(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033355
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】医薬品用保冷庫
(51)【国際特許分類】
F25D 25/02 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
F25D25/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136885
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 哲生
(72)【発明者】
【氏名】内山 進
(72)【発明者】
【氏名】城 慎二
(72)【発明者】
【氏名】山内 悟留
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩和
(57)【要約】
【課題】収容された医薬品が振動を受けにくく、医薬品に与える振動の影響が小さい医薬品用保冷庫を開発する。
【解決手段】断熱性を有する筐体2と、冷凍装置7とを有し、前記冷凍装置7は、圧縮機33と、凝縮器35と、膨張手段37と、蒸発器38とを有し、前記筐体2内が前記冷凍装置7によって所定の温度環境に保たれ、前記筐体7内に医薬品100が収容される医薬品用保冷庫1であって、前記圧縮機33と前記凝縮器35は前記筐体2の外に配置され、前記蒸発器38は前記筐体2の中にあり、前記筐体2内に棚板部材5があり、当該棚板部材5の上に前記医薬品100を設置するための載置板32があり、前記棚板部材5と前記載置板32との間に、前記筐体2から前記医薬品100への振動の伝達を抑制する除振部材31が設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有する筐体と、冷凍装置とを有し、
前記冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器とを有し、
前記筐体内が前記冷凍装置によって所定の温度環境に保たれ、前記筐体内に医薬品が収容される医薬品用保冷庫であって、
前記圧縮機と前記凝縮器は前記筐体の外に配置され、前記蒸発器は前記筐体の中にあり、
前記筐体内に棚板部材があり、当該棚板部材の上に前記医薬品を設置するための載置板があり、
前記棚板部材と前記載置板との間に、前記筐体から前記医薬品への振動の伝達を抑制する除振部材が設けられていることを特徴とする医薬品用保冷庫。
【請求項2】
前記筐体の内側面に棚受け部材があり、当該棚受け部材に前記棚板部材が設置されるものであり、
前記棚受け部材と前記棚板部材の間にも前記筐体から前記医薬品への振動の伝達を抑制する除振部材が介在されていることを特徴とする請求項1に記載の医薬品用保冷庫。
【請求項3】
断熱性を有する筐体と、冷凍装置とを有し、
前記冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器とを有し、
前記筐体内が前記冷凍装置によって所定の温度環境に保たれ、前記筐体内に医薬品が収容される医薬品用保冷庫であって、
前記圧縮機と前記凝縮器は前記筐体の外に配置され、前記蒸発器は前記筐体の中にあり、
前記筐体内には前記医薬品を設置するための棚板部材があり、
前記筐体の内側面に棚受け部材があり、当該棚受け部材に前記棚板部材が設置されるものであり、
前記棚受け部材と前記棚板部材の間に、前記筐体から前記医薬品への振動の伝達を抑制する除振部材が介在されていることを特徴とする医薬品用保冷庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品、ワクチン、検査薬等の医薬品を保管する医薬品用保冷庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品には、一定範囲の温度で保管しなければならないものがある。そのため医薬品は、保冷庫で保管される場合がある。例えば特許文献1に開示された様な保冷庫に医薬品を収容し、庫内の温度を摂氏2度から摂氏8度の範囲の低温且つ定温に保って保管する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイオ医薬品あるいは抗体医薬品と称されるタンパク質を含有する医薬品がある。これらの医薬品は、熱によって変質する場合があり、温度管理された保冷庫で保管する場合がある。
