(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033048
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システム、および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240306BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L21/304 645C
H01L21/302 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136421
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】園田 和広
(72)【発明者】
【氏名】森 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雅司
【テーマコード(参考)】
5F004
5F157
【Fターム(参考)】
5F004AA14
5F004BA03
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB26
5F004BB28
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5F157AA46
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5F157AB33
5F157BG04
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5F157BH18
5F157CF34
(57)【要約】
【課題】還元不足を抑制可能にした基板処理装置、および基板処理方法を提供する。
【解決手段】表面に金属層を含む基板Sの表面を還元する基板処理装置であって、チャンバー本体42と、チャンバー本体42に収容されて基板Sが載置されるホットプレート22と、チャンバー本体42に水素ガスのプラズマを供給するプラズマ生成部43と、プラズマ生成部43の駆動前にホットプレート22を駆動することによって表面から吸着物を除く脱ガス処理と、ホットプレート22の駆動後にプラズマ生成部43を駆動することによって脱ガス処理後の表面にプラズマを供給する還元処理と、を実行する制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属層を含む基板の前記表面を還元する基板処理装置であって、
チャンバー本体と、
前記チャンバー本体に収容されて前記基板が載置されるホットプレートと、
前記チャンバー本体に水素ガスのプラズマを供給するプラズマ供給部と、
前記プラズマ供給部の駆動前に前記ホットプレートを駆動することによって前記表面から吸着物を除く脱ガス処理と、前記ホットプレートの駆動後に前記プラズマ供給部を駆動することによって前記脱ガス処理後の前記表面に前記プラズマを供給する還元処理と、を実行する制御部と、を備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記チャンバー本体に熱伝導ガスを供給する熱媒体供給部をさらに備え、
前記制御部は、前記脱ガス処理において前記熱媒体供給部を駆動して前記熱媒体供給部から前記チャンバー本体に前記熱伝導ガスを供給する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
排気装置に前記チャンバー本体を接続する配管がメイン配管であり、
前記メイン配管を迂回して前記排気装置に前記チャンバー本体を接続する配管がバイパス配管であり、前記バイパス配管の流路抵抗が前記メイン配管よりも高く、
前記メイン配管を開閉するメインバルブと、
前記バイパス配管を開閉するバイパスバルブと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記還元処理において前記メインバルブを開け、かつ前記バイパスバルブを閉じ、
前記脱ガス処理において前記メインバルブを閉じ、かつ前記バイパスバルブを開ける
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記チャンバー本体に収容される支持部であって、前記支持部と前記ホットプレートとの間に隙間を形成すると共に、前記隙間に配置される断熱材を介して前記ホットプレートを支持する前記支持部をさらに備える
