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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003343
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20240105BHJP
   H04H 20/28 20080101ALI20240105BHJP
   H04H 40/18 20080101ALI20240105BHJP
【FI】
H04L27/26 111
H04H20/28
H04H40/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102419
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩平
(72)【発明者】
【氏名】平林 祐紀
(57)【要約】
【課題】 受信装置の回路規模の増大を抑制しながら、TxIDを適切に送信することを可能とする送信装置及び受信装置を提供する。
【解決手段】 送信装置は、1以上の階層化データ及び低遅延チャネルに関するデータを含む伝送フレームを送信する送信部と、前記送信装置を識別する識別情報を前記低遅延チャネルのデータ領域に多重する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置であって、
1以上の階層化データ及び低遅延チャネルに関するデータを含む伝送フレームを送信する送信部と、
前記送信装置を識別する識別情報を前記低遅延チャネルのデータ領域に多重する制御部と、を備える、送信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記伝送フレームにおいて前記低遅延チャネルのデータ領域のうち、予め定められた特定データ領域に前記識別情報を多重する、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記伝送フレーム毎に前記識別情報を多重する、請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記制御部は、パディング処理、バイパス処理、誤り検出符号化処理及び誤り訂正符号化処理のいずれか1つを前記識別情報に適用する、請求項1に記載の送信装置。
【請求項5】
1以上の階層化データ及び低遅延チャネルに関するデータを含む伝送フレームを送信装置から受信する受信部と、
前記送信装置を識別する識別情報を前記低遅延チャネルのデータ領域から分離する制御部と、を備える、受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上デジタル放送方式として、ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式が知られている。さらに、地上デジタル放送の高品質化及び高機能化を目的として、ISDB-T方式の特長を継承した次世代方式(以下、地上放送高度化方式又は高度化方式)の検討が進められている。
【0003】
高度化方式では、放送ネットワークを構築しやすくする工夫が求められる。工夫の1つとして、送信局識別信号(TxID; Transmitter Identification)が挙げられる。基幹局、中継局などの送信装置に固有のTxIDを割り当てるとともに、TxIDを放送波に重畳することによって、チャネル再編(リパック)に伴う処理(例えば、再チャネルスキャンによるプリセット)をスムーズに実行することができる。
【0004】
例えば、TxIDを放送波に重畳する方法としては、ATSC(Advanced Television System Committee)3.0において、LDM(Layered Division Multiplexing)技術を用いる方法が考えられる。LDMでは、UL(Upper Layer)の復調後においてULが再変調され、再変調されたULが受信信号から減算されることによって、LL(Lower Layer)に重畳されたTxIDが復調される(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sung-Ik Park et al: “ATSC 3.0 Transmitter Identification Signals and Applications,” IEEE Trans. Broadcast., vol.63, no.1, pp.240-249 (Mar.2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者等は、鋭意検討の結果、上述したLDMでは、受信装置の回路規模が増大するため、受信装置のコストが増大することに着目し、LDM以外の方法によってTxIDを送信する方法を検討する必要があることを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、受信装置の回路規模の増大を抑制しながら、TxIDを適切に送信することを可能とする送信装置及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の一態様は、送信装置であって、1以上の階層化データ及び低遅延チャネルに関するデータを含む伝送フレームを送信する送信部と、前記送信装置を識別する識別情報を前記低遅延チャネルのデータ領域に多重する制御部と、を備える、送信装置である。
