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特開2024-33104ロール状長尺体の保管構造及びこれに用いられるスペーサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033104
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ロール状長尺体の保管構造及びこれに用いられるスペーサ
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/672 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B65D85/672
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136495
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】近江 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】河村 憲昭
【テーマコード(参考)】
3E037
【Fターム(参考)】
3E037AA04
3E037AA20
3E037BA04
3E037BB20
3E037CA04
(57)【要約】
【課題】円筒状の周壁を有する保管容器内にロール状長尺体を簡単な操作で安定的に保管する。
【解決手段】コア10aの周囲に長尺媒体10bが巻き付けられたロール状長尺体10を収納して保管する円筒状の周壁11aを有する保管容器11と、ロール状長尺体10のコア10aの両端を保持し、保管容器11に対しロール状長尺体10を非接触な状態で案内する案内ホルダ1と、案内ホルダ1に設けられた位置決め部1cに位置決めされるベース部3と、案内ホルダ1の径方向に沿って伸縮可能な可動部4とを有し、可動部4を伸長させることで保管容器11の周壁11a内面とコア10aの回転支持部との間を突っ張った状態で拘束する拘束手段2と、案内ホルダ1の外周部と保管容器11の周壁11a内面との間の隙間に介在され、拘束手段2を回避する逃げ部6aを有し、案内ホルダ1の径方向及び径方向に交差する交差方向の移動を規制するスペーサ6と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に回転支持部を有するコアの周面にフィルム状の長尺媒体を巻戻し可能に巻き付けたロール状長尺体の保管構造であって、
少なくとも一端が開口する円筒状の周壁及び開口を開放可能に塞ぐ蓋を有し、前記周壁で囲まれた空間部を前記ロール状長尺体が収納可能な保管スペースとする保管容器と、
前記保管容器の開口寄りに配置され、前記保管容器の周壁の内径よりも小径の円形状の案内本体を有し、当該案内本体の中央部に形成された保持孔に前記コアの両端の回転支持部を挿入して保持し、かつ、前記保管容器の周壁に対して前記ロール状長尺体を非接触な状態になるように案内する案内ホルダと、
前記案内ホルダに予め設けられた位置決め部に位置決めされるベース部と、前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間に配置されて前記案内ホルダの径方向に沿って伸縮可能な可動部とを有し、前記可動部を伸長させることで前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間を突っ張った状態で拘束する拘束手段と、
前記案内ホルダの外周部と前記保管容器の周壁の内面との間の隙間に介在され、前記拘束手段を回避する逃げ部を有すると共に、前記案内ホルダの径方向及び径方向に交差する交差方向の移動を規制するスペーサと、
を備えたことを特徴とするロール状長尺体の保管構造。
【請求項2】
請求項1に記載のロール状長尺体の保管構造において、
前記案内ホルダは、前記拘束手段のベース部を位置決めする位置決め部に、前記拘束手段の挙動を許容する通路を有することを特徴とするロール状長尺体の保管構造。
【請求項3】
請求項1に記載のロール状長尺体の保管構造において、
前記拘束手段は、ロック機構付きのトグルクランプをベース部に固定し、トグルクランプの回転操作部を回転操作することでトグル機構を介して可動部としてのシャフトを進退させるものであることを特徴とするロール状長尺体の保管構造。
【請求項4】
請求項1に記載のロール状長尺体の保管構造において、
前記スペーサは、前記案内ホルダの外周部の径寸法に相当する径寸法の内周部を有し、前記保管容器の周壁の内面の径寸法よりも小さい径寸法の外周部を有することを特徴とするロール状長尺体の保管構造。
【請求項5】
請求項4に記載のロール状長尺体の保管構造において、
前記スペーサは、前記案内ホルダの外周部の一部に形成された位置合せ部に位置合せ可能な被位置合せ部を有することを特徴とするロール状長尺体の保管構造。
【請求項6】
両端に回転支持部を有するコアの周面にフィルム状の長尺媒体を巻戻し可能に巻き付けたロール状長尺体の保管構造であって、
少なくとも一端が開口する円筒状の周壁を有し、前記周壁で囲まれた空間部を前記ロール状長尺体が収納可能な保管スペースとする保管容器と、
前記保管容器の開口寄りに配置され、前記保管容器の周壁の内径よりも小径の円形状の案内本体を有し、当該案内本体の中央部に形成された保持孔に前記コアの両端の回転支持部を挿入して保持し、かつ、前記保管容器の周壁に対して前記ロール状長尺体を非接触な状態になるように案内する案内ホルダと、
前記案内ホルダに予め設けられた位置決め部に位置決めされるベース部と、前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間に配置されて前記案内ホルダの径方向に沿って伸縮可能な可動部とを有し、前記可動部を伸長させることで前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間を突っ張った状態で拘束する拘束手段と、
を備えた態様に用いられるスペーサであって、
前記案内ホルダの外周部と前記保管容器の周壁の内面との間の隙間に介在され、前記拘束手段を回避する逃げ部を有すると共に、前記案内ホルダの径方向及び径方向に交差する交差方向の移動を規制することを特徴とするロール状長尺体の保管構造に用いられるスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状長尺体の保管構造に係り、特に、円筒状の周壁を有する保管容器にロール状長尺体を保管する上で有効なロール状長尺体の保管構造及びこれに用いられるスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロール状長尺体としては、両端に回転支持部を有するコアの周面にフィルム状の長尺媒体を巻戻し可能に巻き付けた態様が知られている。
この種のロール状長尺体の一例としては例えばプリント配線基板が挙げられる。
ここで、プリント配線基板としては、プラスチックフィルムの表面に金属層等を配置したプラスチック配線基板が一般的に用いられている。プラスチック配線基板の製造方法の一つとして、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等の乾式めっき法によって、プラスチックフィルム上に薄膜の金属シード層、及び第1金属層を形成し、その上に無電解めっき法、又は電解めっき法の湿式めっき法により、更に第2金属層を形成するメタライジング法が挙げられる。
メタライジング法によるプラスチック配線基板の製造方法としては、熱可塑性液晶ポリマーフィルム上に、ニッケル、クロム、又はこれらの合金からなる金属シード層を、スパッタリング法を用いて形成し、次いで、スパッタリング法で銅導電層を形成し、さらにスパッタリング法により形成された銅導電層の上に電気銅めっき若しくは無電解銅めっき、又は両者を併用して銅導電層を形成した例が開示されている。
【0003】
