IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

<>
  • 特開-作業指示システム 図1
  • 特開-作業指示システム 図2
  • 特開-作業指示システム 図3
  • 特開-作業指示システム 図4
  • 特開-作業指示システム 図5
  • 特開-作業指示システム 図6
  • 特開-作業指示システム 図7
  • 特開-作業指示システム 図8
  • 特開-作業指示システム 図9
  • 特開-作業指示システム 図10
  • 特開-作業指示システム 図11
  • 特開-作業指示システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033479
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作業指示システム
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20240306BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240306BHJP
   G06Q 10/08 20240101ALI20240306BHJP
【FI】
B23P21/00 307J
G05B23/02 X
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137073
(22)【出願日】2022-08-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和4年6月1日 ウェブサイトのアドレス(URL) https://fcloud.symbion.co.jp/index.php/s/tjBaqaJ6Ff6o4Fn 〔刊行物等〕 開催日 令和4年6月1日~令和4年6月4日 集会名、開催場所 ロボティクス・メカトロニクス講演会2022 現地会場:札幌コンベンションセンター(北海道札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)、及び、LINC Bizにてオンライン同時開催
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 治
(72)【発明者】
【氏名】北岡 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小出 幸和
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慶昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英一
(72)【発明者】
【氏名】笠原 智仁
【テーマコード(参考)】
3C030
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C030DA04
3C223AA11
3C223BA01
3C223BB12
3C223CC01
3C223DD01
3C223FF21
3C223FF44
3C223GG01
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】目的地が重なることによる作業の停滞を低減することができる作業指示システムを提供する。
【解決手段】作業指示システム1は、複数の作業者Sのうち自作業者Sa以外の他作業者Sbの位置及び作業状況に関する情報を取得する作業情報取得部24と、他作業者Sbの位置及び作業状況に関する情報に基づいて、自作業者Saが作業を行う予定の複数の作業位置Pに対して、自作業者Saが作業位置Pまでの経路において他作業者Sbの作業が終了するまで待つ時間のコストである待ち時間コストと、自作業者Saが作業位置Pまで移動する時間のコストである移動時間コストとを算出するコスト算出部26と、複数の作業位置Pに対して算出された待ち時間コスト及び移動時間コストのうち、待ち時間コストと移動時間コストとの合計が最小となる作業位置Pを自作業者Saの目的地として選定する目的地選定部27とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリアにおいて複数の作業者が移動しながら作業を実施する際に作業指示を行う作業指示システムであって、
前記作業者の位置及び作業状況に関する情報を通知する通知部と、
前記複数の作業者のうち何れかの第1作業者以外の第2作業者の位置及び作業状況に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記第2作業者の位置及び作業状況に関する情報に基づいて、前記第1作業者が作業を行う予定の複数の作業位置に対して、前記第1作業者が前記作業位置までの経路において前記第2作業者の作業が終了するまで待つ時間のコストである待ち時間コストと、前記第1作業者が前記作業位置まで移動する時間のコストである移動時間コストとを算出するコスト算出部と、
前記コスト算出部により前記複数の作業位置に対して算出された前記待ち時間コスト及び前記移動時間コストのうち、前記待ち時間コストと前記移動時間コストとの合計が最小となる作業位置を前記第1作業者の目的地として選定する目的地選定部とを備える作業指示システム。
【請求項2】
前記コスト算出部は、前記第2作業者が前記作業位置までの経路に存在するかどうかを判断し、前記第2作業者が前記作業位置までの経路に存在しないときは、前記待ち時間コストをゼロとする請求項1記載の作業指示システム。
【請求項3】
前記作業者の現在位置での前記作業者の残りの作業数を検知する検知部を更に備え、
前記通知部は、前記作業者の作業状況に関する情報として、前記現在位置での前記作業者の残りの作業数を通知し、
前記取得部は、前記第2作業者の作業状況に関する情報として、前記現在位置での前記第2作業者の残りの作業数を取得し、
前記コスト算出部は、前記現在位置での前記第2作業者の残りの作業数に基づいて、前記待ち時間コストを算出する請求項1記載の作業指示システム。
【請求項4】
前記第1作業者が前記作業位置までの経路において前記第2作業者が存在する位置に到着するタイミングにおける前記第2作業者の残りの作業数と、前記作業位置での前記第1作業者の作業数とを比較する比較部を更に備え、
前記コスト算出部は、前記比較部によって前記第1作業者の作業数が前記第2作業者の残りの作業数よりも少ないと判断されたときは、前記待ち時間コストをゼロとする請求項3記載の作業指示システム。
【請求項5】
品物が積載される自律走行可能な移動体を備え、
前記作業者は、前記移動体と共に移動しながら、前記移動体に前記品物を載せる作業または前記移動体から前記品物を取り出す作業を実施し、
前記作業指示は、前記移動体に対して行われ、
前記待ち時間コストは、前記第1作業者が前記第1作業者と協働する移動体と共に前記作業位置までの経路において前記第2作業者の作業が終了するまで待つ時間のコストであり、
前記移動時間コストは、前記第1作業者が前記第1作業者と協働する移動体と共に前記作業位置まで移動する時間のコストである請求項1記載の作業指示システム。
【請求項6】
前記移動体の自己位置を推定する自己位置推定部と、
