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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033127
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤
(51)【国際特許分類】
   C08K 5/43 20060101AFI20240306BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08K5/43
C08L27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136532
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】宇野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 祐介
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】石塚 勇人
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD031
4J002EV266
4J002FD206
4J002GF00
4J002GN00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塩化ビニル系樹脂のアミンによる変色を抑制することができ、さらに耐熱老化性も付与できる塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤等を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の1種以上を含有する塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤である。

式中、RおよびRは、独立して、Fまたはパーフルオロアルキル基、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca等である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の1種以上を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤。
一般式(1)中、RおよびRは、各々独立して、フッ素原子または炭素原子数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。または、RおよびRは、連結し炭素原子数1~8のパーフルオロアルキレン基を形成して、それぞれが結合する硫黄原子、および硫黄原子が結合する窒素原子とともに環を形成する。mは1、2または3を表し、mが1の場合、Mは水素原子、アルカリ金属原子、AgまたはNHを表し、mが2の場合、Mは第2族元素、Zn、MnまたはCuを表し、mが3の場合、MはLaまたはCeを表す。
【請求項2】
自動車内装材に用いられる請求項1記載の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤。
【請求項3】
前記自動車内装材が、塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体との積層体からなる自動車内装材である請求項2記載の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤。
【請求項4】
塩化ビニル系樹脂用の安定剤の1種以上と、請求項1~3のうちいずれか一項記載の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤とを含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂用安定剤組成物。
【請求項5】
塩化ビニル系樹脂と、請求項1~3のうちいずれか一項記載の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤とを含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤の含有量が、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.005~3.0質量部である請求項5記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項7】
粉末成形用である請求項5記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5記載の塩化ビニル系樹脂組成物から得られることを特徴とする塩化ビニル系樹脂成形体。
【請求項9】
塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体との積層体であって、前記塩化ビニル系樹脂成形体が、請求項5記載の塩化ビニル系樹脂組成物から得られることを特徴とする積層体。
【請求項10】
請求項8記載の塩化ビニル系樹脂成形体を含むことを特徴とする自動車内装材。
【請求項11】
請求項9記載の積層体を含むことを特徴とする自動車内装材。
【請求項12】
塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体の積層体を含む自動車内装材の変色抑制方法であって、請求項1~3のうちいずれか一項記載の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤を、塩化ビニル系樹脂成形体の原料樹脂である塩化ビニル系樹脂に配合することを特徴とする変色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤(以下、「耐アミン性付与剤」とも称する)に関し、塩化ビニル系樹脂のアミンによる変色を抑制することができ、さらに耐熱老化性も付与できる塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤、これを用いた塩化ビニル系樹脂用安定剤組成物、塩化ビニル系樹脂組成物、塩化ビニル系樹脂成形体(以下、それぞれ「安定剤組成物」、「樹脂組成物」、「成形体」とも称する)、積層体、自動車内装材および塩化ビニル系樹脂の変色抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、難燃性、耐薬品性、機械的安定性、耐熱性、耐候性等の優れた性質を有し、かつ安価であることから、利用価値の高い汎用樹脂材料として広く用いられており、特に自動車内装材の表皮材として多く使用されている。
【0003】
自動車の室内には、乗り心地を良くするために様々な内装材が使われている。通常、自動車内装材は、ソフト感等の感触(風合い)や高級感、美観等の意匠性を出すための表皮層と、構造を保持するための基材層とから構成されている。また、表皮層には、ソフト感をより高めるためにウレタン等からなる発泡層を裏打ちしたものが使われることが多い。
【0004】
表皮層には、塩化ビニル系樹脂や熱可塑性エラストマー、ポリエチレンなどのポリオレフィン等が用いられている。これらの中でも、可塑剤の配合量により半硬質から軟質まで様々な触感を出すことが可能であり、成形加工が容易であってデザイン性にも優れることから、塩化ビニル系樹脂が広く用いられている。
【0005】
この塩化ビニル系樹脂を使用する内装材においては、ソフト感を出すために、ウレタン樹脂、特に発泡ポリウレタン(「ポリウレタン発泡成形体」ともいう)で裏打ちを施した、ポリ塩化ビニル系樹脂成形体と発泡ポリウレタンとの積層体が多く使用されている。
【0006】
しかしながら、塩化ビニル系樹脂を発泡ポリウレタンとの積層体として使用する場合、ポリウレタン発泡成形体の形成時に触媒として使用されたアミン化合物が塩化ビニル系樹脂成形体に移行することにより、塩化ビニル系樹脂成形体が変色するという問題があった。
【0007】
これに対し、例えば、特許文献1、2では、このアミン化合物による塩化ビニル系樹脂成形体の変色を防ぐために、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸バリウム、過塩素酸処理ハイドロタルサイト等の過塩素酸系化合物を塩化ビニル系樹脂組成物に配合する方法が提案されている。また、特許文献3では、有機錫化合物とトリフルオロメチルスルホニル化合物が添加された塩素含有樹脂組成物が提案されている。
【0008】
また、自動車の内装材として使用される場合には、比較的高温に曝されることがあり、特に、真夏の炎天下に曝されると、100℃近くまで温度が上昇して、着色を生じるなどの欠点を生じる(熱老化)という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5-17648号公報
【特許文献2】特開平7-173354号公報
【特許文献3】特開2006-152283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2で提案されているような、塩化ビニル系樹脂組成物に過塩素酸系化合物を配合する方法では、変色抑制効果は十分とは言えなかった。また、火薬や爆薬にも使用される過塩素酸塩類は消防法で第1類(酸化性固体)に規定される危険物であり、摩擦や衝撃によって爆発や火災を起こす危険性を常に有している。さらに、少なくとも米国の20州で過塩素酸塩による水質汚染が報告されており、米国カリフォルニア州有害物質管理局(DTSC)は、過塩素酸塩の取り扱いに関して規制を制定していることから、過塩素酸系化合物の使用には、安全面や環境面において多くの懸念が存在する。以上のことから、過塩素酸系化合物の使用なしでアミンによる変色が抑制された自動車内装材等に好適な塩化ビニル系樹脂組成物および自動車用内装材が望まれていた。
