(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033555
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】濃度ムラ補正データ作成方法、濃度ムラ補正データ作成装置、印刷システム、プログラム、テストチャート及びテストチャートデータ作成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137196
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】浮島 正之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB36
2C056EB41
2C056EB58
2C056EC75
2C056EC79
2C056FA13
(57)【要約】
【課題】高精度の濃度ムラ補正が実現される、濃度ムラ補正データ作成方法、濃度ムラ補正データ作成方法、濃度ムラ補正データ作成装置、印刷システム、プログラム、テストチャート及びテストチャートデータ作成装置提供する。
【解決手段】濃度ステップパターン、アライメントマーク及びラインマークを含むテストチャートの撮影画像を取得し、撮影画像から理論位置と撮影位置との対応関係情報を取得する際に、アライメントマークの位置情報を用いて粗対応関係を取得し、粗対応関係を用いて推定されるラインマークの位置情報を用いて詳細対応関係を取得し、詳細対応関係を用いて濃度ステップパターン位置ごとの濃度値を推定して濃度ムラ補正データを作成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成方法であって、
1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び前記第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得するテストチャート撮影画像取得工程と、
前記第1方向及び前記第2方向について、前記第1テストチャートにおける理論位置と前記テストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得する対応関係情報取得工程と、
前記テストチャート撮影画像における前記濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、前記濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成工程と、
を含み、
前記対応関係情報取得工程は、
前記アライメントマークごとの形状に基づき特定される前記第1方向における前記アライメントマークごとの位置の情報を用いて、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、
前記取得した粗対応関係を用いて推定される、前記複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、前記粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置と詳細対応関係を取得し、
前記濃度ムラ補正データ作成工程は、前記第1方向についての前記詳細対応関係を用いて、前記濃度ステップパターンの前記第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、前記濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項2】
前記濃度ムラ補正データ作成工程は、前記テストチャート撮影画像から前記複数のアライメントマークを検出するアライメントマーク検出工程を含み、
前記アライメントマーク検出工程は、前記テストチャート撮影画像に対して、前記アライメントマークが検出される確率を向上させる検出向上処理を施す検出向上処理工程を含む請求項1に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項3】
前記対応関係情報取得工程は、前記検出向上処理が非処理の前記テストチャート撮影画像を対象として、前記第1方向における前記詳細対応関係を取得する請求項2に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項4】
前記検出向上処理工程は、
前記検出向上処理が非処理の前記アライメントマークの輝度情報から、前記テストチャート撮影画像に対する輝度コントラスト強調量を決定し、
前記決定された前記輝度コントラスト強調量を用いて、前記テストチャート撮影画像に対してコントラスト強調処理を施す請求項2に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項5】
前記検出向上処理工程は、前記テストチャート撮影画像に対して、ぼかしフィルタ処理、メディアンフィルタ処理及びモルフォロジー処理の少なくともいずれかが適用される請求項2に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項6】
前記複数のラインマークは、同一の形状を有する請求項1に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項7】
前記対応関係情報取得工程は、前記複数のアライメントマークの前記第2方向における位置の情報に基づき、前記第2方向における前記対応関係を取得する請求項1に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項8】
前記対応関係情報取得工程は、前記第1方向における前記詳細対応関係を作成する際に、前記テストチャート撮影画像における前記ラインマークに対する画像処理を適用して、前記ラインマークの前記第1方向の位置を推定するラインマーク位置推定工程を含む請求項1に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項9】
前記ラインマーク位置推定工程は、
前記推定された前記複数のラインマークの位置について、前記粗対応関係を用いて推定された前記ラインマークごとの位置に対する、前記詳細対応関係を用いて推定された前記ラインマークごとの位置の差分が規定の範囲を超える前記ラインマークは、前記詳細対応関係の取得に用いられる前記ラインマークから除外される請求項8に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項10】
前記濃度ムラ補正データ作成工程は、
前記対応関係を用いて、前記濃度ステップパターンに含まれる濃度パターンごとに、前記記録素子ごとの理論位置を少なくとも1点を、前記テストチャート撮影画像から求め、
前記テストチャート撮影画像から求められた前記記録素子ごとの理論位置に対して、前記テストチャート撮影画像を、第2方向について前記濃度パターンの範囲内で平均処理又は積算処理して、
前記記録素子ごとの前記濃度パターンごとの濃度を推定する請求項1に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項11】
前記第1テストチャートの撮影画像に基づいて前記濃度ムラ補正データが作成される第1モードと、前記第1モードとは別に実施される第2モードであり、前記第1テストチャートに含まれる前記濃度ステップパターンに対して、前記第2方向に延びるラインパターンが重ねられる第2テストチャートに基づいて前記濃度ムラ補正データが作成される第2モードと、を選択的に切り替えるモード切替工程を含み、
前記第2モードでは、
前記第2テストチャートのテストチャート撮影画像について、前記第1方向における前記ラインパターンの位置を推定し、
前記推定された前記第1方向における前記ラインパターンの位置の情報を用いて、前記第1方向における前記詳細対応関係を取得し、
前記第1方向についての前記詳細対応関係を用いて、前記濃度ステップパターンの前記第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、前記濃度ムラ補正データを作成する請求項1に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項12】
前記第2モードにおいて、
前記第1モードに適用される濃度ムラ補正データを生成する第1シーケンスと、前記第2モードに適用される濃度ムラ補正データを生成する第2シーケンスとに共通する共通情報を利用して、前記第1シーケンスと前記第2シーケンスとの前記対応関係のズレを補正する請求項11に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項13】
前記共通情報は、前記第1方向における前記濃度パターンのエッジの情報が含まれる請求項12に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項14】
前記共通情報は、前記複数のラインマークの前記第1方向における位置の情報が含まれる請求項12に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項15】
前記テストチャート撮影画像が複数の画像センサを用いて生成される場合、前記第1方向について、前記画像センサの撮影領域が重複するオーバーラップ領域に含まれる前記ラインマークの情報を利用して、前記第1シーケンスと前記第2シーケンスとの前記対応関係のズレを補正するオーバーラップ領域補正工程を含む請求項12に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項16】
前記オーバーラップ領域補正工程は、
前記オーバーラップ領域に配置される複数の前記ラインマークの位置を統計的に処理した情報を用いて、前記第1シーケンスと前記第2シーケンスとの前記対応関係のズレを補正する請求項15に記載の濃度ムラ補正データ作成方法。
【請求項17】
第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成装置であって、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに実行させるプログラムが記憶される1つ以上のメモリと、
を備え、
前記1つ以上のプロセッサは、前記プログラムの命令を実行して、
1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び前記第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得し、
前記第1方向及び前記第2方向について、前記第1テストチャートにおける理論位置と前記テストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得し、
前記テストチャート撮影画像における前記濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、前記濃度ムラ補正データを作成し、
前記対応関係情報を取得する際に、
前記アライメントマークごとの形状に基づき特定される前記第1方向における前記アライメントマークごとの位置の情報を用いて、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、
前記取得した粗対応関係を用いて推定される、前記複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、前記粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置と詳細対応関係を取得し、
前記濃度ムラ補正データを作成する際に、前記第1方向についての前記詳細対応関係を用いて、前記濃度ステップパターンの前記第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、前記濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成装置。
【請求項18】
第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドと、
前記ラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成装置と、
を備え、濃度ムラ補正データ作成装置は、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに実行させるプログラムが記憶される1つ以上のメモリと、
を備え、
前記1つ以上のプロセッサは、前記プログラムの命令を実行して、
1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び前記第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得し、
前記第1方向及び前記第2方向について、前記第1テストチャートにおける理論位置と前記テストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得し、
前記テストチャート撮影画像における前記濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、前記濃度ムラ補正データを作成し、
前記対応関係情報を取得する際に、
前記アライメントマークごとの形状に基づき特定される前記第1方向における前記アライメントマークごとの位置の情報を用いて、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、
前記取得した粗対応関係を用いて推定される、前記複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、前記粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置と詳細対応関係を取得し、
前記濃度ムラ補正データを作成する際に、前記第1方向についての前記詳細対応関係を用いて、前記濃度ステップパターンの前記第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、前記濃度ムラ補正データを作成する印刷システム。
【請求項19】
第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成するプログラムであって、
コンピュータが、
1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び前記第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得し、
前記第1方向及び前記第2方向について、前記第1テストチャートにおける理論位置と前記テストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得し、
前記テストチャート撮影画像における前記濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、前記濃度ムラ補正データを作成し、
前記対応関係情報を取得する際に、
前記アライメントマークごとの形状に基づき特定される前記第1方向における前記アライメントマークごとの位置の情報を用いて、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、
