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特開2024-33430積層体、タッチパネルセンサー、電子機器、積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033430
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】積層体、タッチパネルセンサー、電子機器、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240306BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240306BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20240306BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20240306BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 21/288 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
G06F3/041 495
G03F7/004 512
H05K3/00 R
H01L21/88 Q
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
H01B13/00 503D
H01L21/288 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136999
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】有冨 隆志
(72)【発明者】
【氏名】望月 英宏
【テーマコード(参考)】
2H225
4M104
5F033
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
2H225AC32
2H225AC34
2H225AC63
2H225AD06
2H225AD14
2H225AD24
2H225AM10N
2H225AM13P
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AM53N
2H225AM58N
2H225AN12N
2H225AN12P
2H225AN39P
2H225AN47P
2H225AN65P
2H225AN66P
2H225AN82P
2H225AN89P
2H225AP01N
2H225AP06P
2H225BA01N
2H225BA02P
2H225BA18P
2H225BA32N
2H225BA32P
2H225CA13
2H225CA14
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
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4M104BB05
4M104BB06
4M104BB07
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4M104BB09
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4M104BB29
4M104BB34
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4M104BB39
4M104DD51
4M104DD78
5F033GG03
5F033HH07
5F033HH11
5F033HH13
5F033HH14
5F033HH15
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5F033HH35
5F033HH36
5F033LL01
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5F033PP26
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5F033WW04
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5G307FC10
5G323BA01
5G323BB06
5G323BC03
5G323CA01
(57)【要約】
【課題】 タッチパネルセンサーとして適用した際、誤作動が生じにくい積層体を提供すること。
【解決手段】 基材と、上記基材の一方の表面側に配置された、複数の第1金属配線からなる第1配線パターン部と、上記基材の他方の表面側に配置された、複数の第2金属配線からなる第2配線パターン部とを有する積層体であって、上記第1金属配線および上記第2金属配線が、いずれも金属および炭素原子を含み、上記第1金属配線の平均抵抗率を抵抗率R1とし、上記第2金属配線の平均抵抗率を抵抗率R2とした際、上記抵抗率R1と上記抵抗率R2とが同じ値であるか、上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.40以下である、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の表面側に配置された、複数の第1金属配線からなる第1配線パターン部と、
前記基材の他方の表面側に配置された、複数の第2金属配線からなる第2配線パターン部とを有する、積層体であって、
前記第1金属配線および前記第2金属配線が、いずれも金属および炭素原子を含み、
前記第1金属配線の平均抵抗率を抵抗率R1とし、前記第2金属配線の平均抵抗率を抵抗率R2とした際、前記抵抗率R1と前記抵抗率R2とが同じ値であるか、
前記抵抗率R1および前記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、前記抵抗率R1および前記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.40以下である、積層体。
【請求項2】
前記抵抗率R1と前記抵抗率R2とが同じ値であるか、
前記抵抗率R1および前記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、前記抵抗率R1および前記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.20以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記抵抗率R1と前記抵抗率R2とが同じ値であるか、
前記抵抗率R1および前記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、前記抵抗率R1および前記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.10以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記金属が、銀または銅である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1金属配線および前記第2金属配線が、ハロゲン原子を実質的に含まない、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1金属配線の算術平均粗さの平均値を平均値A1とし、前記第2金属配線の算術平均粗さの平均値を平均値A2とした際、前記平均値A1および前記平均値A2のうちより小さい平均値に対する、前記平均値A1および前記平均値A2のうちより大きい平均値の比が、1.05以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記第1金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、前記第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、2原子%以上であり、
前記第2金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、前記第2金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、2原子%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、前記第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、40原子%以下であり
前記第2金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、前記第2金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、40原子%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記第1金属配線および前記第2金属配線が、窒素原子を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記第1金属配線および前記第2金属配線が、酸素原子を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材が透明である、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体を含む、タッチパネルセンサー。
【請求項13】
請求項12に記載のタッチパネルセンサーを含む、電子機器。
【請求項14】
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側にパターン状の第1塗膜を形成して、前記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す工程1と、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、前記基材の他方の表面側にパターン状の第2塗膜を形成して、前記工程1で加熱処理が施された前記第1塗膜および前記第2塗膜に対して第2加熱処理を施し、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する工程2とを有する積層体の製造方法であって、
前記第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、前記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも大きい、積層体の製造方法。
【請求項15】
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側に第1塗膜を形成して、前記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す工程1と、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、前記基材の他方の表面側に第2塗膜を形成して、前記工程1で加熱処理が施された前記第1塗膜および前記第2塗膜に対して第2加熱処理を施して、第1金属層および第2金属層を形成する工程2と、
前記第1金属層に対するエッチング処理、および、前記第2金属層に対するエッチング処理を行い、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する工程3を有する積層体の製造方法であって、
前記第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、前記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも大きい、積層体の製造方法。
【請求項16】
前記エッチング処理が、仮支持体と感光性組成物層とを有する転写フィルムの前記感光性組成物層を前記第1金属層上および前記第2金属層上に転写して、前記感光性組成物層を露光して、露光された前記感光性組成物層を現像し、得られたパターンをマスクとして前記第1金属層および前記第2金属層をエッチングする処理である、請求項15に記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
前記第2加熱処理における加熱温度が、前記第1加熱処理における加熱温度よりも高い、請求項14~16のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
前記第2加熱処理における加熱温度が、前記第1加熱処理における加熱温度よりも25度以上高い、請求項14~16のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、タッチパネルセンサー、電子機器および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の金属配線からなる配線パターン部を有する積層体は種々の用途があり、例えばタッチパネルセンサーに用いられる。上記のような積層体は、例えば基材上に金属粒子を含むインクを用いて、複数の金属配線からなる配線パターン部を形成される場合がある。
特許文献1では、銀ナノ粒子インクが開示されており、基材の一方の表面に銀ナノ粒子インクを用いてパターン状の塗膜を形成し、パターン状の塗膜を焼成して導電膜(配線パターン部)を形成したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-189717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載の技術を参考にし、基材の一方の表面に配線パターン部を形成し、次いで、基材の他方の表面に配線パターン部を形成して積層体を作製した。ここで、本発明者らは、得られた積層体をタッチパネルセンサーとして適用した際に、誤作動が生じやすいことを知見した。タッチパネルセンサーは誤作動が生じないことが求められており、改良が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、タッチパネルセンサーとして適用した際、誤作動が生じにくい積層体の提供を課題とする。