【0011】
一方、特許文献3で提案されている発明は、有機錫化合物を添加した塩素含有樹脂の成形加工時の熱安定性と着色を改善するためのものであり、塩化ビニル系樹脂のアミンによる変色を抑制することとは明らかに相違し、この点については、何ら知見を得ることもできないというのが現状である。
【0012】
そこで、本発明の目的は、塩化ビニル系樹脂のアミンによる変色を抑制することができ、さらに耐熱老化性も付与できる塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤、これを用いた塩化ビニル系樹脂用安定剤組成物、塩化ビニル系樹脂組成物、塩化ビニル系樹脂成形体、積層体、自動車内装材および塩化ビニル系樹脂の変色抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定のスルホニルイミド化合物が、塩化ビニル系樹脂のアミンによる変色を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤は、下記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の1種以上を含有することを特徴とするものである。
【0015】
一般式(1)中、RおよびRは、各々独立して、フッ素原子または炭素原子数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。または、RおよびRは、連結し炭素原子数1~8のパーフルオロアルキレン基を形成して、それぞれが結合する硫黄原子、および硫黄原子が結合する窒素原子とともに環を形成する。mは1、2または3を表し、mが1の場合、Mは水素原子、アルカリ金属原子、AgまたはNHを表し、mが2の場合、Mは第2族元素、Zn、MnまたはCuを表し、mが3の場合、MはLaまたはCeを表す。
【0016】
本発明の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤においては、自動車内装材に好適に用いることができる。特に、本発明の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤は、塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体との積層体からなる自動車内装材に好適に用いることができる。
【0017】
本発明の塩化ビニル系樹脂用安定剤組成物は、塩化ビニル系樹脂用の安定剤の1種以上と、本発明の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤とを含有することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、本発明の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤とを含有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物においては、塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤の含有量が、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.005~3.0質量部であることが好ましい。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、粉末成形用として好適に用いることができる。
【0020】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形体は、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物から得られることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の積層体は、塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体との積層体であって、前記塩化ビニル系樹脂成形体が、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物から得られることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の自動車内装材は、本発明の塩化ビニル系樹脂成形体を含むことを特徴とするものである。
【0023】
本発明の他の自動車内装材は、本発明の積層体を含むことを特徴とするものである。
【0024】
本発明の変色抑制方法は、塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体の積層体を含む自動車内装材の変色抑制方法であって、本発明の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤を、塩化ビニル系樹脂成形体の原料樹脂である塩化ビニル系樹脂に配合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、塩化ビニル系樹脂のアミンによる変色を抑制することができ、さらに耐熱老化性も付与できる塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤、これを用いた塩化ビニル系樹脂用安定剤組成物、塩化ビニル系樹脂組成物、塩化ビニル系樹脂成形体、積層体、自動車内装材および塩化ビニル系樹脂の変色抑制方法を提供することができる。
【0026】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形体は、アミンによる変色が抑制されたものであり、自動車内装材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤]
まず、本発明の塩化ビニル系樹脂用耐アミン性付与剤について説明する。本発明の耐アミン性付与剤は、塩化ビニル系樹脂のアミン化合物による変色を抑制する、耐アミン性を塩化ビニル系樹脂に付与する機能を有する。本発明の耐アミン性付与剤は、下記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の1種以上を含有する。
【0028】
【0029】
一般式(1)中、RおよびRは、各々独立して、フッ素原子または炭素原子数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。または、RおよびRは、連結し炭素原子数1~8のパーフルオロアルキレン基を形成して、それぞれが結合する硫黄原子、および硫黄原子が結合する窒素原子とともに環を形成する。mは1、2または3を表し、mが1の場合、Mは水素原子、アルカリ金属原子、AgまたはNHを表し、mが2の場合、Mは第2族元素、Zn、MnまたはCuを表し、mが3の場合、MはLaまたはCeを表す。
【0030】
一般式(1)のRおよびRの炭素原子数1~4のパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0031】
また、一般式(1)のRおよびRは連結して、炭素原子数1~8のパーフルオロアルキレン基を形成して、それぞれが結合する硫黄原子、および硫黄原子が結合する窒素原子とともに環を形成してもよい。
【0032】
およびRは、塩化ビニル系樹脂への耐アミン性付与の点から、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基がさらにより好ましい。
【0033】
一般式(1)のMのアルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。
【0034】
一般式(1)のMの第2族元素としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが挙げられる。
【0035】
一般式(1)のMは、塩化ビニル系樹脂への耐アミン性付与の点から、アルカリ金属原子、第2族元素、Znが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、Znがより好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムがさらにより好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウムがさらにより好ましく、リチウムが最も好ましい。
【0036】
一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の、耐アミン性付与の点から好ましい具体例としては、下記化合物No.1~No.13が挙げられる。これらの中でも、耐アミン性付与の点から、化合物No.1、No.2、No.3、No.4、No.5、No.6がより好ましく、化合物No.1、No.2、No.3、No.4、No.5がさらにより好ましく、化合物No.1、No.2、No.3がさらにより好ましく、化合物No.1が最も好ましい。
【0037】
【0038】
[塩化ビニル系樹脂用安定剤組成物]
本発明の耐アミン性付与剤は、塩化ビニル系樹脂用の安定剤の1種以上と併用して、塩化ビニル系樹脂用安定剤組成物として使用することも好ましい。本発明の安定剤組成物は、自動車内装材に好適に用いられるものであり、特に、後述する塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体との積層体からなる自動車内装材に使用することがより好適である。