前記取得した粗対応関係を用いて推定される、前記複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、前記粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、前記第1方向における前記理論位置と前記撮影位置と詳細対応関係を取得し、
前記濃度ムラ補正データを作成する際に、前記第1方向についての前記詳細対応関係を用いて、前記濃度ステップパターンの前記第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、前記濃度ムラ補正データを作成するプログラム。
【請求項20】
第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する際に用いられるテストチャートであって、
1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び前記第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含む、テストチャート。
【請求項21】
前記複数のラインマークは同一の形状を有する請求項20に記載のテストチャート。
【請求項22】
前記記録素子における異常の検出を実施する際に使用される異常記録素子検出パターンを含む請求項20に記載のテストチャート。
【請求項23】
前記異常記録素子検出パターンは、前記複数の記録素子のそれぞれを用いて記録される複数のラインであり、記録素子ごとに第1方向の位置が異なり、かつ、前記第2方向に伸びる複数のラインを含む請求項22に記載のテストチャート。
【請求項24】
第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データの作成に用いられるテストチャートを表すテストチャートデータを作成するテストチャートデータ作成装置であって、
前記テストチャートは、1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び前記第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含むテストチャートであり、
前記アライメントマークに適用されるアライメントマークパラメータ及び前記ラインマークに適用されるラインマークパラメータの少なくともいずれかを調整する際に用いられるグラフィカルユーザインターフェースを備えたテストチャートデータ作成装置。
【請求項25】
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記アライメントマークのサイズ、前記アライメントマークの縦横比、前記アライメントマークの濃度、前記アライメントマークの数、及び隣接する前記アライメントマークの間隔の少なくともいずれかを調整する際に用いられる請求項24に記載のテストチャートデータ作成装置。
【請求項26】
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記ラインマークのサイズ、前記ラインマークの縦横比、前記ラインマークの濃度、前記ラインマークの数、及び隣接する前記ラインマークの間隔の少なくともいずれかを調整する際に用いられる請求項24に記載のテストチャートデータ作成装置。
【請求項27】
前記ラインマークは、相対的に濃度値が低い低濃度部及び前記低濃度部に対して濃度値が高い高濃度部が含まれ、
前記グラフィカルユーザインターフェースは、前記低濃度部の濃度、前記低濃度部の前記第1方向における長さ、前記高濃度部の濃度及び前記高濃度部の前記第1方向における長さの少なくともいずれかを調整する際に用いられる請求項26に記載のテストチャートデータ作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度ムラ補正データ作成方法、濃度ムラ補正データ作成装置、印刷システム、プログラム、テストチャート及びテストチャートデータ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクジェット印刷装置における濃度ムラ補正方法が記載される。同文献に記載の装置は、複数の濃度値に対応するパターンを有する色濃度パターンが含まれるテストパターンを印刷し、テストパターンをスキャンしてテストパターンのスキャン画像を取得し、テストパターンのスキャン画像を元に濃度ムラ補正データを作成する。濃度ムラ補正データは、印刷物を作成する際の印刷に適用される。
【0003】
同文献に記載の濃度ムラ補正データの作成では、テストパターンのスキャン画像に対して画像変形処理が事前に施された上で、テストパターンのスキャン画像が使用される。これにより、濃度ムラ補正の精度を向上させている。
【0004】
同文献の
図5には、色濃度パターン及びアライメントマークが含まれるテストパターンであり、色濃度パターンの外周部に複数のアライメントマークが配置されるテストパターンが図示される。複数のアライメントマークは、それぞれテストパターンの位置、印刷解像度及び画像の傾きなどを検出する際に用いられる。また、複数のアライメントマークは、それぞれの形状が異なっており、それぞれの識別が可能である。
【0005】
濃度ムラ補正データの作成に適用される画像変形処理は、テストパターンのスキャン画像からアライメントマーク部の中心座標を検出し、複数のアライメントマーク部に対して平面直交座標系における理論座標と検出された現実の座標との関係を表す変形パラメータを算出し、変形パラメータを用いて色濃度パターン部分を2次元的に変形処理する。
【0006】
特許文献1に記載の装置では、印刷に適用される媒体が幅広であり、単一のスキャンを実施して一度に媒体の幅方向の全領域のスキャンができない場合、媒体の幅方向におけるスキャン位置が異なる複数のスキャン画像を取得し、複数のスキャン画像を合成し、媒体の幅方向の全領域のスキャン画像を得ている。その際の、各スキャンに対する媒体の分割部において、アライメントマークが共有されるようにスキャンを実施して、複数のスキャン画像間の合成位置を把握する。共有されたアライメントマーク部の位置情報に基づいて、複数のスキャン画像を合成する。なお、アライメントマークという用語は、媒体へ印刷され視認されるアライメントマーク自体を表す。アライメントマーク部という用語は、スキャン画像においてアライメントマークを表す信号を表す。本明細書では、画像という用語は、画像を表す画像データ及び電気信号の意味として使用される場合がある。
【0007】
特許文献2は、インクジェット式の液滴吐出装置が記載される。同文献の
図3には、濃度ムラ検出に用いられるテストパターンが図示される。テストパターンは、3つの濃度パターン、記録ヘッドの分割位置を表す第1マーク、個々の吐出ノズル位置を算出する際に基準となる第2マーク、並びにテストパターンの印字及び読み取りの際の角度誤差の検出に用いられる角度検出マークを含んで構成される。同文献に記載の装置は、濃度ムラが検出され、濃度ムラの補正が必要な吐出ノズルごとに補正値が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6897992号公報
【特許文献2】特開2010-36452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、以下に示す問題点を有している。
【0010】
[問題点1]
色濃度パターンの変形精度は、アライメントマーク部の中心座標の検出精度に依存する。色濃度パターンの変形精度が低い場合は、濃度ムラ補正の補正位置のずれの原因となり、補正位置のずれに起因する、濃度ムラ補正の補正精度の低下が生じ得る。
【0011】
例えば、ページ幅に対応するラインヘッドを用いてシングルパス印刷が実施される場合では、ラインヘッドのノズル列方向である第1方向におけるアライメントマーク部の中心座標の検出精度が、濃度ムラ補正の補正精度に対して特に影響しやすい。また、アライメントマーク部の中心座標の検出精度に関連して、下記の問題点が挙げられる。
【0012】
[問題点1-A]
1200ドット毎インチなど、印刷解像度が相対的に高い印刷装置の場合、印刷解像度と同等以上のスキャン解像度を適用できるスキャナは高価であり、テストパターンのスキャン装置として採用しにくい。多くのケースにおいて、テストパターンのスキャン解像度は、テストパターンの印刷解像度に対して相対的に低くせざるを得ない。しかし、テストパターン印刷解像度に対してテストパターンの読取解像度が相対的に低い場合は、アライメントマーク部の中心座標の検出精度が低下しやすい。
【0013】
[問題点1-B]
複数のアライメントマークのそれぞれは、互いに形状が異なる。そうすると、中心座標の検出精度が、それぞれのアライメントマーク部の形状そのものに依存して変化する。よって、変形精度を管理しにくい。
【0014】
[問題点1-C]
印刷されたアライメントマークへ汚れが付着している場合、及びノズルの吐出不良に起因するスジなどの印刷欠陥が発生する場合は、アライメントマーク部の検出率の低下若しくはアライメントマーク部の中心座標の検出精度の低下のいずれか、又はこれらの両者が発生し得る。
【0015】
[問題点1-D]
アライメントマーク部の検出率とアライメントマーク部の中心座標の検出精度との両者の向上が難しい。例えば、アライメントマーク部の検出率の向上を意図して、アライメントマークのスキャン画像に対してフィルタリング処理などの何らかの追加処理を行うと、アライメントマーク部の中心座標の検出精度が低下してしまう場合があり得る。
【0016】
[問題点2]
アライメントマークのスキャン画像を2次元的に変形する処理は、演算負荷が相対的に重く、演算処理に適用されるリソースの消費の増加及び演算処理に時間がかかるなど、不都合が生じ得る。
【0017】
[問題点3]
色濃度パターンを構成する濃度ごとのパターン部に応じて打滴されるインク量が異なる。印刷に適用される媒体がインクの吸収に起因して収縮する場合、媒体の収縮は濃度ごとのパターンごとに異なる。
【0018】
媒体において、アライメントマークが印刷される部分と、色濃度パターンが印刷される部分とは、打滴されるインク量が異なり、アライメントマークのスキャン画像に基づいて算出された変形パラメータを用いて色濃度パターン部分を2次元的に変形処理する場合は、変形処理の精度が低下してしまい、結果として、アライメントマーク部の中心座標の検出精度が低下し得る。
【0019】
媒体の収縮量は、媒体の種類に依存する。例えば、相対的に厚みが厚い媒体と比較して、相対的に厚みが薄い媒体は収縮量が相対的に大きくなりやすい。また、金属と比較して、紙は収縮量が相対的に大きくなりやすい。
【0020】
媒体の収縮量は、スキャン画像のスキャン位置にも依存する。例えば、インク打滴工程、第1位置のスキャン工程、乾燥工程及び第2位置のスキャン工程が順に実行される場合を考える。乾燥工程では媒体の収縮が促進されやすく、第1位置のスキャン工程における媒体の収縮量と比較して、第2位置のスキャン工程における媒体の収縮率は大きくなりやすい。また、特許文献2に記載の装置は、以下に示す問題点を有している。
【0021】
[問題点4]
第1マーク及び第2マークともユニークな形状を有しておらず、第1マーク及び第2マークに基づく絶対位置の特定は困難である。すなわち、テストパターンのスキャン画像に映り込んだ複数のマーク部のそれぞれが同一の形状であり、どのマーク部がどの位置を表すかの特定が困難である。なお、複数のマークとは、第1マークの構成要素及び第2マークの構成要素の総称である。
【0022】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、上記した問題点の少なくともいずれかを解決し、高精度の濃度ムラ補正が実現される、濃度ムラ補正データ作成方法、濃度ムラ補正データ作成装置、印刷システム、プログラム、テストチャート及びテストチャートデータ作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
第1態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成方法であって、1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得するテストチャート撮影画像取得工程と、第1方向及び第2方向について、第1テストチャートにおける理論位置とテストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得する対応関係情報取得工程と、テストチャート撮影画像における濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成工程と、を含み、対応関係情報取得工程は、アライメントマークごとの形状に基づき特定される第1方向におけるアライメントマークごとの位置の情報を用いて、第1方向における理論位置と撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、取得した粗対応関係を用いて推定される、複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、第1方向における理論位置と撮影位置と詳細対応関係を取得し、濃度ムラ補正データ作成工程は、第1方向についての詳細対応関係を用いて、濃度ステップパターンの第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成方法である。
【0024】
第1態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法によれば、第1テストチャートの撮影画像からアライメントマークを検出し、アライメントマークの検出結果を用いて、理論位置と撮影位置との粗対応関係を取得する。
【0025】
粗い対応関係を用いてラインマークの中心位置を推定し、理論位置と撮影位置との詳細対応関係を取得する。ラインヘッドの記録素子の配置方向に対応する第1方向について、詳細対応関係を用いて第1方向における記録素子ごとの濃度値が把握され、第1方向における記録素子ごとの濃度値に基づき濃度ムラ補正データが作成される。
【0026】
これにより、高精度の濃度ムラ補正を実施し得る濃度ムラ補正データが作成される。
【0027】
ラインヘッドとは、第1方向における印刷媒体の全長に対応する長さに渡って、複数の記録素子が配置される印刷ヘッドの形態である。
【0028】
シングルパス方式とは、印刷媒体と印刷ヘッドとを相対的に一度だけ移動させて、印刷媒体の印刷可能領域の全域に印刷を施す印刷方式である。
【0029】
印刷方式の例として、複数のノズルを備え、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドが適用されるインクジェット方式が挙げられる。
【0030】
第2態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第1態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法において、濃度ムラ補正データ作成工程は、テストチャート撮影画像から複数のアライメントマークを検出するアライメントマーク検出工程を含み、アライメントマーク検出工程は、テストチャート撮影画像に対して、アライメントマークが検出される確率を向上させる検出向上処理を施す検出向上処理工程を含んでいてもよい。
【0031】
かかる態様によれば、アライメントマークの検出確率が向上し得る。
【0032】