前記自己位置推定部により推定された前記移動体の自己位置に基づいて、前記目的地選定部により選定された前記目的地まで前記移動体を移動させるように制御する制御部とを更に備え、
前記通知部は、前記作業者の位置として、前記作業者と協働する移動体の自己位置を通知する請求項5記載の作業指示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業指示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、複数のロボットについて自身のタスクの優先度と他ロボットのタスクの優先度とを考慮して相互利益が最大となる組み合わせを選択して、ロボットが移動する経路計画を作成し、その経路計画に従って各ロボットを移動させるように制御するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-21351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、各ロボットのタスクの優先度を考慮して各ロボットの移動経路が作成されるため、移動経路の干渉による作業の停滞が低減される。しかし、事前に計画されたロボットの目的地が重ならない作業計画に従って作業が行われても、時間が経つにつれて作業計画からの誤差が蓄積されることで、異なるロボット同士で目的地が重なってしまうことがある。異なるロボット同士で目的地が重なると、作業の停滞が発生するため、作業効率の低下につながる。
【0005】
本発明の目的は、目的地が重なることによる作業の停滞を低減することができる作業指示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、作業エリアにおいて複数の作業者が移動しながら作業を実施する際に作業指示を行う作業指示システムであって、作業者の位置及び作業状況に関する情報を通知する通知部と、複数の作業者のうち何れかの第1作業者以外の第2作業者の位置及び作業状況に関する情報を取得する取得部と、取得部により取得された第2作業者の位置及び作業状況に関する情報に基づいて、第1作業者が作業を行う予定の複数の作業位置に対して、第1作業者が作業位置までの経路において第2作業者の作業が終了するまで待つ時間のコストである待ち時間コストと、第1作業者が作業位置まで移動する時間のコストである移動時間コストとを算出するコスト算出部と、コスト算出部により複数の作業位置に対して算出された待ち時間コスト及び移動時間コストのうち、待ち時間コストと移動時間コストとの合計が最小となる作業位置を第1作業者の目的地として選定する目的地選定部とを備える。
【0007】
このような作業指示システムにおいては、複数の作業者のうち何れかの第1作業者以外の第2作業者の位置及び作業状況に関する情報に基づいて、第1作業者が作業を行う予定の複数の作業位置に対して、第1作業者が作業位置までの経路において第2作業者の作業が終了するまで待つ時間のコスト(待ち時間コスト)と、第1作業者が作業位置まで移動する時間のコスト(移動時間コスト)とが算出される。そして、待ち時間コストと移動時間コストとの合計が最小となる作業位置が、第1作業者の目的地として選定される。このため、第1作業者が最短時間で作業を開始することが可能な作業位置が目的地として選定されることとなる。これにより、異なる作業者同士で目的地が重なることによる作業の停滞が低減される。また、第1作業者にかかるコストとして待ち時間コスト及び移動時間コストのみが算出されるため、作業指示が低処理負荷かつ短い計算時間で行われる。
【0008】
(2)上記の(1)において、コスト算出部は、第2作業者が作業位置までの経路に存在するかどうかを判断し、第2作業者が作業位置までの経路に存在しないときは、待ち時間コストをゼロとしてもよい。
【0009】
このような構成では、第2作業者が作業位置までの経路においてピッキング作業を行わないときは、当該作業位置に係る待ち時間コストを計算しなくて済む。従って、作業指示が更に低処理負荷かつ短い計算時間で行われる。
【0010】
(3)上記の(1)または(2)において、作業指示システムは、作業者の現在位置での作業者の残りの作業数を検知する検知部を更に備え、通知部は、作業者の作業状況に関する情報として、現在位置での作業者の残りの作業数を通知し、取得部は、第2作業者の作業状況に関する情報として、現在位置での第2作業者の残りの作業数を取得し、コスト算出部は、現在位置での第2作業者の残りの作業数に基づいて、待ち時間コストを算出してもよい。
【0011】
このような構成では、第2作業者の現在位置での第2作業者の残りの作業数に基づいて待ち時間コストを算出することにより、待ち時間コストが簡単な計算式で得られることになる。従って、作業指示が更に低処理負荷かつ短い計算時間で行われる。
【0012】
(4)上記の(3)において、作業指示システムは、第1作業者が作業位置までの経路において第2作業者が存在する位置に到着するタイミングにおける第2作業者の残りの作業数と、作業位置での第1作業者の作業数とを比較する比較部を更に備え、コスト算出部は、比較部によって第1作業者の作業数が第2作業者の残りの作業数よりも少ないと判断されたときは、待ち時間コストをゼロとしてもよい。
【0013】
このような構成では、第1作業者が作業位置までの経路において第2作業者が存在する位置に到着するタイミングにおける第2作業者の残りの作業数よりも、作業位置での第1作業者の作業数が少ないときは、第1作業者の待ち時間がゼロとなる。つまり、当該作業位置までの経路において第2作業者が存在する位置において、第2作業者の作業を一旦中断させて、第1作業者の作業を優先的に行うことにより、第2作業者が第1作業者を待つことになる。ただし、この場合の第2作業者の待ち時間は、第2作業者の作業をそのまま継続させた場合における第1作業者の待ち時間よりも短い。従って、システム全体として作業を効率良く行うことができる。
【0014】
(5)上記の(1)~(4)の何れかにおいて、作業指示システムは、品物が積載される自律走行可能な移動体を備え、作業者は、移動体と共に移動しながら、移動体に品物を載せる作業または移動体から品物を取り出す作業を実施し、作業指示は、移動体に対して行われ、待ち時間コストは、第1作業者が第1作業者と協働する移動体と共に作業位置までの経路において第2作業者の作業が終了するまで待つ時間のコストであり、移動時間コストは、第1作業者が第1作業者と協働する移動体と共に作業位置まで移動する時間のコストであってもよい。
【0015】
このような構成では、作業者は移動体と協働して作業を実施するため、作業者自身が品物の運搬を行わなくて済む。従って、作業者の作業時間が低減される。
【0016】
(6)上記の(5)において、作業指示システムは、移動体の自己位置を推定する自己位置推定部と、自己位置推定部により推定された移動体の自己位置に基づいて、目的地選定部により選定された目的地まで移動体を移動させるように制御する制御部とを更に備え、通知部は、作業者の位置として、作業者と協働する移動体の自己位置を通知してもよい。
【0017】
