(正面方向)とは、1/4波長板の法線方向を示し、すなわち、1/4波長板の主面と直交する方向を示す。主面とは、シート状物(層、フィルム、板状物)の最大面を示す。この点に関しては、1/4波長板のみならず、全てのシート状物で、同様である。
ここで、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005のリターダンスは、1/4波長板の正面方向だけでなく、斜め方向に対しても同様に定義できる。これを斜め方向のリターダンスとも呼ぶ。
この斜め方向のリターダンスにおいても、R1(θ、φ)とR2(θ、φ)は等しいことが好ましい。すなわち、斜め方向のリターダンスにおいても、R1=-R2の関係を満たし、リターダンスの大きさは等しく、回転角の正負が逆であるのが好ましい。
この際において、θ、φは極角および方位角を表し、その座標系は本発明の光学システムを基準に定められる。つまり、斜め方向のリターダンスは、光学システムにおける、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005の配置角度や設置表裏によって、R1およびR2は変化しうる。
【0037】
また、本発明において、第1の1/4波長板1003のリターダンスと、第2の1/4波長板1005のリターダンスとが等しいとは、具体的には、正面から光が入射した場合における、2つの1/4波長板のリターダンスのベクトル和の大きさが、π/30ラジアン以下であることを表す。
すなわち、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とのリターダンスとが等しいとは、正面から光が入射した場合に、
|R1+R2|≦π/30
を満たすことを表す。
また、本発明において、第1の1/4波長板1003の斜め方向のリターダンスと、第2の1/4波長板1005の斜め方向のリターダンスとが等しいとは、具体的には、斜め方向から光が入射した場合における、2つの1/4波長板の斜め方向のリターダンスのベクトル和の大きさが、3π/50ラジアン以下であることを表す。
すなわち、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005との斜め方向のリターダンスとが等しいとは、斜め方向から光が入射した場合に、
|R1(θ、φ)+R2(θ、φ)|≦3π/50
を満たすことを表す。
【0038】
より具体的には、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とを粘着剤で貼合した積層体について、AxoScanの極角0°入射光に対するRe(λ)の測定結果が|R1+R2|≦π/30であった場合に、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005との正面方向のリターダンスが等しいとする。
また、同積層体について、AxoScanの極角30°入射光に対するRe(λ)の測定結果が|R1+R2|≦3π/50であった場合に、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005との斜め方向のリターダンスが等しいとする。
なお、粘着剤としては、後述する『(接着層)』の欄で例示するものを用いればよい。
【0039】
本発明の光学システムにおいては、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005は、少なくとも一方が、複数の光学異方性層を積層してなる積層型波長板であるのが好ましい。また、本発明の光学システムにおいては、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005が、共に、積層型波長板であるのが好ましい。
すなわち、本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005は、図3に概念的に示すように、1層の光学異方性層11のみを有する波長板10Aであってもよいが、光学異方性層11と光学異方性層12との2層の光学異方性層を積層した積層型波長板10Bであるのが好ましい。
さらに、本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005は、図3に概念的に示すように、光学異方性層11と光学異方性層12と光学異方性層13との3層の光学異方性層を積層した積層型波長板10C、または、光学異方性層11と光学異方性層12と光学異方性層13と光学異方性層14との4層の光学異方性層を積層した積層型波長板10Dであるのが、より好ましい。
本発明において、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005は、3層以上の光学異方性層を積層した積層型波長板であるのが好ましく、例えば、4層および5層など、層を増やすことでより精密な制御ができるようになる。
【0040】
本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および/または第2の1/4波長板1005が、複数の光学異方性層を積層した積層型波長板である場合には、1/4波長板は、第1のλ/2板(1/2波長板)と、第2のλ/2板と、λ/4板(1/4波長板)とを、この順で有するのが好ましい。
この際においては、第1のλ/2板がnz≒nx>nyを満たすのが好ましく、第1のλ/2板と第2のλ/2板またはλ/4板とがnz≒nx>nyを満たすのがより好ましく、第1のλ/2板および第2のλ/2板がnz≒nx>nyを満たすのがさらに好ましい。
また、第1のλ/2板、第2のλ/2板およびλ/4板の1つがny≒nz<nxを満たすか、または、λ/4板がnx>ny≧nzを満たすのが好ましく、第1のλ/2板、第2のλ/2板およびλ/4板の1つがny≒nz<nxを満たすのがより好ましく、λ/4板がny≒nz<nxを満たすのがさらに好ましい。
第1のλ/2板および第2のλ/2板が、共に、nz≒nx>nyを満たし、かつλ/4板がny≒nz<nxを満たすのが、特に好ましい。
【0041】
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(ny-nz)×d(ただし、dはフィルムの厚さである)が、-10~10nm(好ましくは-5~5nm)の場合も「ny≒nz」に含まれ、(nx-nz)×dが、-10~10nm(好ましくは-5~5nm)の場合も「nx≒nz」に含まれる。
nz≒nx>nyを満たす光学異方性層(波長板)を、ネガティブAプレート(負のAプレート(-Aプレート))という。ネガティブAプレートはRthが負の値を示す。ny≒nz<nxを満たす光学異方性層(波長板)を、ポジティブAプレート(正のAプレート(+Aプレート))という。ポジティブAプレートはRthが正の値を示す。
【0042】
本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005は、いずれか一方、好ましくは両者が、波長450nmで測定した面内レターデーション値であるRe(450)と、波長550nmで測定した面内レターデーション値であるRe(550)と、波長650nmで測定した面内レターデーションの値であるRe(650)とが、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係を満たす、逆波長分散性を有することが好ましい。
第1の1/4波長板1003および/または第2の1/4波長板1005が、逆波長分散性を有することで、両1/4波長板における位相変化が理想的になり、光学システム中における主像の明るさが増す。
【0043】
図1に示すように、本発明の光学システムでは、画像表示装置1001から出射された光は、使用者に視認されるまでの間に、第2の1/4波長板1005を3回通過する。したがって、わずかな第2の1/4波長板1005の位相差のずれが表示性能に大きく影響を与えてしまう。
したがって広帯域性の観点から、前述のレターデーション値の比、Re(450)/Re(550)は、0.9以下が好ましく、0.87以下がより好ましく、0.82以下がさらに好ましい。
【0044】
本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および/または第2の1/4波長板1005は、波長550nmにおける厚さ方向のレターデーション値であるRth(550)は、-400~0nmが好ましく、-300~-100nmがより好ましい。
【0045】
本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および/または第2の1/4波長板1005が積層型波長板であり、第1のλ/2板と、第2のλ/2板と、λ/4板とをこの順に含む場合には、第1のλ/2板の遅相軸と第2のλ/2板の遅相軸とがなす角度が10°~40°の範囲であり、第1のλ/2板の遅相軸とλ/4板の遅相軸とがなす角度が70°~110°の範囲である。
第1のλ/2板の遅相軸と第2のλ/2板の遅相軸とがなす角度は、20°~30°の範囲が好ましく、第1のλ/2板の遅相軸とλ/4板の遅相軸とがなす角度は80°~100°の範囲が好ましい。
【0046】
本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および/または第2の1/4波長板1005は、単層型もしくは積層型であることを問わず、全体として、1/4波長板として機能する。1/4波長板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
より具体的には、所定の波長λnmにおける面内レターデーション値がRe(λ)=λ/4(または、この奇数倍)を示す板である。この式は、可視光域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよいが、波長550nmにおける面内レターデーションの値であるRe(550)が、以下の関係を満たすことが好ましい。
100nm≦Re(550)≦160nm
なかでも、110nm≦Re(550)≦150nmを満たすことがより好ましい。
【0047】
本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および/または第2の1/4波長板1005は、厚さ方向を螺旋軸とする捩じれ構造を有する層を含むことが好ましい。
特開2014-209219号公報、特開2014-209220号公報、国際公開第2014/157079号、および、米国特許出願公開第2019/0204687号明細書に記載の内容は、本発明に用いられる1/4波長板として好適に用いられる。
【0048】
本発明に用いられる第1の1/4波長板1003および/または第2の1/4波長板1005は、好ましくは、位相差フィルム(光学異方性層)を3層含む積層型波長板であり、かつ、その3層が、共に、厚さ方向を螺旋軸とする捩じれ構造を有する層であるのが好ましい。
捻じれ構造を有する層を構成する材料には、制限はないが、液晶材料(液晶化合物)であるのが好ましい。
液晶材料は、棒状液晶および円盤状液晶のいずれでもよいが、3層のうち、棒状液晶から成る層と円盤状液晶から成る層とを、少なくとも1つずつ有するのが好ましい。このような構成を有することで、棒状液晶の負の厚さ方向の位相差と、円盤状液晶の正の厚さ方向の位相差とが補償され、斜め方向の性能が向上し、好ましい。
また、捩じれ構造を有する層の積層数は、3層以上でも良い。例えば4層および5層など、層を増やすことでより精密な制御ができるようになる。
【0049】
第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005が、上述した第1のλ/2板、第2のλ/2板およびλ/4板を有する積層型波長板である場合、2つのλ/2板およびλ/4板を構成する材料は特に制限はされない。
従って、λ/2板およびλ/4板は、例えば、それぞれ独立に液晶化合物を含む組成物から形成された層であってもよく、あるいは、ポリマーフィルム(ポリマー(樹脂)から形成されるフィルム、特に、延伸処理が施されたポリマーフィルム)から形成された層であってもよい。
ポリマーフィルムとしては、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、TACフィルム、および、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0050】
(液晶化合物を含む組成物から形成された層)
λ/2板およびλ/4板は、液晶化合物を含む組成物から形成された層であってもよい。特に、第1のλ/2板、第2のλ/2板およびλ/4板の2以上が、液晶化合物を含む組成物から形成された層であるのが好ましい。このような構成で積層型波長板の薄型化が可能であり、各層の光学特性の調節を容易に行うことができる。
第1のλ/2板、第2のλ/2板およびλ/4板の全てが、液晶化合物を含む組成物から形成されているのがより好ましい。
液晶化合物を含む組成物は、重合性液晶化合物を含む組成物であるのが好ましい。重合性液晶化合物を含む組成物から形成されている層は、重合性液晶化合物が重合等によって固定されて形成された層であるのが好ましい。
【0051】
液晶化合物の種類は特に制限されないが、その形状から、棒状液晶(棒状液晶化合物)と円盤状液晶(円盤状液晶化合物、ディスコティック液晶(化合物))とに分類できる。さらに、それぞれの液晶化合物で、低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井正男著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできる。
2種以上の棒状液晶、2種以上の円盤状液晶、または、棒状液晶と円盤状液晶との混合物を用いてもよい。
なお、棒状液晶としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、および、特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のもの等を好ましく用いることができる。他方、円盤状液晶としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]、および、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のもの等を好ましく用いることができる。
【0052】
積層型波長板においては、第1のλ/2板が円盤状液晶を含む重合性液晶組成物から形成されており、かつ、第2のλ/2板またはλ/4板が円盤状液晶を含む重合性液晶組成物から形成されているのが好ましい。この際において、第2のλ/2板およびλ/4板の他方は、棒状液晶を含む重合性液晶組成物から形成されているのが好ましい。
第1のλ/2板および第2のλ/2板がいずれも円盤状液晶を含む重合性液晶組成物から形成されているのがより好ましい。この際には、λ/4板は棒状液晶を含む重合性液晶組成物から形成されているのが好ましい。
【0053】
棒状液晶を含む重合性液晶組成物から形成される光学異方性層の位相差は、層の厚さにより調節することができる。例えば、λ/2板およびλ/4板を同じ組成物から形成する場合、λ/2板の厚さはλ/4板の厚さの2倍であればよい。
λ/2板およびλ/4板の厚さは、それぞれ好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5μmの範囲で調節すればよい。
【0054】
本発明で用いられる液晶化合物は、重合性基を有する重合性液晶化合物であればよい。
重合性液晶化合物は2種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の重合性基を有しているのが好ましい。
光学異方性層は、重合性基を有する棒状液晶または重合性基を有する円盤状液晶が重合によって固定されて形成された層であるのが好ましい。この場合に、液晶化合物は、光学異方性層となった後は、もはや液晶性を示す必要はない。
棒状液晶または円盤状液晶に含まれる重合性基の種類は、特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、および、アリル基等が好ましく挙げられ、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基およびアクリロイル基の両者を包含する概念である。
【0055】
重合性液晶化合物を含む組成物から光学異方性層を形成する方法には制限はなく、公知の方法が挙げられる。
例えば、所定の基板(仮基板を含む)に、重合性液晶化合物を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜において液晶化合物を配向させた後、硬化処理を施すことにより、光学異方性層を製造できる。なお、必要に応じて、後述する配向膜を用いてもよい。硬化処理としては、紫外線照射等の光照射処理、および、加熱処理等が例示される。
組成物の塗布は、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、および、ダイコーティング法等の公知の塗布方法が利用可能である。
【0056】
光学異方性層を重合性液晶化合物を含む組成物の硬化により形成する場合、光学異方性層は、逐次塗布または転写により設けることができる。
すなわち、光学異方性層は、積層型波長板を構成する基板上または他の光学異方性層上で直接形成してもよく、仮基板上で形成された光学異方性層を基板上または他の光学異方性層上に転写してもよい。例えば、仮基板上または必要に応じて設けられた仮基板上の配向膜の表面で上述の手順で光学異方性層を形成し、この光学異方性層と基板または他の光学異方性層等とを接着層により接着したあと、仮基板、または仮基板および配向膜を剥離してもよい。逐次塗布または転写により光学異方性層上に光学異方性層を設けることにより、各光学異方性層の間には基板は含まれず、接着層のみまたは接着層および配向膜のみを含む。
【0057】
光学異方性層を形成するための組成物には、上述した液晶化合物以外の成分が含まれていてもよい。
例えば、組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤および光重合開始剤が挙げられる。例えば、光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、および、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【0058】
また、光学異方性層を形成するための組成物には、塗工膜の均一性および膜の強度の点から、重合性モノマーが含まれていてもよい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性の化合物が挙げられ、好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーである。なお、重合性モノマーとしては、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002-296423号公報中の段落[0018]~[0020]に記載のものが挙げられる。
重合性モノマーの使用量は、液晶化合物の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましい。
【0059】
また、光学異方性層を形成するための組成物には、塗工膜の均一性および膜の強度の点から、界面活性剤が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば、特開2001-330725号公報の段落[0028]~[0056]に記載の化合物、および、特開2005-062673号公報の段落[0069]~[0126]に記載の化合物が挙げられる。
【0060】
また、光学異方性層を形成するための組成物には溶媒が含まれていてもよい。溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、ピリジン等のヘテロ環化合物、ベンゼンおよびヘキサン等の炭化水素、クロロホルムおよびジクロロメタン等のアルキルハライド、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル、アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン、ならびに、テトラヒドロフランおよび1,2-ジメトキシエタン等のエーテル等が挙げられる。なかでも、アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0061】