プラスチック配線基板の製造は、一般的にロール状のプラスチックフィルムを前処理装置、スパッタ装置、めっき装置などで巻き出し、搬送しながら、それぞれの製造処理を施した上で、プラスチックフィルムをロール状に巻き取って次の工程に進める。プラスチックフィルムはその特性として吸湿性を持っている場合などがあり、その工程間の課程で、ロール状のまま真空状態で保管をすることがある。また、傷などの問題を回避するため、保管時はプラスチックフィルムを巻いているコアをガイドで受けて、プラスチックフィルムを浮かせ、物理的に接触しないように保管することがある。
【0004】
この種のロール状長尺体の保管構造の先行技術としては、例えば特許文献1乃至4に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、ロール状銅被覆樹脂フィルムを空気難透過性フィルム製のフレキシブル容器に装入し、同時に該ロール状銅被覆樹脂フィルムの芯管の内部空間に、脱酸素剤と、不活性ガスを封入した空気難透過性フィルム製のフレキシブル袋とを装入し、容器内の空気を排出し、次いで該容器内に不活性ガスを充填し、再度該容器内のガスを排出し、しかる後に該容器の開口部を熱圧着あるいは融着により封止して保管する方法が開示されている。
特許文献2には、ガラスフィルムが円筒形状の芯材に巻き取られたガラスロールの梱包容器であって、内部にガラスロールが収納される収納室が形成された箱体と、箱体の開口に装着され、収納室を密閉する蓋部材と、収納室の湿度を調整する湿度調整部と、を有し、収納室は、ガラスロールが収納された後に湿度調整部により乾燥状態に調整されることを特徴とするガラスロールの梱包容器が開示されている。
【0005】
特許文献3には、フィルム等の長尺製品を中芯に巻回してなるロール状製品のプロテクターにおいて、前記中芯を挿通するための透孔部を備えた板状体であって、一方の面には前記ロール状製品の端面と接触する平滑面を備え、他方の面には前記中芯への固定部を備えた態様が開示されている。
特許文献4には、芯体に巻回された長尺物からなるロール製品を収納するためのケースであって、底面板と該底面板から立設される周面板及び端面板からなり、端面板は基部と扉部からなるとともに、当該基部と扉部の間には当該扉部を外側に開放可能なヒンジ部が設けられ、周面板に扉部の開放を防ぐための押さえ部が設けられている態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-192004号公報(発明の実施の形態,図1
【特許文献2】特開2014-80203号公報(発明を実施するための形態,図1
【特許文献3】特開2007-39074号公報(発明を実施するための最良の形態,図4
【特許文献4】特開2013-107648号公報(発明を実施するための形態,図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ロール状のプラスチックフィルム等のロール状長尺体は円柱状であることに加えて50kg以上の重量物であるため、保管容器内での固定が難しく、固定が不十分である場合には、ロール状長尺体を例えば真空保管するにしても、ロール状長尺体を輸送するに際して不具合が生じ易い。
ここで、ロール状長尺体の固定の不具合としては、例えば輸送時の振動によるプラスチックフィルムへのダメージ、保管容器内での滑りによるプラスチックフィルムへのダメージやガイド等の構成部品の削れによる異物の発生等が挙げられる。
【0008】
特に、円筒状の周壁を有する保管容器の一端開口からロール状長尺体を収納して固定する場合には、ロール状長尺体のコアの両端部を円環状のガイドで受け、ロール状長尺体を浮かせた状態で保管容器の内壁にガイドを介して固定することが必要になる。
このとき、保管容器内に重量物であるロール状長尺体をガイドと共に収納するには、ロール状長尺体の外径よりもガイドの外径を大きくすることで、保管容器の内壁に対してロール状長尺体を浮かせ、かつ、保管容器の内径よりもガイドの外径を小さくすることで、保管容器内にロール状長尺体をガイドと共に収納するようにせざるを得ない。
【0009】
このため、保管容器内にロール状長尺体をガイドと共に収納した場合には、保管容器の内壁とガイドとの間には隙間が存在する状態になってしまう。この状態において、保管容器に対してガイドを固定するには、保管容器の軸方向に加えて、径方向及び周方向に対してガイドの位置を拘束することが必要になるが、円筒状の保管容器に対して円環状のガイドを確実に拘束することは難しく、特に、重量物であるロール状長尺体を輸送する上で必要な強固な固定構造を得ることが困難であった。
従って、重量物であるロール状長尺体を例えば真空保管する必要がある場合には、輸送が困難であることから、製造工場内に関連する装置を全て保有する必要がある等の設備上の制限があった。
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、円筒状の周壁を有する保管容器内にロール状長尺体を簡単な操作で安定的に保管するロール状長尺体の保管構造及びこれに用いられるスペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の技術的特徴は、両端に回転支持部を有するコアの周面にフィルム状の長尺媒体を巻戻し可能に巻き付けたロール状長尺体の保管構造であって、少なくとも一端が開口する円筒状の周壁及び開口を開放可能に塞ぐ蓋を有し、前記周壁で囲まれた空間部を前記ロール状長尺体が収納可能な保管スペースとする保管容器と、前記保管容器の開口寄りに配置され、前記保管容器の周壁の内径よりも小径の円形状の案内本体を有し、当該案内本体の中央部に形成された保持孔に前記コアの両端の回転支持部を挿入して保持し、かつ、前記保管容器の周壁に対して前記ロール状長尺体を非接触な状態になるように案内する案内ホルダと、前記案内ホルダに予め設けられた位置決め部に位置決めされるベース部と、前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間に配置されて前記案内ホルダの径方向に沿って伸縮可能な可動部とを有し、前記可動部を伸長させることで前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間を突っ張った状態で拘束する拘束手段と、前記案内ホルダの外周部と前記保管容器の周壁の内面との間の隙間に介在され、前記拘束手段を回避する逃げ部を有すると共に、前記案内ホルダの径方向及び径方向に交差する交差方向の移動を規制するスペーサと、を備えたことを特徴とするロール状長尺体の保管構造である。
【0012】
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えたロール状長尺体の保管構造において、前記案内ホルダは、前記拘束手段のベース部を位置決めする位置決め部に、前記拘束手段の挙動を許容する通路を有することを特徴とするロール状長尺体の保管構造である。
本発明の第3の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えたロール状長尺体の保管構造において、前記拘束手段は、ロック機構付きのトグルクランプをベース部に固定し、トグルクランプの回転操作部を回転操作することでトグル機構を介して可動部としてのシャフトを進退させるものであることを特徴とするロール状長尺体の保管構造である。
本発明の第4の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えたロール状長尺体の保管構造において、前記スペーサは、前記案内ホルダの外周部の径寸法に相当する径寸法の内周部を有し、前記保管容器の周壁の内面の径寸法よりも小さい径寸法の外周部を有することを特徴とするロール状長尺体の保管構造である。
本発明の第5の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えたロール状長尺体の保管構造において、前記スペーサは、前記案内ホルダの外周部の一部に形成された位置合せ部に位置合せ可能な被位置合せ部を有することを特徴とするロール状長尺体の保管構造である。
【0013】