このような構成では、作業者の現在位置が高精度に得られると共に、移動体を目的地に高精度に到達させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、目的地が重なることによる作業の停滞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る作業指示システムを示す概略図である。
図2】複数の棚が設置された作業エリアにおいて、作業者が移動ロボットと協働してピッキング作業を行う様子を示す概略図である。
図3】作業エリアで発生する作業者及び移動ロボットの滞留の例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る作業指示システムにおける移動ロボットに搭載された構成を示すブロック図である。
図5】待ち時間コスト及び移動時間コストの一例を示す図である。
図6図4に示されたコスト算出部により実行されるコスト算出処理の手順を示すフローチャートである。
図7図4に示された目的地選定部により実行される目的地選定処理の手順を示すフローチャートである。
図8図4に示された走行制御部により実行される走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態に係る作業指示システムにおける移動ロボットに搭載された構成を示すブロック図である。
図10図9に示されたコスト算出部により実行されるコスト算出処理の手順を示すフローチャートである。
図11図9に示された走行制御部により実行される走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
図12】複数の作業者及び複数の移動ロボットの作業時の動きを模擬したシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図中、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る作業指示システムを示す概略図である。図1において、本実施形態の作業指示システム1は、例えば部品配送センタにおけるピッキング(集荷)作業に適用される。作業指示システム1は、部品配送センタの作業エリアA(図2参照)において複数の作業者Sが移動しながらピッキング作業を実施する際に作業指示を行うシステムである。
【0022】
作業エリアAには、図2に示されるように、複数の棚2が設置されている。各棚2には、多種の部品(品物)が収納されている。作業者Sは、ピッキングする部品の品番及び個数が記載されたピッキングリストLに従って、移動ロボット3と協働してピッキング作業を実施する。
【0023】
移動ロボット3は、物流支援ロボットの一つであり、作業者Sがピッキングした部品を積載する台車(図示せず)を備えている。移動ロボット3は、作業者Sに代わって部品を搬送する。移動ロボット3は、作業者Sと一緒に移動する自律走行可能なロボットである。ここでは、移動ロボット3は、作業者Sに先行して移動する。なお、移動ロボット3は、作業者Sに追尾して移動してもよい。
【0024】
作業者Sは、ピッキング作業を実施する場合、最初にピッキング作業を行う作業位置P1まで移動すると共に、移動ロボット3の配車依頼を行う。すると、1台の移動ロボット3が最初の作業位置P1まで移動する。そして、作業者Sは、作業位置P1において、ピッキングリストLにより指示された部品を棚2から取り出して移動ロボット3の台車に載せる。
【0025】
その後、作業者Sは、移動ロボット3と共に、次にピッキング作業を行う作業位置P2まで移動する。そして、作業者Sは、作業位置P2において、ピッキングリストLにより指示された部品を棚2から取り出して移動ロボット3の台車に載せる。
【0026】
ピッキングリストLにより指示された部品のピッキングが全て完了すると、移動ロボット3が次工程場所B(払出場等)に移動することで、ピッキングした全ての部品が次工程場所Bまで運搬される。
【0027】
ところで、部品配送センタでのピッキング作業には出荷時間が決まっており、出荷時間を守るためにはピッキング作業のスループットが重要である。移動ロボット3の導入によって、作業者Sが部品の運搬作業から解放されるため、作業者Sの作業時間の低減とピッキング作業全体のスループットの向上とが見込める。
【0028】
一方で、作業者Sの人数及び移動ロボット3の台数の増加に伴って作業現場の密度が高くなるため、異なる作業者S間、異なる移動ロボット3間、及び作業者Sと移動ロボット3との間での作業位置及び移動経路の干渉の発生頻度が高まる。このため、図3に示されるように、作業者S及び移動ロボット3の滞留が発生しやすくなる。
【0029】
図3(a)は、一方通行通路R1内における作業者S同士または移動ロボット3同士の衝突による作業者S及び移動ロボット3の滞留が発生する例を示している。図3(b)は、複数台の移動ロボット3が一方通行通路R1に進入する際の移動ロボット3同士の衝突による滞留が発生する例を示している。図3(c)は、双方向通路R2内における作業者S同士または移動ロボット3同士の衝突による滞留が発生する例を示している。
【0030】
そのような作業者S及び移動ロボット3の滞留を回避するために、作業者S及び移動ロボット3の移動距離を長くすると、作業者Sの作業時間が増加すると共に、ピッキング作業全体のスループットが低下する。作業時間の増加及びスループットの低下を抑えるためには、各作業者SのピッキングリストLを予め作成する際に、作業位置の目的地及び目的地までの移動経路が時間的に干渉しないように計画される。しかし、作業者Sの作業時間にはバラツキがあるため、時間が経つにつれて計画からの時間のズレが発生する。
【0031】
そこで、本実施形態では、ピッキング作業の開始後に、作業状況に合わせて部品のピッキング順を調整する。本実施形態の作業指示システム1は、複数台の移動ロボット3に対してピッキング作業の順番を指示するシステムである。
【0032】
図1に戻り、作業指示システム1は、複数台の移動ロボット3と、各移動ロボット3及び複数の作業者Sが持っている携帯端末(図示せず)とそれぞれ無線通信を行うアクセスポイント4と、このアクセスポイント4と接続された作業情報管理装置5とを備えている。
【0033】
作業情報管理装置5は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。作業情報管理装置5は、作成されたピッキングリストLをアクセスポイント4を介して各移動ロボット3及び各作業者Sの携帯端末に送信する。なお、各作業者Sは、ピッキングリストLを予め取得していてもよい。ピッキングリストLには、上述した部品の品番及び個数の他、部品の収納場所が記載されている。
【0034】
また、作業情報管理装置5は、各移動ロボット3からアクセスポイント4を介して送信された現在の作業情報を共有し、各移動ロボット3の現在の作業情報をアクセスポイント4を介して他の全ての移動ロボット3に送信する。
【0035】
図4は、本発明の第1実施形態に係る作業指示システム1における移動ロボット3に搭載された構成を示すブロック図である。作業指示システム1は、レーザセンサ11と、バーコードリーダ12と、通信機13と、駆動部14と、コントローラ15とを備えている。
【0036】
