(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032869
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】硬化膜の製造方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08F 16/12 20060101AFI20240305BHJP
C08F 38/00 20060101ALI20240305BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20240305BHJP
G03F 7/38 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08F16/12
C08F38/00
G03F7/11 503
G03F7/38 501
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010425
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2021557214の分割
【原出願日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019085991
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019186781
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】關藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】中杉 茂正
(72)【発明者】
【氏名】柳田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】平山 拓
(57)【要約】
【課題】高い膜密度、高い膜硬度および高いエッチング耐性を有する硬化膜の製造方法の提供。
【解決手段】(1)基板の上方に(i)組成物を適用する;(2)(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する;および(3)炭化水素含有膜にプラズマ、電子線および又はイオンを照射し、硬化膜を製造する方法。その硬化膜の使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含んでなる硬化膜の製造方法;
(1)基板の上方に(i)組成物を適用する;
(2)(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する;および
(3)炭化水素含有膜に電子線および又はイオンを照射し、硬化膜を形成する;
ただし、(i)組成物は(A)炭化水素含有化合物、および(B)溶媒を含んでなり;
(A)炭化水素含有化合物は下記式(A1)で表される構成単位(A1)を含んでなり;
【化1】
ここで、Ar
11はR
11で置換される又は置換されないC
6-60の炭化水素であり(ただしAr
11は縮合芳香環を含まない);
R
11はC
1-20の直鎖、分岐または環状のアルキル、アミノ、またはアルキルアミノであり;
R
12はI、BrまたはCNであり;
p
11は0~5の数であり、p
12は0~1の数であり、q
11は0~5の数であり、q
12は0~1の数であり、r
11は0~5の数であり、s
11は0~5の数であり;
p
11、q
11およびr
11が1つの構成単位内で同時に0になることはなく、
工程(3)において電子線を照射する場合、
加速電圧が2kV~200kV、または
照射量が100kGy~5,000kGyであり
工程(3)においてイオンを照射する場合、
照射するイオンの元素種が水素、ホウ素、炭素、窒素、希ガス、またはこれらのいずれかの混合であり、
加速電圧が3~1000kV、または
照射量が10
13~10
18ion/cm
2である。
【請求項2】
前記式(A1)が下記式(A1-1)、または(A1-3)である、請求項1に記載の硬化膜の製造方法;
【化2】
Ar
21はC
6-50の芳香族炭化水素であり、
R
21、R
22およびR
23はそれぞれ独立にC
6-50の芳香族炭化水素、水素、または他の構成単位に結合する単結合であり、
n
21は0または1の整数である;
ここで、Ar
21、R
21、R
22およびR
23は縮合芳香環を含まず、
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義はそれぞれ独立に上記と同様である;
【化3】
Ar
41はC
6-50の芳香族炭化水素であり、
R
41およびR
42はそれぞれ独立にC
1-10アルキルであり、R
41とR
42は炭化水素環を形成してもよく、
*41の位置の炭素原子は第4級炭素原子であり、
L
41はC
6-50のアリーレン、または他の構成単位に結合する単結合であり、
ここで、R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義はそれぞれ独立に上記と同様である;
好ましくは(A)炭化水素含有化合物の分子量は、500~6,000である。
【請求項3】
(i)組成物がさらに(C)界面活性剤または(D)添加剤を含んでなる請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法;
ここで、(D)添加剤は架橋剤、高炭素材、酸発生剤、ラジカル発生剤、光重合開始剤、基板密着増強剤またはこれらの混合物を含んでなる。
【請求項4】
(B)溶媒が有機溶媒を含んでなる請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法;
ここで、有機溶媒は、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらの混合物を含んでなる。
【請求項5】
(i)組成物を基準として、(A)炭化水素含有化合物の含有量が2~30質量%であるか、
(i)組成物を基準として、(B)溶媒の含有量が60~98質量%であるか、
(A)炭化水素含有化合物を基準として、(C)界面活性剤の含有量が0.01~10質量%であるか、または
(A)炭化水素含有化合物を基準として、(D)添加剤の含有量が0.05~100質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項6】
(A)炭化水素含有化合物がポリマーであり、前記ポリマーが合成されるときに使用されるアルデヒド誘導体が、合成に使用される全要素の和を基準として0~30mol%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法;。
【請求項7】
工程(3)で形成される硬化膜が、工程(2)で形成される炭化水素含有膜と比較して、膜密度が5~75%上昇し、または膜硬度が50~500%上昇することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項8】
;
工程(3)で形成される硬化膜のラマン分光分析(レーザー波長514.5nm測定)におけるGバンドとDバンドの強度比R=ID/IGが0.35~0.90である、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項9】
工程(2)で形成される炭化水素含有膜が工程(3)で形成される硬化膜より5~200%エッチングされやすく;または
工程(3)で形成される硬化膜の表面抵抗率が109~1016Ω□である、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項10】
工程(2)の(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する工程が、80~800℃、30~180秒間の加熱を含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項11】
工程(2)の(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する工程が、10~380nmの紫外光の照射を含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項12】
前記硬化膜の膜密度が1.3~3.2g/cm3であるか;または
前記硬化膜の膜硬度が1.5~20GPaである、請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12の少なくともいずれか一項に記載の硬化膜の上方にレジスト層を製造する方法。
【請求項14】
請求項13に記載のレジスト層を露光、現像し、レジストパターンを製造する方法。
【請求項15】