また、光学異方性層を形成するための組成物には、偏光子界面側垂直配向剤および空気界面側垂直配向剤等の垂直配向促進剤、ならびに、偏光子界面側水平配向剤および空気界面側水平配向剤等の水平配向促進剤等の各種配向剤が含まれていてもよい。
【0062】
さらに、光学異方性層を形成するための組成物には、上述した成分以外に、密着改良剤、可塑剤、および、ポリマー等が含まれていてもよい。
【0063】
<その他の層>
本発明の光学システムにおいて、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005となる積層型波長板には、本発明の効果を損なわない範囲で、λ/2板およびλ/4板以外の他の層が含まれていてもよい。
他の層としては、配向膜、接着層、および、透明支持体等が挙げられる。
【0064】
(配向膜)
積層型波長板には、液晶化合物の配向方向を規定する機能を有する配向膜が含まれていてもよい。
配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、および、その誘導体が好ましい。特に、変性または未変性のポリビニルアルコールが好ましい。
本発明に使用可能な配向膜については、一例として、国際公開第2001/088574号の43頁24行~49頁8行、および、特許第3907735号公報の段落[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。
なお、配向膜には、通常、公知のラビング処理が施される。つまり、配向膜は、通常、ラビング処理されたラビング配向膜であることが好ましい。
配向膜の厚さは制限はないが、20μm以下の場合が多く、0.01~10μmが好ましく、0.01~5μmがより好ましく、0.01~1μmがさらに好ましい。
【0065】
(接着層)
本発明の光学システムにおいて、積層型波長板、ならびに、後述する円偏光板および表示装置は、各層の間の密着性担保のために、各層の間に接着層を含んでいてもよい。
本明細書において、「接着」は「粘着」も含む概念で用いられる。
接着層は接着剤または粘着剤から形成されるものであればよい。
接着剤としては硬化方式の観点からホットメルトタイプ、熱硬化タイプ、光硬化タイプ、反応硬化タイプ、および、硬化の不要な感圧接着タイプがある。また、各硬化方式の接着剤において、それぞれ素材としてアクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、ポリオレフィン系、変性オレフィン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアルコール系、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスチレン系、および、ポリビニルブチラール系等の化合物を使用することができる。
作業性および生産性の観点からは、硬化方式として光硬化タイプが好ましい。また、光学的な透明性、耐熱性の観点からは、素材はアクリレート系、ウレタンアクリレート系、および、エポキシアクリレート系等を使用することが好ましい。
【0066】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、および、ポリビニルアルコール系接着剤が挙げられる。
各層の接着は、高透明性接着剤転写テープ(OCA(Optical Clear Adhesive)テープ)を用いて行ってもよい。高透明性接着剤転写テープとしては、画像表示装置用の市販品、特に画像表示装置の画像表示部表面用の市販品を用いればよい。市販品の例としては、パナック(株)製の粘着シート(PD-S1等)、および、日栄化工(株)製のMHMシリーズの粘着シート等が挙げられる。
【0067】
(透明支持体)
本発明の積層型波長板は光学異方性層作製時の基板等として透明支持体を含んでいてもよい。透明支持体としては、公知の透明支持体を使用することができ、例えば、透明支持体を形成する材料としては、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートともいう)、熱可塑性ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等)、アクリル系樹脂、および、ポリエステル系樹脂を使用することができる。
【0068】
透明支持体は、nx≒ny>nzを満たす光学異方性層、つまりポジティブCプレート(正のCプレート(+Cプレート))であるのが好ましい。
【0069】
上述のように、本発明の光学システムにおいては、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板とは、リターダンスが等しい。
具体的には、上述のように、第1の1/4波長板1003のリターダンスR1と、第2の1/4波長板1005のリターダンスR2との関係が、R1=-R2になっている。すなわち、第1の1/4波長板1003と、第2の1/4波長板1005とは、リターダンスの大きさは等しく、回転角の正負が逆である。
本発明の光学システムにおいて、第1の1/4波長板1003と、第2の1/4波長板1005とのリターダンスを等しくする構成としては、各種の構成が利用可能である。
【0070】
一例として、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005が、共に、単層型の1/4波長板である場合には、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005として、同じ1/4波長板を用い、互いの遅相軸を直交させて配置する構成が例示される。
【0071】
また、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005が、共に、上述した積層型波長板である場合には、構成部材として同じ光学部材(光学異方性層)を用い、ハーフミラー1004を中心として、各光学部材を鏡面対称に配置し、さらに、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とにおける同じ光学部材同士は、光学軸が直交するように配置する構成が例示される。
具体的には、例えば、1/4波長板を、ポジティブAプレートとポジティブCプレートとで構成する。この場合には、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とで、同じポジティブAプレートと同じポジティブCプレートとを用いる。その上で、画像表示装置1001から反射偏光子1006への光の進行方向に向かって、例えば第1の1/4波長板1003は、ポジティブAプレートおよびポジティブCプレートの順となるように配置する。これに対して、第2の1/4波長板1005は、ハーフミラー1004を中心に第1の1/4波長板1003と鏡面対称となるように、画像表示装置1001から反射偏光子1006への光の進行方向に向かって、ポジティブCプレートおよびポジティブAプレートの順となるように配置する。その上で、さらに、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とで、ポジティブAプレート同士の光学軸を直交させる。
また、例えば、1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とを、ポジティブAプレートと、ネガティブAプレートと、ポジティブCプレートとで構成する。この場合には、1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とで、同じポジティブAプレートと、同じネガティブAプレートと、同じポジティブCプレートとを用いる。その上で、画像表示装置1001から反射偏光子1006への光の進行方向に向かって、例えば第1の1/4波長板1003は、ポジティブAプレート、ネガティブAプレートおよびポジティブCプレートの順となるように配置する。これに対して、第2の1/4波長板1005は、ハーフミラー1004を中心に第1の1/4波長板1003と鏡面対称となるように、画像表示装置1001から反射偏光子1006への光の進行方向に向かって、ポジティブCプレート、ネガティブAプレートおよびポジティブAプレートの順となるように配置する。その上で、さらに、1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とで、ポジティブAプレート同士、および、ネガティブAプレート同士の光学軸を直交させる。
第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005が、共に、上述した積層型波長板である場合には、このような構成を有することにより、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とのリターダンスを等しくできる。
【0072】
なお、本発明の光学システムにおいて、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板とのリターダンスを等しくする方法は、上述のように、2つの1/4波長板を、同じ光学部材を用いて構成する方法に制限はされない。
すなわち、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とで、異なる光学部材(光学異方性層)を用い、各光学部材の光学特性および遅相軸の方向等を、適宜、選択することで、第1の1/4波長板1003と第2の1/4波長板1005とのリターダンスを等しくすることができる。
ある一態様では、後述する実施例22に示される構成のように、第1の1/4波長板1003はポジティブAプレートを用い、第2の1/4波長板1005はネガティブAプレートを用いる。このようにすることで、正面および斜めのリターダンスを等しくすることができる。
【0073】
(光学補償層)
本発明の光学システムは、光学補償層を含むことができる。
光学補償層は、直線偏光子1002および反射偏光子1006、ならびに、第1の1/4波長板1003および第2の1/4波長板1005等、各光学部材に対して法線方向とは異なる角度から入射する光に対する特性を補償する層である。以下の説明では、光学部材に法線方向以外の方向から入射する光を、『斜め光』ともいう。
【0074】
一般に、吸収軸が直交する2枚の理想偏光板は、法線方向から入射する光(上述の正面方向から入射する光)は透過せず、消光する。一方で、偏光板の軸方位とは異なる方位角から斜め光を入射すると、見かけの軸が直交からずれるため、光が漏れる。この光漏れが光学システムのゴースト像に繋がるため、光学補償層としては、斜め光に対する見かけの軸ずれを補償する機能が求められる。
この観点からは、直線偏光子1002および/または反射偏光子1006に入射する斜め光による光漏れを補償する光学補償層は、直線偏光子1002と反射偏光子1006の間に配置することが好ましい。
【0075】
別の一態様では、光学補償層は、主像の輝度向上効果をもたらす。
上述のように、本発明の光学システムにより得られる主像1101は、画像表示装置1001が出射した光のうち、直線偏光子1002、第1の1/4波長板1003、ハーフミラー1004、および、第2の1/4波長板1005を、この順に通過した後、反射偏光子1006で反射されて、第2の1/4波長板1005を透過しハーフミラー1004で、再度、反射された後に、第2の1/4波長板1005を透過し反射偏光子1006を透過した光である。
斜め光に対しては、反射偏光子1006の見かけの反射軸と見かけの透過軸とが直交しないため、反射偏光子1006を透過する際に輝度低下が生じる。この輝度低下を抑制する観点からは、光学補償層は、ハーフミラー1004と反射偏光子1006との間に配置するのが好ましく、第2の1/4波長板1005と反射偏光子1006との間に配置するのがより好ましい。また、光学補償層は、直線偏光子1002とハーフミラー1004との間に配置することも好ましい。
【0076】
光学補償層は1層または複数層で構成されるが、本発明においては、1層または2層で構成されるのが好ましい。
2層で構成される場合には、光学補償層は、第1光学異方性層と第2光学異方性層との積層体である。
光学補償層の厚さには、制限はなく、必要な機能を確保できる厚さを、形成材料等に応じて、適宜、設定すればよい。しかしながら、光学システムの薄型化の観点で、光学補償層の厚さは、光学特性、機械物性、および、製造適性等を損ねない範囲で、薄いほうが好ましい。光学補償層の厚さは、1~150μmが好ましく、1~70μmがより好ましく、1~30μmがさらに好ましい。
【0077】
光学補償層は、製造のしやすさ等の観点から、ポリマーフィルム、または、液晶組成物を用いて形成されるフィルム(層)であるのが好ましい。
ポリマーフィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、シクロオレフィン系ポリマーフィルム(シクロオレフィン系ポリマーを用いたポリマーフィルム)、および、アクリル系ポリマーフィルム等が好ましい。アクリル系ポリマーフィルムとしては、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、および、グルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0078】
また、液晶組成物を用いて形成されるフィルムとしては、液晶化合物を配向した状態で固定化したフィルムが好ましい。中でも、重合性基を有する液晶化合物を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜中の液晶化合物を配向させて、硬化処理を施して液晶化合物の配向を固定化してなるフィルムがより好ましい。
液晶化合物としては、棒状液晶および円盤状液晶化合物が挙げられる。また、液晶化合物は、配向状態を固定化するために重合性基を有していることが好ましい。
【0079】
光学補償層が液晶組成物を用いて形成されるフィルムである場合には、光学補償層は、液晶化合物を配向するための配向膜を有していてもよい。配向膜は、公知のものが、各種、利用可能であり、一例として、上述した積層型波長板で例示した配向膜が好適に利用される。
【0080】
(光学補償層が1層からなる場合)
光学補償層が1層からなる場合、光学補償層の波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe1(550)、および、波長550nmにおける厚さ方向のレターデーション値であるRth1(550)が、以下の式(1)および式(2)を満たすのが好ましい。
式(1) : 200nm≦Re1(550)≦400nm
式(2) : -40nm≦Rth1(550)≦40nm
また、光学補償層は、以下の式(3)および(4)を満たすのがより好ましい。
式(3) : 250nm≦Re1(550)≦300nm
式(4) : -20nm≦Rth1(550)≦20nm
また、光学補償層は、以下の式(5)および(6)を満たすのがさらに好ましい。
式(5) : 280nm≦Re1(550)≦320nm
式(6) : -20nm≦Rth1(550)≦20nm
【0081】
1層からなる光学補償層は、例えば、ポリマーフィルムを延伸することによって得られる。具体的には、例えば、芳香族アシル基で置換されたセルロースアシレートであるセルロースアセテートベンゾエートを用いたフィルムの場合、セルロースアセテートベンゾエートを溶媒に溶解させたドープを成膜用の金属支持体上に流延し、溶媒を乾燥してフィルムを得て、得られたフィルムを1.3~1.9倍程度の大きな延伸倍率で延伸してセルロース分子鎖を配向させる方法が挙げられる。
また、1層からなる光学補償層は、例えば、特開平5-157911号公報、特開2006-072309号公報、および、特開2007-298960号公報等に記載されるように、高分子フィルムの片面、または、両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸することにより作製することも可能である。
【0082】
光学補償層は、Re1およびRth1が逆分散の波長分散性を示すことも好ましい。
ここで、逆分散の波長分散性とは、Re1(λ)およびRth1(λ)が、波長λが大きくなるに従って大きな値となることを言う。
光学補償層が逆分散の波長分散性を有すると、主像の色味変化を低減できるため、好ましい。
【0083】
(光学補償層が2層からなる場合)
上述のように、光学補償層が2層で構成される場合には、光学補償層は、第1光学異方性層と第2光学異方性層との積層体である。
光学補償層が2層からなる場合、第1光学異方性層がnx>ny≧nzの2軸フィルム(-Bプレート、または、ポジティブAプレート)で、第2光学異方性層がnx≒ny<nzの[準]一軸性フィルム(ポジティブ[準]Cプレート)であるのが好ましい。
また、光学補償層が、この2層構成を有する場合には、光学補償層は、直線偏光子1002と第1の1/4波長板1003との間、および/または、第2の1/4波長板1005と反射偏光子1006との間に配置するのが好ましい。
具体的には、第1光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe1(550)、および波長550nmにおける厚さ方向のレターデーション値であるRth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、第2光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe2(550)、および波長550nmにおける厚さ方向のレターデーション値であるRth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たすのが好ましい。
式(5) : 80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6) : 20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8) : -160nm≦Rth2(550)≦-40nm
また、第1光学異方性層が、以下の式(9)および式(10)を満たし、第2光学異方性層が、以下の式(11)および式(12)を満たすのがより好ましい。
式(9) : 100nm≦Re1(550)≦170nm
式(10) : 50nm≦Rth1(550)≦130nm
式(11) : 0nm≦Re2(550)≦40nm
式(12) : -140nm≦Rth2(550)≦-80nm
さらに、第1光学異方性層が、以下の式(13)および式(14)を満たし、第2光学異方性層が、以下の式(15)および式(16)を満たすのがさらに好ましい。
式(13) : 100nm≦Re1(550)≦150nm
式(14) : 50nm≦Rth1(550)≦120nm
式(15) : 0nm≦Re2(550)≦20nm
式(16) : -140nm≦Rth2(550)≦-80nm
【0084】
また、光学補償層が2層からなり、かつ、直線偏光子1002と第1の1/4波長板1003との間に配置される場合は、第1光学異方性層の遅相軸の方向は、直線偏光子1002の吸収軸の方向と平行であることが好ましい。この場合には、画像表示装置1001からの光の進行方向に向かって、直線偏光子1002、第2光学異方性層、および、第1光学異方性層を、この順番で配置するのが好ましい。
さらに、光学補償層が2層からなり、かつ、第2の1/4波長板1005と反射偏光子1006との間に配置される場合は、第1光学異方性層の遅相軸の方向は、反射偏光子1006の反射軸の方向と平行であるのが好ましい。この場合には、画像表示装置1001からの光の進行方向に向かって、直線偏光子1002、第2光学異方性層、および、第1光学異方性層を、この順番で配置するのが好ましい。
【0085】