第3態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第2態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法において、対応関係情報取得工程は、検出向上処理が非処理のテストチャート撮影画像を対象として、第1方向における詳細対応関係を取得してもよい。
【0033】
かかる態様によれば、アライメントマークの検出精度を向上し得る。
【0034】
第4態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第2態様又は第3態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法において、検出向上処理工程は、検出向上処理が非処理のアライメントマークの輝度情報から、テストチャート撮影画像に対する輝度コントラスト強調量を決定し、決定された輝度コントラスト強調量を用いて、テストチャート撮影画像に対してコントラスト強調処理を施してもよい。
【0035】
かかる態様によれば、アライメントマークに対して適切な強調処理が施される。これにより、アライメントマークの検出確率が向上し得る。
【0036】
第5態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第2態様から第4態様のいずれか一態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法において、検出向上処理工程は、テストチャート撮影画像に対して、ぼかしフィルタ処理、メディアンフィルタ処理及びモルフォロジー処理の少なくともいずれかが適用されてもよい。
【0037】
かかる態様によれば、アライメントマークの検出確率が向上し得る。
【0038】
第6態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第1態様から第5態様のいずれか一態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、複数のラインマークは、同一の形状を有してもよい。
【0039】
かかる態様によれば、ラインマークの検出確率が向上し得る。
【0040】
第7態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、対応関係情報取得工程は、複数のアライメントマークの第2方向における位置の情報に基づき、第2方向における対応関係を取得してもよい。
【0041】
かかる態様によれば、アライメントマークの精度に応じた第2方向における対応関係を取得し得る。
【0042】
第8態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第1態様から第7態様のいずれか一態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、対応関係情報取得工程は、第1方向における詳細対応関係を作成する際に、テストチャート撮影画像におけるラインマークに対する画像処理を適用して、ラインマークの第1方向の位置を推定してもよい。
【0043】
かかる態様によれば、ラインマークの推定精度が向上し得る。
【0044】
第9態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第8態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、ラインマーク位置推定工程は、推定された複数のラインマークの位置について、粗対応関係を用いて推定されたラインマークごとの位置に対する、詳細対応関係を用いて推定されたラインマークごとの位置の差分が規定の範囲を超えるラインマークは、詳細対応関係の取得に用いられるラインマークから除外されてもよい。
【0045】
かかる態様によれば、ラインマークの推定精度が向上し得る。
【0046】
第10態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第1態様から第9態様のいずれか一態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、濃度ムラ補正データ作成工程は、対応関係を用いて、濃度ステップパターンに含まれる濃度パターンごとに、記録素子ごとの理論位置を少なくとも1点を、テストチャート撮影画像から求め、テストチャート撮影画像から求められた記録素子ごとの理論位置に対して、テストチャート撮影画像を、第2方向について濃度パターンの範囲内で平均処理又は積算処理して、記録素子ごとの濃度パターンごとの濃度を推定してもよい。
【0047】
かかる態様によれば、記録素子ごとの濃度推定の精度が向上し得る。
【0048】
第11態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第1態様から第10態様のいずれか一態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、第1テストチャートの撮影画像に基づいて濃度ムラ補正データが作成される第1モードと、第1モードとは別に実施される第2モードであり、第1テストチャートに含まれる濃度ステップパターンに対して、第2方向に延びるラインパターンが重ねられる第2テストチャートに基づいて濃度ムラ補正データが作成される第2モードと、を選択的に切り替えるモード切替工程を含み、第2モードでは、第2テストチャートのテストチャート撮影画像について、第1方向におけるラインパターンの位置を推定し、推定された第1方向におけるラインパターンの位置の情報を用いて、第1方向における詳細対応関係を取得し、第1方向についての詳細対応関係を用いて、濃度ステップパターンの第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、濃度ムラ補正データを作成もよい。
【0049】
かかる態様によれば、印刷媒体の伸縮特性に応じた高精度の濃度ムラ補正データが生成される。これにより、印刷媒体の伸縮特性の影響が抑制される濃度ムラ補正が実施される。
【0050】
第12態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第11態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、第2モードにおいて、第1モードに適用される濃度ムラ補正データを生成する第1シーケンスと、第2モードに適用される濃度ムラ補正データを生成する第2シーケンスとに共通する共通情報を利用して、第1シーケンスと第2シーケンスとの対応関係のズレを補正してもよい。
【0051】
かかる態様によれば、第1モードにおいて生成される濃度ムラ補正データと、第2モードにおいて生成される濃度ムラ補正データとのズレを回避し得る。
【0052】
第13態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第12態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、共通情報は、第1方向における濃度パターンのエッジの情報が含まれていてもよい。
【0053】
かかる態様によれば、第1シーケンスと第2シーケンスとの対応関係のズレが高精度に補正される。
【0054】
第14態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第12態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、共通情報は、複数のラインマークの第1方向における位置の情報が含まれていてもよい。
【0055】
かかる態様によれば、第1シーケンスと第2シーケンスとの対応関係のズレが高精度に補正される。
【0056】
第15態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第12態様から第14態様のいずれか一態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、テストチャート撮影画像が複数の画像センサを用いて生成される場合、第1方向について、画像センサの撮影領域が重複するオーバーラップ領域に含まれるラインマークの情報を利用して、第1シーケンスと第2シーケンスとの対応関係のズレを補正するオーバーラップ領域補正工程を含んでいてもよい。
【0057】
かかる態様によれば、オーバーラップ領域に起因する、第1シーケンスと第2シーケンスとの対応関係のズレが高精度に補正される。
【0058】
第16態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法は、第15態様の濃度ムラ補正データ作成方法において、オーバーラップ領域補正工程は、オーバーラップ領域に配置される複数のラインマークの位置を統計的に処理した情報を用いて、第1シーケンスと第2シーケンスとの対応関係のズレを補正してもよい。
【0059】
かかる態様によれば、オーバーラップ領域に起因する、第1シーケンスと第2シーケンスとの対応関係のズレが高精度に補正される。
【0060】
第17態様に係る濃度ムラ補正データ作成装置は、第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成装置であって、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサに実行させるプログラムが記憶される1つ以上のメモリと、を備え、1つ以上のプロセッサは、プログラムの命令を実行して、1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得し、第1方向及び第2方向について、第1テストチャートにおける理論位置とテストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得し、テストチャート撮影画像における濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、濃度ムラ補正データを作成し、対応関係情報を取得する際に、アライメントマークごとの形状に基づき特定される第1方向におけるアライメントマークごとの位置の情報を用いて、第1方向における理論位置と撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、取得した粗対応関係を用いて推定される、複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、第1方向における理論位置と撮影位置と詳細対応関係を取得し、濃度ムラ補正データを作成する際に、第1方向についての詳細対応関係を用いて、濃度ステップパターンの第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成装置である。
【0061】
第17態様に係る濃度ムラ補正データ作成装置によれば、第1態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法と同様の作用効果を得ることができる。第2態様から第16態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法の構成要件は、他の態様に係る濃度ムラ補正データ作成装置の構成要件へ適用し得る。
【0062】
第18態様に係る印刷システムは、第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドと、ラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する濃度ムラ補正データ作成装置と、を備え、濃度ムラ補正データ作成装置は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサに実行させるプログラムが記憶される1つ以上のメモリと、を備え、1つ以上のプロセッサは、プログラムの命令を実行して、1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得し、第1方向及び第2方向について、第1テストチャートにおける理論位置とテストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得し、テストチャート撮影画像における濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、濃度ムラ補正データを作成し、対応関係情報を取得する際に、アライメントマークごとの形状に基づき特定される第1方向におけるアライメントマークごとの位置の情報を用いて、第1方向における理論位置と撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、取得した粗対応関係を用いて推定される、複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、第1方向における理論位置と撮影位置と詳細対応関係を取得し、濃度ムラ補正データを作成する際に、第1方向についての詳細対応関係を用いて、濃度ステップパターンの第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、濃度ムラ補正データを作成する印刷システムである。
【0063】
第18態様に係る印刷システムによれば、第1態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法と同様の作用効果を得ることができる。第2態様から第16態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法の構成要件は、他の態様に係る印刷システムの構成要件へ適用し得る。
【0064】
第19態様に係るプログラムは、第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成するプログラムであって、コンピュータが、1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含み、印刷媒体へ印刷された第1テストチャートを撮影して得られるテストチャート撮影画像を取得し、第1方向及び第2方向について、第1テストチャートにおける理論位置とテストチャート撮影画像における撮影位置との対応関係を表す対応関係情報を取得し、テストチャート撮影画像における濃度ステップパターンの濃度の情報を用いて、濃度ムラ補正データを作成し、対応関係情報を取得する際に、アライメントマークごとの形状に基づき特定される第1方向におけるアライメントマークごとの位置の情報を用いて、第1方向における理論位置と撮影位置との対応関係を示す粗対応関係を取得し、取得した粗対応関係を用いて推定される、複数のラインマークのそれぞれの位置の情報を用いて、粗対応関係と比べて詳細な対応関係を示す、第1方向における理論位置と撮影位置と詳細対応関係を取得し、濃度ムラ補正データを作成する際に、第1方向についての詳細対応関係を用いて、濃度ステップパターンの第1方向における位置ごとの濃度値を推定して、濃度ムラ補正データを作成するプログラムである。
【0065】
第19態様に係るプログラムによれば、第1態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法と同様の作用効果を得ることができる。第2態様から第16態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法の構成要件は、他の態様に係るプログラムの構成要件へ適用し得る。
【0066】