請求項1~14の少なくともいずれか一項に記載の方法を含んでなる、デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜の製造方法、およびその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造過程において、フォトレジスト(以下、簡略にレジストともいう)を用いたリソグラフィー技術による微細加工が一般的に行われている。微細加工の工程は、シリコンウェハ等の半導体基板上に薄いフォトレジスト層を形成し、その層を目的とするデバイスのパターンに対応するマスクパターンで覆い、その層をマスクパターンを介して紫外線等の活性光線で露光し、露光された層を現像することでフォトレジストパターンを得て、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板のエッチング処理することを含み、それにより上述のパターンに対応する微細凹凸を形成する。
半導体製造では単位面積あたりのトランジスタ量を増やすことでICチップの面積を削減し、それによって単位トランジスタあたりのコストを削減し続けているが、その方法はフォトレジストに照射する紫外線の波長を短くすることによって、より微細な加工を試みるものである。
【0003】
単一波長の紫外線(例えば、KrF光源248nm)を使用すること定在波の影響により、レジストパターンの寸法精度が低下するという問題が生じる。そこでこの問題を解決すべく、下層反射防止膜を設ける方法が広く検討されている。このような下層反射防止膜に要求される特徴として、反射防止効果が高いこと等が挙げられる。
さらなる微細加工を達成するため、ArF光源(193nm)や、EUV(13nm)を使用する方法が広く検討されている。この場合、レジストの膜厚が厚すぎるとレジストパターンが倒壊したり、現像残渣が生じやすい。そのため、レジストのみでは十分な保護膜の機能を得られないという問題がある。
そこでフォトレジストの下層に新たな保護膜を作成し、フォトレジストパターンを下層膜に転写し、この下層膜を保護膜として基板のエッチング処理する、マルチレイヤーという手法が一般的に広まっている。
【0004】
マルチレイヤーの保護膜として種々のものが存在するが、非晶質の炭素膜を保護膜として使用することがある。
【0005】
溶液を塗布、焼成して炭素膜の保護膜の機能を上げる方法として、一般的な焼成温度である450℃を超えた焼成に耐える炭素膜を塗布し、例えば600℃で焼成することが挙げられる。その他に炭素膜形成溶液の固形物中の炭素濃度を上げる事で保護膜の機能を向上させることができるが、溶解性等の他の性能とトレードオフすることが一般的である。
【0006】
このような技術状況の中、特許文献1は耐熱性および耐湿性に優れた膜を得るために、ポリチオフェン等の導電性高分子前駆体をプラズマ照射して重合させることで硬化膜を製造する技術を検討する。
特許文献2は成膜性、溶媒への溶解性、耐熱性を達成するために、単環系炭化水素が連結した化合物を合成し、下層膜としての用途を提供するが、膜形成の過程でプラズマ照射や電子線、イオン照射を行うことについては記載がない。
特許文献3はエッチング耐性に優れるレジスト下層膜を形成する方法について検討する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5746670号
【特許文献2】WO2018/115043国際公開公報
【特許文献3】特開2016-206676公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、いまだ改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる。
硬化膜の膜密度が不充分である;硬化膜の膜硬度が不充分である;ラマン分光分析の強度比R=ID/IGが0.35~0.9の硬化膜を得ることができない;ダイヤモンドライクカーボン構造等の固い構造を有する硬化膜を得ることができない;膜のエッチ耐性が不充分である;絶縁性の硬化膜を得ることができない;使用する組成物において、溶質の溶媒への溶解性が不充分である;組成物の塗布性が低い;プラズマや電子線処理の過程で膜が酸化する;プラズマや電子線処理の過程で膜の固形成分が飛散し過ぎることで膜が無くなる。
本発明者は、リソグラフィー工程における保護膜としての炭素膜は、膜密度を上げることで保護膜の機能を上げることができる可能性に着目した。そこで、ダイヤモンドと同じsp3炭素が多い炭素膜を作成することが有用であると考えた。また、同時にこのような成分が高い溶解性を具備することが有用であると考えた。
検討の結果、本願発明者らは、特定の炭化水素含有化合物から形成される膜に、プラズマや電子線等のエネルギーで処理することによって、sp3炭素が多く、高密度な膜を得ることができる製造方法を見出した。
【0009】
本発明は、上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、(1)基板の上方に(i)組成物を適用する;(2)(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する;および(3)炭化水素含有膜にプラズマ、電子線および又はイオンを照射し、硬化膜を形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による硬化膜の製造方法は下記工程を含んでなる;
(1)基板の上方に(i)組成物を適用する;
(2)(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する;および
(3)炭化水素含有膜に電子線および又はイオンを照射し、硬化膜を形成する;
ただし、(i)組成物は(A)炭化水素含有化合物、および(B)溶媒を含んでなり;
(A)炭化水素含有化合物は下記式(A1)で表される構成単位(A1)を含んでなり;
【化1】
ここで、Ar
11はR
11で置換される又は置換されないC
6-60の炭化水素であり(ただしAr
11は縮合芳香環を含まない);
R
11はC
1-20の直鎖、分岐または環状のアルキル、アミノ、またはアルキルアミノであり;
R
12はI、BrまたはCNであり;
p
11は0~5の数であり、p
12は0~1の数であり、q
11は0~5の数であり、q
12は0~1の数であり、r
11は0~5の数であり、s
11は0~5の数であり;
p
11、q
11およびr
11が1つの構成単位内で同時に0になることはなく、
工程(3)において電子線を照射する場合、
加速電圧が2kV~200kV、または
照射量が100kGy~5,000kGyであり
工程(3)においてイオンを照射する場合、
照射するイオンの元素種が水素、ホウ素、炭素、窒素、希ガス、またはこれらのいずれかの混合であり、
加速電圧が3~1000kV、または
照射量が10
13~10
18ion/cm
2である。
【0011】
また本発明は前記の硬化膜の上方にレジスト層を製造する方法を提供する。また本発明は、前記のレジスト層を露光し、現像し、レジストパターンを製造する方法を提供する。また本発明は、上記のいずれかの方法を含んでなるデバイスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化膜の製造方法を用いることで、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。
膜密度が高い硬化膜を得ることができる;膜硬度が高い硬化膜を得ることができる;ラマン分光分析の強度比R=ID/IGが0.35~0.9の硬化膜を得ることができる;ダイヤモンドライクカーボン構造を有する硬化膜を得ることができる;エッチ耐性が高い膜を得ることができる;絶縁性の硬化膜を得ることができる;使用する組成物において、溶質の溶媒への溶解性が良好である;組成物の塗布性が高い;プラズマや電子線処理の過程で膜が酸化することを防ぐことができる;プラズマや電子線処理の過程で膜の固形成分が飛散し過ぎることで膜が無くなってしまうことを防ぐことができる。
これらの有利な特性を有することが可能であるため、本発明にかかる硬化膜は微細なデバイスの製造工程に適用すること可能であり、好ましくは半導体、より好ましくはDRAMや3D NANDの製造に適用することが可能である、本発明の硬化膜は、ハードマスク用SOC(Spin on carbon)、芯材SOCとしても有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について詳細に説明すると以下の通りである。
【0014】
定義
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および又は」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される態様もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は(B)溶媒またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0015】