【0039】
耐アミン性付与剤と併用される塩化ビニル系樹脂用の安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、有機酸の亜鉛塩が好ましい。かかる有機酸の亜鉛塩としては、有機カルボン酸、フェノール類または有機リン酸類等の亜鉛塩が挙げられる。
【0040】
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2-エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、イソウンデシル酸、ラウリン酸、イソラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、バーサチック酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、o-トルイル酸、m-トルイル酸、p-トルイル酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、2,4-ジメチル安息香酸、3,5-ジメチル安息香酸、2,4,6-トリメチル安息香酸、エチル安息香酸、2-エチル安息香酸、3-エチル安息香酸、4-エチル安息香酸、2,4,6-トリエチル安息香酸、4-イソプロピル安息香酸、n-プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p-第三オクチルサリチル酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エレオステアリン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リシノール酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等の一価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヒドロキシフタル酸、クロルフタル酸、アミノフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸等の二価カルボン酸若しくはこれらのモノエステルまたはモノアマイド化合物;ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の三価または四価カルボン酸のジまたはトリエステル化合物が挙げられる。
【0041】
フェノール類としては、例えば、第三ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、n-ブチルフェノール、イソアミルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、イソオクチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、第三オクチルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクタデシルフェノール、ジイソブチルフェノール、メチルプロピルフェノール、ジアミルフェノール、メチルイソヘキシルフェノール、メチル第三オクチルフェノール等が挙げられる。
【0042】
有機リン酸類としては、例えば、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ-(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステル等が挙げられる。
【0043】
有機酸の亜鉛塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩若しくは塩基性塩の塩基の一部または全部を炭酸で中和した過塩基性錯体であってもよい。
【0044】
有機酸の亜鉛塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸による亜鉛塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価の亜鉛と塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価の亜鉛と塩を形成していてもよい。
【0045】
有機酸の亜鉛塩は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、安息香酸亜鉛、トルイル酸亜鉛、4-tert-ブチル安息香酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、バーサチック酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、パルミチン亜鉛、ミリスチン亜鉛が好ましい。有機酸の亜鉛塩は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の安定剤組成物に、有機酸の亜鉛塩を含有させる場合、その含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、5~20000質量部が好ましく、10~8000質量部がより好ましく、20~800質量部がさらにより好ましい。
【0047】
さらに、本発明の安定剤組成物において、耐アミン性付与剤と併用される安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、有機酸のバリウム塩、過塩基性炭酸バリウム塩の群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0048】
まず、有機酸のバリウム塩について説明する。有機酸のバリウム塩としては、有機カルボン酸、フェノール類または有機リン酸類等のバリウム塩が挙げられる。
【0049】
有機カルボン酸、フェノール類および有機リン酸類としては、例えば、有機酸の亜鉛塩で例示したものが挙げられる。
【0050】
有機酸のバリウム塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸によるバリウム塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価のバリウムと塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価のバリウムと塩を形成していてもよい。
【0051】
有機酸のバリウム塩は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、有機酸のバリウム塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩でもよい。
【0052】
次に、過塩基性炭酸バリウム塩について説明する。過塩基性炭酸バリウム塩とは、バリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体である。この錯体は、バリウムのカルボン酸正塩と炭酸バリウムとの単純な混合物とは異なり、これらが何らかのインタラクションにより錯体となっているものであり、高い金属含有量を有しながら、有機溶媒中で均一な液状を示すという特徴を有している。この錯体は、バリウムのカルボン酸正塩、炭酸バリウム、および、バリウムのカルボン酸と炭酸との複合塩を構成成分として構成されており、炭酸バリウムを中心にバリウムのカルボン酸正塩およびバリウムのカルボン酸と炭酸との複合塩がその周辺に存在し、いわばミセルのようなものが形成されることによって、有機溶媒中で均一な液状を示すものである。
【0053】
これらバリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、例えば、特開2004-238364号公報に示す製造方法によって製造することができる。
【0054】
また、バリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、種々の市販されている錯体をそのまま使用することもできる。市販されている錯体の代表的なものとしては、例えば、米国AM STABILIZERS社製の「PlastistabTM2116」(過塩基性バリウムオレート/カーボネート錯体:比重1.42~1.53、Ba=33~36%)、「PlastistabTM2513」(過塩基性バリウムオレート/カーボネート錯体:比重1.41~1.52、Ba=33~36%)、「PlastistabTM2508」(過塩基性バリウムオレート/カーボネート錯体:比重1.39~1.51、Ba=33~36%)等が挙げられる。
【0055】
これら過塩基性炭酸バリウム塩は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
本発明の安定剤組成物に、有機酸のバリウム塩または過塩基性炭酸バリウム塩を含有させる場合、それらの含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、10~60000質量部が好ましく、30~10000質量部がより好ましく、50~2000質量部がさらにより好ましい。
【0057】
さらに、本発明の安定剤組成物において、耐アミン性付与剤と併用される安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、有機酸のカルシウム塩および過塩基性炭酸カルシウム塩の群から選ばれる1種以上が好ましい。かかる有機酸のカルシウム塩としては、有機カルボン酸、フェノール類また有機リン酸類等のカルシウム塩が挙げられる。
【0058】
有機カルボン酸、フェノール類および有機リン酸類としては、例えば、有機酸の亜鉛塩で例示したものが挙げられる。
【0059】
