(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000329
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H04B7/06 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099060
(22)【出願日】2022-06-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
2.SIMULINK
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発-集積電子デバイスによる大容量映像の非圧縮低電力無線伝送技術の研究開発-」委託研究、産業技術力強化法17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 恭弥
(57)【要約】
【課題】RF信号に影響を与えることなくRF信号の振幅と位相差情報を得て補正を行う無線通信装置を提供する。
【解決手段】複数の無線送信機を備えた無線通信装置であって、前記無線送信機の各々は、局部発振信号と中間周波数信号とが混合された送信信号を、RF信号とイメージ信号とに分離する分離回路と、前記イメージ信号と、隣接する他の前記無線送信機の分離回路で分離された隣接イメージ信号との位相差及び前記イメージ信号並びに前記隣接イメージ信号の電圧振幅を用いて、自機のRF信号と隣接する他の前記無線送信機のRF信号との位相差を検出し、検出した位相差が所望の位相差となるよう、前記分離回路の前段に設けられる移相器及び増幅器を制御する制御回路と、を備える、無線通信装置が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線送信機を備えた無線通信装置であって、
前記無線送信機の各々は、
局部発振信号と中間周波数信号とが混合された送信信号を、RF信号とイメージ信号とに分離する分離回路と、
前記イメージ信号と、隣接する他の前記無線送信機の分離回路で分離された隣接イメージ信号との位相差及び前記イメージ信号並びに前記隣接イメージ信号の電圧振幅を用いて、自機のRF信号と隣接する他の前記無線送信機のRF信号との位相差を検出し、検出した位相差が所望の位相差となるよう、前記分離回路の前段に設けられる移相器及び増幅器を制御する制御回路と、
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
前記移相器は、前記局部発振信号の位相を変化させ、前記増幅器は前記中間周波数信号を増幅する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記移相器は、前記中間周波数信号の位相を変化させ、前記増幅器は前記中間周波数信号を増幅する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記移相器は、前記送信信号の位相を変化させ、前記増幅器は前記送信信号を増幅する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記RF信号の送信中に前記移相器及び前記増幅器を制御する、請求項1~4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記分離回路によって分離された前記イメージ信号を所定の周波数までダウンコンバートする周波数変換回路をさらに備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記分離回路は、前記RF信号の周波数で整合させた伝送線路及びキャパシタと、前記イメージ信号の周波数で整合させた伝送線路及びキャパシタと、を備える、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記RF信号の周波数帯はミリ波帯である、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記無線送信機の各々はアレー状に配置されている、請求項1に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレー無線送信機を用いてビームステアリングを実現するためには、複数の送信機の高周波(RF)信号が、それぞれ決まった振幅及び時間遅延を持って出力される必要がある。時間遅延は位相シフトで代替することができる。そのため、各送信機の出力RF振幅と位相差情報とを取得し、それらを制御する必要がある。