また、別の一態様としては、光学補償層が2層からなり、かつ、直線偏光子1002と第1の1/4波長板1003との間に配置される場合には、第1光学異方性層の遅相軸は、直線偏光子1002の吸収軸と直交するのが好ましい。この場合には、画像表示装置1001からの光の進行方向に向かって、直線偏光子1002、第1光学異方性層、および、第2光学異方性層をこの順で配置するのが好ましい。
さらに、光学補償層が2層からなり、かつ、第2の1/4波長板1005と反射偏光子1006との間に配置される場合は、第1光学異方性層の遅相軸の方向は、反射偏光子1006の反射軸の方向と平行であるのが好ましい。この場合、直線偏光子1002、第1光学異方性層、および、第2光学異方性層を、この順番で配置するのが好ましい。
【0086】
第1光学異方性層は、溶融成膜方式および溶液成膜方式等の適宜な方式で製造したポリマーフィルムを、例えば、ロールの周速制御による縦延伸方式、テンターによる横延伸方式、および、二軸延伸方式等により、延伸処理することにより得られる。ポリマーフィルムとしては、例えば、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、および、ポリカーボネートフィルム等が例示される。より具体的には、特開2005-338767号公報の記載を参照することができる。
また、第1光学異方性層は、配向により2軸性を示す重合性基を有する液晶化合物を含む液晶組成物から形成されるポリマーを用いることもできる。さらに、第1光学異方性層は、液晶化合物の配向状態を固定してなる、所望の位相差を有する層を用いることもできる。形成することも可能である。つまり、第1光学異方性層は、液晶化合物が配向した状態で固定化したフィルムが好ましく、棒状液晶が基板面に対して水平方向に配向した状態で固定化したフィルムであるのがより好ましい。
液晶化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶化合物を用いるのも好ましい。逆分散の波長分散性を示す液晶化合物としては、例えば、国際公開第2017/043438号に記載される逆分散の波長分散性を示す液晶化合物が挙げられる。
第1光学異方性層の厚さには制限はないが、1~80μmが好ましく、1~40μmがより好ましく、1~25μmがさらに好ましい。
【0087】
第1光学異方性層は、ポジティブAプレート(正のAプレート)であるのが好ましい。
【0088】
第2光学異方性層としては、ポリマーフィルムを、面内レターデーションを発現させない様に成膜し、熱収縮フィルム等を用いて厚さ(nz)方向に延伸する方法で形成したフィルムが例示される。ポリマーフィルムとしては、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、および、ポリカーボネートフィルム等が例示される。
また、第2光学異方性層は、液晶化合物の配向状態を固定して所望の位相差を有する層を形成することも可能である。つまり、第2光学異方性層は、液晶化合物が配向した状態で固定化したフィルムであるのが好ましく、棒状液晶が基板面に対して垂直方向に配向した状態で固定化したフィルムであるのがより好ましい。
液晶化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶化合物を用いることも好ましい。逆分散の波長分散性を示す液晶化合物としては、例えば、国際公開第2017/043438号に記載される逆分散の波長分散性を示す液晶化合物が挙げられる。
第2光学異方性層の厚さには制限はないが、は、1~80μmが好ましく、1~40μmがより好ましく、1~25μmがさらに好ましい。
【0089】
第2光学異方性層は、ポジティブCプレート(正のCプレート)であるのが好ましい。
【0090】
(ハーフミラー)
本発明の光学システムに用いるハーフミラーは、入射光の一部を正反射し、残りの光を透過させる、半透過性の光学部材である。
ハーフミラーは、偏光選択性のない半透過性の反射材であってもよいし、偏光選択性を有する反射材であってもよい。偏光選択性を有する反射材である場合、反射および透過する偏光は直線偏光であってもよいし、円偏光であってもよい。
【0091】
(反射偏光子)
本発明の光学システムに用いる反射偏光子は、入射光のうち一方の偏光を正反射し、もう一方の偏光を透過する光学部材である。反射および透過する偏光は直線偏光であってもよいし、円偏光であってもよい。中でも、反射偏光子としては、直線偏光の選択反射性を有する反射偏光子が好ましい。上述のように、図1に示す光学システムにおいて、反射偏光子1006は、直線偏光の選択反射性を有する反射偏光子である。
直線偏光の選択反射性を有する反射偏光子としては、特開2011-053705号公報に記載されているような、2種のポリマーを含む層を延伸したフィルム、および、ワイヤグリッド偏光子等を用いることができる。輝度の観点から、ポリマーを含む層を延伸したフィルムが好ましい。市販品としては、3M社製の反射型偏光子(商品名APF)や、旭化成(株)製のワイヤグリッド偏光子(商品名WGF)等を、好適に用いることができる。
【0092】
本発明に用いる反射偏光子が、直線偏光の選択反射性を有する反射偏光子である場合には、反射偏光子の透過軸は、他の構成要素の軸角度に応じて、任意に設定し得るが、反射偏光子の透過軸は、第2の1/4波長板1005の遅相軸に対して、およそ45°になるように配置されることが好ましい。
このような構成であると、反射偏光子1006で反射された光は、ハーフミラー1004で反射されて、第2の1/4波長板1005を通過して、再び、反射偏光子1006に入射するとき、偏光方向がおよそ90°回転している。これにより、再び反射偏光子1006に入射する光の透過率を高めることができ、主像1101の輝度を高くすることができる。
【0093】
反射偏光子1006の透過波長帯域における透過率の最大値と最小値の差は、小さい方が好ましい。具体的には、反射偏光子1006の透過波長帯域における透過率の最大値と最小値の差は、3%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
透過波長帯域における透過率の最大値と最小値の差を3%以下とすることにより、透過率が低い波長の影響を小さくして、高輝度な画像を表示することが可能になる。
また、反射偏光子1006の透過軸は、本発明に用いる直線偏光子1002の透過軸に対しておよそ直交することが好ましい。
【0094】
なお、本発明の光学システムにおいては、図1図1Bに概念的に示すように、このような反射偏光子1006の視認側、すなわち反射偏光子1006と使用者との間に、直線偏光子1007を設けてもよい。
この直線偏光子1007は、反射偏光子1006が反射する直線偏光と、直交する方向の透過軸を有する直線偏光子である。すなわち、直線偏光子1007は、反射偏光子1006の反射軸と平行な方向の吸収軸を有する直線偏光子である。
本発明の光学システムは、このような直線偏光子1007を有することにより、より好適にゴースト像1102を抑制できる点で好ましい。
上述のように、ゴースト像1102は、画像表示装置1001が出射した光が、最初に反射偏光子1006に入射した際に、反射されずに透過して、使用者に視認されることで生じる。これに対して、反射偏光子1006の視認側に、反射偏光子1006の反射軸と平行な方向の吸収軸を有する直線偏光子1007を設けることにより、反射偏光子1006を不要に透過した直線偏光を、直線偏光子1007で遮光できる。その結果、反射偏光子1006を不要に透過した直線偏光が、ゴースト像1102として使用者に視認されることを抑制できる。
なお、直線偏光子1007には、制限はなく、公知の透過型の直線偏光子が、各種、利用可能である。一例として、上述した直線偏光子1002と同様のものが、好適に例示される。
【0095】
図1に示す本発明の光学システムでは、反射偏光子1006の画像表示装置1001とは反対側の面に、吸収型偏光子を、反射偏光子1006と透過軸が一致するように配置してもよい。このようにすることで、光学システムを装着した使用者の皮膚等で反射した光が、直接、反射偏光子1006に入射し反射されることを防ぐことにより、主像1101の視認性を悪化させる迷光を抑えることができる。
また、主像となる反射偏光子の透過光を、吸収型偏光子の透過軸の偏光に変換する目的で、反射偏光子と吸収型偏光子の間に適切な位相差板を設けてもよい。
【0096】
以上、説明した図1に示す光学システムは、ハーフミラー1004、第2の1/4波長板1005および反射偏光子1006を、この順番で有し、直線偏光を選択的に反射する反射偏光子1006とハーフミラー1004との間で光が往復することで、限られた空間の中で光路長を長くして、光学システムの小型化を図っている。
これに対して、本発明の別の態様では、第2の1/4波長板1005、および、直線偏光を選択的に反射する反射偏光子1006に代えて、円偏光を選択的に反射する反射偏光子を用いる。本態様では、円偏光を選択的に反射する反射偏光子と、ハーフミラー1004との間で光が往復することで、限られた空間の中で光路長を長くして、光学システムの小型化を図る。
円偏光を選択的に反射する反射偏光子とは、右円偏光および左円偏光の一方を選択的に反射し、他方を透過する反射偏光子である。以下の説明では、このような偏光子を、『反射円偏光子』ともいう。
【0097】
反射円偏光子としては、少なくとも1層のコレステリック液晶層を有する反射偏光子を用いることができる。
コレステリック液晶層は単層でもよく、2層以上の多層構成であってもよい。2層以上を有する場合は、積層塗布、積層貼合、もしくは、積層転写されていてもよく、これらの組み合わせでも良い。
【0098】
コレステリック液晶層は、鏡面反射性を有するのが好ましい。
【0099】
また、反射円偏光子は、コレステリック液晶層とその逆の基材側のどちらか一方、または両方に表面反射を抑えるためのアンチリフレクション層を設けてもよい。
【0100】
図2に、円偏光を選択的に反射する反射偏光子(反射円偏光子)を用いた態様の、本発明の光学システムの構成の一例を示す。
図2に示すように、反射円偏光子を用いる本発明の光学システムは、画像表示装置1001と、直線偏光子1002と、第1の1/4波長板1003と、ハーフミラー1004と、反射円偏光子1008とを有する。また、図2に示す光学システムは、好ましい態様として、反射円偏光子1008よりも視認側に、第3の1/4波長板1009および直線偏光子1007を、この順番で有する。
なお、図2に示す光学システムは、図1に示す光学システムと同じ部材を多用するので、同じ部材には同じ符号付し、以下の説明は、異なる部材を主に行う。
【0101】
図2に示す光学システムにおいて、主像1101は、以下のようにして使用者に視認される。
画像表示装置1001が出射した光(画像を担持する光)のうち、直線偏光子1002を通過した直線偏光は、図1に示す例と同様に、第1の1/4波長板1003によって円偏光に変換され、一部がハーフミラー1004を透過する。
ハーフミラー1004を透過した円偏光は、反射円偏光子1008に入射する。
反射円偏光子1008は、第1の1/4波長板1003によって変換された円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層を有する反射円偏光子である。言い換えれば、直線偏光子1002の透過軸、および、第1の1/4波長板1003の遅相軸は、第1の1/4波長板1003によって変換される円偏光が、反射円偏光子1008のコレステリック液晶層が選択的に反射する旋回方向の円偏光となるように設定される。
図示例では、一例として、第1の1/4波長板1003を透過した光は、左円偏光に変換される。従って、反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)は、左円偏光を選択的に反射する。
【0102】
反射円偏光子1008で反射された左円偏光の一部は、ハーフミラー1004で反射される。このハーフミラー1004による反射の際に、左円偏光は、旋回方向が逆転し、右円偏光になる。
ハーフミラー1004によって反射された右円偏光は、再度、反射円偏光子1008に入射する。上述のように、反射円偏光子1008は、左円偏光を選択的に反射するものである。円偏光は、最初に反射円偏光子1008に入射した際には、左円偏光であり、反射円偏光子1008によって反射される。しかしながら、円偏光は反射円偏光子1008に再入射する際には、ハーフミラー1004による反射によって、1回目に入射した時点と旋回方向が逆転して、右円偏光になっている。
そのため、反射円偏光子1008に再入射した右円偏光は、反射円偏光子1008を透過して、主像1101として、使用者に視認される。
【0103】
この光学システムでは、ハーフミラー1004と反射円偏光子1008との間で光が往復することで、限られた空間の中で光路の長さを稼ぐことができ、光学システムの小型化に寄与している。
また、図2に示す光学システムでは、反射偏光子が、円偏光を選択的に反射する反射円偏光子1008である。そのため、反射円偏光子1008は、第1の1/4波長板1003の遅相軸の方向によらず、選択的に反射する旋回方向の円偏光であれば、基本的に、反射する。その結果、図2に示す光学システムでも、ゴースト像1102となる、反射円偏光子1008を不用に透過する光を低減して、使用者に視認されるゴースト像1102を低減できる。
【0104】
図2に示す光学システムでは、好ましい態様として、反射円偏光子1008の視認側に、コースト1102となる迷光等の抑止のため、第3の1/4波長板1009と直線偏光子1007とを、この順に有している。
第3の1/4波長板1009の遅相軸、および、直線偏光子1007の透過軸は、反射円偏光子1008を透過した円偏光、図示例では右円偏光が、第3の1/4波長板1009で変換されて、直線偏光子1007を透過する直線偏光となるように、設定される。
第3の1/4波長板1009は、上述した第1の1/4波長板1003等と同様、公知の1/4波長板が、各種、利用可能である。
ここで、図2に示す光学システムでは、上述のように、反射円偏光子1008が選択的に反射するのは、円偏光である。従って、第1の1/4波長板1003と、第3の1/4波長板1009との間におけるリターダンスの関係には、制限はない。
【0105】
上述のように、図2に示す光学システムによれば、反射円偏光子1008を用いることで、反射円偏光子1008を不要に透過して、ゴースト像1102となる円偏光を低減している。
しかしながら、その一方で、やはり、画像表示装置1001が出射して、直線偏光子1002を通過し、第1の1/4波長板1003によって円偏光に変換され、ハーフミラー1004を透過した円偏光は、一部が、反射円偏光子1008によって反射されずに、透過してしまう。
最初に反射円偏光子1008に入射した際に、反射円偏光子1008を透過した円偏光は、ゴースト像1102となり、使用者に視認されてしまう。
【0106】
米国特許第10495798号明細書には、反射円偏光子として、透過帯域の異なる3層のコレステリック液晶セルを用いる構成が例示されているが、この場合には、選択的な反射波長帯域における反射/透過率の変化が大きいため、ゴースト像が生じやすく、また、主像の輝度が減少する課題があった。
【0107】
これに対して、図2示す光学システムは、反射円偏光子1008よりも視認側に、第3の1/4波長板1009および直線偏光子1007を有する。上述のように、第3の1/4波長板1009の遅相軸、および、直線偏光子1007の透過軸は、ハーフミラー1004で反射されて、反射円偏光子1008を透過した円偏光、図示例では右円偏光が、第3の1/4波長板1009で変換されて、直線偏光子1007を透過する方向の直線偏光となるように、設定される。
反射円偏光子1008に最初に入射するのは、反射円偏光子1008によって反射される旋回方向の円偏光であり、図示例では左円偏光である。すなわち、最初に反射円偏光子1008に入射して不要に透過する円偏光も、本来、反射円偏光子1008によって反射されるべき旋回方向の左円偏光である。
従って、反射円偏光子1008を透過した左円偏光は、第3の1/4波長板1009で変換されて、直線偏光子1007を透過軸と直交する方向の直線偏光となる。その結果、この直線偏光は、直線偏光子1007によって遮光され、ゴースト像1102となって使用者に視認されることはない。
【0108】
図2の光学システムで用いる反射円偏光子1008は、少なくとも1層のコレステリック液晶層を有する。なお、反射円偏光子1008が2層以上のコレステリック液晶層を有する場合は、各コレステリック液晶層は、積層塗布、積層貼合および積層転写等の公知の方法で積層すればよく、また、これらの組み合わせで、複数層が積層されてもよい。
また、反射円偏光子は、液晶層とその逆の基材側のどちらか一方、または両方に表面反射を抑えるためのアンチリフレクション層を設けてもよい。
【0109】
周知のとおり、コレステリック液晶層は、液晶化合物がコレステリック配向されたコレステリック液晶相を固定してなる層である。コレステリック液晶相は、液晶化合物が、厚さ方向に螺旋状に旋回して配向された液晶相である。
コレステリック液晶層は、螺旋状に旋回して配向される液晶化合物の螺旋構造の螺旋ピッチに応じた波長選択反射性を有する。具体的には、コレステリック液晶層は、螺旋ピッチが長いほど、長波長の円偏光を選択的に反射する。なお、コレステリック液晶層における螺旋構造の螺旋ピッチとは、螺旋状に配向された液晶化合物(光学軸)が360°回転する、厚さ方向(螺旋軸方向)の長さである。
また、コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相の螺旋構造の螺旋の旋回方向に応じて、右円偏光または左円偏光のいずれかを反射し、その逆の円偏光を透過する円偏光選択反射/透過性を有する。上述のように、図示例では、反射円偏光子1008のコレステリック液晶層は、左円偏光を選択的に反射して、右円偏光を透過する。
【0110】
本発明の光学システムで用いる反射円偏光子1008は、画像表示装置1001が表示可能な色の波長帯域すなわち画像表示装置100の発光スペクトルに合わせて、可視光域の帯域で光を反射/透過する必要がある。つまり、画像表示装置1001の発光スペクトルの波長帯域が広いほど、可視光域の広い帯域で光を反射できる必要がある。
そのため、コレステリック液晶層を有する反射円偏光子1008を用いる本発明の光学システムの一態様では、反射円偏光子が有するコレステリック液晶層の少なくとも1層が、厚さ方向に、螺旋ピッチが変化しているピッチグラジエント構造を有する。
コレステリック液晶層を有する反射円偏光子1008は、例えば、支持体と、支持体の表面に形成された配向膜と、配向膜の表面に形成されたコレステリック液晶層とを有する。ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層は、例えば、厚さ方向に、配向膜から離間する方向に向かって、螺旋ピッチが、漸次、長くなり、または、短くなる。
ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層は、例えば、画像表示装置100として、蛍光灯などの白色光源を用いるバックライトユニットを有する液晶表示装置など、白表示時における発光のスペクトルが広い波長帯域に渡る画像表示装置を用いる場合に、好適に利用される。
以下の説明では、このような画像表示装置1001を、便宜的に、『広帯域光源型の画像表示装置1001』ともいう。
【0111】
上述したように、コレステリック液晶層は、螺旋構造の螺旋ピッチの長さに応じた波長の円偏光を選択的に反射する。
ピッチグラジエント構造のコレステリック液晶層は、螺旋ピッチが層の厚さ方向で変化している。そのため、均一な螺旋ピッチを有するコレステリック液晶相を固定した層よりも選択反射/透過の波長帯域の範囲が広く、広範な波長領域で選択反射/透過性を示す。
これは、従来例として例示した上述の米国特許第10495798号明細書等に記載されるような、互いに螺旋ピッチが異なる、螺旋ピッチが一定のコレステリック液晶層を、複数層、積層した構成のものとは異なる。すなわち、ピッチグラジエント構造の効果により、選択的な反射波長帯域における反射/透過率の変化が小さくなり、反射/透過率の変化が大きな従来例と比べて、ゴースト像の低減と主像の輝度向上とが両立できる。
