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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033227
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】生分解性フィルム及び蓋材
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240306BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240306BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240306BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08L67/00 ZBP
C08K3/013
C08L9/00
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136701
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小関 祐子
(72)【発明者】
【氏名】木村 菜々子
(72)【発明者】
【氏名】森谷 貴史
(72)【発明者】
【氏名】所 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮則
【テーマコード(参考)】
3E086
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BB51
3E086BB90
4J002BB212
4J002CF001
4J002CF031
4J002CF032
4J002DJ046
4J002FD016
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、生分解性ポリエステル系樹脂を用いた各種容器に対し、広範なヒートシール温度において安定した凝集破壊による易開封性(易剥離性)を実現し、また良好な剛性や成膜性、耐衝撃性、耐ブロッキング性等を有し包装用途に好適に使用できる生分解性フィルムを提供することにある。
【解決手段】本発明は、生分解性ポリエステル系樹脂と、流動性改質剤と、無機フィラーを含有するヒートシール層(A)を含み、前記ヒートシール層(A)中に前記無機フィラーを10質量%以上含有し、前記流動性改質剤が、少なくとも1方の末端にカルボキシル基を有するポリエステルであり、前記無機フィラーと前記流動性改質剤の比が、無機フィラー/流動性改質剤=1~20の範囲であることを特徴とする生分解性フィルムにより、上記課題を解決するものである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル系樹脂と、流動性改質剤と、無機フィラーを含有するヒートシール層(A)を含み、
前記ヒートシール層(A)中に前記無機フィラーを10質量%以上含有し、
前記流動性改質剤が、少なくとも1方の末端にカルボキシル基を有するポリエステルであり、
前記無機フィラーと前記流動性改質剤の比が、無機フィラー/流動性改質剤=1~20の範囲であることを特徴とする、生分解性フィルム。
【請求項2】
前記ヒートシール層(A)を構成する樹脂成分中の生分解性ポリエステル系樹脂の含有量が、80質量%以上である、請求項1に記載の生分解性フィルム。
【請求項3】
被着体に被着した際に、前記ヒートシール層(A)での凝集破壊による易開封性を有する請求項1に記載の生分解性フィルム。
【請求項4】
請求項1~3に記載の生分解性フィルムを含むラミネートフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の生分解性フィルムと被着体からなり、前記被着体の前記ヒートシール層(A)と接着する層が、ポリブチレンサクシネート系樹脂を主たる樹脂成分として含有する、包装体。
【請求項6】
前記被着体が生分解性である、請求項5に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を持つ包装容器のヒートシール部等の被着体に対して良好な接着性を有し、かつ好適に剥離可能な易開封性を実現できる、生分解性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、包装袋や包装容器等の各種プラスチック製包装材には、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の材料が広く使用されている。近年、これらプラスチック製包装材は、化石資源を原料として使用していることや、環境中に廃棄されると長期間分解しないこと等、環境への負荷が大きいことから、植物由来の原料を使用したバイオ樹脂や、土中や水中で加水分解や生分解により分解する生分解性樹脂等、環境負荷の小さい材料の使用が検討されている。
【0003】
また、包装体や包装容器の蓋材等には、力を掛けずに開封できる易開封性が求められている。易開封性を付与するための手段は、シール層とそれに直接積層した基材層との間で剥離する、層間剥離タイプと、シール層と被着体の間で剥離する、界面剥離タイプと、シール層が破壊されて剥離する、凝集破壊タイプに大別される。界面剥離タイプの蓋材は、一般的に、シール温度やシール圧力の影響により、シール強度のフレが大きくなる傾向があり、また、被着体の表面状態の影響も受けやすい。これに対して、凝集破壊タイプのシール層は、シール強度の安定性に比較的優れており、夾雑物シール性にも優れる。さらに、凝集破壊タイプは、剥離した箇所が白化し剥離痕がはっきりと残ることで開封の証となり、不正開封防止になるという利点もある。
【0004】
環境対応に配慮した易開封性の包装材として、本出願人らは先に、環境負荷低減材料をはじめとする各種材料に対しても好適なヒートシール性と易開封性とを有し、包装用途に好適に使用できる積層フィルムを開発している(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載の積層フィルムは、界面剥離による易開封性を有するフィルムであり、シール温度やシール圧力の影響により、シール強度がふれる場合があった。また、当該積層フィルムは夾雑物の影響でシール強度や密閉性が落ちる場合があった。さらに、当該積層フィルムは剥離した箇所に痕が残らず、不正開封防止機能を有していない。
【0005】
また、凝集破壊タイプの積層フィルムとして、熱可塑性樹脂に無機微粒子と分散剤を含有するフィルムが開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、生分解性樹脂、特に生分解性ポリエステル系樹脂は一般に高極性であるために流動性が悪く、無機フィラーとも馴染みづらい傾向があるため、特許文献2に記載の発明は、生分解性ポリエステル系樹脂に応用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2021/002206号公報
【特許文献2】特開2015-63125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、生分解性ポリエステル系樹脂を用いた各種容器に対し、広範なヒートシール温度において安定した凝集破壊による易開封性(易剥離性)を実現し、また良好な剛性や成膜性、耐衝撃性、耐ブロッキング性等を有し包装用途に好適に使用できる生分解性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生分解性ポリエステル系樹脂と、流動性改質剤と、無機フィラーを含有するヒートシール層(A)を含み、前記ヒートシール層(A)中に前記無機フィラーを10質量%以上含有し、前記流動性改質剤が、少なくとも1方の末端にカルボキシル基を有するポリエステルであり、前記無機フィラーと前記流動性改質剤の比が、無機フィラー/流動性改質剤=1~20の範囲であることを特徴とする生分解性フィルムにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生分解性フィルムは、良好な剛性や成膜性、耐衝撃性、耐ブロッキング性等を有し包装用途に好適に使用できる。また、本発明の生分解性フィルムは、広範な温度域において安定したヒートシール性や易開封性を有することから、各種包装材として好適に使用できる。さらに、広範なヒートシール温度に渡って凝集破壊による易開封性を実現できることから、生産ラインコントロールが容易である。
【0010】