これまでに、39GHz帯送受信機の送信機出力パスをスイッチで切り替えて、信号を受信機に入力し、RF信号の振幅と位相を検出する方法が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Y. Wang et al., “A 39-GHz 64-Element Phased-Array Transceiver With Built-In Phase and Amplitude Calibrations for Large-Array 5G NR in 65-nm CMOS,” IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 55, no. 5: pp. 1249-1269, May 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、テラヘルツ波のような高い周波数では回路素子の損失が大きいため、RF信号を分岐する構造をRFパスに配置することは適切ではない。また、非特許文献1で開示されている構成では、送信機出力の補正中は通信を行うことができない。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、RF信号に影響を与えることなくRF信号の振幅と位相差情報を得て補正を行う無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る無線通信装置は、複数の無線送信機を備えた無線通信装置であって、前記無線送信機の各々は、局部発振信号と中間周波数信号とが混合された送信信号を、RF信号とイメージ信号とに分離する分離回路と、前記イメージ信号と、隣接する他の前記無線送信機の分離回路で分離された隣接イメージ信号との位相差及び前記イメージ信号並びに前記隣接イメージ信号の電圧振幅を用いて、自機のRF信号と隣接する他の前記無線送信機のRF信号との位相差を検出し、検出した位相差が所望の位相差となるよう、前記分離回路の前段に設けられる移相器及び増幅器を制御する制御回路と、を備える。
【0007】
本開示の第2態様に係る無線通信装置は、第1態様に係る無線通信装置であって、前記移相器は、前記局部発振信号の位相を変化させ、前記増幅器は前記中間周波数信号を増幅する。
【0008】
本開示の第3態様に係る無線通信装置は、第1態様に係る無線通信装置であって、前記移相器は、前記中間周波数信号の位相を変化させ、前記増幅器は前記中間周波数信号を増幅する。
【0009】
本開示の第4態様に係る無線通信装置は、第1態様に係る無線通信装置であって、前記移相器は、前記送信信号の位相を変化させ、前記増幅器は前記送信信号を増幅する。
【0010】
本開示の第5態様に係る無線通信装置は、第1態様~第4態様のいずれかに係る無線通信装置であって、前記制御回路は、前記RF信号の送信中に前記移相器及び前記増幅器を制御する。
【0011】
本開示の第6態様に係る無線通信装置は、第1態様に係る無線通信装置であって、前記分離回路によって分離された前記イメージ信号を所定の周波数までダウンコンバートする周波数変換回路をさらに備える。
【0012】
本開示の第7態様に係る無線通信装置は、第1態様に係る無線通信装置であって、前記分離回路は、前記RF信号の周波数で整合させた伝送線路及びキャパシタと、前記イメージ信号の周波数で整合させた伝送線路及びキャパシタと、を備える。
【0013】
本開示の第8態様に係る無線通信装置は、第1態様に係る無線通信装置であって、前記RF信号の周波数帯はミリ波帯である。
【0014】
本開示の第9態様に係る無線通信装置は、第1態様に係る無線通信装置であって、前記無線送信機の各々はアレー状に配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、RF信号に影響を与えることなくRF信号の振幅と位相差情報を得て補正を行う無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】開示の技術の実施形態に係る無線通信装置に備えられる無線送信機の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した無線送信機をアレー状に配置した無線通信装置の構成例を示す図である。
【
図4】RF生成用アップコンバージョンミキサ及びRFイメージ分離整合回路の実施例を示す図である。
【
図5】無線通信装置の機能シミュレーションの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る無線通信装置に備えられる無線送信機の概略構成を示す図である。本実施形態に係る無線通信装置は、
図1に示した無線送信機100がアレー状に配置された形態を有する。
【0019】