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ホットプレートに接続される電気配線は、前記ホットプレートを昇温するための給電配線のみであり、
前記制御部は、前記脱ガス処理における前記チャンバー本体の圧力を前記還元処理における前記チャンバー本体の圧力よりも高める
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記チャンバー本体に取り付けられる焼結アルミナ製の拡散部材であって、前記プラズマ供給部が供給する前記プラズマを前記チャンバー本体のなかに拡散する前記拡散部材をさらに備え、
前記プラズマ供給部は、
前記プラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記チャンバー本体に取り付けられる焼結アルミナ製の供給配管であって、前記プラズマ生成部が生成した前記プラズマを前記プラズマ生成部から前記拡散部材に向けて流す前記供給配管と、を備える
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
表面に金属層を含む基板の前記表面を還元する基板処理システムであって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の基板処理装置を備え、
前記金属層が第1金属層であり、
搬送チャンバーを介して前記チャンバー本体に接続され、前記還元処理後の前記表面に第2金属層を形成する成膜チャンバーをさらに備える
ことを特徴とする基板処理システム。
【請求項8】
表面に金属層を含む基板の前記表面を還元する基板処理方法であって、
チャンバー本体に収容されているホットプレートに前記基板を載置した後に、前記チャンバー本体に熱伝導ガスを供給して前記チャンバー本体を昇圧すると共に、前記ホットプレートの加熱によって前記表面から吸着物を除く脱ガス処理と、
前記熱伝導ガスを排気した後に、前記ホットプレートに載置されている前記脱ガス処理後の前記表面に水素ガスのプラズマを供給する還元処理と、を含む
ことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属層の表面を還元する基板処理装置、基板処理システム、および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスのプラズマを構成する水素イオンや水素ラジカルは、金属層の表面に形成された酸化物を還元する。基板処理装置の一例は、水素ガスに添加ガスを混合する。窒素原子または酸素原子を含む添加ガスは、水素ガスから生成される活性種の失活を抑える(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属層の表面に存在する吸着物は、金属層の表面に形成された酸化物の還元を阻害する。金属層の表面に存在する吸着物は、例えば金属層を形成する装置のなかで金属層の表面に吸着したり、金属層を形成する装置から酸化物を還元する装置まで基板を搬送するなかで金属層の表面に吸着したりする。吸着物に起因した酸化物の残存である還元不足を抑制することは、金属層を備えたデバイスの性能や歩留まりを高める観点から切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための基板処理装置は、表面に金属層を含む基板の前記表面を還元する基板処理装置であって、チャンバー本体と、前記チャンバー本体に収容されて前記基板が載置されるホットプレートと、前記チャンバー本体に水素ガスのプラズマを供給するプラズマ供給部と、前記プラズマ供給部の駆動前に前記ホットプレートを駆動することによって前記表面から吸着物を除く脱ガス処理と、前記ホットプレートの駆動後に前記プラズマ供給部を駆動することによって前記脱ガス処理後の前記表面に前記プラズマを供給する還元処理と、を実行する制御部と、を備える。
【0006】
上記課題を解決するための基板処理システムは、表面に金属層を含む基板の前記表面を還元する基板処理システムであって、上記基板処理装置を備え、前記金属層が第1金属層であり、搬送チャンバーを介して前記チャンバー本体に接続され、前記還元処理後の前記表面に第2金属層を形成する成膜チャンバーをさらに備える。