また、本発明は、積層体の製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
〔1〕 基材と、
上記基材の一方の表面側に配置された、複数の第1金属配線からなる第1配線パターン部と、
上記基材の他方の表面側に配置された、複数の第2金属配線からなる第2配線パターン部とを有する、積層体であって、
上記第1金属配線および上記第2金属配線が、いずれも金属および炭素原子を含み、
上記第1金属配線の平均抵抗率を抵抗率R1とし、上記第2金属配線の平均抵抗率を抵抗率R2とした際、上記抵抗率R1と上記抵抗率R2とが同じ値であるか、
上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.40以下である、積層体。
〔2〕 上記抵抗率R1と上記抵抗率R2とが同じ値であるか、
上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.20以下である、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 上記抵抗率R1と上記抵抗率R2とが同じ値であるか、
上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.10以下である、〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
〔4〕 上記金属が、銀または銅である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔5〕 上記第1金属配線および上記第2金属配線が、ハロゲン原子を実質的に含まない、〔1〕~〔4〕に記載の積層体。
〔6〕 上記第1金属配線の算術平均粗さの平均値を平均値A1とし、上記第2金属配線の算術平均粗さの平均値を平均値A2とした際、上記平均値A1および上記平均値A2のうちより小さい平均値に対する、上記平均値A1および上記平均値A2のうちより大きい平均値の比が、1.05以上である、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔7〕 上記第1金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、上記第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、2原子%以上であり、
上記第2金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、上記第2金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、2原子%以上である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔8〕 上記第1金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、上記第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、40原子%以下であり
上記第2金属配線の断面をX線光電子分光法で分析して得られる、上記第2金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が、40原子%以下である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔9〕 上記第1金属配線および上記第2金属配線が、窒素原子を含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔10〕 上記第1金属配線および上記第2金属配線が、酸素原子を含む、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔11〕 上記基材が透明である、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔12〕 〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の積層体を含む、タッチパネルセンサー。
〔13〕 〔12〕に記載のタッチパネルセンサーを含む、電子機器。
〔14〕 金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側にパターン状の第1塗膜を形成して、上記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す工程1と、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、上記基材の他方の表面側にパターン状の第2塗膜を形成して、上記工程1で加熱処理が施された上記第1塗膜および上記第2塗膜に対して第2加熱処理を施し、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する工程2とを有する積層体の製造方法であって、
上記第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、上記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも大きい、積層体の製造方法。
〔15〕 金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側に第1塗膜を形成して、上記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す工程1と、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、上記基材の他方の表面側に第2塗膜を形成して、上記工程1で加熱処理が施された上記第1塗膜および上記第2塗膜に対して第2加熱処理を施して、第1金属層および第2金属層を形成する工程2と、
上記第1金属層に対するエッチング処理、および、上記第2金属層に対するエッチング処理を行い、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する工程3を有する積層体の製造方法であって、
上記第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、上記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも大きい、積層体の製造方法。
〔16〕 上記エッチング処理が、仮支持体と感光性組成物層とを有する転写フィルムの上記感光性組成物層を上記第1金属層上および上記第2金属層上に転写して、上記感光性組成物層を露光して、露光された上記感光性組成物層を現像し、得られたパターンをマスクとして上記第1金属層および上記第2金属層をエッチングする処理である、〔15〕に記載の積層体の製造方法。
〔17〕 上記第2加熱処理における加熱温度が、上記第1加熱処理における加熱温度よりも高い、〔14〕~〔16〕のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
〔18〕 上記第2加熱処理における加熱温度が、上記第1加熱処理における加熱温度よりも25度以上高い、〔14〕~〔17〕のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タッチパネルセンサーとして適用した際、誤作動が生じにくい積層体が提供できる。
また、本発明によれば、積層体の製造方法も提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0010】
以下、本明細書における各記載の意味を表す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
<積層体>
本発明の積層体は、基材と、上記基材の一方の表面側に配置された、複数の第1金属配線からなる第1配線パターン部と、上記基材の他方の表面側に配置された、複数の第2金属配線からなる第2配線パターン部とを有する。上記第1金属配線および上記第2金属配線は、いずれも金属および炭素原子を含む。ここで、本発明の積層体において、上記金属配線の平均抵抗率を抵抗率R1とし、上記第2金属配線の平均抵抗率を抵抗率R2とした際、上記抵抗率R1と上記抵抗率R2が同じ値であるか、上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、上記抵抗率R1および上記抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比が、1.00超1.40以下である。
本発明者らが上記特許文献1に記載の技術を参考にして作製した積層体について鋭意検討したところ、抵抗率R1および抵抗率R2が上記関係を満たしている場合、積層体をタッチパネルセンサーとして適用した際に、誤作動が生じにくいことを見出した。抵抗率R1および抵抗率R2が上記関係を満たしている場合、信号の読み取りが正確に行われ、誤作動が生じにくいと考えられる。
以下、本発明の積層体が有する構成について説明する。
【0012】
[基材]
本発明の積層体は、基材を有する。
基材は、後述する第1配線パターン部が形成される第1主面と、第2配線パターン部が形成される第2主面とを有する。
基材の材質は特に制限されず、目的に応じて選択できる。
基材の材質としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、トリアセチルセルロース、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、ポリ乳酸、等の樹脂;シリコン、ソーダガラス、無アルカリガラス等の無機材料;および、原紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等の紙類が挙げられる。また、基材は1層であってもよく、2層以上であってもよい。基材が2層以上である場合、材質の異なる2種以上の基材を積層させてもよい。なかでも、基材の材質は樹脂が好ましい。すなわち、基材は、樹脂基材が好ましい。
また、基材が透明であることも好ましい。基材が透明であるとは、基材の全光線透過率が65%以上であることをいい、基材の全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。上記全光線透過率は、100%未満が挙げられる。
【0013】
基材の厚さは、制限されない。基材の厚さは、10~200μmが好ましく、20~120μmがより好ましい。
上記基材の厚さは、以下の方法によって測定される。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、基材または積層体の主面に対して垂直な方向(すなわち、厚さ方向)の断面を観察する。得られた観察像に基づいて、基板の厚さを10点測定する。測定値を算術平均することで、基板の平均厚さを求める。
【0014】
[第1配線パターン部]
本発明の積層体は、基材の一方の表面(第1主面)側に配置された第1配線パターン部を有する。
第1配線パターン部は、複数の第1金属配線からなる。
第1金属配線からなる第1配線パターン部の形状は、特に制限されず、公知の形状とすることができる。例えば、タッチパネルセンサーに用いられる通常の配線パターンの形状を採用できる。より具体的には、第1配線パターンは、タッチパネルの検出部であってもよく、タッチパネルの検出部に電気的に接続する引き出し配線部であってもよい。
上記第1配線パターン部は、基材の表面上に直接配置してもよいし、他の層を介して配置してもよい。
以下、第1金属配線およびその特性について説明する。
【0015】
(第1金属配線)
第1配線パターン部を形成する複数の第1金属配線は、それぞれ、金属および炭素原子を含む。
第1金属配線が含む金属としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、および、金からなる群から選択される1種以上の金属が好ましい。第1金属配線の導電性の点で、第1金属配線が含む金属としては、銅および銀からなる群から選択される1種以上の金属が好ましく、湿熱耐久性の点で、銀が好ましい。
第1金属配線は、2種以上の金属を含んでいてもよい。
【0016】
第1金属配線は、炭素原子を含んでいればよく、炭素原子の形態は特に制限されない。第1金属配線が含む炭素原子の形態としては、例えば、-CH-で表される炭素鎖の一部、官能基を構成する炭素原子の一部が挙げられる。
第1金属配線が含む炭素原子は、後述する積層体の製造方法に記載の金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクに記載の成分に由来するものであってもよい。なかでも、第1金属配線に含まれる炭素原子は、有機化合物に由来することが好ましい。すなわち、第1金属配線は、有機化合物を含むことが好ましい。
上記有機化合物は、後述する、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクに含まれていてもよい樹脂、または、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクに含まれていてもよいエチレン不飽和基を有する重合性化合物の硬化物であってもよい。
なお、上記樹脂および上記重合性化合物の硬化物は、炭素原子を有しており、後述する窒素原子および酸素原子からなる群から選択される原子をさらに有していてもよい。
【0017】
第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量は特に制限されないが、基板との密着性に優れる点で、2原子%以上が好ましく、3原子%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましい。炭素原子の含有量を上記好ましい範囲とすることで、基板(特に樹脂基板)との親和性が向上し、密着性が優れるものと考えられる。
また、第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量は、積層体をタッチパネルセンサーとして適用した際に誤作動がより生じにくい点で、40原子%以下が好ましく、30原子%以下がより好ましく、20原子%以下がさらに好ましい。