本発明者らがタンパク質を含有する医薬品が変質する原因について研究したところ、振動によっても医薬品が変質してしまう場合があることが分かった。
即ち、バイオ医薬品が保管中に振動を受けると、主成分のタンパク質が凝集することがあり、効能に悪影響を及ぼす懸念があることが分かった。
ここで市販の保冷庫は、いずれも多かれ少なかれ振動する。本発明者らの研究によると、バイオ医薬品の処方によっては、市販の保冷庫の振動によってもタンパク質が凝集してしまうことがあることが分かった。
【0005】
本発明は、従来技術の上記した知見に基づき、収容された医薬品が振動を受けにくく、医薬品に与える振動が小さい医薬品用保冷庫を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための態様は、断熱性を有する筐体と、冷凍装置とを有し、前記冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器とを有し、前記筐体内が前記冷凍装置によって所定の温度環境に保たれ、前記筐体内に医薬品が収容される医薬品用保冷庫であって、前記圧縮機と前記凝縮器は前記筐体の外に配置され、前記蒸発器は前記筐体の中にあり、前記筐体内に棚板部材があり、当該棚板部材の上に前記医薬品を設置するための載置板があり、前記棚板部材と前記載置板との間に、前記筐体から前記医薬品への振動の伝達を抑制する除振部材が設けられていることを特徴とする医薬品用保冷庫である。
【0007】
本発明者らの研究によると、保冷庫の振動は、大半が圧縮機に由来するものであった。本態様の医薬品用保冷庫は、圧縮機が筐体の外に配置されているから、圧縮機の振動が筐体に伝わりにくい。
本態様の医薬品用保冷庫では、筐体内に棚板部材があり、さらにその上に載置板があり、当該載置板に医薬品が直接的又は間接的に設置される。
また本態様の医薬品用保冷庫では、棚板部材と載置板との間に除振部材が設けられている。本態様の医薬品用保冷庫では、棚板部材と載置板との間に、筐体から医薬品への振動の伝達を抑制する除振部材が設けられているため、筐体が振動しても当該筐体の振動が医薬品に伝わりにくく、医薬品の振動が小さい。
この様に、本態様の医薬品用保冷庫は、筐体の振動が小さく、さらに筐体の振動が医薬品に伝わりにくいので、収容されている医薬品の振動が小さい。
【0008】
上記した態様において、前記筐体の内側面に棚受け部材があり、当該棚受け部材に前記棚板部材が設置されるものであり、前記棚受け部材と前記棚板部材の間にも前記筐体から前記医薬品への振動の伝達を抑制する除振部材が介在されていることが望ましい。
【0009】
本態様の医薬品用保冷庫では、棚受け部材と棚板部材との間に除振部材がある。そのため筐体の振動が医薬品に伝わりにくく、医薬品の振動が小さい。
【0010】
上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、断熱性を有する筐体と、冷凍装置とを有し、前記冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器とを有し、前記筐体内が前記冷凍装置によって所定の温度環境に保たれ、前記筐体内に医薬品が収容される医薬品用保冷庫であって、前記圧縮機と前記凝縮器は前記筐体の外に配置され、前記蒸発器は前記筐体の中にあり、前記筐体内には前記医薬品を設置するための棚板部材があり、前記筐体の内側面に棚受け部材があり、当該棚受け部材に前記棚板部材が設置されるものであり、前記棚受け部材と前記棚板部材の間に、前記筐体から前記医薬品への振動の伝達を抑制する除振部材が介在されていることを特徴とする医薬品用保冷庫である。
【0011】
本態様の医薬品用保冷庫においても、圧縮機が筐体の外に配置されているから、圧縮機の振動が筐体に伝わりにくい。