有機酸のカルシウム塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸によるカルシウム塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価のカルシウムと塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価のカルシウムと塩を形成していてもよい。
【0060】
有機酸のカルシウム塩は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。有機酸のカルシウム塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩でもよい。
【0061】
次に、過塩基性炭酸カルシウム塩について説明する。過塩基性炭酸カルシウム塩とは、カルシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体である。この錯体は、カルシウムのカルボン酸正塩と炭酸カルシウムとの単純な混合物とは異なり、これらが何らかのインタラクションにより錯体となっているものであり、高い金属含有量を有しながら、有機溶媒中で均一な液状を示すという特徴を有している。この錯体は、カルシウムのカルボン酸正塩、炭酸カルシウム、および、カルシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩を構成成分として構成されており、炭酸カルシウムを中心にカルシウムのカルボン酸正塩およびカルシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩がその周辺に存在し、いわばミセルのようなものが形成されることによって、有機溶媒中で均一な液状を示すものである。
【0062】
カルシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、バリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体と同様の方法で製造することができる。また、種々の市販されている錯体をそのまま使用することもできる。市販されている錯体の代表的なものとしては、例えば、米国AM STABILIZERS社製の、「PlastistabTM2265」(過塩基性カルシウムオレート/カーボネート錯体:比重1.04~1.09、Ca=10%)が挙げられる。
【0063】
これら過塩基性炭酸カルシウム塩は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
本発明の安定剤組成物に、有機酸のカルシウム塩または過塩基性炭酸カルシウム塩を含有させる場合、それらの含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、10~60000質量部が好ましく、30~10000質量部がより好ましく、50~2000質量部がさらにより好ましい。
【0065】
さらに、本発明の安定剤組成物において、耐アミン性付与剤と併用される安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、β-ジケトン化合物が好ましい。かかるβ-ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、トリアセチルメタン、2,4,6-ヘプタトリオン、ブタノイルアセチルメタン、ラウロイルアセチルメタン、パルミトイルアセチルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ジステアロイルメタン、ステアロイルアセチルメタン、フェニルアセチルアセチルメタン、ジシクロヘキシルカルボニルメタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4-オクチルベンゾイル)メタン、ベンゾイルジアセチルメタン、4-メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4-カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2-カルボキシメチルベンゾイルアセチルオクチルメタン、デヒドロ酢酸、アセト酢酸エチル、シクロヘキサン-1,3-ジオン、3,6-ジメチル-2,4-ジオキシシクロヘキサン-1カルボン酸メチル、2-アセチルシクロヘキサノン、ジメドン、2-ベンゾイルシクロヘキサン等が挙げられ、これらの金属塩も同様に使用することができる。金属塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩が挙げられる。好ましい金属塩の例としては、アセチルアセトンカルシウム塩、アセチルアセトン亜鉛塩等が挙げられる。
【0066】
β-ジケトン化合物は1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのβ-ジケトン化合物の中でも、耐アミン性および耐熱老化性の点から、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタンまたはアセチルアセトン亜鉛塩が好ましい。
【0067】
本発明の安定剤組成物に、β-ジケトン化合物を含有させる場合、その含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、10~60000質量部が好ましく、30~10000質量部がより好ましく、50~2000質量部がさらにより好ましい。
【0068】
さらに、本発明の安定剤組成物において、耐アミン性付与剤と併用される安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、亜リン酸エステル化合物の1種以上が好ましい。かかる亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸トリアルキルエステル、亜リン酸ジアルキルエステル、亜リン酸ジアルキルモノアリルエステル、亜リン酸アルキルアリルエステル、亜リン酸モノアルキルジアリルエステル、亜リン酸ジアリルエステル、亜リン酸トリアリルエステル等が挙げられる。本発明の安定剤組成物においては、トリエステルでもジエステルでも使用することができるが、熱安定性の点から、トリエステルを使用することが好ましい。また、チオエステルも使用することができる。
【0069】
亜リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ-およびジ-混合ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、ジフェニル(C12~C15混合アルキル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルビス(イソトリデシル)ホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジオレイルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)-1,4-シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル-4,4’-イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12~15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、水素化-4,4’-イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス〔4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)〕・1,6-ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3-トリス(2-メチル-5-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール・2,4,6-トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
【0070】
亜リン酸エステル化合物は、1種類のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの亜リン酸エステル化合物の中でも、熱安定性の点から、炭素原子数12~80の亜リン酸エステル化合物を使用することが好ましく、炭素原子数12~46の亜リン酸エステル化合物を使用することがより好ましく、炭素原子数12~36の亜リン酸エステル化合物を使用することが好ましく、炭素原子数18~30の亜リン酸エステル化合物を使用することが特に好ましい。
【0071】
本発明の安定剤組成物に、亜リン酸エステル化合物を含有させる場合、その含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、10~30000質量部が好ましく、20~4000質量部がより好ましく、30~2000質量部がさらにより好ましい。
【0072】
さらに、本発明の安定剤組成物において、耐アミン性付与剤と併用される安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、フェノール系酸化防止剤の1種以上が好ましい。かかるフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第三ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第二ブチル-6-第三ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ第三ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0073】