【0009】
開示の一態様は、1以上の階層化データ及び低遅延チャネルに関するデータを含む伝送フレームを送信装置から受信する受信部と、前記送信装置を識別する識別情報を前記低遅延チャネルのデータ領域から分離する制御部と、を備える、受信装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受信装置の回路規模の増大を抑制しながら、TxIDを適切に送信することを可能とする送信装置及び受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るデジタル無線伝送システム1を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る送信装置10を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るTxID生成部180を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る受信装置20を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態に係る特定データ領域を説明するための図である。
図6図6は、実験結果について説明するための図である。
図7図7は、実験結果について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
[開示の概要]
開示の概要に係る送信装置は、1以上の階層化データ及び低遅延チャネルに関するデータを含む伝送フレームを送信する送信部と、前記送信装置を識別する識別情報を前記低遅延チャネルのデータ領域に多重する制御部と、を備える。
【0015】
開示の概要に係る受信装置は、1以上の階層化データ及び低遅延チャネルに関するデータを含む伝送フレームを送信装置から受信する受信部と、前記送信装置を識別する識別情報を前記低遅延チャネルのデータ領域から分離する制御部と、を備える。
【0016】
開示の概要では、送信装置を識別する識別情報が低遅延チャネルに多重されるため、LDM(Layered Division Multiplexing)が用いられるケースと比べて、受信装置の回路規模の増大を抑制しながら、識別情報を適切に送信することができる。
【0017】
[実施形態]
(デジタル無線伝送システム)
以下において、実施形態に係るデジタル無線伝送システムについて説明する。図1は、実施形態に係るデジタル無線伝送システム1(以下、伝送システム1)を示す図である。図1に示すように、伝送システム1は、送信装置10及び受信装置20を備える。
【0018】
実施形態において、伝送システム1では、ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式の特長を継承した次世代方式(以下、地上放送高度化方式又は高度化方式)が採用される。高度化方式では、チャネルの帯域幅(例えば、6MHz)は、ISDB-Tよりも多い数のセグメント(例えば、35セグメント)に分割される。高度化方式においても、部分受信(例えば、9セグメント)を想定した方式、非部分受信(26セグメント)を想定した方式が採用されている。
【0019】
伝送システム1では、SISO(Single-Input Single-Output)が用いられてもよく、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)が用いられてもよい。伝送システム1では、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が用いられてもよい。また、伝送システム1では、地上放送高度化方式と同様に、汎用的なデータ伝送チャネル(AC: Auxiliary Channel)を有する放送方式(「岡田寛正ほか,“地上放送高度化に向けたLDM方式の検討 ~ 伝送特性の評価 ~”,映情学技報,BCT2020-62 (Sep. 2020)」、「並川巌ほか,“地上テレビジョン放送の高度化技術の検討 ~ セグメントを分割して2Kを水平偏波、4Kを水平・垂直両偏波で伝送する技術手法の検討 ~”,映情学技報,BCT2018-65 (Jul. 2018)」)などの方式が採用されてもよい。
【0020】
送信装置10は、複数の階層に属する階層化データを送信してもよい。階層化データは、A階層データ、B階層データ、C階層データを含んでもよい。A階層データは、A0階層データ及びA1階層データを含んでもよい。送信装置10は、基幹局であってもよい。送信装置10は、基幹局から送信される放送波を中継する中継局であってもよい。送信装置10Aは、エリア#Aに対応しており、送信装置10Bは、エリア#Bに対応している。エリア#A及びエリア#Bは、互いに隣接する隣接エリアの一例である。エリア#Aは、送信装置10Aから送信される電波の到達範囲であると考えてもよく、エリア#Bは、送信装置10Bから送信される電波の到達範囲であると考えてもよい。エリア#A及びエリア#Bは、放送エリアと称されてもよい。