具体的には、コレステリック液晶層の反射波長帯域は、1~100nmが好ましく、1~150nmがより好ましく、1~200nmがさらに好ましい。なお、本例は、上述したコレステリック液晶層の反射波長帯域を一例として示したが、反射円偏光子1008の反射波長帯域は、画像表示装置1001の光源スペクトルの極大値の半値全幅に合わせて設定すればよいため、この限りではない。
【0112】
コレステリック液晶層の断面(厚さ方向の断面)を、走査型顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope)で観察すると、断面のSEM画像には、コレステリック液晶相の螺旋構造に由来して、主面に平行な明部(明線)と暗部(暗線)とを、厚さ方向に交互に有する、縞模様が観察される。この明部2つと暗部2つとが、コレステリック液晶層の螺旋構造における螺旋ピッチに相当する。
通常のコレステリック液晶層は、明部と暗部との間隔は、厚さ方向で一定である。
これに対して、ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層では、明部と暗部との間隔が、厚さ方向で、変化する。例えば、ピッチグラジエント構造のコレステリック液晶層では、厚さ方向に、配向膜から離間する方向に向かって、明部と暗部との間隔が、漸次、広くなり、または、狭くなる。
【0113】
ピッチグラジエント構造のコレステリック液晶層は、一例として、以下のようにして形成できる。
コレステリック液晶層は、一般的に、重合性液晶化合物、液晶化合物を螺旋配向するためのカイラル剤(キラル剤)、および、重合開始剤等を含む液晶組成物を用いて形成される。コレステリック液晶層は、この液晶組成物を、配向膜の表面に液晶組成物を塗布し、加熱等を行うことにより液晶化合物を螺旋配向し、その後、紫外線の照射等によって液晶化合物を重合して液晶ポリマーとして、組成物を硬化することで、形成される。
ピッチグラジエント構造のコレステリック液晶層は、光の照射によって螺旋誘起力(HTP:Helical Twisting Power)が変化するカイラル剤を用い、液晶化合物の螺旋配向に先立ち、または、液晶化合物の螺旋配向と同時に、カイラル剤のHTPを変化させるための光照射を行い、その後、組成物の硬化を行うことで、形成できる。例えば、光の照射によってHTPが低下するカイラル剤を用い、HTPを変化させるための光照射を配向膜とは逆側から行った場合には、厚さ方向の配向膜から離間する方向に向かって、螺旋ピッチが、漸次、長くなるピッチグラジエント構造のコレステリック液晶層となる。
【0114】
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。
コレステリック液晶相を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができる。
【0115】
カイラル剤は、コレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。カイラル化合物は、化合物によって、誘起する螺旋のセンスまたは螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
カイラル剤としては、公知の化合物を用いることができるが、シンナモイル基を有することが好ましい。なお、ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層を形成する際には、上述のように、光の照射によってHTPが変化するカイラル剤を用いる。光の照射によってHTPが変化するカイラル剤も、公知の各種のカイラル剤が利用可能である。
カイラル剤の例としては、液晶デバイスハンドブック(第3章4-3項、TN、STN用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989)、ならびに、特開2003-287623号公報、特開2002-302487号公報、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2010-181852号公報および特開2014-034581号公報等に記載される化合物が例示される。
【0116】
広帯域光源型の画像表示装置1001を用いる本発明の光学システムでは、反射円偏光子1008は、少なくとも1層のコレステリック液晶層がピッチグラジエント構造を有していればよい。
従って、例えば、反射円偏光子1008が2層のコレステリック液晶層を有する場合には、1層のみがピッチグラジエント構造を有し、もう1層が、通常のコレステリック液晶層であってもよい。この際には、例えば、ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層が、赤色光および緑色光を選択的に反射し、通常のコレステリック液晶層が青色光を選択的に反射する構成、および、ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層が、緑色光~青色光を選択的に反射し、通常のコレステリック液晶層が赤色光を選択的に反射する構成等が例示される。
あるいは、反射円偏光子1008が2層のコレステリック液晶層を有する場合には、2層のコレステリック液晶層が、共に、ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層であってもよい。
さらに、反射円偏光子1008は、ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層を、1層、のみ有し、このコレステリック液晶が、赤色光、緑色光および青色光を、全て反射するようにしてもよい。
【0117】
本発明の光学システムにおいて、コレステリック液晶層を有する反射円偏光子1008を用いる態様は、反射円偏光子1008がピッチグラジエント構造ではない通常のコレステリック液晶層のみを有する構成も、利用可能である。
具体的には、画像表示装置1001が、白表示時の光源スペクトルが、少なくとも可視域に極大値を2つ以上有し、かつ、各極大値に対応するピークの半値全幅が60nm以下である光源を用いる装置である場合には、通常のコレステリック液晶層のみを有する反射円偏光子1008が好適に利用される。
このような画像表示装置1001としては、一例として、青色LED(Light Eemitting Diode)等の青色光源と、量子ドットを含む波長変換層とを有し、青色光源が出射した青色光と、この青色光を量子ドットで変換した赤色光および緑色光を出射することで、白色光を照射するバックライトユニットを用いる液晶ディスプレイ等が例示される。
また、画像表示装置1001が、例えば、マイクロLED(Light Eemitting Diode)ディスプレイ等の自己発光型の画像表示装置である場合にも、通常のコレステリック液晶層のみを有する反射円偏光子1008が好適に利用される。
以下の説明では、このような画像表示装置1001を、便宜的に、『多ピーク型の画像表示装置1001』ともいう。
【0118】
このような多ピーク型の画像表示装置1001は、上述のような広帯域光源型の画像表示装置1001とは異なり、白表示を行った際に、発光のスペクトルが少なくとも2つの極大値を有する。すなわち、多ピーク型の画像表示装置1001による画像の光のスペクトルは、上述した広帯域光源型の画像表示装置1001のように広い波長帯域に発光のスペクトルを有するものではなく、赤色光、緑色光および青色光の、それぞれに対応するピークを有する。
従って、反射円偏光子1008を構成するコレステリック液晶層は、ピッチグラジエント構成のように、広い波長帯域に渡って選択的な反射特性を有する必要はなく、個々の色のピークに対応する波長帯域の光のみ、反射すればよい。
これに対応して、多ピーク型の画像表示装置1001を用いる際には、反射円偏光子1008を構成するコレステリック液晶層は、画像表示装置1001の白表示時におけるスペクトルのいずれか1つの極大値に対応して、反射波長帯域が、対応する極大値のピーク(発光のプロファイル)の半値全幅の波長帯域以上で、かつ、対応する極大値の5%値となる波長帯域以下である。
多ピーク型の画像表示装置1001を用いる際には、反射円偏光子1008は、少なくとも1層、好ましくは全てのコレステリック液晶層が、この反射波長帯域を有する。なお、このコレステリック液晶層は、反射の波長特性(反射のプロファイル)における半値全幅において、この反射波長帯域の条件を満たせばよい。
【0119】
以下、図5を参照して説明する。
図5において、実線はコレステリック液晶層の反射波長特性を、鎖線は、白色表示における画像表示装置1001の発光スペクトルを、それぞれ示す。
図5において、横軸は波長である。また、縦軸の左側は発光スペクトルに対応する、最高強度を1として規格化した発光強度である。さらに、縦軸の右側は、反射波長特性に対応する、最高反射率を1として規格化した反射率である。
【0120】
図5に示すように、多ピーク型の画像表示装置1001は、白色表示をすると、一点鎖線で示す青色光のピーク、二点鎖線で示す緑色光のピーク、および、三点鎖線で示す赤色光のピークを有する。すなわち、この例では、白色表示した際における画像表示装置1001の発光のスペクトルは、3つの極大値(ピークトップ)を有する。
これに対応して、反射円偏光子1008は、3層のコレステリック液晶層を有する。
1層は、一点鎖線で示す青色光のピークに対応するコレステリック液晶層である。このコレステリック液晶層は、青色光のピークの半値全幅すなわち強度0.5の波長帯域よりも広く、かつ、青色光の極大値の5%値すなわち強度0.05の波長帯域よりも狭い、反射波長帯域を有する。
もう1層は、二点鎖線で示す緑色光のピークに対応するコレステリック液晶層である。このコレステリック液晶層は、緑色光のピークの半値全幅すなわち強度0.5の波長帯域よりも広く、かつ、緑色光の極大値の5%値すなわち強度0.05の波長帯域よりも狭い、反射波長帯域を有する。
もう1層は、三点鎖線で示す赤色光のピークに対応するコレステリック液晶層である。このコレステリック液晶層は、赤色光のピークの半値全幅すなわち強度0.5の波長帯域よりも広く、かつ、赤色光の極大値の5%値すなわち強度0.05の波長帯域よりも狭い、反射波長帯域を有する。
【0121】
本発明の光学システムにおいて、このような多ピーク型の画像表示装置1001を用いる場合には、反射円偏光子1008を構成するコレステリック液晶層の反射波長帯域は、画像表示装置1001の対応するピークにおける極大値の波長を含む必要がある。
ここで、コレステリック液晶層の反射波長帯域は、中心が、画像表示装置1001の対応するピークの極大値よりも、長波長側に位置するのが好ましい。
周知のように、コレステリック液晶層は、斜め光が入射すると、反射波長帯域が短波長側に移動する、いわゆるブルーシフト(短波シフト)を生じる。そのため、コレステリック液晶層の反射波長帯域の中心を、画像表示装置1001の対応するピークの極大値よりも、若干、長波長側とすることで、ブルーシフトが生じた場合でも、コレステリック液晶層は、所定の波長帯域の光を、好適に反射することが可能になる。
【0122】
なお、本発明の光学システムでは、多ピーク型の画像表示装置1001を用いた場合でも、必要に応じて、反射円偏光子1008が、ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層を、少なくとも1層、有してもよい。
【0123】
反射円偏光子1008を用いる本発明の光学システムでは、反射円偏光子1008は、可視光領域における透過率の差が小さい方が好ましい。具体的には、反射円偏光子1008の可視光領域における透過率の最大値と最小値との差は、3%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
可視光領域における透過率の最大値と最小値との差を3%以下とすることにより、主像1101の色バランスを好適にできると共に、反射率が低い波長の影響を小さくして、高輝度な主像1101の表示が可能になる。
【0124】
反射円偏光子1008を有する本発明の光学システムは、重合性基を有する液晶化合物の垂直配向を固定してなる位相差層を、少なくとも1層、有するのが好ましい。
【0125】
または、本発明の光学システムは、反射円偏光子1008が、コレステリック液晶層として、棒状液晶化合物からなる棒状コレステリック液晶層と、円盤状液晶化合物(ディスコティック液晶化合物)を垂直配向して固定した円盤状コレステリック液晶層とを有するのが好ましい。
棒状コレステリック液晶層および円盤状コレステリック液晶層は、共に、1層でも、複数層を有してもよい。
【0126】
この際には、棒状コレステリック液晶層と、円盤状コレステリック液晶層とは、選択的に反射する光の中心波長(選択反射中心波長)が異なる。すなわち、棒状コレステリック液晶層と、円盤状コレステリック液晶層とは、一部の波長帯域が重なってもよいが、異なる色(波長帯域)の光を選択的に反射する。
また、反射円偏光子1008を構成するコレステリック液晶層の1層以上が、ピッチグラジエント構造を有する場合には、ピッチグラジエント構造を有するのは、棒状コレステリック液晶層でも、円盤状コレステリック晶層でも、両者でもよい。作り易さ等の点で、ピッチグラジエント構造を有するのは、棒状コレステリック液晶層であるのが好ましい。
【0127】
反射円偏光子1008を構成するコレステリック液晶層は、斜め光が入射した際には、すなわち法線以外の方向から光が入射した際には、光学的な位相差が生じて、厚さ方向のレタデーションであるRthを発生する。Rthが発生すると、入射した円偏光が崩れて、楕円偏光になってしまう。楕円偏光は、円偏光の成分と直線偏光の成分とに変換されるので、直線偏光の成分は、コレステリック液晶層によって反射されず、透過してしまう。
すなわち、反射円偏光子1008に斜め光が入射すると、図2に破線で示す、反射円偏光子1008を不要に透過する漏れ光が増えてしまい、よりゴースト像1102が視認され易くなってしまう。
【0128】
これに対して、反射円偏光子1008を有する本発明の光学システムでは、好ましくは、重合性基を有する液晶化合物の垂直配向を固定してなる位相差層を少なくとも1層、有する。または、反射円偏光子1008を有する本発明の光学システムでは、好ましくは、反射円偏光子1008が、円盤状液晶化合物を垂直配向して固定した円盤状コレステリック液晶層を、少なくとも1層、有する。
このような位相差層および円盤状コレステリック液晶層は、上述したCプレートとして作用する。そのため、光学システムが、このような位相差層、または、このような円盤状コレステリック液晶層を有することにより、反射円偏光子1008に斜め光が入射した際に生じるRth(位相差)を補償し、漏れ光を抑制することができるため、より好適にゴースト像1102を抑制できる。
また、光学システムが第3の1/4波長板1009および直線偏光子1007を有する場合には、反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)を抜けた光に位相差を与え、第3の1/4波長板1009を通過した後に、直線偏光子1007で吸収することで光漏れを抑制することができるため、より好適にゴースト像を抑制できる。
【0129】
また、本発明の光学システムが、上述した位相差層を1層以上、または、上述した円盤状コレステリック液晶層を1層以上、有する場合には、位相差層の合計のRthおよび円盤状コレステリック液晶層の合計のRthが、下記式を満たすのが好ましい。
式) |Rth(550)|≧200nm
ここで、Rth(550)は、波長550nmにおける位相差層の厚さ方向の位相差を示す。
また、位相差層の合計のRthは、より好ましくは、|Rth(550)|≧400nmである。位相差層の合計のRthは、さらに好ましくは、|Rth(550)|≧600nmである。
位相差層の合計のRthおよび円盤状コレステリック液晶層の合計のRthを、このような範囲とすることによって、反射円偏光子1008のコレステリック液晶層に斜め光が入射した際にコレステリック液晶層でうけるRthを、さらに好適に補償し、光漏れを抑制することができるため、より好適にゴースト像を抑制できる点で好ましい。
また、光学システムが第3の1/4波長板1009および直線偏光子1007を有する場合には、さらに好適にコレステリック液晶層(反射円偏光子1008)を抜けた光に位相差を与え、第3の1/4波長板1009を通過した後に、直線偏光子1007で吸収することで光漏れを抑制することができるため、さらに好適にゴースト像を抑制できる。
【0130】
位相差層の配置位置には、制限はなく、光が円偏光である領域であれば、いずれの場所であってもよい。すなわち、位相差層の配置位置は、第1の1/4波長板1003とハーフミラー1004との間、ハーフミラー1004と反射円偏光子1008との間、および、反射円偏光子1008と第3の1/4波長板1009との間の、いずれの位置であってもよい。また、反射円偏光子1008が複数のコレステリック液晶層を有する場合には、コレステリック液晶層の間に位相差層を配置してもよい。
いずれの構成においても、ゴースト像を抑制できる。また、コレステリック液晶層が複数からなる場合はその間に位相差層を隣接させてもよい。
位相差層の配置位置は、反射円偏光子1008よりも画像表示装置1001側が好ましい。また、位相差層の配置位置は、反射円偏光子1008に隣接する位置が、より好ましい。
【0131】
また、円盤状コレステリック液晶層も、棒状コレステリック液晶層よりも画像表示装置1001側、および、棒状コレステリック液晶層よりも視認側(第3の1/4波長板1009側)のいずれに配置してもよい。
円盤状コレステリック液晶層の配置位置も、反射円偏光子1008よりも画像表示装置1001側が好ましい。また、円盤状コレステリック液晶層の配置位置は、棒状コレステリック液晶層に隣接する位置が、より好ましい。
【0132】
すなわち、位相差層と反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)とは、ゴースト像を抑制する観点で、どちらを画像表示装置1001側に配置してもよい。同じく、円盤状コレステリック液晶層と棒状コレステリック液晶層とは、ゴースト像を抑制する観点で、どちらを画像表示装置1001側に配置してもよい。
位相差層が反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)よりも画像表示装置1001側に位置する場合、および、円盤状コレステリック液晶層が棒状コレステリック液晶層よりも画像表示装置1001側に位置する場合は、反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)または、棒状コレステリック液晶層で受けるRthを、予め、位相差層または円盤状コレステリック液晶層で補償することで、ゴースト像1102を抑制できる。
反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)が位相差層よりも画像表示装置1001側に位置する場合、および、棒状コレステリック液晶層が円盤状コレステリック液晶層よりも画像表示装置1001側に位置する場合は、以下の作用によって、ゴースト像を抑制できる。すなわち、この構成では、反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)、または、棒状コレステリック液晶層を抜けた光に位相差を与えることにより、円偏光の旋回方向を変更して、その後の第3の1/4波長板1009によって円偏光から変換された直線偏光を、直線偏光子1007の透過軸と直交する方向の直線偏光とすることで、直線偏光子1007で吸収し、ゴースト像1102を抑制できる。
【0133】
また、反射円偏光子1008は、曲面形状に加工したものであってもよい。
後述するが、本発明の光学システムでは、例えば、使用者が観察する主像1101を拡大するために、必要に応じて、レンズを配置してもよい。
また、反射円偏光子1008も、迷光およびゴースト等を抑制する観点で、レンズ形状に成形することができる。
【0134】
反射円偏光子1008を曲面加工する場合には、画像表示装置1001側を凸にしても凹にしてもよい。すなわち、反射円偏光子1008を曲面加工する場合には、反射円偏光子1008を、凸レンズ(凹面鏡)として作用させても、凹レンズ(凸面鏡)として作用させてもよい。