図1に示した無線送信機100は、IF(中間周波)生成部101、利得可変IF増幅器102、RF(高周波)生成用アップコンバージョンミキサ103、RFイメージ分離整合回路104、送信アンテナ105、イメージ用ダウンコンバージョンミキサ106、107、電力検出器108、109、110、111、制御回路112及び移相回路113を備える。
【0020】
中間周波生成部101は、無線送信機100に送られてくるベースバンド(BB)信号を中間周波(IF)信号に変換する。利得可変IF増幅器102は、中間周波生成部101が変換したIF信号を所定量増幅する。利得可変IF増幅器102による増幅量は制御回路112により制御される。
【0021】
RF生成用アップコンバージョンミキサ103は、利得可変IF増幅器102が増幅したIF信号をアップコンバートしてRF信号を生成する。RF生成用アップコンバージョンミキサ103の入力IF信号電圧をAIFsin(ωIFt)、入力局部発振(LO)信号電圧をALOsin(ωLOt+φ)とすると、出力信号電圧は以下の数式(1)で表される。AIFはIF信号の振幅、ALOはLO信号の振幅、ωIFはIF信号電圧の角周波数、ωLOはLO信号の角周波数、φはLO信号の位相、tは時間である。
【0022】
【0023】
数式(1)の右辺第1項がRF信号電圧であり、第2項がイメージ信号である。イメージ信号にはRF信号の振幅と位相の情報が含まれている。
【0024】
RFイメージ分離整合回路104は、本開示の分離回路の一例であり、高周波生成用アップコンバージョンミキサ103がアップコンバートした信号を、RF信号とイメージ信号とに分離する。分離されたRF信号は送信アンテナ105に出力され、イメージ信号はイメージ用ダウンコンバージョンミキサ106に分離される。
【0025】
送信アンテナ105は、RFイメージ分離整合回路104によって分離されたRF信号を送信する。本実施形態では、送信アンテナ105は、ミリ波帯のRF信号を送信する。
【0026】
イメージ用ダウンコンバージョンミキサ106、107は、本開示の周波数変換回路の一例であり、それぞれ、RFイメージ分離整合回路104によって分離されたイメージ信号をダウンコンバートし、イメージ信号の位相を、隣り合う無線送信機100から出力されたイメージ信号の位相と比較し、比較結果としての位相差情報を制御回路112に出力する。
【0027】
電力検出器108、109、110、111は、それぞれ、イメージ用ダウンコンバージョンミキサ106、107及び無線送信機100から出力されたイメージ信号の電圧の振幅を検出し、検出結果としての電圧振幅情報を制御回路112に出力する。
【0028】
制御回路112は、入力された位相差情報と電圧振幅情報とから、配線による位相変化量を取り除き、隣り合う2つの無線送信機100の出力の位相差を計算する。制御回路112は計算した位相差情報と、電圧振幅情報とを用いて、移相回路113と利得可変IF増幅器102の制御を行う。制御回路112が移相回路113と利得可変IF増幅器102の制御を行うことで所望の送信ビーム形状が得られる。
【0029】
移相回路113は、本開示の移相器の一例であり、LO信号の位相を変化させて高周波生成用アップコンバージョンミキサ103に出力する。移相回路113による位相変化量は制御回路112によって制御される。
【0030】
図2は、
図1に示した無線送信機100をアレー状に配置した無線通信装置10の構成例を示す図である。
図2では、N個の無線送信機100A、100B、・・・、100Nをアレー状に配置した無線通信装置10の構成例が示されている。
【0031】
無線送信機100AのRFイメージ分離整合回路104Aから、無線送信機100Aのイメージ用ダウンコンバージョンミキサ107Aまでの電気長をα1とし、イメージ用ダウンコンバージョンミキサ107Aから、無線送信機100BのRFイメージ分離整合回路104Bまでの電気長をα2とする。また、RF周波数をωRFとし、無線送信機100Aの出力電圧振幅をA1、無線送信機100Bの出力電圧振幅をA2とし、無線送信機100Aの出力電圧位相をφ1、無線送信機100Bの出力電圧位相をφ2とする。無線送信機100Aのイメージ用ダウンコンバージョンミキサ107Aの出力は数式(2)で表される。
【0032】
【0033】
数式(2)の直流成分のみ取り出すと、下記の数式(3)が得られる。
【0034】
【0035】
同様に、無線送信機100Bのイメージ用ダウンコンバージョンミキサ106Bの出力は数式(4)で表される。
【0036】
【0037】
制御回路112Bは、数式(3)及び数式(4)の直流信号を用いて、数式(5)の計算を行うことで、無線送信機100Aと無線送信機100Bとの出力電圧位相差φ1-φ2を得ることができる。
【0038】
【0039】
同様の計算を、残りの隣接する無線送信機100同士で実施することで、無線通信装置10は、全ての無線送信機100のRF信号の位相差を得ることが出来る。