【0021】
受信装置20は、送信装置10から送信される送信信号を受信する装置である。受信装置20は、テレビ受像機であってもよい。受信装置20は、受信局と称されてもよい。受信装置20は、部分受信のみを実行する移動受信局(例えば、携帯端末)などと対比する意味で、全部受信を実行する固定受信局と称されてもよい。
【0022】
特に限定されるものではないが、受信装置20がエリア#A及びエリア#Bの境界(例えば、エリア#A及びエリア#Bの重複エリア)に位置するケースが想定されてもよい。受信装置20は、送信装置10Aから送信される送信信号を受信してもよく、送信装置10Bから送信される送信信号を受信してもよい。受信装置20は、部分受信及び非部分受信を含む全部受信(すなわち、35セグメント)を想定する装置であってもよい。
【0023】
特に限定されるものではないが、送信装置10A及び送信装置10Bが同一周波数帯域(チャネル)で同一内容を送信するケースが想定されてもよい。このようなケースにおいて、送信装置10A及び送信装置10Bの少なくとも1つで用いる周波数帯域(チャネル)が他の周波数帯域(チャネル)に変更されるチャネル再編(リパック)が想定されてもよい。受信装置20は、チャネル再編(リパック)に応じてチャネルスキャンを実行する必要があることに留意すべきである。
【0024】
(送信装置)
以下において、実施形態に係る送信装置について説明する。図2は、実施形態に係る送信装置10を示すブロック図である。ここでは、送信装置10が基幹局であるケースについて例示する。
【0025】
図2に示すように、送信装置10は、入力I/F(Interface)110と、BICM(Bit-Interleaved Coded Modulation)111と、BICM112と、BICM113と、BICM114と、合成部115と、シンボル処理部120と、パイロット生成部130と、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)変調部140と、LLch(Low Latency Channel)符号/変調部150と、フレーム処理部160と、を有する。LLchは、周波数同期に用いられる参照信号(Lch: L channel)をデータ伝送にも活用する機能の名称である。
【0026】
入力I/F110は、様々な情報を取得する。例えば、入力I/F110は、映像・音声等のデータを取得する。入力I/F110は、データの送信時刻を取得してもよい。
【0027】
入力I/F110は、A0階層データをBICM111に出力し、A1階層データをBICM112に出力し、B階層データをBICM113に出力し、C階層データをBICM114に出力する。なお、A0階層とA1階層とを合わせてA階層としてもよい。
【0028】
入力I/F110は、伝送制御情報(以下、TMCC情報)をTMCC変調部140及びパイロット生成部130に出力する。TMCC情報は、複数の階層の各々の伝送パラメータ(変調方式、セグメント数、符号化率等)、伝送フレーム(以下、OFDMフレーム)の同期をとるための同期情報を含む。
【0029】
入力I/F110は、低遅延チャネル(以下、LLch)に関するデータ(以下、LLchデータ)をLLch符号/変調部150に出力する。LLchは、緊急地震速報などの重要情報を低遅延で送信するためのチャネルであってもよい。LLchデータは、LLchで搬送されるデータ(例えば、重要情報など)を含んでもよい。
【0030】
BICM111~BICM114は、入力I/F110から入力されるデータビットに対して、BCH符号化処理、LDPC(Low Density Parity Check)符号化処理を実行する。BICM111~BICM114は、データビットのインタリーブを実行する。データビットのインタリーブは、時間インタリーブ及び周波数インタリーブを含んでもよい。BICM111~BICM114は、データビットを各キャリアにマッピングする。BICM111~BICM114は、データキャリアシンボルを出力する。BICM111は、A0階層データを処理し、BICM112は、A1階層データを処理し、BICM113は、B階層データを処理し、BICM114は、C階層データを処理する。
【0031】
合成部115は、A0階層データのデータキャリアシンボル及びA1階層データのデータキャリアシンボルを合成する。合成部115は、合成されたデータキャリアシンボルをシンボル処理部120に出力する。
【0032】
シンボル処理部120は、各階層のデータキャリアシンボルを処理する。シンボル処理部120は、合成部121と、処理部122と、を有する。合成部121は、各階層のデータキャリアシンボルを合成する。処理部122は、帯域分割、データキャリアシンボルの時間インタリーブ、データキャリアシンボルの周波数インタリーブ、帯域合成などの処理を実行する。