反射円偏光子1008を、凸レンズとするか凹レンズとするかは、光学システムに配置されるレンズ、および、他の光学素子等に応じて、反射円偏光子1008に要求される作用に応じて、適宜、決定すればよい。
【0135】
反射円偏光子1008を曲面加工する場合には、反射円偏光子1008(コレステリック液晶層)は、重合性基を、1つ、有する液晶化合物を含む液晶組成物を重合した液晶ポリマーを有するのが好ましい。
このような構成を有することにより、曲面形状に加工する場合に、反射円偏光子1008が好適に延伸する。その結果、曲面形状への加工によって割れる等の損傷を防止して、反射円偏光子1008を、所望の曲面形状に、好適に加工することが可能になる。
【0136】
曲面加工・成形時の変形で、反射円偏光子の反射帯域にずれが生じる場合は、例えば、国際公開第2020/122245号を参考に、成形後に所望の反射波長帯域になるように調整することができる。
一例として、透過光量が部分によって変化するマスクを用いて異性化露光し、予め面内で反射帯域を変えておくことで、成形時の変形が大きな部分および小さな部分ともに、成形後に所望の反射域に調整することができる。
【0137】
本発明の光学システムにおいて、偏光子(反射偏光子1006および反射円偏光子1008)の厚さには制限はなく、形成材料等に応じて、必要な性能が発現できる厚さを、適宜、設定すればよい。
取り扱い性に優れると共に、光学特性にも優れる等の点より、偏光子の厚さは、35μm以下が好ましく、3~25μmがより好ましい。偏光子を、この厚さとすることにより、光学システムの薄型化に対応可能となる。
【0138】
(偏光子保護フィルム)
偏光子の表面上には、偏光子保護フィルムが配置されていてもよい。偏光子保護フィルムは、偏光子の片面上にのみ配置されてもよいし、偏光子の両面上に配置されてもよい。なお、此処で言う偏光子とは、直線偏光子1002および直線偏光子1007、反射偏光子1006、ならびに、反射円偏光子1008の全てを対象としている。
偏光子保護フィルムの構成は特に制限されず、例えば、いわゆる透明支持体でもよく、いわゆるハードコート層でもよく、さらに、透明支持体とハードコート層との積層体であってもよい。
ハードコート層としては、公知の層を使用することができ、例えば、多官能モノマーを重合硬化して得られる層が例示される。
偏光子保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、光学システムの小型化等の理由から40μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。
【0139】
本発明の光学システムは、例えば、使用者が視認する主像1101の拡大等を目的として、必要に応じて、レンズを有してもよい。
レンズは、凸レンズでも、凹レンズでも、平面状のレンズでもよい。レンズの表面に、本発明の光学システムを構成する光学部材が形成されてもよい。例えば、レンズの凸面に、湾曲したハーフミラー1004が形成される構成が具体的に例示される。
【0140】
レンズ形状としては米国特許第3443858号明細書に記載のパンケーキレンズが好適に用いられる。
【0141】
本発明においては、本発明の光学システムを構成する1/4波長板等の構成部材(光学部材)に、適宜、反射防止層を設けることができる。
構成部材に反射防止層を設けることで、各部材の界面における意図しない反射を抑制することができ、ゴースト像1102を抑制した光学システムを提供できる。また、各光学部材の透過率が向上し、主像1101の輝度向上を図ることができる。
ある一態様では、反射防止層を第1の1/4波長板1003のハーフミラー1004側表面に設けるのが好ましい。また、別の一態様では、反射防止層をハーフミラー1004の第1の1/4波長板1003側の表面に設けるのが好ましい。さらに、本発明の別の一態様では、反射防止層を、円反射偏光子1008のハーフミラー1004側表面に設けるのが好ましい。
反射防止層を、複数、設けることも好ましく、本発明の光学システムの各構成部材において、他部材と貼合されず隣接層が空気である表面に、それぞれ設けるのが好ましい。
【実施例0142】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0143】
(セルロースエステル溶液A-1の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら組成物を撹拌して、各成分を溶解させ、セルロースエステル溶液A-1を調製した。
【0144】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースエステル溶液A-1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(アセチル化度2.86) 100質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 320質量部
・メタノール(第2溶媒) 83質量部
・1-ブタノール(第3溶媒) 3質量部
・トリフェニルフォスフェート 7.6質量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0145】
(マット剤分散液B-1の調製)
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解させ、マット剤分散液B-1を調製した。
【0146】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液B-1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・シリカ粒子分散液(平均粒径16nm)
・AEROSIL R972(日本アエロジル(株)製)
10.0質量部
・メチレンクロライド 72.8質量部
・メタノール 3.9質量部
・ブタノール 0.5質量部
・セルロースエステル溶液A-1 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0147】
(紫外線吸収剤溶液C-1の調製)
下記の組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら組成物を撹拌して、各成分を溶解させ、紫外線吸収剤溶液C-1を調製した。
【0148】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線吸収剤溶液C-1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・紫外線吸収剤(下記UV-1) 10.0質量部
・紫外線吸収剤(下記UV-2) 10.0質量部
・メチレンクロライド 55.7質量部
・メタノール 10質量部
・ブタノール 1.3質量部
・セルロースエステル溶液A-1 12.9質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0149】
【化1】
【0150】
(セルロースエステルフィルムの作製)
セルロースエステル溶液A-1を94.6質量部、および、マット剤分散液B-1を1.3質量部混合して得られる混合物に、セルロースアシレート100質量部当たり、紫外線吸収剤(UV-1)および紫外線吸収剤(UV-2)がそれぞれ1.0質量部となるように、紫外線吸収剤溶液C-1を加えた。
その後、加熱しながら充分に混合物を撹拌して、各成分を溶解させ、ドープを調製した。得られたドープを30℃に加温し、流延ギーサーを通して、直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に加熱されたドープを流延した。鏡面ステンレス支持体の表面温度は-5℃に設定し、塗布幅は1470mmとした。
ドープの流延により形成したフィルム(ドープ膜)をドラム上で34℃の乾燥風を150m3/分で当てることにより乾燥させ、フィルム中の残留溶剤が150%の状態で、フィルムをドラムより剥離した。フィルムの剥離の際、フィルムの搬送方向(長手方向)に沿って、フィルムの15%の延伸を行った。
その後、フィルムの幅方向(流延方向に対して直交する方向)の両端をピンテンター(特開平4-1009号公報の図3に記載のピンテンター)で把持しながら搬送し、フィルムの幅方向には延伸処理を行わなかった。
さらに、得られたフィルムを熱処理装置のロール間に搬送することによりさらに乾燥し、セルロースアシレートフィルム(T1)を作製した。
作製した長尺状のセルロースアシレートフィルム(T1)は、残留溶剤量は0.2%で、厚さは40μmで、550nmにおけるReおよびRthは、それぞれ0.8nm、40nmであった。
【0151】
(アルカリ鹸化処理)
前述のセルロースアシレートフィルム(T1)を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、セルロースアシレートフィルム表面温度を40℃に昇温した。その後、セルロースアシレートフィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布した。
次に、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、アルカリ溶液を塗布したセルロースアシレートフィルムを10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、得られたセルロースアシレートフィルム上に純水を3ml/m2塗布した。次いで、得られたセルロースアシレートフィルムに対して、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した。
その後に、得られたセルロースアシレートフィルムを70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0152】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.8質量部
・イソプロパノール 63.7質量部
・界面活性剤SF-1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
・プロピレングリコール 14.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0153】
(配向膜の形成)
セルロースアシレートフィルム(T1)のアルカリ鹸化処理を行った面に、下記組成の配向膜塗布液(A)を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。
その後、配向膜塗布液(A)が塗布されたセルロースアシレートフィルムを60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥して、配向膜を形成した。
【0154】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
・水 308質量部
・メタノール 70質量部
・イソプロパノール 29質量部
・光重合開始剤(イルガキュアー2959、BASF製) 0.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0155】
変性ポリビニルアルコール
【化2】
【0156】
(光学異方性層Aの形成)
上記で作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向(搬送方向)とラビングローラーの回転軸とがなす角度を90°とした。
このラビング処理は、フィルム長手方向(搬送方向)を90°とし、配向膜側から観察してフィルム幅方向を基準(0°)に反時計回り方向を正の値で表すと、ラビングローラーの回転軸は0°にある。言い換えれば、ラビングローラーの回転軸の位置は、フィルム長手方向を基準に、直交させた位置である。
【0157】
下記の組成の円盤状液晶(ディスコティック液晶(DLC))化合物を含む光学異方性層塗布液(A)を、上述したラビング処理が施された配向膜上に#5.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は26m/minとした。
塗布液の溶媒の乾燥および円盤状液晶の配向熟成のために、光学異方性層塗布液(A)が塗布されたフィルムを115℃の温風で90秒間、続いて、80℃の温風で60秒間加熱した。
その後、得られたフィルムに、80℃にてUV(紫外線)照射(露光量:70mJ/cm2)を行い、液晶化合物の配向を固定化した。
光学異方性層Aの厚さは2.0μmであった。DLC化合物の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、DLC化合物がフィルム面に対して、垂直に配向していることを確認した。また、遅相軸の角度はラビングローラーの回転軸と平行であった。
得られた光学異方性層Aをガラス板(CORNING社製、イーグルXG、厚さ0.7mm)に転写し、AxoScan OPMF-1(Axometrics社製)を用い光学異方性を測定したところ、Re(550)は240nm、屈折率異方性はnz=nx>nyであった。
【0158】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の円盤状液晶(A) 80質量部
・下記の円盤状液晶(B) 20質量部
・エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
・V#360(大阪有機化学(株)製) 5質量部
・光重合開始剤(BASF社製、イルガキュアー907) 4質量部
・下記のピリジニウム塩(A) 2質量部
・下記のポリマーA 0.2質量部
・下記のポリマーB 0.1質量部
・下記のポリマーC 0.1質量部
・メチルエチルケトン 211質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0159】
円盤状液晶(A)
【化3】
円盤状液晶(B)
【化4】
ピリジニウム塩(A)
【化5】
【0160】
(ポリマーA)
【化6】
(ポリマーB)
【化7】
(ポリマーC)
【化8】
【0161】
(光学異方性層A2の作製)
光学異方性層塗布液(A)の塗布量を調節した以外は、光学異方性層Aと同様の方法で、光学異方性層A2を作製した。光学異方性層A2の厚さは1.0μm、Re(550)は120nmであった。
【0162】
(光学異方性層A3の作製)
光学異方性層塗布液(A)の塗布量を調節した以外は、光学異方性層Aと同様の方法で、光学異方性層A3を作製した。光学異方性層A2の厚さは1.1μm、Re(550)は138nmであった。
【0163】
(光学異方性層Bの作製)
上記(光学異方性層Aの作製)と同様の手順に従って、セルロースアシレートフィルム(T1)上に配向膜を形成し、配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向(搬送方向)とラビングローラーの回転軸とのなす角度が90°とした(フィルム長手方向(搬送方向)を90°とし、配向膜側から観察してフィルム幅方向を基準に反時計回り方向を正の値で表すと、ラビングローラーの回転軸は0°。言い換えれば、ラビングローラーの回転軸の位置は、フィルム長手方向を基準に、直交させた位置である。)。
【0164】
下記の組成の棒状液晶を含む光学異方性層塗布液(B)を、ラビング処理後の配向膜上に#2.8のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は26m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥および棒状液晶の配向熟成のために、光学異方性層塗布液(B)が塗布されたフィルムを60℃の温風で60秒間加熱した。
その後、得られたフィルムに60℃にてUV照射を行い、棒状液晶の配向を固定化して、光学異方性層Bを作製した。光学異方性層Bの厚さは1.6μmであった。
棒状液晶の長軸のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、棒状液晶がフィルム面に対して、水平に配向していることを確認した。また、遅相軸の角度はラビングローラーの回転軸と直交で、フィルム長手方向を90°(フィルム幅方向を0°とし、配向膜側から観察してフィルム幅方向を基準(0°)に反時計回り方向を正の値で表す。)とすると、90°であった。得られた光学異方性層Bをガラス板(CORNING社製、イーグルXG、厚さ0.7mm)に転写し、AxoScanで光学異方性を測定したところ、Re(550)は240nm、屈折率異方性はnx>ny=nzであった。
【0165】
(光学異方性層B2の作製)
Re(550)が120nmとなるように光学異方性層の厚さを制御した以外は、光学異方性層Bと同様にして、光学異方性層B2を作製した。
【0166】
(光学異方性層B3の作製)
Re(550)が138nmとなるように光学異方性層の厚さを制御した以外は、光学異方性層Bと同様にして、光学異方性層B3を作製した。
【0167】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層塗布液(B)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・棒状液晶-1 80質量部
・棒状液晶-2 20質量部
・光重合開始剤(BASF社製、イルガキュアー907) 3質量部
・増感剤(日本化薬(株)製、カヤキュアーDETX) 1質量部
・上記ポリマーC 1.0質量部
・メチルエチルケトン 193質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0168】
[棒状液晶-1]
【化9】
[棒状液晶-2]
【化10】
【0169】
(光学異方性層Cの作製)
特開2019-215416号公報の段落0102から段落0126に記載のポジティブAプレートと同様の方法で、セルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層Cを有するフィルムを得た。
光学異方性層CはポジティブAプレートであり、Re(550)が240nmとなるように、ポジティブAプレートの厚さを制御している。
【0170】
(光学異方性層C2の作製)
同様にして、セルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層C2を有するフィルムを得た。
ただし、光学異方性層C2では、Re(550)が120nmとなるように、ポジティブAプレートの厚さを制御している。
【0171】
(光学異方性層C3の作製)
同様にして、セルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層C3を有するフィルムを得た。
ただし、光学異方性層C3では、Re(550)が138nmとなるように、ポジティブAプレートの厚さを制御している。
【0172】
(光学異方性層Dの作製)
米国特許出願公開第2018/174015号明細書の段落0164に記載のポジティブCプレートと同様の方法でセルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層Dを有するフィルムを得た。
光学異方性層DはポジティブCプレートであり、Rth(550)が-72nmとなるように、ポジティブCプレートの厚さを制御している。
【0173】
(光学異方性層D2の作製)
特開2015-200861号公報の段落0124に記載のポジティブCプレートと同様の方法でセルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層D2を有するフィルムを得た。
光学異方性層D2はポジティブCプレートであり、Rth(550)が-72nmとなるように、ポジティブCプレートの厚さを制御している。
【0174】
(積層体の作製)
ガラス板(CORNING社製、イーグルXG、厚さ0.7mm)上に、粘着剤(綜研化学(株)製、SK-2057)を塗布して、粘着剤層を形成した。次に、粘着剤層が配置されたガラスと、上記作製したセルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層Aを有するフィルムとを、粘着剤層と光学異方性層Aとが密着するように、貼り合わせた。その後、得られた貼合物からセルロースアシレートフィルムおよび配向膜を剥離した。