【0007】
上記課題を解決するための基板処理方法は、表面に金属層を含む基板の前記表面を還元する基板処理方法であって、チャンバー本体に収容されているホットプレートに前記基板を載置した後に、前記チャンバー本体に熱伝導ガスを供給して前記チャンバー本体を昇圧すると共に、前記ホットプレートの加熱によって前記表面から吸着物を除く脱ガス処理と、前記熱伝導ガスを排気した後に、前記ホットプレートに載置されている前記脱ガス処理後の前記表面に水素ガスのプラズマを供給する還元処理と、を含む。
【0008】
上記各構成によれば、脱ガス処理と還元処理とが単一のチャンバーのなかで実行される。このため、脱ガス処理を実行しない基板処理装置と比べて酸化物の還元が促進される。また、脱ガス処理と還元処理とを別々のチャンバーで実行する基板処理装置と比べてチャンバー間の基板移載が省略される。このため、基板移載に由来した吸着が抑制されると共に基板処理の効率化も図られる。結果として、吸着物に起因した酸化物の残存が抑制される。ひいては、酸化物の残存に起因した還元不足が抑制される。
【0009】
上記基板処理装置において、前記チャンバー本体に熱伝導ガスを供給する熱媒体供給部をさらに備え、前記制御部は、前記脱ガス処理において前記熱媒体供給部を駆動して前記熱媒体供給部から前記チャンバー本体に前記熱伝導ガスを供給してもよい。
【0010】
上記構成によれば、熱伝導ガスが脱ガス処理時に供給されるため、ホットプレートから基板の表面に熱が伝導しやすい。これにより、金属層の昇温速度が高まり、ひいては脱ガス処理に要する時間の短縮が可能ともなる。
【0011】
上記基板処理装置において、排気装置に前記チャンバー本体を接続する配管がメイン配管であり、前記メイン配管を迂回して前記排気装置に前記チャンバー本体を接続する配管がバイパス配管であり、前記バイパス配管の流路抵抗が前記メイン配管よりも高く、前記メイン配管を開閉するメインバルブと、前記バイパス配管を開閉するバイパスバルブと、をさらに備え、前記制御部は、前記還元処理において前記メインバルブを開け、かつ前記バイパスバルブを閉じ、前記脱ガス処理において前記メインバルブを閉じ、かつ前記バイパスバルブを開けてもよい。
【0012】
上記構成によれば、メイン配管を用いる脱ガス処理と比べてチャンバー本体における熱伝導ガスの滞在時間が長くなる。このため、ホットプレートから基板の表面に熱がさらに伝導しやすいから、脱ガス処理に要する時間がさらに短縮可能ともなる。
【0013】
上記基板処理装置において、前記チャンバー本体に収容される支持部であって、前記支持部と前記ホットプレートとの間に隙間を形成すると共に、前記隙間に配置される断熱材を介して前記ホットプレートを支持する前記支持部をさらに備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、ホットプレートと支持部との間に隙間が形成されると共に、ホットプレートと支持部とが断熱材を介して接続される。これにより、ホットプレートが基板以外に向けて放熱しにくいため、金属層の昇温速度が高まると共に、脱ガス処理に要する時間がさらに短縮可能ともなる。
【0015】
上記基板処理装置において、前記ホットプレートに接続される電気配線は、前記ホットプレートを昇温するための給電配線のみであり、前記制御部は、前記脱ガス処理における前記チャンバー本体の圧力を前記還元処理における前記チャンバー本体の圧力よりも高めてもよい。
【0016】
ホットプレートと支持部との間の隙間は、ホットプレートの支持部に向けた放熱を抑制する。一方、ホットプレートと支持部との間に隙間が形成され、かつホットプレートによる基板の静電吸着が仮に行われる場合、静電吸着に要する電力供給と、熱伝導ガスによる脱ガス処理時の昇圧とが相まって、ホットプレートと支持部との間の隙間に異常放電が生成されやすくなる。この点、上記構成によれば、静電吸着に要する給電が行われないため、支持部とホットプレートとの間の隙間において異常放電の発生が抑制される。
【0017】
上記基板処理装置において、前記チャンバー本体に取り付けられる焼結アルミナ製の拡散部材であって、前記プラズマ供給部が供給する前記プラズマを前記チャンバー本体のなかに拡散する前記拡散部材をさらに備え、前記プラズマ供給部は、前記プラズマを生成するプラズマ生成部と、前記チャンバー本体に取り付けられる焼結アルミナ製の供給配管であって、前記プラズマ生成部が生成した前記プラズマを前記プラズマ生成部から前記拡散部材に向けて流す前記供給配管と、を備えてもよい。