【0040】
図3は、無線送信機100の実施例を示す図である。
図3に示した無線送信機100は、ベースバンドバッファ201、202、周波数4逓倍器203、平衡不平衡器204、ポリフェーズフィルタ205、50GHzLO用増幅器206、207、IF生成用アップコンバージョンミキサ208、利得可変IF増幅器209、RF生成用アップコンバージョンミキサ210、周波数3逓倍器211、212、粗調整用移相器213、微調整用移相器214、平衡不平衡器215、216、12.5GHzLO用増幅器217、218、周波数2逓倍器219、220、RFイメージ分離整合回路221、周波数2分周器222、223、224、225、周波数4分周器226、227、バッファ増幅器228、229、230、231、電力検出器232、233、234、235、イメージ用ダウンコンバージョンミキサ236、237、能動平衡不平衡器238、239、制御回路240、アンテナ241を備える。
【0041】
ベースバンドバッファ201は、無線送信機100の外部からのIチャネルのベースバンド信号をバッファする。ベースバンドバッファ202は、無線送信機100の外部からのQチャネルのベースバンド信号をバッファする。
【0042】
ベースバンドバッファ201、202、周波数4逓倍器203、平衡不平衡器204、ポリフェーズフィルタ205、50GHzLO用増幅器206、207、IF生成用アップコンバージョンミキサ208は、
図1のIF生成部101に相当する。粗調整用移相器213、微調整用移相器214は、
図1の移相回路113に相当する。粗調整用移相器213によって粗くLO信号の位相が調整され、微調整用移相器214によって細かくLO信号の位相が調整される。
【0043】
図3に示した無線送信機100の外部から入力されるLO信号は12.5GHzであり、IF生成用アップコンバージョンミキサ208に用いるLO信号には、12.5GHzのLO信号の周波数を周波数4逓倍器203によって4逓倍して50GHzにし、ポリフェーズフィルタ205によって同相直交信号に変換した信号が用いられる。よって、IF信号の周波数は50GHzである。
【0044】
RF生成用アップコンバージョンミキサ210に用いられるLO信号には、周波数3逓倍器211、212及び周波数2逓倍器219、220によって、12.5GHzLO信号の周波数を18逓倍した225GHzの信号が用いられている。RF信号の周波数は275GHzであり、イメージ信号の周波数は175GHzである。
【0045】
RFイメージ分離整合回路221によって分離されたイメージ信号は、周波数2分周器222、223、224、225及び周波数4分周器226、227によって周波数が16分周され、約10.94GHzの信号となる。その信号は、電力検出器232、233とイメージ用ダウンコンバージョンミキサ236、237に入力される。
【0046】
電力検出器232とイメージ用ダウンコンバージョンミキサ236とから出力された信号は、制御回路240に入力される。制御回路240は、粗調整用移相器213及び微調整用移相器214の制御電圧を計算する。
【0047】
S(u,n)は当該無線送信機100から1つ前の無線送信機100に渡すイメージ信号であり、S(u,n+1)は1つ後の無線送信機100から当該無線送信機100に渡されるイメージ信号である。
【0048】
S(d,n-1)は1つ前の無線送信機100から当該無線送信機100に渡されるイメージ信号であり、S(d,n)は当該無線送信機100から1つ後の無線送信機100に渡すイメージ信号である。
【0049】
V(2,n-1)は1つ前の無線送信機100から当該無線送信機100に渡されるイメージ用ダウンコンバージョンミキサ237の出力信号であり、V(2,n)は当該無線送信機100から1つ後の無線送信機100に渡すイメージ用ダウンコンバージョンミキサ237の出力信号であり、V(P1,n-1)とV(P2,n-1)は1つ前の無線送信機100から当該無線送信機100に渡される電力検出器233、235の出力信号であり、V(P1,n)とV(P2,n)は当該無線送信機100から1つ後の無線送信機100に渡す電力検出器233、235の出力信号である。
【0050】
図4は、RF生成用アップコンバージョンミキサ210及びRFイメージ分離整合回路221の実施例を示す図である。RF生成用アップコンバージョンミキサ210は、差動nMOSFETのドレインを結合した構成を用いており、ゲートにIF信号とLO信号とを合わせて入力するために、インダクタと、伝送線路と、キャパシタと、を用いて合波器を形成している。
【0051】