本発明の第6の技術的特徴は、両端に回転支持部を有するコアの周面にフィルム状の長尺媒体を巻戻し可能に巻き付けたロール状長尺体の保管構造であって、少なくとも一端が開口する円筒状の周壁を有し、前記周壁で囲まれた空間部を前記ロール状長尺体が収納可能な保管スペースとする保管容器と、前記保管容器の開口寄りに配置され、前記保管容器の周壁の内径よりも小径の円形状の案内本体を有し、当該案内本体の中央部に形成された保持孔に前記コアの両端の回転支持部を挿入して保持し、かつ、前記保管容器の周壁に対して前記ロール状長尺体を非接触な状態になるように案内する案内ホルダと、前記案内ホルダに予め設けられた位置決め部に位置決めされるベース部と、前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間に配置されて前記案内ホルダの径方向に沿って伸縮可能な可動部とを有し、前記可動部を伸長させることで前記保管容器の周壁の内面と前記コアの回転支持部との間を突っ張った状態で拘束する拘束手段と、を備えた態様に用いられるスペーサであって、前記案内ホルダの外周部と前記保管容器の周壁の内面との間の隙間に介在され、前記拘束手段を回避する逃げ部を有すると共に、前記案内ホルダの径方向及び径方向に交差する交差方向の移動を規制することを特徴とするロール状長尺体の保管構造に用いられるスペーサである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の技術的特徴によれば、円筒状の周壁を有する保管容器内にロール状長尺体を簡単な操作で安定的に保管することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、案内ホルダに位置決めされた拘束手段の挙動を容易に確保することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、既存のロック機構付きのトグルクランプを利用して、拘束手段を簡単に構築することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、スペーサ本体の機能を確保しつつ、スペーサの着脱作業性を良好に保つことができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、スペーサと案内ホルダとの間に位置決め構造がない場合に比べて、スペーサと案内ホルダとの間の滑りを防止することができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、円筒状の周壁を有する保管容器内にロール状長尺体を簡単な操作で安定的に保管することが可能なロール状長尺体の保管構造を構築する上で必要なスペーサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明が適用されたロール状長尺体の保管構造の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
図2】実施の形態1に係るロール状長尺体の保管構造の基本構成を示す説明図である。
図3】(a)は保管容器にロール状長尺体を収納したときの状態を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
図4】保管容器に収納されたロール状長尺体を固定する際に用いられる固定器具(固定クランプ及びスペーサ)の概要を示す説明図である。
図5】(a)は保管容器に収納されたロール状長尺体の固定状態を示す説明図、(b)は(a)中B-B線断面説明図である。
図6】案内ホルダと固定クランプと保管容器との関係を示す説明図である。
図7】(a)は拘束治具の平面説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
図8】(a)はスペーサの正面説明図、(b)はスペーサを正面側から見た斜視説明図である。
図9】(a)はスペーサの正面図、(b)はスペーサの背面図、(c)はスペーサの平面図、(d)はスペーサの底面図である。
図10】(a)は図9(a)において、スペーサを右方向から見た右側面図、(b)は(a)中B-B線断面説明図、(c)は(a)中C-C線断面説明図である。
図11】(a)は保管容器に収納されたロール状長尺体を固定する前の状態を示す斜視説明図、(b)は保管容器に収納されたロール状長尺体を固定する状態を示す斜視説明図である。
図12】(a)は変形の形態1に係るスペーサの正面説明図、(b)は(a)に示すスペーサを正面側から見た斜視説明図である。
図13】(a)は変形の形態2に係るスペーサの正面説明図、(b)は(a)に示すスペーサを正面側から見た斜視説明図である。
図14】(a)は変形の形態3に係るスペーサと案内ホルダとの関係を示す正面説明図、(b)は(a)に示すスペーサを正面側から見た斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
◎実施の形態の概要
図1(a)(b)は本発明が適用されたロール状長尺体の保管構造の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、ロール状長尺体10の保管構造は、少なくとも一端が開口する円筒状の周壁11a及び開口11bを開放可能に塞ぐ蓋11cを有し、周壁11aで囲まれた空間部をロール状長尺体10が収納可能な保管スペースとする保管容器11と、保管容器11の開口11b寄りに配置され、保管容器11の周壁11aの内径よりも小径の円形状の案内本体1aを有し、当該案内本体1aの中央部に形成された保持孔1bにコア10aの両端の回転支持部10cを挿入して保持し、かつ、保管容器11の周壁11aに対してロール状長尺体10を非接触な状態になるように案内する案内ホルダ1と、案内ホルダ1に予め設けられた位置決め部1cに位置決めされるベース部3と、保管容器11の周壁11aの内面とコア10aの回転支持部10cとの間に配置されて案内ホルダ1の径方向に沿って伸縮可能な可動部4とを有し、可動部4を伸長させることで保管容器11の周壁11aの内面とコア10aの回転支持部10cとの間を突っ張った状態で拘束する拘束手段2と、案内ホルダ1の外周部と保管容器11の周壁11aの内面との間の隙間に介在され、拘束手段2を回避する逃げ部6aを有すると共に、案内ホルダ1の径方向及び径方向に交差する交差方向の移動を規制するスペーサ6と、を備えたものである。
【0017】
このような技術的手段において、ロール状長尺体10は、両端に回転支持部10cを有するコア10aの周面にフィルム状の長尺媒体10bを巻戻し可能に巻き付けたものである。尚、ロール状長尺体10のコア10aは、長尺媒体10bの巻付け領域から両側に突出する回転支持部10cを有しており、これらの回転支持部10cが案内ホルダ1に保持されるようになっている。
また、保管容器11は一端又は両端が開口する円筒状の周壁11aを有するものを含み、また、保管容器11の開口11bは蓋11cで開放可能に塞ぐようになっていればよく、例えば保管容器11内でロール状長尺体10を真空保管する必要がある場合には、蓋11c若しくは周壁11aの一部に排気手段12を付加するようにすればよい。
更に、案内ホルダ1はロール状長尺体10のコア10aの両端の回転支持部10cを保持し、ロール状長尺体10の保管容器11内での配置姿勢を所定の位置に案内するものである。本例では、案内ホルダ1は、円形状の案内本体1aと、コア10aの回転支持部10cを保持する保持孔1bと、拘束手段2のベース部3を位置決めする位置決め部1cとを有している。
【0018】
更にまた、保管容器11にロール状長尺体10を収納して保管する場合には、ロール状長尺体10のコア10aの両端に位置する回転支持部10cに案内ホルダ1を夫々仮止めし、保管容器11の開口11bからロール状長尺体10を一対の案内ホルダ1と共に収納する手法が一般的である。
また、拘束手段2及びスペーサ6は、例えば一端が開口した保管容器11にロール状長尺体10を収納して保管する場合には、保管容器11の開口11b側に位置する案内ホルダ1を固定するために用いるようにすればよい。これに対し、両端が開口した保管容器11を使用する場合には、保管容器11の両端に位置する一対の案内ホルダ1の一方あるいは両方を固定するために用いるようにしてもよい。
【0019】
また、拘束手段2としては、ベース部3と可動部4とを有し、案内ホルダ1に保持されたロール状長尺体10のコア10aと保管容器11の周壁11a内面との間を突っ張った状態に可動部4で拘束するものであれば適宜選定して差し支えない。
