IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 雪印メグミルク株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-糖吸収促進用組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032856
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】糖吸収促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20240305BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20240305BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240305BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20240305BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240305BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
A61K35/744
A61P3/08
A23L33/135
A23K10/18
C12N15/09 Z ZNA
C12N1/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008752
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2022208706の分割
【原出願日】2019-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】河野 通生
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅也
(57)【要約】
【課題】新規な糖吸収促進用組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属またはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する菌の菌体を有効成分とすることにより、腸管における糖吸収促進作用を有する飲食品および飼料を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リューコノストック(Leuconostoc)属に属する菌の菌体を有効成分とする腸管における糖吸収促進用組成物。
【請求項2】
リューコノストック(Leuconostoc)属に属する菌が、リューコノストック メセンテロイデス サブス ピーシーズ メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)及びリューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする請求項1に記載の腸管における糖吸収 促進用組成物。
【請求項3】
リューコノストック(Leuconostoc)属に属する菌が、リューコノストック メセンテロ イデス サブスピーシーズ メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp.mese nteroides)JCM6124及びリューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc ps eudomesenteroides)JCM9696から選択されるひとつ以上であることを特徴とする請求項2に記載の腸管における糖吸収促進用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の糖吸収促進用組成物を含む、糖吸収促進用飼料組成物、糖吸収促進用医薬組成物、又は糖吸収促進用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌および/またはビフィズス菌の菌体を有効成分とする腸管における糖吸収促進組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖質は消化吸収されて血中を巡り、全身の組織のエネルギー源となる。特に脳においては、血液中のグルコースが主なエネルギー源となるため、極端な糖質不足は、めまいやふらつき、集中力の欠如につながり、重篤な場合には意識障害を引き起こすこともある。
【0003】
血中の糖質不足は、例えば極端なダイエットや摂食障害等によって、糖質摂取量が恒常的に不足している場合、あるいは空腹時の運動等によって糖質消費過多になった場合に起こりうる。また、糖尿病患者が使用するインスリン製剤や経口血糖低下薬の副作用としても報告されている。
【0004】
腸管における糖の吸収不良もまた、糖質不足の原因となりうる。腸管での糖の取り込みは、主に腸上皮細胞に発現する単糖トランスポーターを介して行われる。小腸には、ナトリウム依存性の一方向性輸送体であるSGLT1と、促進性の双方向輸送体であるGLUT2およびGLUT5の3つの単糖トランスポーターが発現しており、腸管管腔側から体内への糖の取り込みに寄与している。これらの単糖トランスポーターの発現が阻害されると腸管からの糖の取り込みが抑制される。例えばトマト種子由来サポニンであるトマトシドAは、腸上皮細胞のSGLT1の発現を抑制することで糖の取り込みを抑制することが報告されている(特許文献1)。また、リンゴや玉ねぎに含まれるケルセチン、セロリやパセリに含まれるアピゲニンは、いずれもGLUT2とGLUT5の遺伝子発現を著しく低下させる作用を持ち、糖の取り込みを抑制することが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
腸管における糖の取り込みを促進することは、糖質不足を改善するための手段の一つであると考えられる。しかしながら、糖の取り込み抑制効果を示す食品や医薬組成物が数多く報告されている一方、糖の取り込みを促進する食品や医薬組成物はほとんど報告されていない。
【0006】