また、本発明の生分解性フィルムは凝集破壊タイプであるため、界面剥離タイプに比べて被着体の表面状態の影響を受けにくく、夾雑物シール性に優れている。さらに、凝集破壊タイプは、剥離した箇所が白化することで開封の証となり、不正開封防止になるため、食品用や医療用の包装用途に特に好適である。
【0011】
さらに、本発明の生分解性フィルムは、ヒートシール層に生分解性樹脂を含有し、当該ヒートシール層と積層する樹脂層においても生分解性樹脂を含有することから、生分解性フィルム自体の環境対応性も高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の生分解性フィルムは、生分解性ポリエステル系樹脂と、流動性改質剤と、無機フィラーを含有するヒートシール層(A)を含み、前記ヒートシール層(A)中に前記無機フィラーを10質量%以上含有し、前記流動性改質剤が、少なくとも1方の末端にカルボキシル基を有するポリエステルであり、前記無機フィラーと前記流動性改質剤の比が、無機フィラー/流動性改質剤=1~20の範囲であることを特徴とする生分解性フィルムである。
【0013】
[ヒートシール層(A)]
本発明に使用するヒートシール層(A)は、生分解性ポリエステル系樹脂と、流動性改質剤と、無機フィラーを含有する。当該ヒートシール層(A)は、被着体にシールすると、開封時に凝集破壊を起こし、易開封性を実現する。
【0014】
[生分解性ポリエステル系樹脂]
本発明において「生分解性」とは、土壌中、水中、海洋中等に存在する微生物の働きによって分子レベルまで分解可能であることを意味する。
本発明のヒートシール層(A)に使用する生分解性ポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、及びその他の生分解性ポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂が好ましく、ポリブチレンサクシネート系樹脂がより好ましい。また、ポリ乳酸系樹脂とポリブチレンサクシネート系樹脂を併用することも好ましい。
【0015】
上記ポリ乳酸系樹脂としては例えば、ポリ乳酸(ポリ(D-乳酸)、ポリ(L-乳酸))、D-乳酸とL-乳酸の共重合体、D-乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、L-乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ジカルボン酸及びジオールをエステル反応させて得られたポリエステル成分を乳酸成分と共重合させた重合体等が挙げられる。なかでも、成膜安定性や入手容易性等の観点からポリ乳酸が好ましく、主たる構造単位がL-乳酸であるポリ乳酸が寄り好ましい。これら重合体は、単独で使用しても併用して使用してもよい。
【0016】
上記ヒドロキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカプロン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類等のヒドロキシカルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0017】
上記ポリ乳酸系樹脂は、押出成形時に良好な流動性を実現しやすいことからメルトフローレート(190℃、21.18N)が、好ましくは0.5~30g/10分、より好ましくは2~25g/10分である。かかるメルトフローレートの範囲であると、押出成形が容易であり、また、共押出多層化するときに、隣接層との流動性も良好でより外観に優れた生分解性フィルムを得やすくなる。
【0018】
また、上記ポリ乳酸系樹脂の密度は1.20~1.26g/cmであることが好ましく、1.23~1.25g/cmであることがより好ましい。
【0019】
上記ポリブチレンサクシネート系樹脂としては、例えば、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体(PBSA)が挙げられる。当該ポリ(ブチレンサクシネート)は、1,4-ブタンジオールとコハク酸の重縮合物であり、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、1,4-ブタンジオールとコハク酸に加えて、アジピン酸を加えた重縮合物である。かかるポリ(ブチレンサクシネート及びポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、分子量を上げるために、乳酸又は多官能イソシアネート化合物によって高分子量化することができ、適当な分子量に調整できる。
【0020】
ポリブチレンサクシネート系樹脂のメルトフローレート(190℃、21.18N)は、0.5~25g/10分程度がフィルム押出成形性の点から好ましく、さらに好ましくは1~20g/10分である。
【0021】
また、ポリブチレンサクシネート系樹脂の密度は1.20~1.29g/cmであることが好ましく、1.21~1.27g/cmであることがより好ましい。
【0022】
(その他の生分解性ポリエステル系樹脂)
上記その他の生分解性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、β-プロピオラクトンやγ-バレロラクトン等の開環重合体等の脂肪族ポリエステル化合物;アジピン酸と1.4-ブタンジオ-ルとテレフタル酸のコポリエステル(ポリブチレンアジペートテレフタレート)、コハク酸とエチレングリコールよりなるポリエステル(ポリエチレンサクシネート)、アジピン酸と1.4-ブタンジオ-ルよりなるポリエステル、コハク酸と1.6-ヘキサンジオ-ルよりなるポリエステル、等の脂肪族2塩基酸と脂肪族ジオ-ルよりなるポリエステル等;及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0023】
また、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合物としては、上記した脂肪族ポリエステル化合物、又は、これらを合成する際に1~50質量%、好ましくは5~30質量%の、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やP-ヒドロキシ安息香酸、P-ヒドロキシエチル安息香酸、P-ヒドロキシフェニル酢酸等の芳香族ジカルボン酸や芳香族オキシカルボン酸を反応させた樹脂が挙げられる。
【0024】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルの共重合体としては、ポリ乳酸とエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類とコハク酸、メチルグルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸から得られる脂肪族ポリエステルの共重合体が挙げられる。乳酸系ポリエステルの製造で用いられる重合触媒としては、例えば、エステル交換触媒として知られる、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、コバルト等の金属及びその化合物、特に金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物、なかでもオクタン酸錫、塩化亜鉛、アルコキシチタン等が挙げられる。
【0025】
本発明に使用する生分解性ポリエステル系樹脂としては、市販品を使用しても良い。市販品としては、「プラクセル」シリーズ(ポリカプロラクトン、株式会社ダイセル製)、「BIOMAX」(変性ポリエステル、DuPont製)等が挙げられる。
【0026】
ヒートシール層(A)中の生分解性ポリエステル系樹脂の含有量は、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、複数の生分解性ポリエステル系樹脂を併用する場合は、その合計含有量が、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に樹脂成分がこれら樹脂のみからなるものであってもよい。このような含有量とすることで、生分解性を発揮することができ、環境負荷の低減につながる。
【0027】
(その他の生分解性樹脂)
ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外のその他の生分解性樹脂を含有してもよい。その他の生分解性樹脂としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸の共重合体、3-ヒドロキシ酪酸と4-ヒドロキシ酪酸の共重合体、等のポリヒドロキシアルカノエート類;ポリビニルアルコール;プルラン;キトサン、澱粉系グリーンプラ、エステル化澱粉、セルロース、酢酸セルロース等の天然系の生分解性樹脂;等がある。
【0028】
上記その他の生分解性樹脂は、単独で使用しても良いし、併用しても良い。
また、上記その他の生分解性樹脂は、市販品を使用しても良い。市販品としては、「マタビー」(澱粉系、Novamont社製)、「エクセバール」(ポリビニルアルコール、株式会社クラレ製)「プルラン」(株式会社林原製)等が挙げられる。
【0029】
上記その他の生分解性樹脂を使用する場合は、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の20質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましい。このような含有量とすることで、各種材料への好適なヒートシール性や易開封性、耐衝撃性等を得やすくなる。
【0030】
(その他の樹脂)
また、ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記生分解性樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。当該その他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂を好ましく例示できる。当該他の樹脂は植物由来であることが、環境負荷低減の観点から好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等が挙げられる。
【0031】
また、上記ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を使用できる。
【0032】
また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエステルの構成モノマーである、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を含むものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が知られている。又これらの芳香族ポリエステル系樹脂の他方の構成モノマーであるジオール成分としては、特に制限はない。通常、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族ジオールが使われることが多いが、Tgを低下させず結晶性を低下させるために、シクロヘキサンジメタノールのような脂肪族ジオールを使用した、芳香族脂肪族ポリエステル樹脂(PETG)も、よく使用できる。
【0033】
上記その他の樹脂を使用する場合には、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
【0034】
[流動性改質剤]
本発明のヒートシール層(A)は、少なくとも一方の末端にカルボキシル基をするポリエステルである流動性改質剤を含有する。当該流動性改質剤は、上記生分解性ポリエステル系樹脂と無機フィラーとの混合物の流動性を高める機能を有する。当該ヒートシール層(A)は当該流動性改質剤により、多量の無機フィラーを含む生分解性ポリエステル系樹脂組成物であってもフィルム加工が可能である。その結果、ヒートシール層(A)は凝集破壊による易開封性を有するものとなる。
【0035】
本発明に使用する生分解性ポリエステル系樹脂は一般に高極性であり、分子鎖の絡み合いによって高粘度化し易い性質を有する。当該生分解性ポリエステル系樹脂に対し、少なくとも一方の末端にカルボキシル基を有するポリエステルを流動性改質剤として添加すると、当該流動性改質剤に含まれるカルボキシル基が無機フィラーに吸着し、それと同時に生分解性ポリエステルの極性に近い流動性改質剤の主鎖が生分解性樹脂との相溶性を担保すると考えられる。また当該流動性改質剤は、当該生分解性ポリエステルの分子鎖の間に入り込むことによって絡み合いを解く為、粘度を下げる効果があると考えられる。これにより、無機フィラーを含む生分解性ポリエステル系樹脂の流動性を高め、無機フィラーの多量添加が可能になると推測される。
【0036】
上記流動性改質剤は、少なくとも一方の末端にカルボキシル基をするポリエステルであり、好ましくは下記一般式(A)で表される繰り返し単位と、下記一般式(G)で表される繰り返し単位とを有するポリエステル、又は、下記一般式(L)で表される繰り返し単位と、下記一般式(A)で表される繰り返し単位と、下記一般式(G)で表される繰り返し単位とを有するポリエステルである。
【0037】
【化1】

(上記一般式(A)、(G)及び(L)中、Aは、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基であり、Gは、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基であり、Lは、炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基である。)
【0038】
上記流動性改質剤の重合形式は特に限定されず、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体でもよく、上記繰り返し単位を含むブロック共重合体でもよい。
【0039】
上記流動性改質剤は、より好ましくは下記一般式(1)で表されるポリエステル及び/又は下記一般式(2)で表されるポリエステルである。
【0040】
【化2】

(上記一般式(1)及び(2)中、A1、A2及びA3は、それぞれ独立に、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基であり、G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基であり、nは、繰り返し数を表し、0~20の範囲の整数である。
ただし、括弧で括られた繰り返し単位毎にA1及びG1はそれぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。)
【0041】
なお、「二塩基酸残基」とは、二塩基酸から塩基酸官能基を除いた有機基である。
例えば二塩基酸残基がジカルボン酸残基である場合、上記ジカルボン酸残基とは、ジカルボン酸が有するカルボキシル基を除いた残りの有機基を示すものである。
ジカルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
また、「ジオール残基」とは、ジオールから水酸基を除いた残りの有機基を示すものである。
また、「ヒドロキシカルボン酸残基」とは、ヒドロキシカルボン酸から水酸基及びカルボキシル基をそれぞれ除いた残りの有機基を示すものである。
ヒドロキシカルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
【0042】
A、A1、A2及びA3の炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、脂環構造及び/又はエーテル結合(-O-)を含んでもよい。
A、A1、A2及びA3の炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基であり、当該炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基としては、コハク酸残基、アジピン酸残基、マレイン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、シクロヘキサンジカルボン酸残基、ドデカンジカルボン酸残基、ヘキサヒドロフタル酸残基等が挙げられる。
【0043】
A、A1、A2及びA3の炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数2~10の脂肪族ジカルボン酸残基であり、より好ましくはコハク酸残基、セバシン酸残基、マレイン酸残基、アジピン酸残基であり、さらに好ましくはセバシン酸残基、マレイン酸残基、アジピン酸残基である。
【0044】
A、A1、A2及びA3の炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数6~15の芳香族ジカルボン酸残基であり、これらとしては、フタル酸残基等が挙げられる。
【0045】