本態様の医薬品用保冷庫では、棚受け部材と棚板部材との間に除振部材がある。そのため筐体の振動が医薬品に伝わりにくく、医薬品の振動が小さい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医薬品用保冷庫は、収容された医薬品が振動を受けにくく、医薬品の振動が小さい。そのため振動に起因する収容された医薬品の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の医薬品用保冷庫の斜視図である。
【
図3】
図1の医薬品用保冷庫の扉を開いた状態の斜視図である。
【
図4】
図1の医薬品用保冷庫の棚板部材周辺の拡大断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態の医薬品用保冷庫であって、扉を開いた状態の斜視図である。
【
図6】
図5の医薬品用保冷庫の棚板部材周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の医薬品用保冷庫1は、
図1、
図2に示すように、本体部(筐体)2と、機械室3に分かれている。本体部2は、機械室3の上に設置された断熱性を有する筐体であり、内部に棚板部材5が設けられている。そして当該棚板部材5に除振部材31で支持された載置板32が設けられている。
医薬品用保冷庫1は、冷凍装置7を有し、当該冷凍装置7によって本体部2の内部が所定の温度環境に調節される。
以下、各部材について説明する。
【0015】
本体部2は、断熱性を有する筐体であり、扉10を有する箱である。即ち本体部2は、本体箱11と、扉10によって構成されている。本体部2を構成する本体箱11と扉10は、いずれも断熱性を有する素材が内蔵されている。本体部2には図示しない骨組みや補強部材がある。また表面は金属板や樹脂板で覆われている。
【0016】
本体部2の本体箱11は、天面壁12、底面壁15、奥面壁17及び左右の側面壁18を有し、正面が開口する箱体である。即ち、本体箱11は、天面壁12、底面壁15、奥面壁17及び左右の側面壁18で囲まれている。
【0017】
本実施形態では、本体箱11内に棚受け部材20があり、当該棚受け部材20を介して棚板部材5が本体箱11内に設置されている。
即ち本実施形態では、
図3、
図4の様に、左右の側面壁18に、棚受け部材20が複数設けられている。棚受け部材20は、本体箱11の開口側から奥側にのびる長尺状の部材である。棚受け部材20は、例えば断面形状が「L」状であり、棚受け部材20には、接続部22と棚受け部23がある。
棚受け部材20の接続部22は、本体箱11内の左右の側面壁18と接しており、棚受け部23は、水平姿勢となっている。そして棚受け部23の上に棚板部材5が載せられている。
棚板部材5は、板状又は網状であり、物を上に載せることができる。
【0018】
本実施形態の医薬品用保冷庫1では、棚板部材5の上に除振部材31と載置板32を有している。
載置板32は、医薬品を載置するための部材である。
除振部材31は、棚板部材5の振動が載置板32に伝わらないようにするための部材である。
除振部材31は、振動の伝達を抑制する機能を有していればよく、その素材や機構は限定されるものではない。例えば除振部材31は、ゴム、樹脂、空気ばね等であってもよい。空気ばねの一形態として、ダイアフラムの中に気体が充填されたものがある。また除振部材31は、コイルスプリング等の機械的なばねであってもよい。除振部材31は、ばねや樹脂とダンパーが組み合わされた構造のものであってもよい。後記する他の除振部材についても同様であり素材や機構は限定されるものではない。
【0019】
除振部材31は、載置板32を支える支持部としても機能する。
本実施形態では、除振部材31が載置板32を支える支持部全体を構成しているが、この構成に限らず、除振部材31は、載置板32を支える支持部の一部を構成するものであってもよい。例えば載置板32を支える支持部の中間部に除振部材31があってもよい。
本実施形態では4個の除振部材31で載置板32を支持しているが、除振部材31の個数は任意である。
【0020】
冷凍装置7は、圧縮機33、凝縮器35、膨張手段37、蒸発器38を有し、これらが図示しない配管によって環状に接続されたものであり、内部に相変化する冷媒が封入されたものである。
圧縮機33を駆動することにより、気体状の冷媒が圧縮され、当該冷媒が凝縮器35で冷却されて液化する。そして当該液状の冷媒が膨張手段37を経由して蒸発器38に入り、気化する。その際に気化熱を奪い、蒸発器38の表面温度が低下する。気化した冷媒は、圧縮機33に戻って再度圧縮される。