フェノール系酸化防止剤は1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのフェノール系酸化防止剤の中でも、熱安定性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、または、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0074】
本発明の安定剤組成物に、フェノール系酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、1~2000質量部が好ましく、4~400質量部がより好ましく、8~200質量部がさらにより好ましい。
【0075】
さらに、本発明の安定剤組成物において、耐アミン性付与剤と併用される安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、ヒンダードアミン系光安定剤の1種以上が好ましい。かかるヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、1,2,3,4-ブタンカルボン酸/2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール/3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパナール/1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルエステル重縮合物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート/メチル=1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=セバカート混合物、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビス(1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の安定剤組成物に、ヒンダードアミン系光安定剤を含有させる場合、その含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、5~15000質量部が好ましく、10~2000質量部がより好ましく、20~700質量部がさらにより好ましい。
【0077】
さらに、本発明の安定剤組成物において、耐アミン性付与剤と併用される安定剤としては、耐アミン性と耐熱老化性の点から、無機系助剤の1種以上が好ましい。かかる無機系助剤としては、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライト化合物が挙げられる。
【0078】
ハイドロタルサイト化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
Mgx1Znx2Al(OH)2x1+2x2+4(CO1-y1/2(ClOy1mHO・・・(2)
一般式(2)中、x1、x2およびy1は各々次式、0≦x2/x1<10、2≦x1+x2<20、0≦y1≦2で表される条件を満足する数を示し、mは0または任意の整数を示す。
【0079】
ハイドロタルサイト化合物としては、マグネシウムとアルミニウム、または、亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウムからなる複塩化合物が好ましく用いられる。また、結晶水を脱水したものであってもよい。このようなハイドロタルサイト化合物は、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。ハイドロタルサイト化合物の結晶構造、結晶粒子径等に制限はない。
【0080】
また、ハイドロタルサイト化合物として、その表面をステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックス等で被覆したものも使用することができる。
【0081】
ただし、本発明の安定剤組成物において、ハイドロタルサイト化合物の中でも過塩素酸アニオンを含むものや過塩素酸塩処理されたものは、使用することは可能であるが、環境面を考慮すると、その使用は好ましくない。
【0082】
ハイドロタルサイト化合物は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
ゼオライト化合物は、独特の三次元のゼオライト結晶構造を有するアルカリまたはアルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩であり、その代表例としては、A型、X型、Y型およびP型ゼオライト、モノデナイト、アナルサイト、ソーダライト族アルミノケイ酸塩、クリノブチロライト、エリオナイトおよびチャバサイト等を挙げることができる。これらのゼオライト化合物は、結晶水(いわゆるゼオライト水)を有する含水物、または、結晶水を除去した無水物のいずれでもよく、また、その粒径が0.1~50μmのものを用いることができ、特に、0.5~10μmのものが好ましい。ゼオライト化合物は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
無機系助剤は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよく、ハイドロタルサイト化合物とゼオライト化合物とを併用してもよい。
【0085】
本発明の安定剤組成物に、無機系助剤を含有させる場合、その含有量は、耐アミン性と耐熱老化性の点から、耐アミン性付与剤100質量部に対して、50~80000質量部が好ましく、100~8000質量部がより好ましく、200~4000質量部がさらにより好ましい。
【0086】
[塩化ビニル系樹脂組成物]
次に、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物について説明する。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂に対して、本発明の耐アミン性付与剤が配合されている点に特徴を有する。
【0087】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物における、塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、およびそれら相互のブレンド品或いは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。これら塩化ビニル系樹脂は2種以上の混合物でもよく、他の合成樹脂との混合物でもよい。使用される塩化ビニル系樹脂は、耐アミン性の点から、ポリ塩化ビニルが好ましく、特に粉体成形用に用いられるポリ塩化ビニルが好ましい。
【0088】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物において、本発明の耐アミン性付与剤は、塩化ビニル系樹脂への耐アミン性付与の点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.005~3.0質量部使用することが好ましく、0.01~2.0質量部がより好ましく、0.05~1.0質量部がさらにより好ましく、0.1~0.3質量部がさらにより好ましい。0.005質量部未満だと、耐アミン性が不充分な場合があり、3.0質量部を超えても、効果の向上は小さく、むしろ他の性能に悪影響を与える可能性がある。
【0089】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物において、本発明の耐アミン性付与剤は、上記安定剤組成物として、塩化ビニル系樹脂に配合してもよいし、上記塩化ビニル系樹脂用の安定剤や配合する他の成分と別々に、塩化ビニル系樹脂に配合してもよい。
【0090】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、可塑剤を含有させることが好ましい。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等のホスフェート系可塑剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸を用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーとして使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
これら可塑剤のなかでも、トリメリット酸エステル化合物であるトリメリット酸系可塑剤およびピロメリット酸エステル化合物であるピロメリット酸系可塑剤からなる群より選ばれる少なくとも一種以上が、耐アミン性の点から好ましい。
【0092】
トリメリット酸エステル化合物またはピロメリット酸エステル化合物としては、それぞれトリメリット酸またはピロメリット酸と一価アルコールとのトリエステル化合物またはテトラエステル化合物が用いられる。
【0093】