A、A1、A2及びA3は、好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基であり、より好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基であり、さらに好ましくは炭素原子数2~10の脂肪族ジカルボン酸残基である。
【0046】
G、G1及びG2の炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基としては、エチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,3-プロピレングリコール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、1,5-ペンタンジオール残基、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)残基、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロ-ルペンタン)残基、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)残基、3-メチル-1,5-ペンタンジオール残基、1,6-ヘキサンジオール残基、2,2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオール残基、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール残基、2-メチル-1,8-オクタンジオール残基、1,9-ノナンジオール残基等が挙げられる。
【0047】
G、G1及びG2の炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基は、脂環構造及び/又はエーテル結合(-O-)を含んでもよい。
上記脂環構造を含む炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基としては、例えば、1,3-シクロペンタンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジオール残基、1,3-シクロヘキサンジオール残基、1,4-シクロヘキサンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジメタノール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基等が挙げられる。
上記エーテル結合を含む炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基としては、例えば、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、テトラエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、トリプロピレングリコール残基等が挙げられる。
【0048】
G、G1及びG2の炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基は、好ましくは炭素原子数3~8の脂肪族ジオール残基であり、より好ましくはエチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール又は1,3-ブタンジオール残基である。
【0049】
Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基としては、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の炭素原子数3~19の脂肪族カルボン酸の脂肪鎖に水酸基が1つ置換したヒドロキシカルボン酸の残基が挙げられ、具体例としては乳酸残基、9-ヒドロキシステアリン酸残基、12-ヒドロキシステアリン酸残基、6-ヒドロキシカプロン酸残基、3-ヒドロキシ酪酸残基、3-ヒドロキシ吉草酸残基、3-ヒドロキシヘキサン酸残基、3-ヒドロキシプロピオン酸残基、4-ヒドロキシ酪酸残基、5-ヒドロキシ吉草酸残基等が挙げられる。
【0050】
Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基は、好ましくは炭素原子数4~18の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基であり、より好ましくは12-ヒドロキシステアリン酸残基である。
【0051】
nの繰り返し数は、0~20の範囲の整数であり、好ましくは1~20の範囲の整数であり、より好ましくは5~20の範囲の整数である。
【0052】
上記ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、例えば100~5,000の範囲であり、好ましくは300~4,000の範囲であり、より好ましくは500~3,000の範囲の範囲であり、さらに好ましくは800~2,400の範囲である。
上記数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値であり、実施例に記載の方法により測定する。
【0053】
上記流動性改質剤の酸価の下限は特に限定されないが、20以上が好ましく、25以上がより好ましい。また、酸価の上限も特に限定されないが、400以下が好ましく、200以下、150以下、120以下、100以下、95以下の順により好ましい。
上記酸価は実施例に記載の方法にて確認する。
【0054】
上記流動性改質剤の水酸基価も特に限定されないが、例えば0以上であればよく、好ましくは10~200の範囲であり、より好ましくは20~150の範囲であり、さらに好ましくは50~120の範囲である。
上記水酸基価は実施例に記載の方法にて確認する。
【0055】
上記流動性改質剤の性状は、数平均分子量や組成等によって異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状等である。
【0056】
上記流動性改質剤の含有量は、特に限定されないが、例えば無機フィラー100質量部に対して当該流動性改質剤が5~100質量部の範囲であり、好ましくは5~50質量部の範囲であり、より好ましくは5~30質量部の範囲である。
【0057】
上記流動性改質剤は、脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を含む反応原料を用いて得られる。
ここで反応原料とは、当該流動性改質剤を構成する原料という意味であり、ポリエステルを構成しない溶媒や触媒を含まない意味である。
また、「任意のヒドロキシカルボン酸」とはヒドロキシカルボン酸を用いてもよく、用いなくてもよいという意味である。
当該流動性改質剤の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができ、後述する製造方法により製造することができる。
【0058】
上記流動性改質剤の反応原料は、脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を含めばよく、その他の原料を含んでもよい。
当該流動性改質剤の反応原料は、反応原料の全量に対して好ましくは90質量%以上が脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸であり、より好ましくは脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸のみからなる。
【0059】
上記流動性改質剤の製造に用いる脂肪族二塩基酸は、A、A1、A2及びA3の炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基に対応する脂肪族二塩基酸であり、使用する脂肪族二塩基酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
当該流動性改質剤の製造に用いる芳香族二塩基酸は、A、A1、A2及びA3の炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基に対応する芳香族二塩基酸であり、使用する芳香族二塩基酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