【0018】
上記構成によれば、拡散部材によるプラズマの拡散が、短寿命のイオンに失活を促す一方で、長寿命のラジカルに還元を促す。これにより、過度なイオン供給による基板のダメージが抑制される。一方、拡散部材によるプラズマの拡散は、拡散部材に大きな熱履歴を伴う。拡散部材の大きな熱履歴は、拡散部材の変位に起因したパーティクルの増加を新たに招来させる。この点、プラズマ生成部と拡散部材との間に介在する供給配管は、プラズマの流路長を長くして拡散部材に到達するイオンを減少させる。これにより、拡散部材によるプラズマの拡散と、供給配管による流路長の延長とが相まって、基板のダメージ抑制と、パーティクルの増加抑制との両立が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の基板処理装置、基板処理システム、および基板処理方法によれば、金属層の表面における還元不足を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、基板処理システムの装置構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、基板処理システムが備える基板処理装置の装置構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、基板処理方法の工程順序を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、基板処理方法におけるガスの供給順序を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[基板処理システム]
図1が示すように、基板処理システムは、搬送チャンバー11、2つの搬入出チャンバー12A,12B、2つの成膜チャンバー13A,13B、2つの前処理チャンバー14A,14B、2つの冷却チャンバー15A,15B、および制御部50を備える。なお、
図1に示す基板処理システムは、1つの搬送チャンバー11を備える例を示すが、基板処理システムは、複数の搬送チャンバー11を備えることもできる。
【0022】
各搬入出チャンバー12A,12Bは、それぞれ基板Sを搬入、および搬出する。基板Sは、水素ガスFH2(
図4を参照)のプラズマを供給される対象である。基板Sの表面は、銅やタングステンなどから構成される第1金属層を備える。第1金属層の表面は、第1金属層を構成する金属の酸化物を含有する。基板Sの表面は、シリコン層やシリコン酸化物層を備えてもよい。
【0023】
各前処理チャンバー14A,14Bは、それぞれ基板Sの表面に前処理を施す。前処理は、熱伝導ガスFHE(
図4を参照)を用いる脱ガス処理と、水素ガスFH2のプラズマを用いる還元処理とから構成される。各成膜チャンバー13A,13Bは、それぞれ基板Sの表面に成膜処理を施す。各成膜チャンバー13A,13Bは、前処理後の基板Sの表面に第2金属層を形成する。各冷却チャンバー15A,15Bは、それぞれ成膜処理後の基板Sを冷却する。
【0024】
以下、搬入出チャンバー12A、成膜チャンバー13A、前処理チャンバー14A、および冷却チャンバー15Aを用いて、基板処理装置、基板処理システム、および基板処理方法を説明する。搬入出チャンバー12B、成膜チャンバー13B、前処理チャンバー14B、および冷却チャンバー15Bについて、搬入出チャンバー12A、成膜チャンバー13A、前処理チャンバー14A、および冷却チャンバー15Aと重複する説明を割愛する。
【0025】
搬入出チャンバー12Aは、表面に金属層を備える基板Sを基板処理システムに搬入する。搬入出チャンバー12Aは、処理後の基板Sを基板処理システムから搬出する。
搬送チャンバー11は、各チャンバー12A,12B,13A,13B,14A,14B,15A,15Bに接続される。搬送チャンバー11は、搬送ロボット11Rを備える。搬送ロボット11Rは、制御部50の指令に従って基板Sを搬送する。搬送ロボット11Rは、搬入出チャンバー12Aから搬送チャンバー11に処理前の基板Sを搬入する。搬送ロボット11Rは、搬送チャンバー11から前処理チャンバー14Aに処理前の基板Sを搬送する。搬送ロボット11Rは、前処理チャンバー14Aから成膜チャンバー13Aに前処後の基板Sを搬送する。搬送ロボット11Rは、成膜チャンバー13Aから冷却チャンバー15Aに成膜処理後の基板Sを搬送する。搬送ロボット11Rは、冷却チャンバー15Aから搬入出チャンバー12Aに冷却後の基板Sを搬出する。