ここに本明細書の一部を構成するものとして、国際公開番号WO2018/115043、2018年10月30日に出願された国際特許出願番号PCT/EP2018/079621、2018年12月17日に出願された国際特許出願番号PCT/EP2018/085147、および2018年10月05日に出願された欧州特許出願番号18199921.3に記載された全ての記載内容を参照により援用する。
【0016】
組成物
本発明にかかる硬化膜の製造方法は、以下の工程を含んでなる;
(1)基板の上方に(i)組成物を適用する;(2)(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する;および(3)炭化水素含有膜にプラズマ、電子線および又はイオンを照射し、硬化膜を形成する。
(i)組成物は(A)炭化水素含有化合物、および(B)溶媒を含んでなり、(A)炭化水素含有化合物は後述の式(A1)で表される構成単位(A1)を含んでなる。(A)炭化水素含有化合物は構成単位(A1)を含んでいれば良く、他の構成単位を含むことは許容される。(A)炭化水素含有化合物が他の構成単位を含み、かつ(A)炭化水素含有化合物がポリマーである場合、構成単位(A1)と他の構成単位が共重合することが好適な一態様である。本発明の好ましい一態様として、(A)炭化水素含有化合物は実質的に構成単位(A1)のみからなる。ただし、末端の修飾は許容される。
ここで、前記の炭化水素含有膜は好ましくはレジスト下層膜であり、より好ましくはBARC(下層反射防止膜)またはSOCであり、さらに好ましくはSOCである。本発明の一形態として、ハードマスク用SOC、芯材SOCが挙げられる。
【0017】
(A)炭化水素含有化合物
本発明にかかる(A)炭化水素含有化合物は下記式(A1)で表される構成単位(A1)を含んでなる。
【化2】
【0018】
Ar11はR11で置換される又は置換されないC6-60の炭化水素である。ただしAr11は縮合芳香環を含まない。好適なAr11として、9,9-ジフェニルフルオレン、9-フェニルフルオレン、フェニル、C6-60直鎖ポリフェニレンおよびC6-60分岐ポリフェニレンが挙げられ、これらはそれぞれ独立にR11で置換されても置換されなくても良い。
R11はC1-20の直鎖、分岐または環状のアルキル、アミノ、またはアルキルアミノである。R11は好適にはC1-10の直鎖、分岐または環状のアルキル、またはアルキルアミノである。R11はより好適にはC1-3の直鎖アルキル、C1-3分岐アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはジメチルアミノである。
(A)炭化水素含有化合物が複数の構成単位(A1)を有するとき、R11はリンカーとしてAr11同士に介在して結合しても良い。1つのAr11を置換するR11は1つでも複数でも良く;好ましくは1つである。
1つの構成単位(A1)において、括弧で囲われた基(例えばp11が併記された括弧で囲われた基)はR11に結合してもよい。この場合、当該基とAr11をR11はリンカーとして介在して結合する。
本発明を限定する意図はなく、また本発明の範囲外であるが、Ar11がナフチルを含むような態様(例えば、ナフトール)は、本発明の工程において酸化されやすく、またプラズマ、電子線および又はイオンの照射による硬化膜の再構築が進み難いために不利であると考えられる。
【0019】
R12はI、BrまたはCNであり;好ましくはIまたはBrであり、より好ましくはIである。
p11は0~5の数である。ここで本発明の一態様として、(A)炭化水素含有化合物が2種類の(A1)を1つずつのみ構成として持つことがあり得る。Ar11が共にフェニルであり、1つAr11に係るp11=1であり、他方のAr11に係るp11=2という形態が有り得る。この場合、全体としてp11=1.5である。本明細書において、特に言及しない限り、数について同様である。
p11は好適には0、1、2または3であり;より好適には0、1または2であり;さらに好適には1である。p11=0も好適な本発明の一形態である。
p12は0~1の数であり;好ましくは0または1であり;より好ましくは1である。
q11は0~5の数であり;好適には0、1、2または3であり;より好適には0、1または2であり;さらに好適には1である。q11=0も好適な本発明の一形態である。
q12は0~1の数であり;好ましくは0または1であり;より好ましくは1である。
r11は0~5の数であり;好適には0、1、2または3であり;より好適には0、1または2であり;さらに好適には1である。r11=0も好適な本発明の一形態である。
s11は0~5の数であり;好適には0、1、2または3であり;より好適には0、1または2であり;さらに好適には1である。s11=0も好適な本発明の一形態である。
p11、q11およびr11が1つの構成単位内で同時に0になることはない。
【0020】
本発明にかかる構成単位(A1)は、より具体的に下記式(A1-1)、(A1-2)および又は(A1-3)で表される構成単位(A1-1)、(A1-2)および又は(A1-3)であっても良い。それぞれについて後述する。
本発明の好適な一態様として、構成単位(A1)は構成単位(A1-1)である。
【0021】
構成単位(A1-1)は式(A1-1)で表される。
【化3】
【0022】
Ar21はC6-50の芳香族炭化水素であり;好適にはフェニルである。Ar21がフェニルであることにより、(A)炭化水素含有化合物の溶媒への溶解性が確保でき、厚膜を形成できる等の有利な効果が期待できる。
R21、R22およびR23はそれぞれ独立にC6-50の芳香族炭化水素、水素、または他の構成単位に結合する単結合であり;好適にはフェニル、水素、または他の構成単位に結合する単結合であり;より好適にはフェニルまたは他の構成単位に結合する単結合であり;さらに好適にはフェニルである。
n21は0または1の整数であり;好適には0である。
Ar21、R21、R22およびR23は縮合芳香環を含まない。
R12、p11、p12、q11、q12、r11およびs11の定義や好適例はそれぞれ独立に上記と同様である。
【0023】
本発明を限定する意図はないが、構成単位(A1-1)を有する(A)炭化水素含有化合物の具体例として以下が挙げられる。
【化4】
【0024】
本発明のさらに好適な一態様として、構成単位(A1-1)は構成単位(A1-1-1)である。構成単位(A1-1-1)は式(A1-1-1)で表される。
【化5】
p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義や好適例はそれぞれ独立に上記と同様である。ただし、1≦p
11+q
11+r
11≦4を満たす。
【0025】
構成単位(A1-2)は式(A1-2)で表される。
【化6】
L
31およびL
32はそれぞれ独立に単結合またはフェニレンであり;好適には単結合である。
n
31、n
32、m
31およびm
32はそれぞれ独立に0~6の数であり;好適には0~3の整数である。n
31+n
32=5または6が好適な一態様である。L
31が単結合のとき、m
31=1である。L
32が単結合のとき、m
32=1である。
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義や好適例はそれぞれ独立に上記と同様である。
【0026】
本発明を限定する意図はないが、構成単位(A1-2)を有する(A)炭化水素含有化合物の具体例として以下が挙げられる。
【化7】
【0027】
構成単位(A1-3)は式(A1-3)で表される。
【化8】
Ar
41はC
6-50の芳香族炭化水素であり;好適にはフェニルである。
R
41およびR
42はそれぞれ独立にC
1-10アルキルであり;好適には直鎖C
1-6アルキルである。
R
41とR
42は炭化水素環を形成してもよく;好適には飽和炭化水素環を形成する。
*41の位置の炭素原子は第4級炭素原子である。
L
41はC
6-50のアリーレン、または他の構成単位に結合する単結合であり;好適にはフェニレンまたは他の構成単位に結合する単結合であり;より好適には他の構成単位に結合する単結合である。
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義および好適例はそれぞれ独立に上記と同様である
【0028】
本発明を限定する意図はないが、構成単位(A1-3)を有する(A)炭化水素含有化合物の具体例として以下が挙げられる。
【化9】
【0029】