当該流動性改質剤の製造に用いる脂肪族ジオールは、G、G1及びG2の炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基に対応する脂肪族ジオールであり、使用する脂肪族ジオールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
当該流動性改質剤の製造に用いるヒドロキシカルボン酸は、Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基に対応するヒドロキシカルボン酸であり、使用するヒドロキシカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
使用する反応原料は、上記のエステル化物、上記の酸塩化物、上記の酸無水物等の誘導体も含む。
例えばヒドロキシカルボン酸は、ε-カプロラクトン等のラクトン構造を有する化合物も含む。
【0060】
上記流動性改質剤は、当該流動性改質剤の各残基を構成する脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を、反応原料に含まれるカルボキシル基の当量が水酸基の当量よりも多くなる条件下で反応させることによって製造できる。
当該流動性改質剤は、当該流動性改質剤の各残基を構成する脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を、反応原料に含まれる水酸基の当量がカルボキシル基の当量よりも多くなる条件下で反応させて主鎖の末端に水酸基を有するポリエステルを得た後、得られたポリエステルにさらに脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸を反応させることによっても製造できる。
【0061】
上記流動性改質剤は、好ましくはコハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸及びアジピン酸残基からなる群から選択される1種以上の脂肪族二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールから選択される1種以上の脂肪族ジオールとを反応原料とするポリエステルである。
【0062】
上記流動性改質剤は、より好ましくはセバシン酸、マレイン酸及びアジピン酸からなる群から選択される1種以上の脂肪族二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール及び1,3-ブタンジオールから選択される1種以上の脂肪族ジオールとを反応原料とするポリエステルである。
これら反応原料について、バイオマス由来のものを使用することができる。これにより、得られるポリエステルのバイオマス度を向上することができる。
生分解性樹脂にバイオマス度の高いポリエステルを用いることはサステナビリティの観点から好ましい。
【0063】
上記流動性改質剤の製造において、上記反応原料の反応は、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180~250℃の温度範囲内で10~25時間の範囲でエステル化反応させるとよい。
尚、エステル化反応の温度、時間等の条件は特に限定されず、適宜設定してよい。
【0064】
上記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒等が挙げられる。
【0065】
上記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、反応原料の全量100質量部に対して、0.001~0.1質量部の範囲で使用する。
【0066】
[無機フィラー]
本発明のヒートシール層(A)は、無機フィラーを含有する。無機フィラーとしては特に限定されず、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化マンガン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
上記無機フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
上記無機フィラーは、好ましくは炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、タルク、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルクからなる群から選択される1種以上である。
【0068】
上記無機フィラーの粒径、繊維長、繊維径等の形状は特に限定されず、目的とする用途に応じて適宜調整するとよい。また、上記無機フィラーの表面処理状態も特に限定されず、目的とする用途に応じて例えば飽和脂肪酸等で表面修飾をしてもよい。
【0069】
上記無機フィラーの含有量は、上記ヒートシール層(A)中の生分解性ポリエステル系樹脂100質量部に対して例えば1~200質量部の範囲であり、1~100質量部の範囲、5~70質量部の範囲、10~60質量部の範囲又は15~55質量部の範囲としてもよい。
また、当該無機フィラーは当該ヒートシール層(A)中に10質量%以上含有されるが、10~70質量%含有することが好ましく、15~60質量%含有することがより好ましく、20~50質量%含有することが更に好ましい。
【0070】
さらに、上記無機フィラーと上記流動性改質剤の比率は、無機フィラー/流動性改質剤=1~20の範囲である。当該比率がこの範囲であると、無機フィラーを多量に添加することによる粘度上昇を、流動性改質剤により成膜可能な範囲にまで抑えることができる。また、当該範囲は、成膜性が良化することから2~20であることが好ましく、3~20であることがより好ましい。
【0071】
(その他の添加剤)
ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。
当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料、生分解性促進添加剤等を例示できる。
また、特に上記生分解性樹脂以外のその他の樹脂を使用する場合は、生分解性促進添加剤を使用することが、フィルムが生分解性を発揮するために好ましい。
生分解性促進添加剤としては、例えば酵素を含む添加剤、微生物を含む添加剤、微生物誘引剤を含む添加剤等が挙げられる。
【0072】
(樹脂層(B))
本発明の生分解性フィルムは、上記ヒートシール層(A)と直接積層される樹脂層(B)を含んだ多層フィルムであっても良い。
当該樹脂層(B)としては、ヒートシール層(A)に挙げた生分解性ポリエステル系樹脂を使用することが好ましく、上記ポリ乳酸系樹脂及び上記ポリブチレンサクシネート系樹脂を主たる樹脂成分として含有することがより好ましく、上記その他の生分解性ポリエステル系樹脂を含有しても良いし、上記その他の生分解性樹脂を含有しても良い。
当該樹脂層(B)を使用することで環境対応が可能な材料を使用しつつヒートシール層(A)と好適に積層でき、得られる多層フィルムの良好な剥離性を実現できる。
当該樹脂層(B)において、当該生分解性ポリエステル系樹脂を単独で使用しても良いし、複数併用しても良い。
【0073】
ポリ乳酸系樹脂としては、上記ヒートシール層(A)におけるポリ乳酸系樹脂と同様のものを使用でき、好ましく使用できる種類、メルトフローレートや密度の好ましい範囲等も同様である。
【0074】
ポリブチレンサクシネート系樹脂としては、上記ヒートシール層(A)におけるポリブチレンサクシネート系樹脂と同様のものを使用でき、好ましく使用できる種類、メルトフローレートや密度の好ましい範囲等も同様である。
【0075】
上記その他の生分解性ポリエステル系樹脂としては、上記ヒートシール層(A)におけるその他の生分解性ポリエステル系樹脂と同様のものを使用できる。
上記その他の生分解性樹脂としても、上記ヒートシール層(A)におけるその他の生分解性樹脂と同様のものを使用できる。
【0076】
上記樹脂層(B)中の上記生分解性ポリエステル系樹脂の含有量としては、その総量が、樹脂層(B)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的にこれら樹脂のみであることも好ましい。
【0077】
樹脂層(B)中には、上記以外のその他の樹脂を含有してもよく、当該その他の樹脂としては、上記ヒートシール層(A)にてその他の樹脂として例示したものを使用でき、その含有量は当該樹脂層(B)中に10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0078】