ここで、拘束手段2の可動部4は、コア10a、保管容器11の周壁11a内面との接触部に弾性材を介在させる態様、更には、案内ホルダ1のスペーサ6とは反対側は保管容器11の周壁11a内面との接触部に弾性材を介在させる態様が好ましい。本例は保管容器11振動時のロール状長尺体10の擦れ及び案内ホルダ1等の削れによる異物発生を抑制する。
【0020】
更に、スペーサ6は、案内ホルダ1の外周部と保管容器11の周壁11a内面との隙間に介在すること、案内ホルダ1の径方向及び径方向に交差する方向の移動を規制すること、拘束手段2と干渉しないこと、を考慮して構成されるものであればよい。
ここで、スペーサ6としては、案内ホルダ1と保管容器11との間の隙間の全てに介在する必要はなく、隙間の最も広い部分を中心として略線対称的に配置され、案内ホルダ1の径方向及び径方向に交差する方向の移動を規制する上で必要な大きさの外形を有していればよい。また、スペーサ6としては中実構造、中空構造を問わないが、スペーサ6の重量を軽量化するという観点からは中空構造が好ましい。中空構造のスペーサ6としては、ロール状長尺体10が重量物であることから、スペーサ6の外形形状の変形を有効に防止するには、外形をかたどる板材としてステンレス鋼材等の高強度の金属材料を用いたり、スペーサ6内の空洞部に補強材を適宜配置する態様が挙げられる。また、スペーサの構成材料はステンレス鋼材等の金属材料に限られるものではなく、高強度のものであればプラダン等の非金属材料を用いて構成し、接着剤等で接合することも可能である。更に、中実構造のスペーサ6としては、高強度の合成樹脂製の中実構造体にしてもよい。
【0021】
次に、本実施の形態に係るロール状長尺体の保管構造の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、保管容器11の代表的態様としては、ロール状長尺体10が例えば耐酸化性(高温の大気中または酸素雰囲気中で、金属が酸化に耐える性質)を有する長尺媒体10bを使用する場合には、保管容器11の周壁11a又は蓋11cに排気手段12を付加し、保管容器11内でロール状長尺体10を真空保管するようにすればよい。
【0022】
また、ロール状長尺体10の保管構造の好ましい態様としては、案内ホルダ1、拘束手段2及びスペーサ6は夫々分離可能な個別部品である態様が好ましい。例えば案内ホルダ1に拘束手段2を予め固定的に取付け、スペーサ6のみを別部品としても差し支えないが、本例では、案内ホルダ1毎に拘束手段2を予め用意する必要が生じ、拘束手段2の部品点数が嵩むばかりか、案内ホルダ1と保管容器11との隙間にスペーサ6を介在させる際に案内ホルダ1に予め固定的に取り付けた拘束手段2が邪魔になる懸念が生ずる。これに対し、案内ホルダ1、拘束手段2及びスペーサ6を分離可能な個別部品としておけば、各部品は保管容器11毎に用意することなく、必要なときに使用することができることから、部品点数が嵩んだり、案内ホルダ1、拘束手段2及びスペーサ6を所定の位置に配置するに当たって、予め固定的に取り付けた部品が他の部品の配置に際して邪魔になる事態を回避することが可能である。また、個別部品にすることで、清掃などのメンテナンスも容易になる。
【0023】
更に、案内ホルダ1の位置決め部1cの代表的態様としては、拘束手段2のベース部3を位置決めする位置決め部1cに、拘束手段2の挙動を許容する通路1dを有する態様が挙げられる。本例は、案内ホルダ1の位置決め部1cが位置決めされた拘束手段2の挙動を阻害しないようにする構成例を示す。
ここで、位置決め部1cとしては、例えば案内ホルダ1の保持孔1bの縁部に形成された内輪部と、外周を形成する外輪部との間を予め決められた角度間隔(例えば45°)の連結部で区画し、その一つの区画部を位置決め部1cとしたものが挙げられ、拘束手段2のベース部3を被位置決め部として区画部の形状に合わせて形成するようにすればよい。このとき、拘束手段2の挙動を許容するには外輪部、内輪部に切欠状の通路1dを形成する必要がある。
【0024】
また、拘束手段2の代表的態様としては、ロック機構付きのトグルクランプをベース部3に固定し、トグルクランプの回転操作部5を回転操作することでトグル機構を介して可動部4としてのシャフトを進退させる態様が挙げられる。
本例において、拘束手段2の好ましい態様としては、ロール状長尺体10の拘束動作時にトグルクランプの回転操作部5を案内ホルダ1側に押し付ける方向に操作し、かつ、ロール状長尺体10の拘束完了時の回転操作部5が保管容器11の蓋11cと非接触に配置される態様が挙げられる。本例は、拘束手段2としてロック機構付きのトグルクランプを利用する態様において、回転操作部5としての好適例を示す。
【0025】
更に、スペーサ6の好ましい態様としては、案内ホルダ1の外周部の径寸法に相当する径寸法の内周部を有し、保管容器11の周壁11aの内面の径寸法よりも小さい径寸法の外周部を有する態様が挙げられる。本例は、スペーサ6の内周部及び外周部の形状についての好ましい態様である。スペーサ6の内周部は案内ホルダ1の外周部の形状に沿って形成され、スペーサ6の外周部と保管容器11の周壁11aの内面との間に微小隙間(例えば5~15mm程度)を確保することで、案内ホルダ1の位置規制を正確にし、かつ、スペーサ6の着脱作業性を確保する上で有効である。
【0026】
本態様において、スペーサ6の好ましい態様としては、案内ホルダ1の外周部の幅寸法の1/2以上の幅寸法を有する態様が挙げられる。本例は、スペーサ6の幅寸法の好ましい態様である。スペーサ6の幅が狭いと、スペーサ6による案内ホルダ1の動きを規制する働きが低下し、案内ホルダ1に損傷を与える懸念がある。
また、スペーサ6の好ましい態様としては、案内ホルダ1の外周部の半周領域のうち1/2乃至2/3の領域に面して設けられる態様が挙げられる。本例は、スペーサ6の周方向長さの好ましい態様である。案内ホルダ1の半周領域の1/2未満では案内ホルダ1の固定が不十分になり易く、2/3を超えると、スペーサ6の着脱作業性が損なわれる懸念がある。
【0027】
更に、スペーサ6の好ましい態様としては、案内ホルダ1の外周部の一部に形成された位置合せ部に位置合せ可能な被位置合せ部を有する態様が挙げられる。本例は、案内ホルダ1に対して位置決め可能なスペーサ6を示す。このような位置決め構造を具備することによって、スペーサ6と案内ホルダ1との間の滑りが抑制される点で好ましい。
【0028】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-ロール状長尺体の保管構造の基本構成-
図2は実施の形態1に係るロール状長尺体の保管構造の基本構成を示す説明図である。
同図において、ロール状長尺体10は、芯材としての円筒状のコア10aに例えば耐酸化性を有するプラスチックフィルムからなる長尺媒体10bを巻き戻し可能に巻き付けたものである。
本例において、ロール状長尺体10はロール搬送台車20で搬送されるようになっている。
【0029】
ここで、ロール搬送台車20は、コロ付きの可動台21に鉛直方向に延びる昇降支柱22を設け、この昇降支柱22には当該昇降支柱22に沿って昇降する昇降台23を設けると共に、この昇降台23には略水平方向に延びる支持ポール24を装備したものである。
本例では、支持ポール24は、ロール状長尺体10のコア10aの空洞部に差し込まれ、ロール状長尺体10を略水平姿勢に保ちつつ持ち上げて支持するものである。尚、昇降支柱22は可動台21に対して固定的に設けられていてもよいが、例えば図示外の横スライド機構を介して支持ポール24に直交する水平横方向に移動可能に設けるようにしてもよい。この場合、支持ポール24は水平横方向にも移動可能になり、その分、ロール状長尺体10のコア10aとの位置合せが容易になる。
【0030】
また、ロール状長尺体10を保管する保管容器11は、一端が開口する容器本体として有底の円筒状の周壁11aを有し、この周壁11aの開口11bを蓋11cで開放可能に塞ぐと共に、周壁11aで囲まれた空間部をロール状長尺体10が収納可能な保管スペースとするものである。特に、本例では、保管容器11は、蓋11cの一部に排気手段としての排気機構13が付設されており、ロール状長尺体10を収納して蓋11cを塞いだ後、排気機構13を用いて排気することでロール状長尺体10を真空保管するものである。
