(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033378
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240306BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136918
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】服部 雄太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄三
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH08C
4F100AK01D
4F100AK21D
4F100AK36D
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK41D
4F100AK52E
4F100AL05D
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA02D
4F100CA30C
4F100DD07A
4F100DD07D
4F100EH20
4F100EH46
4F100EJ38
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JB12E
4F100JL14E
4F100YY00A
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】フィルム表面の微細な凹凸が制御され、高い平滑性を有し、かつ、離型層に対する密着性が良好である積層ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が結晶核剤を含み、前記表面(A)上に(a)バインダー樹脂及び(b)架橋剤を含む樹脂組成物により形成された樹脂層を備える積層ポリエステルフィルムであって、
前記樹脂層表面が、以下の(1)及び(2)を満足する、積層ポリエステルフィルム。
(1)平均表面粗さ(Sa)が1~10nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が150nm以下であること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が結晶核剤を含み、前記表面(A)上に(a)バインダー樹脂及び(b)架橋剤を含む樹脂組成物により形成された樹脂層を備える積層ポリエステルフィルムであって、
前記樹脂層表面が、以下の(1)及び(2)を満足する、積層ポリエステルフィルム。
(1)平均表面粗さ(Sa)が1~10nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が150nm以下であること。
【請求項2】
前記結晶核剤が、下記一般式(X)で表される脂肪酸金属塩である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
(CH3(CH2)nCOO)mM ・・・(X)
(上記式中、nは4以上の整数であり、MはNa,Ca又はLiである。また、mは、MがNa又はLiの場合は1、Caの場合は2である。)
【請求項3】
前記樹脂層表面の最大山高さ(Sp)と平均表面粗さ(Sa)の比(Sp/Sa)が、50以下である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記(a)バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂又はポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記(b)架橋剤が、メラミン化合物を含む、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記(b)架橋剤が、2種類以上の化合物を含む、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルフィルムが、3層構成である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムが、前記一方の表面(A)の反対側の面に、表面層Cを有する、請求項7に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記表面層Cの平均表面粗さ(Sa)が、3nm以上20nm以下である、請求項8に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記表面層Cの最大山高さ(Sp)が、10nm以上220nm以下である、請求項8に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記樹脂層上に離型層を有する、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記離型層が、硬化型シリコーン樹脂を含有する、請求項11に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項13】
積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項14】
自動車セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサーの製造工程において使用される工程用離型フィルムの支持体に好適な積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電装化やスマートフォンの高機能化等に伴い、積層セラミックコンデンサー(Multi-Layered-Ceramic-Capacitor;MLCC)の小型化及び高容量化が進んでいる。
積層セラミックコンデンサーは、次のようにして製造される。
まず、離型フィルム上に、セラミック成分及びバインダー樹脂を含むセラミックスラリーを塗工し、乾燥することでセラミックグリーンシート(誘電体シート)を作製し、これに電極をスクリーン印刷法等により印刷して内部電極とし、乾燥した後に印刷済のセラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離し、このようなグリーンシートを多数積層させる。積層させたグリーンシートをプレスして一体化させた後、個々のチップに切断する。
その後、焼成炉で内部電極及び誘電体層を焼結させ、積層セラミックコンデンサーが製造される。
【0003】
MLCCの小型化及び高容量化に際して、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。セラミックグリーンシートの薄膜化が0.5μm(乾燥後の厚み)以下と更に進行すると、キャリアフィルムとしての離型フィルムの表面に微小な突起があれば、これに起因して、セラミックグリーンシートにピンホール等が発生する。このため当該離型フィルムには、更に高度な表面平滑性が求められている。
【0004】
従来、この種の離型フィルムの支持体として、特許文献1には、第1の面と第2の面とを有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられた平滑化層と、前記平滑化層の前記基材と反対の面側に設けられた剥離剤層とを有し、前記平滑化層は、重量平均分子量が950以下の熱硬化性化合物を含む平滑化層形成用組成物を加熱して硬化させることにより形成されており、前記剥離剤層の外表面の算術平均粗さRa1が8nm以下であり、かつ、前記剥離剤層の外表面の最大突起高さRp1が50nm以下であることを特徴とするセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムとして、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m2以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15~35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムに存在するスラック欠点が、100m2あたり5個未満である、ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-177093号公報
【特許文献2】特開2013-7054号公報
【特許文献3】特開2018-90803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来は、フィルムの表面の状態を、使用する粒子の種類や平均粒径、添加量等を調整することで、微細な凹凸形成させ制御をしていた。しかしながら、現在はセラミックグリーンシートの薄膜化に伴い、更に精密な凹凸制御が要求されており、従来の粒子を用いたフィルムの表面の状態の制御では限界があった。
そのため、精密なフィルム表面の凹凸設計が可能であるフィルムが必要とされている。
【0009】
また、離型フィルムの支持体として用いられるフィルムには、フィルム上に設けられる離型層への影響(例えば硬化阻害等)がなく、離型層との密着性が良好であることも求められている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、フィルム表面の微細な凹凸が制御され、高い平滑性を有し、かつ、離型層に対する密着性が良好である積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供するものである。
【0012】
[1]ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が結晶核剤を含み、前記表面(A)上に(a)バインダー樹脂及び(b)架橋剤を含む樹脂組成物により形成された樹脂層を備える積層ポリエステルフィルムであって、前記樹脂層表面が、以下の(1)及び(2)を満足する、積層ポリエステルフィルム。
(1)平均表面粗さ(Sa)が1~10nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が150nm以下であること。
[2]前記結晶核剤が、下記一般式(X)で表される脂肪酸金属塩である、[1]に記載の積層ポリエステルフィルム。
(CH3(CH2)nCOO)mM ・・・(X)
(上記式中、nは4以上の整数であり、MはNa,Ca又はLiである。また、mは、MがNa又はLiの場合は1、Caの場合は2である。)
[3]前記樹脂層表面の最大山高さ(Sp)と平均表面粗さ(Sa)の比(Sp/Sa)が、50以下である、[1]又は[2]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[4]前記(a)バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂又はポリビニルアルコール系樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
[5]前記(b)架橋剤が、メラミン化合物を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