樹脂層(B)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。
当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料、生分解性促進添加剤等を例示できる。
また、特に上記生分解性樹脂以外のその他の樹脂を使用する場合は、生分解性促進添加剤を使用することが、フィルムが生分解性を発揮するために好ましい。
生分解性促進添加剤としては、例えば酵素を含む添加剤、微生物を含む添加剤、微生物誘引剤を含む添加剤等が挙げられる。
【0079】
[生分解性フィルム]
本発明の生分解性フィルムは、上記ヒートシール層(A)を有する生分解性フィルムであり、当該ヒートシール層(A)と上記樹脂層(B)とが直接積層された多層フィルムであることが好ましい。
本発明の生分解性フィルムは、当該構成とすることで、環境対応材料をはじめとする各種材料の包装材に対して、好適なヒートシール性と易開封性とを実現できる。
また、各層を、生分解性樹脂を主体として構成できることから、生分解性フィルム自体の環境対応性も高い。
さらに、ヒートシール層(A)の凝集破壊による易開封性を実現できることから、本発明の生分解性フィルム製造のふれやヒートシール温度のふれがあっても、安定した開封強度を発揮することができる。また夾雑物シール性に優れた蓋材を得ることができる。さらに、凝集破壊による易開封性を実現できることから、剥離した箇所が白化することで開封の証となり、不正開封防止になる。
【0080】
本発明の生分解性フィルムにおいては、ヒートシール層(A)がフィルムの一方の表層を構成する。
ヒートシール層(A)とは他方の表層は、樹脂層(B)であってもよいが、ヒートシール層の厚みを好適に調整しつつ、製造時の安定性や好適な成膜性を得やすい場合があることから、表層を構成する他の樹脂層(C)を積層することも好ましい。
【0081】
当該樹脂層(C)としては、上記樹脂層(B)と同様のものを好ましく使用でき、樹脂層(B)と全く同一の樹脂配合であっても、異なる樹脂配合であってもよい。
同一の樹脂配合とすれば製造が容易であるため好ましい。
また、異なる樹脂配合とすることで多層フィルムの物性調整も容易となる。
【0082】
さらに、樹脂層(C)と樹脂層(B)との間に他の樹脂層(D)を設けてもよく、特に本発明においてはヒートシール層(A)以外の層の全厚に占める割合が高いので、共押出法を用いる際のヒートシール層(A)との厚み調整を容易にするために、四層構成にすることも、均質性に優れる多層フィルムを得やすいため好ましい。
樹脂層(D)を設ける場合にも、樹脂層(D)が、上記樹脂層(B)や樹脂層(C)と好ましい樹脂や配合を使用した層とすればよく、樹脂層(D)の樹脂組成物は、樹脂層(B)や樹脂層(C)と、全く同一の混合物であっても、それぞれの樹脂の配合や、MFR、密度が異なる混合物を使用してもよい。
【0083】
具体的な好ましい層構成の例としては、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(D)/樹脂層(C)等が例示できる。
【0084】
本発明の生分解性フィルムの厚さ(全厚)としては、包装材料の軽量化の観点と、易開封性の点より、20~70μmであることが好ましく、なかでも20~50μmの範囲であることがより好ましい。
【0085】
ヒートシール層(A)の厚さはフィルム全厚の8~90%の範囲であることが好ましく、10~70%の範囲であることがより好ましい。
生分解性フィルムをヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)の三層構成とする場合には、フィルム全厚に対する樹脂層(B)の厚さを10~82%、樹脂層(C)の厚さを10~40%とすることが好ましく、樹脂層(B)の厚さを20~60%、樹脂層(C)の厚さを10~30%とすることがより好ましい。
生分解性フィルムをヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(D)/樹脂層(C)の四層構成とする場合には、フィルム全厚に対する樹脂層(B)の厚さを10~30%、樹脂層(C)の厚さを20~60%、樹脂層(D)の厚さを10~35%とすることが好ましく、樹脂層(B)の厚さを10~25%、樹脂層(C)の厚さを25~55%、樹脂層(D)の厚さを10~30%とすることがより好ましい。
【0086】
具体的な厚みとしては、ヒートシール層(A)は好ましくは2~45μm、より好ましくは3~35μmである。
【0087】
本発明の生分解性フィルムは、各層を生分解性樹脂により構成できるため優れた環境対応性を実現できる。
特に優れた環境対応性を有することから、生分解性フィルムの樹脂成分中の生分解性樹脂の総量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、樹脂成分が実質的にこれら樹脂のみからなるものも、フィルム自体の生分解性を担保できるため特に好ましい。
また、樹脂層(B)、樹脂層(C)及び樹脂層(D)の樹脂成分としてポリ乳酸系樹脂及び/又はポリブチレンサクシネート系樹脂を主たる樹脂成分とすることで、生分解性とフィルム特性を両立しやすく好ましい。
また、各層の樹脂成分として、植物由来のバイオマス樹脂を使用した場合には、比較的安価に環境対応性を付与できる。
【0088】
(生分解性フィルムの製造方法)
本発明の生分解性フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各層に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態でヒートシール層(A)のみ、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)、又は、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(D)/樹脂層(C)、を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。
共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。また、本発明の生分解性フィルムは流動性改質剤を含み、加工性に優れている。
融点とTgとの差が大きい樹脂を積層するような場合は、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
また、ヒートシール層(A)のみからなる単層フィルムを押出成形してもよいし、当該単層フィルムの一方の表面に樹脂層(B)に相当する樹脂フィルムをドライラミネート等で積層し、多層フィルムとしてもよい。
【0089】
また、ヒートシール層(A)に使用する樹脂混合物として、樹脂に対して上記無機フィラーと上記流動性改質剤の配合比率を高めたマスターバッチを作製して、このマスターバッチを生分解性ポリエステル系樹脂にて希釈して、本発明のヒートシール層に用いる樹脂混合物としても良い。当該マスターバッチ中の各成分の配合比率としては、無機フィラー20~80質量%、流動性改質剤1~20質量%、樹脂20~79質量%が好ましい。
【0090】
さらに、ヒートシール層(A)に使用する樹脂混合物として、樹脂に対して当該流動性改質剤の配合比率を高めたマスターバッチを作製して、このマスターバッチに無機フィラーを混練し、本発明のヒートシール層に用いる樹脂混合物としても良い。当該マスターバッチ中の各成分の配合比率としては、流動性改質剤1~20質量%、樹脂80~99質量%であることが好ましい。
【0091】
ヒートシール層(A)とは他方の表面に印刷やラミネート等を行なう場合には、印刷インキや接着剤との接着性等を向上させるため、ヒートシール層(A)とは他方の表面に表面処理を施すことが好ましい。
このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0092】
[ラミネートフィルム]
本発明の生分解性フィルムは、各種包装容器の蓋材等に好適に使用できることから、ヒートシール層(A)とは他方の表面にラミネート基材を積層してラミネートフィルムとすることも好ましい。
ラミネート基材としては、特に限定されるものではないが、一般に破断しない強度の確保、ヒ-トシール時の耐熱性確保、及び印刷の意匠性向上等が図られることから、延伸基材フィルムであることが好ましい。
延伸基材フィルムとしては、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等を使用できる。また、延伸ポリ乳酸フィルム、紙、セロファン等の生分解性の基材フィルムをラミネートすることが、ラミネートフィルム全体の生分解性を確保できるため好ましい。なお、当該基材フィルムとしては、必要性に応じて、易裂け性処理や帯電防止処理が施されていてもよい。