第20態様に係るテストチャートは、第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データを作成する際に用いられるテストチャートであって、1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含むテストチャートである。
【0067】
第20態様に係るテストチャートによれば、ラインヘッドが用いられるシングルパス印刷において実施される濃度ムラ補正に用いられる濃度ムラ補正データとして、高精度の濃度ムラ補正が実現される濃度ムラ補正データを作成し得る。
【0068】
第2態様から第16態様に係る濃度ムラ補正データ作成方法の構成要件は、他の態様に係るテストチャートの構成要件へ適用し得る。
【0069】
第21態様に係るテストチャートは、第20態様のテストチャートにおいて、複数のラインマークは同一の形状を有していてもよい。
【0070】
第22態様に係るテストチャートは、第20態様又は第21態様のテストチャートにおいて、録素子における異常の検出を実施する際に使用される異常記録素子検出パターンを含んでいてもよい。
【0071】
第23態様に係るテストチャートは、第22態様のテストチャートにおいて、異常記録素子検出パターンは、複数の記録素子のそれぞれを用いて記録される複数のラインであり、記録素子ごとに第1方向の位置が異なり、かつ、第2方向に伸びる複数のラインを含んでいてもよい。
【0072】
第24態様に係るテストチャートデータ作成装置は、第1方向に沿って複数の記録素子が配置されるラインヘッドが用いられるシングルパス方式の印刷に適用される濃度ムラ補正データの作成に用いられるテストチャートを表すテストチャートデータを作成するテストチャートデータ作成装置であって、テストチャートは、1つ以上の濃度値に対応する1つ以上の濃度パターンを含む濃度ステップパターン、互いに異なる形状を有する複数のアライメントマーク及び第1方向と直交する第2方向に延びる形状を有する複数のラインマークを含むテストチャートであり、アライメントマークに適用されるアライメントマークパラメータ及びラインマークに適用されるラインマークパラメータの少なくともいずれかを調整する際に用いられるグラフィカルユーザインターフェースを備えたテストチャートデータ作成装置である。
【0073】
第25態様に係るテストチャートデータ作成装置は、第24態様のテストチャートデータ作成装置において、グラフィカルユーザインターフェースは、アライメントマークのサイズ、アライメントマークの縦横比、アライメントマークの濃度、アライメントマークの数、及び隣接するアライメントマークの間隔の少なくともいずれかを調整する際に用いられてもよい。
【0074】
第26態様に係るテストチャートデータ作成装置は、第24態様又は第25態様のテストチャートデータ作成装置において、グラフィカルユーザインターフェースは、ラインマークのサイズ、ラインマークの縦横比、ラインマークの濃度、ラインマークの数、及び隣接するラインマークの間隔の少なくともいずれかを調整する際に用いられてもよい。
【0075】
第27態様に係るテストチャートデータ作成装置は、第24態様から第26態様のいずれか一態様のテストチャートデータ作成装置において、ラインマークは、相対的に濃度値が低い低濃度部及び低濃度部に対して濃度値が高い高濃度部が含まれ、グラフィカルユーザインターフェースは、低濃度部の濃度、低濃度部の第1方向における長さ、高濃度部の濃度及び高濃度部の第1方向における長さの少なくともいずれかを調整する際に用いられてもよい。
【発明の効果】
【0076】
本発明によれば、第1テストチャートの撮影画像からアライメントマークを検出し、アライメントマークの検出結果を用いて、理論位置と撮影位置との粗対応関係を取得する。粗い対応関係を用いてラインマークの中心位置を推定し、理論位置と撮影位置との詳細対応関係を取得する。ラインヘッドの記録素子の配置方向に対応する第1方向について、詳細対応関係を用いて第1方向における記録素子ごとの濃度値が把握され、第1方向における記録素子ごとの濃度値に基づき濃度ムラ補正データが作成される。これにより、高精度の濃度ムラ補正を実施し得る濃度ムラ補正データが作成される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】
図1は第1実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は
図2に示すアライメントマーク及びラインマークの具体例を示す図である。
【
図4】
図4はラインマーク調整画面の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は
図2に示すテストチャートの変形例を示す模式図である。
【
図6】
図6は
図1に示す濃度ムラ補正データ更新処理工程の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は第1実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成ハードウェア構成の例を概略的に示すブロック図である。
【
図8】
図8は
図7に示す濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は変形例に係る濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成のハードウェア構成の例を概略的に示すブロック図である。
【
図10】
図10は
図9に示す濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】
図11はアライメントマーク部検出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は濃度ムラ補正データ作成シーケンスの概要を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は濃度ムラ補正シーケンスとは別に対応関係取得シーケンスが導入される場合の手順を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は
図13に示す対応関係取得シーケンスに適用されるテストチャートの模式図である。
【
図15】
図15は複数のモードを備える場合の濃度ムラ補正データ作成方法の手順を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は変形例に係るテストチャートの模式図である。
【
図17】
図17は実施形態に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。
【
図20】
図20は
図17に示すインクジェット印刷システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図21】
図21は
図20に示す電気的構成のハードウェア構成の例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0079】
[第1実施形態]
〔濃度ムラ補正データ作成方法の概要〕
図1は第1実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成方法の手順を示すフローチャートである。以下に、印刷システムに具備される濃度ムラ補正データ作成装置を用いて各工程が実行される、濃度ムラ補正データ作成方法の例を示す。濃度ムラ補正データ作成装置は、プロセッサを備えるコンピュータが適用される。印刷システムとして、インクジェット印刷装置が適用される例を示す。
【0080】
濃度ムラ補正データが適用される濃度ムラ補正は、インクジェットヘッドに具備される複数のノズルの吐出性能のバラつきに起因する印刷画像の濃度ムラを抑制する処理であり、予め作成され、記憶される濃度ムラ補正データを用いて実施される。なお、実施形態に記載の複数のノズルは複数の記録素子の一例である。
【0081】
図1に示す濃度ムラ補正データ作成方法は、濃度ムラ補正データ取得工程S10、テストチャート印刷工程S12、スキャン画像作成工程S14及び濃度ムラ補正データ更新処理工程S16を含んで構成される。
【0082】
〔濃度ムラ補正データ取得工程〕
濃度ムラ補正データ取得工程S10では、予め記憶される現状の濃度ムラ補正データが取得される。濃度ムラ補正は、フィードバック的に繰り返し実施することが可能である。1回目の濃度ムラ補正が実施される場合は、現状の濃度ムラ補正データは無補正状態の初期データとなる。初期データの取得は、予め用意される初期データファイルの読み込みを適用してもよいし、ソフトウェアの内部で初期データを作成してもよい。濃度ムラ補正データ取得工程S10において濃度ムラ補正データが取得されると、テストチャート印刷工程S12へ進む。
【0083】
〔テストチャート印刷工程〕
テストチャート印刷工程S12では、濃度ムラ補正データ取得工程S10において取得される現在の濃度ムラ補正データを適用して、濃度ムラ補正処理が施された状態のテストチャートの印刷データ情報が作成される。
【0084】
テストチャート印刷工程S12では、作成されたテストチャートの印刷データを用いて、インクジェットヘッドから印刷媒体へインクを吐出させて、印刷媒体の印刷面へテストチャートが印刷される。1回目の濃度ムラ補正が実施される場合は、濃度ムラ補正処理が省略されてもよい。濃度ムラ補正処理が省略される場合は、前工程の濃度ムラ補正データ取得工程S10が省略されてもよい。
【0085】
テストチャート印刷工程S12において印刷されるテストチャートは、複数の濃度値のそれぞれに対応する複数のパターンを備える濃度ステップパターンが含まれる。なお、テストチャートの詳細は後述する。テストチャート印刷工程S12においてテストチャートが印刷されると、スキャン画像作成工程S14進む。
【0086】
〔スキャン画像作成工程〕
スキャン画像作成工程S14では、画像センサが具備される画像センサシステムを用いて、印刷されたテストチャートが撮影され、テストチャートのスキャン画像が作成される。なお、画像センサはイメージセンサと称され得る。また、画像センサシステムの例として、スキャナ装置が挙げられる。
【0087】
テストチャートが撮影される際に、画像センサシステムの性能に起因するシェーディング補正の実施が好ましい。画像センサシステムの性能として、照明光の光量分布に起因する照明光量のムラ及び画像センサの読取特性分布に起因する読取ムラ等が挙げられる。
【0088】
画像センサシステムのシェーディング特性は、予め画像センサを用いて白色基準板及び媒体の非印刷部等を読み取って取得することができる。ここでいう非印刷部の部は、領域という概念が含まれ得る。
【0089】
例えば、印刷媒体におけるテストチャートの上側、下側及びテストチャートの中の少なくともいずれかに非印刷部を設けておき、濃度ムラ補正が実施されるタイミングにおいて読み取られるテストチャートのスキャン画像に映り込む非印刷部を利用して、シェーディング特性を取得してもよい。このようにしてシェーディング特性が取得される場合、経時的にシェーディング特性が変化する場合であっても、濃度ムラ補正が実施される際に適切なシェーディング特性を取得し得る。スキャン画像作成工程S14においてテストチャートのスキャン画像が作成されると、濃度ムラ補正データ更新処理工程S16へ進む。なお、実施形態に記載のスキャン画像作成工程は、テストチャート撮影画像取得工程の一例である。
【0090】
〔濃度ムラ補正データ更新処理工程〕
濃度ムラ補正データ更新処理工程S16では、テストチャートのスキャン画像を解析する解析工程、スキャン画像の解析結果を用いて最新の濃度ムラ補正データを作成する作成工程、最新の濃度ムラ補正データを記憶する記憶工程が含まれる。印刷システムは、最新の濃度ムラ補正データを用いて、印刷画像の印刷データに対して濃度ムラ補正処理を施し、印刷を実施する。
【0091】
[テストチャートの具体例]
〔構成概要〕
図2はテストチャートの模式図である。同図には、印刷媒体に印刷されたテストチャートTC1を模式的に図示する。同図に示す第1方向は、インクジェットヘッドに具備される複数のノズルが配置される方向に対応する方向である。第2方向は、第1方向と直交する方向である。第1方向及び第2方向は、印刷媒体の印刷面に規定される方向であり、印刷媒体の印刷面に対して平行となる方向である。
【0092】
インクジェットヘッドに具備されるノズルが2次元状に配置される場合、上記したノズルが配置される方向は、実質的にノズルが配置される方向である。ラインヘッドの場合、印刷媒体の搬送方向と直交する印刷媒体の幅方向に平行となる方向が、実質的にノズルが配置される方向となる。
【0093】
図2に示すテストチャートTC1は、濃度ステップパターンSPの外周に複数のアライメントマークAM及び複数のラインマークLMが配置され、第1方向について、アライメントマークAMとラインマークLMとが交互に配置される。
【0094】
図2には、濃度ステップパターンSPの外周として、第2方向における濃度ステップパターンSPの一方の外側及び他方の外側を例示する。同図には、アライメントマークAMの数とラインマークLMの数とが同数のテストチャートTC1を例示するが、アライメントマークAMの数とラインマークLMの数との数が異なっていてもよい。
【0095】
〔アライメントマークの内容〕
アライメントマークAMは、印刷媒体におけるおおまかな位置を推定する際に使用される。複数のアライメントマークAMのそれぞれは、ユニークな形状を有しており、どのアライメントマークAMであるかの識別が可能である。
【0096】
図2には、マーカという文字に異なるアルファベット付した文字列を用いて、複数のアライメントマークAMのそれぞれの形状の違いが模式的に図示される。アライメントマークAMの具体的な形状の例は、
図3に図示する。
【0097】
〔ラインマークの内容〕
ラインマークLMは、第1方向における詳細な印刷位置の推定に使用される。ラインマークLMが延びるライン方向は、第1方向と直交する第2方向である。ラインマークLMは、単純な実線が好ましいが、一般にラインと認識できるものであればよい。例えば、点線及び破線などもラインの概念に含まれ得る。
【0098】
複数のラインマークLMのそれぞれは、第1方向の中心位置に相対的に低い濃度値が適用される中心ライン部LMCを有し、第1方向について、中心ライン部LMCの両側に相対的に高い濃度値が適用される周辺ライン部LMPを有する。
図2に示す中心ライン部LMCは最小濃度値が適用され、周辺ライン部LMPは最高濃度値が適用される。中心ライン部LMC及び周辺ライン部LMPの濃度について、中心ライン部LMCと周辺ライン部LMPとのコントラストがあればよく、中心ライン部LMCは最小濃度値を超える濃度値を適用してもよいし、周辺ライン部LMPは最高濃度値未満の濃度値を適用してもよい。
【0099】
各ラインマークLMにおける中心ライン部LMCは、第1方向における各ラインマークLMの中心位置に形成される。第1方向について規定の長さを有する中心ライン部LMCの第1方向における中心位置は、各ラインマークLMにおける中心ライン部LMCの中心位置と規定される。各ラインマークLMにおける中心ライン部LMCの位置について、中心ライン部LMCが認識できれる位置であればよく、中心ライン部LMCは第1方向における各ラインマークLMの中心位置でなくてもよい。
【0100】
ラインマークLMにおける中心ライン部LMCの濃度値と周辺ライン部LMPの濃度値との関係は、中心ライン部LMCの濃度値>周辺ライン部LMPの濃度値であってもよいし、中心ライン部LMCの濃度値<周辺ライン部LMPの濃度値であってもよい。中心ライン部LMC及び周辺ライン部LMPのうち、低い濃度値が適用される方は濃度値0が適用され、例えば、インクが打滴されなくてもよい。複数のラインマークLMのそれぞれの形状は、共通であることがこのましい。