本発明にかかる(A)炭化水素含有化合物がポリマーである場合、本発明の好適な一態様として、(A)炭化水素含有化合物が合成されるときに使用されるアルデヒド誘導体は、合成に使用される全要素の和を基準として、好適には0~30mol%である(より好適には0~15mol%、さらに好適には0~5mol%、よりさらに好適には0mol%)。当該アルデヒド誘導体の例として、ホルムアルデヒドが挙げられる。
アルデヒド誘導体を用いる代わりに、ケトン誘導体を使用することが本発明の好適な一態様である。
このように合成されたポリマーは主鎖に第2級炭素原子および第3級炭素原子が含まれない、または少ないという特徴を有し得る。本発明の好適な一態様として、前記ポリマーはその主鎖に、第2級炭素原子および第3級炭素原子を実質的に含まない。理論に拘束されないが、これによってポリマーが溶解性を確保しつつ、形成される膜の耐熱性の向上を期待できる。ただし末端修飾のようにポリマーの末端に第2級炭素原子および第3級炭素原子が含まれることは許容される。
【0030】
本発明の一形態として、(A)炭化水素含有化合物の分子量は500~6,000であり、より好ましくは500~4,000である。(A)炭化水素含有化合物がポリマーの場合、分子量は重量平均分子量(Mw)を用いる。本発明において、Mwはゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)にて測定することが可能である。同測定では、GPCカラムを摂氏40度、溶出溶媒テトラヒドロフランを0.6mL/分、単分散ポリスチレンを標準として用いることが好適な1例である。以下において同様である。
(i)組成物を基準として、好ましくは(A)炭化水素含有化合物が2~30質量%、より好ましくは5~30質量%;さらに好ましくは5~25質量%;よりさらに好ましくは10~25質量%である。
【0031】
(B)溶媒
本発明にかかる(i)組成物は(B)溶媒を含んでなる。(B)溶媒は、配合される各成分を溶解することができるものであれば特に限定されない。(B)溶媒は好適には有機溶媒を含んでなり、より好適には前記有機溶媒は炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらの混合物を含んでなる。
【0032】
(B)溶媒の具体例としては、例えば、水、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン、エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル(ジ-n-ブチルエーテル、DBE)、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アニソール、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸-n-ブチル(ノルマルブチルアセテート、nBA)、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、および1,3-プロパンスルトンが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(B)溶媒は実質的に上記の具体例から選ばれたもののみからなることが本発明の好適な一態様である。ただし、界面活性剤や添加剤の固形成分を溶解させるための溶媒が、(B)溶媒に少量含まれることは許容される。
【0033】
(B)溶媒として、好ましくはPGMEA、PGME、アニソール、EL、nBA、DBEまたはこれらのいずれかの混合物;より好ましくはPGMEA、PGMEまたはこれらの混合物;さらに好ましくはPGMEAである。2種を混合する場合、第1の溶媒と第2の溶媒の質量比が95:5~5:95であることが好適である(より好適には90:10~10:90、さらに好適には80:20~20:80)。
【0034】
他の層や膜との関係で、(B)溶媒が水を実体的に含まないことも一態様である。例えば、(B)溶媒全体に占める水の量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下である。(B)溶媒が水を含まない(0質量%)ことも好適な一形態である。
【0035】
(i)組成物を基準として、好ましくは(B)溶媒が60~98質量%;より好ましくは60~95質量%;さらに好ましくは70~95質量%;よりさらに好ましくは70~90質量%である。
【0036】
(C)界面活性剤
本発明にかかる(i)組成物は(C)界面活性剤をさらに含んでもよい。
界面活性剤を含むことで、塗布性を向上させることができる。
本発明において、(C)界面活性剤とは、上記の機能を有する化合物そのものをいう。その化合物が溶媒に溶解または分散されて、組成物に含有される場合もあるが、このような溶媒は(B)溶媒またはその他の成分として組成物に含有されることが好ましい。以降、組成物に含まれうる各種添加剤に対しても同様とする。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテル、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(住友3M)、メガファック(DIC)、スルフロン(旭硝子)、または有機シロキサン界面活性剤(例えばKP341、信越化学工業)が好ましい。
【0037】
(A)炭化水素含有化合物を基準として、好ましくは(C)界面活性剤が0.01~10質量%;より好ましくは0.05~10質量%;さらに好ましくは0.05~5質量%;よりさらに好ましくは0.05~1質量%である。
【0038】
(D)添加剤
本発明にかかる(i)組成物は(D)添加剤をさらに含んでもよい。(D)添加剤は、(A)、(B)および(C)とは異なる成分である。好ましくは、(D)添加剤は架橋剤、高炭素材、酸発生剤、ラジカル発生剤、光重合開始剤、基板密着増強剤またはこれらの混合物を含んでなる。より好ましくは、(D)添加剤は架橋剤、酸発生剤、ラジカル発生剤、光重合開始剤、基板密着増強剤またはこれらの混合物を含んでなる。より好ましい(D)添加剤として、架橋剤が挙げられる。本発明の別の態様として、(D)添加剤として高炭素材が挙げられる。
【0039】
架橋剤は、本発明による炭化水素含有膜を成膜する際の成膜性を上げ、上層膜(例えば珪素含有中間層およびレジスト)とのインターミキシングをなくし上層膜ヘの低分子成分の拡散をなくす、等の目的に有用である。
【0040】
架橋剤としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの二重結合を含む化合物を挙げることができる。これらは添加剤として用いてもよいが、ポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いられる。
前記諸化合物のうち、エポキシ化合物を例示すると、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが例示される。メラミン化合物を具体的に例示すると、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物及びその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物及びその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物及びその混合物が挙げられる。グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がメトキシメチル基化した化合物、又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。ウレア化合物としてはテトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1~4個のメチロール基がメトキシメチル基化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどが挙げられる。
架橋剤の分子量は、好ましくは100~480、より好ましくは200~400、さらに好ましくは300~380である。
【0041】
本発明を限定する意図はないが、架橋剤の具体例として、以下が挙げられる。
【化10】
【0042】
高炭素材は、1分子あたりに含まれる炭素原子が多い分子であり、本発明による炭化水素含有膜に残る固形成分である。高炭素材を加えることで、エッチ耐性を向上させることが可能である。高炭素材自体が膜化することができる必要はなく、(A)炭化水素含有化合物と共に炭化水素含有膜を形成することができれば良い。
【0043】