上記第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量は、第1金属配線の断面を露出させたサンプルを作製し、第1金属配線の断面をX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)によって分析して得られる値である。
上記第1金属配線の断面が露出したサンプルは、ウルトラミクロトームによって切削して作製できる。この際の切削面は、第1金属配線が延在する方向に垂直な面であってもよいし、斜め切削にて形成される面でもよい。
XPSによる分析は、作製した断面の中心に入射X線が照射されるようにして行う。
第1金属配線の断面が露出したサンプルの作製条件、および、XPSによる分析の詳細な条件は、後段の実施例に示す条件とする。
【0018】
また、第1金属配線は、湿熱耐久性に優れる点で、ハロゲン原子を実質的に含まないことも好ましい。
ハロゲン原子を実質的に含まないとは、第1金属配線の全原子に対するハロゲン原子の含有量が、0.1原子%未満であることをいう。なお、ハロゲン原子の含有量とは、フッ素、塩素、臭素、および、ヨウ素の合計含有量を指す。
第1金属配線の全原子に対するハロゲン原子の含有量は、第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量と同様の方法で測定される。
【0019】
また、第1金属配線は、窒素原子を含むことも好ましい。
第1金属配線が窒素原子を含む場合、窒素原子を含んでいればよく、窒素原子の形態は特に制限されない。第1金属配線が含む窒素原子の形態としては、例えば、アンモニアまたはその塩、上記炭素原子と結合を形成している態様(例えば、アミン化合物またはその塩)が挙げられる。
第1金属配線が含む窒素原子は、後述する積層体の製造方法に記載の金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクに記載の成分に由来するものであってもよい。
第1金属配線の全原子に対する窒素原子の含有量は、基板との密着性に優れる点で、0.1原子%以上が好ましく、0.3原子%以上が好ましく、0.5原子%超がさらに好ましい。第1金属配線の全原子に対する窒素原子の含有量の上限としては、10原子%以下が挙げられる。
第1金属配線の全原子に対する窒素原子の含有量は、第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量と同様の方法で測定される。
【0020】
また、第1金属配線は、酸素原子を含むことも好ましい。
第1金属配線が酸素原子を含む場合、酸素原子を含んでいればよく、酸素原子の形態は特に制限されない。第1金属配線が含む酸素原子の形態としては、例えば、上記金属の酸化物、および、上記炭素原子と結合を形成している態様(例えば、カルボン酸基を有する化合物またはその塩、エステル結合を含む化合物、および、アルコール化合物)が挙げられる。
第1金属配線が含む酸素原子は、後述する積層体の製造方法に記載の金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクに記載の成分に由来するものであってもよい。
第1金属配線の全原子に対する酸素原子の含有量は、基板との密着性に優れる点で、0.1原子%以上が好ましく、0.2原子%以上がより好ましく、0.5原子%超がさらに好ましい。第1金属配線の全原子に対する窒素原子の含有量の上限としては、10原子%以下が挙げられる。
第1金属配線の全原子に対する酸素原子の含有量は、第1金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量と同様の方法で測定される。
【0021】
(平均抵抗率(抵抗率R1))
本発明の積層体において、第1金属配線の平均抵抗率(抵抗率R1)は、以下のようにして求められる。
まず、第1金属配線の厚さおよび幅が略一定の領域の両端から、市販の銀ペーストを用いて長さ2cmの抵抗測定用の取り出し配線を4本形成する。ここで、上記領域の第1金属配線が延在する方向であって、取り出し配線を形成した一方の端部からもう一方の端部までの距離を長さL1とする。形成した4本の取り出し配線に端子を接触させ、4端子法で抵抗値R(単位:Ω)を測定する。4端子法での測定には、日置電機株式会社製のRM3543を用いる。
次に、上記領域内であって、上記領域の第1金属配線が延在する方向と垂直な断面を作製し、ウルトラミクロトームで断面を切削してサンプルを得る。得られたサンプルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察し、第1金属配線の幅W1および高さH1を測長する。
上記手順で得られた抵抗値R、長さL1、幅W1および高さH1から以下の式(1)により抵抗率RV(単位:Ω・m)を得る。
RV=(R×W1×H1)/L1 (1)
上記測定を、第1配線パターン部に含まれる第1金属配線について行ってそれぞれのRVを求め、その算術平均値を抵抗率R1(単位:Ω・m)とする。
なお、第1配線パターン部を構成する第1金属配線が10本超の場合は、任意の10本の第1金属配線のRVを求め、その算術平均値をR1とする。第1配線パターン部を構成する第1金属配線が10本以下の場合は、すべての第1金属配線についてRVを求め、その算術平均値を抵抗率R1とする。
【0022】
抵抗率R1は、1.0×10-4Ω・m以下が好ましく、1.0×10-5Ω・m以下がより好ましく、1.0×10-6Ω・m以下がさらに好ましい。
抵抗率R1の下限としては、1.0×10-9Ω・mが挙げられる。
【0023】
(算術平均粗さ(平均値A1))
本発明の積層体において、第1金属配線の算術平均粗さ(平均値A1)は、以下のようにして求められる。
まず、第1金属配線が延在する方向と垂直な断面を作製し、ウルトラミクロトームで断面を切削してサンプルを得る。得られたサンプルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察し、サンプルの断面において基材側とは反対側の表面の算術平均粗さを得る。
上記サンプルの作製および断面の観察を5回繰り返し、得られた第1金属配線の算術平均粗さを平均値A1とする。なお、積層体から5個のサンプルを得ることが難しい場合には、得られる上限のサンプル数(4以下)から平均値A1を算出してもよい。また、第1配線パターン部において、第1金属配線が5本以上それぞれ平行に延在している場合、第1金属配線が延在する方向と垂直な断面を作製し、5本の第1金属配線について表面粗さを得て、平均値A1を算出してもよい。
【0024】
上記平均値A1は、1~100nmが好ましく、2~80nmがより好ましく、3~50nmがさらに好ましい。
平均値A1が上記好ましい範囲の上限以下であると、第1金属配線と保護フィルムとが接するように保護フィルム等を設けた際、不要となった保護フィルムが剥離しやすくなる。また、平均値A1が上記好ましい範囲の下限以上であると、第1金属配線の抵抗率R1が小さくなりやすい。
【0025】
第1金属配線の厚みは、0.1~20μmが好ましく、0.3~10μmがより好ましく、0.5~5μmがさらに好ましい。第1金属配線の厚みは、平均抵抗率の測定において測定される各第1金属配線の断面における高さH1の算術平均として得られる。
第1金属配線の幅は、1~1000μmが好ましく、2~500μmがより好ましく、4~200μmがさらに好ましい。第1金属配線の幅は、平均抵抗率の測定において測定される各第1金属配線の断面における幅W1の算術平均として得られる。
【0026】
[第2配線パターン部]
本発明の積層体は、基材の一方の表面(第2主面)側に配置された第2配線パターン部を有する。
第2配線パターン部は、複数の第2金属配線からなる。
第2金属配線からなる第2配線パターン部の形状は、特に制限されず、公知の形状とすることができる。例えば、タッチパネルセンサーに用いられる通常の配線パターンの形状を採用できる。より具体的には、第2配線パターンは、タッチパネルの検出部であってもよく、タッチパネルの検出部に電気的に接続する引き出し配線部であってもよい。
上記第2配線パターン部は、基材の表面上に直接配置してもよいし、他の層を介して配置してもよい。
以下、第2金属配線およびその特性について説明する。
【0027】
(第2金属配線)
第2配線パターン部を形成する複数の第2金属配線は、それぞれ、金属および炭素原子を含む。
第2金属配線が含む材料は、好ましい態様も含め、第1金属配線が含む材料の態様と同様であるので、説明を省略する。
【0028】
(平均抵抗率(抵抗率R2))
本発明の積層体において、第2金属配線の平均抵抗率(抵抗率R2)は、抵抗率R1と同様にして求められる。
【0029】
抵抗率R2は、1.0×10-4Ω・m以下が好ましく、1.0×10-5Ω・m以下がより好ましく、1.0×10-6Ω・m以下がさらに好ましい。
抵抗率R2の下限としては、1.0×10-9Ω・m以上が挙げられる。
【0030】
本発明の積層体においては、上記方法で求められる抵抗率R1と、上記方法で求められる抵抗率R2とにおいて、抵抗率R1と抵抗率R2とが同じ値であるか、抵抗率R1および抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、抵抗率R1および抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比(以下、単に「抵抗率比X」ともいう。)が、1.00超1.40以下である。
換言すれば、抵抗率R1が抵抗率R2と同じ値であり、抵抗率R1に対する抵抗率R2の比(または、抵抗率R2に対する抵抗率R1の比)が1.00であり、抵抗率R1が抵抗率R2よりも小さい場合、抵抗率R1に対する抵抗率R2の比は、1.00超1.40以下であり、抵抗率R2が抵抗率R1よりも小さい場合、抵抗率R2に対する抵抗率R1の比は、1.00超1.40以下である。
積層体をタッチパネルセンサーとして適用した際に誤作動がより生じにくい点で、抵抗率R1と抵抗率R2とが同じ値であるか、上記抵抗率比Xが1.00超1.20以下が好ましく、抵抗率R1と抵抗率R2とが同じ値であるか、上記抵抗率比Xが1.00超1.10以下がより好ましい。
【0031】
(算術平均粗さ(平均値A2))
本発明の積層体において、第2金属配線の算術平均粗さ(平均値A2)は、以下のようにして求められる。
【0032】
上記平均値A2は1~100nmが好ましく、2~80nmがより好ましく、3~50nmがさらに好ましい。
平均値A2が上記好ましい範囲の上限以下であると、第2金属配線と保護フィルムとが接するように保護フィルム等を設けた際、不要となった保護フィルムが剥離しやすくなる。また、平均値A2が上記好ましい範囲の下限以上であると、第2金属配線の抵抗率R2が小さくなりやすい。
【0033】
本発明の積層体において、上記平均値A1および上記平均値A2のうちより小さい平均値に対する、平均値A1および平均値A2のうちより大きい平均値の比は、1.05以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、2.0以下が好ましい。
積層体は、第1配線パターン部および第2配線パターン部のそれぞれと接するように保護フィルムが設けられる場合がある。また、保護フィルムを両面に設けた積層体は、ロールツーロール方式でハンドリングされる場合がある。保護フィルムを両面に設けた積層体をロールツーロール方式でハンドリングする際に、上記平均値の比が1.05以上であると、一方(例えば処理を行う側)の保護フィルムのみを安定して剥離することができる。
【0034】
なお、平均値A1が平均値A2よりも大きい場合、上記抵抗率R1よりも抵抗率R2の方が大きい場合が多い。一方、平均値A2が平均値A1よりも大きい場合、上記抵抗率R2よりも抵抗率R1の方が大きい場合が多い。すなわち、第1金属配線の算術平均粗さが大きい場合、第1金属配線の平均抵抗率が低くなる傾向にあり、第2金属配線の算術平均粗さが大きい場合、第2金属配線の平均抵抗率が低くなる傾向にある。
【0035】
第2金属配線の厚みおよび幅の好ましい態様は、上記第1金属配線の厚みおよび幅の好ましい態様と同様であるため、説明を省略する。なお、第2金属配線の厚みおよび幅は、上記第1金属配線と同様の測定方法で得られる。
【0036】
<積層体の製造方法(第1実施態様)>
以下、本発明の積層体の製造方法の第1実施態様について説明する。
本発明の積層体の製造方法の第1実施態様は、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側にパターン状の第1塗膜を形成して、上記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す工程1と、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、上記基材の他方の表面側にパターン状の第2塗膜を形成して、上記工程1で加熱処理が施された上記第1塗膜および上記第2塗膜に対して第2加熱処理を施し、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する工程2とを有する積層体の製造方法であって、
上記第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、上記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも大きい。
積層体の製造方法の第1実施態様によれば、本発明の積層体を製造できる。
仮に、第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、上記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも小さい場合、第2加熱処理後において、第1配線パターン部を形成する際に加わる熱量が、第2配線パターンを形成する際に加わる熱量と比較して非常に大きくなる。つまり、第1配線パターン部を形成する際には第1加熱処理と第2加熱処理との両方の熱量が供給されるのに対して、第2配線パターン部の形成の際には、第2加熱処理の熱量のみが供給される。そのため、第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、上記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも小さい場合、第1配線パターン部の形成に供給される熱量が大きくなりすぎて、形成される第1配線パターン部と第2配線パターン部との抵抗率の差が大きくなり、上述した抵抗率の比率の要件を満たさなくなる傾向がある。