【0033】
パイロット生成部130は、入力I/F110から入力されるTMCC情報に基づいて、パイロット信号を生成する。パイロット生成部130は、パイロット信号をフレーム処理部160(後述するフレーム構成部161)に出力する。パイロット信号は、受信装置20にとって既知の信号である。
【0034】
TMCC変調部140は、入力I/F110から入力されるTMCC情報の変調を実行する。変調後のTMCC情報は、TMCC信号と称されてもよい。TMCC変調部140は、TMCC信号をフレーム処理部160(後述するフレーム構成部161)に出力する。
【0035】
LLch符号/変調部150は、入力I/F110から入力されるLLchデータに対してLDPC符号化処理を実行してもよい。LLch符号/変調部150は、入力I/F110から入力されるLLchデータを変調してもよい。変調方式は、差動変調(例えば、DBPSK; Differential Binary Phase Shift Keying)であってもよい。符号化及び変調後のLLchデータは、LLch信号と称されてもよい。LLch符号/変調部150は、LLch信号をフレーム処理部160(後述するフレーム構成部161)に出力する。
【0036】
フレーム処理部160は、シンボル処理部120から入力されるデータキャリアシンボル、パイロット生成部130から入力されるパイロット信号、TMCC変調部140から入力されるTMCC信号、LLch符号/変調部150から入力されるLLch信号に基づいて、OFDMフレームを生成する。
【0037】
具体的には、フレーム処理部160は、フレーム構成部161と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部162と、GI(Guard Interval)付加部163と、送信部164と、を有する。
【0038】
フレーム構成部161は、データキャリアシンボル、TMCC信号、LLch信号及びパイロット信号に基づいて、OFDMフレームを構成する。
【0039】
IFFT部162は、フレーム構成部161から入力されたOFDMフレームにIFFTを適用する。
【0040】
GI付加部163は、IFFT部162から入力されたOFDMフレームにGIを付加する。
【0041】
送信部164は、OFDMフレームを送信する。例えば、送信部164は、ベースバンド信号のD/A(Digital/Analog)変換部、中間周波数(IF; Intermediate Frequency)を無線周波数(RF; Radio Frequency)に変換する周波数変換部などを含んでもよい。
【0042】
ここで、実施形態では、送信装置10は、上述した構成に加えて、TxID生成部180を有する。TxID生成部180は、送信装置10を識別する識別情報(以下、TxID; Transmitter Identification)を生成する。送信装置10が2以上の放送本線を送信するケースでは、TxIDは、2以上の放送本線(変調装置)の各々を識別する識別情報であると考えてもよい。TxID生成部180は、放送本線を入力する入力I/F110とは別に設けられてもよい。
【0043】
ここで、TxIDのビット数は、特に限定されるものではないが、例えば、256種の送信装置を識別するためには8ビット以上であってもよい。TxIDのビット数は、送信装置10を一意に識別することが可能であればよく、所定エリアに放送波を送信する送信装置10の数に応じて定められればよい。
【0044】
具体的には、TxID生成部180は、図3に示すように、パディング部181と、バイパス部182と、エラー検出符号化部183と、エラー訂正符号化部184と、を有する。TxID生成部180にはTxIDが入力され、TxID生成部180からTxIDに基づいた特定ビット列が出力される。実施形態では、8ビットのTxIDがTxID生成部180に入力されるケースについて例示する。
【0045】
パディング部181は、TxID生成部180の入力ビットとTxID生成部180の出力ビットの差異をヌル値で埋めるパディング処理を実行する。例えば、TxID生成部180の出力ビット数が16である場合に、パディング部181は、8ビットのTxIDに対して8ビットのヌル値(例えば、全て”1”)をパディングしてもよい。例えば、8ビットのTxIDが8ビットのMSB(Most Significant Bit)に割り当てられ、8ビットのヌル値がLSB(Least Significant Bit)に割り当てられてもよい。
【0046】
バイパス部182は、8ビットのTxIDを含むビット列をそのまま出力するバイパス処理を実行する。例えば、TxID生成部180の入力ビット数がTxID生成部180の出力ビット数と同じである場合に、例えば、上述したパディング処理が不要である場合に、バイパス部182が用いられてもよい。
【0047】
なお、図3では、説明の便宜上、バイパス部182がパディング部181と別であるケースについて例示した。しかしながら、TxID生成部180の入力ビット数がTxID生成部180の出力ビット数と同じである場合に、パディング部181がバイパス処理を実行してもよい。このようなケースにおいて、バイパス部182は不要である。