【0101】
図2には、同一の形状を有する複数のラインマークLMを図示する。同一の形状ではなく、共通する形状を有するラインマークLMの例として、中心ライン部LMCのサイズが異なる場合、中心ライン部LMCの濃度値が異なる場合、周辺ライン部LMPのサイズが異なる場合及び周辺ライン部LMPの濃度値が異なる場合などが挙げられる。
【0102】
〔濃度ステップパターンの内容〕
濃度ステップパターンSPは、第1方向に延びる複数の濃度パターンCPを有する。各濃度パターンCPは同一濃度値が適用される。複数の濃度パターンCPは濃度値の昇順又は降順に第2方向に沿って配置される。
図2には、第2方向の一方の端から他方の端に向かって、濃度パターンCPの濃度値が大きくなる濃度ステップパターンSPを例示する。
【0103】
図2には、8段階の濃度値が適用される濃度ステップパターンSPを例示するが、濃度値の数は、濃度値ゼロを含めて2以上であればよく、ゼロ以外の濃度値は1以上でもよい。濃度ステップパターンSPの最小濃度値は、ラインマークLMにおける中心ライン部LMCの濃度値としてもよい。濃度ステップパターンSPの最高濃度値は、ラインマークLMにおける周辺ライン部LMPの濃度値としてもよい。
【0104】
〔スキャン構成〕
画像センサISは、印刷媒体へ印刷されたテストチャートTC1をスキャンして、テストチャートTC1のスキャン画像を作成する。以下、スキャン画像は、テストチャートのスキャン画像と読み替えてもよい。
【0105】
画像センサISは、センサ素子が1列に並べられる構造を有するラインセンサであってもよいし、センサ素子が2次元状に並べられる構造を有する2次元センサであってもよい。ラインセンサは価格面で有利である。
【0106】
ラインヘッドが用いられる幅広印刷では、1つの画像センサISを用いて印刷媒体の全幅をスキャンできない場合があり得る。幅広印刷の場合は、複数の画像センサを備え、複数の画像センサのそれぞれに異なる領域のスキャンを担当させ、複数の画像センサを用いて印刷媒体の全幅分のスキャン画像を取得し得る。
【0107】
複数の画像センサISが用いられる場合、第1方向に隣り合う画像センサISの間において、第1方向のスキャン領域を部分的にオーバーラップさせる。
図2には、2つの画像センサISについて、矢印線を用いて示すスキャンのオーバーラップ領域が設定される場合を図示する。
【0108】
〔アライメントマークのサイズ〕
一般に、アライメントマークAMのサイズは、相対的に大きい方がアライメントマークAMの検出率は向上しやすい。アライメントマークAMの検出率とは、アライメントマークAMの検出が試行された数に対する、アライメントマークAMが正しく検出された数の比である。
【0109】
テストチャートTC1の印刷において、滲みやすいインクと媒体との組み合わせが使用される場合、及びスジなどの欠陥が多い印刷の場合、アライメントマークAMのサイズが相対的に小さいと、アライメントマークAMの特徴を表現する情報の不足が懸念される。一方、アライメントマークAMのサイズを相対的に大きくし過ぎると、テストチャートTC1が巨大化するなどのデメリットが生じ得る。したがって、アライメントマークのサイズが、パラメータを用いて調整自在に構成され、印刷装置及び印刷条件に応じてアライメントマークのサイズが調整される態様が好ましい。アライメントマークの調整の詳細は後述する。
【0110】
〔アライメントマークの縦横比〕
アライメントマークAMの検出処理は、スキャン画像のアライメントマーク部に対して実施される。よって、アライメントマークAMの縦横比は、スキャン画像のアライメントマーク部において適切な縦横比となることが好ましい。例えば、アライメントマークAMの検出処理にとって、アライメントマークAMの縦横比が1対1であることが好ましい場合では、印刷解像度の縦横比とスキャン解像度の縦横比とが異なる場合、スキャン画像のアライメントマーク部の縦横比が1対1となるテストチャートTC1を構成する必要がある。
【0111】
例えば、印刷解像度が1200×1200ドット毎インチであり、スキャン解像度が100×600ドット毎インチの場合、テストチャートTC1として構成されるアライメントマークAMの縦横比は6対1とすることが好ましい。
【0112】
上記のようにアライメントマークAMの縦横比を規定すると、スキャン画像のアライメントマーク部における縦横比が1対1とされる。なお、上記した印刷解像度及びスキャン解像度は、第2方向の解像度×第1方向の解像度という形式を用いて表されている。なお、
図2に示すテストチャートTC1は、第1テストチャートの一例である。
【0113】
〔アライメントマーク及びラインマークの具体例〕
図3は
図2に示すアライメントマーク及びラインマークの具体例を示す図である。
図3に示すアライメントマークAMは、ArUcoマーカに準拠したパターン形状を有する。すなわち、第1方向を横方向とし、第2方向を縦方向とする場合に、アライメントマークAMは、縦横比が1対1の縦横比を有するArUcoマーカが、第2方向について6倍に引き延ばされ、縦横比が6対1とされる。
【0114】
図3に示すラインマークLMは、アライメントマークAMと同一の縦横比が適用され、6対1の縦横比を有する。同図に示すラインマークLMは、第1方向における中心ライン部LMCと周辺ライン部LMPとの比が1対12とされる。
【0115】
第1方向における中心ライン部LMCに対する周辺ライン部LMPの比が相対的に大きくされ、中心ライン部LMCが相対的に細くされると、中心ライン部LMCの位置精度が向上するが、中心ライン部LMCの認識が難しくなり得る。一方、第1方向における中心ライン部LMCに対する周辺ライン部LMPの比が相対的に小さくされ、中心ライン部LMCが相対的に太くされると、中心ライン部LMCの認識が容易になるが、中心ライン部LMCの位置精度が低下し得る。
【0116】
ラインマークLMについて、第1方向における中心ライン部LMCと周辺ライン部LMPとの比を調整できるユーザインターフェースが用意されるとよい。例えば、ディスプレイ装置へラインマークLMの調整画面を表示させ、キーボード及びマウス等の入力装置をオペレータが操作して、ラインマークLMの各種の条件が設定される。
【0117】
図4はラインマーク調整画面の一例を示す模式図である。同図に示すラインマーク調整画面1000は、ラインマークLMが拡大表示されるラインマーク表示領域1002が表示される。ラインマーク表示領域1002は、ラインマークLMの下部にスケール1004が表示される。ユーザ入力等に応じて、スケール1004の表示又は非表示が切り替え自在に構成されてもよい。
【0118】
ラインマーク調整画面1000は、中心ライン部LMCの濃度を設定する中心濃度設定部1010及び周辺ライン部LMPの濃度を設定する周辺濃度設定部1012が表示される。中心濃度設定部1010は、中心ライン部LMCの濃度を入力する中心濃度入力部1014が含まれる。中心濃度入力部1014は、プルダウンメニューを適用して中心ライン部LMCの濃度を入力し得る。中心濃度入力部1014は、濃度値を表す数値を入力する形式を適用してもよい。
【0119】
周辺濃度設定部1012は、周辺ライン部LMPの濃度を入力する周辺濃度入力部1016が含まれる。周辺濃度入力部1016は、中心濃度入力部1014と同様に構成し得る。
【0120】
ラインマーク調整画面1000は、ラインマークLMの縦横比を設定する縦横比設定部1020が表示される。縦横比設定部1020は、ラインマークLMの縦横比を入力する縦横比入力部1021が含まれる。縦横比入力部1021は、ラインマークLMの縦横比を表す数値を入力する形式を適用し得る。縦横比に適用される数値は整数であってもよいし、小数部を有する数値であってもよい。
【0121】
ラインマーク調整画面1000は、中心ライン部LMCの幅を設定する中心幅設定部1022が表示される。中心幅設定部1022は、中心ライン部LMCの幅を入力する中心幅入力部1023が含まれる。中心幅入力部1023は、中心ライン部LMCの幅を表す数値を入力する形式を適用し得る。中心ライン部LMCの幅は、第1方向における中心ライン部LMCの長さである。中心幅設定部1022は、1画素単位で中心ライン部LMCの幅を設定してもよい。
【0122】
ラインマーク調整画面1000は、周辺ライン部LMPの幅を設定する周辺幅設定部1024が表示される。周辺幅設定部1024は、周辺ライン部LMPの幅を入力する周辺幅入力部1025が含まれる。周辺幅入力部7025は、周辺ライン部LMPの幅を表す数値を入力する形式を適用し得る。周辺ライン部LMPの幅は、第1方向における周辺ライン部LMPの長さである。
【0123】
周辺ライン部LMPの幅は、中心ライン部LMCを挟む2つの周辺ライン部LMPのいずれかの第1方向における長さを適用し得る。中心ライン部LMCを挟む2つの周辺ライン部LMPの幅は同一でもよいし、異なっていてもよい。中心ライン部LMCを挟む2つの周辺ライン部LMPの幅が異なる場合、2つの周辺ライン部LMPのそれぞれについて幅を設定し得る。周辺幅設定部1024は、1画素単位で周辺ライン部LMPの幅を設定してもよい。
【0124】
ラインマーク調整画面1000は、ラインマークLMの数を設定するラインマーク数設定部1026が表示される。ラインマーク数設定部1026は、ラインマークLMの数を入力するラインマーク数入力部1027が含まれる。ラインマーク数入力部1027は、ラインマークLMの数を表す数値を入力する形式を適用し得る。
【0125】
ラインマーク調整画面1000は、ラインマークLMの間隔を設定する間隔設定部1028が表示される。間隔設定部1028は、ラインマークLMの間隔を入力する間隔入力部1029が含まれる。間隔入力部1029は、ラインマークLMの間隔を表す数値を入力する形式を適用し得る。間隔設定部1028は、1画素単位でラインマークLMの間隔を設定してもよい。
【0126】
ラインマークLMの間隔とは、第1方向において互いに隣接する2つのラインマークLMの間の距離である。2つのラインマークLMの間の距離は、2つのラインマークLMの中心間の距離を適用し得る。
【0127】
ラインマーク調整画面1000は、ラインマークLMの縦横比などの設定を確定させる設定ボタン1030及び設定をキャンセルするキャンセルボタン1032が表示される。設定ボタン1030が操作されると設定が確定し、キャンセルボタン1032が操作されると設定がキャンセルされる。
【0128】
なお、図示を省略するが、
図3に示すアライメントマークAMの縦横比等を調整できる構成も可能である。
図4に示すラインマーク調整画面1000と同様のアライメントマーク調整画面をディスプレイ装置へ表示させ、キーボード及びマウスなどの入力装置をオペレータが操作して、アライメントマークAMの各種の条件が設定される。
【0129】
図4に示すラインマーク調整画面1000は、
図2に示すテストチャートTC1を表すテストチャートデータを作成するテストチャートデータ作成装置に具備されるグラフィカルユーザインターフェースとして機能し得る。
【0130】
テストチャート作成装置に具備されるグラフィカルユーザインターフェースは、アライメントマークAMのパラメータ及びラインマーLMのパラメータの少なくともいずれかを調整し得る。
【0131】
アライメントマークAMのパラメータの例として、アライメントマークのサイズ、アライメントマークの縦横比、アライメントマークの濃度、アライメントマークの数及び隣接するアライメントマークの間隔などが挙げられる。
【0132】
また、ラインマーLMのパラメータのパラメータの例として、ラインマークのサイズ、ラインマークの縦横比、ラインマークの濃度、ラインマークの数及び隣接するラインマークの間隔などが挙げられる。
【0133】
ラインマーLMのパラメータのパラメータの他の例として、中心ライン部LMCの濃度、中心ライン部LMCの幅、周辺ライン部LMPの濃度及び周辺ライン部LMPの幅が挙げられる。
【0134】
テストチャートデータ作成装置は、コンピュータが適用される。テストチャートデータ作成装置は、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のメモリを備え、1つ以上のプロセッサは、1つ以上のメモリに記憶されるプログラムの命令を実行して、テストチャートデータ作成装置の各種の機能を実現する。
【0135】
なお、実施形態に記載のアライメントマークAMのパラメータは、アライメントマークパラメータの一例である。実施形態に記載のラインマークLMのパラメータは、ラインマークパラメータの一例である。実施形態に記載の中心ライン部LMCは、相対的に濃度値が低い低濃度部の一例である。実施形態に記載の周辺ライン部LMPは、低濃度部に対して濃度値が高い高濃度部の一例である。実施形態に記載の中心ライン部LMCの幅は、低濃度部の第1方向における長さの一例である。実施形態に記載の周辺ライン部LMPの幅は、高濃度部の第1方向における長さの一例である。
【0136】
〔テストチャートの変形例〕
インクジェットヘッドの構成に起因して、第2方向における任意の第1位置の第1方向の濃度分布が、第2方向における第1位置と異なる第2位置の濃度分布の影響を受けて変動することがあり得る。
【0137】
特に、インクジェットヘッドに具備される複数のノズル開口の物理的な配置が2次元に分布し、互いに異なる複数のノズル開口が、同一の共通流路と接続される場合に、クロストーク現象と呼ばれる上記の現象が起きやすい。
【0138】
クロストーク現象が発生する場合、アライメントマークAM等の濃度分布に起因して、アライメントマークAM等と近接する濃度ステップパターンSPの部分の濃度分布が影響を受けて疑似的な濃度ムラが発生し、疑似的な濃度ムラを過補正してしまう懸念がある。よって、アライメントマークAM等と濃度ステップパターンSPとは、第2方向について物理的に一定の距離を離しておくことが好ましい。
【0139】
図5は
図2に示すテストチャートの変形例を示す模式図である。同図に示すテストチャートTC2は、第2方向について、アライメントマークAM及びラインマークLMと、濃度ステップパターンSPとの間に非パターン部NPが設けられる。
図5には、2点鎖線を用いて非パターン部NPを図示する。
【0140】
図5に示す非パターン部NPは、第2方向について、クロストークの影響を無視できる程度に十分な長さが規定される。非パターン部NPの第2方向における長さは、ノズルが2次元状に配置されるインクジェットヘッドの構成に依存する。
【0141】
例えば、任意のノズル群が濃度パターンCPを印刷する期間において、他のノズル群がアライメントマークAM及びラインマークLMを印刷する場合があり得る。このような場合には、濃度パターンCPを印刷するノズル群と、アライメントマークAM等を印刷するノズル群とが、インクジェットヘッドの内部において同一の流路からインクの供給を受けると、濃度パターンCPの印刷はアライメントマークAM等の印刷の影響を受けることがある。同様に、アライメントマークAM等の印刷が濃度パターンCPの印刷の影響を受けることもある。
【0142】
アライメントマークAM及びラインマークLMは一様なパターンではないことから、濃度パターンCPの印刷が、本来の一様なパターンを印刷したにもかかわらず、アライメントマークAM等の印刷との相関を持った印刷をしてしまうことがあり得る。このような現象は、クロストークと称される。
【0143】
濃度パターンCPの印刷についてクロストークが発生している状態において、濃度パターンCPを用いて濃度補正を実施すると、濃度パターンCPの一様でないパターンがムラとして認識された結果、過補正を実施しまうおそれがある。