レーザセンサ11は、移動ロボット3の周囲に向けてレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、移動ロボット3の周囲に存在する物体を検出する。レーザセンサ11としては、例えばLIDAR(Light Detection and Ranging)またはレーザレンジファインダ等が使用される。
【0037】
バーコードリーダ12は、部品に付されたバーコード(図示せず)を読み取るセンサである。部品のピッキングを行う際に、バーコードリーダ12により部品のバーコードを読み取ることで、その部品がピッキングされたことが検出される。
【0038】
通信機13は、アクセスポイント4及び作業者Sの携帯端末とそれぞれ無線通信を行う。駆動部14は、移動ロボット3を走行させる。
【0039】
コントローラ15は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ15は、自己位置推定部21と、残ピッキング数算出部22と、作業情報通知部23と、作業情報取得部24と、作業完了判定部25と、コスト算出部26と、目的地選定部27と、走行制御部28とを有している。
【0040】
自己位置推定部21は、レーザセンサ11の検出データ及び予め記憶された部品配送センタの地図データに基づいて、移動ロボット3の現在位置を推定する。つまり、自己位置推定部21は、レーザセンサ11と協働して、移動ロボット3の自己位置を推定する。具体的には、自己位置推定部21は、例えばSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、レーザセンサ11の検出データと地図データとをマッチングさせて移動ロボット3の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを用いて自己位置推定を行う自己位置推定技術である。
【0041】
残ピッキング数算出部22は、バーコードリーダ12により読み取られたバーコードに基づいて、現在ピッキング作業を行っている作業位置においてピッキングリストLに記載された部品の残りのピッキング数を算出する。上述したように、バーコードリーダ12により部品のバーコードが読み取られると、その部品がピッキングされたと検出されるため、作業者Sの現在位置での残りのピッキング数が容易に得られる。残ピッキング数算出部22は、バーコードリーダ12と協働して、作業者Sの現在位置での作業者Sの残りのピッキング数(作業数)を検知する検知部を構成する。
【0042】
作業情報通知部23は、移動ロボット3の現在位置と当該現在位置での残りのピッキング数とを、移動ロボット3と協働する作業者Sの作業情報として通信機13を介して通知する。移動ロボット3の現在位置は、自己位置推定部21により得られる。現在位置での残りのピッキング数は、残ピッキング数算出部22により得られる。現在位置での残りのピッキング数は、作業状況に関する情報である。作業情報通知部23は、作業者Sの位置及び作業状況に関する情報を通知する通知部を構成する。ここでの作業者Sは、自作業者Sa(図5参照)であり、複数の作業者Sのうち何れかの第1作業者に相当する。
【0043】
作業情報取得部24は、作業情報管理装置5からアクセスポイント4を介して送信された他の移動ロボット3の現在位置と当該現在位置での残りのピッキング数とを、他の移動ロボット3と協働する作業者Sの作業情報として通信機13を介して取得する。他の移動ロボット3と協働する作業者Sは、自作業者Sa以外の他作業者Sb(図5参照)であり、複数の作業者Sのうち自作業者Sa以外の第2作業者に相当する。作業情報取得部24は、他作業者Sbの位置及び作業状況に関する情報を取得する取得部を構成する。
【0044】
作業完了判定部25は、残ピッキング数算出部22により算出された現在位置での残りのピッキング数に基づいて、現在位置でのピッキング作業が完了したかどうかを判定する。作業完了判定部25は、現在位置での残りのピッキング数がゼロになると、現在位置でのピッキング作業が完了したと判定する。
【0045】
コスト算出部26は、作業完了判定部25により現在位置でのピッキング作業が完了したと判定されると、作業情報取得部24により取得された他の移動ロボット3及び他作業者Sbの現在位置と当該現在位置での残りのピッキング数とに基づいて、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の複数の作業位置に対して、待ち時間コスト及び移動時間コストを算出する。作業者Sがピッキング作業を実施する予定の複数の作業位置は、例えばピッキングリストLに記載された部品の収納場所から分かる。
【0046】
待ち時間コストは、図5(a)に示されるように、自作業者Sa及び自作業者Saと協働する移動ロボット3が作業位置Pまでの経路において他作業者Sbのピッキング作業が終了して移動するまで待つ時間のコストである。なお、自作業者Saと協働する移動ロボット3を自移動ロボット3aとし、他作業者Sbと協働する移動ロボット3を他移動ロボット3bとする。移動時間コストは、図5(b)に示されるように、自作業者Sa及び自移動ロボット3aが作業位置Pまで移動する時間のコストである。
【0047】
図6は、コスト算出部26により実行されるコスト算出処理の手順を示すフローチャートである。図6において、コスト算出部26は、まず作業完了判定部25により現在の作業位置でのピッキング作業が完了したと判定されたかどうかを判断する(手順S101)。
【0048】
コスト算出部26は、現在の作業位置でのピッキング作業が完了したと判定されたと判断したときは、作業情報取得部24により取得された他移動ロボット3bの現在位置に基づいて、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の作業位置Pまでの経路に他作業者Sbが存在するかどうかを判断する(手順S102)。
【0049】
コスト算出部26は、他作業者Sbが作業位置Pまでの経路に存在すると判断したときは、その作業位置Pまでの経路における自作業者Sa及び自移動ロボット3aの待ち時間コストを算出する(手順S103)。待ち時間コストは、下記式により算出される。なお、下記式において、他作業者位置は、作業位置Pまでの経路において他作業者Sbが他移動ロボット3bと共に存在する位置である。
【0050】
待ち時間コスト=他作業者Sbが他作業者位置から移動するまでの時間-他作業者位置までの自作業者Saの移動時間
他作業者Sbが他作業者位置から移動するまでの時間=残りのピッキング数×1品当たりのピッキング作業時間
他作業者位置までの自作業者Saの移動時間=他作業者位置までの自作業者Saの移動距離÷自作業者Saの移動速度
【0051】
他作業者Sbが他作業者位置から移動するまでの時間は、計算時点から他作業者Sbがピッキング作業を終了して移動を開始するまでの残りのピッキングに要する作業時間であり、他作業者Sbの残ピッキング数から算出される。1品当たりのピッキング作業時間は、予め計算用に決められている。
【0052】
他作業者位置までの自作業者Saの移動距離は、例えばダイクストラ法またはA等の最短経路生成アルゴリズムを用いて生成される最短経路での距離である。自作業者Saの移動速度としては、例えば作業者Sの平均歩行速度等といった予め決められた速度が用いられる。