【0048】
エラー検出符号化部183は、8ビットのTxIDに基づいた特定ビット列に対して、誤り検出符号化処理を実行する。例えば、エラー検出符号化部183は、TxIDを含む11ビットに対して4ビットのパリティを付加してもよい。パリティの演算としては、GF(2m)で定義される生成多項式に基づいた代数的なパリティ演算が用いられてもよい。なお、mは整数であり、GFはGalois Fieldの略である。例えば、生成多項式としては、エラー検出を行うためのCRC-4(G(x)=x4+x2+1)が用いられてもよい。このようなケースでは、TxID生成部180の出力ビット数が16である場合に、エラー検出符号化部183の出力ビット数が15であるため、LSBの1ビットが用いられなくてもよい。例えば、LSBの1ビットはヌル値であってもよい。
【0049】
エラー訂正符号化部184は、8ビットのTxIDを含むビット列に対して、誤り訂正符号化処理を実行する。例えば、エラー訂正符号化部184は、TxIDを含む8ビットに対して7ビットのパリティを付加してもよい。パリティの演算としては、GF(2m)で定義される生成多項式に基づいた代数的なパリティ演算が用いられてもよい。例えば、生成多項式としては、最大2ビットの訂正能力を有する(15,7)BCH符号(G(x)=x8+x7+x6+x4+1)が用いられてもよい。このようなケースでは、TxID生成部180の出力ビット数が16である場合に、エラー訂正符号化部184の出力ビット数が15であるため、LSBの1ビットが用いられなくてもよい。例えば、LSBの1ビットはヌル値であってもよい。
【0050】
ここで、TxIDの処理方法は、パディング処理、バイパス処理、エラー検出符号化処理及びエラー訂正符号化処理のいずれか1つの処理方法であってもよい。TxIDの処理方法は、パディング処理、バイパス処理、エラー検出符号化処理及びエラー訂正符号化処理の中から選択された2以上の処理方法の組合せであってもよい。TMCC情報は、送信装置10から送信されるTxIDの処理方法を示す情報を含んでもよい。
【0051】
なお、TxID生成部180は、パディング部181、バイパス部182、エラー検出符号化部183及びエラー訂正符号化部184のうち、TxIDの処理に必要な構成のみを有していればよい。
【0052】
フレーム構成部161は、TxID生成部180から出力される特定ビット列(すなわち、TxID)をLLchのデータ領域に多重する。フレーム構成部161は、OFDMフレームにおいてLLchのデータ領域のうち、予め定められた特定データ領域にTxIDを多重してもよい。フレーム構成部161は、OFDMフレーム毎にTxIDを多重してもよい。
【0053】
実施形態では、送信部164は、1以上の階層化データ及びLLchデータを含むOFDMフレームを送信する送信部を構成する。TxID生成部180及びフレーム構成部161は、TxIDをLLchのデータ領域に多重する制御部を構成する。
【0054】
(受信装置)
以下において、実施形態に係る受信装置について説明する。図4は、実施形態に係る受信装置20を示す図である。
【0055】
図4に示すように、受信装置20は、受信部211と、GI除去部212と、帯域同期部213と、フレーム同期部214と、パイロット抽出部215と、チャネル推定部216と、等化部217と、DeI/L(Deinterleave)部218と、誤り訂正復号部219と、を有する。受信装置20は、TMCC復調/復号部230と、LLch復調/復号部240と、出力部250と、を有する。
【0056】
受信部211は、送信装置10から送信されるOFDMフレーム(送信信号)を受信する。例えば、受信部211は、希望信号を受信するためのチューナ(バンドパスフィルタ)、RF信号をIF信号に変換する周波数変換部、IF信号のA/D(Analog/Digital)変換部、FFT(Fast Fourier Transform)部などを含む。
【0057】
GI除去部212は、受信部211から入力されるOFDMフレームからGIを除去する。
【0058】
帯域同期部213は、GI除去部212から入力されるOFDMフレームの同期補正処理を実行する。
【0059】
フレーム同期部214は、MIMOが採用されるケースにおいて、各系統のOFDMフレームの同期を取る。
【0060】
パイロット抽出部215は、フレーム同期部214から入力されるOFDMフレームからパイロット信号を抽出する。パイロット抽出部215は、抽出されたパイロット信号をチャネル推定部216に出力する。
【0061】
チャネル推定部216は、パイロット抽出部215から入力されるパイロット信号に基づいて、各階層に含まれる少なくともいずれか1つの階層に属するデータキャリアシンボルのチャネル応答を推定する。チャネル推定部216は、推定されたチャネル応答を等化部217に出力する。
【0062】
等化部217は、チャネル推定部216から入力されるチャネル応答に基づいて、フレーム同期部214から入力されるデータキャリアシンボルの等化処理を実行する。等化部217は、データキャリアシンボルをDeI/L部218に出力する。