ところで、乳酸菌およびビフィズス菌は、古来より発酵食品の製造に使用される細菌であるが、近年の研究で様々な健康機能の増進に寄与することが明らかとなりつつある。乳酸菌培養物は、糖の吸収にも影響することが示唆されている。特許文献2では、乳酸菌を含む様々な微生物を用いて作る発酵乳ケフィアの抽出物(分子量1000以下)が、筋管細胞への糖の取り込み促進に寄与することが示されている。しかしながら、乳酸菌やビフィズス菌の菌体そのものが腸管での糖の取り込み促進に関与するか否かは、いずれの文献にも開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-192312号
【特許文献2】特許3813808号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Functional Foods(2017)、36、429-439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な腸管における糖吸収促進用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の新たな糖吸収促進用組成物を提供するものである。
<1>ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属またはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する菌の菌体を有効成分とする腸管における糖吸収促進用組成物。
<2>Lactobacillus属、Lactococcus属、Leuconostoc属またはBifidobacterium属に属する菌が、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリクス (Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ラクティス (Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)、リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム カテニュラタム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム シュードカテニュラタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする<1>に記載の腸管における糖吸収促進用組成物。
<3>Lactobacillus属、Lactococcus属、Leuconostoc属またはBifidobacterium属に属する菌が、Lactobacillus acidophilus JCM1132、Lactobacillus amylovorus JCM1126、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus JCM1002、Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis JCM1012、Lactobacillus helveticus JCM1120、Lactobacillus johnsonii JCM2012、Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM8130、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus reuteri JCM1112、Lactobacillus rhamnosus JCM1136、Lactococcus lactis subsp. cremoris JCM16167、Lactococcus lactis subsp. lactis JCM5805、Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides JCM6124、Leuconostoc pseudomesenteroides JCM9696、Bifidobacterium longum JCM1217、Bifidobacterium adolescentis JCM1275、Bifidobacterium bifidum JCM1255、Bifidobacterium breve JCM1192、Bifidobacterium catenulatum JCM1194、Bifidobacterium pseudocatenulatum JCM1200、Bifidobacterium pseudolongum JCM1205から選択されるひとつ以上であることを特徴とする<2>に記載の腸管における糖吸収促進用組成物。
<4> <1>~<3>のいずれか一つに記載の糖吸収促進用組成物を含む、糖吸収促進用飼料組成物、糖吸収促進用医薬組成物、又は糖吸収促進用食品組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属およびリューコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌およびビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属するビフィズス菌の菌体を有効成分とする腸管における糖吸収促進用組成物を提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】腸管上皮様に培養したヒト結腸癌由来細胞株Caco-2に、様々な乳酸菌またはビフィズス菌加熱死菌体を添加して、24時間培養後に各種グルコーストランスポーター(SGLT1、GLUT2、GLUT5)の遺伝子発現量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(乳酸菌およびビフィズス菌)
本発明の乳酸菌およびビフィズス菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属およびリューコノストック(Leuconostoc)属に分類される乳酸菌およびビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に分類されるビフィズス菌であればどのようなものでも用いることができる。