【0021】
本実施形態では、冷凍装置7は、
図2の様に、機械室3と本体部(筐体)2に跨って設置されている。
即ち冷凍装置7の圧縮機33、凝縮器35、膨張手段37の三者は、機械室3内に配置されている。一方、蒸発器38は、本体部(筐体)2内に設置されている。即ち本実施形態の医薬品用保冷庫1では、圧縮機33と凝縮器35が本体部(筐体)2の外に配置され、蒸発器38は本体部(筐体)2の中にある。
【0022】
本実施形態の医薬品用保冷庫1では、
図1、
図2の様に機械室3の上に本体部(筐体)2が載せられている。本実施形態では、機械室3と本体部(筐体)2の間に除振部材40が介在されている。
【0023】
本実施形態の医薬品用保冷庫1は、冷凍装置7によって本体部(筐体)2の温度が一定の範囲に保たれる。即ち本体部(筐体)2内に図示しない温度センサーがあり、当該温度センサーの検知温度が冷凍装置7にフィードバックされて、本体部(筐体)2内が一定の温度環境に保たれる。
本実施形態の医薬品用保冷庫1では、蒸発器38が本体部(筐体)2の中にあるから、本体部(筐体)2の内部が蒸発器38によって温度調節される。
【0024】
一方、本実施形態の医薬品用保冷庫1では、圧縮機33と凝縮器35が本体部(筐体)2の外に配置されているから、本体部(筐体)2は、これらの振動を受けにくい。さらに本実施形態では、機械室3と本体部(筐体)2の間に除振部材40が介在されているから、機械室3の振動が本体部(筐体)2に伝わりにくい。
【0025】
本実施形態の医薬品用保冷庫1では、
図2、3、4の様に本体部(筐体)2内に医薬品100が収容される。本実施形態では、医薬品100は、棚板部材5上の除振部材を介して設置された載置板32上に置かれた状態で、本体部(筐体)2内に収容される。
載置板32は除振部材31によって支持されたものであるから、載置板32は、振動が極めて小さい。
【0026】
即ち振動発生源は、冷凍装置7の圧縮機33であるが、当該圧縮機33は、本体部(筐体)2の外部にあるから、従来技術の保冷庫に比べて本体部(筐体)2の振動は小さい。さらに医薬品100は除振部材31を介して載置板32に載せられており、棚板部材5と医薬品100の間に除振部材31があるから、本体部(筐体)2の振動が医薬品100に伝わりにくく、医薬品100の振動は極めて小さい。
そのため、医薬品100は振動を受けにくい環境で保管される。
【0027】
以上説明した医薬品用保冷庫1の構成部材の内、載置板32と除振部材31は、一体に構成されたものであってもよい。即ち載置板32の下部に除振部材31が一体的に取り付けられており、両者で独立した除振台を構成するものであってもよい。
【0028】
以上説明した医薬品用保冷庫1は、本体部(筐体)2の棚板部材5と、医薬品100の間に、本体部(筐体)2から医薬品100への振動の伝達を抑制する除振部材31を介在させて医薬品100が振動することを防ぐものであるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
図5、
図6に示す医薬品用保冷庫50は、棚受け部材20の棚受け部23の上に本体部(筐体)2から医薬品100への振動の伝達を抑制する除振部材51があり、さらにその上に棚板部材5が設置されている。除振部材51は、棚受け部23の全面にあってもよく、点状に配置されていてもよい。また、除振部材51は、棚板部材5を支える支持部全体を構成するものであってもよく、棚板部材5を支える支持部の一部を構成するものであってもよい。例えば棚板部材5を支える支持部の中間部に除振部材51があってもよい。
本実施形態の医薬品用保冷庫50は、本体部(筐体)2と棚板部材5の間に除振部材51を介在させて医薬品100が振動することを防ぐものである。
【0029】
本実施形態の医薬品用保冷庫50は、本体部(筐体)2と棚板部材5の間に除振部材51があるので、棚板部材5の振動が少なく、医薬品100は振動を受けにくい環境で保管される。
なお医薬品用保冷庫50の他の構成は、前記した医薬品用保冷庫1と同じであるから説明を省略する。
【0030】
