(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033102
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】積層体および包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240306BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136493
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AC12
3E086AC13
3E086AC15
3E086AC16
3E086AD01
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB52
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA29
3E086CA35
3E086DA08
4F100AK04B
4F100AK07C
4F100AK63A
4F100AK63G
4F100AT00
4F100BA03
4F100CB02D
4F100CB02G
4F100EC182
4F100EC18G
4F100EJ381
4F100EJ38B
4F100EJ38C
4F100GB16
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】リサイクル性に加えて、十分な手切れ性が得られる積層体および包装袋を提供する。
【解決手段】シーラント樹脂層11と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12と、延伸ポリプロピレン系樹脂層13とをこの順で有する積層体10であって、シーラント樹脂層11がポリエチレン系樹脂層であり、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12がシーラント樹脂層11に隣接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント樹脂層と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層と、延伸ポリプロピレン系樹脂層とをこの順で有する積層体であって、前記シーラント樹脂層がポリエチレン系樹脂層であり、前記二軸延伸ポリエチレン系樹脂層が前記シーラント樹脂層に隣接していることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記シーラント樹脂層がC6LLDPE層またはC8LLDPE層であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
少なくとも1の部材が、請求項1または2に記載の積層体から形成されていることを特徴とする包装袋。
【請求項4】
スタンディングパウチであることを特徴とする請求項3に記載の包装袋。
【請求項5】
液体を内封する用途であることを特徴とする請求項3に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の包装袋として、二つ折りにされた底部材が一対の胴部材の間に配置された自立性を有するスタンディングパウチが使用されている。特許文献1の段落0010には、シーラントを最内層とし、延伸フィルムを基材としたラミネートフィルムを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の包装袋に使用される複合フィルムは、内面にポリエチレン(PE)等の熱接着性樹脂(シーラント)層、外面には、シーラントよりも耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)等の基材が積層されている。複合フィルムを熱接着する際には、シーラントを溶融させて複合フィルムの内面が接合される。しかし、異種の樹脂を含む包装袋は、プラスチック製容器包装としてのリサイクルが難しいという問題がある。
【0005】
近年、リサイクルを容易にするため、単一または同種の樹脂を用いるモノマテリアルの容器包装が提唱されている。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(BO-PP)を基材とすることは、特許文献1にも記載されている。しかし、BO-PPとPEの組み合わせは、PETやNyとPEとの組み合わせに比べて、層間密着性が得られにくい。このため、複合フィルムに手切れ性を付与することが困難である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リサイクル性に加えて、十分な手切れ性が得られる積層体および包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を含む。
本発明の第1の態様は、シーラント樹脂層と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層と、延伸ポリプロピレン系樹脂層とをこの順で有する積層体であって、前記シーラント樹脂層がポリエチレン系樹脂層であり、前記二軸延伸ポリエチレン系樹脂層が前記シーラント樹脂層に隣接していることを特徴とする積層体である。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記シーラント樹脂層がC6LLDPE層またはC8LLDPE層であることを特徴とする第1の態様の積層体である。
【0009】
本発明の第3の態様は、少なくとも1の部材が、第1または第2の態様の積層体から形成されていることを特徴とする包装袋である。
本発明の第4の態様は、スタンディングパウチであることを特徴とする第3の態様の包装袋である。
本発明の第5の態様は、液体を内封する用途であることを特徴とする第3または第4の態様の包装袋である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リサイクル性に加えて、十分な手切れ性が得られる積層体および包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】スタンディングパウチを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0013】