本発明を限定する意図はないが、高炭素材の具体例として、イソビオラントロン、2,7-ジ(1-ピレニル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]、9,9-ビス[4-[ジ(2-ナフチル)アミノ]フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-[N-(1-ナフチル)アニリノ]フェニル]フルオレン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、ベンズアントロン、ペリレン、コロネン、5,12-ナフタセンキノン、6,13-ペンタセンジオン、フラーレンC60、C60MC12(C60縮合 N-メチルピロリジン-m-C12-フェニル)、ICBA(indene-C60 bisadduct)、N,2-ジフェニル[60]フレロピロリジン、PCBM(Phenyl-C61-Butyric-Acid-Methyl Ester)、PCBB(Phenyl-C61-Butyric-Acid-Butyl Ester)、N-フェニル-2-ヘキシル[60]フレロピロリジン、が挙げられる。
【0044】
本発明において、(A)炭化水素含有化合物を基準として、(D)添加剤は好ましくは0.05~100質量%;より好ましくは0.05~25質量%;さらに好ましくは0.05~20質量%;よりさらに好ましくは0.05~15質量%;なおよりさらに好ましくは0.05~10質量%である。
【0045】
硬化膜の製造方法
本発明にかかる硬化膜の製造方法は、下記工程を含んでなる。
(1)基板の上方に(i)組成物を適用する;(2)(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する;および(3)炭化水素含有膜にプラズマ、電子線および又はイオンを照射し、硬化膜を形成する。
【0046】
本発明において(i)組成物を適用する方法として、スピナー、コーター等の塗布方法が挙げられる。本発明による(i)組成物は、基板上のパターンへの埋め込みに有利である。基板の上方とは基板と(i)組成物が直に接することが好適であるが、他の膜を介して塗布されても良い。
(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する方法として、紫外線照射および又は加熱が挙げられ、好適には加熱が挙げられる。
【0047】
好適には、紫外線照射の条件は、波長10~380nmの紫外線(より好適には10~200nm)を、100~10,000mJ/cm2の積算照射量で光照射することである。
【0048】
紫外線照射や加熱の雰囲気としては空気が好適である。本(i)組成物および又は本発明の炭化水素含有膜の酸化を防止するために酸素濃度を低減させることもできる。例えば、不活性ガス(N2、Ar、Heまたはその混合物)を雰囲気に注入することで、酸素濃度を1,000ppm以下(好適には100ppm以下)にしても良い。
【0049】
加熱により炭化水素含有膜を形成する場合、加熱条件として、加熱温度は80~800℃(好ましくは200~700℃、より好ましくは300~600℃)、加熱時間は30~180秒間(好ましくは30~120秒間)の範囲から適宜、選択される。理論に拘束されないが、高温の加熱を行うことで、例えばエチニル基のようなポリマー同士を架橋させる基による架橋を良好に進めることができ、硬化膜の高密度化に寄与することができる、と考えられる。
加熱は複数に分けて行う(ステップベイク)ことも可能である。加熱のみで炭化水素含有膜を形成してもよいが、紫外線照射との組合せも好適である。
【0050】
炭化水素含有膜にプラズマ、電子線および又はイオンを照射し、硬化膜を形成する。理論に拘束されないが、これらの照射により炭化水素含有膜の化学結合が解離ならびに再結合してダイヤモンドライクカーボン構造を有する硬化膜として再構築することで、硬度や密度の上昇に寄与すると考えられる。
本発明の一態様として、(i)組成物を塗布したすぐ後に、プラズマ、電子線および又はイオンの照射を行うことで、硬化膜を形成することも含まれる。すなわち、上記工程(2)と(3)が一つの操作(工程)の中でほぼ同時に進行する態様も、本発明に含まれる。
【0051】
プラズマ照射は、公知の方法を用いることができる。例えば、特許第5746670号(特許文献)、“Improvement of the wiggling profile of spin-on carbon hard mask by H2 plasma treatment”(J.Vac.Sci.Technol.B 26(1),Jan/Feb 2008年、p67-71、非特許文献)に記載の方法が挙げられる。
RF放電パワーは、1,000~10,000Wから選択でき、1,000~5,000Wがより好適である。
ガス雰囲気としては、N2、NF3、H2、希ガス、フルオロカーボンが挙げられ;好適には、Ar、Ne、NF3、H2、CF4、CHF3、CH2F2、CH3F、C4F6、C4F8などが挙げられる。これらのガスは2以上を混合して用いても良い。O2を含まないガス雰囲気を用いても本発明の効果を期待できることが、本発明の有利な点である。
時間は10~240秒から選択できる。
圧力は適宜選択できる。
【0052】
電子線照射は、公知の方法を用いることができる。例えば、“電子線照射装置の技術とその利用”(2012年7月・SEIテクニカルレビュー・第181号、p50-57、非特許文献)に記載の方法が挙げられる。
加速電圧としては、2~200kVから選択できる。
照射量は100~5,000kGyから選択できる。
電子線照射は加熱しながら行う態様が好適である。この際、温度は80~800℃(好ましくは200~700℃、より好ましくは300~600℃)から選択できる。
イオン照射は、公知の方法を用いることができる。例えば、“Raman spectroscopy and microhardness of ion-implanted a-C:H-films”(Ceramics Int.26(1),2000年、p29-32、非特許文献)に記載の方法が挙げられる。本発明のイオン照射の好適な一態様は、イオン注入である。
照射するイオンの元素種としては、水素、ホウ素、炭素、窒素、希ガスが挙げられ;好適にはホウ素、炭素、窒素、ネオン、アルゴンなどが挙げられ;更に好適には炭素、窒素などが挙げられる。これらのガスは2以上を混合して用いても良い。
加速電圧としては3~1000kVから選択できる。加速電圧はより好適には5~750kVであり、さらに好適には10~500kVである。
照射量は1013~1018ion/cm2から選択できる。照射量はより好適には5×1013~5×1017ion/cm2であり、さらに好適には1014~1017ion/cm2である。
イオン照射は装置チャンバー内を加熱しながら行うこともできる。この際、温度は500℃以下を選択できる。プラズマ照射ならびに電子線照射後に加熱する場合、加熱条件として、加熱温度は80~800℃(好ましくは200~700℃、より好ましくは300~600℃)、加熱時間は30~180秒間(好ましくは30~120秒間)の範囲から適宜、選択される。理論に拘束されないが、プラズマ並びに電子線照射後に高温の加熱を行うことで、ダングリングボンドを結合させ、硬化膜の高密度化に寄与することができる、と考えられる。
【0053】
照射装置として、Tactras Vigus、EB-ENGINE(浜松ホトニクス)、EXCEED2300AH(日新イオン機器)が使用可能である。本発明の効果を奏するように装置を選択すること、および条件を設定することが可能である。
【0054】
本発明の一形態として、前記工程(3)で形成される硬化膜は、工程(2)で形成される炭化水素含有膜と比較して、膜密度が5~75%上昇し、および又は膜硬度が50~500%上昇するという有利な効果を有することが可能である。
また、工程(3)で形成される硬化膜のラマン分光分析(レーザー波長514.5nm測定)におけるGバンドとDバンドの強度比R=ID/IGが0.35~0.90となることが可能であり、理論に拘束されないがダイヤモンドライクカーボン構造を有することが可能と考えられる。
また、工程(2)で形成される炭化水素含有膜は前記工程(3)で形成される硬化膜よりも5~200%(好適には5~100%、より好適には5~50%、さらに好適には10~50%)エッチングされやすい(後者の硬化膜がエッチング耐性がより高い)と考えられる。
好ましくは工程(3)で形成される硬化膜の表面抵抗率は109~1016Ω□(より好ましくは1012~1016Ω□、さらに好ましくは1013~1016Ω□)である。すなわち、(A)炭化水素含有化合物は導電性高分子前駆体ではなく、本発明にかかる硬化膜は導電性高分子膜ではない。
【0055】
本発明の一形態として、以下の特徴を持つ炭素含有硬化膜が提供される。
膜密度が1.3~3.2g/cm3;
膜硬度が1.5~20GPa;および又は
ラマン分光分析(レーザー波長514.5nm測定)におけるGバンドとDバンドの強度比R=ID/IGが0.35~0.90。