具体的には、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリクス (Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ラクティス (Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)、リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム カテニュラタム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム シュードカテニュラタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の乳酸菌は、Lactobacillus acidophilus JCM1132、Lactobacillus amylovorus JCM1126、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus JCM1002、Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis JCM1012、Lactobacillus helveticus JCM1120、Lactobacillus johnsonii JCM2012、Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM8130、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus reuteri JCM1112、Lactobacillus rhamnosus JCM1136、Lactococcus lactis subsp. cremoris JCM16167、Lactococcus lactis subsp. lactis JCM5805、Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides JCM6124、Leuconostoc pseudomesenteroides JCM9696、Bifidobacterium longum JCM1217、Bifidobacterium adolescentis JCM1275、Bifidobacterium bifidum JCM1255、Bifidobacterium breve JCM1192、Bifidobacterium catenulatum JCM1194、Bifidobacterium pseudocatenulatum JCM1200、Bifidobacterium pseudolongum JCM1205であることが好ましい。
上記の菌株は、理化学研究所 バイオリソースセンター(日本、茨城県、つくば市)等から入手することができる。
【0015】
(乳酸菌およびビフィズス菌の調製)
乳酸菌およびビフィズス菌は、各菌の培養の常法に従って培養し、所望の量を調製すればよい。調製の一例を以下に示す。ラクトバチルス属に属する乳酸菌はMRS培地(Difco)を用いて、ラクトコッカス属に属する乳酸菌はM17培地(Difco)を用いて、リューコノストック属に属する乳酸菌およびビフィドバクテリウム属に属するビフィズス菌は、1%グルコース含有GAMブイヨン(日水)を用いてそれぞれ培養し、得られた培養物を遠心分離により集菌することにより菌体を得る。得られた菌体をそのまま用いてもよいし、濃縮、乾燥、凍結乾燥処理に供した菌体を用いることもできる。菌体は加熱乾燥などにより死菌体にしたものを用いることもできる。
【0016】
(利用方法)
上記したとおり、本発明の組成物は濃縮、乾燥、凍結乾燥処理に供した菌体、加熱乾燥などにより得られる死菌体も有効成分とすることができることから、製剤、飲食品、飼料の原料として広く用いることができる。製剤、飲食品、又は飼料を培地として菌体を培養して、当該培地をそのまま製剤、飲食品、又は飼料として用いてもよく、または、他の培地で培養した菌体を製剤、飲食品、又は飼料に添加してもよい。
【0017】
本発明の組成物の投与対象は特に限定されず、ヒトに対して投与することができるが、投与対象はヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ又はウサギ等)であることもできる。投与対象がヒトである場合は、20歳未満の未成年、成人、又は65歳以上の高齢者などに投与することができる。
本発明の組成物の摂取量は、投与対象者の症状、年齢などを考慮してそれぞれ個別に決定されるが、通常成人の場合、一日あたり1-5000mg程度摂取すればよい。
【0018】
(糖吸収促進能の評価方法)
実施例に記載の方法で評価が可能である。
【0019】
以下、本発明の実施例をもとにさらに詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定して解釈されるものではない。
【実施例0020】
(実施例品1)乳酸菌およびビフィズス菌加熱死菌体
下記(1)の各供試菌を、ラクトバチルス属はMRS培地(Difco)、ラクトコッカス属はM17培地(Difco)、リューコノストック属およびビフィドバクテリウム属は1%グルコース含有GAMブイヨン(日水)にそれぞれ植菌し、37℃にて16時間静置培養を行った。培養物を、生理食塩水にて2回、滅菌水にて1回洗浄し、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体を凍結乾燥処理して菌体粉末を得た。菌体粉末を10mg/mlになるように滅菌PBS(-)で希釈し、80℃にて30分間加熱して加熱死菌体を得た。加熱死菌体は100μg/mlとなるように10%FBS(Gibco)、1×Non-essential Amino Acids(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)を含むDMEM(Sigma)で希釈した。
【0021】
(1)供試菌
ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の下記21株を供試菌とした。