以上説明した医薬品用保冷庫1、50では、機械室3の上に本体部(筐体)2が載せられており、機械室3と本体部(筐体)2の間に除振部材40が介在された構成となっているが、本発明はこの構成に限定されるものでなく、本体部(筐体)2の側面や背面に、本体部2から独立した機械室3が配置されていてもよい。また機械室3と本体部(筐体)2の間の除振部材40は無くてもよい。
【0031】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、医薬品用保冷庫1、50に疑似的な医薬品100を置き、医薬品100が受ける振動を測定した。
その結果、二種類の医薬品用保冷庫1、50に大差なく、医薬品100の振動は、いずれも0.0027Gであった。
これに対して、市販の保冷庫は、調査した範囲の中で、最も振動が小さいものが、0.0060Gであった。
【0032】
次に、疑似的なバイオ医薬品を作り、市販の保冷庫と、本実施形態の医薬品用保冷庫1、50に、当該バイオ医薬品を収容してタンパク質の凝集状態を観察した。
その結果の一例を、次の表に示す。
【0033】
【0034】
表に示す通り、医薬品用保冷庫1、50に収容した疑似医薬品は、2か月経過後のタンパク質の凝集量が3.9パーセントであったのに対し、従来技術の保冷庫で保管された疑似医薬品は、タンパク質の凝集量が7.0パーセントであった。
この実験結果により、本実施形態の医薬品用保冷庫1、50で医薬品を保管すると、タンパク質の凝集量が顕著に少なく、品質を長期に渡って維持できることが分かった。
また実験結果より、医薬品に加わる振動が0.004G以下であれば、タンパク質の凝集量が少なく、振動が0.003G以下であれば、より顕著にタンパク質の凝集を抑制することができると判断される。
この知見から、医薬品用保冷庫は、医薬品に掛かる振動が、0.004G以下であることが望ましく、より推奨される振動は、0.003G以下であることがわかる。
【0035】
本実施形態の医薬品用保冷庫1、50を使用してバイオ医薬品を保管すると、タンパク質の凝集が抑制され、長期に渡って変質させずに保管することができる。本実施形態の医薬品用保冷庫1、50を使用すると振動による凝集が抑制されるので、バイオ医薬品等の振動に敏感な医薬品等を、安心して長期保存することができる。
本実施形態の医薬品用保冷庫1、50は、タンパク質医薬品に限らず、例えばワクチンのように、振動の影響を受けやすい医薬品に適用でき、振動に起因する劣化を抑制することができる。また、本実施形態の医薬品用保冷庫1、50は、再生医療等製品にも適用できる。
【0036】
以上説明した医薬品用保冷庫1は、棚板部材5と載置板32との間に除振部材31が設けられたものであり、医薬品用保冷庫50は、本体部(筐体)2と棚板部材5の間に除振部材51を有するものであるが、もちろん、両者を兼ね備えていてもよい。即ち、棚板部材5と載置板32との間に除振部材31が設けられると共に、本体部(筐体)2と棚板部材5の間にも除振部材51が設けられる構成としてもよい。この場合、タンパク質の凝集をより抑制することができる。
【0037】
本体部(筐体)2の振動が棚板部材5に伝わることを抑制するという観点から、棚板部材5の側面と、本体部2の内壁との間に隙間を開けた構造とすることが考えられる。即ち、棚板部材5は棚受け部23に載せられるが、棚板部材5の側面は本体部2の内壁には接しない。この構造によると、棚板部材5の側面と本体部2の内壁の間が離れているので、棚板部材5の側面を経由する振動伝達が無い。
【0038】
同様の目的から、棚板部材5の側面と本体部2の内壁との間に、除振部材を介在させることも考えられる。
例えば、
図6に示す除振部材51の形状を変更し、断面形状を「L」型とする。そして当該「L」型の一辺を棚受け部23と棚板部材5の間に配し、他の一辺を棚板部材5の側面と本体部2の内壁との間に配置する。この構造によると、棚板部材5の側面と本体部2の内壁の間に除振部材があるので、棚板部材5の側面を経由する振動伝達が抑制される。
【符号の説明】
【0039】
1、50 医薬品用保冷庫
2 本体部(筐体)
5 棚板部材
7 冷凍装置
20 棚受け部材
31 除振部材
32 載置板
33 圧縮機
35 凝縮器
38 蒸発器
37 膨張手段
38 蒸発器
40 除振部材
51 除振部材
100 医薬品