図1に示す実施形態の積層体10は、シーラント樹脂層11と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12と、延伸ポリプロピレン系樹脂層13とをこの順で有する。この積層体10において、シーラント樹脂層11がポリエチレン系樹脂層であり、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12がシーラント樹脂層11に隣接している。
【0014】
シーラント樹脂層11は、積層体10の最内層とした場合に、ヒートシールによる積層体10の接合に用いることができる。シーラント樹脂層11としては、ヒートシール性を有するポリエチレン系樹脂層であれば特に限定されないが、C6LLDPE層またはC8LLDPE層であることが好ましい。
【0015】
C6LLDPE層は、C6モノマーを共重合した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の層であり、C8LLDPE層は、C8モノマーを共重合した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の層である。炭素数6(C6)のモノマーとしては、1-ヘキセン等が挙げられ、炭素数8(C8)のモノマーとしては、1-オクテン等が挙げられる。
【0016】
LLDPEは、一般に炭素数が4~8(C4~C8)のモノマーを共重合することにより、ポリエチレンの密度を低下させている。C6、C8モノマーはC4モノマーよりも長鎖であり、ポリエチレンの強度が高くなりやすい。
【0017】
二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12は、二軸に延伸されたポリエチレン系樹脂(BO-PE)の層である。シーラント樹脂層11に二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12が隣接していることにより、十分な強度が得られ、手切れ性を向上することができる。
【0018】
シーラント樹脂層11および二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12がいずれもポリエチレン系樹脂層であることにより、シーラント樹脂層11に対する二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12の密着性が高くなる。引き裂き時に二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12の破断に追従してシーラント樹脂層11が破断しやすくなり、延伸ポリプロピレン系樹脂層13を基材としても、積層体10における手切れ性を改善することができる。
【0019】
二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12における延伸方向、延伸倍率などは特に限定されないが、搬送(MD)方向および交差(TD)方向に延伸してもよい。延伸倍率は、MD方向、TD方向ともに、2~10倍の範囲内であることが好ましい。MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率とが、互いに等しくてもよく、異なってもよい。
【0020】
延伸ポリプロピレン系樹脂層13は、延伸されたポリプロピレン系樹脂(OPP)の層であり、より具体的には、一軸延伸ポリプロピレン系樹脂層または二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層が挙げられる。
【0021】
延伸ポリプロピレン系樹脂層13は、積層体10に含まれる樹脂層の中で最外層であってもよい。シーラント樹脂層11および二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12より融点が高い延伸ポリプロピレン系樹脂層13が積層体10の外側に配置されることにより、シーラント樹脂層11を用いて積層体10をヒートシールする際の生産性を向上することができる。
【0022】
上述したように、延伸PPとPEとの組み合わせは、層間密着性が得られにくいが、実施形態の積層体10では、延伸ポリプロピレン系樹脂層13とシーラント樹脂層11との間で、シーラント樹脂層11と隣接するように二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12を配置している。これにより、シーラント樹脂層11と密着して手切れ性を改善するための二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12の機能と、耐熱性を高めるための延伸ポリプロピレン系樹脂層13の機能を両立させることができる。
【0023】
図示例の積層体10に含まれる樹脂フィルムは、シーラント樹脂層11と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12と、延伸ポリプロピレン系樹脂層13とであり、いずれもポリオレフィン系樹脂のみからなる。図示例の積層体10は、樹脂フィルムを3層有しているが、積層体10に含まれる樹脂フィルムの層数は、4層以上でもよい。
【0024】
例えば、特に図示しないが、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12との間に、他の樹脂層を積層してもよい。他の樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂層またはポリプロピレン系樹脂層であることがより好ましい。積層体10に含まれるフィルムがポリオレフィン系樹脂のみからなる場合は、PETやNyを基材にした場合に比べて、リサイクル性を改善することができる。
【0025】
積層体10に含まれるポリエチレン系樹脂層の全重量または樹脂成分全体におけるポリエチレン系樹脂の割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%であってもよい。ポリエチレン系樹脂層は、樹脂成分以外に添加剤を含有していてもよい。ここで、ポリエチレン系樹脂層としては、シーラント樹脂層11、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
さらに、シーラント樹脂層11にC6LLDPE層またはC8LLDPE層を用いる場合、これらにおけるC6LLDPEおよび/またはC8LLDPEの割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%であってもよい。
【0027】