【0026】
制御部50は、CPUやMPUなどの電子回路を備える。制御部50は、SSDやHDDなどのストレージを備える。制御部50は、ROM、RAM、レジスタードメモリなどのメモリを備える。制御部50は、ASICやFPGAなどの集積回路を備えてもよい。制御部50は、基板処理方法を実行するための基板処理プログラムを備える。制御部50は、基板処理プログラムを実行することによって、各チャンバー12A,12B,13A,13B,14A,14B,15A,15Bに、基板Sの搬送処理、還元処理、成膜処理、および冷却処理を実行される。制御部50が実行させる処理の全ては、制御部50が備えるソフトウェアに実行さてもよいし、制御部50が備える集積回路とソフトウェアとの組み合わせに実行させてもよい。
【0027】
[基板処理装置]
基板処理装置は、前処理チャンバー14Aと制御部50とを備える。
図2が示すように、前処理チャンバー14Aは、チャンバー本体42とプラズマ生成部43とを備える。チャンバー本体42は、供給配管44を介してプラズマ生成部43に接続されている。
【0028】
プラズマ生成部43は、各種の供給配管から各種のプロセスガスSGを供給される。プラズマ生成部43は、水素ガスFH2の供給配管、添加ガスの供給配管、および熱伝導ガスFHEの供給配管に接続されている。添加ガスは、窒素ガス、酸素ガスFO2(
図4を参照)、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、アンモニア、アルゴンガスFAR(
図4を参照)、希ガスからなる群から選択される少なくとも1つを含有してもよい。熱伝導ガスFHEは、ヘリウムなどの希ガスを含有する。
【0029】
プラズマ生成部43は、水素ガスFH2のプラズマを生成する。プラズマ生成部43は、水素ガスFH2や水素ガスFH2ガスと添加ガスとの混合ガスからプラズマを生成可能であれば、マグネトロン方式のプラズマ源でもよいし、誘導結合方式のプラズマ源でもよい。水素ガスFH2のプラズマは、還元性を有する水素イオン、および水素ラジカルを含有する。制御部50は、プラズマ生成部43によるプラズマの生成開始と生成停止とを制御する。制御部50は、還元処理においてプラズマ生成部43に水素ガスFH2のプラズマを生成させると共に、チャンバー本体42に水素ガスFH2のプラズマを供給させる。
【0030】
プラズマ生成部43は、基板Sを加熱するための熱伝導ガスFHEをチャンバー本体42に供給する。制御部50は、プラズマ生成部43による熱伝導ガスFHEの供給開始と供給停止とを制御する。制御部50は、脱ガス処理においてプラズマ生成部43に熱伝導ガスFHEを供給させる。
【0031】
供給配管44は、チャンバー本体42とプラズマ生成部43とに接続されている。供給配管44は、プラズマ生成部43が生成したプラズマをチャンバー本体42に向けて流す。供給配管44の流路内面は、焼結アルミナから構成されてもよい。供給配管44そのものは、焼結アルミナ製の配管でもよい。供給配管44の流路長は、例えば50mm以上200mm以下である。供給配管44の流路長は、プラズマ生成部43の生成したイオンがチャンバー本体42に到達する頻度を低減する。
【0032】
プラズマ生成部43と供給配管44とは、プラズマ供給部を構成する。プラズマ生成部43は、チャンバー本体42に熱伝導ガスFHEを供給する熱媒体供給部を兼ねている。
チャンバー本体42は、排気系に接続されている。排気系は、メインバルブ45、バイパスバルブ46、コールドトラップ47、ターボポンプ48、および排気ポンプ49を備える。コールドトラップ47、ターボポンプ48、および排気ポンプ49は、排気装置を構成する。
【0033】
メインバルブ45は、メイン配管を開閉する。メイン配管は、コールドトラップ47にチャンバー本体42を接続する。バイパスバルブ46は、バイパス配管を開閉する。バイパス配管は、メイン配管を迂回してコールドトラップ47にチャンバー本体42を接続する。バイパス配管は、メイン配管よりも高い流路抵抗を備える。
【0034】