【0144】
濃度パターンCPを印刷する際は、少なくともムラ補正の特性を取得する方向である第1方向について、アライメントマークAM等の印刷が一様なパターンである状態とすることが好ましく、その方法として、第2方向について十分な長さを有する非パターン部NPが設けられる。
【0145】
非パターン部NPには、近接する濃度パターンCPと類似する濃度パターンCPを配置してもよい。例えば、非パターン部NPに対して、隣り合う濃度パターンCPと同一の濃度値が適用される濃度パターンCPが配置されてもよい。
【0146】
図5に示すテストチャートTC2は、
図2に示す画像センサISに具備されるレンズのフレアに対するロバストネスを向上させる意味でも有効である。第2方向における非パターン部NPの長さは、インクジェットヘッドの条件及び印刷媒体とインクとの組み合わせ等に応じて、適宜、規定し得る。第2方向における非パターン部NPの長さを調整するユーザインターフェースを用意してもよい。なお、
図5に示すテストチャートTC2は、第1テストチャートの一例である。
【0147】
[濃度ムラ補正データ作成の詳細]
図6は
図1に示す濃度ムラ補正データ更新処理工程の手順を示すフローチャートである。濃度ムラ補正データ更新処理工程は、アライメントマーク部検出工程S20、ラインマーク部中心位置推定工程S22、濃度データ推定工程S24及び濃度ムラ補正データ作成工程S26を含んで構成される。
【0148】
〔アライメントマーク部検出工程〕
アライメントマーク部検出工程S20では、スキャン画像に対して画像処理を施し、スキャン画像からアライメントマーク部を検出する。複数のアライメントマークAMはそれぞれの形状がユニークであり、検出されたアライメントマーク部の情報を用いて、理論位置とスキャン位置との対応関係を表す対応関係情報を取得し得る。対応関係情報は、第1方向の対応関係及び第2方向の対応関係が含まれ得る。なお、実施形態に記載のスキャン位置は、撮影位置の一例である。実施形態に記載のアライメントマーク部の検出情報を用いて対応関係情報を取得する工程は、対応関係情報取得工程の一例である。以下、対応関係情報の取得は、対応関係の取得と記載する場合がある。
【0149】
ここで、対応関係情報の取得とは、対応関係を算出する態様及び対応関係を推定する態様など、理論位置の情報とスキャン位置の情報とを用いて、対応関係を導出する概念が含まれ得る。また、理論位置とスキャン位置との対応関係の情報から、任意の座標に対して、理論位置とスキャン位置との対応関係を取得し得る。これにより、上記した問題点4を解決し得る。
【0150】
理論位置とは、テストチャートTC1におけるアライメントマークAMの理論上の位置及びテストチャートTC1におけるラインマークLMの理論上の位置の総称である。以下、テストチャートTC1におけるアライメントマークAMの理論上の位置と、テストチャートTC1におけるラインマークLMの理論上の位置とを区別して、アライメントマークAMの理論位置などと記載する場合がある。
【0151】
また、スキャン位置とは、スキャン画像におけるアライメントマーク部の現実の位置及びスキャン画像におけるラインマーク部の現実の位置の総称である。スキャン画像におけるアライメントマーク部の現実の位置と、スキャン画像におけるラインマーク部の現実の位置とを区別して、スキャンラインマーク部のスキャン位置などと記載する場合がある。
【0152】
理論位置とスキャン位置との対応関係は、アライメントマークAMの理論位置とアライメントマーク部のスキャン位置との対応関係、又はラインマークLMの理論位置とラインマーク部のスキャン位置との対応関係として把握し得る。アライメントマークAMの理論位置とアライメントマーク部のスキャン位置との対応関係は、粗い対応関係として把握される。ラインマークLMの理論位置とラインマーク部のスキャン位置との対応関係は、詳細な対応関係として把握し得る。実施形態に記載の粗い対応関係は粗対応関係の一例であり、詳細な対応関係は詳細対応関係の一例である。
【0153】
アライメントマーク部検出工程S20において、第1方向及び第2方向について、理論位置とスキャン位置との対応関係が取得されると、ラインマーク部中心位置推定工程S22が実行される。なお、実施形態に記載のアライメントマーク部検出工程S20は、アライメントマーク検出工程の一例である。
【0154】
〔検出が必要なアライメントマークの数〕
X方向及びY方向が規定される2次元座標系において、粗い対応関係を求めるには、2本の線形独立のベクトルが定義できる情報量が必要である。すなわち、1つの画像センサISについて、方向が異なる3つ以上のアライメントマークAMの検出が必要である。一方、より多くのアライメントマークAMを検出してもよく、多数のアライメントマークAMが検出される場合、各アライメントマークAMの位置から最小二乗的に対応関係を求め得る。また、各アライメントマークAMの位置から区分補完的に対応関係を求めてもよい。多数のアライメントマークAMが検出される場合は、対応関係の精度を向上し得る。なお、実施形態に記載の各アライメントマークAMの位置は、アライメントマークごとの位置の一例である。
【0155】
〔アライメントマーク基準位置の定義〕
粗い対応関係を取得するにあたり、1つのアライメントマークAMのどの位置を規準にするかを決める必要がある。一例として、アライメントマークAMの上下左右の中心位置を基準位置とすることができる。上下左右の中心位置は、上下左右とは互いに直交する2方向として把握し得る。
【0156】
他の例として、アライメントマークAMにおけるコーナー部のいずれかを基準位置とすることができる。コーナー部の例として、アライメントマークAMの外形が四角形の場合の四角形の頂点が挙げられる。このように、基準位置は様々な定義が可能である。
【0157】
〔スキャンマーク位置の取得〕
理論位置に関しては理論的に計算が可能であるが、スキャン位置に関しては、スキャン画像から推定する必要がある。スキャン画像は、
図2に示す画像センサISを用いて、テストチャートTC1をスキャンして得られるスキャ輝度画像である。
【0158】
アライメントマークAMの基準位置が上下左右の中心位置とされる場合、例えば、スキャン画像において、アライメントマーク部の重心位置を求め、アライメントマーク部の重心位置からアライメントマーク部の基準位置を推定できる。或いは、エッジ検出処理などの画像処理を実施して、アライメントマーク部の複数のエッジ及び複数のコーナーを推定した上で、複数のエッジの中点又は複数のコーナーの中点を求め、複数のエッジの中点等からアライメントマーク部の基準位置を推定できる。
【0159】
〔対応関係の精度〕
スキャン位置の推定精度は、対応関係の精度に影響する。例えば、スキャン位置を画像センサISの解像度レベルで推定する場合、対応関係の精度は画像センサISの解像度レベル以下となる。仮に、アライメントマークAMを用いて求められる粗い対応関係をベースに濃度ムラ補正データが作成される場合、上記した問題点1-Aから問題点1-Dまでに記載のように、濃度ムラ補正データの精度の不足が懸念される。一方、本実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成方法では、高精度が必要とされる第1方向における対応関係は、ラインマークLMを用いて求められる詳細な対応関係を用いて求められる。
【0160】
〔ラインマーク部中心位置推定工程〕
ラインマーク部中心位置推定工程S22では、アライメントマーク部検出工程S20において取得された粗い対応関係を用いて、スキャン画像におけるラインマーク部の中心位置が推定される。なお、実施形態に記載のラインマーク部中心位置推定工程S22は、ラインマーク位置推定工程の一例である。
【0161】
具体的には、アライメントマーク部検出工程S20において粗い対応関係が取得されているので、スキャン画像からラインマーク部の個別の検出を行わずに、ラインマーク部のおおよその位置を特定し得る。ラインマーク部のおおよその位置とは、画像センサISの解像度レベルのラインマーク部の位置である。よって、ラインマークLMは全て同一の形状を有していてもよい。
【0162】
スキャン画像のラインマーク部に対して実施される処理は、第1方向におけるラインマーク部の位置の推定を高精度に行い、第1方向に対する理論位置とスキャン位置との詳細な対応関係を得るものである。理論位置は、媒体に規定される座標を適用して表現され得る。スキャン位置は、理論位置とスキャン位置との対応関係を用いて理論位置から推定される。
【0163】
ラインマーク部の中心位置の推定精度は、アライメントマーク部の位置の推定精度と比較して高い精度が必要とされる。ラインマーク部の中心位置の推定精度は、スキャン画像の解像度よりも高い解像度で推定できる必要がある。高い解像度の推定方法は各種の方法が考えられるが、高い解像度の推定方法として、以下の手順を適用し得る。
<1>
スキャン画像のラインマーク部に対して、第2方向について平均処理又は積算処理を施して、1次元データへ変換する。
<2>
1次元データに対して、ぼかしフィルタを用いるぼかしフィルタ処理を施す。
<3>
ぼかし処理が施されたデータの輝度ピーク位置を求める。輝度ピーク位置の導出は、スキャン解像度レベルの精度で実施される。
<4>
ピーク位置と、ピーク位置の前後の位置との輝度勾配情報を用いて、サブピクセルレベルで詳細なピーク位置を推定する。
【0164】
〔ラインマークの数〕
ラインマークLMの数が多いほど詳細な対応関係の精度を向上させ得るので、基本的にはラインマークLMの数が多いほどよい。ラインマークLMの数及び第1方向におけるラインマークLMの間隔などを設定自在に構成し、第1方向におけるラインマークLMの間隔などを、適宜、設定できることが好ましい。ラインマークの数等を設定するユーザインターフェースの例として、
図4にラインマーク調整画面1000を図示する。
【0165】
〔中心ライン部の幅〕
ラインマークLMにおける中心ライン部LMCの幅を設定自在に構成し、ラインマークLMにおける中心ライン部LMCの幅を、適宜、設定できることが好ましい。例えば、滲みが相対的に大きくなる印刷媒体とインクとの組み合わせにおいて、中心ライン部LMCの幅が相対的に小さくされると、インクの滲みに起因する中心ライン部LMCの消失が懸念される。中心ライン部LMCの幅を、適宜、設定し、中心ライン部LMCの消失等を回避し得る。
【0166】
〔濃度データ推定工程〕
濃度データ推定工程S24では、第1方向に対しては詳細な対応関係が用いられ、かつ、第2方向に対しては粗い対応関係が用いられ、濃度ステップパターンSPの各濃度パターンCPからノズルごとの濃度値が推定される。ノズルごとの濃度値は、第1方向における位置ごとの濃度値に対応する。
【0167】
具体的には、各濃度パターンCPに対して、ノズルごとの1点の第1方向の理論位置をスキャン位置から求める。求められた第1方向の理論位置に対して、スキャン画像を第2方向に濃度ごとに濃度パターンCPの領域内で平均又は演算して、各ノズルの濃度パターンCPごとの濃度値が推定される。
【0168】
〔画像変形を伴わない処理〕
特許文献1に記載の装置では、テストパターンのスキャン画像を2次元的に変形させている。上記の問題点2に記載のように、画像変形は演算のリソースの消費及び演算時間の増加などの問題が発生し得る。そこで、本実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成方法では、上記したように、各ノズルの濃度パターンCPごとの濃度値が推定される。これにより、演算の低リソース化が実現され、かつ、演算の高速化が実現される。なお、実施形態に記載の濃度パターンCPごとの濃度値は、濃度パターンごとの濃度値の一例である。
【0169】
〔濃度ムラ補正データ作成工程〕
濃度ムラ補正データ作成工程S26では、ノズルごとの入力階調値と出力濃度との関係を表す特性データから、第1方向の濃度分布を平坦とする入力階調値をノズルごとに求め、濃度ムラ補正データが作成される。作成された濃度ムラ補正データは、最新の濃度ムラ補正データとして記憶される。
【0170】
[第1実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成装置の構成例]
図7は第1実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成ハードウェア構成の例を概略的に示すブロック図である。濃度ムラ補正データ作成装置は、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のメモリを備えるコンピュータが適用される。コンピュータの形態は、サーバであってもよいし、パーソナルコンピュータであってもよく、ワークステーションであってもよく、また、タブレット端末などであってもよい。
【0171】
濃度ムラ補正データ作成装置100は、プロセッサ102、非一時的な有体物であるコンピュータ可読媒体104、通信インターフェース106及び入出力インターフェース108を備える。
【0172】
プロセッサ102はCPU(Central Processing Unit)を含む。プロセッサ102はGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。プロセッサ102は、バス110を介してコンピュータ可読媒体104、通信インターフェース106及び入出力インターフェース108と接続される。入力装置120及びディスプレイ装置122は入出力インターフェース108を介してバス110に接続される。
【0173】
コンピュータ可読媒体104は、主記憶装置であるメモリ112及び補助記憶装置であるストレージ114を含む。コンピュータ可読媒体104は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ装置等を適用し得る。コンピュータ可読媒体104は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。
【0174】
なお、ハードディスク装置は、英語表記のHard Disk Driveの省略語であるHDDと称され得る。ソリッドステートドライブ装置は、英語表記のSolid State Driveの省略語であるSSDと称され得る。
【0175】
濃度ムラ補正データ作成装置100は、通信インターフェース106を介してネットワークへ接続され、外部装置と通信可能に接続される。ネットワークは、LAN(Local Area Network)等を適用し得る。なお、ネットワークの図示を省略する。
【0176】
コンピュータ可読媒体104は、濃度ムラ補正データ更新プログラム130が記憶される。濃度ムラ補正データ更新プログラム130は、アライメントマーク部検出プログラム132、ラインマーク部中心推定プログラム134、濃度データ推定プログラム136及び濃度ムラ補正データ作成プログラム138が含まれる。
【0177】
濃度ムラ補正データ更新プログラム130は、
図6に示す各工程を実行して、濃度ムラ補正データを作成し、更新する機能を実現する。更新された最新の濃度ムラ補正データ150は、ストレージ114へ記憶される。更新前の濃度ムラ補正データは最新の濃度ムラ補正データ150とは別に、識別情報を付与して記憶されてもよい。
【0178】
アライメントマーク部検出プログラム132は、
図6に示すアライメントマーク部検出工程S20に適用される。ラインマーク部中心推定プログラム134は、ラインマーク部中心位置推定工程S22に適用される。濃度データ推定プログラム136は、濃度データ推定工程S24に適用される。濃度ムラ補正データ作成プログラム138は、濃度ムラ補正データ作成工程S26に適用される。