Lactobacillus acidophilus JCM1132、Lactobacillus amylovorus JCM1126、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus JCM1002、Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis JCM1012、Lactobacillus helveticus JCM1120、Lactobacillus johnsonii JCM2012、Lactobacillus paracasei subsp. paracasei JCM8130、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus reuteri JCM1112、Lactobacillus rhamnosus JCM1136、Lactococcus lactis subsp. cremoris JCM16167、Lactococcus lactis subsp. lactis JCM5805、Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides JCM6124、Leuconostoc pseudomesenteroides JCM9696、Bifidobacterium longum JCM1217、Bifidobacterium adolescentis JCM1275、Bifidobacterium bifidum JCM1255、Bifidobacterium breve JCM1192、Bifidobacterium catenulatum JCM1194、Bifidobacterium pseudocatenulatum JCM1200、Bifidobacterium pseudolongum JCM1205
上記の菌株は、理化学研究所 バイオリソースセンター(日本、茨城県、つくば市)等から入手することができる。
【0022】
[試験例1]乳酸菌およびビフィズス菌によるグルコーストランスポーター発現促進効果に関する試験
実施例品1を以下の試験に供した。
Cell matrix type I-C(新田ゼラチン)でコラーゲンコートした24 well plate(BD)に、ヒト結腸癌由来細胞株Caco-2を5×10 cells/wellで播種し、10%FBS(Gibco)、1×Non-essential Amino Acids(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)を含むDMEM(Sigma)で培養した。2-3日ごとに培地交換しながら24日間培養し、腸上皮様に分化させた。24日後、細胞をPBSで1回洗浄し、試験群には各種菌体を100μg/mlで懸濁した培地を、コントロール群には菌体を含まない培地を添加して、24時間培養した。24時間後、細胞を冷PBS(-)で1回洗浄し、洗浄した細胞に、TRIzol Reagent(Invitrogen)300μlを入れ、細胞をピペッティングにより溶解した。細胞溶解液を1.5mlチューブに回収し、5分以上室温でインキュベートした後、RNA抽出操作実施まで-80℃で保存した。
【0023】
-80℃で保管しておいた細胞溶解液を室温に戻し、60μl(5分の1量)のクロロホルムを添加した。手で力強く振って撹拌した後、室温で3分間静置した。12,000×g、4℃で15分間遠心し、上層(水層)を別のチューブに移した。水層と等量のイソプロプロパノールを添加してピペッティングにより混合し、室温で10分間静置した。20,000×g、4℃で10分間遠心し、ペレットを残して上清を除去した。300μlの75%エタノールを添加し、転倒混和によってペレットを洗い、20,000×g、4℃で5分間遠心した。ペレットを残して上清を完全に除去し、30分間風乾した。30μlのNuclease-Free Waterでペレットを懸濁し、55℃で10分間インキュベートしてRNAを溶解した。溶解したRNA溶液を氷冷し、BioSpec-nano(島津製作所)により核酸濃度を測定した。
【0024】
RNAからのcDNA合成は、ReverTraAce(Toyobo)のプロトコールをスケールダウンしたものに従って実施した。逆転写に供する総RNA量は250ng/μlとした。合成したcDNAは、定量PCR(qPCR)に供するまで-20℃で保存した。
【0025】
qPCR反応試薬は、KAPA SYBR FAST Master Mix(2×)Universal(Kapa Biosystems)を用いた。qPCR装置はStepOnePlus(Applied Biosystems)を使用した。qPCR反応は、KAPA SYBR FAST Master Mix(2×)Universalの「ABI社製装置用プロトコール(Fastプログラム)」をスケールダウンしたものに従って実施した。テンプレートには20倍希釈したcDNAを1μl/well用いた。qPCRプログラムは、StepOnePlusシステムのFastプログラムを一部改変して使用した(反応液量:20μl/well→5μl/well、Denature Stepの反応時間:3秒→5秒、Annealing Stepの反応温度:すべて60℃)。
【0026】
SGLT1、GLUT2およびGLUT5遺伝子の相対発現量は、ΔΔCT法にて算出した。各遺伝子の相対発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの相対発現量にて補正した。試験に使用したプライマーの塩基配列は以下に示す。
【0027】
(試験結果)
腸上皮様に分化させたCaco-2細胞に、乳酸菌またはビフィズス菌21菌種のいずれかを添加して24時間培養した時の、グルコーストランスポーターの遺伝子発現量を図1に示した。SGLT1およびGLUT5については、すべての供試菌株が遺伝子発現を増加させた(Control群と比較して、SGLT1は約1.5-2.5倍、GLUT5は約1.2-2.7倍)。また、GLUT2についても、ラクトバチルス アミロボラス、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ パラカゼイ、ラクトバチルス ロイテリ、ラクトバチルス ラムノーサスの4菌種は遺伝子発現にほとんど影響を与えなかったが、それ以外の17菌種は遺伝子発現を増加させた(Control群と比較して約1.2-2.3倍)。したがって、乳酸菌およびビフィズス菌の菌体は、菌種によらず、単糖トランスポーターの遺伝子発現を増加させ、腸管における糖の取り込みを増加させることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属またはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する菌の菌体を有効成分とする腸管における糖吸収促進用組成物を提供することができる。
図1
【配列表】
2024032856000001.xml