積層体10に含まれるポリプロピレン系樹脂層の全重量または樹脂成分全体におけるポリプロピレン系樹脂の割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%であってもよい。ポリプロピレン系樹脂層は、樹脂成分以外に添加剤を含有していてもよい。ここで、ポリプロピレン系樹脂層としては、延伸ポリプロピレン系樹脂層13等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
図示例の二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12は、ドライラミネート等により、接着層14を介してシーラント樹脂層11に隣接して接合されている。特に図示しないが、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12が、共押出、熱ラミネート等により、接着層14を介することなく、シーラント樹脂層11と隣接してもよい。
【0029】
図示例の延伸ポリプロピレン系樹脂層13は、接着層15を介して二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12に隣接して接合されている。特に図示しないが、延伸ポリプロピレン系樹脂層13が、接着層15を介することなく、あるいは上述した他の樹脂層を介して、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12と隣接してもよい。
【0030】
積層体10は、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂)を主体とする樹脂フィルムとすることができ、さらに、上述した事項以外にも、種々の設計が可能である。
【0031】
前記ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主体とする共重合体(コポリマー)でもよい。エチレン以外のモノマー(コモノマー)としては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリエチレン系樹脂が、酢酸ビニル等のエステル基を有するモノマーを共重合している場合は、エステル基の一部がケン化されて、ビニルアルコールを含む共重合体となっていてもよい。
【0032】
前記ポリエチレン系樹脂の構成モノマーにおけるエチレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。エチレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリエチレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリエチレン系樹脂のみでもよい。ポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリエチレン系樹脂を含んでもよい。
【0033】
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモPP)でもよく、プロピレン-エチレン共重合体等におけるランダム共重合体(ランダムPP)またはブロック共重合体(ブロックPP)でもよい。プロピレン以外のモノマー(コモノマー)としては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂にコモノマーを用いる場合は、コモノマーが1種でも、2種以上でもよい。
【0034】
前記ポリプロピレン系樹脂の構成モノマーにおけるプロピレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。プロピレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリプロピレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリプロピレン系樹脂のみでもよい。ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリプロピレン系樹脂を含んでもよい。
【0035】
上述の各樹脂層に含まれてもよい添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤等が挙げられる。添加剤は、樹脂に相溶する成分でもよく、樹脂に相溶しない成分でもよい。
【0036】
シーラント樹脂層11は、無延伸のポリエチレン系樹脂から形成されることが好ましい。シーラント樹脂層11を形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。シーラント樹脂層11を形成する材料が、1種のポリエチレン系樹脂でもよく、2種以上のポリエチレン系樹脂のブレンドでもよい。シーラント樹脂層11の厚さは、特に限定されないが、例えば、60~180μm程度が挙げられる。
【0037】
二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12を形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12を形成する材料が、1種のポリエチレン系樹脂でもよく、2種以上のポリエチレン系樹脂のブレンドでもよい。層間の剥離強度の面では、凝集破壊を起こし難い直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0038】
二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12の延伸ポリプロピレン系樹脂層13側の面には、金属蒸着や金属酸化物蒸着があってもよい。二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12のシーラント樹脂層11側の面は、金属蒸着や金属酸化物蒸着がないまま、シーラント樹脂層11と積層してもよい。
【0039】
延伸ポリプロピレン系樹脂層13は、積層体10の基材であってもよい。延伸ポリプロピレン系樹脂層13を形成する材料が、1種のポリプロピレン系樹脂でもよく、2種以上のポリプロピレン系樹脂のブレンドでもよい。延伸ポリプロピレン系樹脂層13を積層体10の表層とする場合は、ヒートシールにおける耐熱性の観点から、高融点であるホモPPが好ましい。延伸ポリプロピレン系樹脂層13の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。
【0040】