【0063】
DeI/L部218は、等化部217から入力されるデータキャリアシンボルのデインタリーブを実行する。データキャリアシンボルのデインタリーブは、時間デインタリーブを含んでもよく、周波数デインタリーブを含んでもよい。DeI/L部218は、データキャリアシンボルを誤り訂正復号部219に出力する。
【0064】
誤り訂正復号部219は、DeI/L部218から入力されるデータキャリアシンボルをデータビットに変換し、変換されたデータビットのデインタリーブを実行した上で、データビットの誤り訂正復号を実行する。データビットのデインタリーブは、時間デインタリーブ及び周波数デインタリーブを含んでもよい。誤り訂正復号部219は、MIMOが採用されるケースにおいて、各系統のデータキャリアシンボルを合成した上で、データビットへの変換、デインタリーブ及び誤り訂正復号を実行する。誤り訂正復号部219は、データビットを出力部250に出力する。
【0065】
TMCC復調/復号部230は、フレーム同期部214から入力されるOFDMフレームからTMCC信号を抽出し、抽出されたTMCC信号の復調及び復号を実行する。復調及び復号後のTMCC信号は、TMCC情報と称されてもよい。
【0066】
LLch復調/復号部240は、フレーム同期部214から入力されるOFDMフレームからLLch信号を抽出し、抽出されたLLch信号の復調及び復号を実行する。復調及び復号後のLLch信号は、LLchデータと称されてもよい。
【0067】
出力部250は、誤り訂正復号部219から入力されるデータビットに基づいて、映像・音声等のデータを出力する。出力部250は、LLch復調/復号部240から入力されるLLchデータに基づいて、緊急地震速報などの重要情報を出力する。
【0068】
ここで、実施形態では、受信装置20は、上述した構成に加えて、TxID抽出部260を有する。TxID抽出部260は、送信装置10を識別するTxIDを抽出する。上述したように、TxIDは、LLchのデータ領域に多重されており、TxID抽出部260は、LLchのデータ領域からTxIDを分離する。
【0069】
例えば、伝送システム1において予め定められた特定データ領域にTxIDが多重される場合には、TxIDが多重されたデータ領域を特定する情報が必要ないため、TxID抽出部260は、LLchのデータ領域からTxIDを容易に分離することができる。TxIDがOFDMフレーム毎に多重される場合には、TxID抽出部260は、TxIDが多重されるOFDMフレーム毎のキャリアを加算することが可能であり、受信耐性の向上を図ることができる。
【0070】
実施形態では、受信部211は、1以上の階層化データ及びLLchデータを含むOFDMフレームを受信する受信部を構成する。TxID抽出部260は、TxIDをLLchのデータ領域から分離する制御部を構成する。
【0071】
(特定データ領域)
以下において、実施形態に係る特定データ領域について説明する。図5は、実施形態に係る特定データ領域について説明するための図である。特定データ領域は、LLchのデータ領域(以下、LLchデータ領域)のうち、TxIDが多重されるデータ領域である。図5では、OFDMフレームのうち、LLchデータ領域が例示されている。
【0072】
図5に示すように、OFDMフレームは、時間及び周波数によって定義することができる。OFDMフレームは、周波数方向において複数のキャリアを含み、時間軸方向において複数のシンボルを含む。
【0073】
OFDMフレームは、周波数方向において、部分受信帯域に対応するセグメント(例えば、セグメント0~セグメント8の9セグメント)及び非部分受信帯域に対応するセグメント(例えば、セグメント9~セグメント34の26セグメント)を含む。セグメントの各々は、複数のキャリアを含む。
【0074】
LLchデータ領域は、OFDMフレームを構成するキャリア及びシンボルによって定義される。LLchのキャリア数及びLLchのシンボル数は、FFTサイズなどに応じて定められてもよい。例えば、FFTサイズが16kである場合に、各セグメントは、周波数方向において8本のLLchのキャリアを含んでもよく、各LLchのサブキャリアは、時間方向において112のLLchのシンボルを含んでもよい。
【0075】
ここで、LLchデータ領域の先頭シンボルは、差動変調の基準(差動基準)であってもよい。部分受信帯域のLLchは、LL0chと称されてもよく、非部分受信帯域のLLchは、LL1chと称されてもよい。LLch信号は、LLchデータ領域の最初のシンボル(図5では、左上)から順に割り当てられる。
【0076】
第1に、周波数方向においてLLchデータ領域の後方(図5では、右側)のキャリアのシンボルは、1符号化データ長よりも短い余り領域となることが想定される。TxIDが多重される特定領域は、このような余り領域であってもよい。
【0077】
第2に、時間軸方向において特定領域として用いるシンボルの位置は、予め定められていてもよい。例えば、特定領域として用いるシンボルは、時間方向においてLLchデータ領域の最後のシンボル(図5では、下側)であってもよい。