好ましくは上記の炭素含有硬化膜は、プラズマ、電子線および又はイオン照射することで形成される。より好ましくはこの膜は、膜の表面抵抗率は109~1016Ω□(Ohm square)である。このような炭素含有硬化膜を形成するための組成物として、前記(i)組成物を用いることが本発明のより好適な一態様である。
【0056】
SOCとして知られる膜として、“The Role of Underlayers in EUVL”(Journal of Photopolymer Science and Technology Vol.31、Number 2, p209-214、2018年)に記載があるが、膜密度は1.05~1.32g/cm3程度に過ぎなかった。
本発明による硬化膜や炭素含有硬化膜は、好適には膜密度が1.3~3.2g/cm3(より好適には1.4~3.2g/cm3、さらに好適には1.5~2.8g/cm3)である。硬化膜の膜密度が高いことがエッチ耐性の上昇に寄与すると考えられる。また硬化膜の応力が強すぎると基板にストレスがかかり不利と考えられる。
膜密度の測定は、例えば実施例に記載の方法を使用することが可能であり、これに公知の方法を適宜組合せて調整することが可能である。
【0057】
本発明にかかる膜は、好ましくは膜硬度が1.5~20GPa(より好ましくは1.7GPa~20GPa、さらに好ましくは2.0GPa~15GPa、よりさらに好ましくは2.0GPa~10GPa)である。
膜硬度の測定は、例えば実施例に記載の方法を使用することが可能であり、これに公知の方法を適宜組合せて調整することが可能である。
【0058】
本発明にかかる膜は、好ましくはラマン分光分析(レーザー波長514.5nm測定)におけるGバンドとDバンドの強度比R=ID/IGが0.35~0.90(より好ましくは0.40~0.90、さらに好ましくは0.40~0.80、よりさらに好ましくは0.45~0.70)である。
ラマン分光分析は、例えば実施例に記載の方法を使用することが可能であり、これに公知の方法(例えば、特許第3914179号(特許文献))を適宜組合せて調整することが可能である。
【0059】
<レジスト膜、レジストパターンの製造方法>
本発明にかかる方法で製造された硬化膜の上方にレジスト膜を製造することも可能である。
本発明にかかるレジスト膜を製造する方法は、
(4)前記硬化膜の上方にレジスト組成物を適用すること;
(5)レジスト組成物を加熱し、レジスト層を形成すること;
を含んでなる。
さらに本発明は、前記レジスト膜からレジストパターンを製造することも可能である。本発明にかかるレジストパターンを製造する方法は、
(6)レジスト層を露光すること;
任意に(7)レジスト層を露光後加熱すること;および
(8)レジスト層を現像すること
を含んでなる。
明確性のために記載すると、()の中の数字は、順番を意味する。例えば、(5)工程の前に、(4)の工程が行われる。
【0060】
以下、本発明によるレジスト膜、レジストパターンの製造方法の一態様について説明する。
基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、シリコンウェハ基板、ガラス基板およびITO基板等)の上方に、適当な方法によりレジスト組成物を適用する。ここで、本発明において、上方とは、直上に形成される場合および他の層を介して形成される場合を含む。例えば、基板の直上に、平坦化膜やレジスト下層膜を形成し、その直上にレジスト組成物が適用されていてもよい。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられる。塗布後、加熱することによりレジスト層が形成される。(5)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは60~140℃、より好ましくは90~110℃、である。ここでの温度は加熱雰囲気、例えばホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~900秒間、より好ましくは60~300秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【0061】
レジスト層の膜厚は、目的に応じて選択される。レジスト層の厚さを1μmより大きくすることも可能である。
【0062】
レジスト層に、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光に用いられる光の波長は特に限定されないが、波長が190~440nmの光で露光することが好ましい(より好ましくは240~370nm)。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(436nm)等を使用することができる。波長は、より好ましくは240~440nm、さらに好ましくは360~440nmであり、よりさらに好ましくは365nmである。これらの波長は±1%の範囲が許容される。
【0063】
露光後、露光後加熱(post exposure bake、以下PEBということがある)を任意に行っても良い。(7)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。露光後加熱の温度は好ましくは80~160℃、より好ましくは105~115℃であり、加熱時間は30~600秒間、好ましくは60~200秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【0064】
PEB後、現像液を用いて現像が行なわれる。現像法としては、パドル現像法、浸漬現像法、揺動浸漬現像法など従来フォトレジストの現像の際用いられている方法を用いることができる。また現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどの無機アルカリ、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミンなどの有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などの第四級アミンなどを含む水溶液が用いられ、好ましくは2.38質量%TMAH水溶液である。現像液に、さらに界面活性剤を加えることもできる。現像液の温度は好ましくは5~50℃、より好ましくは25~40℃、現像時間は好ましくは10~300秒、より好ましくは30~60秒である。現像後、必要に応じて、水洗またはリンス処理を行うこともできる。
【0065】
本発明の一形態として、製造されたレジストパターンをマスクとして、下地となる各種基板をパターニングすることもできる。レジストパターンをマスクとして直接基板を加工しても良いし、中間層を介して加工しても良い。例えば、レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をパターニングし、レジスト下層膜パターンをマスクとして基板をパターニングしても良い。加工には、公知の方法が使用できるが、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などが使用できる。パターニングされた基板に、電極等を配線することも可能である。
【0066】
基板
本発明において基板としては、半導体ウェハ、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等が挙げられる。基板は非加工基板(例えばベアウェーハ)であっても、被加工基板(例えばパターン基板)であっても良い。基板は複数の層が積層されることで構成されても良い。好ましくは、基板の表面は半導体である。半導体は酸化物、窒化物、金属、これらのいずれかの組合せのいずれから構成されていても良い。また、好ましくは、基板の表面はSi、Ge、SiGe、Si3N4、TaN、SiO2、TiO2、Al2O3、SiON、HfO2、T2O5、HfSiO4、Y2O3、GaN、TiN、TaN、Si3N4、NbN、Cu、Ta、W、Hf、Alからなる群から選ばれる。
【0067】
デバイス
本発明による基板を、さらに加工することでデバイスを製造することができる。デバイスとしては、半導体素子、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられる。デバイスとは、好ましくは半導体である。これらの加工は公知の方法を使用することができる。デバイス形成後、必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続し、樹脂でパッケージングすることができる。このパッケージングされたもの一例が半導体である。
【0068】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0069】
<P0の合成>