本例では、保管容器11は、例えば既存のペール缶を利用し、ペール缶の蓋に排気機構を付加するようにしたものである。
【0031】
更に、本例では、図2及び図3(a)(b)に示すように、保管容器11は架台30上に横置き状態で載置される。この架台30は、フレーム鋼材を枠組みして構成されており、上部に受け板31が設けられると共に、この受け板31上には保管容器11の転がりを規制するための規制ブロック32が配置されている。更に、架台30の下部には一対のチャネル状のフット部材33が設けられ、架台30は、設置面との間にコロ付きの可動台21が進入可能な空間部を確保するように配置されている。
【0032】
本例において、ロール状長尺体10のコア10aは、長尺媒体10bの巻付け領域から両側に突出する回転支持部10cを有しており、これらの回転支持部10cが案内ホルダ1に保持されるようになっている。
本例では、案内ホルダ1は、図3(a)(b)及び図4に示すように、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂製の円形状の案内本体1aと、案内本体1aの中心部分に設けられ、コア10aの回転支持部10cを保持する円形状の保持孔1bとを有している。
ここで、案内本体1aは、保持孔1bの縁部に形成された鍔状の内輪部14と、外周の縁部に形成された鍔状の外輪部15と、内輪部14及び外輪部15の間を予め決められた角度間隔(例えば45°)で連結する複数の連結部16とを有し、内輪部14及び外輪部15で囲まれた領域を連結部16で複数の区画部17に区画したものである。尚、本例では、軽量化の観点から、各区画部17には例えば円形状の切抜き孔18が開設されている。
【0033】
また、本例では、図2に示すように、保管容器11の周壁11aの開口11b付近の内径をd1、案内ホルダ1の外周部(案内本体1aの外輪部15に相当)の外径をd2、ロール状長尺体10の長尺媒体10bの最大外径をd3とすると、d1>d2>d3の関係を満たすように選定されている。
このため、本例では、図3(a)(b)に示すように、保管容器11内にロール状長尺体10を収納すると、保管容器11の周壁11aの内面下部にはロール状長尺体10のコア10aの両端部に設けられた一対の案内ホルダ1が接触した状態で配置されている。
この状態において、d2>d3であるから、ロール状長尺体10の長尺媒体10bの周面は保管容器11の周壁11aの内面とは非接触な状態で配置されている。また、d1>d2であるから、図3(b)に示すように、案内ホルダ1の外周部(外輪部15に相当)の外面と、保管容器11の周壁11aの内面との間には三日月状の隙間40が生ずる。
【0034】
-固定器具-
このような隙間40が存在すると、保管容器11内でロール状長尺体10は固定されていないため、保管容器11の輸送時に、ロール状長尺体10が振動したり、案内ホルダ1と共に移動し、ロール状長尺体10の長尺媒体10bに損傷を与える懸念がある。
このため、本実施の形態では、保管容器11に対して案内ホルダ1、ロール状長尺体10を簡単な操作で強固に固定することが可能な固定器具50が採用されている。
本例において、固定器具50は、図4及び図5に示すように、保管容器11の周壁11aの内面上部とロール状長尺体10のコア10aの回転支持部10cとの間を突っ張った状態で拘束する拘束手段としての固定クランプ51と、案内ホルダ1の外周部と保管容器11の周壁11aの内面との間の隙間40に介在され、案内ホルダ1の径方向及び径方向に交差する交差方向(本例では案内ホルダ1の径方向に直交する接線方向)の移動を規制するスペーサ6とを備えている。
【0035】
-固定クランプ-
<固定クランプの構成例>
本例において、固定クランプ51は、図6及び図7(a)(b)に示すように、案内ホルダ1に予め設けられた位置決め部1cに位置決め可能なベース部3と、このベース部3に設置されるクランプ部品60と、を備えている。
ここで、案内ホルダ1の位置決め部1cは、図4及び図5(a)(b)に示すように、案内ホルダ1の案内本体1aに形成された複数の区画部17のうち、案内ホルダ1の保持孔1bに対して鉛直方向上側に位置する一つの区画部17aを利用して予め構成されている。特に、本例では、位置決め部1cとして利用する区画部17aは、他の区画部17と異なり、固定クランプ51による拘束動作を可能にするために、区画部17aを区画する内輪部14及び外輪部15の一部に例えば略矩形状の切欠19を形成し、固定クランプ51の挙動を許容する通路1dを確保するようにしたものである。
【0036】
<ベース部>
本例において、ベース部3は、図6及び図7(a)(b)に示すように、クランプ部品60の伸縮方向に沿って延びる断面略U字状のチャネル材からなるベース板52を有し、このベース板52の両側壁外側に一対の翼部材53を張り出すように止め具54で固着したものである。ここで、ベース板52はクランプ部品60を固定するためのブラケットとして機能するものであるため、SUS等の金属製で構成されている。また、翼部材53は、位置決め部1cとしての区画部17aを周方向において区画する連結部16に接触して位置決めされる被位置決め部として機能するものである。この翼部材53は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂で変形四角形状に成形されている。本例では、翼部材53はベース板52から側方に張り出す矩形状部と、この矩形状部の保持孔1b側に設けられ且つベース板52から離れた側に保持孔1b側に向かって窄まる傾斜部53aが形成された三角形状部とを有し、傾斜部53aが区画部17aの連結部16に接触するように配置されている。
【0037】
<クランプ部品>
また、本例において、クランプ部品60は、図6及び図7(a)(b)に示すように、例えばロック機構付きのトグルクランプで構成されている。具体的には、クランプ部品60は、ベース板52上に支持ブロック62を固定し、この支持ブロック62にはトグル機構63を介して可動部4としてのシャフト64を進退させるものである。ここで、シャフト64は、区画部17aの外輪部15の切欠19を通じて保管容器11の周壁11aの内面に向かって配置されている。
【0038】
更に、ベース板52のうちクランプ部品60の設置位置の反対側にはベース板52よりも突出するせき止め部材65が設けられている。このせき止め部材65は区画部17aの内輪部14の切欠19を通じてロール状長尺体10のコア10aの回転支持部10cの周面に接触して配置されている。
尚、シャフト64及びせき止め部材65の先端にはシリコンゴム等の弾性体66,67が取り付けられている。
【0039】
また、支持ブロック62のトグル機構63には回転操作部5としてのハンドル68が支点を中心に回転可能に設けられ、ハンドル68は、図7(b)に示すように、実線で示す倒れ姿勢と、仮想線で示す起立姿勢との間で回転操作されるようになっている。
本例では、ハンドル68が図7(b)に実線で示す倒れ姿勢に位置する場合には、シャフト64が保管容器11の周壁11aの内面に向かって進出し、クランプ部品60は、保管容器11の周壁11aの内面とコア10aの回転支持部10cの周面との間を突っ張った状態で固定対象物を拘束する固定モードになるように挙動する。一方、ハンドル68が図7(b)に仮想線で示す起立姿勢に至る場合には、シャフト64が保管容器11の周壁11aの内面から後退し、クランプ部品60が固定対象物の拘束を解除する解除モードになるように挙動する。
尚、本例では、固定モードと解除モードとの間のシャフト64の進退量は例えば30mm以上に選定され、位置決め部1cに対する固定クランプ51の取付、取外し作業が容易に行われるようになっている。
【0040】
また、本例では、支持ブロック62にロック機構69が設けられている。このロック機構69は回転操作可能なロックレバー69aを有し、クランプ部品60の固定モード時には、ロックレバー69aの一部に形成されたロック用凸部69bが支持ブロック62に形成されたロック用凹部69cに嵌まり、このロックレバー69aのロック状態を解除しない限り、ハンドル68の解除方向への回転動作を阻止するようになっている。