さらに、得られた積層体中の光学異方性層A上に、粘着剤(綜研化学(株)製、SK-2057)を塗布して、粘着剤層を形成した。次に、粘着剤層が配置された積層体と、上記作製したセルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層B2を有するフィルムとを、粘着剤層と光学異方性層B2とが密着するように、貼り合わせた。その後、得られた貼合物からセルロースアシレートフィルムおよび配向膜を剥離した。
【0175】
上記手順により、ガラス板、光学異方性層A(光学異方性層a(表1参照))、および光学異方性層B2(光学異方性層b(同前))がこの順に配置されている積層体103-1を作製した。なお、ガラス板側から観察して、ガラス板の1辺を基準(0°)に反時計回りを正の値で表すと、光学異方性層A(光学異方性層a)の遅相軸の角度は15°であり、B2(光学異方性層b)の遅相軸の角度は75°であった。
【0176】
表1に記載の光学異方性層a~光学異方性層dの組み合わせで、光学異方性層の種類を変更し、貼合する際の遅相軸の角度を調節することで、積層体102、104-1~106-1、および、103-2~106-2を作製した。
【表1】
【0177】
同様の手順で、光学異方性層の種類を変更し、貼合軸の角度を調節することで、積層体107-1、107-2、108-1、108-2、114-1、114-2、115、および、116を作製した。
【0178】
(積層体の作製)
ガラス板(CORNING社製、イーグルXG、厚さ0.7mm)上に、粘着剤(綜研化学(株)製、SK-2057)を塗布して、粘着剤層を形成した。次に、粘着剤層が配置されたガラスと、上記作製したセルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層Aを有するフィルムとを、粘着剤層と第1光学異方性層Aとが密着するように、貼り合わせた。その後、得られた貼合物からセルロースアシレートフィルムおよび配向膜を剥離した。
さらに、得られた積層体中の第1光学異方性層A上に、粘着剤(綜研化学(株)製、SK-2057)を塗布して、粘着剤層を形成した。次に、粘着剤層が配置された積層体と、上記作製したセルロースアシレートフィルム、配向膜および第2光学異方性層Aを有するフィルムとを、粘着剤層と第2光学異方性層Aとが密着するように、貼り合わせた。その後、得られた貼合物からセルロースアシレートフィルムおよび配向膜を剥離した。
さらに、得られた積層体の第2光学異方性層A上に粘着剤(綜研化学(株)製、SK-2057)を塗布して、粘着剤層を形成した。次に、粘着剤層が配置された積層体と、上記作製したセルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層B2を有するフィルムとを、粘着剤層と光学異方性層B2とが密着するように、貼り合わせた。
【0179】
上記手順により、ガラス板、第1光学異方性層A(光学異方性層a)、第2光学異方性層A(光学異方性層b)、および光学異方性層B2(光学異方性層c)がこの順に配置された積層体109-1を作製した。なお、ガラス板側から観察して、ガラス板の1辺を基準(0°)に反時計回りを正の値で表すと、第1光学異方性層A(光学異方性層a)の遅相軸の角度は5°であり、第2光学異方性層A(光学異方性層b)の遅相軸の角度は30°であり、光学異方性層B2(光学異方性層c)の遅相軸の角度は95°であった。
【0180】
表1に記載の組み合わせで、光学異方性層の種類を変更し、貼合軸角度を調節することで、積層体109-2、111-1~113-1、および、111-2~113-2を作製した。
【0181】
(セルロースアシレート溶液の調製)
1〕セルロースアシレート
下記のセルロースアシレートA-2を使用した。各セルロースアシレートは120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、20質量部を使用した。
【0182】
・セルロースアシレートA-2:
置換度が2.86のセルロースアセテートの粉体を用いた。
セルロースアシレートA-2の粘度平均重合度は300、6位のアセチル基置換度は0.89、アセトン抽出分は7質量%、質量平均分子量/数平均分子量比は2.3、含水率は0.2質量%、6質量%ジクロロメタン溶液中の粘度は305mPa・s、残存酢酸量は0.1質量%以下、Ca含有量は65ppm、Mg含有量は26ppm、鉄含有量は0.8ppm、硫酸イオン含有量は18ppm、イエローインデックスは1.9、遊離酢酸量は47ppmであった。
粉体の平均粒子サイズは1.5mm、標準偏差は0.5mmであった。
【0183】
2〕溶媒
下記の溶媒Aを80質量部、使用した。各溶媒の含水率は0.2質量%以下であった。
・溶媒A ジクロロメタン/メタノール/ブタノール=81/18/1(質量比)
【0184】
3〕添加剤
光学異方性を制御する化合物として、下記A-1を15質量%添加した。添加量は、セルロースアシレートを100質量%としたときの質量%を表す。上述した量となるようにセルロースアシレート溶液への添加剤の添加量を調節した。
(繰り返し単位を有する化合物)
・A-1: エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)の縮合物の両末端の酢酸エステル体、数平均分子量1000、水酸基価0mgKOH/g
【0185】
4〕溶解
攪拌羽根を有する4000リットルのステンレス製溶解タンクに、上述した溶媒および添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上述のセルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
【0186】
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧のタンク内でフラッシュさせて、蒸発した溶剤を凝縮器で回収分離した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、24.8質量%となった。
なお、凝縮された溶剤は調製工程の溶剤として再利用すべく回収工程に回された(回収は蒸留工程と脱水工程等により実施されるものである)。
フラッシュタンクでは、中心軸にアンカー翼を有する軸を周速0.5m/secで回転させることにより攪拌して脱泡を行った。タンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。
【0187】
5〕ろ過
次に、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。ろ過後のドープ温度は、36℃に調節して2000Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。
【0188】
(フィルムの作製)
1)流延工程
続いてストックタンク内のドープを送液した。流延ダイは、幅が2.1mであり、流延幅を2000mmとしてダイ突出口のドープの流量を調節して流延を行った。ドープの温度を36℃に調節するため、流延ダイにジャケットを設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。ダイ、フィードブロック、配管はすべて作業工程中で36℃に保温した。
【0189】
2)流延乾燥
続いて、15℃に設定された空間に配置されているドラム上に流延され、冷却されてゲル化したドープは、ドラム上で320°回転した時点でゲル化フィルム(ウェブ)として剥ぎ取られた。このとき、支持体速度に対して剥ぎ取り速度を調節して、延伸倍率はMD方向に6%とした。
3)テンター搬送・乾燥工程条件
剥ぎ取られたウェブは、ピンクリップを有したテンターで両端を固定されながら乾燥ゾーン内を搬送され、乾燥風により乾燥した。この工程では積極的な延伸は行わなかった。
【0190】
4)後乾燥工程条件
前述した方法で得られた耳切り後の光学フィルムを、ローラー搬送ゾーンで更に乾燥した。該ローラーの材質はアルミ製若しくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラーの表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。作製した光学フィルムを115℃15時間の後熱処理を行った。
【0191】
5)後処理、巻取り条件
乾燥後の光学フィルムは、30℃以下に冷却して両端耳切りを行った。耳切りはフィルム端部をスリットする装置をフィルムの左右両端部に、2基ずつ設置して(片側当たりスリット装置数は2基)、フィルム端部をスリットした。
更に光学フィルムの両端にナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与した。
こうして、最終製品幅1400mmの光学フィルムを得て、巻取り機により巻き取り、セルロースアシレートフィルムT2を作製した。得られたセルロースアシレートフィルムT2のReは2nm、Rthは-5nmであった。
【0192】
ガラス板の代わりにセルロースアシレートフィルムT2を用いた以外は、積層体109-1と同様にして、積層体110-1を作製した。
また、ガラス板の代わりにセルロースアシレートフィルムT2を用いた以外は、積層体109-2と同様にして、積層体110-2を作製した。
【0193】
以上により得られた表1に記載の積層体101、102、103-1~113-1、および、103-2~113-2は、いずれも1/4波長板であった。
【0194】
<積層体201の作製>
特開2014-209219号公報の実施例1に記載の位相差板と同様の方法で、支持体、光学異方性層aおよび光学異方性層bがこの順に積層された積層体201を得た。
積層体201は、厚さ方向を螺旋軸とする捻れ配向した液晶化合物を含む。積層体201のRe(550)は140nm、遅層軸は45°であった。
【0195】
<積層体202の作製>
特開2014-209219号公報の実施例2に記載の位相差板と同様の方法で、支持体、光学異方性層a、光学異方性層b、光学異方性層cがこの順に積層された積層体202を得た。
積層体202は、厚さ方向を螺旋軸とする捻れ配向した液晶化合物を含む。積層体202のRe(550)は140nm、遅層軸は45°であった。
【0196】
<積層体301の作製(第1光学異方性層および第2光学異方性層の形成)>
〔光配向膜用組成物1の調製〕
酢酸ブチル/メチルエチルケトン(80質量部/20質量部)に対して、下記共重合体C3を8.4質量部と、下記熱酸発生剤D1を0.3質量部添加し、光配向膜用組成物を調製した。
【0197】
・共重合体C3(重量平均分子量:40,000)
【化11】
【0198】
・熱酸発生剤D1
【化12】
【0199】
〔光配向膜1の作製〕
セルロースアシレートフィルムT2の片側の面に、先に調製した光配向膜用組成物1をバーコーターで塗布した。塗布後、80℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.2μmの光異性化組成物層を形成した。得られた光異性化組成物層に対して偏光紫外線を照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜1を形成した。
【0200】
このようにして作製した光配向膜1の上に、下記の光学異方性層形成用組成物3を用いて第1光学異方性層を形成し、さらに、下記の光学異方性層形成用組成物4を用いて第2光学異方性層を形成した以外は、特開2016-148724号公報の記載と同様の方法で、積層体301を作製した。
積層体301は、セルロースアシレートフィルムT2、光配向膜1、光学異方性層形成用組成物3による光学異方性層、および、光学異方性層形成用組成物4による光学異方性層が、この順で積層されている。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物3
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶化合物R1 42.00質量部
・液晶化合物R2 42.00質量部
・液晶化合物R4 4.00質量部
・重合性化合物A1 12.00質量部
・重合開始剤S1 0.50質量部
・レベリング剤P1 0.15質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0201】
液晶化合物R1
【化13】
【0202】
液晶化合物R2
【化14】
【0203】
液晶化合物R4
【化15】
【0204】
重合性化合物A1
【化16】
【0205】
重合開始剤S1
【化17】
【0206】
レベリング剤P1
【化18】
【0207】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物4
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶化合物R1 10.0質量部
・液晶化合物R2 54.0質量部
・液晶化合物R3 28.0質量部
・液晶化合物R4 8.0質量部
・化合物B1 4.5質量部
・単量体K1 12.0質量部
・重合開始剤S1 1.5質量部
・界面活性剤P2 0.4質量部
・界面活性剤P3 0.5質量部
・アセトン 175.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 75.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0208】
<積層体302の作製>
組成物Aにおける、液晶化合物R1を100質量部とし、液晶化合物R2および液晶化合物R3を0質量部とした以外は、国際公開第2018/207797号に記載される光学補償層1と同様にして、積層体302を作製した。
【0209】
<積層体303の作製>
国際公開第2018/207797号に記載される光学補償層3と同様にして、積層体303を作製した。
【0210】
<ヘッドマウントディスプレイの作製>
表2に示す組み合わせで、積層体101~114-2、および、積層体201~202を、第1の1/4波長板および第2の1/4波長板として用い、図1Bに示すの光学系に組み込んで、ヘッドマウントディスプレイである光学システム1~17、50~51を作製した。
市販のヘッドマウントディスプレイであるOculus社のOculus Rift Sを分解し、その中の画像表示装置(1001)、および、その表面に貼合されている直線偏光子(1002)を用い、直線偏光子の吸収軸角度が90°となるよう配置した。
ハーフミラー(1004)としては、透過率50%、反射率50%の誘電体多層膜ハーフミラー(株式会社渋谷光学より入手、商品名H216)(吸収軸角度90°)を直径5cm、曲率半径10cmのレンズの凸面へ貼合して使用した。
反射偏光子(1006)としては3M社のDBEFを、透過軸の角度が90°となるよう配置した。反射偏光子の視認側には、直線偏光子(1007)を吸収軸の角度が0°となるよう配置した。
また、第1の1/4波長板および第2の1/4波長板は、表2に記載の向きに、積層体の基準軸が0°となるよう配置した。なお、遅相軸の角度は、ヘッドマウントディスプレイの水平方向を基準(0°)として積層体の基準軸を一致させ、視認側から画像表示装置を見た際に時計回りの方向を正とした。また、積層体の表側とは、積層体の液晶組成物面側を示す。
【0211】
反射偏光子のハーフミラー面側に、積層体301の光学異方性層4側を粘着剤で貼合し、セルロースアシレートフィルムT2を剥離して、光学補償層とした以外は、光学システム17と同様の方法で、光学システム61を作製した。
【0212】
直線偏光子の第1の1/4波長板側に、積層体301の光学異方性層4側を粘着剤で貼合し、セルロースアシレートフィルムT2を剥離して、光学補償層とした。
その上で、セルロースアシレートフィルムT2の剥離面に対し、第1の1/4波長板である積層体114-1を表2に記載の向きに貼合した。
その他は、光学システム61と同様の方法で、光学システム62を作製した。
【0213】
光学補償層として、積層体301の代わりに、光学補償層として積層体302を用いた以外は、光学システム62と同様の方法で、光学システム63を作製した。
光学補償層として、積層体301の代わりに、光学補償層として積層体303を用いた以外は、光学システム62と同様の方法で、光学システム64を作製した。
【0214】
第1の1/4波長板として積層体115(ポジティブAプレート(光学異方性層B3))を、第2の1/4波長板として積層体116(ネガティブAプレート(光学異方性層A3))を、それぞれ、用いた以外は、光学システム62と同様の方法で、光学システム71を作製した。
【0215】
【表2】
【0216】
なお、表2において、判定(リターダンスが等しい)の欄は、第1の1/4波長板のリターダンスと、第2の1/4波長板のリターダンスとが等しいか否かを示す欄である。
この欄において、第1の1/4波長板のリターダンスと、第2の1/4波長板のリターダンスとが、等しいか(該当)、等しくないかは(非該当)、第1の1/4波長板と第2の1/4波長板を粘着剤で貼合した積層体について、AxoScanの極角0°入射光に対するRe(λ)の測定結果がπ/30以下で、かつ、同積層体について、AxoScanの極角30°入射光に対するRe(λ)の測定結果が3π/50以下を満たすか否かによって判定した。
なお、波長λはλ=450nm、550nm、および、630nmの3波長を選んで行い、そのいずれもが上式を満たす際のみ、該当とした。
【0217】
<コレステリック反射偏光子1の作製>
仮支持体として、厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡(株)製、A4100)を用意した。このPETフィルムは、一方の面に易接着層を有する。
【0218】
下記に示す組成物を、70℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-A、Ch-B、および、Ch-Cを、それぞれ調製した。
【0219】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
反射層用塗布液Ch-A
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・メチルエチルケトン 120.9質量部
・シクロヘキサノン 21.3質量部
・下記の棒状液晶の混合物 100.0質量部
・光重合開始剤B 1.00質量部
・下記のカイラル剤A 2.50質量部
・下記の界面活性剤 F1 0.027質量部
・下記の界面活性剤 F2 0.067質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(反射層用塗布液Ch-B)
カイラル剤Aを3.50質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0220】
(反射層用塗布液Ch-C)
カイラル剤Aを4.50質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0221】
棒状液晶の混合物
【化19】
上記混合物において、数値は質量%である。また、Rは酸素原子で結合する基である。さらに、上記の棒状液晶の波長300~400nmにおける平均モル吸光係数は、140/mol・cmであった。
【0222】
カイラル剤A
【化20】
【0223】
界面活性剤F1
【化21】
【0224】
界面活性剤F2
【化22】
【0225】
光重合開始剤B
【化23】
【0226】
カイラル剤Aは、光によってHTPが減少するカイラル剤である。
【0227】
先に示したPETフィルムの易接着層が無い面をラビング処理し、上記で調製した反射層用塗布液Ch-Aを#8のワイヤーバーコーターで塗布した後、110℃で120秒乾燥した。
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、100℃で、照度80mW、照射量500mJ/cm2のメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層1を形成した。光の照射は、いずれも、コレステリック液晶層1側から行った。
【0228】
塗布液をCh-Bとした以外は、コレステリック液晶層1と同様の手順で、コレステリック液晶層2を作製した。