[6]前記(b)架橋剤が、2種類以上の化合物を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
[7]前記ポリエステルフィルムが、3層構成である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
[8]前記ポリエステルフィルムが、前記一方の表面(A)の反対側の面に、表面層Cを有する、[7]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[9]前記表面層Cの平均表面粗さ(Sa)が、3nm以上20nm以下である、[8]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[10]前記表面層Cの最大山高さ(Sp)が、10nm以上220nm以下である、[8]又は[9]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[11]前記樹脂層上に離型層を有する、[1]~[10]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
[12]前記離型層が、硬化型シリコーン樹脂を含有する、[11]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[13]積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いられる、[1]~[12]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
[14]自動車セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いられる、[1]~[12]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルム表面の微細な凹凸が制御され、高い平滑性を有し、かつ、離型層に対する密着性良好な積層ポリエステルフィルムを提供できる。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、極めて優れた表面平滑性を有することから、例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いることで、本発明の積層ポリエステルフィルム表面の微細な凹凸によってセラミックグリーンシートに欠陥が生じるおそれが少ないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ポリエステル樹脂中における、結晶核剤を用いたことによる、熱力学的にみたポリエステルの結晶化メカニズム(推定)を示す。
【
図2】ポリエステルフィルム製造時における、結晶核剤を用いたことによる表面の凹凸の形成メカニズム(推定)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0016】
[積層ポリエステルフィルム]
本発明の積層ポリエステルフィルム(以下「本積層フィルム」とも称する)は、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が結晶核剤を含み、前記表面(A)上に(a)バインダー樹脂及び(b)架橋剤を含む樹脂組成物により形成された樹脂層を備える積層ポリエステルフィルムであって、前記樹脂層表面が、以下の(1)及び(2)を全て満足するフィルムである。
(1)平均表面粗さ(Sa)が1~10nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が150nm以下であること。
【0017】
本発明において、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層表面とは、例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いる際に、セラミックグリーンシートを積層する面側のことをいう。樹脂層表面が、上記(1)及び(2)を満たすことにより、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応することができ、積層セラミックコンデンサーを好適な状態で製造することができる。また、樹脂層表面は、セラミックグリーンシートの支持体として用いる観点から、後述の離型層を設ける表面として好適である。
【0018】
本積層フィルムは、上記の構成を有することにより、フィルム表面の微細な凹凸が制御され、高い平滑性を有する。そのため、セラミックグリーンシート製造時に、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応できる。
本積層フィルムが当該効果を得られる理由は、以下のように推定できる。
本発明によれば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が結晶核剤を含むことで、
図1に示すように、ポリエステルフィルム中でのポリエステルの結晶化の速度を大きくすることができ、形成される結晶の大きさを小さくすることができる。このため、本積層フィルムは、ポリエステルフィルムの表面の微細な凹凸を制御することができるため、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層表面の微細な凹凸をも制御することができ、その結果、樹脂層表面が上記(1)及び(2)を満たすことができ、高い平滑性を有する積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
また、本積層フィルムは、上記の構成を有することにより、フィルム製造時にシワやピンホールの発生を抑制することができる。
また、更に、本積層フィルムは、樹脂層表面が、上記の構成を有することにより、表面の凹凸によるピンホールの発生を抑制できることから、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応することができ、積層セラミックコンデンサーを好適な状態で製造することができる。
【0019】
以上のように、本積層フィルムは、上記の構成を有することにより、更に精密なフィルム表面の凹凸形状の制御が可能となり、積層セラミックコンデンサーの製造に好適に用いることができ、特に、厚み(乾燥後)が0.5μm以下の薄膜のセラミックグリーンシート成形が必要となる場面においても、好適に用いることができる。
【0020】
本積層フィルムの厚さは、好ましくは19μm以上38μm以下、より好ましくは25μm以上32μm以下である。
また、本積層フィルムを巻き取ってなるフィルムロールは、紙管、金属管、プラスチック管等のコアに巻き取られたフィルムロールであり、幅0.2m以上であることが好ましく、0.3m以上であることがより好ましく、1.0m以上であることが更に好ましく、1.5m以上であることがより更に好ましい。フィルムの幅の上限は、特に限定されないが、取り扱い性の観点から好ましくは2.3m以下であり、より好ましくは2.0m以下である。
更に、フィルムロールに巻き取られる本積層フィルムの長さは、特に限定されないが、好ましくは1000m以上、より好ましくは6000m以上、更に好ましくは12000m以上である。
【0021】
(表面特性)
本発明において、樹脂層表面は、以下の(1)及び(2)を満足することを特徴とする。
(1)平均表面粗さ(Sa)が1~10nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が150nm以下であること。
【0022】
(1)平均表面粗さ(Sa)
本発明において、樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)は、1~10nmであることを要する。
樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)が10nmより大きくなると、フィルム表面の微細な凹凸によってピンホール等の欠陥が生じやすくなり、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応できない。一方で、平均表面粗さ(Sa)が1nmより小さくなると、フィルム表面が極端に平坦化しすぎて、フィルムの滑り性が低下し、加工性が損なわれる。
本発明において樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)は、積層フィルムの表面の微細な凹凸を制御し、高い平滑性を有する観点、加工性の向上の観点及びセラミックグリーンシートの薄膜化の対応の観点から、1~8nmが好ましく、1.5~5nmがより好ましく、2~4nmが更に好ましい。
【0023】
平均表面粗さ(Sa)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、二次元のRaを三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式(1)から求められる。
表面をXY面,高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さとすると、以下の式(1)ように表される。
【0024】
【0025】
(2)最大山高さ(Sp)
本発明において、樹脂層表面の最大山高さ(Sp)は、150nm以下であることを要する。
樹脂層表面の最大山高さ(Sp)が150nmより大きくなると、フィルム表面の微細な凹凸によってピンホール等の欠陥が生じやすくなり、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応できない。
本発明において樹脂層表面の最大山高さ(Sp)は、セラミックグリーンシートの薄膜化の対応の観点から、140nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。また、最大山高さ(Sp)の下限については特に制限はされないが、フィルムの巻取り性を向上させる観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましい。
【0026】
最大山高さ(Sp)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、表面の平均面からの高さの最大値を表し、以下の式(2)ように表される。
【0027】
【0028】
また、本発明において、樹脂層表面の平均表面粗さ(Sa)と最大山高さ(Sp)との関係、より具体的には最大山高さ(Sp)と平均表面粗さ(Sa)の比(Sp/Sa)は50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下が更に好ましい。
平均表面粗さ(Sa)と最大山高さ(Sp)との関係Sp/Saが50以下であることにより、平均表面粗さ(Sa)を維持した状態で、最大山高さ(Sp)を制御でき、本積層フィルムは、表面の微細な凹凸が制御され、加工性を担保しつつ、高い平滑性を有することができる。その結果、本積層フィルムは、薄膜のセラミックグリーンシートを成形し易くできるため、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応させることができる。