トリメリット酸トリエステル化合物またはピロメリット酸テトラエステル化合物を製造するために使用される一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第二ブチルアルコール、第三ブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール等の直鎖または分岐のアルコールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0094】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物において、可塑剤の含有量は、耐アミン性の点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、5~200質量部が好ましく、10~150質量部がより好ましい。
【0095】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、塩化ビニル系樹脂用の安定剤の1種以上を含有させることが好ましい。安定剤は、安定剤組成物として配合してもよいし、それぞれ個別に配合してもよい。
【0096】
また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、通常、塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる他の添加剤、例えば、エポキシ化合物、多価アルコール化合物、紫外線吸収剤、充填剤等を添加することができる。
【0097】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型およびノボラック型のエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化トール油脂肪酸オクチル、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸メチル,-ブチル,-2-エチルヘキシルまたは-ステアリル、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、3-(2-キセノキシ)-1,2-エポキシプロパン、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシル-6-メチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。エポキシ化合物は1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
多価アルコール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。多価アルコール化合物は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-ベンゾトリアゾリル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル等の2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第三ブチルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第三アミルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0100】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ハイドロカルマイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモン、シリカ、ガラスビーズ、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、アスベスト、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、PMF(processed mineral fiber、プロセスドミネラルファイバー)、石膏繊維、ゾノライト、MOS(Magnesium Hydroxide Sulfate Hydrate、繊維状マグネシウム化合物)、ホスフェートファイバー、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。これらの充填剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、さらに必要に応じて、通常、塩化ビニル系樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、発泡剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、溶剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。これらの任意成分は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
滑剤の例を挙げると、低分子ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、塩素化炭化水素、フルオロカーボン等の炭化水素系滑剤;カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス系滑剤;ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、または、ヒドロキシステアリン酸のようなオキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリルアミド、ラウリルアミド、オレイルアミド等の脂肪族アミド化合物またはメチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミドのようなアルキレンビス脂肪族アミド等の脂肪族アミド系滑剤;ステアリルステアレート、ブチルステアレート、ジステアリルフタレート等の脂肪酸1価アルコールエステル化合物、または、グリセリントリステアレート、ソルビタントリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ポリグリセリンポリリシノレート、硬化ヒマシ油等の脂肪酸多価アルコールエステル化合物、または、ジペンタエリスリトールのアジピン酸・ステアリン酸エステルのような1価脂肪酸および多塩基性有機酸と多価アルコールの複合エステル化合物等の脂肪酸アルコールエステル系滑剤;ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール等の脂肪族アルコール系滑剤;金属石鹸類;部分ケン化モンタン酸エステル等のモンタン酸系滑剤;アクリル系滑剤;シリコーンオイル等が挙げられる。これらの滑剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
顔料としては、例えば、二酸化チタン等の白色顔料、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルー等の青色顔料が挙げられる。
【0104】
加工助剤としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体;上記アルキルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとの共重合体;上記アルキルメタクリレートと、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物との共重合体;上記アルキルメタクリレートと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等との共重合体等を挙げることができる。これらの加工助剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、さらに、通常、塩化ビニル系樹脂に用いられる他の添加剤、例えば、硫黄系酸化防止剤、耐衝撃性改良剤、強化材、過塩素酸塩類、有機酸のマグネシウム塩、過塩基性炭酸マグネシウム塩、難燃剤、難燃助剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。
【0106】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β-ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。これらの硫黄系酸化防止剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
耐衝撃性改良剤としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエン系共重合体ゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系グラフト共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン系グラフト共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体ゴム、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)、シリコーン含有アクリル系ゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、シリコーン系ゴム等を挙げることができる。なお、上記のエチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)のジエンとしては、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、プロペニルノルボルネン等を挙げることができる。これらの耐衝撃性改良剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