このため、本例では、保管容器11の輸送中に振動等が生じたとしても、ロック機構69によるロック解除をしない限り、クランプ部品60が勝手に固定モードから解除される懸念はない。
【0041】
-スペーサ-
<スペーサの構成例>
本例において、スペーサ6は、図3図4及び図8に示すように、三日月状の隙間40に遊びをもって嵌め込み可能な両端部がカットされた略三日月状の線対称形状に構成されるものであって、中央部分には固定クランプ51のシャフト64の挙動を確保するための逃げ部6aとしての凹所71を有し、この凹所71を挟んだ両側を中空状の一対のスペーサブロック72(具体的には72a,72b)として形成したものである。
本例では、スペーサ6は、図8乃至図10に示すように、案内ホルダ1の外周部の径寸法d2に相当する径寸法の内周部として凹所71を挟んで設けられる一対の内周円弧板73と、一対の内周円弧板73の背面側端部に接合され、略三日月状の形状を有する一枚の背面側板75と、一対の内周円弧板73の正面側端部に接合され、略三日月状の形状を凹所71を挟んで二分した形状を有する一対の正面側板76と、を有する。
ここで、内周円弧板73は、図8(a)に示すように、保管容器11内に収納された案内ホルダ1の外周部の外面の中心位置Ogを中心として半径rin=d2/2の円弧軌跡に沿うものである。また、背面側板75及び一対の正面側板76の下端部は、内周円弧板73の円弧軌跡に沿う形状を有すると共に、背面側板75及び一対の正面側板76の上端部は、保管容器11の周壁11aの内面の中心位置Ohを中心として半径rout=d1’/2の円弧軌跡に沿うものである。尚、d1’(図示せず)は保管容器11の周壁11aの内面の径寸法d1(図2参照)よりも僅かに小さい径寸法を意味する。
【0042】
更に、一対のスペーサブロック72(72a,72b)は、一対の内周円弧板73、背面側板75及び一対の正面側板76で囲まれたブロック本体の両端を端部仕切り板77,78で仕切り、断面矩形状で略三日月状の中空構造体として構成されている。更に、スペーサブロック72内の周方向略中央には内部仕切り板79が配置され、スペーサブロック72は中空構造体ではあるものの、端部仕切り板77,78及び内部仕切り板79が補強部材として機能し、曲げ剛性の高い構造体になっている。また、凹所71は、背面側板75及び一対のスペーサブロック72(72a,72b)の端部仕切り板78で囲まれて構成されており、背面側板75の上端部及び下端部に面した箇所が開口した状態になっている。
また、本例では、スペーサ6の凹所71及びスペーサブロック72を構成する内周円弧板73、背面側板75、正面側板76、端部仕切り板77,78及び内部仕切り板79は、例えばステンレス鋼材等の金属板材を用いて予め決められた形状に成形され、所望の形態のスペーサ6になるように溶接等によって接合される。
【0043】
更に、本例では、スペーサ6は、一対の内周円弧板73の背面側端部に背面側板75を接合し、一対の内周円弧板73の正面側端部に正面側板76を接合したもので、内周円弧板73の板厚が正面側及び背面側において見えていない態様である。本例では、内周円弧板73の外表面と背面側板75、正面側板76の下端部とは同じ円弧軌跡に沿うように成形されているため、スペーサブロック72(72a,72b)の内周下面と案内ホルダ1の外周部との間の接触状態は良好に保たれる。但し、内周円弧板73の外表面と背面側板75、正面側板76の下端部との間に接合時に段差が形成されてしまう懸念がある場合には、例えば研磨処理等をして段差が生じないようにすることが好ましい。
尚、スペーサ6の構成材料はステンレス鋼材等の金属材料に限られるものではなく、高強度のものであればプラダン等の非金属材料を用いて構成し、接着剤等で接合するようにすることも可能である。
【0044】
<スペーサの大きさ、形状>
(1)スペーサの幅寸法
保管容器11を輸送するときに、輸送時の振動によるスペーサ6と案内ホルダ1との擦れを防止するには、スペーサ6が案内ホルダ1の外周部に対して面で接触するようにすることが必要である。本例では、図5(a)(b)に示すように、案内ホルダ1の外周部(外輪部15に相当)の幅寸法をwg、スペーサ6の幅寸法をwsとすると、ws≧(1/2)×wgに設定することが好ましい。特に、スペーサ6の内周円弧板73の外周面は鋭部のない円滑な面として構成され、案内ホルダ1の外周部との接触によって案内ホルダ1が擦れる事態は抑制されている。
また、スペーサ6の幅寸法wsが狭い場合には、スペーサ6による案内ホルダ1の動きを規制する働きが低下することに加え、案内ホルダ1へダメージを与える懸念がある。
【0045】
(2)スペーサの円弧形状
本例では、スペーサ6の内周円弧板73、背面側板75の下端部及び正面側板76の下端部は案内ホルダ1の外周部の径寸法d2に相当する径寸法の内周面を有する。これに対し、スペーサ6の背面側板75の上端部及び正面側板76の上端部は保管容器11の周壁11aの内面の径寸法d1よりも僅かに小さい径寸法d1’(図示せず)に設定される。このため、本例では、保管容器11の周壁11aの内面と案内ホルダ1の外周部の外面との間の隙間40にスペーサ6を挿入して配置するに当たって、スペーサブロック72(72a,72b)の内周下面は案内ホルダ1の外周部に沿って密接して配置される。これに対し、スペーサブロック72(72a,72b)の外周部は、保管容器11の周壁11aの内面に密着せずに、凹所71の位置から離れるに従って図示外の微小隙間(例えば5mm~15mm)が残存してしまう。
しかしながら、このような微小隙間が存在することで、保管容器11と案内ホルダ1との隙間40内にスペーサ6を挿入して取り付ける場合に、案内ホルダ1の外周部上にスペーサブロック72(72a,72b)の内周下面を載せた状態でスペーサ6を微小隙間の遊び代をもって押し込むことが可能である。また、隙間40内に挿入して配置されたスペーサ6を取り外す場合には、微小隙間の遊び代部分に指を差し込んでスペーサ6を引き出すことが可能になるため、スペーサ6の取外し作業が容易に行われる。
【0046】
(3)スペーサブロックの外周部形状
本例では、スペーサブロック72(72a,72b)の外周部は、背面側板75、正面側板76、端部仕切り板77,78及び内部仕切り板79の上端部が露呈した状態であり、スペーサブロック72(72a,72b)の内周部の内周円弧板73のような外周円弧板で覆う態様を採用していない。
このような態様にした理由は以下の通りである。
第1に、スペーサ6の外周部と保管容器11の周壁11aの内面との間に微小隙間の遊び代を設けたので、スペーサ6の外周部は保管容器11の周壁11aの内面に対し常時接触しないため、スペーサ6の内周部のように、案内ホルダ1の外周部にスペーサブロック72の内周下面を面で常時接触させる必要性が少ないことによる。
第2に、外周円弧板を取り付ける態様では、スペーサ6の重量が重くなり、その分、スペーサ6の着脱作業性が低下する懸念があることによる。
第3に、内周円弧板73に接合された背面側板75、正面側板76の上端部の円弧軌跡に合わせて外周円弧板の円弧形状を加工しなくてはならないため、高い加工精度を要することによる。
【0047】
(4)スペーサの周方向長さ
また、図5(a)に示すように、スペーサ6の好ましい周方向長さとしては、案内ホルダ1の外周部の半周領域のうち1/2乃至2/3の領域に面して設けられる態様、言い換えればスペーサ6の円弧角度θが90°乃至120°の範囲にある態様が挙げられる。
本例において、案内ホルダ1の半周領域の1/2未満ではスペーサ6による回り込み量が少ない分、案内ホルダ1の固定が不十分になり易く、2/3を超えると、隙間40に対するスペーサ6の着脱作業性が損なわれる懸念がある。
【0048】
<案内ホルダとスペーサとの位置合せ構造>
本実施の形態において、スペーサ6は、図4図8乃至図10に示すように、位置合せ機構80を有している。