積層体10の厚さに対してシーラント樹脂層11が占める割合は、50%以上が好ましく、60%、70%、80%、90%、95%程度、あるいは、これらの中間値でもよい。積層体10の厚さに対してポリオレフィン系樹脂層(シーラント樹脂層11、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12、延伸ポリプロピレン系樹脂層13など)の厚さの合計が占める割合は、50%以上が好ましく、60%、70%、80%、90%、95%、99%程度、あるいは、これらの中間値でもよい。
【0041】
接着層14,15は、接着剤から形成されてもよく、アンカーコート剤から形成されてもよい。接着層14,15を形成する材料としては、特に限定されないが、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ポリエチレンイミン、チタンアルコキシド等の有機チタン化合物等が挙げられる。接着剤やアンカーコート剤等を用いた接着層14,15の厚さは、例えば、0.1~10μm程度、1~6μm程度、3~4μm程度が挙げられる。
【0042】
接着層14,15は押出樹脂から形成されてもよい。押出樹脂の材料としては特に限定されないが、接着性樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。シーラント樹脂層11と二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12との間の接着層14に押出樹脂を用いる場合は、ポリエチレン系樹脂またはポリエチレン系の接着性樹脂が好ましい。押出樹脂を用いた接着層14,15の厚さは3~30μm程度、5~25μm程度、7~20μm程度が挙げられる。
【0043】
積層体10は、印刷層(図示せず)を有してもよい。例えば、延伸ポリプロピレン系樹脂層13の内面または外面に印刷層を積層してもよい。二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12の外面に印刷層を積層してもよい。二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12と延伸ポリプロピレン系樹脂層13との間に他の樹脂層を積層する場合は、当該他の樹脂層の内面または外面に印刷層を積層してもよい。
【0044】
印刷層は、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷方式でインキをベタ状またはパターン状に印刷することにより、形成することができる。印刷層の厚さは、特に限定されないが、0.5~10μm程度が挙げられる。印刷層は、積層体の全面に形成してもよく、積層体の面内の一部に形成してもよい。2層以上の印刷層を重ね合わせてもよい。印刷層は、溶剤型インキを用いて形成してもよく、EB印刷を用いて無溶剤で形成してもよい。
【0045】
印刷層を形成するためのインキは、顔料、染料等の着色材と、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル系重合体、ポリブタジエン、環化ゴム等が挙げられる。EB印刷では、電子線で硬化可能なアクリル系、ビニル系等の樹脂がバインダーの少なくとも一部として用いられる。
【0046】
溶剤型インキは、水、有機溶剤、植物油などの溶剤を含有してもよい。溶剤を用いた印刷後は、溶剤の揮発やインキの硬化等によりインキを乾燥させることができる。インキの乾燥を促進するため、加熱、紫外線照射等を実施してもよい。インキが無溶剤の場合は、加熱なしで印刷することも可能である。
【0047】
二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12と延伸ポリプロピレン系樹脂層13との間に界面に、印刷層を有することが好ましい。延伸された樹脂フィルム上に印刷層を形成することにより、多色印刷のズレ防止や印刷ピッチのコントロールが容易になる。また、印刷層の上に接着層を介して、他の樹脂層が積層されることにより、印刷層を保護することができる。
【0048】
実施形態の積層体10にバリア性を付与するには、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の無機化合物を薄膜状に積層してもよい。例えば、二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12および/または延伸ポリプロピレン系樹脂層13の少なくとも片面に、上述の金属または無機化合物からなるバリア層を蒸着、めっき等によって成膜してもよい。
【0049】
シーラント樹脂層11と二軸延伸ポリエチレン系樹脂層12との層間密着性の観点からは、これらの間には印刷層やバリア層を形成せず、それ以外の層間に印刷層やバリア層を形成することが好ましい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂によるモノマテリアルの容器包装のためには、積層体10の全重量に対し、ポリオレフィン系樹脂の合計が80重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が20重量%以下であることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂の合計が90重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることがより好ましい。これにより、積層体10に接着剤、印刷インキ等が使用されていても、ポリオレフィン系樹脂のモノマテリアル材料を実現することができる。
【0051】
積層体10は、包装袋の作製に用いることができる。包装袋は、少なくとも1の部材が、積層体10から形成されていればよい。包装袋の用途は、使い捨て用、詰め替え用、貯蔵用、物品等の収納用など、特に限定されないが、内容物を消費する際に使用される本体容器に対して、1回または複数回、内容物を詰め替える用途には特に好適である。この場合、本体容器を長期間の使用に耐久可能にして、詰め替え容器の包装を簡易にすることができる。また、内容物を使い終えた後の詰め替え容器を処分する際、リサイクルが容易になる。
【0052】
積層体10は、包装袋の開封または切り取りを行う部位を有してもよい。開封または切り取りを行う部位は、ミシン目、ノッチ、ハーフカット溝などのようにフィルムの厚さ方向に加工した構造を有してもよく、細く突出させた注出口のように、フィルムの面内に開封または切り取りを示唆する形状を有してもよく、印刷等による矢印、線、ドット等の表示であってもよい。包装袋の切り取りは、開封箇所の切り取りに限定されるものではなく、2以上の包装袋を連続して形成した箇所、包装袋の周囲にタグや表示部等を連続させた箇所等において、包装袋の間または周囲を切り取るために用いてもよい。