【0053】
自作業者Saが他作業者位置に到達する前に他作業者Sbがピッキング作業を終了して他作業者位置から移動する場合には、待ち時間コストの計算結果が0以下となる。この場合には、待ち時間コストはゼロとする。
【0054】
続いて、コスト算出部26は、作業位置Pまでの自作業者Sa及び自移動ロボット3aの移動時間コストを算出する(手順S104)。移動時間コストは、下記式により算出される。なお、下記式において、作業位置Pまでの自作業者Saの移動距離は、上記と同様に、例えばダイクストラ法またはA等の最短経路生成アルゴリズムを用いて生成される最短経路での距離である。
移動時間コスト=作業位置Pまでの自作業者Saの移動距離÷自作業者Saの移動速度
【0055】
コスト算出部26は、手順S102で他作業者Sbが作業位置Pまでの経路に存在しないと判断したときは、その作業位置Pまでの経路における自作業者Sa及び自移動ロボット3aの待ち時間コストをゼロとする(手順S105)。
【0056】
続いて、コスト算出部26は、作業位置Pまでの自作業者Sa及び自移動ロボット3aの移動時間コストを算出する(手順S106)。このとき、使用される計算式は、上記の手順S104と同様である。
【0057】
コスト算出部26は、上記の手順S104または手順S106を実行した後、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の全ての作業位置Pに対して、自作業者Sa及び自移動ロボット3aの待ち時間コスト及び移動時間コストを算出したかどうかを判断する(手順S107)。
【0058】
コスト算出部26は、全ての作業位置Pに対して待ち時間コスト及び移動時間コストを算出していないと判断したときは、上記の手順S102を再度実行する。コスト算出部26は、全ての作業位置Pに対して待ち時間コスト及び移動時間コストを算出したと判断したときは、本処理を終了する。
【0059】
図4に戻り、目的地選定部27は、コスト算出部26により複数の作業位置Pに対して算出された移動時間コスト及び待ち時間コストのうち、移動時間コストと待ち時間コストとの合計が最小となる作業位置Pを自作業者Sa及び自移動ロボット3aの目的地として選定する。
【0060】
図7は、目的地選定部27により実行される目的地選定処理の手順を示すフローチャートである。図7において、目的地選定部27は、まずコスト算出部26により算出された全ての作業位置Pに対する待ち時間コスト及び移動時間コストのデータを取得する(手順S111)。
【0061】
そして、目的地選定部27は、各作業位置Pについて待ち時間コストと移動時間コストとの合計値(加算値)を算出する(手順S112)。そして、目的地選定部27は、待ち時間コストと移動時間コストとの合計値が最小となる作業位置Pを自作業者Sa及び自移動ロボット3aの次の目的地として選定する(手順S113)。
【0062】
図4に戻り、走行制御部28は、自己位置推定部21により推定された移動ロボット3の自己位置に基づいて、移動ロボット3を指定位置まで自律走行させるように駆動部14を制御する。指定位置は、最初にピッキング作業を行う作業位置、目的地選定部27により選定された目的地及び次工程場所B(図2参照)である。走行制御部28は、目的地選定部27により選定された目的地まで移動ロボット3を移動させるように制御する制御部を構成する。
【0063】
図8は、走行制御部28により実行される走行制御処理の手順を示すフローチャートである。図8において、走行制御部28は、まず自作業者Saにより自移動ロボット3aの配車依頼が行われたかどうかを判断する(手順S121)。
【0064】
走行制御部28は、自移動ロボット3aの配車依頼が行われたと判断したときは、最初の作業位置Pを目的地として取得する(手順S122)。このとき、例えば自作業者Saが自移動ロボット3aの配車依頼を行う際に、最初の作業位置Pを走行制御部28に対して教示してもよいし、或いは走行制御部28が自移動ロボット3aの現在位置から最も近い作業位置Pを最初の作業位置Pに設定してもよい。
【0065】
続いて、走行制御部28は、自己位置推定部21により推定された自移動ロボット3aの自己位置に基づいて、目的地までの自移動ロボット3aの走行経路を生成する(手順S123)。続いて、走行制御部28は、自移動ロボット3aが走行経路に沿って目的地に向けて走行するように駆動部14を制御する(手順S124)。
【0066】
そして、走行制御部28は、自己位置推定部21により推定された自移動ロボット3aの自己位置に基づいて、自移動ロボット3aが目的地に到達したかどうかを判断する(手順S125)。走行制御部28は、自移動ロボット3aが目的地に到達していないと判断したときは、上記の手順S124を再度実行する。
【0067】
走行制御部28は、自移動ロボット3aが目的地に到達したと判断したときは、作業完了判定部25により現在の作業位置でのピッキング作業が完了したと判定されたかどうかを判断する(手順S126)。走行制御部28は、現在の作業位置でのピッキング作業が完了したと判定されたと判断したときは、ピッキングリストLに記載されている全ての部品のピッキング作業が終了したかどうかを判断する(手順S127)。
【0068】
走行制御部28は、全ての部品のピッキング作業が終了していないと判断したときは、目的地選定部27により選定された自移動ロボット3aの次の目的地を取得し(手順S128)、上記の手順S123を再度実行する。
【0069】
走行制御部28は、全ての部品のピッキング作業が終了したと判断したときは、自己位置推定部21により推定された自移動ロボット3aの自己位置に基づいて、次工程場所Bまでの自移動ロボット3aの走行経路を生成する(手順S129)。続いて、走行制御部28は、自移動ロボット3aが走行経路に沿って次工程場所Bに向けて走行するように駆動部14を制御する(手順S130)。
【0070】
そして、走行制御部28は、自己位置推定部21により推定された自移動ロボット3aの自己位置に基づいて、自移動ロボット3aが次工程場所Bに到達したかどうかを判断する(手順S131)。走行制御部28は、自移動ロボット3aが次工程場所Bに到達していないと判断したときは、上記の手順S130を再度実行する。走行制御部28は、自移動ロボット3aが次工程場所に到達したと判断したときは、本処理を終了する。
【0071】
以上のような作業指示システム1において、作業者Sは、ピッキング作業を実施するときは、まず移動ロボット3の配車依頼を行い、最初の作業位置Pまで移動する。すると、1台の移動ロボット3が最初の作業位置Pまで移動する。
【0072】
そして、作業者Sは、最初の作業位置Pにおいて、ピッキングリストLに記載されている部品を棚2から取り出して移動ロボット3の台車上に置く。このとき、バーコードリーダ12により部品のバーコードが読み込まれることで、コントローラ15において該当する部品の残りのピッキング数が求められる。
【0073】
該当する部品の残りのピッキング数のデータは、作業者Sの現在の作業位置Pのデータと共に、移動ロボット3からアクセスポイント4を介して作業情報管理装置5に送信される。そして、作業者Sの作業位置P及び当該作業位置Pでの残りのピッキング数のデータは、作業情報管理装置5からアクセスポイント4を介して全ての移動ロボット3に送信される。