強化剤としては、通常、合成樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。強化剤としては、具体的には例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維等の無機繊維状強化材、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙およびウール等の有機繊維状強化剤、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土等の板状や粒状の強化剤が挙げられる。これらの強化剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤等で処理されていてもよい。これらの強化剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
過塩素酸塩類としては、例えば、過塩素酸金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸処理珪酸塩等が挙げられる。これらの金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛、アルミニウム等が例示できる。過塩素酸金属塩は、無水物でも含水塩でもよく、また、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアジペート等のアルコール系およびエステル系の溶剤に溶かしたもの、および、その脱水物でもよい。これらの過塩素酸塩類は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ただし、本発明の樹脂組成物において、過塩素酸塩類については、安全面および環境面の点を考慮すると、その使用は好ましくない。
【0110】
有機酸のマグネシウム塩について説明する。有機酸のマグネシウム塩としては、有機カルボン酸、フェノール類または有機リン酸類等のマグネシウム塩が挙げられる。
【0111】
有機カルボン酸、フェノール類および有機リン酸類としては、例えば、有機酸の亜鉛塩で例示したものが挙げられる。
【0112】
有機酸のマグネシウム塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸によるマグネシウム塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価のマグネシウムと塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を構成し、カチオン部位を構成する2価のマグネシウムと塩を形成していてもよい。
【0113】
有機酸のマグネシウム塩は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、有機酸のマグネシウム塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩でもよい。
【0114】
過塩基性炭酸マグネシウム塩について説明する。過塩基性炭酸マグネシウム塩とは、マグネシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体である。この錯体は、マグネシウムとカルボン酸正塩と炭酸マグネシウムとの単純な混合物とは異なり、これらが何らかのインタラクションにより錯体となっているものであり、高い金属含有量を有しながら、有機溶媒中で均一な液状を示すという特徴を有している。この錯体は、マグネシウムのカルボン酸正塩、炭酸マグネシウム、および、マグネシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩を構成成分として構成されており、炭酸マグネシウムを中心にマグネシウムのカルボン酸正塩およびマグネシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩がその周辺に存在し、いわばミセルのようなものが形成されることによって、有機溶媒中で均一な液状を示すものである。
【0115】
マグネシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、バリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体と同様の方法で製造することができる。また、市販されている錯体をそのまま使用することもできる。
【0116】
これら過塩基性炭酸マグネシウム塩は、1種類のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0117】
難燃剤および難燃助剤の例としては、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、その他無機リン、ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、三酸化アンチモン等の酸化アンチモン、その他の無機系難燃助剤、有機系難燃助剤等が挙げられる。
【0118】
トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3-ヘキシレンジメラミン等が挙げられる。
【0119】
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(水酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0120】
リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0121】
縮合リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。イントメッセント系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ピペラジン等の、(ポリ)リン酸のアンモニウム塩やアミン塩が挙げられる。
【0122】
その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク等の無機化合物、および、その表面処理品が挙げられ、例えば、TIPAQUE R-680(酸化チタン:石原産業(株)製)、キョーワマグ150(酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等の種々の市販品を用いることができる。
【0123】
これらの難燃剤および難燃助剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0124】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、鉛系安定剤、カドミウム系安定剤、スズ系安定剤を含有することも可能であるが、毒性や環境に対する悪影響の点からは、含有しないことが好ましい。
【0125】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、さらに、通常、塩化ビニル系樹脂に使用される安定化助剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。このような安定化助剤としては、例えば、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p-第三ブチル安息香酸等が用いられる。
【0126】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、本発明の耐アミン性付与剤、塩化ビニル系樹脂、および、必要に応じて安定剤、可塑剤、各種添加剤を、例えば、モルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合することで調製することができ、これにより、塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉を得ることができる。
【0127】
また、本発明の耐アミン性付与剤、塩化ビニル系樹脂、および、必要に応じて安定剤、可塑剤、各種添加剤を、例えば、コニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することで、ペレット状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0128】
また、本発明の耐アミン性付与剤、ペースト状の塩化ビニル系樹脂、および、必要に応じて安定剤、可塑剤、各種添加剤を、例えば、ポニーミキサー、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ディゾルバー、二軸ミキサー、ヘンシェルミキサー、三本ロールミル等の混合機により均一に混合し、必要に応じて減圧下で脱泡処理して、ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0129】
[塩化ビニル系樹脂成形体]
次に本発明の塩化ビニル系樹脂成形体について説明する。
本発明の塩化ビニル系樹脂成形体は、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物(配合粉状やペレット状)を、真空成形、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形して、得ることができる。
【0130】
一方、ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スラッシュ成形、スクリーン加工等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0131】