また、平均表面粗さ(Sa)と最大山高さ(Sp)との関係Sp/Saの下限については特に限定されないが、本積層フィルムの表面の微細な凹凸が制御され、加工性を担保しつつ、高い平滑性とする観点から、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が更に好ましい。
【0029】
本発明において、樹脂層表面の表面特性は、例えば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)に含まれる結晶核剤の種類及び含有量の調整や、フィルムの製造時における冷却ロールの条件を制御することで、調整することができる。
また、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層中に含まれる化合物の種類及び含有量の調整や、樹脂層の厚みを制御することによっても、調整することができる。
【0030】
<ポリエステルフィルム>
本積層フィルムは、ポリエステルフィルム(以下「本フィルム」とも称する)の一方の表面(A)が結晶核剤を含むことを特徴とする。
【0031】
(結晶核剤)
本発明において用いられる結晶核剤は、下記一般式(X)で表される脂肪酸金属塩であることが好ましい。
(CH3(CH2)nCOO)mM ・・・(X)
(上記式中、nは4以上の整数であり、MはNa,Ca又はLiである。また、mは、MがNa又はLiの場合は1、Caの場合は2である。)
【0032】
結晶核剤が、上記一般式(X)で表される脂肪酸金属塩であることにより、ポリエステル樹脂の結晶化を促進させ、また、ポリエステルフィルムの製造時に、溶融しているポリエステル原料中での結晶核剤の凝集が抑制されやすくできる。その結果、ポリエステル原料中に結晶核剤を均一に存在させることができることから、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の微細な凹凸が制御され、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層表面が上記(1)及び(2)を満足させることができる。
【0033】
上記一般式(X)において、Mは脂肪酸金属塩中の金属イオンを示し、Na、Ca又はLiのいずれかであり、Naであることが好ましい。金属イオンがNa、Ca又はLiのいずれかであることにより、ポリエステルフィルム製造時の熱滞留による、ポリエステル樹脂の分子量の低下を抑制することができる。
【0034】
また、上記一般式(X)において、nは4以上の整数であり、6以上35以下が好ましく、8以上33以下がより好ましく、10以上30以下が更に好ましく、15以上28以下であることがより更に好ましい。一般式(X)において、nが上記範囲内であることにより、結晶核剤とポリエステル樹脂との相溶性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの薄膜化に対応することができる。
上記一般式(X)で表される脂肪酸金属塩において、脂肪酸の具体例としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の脂肪酸が挙げられ、その中でも、モンタン酸が好ましい。
【0035】
本発明において、結晶核剤として用いる脂肪酸金属塩の融点は、140℃以上220℃以下が好ましく、150℃以上210℃以下がより好ましく、160℃以上200℃以下が更に好ましい。脂肪酸金属塩の融点が220℃以下であることにより、ポリエステルフィルム表面の最大山高さ(Sp)が大きくなりすぎることを抑制でき、また、融点が140℃以上であることにより、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に微細な凹凸を形成させることができる。そのため、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層表面が、上記(1)及び(2)を満足しやすくできるため、本積層フィルムの表面の微細な凹凸が制御され、高い平滑性を有することができる。その結果、セラミックグリーンシートの薄膜化の対応をし易くできる。
本発明において、脂肪酸金属塩の融点は、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により測定をすることができ、具体的には実施例の方法により測定される。
【0036】
結晶核剤の配合量は、本積層フィルムの表面の微細な凹凸を制御し、高い平滑性とする観点及びハンドリングを向上させる観点から、フィルムに対して、質量割合で、2000ppm以上が好ましく、4000ppm以上25000ppm以下がより好ましく、6000ppm以上20000ppm以下が更に好ましく、その中でも特に8000ppm以上15000ppm以下がより更に好ましい。
【0037】
上記の結晶核剤は、単独で用いてもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0038】
(ポリエステル)
本発明において、ポリエステルとは、ポリエステルフィルムの原料となるポリエステルのことをいい、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいう。本発明においてポリエステルは、ホモポリエステルであってもよく、共重合ポリエステルであってもよく、具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。
【0039】
なお、本発明においては、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50モル%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
【0040】
前記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0041】
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート及びスピログリコール等を挙げることができる。
【0042】
上記ポリエステルがホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができる。
【0043】
一方、上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分となる化合物と、ジオール成分の主成分となる化合物以外の成分であり、ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸等の一種又は二種以上を挙げることができる。
共重合ポリエステルのグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の一種又は二種以上を挙げることができる。
【0044】
また、上記ポリエステルとしては、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートや、エチレン-2,6-ナフタレート単位であるポリエチレン-2,6-ナフタレート等が好ましい。
【0045】
なお、通常、エチレングリコールを原料の1つとしてポリエステルを製造(重縮合)する場合、エチレングリコールからジエチレングリコールが副生する。本明細書においては、このジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールと称する。エチレングリコールからのジエチレングリコールの副生量は、重縮合の様式等によっても異なるが、エチレングリコールのうち5モル%以下程度である。本発明においては、5モル%以下のジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールとした上で、前記副生ジエチレングリコールもエチレングリコールに包含されるものとし、共重合成分とは区別される。
一方、ジエチレングリコールの含有量によっては、より具体的にはジエチレングリコールが5モル%を超えて含有されている場合には、ジエチレングリコールは副生ジエチレングリコールとしてではなく、共重合成分として扱う。
【0046】
≪ポリエステル重縮合触媒≫
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらの中では、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかが好ましい。
したがって、ポリエステルフィルムは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0047】
本フィルムの最外層(「表面層」ともいう、例えば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)等、樹脂層が積層される表面層)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用することが好ましい。チタン化合物を使用することで、フィルム中に当該チタン化合物に由来する金属含有凝集体、いわゆる粗大異物の個数を低減化することができるため、本積層フィルムの最大山高さ(Sp)が低減され、高い平滑性を有することができる。
当該最外層中に当該チタン化合物に由来するチタン元素含有量が1ppm以上40ppm以下であることが好ましく、2ppm以上20ppm以下であることがより好ましく、3ppm以上10ppm以下であることが更に好ましい。
上記範囲内であれば、ポリエステルの製造効率を低下させることなく、触媒起因の異物を低減化することができる。
また、ポリエステルフィルムが積層構成の場合、生産性の観点から、後述の中間層を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用しないことが好ましい。
また、同様の観点から、本フィルムの最外層中のアンチモン化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。
例えば、後述する表面層Aは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含み、表面層Aにおけるアンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましい。この際、表面層Aはアンチモン化合物を含有しなくてもよい。
【0048】
≪ポリエステルの極限粘度(IV)≫
本フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)は、0.50dL/g以上であることが好ましく、0.55dL/g以上であることがより好ましく、0.60dL/g以上であることが更に好ましい。
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとして、極限粘度(IV)が0.40dL/g以上のポリエステルを使用することで、ポリエステルを混練中のせん断応力が増大し、ポリエステル樹脂中の結晶核剤が高分散し易く、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の微細な凹凸が制御され、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層の表面特性を、上記の範囲にし易くできる。また、ポリエステルの極限粘度(IV)の上限は、結晶核剤の流動性の観点から、1.00dL/g以下が好ましく、0.85dL/g以下がより好ましく、0.75dL/g以下が更に好ましい。