【0179】
コンピュータ可読媒体104へ記憶される各種のプログラムは、1つ以上の命令が含まれる。コンピュータ可読媒体104は、各種のデータ及び各種のパラメータ等が記憶される。
【0180】
濃度ムラ補正データ作成装置100は、プロセッサ102がコンピュータ可読媒体104へ記憶される各種のプログラムを実行し、濃度ムラ補正データ作成装置100おける各種の機能を実現する。なお、プログラムという用語はソフトウェアという用語と同義である。
【0181】
濃度ムラ補正データ作成装置100は、通信インターフェース106を介して外部装置とのデータ通信を実施する。通信インターフェース106は、USB(Universal Serial Bus)などの各種の規格を適用し得る。通信インターフェース106の通信形態は、有線通信及び無線通信のいずれを適用してもよい。
【0182】
濃度ムラ補正データ作成装置100は、入出力インターフェース108を介して、入力装置120及びディスプレイ装置122が接続される。入力装置120はキーボード及びマウス等の入力デバイスが適用される。ディスプレイ装置122は、濃度ムラ補正データ作成装置100に適用される各種の情報が表示される。例えば、ディスプレイ装置122は、
図4に示すラインマーク調整画面1000を表示し得る。
【0183】
ディスプレイ装置122は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプロジェクタ等を適用し得る。ディスプレイ装置122は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。なお、有機ELディスプレイのELは、Electro-Luminescenceの省略語である。
【0184】
ここで、プロセッサ102のハードウェア的な構造例として、CPU、GPU、PLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)が挙げられる。CPUは、プログラムを実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサである。GPUは、画像処理に特化したプロセッサである。
【0185】
PLDは、デバイスを製造した後に電気回路の構成を変更可能なプロセッサである。PLDの例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。ASICは、特定の処理を実行させるために専用に設計された専用電気回路を備えるプロセッサである。
【0186】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。各種のプロセッサの組み合わせの例として、1以上のFPGAと1以上のCPUとの組み合わせ、1以上のFPGAと1以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。各種のプロセッサの組み合わせの他の例として、1以上のCPUと1以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。
【0187】
1つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成してもよい。1つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する例として、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表される、SoC(System On a Chip)などの1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せを適用して1つのプロセッサを構成し、このプロセッサを複数の機能部として作用させる態様が挙げられる。
【0188】
1つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する他の例として、1つのICチップを用いて、複数の機能部を含むシステム全体の機能を実現するプロセッサを使用する態様が挙げられる。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。
【0189】
このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記した各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。更に、上記した各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0190】
コンピュータ可読媒体104は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の半導体素子を含み得る。コンピュータ可読媒体104は、ハードディスク等の磁気記憶媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体104は、複数の種類の記憶媒体を具備し得る。
【0191】
図8は
図7に示す濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。濃度ムラ補正データ作成装置100は、濃度ムラ補正データ取得部200、印刷データ作成部202及びスキャン画像作成部204を備える。
【0192】
濃度ムラ補正データ取得部200は、
図1に示す濃度ムラ補正データ取得工程S10を実行する。濃度ムラ補正データ取得部200は、濃度ムラ補正データ記憶部214から最新の濃度ムラ補正データを取得する。
【0193】
図7では、濃度ムラ補正データ記憶部214から取得される最新の濃度ムラ補正データの図示を省略する。最新の濃度ムラ補正データは、濃度ムラ補正データ150として
図6に図示する。また、
図8に示す濃度ムラ補正データ記憶部214は、
図7に示すストレージ114に含まれる。
【0194】
印刷データ作成部202は、印刷装置180を用いてテストチャート印刷工程S12を実行する。スキャン画像作成部204は、画像センサシステム190を用いてスキャン画像作成工程S14を実行する。
【0195】
濃度ムラ補正データ作成装置100は、アライメントマーク部検出部206、ラインマーク部中心推定部208、濃度データ推定部210、濃度ムラ補正データ作成部212及び濃度ムラ補正データ記憶部214を備える。
【0196】
アライメントマーク部検出部206は、
図7に示すアライメントマーク部検出プログラム132を実行して、
図6に示すアライメントマーク部検出工程S20の処理を実施する。ラインマーク部中心推定部208は、ラインマーク部中心推定プログラム134を実行して、ラインマーク部中心位置推定工程S22の処理を実施する。
【0197】
濃度データ推定部210は、濃度データ推定プログラム136を実行して、濃度データ推定工程S24の処理を実施する。濃度ムラ補正データ作成部212は、濃度ムラ補正データ作成プログラム138を実行して、濃度ムラ補正データ作成工程S26の処理を実施する。濃度ムラ補正データ作成部212は、濃度ムラ補正データ記憶部214へ濃度ムラ補正データを記憶する処理を実施する。
【0198】
図8に示す濃度ムラ補正データ取得部200及び印刷データ作成部202は、濃度ムラ補正データ作成装置100の外部装置に具備されてもよい。濃度ムラ補正データ作成装置100の外部装置の例として、印刷装置180の制御装置が挙げられる。
【0199】
[変形例に係る濃度ムラ補正データ作成装置]
図9は変形例に係る濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成のハードウェア構成の例を概略的に示すブロック図である。同図に示す濃度ムラ補正データ作成装置100Aは、
図7に示すメモリ112に代わりメモリ112Aが具備される。メモリ112Aに記憶される濃度ムラ補正データ更新プログラム130Aは、
図7に示す各種のプログラムに対して検出向上処理プログラム131が追加される。検出向上処理プログラムは、
図6に示すアライメントマーク部検出工程S20において実行される。
【0200】
図10は
図9に示す濃度ムラ補正データ作成装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図10に示す濃度ムラ補正データ作成装置100Aは、
図8に示す濃度ムラ補正データ作成装置100に対して、検出向上処理部205が追加される。
【0201】
検出向上処理部205は、検出向上処理プログラム131を実行して、スキャン画像からアライメントマーク部を検出する際に、アライメントマーク部に対して検出向上処理を実施する。以下に、検出向上処理の具体例を示す。なお、実施形態に示す検出向上処理が実施される工程は、検出向上処理工程の一例である。
【0202】
〔前処理に起因するアライメントマーク部検出率向上の第1例〕
例えば、シングルパス方式の印刷において、インクジェットヘッドに具備されるノズルに吐出不良が生じると、印刷画像にスジ欠陥が発生しやすく、アライメントマークAMにもスジ欠陥が発生する場合がある。アライメントマークAMにスジ欠陥が発生すると、スキャン画像におけるアライメントマーク部の検出に失敗する確率が相対的に高くなる。
【0203】
また、テストチャートTC1が印刷される印刷媒体にゴミ等が付着した状態でスキャン画像が作成されると、スキャン画像におけるアライメントマーク部の検出に失敗する確率が相対的に高くなる。そこで、スキャン位置の推定を行う前に、スキャン画像におけるアライメントマーク部の検出率の向上を目的として、各種の前処理を適用することができる。
【0204】
各種の前処理の例として、スキャン画像に対して予めぼかしフィルタを適用するフィルタ処理、メディアンフィルタ処理及びモルフォロジー処理が挙げられる。モルフォロジー処理の例として、オープニング処理及びクロージング処理が挙げられる。各種の前処理を実施することで、スジ欠陥等の印刷欠陥及びゴミ等の付着物などの、スキャン画像におけるアライメントマーク部の検出への影響を低減させることができる。
【0205】
〔前処理に起因するアライメントマーク部検出率向上の第2例〕
スキャン画像におけるアライメントマーク部の輝度コントラストは、アライメントマーク部の検出率に影響しやすい。一般に、輝度コントラストが相対的に低い場合は検出率が低下する。そこで、アライメントマーク部の輝度コントラストを強調した状態で、アライメントマーク部の検出を実施する。これにより、アライメントマーク部の検出率を向上し得る。
【0206】
但し、コントラスト強調処理を過度に掛け過ぎると、アライメントマーク部に白飛び及び黒潰れ等が発生し、検出率が低下するリスクがある。そこで、事前にアライメントマーク部の輝度コントラストを把握し、白飛び及び黒潰れ等が発生しない範囲でアライメントマーク部の輝度コントラストを強調することが好ましい。
【0207】
一方、アライメントマーク部の検出前は、アライメントマーク部の輝度コントラストの把握は困難である。かかる課題に対して、以下に手順を示すアライメントマーク部検出処理が有効である。
【0208】
図11はアライメントマーク部検出処理の手順を示すフローチャートである。同図に示すアライメントマーク部検出処理の手順は、アライメントマーク部検出方法の手順として把握し得る。同図に示すアライメントマーク部検出処理は、アライメントマーク部検出1に対応する第1検出工程S30、輝度コントラスト確認工程S32、輝度コントラスト強調工程S34及びアライメントマーク部検出2に対応する第2検出工程S36が含まれる。
【0209】
第1検出工程S30では、コントラスト強調を行わずにアライメントマーク部の検出を行う。第1検出工程S30において、2つ以上のアライメントマーク部が検出される。輝度コントラスト確認工程S32では、第1検出工程S30において検出された2つ以上のアライメントマーク部のそれぞれの輝度情報から、アライメントマーク部のそれぞれの輝度コントラストを確認する。輝度コントラスト確認工程S32では、アライメントマーク部に対してどの程度の輝度コントラストの強調が必要であるかが把握される。
【0210】
輝度コントラスト強調工程S34では、輝度コントラスト確認工程S32において確認されたアライメントマーク部の輝度コントラストに応じて、アライメントマーク部に対して適切な範囲の輝度コントラスト強調量を適用して、アライメントマーク部の強調処理を行う。
【0211】
第2検出工程S36では、輝度コントラスト強調工程S34においてアライメントマーク部に対して輝度コントラストが強調されたスキャン画像から、アライメントマーク部の検出を行う。第2検出工程S36では、第1検出工程S30と比較して、アライメントマーク部の検出率の向上が見込まれる。
【0212】
第2検出工程S36の後に、輝度コントラスト確認工程S32へ進み、輝度コントラスト確認工程S32及び輝度コントラスト強調工程S34を実行して、3回目のアライメントマーク部の検出を実行する2回目の第2検出工程S36を実行してもよい。
【0213】
すなわち、第2検出工程S36の後に、輝度コントラスト確認工程S32及び輝度コントラスト強調工程S34を実行して、アライメントマーク部の検出に対して最適なコントラスト強調の度合いを更に最適化してもよい。
【0214】
複数回に渡り、第2検出工程S36、輝度コントラスト確認工程S32及び輝度コントラスト強調工程S34を繰り返して、アライメントマーク部の輝度コントラスト強調の最適化を行ってもよい。
【0215】
〔アライメントマーク部検出率向上処理のスキャンマーク位置の推定精度への影響〕
アライメントマーク部の検出率向上処理は、アライメントマーク部の検出率を向上させる効果が得られるが、スキャン画像に対して何らかの処理が施されることに起因して、スキャン画像におけるアライメントマーク部の位置の推定精度を下げるリスクが存在する。しかし、実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成方法では、アライメントマーク部の位置の推定精度はさほど重要ではなく、仮に、アライメントマーク部の位置の推定精度が低下したとしても、全体の処理の問題とはならない。
【0216】
〔アライメントマーク部が検出されない画像センサの非使用化〕
濃度ムラ補正は、様々なサイズの印刷媒体に対して実施される可能性がある。印刷に使用される印刷媒体のサイズが相対的に小さく、複数の画像センサISが使用される場合、特定の画像センサISのみがテストチャートTC1のスキャンを行うことがあり得る。このような場合は、特定の画像センサISとは異なる他の画像センサISのスキャン画像からは、アライメントマーク部が検出されない。そこで、スキャン画像からアライメントマーク部が検出されない画像センサISを用いて作成されるスキャン画像は、以降の処理から除外され、ライメントマーク部が検出される画像センサISを用いて作成されるスキャン画像のみを用いて後続の処理が実施されるとよい。
【0217】
〔アライメントマーク部の検出の前処理のないスキャン画像に対する処理〕
アライメントマーク部の検出において実施される前処理は、ラインマーク部の中心位置の推定に悪影響を及ぼす可能性がある。よって、アライメントマーク部の検出における前処理が実施されていないスキャン画像を記憶しておき、前処理が非実施のスキャン画像を対象として、ラインマーク部の中心位置の推定を行うことが好ましい。前処理が非実施のスキャン画像に対して、ラインマーク部の中心位置の推定精度を高める前処理の実施は、もちろん構わない。なお、実施形態に記載の前処理が実施されていないスキャン画像は、検出向上処理が非処理のテストチャート撮影画像の一例である。