本例では、位置合せ機構80は、スペーサ6の凹所71に面した背面側板75の下部に矩形状の位置合せ部としての位置合せ片81を突出させる一方、案内ホルダ1の位置決め部1cとしての区画部17aの切欠19に面した箇所には被位置合せ部として被位置合せ凹部82を形成し、この被位置合せ凹部82に位置合せ片81を位置合せすることで、スペーサ6が案内ホルダ1に位置合せされる。このため、スペーサ6は案内ホルダ1の外周部の予め決められた位置に配置されることになり、スペーサ6と案内ホルダ1との間の滑りは抑制される。
【0049】
-ロール状長尺体の保管操作手順-
保管容器11にロール状長尺体10を収納して保管するには、以下のような保管操作手順を経て行うようにすればよい。
(1)ロール状長尺体の収納作業
先ず、図2に示すように、案内ホルダ1の保持孔1bにロール状長尺体10のコア10aの両端に位置する回転支持部10cを保持させ、ロール状長尺体10の両端に案内ホルダ1を仮止めする。このとき、案内ホルダ1の位置決め部1cとしての区画部17aが鉛直方向上方に位置するように配置されるようにしておく。
そして、案内ホルダ1が仮止めされたロール状長尺体10のコア10aの空洞部に、ロール搬送台車20の支持ポール24を差し込み、支持ポール24を所定位置まで上昇させ、ロール搬送台車20によるロール状長尺体10の搬送準備をする。
【0050】
一方、架台30には、蓋11cが開放され、一端が開口した保管容器11を横置き状態で載置する。
この後、ロール搬送台車20の支持ポール24に支持したロール状長尺体10の高さ位置を、架台30上の保管容器11の開口11bの位置に合わせ、しかる後、ロール搬送台車20を用いて、保管容器11の開口11bに向けてロール状長尺体10を搬送し、保管容器11内にロール状長尺体10を案内ホルダ1を介して収納する。
このとき、ロール状長尺体10の両端に位置する案内ホルダ1は、保管容器11の周壁11aの底部に接触した状態で摺動することから、ロール状長尺体10は、保管容器11の周壁11aに接触することなく、保管容器11内に収納される。
【0051】
(2)固定器具のセット
保管容器11内にロール状長尺体10が一対の案内ホルダ1と共に収納されると、図3(a)(b)に示すように、案内ホルダ1の外周部と保管容器11の周壁11aとの間には隙間40が形成される。
この状態において、作業者は、図3(b)及び図4に示すように、先ず、保管容器11の開口11b付近において、案内ホルダ1の外周部の上方に位置する隙間40にスペーサ6を嵌め込む。このとき、本例では、スペーサ6は位置合せ機構80を有しているため、案内ホルダ1の被位置合せ凹部82にスペーサ6の位置合せ片81を位置合せした状態で、隙間40内にスペーサ6を嵌め込むようにすればよい。
このとき、スペーサ6の周方向中央に位置する凹所71は、案内ホルダ1の位置決め部1cとしての区画部17aの直上に隣接して配置される。
【0052】
そして、スペーサ6が案内ホルダ1の外周部の上方の隙間40内に嵌め込まれた後、作業者は、図4図5(a)(b)及び図11(a)に示すように、案内ホルダ1の位置決め部1cとしての区画部17aに固定クランプ51のベース部3を嵌め込むようにすればよい。このとき、ベース部3のベース板52が略鉛直方向に向かうように配置され、ベース板52の両側に位置する翼部材53の傾斜部53aが区画部17aの周方向を区画する連結部16に突き当たり、固定クランプ51がベース部3を介して区画部17aに位置決めされる。
この状態において、固定クランプ51のクランプ部品60のハンドル68は、図7(b)に二点鎖線で示すように、起立姿勢に保持されており、進退可能なシャフト64は進出位置から後退した退避位置に保持されている。このため、区画部17aに固定クランプ51のベース部3を位置決めしたときには、クランプ部品60のせき止め部材65はロール状長尺体10のコア10aの両端に位置する回転支持部10cに突き当たる。一方、クランプ部品60のシャフト64はスペーサ6の凹所71内には入り込むが、保管容器11の周壁11aの内面とは非接触な位置に配置された状態を保つ。つまり、固定クランプ51は解除モードの状態で案内ホルダ1の区画部17aに位置決めされる。
【0053】
(3)固定クランプによる固定モードの実施
この後、保管容器11内において、ロール状長尺体10を固定するために、固定クランプ51による固定モードを実施する。
つまり、固定クランプ51のクランプ部品60のハンドル68を、図7(b)に仮想線で示す起立姿勢から同図に実線で示す倒れ姿勢へと回転操作することで、クランプ部品60のシャフト64を退避位置から進出位置へと進出させ、保管容器11の周壁11aの内面にシャフト64を押し付ける。この状態において、固定クランプ51は、図11(b)に示すように、保管容器11の周壁11aの内面とコア10aの回転支持部10cとの間を突っ張った状態で拘束する。
本例では、シャフト64の先端及びせき止め部材65の先端には弾性体66,67が設けられ、この弾性体66,67は保管容器11の周壁11aの内面及びコア10aの回転支持部10cの周面に弾接するため、振動による接触面での滑りが抑制されると共に、異なる曲率の曲面部が滑りなく固定される点で好ましい。
尚、本例では、固定クランプ51はロック機構69を備えており、ロック機構69によりハンドル68が倒れ姿勢に保持されるようになっている。
【0054】
◆固定クランプの操作性
本例では、固定クランプ51を固定モードにする場合には、ハンドル68を起立姿勢から倒れ姿勢に向けて回転操作するため、固定モードにおけるハンドル68の回転操作は、案内ホルダ1側に固定クランプ51を押し付ける方向での操作になり、固定クランプ51による固定操作が安定する。
仮に、固定クランプ51を固定モードにする場合に、ハンドル68の回転操作方向が逆方向(倒れ姿勢から起立姿勢に向けての方向)であると仮定すると、固定モードにおけるハンドル68の回転操作は案内ホルダ1から固定クランプ51を引き離す方向への操作になるため、固定クランプ51の位置が不安定になり、固定クランプ51による固定操作がし難い。
【0055】
◆固定クランプによる拘束動作
固定クランプ51は、保管容器11とコア10aの回転支持部10cとを拘束するため、ロール状長尺体10は保管容器11内に固定される。このため、保管容器11内でロール状長尺体10が回転したり、あるいは、軸方向に移動することは阻止される。
本例では、固定クランプ51は、案内ホルダ1の区画部17aに位置決めされていることから、固定クランプ51が保管容器11とコア10aの回転支持部10cとを拘束する場合、固定クランプ51が位置決めされる案内ホルダ1も必然的に拘束される。
【0056】
更に、本例では、スペーサ6は保管容器11の周壁11aと案内ホルダ1の外周部との間の隙間40に介在されているが、隙間40の形状は、保管容器11の中心位置Ohを通る鉛直線部分を最大とし、鉛直線部分から周方向に離れるに連れて次第に狭くなっており、スペーサ6の形状も隙間40の形状に合わせて選定されているため、スペーサ6は案内ホルダ1の外周部に沿って周方向に移動し難い構成になっている。
特に、本例では、スペーサ6は位置合せ機構80(位置合せ片81、被位置合せ凹部82)を介して案内ホルダ1に位置合せされているので、スペーサ6が案内ホルダ1の外周部に沿って移動することはなく、また、スペーサ6の外周円弧板74と保管容器11の周壁11aの内面との間には図示外の微小隙間が存在するものの、スペーサ6が隙間40内においてがたつくことも回避される。
【0057】
(4)保管容器の蓋閉じ・真空保管作業の実施
固定クランプ51による固定モードを実施した後、作業者は、保管容器11内でロール状長尺体10が固定されたことを確認した後、保管容器11の開口11bを蓋11cで閉じる。
このとき、本例では、固定クランプ51は、固定モード時にはハンドル68が倒れ姿勢に保持されている。このため、ハンドル68が起立姿勢にある場合に比べて、固定クランプ51と保管容器11の蓋11cとの間のスペースを狭く選定することが可能である。よって、保管容器11の蓋11cと固定クランプ51とが干渉する懸念は少ない。
更に、作業者は、蓋11cに付設されている排気機構13にて保管容器11内の空気を排出し、保管容器11内を真空状態にするようにすればよい。このため、ロール状長尺体10は、保管容器11内に固定されると共に真空保管される。