【0078】
すなわち、図5に示すように、特定データ領域は、周波数方向においてLLchデータ領域の後方(余り領域)であり、かつ、時間方向において最後のシンボルであってもよい。
【0079】
但し、特定データ領域として用いるLLchのキャリアとしては、どのLLchのキャリアを用いてもよい。また、特定データ領域として用いるLLchのシンボルは、どのLLchのシンボルを用いてもよい。
【0080】
(作用及び効果)
実施形態では、送信装置10を識別するTxIDがLLchに多重されるため、LDMが用いられるケースと比べて、受信装置20の回路規模の増大を抑制しながら、TxIDを適切に送信することができる。
【0081】
[実験結果]
以下において、実施形態に関する実験結果(シミュレーション結果)について説明する。
【0082】
シミュレーションでは、2つの送信装置(以下、Tx A及びTx B)によってSFN(Single Frequency Network)が構築される環境下において、Tx AがTxIDを多重する一方で、Tx BがTxIDを多重しないケースにおいて、TxIDの多重に伴う受信特性についてシミュレーションを実行した。具体的には、Tx Bは、TxIDのビットを判定したビットを多重する想定とした。
【0083】
ここでは、Tx AがTx IDを多重しないケース(w/o TxID)、Tx Aが1byteのTxIDを多重するケース(1byte TxID)、Tx Aが2byteのTxIDを多重するケース(1byte TxID)の3パターンについて、シミュレーションを行った。2byteのTxIDが多重されるケースでは、16ビットのTxIDを用いた。
【0084】
ここで、Tx AとTx Bとの受信電力比(D/U)は1dBであり、Tx AとTx Bとの遅延時間差は63μsである。また、伝送パラメータは、図6に示す通りである。シミュレーションの結果は、図7に示す通りである。図7では、B階層データの受信特性が示されている。
【0085】
図7に示すように、TxIDの多重によってTx Aからの送信信号とTx Bからの送信号の波形が異なることに起因してSFNが瞬時的に破綻することから、BER(Bit Error Rate)特性のわずかな劣化が確認された。しかしながら、例えば、十分に低いと想定されるBER(=1.00e-07)においても、1byte TxID及び2byte TxIDによる劣化は、0.1dB以内であるため、TxIDの多重に伴う劣化が十分に許容範囲であることが確認された。
【0086】
[その他の実施形態]
本発明は上述した開示によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0087】
上述した開示では、低遅延チャネルがLLchであるケースについて例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。LLchはLchと読み替えられてもよい。低遅延チャネルは、他の名称で称されてもよい。
【0088】
上述した開示では特に触れていないが、TxIDに基づいた特定ビット列のビット長(例えば、8bit又は16bit)は固定長であってもよい。固定長は、伝送システム1で予め定められていてもよく、TMCC情報などによって受信装置20に通知されてもよい。
【0089】
上述した開示では特に触れていないが、高度化方式では、STBC(Space Time Block Coding)が用いられてもよく、SFBC(Space Frequency Block Coding)が用いられてもよく、SDM(Space Division Multiplexing)が用いられてもよい。
【0090】
上述した開示では特に触れていないが、送信装置10及び受信装置20が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0091】
或いは、送信装置10及び受信装置20が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…伝送システム、10…送信装置、10A…送信装置、10B…送信装置、20…受信装置、110…入力I/F、111~114…BICM、115…合成部、120…シンボル処理部、121…合成部、122…処理部、130…パイロット生成部、140…TMCC変調部、150…LLch符号/変調部、160…フレーム処理部、161…フレーム構成部、162…IFFT部、163…GI付加部、164…送信部、180…TxID生成部、181…パディング部、182…バイパス部、183…エラー検出符号化部、184…エラー訂正符号化部、211…受信部、212…GI除去部、213…帯域同期部、214…フレーム同期部、215…パイロット抽出部、216…チャネル推定部、217…等化部、218…De-IL部、219…誤り訂正復号部、230…TMCC復調/復号部、240…LLch復調/復号部、250…出力部、260…TxID抽出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7