【0229】
塗布液をCh-Cとした以外は、コレステリック液晶層1と同様の手順で、コレステリック液晶層3を作製した。
【0230】
作製したコレステリック液晶層1、2および3、の断面をSEMを用いて観察したところ、いずれも明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、層内で変化がなかった。
【0231】
また、コレステリック液晶層1、コレステリック液晶層2、および、コレステリック液晶層3の厚さはそれぞれ4μmであった。
【0232】
支持体として、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム(富士フイルム(株)製、TG40)を用意した。
この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))を用いて、コレステリック液晶層1、コレステリック液晶層2、および、コレステリック液晶層3を転写して、支持体(TACフィルム)上に3層のコレステリック液晶層を積層した、コレステリック反射偏光子1を作製した。
【0233】
<コレステリック反射偏光子2の作製>
仮支持体として、厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡(株)製、A4100)を用意した。このPETフィルムは、一方の面に易接着層を有する。
【0234】
下記に示す組成物を、70℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Dを調製した。
【0235】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
反射層用塗布液Ch-D
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・メチルエチルケトン 120.9質量部
・シクロヘキサノン 21.3質量部
・下記の棒状液晶の混合物 100.0質量部
・光重合開始剤B 1.00質量部
・上記のカイラル剤A 3.90質量部
・上記の界面活性剤 F1 0.027質量部
・上記の界面活性剤 F2 0.067質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0236】
先に示したPETフィルムの易接着層が無い面をラビングし、上記で調製した反射層用塗布液Ch-Aを#19のワイヤーバーコーターで塗布した後、110℃で120秒乾燥した。
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)において、90℃で、照度30mW、照射量130mJ/cm2のメタルハライドランプの光を、光学フィルタ(朝日分光(株)製、SH0350)を通して照射し、さらに、100℃で、照度80mW、照射量500mJ/cm2のメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層4を形成した。光の照射は、いずれも、コレステリック液晶層側4から行った。
【0237】
作製したコレステリック液晶層4の断面をSEMを用いて観察したところ、明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、PET支持体に向かって狭くなっていることを確認した。
【0238】
また、コレステリック液晶層4の厚さは12μmであった。
【0239】
転写支持体としてTACフィルム(富士フイルム(株)製、TG40)を用意した。
この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))を用いて、コレステリック液晶層4を転写し、コレステリック反射偏光子2を作製した。
【0240】
<コレステリック反射偏光子3の作製>
転写支持体としてコレステリック反射偏光子2を使用した以外は、コレステリック反射偏光子2と同様にコレステリック液晶層4を形成して、コレステリック反射偏光子3を作製した。
【0241】
<コレステリック反射偏光子4Aの作製>
カイラル剤Aを3.50質量部として塗布液Ch-Eを調製し、90℃で、照度70mW、照射量110mJ/cm2のメタルハライドランプの光を、光学フィルタ(朝日分光(株)製、SH0350)を通して照射することでコレステリック液晶層5を形成した以外は、コレステリック反射偏光子2と同様にして、コレステリック反射偏光子4Aを作製した。
【0242】
<コレステリック反射偏光子4の作製>
カイラル剤Aを4.50質量部として塗布液Ch-Fを調節し、転写支持体としてコレステリック反射偏光子4Aを用いた以外は、コレステリック反射4Aと同様にしてコレステリック液晶層6を形成し、コレステリック反射偏光子4を作製した。
【0243】
作製したコレステリック液晶層6の断面をSEMを用いて観察したところ、いずれも、明部と暗部の縞模様が観察された。
その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、PET支持体に向かって狭くなっていることを確認した。
【0244】
以上により作製したコレステリック反射偏光子1~4の特性を表3に記す。
【0245】
【表3】
【0246】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子5の作製>
特開2019-95553の実施例1に記載の作製法で、塗布量を9.5cc/m2にした以外は同じ条件で位相差フィルムを作製した。
AxoScanで光学異方性を測定したところ、そのときのRthは-100nmであった。
この位相差フィルムを位相差層とするために、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))をもちいて、コレステリック反射偏光子2のコレステリック液晶層4側に2回転写し、コレステリック反射偏光子5を作製した。
【0247】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子6の作製>
位相差層を4回転写した以外は、コレステリック反射偏光子5と同等の手順でコレステリック反射偏光子6を作製した。
【0248】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子7の作製>
位相差層をタックフィルム側に10回転写した以外は、コレステリック反射偏光子5と同等の手順でコレステリック反射偏光子7を作製した。
【0249】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子8の作製>
位相差層を20回転写した以外は、コレステリック反射偏光子5と同等の手順でコレステリック反射偏光子8を作製した。
【0250】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子9の作製>
位相差層を、コレステリック液晶層4側に4回、タックフィルム側に20回転写した以外は、コレステリック反射偏光子5と同等の手順でコレステリック反射偏光子9を作製した。
【0251】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子10の作製>
コレステリック液晶層5を形成したコレステリック反射偏光子4Aの作製後に、コレステリック反射偏光子4Aの表面に粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))をもちいて、位相差層を2回転写した。
その後、カイラル剤Aを4.50質量部として塗布液Ch-Fを調節し、転写支持体として、位相差層を転写したコレステリック反射偏光子4Aを用いた以外は、コレステリック反射4と同様にしてコレステリック液晶層6を形成し、コレステリック反射偏光子10を作製した。
【0252】
(反射層用塗布液Ch-G)
カイラル剤Aを3.00質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0253】
(反射層用塗布液Ch-H)
カイラル剤Aを3.30質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0254】
(反射層用塗布液Ch-I)
カイラル剤Aを3.60質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0255】
(反射層用塗布液Ch-J)
カイラル剤Aを4.00質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0256】
(反射層用塗布液Ch-K)
カイラル剤Aを4.40質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0257】
先に示したPETフィルムの易接着層が無い面をラビングし、上記で調製した反射層用塗布液Ch-Aを#8.2のワイヤーバーコーターで塗布した後、110℃で120秒乾燥した。その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、90℃で、照度30mW、照射量40mJ/cm2のメタルハライドランプの光を、光学フィルタ(朝日分光(株)製、SH0350)を通して照射し、さらに、100℃で、照度80mW、照射量500mJ/cm2のメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層7を形成した。光の照射は、いずれも、コレステリック液晶層7側から行った。
【0258】
作製したコレステリック液晶層7の断面をSEMを用いて観察したところ、明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、PET支持体に向かって狭くなっていることを確認した。
【0259】
また、コレステリック液晶層7の厚さは4.1μmであった。
【0260】
先に示したPETフィルムの易接着層が無い面をラビングし、上記で調製した反射層用塗布液Ch-Gを#7.6のワイヤーバーコーターで塗布した後、110℃で120秒乾燥した。その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、100℃で、照度80mW、照射量500mJ/cm2のメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層8を形成した。光の照射は、いずれも、コレステリック液晶層8側から行った。
【0261】
反射層用塗布液をCh-Hとし、#7.2のワイヤーバーコーターを用いた以外は、コレステリック液晶層8と同様の手順でコレステリック液晶層9を形成した。
【0262】
反射層用塗布液をCh-Iとし、#6.6のワイヤーバーコーターを用いた以外は、コレステリック液晶層8と同様の手順でコレステリック液晶層10を形成した。
【0263】
反射層用塗布液をCh-Jとし、#6.2のワイヤーバーコーターを用いた以外は、コレステリック液晶層8と同様の手順でコレステリック液晶層11を形成した。
【0264】
反射層用塗布液をCh-Kとし、#5.6のワイヤーバーコーターを用いた以外は、コレステリック液晶層8と同様の手順でコレステリック液晶層12を形成した。
【0265】
作製したコレステリック液晶層8、コレステリック液晶層9、コレステリック液晶層10、コレステリック液晶層11、および、コレステリック液晶層12、の断面をSEMを用いて観察したところ、いずれも明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、いずれも、層内で変化が無かった。
【0266】
また、コレステリック液晶層8、コレステリック液晶層9、コレステリック液晶層10、コレステリック液晶層11、および、コレステリック液晶層12の厚さは、それぞれ、3.8μm、3.6μm、3.3μm、3.1μm、および、2.8μmであった。
【0267】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子11の作製>
支持体としてTACフィルム(富士フイルム(株)製、TG40)を用意した。
この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))を用いて、コレステリック液晶層7を転写し、コレステリック液晶層7に、第1の位相差層として、特許第6277088号公報の実施例22記載の第1の光反射層(厚さ5.8μm)を、実施例22と同様に転写した。
第1の位相差層に、コレステリック液晶層7と同様にコレステリック液晶層8を転写し、コレステリック液晶層8に、膜厚を4.3μmとした以外は、第1の位相差層と同様に第2の位相差層を転写した。
第2の位相差層に、コレステリック液晶層7と同様にコレステリック液晶層9を転写し、コレステリック液晶層9に、膜厚を2.4μmとした以外は、第1の位相差層と同様に第3の位相差層を転写した。
第3の位相差層に、コレステリック液晶層7と同様にコレステリック液晶層10を転写し、コレステリック液晶層10に、膜厚を1.4μmとした以外は第1の位相差層と同様に第4の位相差層を転写した。
第4の位相差層に、コレステリック液晶層7と同様にコレステリック液晶層11を転写し、コレステリック液晶層11に、膜厚を0.7μmとした以外は、第1の位相差層と同様に、第5の位相差層を転写した。
さらに、第5の位相差層に、コレステリック液晶層7と同様にコレステリック液晶層12を転写した。
これにより、支持体(TACフィルム)の上に、コレステリック液晶層を6層、位相差層を5層の、計11層を有するコレステリック反射偏光子11を作製した。
このコレステリック反射偏光子11の層構成を図4に概念的に示す。
【0268】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子12の作製>
コレステリック反射偏光子1に、位相差層を3回転写し、コレステリック反射偏光子12を作製した。
【0269】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子13の作製>
(反射層用塗布液Ch-L)
カイラル剤Aを4.45質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0270】
(反射層用塗布液Ch-M)
カイラル剤Aを3.40質量部とした以外は、反射層用塗布液Ch-Aと同様に調製した。
【0271】
先に示したPETフィルムの易接着層が無い面をラビングし、上記で調製した反射層用塗布液Ch-Lを#5.6のワイヤーバーコーターで塗布した後、110℃で120秒乾燥した。その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、85℃で、照度80mW、照射量500mJ/cm2のメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層13を形成した。光の照射は、いずれも、コレステリック液晶層13側から行った。
【0272】
作製したコレステリック液晶層13の断面をSEMを用いて観察したところ、いずれも明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、層内で変化がなかった。
また、コレステリック液晶層13の厚さは2.8μmであった。
【0273】
先に示したPETフィルムの易接着層が無い面をラビングし、上記で調製した反射層用塗布液Ch-Mを#12のワイヤーバーコーターで塗布した後、110℃で120秒乾燥した。その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、75℃で、照度30mW、照射量60mJ/cm2のメタルハライドランプの光を、光学フィルタ(朝日分光(株)製、SH0350)を通して照射し、さらに、100℃で、照度80mW、照射量500mJ/cm2のメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層14を形成した。光の照射は、いずれも、コレステリック液晶層側14から行った。
【0274】
作製したコレステリック液晶層14の断面をSEMを用いて観察したところ、明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、PET支持体に向かって狭くなっていることを確認した。
また、コレステリック液晶層14の厚さは7.3μmであった。
【0275】
次に、特開2019-95553の実施例1に記載の作製法で、塗布量を28cc/m2にした以外は同じ条件で位相差フィルムを作製した。
AxoScanで光学異方性を測定したところ、そのときのRth(550)は-300nmであった。
【0276】
転写支持体として支持体として、富士フイルム(株)社製のフジタック、ZRD40を用意した。この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、コレステリック液晶層14、コレステリック液晶層13を転写して、支持体(TACフィルム)上に2層のコレステリック液晶層を積層した。次に、位相差フィルムを位相差層とするために、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))をもちいて、コレステリック液晶層13側に1回転写し、コレステリック反射偏光子13を作製した。
【0277】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子14の作製>
転写支持体として、富士フイルム(株)社製フジタック、ZRD40を用意した。この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、コレステリック液晶層14を転写して、支持体(TACフィルム)上に1層のコレステリック液晶層を積層した。次に、位相差層付きコレステリック反射偏光子13と同様の位相差フィルムを、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))をもちいて、コレステリック液晶層14に転写した。最後に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、コレステリック液晶層13を転写して、位相差層付きコレステリック反射偏光子14を作製した。
【0278】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子15の作製>
ラビングしたPETフィルムの代わりに、先に示したPET上に塗布したコレステリック液晶層13を支持体として用いた以外は、コレステリック液晶層14と同様の手順で、コレステリック液晶層15を形成した。
作製したコレステリック液晶層15の断面をSEMを用いて観察したところ、いずれも明部と暗部の縞模様が観察された。コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、PET支持体側に向かって狭くなっている領域が7.3μmあり、その後PET支持体側に向かって変化がない領域が2.8μmあることを確認した。
また、コレステリック液晶層15の厚さは10.1μmであった。
【0279】
転写支持体として、富士フイルム(株)社製フジタック、ZRD40を用意した。この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、コレステリック液晶層15を転写して、支持体(TACフィルム)上にコレステリック液晶層を積層した。次に、位相差層付きコレステリック反射偏光子13と同様の位相差フィルムを、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))をもちいて、コレステリック液晶層15側に1回転写し、コレステリック反射偏光子15を作製した。
【0280】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子16の作製>