【0049】
また、上記と同様の観点から、本フィルムが積層構造の場合、表面層、具体的には本フィルムの最外層(例えば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)等、樹脂層が積層される表面層)を構成するポリエステルの極限粘度(IV)は、0.50dL/g以上であることが好ましく、0.55dL/g以上であることがより好ましく、0.60dL/g以上であることが更に好ましい。また、表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)の上限は、結晶核剤の流動性の観点から、1.00dL/g以下が好ましく、0.85dL/g以下がより好ましく、0.75dL/g以下が更に好ましい。
【0050】
なお、「本フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)」とは、極限粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを使用する場合には、これら混合樹脂の極限粘度(IV)を意味するものとする。
【0051】
(ポリエステルフィルムの構成)
本発明において、ポリエステルフィルムは、単層のポリエステルフィルムでもよく、2以上の層を有する積層構成のポリエステルフィルムでもよい。
本発明において、ポリエステルフィルムは、一方の表面(A)上に形成される樹脂層の表面特性を上記範囲に制御し易い観点から、2以上の層を有する積層構成のポリエステルフィルムが好ましく、3層構成のポリエステルフィルムがより好ましい。
また、本発明において、ポリエステルフィルムが2以上の層を有する積層構成のポリエステルの場合、表面層A、中間層B及び表面層Cから構成されるA/B/C構成の3層構成が好ましい。
【0052】
本発明において、ポリエステルフィルムが2以上の層を有する積層構成のポリエステルフィルムの場合、表面層Aが、上記の結晶核剤を含有することが好ましい。ここで、前記の表面層Aは、本発明におけるポリエステルフィルムの一方の表面(A)を形成する表面層であり、積層構成のポリエステルフィルムにおいて、表面層Aが上記結晶核剤を含有することにより、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層の表面特性を、上記範囲に制御し易く、セラミックグリーンシートの薄膜化の対応をし易くできる。
【0053】
表面層Aにおける前記結晶核剤の含有量は、本積層フィルムの表面の微細な凹凸を制御し、高い平滑性とする観点及びハンドリングを向上させる観点から、質量割合で、2000ppm以上が好ましく、4000ppm以上25000ppm以下がより好ましく、6000ppm以上20000ppm以下が更に好ましく、8000ppm以上15000ppm以下がより更に好ましい。
【0054】
表面層Cは、表面層Aとは反対側の面に形成される表面層である。すなわち、本フィルムは、表面層A、つまりポリエステルフィルムの一方の表面(A)の反対側の面に、表面層Cを有することが好ましい。
表面層Aは、表面層Cよりも平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)のいずれかが同等以下であることが好ましい。
表面層Cの平均表面粗さ(Sa)は、3nm以上20nm以下が好ましく、4nm以上18nm以下がより好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましい。また、表面層Cの最大山高さ(Sp)は、10nm以上220nm以下が好ましく、30nm以上200nm以下がより好ましく、50nm以上180nm以下であることが更に好ましい。
表面層Cの平均表面粗さ(Sa)又は最大山高さ(Sp)が上記の範囲であることにより、表面層Cに取り扱い性を向上させるために必要な粗面を具備することができ、本積層フィルムのハンドリング性を向上し易くできる。
【0055】
表面層Cは、本フィルムの取り扱い性を向上させる観点から、粒子を含むことが好ましい。
前記粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム及び酸化チタン等の無機粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子並びにシュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中では、架橋子分子、シリカ、炭酸カルシウム及び酸化アルミニウムが好ましく、シリカであることがより好ましい。また、有機粒子の架橋高分子の組成としては、ジビニルベンゼン重合体、エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレングリコールジメタクリレート重合体、スチレン-エチレングリコールジメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート-ジビニルベンゼン共重合体等の架橋高分子粒子が挙げられ、更に架橋高分子粒子は3成分以上の系から構成されるものを用いてもよく、ジビニルベンゼン、メチルスチレン、メタクリル酸及びスチレンの共重合体であることが好ましい。
表面層Cにおいて、上記粒子は単体でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
粒子の平均粒径は、本フィルムの取り扱い性を向上させる観点から、0.1~1.5μmが好ましく、0.1~1.2μmがより好ましく、0.2~1.0μmが更に好ましい。
【0057】
また、粒子は、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)粒子であることが特に好ましい。
粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する粒子としては、該粒子の粒度分布において、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下となる粒子が好ましく、0.3以下となる粒子が特に好ましい。
係る関係式(D90-D10)/D50は、D50を基準とした粒子径のバラツキを示すものであり、(D90-D10)/D50が0.4以下の粒子は、D90とD10との差が小さいシャープな粒度分布を有するものであり、本フィルムに対して、優れた取り扱い性を維持しながら、極めて高い平滑性を付与することができる。
前記粒子の粒度分布は、レーザー回折式測定装置によって測定される。
【0058】
表面層Cは、本フィルムの取り扱い性を向上させる観点から、平均粒径の異なる2種類以上の粒子を含んでもよい。
係る場合には、平均粒径の異なる2種類以上の粒子の平均粒径の差の最大値は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上が更に好ましく、0.3μm以上がより更に好ましい。平均粒径の差が0.1μm以上であることで、ポリエステルフィルム表面の滑り性を向上し易く、本フィルムの取り扱い性を向上し易くできる。
また、平均粒径の差の最大値の上限としては、凹凸によるピンホールの発生を抑制する観点から、1.5μm以下が好ましく、1.2μm以下が好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。
【0059】
中間層Bは、最も厚みの厚い主層として機能させることが好ましく、コストダウンするために、粒子を実質的に含まないか、或いは、少なくとも表面層Cよりも低濃度で粒子を含むことが好ましい。
中間層Bに用いられる粒子としては、上述の中間層Cで用いられる粒子と同様の物が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
なお、「実質的に含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子濃度)が200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。
【0060】
本発明において、ポリエステルフィルムの中間層Bは、再生ポリエステル原料を含有してもよく、係る場合には、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することが更に好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。中間層Bが再生ポリエステル原料を上記範囲で含有することにより、例えばCO2排出量を削減することができ、環境への負荷低減に寄与することができる。
【0061】
また、本フィルムは、次の(W)に示した表面層A及び/又は表面層Cを備える構成が特に好ましい。
係る構成を採用することで、本積層フィルムが、優れたハンドリング性と表面平滑性を具備することができる。
【0062】
(W)特に好ましい実施形態
(1)前記A/B/Cの構成において、表面層Aがチタン化合物及び脂肪酸金属塩である結晶核剤を含む形態
(2)前記(1)において、表面層Cが粒子を含む形態
(3)前記(1)、(2)のいずれかにおいて、表面層Cが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(4)前記(1)~(3)のいずれかにおいて、表面層Cの粒子は、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である形態
(5)前記(4)において、前記結晶核剤は、脂肪酸ナトリウム塩である形態。
【0063】
上記(W)では、表面層A及び表面層Cそれぞれにおいて、チタン化合物を触媒として重縮合されたポリエステルを使用することで触媒起因の異物を低減化することができ、高い表面平滑性を具備させることができる。
【0064】
(ポリエステルフィルムの製造方法)
以下、本フィルムの製造方法の一例を示す。
まず、公知の方法により、原料、例えばポリエステルチップを押出機に供給し、それぞれのポリマーの融点以上に加熱し、溶融ポリマーをダイから押し出し、回転冷却ドラム上でポリマーのガラス転移点以下の温度となるように冷却固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得るようにすればよい。
【0065】
次に、当該未配向シートを、一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。
【0066】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する。この際、延伸温度は通常50~140℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは4.0倍以上であり、より好ましくは4.5~5.0倍である。
【0067】