制御部50は、脱ガス処理においてメインバルブ45を閉じ、かつバイパスバルブ46を開ける。これにより、制御部50は、脱ガス処理においてチャンバー本体42に高圧環境を形成する。制御部50は、還元処理においてメインバルブ45を開け、かつバイパスバルブ46を閉じる。これにより、制御部50は、還元処理においてチャンバー本体42に低圧環境を形成する。
【0035】
チャンバー本体42は、支持部21、ホットプレート22、および拡散部材23を収容する。ホットプレート22は、給電配線45Aを介して加熱電源45Gに接続されている。ホットプレート22に接続される電気配線は、ホットプレート22を昇温するための給電配線45Aのみである。
【0036】
拡散部材23は、供給配管44の出口と対向するように配置されている。拡散部材23の表面は、焼結アルミナから構成されてもよい。拡散部材23そのものは、焼結アルミナ製であってもよい。拡散部材23は、供給配管44の出口から拡散部材23に向けて流れるプラズマと衝突し、これによってチャンバー本体42の径方向に水素ガスFH2のプラズマを拡散させる。拡散部材23による拡散は、短寿命のイオンに失活を促す一方で、長寿命のラジカルに還元を促す。
【0037】
支持部21は、断熱材24を介してホットプレート22を支持する。支持部21は、接地電位に接続されている。支持部21は、支持部21とホットプレート22との間に隙間を形成する。ホットプレート22を支持するための断熱材24は、支持部21とホットプレート22との間の隙間に配置されている。支持部21とホットプレート22との間の隙間は、ホットプレート22の短絡を抑える。基板Sは、ホットプレート22に載置される。基板Sの表面は、第1金属層を備える。ホットプレート22は、加熱電源45Gから供給される電流によって、ホットプレート22に載置された基板Sを加熱する。制御部50は、加熱電源45Gによる電流供給の開始と停止とを制御する。
【0038】
[基板処理方法]
上記基板処理装置が実行する基板処理方法を説明する。
図3が示すように、基板処理方法は、脱ガス処理(ステップS11)と、排気処理(ステップS12)と、還元処理(ステップS13)とを含む。脱ガス処理は、基板Sの表面から吸着物を除く。排気処理は、脱ガス処理後のチャンバー本体42から熱伝導ガスFHEを排気する。還元処理は、排気処理後の基板Sに水素ガスFH2のプラズマを供給する。基板処理システムは、各成膜チャンバー13A,13Bに、還元処理後の基板Sの表面に第2金属層を形成する。
【0039】
図4が示すように、制御部50は、タイミングt0に搬送ロボット11Rを駆動して搬入出チャンバー12Aから前処理チャンバー14Aに基板Sを搬入する。制御部50は、ホットプレート22に基板Sを載置してホットプレート22を駆動しはじめる。これにより、制御部50は、基板Sの昇温をはじめる。
【0040】
制御部50は、タイミングt1にプラズマ生成部43からチャンバー本体42に熱伝導ガスFHEを供給しはじめると共に、メインバルブ45を閉じ、かつバイパスバルブ46を開ける。そして、制御部50は、チャンバー本体42の圧力PAを高めると共に、チャンバー本体42のなかに熱伝導ガスFHEによる高圧環境を形成する。これにより、制御部50は、ホットプレート22の加熱にチャンバー本体42の昇圧を加えて、基板Sの表面から吸着物を除くことの効率を高める。
【0041】
制御部50は、タイミングt2に熱伝導ガスFHEの供給を停止すると共に、メインバルブ45を開け、かつバイパスバルブ46を閉じる。なお、メインバルブ45を開ける前に、バイパスバルブ46を通じて1~9秒間にわたりチャンバー本体42を排気することによって、チャンバー本体42の圧力をターボポンプ48の吸気許容可能最大圧力まで下げることもできる。そして、制御部50は、排気処理をはじめると共に、タイミングt3までに、添加ガスであるアルゴンガスFARの供給、添加ガスである酸素ガスFO2の供給、および水素ガスFH2の供給をはじめる。
【0042】
制御部50は、チャンバー本体42のなかにアルゴンガスFAR、酸素ガスFO2、および水素ガスFH2による低圧環境を形成した後に、プラズマ生成部43に駆動信号S43を入力してプラズマ生成部43を駆動しはじめる。なお、電離電圧の低いアルゴンガスFARのみを導入してプラズマ生成した後に、酸素ガスFO2、および水素ガスFH2を導入することで、プラズマ着火の安定性を高めることもできる。そして、制御部50は、タイミングt4までに水素ガスFH2のプラズマを基板Sの表面に供給し続ける。これにより、制御部50は、脱ガス処理を経た第1金属層の表面において酸化物を還元する。