以下、各工程および含んでいてもよい工程について説明する。
【0037】
[工程1]
工程1では、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側にパターン状の第1塗膜を形成して、上記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す。
上記第1塗膜は、基材の表面上に直接配置してもよいし、他の層を介して配置してもよい。
パターン状の第1塗膜を形成する方法は特に制限されず、例えば、インクジェット法、ロール塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、および、スプレー塗布法等が挙げられる。
パターン状の第1塗膜は、上記方法で金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを塗布した後、インクに含まれる溶媒等の成分を除去して形成してもよい。すなわち、パターン状の第1塗膜を乾燥する処理を行ってもよい。上記第1塗膜を乾燥する処理は、第1加熱処理の加熱温度よりも低い温度で行われることが好ましい。
第1塗膜のパターン形状は特に制限されず、公知のパターン形状を採用できる。例えば、タッチパネルセンサーに用いられる通常の配線パターンの形状を採用できる。
以下、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインク(以下、「第1金属含有インク」ともいう。)および第1加熱処理について説明する。
【0038】
(第1金属含有インク)
第1金属含有インクとは、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方と、溶媒とを含むインク組成物である。
第1金属含有インクは、金属粒子および有機金属化合物、ならびに、溶媒以外の添加剤を含んでいてもよい。
なかでも、第1金属含有インクは、金属粒子を含むことが好ましい。
【0039】
金属粒子を構成する材料としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、および、金からなる群から選択される1種以上の金属が好ましい。形成される第1配線パターンに含まれる金属配線の導電性の点で、金属粒子に含まれる金属としては、銅および銀からなる群から選択される1種以上の金属が好ましく、湿熱耐久性の点で、銀がより好ましい。
金属粒子は、2種以上の金属を含んでいてもよい。金属粒子が2種以上の金属を含むとは、1種の金属からなる金属粒子および別の金属からなる金属粒子を含む態様と、単一の金属粒子が2種以上の金属を含む態様とを含む。
単一の金属粒子が2種以上の金属を含む場合、金属粒子における2種以上の金属は、固溶していてもよく、相分離していてもよく、金属間化合物を形成していてもよい。また、単一の金属粒子が2種以上の金属を含む場合、金属粒子は、コアシェル型粒子であってもよい。
【0040】
金属粒子は、ナノ粒子を含むことも好ましい。すなわち、金属粒子は、銅ナノ粒子および銀ナノ粒子からなる群から選択されるナノ粒子を含むことが好ましく、銀ナノ粒子を含むことがより好ましい。
金属粒子の平均粒子径は、10~500nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
金属粒子の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法によって求められる。動的光散乱法による分析装置としては、商品名「ゼータナノサイザーシリーズ ナノ-S」(マルバーン社製)が挙げられる。
【0041】
金属粒子が銀ナノ粒子を含む場合、銀ナノ粒子よりも平均粒子径が大きいサブミクロン粒子を含んでいてもよい。ナノサイズの銀ナノ粒子とサブミクロンサイズの銀サブミクロン粒子とを併用することで、銀ナノ粒子が銀サブミクロン粒子の周囲で融点降下するため、良好な導電パスが得られやすい。
【0042】
また、金属粒子が銀ナノ粒子を含む場合、マイグレーションを抑制できる点で、金属粒子は、銀ナノ粒子のほかに、銀以外の金属を含む粒子を含んでいてもよい。銀以外の金属としては、その金属が電子を放出して安定イオンにイオン化反応の標準電極電位が、標準水素電極に対して0V以上ある金属が好ましい。
標準電極電位が0V以上である金属としては、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、および、レニウムが挙げられ、金、銅、白金、または、パラジウムが好ましい。
【0043】
金属粒子は、公知の方法で得ることができ、その方法は特に制限されない。
金属粒子は、凝集を防ぐためにその表面が修飾されていてもよい。金属粒子の表面を修飾する材料としては、金属粒子の表面と相互作用する基を有する有機化合物が挙げられる。金属粒子の表面と相互作用する基を有する有機化合物としては、界面活性剤、および、相互作用性基を有する樹脂が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、親水性基としてアミノ基、第4級アンモニウム構造を有する基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、および、チオール基等を有し、疎水性基としてアルキル基を有する化合物が挙げられる。上記界面活性剤は、親水性基を2個以上有する化合物であってもよい。
相互作用性基を有する樹脂としては、構造中にアミノ基、第4級アンモニウム構造を有する基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、および、カルボニル基等を有する樹脂が挙げられる。
金属粒子の表面は、金属粒子を得る際(例えば化学的な合成時)に修飾されてもよく、金属粒子を得た後に修飾されてもよい。
【0044】
金属粒子は、一部が酸化されていてもよく、金属粒子の一部が酸化物となっていてもよい。金属粒子に含まれる酸化物は、金属粒子の全質量に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
第1金属含有インクに含まれる金属粒子の含有量は、第1金属含有インクの全質量に対して、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。
第1金属含有インクに含まれる金属粒子の含有量は、第1金属含有インクに含まれる全固形分に対して、40~99.9質量%が好ましく、60~99質量%がより好ましく、70~99質量%がさらに好ましい。
なお、上記固形分とは、第1金属含有インクに含まれる溶媒以外の他の成分を意図する。上記他の成分の性状が液状であっても、上記固形分として計算する。
【0046】
有機金属化合物とは、金属-炭素結合を有する化合物、金属イオンと有機化合物イオンとが静電的に結合している金属塩、および、金属錯体等の金属原子と有機化合物とを含む化合物をいう。
有機金属化合物が含む金属原子としては、例えば、金属粒子が含む金属が挙げられ、好ましい金属も同様である。
【0047】
有機金属化合物に含まれる有機化合物としては、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、および、アミド化合物等が挙げられる。有機金属化合物は、金属原子および有機化合物以外に無機物を含んでいてもよい。無機物としては、例えばハロゲン原子、および、アンモニウムイオン等が挙げられる。
有機金属化合物としては、金属塩が好ましい。金属塩としては、カルボン酸金属塩が好ましい。
第1金属含有インクは、有機金属化合物を2種以上含んでいてもよい。
また、有機金属化合物を含むインクとしては、国際公開第2022/091883号の段落[0077]~[0144]に記載のインクを用いてもよい。
【0048】
溶媒としては、金属粒子を分散できるか、金属有機化合物を溶解または分散できれば特に制限されず、公知の溶媒を用いることができる。
溶媒の沸点は、30~300℃が好ましく、50~200℃がより好ましい。
溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、カルバメート系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、および水が挙げられる。
溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
炭化水素系溶媒は、炭素数6~20の直鎖状、分枝状、または、環状の炭化水素系溶媒が挙げられる。炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、および、キシレン等が挙げられる。
エーテル系溶媒は、直鎖状エーテル、分枝鎖状エーテル、および、環状エーテルのいずれであってもよい。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、および、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
アルコール系溶媒は、第1級アルコール、第2級アルコール、および、第3級アルコールのいずれであってもよく、ヒドロキシ基を複数有する多価アルコールであってもよい。アルコール系溶媒としては、エタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチレングリコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、ヘキシレングリコール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロペンタノール、テルピネオール、および、デカノール等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、3-メトキシブチルアセテート等が挙げられる。
【0050】
第1金属含有インクが含んでいてもよい添加剤としては、例えば、樹脂が挙げられる。
第1金属含有インクが樹脂を含む場合、基板との密着性が向上しやすい。樹脂としては、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、およびポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、樹脂は、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、および、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよい。
【0051】
添加剤としては、エチレン不飽和基を有する重合性化合物(エチレン不飽和重合性化合物)も挙げられる。エチレン不飽和重合性化合物としては、分子内にエチレン不飽和基を2個以上含む化合物(多官能エチレン性不飽和化合物)が好ましい。エチレン不飽和重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、ビニルベンゼン化合物、またはビスマレイミド化合物が好ましく、多価(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。多価(メタ)アクリレート化合物としては、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステル化合物が挙げられる。また、多価(メタ)アクリレート化合物は、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、および、エポキシ(メタ)アクリレートと称される、分子内に数個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する分子量が数百から数千のオリゴマー等であってもよい。
添加剤としてエチレン不飽和基を有する重合性化合物を含む場合、さらに重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、光重合開始剤および熱重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤が好ましい。
【0052】
第1金属含有インクが含んでいてもよい他の添加剤としては、分散剤、還元剤、防錆剤、増粘剤、および、界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
(第1加熱処理)
工程1では、第1金属含有インクを用いて形成された第1塗膜に対して、第1加熱処理を施す。
第1加熱処理を行う方法は特に制限されず、例えば、オーブンによる加熱が挙げられる。
ここで、第1加熱処理における加熱温度を温度S1(単位:℃)とし、第1加熱処理における加熱時間を時間T1(単位:分)とする。温度S1は、第1加熱処理が行われる雰囲気の温度とする。
【0054】
温度S1は、第1金属含有インクに含まれる成分によって適宜設定できる。例えば、第1金属含有インクに含まれる金属粒子として銀ナノ粒子を含む場合、温度S1は、80~180℃が好ましく、90~160℃がより好ましく、90~130℃がさらに好ましく、90~120℃が特に好ましい。
また、工程1に金属粒子を含む第1金属含有インクを用いた場合において、第1金属含有インク中の金属粒子同士がネッキングし始める温度を温度Snt1(単位:℃)とする。ここで、温度Snt1から、温度S1を減算した値は、-40~60℃が好ましく、-20~50℃がより好ましく、0~50℃がさらに好ましく、10~50℃が特に好ましい。
なお、上記金属粒子同士がネッキングし始める温度は、以下のようにして測定される。まず、金属粒子を含む第1金属含有インクをガラス基板上に一定の幅で塗布して室温(25℃)で乾燥し、塗布膜を形成する。上記塗布膜の表面抵抗率をロレスタGP(三菱アナリティック製)で測定する。まず、50℃に設定したオーブンで塗布膜を10分間加熱し、加熱後の電気抵抗率を測定する。上記加熱および測定を、オーブンの設定温度を5℃ずつ上昇させながら200℃となるまで繰り返す。ここで、加熱後の電気抵抗率が、初めて200℃で加熱後の電気抵抗率に対して90%以上となった温度を上記金属粒子同士がネッキングし始める温度する。