コレステリック液晶層15を、藤森工業株式会社製、MASTACK、AS3-304に仮転写し、その後、富士フイルム(株)社製フジタック、ZRD40に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、再度、コレステリック液晶層15を転写して、支持体(TACフィルム)上にコレステリック液晶層を積層した。次に、位相差層付きコレステリック反射偏光子13と同様の位相差フィルムを、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(15))をもちいて、コレステリック液晶層15側に1回転写し、コレステリック反射偏光子16を作製した。
【0281】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子17の作製>
転写支持体として、富士フイルム(株)社製フジタック、ZRD40を用意した。この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、コレステリック液晶層15を転写して、支持体(TACフィルム)上にコレステリック液晶層を積層した。このコレステリック液晶層15の面を、放電量150W・min/m2でコロナ処理を行い、コロナ処理を行った面に以下の組成で調製した位相差層形成用組成物1をワイヤーバーで塗布した。
次いで、組成物の溶剤の乾燥および液晶化合物の配向熟成のために、70℃の温風で90秒加熱した。窒素パージ下、酸素濃度0.1%で40℃にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、液晶化合物の配向を固定化し、位相差層付きコレステリック反射偏光子17を作製した。なお、位相差層Rth(550)は-300nmであった。
【0282】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
位相差層形成用組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶化合物R1 10.0質量部
・液晶化合物R2 54.0質量部
・液晶化合物R3 28.0質量部
・重合性化合物C1 8.0質量部
・化合物D1 4.5質量部
・単量体K1 8.0質量部
・重合開始剤S1 3.0質量部
・界面活性剤F3 0.4質量部
・界面活性剤F4 0.5質量部
・メチルエチルケトン 175.0質量部
・シクロペンタノン 75.0質量部
・メタノール 12.5質量部
・イソプロパノール 12.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0283】
液晶化合物R1
【化24】
【0284】
液晶化合物R2
【化25】
【0285】
・液晶化合物R3
下記液晶化合物(RA)(RB)(RC)の83:15:2(質量比)の混合物
【化26】
【0286】
重合性化合物C1
【化27】
【0287】
・化合物D1
【化28】
【0288】
・単量体K1:A-600(新中村化学工業社製)
【0289】
重合開始剤S1
【化29】
【0290】
・界面活性剤F3
【化30】
【0291】
・界面活性剤F4(重量平均分子量:11,200)
(下記式中:a~dは、a:b:c:d=56:10:29:5であり、樹脂中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(mol%)を示す。)
【化31】
【0292】
なお、上述した各位相差層付きコレステリック液晶層において、位相差層は、いずれも、垂直配向した棒状液晶化合物を固定してなる層であった。
【0293】
<コレステリック反射偏光子18の作製>
(反射層用塗布液Ch-N)
下記に示す組成物を、50℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Nを調製した。
【0294】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
反射層用塗布液Ch-N
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記の円盤状液晶(A) 80質量部
・上記の円盤状液晶(B) 20質量部
・重合性モノマーE1 10質量部
・界面活性剤F5 0.3質量部
・光重合開始剤(BASF社製、イルガキュアー907) 3質量部
・カイラル剤A 5.04質量部
・メチルエチルケトン 290質量部
・シクロヘキサノン 50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0295】
重合性モノマーE1
【化32】
【0296】
界面活性剤F5
【化33】
【0297】
転写支持体として、富士フイルム(株)社製フジタック、ZRD40を用意した。この支持体に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、コレステリック液晶層14を転写して、支持体(TACフィルム)上にコレステリック液晶層を積層した。このコレステリック液晶層14の面を、放電量150W・min/m2でコロナ処理を行い、コロナ処理を行った面に上述の組成で調製した反射層用塗布液Ch-Nをワイヤーバーで塗布した。
続いて、塗布膜を70℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に115℃で3分間加熱熟成を行って、均一な配向状態を得た。その後、この塗布膜を45℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、コレステリック液晶層16を作製し、コレステリック反射偏光子18を得た。
【0298】
作製したコレステリック液晶層16の断面をSEMを用いて観察したところ、明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、TACフィルム支持体側に向かって変化がない領域が4.0μmで、その後、TACフィルム支持体に向かって広くなっている領域が7.3μmあることを確認した。
また、コレステリック液晶層16の厚さは11.3μmであった。
【0299】
<コレステリック反射偏光子19の作製>
コレステリック液晶層14を、藤森工業株式会社製、MASTACK、AS3-304に仮転写し、その後、富士フイルム(株)社製フジタック、ZRD40に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、再度コレステリック液晶層14を転写して、支持体(TACフィルム)上にコレステリック液晶層を積層した。
このコレステリック液晶層14の面を、放電量150W・min/m2でコロナ処理を行い、コロナ処理を行った面に上述の組成で調製した反射層用塗布液Ch-Nをワイヤーバーで塗布した。
続いて、塗布膜を70℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に115℃で3分間加熱熟成を行って、均一な配向状態を得た。その後、この塗布膜を45℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、コレステリック液晶層17を作製し、コレステリック反射偏光子19を得た。
【0300】
作製したコレステリック液晶層17の断面をSEMを用いて観察したところ、明部と暗部の縞模様が観察された。その際、コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、TACフィルム支持体側に向かって変化がない領域が4.0μmで、その後、TACフィルム支持体に向かって狭くなっている領域が7.3μmあることを確認した。
また、コレステリック液晶層17の厚さは11.3μmであった。
【0301】
なお、コレステリック反射偏光子18およびコレステリック反射偏光子19において、コレステリック液晶層14の厚さは7.3μmであるので、円盤状液晶化合物を有する反射層用塗布液Ch-Nからなる円盤状コレステリック液晶層の厚さは4.0μmである。
この厚さ4.0μmの円盤状コレステリック液晶層について、AxoScanで光学異方性を測定したところ、そのときのRth(550)は-260nmであった。
また、この円盤状コレステリック液晶層は、垂直配向した円盤状液晶化合物を固定してなる層であった。
【0302】
<位相差層付きコレステリック反射偏光子20の作製>
先に示したPET上に塗布したコレステリック液晶層13を、藤森工業株式会社製、MASTACK、AS3-304に仮転写した。
その後、コレステリック液晶層13側(コレステリック液晶層13のラビング支持体に接していた面)に、反射層用塗布液Ch-Mを#12のワイヤーバーコーターで塗布した後、110℃で120秒乾燥した。その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、75℃で、照度30mW、照射量60mJ/cm2のメタルハライドランプの光を、光学フィルタ(朝日分光(株)製、SH0350)を通して照射し、さらに、100℃で、照度80mW、照射量500mJ/cm2のメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層14を形成した。光の照射は、いずれも、コレステリック液晶層側14から行った。
その後、富士フイルム(株)社製のフジタック、ZRD40に、粘着剤(リンテック社製、NCF-D692(5))を用いて、コレステリック液晶層13とコレステリック液晶層14との積層体を転写して、支持体(TACフィルム)上にコレステリック液晶層18を積層した。
作製したコレステリック液晶層18の断面をSEMを用いて観察したところ、明部と暗部の縞模様が観察された。コレステリック液晶層の明部と暗部との縞模様の間隔は、TAC支持体側に向かって変化がない領域が2.8μmあり、その後、TAC支持体側に向かって広くなっている領域が7.3μmあることを確認した。また、コレステリック液晶層18の厚さは10.1μmであった。
このコレステリック液晶層18の面を、放電量150W・min/m2でコロナ処理を行い、コロナ処理を行った面に上述の位相差層形成用組成物1をワイヤーバーで塗布した。次いで、組成物の溶剤の乾燥および液晶化合物の配向熟成のために、70℃の温風で90秒加熱した。窒素パージ下、酸素濃度0.1%で40℃にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、液晶化合物の配向を固定化し、位相差層付きコレステリック反射偏光子20を作製した。なお、位相差層のRth(550)は-300nmであった。
【0303】
以上により作製したコレステリック反射偏光子5~20の特性を表4に記す。
【0304】
【表4】
【0305】
[比較例10、実施例81~90、92~98、100]
表5に示すように、比較例2である光学システム2から、第2の1/4波長板と反射偏光子を取り除き、代わりに作製したコレステリック反射偏光子1~11、13~20を、反射円偏光子として配置することで、比較例10である光学システム80、および、実施例81~90、92~98である光学システム90~100、102~108、110を作製した(図2参照)。
なお、コレステリック反射偏光子1~11、13~20は、TACフィルム側が視認側となるよう配置した。
【0306】
[実施例99]
実施例98の光学システム108に対して、直線偏光子(図2の1007)を、後述のようにして作製した吸収型偏光子に変えた以外は、光学システム108と同様の、実施例99である光学システム109を作製した。
【0307】
[吸収型偏光子の作製]
<透明支持体1の作製>
後述する配向層形成用塗布液PA1を、ワイヤーバーでセルロースアシレートフィルム(厚み40μmのTAC基材;TG40 富士フイルム(株)製)上に連続的に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向層PA1を形成し、光配向層付きTACフィルムを得た。
膜厚は0.3μmであった。
【0308】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(配向層形成用塗布液PA1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記記重合体PA-1 100.00質量部
・下記酸発生剤PAG-1 5.00質量部
・下記酸発生剤CPI-110TF 0.005質量部
・キシレン 1220.00質量部
・メチルイソブチルケトン 122.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0309】
重合体PA-1
【0310】
【化34】
【0311】
酸発生剤PAG-1
【0312】
【化35】
【0313】
酸発生剤CPI-110F
【化36】
【0314】
<光吸収異方性層P1の形成>
得られた配向層PA1上に、下記の光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層P1を形成した。
次いで、塗布層P1を140℃で30秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、90℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、LED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cm2の照射条件で2秒間照射することにより、配向層PA1上に光吸収異方性層P1を作製した。
膜厚は1.6μmであった。
これを積層体1Bとした。
【0315】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性物質D-1 0.25質量部
・下記二色性物質D-2 0.36質量部
・下記二色性物質D-3 0.59質量部
・下記高分子液晶性化合物P-1 2.21質量部
・下記低分子液晶性化合物M-1 1.36質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.200質量部
・下記界面活性剤F-1 0.026質量部
・シクロペンタノン 46.00質量部
・テトラヒドロフラン 46.00質量部
・ベンジルアルコール 3.00質量部
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【0316】
D-1
【化37】
【0317】
D-2
【化38】
【0318】
D-3
【化39】
【0319】
高分子液晶性化合物P-1
【化40】
【0320】
低分子液晶性化合物M-1
【化41】
【0321】
界面活性剤F-1
【化42】
【0322】
<UV接着剤の作成>
下記のUV接着剤組成物を調製した。
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UV接着剤組成物
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・CEL2021P(ダイセル社製) 70質量部
・1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル 20質量部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル 10質量部
・CPI-100P 2.25質量部
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【0323】
CPI-100P
【化43】
【0324】
<吸収型偏光フイルムの作成>
積層体1Bの光吸収異方性層表面に対し、上記UV剤を用いて、樹脂基材S1としてテクノロイS001G(メタクリル樹脂50μm厚、tanδピーク温度128℃、住化アクリル販売(株))を貼り合わせた。その後、セルロースアシレートフィルム1のみ剥離して、樹脂基材/接着層/光吸収異方性層/配向層がこの順に配置された吸収型偏光フイルムを作成した。UV接着層の厚みは2μmであった。
【0325】
[比較例11、実施例91]
表6に示すように、比較例2である光学システム2から、第2の1/4波長板と反射偏光子とを取り除き、代わりに、作製したコレステリック反射偏光子12を、反射円偏光子としてTACフィルム側が視認側となるよう配置した。
次に、画像表示装置の光源をはずして、代わりに、A光源(オーム電機社製、LW100V57W55/2P)を配置することで、比較例11である光学システム101を作製した。このA光源は、発光のスペクトル(光源スペクトル)が、可視光域に極大値を2つ以上有さない光源である。
また、画像表示装置の光源を、市販の液晶テレビ(SONY社製、KDL46W900A)に使用されているバックライトに使用されているLED光源と、バックライト部材とを取り出して配置することで、実施例91である光学システム102を作製した。なお、この市販の液晶テレビのバックライトユニットは、波長450nmと、波長530nmと、波長630nmとに極大値(ピークトップ)を有するものである。また、この市販の液晶テレビのバックライトユニットにおいて、極大値が波長450nmのピーク、極大値が波長530nmのピーク、および、極大値が波長630のピークは、共に、半値全幅は60nm以下である。
なお、AxoScan、および、分光光度計(日本分光(株)製、V-550)に大型積分球装置(日本分光(株)製、ILV-471)を取り付けたものを用いて、コレステリック反射偏光子12(コレステリック液晶層1、2および3)の反射波長帯域は、このバックライトユニットの出射光の対応するピークの半値全幅の波長帯域以上で、かつ、各極大値の5%値となる波長帯域以下であることを確認した。
【0326】
【表5】
【0327】
【表6】
【0328】
<ヘッドマウントディスプレイの主像の輝度評価>
作製した光学システムにおける画像表示装置を取り外し、評価用光源を配置した。評価用光源としては、3種類のレーザーポインタ(波長:450nm、532nm、650nm)を用いた。評価用光源から直線偏光子(1002)へ光を入射し、本発明の光学システムの出射光の強度をパワーメーターで測定した上で、3波長それぞれにおける比較例2との強度比を算出し、その平均値を評価値とした。
A:強度比の平均値が1.1以上である。
B:強度比の平均値が1.05以上である。
C:強度比の平均値が1.0より大きいである。
D:強度比の平均値が1.0以下である。
【0329】
<ゴースト像の評価>
ヘッドマウントディスプレイを装着し、画像表示装置からの主像(図1の1101)以外に発生する、不要なゴースト像(図1の1102)を目視評価した。
AA:画像表示装置の輝度を高めてもゴースト像が視認されない。
A: ゴースト像は視認されないが、画像表示装置の輝度を高めるとわずかにゴースト像が視認される。
B:わずかにゴースト像が視認される。C:ゴースト像が視認される。
D:ゴースト像がはっきりと視認され、ヘッドマウントディスプレイとして許容できない。
結果を表2、表5および表6に併記する。
【0330】
比較例2である光学システム2は、複数層で構成される同じ2枚のフィルム(積層体102)を、それぞれ第1の1/4波長板および第2の1/4波長板として用い、その仮想的な遅相軸を90°ずらして配置した構成である。この場合、3つの波長のすべての点でもリターダンスがR1=-R2の関係にならず、その結果、ゴースト像抑制と高透過率が両立できなかった。
実施例1である光学システム3は、第1の1/4波長板として積層体103-1を、第2の1/4波長板として積層体103-2を用いることで、リターダンスをR1=-R2とした構成である。本構成では、ゴースト像抑制と高透過率が両立できることが確認できた。
【0331】
また、実施例81(コレステリック反射偏光子2)および実施例84(コレステリック反射偏光子5)、ならびに、実施例83(コレステリック反射偏光子4)および実施例89(コレステリック反射偏光子10)に示されるように、反射偏光子として、コレステリック液晶層に加え、位相差層を有するコレステリック反射偏光子を用いた場合には、ゴースト像視認性および主像の輝度の評価が、共に良いことが確認できた。
【符号の説明】
【0332】
10A 波長板
10B,10C,10D 積層型波長板
11,12,13,14 光学異方性層
1001 画像表示装置
1002 直線偏光子
1003 第1の1/4波長板
1004 ハーフミラー
1005 第2の1/4波長板
1006 反射偏光子
1007 直線偏光子
1008 反射円偏光子
1009 第3の1/4波長板
1101 主像
1102 ゴースト像
図1
図2
図3
図4
図5