そして、引き続き180~220℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱固定処理を行い、二軸配向フィルムとしての本フィルムを得ることができる。この熱固定処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱固定処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
上記延伸条件との組み合わせにより、表面層Aの層厚みを厚くすることで結晶化を更に促進させることにより、凹凸形状を調整することもできる。更に、表面層Aの層厚みを厚くしながら、延伸倍率をUPすることで、突起を更に形成しやすくすることも可能である。
例えば、本フィルムの厚さが19μm以上38μm以下であり、3層構成からなる場合、表面層Aの層厚みを0.5μm~5μmの範囲で調整することにより、所望する凹凸形状に調整することができ、表面(A)上に形成される樹脂層の表面特性も所望する凹凸形状と調整しやすくなる。
【0068】
ここで、本フィルムの製造方法において、ポリエステル原料を溶融押出工程における、熱力学的にみたポリエステルの結晶化メカニズム及び凹凸の形成メカニズムについては以下のように推察される。
熱力学的にみたポリエステルの結晶化メカニズムは、下記式(Y)より次の通り考察される。
ΔG=-NΔg+Aσ ・・・(Y)
上記式(Y)中、ΔGは結晶核生成自由エネルギー、Nは結晶核の体積、Δgは融解自由エネルギー、Aは結晶の繰り返し単位数、σは自由エネルギーを表す。
ポリエステル中に結晶核剤を配合した場合、
図1に示すように、一次結晶核の生成に必要なエネルギー障壁が低くなるため、結晶化速度が大きくなる。そのため、ポリエステルフィルム内に多数の一次結晶核を形成できるため、それに伴い、結晶サイズが小さくなるものと推察される。
また、凹凸の形成メカニズムについては、次の通り考察される。
結晶核剤を含むポリエステル原料が溶融押出され、口金からキャスティングドラムに密着する際に、大気側とキャスティングドラムに密着する側とではフィルム表面状態が異なることに着目した。
図2に示すように、キャスティングドラムと密着する側のポリエステルフィルム表面は、急冷されることにより、結晶の成長が抑制され、形成される結晶の大きさが小さくなることから、縦延伸及び横延伸を経ても凹凸が形成されにくいと推定される。
一方で、キャスティングドラムと密着していない大気側のフィルム表面は、徐冷されることにより、結晶の成長が促進され、形成される結晶の大きさが大きくなるため、縦延伸を得て横延伸した後には微小な凹凸が形成されると推定される。
【0069】
<樹脂層>
本積層フィルムは、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に(a)バインダー樹脂及び(b)架橋剤を含む樹脂組成物(以下「本組成物」とも称する)により形成された樹脂層(以下「本樹脂層」とも称する)を備えることを特徴とする。
本組成物が、上記化合物(a)及び(b)を含有することで、本樹脂層上に設けられる離型層への影響(例えば硬化阻害等)を抑制できるだけでなく、離型層との密着性を向上させることができる。
【0070】
(バインダー樹脂)
前記化合物(a)バインダー樹脂としては、特に制限はなく、従来公知のバインダー樹脂を使用することができる。(a)バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等を挙げることができる。中でも、造膜性やポリエステルフィルムとの密着性の観点から、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂の少なくともいずれかを用いることが好ましく、本樹脂層上に設けられる離型層への影響(例えば硬化阻害等)を抑制する観点から、ポリエステル樹脂又はポリビニルアルコール系樹脂を含むことがより好ましい。本組成物において、(a)バインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
≪ポリエステル樹脂≫
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0072】
また、上記多価カルボン酸の一部として、5-ソジウムスルホイソフタル酸などのスルホイソフタル酸類を共重合して、ポリエステル骨格にスルホン酸基を導入し、中和して親水化した物が好ましく用いられる。共重合する量は、多価カルボン酸全体に対し通常1~13モル%、好ましくは3~10モル%、更に好ましくは5~9モル%である。スルホン酸基を適量導入することで、更に水分散安定性を向上させることができる。
【0073】
≪(メタ)アクリル樹脂≫
(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体或いは共重合体、更にはアクリル系、メタクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル類由来の構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種の重合体でもよいし、これらから選択される少なくとも1種と、これら以外のモノマー類、例えば、スチレン又はスチレン誘導体、水酸基を含有するモノマーなどから選択される少なくとも1種との共重合体であってもよい。
また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えばブロック共重合体、グラフト共重合体である。すなわち、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂であってもよい。
或いは、ポリエステル溶液、又はポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれ、これらも本明細書では、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂とする。なお、(メタ)アクリル樹脂において使用される上記したポリエステル、ポリウレタンは、(a)バインダー樹脂に使用されるポリエステル、ポリウレタンとして例示されたものから適宜選択して使用できる。
また、(メタ)アクリル樹脂は、ポリエステルフィルムとの密着性をより向上させるために、ヒドロキシ基、アミノ基を含有することも可能である。
【0074】
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の各種カルボキシ基含有モノマー類、及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキシフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、又は(メタ)アクリロニトリル等の種々の窒素含有モノマー類;N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の窒素含有モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の各種スチレン誘導体;プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエン等の各種共役ジエン類が挙げられる。
【0075】
上記の(メタ)アクリル樹脂の中では、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体が好ましく、重合性モノマーがアルキル(メタ)アクリル酸エステル類を含むことがより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂を含む本組成物は、後述するように溶媒で希釈して塗布液とするのが好ましく、かかる溶媒が水を主溶媒(50質量%以上)とするのが好ましい。すなわち、塗布液を水系とした場合に溶解又は分散しやすくする観点から、重合性モノマーは水酸基やカルボキシ基などの親水性基を有することが好ましい。
したがって、アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類と、水酸基を含有するモノマー、カルボキシ基含有モノマーなどの親水性基含有モノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体も好ましい。
また、アクリル樹脂は、例えば界面活性剤の存在下に重合性モノマーを重合した乳化重合体でもよい。
【0076】
≪ポリウレタン樹脂≫
ポリウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物で、水分散性又は水溶性のものが好ましい。本発明では、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0077】
水分散性又は水溶性を付与させるために、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリウレタン樹脂に導入することが一般的であり好ましい。前記親水性基の中でも、樹脂層とポリエステルフィルムの密着性の点から、カルボキシ基又はスルホン酸基が特に好ましい。
【0078】
ポリウレタン樹脂を作製する方法の一つに、水酸基含有化合物とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基含有化合物としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0079】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0080】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸又はそれらの酸無水物と多価アルコールの反応から得られるものが挙げられる。多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等が挙げられる。
【0081】
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えばポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0082】
上記した中でもポリエステルポリオール類が好ましい。
【0083】
ポリウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0084】
ポリウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0085】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。
【0086】
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えばトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0087】
≪ポリビニルアルコール系樹脂≫
ポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であり、例えば、ポリビニルアルコール樹脂に対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変性化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコール系樹脂を使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300~40000の範囲である。重合度を100以上とすると、樹脂層の耐水性を良好にしやすくなる。また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは70~99.9モル%の範囲、より好ましくは80~97モル%、更に好ましくは86~95モル%であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
【0088】
本組成物中の化合物(a)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~70質量%、の範囲である。当該含有量を10質量%以上とすることが、造膜性やポリエステルフィルムとの密着性の観点から好適である。また、当該含有量が80質量%を超える場合は、塗膜強度が十分でない場合がある。
【0089】
(架橋剤)
前記化合物(b)架橋剤は、特に制限はなく、従来公知の架橋剤を使用することができる。例えばメラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、シランカップリング化合物等を挙げることができる。中でも、樹脂層の強度を高める観点や、ポリエステルフィルムとの密着性を向上させる観点から、エポキシ化合物及びメラミン化合物から選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましく、メラミン化合物を含むことがより好ましい。
また、同様の観点から、架橋剤として、2種類以上の化合物を含むことも好ましい。架橋剤として、2種類以上の化合物を含む場合、エポキシ化合物及びメラミン化合物を少なくとも含むことが好ましい。
【0090】
≪メラミン化合物≫
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的或いは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。
アルキロール化としては、メチロール化、エチロール化、イソプロピロール化、n-ブチロール化、イソブチロール化等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メチロール化が好ましい。
エーテル化に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられ、これらの中では、メタノールがより好ましい。
また、メラミン化合物としては、単量体、或いは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、或いはこれらの混合物を用いてもよい。更に、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために、本組成物には更に触媒を使用することも可能である。
【0091】
≪エポキシ化合物≫
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン及びビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物や、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物並びにグリシジルアミン化合物等がある。
ポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性向上の観点から、ポリエーテル系のエポキシ化合物が好ましい。
また、エポキシ基の量としては、2官能より、3官能以上の多官能であるポリエポキシ化合物が好ましい。
【0092】
≪オキサゾリン化合物≫
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独又は他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基及びシクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上のモノマーを使用することができる。
また、オキサゾリン化合物は、ポリエチレンオキサイド鎖などのポリアルキレンオキサイド鎖を有してもよく、例えばポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートなどを他のモノマーとして使用してもよい。
【0093】
≪カルボジイミド化合物≫
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、樹脂層とポリエステルフィルムのより良好な密着性等のために、分子内に2つ以上のカルボジイミド構造を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
【0094】
カルボジイミド化合物は、従来公知の技術で合成することができ、一般的にはジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられる。
更に、本発明の主旨を損なわない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩及びヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0095】
≪イソシアネート化合物≫
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、或いはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)及びイソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式イソシアネート等が例示される。
また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物及びカルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネート又は脂環式イソシアネートがより好ましい。
【0096】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類;フェノール、クレゾール及びエチルフェノールなどのフェノール系化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール及びエタノールなどのアルコール系化合物;イソブタノイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタムなどのラクタム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン及びエチレンイミンなどのアミン系化合物;アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物;ホルムアルデヒドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム及びシクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0097】
≪シランカップリング化合物≫
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基などの加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。例えば3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有化合物;p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシランなどのスチリル基含有化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有化合物;トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート基含有化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基含有化合物などが挙げられる。
【0098】
本組成物中の化合物(b)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~50質量%の範囲である。当該含有量を10質量%以上とすることで、塗膜強度が向上する。また、当該含有量を60質量%以下とすることで、本樹脂層上に設けられる離型層への影響(例えば硬化阻害等)を抑制することができる。
【0099】
(帯電防止剤)
本樹脂層には、帯電防止剤を使用することができる。帯電防止剤を使用することで、製造や加工の工程で静電気によるフィルム表面への異物の付着を抑制することができる。
【0100】
本樹脂層に使用される帯電防止剤は、イオン導電性の帯電防止剤が好ましく、中でも4級アンモニウム基を含有する化合物がより好ましい。4級アンモニウム基を含有する化合物とは、分子内に4級化されたアンモニウム基を有する化合物を指し、特に高分子化合物であることが好ましく、また水溶性化合物であることが好ましい。本発明では例えば、4級アンモニウム基を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
【0101】
かかる重合体の具体的な例としては、例えば下記式1又は下記式2で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体が挙げられる。これらの単独重合体や共重合体、更に、その他の複数の成分を共重合していても構わない。
【0102】
【0103】
上記式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。また、R1及びR2は化学的に結合していてもよく、例えば、-(CH2)m-(m=2~5の整数)、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=N-、-CH=CH-N=C-、-CH2OCH2-、-(CH2)2O(CH2)2-などが挙げられる。
【0104】
【0105】
上記式(2)中、R2は-O-又は-NH-、R3はアルキレン基又は式2の構造を成立しうるその他の構造、R1、R4、R5、R6はそれぞれが、水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。
【0106】
上記式(1)及び(2)中のX-は本発明の要旨を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えばハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等が挙げられる。
【0107】
本樹脂層には、帯電防止剤を含有する場合には、本組成物中の帯電防止剤の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~50質量%の範囲である。当該含有量を20質量%以上とすることで、製造や加工の工程で静電気によるフィルム表面への異物の付着を抑制するための帯電防止性が得られる。また、当該含有量を60質量%以下とすることで、本樹脂層上に設けられる離型層への影響(例えば硬化阻害等)を抑制することができる。