撹拌器、リービッヒ冷却器、加熱装置、窒素導入管および温度制御装置を取り付けた反応器を準備する。反応器に9-フルオレノン(200部、東京化成工業)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(2333部、大阪ガスケミカル)およびジクロロメタン(10430部)を加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら40℃に保持する。その後、ジクロロメタン(200部)に溶解させたトリフルオロメタンスルホン酸(92部、三菱マテリアル電子化成)と3-メルカプトプロピオン酸(6部、東京化成工業)を反応器にゆっくりと加えて、40℃に保持して攪拌し4時間反応させる。反応終了後、その溶液を室温に戻し、反応溶液に水を加え、過剰な9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンをろ過により取り除き、ジクロロメタンで洗浄する。ジクロロメタン溶液を十分な水洗によりトリフルオロメタンスルホン酸を取り除く。その後、40℃、10mmHgでジクロロメタンを留去し、P0(2111部)を得る。GPC(テトラヒドロフラン)により分子量を測定すると、数平均分子量Mn=533Da、重量平均分子量Mw=674Da、分子量分布(Mw/Mn)=1.26である。
【0070】
<合成例1:P1の合成>
撹拌器、リービッヒ冷却器、加熱装置、窒素導入管および温度制御装置を取り付けた反応器を準備する。反応器にP0(350部)、炭酸カリウム(562部)、アセトン(1414部)を加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら56℃に保持する。その後、アリルブロミド(500部、東京化成工業)を反応器にゆっくりと加えて、56℃に保持して攪拌し3時間反応させる。反応終了後、その溶液を室温に戻し、過剰な炭酸カリウムおよび塩をろ過により取り除き、アセトンでその沈殿物を洗浄する。その後、40℃、10mmHgでアセトンを留去する。得られた固形物を酢酸エチル(3000部)に溶解させ、その酢酸エチル溶液を十分に水洗し、金属不純物を取り除く。40℃、10mmHgで酢酸エチルを留去後、得られた固形分をアセトン(600部)に溶解させる。その後、そのアセトン溶液をn-ヘプタン(6000部)中に入れ、固形物をろ過し、100℃、10mmHgの条件で乾燥することにより、P1(345部)を得る。GPC(テトラヒドロフラン)により分子量を測定すると、数平均分子量Mn=671Da、重量平均分子量Mw=833Da、分子量分布(Mw/Mn)=1.32である。
【化11】
【0071】
<合成例2:P2の合成>
撹拌器、リービッヒ冷却器、加熱装置、窒素導入管および温度制御装置を取り付けた反応器を準備する。反応器にP0(200部)、炭酸カリウム(323部)、アセトン(616部)を加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら56℃に保持する。その後、3-ブロモ-1-プロピン(278部)を反応器にゆっくりと加えて、56℃に保持して攪拌し3時間反応させる。反応終了後、その溶液を室温に戻し、過剰な炭酸カリウムおよび塩をろ過により取り除き、アセトンでその沈殿物を洗浄する。その後、40℃、10mmHgでアセトンを留去する。得られた固形物を酢酸エチル(820部)に溶解させ、その酢酸エチル溶液を十分に水洗し、金属不純物を取り除く。40℃、10mmHgで酢酸エチルを留去後、得られた固形分(185部)をアセトン(185部)に溶解させる。その後、メタノール(1850部)をそのアセトン溶液に入れ、固形物をろ過し、100℃、10mmHgの条件で乾燥することにより、P2(76部)を得る。GPC(テトラヒドロフラン)により分子量を測定すると、Mn=789Da、Mw=1,054Da、Mw/Mn=1.34である。
【化12】
【0072】
組成物1の調製例1
P1(13.9部)およびメガファックR-41(0.1部、DIC社)を、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)(86部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルター(Merck Millipore、SLFG025NS)で濾過し、組成物1を得る。
【0073】
組成物2の調製例2
P2(11.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(88部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物2を得る。
【0074】
組成物3の調製例3
以下に示される構造であるP3(13.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(86部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物3を得る。
【化13】
【0075】
組成物4の調製例4
以下に示される構造であるP4(14.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(85部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物4を得る。
【化14】
【0076】
組成物5の調製例5
以下に示される構造であるP5(14.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(85部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物5を得る。
【化15】
【0077】
組成物6の調製例6
以下に示される構造であるP6(13.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(86部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物6を得る。
【化16】
【0078】
組成物7の調製例7
上記に記載のP0(24.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(75部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物7を得る。
【0079】
組成物8の調製例8
以下に示される構造であるP7(12.9部)、以下に示される構造であるP8(1部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(87部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物8を得る。
【化17】
【化18】
【0080】
組成物9の調製例9
P2(8.9部)、以下に示される構造であるP9(5部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(85部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物9を得る。
【化19】
【0081】
組成物10の調製例10
P2(2.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(97部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物10を得る。
【0082】
組成物11の調製例11
P2(3.9部)およびメガファックR-41(0.1部)を、PGMEA(96部)に添加し、1時間室温で攪拌する。溶質が完全に溶解していることを、目視で確認する。
0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、組成物11を得る。
【0083】
炭化水素含有膜の形成
CLEAN TRACK ACT 12(東京エレクトロン)を用いて、Siベアウェハーに、各組成物を1,500rpmで塗布する。このウェハを空気雰囲気下250℃60秒ベークし、さらに窒素雰囲気下450℃120秒間でベークする。これにより組成物から炭化水素含有膜を得る。
【0084】
硬化膜の形成(プラズマ処理の場合)
上記の炭化水素含有膜が形成されたウェハをTactras Vigus(東京エレクトロン)で2分間プラズマ処理する。
【0085】
硬化膜の形成(電子線処理の場合)
上記の炭化水素含有膜が形成されたウェハをEB-ENGINE(浜松ホトニクス)で400℃に加熱しながら、1MGyの電子線照射をする。
【0086】
硬化膜の形成(イオン照射処理の場合)
上記の炭化水素含有膜が形成されたウェハを10kVの加速電圧で1016ion/cm2の炭素イオン照射をする。
【0087】
膜厚の測定
ウェハー断面を作成し、JSM-7100F(日本電子)でSEM写真を得て、膜厚を測定する。