【0093】
ラミネートフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記生分解性フィルムの表面となるヒートシール層(A)や樹脂層(B)や樹脂層(C)の上に、ラミネート基材をラミネートする方法が挙げられる。
本発明の生分解性フィルムにラミネート基材をラミネートする方法としては、例えば、ドライラミネート法、熱ラミネート法、多層押出コーティング法等が挙げられるが、これらのなかでも、ドライラミネート法がより好ましい。
また、ドライラミネート法で、当該生分解性フィルムとラミネート基材とをラミネートする際に用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル-ポリウレタン系接着剤、ポリエステル-ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
また、本発明の生分解性フィルムと基材とをラミネートする前に、当該生分解性フィルムの表面にコロナ放電処理を施すと、基材との密着性が向上するため好ましい。
【0094】
[包装体]
本発明の生分解性フィルム及びラミネートフィルムは、各種の包装用材料として好適に用いることができる。
特に、乳製品、ヨーグルト、ゼリー、豆腐、漬物容器、キムチ容器、お菓子容器、米飯容器、インスタントラーメン容器等に好適に用いることができ、開口部を有する包装容器を被着体とした蓋材として特に好適に使用できる。
【0095】
被着体となる開口部を有する包装容器としては、生分解性であることが好ましく、ポリ乳酸系重合体、ポリブチレンサクシネート系重合体、紙/ポリ乳酸系重合体、紙/ポリブチレンサクシネート系重合体、ポリエチレンテレフタレート等の生分解性ポリエステル系樹脂を用いた各種包装容器が挙げられる。特に、被着面にポリブチレンサクシネート系重合体を使用した包装容器を使用することが好ましい。
本発明の生分解性フィルムは、これら各種材料の包装容器に対して好適なヒートシール性と易開封性とを実現できる。
【実施例0096】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0097】
<流動性改質剤の合成>
(合成例1)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、アジピン酸を876.8g、1,3-ブタンジオールを612.7g、ネオペンチルグリコールを78.7g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.047g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計14時間縮合反応させた。得られた反応物250gについて、無水マレイン酸13.1gをさらに仕込み、120℃で反応を完結させ、ポリエステル系の流動性改質剤A(酸価:29、水酸基価:73、数平均分子量:1,290)を得た。
【0098】
(合成例2)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積0.5リットルの四つ口フラスコに、GI-1000(日本曹達株式会社製、両末端水酸基水素化ポリブタジエン)を200g、無水マレイン酸を10.5g仕込み、120℃で3時間反応することで、ポリオレフィン系の流動性改質剤B(酸価:30,数平均分子量:2,600)を得た。
【0099】
(合成例3)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積0.5リットルの四つ口フラスコに、GI-3000(日本曹達株式会社製、両末端水酸基水素化ポリブタジエン)を200g、無水マレイン酸を10.5g仕込み、120℃で3時間反応することで、ポリオレフィン系の流動性改質剤C(酸価:30,数平均分子量:5,920)を得た。
【0100】
(数平均分子量の測定)
本願実施例において、流動性改質剤の数平均分子量は、GPC測定に基づきポリスチレン換算した値であり、測定条件は下記の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0101】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0102】
本願実施例において、酸価及び水酸基価の値は、下記方法により評価した値である。
酸価:JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
水酸基価:JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
【0103】
<相溶性の評価>
ポリブチレンサクシネート(PTTMCC Biochem社製「Bio-PBS FZ91PM」)100質量部と流動性改質剤5質量部を120℃で10分間ミキサー混練したのち、熱プレス機で1mm厚のプレスシートとした。得られたシートを室温で10日間放置したのち、シートの表面状態を指触にて確認した。表面にべとつきがなく流動性改質剤のブリードが認められないものは相溶性を◎、表面にべとつきがあり流動性改質剤のブリードが認められるものは相溶性を×とした。
【0104】
【表1】

【0105】
<崩壊性試験用サンプルの作製>
(サンプル1)
ヒートシール層(A)及び樹脂層(B)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記表1の通りの配合比率にて、各層を形成する樹脂混合物を調整した。各層を形成する樹脂混合物を2台の押出機に各々溶融して供給し、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)にて形成される多層フィルムの各層の厚さが3μm/27μmとなるように、フィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:200℃)にそれぞれ供給して共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、全厚が30μmの生分解性フィルムを成形した。該フィルムを3cm×3cmに切り抜き、サンプル1とした。
【0106】
(サンプル2,3)
各層の配合比率と層の厚みを表1の通りに変更した以外はサンプル1と同様にして、サンプル2及びサンプル3を作製した。
【0107】
(サンプル4)
ポリパンマット7283-2(DIC株式会社製、低密度ポリエチレンベースのタルクマスターバッチ)を押出機に溶融して供給し、30μmのフィルムとした。得られたシートを3cm×3cmに切り抜き、サンプル4とした。
【0108】
<崩壊性の評価>
ガラス瓶に千葉県市原市の畑より採取した土(水分30wt%)を充填し、この土の中に試験片を埋めた。ガラス瓶の蓋を閉めて60℃の恒温槽中に4週間静置した後、試験片を回収した。目視にて回収が困難な程に分解が進行した試験片は崩壊性を◎、外観・重量が変化していない試験片は崩壊性を×と判定した。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】

【0111】
表1中の配合成分は以下の通りである。
PBS:ポリブチレンサクシネート系共重合体(PTTMCC Biochem社製「FZ91PB」、密度:1.26g/cm、融点115℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N))
流動性改質剤A:合成例1の流動性改質剤A
タルク(含水珪酸マグネシウム:3MgO・4SiO・HO):ミクロンホワイト5000A(林化成株式会社製)
【0112】
上記結果から明らかなように、本発明のヒートシール層に用いられる樹脂混合物であるサンプル1~3は、生分解性が良好であった。一方、生分解性を持たないサンプル4は、生分解しなかった。
【0113】
<生分解性フィルムの製造>
(実施例1)
ヒートシール層(A)及び樹脂層(B)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記表1の通りの配合比率にて、各層を形成する樹脂混合物を調整した。各層を形成する樹脂混合物を2台の押出機に各々溶融して供給し、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)にて形成される多層フィルムの各層の厚さが7.5μm/22.5μmとなるように、フィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:200℃)にそれぞれ供給して共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、全厚が30μmの実施例1の生分解性フィルムを成形した。