【0055】
時間T1は、第1金属含有インクに含まれる成分、および、温度S1によって適宜設定できる。例えば、金属粒子として銀ナノ粒子を含む第1金属含有インクを用いた場合、時間T1は、0.5~120分が好ましく、2~60分がより好ましく、10~45分がさらに好ましく、20~45分が特に好ましい。
【0056】
[工程2]
工程2では、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインク(以下、「第2金属含有インク」ともいう。)を用いて、上記基材の他方の表面側にパターン状の第2塗膜を形成して、上記工程1で加熱処理が施された上記第1塗膜および上記第2塗膜に対して第2加熱処理を施し、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する。
上記第2塗膜は、基材の表面上に直接配置してもよいし、他の層を介して配置してもよい。
パターン状の第2塗膜を形成する方法は特に制限されず、第1塗膜を形成する方法と同様の方法を採用できる。
パターン状の第2塗膜は、上記方法で第2金属含有インクを塗布した後、インクに含まれる溶媒等の成分を除去して形成してもよい。すなわち、パターン状の第2塗膜を乾燥する処理を行ってもよい。上記第2塗膜を乾燥するする処理は、第2加熱処理の加熱温度よりも低い温度で行われることが好ましい。
第2塗膜のパターン形状は特に制限されず、公知のパターン形状を採用できる。例えば、タッチパネルセンサーに用いられる通常の配線パターンの形状を採用できる。
以下、第2金属含有インクおよび第2加熱処理について説明する。
【0057】
(第2金属含有インク)
第2金属含有インクとは、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方と、溶媒とを含むインク組成物である。
工程2に用いられる第2金属含有インクは、上記工程1で用いた第1金属含有インクと同様のものを用いることができる。両者は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0058】
(第2加熱処理)
工程2では、上記工程1で加熱処理が施された上記第1塗膜および上記第2塗膜に対して第2加熱処理を施す。第2加熱処理により、第1配線パターン部および第2配線パターン部が形成される。
第2加熱処理を行う方法は特に制限されず、例えば、オーブンによる加熱等が挙げられる。
ここで、第2加熱処理における加熱温度を温度S2(単位:℃)とし、第2加熱処理における加熱時間を時間T2(単位:分)とする。温度S2は、第2加熱処理が行われる雰囲気の温度とする。
このとき、本発明の積層体の製造方法の第1実施態様においては、工程2の温度S2と時間T2の積で表される値が、工程1の温度S1と時間T1の積で表される値よりも大きい。
上記条件を充足することにより、上記抵抗率R1と抵抗率R2とが同じ値であるか、上記抵抗率比Xを1.00超1.40以下にできる。
【0059】
温度S2は、第2金属含有インクに含まれる成分によって適宜設定できる。例えば、第2金属含有インクに含まれる金属粒子として銀ナノ粒子を含む場合、温度S2は、110~200℃が好ましく、120~180℃がより好ましく、130~170℃がさらに好ましく、140~170℃が特に好ましい。
なお、積層体をタッチパネルセンサーとして適用した際に誤作動がより生じにくい点で、温度S2は、温度S1よりも高いことが好ましい。温度S2から温度S1を減算した値は、10~80℃が好ましく、20~70℃がより好ましく、30~60℃がさらに好ましい。上記好ましい範囲とすることで、積層体の抵抗率比上記好ましい範囲にしやすく、かつ、上述した算術平均粗さに関する平均値の比が1.05以上にしやすい。
工程2に金属粒子を含む第2金属含有インクを用いた場合において、第2金属含有インク中の金属粒子同士がネッキングし始める温度を温度Snt2(単位:℃)とする。ここで、温度Snt1および温度Snt2のうちのより高い温度から、温度S2を減算した値は、-40~30℃が好ましく、-20~20℃がより好ましく、-20~10℃がさらに好ましい。
なお、温度Snt2は、上記温度Snt1と同様の方法で求められる。
【0060】
<積層体の製造方法(第2実施態様)>
以下、本発明の積層体の製造方法の第2実施態様について説明する。
本発明の積層体の製造方法の第2実施態様は、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側に第1塗膜を形成して、上記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す工程1と、
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、上記基材の他方の表面側に第2塗膜を形成して、上記工程1で加熱処理が施された上記第1塗膜および上記第2塗膜に対して第2加熱処理を施して、第1金属層および第2金属層を形成する工程2と、
上記第1金属層に対するエッチング処理、および、上記第2金属層に対するエッチング処理を行い、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する工程3を有する積層体の製造方法であって、
上記第2加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値が、上記第1加熱処理における加熱温度と加熱時間との積で表される値よりも大きい。
積層体の製造方法の第2実施態様によれば、本発明の積層体を製造できる。
なお、第2実施態様は、上述した第1実施態様と比較して、第1塗膜および第2塗膜がパターン状でない点、ならびに、工程3をさらに有する点で相違する。その他の点については第1実施態様と同様であるため、以下、第2実施態様の相違点を中心に説明する。
【0061】
[工程1]
金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、基材の一方の表面側に第1塗膜を形成して、上記第1塗膜に対して第1加熱処理を施す。
第1塗膜は、基材の一方の表面側の略全面に設けられてもよく、基材の一方の表面側の一部に設けられてもよい。
上記第1塗膜は、基材の表面上に直接配置してもよいし、他の層を介して配置してもよい。
第1塗膜の塗布方法、および、第1加熱処理については第1実施態様と同様であるため、説明を省略する。なお、第1塗膜を乾燥する処理を行ってもよい。
また、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクは、第1実施態様で説明した第1金属含有インクと同様であるため、説明を省略する。
なお、工程3で用いることのできる感光性組成物層と工程2で形成される第1金属層との密着性が向上しやすい点で、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクは、上述した樹脂またはエチレン不飽和基を有する重合性化合物を含むことも好ましい。
【0062】
[工程2]
工程2では、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクを用いて、上記基材の他方の表面側に第2塗膜を形成して、上記工程1で加熱処理が施された上記第1塗膜および上記第2塗膜に対して第2加熱処理を施して、第1金属層および第2金属層を形成する。
上記第2塗膜は、基材の表面上に直接配置してもよいし、他の層を介して配置してもよい。
第2塗膜の塗布方法、および、第2加熱処理については第1実施態様と同様であるため、説明を省略する。なお、第2塗膜を乾燥する処理を行ってもよい。
また、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクは、第1実施態様で説明した第2金属含有インクと同様であるため、説明を省略する。
なお、工程3で用いることのできる感光性組成物層と工程2で形成される第2金属層との密着性が向上しやすい点で、金属粒子および有機金属化合物の少なくとも一方を含むインクは、上述した樹脂またはエチレン不飽和基を有する重合性化合物を含むことも好ましい。
【0063】
[工程3]
工程3では、上記第1金属層に対するエッチング処理、および、上記第2金属層に対するエッチング処理を行い、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成する。
第1配線パターンおよび第2配線パターンのパターン形状は特に制限されず、公知のパターン形状を採用できる。例えば、タッチパネルセンサーに用いられる通常の配線パターンの形状を採用できる。
【0064】
工程3におけるエッチング処理、ならびに、第1配線パターン部および第2配線パターン部の形成は、公知の方法で行うことができる。例えば、いわゆるサブトラクティブ法で第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成できる。より具体的には、まず、感光性組成物層を第1金属層および第2金属層上にそれぞれ設け、感光性組成物層に対してパターン露光および現像を行ってレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンの開口部に存在する第1金属層および第2金属層をエッチングにより除去し、第1配線パターン部および第2配線パターン部を形成できる。
上記手順においては、第1金属層上にレジストパターンを形成した後、第2金属層上に感光性組成物層を設け、露光および現像を行ってレジストパターンを行ってもよい。
以下、各手順について説明する。
【0065】
感光性組成物層を形成する方法は特に制限されないが、転写フィルムを用いる方法、感光性組成物を塗布して形成する方法が挙げられる。中でも、転写フィルムを用いる方法が好ましい。より具体的には、仮支持体と感光性組成物層とを含む転写フィルムを用意し、転写フィルム中の感光性組成物層側が第1金属層および第2金属層と対向するように、転写フィルムを第1金属層上および第2金属層上に貼合する方法が好ましい。
なお、転写フィルムは、少なくとも仮支持体と、感光性組成物層とを有するフィルムをいう。転写フィルムについては後段で詳細に説明する。
【0066】
すなわち、工程3におけるエッチング処理は、仮支持体と感光性組成物層とを有する転写フィルムの感光性組成物層を第1金属層上および第2金属層上に転写して、感光性組成物層を露光して、露光された感光性組成物層を現像し、得られたパターンをマスクとして第1金属層および第2金属層をエッチングする処理が好ましい。
【0067】
パターン露光とは、パターン状に露光する形態であり、露光部と非露光部とが存在する形態の露光を意味する。パターン露光における露光部(露光領域)と非露光部(非露光領域)との位置関係は、適宜調整できる。
パターン露光を行った感光性組成物層は、露光部と未露光部との間で、現像液に対する溶解性が変化する。例えば、感光性組成物層がポジ型感光性組成物層である場合、感光性組成物層の露光部は、未露光部に比べて、現像液に対する溶解性が増大する。一方で、例えば、感光性組成物層がネガ型感光性組成物層である場合、感光性組成物層の露光部は、未露光部に比べて、現像液に対する溶解性が低下する。
【0068】
露光する方法としては、例えば、公知の方法が挙げられる。
具体的には、フォトマスクを用いる方法が挙げられる。例えば、感光性組成物層と露光光源との間にフォトマスクを配置することで、フォトマスクを介して感光性組成物層をパターン露光できる。感光性組成物層をパターン露光することで、感光性組成物層において露光部および未露光部を形成できる。
【0069】
露光工程においては、解像性がより優れる点で、感光性組成物層とフォトマスクとを接触させて露光(以下、「コンタクト露光」ともいう。)することが好ましい。
【0070】
露光工程においては、上記コンタクト露光以外に、プロキシミティ露光、レンズ系またはミラー系プロジェクション露光方式および露光レーザー等を用いたダイレクト露光方式を用いてもよい。
レンズ系プロジェクション露光方式は、解像力および焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機を使用できる。ダイレクト露光方式は、直接感光性組成物層に描画を行ってもよいし、レンズを介して感光性組成物層に縮小投影露光をしてもよい。また、露光は大気下、減圧または真空下で露光してもよく、露光光源と感光性組成物層の間に水等の液体を介在させて露光してもよい。
【0071】
感光性組成物層が転写フィルムを用いて形成された場合、仮支持体を剥離してから露光を行ってもよく、仮支持体を介して感光性組成物層を露光してもよい。コンタクト露光によって感光性組成物層を露光する場合、フォトマスクの汚染およびフォトマスクに付着した異物による露光への影響を避ける点で、仮支持体を介して感光性組成物層を露光することが好ましい。仮支持体を介して感光性組成物層を露光した場合、仮支持体を剥離した後に、後述する現像工程を実施することが好ましい。
【0072】
上記パターン露光に用いる露光光は、感光性組成物層の現像液に対する溶解性を変化させることができれば特に制限されない。露光光の主波長は、10~450nmの場合が多く、300~450nmが好ましく、350~450nmがより好ましい。「主波長」とは、最も強度が高い波長を意味する。
【0073】
露光光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯およびメタルハライドランプが挙げられる。
露光量は、5~200mJ/cmが好ましく、10~200mJ/cmがより好ましい。露光量は、光源照度および露光時間により決定される。また、露光量は、公知の光量計を用いて測定してもよい。
光源、露光量および露光方法としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落[0146]~[0147]が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0074】
パターン露光においては、フォトマスクを用いずに、感光性組成物層を露光してもよい。
フォトマスクを用いずに感光性組成物層を露光する場合(以下、「マスクレス露光」ともいう。)、例えば、直接描画装置を用いて感光性組成物層を露光できる。
直接描画装置は、活性エネルギー線を用いて直接画像を描くことができる装置である。