【0108】
(その他成分)
本発明の主旨を損なわない範囲において、上記成分以外にも、架橋触媒、消泡剤、塗布性改良剤、界面活性剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を更に適宜配合してもよい。
【0109】
(溶媒)
本組成物は、溶媒で希釈して塗布液としてもよい。すなわち、本組成物は、液状の塗布液として、例えば本フィルムに塗布し、必要に応じて乾燥、かつ、硬化させて樹脂層を形成させるとよい。
なお、本組成物を構成する各成分(化合物(a)及び(b)、帯電防止剤、その他成分等)は、溶媒に溶解させてもよいし、溶媒中に分散させてもよい。
塗布液とした場合、塗布液中における本組成物の全不揮発成分の濃度は、0.1~50質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、効率的に所望の厚みの樹脂層を形成することができる。一方、50質量%以下であれば、塗工時の粘度を抑えることで樹脂層の外観を向上させることができ、また、塗布液中の安定性を高めることができる。
【0110】
前記溶媒としては、特に制限はなく、水及び有機溶剤のいずれも使用することができる。環境保護の観点から、水を主溶媒(全溶媒の50質量%以上)として水性塗布液とすることが好ましい。水の含有量に関して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であるのがよい。水性塗布液には、少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤の具体的な量は、質量基準で水の量以下とするとよく、例えば、溶媒中の50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下とするのがよい。
水と併用する有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、又は複数を組み合わせて用いることができる。水性塗布液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗布液の安定性、塗工性を良好にできる場合がある。
【0111】
また、上記溶媒として有機溶剤のみを使用する場合、かかる有機溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類;エタノール、2-プロパノール等のアルコール類;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類などを挙げることができる。これらは、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
【0112】
樹脂層中には、本組成物を構成する各成分(化合物(a)及び(b)、帯電防止剤、その他成分等)の未反応物、反応後の化合物、或いはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
なお、樹脂層中の各成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
【0113】
(樹脂層の形成方法)
次に、本積層フィルムを構成する樹脂層の形成方法について説明する。
本樹脂層は、本組成物をポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて、塗布した本組成物に対して乾燥、硬化、熱処理等などの処理を行って形成すればよい。
樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えばリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0114】
また、樹脂層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティングがある。塗布した樹脂組成物を熱処理する方法は、特に限定されるわけではなく、例えばオフラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。一方、インラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、熱処理は、上記温度範囲内において温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。熱処理の少なくとも一部は、延伸時の加熱により行ってもよい。また、乾燥及び硬化は、上記熱処理における加熱により合わせて行うとよい。
【0115】
本発明では、樹脂層は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後、熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムのいずれかにコーティングする。
【0116】
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と樹脂層形成を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
【0117】
また、延伸前にフィルム上に樹脂層を設けることにより、樹脂層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより樹脂層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。
【0118】
更に、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦及び横方向に拘束することができ、その後の熱処理(熱固定工程)において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、樹脂層の造膜性が向上し、樹脂層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができる。更には、強固な樹脂層とすることができ、樹脂層上に形成され得る各種の機能層への耐移行性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
【0119】
また、オフラインコーティング或いはインラインコーティングにかかわらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0120】
本樹脂層の厚みは、好ましくは0.005~1μm、より好ましくは0.01~0.5μm、更に好ましくは0.01~0.1μmである。当該厚みがかかる範囲であれば、樹脂層上に設けられる離型層への影響(例えば硬化阻害等)を抑制させることができる他、離型性との密着性を良好なものとすることができる。
【0121】
<離型層>
本積層フィルムは、少なくとも片面に離型層を有する形態で使用することが可能である。
当該離型層は、樹脂層上に積層されることが好ましい。つまり、本発明の積層ポリエステルフィルムは、樹脂層上に離型層を有することが好ましい。
すなわち、本積層フィルムにおいて、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に樹脂層及び離型層をこの順に有することが好ましい。
したがって、本フィルムが、例えばA/B/C構成であり、表面(A)が表面層Aに相当する場合には、表面層A側の表面に樹脂層、離型層がこの順に積層され、離型層/樹脂層/A/B/Cの構成となる。
ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に形成される樹脂層側に離型層を積層することで、離型層上に超薄層セラミック層を積層してセラミックグリーンシートを成型する際にピンホール等の発生が起こりにくく好ましい。
【0122】
前記離型層は、上述の通り、樹脂層を介してポリエステルフィルムに積層される。
【0123】
前記離型層は、離型剤を含む離型剤組成物から形成されるが、良好な離型性能を得る観点から、とりわけ、該離型剤組成物中にシリコーン樹脂を含有することが好ましい。具体的には、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプや、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ、或いはフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。中でも、前記離型層が、硬化型シリコーン樹脂を含有することがより好ましい。
【0124】
前記硬化型シリコーン樹脂としては、付加型、縮合型等の熱硬化型や紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存のいずれの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用してもよい。
また、離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限はなく、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態のいずれであってもよい。
【0125】
前記離型層を形成する離型剤組成物には、その他にも、必要に応じてバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料及び顔料等が含有されてもよい。
【0126】
離型層の形成は、本積層フィルムに離型剤組成物をコーティングすることにより設けられ、フィルム製膜工程内で行うインラインコーティング、或いは、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングのいずれを採用してもよい。
【0127】
本積層フィルム上に離型層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
【0128】
離型層を形成する際の硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80℃以上で10秒間以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
【0129】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置、エネルギー源を用いることができる。
【0130】
離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005~5g/m2、好ましくは0.005~1g/m2、より好ましくは0.005~0.1g/m2の範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、5g/m2を超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
なお、塗工量は、塗布した時間あたりの液質量(乾燥前)、塗工液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求める。
【0131】
<用途>