【0088】
膜密度の測定
全自動多目的X線回折装置SmartLab(リガク)を用いて、高分解能X線反射率測定にて対陰極:Cu、出力:45kV×200mA、解析範囲:0.2~3.0°、測定ステップ0.002°シミュレーションの曲線を得られたX線反射率曲線にフィッティングさせることで、膜密度を算出する。
【0089】
膜硬度の測定
ENT-2100押し込み硬さ試験機(エリオニクス)を用いて、押し込み荷重を10μN、測定回数を100回、ステップ間隔を100msで膜硬度を算出する。
【0090】
I
D
/I
G
の測定
トリプル・レーザラマン分光測定装置RAMANOR T64000(ホリバ・ジョバンイボン)を用いて、レーザー波長514.5nmでラマン分光分析におけるID/IGを測定する。
約900~1800cm-1に現れるブロードなピークをガウス関数にて1590cm-1付近のGバンド、及び1350cm-1付近のDバンド、1100cm-1付近のバンドの3つに分離してDバンドとGバンドの強度を算出する。それによってID/IGを算出する。
【0091】
エッチング耐性の測定
エッチング装置NE-5000N(ULVAC)を用いてチャンバー圧力を0.17mT、RFパワーを200W、ガス流量をCF4(50sccm)、Ar(35sccm)、O2(4sccm)、時間30秒でドライエッチングする。
エッチング前の膜厚とエッチング後の膜厚を上述の「膜厚の測定」に記載のように測定し、前者と後者の差分を得て、単位時間あたりの膜厚の減少量を算出する。
【0092】
評価結果
評価結果を以下の表1に記載する。
【表1】
上記表中、
組成物1~9については、「処理前」はプラズマ処理前の炭化水素含有膜を、「処理後」はプラズマ処理後の硬化膜を評価する結果を意味する。
組成物10については、「処理前」は電子線照射前の炭化水素含有膜を、「処理後」は電子線照射後の硬化膜を評価する結果を意味する。
組成物11については、「処理前」はイオン照射前の炭化水素含有膜を、「処理後」はイオン線照射後の硬化膜を評価する結果を意味する。
【0093】
比較例、炭化水素含有膜のエッチング耐性の評価
組成物2のプラズマ処理前の炭化水素含有膜のエッチング耐性を上述と同様に測定する。エッチング耐性は204nm/minである。
組成物2から得る炭化水素含有膜(プラズマ処理前)と硬化膜(プラズマ処理後)のエッチング耐性を比較すると、前者が約24%エッチングされやすい。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含んでなる硬化膜の製造方法;
(1)基板の上方に(i)組成物を適用する;
(2)(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する;および
(3)炭化水素含有膜に電子線
又はイオンを照射し、硬化膜を形成する;
ただし、(i)組成物は(A)炭化水素含有化合物、および(B)溶媒を含んでなり;
(A)炭化水素含有化合物は下記式(A1)で表される構成単位(A1)を含んでなり;
【化1】
ここで、Ar
11はR
11で置換される又は置換されないC
6-60の炭化水素であり(ただしAr
11は縮合芳香環を含まない);
R
11はC
1-20の直鎖、分岐または環状のアルキル、アミノ、またはアルキルアミノであり;
R
12はI、BrまたはCNであり;
p
11は0~5の数であり、p
12は0~1の数であり、q
11は0~5の数であり、q
12は0~1の数であり、r
11は0~5の数であり、s
11は0~5の数であり;
p
11、q
11およびr
11が1つの構成単位内で同時に0になることはなく、
工程(3)において電子線を照射する場合、
加速電圧が2kV~200kV、または
照射量が100kGy~5,000kGyであり
工程(3)においてイオンを照射する場合、
照射するイオンの元素種が水素、ホウ素、炭素、窒素、希ガス、またはこれらのいずれかの混合であり、
加速電圧が3~1000kV、または
照射量が10
13~10
18ion/cm
2である。
【請求項2】
前記式(A1)が下記式(A1-1)、または(A1-3)である、請求項1に記載の硬化膜の製造方法;
【化2】
Ar
21はC
6-50の芳香族炭化水素であり、
R
21、R
22およびR
23はそれぞれ独立にC
6-50の芳香族炭化水素、水素、または他の構成単位に結合する単結合であり、
n
21は0または1の整数である;
ここで、Ar
21、R
21、R
22およびR
23は縮合芳香環を含まず、
R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義はそれぞれ独立に上記と同様である;
【化3】
Ar
41はC
6-50の芳香族炭化水素であり、
R
41およびR
42はそれぞれ独立にC
1-10アルキルであり、R
41とR
42は炭化水素環を形成してもよく、
*41の位置の炭素原子は第4級炭素原子であり、
L
41はC
6-50のアリーレン、または他の構成単位に結合する単結合であり、
ここで、R
12、p
11、p
12、q
11、q
12、r
11およびs
11の定義はそれぞれ独立に上記と同様である;
好ましくは(A)炭化水素含有化合物の分子量は、500~6,000である。
【請求項3】
(i)組成物がさらに(C)界面活性剤または(D)添加剤を含んでなる請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法;
ここで、(D)添加剤は架橋剤、高炭素材、酸発生剤、ラジカル発生剤、光重合開始剤、基板密着増強剤またはこれらの混合物を含んでなる。
【請求項4】
(B)溶媒が有機溶媒を含んでなる請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法;
ここで、有機溶媒は、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらの混合物を含んでなる。
【請求項5】
(i)組成物を基準として、(A)炭化水素含有化合物の含有量が2~30質量%であるか、
(i)組成物を基準として、(B)溶媒の含有量が60~98質量%であるか、
(A)炭化水素含有化合物を基準として、(C)界面活性剤の含有量が0.01~10質量%であるか、または
(A)炭化水素含有化合物を基準として、(D)添加剤の含有量が0.05~100質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項6】
(A)炭化水素含有化合物がポリマーであり、前記ポリマーが合成されるときに使用されるアルデヒド誘導体が、合成に使用される全要素の和を基準として0~30mol%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項7】
工程(3)で形成される硬化膜が、工程(2)で形成される炭化水素含有膜と比較して、膜密度が5~75%上昇し、または膜硬度が50~500%上昇することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項8】
工程(3)で形成される硬化膜のラマン分光分析(レーザー波長514.5nm測定)におけるGバンドとDバンドの強度比R=ID/IGが0.35~0.90である、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項9】
工程(2)で形成される炭化水素含有膜が工程(3)で形成される硬化膜より5~200%エッチングされやすく;または
工程(3)で形成される硬化膜の表面抵抗率が109~1016Ω□である、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項10】
工程(2)の(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する工程が、80~800℃、30~180秒間の加熱を含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項11】
工程(2)の(i)組成物から炭化水素含有膜を形成する工程が、10~380nmの紫外光の照射を含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項12】
前記硬化膜の膜密度が1.3~3.2g/cm3であるか;または
前記硬化膜の膜硬度が1.5~20GPaである、請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12の少なくともいずれか一項に記載の硬化膜の上方にレジスト層を製造する方法。
【請求項14】
請求項13に記載のレジスト層を露光、現像し、レジストパターンを製造する方法。
【請求項15】
請求項1~14の少なくともいずれか一項に記載の方法を含んでなる、デバイスの製造方法。