本発明においては、耐アミン性の点から、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、粉体スラッシュ成形、流動浸漬成形、粉体回転成形等の粉体成形によって得られる成形体が好ましく、中でも、粉体スラッシュ成形によって得られる成形体が、特に好ましい。よって、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、粉体成形用として好適である。
【0132】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形、星形、多角形形状等が挙げられる。
【0133】
[積層体]
本発明の塩化ビニル系樹脂成形体は、耐アミン性の点から、ポリウレタンを用いた成形体、特に、ポリウレタン発泡成形体との積層体とした場合に有用である。
【0134】
ポリウレタンを用いた成形体、特に、ポリウレタン発泡成形体は、従来公知のものであればよく、例えば、次のようにして得られる。すなわち、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤および触媒を含有するポリウレタン発泡成形体の原料を反応させ、発泡および硬化させることにより得られる。
【0135】
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、多価アルコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオール、それらの変性体等が用いられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールの他、ラクトン系ポリエステルポリオールおよびポリカーボネート系ポリオールが用いられる。
【0136】
ポリイソシアネート類は、イソシアネート基を複数個有する化合物であって、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物等が用いられる。
【0137】
発泡剤は、ポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡成形体とするためのものであり、例えば、水の他、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。
【0138】
触媒は、ポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものである。触媒としては、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、トリフェニルアミン、トリエチルアミン、N、N、N’、N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-アセチルモルホリン、N-オクチルモルホリン、N-フェニルモルホリン、N-ヒドロキシルエチルモルホリン、N-ヒドロキシルメチルモルホリン、4,4’-ジチオジモルホリン、ジメチルピペラジン、N、N、N’、N’-テトラメチルプロパンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N、N-ジメチルエタノールアミン、ジメチルヘキサデシルアミン、1-(2-エチルヘキセニル)ピペラジン、トリ-n-オクチルアミン、トリメチルアミン、N、N’-ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン、1,2,4-トリメチルピペラジン、N-メチルジシクロへキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン等の第3級アミンであるアミン触媒が好ましい。
【0139】
本発明は、このウレタン化反応を促進するアミン触媒による、塩化ビニル系樹脂の変色を抑制する効果を付与することに優れており、好ましい。
【0140】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形体、および、塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体との積層体は、耐アミン性の点から、自動車内装材として有用であり、好ましい。
【0141】
[自動車内装材]
本発明の自動車内装材は、本発明の塩化ビニル系樹脂成形体、または、本発明の積層体を含むものであればよい。特に、本発明の自動車内装材は、塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体から構成される積層体からなる表皮層と、構造を保持するための基材層から構成されることが好ましい。基材層としては、ポリプロピレン樹脂成形体やABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)成形体等の公知のものが用いられる。
【0142】
自動車内装材としては、例えば、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、グローブボックス、ピラートリム、ダッシュボード、トランクトリム、座席シート、天井材、ATシフト、アームレスト、ヘッドレスト、フロアカーペット、ワイヤーハーネス、各種モール、サッシュ、シーリング材、ウェザーストリップ、ガスケット、アンダーコート材等が挙げられる。特に、本発明の積層体を用いた自動車内装材は、例えば、インストルメントパネル、ドアトリム、座席シート、天井材等として非常に有用であり、好ましい。
【0143】
[変色抑制方法]
本発明の塩化ビニル系樹脂の変色抑制方法(以下、単に変色抑制方法)は、塩化ビニル系樹脂成形体とポリウレタン発泡成形体との積層体を含む自動車内装材の変色抑制方法であって、本発明の耐アミン性付与剤を、塩化ビニル系樹脂成形体の原料樹脂である塩化ビニル系樹脂に配合するものである。本発明の変色抑制方法においては、塩化ビニル系樹脂に対して、本発明の耐アミン性付与剤を単独で加えてもよく、本発明の安定剤組成物として添加してもよい。
【実施例0144】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
〔実施例1~9、比較例1~2〕
塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)製、TK-1300(平均重合度1300))100質量部と、アデカサイザーC-8L(トリメリット酸系可塑剤、株式会社ADEKA製)70質量部と、エポキシ化大豆油(エポキシ化合物)5質量部と、アデカスタブLS-12(滑剤、株式会社ADEKA製)0.2質量部と、ステアリン酸亜鉛(安定剤、有機酸の亜鉛塩)0.3質量部と、ミズカライザーDS(無機系助剤、ゼオライト、水澤化学工業株式会社製)1.04質量部と、ジベンゾイルメタン(β-ジケトン化合物)0.21質量部と、さらに、耐アミン性付与剤として、以下の化合物No.1、No.2、No.3.No.4、No.5、No.6を表1記載の配合量(質量部)で、混合して、各実施例の塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0145】
次に、粉体スラッシュ成形により、シートを作製した。すなわち、得られた塩化ビニル系樹脂組成物をヘンシェルミキサーで110℃まで昇温し、その後、50℃まで降温し、ドライアップした。得られたドライアップコンパウンドを、表面温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけて、15秒間静置して溶融させた。余分なコンパウンドを振り落としてから、金型を250℃に設定したオーブンに入れ、45秒間静置した。金型をオーブンから取出し、水冷して、厚さ1mmの塩化ビニル樹脂シートを得た。
【0146】
得られた塩化ビニル樹脂シートに、発泡ポリウレタンを10mmの厚さでバッキングし、積層体を作製した。得られた積層体を用いて、下記<耐アミン性試験>を行った。結果を表1、2に示す。また、耐アミン性付与剤を配合しないものを比較例1として、各実施例と同様に評価した。さらに耐アミン性付与剤を配合しないかわりに、過塩素酸ナトリウムを0.2質量部配合したもの比較例2として各実施例と同様に評価した。結果を表1、2に示す。
【0147】
また、得られた塩化ビニル樹脂シートを用いて、下記<耐熱老化試験>を行った。結果を表1、2に示す。また、耐アミン性付与剤を配合しないものを比較例1として、各実施例と同様に評価した。さらに耐アミン性付与剤を配合しないかわりに、過塩素酸ナトリウムを0.2質量部配合したもの比較例2として各実施例と同様に評価した。結果を表1、2に示す。
【0148】
<耐アミン性試験>
得られた積層体をオーブンに入れ、115℃で1000時間加熱した後、塩化ビニル樹脂シートと発泡ポリウレタンとを分離し、その後、塩化ビニル樹脂シートの加熱前後の色差(ΔE)を測定した。数値が小さいほど、耐アミン性に優れるといえる。結果を表1、2に示す。なお、表中では、耐アミン性色差(ΔE)と表記した。
【0149】
<耐熱老化試験>
得られた塩化ビニル樹脂シートをオーブンに入れ、115℃で1000時間加熱し、その後、塩化ビニル樹脂シートの加熱前後の色差(ΔE)を測定した。数値が小さいほど、耐熱老化性に優れるといえる。結果を表1に示す。なお、表中では、耐熱老化性色差(ΔE)と表記した。
【0150】
耐アミン性付与剤
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
表1、2に示す結果から、本発明の耐アミン性付与剤は、塩化ビニル系樹脂のアミンによる変色抑制および熱老化による変色抑制に優れることが明らかである。