本積層フィルムは、各種の離型用途に好適に用いることができる。
例えばドライフィルムレジスト(DFR)用、多層回路基板用、積層セラミックコンデンサーのセラミックグリーンシート製造用等の各種離型・工程用途として使用できる。本積層フィルムは、離型用途、工程用途では、例えば支持体として使用され、例えば支持体上にセラミックスラリー等の様々な材料が塗布、積層等されるとよい。
【0132】
とりわけ、本積層フィルムは、前述したように、平滑性に優れており、セラミックグリーンシートの薄膜化へ対応できることから、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。
【0133】
また、今後、電装化が進む自動車向け積層セラミックコンデンサーにおいては、とりわけ、当該コンデンサーの小型化・高容量化に伴い、使用するセラミックグリーンシートの薄膜化が進行していくと予測される。
したがって、とりわけ、本積層フィルムは、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセラミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。
【実施例0134】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
<ポリエステル原料>
実施例及び比較例で用いたポリエステル原料を表1に示す。表1に記載のポリエステル原料A~Dは、いずれもホモポリエチレンテレフタレート(ホモポリエステル)である。
なお、ポリエステルCの製造の際には、脂肪酸金属塩の結晶核剤(クラリアント社製:Licomont NaV101(CH3(CH2)26COONa)、融点171℃)をポリエステルに対して10質量%添加した。また、ポリエステルDの製造の際には、平均一次粒径0.5μmの単分散球状シリカ((D90-D10)/D50=0.27)をポリエステルに対して1.0質量%添加した。
【0136】
【0137】
[実施例1]
ポリエステルAを90%、ポリエステルCを10%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルBが100%の原料を中間層Bの原料とし、ポリエステルAを70%、ポリエステルDを30%の質量割合でブレンドした原料を表面層Cの原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、表面層A、Cの原料を最外層(表面層)、中間層Bの原料を中間層とする3種3層(A/B/C)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/C=3/27/1となるよう共押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して無定形フィルムを得た。この場合、表面層Cが冷却ロールと接する側である。
【0138】
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向(MD方向)に3.5倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記組成を有する塗布液を、厚み(乾燥後)が0.02μmになるように塗布した後、テンターに導き、横方向(TD方向)に105℃で4.5倍延伸し、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1、2、3、冷却ゾーン4において、それぞれ170℃、230℃、230℃、140℃で熱処理を行い、厚さ31μmのポリエステルフィルムの表面層A上に、樹脂層R1を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0139】
実施例1における塗布液は、以下に示す組成にて撹拌混合して得られる樹脂組成物を水で希釈して調製したものである。
(化合物(a)バインダー樹脂)
ポリビニルアルコール系樹脂:ケン化度88mol%、重合度500のポリビニルアルコール 20質量%
(化合物(b)架橋剤)
メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン 40質量%
(帯電防止剤)
ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート・メタンスルホナート)40質量%
なお、上記化合物の含有割合は、それぞれ本組成物中の全不揮発成分に占める割合である。
【0140】
[実施例2]
実施例1において、塗布液を以下の通り変更した以外は、実施例1と同様に製造し、厚さ31μmのポリエステルフィルムの表面層A上に、樹脂層R2を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0141】
実施例2における塗布液は、以下に示す組成にて撹拌混合して得られる樹脂組成物を水で希釈して調製したものである。
(化合物(a)バインダー樹脂)
ポリエステル樹脂:下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体 60質量%
モノマー組成:(酸成分)2,6-ナフタレンジカルボン酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
(化合物(b)架橋剤)
メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン 10質量%
エポキシ化合物:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル 30質量%
なお、上記化合物の含有割合は、それぞれ本組成物中の全不揮発成分に占める割合である。
【0142】
[比較例1]
実施例1において、塗布液を以下の通り変更した以外は、実施例1と同様に製造し、厚さ31μmのポリエステルフィルムの表面層A上に、樹脂層R3を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0143】
比較例1における塗布液は、以下に示す組成にて撹拌混合して得られる樹脂組成物を水で希釈して調製したものである。
(化合物(b)架橋剤)
メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン 60質量%
オキサゾリン化合物:エポクロス(株式会社日本触媒製)オキサゾリン基量7.7mmol/g 40質量%
なお、上記化合物の含有割合は、それぞれ本組成物中の全不揮発成分に占める割合である。
【0144】
[比較例2]
実施例1において、樹脂層を設けなかった以外は、実施例1と同様に製造し、厚さ31μmのポリエステルフィルムを得た。
【0145】
[比較例3]
実施例1において、表面層Aの原料配合比率を表1の通り変更し、樹脂層を設けなかった以外は、実施例1と同様に製造し、厚さ31μmのポリエステルフィルムを得た。
【0146】
<測定及び評価方法>
実施例及び比較例で用いた測定及び評価方法は、次の通りである。
【0147】
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度(IV)測定装置(離合社製「VMS-022UPC・F10」)を用いて、30℃で測定した。
【0148】
(2)粒子の平均粒径及び粒度分布
走査型電子顕微鏡(HITACHI製、「S3400N」)を用いて、実施例及び比較例のフィルムの表面より、粉体を観察した。
得られた画像データから粒子1個の大きさを測定し、10点の平均値を平均一次粒径とした。
また、粒子にフェノール/テトラクロロエタン=2/3の混合溶剤を添加した固形分0.03g/mLの分散液を調製し、当該分散液について、マイクロトラックベル社製「MT3300EXII」を用いてレーザー回折散乱法により、累積個数が10%となる粒子径D10、累積個数が50%となる粒子径D50及び累積個数が90%となる粒子径D90を測定し、(D90-D10)/D50を算出した。
【0149】
(3)平均表面粗さ(Sa)、最大山高さ(Sp)
表面粗さ測定器(アメテック株式会社製、「NewView」(登録商標))を用いて実施例及び比較例のフィルムの樹脂層(樹脂層を有しない場合には表面層A)の表面、及び表面層Cの表面を測定し、得られた表面のプロファイル曲線より、平均表面粗さ(Sa)、最大山高さ(Sp)を求めた。
【0150】
(4)離型層の塗膜密着性
実施例及び比較例のフィルムの樹脂層(樹脂層を有しない場合には表面層A)上に、下記離型層組成物を塗工量(乾燥後)が0.1g/m2となるように塗工し、150℃、30秒間熱処理を行った後、離型層を有するフィルム(離型フィルム)を得た。
得られた離型フィルムの離型層面を触手により、5回擦り、離型層の脱落の有無を下記判定基準により判定した。
また、試料フィルムは、23℃、50±3%RHの雰囲気下で表2に記載の期間で保管し、同手法にて、経時での離型層の塗膜密着性(離型層の脱落の有無)の変化を確認した。
(離型層組成物)
硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:KS-847H) 99質量%
硬化剤(信越化学製:PL-50T) 1質量%
上記離型剤をトルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1)により2質量%に調整した。
《判定基準》
〇:塗膜の脱落が見られない、又は塗膜が白くなるが脱落はしていない(実用可能なレベル)
×:塗膜の脱落が確認された(実用困難なレベル)
【0151】
【0152】
表2に示す通り、実施例1及び2のフィルムは、平均表面粗さ(Sa)が1~10nmと高い平滑性を有するとともに、結晶核剤を用いて、平均表面粗さ(Sa)を維持した状態で、最大山高さ(Sp)を制御することができている。
また、実施例1及び2のフィルムは、特定の樹脂層を有することで、離型層に対する硬化阻害もなく、更に離型層に対する密着性が良好であった。
【0153】
一方、比較例3のフィルムは、表面層Aが結晶核剤を含有せず、樹脂層も有さない例であるが、平滑すぎて滑り性が低下し、加工性が損なわれる可能性がある。また、表面平均粗さ(Sa)に対して、最大山高さ(Sp)を低減することができておらず、平滑性と加工性の両立が困難と考えられる。加えて、経時での離型層の塗膜密着性が悪化していることがわかる。
また、比較例2のフィルムにように、結晶核剤を含む表面層A上に直接離型層を設けた場合や、比較例1のフィルムのように、(a)バインダー樹脂を含まない樹脂層上に離型層を設けた場合には、離型層を設けた直後から密着性が悪かったことから、結晶核剤成分による離型層への硬化阻害が生じていることがわかる。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、高い平滑性を有するとともに、離型層に対する密着性が良好となる利点を有する。更に、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、均一な薄膜の誘電体層を形成することができる。とりわけ、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセラミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。