マスクレス露光における露光光源としては、例えば、波長350~410nmの光を照射可能な、レーザー(例えば、半導体レーザー、ガスレーザーおよび固体レーザー等)および水銀ショートアークランプ(例えば、超高圧水銀灯等)が挙げられる。
露光波長は、上述のとおりである。露光量は、光源照度、および積層体の移動速度に基づいて決定できる。描画パターンは、コンピュータによって制御できる。
【0075】
パターン露光した感光性組成物層を現像することにより、レジストパターンを形成できる。
例えば、感光性組成物層がポジ型感光性組成物層である場合、現像によって、感光性組成物層の露光部が現像液で除去される。一方で、例えば、感光性組成物層がネガ型感光性組成物層である場合、現像によって、感光性組成物層の未露光部が現像液で除去される。
【0076】
現像方法としては、例えば、公知の方法を利用できる。
具体的には、現像液を用いる方法が挙げられる。
現像液としては、例えば、特開平5-072724号公報および国際公開第2015/093271号の段落[0194]に記載された現像液が挙げられる。
【0077】
現像液としては、アルカリ性水溶液が好ましい。
アルカリ性水溶液に含まれるアルカリ性化合物(水に溶解してアルカリ性を示す化合物)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、および、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。
現像液の温度は、20~40℃が好ましい。
現像方式としては、例えば、公知の方法を利用できる。現像方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー、スピン現像およびディップ現像が挙げられる。
現像方法としては、国際公開第2015/093271号の段落[0195]に記載の現像方法が好ましい。
【0078】
現像によって得られたレジストパターンに対して、さらに露光(いわゆる「ポスト露光」)してもよく、さらに加熱(いわゆる「ポストベーク」)してもよい。
【0079】
エッチングは、公知の方法で実施できる。
具体的には、特開2017-120435号公報の段落[0209]~[0210]に記載の方法、特開2010-152155号公報の段落[0048]~[0054]に記載の方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチングおよびプラズマエッチング等のドライエッチングが挙げられる。
【0080】
ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性またはアルカリ性のエッチング液を適宜選択できる。
酸性のエッチング液としては、例えば、少なくとも1つの酸性化合物を含む酸性水溶液、ならびに、酸性化合物と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウムおよび過マンガン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1つとの酸性の混合水溶液が挙げられる。
酸性水溶液に含まれる酸性化合物(水に溶解して酸性を示す化合物)としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
アルカリ性のエッチング液としては、例えば、少なくとも1つのアルカリ性化合物を含むアルカリ性水溶液およびアルカリ性化合物と塩(例えば、過マンガン酸カリウム等)とのアルカリ性の混合水溶液が挙げられる。
アルカリ性水溶液に含まれるアルカリ性化合物(水に溶解してアルカリ性を示す化合物)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミンおよび有機アミンの塩(例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0081】
エッチング工程において、第1金属層および第2金属層のエッチング処理は、同時にまたは逐次に実施されてもよい。生産性がより向上する点で、第1金属層および第2金属層のエッチング処理は、同時に行われることが好ましい。
なお、感光性組成物層と第1金属層との密着性、および、感光性組成物層と第2金属層との密着性に優れる場合、形成されたレジストパターンと第1金属層との密着性、および、形成されたレジストパターンと第2金属層との密着性に優れるため、所望の形状の線幅の第1配線パターン部および第2配線パターン部が得られやすい。
【0082】
なお、第1金属層および第2金属層のエッチングを実施した後、レジストパターンは除去してもよい。レジストパターンを除去する方法としては、例えば、薬品処理により除去する方法が挙げられ、除去液を用いて除去する方法が好ましい。
レジストパターンを除去する方法としては、例えば、除去液を用いて、スプレー法、シャワー法およびパドル法等の公知の方法により除去する方法が挙げられる。
【0083】
[転写フィルム]
以下、工程3の感光性組成物層の形成に用いることができる転写フィルムについて説明する。
転写フィルムは、仮支持体と、感光性組成物層とを有する。
転写フィルムは、後述する感光性組成物層以外に、その他層を有していてもよい。
その他層としては、例えば、後述する中間層および後述する熱可塑性樹脂層が挙げられる。 以下、転写フィルムについて、各部材および各成分を詳細に説明する。
【0084】
(仮支持体)
転写フィルムは、仮支持体を有する。
仮支持体は、感光性組成物層を支持する部材であり、最終的には剥離処理により除去される。
【0085】
仮支持体は、単層構造および多層構造のいずれであってもよい。
仮支持体としては、フィルムが好ましく、樹脂フィルムがより好ましい。また、仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下または加圧下および加熱下において、著しい変形、収縮または伸びを生じないフィルムも好ましく、シワ等の変形および傷がないフィルムも好ましい。
フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルムおよびポリカーボネートフィルムが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0086】
仮支持体の厚みは、5~200μmが好ましく、取り扱いやすさおよび汎用性の点から、5~150μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましく、5~25μmが特に好ましい。
仮支持体の厚みは、SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出される。
【0087】
(感光性組成物層)
転写フィルムは、感光性組成物層を有する。
感光性組成物層は、後述する樹脂および後述する重合性化合物を含むことが好ましく、後述する樹脂、後述する重合性化合物および後述する重合開始剤を含むことがより好ましい。また、感光性組成物層は、後述する樹脂がアルカリ可溶性樹脂を含むことも好ましい。つまり、感光性組成物層は、アルカリ可溶性樹脂を含む樹脂および重合性化合物を含むことが好ましい。
感光性組成物層は、感光性組成物層の全質量に対して、樹脂を10.0~90.0質量%、重合性化合物を5.0~70.0質量%および重合開始剤を0.01~20.0質量%含むことが好ましい。
以下、感光性組成物層が含み得る各成分について説明する。
【0088】
-樹脂-
感光性組成物層は、樹脂を含んでいてもよい。
樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂が好ましい。
【0089】
樹脂としては、メタクリル酸に由来する構成単位とメチルメタクリレートに由来する構成単位とスチレンに由来する構成単位またはベンジルメタクリレートに由来する構成単位とを含む樹脂およびメタクリル酸に由来する構成単位とスチレンに由来する構成単位とを含む樹脂が好ましく、さらに重合性基を有する構成単位を含む樹脂がより好ましい。
【0090】
樹脂のTgは、60~135℃が好ましく、70~115℃がより好ましく、75~105℃がさらに好ましく、80~100℃が特に好ましい。
【0091】
樹脂の重量平均分子量としては、5,000~500,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましく、10,000~60,000がさらに好ましく、20,000~50,000が特に好ましい。
樹脂の分散度は、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0がさらに好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
【0092】
樹脂の含有量は、感光性組成物層の全質量に対して、10.0~90.0質量%が好ましく、20.0~80.0質量%がより好ましく、30.0~70.0質量%がさらに好ましく、40.0~60.0質量%が特に好ましい。
【0093】
-重合性化合物-
感光性組成物層は、重合性基を有する重合性化合物を含んでいてもよい。
「重合性化合物」とは、後述する重合開始剤の作用で重合する化合物であって、上記樹脂とは異なる化合物を意味する。
【0094】
重合性化合物が有する重合性基としては、重合反応に関与する基であればよく、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基およびマレイミド基等のエチレン性不飽和基を有する基;エポキシ基およびオキセタン基等のカチオン性重合性基を有する基が挙げられる。
なかでも、重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましく、アクリロイル基またはメタアクリロイル基がより好ましい。
【0095】
重合性化合物としては、感光性組成物層の感光性がより優れる点から、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)が好ましく、分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「多官能エチレン性不飽和化合物」ともいう。)がより好ましい。
また、解像性および剥離性がより優れる点で、エチレン性不飽和化合物が分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、2~3がさらに好ましく、3が特に好ましい。
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有していてもよい。
【0096】
重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
なかでも、重合性化合物は、3種以上で用いることが好ましく、3種で用いることがより好ましい。
重合性化合物の含有量は、感光性組成物層の全質量に対して、10.0~70.0質量%が好ましく、15.0~70.0質量%がより好ましく、20.0~70.0質量%がさらに好ましい。
【0097】
樹脂の含有量に対する重合性化合物の含有量の質量比(重合性化合物の含有量/樹脂の含有量)が、0.10~2.00が好ましく、0.50~1.50がより好ましく、0.70~1.10がさらに好ましい。
【0098】
-重合開始剤-
感光性組成物層は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては、例えば、重合反応の形式に応じて公知の重合開始剤が挙げられる。具体的には、熱重合開始剤および光重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤およびカチオン重合開始剤のいずれであってもよい。
【0099】
感光性組成物層は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、紫外線、可視光線およびX線等の活性光線を受けて、重合性化合物の重合を開始する化合物である。光重合開始剤としては、例えば、公知の光重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤および光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0100】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
重合開始剤(好ましくは光重合開始剤)の含有量は、感光性組成物層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。上限は、感光性組成物層の全質量に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0101】
-その他添加剤-
感光性組成物層は、上記成分以外に、必要に応じてその他添加剤を含んでいてもよい。
その他添加剤としては、例えば、色素、顔料、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、増感剤、界面活性剤、可塑剤、ヘテロ環状化合物(例えば、トリアゾール等)、ピリジン類(例えば、イソニコチンアミド等)およびプリン塩基(例えば、アデニン等)が挙げられる。
また、その他添加剤としては、例えば、金属酸化物粒子、連鎖移動剤、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、有機または無機の沈殿防止剤および特開2014-085643号公報の段落[0165]~[0184]が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
その他添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
【0102】
(中間層)
転写フィルムは、仮支持体と感光性組成物層との間に中間層を有していてもよい。
例えば、中間層は、熱可塑性樹脂層を有さない場合は仮支持体と感光性組成物層との間、または、熱可塑性樹脂層を有する場合は熱可塑性樹脂層と感光性組成物層との間に配置されることが好ましい。
中間層としては、例えば、水溶性樹脂層および特開平5-072724号公報に「分離層」として記載される酸素遮断機能のある酸素遮断層が挙げられる。
【0103】
(熱可塑性樹脂層)
転写フィルムは、熱可塑性樹脂層を有していてもよい。