【0114】
(実施例2~4)
各層の配合比率と層の厚みを表3の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~4の生分解性フィルムを成形した。
【0115】
(比較例1~3)
各層の配合比率と層の厚みを表4の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1~3の生分解性フィルムを成形した。
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
使用した原料は以下のとおりである。
PBS:ポリブチレンサクシネート系共重合体(PTTMCC Biochem社製「FZ91PB」、密度:1.26g/cm、融点115℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N))
PLA:ポリ乳酸系樹脂(Nature Works社製「3001D」、密度:1.24g/cm(ASTM D792)、MFR:22g/10分(210℃、1.26kg)
タルク(含水珪酸マグネシウム:3MgO・4SiO・HO):ミクロンホワイト5000A(林化成株式会社製)
流動性改質剤A~C:合成例1~3の流動性改質剤A~C
【0119】
上記実施例及び比較例で得られたフィルムにつき、以下の評価を行った。
得られた結果を表4及び表5に示した。
【0120】
(ラミネートフィルムの作製)
上記の実施例及び比較例で得られた生分解性フィルムの基材層(B)側表面又は単層フィルム表面にセロハンフィルム(厚さ20μm)をドライラミネーションで貼り合わせて、ラミネートフィルムを得た。この際、ドライラミネーション用接着剤としては、DIC株式会社製の2液硬化型接着剤(ポリエステル系接着剤「LX500」及び硬化剤「KR-90」)を使用した。
【0121】
(成膜性の評価)
実施例、比較例で作成したフィルム作成時に、ゲル、穴の発生状況を確認した。
〇:成膜でき、穴の発生が1個/m以下。
△:成膜できたが、穴の発生が2個/m以上。
×:成膜できない。
【0122】
(剛性の評価)
上記の実施例及び比較例で得られたフィルムの下記にて測定される1%割線モジュラスを剛性(硬さ)として、下記基準にて評価した。1%割線モジュラスの測定は、長手方向がフィルムの流れ方向(縦方向)となるように、縦300mm×横25.4mm(標線間隔200mm)で切り出したフィルムを試験片として用い、ASTM D-882に準拠して引張速度20mm/分の条件で行った。
○:350MPa以上。
×:350MPa未満。
【0123】
(耐衝撃性評価)
実施例及び比較例にて得られたフィルムを0℃下に調整した恒温室内で4時間静置した試験片を準備した。各試験片にて、テスター産業製BU-302型フィルムインパクトテスターを用いて、振り子の先端に1.5インチのヘッドを取り付け、フィルムインパクト法による衝撃強度を測定した。
○:衝撃強度が0.10J以上
×:衝撃強度が0.10J未満
【0124】
(耐ブロッキング性の評価)
実施例、比較例で得られたフィルムを10cm角サイズに切り出したフィルム片10枚に400gの荷重をかけて40℃で1ヶ月保存した。その後付着したフィルム同士の強度を15mm幅の短冊状に切り出して試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ブロッキング強度を測定した。
○:ブロッキング強度が100g/15mm未満。
×:ブロッキング強度が100g/15mm以上。
【0125】
(PBSシートへのヒートシール性(易剥離性)評価)
上記ラミネートフィルムの作製にて得られたラミネートフィルムとPBSシート(ポリブチレンサクシネート樹脂、厚さ100μm)を110~150℃の10℃刻みの各温度でヒートシールを実施した(0.2MPa、1秒)。シールサンプルを15mmの短冊状に切り出し、試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、ヒートシール強度を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上 20N/15mm以下。
〇:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上 35N/15mm以下。
△:ヒートシール強度が5N/15mm未満、又は35N/15mm超となった温度が1~2水準ある。
×:ヒートシール強度が5N/15mm未満、又はシール面で剥がれずフィルムの破断発生となった温度が3水準以上ある。
【0126】
(剥離痕)
上記ラミネートフィルムの作製にて得られたラミネートフィルムとPBSシート(厚さ100μm)を140℃でヒートシールを実施した(0.2MPa、1秒)。シールサンプルを15mmの短冊状に切り出し、試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、剥離の様子を以下の基準にて評価した。
○:剥離に要する力が一定で、円滑な剥離が容易で、剥離痕が明瞭である。
×:剥離に要する力が一定せず、剥離に円滑さを欠く。又は剥離痕が見られない。
【0127】
(PLAシートへのヒートシール性(易剥離性)評価)
上記ラミネートフィルムの作製にて得られたラミネートフィルムとPLAシート(厚さ300μm)を120℃及び150℃でヒートシールを実施した(0.2MPa、1秒)。シールサンプルを15mmの短冊状に切り出し、試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、ヒートシール強度を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上 20N/15mm以下。
〇:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上 35N/15mm以下。
×:ヒートシール強度が5N/15mm未満又はシール面で剥がれず、フィルムの破断発生となった温度が1水準以上。
【0128】
(面々でのヒートシール性(易剥離性)評価)
上記ラミネートフィルムの作製にて得られたラミネートフィルムをヒートシール層(A)面同士を重ね、120℃及び150℃でヒートシールを実施した(0.2MPa、1秒)。シールサンプルを15mmの短冊状に切り出し、試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、ヒートシール強度を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上 20N/15mm以下。
〇:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上 35N/15mm以下。
×:ヒートシール強度が5N/15mm未満又はシール面で剥がれず、フィルムの破断発生となった温度が1水準以上。
【0129】
上記表4及び5から明らかなとおり、実施例1~4の本発明の生分解性フィルムは、生分解性樹脂を使用しつつ、生分解性ポリエステル系樹脂であるポリブチレンサクシネート樹脂やポリ乳酸からなる被着体に対し、広範なヒートシール温度で安定した易剥離性を発揮し、包装用途に好適な剛性や成膜性、耐衝撃性、耐ブロッキング性等を有するものであった。また、剥離痕がしっかりと残ることから凝集破壊による剥離であることが明らかであり、夾雑物があってもシール強度や密封性が落ちにくい。さらに、剥離痕により開封されていることが見えるようになるため、不正開封を防止できるものであった。
一方、比較例1の生分解性フィルムは、流動性改質剤を含まず無機フィラーも含まないため、易剥離性に乏しかった。比較例2の生分解性フィルムは、無機フィラーとしてタルクを含むものの流動性改質剤を含まないため、成膜することができなかった。比較例3の生分解性フィルムは、無機フィラーと流動性改質剤を含むものの、その比率が無機フィラー/流動性改質剤=30であり、無機フィラー量に対して流動性改質剤が不十分のため、成膜することができなかった。比較例4及び5の生分解性フィルムは、流動性改質剤が少なくとも1方の末端にカルボキシル基を有するポリエステルではないものを使用したため、成膜することができなかった。