【0053】
包装袋の具体例としては、特に限定されないが、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、平袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。
図2に、包装袋100の一例を示す。包装袋100は、一対の胴部材101と、折り線103により二つ折りにした底部材102とから形成されたスタンディングパウチである。
【0054】
包装袋100の胴部材101は、前後に1枚ずつ配置されている。前後の胴部材101の平面形状が同一でもよい。底部材102は、折り線103により外面が対向するように折り込まれている。折り線103より上側では、左右に胴シール部104が形成されて、前後の胴部材101の内面が互いに接合されている。
【0055】
底部材102は、折り線103を上側にして、前後の胴部材101の間に挟み込まれている。折り線103より下側では、底部材102の内面が胴部材101の内面に接合された底シール部105が形成されている。底シール部105は、底部材102の折り線103で区画される領域を、それぞれ前後方向で同じ側の胴部材101と接合している。折り線103に対して底部材102を広げることにより、包装袋100を自立させることができる。
【0056】
包装袋100が胴部材101と底部材102とを有する場合は、実施形態の積層体10を胴部材101と底部材102のいずれか一方に使用してもよく、両方に使用してもよい。手切れ性を改善する観点からは、胴部材101に積層体10を用いることが好ましい。また、液体を内封する用途の包装袋100に好適である。
【0057】
包装袋100の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば詰め替え容器の用途では、上下方向の高さが100~500mm程度、左右方向の幅が70~300mm程度、充填量としては100cm3~5000cm3程度が挙げられる。内容物の状態としては、液体、粉体、粒体等の流体、あるいは物品等の固形物が挙げられる。内容物の種類としては、特に限定されないが、洗剤、薬剤、化粧品、医薬品、飲料、調味料、インキ、塗料、燃料等が挙げられる。
【0058】
包装袋100は、充填口、注出口等を有してもよい。例えば、包装袋100の上部で前後の胴部材101の間が開口されて、内容物の充填または注出に用いることができる。内容物の充填後に胴部材101の間を接合して、包装袋100を密封してもよい。包装袋100を開封する際には、胴部材101の間が接合されていた箇所を容易に引き裂くことができる。特に図示しないが、注出口が包装袋100の上部または隅部で細く突出する形状に形成されてもよい。注出口はフィルム成形でもスパウトタイプでもよい。隅部に斜めにスパウトを設置する場合、落下強度等において二軸延伸が有利である。
【0059】
実施形態の積層体10または包装袋100を使用した後にリサイクルする方法は、特に限定されないが、回収時の状態等に応じて、適宜選択することができる。実施形態の積層体10は、ポリオレフィン系樹脂の割合を高くすることができるので、ケミカルリサイクル、メカニカルリサイクルのいずれも可能である。実施形態の積層体10または包装袋100のリサイクルにより、積層体10または包装袋100など、同種の製品に再生することも可能である。リサイクルして得られた材料を、塗料、成形品、炭化水素油等の製品に利用してもよい。
【0060】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【0061】
実施形態の積層体10は、ポリオレフィン系樹脂を主体とした積層フィルム状であり、パウチ、バッグ、コンテナ等の包装袋、包装フィルム等の包装用積層体に限られず、種々の用途に用いることができる。積層体10が柔軟な積層フィルムである場合は、軟包装の包装袋100を形成することができる。包装袋100は、積層体10のみから形成してもよく、ラベル、タグ、ストロー、外箱等の付属部材と組み合わせてもよい。リサイクルの観点では、付属部材を包装袋100から分離できることが好ましい。
【実施例0062】
以下、実施例として、より具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
<積層体の作製>
実施例1は、OPP20μm/BO-PE25μm/LLDPE80μmの層構成でフィルムをラミネートし、積層体を作製した。
比較例1は、Ny15μm/VM-PET12μm/LLDPE120μmの層構成でフィルムをラミネートし、積層体を作製した。
比較例2は、OPP20μm/VM-OPP18μm/LLDPE100μmの層構成でフィルムをラミネートし、積層体を作製した。
比較例3は、MDO-PE25μm/BO-PE25μm/LLDPE80μmの層構成でフィルムをラミネートし、積層体を作製した。
【0064】
上記の層構成において、OPPは延伸ポリプロピレン、PEはポリエチレン、LLDPEは直鎖状低密度ポリエチレン、Nyはナイロン、PETはポリエチレンテレフタレート、MDO-は一軸延伸、BO-は二軸延伸、VM-はアルミニウム蒸着を表す。
【0065】
<リサイクル性の評価>
積層体のリサイクル性は、対象の積層体に含まれるフィルムがPPまたはPEのみである場合を良(○)、PPまたはPE以外のフィルムが含まれる場合を否(×)と評価した。
【0066】
<手切れ性の評価>
積層体の手切れ性は、対象の積層体を胴部材とする詰め替えパウチにレーザーによりハーフカット線を入れ、開封口を手で引き裂き、開封できる場合(○)、開封できない場合を否(×)と評価した。
【0067】
<生産性の評価>
積層体の生産性は、シーラント樹脂層より最外層の融点が高い場合を良(○)、シーラント樹脂層と最外層の融点が同等の場合を否(×)と評価した。
【0068】
<評価結果>
実施例1の評価結果は、リサイクル性:○、手切れ性:○、生産性:○であった。
比較例1の評価結果は、リサイクル性:×、手切れ性:○、生産性:○であった。
比較例2の評価結果は、リサイクル性:○、手切れ性:×、生産性:○であった。
比較例3の評価結果は、リサイクル性:○、手切れ性:○、生産性:×であった。
10…積層体、11…シーラント樹脂層、12…二軸延伸ポリエチレン系樹脂層、13…延伸ポリプロピレン系樹脂層、14,15…接着層、100…包装袋、101…胴部材、102…底部材、103…折り線、104…胴シール部、105…底シール部。