【0074】
最初の作業位置Pでの自作業者Saのピッキング作業が完了すると、自作業者Saと協働する自移動ロボット3aのコントローラ15において、他移動ロボット3bと協働する他作業者Sbの現在の作業位置P及び当該作業位置Pでの残りのピッキング数に基づいて、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の複数の作業位置Pに対して、自作業者Saの待ち時間コスト及び移動時間コストが算出される。
【0075】
そして、複数の作業位置Pに対して算出された待ち時間コスト及び移動時間コストのうち、待ち時間コストと移動時間コストとの合計値が最小となる作業位置Pが自作業者Sa及び自移動ロボット3aの次の目的地として選定される。
【0076】
そして、自作業者Saは、自移動ロボット3aと共に次の目的地(作業位置P)まで移動する。そして、自作業者Saは、次の作業位置Pにおいて、上記と同様にピッキングリストLに記載されている部品のピッキング作業を行う。そして、ピッキング作業が完了すると、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の複数の作業位置Pに対して、再び待ち時間コスト及び移動時間コストが算出される。そして、上記と同様にして、自作業者Sa及び自移動ロボット3aの次の目的地(作業位置P)が選定される。
【0077】
その後、ピッキングリストLに記載された全ての部品のピッキング作業が終了するまで、上記の工程が繰り返し実施される。そして、全ての部品のピッキング作業が終了すると、自移動ロボット3aのみが次工程場所Bに移動することで、ピッキングされた部品が次工程場所Bまで運搬される。
【0078】
以上のように本実施形態にあっては、複数の作業者Sのうち何れかの自作業者Sa以外の他作業者Sbの位置及び作業状況に関する情報に基づいて、自作業者Saが作業を行う予定の複数の作業位置Pに対して、自作業者Saが作業位置Pまでの経路において他作業者Sbの作業が終了するまで待つ時間のコスト(待ち時間コスト)と、自作業者Saが作業位置Pまで移動する時間のコスト(移動時間コスト)とが算出される。そして、待ち時間コストと移動時間コストとの合計が最小となる作業位置Pが、自作業者Saの目的地として選定される。このため、自作業者Saが最短時間で作業を開始することが可能な作業位置Pが目的地として選定されることとなる。これにより、異なる作業者S同士で目的地が重なることによる作業の停滞が低減される。
【0079】
また、本実施形態では、自作業者Saにかかるコストとして待ち時間コスト及び移動時間コストのみが算出されるため、作業指示が低処理負荷及び短い計算時間で行われる。従って、計算コストを抑えると共に、作業状況に応じた作業指示をリアルタイムで実現することができる。
【0080】
また、本実施形態では、他作業者Sbが作業位置Pまでの経路に存在するかどうかが判断され、他作業者Sbが作業位置Pまでの経路に存在しないときは、待ち時間コストがゼロとなる。このため、他作業者Sbが作業位置Pまでの経路においてピッキング作業を行わないときは、当該作業位置Pに係る待ち時間コストを計算しなくて済む。従って、作業指示が更に低処理負荷かつ短い計算時間で行われる。
【0081】
また、本実施形態では、他作業者Sbの作業状況に関する情報として、他作業者Sbの現在位置での他作業者Sbの残りのピッキング数に基づいて、待ち時間コストを算出することにより、待ち時間コストが簡単な計算式で得られることになる。従って、作業指示がより低処理負荷かつ短い計算時間で行われる。
【0082】
また、本実施形態では、待ち時間コストは、自作業者Saが自移動ロボット3aと共に作業位置Pまでの経路において他作業者Sbの作業が終了するまで待つ時間のコストであり、移動時間コストは、自作業者Saが自移動ロボット3aと共に作業位置Pまで移動する時間のコストである。このように作業者Sは移動ロボット3と協働して作業を実施するため、作業者S自身が部品の運搬を行わなくて済む。従って、作業者Sの作業時間が低減される。
【0083】
また、本実施形態では、移動ロボット3の自己位置に基づいて、移動ロボット3が目的地まで移動するように制御されると共に、作業者Sの位置として、作業者Sと協働する移動ロボット3の自己位置が通知される。従って、作業者Sの現在位置が高精度に得られると共に、移動ロボット3を目的地に高精度に到達させることができる。
【0084】
図9は、本発明の第2実施形態に係る作業指示システムにおける移動ロボットに搭載された構成を示すブロック図である。図9において、本実施形態の作業指示システム1は、上記の第1実施形態におけるコントローラ15に代えて、コントローラ15Aを備えている。
【0085】
コントローラ15Aは、上記の自己位置推定部21、残ピッキング数算出部22、作業情報通知部23、作業情報取得部24及び作業完了判定部25と、比較部29と、コスト算出部26Aと、上記の目的地選定部27と、走行制御部28Aとを有している。
【0086】
比較部29は、作業完了判定部25により現在位置でのピッキング作業が完了したと判定されると、自作業者Saが自移動ロボット3aと共に次の作業位置Pまでの経路に存在する他作業者位置(前述)に到着するタイミングにおける他作業者Sbの残りのピッキング数と、次の作業位置Pでの自作業者Saのピッキング数とを比較する。自作業者Saが作業位置Pまでの経路に存在する他作業者位置に到着するタイミングにおける他作業者Sbの残りのピッキング数は、作業情報取得部24により得られる。
【0087】
コスト算出部26Aは、上記の第1実施形態におけるコスト算出部26と同様に、作業情報取得部24により取得された他作業者Sbの現在位置及び当該現在位置での残りのピッキング数に基づいて、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の複数の作業位置Pに対して、移動時間コスト及び待ち時間コストを算出する。
【0088】
コスト算出部26Aは、比較部29によって自作業者Saのピッキング数が他作業者Sbの残りのピッキング数よりも少ないと判断されたときは、自作業者Sa及び自移動ロボット3aの待ち時間コストをゼロとする。
【0089】
図10は、コスト算出部26Aにより実行されるコスト算出処理の手順を示すフローチャートである。図10において、コスト算出部26Aは、図6に示される処理と同様に、手順S101,S102を実行する。
【0090】
コスト算出部26Aは、手順S102で他作業者Sbが作業位置Pまでの経路に存在すると判断したときは、比較部29による比較結果から、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の作業位置Pまでの経路に存在する他作業者位置に到着するタイミングにおける他作業者Sbの残りのピッキング数が、ピッキング作業を実施する予定の作業位置Pでの自作業者Saのピッキング数以下であるかどうかを判断する(手順S109)。
【0091】