RFイメージ分離整合回路221は伝送線路と、キャパシタと、によって構成されており、RF信号の出力側はRF周波数で、イメージ信号の出力側はイメージ周波数で整合がとられている。
図4に示したように、RF周波数とイメージ周波数とは大きく離れているため、イメージ信号の出力側はRF信号にとって開放であるとみなすことができ、イメージ出力側の整合回路がRF出力特性に影響を与えることは無い。
【0052】
本実施形態の有効性を示すために、Mathworks MATLAB/Simulinkを用いて、
図1に示した無線送信機100が4つアレー状に備えられた無線通信装置の構成について、各無線送信機100のRF信号の初期位相をランダムに設定した後、無線送信機100の位相を同期させることが可能であることを示す。
【0053】
図5は、無線通信装置の機能シミュレーションの結果を示すグラフである。
図5に示したグラフの縦軸はRF信号の位相であり、横軸は手順番号であり、φ
i(i=1,2,3,4)はi番目の送信機のRF信号の位相である。α
1とα
2はそれぞれ5°と10°とした。また、簡単のために、全ての送信機のRF電圧振幅は同じ値とした。
【0054】
手順番号0では、各無線送信機100のRF信号の位相をランダムに設定している。ただし、1番目の無線送信機100の位相を基準とするため、φ1は0°とした。
【0055】
手順番号1では、1番目の無線送信機100と2番目の無線送信機100との位相差を数式(5)から求め、移相回路113を調節してφ2をφ1=0°としている。
【0056】
手順番号2では、2番目の無線送信機100と3番目の無線送信機100との位相差を数式(5)から求め、移相回路113を調節してφ3をφ1=0°としている。
【0057】
手順番号4では、3番目の無線送信機100と4番目の無線送信機100との位相差を数式(5)から求め、移相回路113を調節してφ4をφ1=0°としている。
【0058】
以上により、本実施形態によって全ての無線送信機100のRF信号の位相差を得ることができ、それによって各無線送信機100の位相を同期させることが可能であることが示された。
【0059】
上記実施形態では、移相回路113をRF信号のパスに挿入することでRF信号の位相を変化させていたが、本開示は係る例に限定されない。周波数帯が高い場合、又は帯域が広い場合は、移相回路113をRF信号のパスに挿入するが、IF信号のパスに移相回路113を挿入してもよい。
【0060】
上記実施形態では、利得可変IF増幅器102がIF信号のパスに挿入されていたが、本開示は係る例に限定されない。RF信号のパスに増幅器が挿入されていてもよい。この場合、RF生成用アップコンバージョンミキサ103の後段に移相回路を設け、移相回路113の後段に可変電力増幅器を設ける構成を採り、制御回路112により、移相回路及び可変電力増幅器を制御する構成としてもよい。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらの変更例または修正例についても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
また、上記実施形態において記載された効果は、説明的又は例示的なものであり、上記実施形態において記載されたものに限定されない。つまり、本開示に係る技術は、上記実施形態において記載された効果とともに、又は上記実施形態において記載された効果に代えて、上記実施形態における記載から、本開示の技術分野における通常の知識を有する者には明らかな他の効果を奏しうる。
【符号の説明】
【0063】
10 無線通信装置
100 無線送信機
101 IF生成部
102 利得可変IF増幅器
103 RF生成用アップコンバージョンミキサ
104 RFイメージ分離整合回路
105 送信アンテナ
106、107 イメージ用ダウンコンバージョンミキサ
108、109、110、111 電力検出器
112 制御回路
113 移相回路
201、202 ベースバンドバッファ
203 周波数4逓倍器
204 平衡不平衡器
205 ポリフェーズフィルタ
206、207 50GHzLO用増幅器
208 IF生成用アップコンバージョンミキサ
209 利得可変IF増幅器
210 RF生成用アップコンバージョンミキサ
211、212 周波数3逓倍器
213 粗調整用移相器
214 微調整用移相器
215、216 平衡不平衡器
217、218 12.5GHzLO用増幅器
219、220 周波数2逓倍器
221 RFイメージ分離整合回路
222、223、224、225 周波数2分周器
226、227 周波数4分周器
228、229、230、231 バッファ増幅器
232、233、234、235 電力検出器
236、237 イメージ用ダウンコンバージョンミキサ
238、239 能動平衡不平衡器
240 制御回路
241 アンテナ