【0058】
(5)保管容器の輸送作業
このように、保管容器11にロール状長尺体10を収納して真空保管すると、保管容器11は架台30と共に輸送される。
本例では、固定クランプ51はロック機構69を有しており、固定クランプ51を固定モードで実施する場合には、ロック機構69によりハンドル68を倒れ姿勢に保持し、ロック機構69を解除しない限り、ハンドル68が不必要に解除方向に移動することがないようになっている。このため、保管容器11が輸送時に振動等したとしても、固定クランプ51による固定モードが解除される懸念はない。
【0059】
(6)保管容器からのロール状長尺体の取出し作業
保管容器11の輸送作業が完了した場合には、保管容器11の蓋11cを開放した後、固定クランプ51による解除モードを実施する。ここで、固定クランプ51による解除モードとは、図7(b)に示すように、固定クランプ51のロック機構69を解除した後に、ハンドル68を倒れ姿勢から起立姿勢に向けて回転操作することで、固定クランプ51による固定状態を解除するものである。
しかる後、作業者は、案内ホルダ1の区画部17aから固定クランプ51を取外すと共に、保管容器11の周壁11aと案内ホルダ1の外周部との隙間40からスペーサ6を取り外すようにすればよい。
この状態において、保管容器11内のロール状長尺体10は非固定状態になるため、例えば図2に示すロール搬送台車20を用いて保管容器11内のロール状長尺体10を取り出すようにすればよい。
【0060】
-変形の形態-
固定器具50としては、固定クランプ51及びスペーサ6を備えたものであればよいが、実施の形態1に示す構成に限られるものではなく、例えば変形の形態1~3に示すように、適宜設計変更して差し支えない。
◎変形の形態1
変形の形態1に係るスペーサ6は、図12(a)(b)に示すように、実施の形態1と同様に、凹所71を挟んで一対のスペーサブロック72(72a,72b)を備えたものであるが、スペーサブロック72の構成が実施の形態1と異なっている。本例では、スペーサブロック72(72a,72b)は、案内ホルダ1の外周部の径寸法d2に相当する径寸法の内周部として凹所71を挟んで設けられる一対の内周円弧板73と、保管容器11の周壁11aの内面の径寸法d1よりも僅かに小さい径寸法d1’(図示せず)の外周部として凹所71を挟んで設けられる一対の外周円弧板74と、一対の内周円弧板73及び一対の外周円弧板74を背面側で接合する一枚の背面側板75と、一対の内周円弧板73及び一対の外周円弧板74を正面側で凹所71を挟んで接合する一対の正面側板76と、を有し、内周円弧板73及び外周円弧板74の板厚が正面側及び背面側から見えないようにしたものである。尚、スペーサブロック72(72a,72b)は、実施の形態1と同様に、端部仕切り板77,78及び内部仕切り板79を有しているが、端部仕切り板77,78及び内部仕切り板79の高さ寸法は、実施の形態1に比べて、外周円弧板74の板厚分だけ低いものが使用されている。
【0061】
◎変形の形態2
変形の形態2に係るスペーサ6は、図13(a)(b)に示すように、変形の形態1と略同様な構成要素のスペーサブロック72(72a,72b)を有するものであるが、スペーサブロック72は、変形の形態1と異なり、内周円弧板73及び外周円弧板74の背面側端部に背面側板75の上下端部を突き当てて接合するように掛け渡すと共に、両者の正面側端部に正面側板76の上下端部を突き当てて接合するように掛け渡したものである。このため、本例では、内周円弧板73及び外周円弧板74の板厚が正面側及び背面側において見えている態様である。尚、スペーサブロック72(72a,72b)は、実施の形態1と同様に、端部仕切り板77,78及び内部仕切り板79を有している。
本例では、内周円弧板73及び外周円弧板74の外表面は背面側板75、正面側板76の端部に隣接して配置されないため、内周円弧板73及び外周円弧板74の外表面には段差が生じ難く、平滑な面として形成し易い点で好ましい。
【0062】
◎変形の形態3
変形の形態3に係るスペーサ6は、図14(a)(b)に示すように、実施の形態1と同様に、逃げ部6aとしての凹所71及び凹所71を挟んで設けられる一対のスペーサブロック72(72a,72b)を有すると共に、案内ホルダ1と位置合せする位置合せ機構80を有しているが、更に、スペーサブロック72(72a,72b)のうち、正面側板76の下端部の一部に下方に突出する板状のストッパ90を溶接等で固着したものである。
本例によれば、保管容器11の周壁11aの内面と案内ホルダ1の外周部との隙間40にスペーサ6を嵌め込む場合、案内ホルダ1の外周部の手前側にスペーサ6のストッパ90が引っ掛かることから、案内ホルダ1の外周部に対してスペーサ6の押し込み位置が規制されることになり、スペーサ6は案内ホルダ1の外周部に対して押し込み過多にならない適正位置に嵌め込まれる。
尚、本例では、ストッパ90は正面側板76と別体に構成されているが、正面側板76と一体的に成形してもよいし、あるいは、内周円弧板73の正面側端部に別体又は一体のストッパ90を設けるようにしてもよい。
【実施例0063】
◎実施例1
本実施例は、実施の形態1に係るロール状長尺体の保管構造をより具現化したものである。
本例において、ロール状長尺体10、案内ホルダ1、固定クランプ51及びスペーサ6は以下のようなものを用いた。
◆ロール状長尺体
・長尺媒体:ロール状のプラスチックフィルム
◆案内ホルダ
・外周部の幅寸法:80mm
◆固定クランプ
・クランプ部品:イマオコーポレーションST-HTC603-L ST-SMITH 押し型トグルクランプ ロック機構付を採用して構成(但し、ハンドル68の回転操作範囲及びシャフト64の進退量を調整)
◆スペーサ
・幅寸法:79mm
・周方向長さ:案内ホルダ1の外周部の半周領域の2/3の領域
・保管容器の周壁の内面との微小隙間:5~15mm
保管容器内にロール状長尺体を案内ホルダを介して収納し、固定クランプ及びスペーサを用いて固定した後、真空保管したところ、真空状態で保管したロール状長尺体を半年以上輸送しても、プラスチックフィルムのダメージや巻き異常、真空状態のリークも案内ホルダ等の部材の擦れなどは発生していないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
保管容器として円筒状の周壁を有する既存のペール缶等を有効に利用でき、固定器具として、保管容器とロール状長尺体のコアの回転支持部とを拘束する固定クランプ及び保管容器と案内ホルダとの間の隙間に介在するスペーサを用意するだけで、保管容器内にロール状長尺体を簡単な操作で安定的に保管することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 案内ホルダ
1a 案内本体
1b 保持孔
1c 位置決め部
1d 通路
2 拘束手段
3 ベース部
4 可動部
5 回転操作部
6 スペーサ
6a 逃げ部
10 ロール状長尺体
10a コア
10b 長尺媒体
10c 回転支持部
11 保管容器
11a 周壁
11b 開口
11c 蓋
12 排気手段
13 排気機構
14 内輪部
15 外輪部
16 連結部
17 区画部
17a 区画部
18 切抜き孔
19 切欠
20 ロール搬送台車
21 可動台
22 昇降支柱
23 昇降台
24 支持ポール
30 架台
31 受け板
32 規制ブロック
33 フット部材
40 隙間
50 固定器具
51 固定クランプ
52 ベース板
53 翼部材
53a 傾斜部
54 止め具
60 クランプ部品
62 支持ブロック
63 トグル機構
64 シャフト
65 せき止め部材
66,67 弾性体
68 ハンドル
69 ロック機構
69a ロックレバー
69b ロック用凸部
69c ロック用凹部
71 凹所
72(72a,72b) スペーサブロック
73 内周円弧板
74 外周円弧板
75 背面側板
76 正面側板
77 端部仕切り板
78 端部仕切り板
79 内部仕切り板
80 位置合せ機構
81 位置合せ片
82 被位置合せ凹部
90 ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14