コスト算出部26Aは、他作業者Sbの残りのピッキング数が自作業者Saのピッキング数以下であると判断したときは、図6に示される処理と同様に、当該作業位置Pまでの経路における自作業者Sa及び自移動ロボット3aの待ち時間コストを算出する(手順S103)。続いて、コスト算出部26Aは、図6に示される処理と同様に、当該作業位置Pまでの自作業者Sa及び自移動ロボット3aの移動時間コストを算出する(手順S104)。
【0092】
コスト算出部26Aは、手順S102で他作業者Sbが作業位置Pまでの経路に存在しないと判断したとき、または手順S109で他作業者Sbの残りのピッキング数が自作業者Saのピッキング数よりも多いと判断したとき、つまり自作業者Saのピッキング数が他作業者Sbの残りのピッキング数よりも少ないと判断したときは、当該作業位置Pまでの経路における自作業者Sa及び自移動ロボット3aの待ち時間コストをゼロとする(手順S105)。
【0093】
続いて、コスト算出部26Aは、図6に示される処理と同様に、当該作業位置Pまでの自作業者Sa及び自移動ロボット3aの移動時間コストを算出する(手順S106)。コスト算出部26Aは、手順S104または手順S106を実行した後、上記の手順S107を実行する。
【0094】
図9に戻り、走行制御部28Aは、上記の第1実施形態における走行制御部28と同様に、自己位置推定部21により推定された移動ロボット3の自己位置に基づいて、移動ロボット3を指定位置まで走行させるように駆動部14を制御する。
【0095】
図11は、走行制御部28Aにより実行される走行制御処理の手順を示すフローチャートである。図11において、走行制御部28Aは、図8に示される処理と同様に、手順S121~S124を実行する。
【0096】
走行制御部28Aは、手順S124を実行した後、自移動ロボット3aが目的地までの経路に存在する他作業者位置に達するかどうかを判断する(手順S133)。走行制御部28Aは、自移動ロボット3aが目的地までの経路に存在する他作業者位置に達しないと判断したときは、上記の手順S125を実行する。
【0097】
走行制御部28Aは、自移動ロボット3aが目的地までの経路に存在する他作業者位置に達すると判断したときは、作業情報取得部24により取得された他作業者Sbの作業情報に基づいて、他作業者位置において他作業者Sbがピッキング作業を行うかどうかを判断する(手順S134)。他作業者Sbがピッキング作業を行うかどうかの判断は、他作業者Sbが既にピッキング作業を行っているかどうかの判断と、他作業者Sbがピッキング作業を行う予定であるかどうかの判断とを含む。走行制御部28Aは、他作業者位置において他作業者Sbがピッキング作業を行わないと判断したときは、上記の手順S125を実行する。
【0098】
走行制御部28Aは、他作業者位置において他作業者Sbがピッキング作業を行うと判断したときは、比較部29による比較結果から、他作業者位置での他作業者Sbの残りのピッキング数が目的地での自作業者Saのピッキング数以上であるどうかを判断する(手順S135)。
【0099】
走行制御部28Aは、他作業者位置での他作業者Sbの残りのピッキング数が目的地での自作業者Saのピッキング数以上であると判断したときは、上記の手順S125を実行する。このとき、他移動ロボット3bは、自移動ロボット3aが目的地に向かって走行可能となるように、一旦他作業者位置から離れた後に一回りして同じ他作業者位置に戻ってくるように走行する。
【0100】
走行制御部28Aは、他作業者位置での他作業者Sbの残りのピッキング数が目的地での自作業者Saのピッキング数よりも少ないと判断したときは、自移動ロボット3aが他作業者Sbと協働する他移動ロボット3bの移動を待つように駆動部14を制御する(手順S136)。その後、走行制御部28Aは、上記の手順S125を実行する。
【0101】
以上において、自作業者Saが自移動ロボット3aと共に次の作業位置Pまでの経路に存在する他作業者位置に到着するタイミングにおける他作業者Sbの残りのピッキング数が、次の作業位置Pでの自作業者Saのピッキング数よりも多いときは、他作業者Sb及び他移動ロボット3bが自作業者Sa及び自移動ロボット3aを待つこととなる。このため、自作業者Saは、他作業者Sbに優先して、次の作業位置Pにおいてピッキング作業を行う。他作業者Sbは、自作業者Sa及び自移動ロボット3aが他作業者位置を通過した後、他作業者位置において再びピッキング作業を行う。
【0102】
一方、自作業者Saが自移動ロボット3aと共に次の作業位置Pまでの経路に存在する他作業者位置に到着するタイミングにおける他作業者Sbの残りのピッキング数が、次の作業位置Pでの自作業者Saのピッキング数よりも少ないときは、他作業者位置において自作業者Sa及び自移動ロボット3aが他作業者Sb及び他移動ロボット3bを待つこととなる。このため、他作業者Sbは、他作業者位置において自作業者Saに優先してピッキング作業を行う。自作業者Saは、他作業者Sbのピッキング作業が完了した後、次の作業位置Pに向かって移動し、当該作業位置Pにおいてピッキング作業を行う。
【0103】
以上のように本実施形態においては、自作業者Saが作業位置Pまでの経路に存在する他作業者位置に到着するタイミングにおける他作業者Sbの残りのピッキング数よりも、当該作業位置Pでの自作業者Saのピッキング数が少ないときは、自作業者Saの待ち時間がゼロとなる。つまり、当該作業位置Pにおいて、他作業者Sbのピッキング作業を一旦中断させて、自作業者Saのピッキング作業を優先的に行うことにより、他作業者Sbが自作業者Saを待つことになる。ただし、この場合の他作業者Sbの待ち時間は、他作業者Sbのピッキング作業をそのまま継続させた場合における自作業者Saの待ち時間よりも短い。従って、システム全体として作業を効率良く行うことができる。
【0104】
実際に、部品配送センタにおいて複数の作業者及び複数の移動ロボットの作業時の動きを模擬するシミュレーションを構築し、待ち時間コスト及び移動時間コストの計算を行って目的地を選定したことによる作業時間及びスループットに対する効果を検証した。
【0105】
図12は、複数の作業者及び複数の移動ロボットの作業時の動きを模擬したシミュレーション結果を示すグラフである。ここでは、16人の作業者と16台の移動ロボットとでシミュレーションを行った。
【0106】
図12(a)は、予め作成されたピッキングリストの作業順の通りにピッキング作業を行った場合の結果を示している。図12(b)は、上記の第1実施形態のように、待ち時間コスト及び移動時間コストを計算してピッキング作業を行った場合の結果を示している。図12(c)は、上記の第2実施形態のように、各作業者の残りのピッキング数に応じて譲り合うような待ち時間コスト及び移動時間コストを計算してピッキング作業を行った場合の結果を示している。
【0107】