熱可塑性樹脂層は、中間層を有さない場合は仮支持体と感光性組成物層との間、中間層を有する場合は仮支持体と中間層との間に配置されることが好ましい。
転写フィルムが熱可塑性樹脂層を有する場合、転写フィルムと被転写体との貼合工程における被転写体への追従性が向上し、転写フィルムと被転写体との間に気泡が混入することを抑制できる。その結果、熱可塑性樹脂層に隣接する層(例えば、仮支持体)との密着性が向上する。
熱可塑性樹脂層としては、例えば、特開2014-085643号公報の段落[0189]~[0193]が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0104】
<積層体の用途>
本発明の積層体は、タッチパネルセンサーに好適に適用できる。タッチパネルセンサーを備えるタッチパネルは、静電容量型タッチパネルが好ましい。タッチパネルセンサーを備えるタッチパネルは、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)表示装置および液晶表示装置等の表示装置に適用できる。
【0105】
本発明の積層体の製造方法は、タッチパネルセンサーの製造に適用できる。本発明の積層体の製造方法は、他にも、例えば、透明ヒーター、透明アンテナ、電磁波シールド材、および、調光フィルム等の導電膜の製造;プリント配線板および半導体パッケージの製造;半導体チップおよびパッケージ間のインターコネクト用のピラーおよびピンの製造;メタルマスクの製造;COF(Chip on Film)およびTAB(Tape Automated Bonding)等のテープ基材の製造;に適用できる。
【実施例0106】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特に断りのない限り、「部」、および「%」は質量基準である。
【0107】
<金属粒子を含むインクの調製>
実施例および比較例で用いた金属粒子を含むインクの調製方法について説明する。
【0108】
[銀ナノ粒子A]
まず、硝酸銀(和光純薬工業(株)製)とシュウ酸二水和物(和光純薬工業(株)製)とを反応させ、シュウ酸銀(分子量:303.78)を得た。得られたシュウ酸銀20.0g(65.8mmol)を500mLフラスコに入れ、さらに、n-ブタノール30.0gを入れ、シュウ酸銀のn-ブタノールスラリーを得た。
上記スラリーを、30℃に保持した状態で、n-ブチルアミン(分子量:73.14、(株)ダイセル製)57.8g(790.1mmol)、n-ヘキシルアミン(分子量:101.19、東京化成工業(株)製)40.0g(395.0mmol)、n-オクチルアミン(分子量:129.25、商品名「ファーミン08D」、花王(株)製)38.3g(296.3mmol)、n-ドデシルアミン(分子量:185.35、商品名「ファーミン20D」、花王(株)製)18.3g(98.8mmol)、および、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(分子量:102.18、広栄化学工業(株)製)40.4g(395.0mmol)のアミン混合液を滴下した。
滴下後、30℃に保持した状態で2時間フラスコの内容物を撹拌して、シュウ酸銀とアミン化合物との錯形成反応を進行させ、白色物質(シュウ酸銀-アミン錯体)を生じさせた。
【0109】
シュウ酸銀-アミン錯体を生じさせた後、フラスコの内容物温度を105℃程度(103~108℃)に昇温し、昇温後、温度を保持した状態で1時間加熱した。加熱により、シュウ酸銀-アミン錯体を熱分解させて、濃青色の表面修飾銀ナノ粒子が分散した懸濁液を得た。
【0110】
得られた懸濁液を冷却した後、懸濁液にメタノール200gを加えて撹拌した。撹拌後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子と溶媒成分とを分離し、上澄みの溶媒成分を除去した。分離した表面修飾銀ナノ粒子に対し、メタノール60gを加えて撹拌し、その後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子と溶媒成分とを分離し、上澄みの溶媒成分を除去した(デカンテーション洗浄)。上記手順で、湿潤状態の銀ナノ粒子Aを得た。
【0111】
[銀ナノ粒子B]
銀ナノ粒子Aの合成において、上記デカンテーション洗浄をさらに2回繰り返した以外は、銀ナノ粒子Aと同様にして銀ナノ粒子Bを得た。
【0112】
[銀ナノ粒子C]
以下の手順で銀ナノ粒子Cを得た。
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
38℃、pH4.5に保たれた下記1液に、下記の2液および3液の各々90%に相当する量を、1液を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて、得られた溶液に下記4液および5液を8分間にわたって加え、さらに、下記の2液および3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、核粒子を0.21μmまで成長させた。さらに、得られた溶液にヨウ化カリウム0.15gを加え、5分間熟成し、粒子形成を終了した。
【0113】
1液:
・水 750ml
・ゼラチン 8.6g
・塩化ナトリウム 3g
・1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-チオン 20mg
・ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
・クエン酸 0.7g
2液:
・水 300ml
・硝酸銀 150g
3液:
・水 300ml
・塩化ナトリウム 38g
・臭化カリウム 32g
・ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
・ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
4液:
・水 100ml
・硝酸銀 50g
5液:
・水 100ml
・塩化ナトリウム 13g
・臭化カリウム 11g
・黄血塩 5mg
【0114】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、上記で得られた溶液の温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、得られた溶液から上澄み液を約3リットル除去した(第1水洗)。次に、上澄み液を除去した溶液に、3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、得られた溶液から上澄み液を3リットル除去した(第2水洗)。第2水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第3水洗)、水洗および脱塩工程を終了した。水洗および脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ゼラチン2.5g、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgおよび塩化金酸10mgを加え、55℃にて最適感度を得るように化学増感を施した。その後、さらに、得られた乳剤に、安定剤として1,3,3a,7-テトラアザインデン100mg、および、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に得られた乳剤は、ヨウ化銀を0.08モル%含み、塩臭化銀の比率を塩化銀70モル%、臭化銀30モル%とする、平均粒子径200nmの銀ナノ粒子Cを得た。
【0115】
[銅ナノ粒子A]
以下の手順で銅ナノ粒子Aを得た。
200ml三ッ口フラスコ中に、水酸化銅10.0g(0.1mol、和光純薬工業製)、ノナン酸31.5g(0.2mol、東京化成工業製、沸点254℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)18.5g(20ml、関東化学製)を量り取った。この混合液を撹拌しながら100℃まで加熱し、その温度を20分維持した。その後、ヘキシルアミン40.5g(0.4mol、東京化成工業製、沸点130℃)を添加し、100℃で10分加熱、撹拌した。この混合液を、氷浴を用いて10℃まで冷却した後、氷浴中でヒドラジン一水和物10.0g(0.2mol、関東化学製)をPGME18.5g(20ml、関東化学製)に溶解させた溶液を添加し、10分撹拌した。その後、反応溶液を100℃まで加熱し、その温度を10分維持した。30℃まで冷却後、ヘキサン33g(50ml、関東化学製)を添加した。遠心分離後、上澄み液を除去した。沈殿物をヘキサンで洗浄し、ノナン酸とヘキシルアミンで被覆された銅ナノ粒子Aを得た。
得られた銅ナノ粒子Aの平均粒子径は、39nmであった。
また、得られた銅ナノ粒子AのX線回折パターンを確認したところ、銅ナノ粒子Aは主にCu(体心立方構造)であり、一部CuO(立方晶系構造)が存在していた。なお、Cu(体心立方構造)の111反射ピーク強度に対する、CuO(立方晶系構造)の111反射ピーク強度の比は、約3%であった。
【0116】
[金属粒子を含むインクの調製手順]
後段の表1に記載の分量で各成分を混合し、オイルバス(100rpm)で2.5時間攪拌した。その後、自転公転式混練機(倉敷紡績(株)製、マゼルスターKKK2508)で撹拌混練(2分間×3回)して、黒茶色のインクA(1)(銀濃度:35重量%、粘度(25℃、せん断速度10(1/s)における):9.8mPa・s)を得た。
得られたインクAについて、分析装置として商品名「ゼータナノサイザーシリーズ ナノ-S」(マルバーン社製)を使用して、動的光散乱法にて、表面修飾銀ナノ粒子の平均粒子径を確認したところ、28nmであった。
表1に記載の分量で各成分を混合した以外はインクAと同様の手順で、インクB~Kを得た。
【0117】
【表1】
【0118】
なお、表1中における添加剤の詳細は以下のとおりである。
・ポリマー:iBuMA/MMA/MAA=50/30/20 wt%のポリマー(iBuMA:イソブチルメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAA:メタクリル酸)、酸価130mgKOH/g、重量平均分子量:12000
・HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製、平均分子量226、アクリロイル当量:113、ガラス転移温度:105℃、成分中の1,6-ヘキサンジオールジアクリレート含有量:100質量%
・パーブチルO:tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、日本油脂(株)製(パーブチルは登録商標)
【0119】
<第1金属層および第2金属層の形成>
実施例1に用いた第1金属層および第2金属層を有する金属層形成基材は、以下の手順で得た。
基材(ポリエステルフィルム、ルミラー(登録商標)#100-U34、東レ株式会社製)の一方の表面に、インクAをインクジェット法により塗布幅1.2m、乾燥膜厚1.0μmとなるように塗布し、第1塗膜を形成した。第1塗膜を形成した基材を、後段の表2に記載の条件にて加熱処理した(第1加熱処理)。加熱処理には、コンベクションオーブン(エスペック株式会社製)を用いた。続いて、基材の他方の表面(第1塗膜を形成した側とは反対側の表面)に、インクAをインクジェット法により塗布幅1.2m、乾燥膜厚1.0μmとなるように塗布し、第2塗膜を形成した。加熱処理が施された第1塗膜および第2塗膜を形成した基材を、表2に記載の条件にて加熱処理した(第2加熱処理)。加熱処理には、コンベクションオーブン(エスペック株式会社製)を用いた。上記手順により、第1金属層、基材、第2金属層をこの順に有する金属層形成基材を得た。
他の実施例および比較例に用いた金属層形成基材は、後段の表2に記載のインクを用い、第1加熱処理および第2加熱処理の条件を後段の表2に記載のように変更した以外は、上記手順と同様にして得た。
【0120】
<転写フィルムの作製>
仮支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ:16μm、ヘイズ:0.12%)上に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、乾燥層厚が3.0μmとなるように、下記熱可塑性樹脂組成物を塗布した。形成された熱可塑性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間乾燥し、熱可塑性樹脂層を形成した。
形成された熱可塑性樹脂層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、乾燥後の層厚が1.2μmとなるように下記水溶性樹脂層組成物を塗布した。水溶性樹脂層組成物の塗膜を80℃で40秒間乾燥し、水溶性樹脂層を形成した。
形成された水溶性樹脂層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、乾燥後の層厚が5.0μmとなるように、下記感光性組成物を塗布した。形成された感光性組成物の塗膜を100℃で2分間乾燥し、感光性組成物層を形成した。感光性組成物層上に保護フィルム(ポリプロピレンフィルム、厚さ:12μm)を貼り合わせ、転写フィルムを作製した。
【0121】
[熱可塑性樹脂組成物]
・ベンジルメタクリレート、メタクリル酸およびアクリル酸の共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度30.0質量%、Mw30,000、酸価153mgKOH/g):42.85部
・NKエステルA-DCP(新中村化学工業株式会社製):4.33部
・8UX-015A(大成ファインケミカル株式会社製):2.31部
・アロニックスTO-2349(東亞合成株式会社製):0.77部
・メガファックF-552(DIC株式会社製):0.03部
・メチルエチルケトン(三協化学株式会社製):39.80部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工株式会社製):9.51部
・下記に示す構造の化合物(光酸発生剤、特開2013-47765号公報の段落0227に記載の方法にしたがって合成した化合物。):0.32部
【0122】
【化1】
【0123】