【0043】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)脱ガス処理と還元処理とが単一のチャンバー本体42のなかで実行される。このため、脱ガス処理を実行しない基板処理装置と比べて酸化物の還元が促進される。また、脱ガス処理と還元処理とを別々のチャンバーで実行する基板処理装置と比べてチャンバー間の基板移載が省略される。このため、基板Sの移載に由来した吸着が抑制されると共に基板処理の効率化も図られる。結果として、吸着物に起因した酸化物の残存が抑制される。ひいては、酸化物の残存に起因した還元不足が抑制される。
【0044】
(2)熱伝導ガスFHEが脱ガス処理時に供給されるため、ホットプレート22から基板Sの表面に熱が伝導しやすい。これにより、第1金属層の昇温速度が高まり、ひいては脱ガス処理に要する時間の短縮が可能ともなる。
【0045】
(3)メイン配管を用いる脱ガス処理と比べてチャンバー本体42における熱伝導ガスFHEの滞在時間が長くなる。このため、ホットプレート22から基板Sの表面に熱がさらに伝導しやすいから、脱ガス処理に要する時間がさらに短縮可能ともなる。
【0046】
(4)ホットプレート22と支持部21との間に隙間が形成されると共に、ホットプレート22と支持部21とが断熱材24を介して接続される。これにより、ホットプレート22が基板S以外に向けて放熱しにくいため、第1金属層の昇温速度が高まると共に、脱ガス処理に要する時間がさらに短縮可能ともなる。
【0047】
(5)ホットプレート22と支持部21との間の隙間は、ホットプレート22の支持部21に向けた放熱を抑制する。一方、ホットプレート22と支持部21との間に隙間が形成され、かつホットプレート22による基板Sの静電吸着が仮に行われる場合、静電吸着に要する電力供給と、熱伝導ガスFHEによる脱ガス処理時の昇圧とが相まって、ホットプレート22と支持部21との間の隙間に異常放電が生成されやすくなる。この点、静電吸着に要する給電が行われないため、支持部21とホットプレート22との間の隙間において異常放電の発生が抑制される。
【0048】
(6)拡散部材23によるプラズマの拡散が、短寿命のイオンに失活を促す一方で、長寿命のラジカルに還元を促す。これにより、過度なイオン供給による基板Sのダメージが抑制される。一方、拡散部材23によるプラズマの拡散は、拡散部材23に大きな熱履歴を伴う。拡散部材23の大きな熱履歴は、拡散部材23の変位に起因したパーティクルの増加を新たに招来させる。この点、プラズマ生成部43と拡散部材23との間に介在する供給配管44は、プラズマの流路長を長くして拡散部材23に到達するイオンを減少させる。これにより、拡散部材23によるプラズマの拡散と、供給配管44による流路長の延長とが相まって、基板Sのダメージ抑制と、パーティクルの増加抑制との両立が可能となる。
【0049】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・拡散部材23の表面は、陽極酸化被膜によって覆われてもよい。供給配管44の内面は、陽極酸化被膜によって覆われてもよい。
【0050】
・ホットプレート22は、基板Sを静電吸着する静電チャックでもよい。この際、支持部21とホットプレート22との間の隙間に異常放電が生じないように、制御部50は、脱ガス処理、および還元処理においてチャンバー本体42の圧力を低める。
【0051】
・基板処理装置は、脱ガス処理と還元処理とに共通する単一の排気配管を備えてもよい。すなわち、基板処理装置は、メイン配管を用いて脱ガス処理を実行してもよい。
・基板処理装置は、プラズマ生成部43とは異なる熱媒体供給部を備え、当該熱媒体供給部からチャンバー本体42に熱伝導ガスFHEを供給してもよい。
【符号の説明】
【0052】
FH2…水素ガス
FHE…熱伝導ガス
PA…圧力
S…基板
11…搬送チャンバー
11R…搬送ロボット
12A,12B…搬入出チャンバー
13A,13B…成膜チャンバー
14A,14B…前処理チャンバー
15A,15B…冷却チャンバー
21…支持部
22…ホットプレート
23…拡散部材
42…チャンバー本体
43…プラズマ生成部
44…供給配管
45…メインバルブ
46…バイパスバルブ
50…制御部