図12から分かるように、待ち時間コスト及び移動時間コストによって目的地を選定してピッキング作業を行った場合には、ピッキングリストの作業順の通りにピッキング作業を行った場合に比べて、移動時間及び待ち時間の合計が短縮されることが確認された。これにより、作業時間が短縮され、スループットが向上する、という本発明の効果が実証された。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の作業位置Pまでの経路に他作業者Sbが存在するかどうかを判断することで、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の作業位置Pまでの経路において、他作業者Sbがピッキング作業を行うかどうかが判断されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の作業位置Pがある同じ通路内に他作業者Sbが存在するどうかを判断することで、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の作業位置Pまでの経路において、他作業者Sbがピッキング作業を行うかどうかを判断してもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、自作業者Saがピッキング作業を実施する予定の作業位置Pまでの経路に他作業者Sbが存在すると判断されると、自作業者Saの待ち時間コスト及び移動時間コストが算出されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、他作業者Sbが作業位置Pまでの経路に存在しなくても、次の目的地となる作業位置Pに設定された情報を用いて、自作業者Saの待ち時間コスト及び移動時間コストを算出してもよい。次の目的地となる作業位置Pに設定された情報としては、他作業者Sbが作業位置Pに到着するまでの時間及び他作業者Sbの残りのピッキング数等がある。
【0110】
また、上記実施形態では、自作業者Saの待ち時間コスト及び移動時間コストを算出する際に、作業位置Pまでの自作業者Sa及び自移動ロボット3aの移動経路として、作業位置Pまでの最短経路が生成されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、ピッキング作業を行っている他作業者Sbを迂回するような経路を、作業位置Pまでの自作業者Sa及び自移動ロボット3aの移動経路として生成してもよい。具体的には、図5(a)に示されるように、作業位置Pまでの最短経路において他作業者Sbがピッキング作業を行っている場合には、他作業者Sbが存在する通路を通らずに、他作業者Sbが存在する通路とは別の通路を通って作業位置Pに回り込むような移動経路を選択してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、自作業者Saの待ち時間コスト及び移動時間コストに基づいて、自作業者Saが2番目以降にピッキング作業を行う作業位置Pが次の目的地として選定されているが、特にそのような形態には限られない。例えば自作業者Saが1番目にピッキング作業を行う作業位置Pについても、待ち時間コスト及び移動時間コストに基づいて、目的地として選定してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、現在の作業位置Pでのピッキング作業が完了したと判定されると、自作業者Saの待ち時間コスト及び移動時間コストが算出されているが、特にその形態には限られず、現在の作業位置Pでのピッキング作業中に、自作業者Saの待ち時間コスト及び移動時間コストを算出してもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、各移動ロボット3において、自作業者Sa及び自移動ロボット3aの待ち時間コスト及び移動時間コストが算出され、自作業者Sa及び自移動ロボット3aの目的地が選定されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、作業情報管理装置5において、移動ロボット3と協働する作業者Sの待ち時間コスト及び移動時間コストと作業者Sの目的地とを、全ての移動ロボット3分だけまとめて計算してもよい。この場合には、複数の作業者Sの何れかが第1作業者となり、他の作業者Sが第2作業者となる。
【0114】
また、上記実施形態では、部品に付されたバーコードをバーコードリーダ12で読み取ることで、ピッキングされた部品が検出され、残りのピッキング数が検知されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、部品が移動ロボット3の台車上に置かれたことを検出するセンサを用いてもよい。この場合には、ピッキングされた部品が移動ロボット3の台車上に置かれることで、ピッキングされた部品が検出される。
【0115】
また、上記実施形態では、レーザセンサ11の検出データによるSLAM手法を用いて、移動ロボット3の自己位置が推定されているが、特にそのような形態には限られない。移動ロボット3の自己位置を推定する手法としては、例えば走行経路に設置された磁気テープを検出する磁気センサ、カメラの画像データによるSLAM手法、移動ロボット3の移動量及び移動方向を検出するオドメトリセンサ等を用いてもよい。また、部品配送センサのレイアウト情報を記憶しておき、作業情報管理装置5から通知された現在の作業指示内容から、移動ロボット3の現在位置を推定してもよい。
【0116】
また、移動ロボット3の自己位置の推定機能は、移動ロボット3の外部にあってもよい。例えば、部品配送センサの作業エリアAにカメラを設置し、カメラの画像データから移動ロボット3の自己位置を推定してもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、作業者S毎に異なるピッキングリストLが配布されているが、特にその形態には限られず、例えば1つのピッキングリストLを複数の作業者Sで共有してもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、作業者Sが部品を運搬する移動ロボット3と協働してピッキング作業を行っているが、本発明は、移動ロボット3等といった自律走行型の移動体を使用せずに、作業者Sが手動運搬用の台車を押しながら移動してピッキング作業を行う場合にも適用可能である。この場合には、作業者Sが持っている携帯端末に作業指示システムの少なくとも一部の構成が具備されていてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、作業者Sが棚2から部品を取り出して移動ロボット3に載せるピッキング作業を行っているが、本発明は、作業者Sが自律走行型の移動体または手動運搬用の台車から部品を取り出して棚2に収納する作業等にも適用可能である。
【0120】
また、本発明は、部品や荷物等の品物を取り扱う作業には限られず、複数の作業者が移動しながら作業を実施する際に作業指示を行うシステムであれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…作業指示システム、3…移動ロボット(移動体)、11…レーザセンサ(自己位置推定部)、12…バーコードリーダ(検知部)、21…自己位置推定部、22…残ピッキング数算出部(検知部)、23…作業情報通知部(通知部)、24…作業情報取得部(取得部)、26,26A…コスト算出部、27…目的地選定部、28,28A…走行制御部(制御部)、29…比較部、A…作業エリア、P…作業位置、S…作業者、Sa…自作業者(第1作業者)、Sb…他作業者(第2作業者)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12