・下記に示す構造の化合物(酸により発色する色素):0.08部
【0124】
【化2】
【0125】
[水溶性樹脂組成物]
・クラレポバールPVA-205(ポリビニルアルコール、株式会社クラレ製):3.22質量部
・ポリビニルピロリドンK-30(株式会社日本触媒製):1.49質量部
・メガファックF-444(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社製):0.0015質量部
・イオン交換水:38.12質量部
・メタノール(三菱ガス化学株式会社製):57.17質量部
【0126】
[感光性組成物]
・スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチルの共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度:30.0質量%、各モノマーの比率:52質量%/29質量%/19質量%、Mw:70,000):23.4質量部
・BPE-500(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製):4.1質量部
・NKエステルHD-N(1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製):2.2質量部
・B-CIM(2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、光重合開始剤、黒金化成株式会社製):0.25質量部
・SB-PI 701(4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、増感剤、三洋貿易株式会社より入手):0.04質量部
・TDP-G(フェノチアジン、川口化学工業株式会社製):0.0175質量部
・1-フェニル-3-ピラゾリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製):0.0011質量部
・ロイコクリスタルバイオレット(東京化成工業株式会社製):0.051質量部
・N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン(富士フイルム和光純薬株式会社製):0.02質量部
・1,2,4-トリアゾール(東京化成工業株式会社製):0.75質量部
・メガファックF-552(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社製):0.05質量部
・メチルエチルケトン(三協化学株式会社製):40.4質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工株式会社製):26.7質量部
・メタノール(三菱ガス化学株式会社製):2質量部
【0127】
<エッチング処理>
上記手順で作製した転写フィルムから保護フィルムを剥離した後、ロール温度100℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/分のラミネート条件で、上記手順で作製した金属層形成基材の両面に対し、感光性組成物層を貼り合わせた。上記手順により、感光性組成物層付き金属層形成基材得た。その後、ラミネート時の泡を消すために、加熱脱泡処理(0.6MPa、30分)を行った。
仮支持体を剥離せずに、線幅100μmのラインアンドスペースパターン(Duty比 1:1)を有するガラスマスクを仮支持体上に密着させ、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて一方の側の感光性組成物層に対して露光を行った。次いで、同様の条件で、他方の側の感光性組成物層に対して露光を行った。
露光後1時間放置した後、仮支持体を剥離し、現像液(30℃、0.66%炭酸カリウム水溶液)をシャワーで吹き付けることで一方の側の未露光部分を除去し、レジストパターンを作製した。同様にして、他方の側の未露光部分を除去し、レジストパターンを作製した。
露光量は、線幅100μmのラインアンドスペースパターン(Duty比 1:1)マスクで、現像して得られるレジストパターンの線幅が100μmとなる条件となるように調整した。
現像時間は、下記の方法により決定した。未露光の感光性組成物層に対し、上述の現像液をシャワーで吹き付け、感光性組成物層を除去するのに要する時間を測定し、その時間の2倍を現像時間とした。
得られたサンプルに対し、硝酸鉄水溶液(30℃、40.0質量%)をシャワーで吹き付け、レジストパターンの開口部に存在する第1金属層および第2金属層をエッチングして除去した。上記手順により、第1金属配線からなる第1配線パターン部と、基材と、第2金属配線からなる第2配線パターン部とをこの順に有する積層体を得た。
さらに、40℃の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(2.38質量%)をシャワーで吹き付け、残存するレジストパターンを除去した。
各実施例および各比較例は、それぞれ後段の表2に記載の条件で得た金属層形成基材を用い、上記手順で積層体を得た。
【0128】
<測定および評価>
各実施例および各比較例で得られた積層体は、以下に示す測定および評価を行った。測定結果および評価結果は、後段の表2に示す。
【0129】
[含有元素比率]
第1金属配線の全原子に対する各原子の含有量は、第1金属配線の断面を露出させたサンプルを作製し、第1金属配線の断面をX線光電子分光法(XPS)によって分析して得た。
具体的には、以下の手順でXPSによる分析を行った。
まず、厚み1μm、幅100μmの第1金属配線に対し、ウルトラミクロトームを用いて、斜め切削して第1金属配線の断面を露出させた。この際の切削面は、第1金属配線の断面が、後段のXPSに用いる照射X線のビーム径よりも大きくなるように調整した。
第1金属配線の断面のXPS分析には、アルバック・ファイ社製X線光電子分光分析装置 Quanteraを用いた。照射するX線は、単色化Al-Kα線、15kV、1Wとし、ビーム径は9μmとした。また、光電子取り出し角は45°とし、点分析モードで分析した。測定時は、電子銃および低速イオン銃で帯電補正を実施した。
なお、第1金属配線の断面は、切削時および保管時における表面汚染の影響を除去するために、アルゴンイオンを照射して最表面のクリーニングを行った。具体的には、XPS分析の前に、第1金属配線の断面の最表面に対し、加速電圧2kV、照射範囲2mm角、照射時間30秒の条件でアルゴンイオンを照射した。
C1s、N1s、O1s、Cl2p、Br3d、Ag3d、および、Cu2pのピークの面積強度から、全原子に対する炭素、窒素、酸素、塩素、臭素の含有量(原子%)を算出した。なお、上記以外の元素が検出された場合は、その元素の適当なピークの面積強度も加味して各元素の含有量を算出した。
第1金属配線の分析値を後段の表に記載する。なお、第2金属配線についても同様にXPSによる分析を行ったところ、第1金属配線の分析値と同様の値であった。
【0130】
[抵抗率比]
上述した方法により、第1金属配線の抵抗率R1、および、第2金属配線の抵抗率R2を測定し、抵抗率比を算出した。
下記基準によって抵抗率比を評価した。
(抵抗率比評価基準)
A:抵抗率比が1.00以上1.10以下
B:抵抗率比が1.10超1.20以下
C:抵抗率比が1.20超1.40以下
D:抵抗率比が1.40超
【0131】
[線粗さ比]
上述した方法により、第1金属配線の平均値A1、および、第2金属配線の平均値A2を測定し、上記平均値A1および上記平均値A2のうちより小さい平均値に対する、平均値A1および平均値A2のうちより大きい平均値の比(以下、「線粗さ比」ともいう。)を算出した。
下記基準によって線粗さ比を評価した。
(線粗さ比評価基準)
A:線粗さ比が1.15以上
B:線粗さ比が1.05以上1.15未満
C:線粗さ比が1.00以上1.05未満
なお、線粗さ比および抵抗率比がいずれも1.00でない場合、平均値A2よりも平均値A1が小さい場合は、抵抗率R2よりも抵抗率R1の方が大きく、平均値A1よりも平均値A2が小さい場合は、抵抗率R1よりも抵抗率R2の方が大きかった。
【0132】
[感光性組成物層密着性]
JIS規格(K5600-5-6:1999)に準拠して100マス(100 squares)のクロスカット試験を実施した。具体的には、感光性組成物層付き積層体を、上述したマスク露光と同じ露光量で全面露光した後、仮支持体を剥離したものに対し、カッターナイフを用いて1mm間隔でカットして1mm四方の格子を100個形成し、透明粘着テープ#600(スリーエム(株)製)を強く圧着させ、180°方向に剥離した。剥離後、格子の状態を観察し、感光性組成物層の剥がれが生じた格子の数から下記式より格子の残存割合(%)を求め、密着性を評価する指標とした。
残存割合(%)=(全格子数-剥がれが生じた格子数)/(全格子数)×100
算出した残存割合に基づいて、金属層と感光性組成物層との密着性を評価した。
(密着性評価基準)
A:残存割合が95%以上
B:残存割合が65%以上95%未満
C:残存割合が65%未満
【0133】
[保護フィルム剥離性]
得られた積層体を、2枚のポリエチレンフィルム(厚さ35μmm、タマポリ(株)製)を挟み、ポリエチレンフィルムの上下から、1kgf/cmの面圧力となるように荷重をかけた。さらに、荷重をかけた状態で、30℃の環境下で3日間放置した。その後、2枚のポリエチレンフィルムの端を左右の手で持ち、積層体の垂直方向にポリエチレンフィルムを引っ張ってポリエチレンフィルムを剥離した。剥離時の状況により、下記基準によって保護フィルム剥離性を評価した。A評価またはB評価であると、一方の保護フィルムを安定して剥離することができるため、好ましい。また、A評価であると、剥離時に大きな力が必要でないため、好ましい。
(保護フィルム剥離性の評価基準)
A:剥離が第1配線パターン部側および第2配線パターン部側のいずれか一方のみで連続的に起こり、かつ、剥離音がしない。
B:剥離が第1配線パターン部側および第2配線パターン部側のいずれか一方のみで連続的に起こり、かつ、剥離音がする。
C:剥離が第1配線パターン部側および第2配線パターン部側のいずれか一方で連続的に起こらず、第1配線パターン部側で剥離したり、第2配線パターン部側で剥離したりする。
【0134】
[タッチパネルセンサーの作製]
国際公開第2018/115106号の段落0111を参照し、各実施例および比較例で得られた積層体を用いて、縦20cm、横15cmのタッチパネルセンサーを作製した。作製したタッチパネルセンサーの引き出し配線部として、上記積層体の第1配線パターン部および第2配線パターン部を用いた。
【0135】
(初期評価)
作製したタッチパネルセンサーをセンサーとして50回駆動させ、誤作動の有無を確認した。誤作動の回数に基づいて、下記基準で初期評価を行った。
-初期評価の評価基準-
A:誤作動は発生しなかった
B:誤作動が1回または2回発生した
C:誤作動が3~5回発生した
D:誤作動が6回以上発生した
【0136】
(湿熱耐久性評価)
作製したタッチパネルセンサーに対して粘着シートを貼合した後、65℃、相対湿度90%の湿熱環境で450時間放置した後、センサーとして50回駆動させ、誤作動の有無を確認した。湿熱環境で放置後の誤作動の回数と、初期評価での誤作動の回数に基づいて、下記基準で湿熱耐久性評価を行った。
なお、比較例については湿熱耐久評価を実施しなかった。
-湿熱耐久性評価の評価基準-
A:初期評価時と比較して、誤作動の回数に変化がなかったか、湿熱耐久後の誤作動の回数が1~3回増えた
B:初期評価時の誤作動の回数に対して、湿熱耐久後の誤作動の回数が4~9回増えた
C:初期評価時の誤作動の回数に対して、湿熱耐久後の誤作動の回数が10回以上増えた
【0137】
<結果>
表2に、各実施例および各比較例の積層体の製造条件、測定結果、および、評価結果を示す。
表2中、含有元素欄の「>0.5」の表記は、当該元素が0.5原子%超であったことを表し、「<0.1」の表記は、当該元素が0.1原子%未満であったことを表す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2の結果から、抵抗率R1と抵抗率R2とが同じ値であるか、抵抗率R1および抵抗率R2のうちのより小さい抵抗率に対する、抵抗率R1および抵抗率R2のうちのより大きい抵抗率の比(抵抗率比)が、1.00超1.40以下である場合、タッチパネルセンサーの誤作動が生じにくいことが確認された。一方、上記抵抗率比が1.40超である比較例では、タッチパネルセンサーの誤作動が生じやすかった。
実施例18と実施例3との比較から、第1金属配線および第2金属配線が、ハロゲン原子を実質的に含まない場合、湿熱耐久性に優れることが確認された。
実施例4および12と他の実施例との比較から、上記線粗さ比が1.05以上(より好ましくは1.15以上)である場合、保護フィルム剥離性に優れることが確認された。
実施例12と、実施例11および3との比較から、第1金属配線および第2金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が3原子%以上(より好ましくは6原子%以上)である場合、保護フィルム剥離性に優れることが確認された。
実施例15と、実施例14および3との比較から、第1金属配線および第2金属配線の全原子に対する炭素原子の含有量が30原子%以下(より好ましくは20原子%以下)である場合、タッチパネルセンサーの誤作動がより生じにくいことが確認された。
実施例16と、実施例3との比較から、第1金属層(第1金属配線)および第2金属層(第2金属配線)が窒素原子を含み、全原子に対する窒素原子の含有量が0.5原子%超である場合、感光性組成物層の密着性に優れることが確認された。
実施例17と、実施例3との比較から、第1金属配線および第2金属配線が窒素原子を含み、全原子に対する酸素原子の含有量が0.5原子%超である場合、感光性組成物層の密着性に優れることが確認された。
実施例7、9および15と、他の実施例との比較から、上記抵抗率比が1.20以下(より好ましくは1.10以下)の場合、タッチパネルセンサーの誤作動がより生じにくいことが確認された。
実施例4と、実施例3との比較、ならびに、実施例7と、実施例5および6との比較から、第2加熱処理における加熱温度が、第1加熱処理における加熱温度よりも25度以上高い場合、製造されるタッチパネルセンサーの誤作動がより生じにくいことが確認された。