【0218】
〔精度の低いデータの除去〕
推定されたラインマーク部の中心位置の中には、テストチャートの印刷欠陥及びテストチャートのゴミ等の付着などの何らかの外乱に起因する精度が低いデータが紛れているリスクがある。そこで、アライメントマーク部に基づき求められる粗い対応関係を用いて、精度の低いデータであるか否かを判断し得る。以下に、精度の低いデータを検出する手順を示す。
<1>
粗い対応関係を適用して、各ラインマーク部の中心位置を推定する。
<2>
詳細な対応関係を適用して推定されたラインマーク部の中心位置と、粗い対応関係を適用して推定されたラインマーク部の中心位置とを比較する。
<3>
2種類のラインマーク部の中心位置の乖離が相対的に大きい場合は、詳細な対応関係を適用して推定されたラインマーク部の中心位置の精度が低いと判断する。
【0219】
一般に、粗い対応関係を適用して推定されるラインマーク部の中心位置は、詳細な対応関係を適用して推定されるラインマーク部の中心位置と比較して、外乱に対するロバストネスがよい。よって、上記した手順が適用される処理を実施して、精度の低いデータを検出し、詳細な対応関係を決定する処理から精度の低いデータを除外し得る。なお、実施形態に記載の2種類のラインマーク部の中心位置の乖離が相対的に大きい場合は、ラインマークごとの位置の差分が規定の範囲を超えるラインマークの一例である。
【0220】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成方法及び濃度ムラ補正データ作成装置は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0221】
〔1〕
アライメントマークAM及びラインマークLMを有するテストチャートのスキャン画像からアライメントマークAMに対応するアライメントマーク部を検出し、アライメントマーク部の検出結果を用いて、理論位置とスキャン位置との粗い対応関係を取得する。
【0222】
粗い対応関係を用いてラインマーク部の中心位置を推定し、理論位置とスキャン位置との詳細な対応関係を取得する。インクジェットヘッドのノズルの配置方向に対応する第1方向について、詳細な対応関係を用いて濃度ムラ補正データが作成される。
【0223】
これにより、印刷システムは、詳細な対応関係を用いて作成された濃度ムラ補正データを用いて、高精度の濃度ムラ補正を実施し得る。
【0224】
〔2〕
第1方向について、詳細な対応関係を取得する際に用いられるデータから、粗い対応関係を用いて精度が低いラインマーク部の中心位置のデータを除外する。これにより、詳細な対応関係の精度が向上し、詳細な対応関係が用いられる濃度ムラ補正データを高精度に作成し得る。
【0225】
〔3〕
アライメントマーク部の検出の際に、スキャン画像に対して検出向上処理が実施される。これにより、アライメントマーク部の検出におけるロバストネスが向上し得る。
【0226】
〔4〕
理論位置とスキャン位置との対応関係を用いてノズルごとの濃度推定が実施され、ノズルごとの濃度推定値を用いて濃度ムラ補正データが作成される。これによりの多くの演算リソースを消費し、かつ、処理時間が長い画像変形処理を実施せずに、濃度ムラ補正データを作成し得る。
【0227】
[第2実施形態]
〔ステップ濃度における媒体収縮が大きいケースへの対応〕
図12は濃度ムラ補正データ作成シーケンスの概要を示すフローチャートである。これまでの説明では、理論位置とスキャン位置との対応関係を表す対応関係データ300の取得は、1つの濃度ムラ補正データ生成シーケンスの中で実施されている。
【0228】
すなわち、
図12に示す濃度ムラ補正データ生成シーケンスにおいて、対応関係取得工程S40が実施され、理論位置とスキャン位置との対応関係を表す対応関係データ300が取得され、次工程の濃度ムラ補正データ作成工程S42が実施され、対応関係データ300を用いて、濃度ムラ補正データ302が作成される。
【0229】
しかし、上記した問題点3に示すように、理論位置とスキャン位置との対応関係がステップ濃度に応じて変動する場合があり得る。以下に説明する第2実施形態では、濃度ムラ補正データ生成シーケンスとは別に、対応関係取得シーケンスが用意される。なお、ステップ濃度とは、濃度ステップパターンSPの各濃度パターンCPに適用される濃度値である。なお、
図12に示すシーケンスは、第1シーケンスの一例である。
【0230】
〔対応関係取得シーケンスの導入〕
図13は濃度ムラ補正シーケンスとは別に対応関係取得シーケンスが導入される場合の手順を示すフローチャートである。同図に示すように、対応関係取得シーケンスでは、対応関係取得工程S40が実行され、対応関係データ300が取得され、対応関係データ300が記憶され、終了される。
【0231】
また、濃度ムラ補正データ生成シーケンスでは、予め、対応関係取得シーケンスにおいて取得された対応関係データ300を用いて濃度ムラ補正データ作成工程S42が実行され、濃度ムラ補正データ302が作成され、濃度ムラ補正データ302が記憶され、終了される。なお、
図13に示すシーケンスは、第2シーケンスの一例である。
【0232】
〔対応関係取得シーケンスにおおける第1方向の対応関係の取得〕
図14は
図13に示す対応関係取得シーケンスに適用されるテストチャートの模式図である。
図13に示す対応関係取得シーケンスでは、
図14に示すステップラインパッチSLPを含むテストチャートTC3が適用される。
【0233】
すなわち、
図14に示すテストチャートTC3は、
図1に示すテストチャートTC1の濃度ステップパターンSPに代わり、ステップラインパッチSLPが含まれる。ステップラインパッチSLPは、
図1に示す濃度ステップパターンSPに対してラインパターンLPが挿入されている。
【0234】
図13に示す対応関係取得シーケンスにおいて、
図14に示すステップラインパッチSLPに対応するスキャン画像におけるステップラインパッチ部の情報から、第1方向における詳細な対応関係の情報が取得される。第1方向における詳細な対応関係の情報は、ムラ補正データ作成シーケンスと類似の濃度位置で求められた理論位置とスキャン位置との対応関係であり、第1方向における詳細な対応関係の情報を適用して、濃度ムラ補正データ作成シーケンスにおいて、第1方向についてスキャン位置から理論位置を計算し得る。
【0235】
すなわち、第1方向における詳細な対応関係の情報が取得される際に、ラインマーク部の情報に代わり、ステップラインパッチ部の情報が使用される。これにより、上記した問題点3を解決し得る。
【0236】
図14には、濃度値ゼロが適用されるラインパターンLPを例示する。ラインパターンLPの濃度は、各濃度パターンCPとラインパターンLPとが区別できればよい。ラインパターンLPの濃度値を設定するユーザインターフェースを備える態様が好ましい。
【0237】
〔ステップラインパッチにおけるラインパターンの幅〕
ステップラインパッチSLPにおけるラインパターンLPの幅は、ステップ濃度に応じて、適宜、調整自在であることが好ましい。第1方向に延びるラインパターンLPの幅は、ラインパターンLPの第2方向の長さである。例えば、滲みが相対的に大きいインクと印刷媒体との組み合わせでは、ラインパターンLPの幅が相対的に小さい場合、滲みに起因するラインパターンLPの消失が懸念される。また、滲みの度合いはステップ濃度に応じて変動し得る。なお、
図14に示すテストチャートTC3は、第2テストチャートの一例である。
【0238】
〔シーケンス間でのズレの補正〕
濃度ムラ補正データ作成シーケンスとは別に、対応関係取得シーケンスが導入される、濃度ムラ補正シーケンスとが実施されるタイミングと、対応関係取得シーケンスが実施されるタイミングとが異なり、何らかの条件的差異に起因するズレが生じ得る。例えば、濃度ムラ補正データ作成シーケンスと対応関係取得シーケンスとの間で、画像センサISの周囲温度等の周囲環境が変化し、わずかに画像センサISの解像度に変動が生じ、結果としてスキャン画像の間にズレが生じ得る。
【0239】
また、濃度ムラ補正データ作成シーケンスと対応関係取得シーケンスとの間で、何らかの要因に起因して、インクジェットヘッドと画像センサISとの位置関係がメカ的に変動し、結果としてスキャン画像の間にズレが生じ得る。
【0240】
このようなズレに対するロバストネスの向上を目的として、濃度ムラ補正シーケンスと対応関係取得シーケンスとの間のズレを補正することが好ましい。各シーケンスに共通する画像情報を用いて、各シーケンス間のズレを補正し得る。例えば、
図14に示すラインマークLMは各シーケンスに共通する情報である。そこで、各シーケンスにおけるラインマークLMの位置情報の差が小さくなるように、第1方向における拡大処理情報、縮小処理情報及び平行移動処理情報を加味した上で、ステップラインパッチSLPを用いて取得される第1方向の詳細な対応関係が使用される。これにより、シーケンス間のズレに対するロバストネスを向上し得る。
【0241】
また、ステップラインパッチSLPの第1方向におけるエッジは、各シーケンスに共通する情報である。そこで、各シーケンスにおけるステップラインパッチSLPの第1方向におけるエッジの位置情報の差が小さくなるように、第1方向における拡大処理情報、縮小処理情報及び平行移動処理情報を加味した上で、ステップラインパッチSLPを用いて取得される第1方向の詳細な対応関係が使用される。これにより、シーケンス間のズレに対するロバストネスを向上し得る。
【0242】
〔複数の画像センサを備える場合〕
複数の画像センサISを備える場合、シーケンス間のズレは更に複雑になる。例えば、濃度ムラ補正データ作成シーケンスと対応関係取得シーケンスとの間において、複数の画像センサISの少なくとも一方の周囲温度等の周囲環境が変化し、わずかに画像センサISの解像度に変動が生じ、結果としてスキャン画像の間にズレが生じ得る。そうすると、複数の画像センサISのオーバーラップ領域のオーバーラップ量が変動し得る。
【0243】
複数の画像センサISのオーバーラップ領域のオーバーラップ量に変動が生じる場合、オーバーラップ領域に存在する各シーケンスに共通する情報を用いる補正が有効である。例えば、オーバーラップ領域に1つ以上のラインマークLMを配置しておき、シーケンス間におけるオーバーラップ量の変化量を更に加味した上で、ステップラインパッチSLPを用いて取得される第1方向の詳細な対応関係が使用される。これにより、シーケンス間のズレに対するロバストネスを向上し得る。
【0244】
できる限り多数のラインマークLMをオーバーラップ領域に配置しておき、オーバーラップ量の変化量を複数のラインマークLMの位置から統計的に求める。これにより、オーバーラップ量の変化量を更に高精度に求めることができる。統計的指標値として、算術平均値及び中央値等が挙げられる。なお、実施形態に記載のオーバーラップ量の変化量を更に加味した上で、ステップラインパッチSLPを用いて第1方向の詳細な対応関係が取得される工程は、オーバーラップ領域補正工程の一例である。
【0245】
〔複数のモードの用意〕
図12に示す濃度ムラ補正データ作成シーケンスが使用されるモードを第1モードとし、
図13に示す濃度ムラ補正データ作成シーケンスが使用されるモードを第2モードとする。第1モードは、濃度ムラ補正データ作成シーケンスの中で対応関係取得工程S40が実施されるので、別途、対応関係取得シーケンスを実施する必要がなく、濃度ムラ補正データの作成を簡易に実施し得るメリットを有する。一方、第1モードは、ステップ濃度ごとの用紙変形の違いに対するロバストネスが相対的に低いというデメリットを有する。
【0246】
第2モードは、ステップ濃度ごとの用紙変形の違いに対するロバストネスが相対的に高いというメリットを有する。一方、濃度ムラ補正データ作成シーケンスとは別に、事前に、対応関係取得シーケンスを実施する必要があり、濃度ムラ補正データの作成の簡易な実施が困難であるというデメリットを有する。
【0247】
したがって、濃度ムラ補正データ作成機能が印刷システムに組み込まれる場合、第1モードと第2モードとを準備しておき、必要に応じて第1モードと第2モードとが選択的に切り替えられる態様が好ましい。
【0248】
図15は複数のモードを備える場合の濃度ムラ補正データ作成方法の手順を示すフローチャートである。モード情報取得工程S100では、濃度ムラ補正データ作成におけるモード情報を取得する。モード情報取得工程S100では、
図7に示す入力装置120を用いてオペレータが入力したモード情報を取得し得る。
【0249】
モード情報取得工程S100では、印刷用紙の種類及びインクの種類などの印刷条件に応じたモード情報を自動的に取得してもよいし、環境温度等の環境条件に応じたモード情報を自動的に取得してもよい。モード情報取得工程S100において、モード情報が取得されると、モード判定工程S102へ進む。
【0250】
モード判定工程S102では、モード情報取得工程S100において取得されたモード情報が第1モードを表すか又は第2モードを表すかが判定される。モード判定工程S102において、第1モードを表すモード情報が取得される場合はNo判定となる。No判定の場合は
図12に示す濃度ムラ補正データ作成シーケンスが実行され、濃度ムラ補正データ302が作成され、記憶される。
【0251】
一方、モード判定工程S102において、第2モードを表すモード情報が取得される場合はYes判定となる。Yes判定の場合は
図13に示す対応関係取得シーケンスが実行され、対応関係データ300が取得され、記憶される。
【0252】
第2モードでは、予め実施された対応関係取得シーケンスにおいて取得された対応関係データ300を用いて、
図13に示す濃度ムラ補正データ作成シーケンスが実行され、濃度ムラ補正データ302が作成され、記憶される。なお、実施形態に記載のモード判定工程S102は、第1モードと第2モードとを選択的に切り替えるモード切替工程が含まれ得る。
【0253】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態に係る濃度ムラ補正データ作成方法及び濃度ムラ補正データ作成装置は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0254】
〔1〕
対応関係取得シーケンスにおいて、濃度ステップパターンに対して第1方向に延びるラインパタ-ンLPが追加され、ラインパタ-ン部の中心位置に基づき、詳細な対応関係が含まれる対応関係データ300が作成され、記憶される。これにより、印刷媒体の収縮に対して高いロバストネスを有する詳細な対応関係が取得される。
【0255】
〔2〕
濃度ムラ補正データ作成シーケンスとは別に、事前に対応関係取得シーケンスが実施され、対応関係データ300が取得される。濃度ムラ補正データ作成シーケンスは、予め取得される対応関係データ300を用いて濃度ムラ補正データが作成される。これにより、濃度ムラ補正データ作成シーケンスの簡易な実施が可能となる。
【0256】
〔3〕
濃度ムラ補正データ作成シーケンスに対応関係取得シーケンスが含まれる第1モードと、予め取得される対応関係データ300を用いて濃度ムラ補正データ作成される第1モードとが選択的に切り替えられる。これにより、印刷媒体の収縮が相対的に大きい場合に対応できる。また、印刷媒体の収縮が相対的に小さい場合は、濃度ムラ補正データ作成シーケンスが簡易に実施される。
【0257】
〔4〕
第2モードでは、対応関係取得シーケンスと濃度ムラ補正データ作成シーケンスとのシーケンス間の共通情報を用いて、シーケンス間の対応関係のズレが補正される。シーケンス間の共通情報は、濃度ステップパターンSPの第1方向のエッジ情報、ラインマークLM情報が利用される。これにより、印刷媒体の収縮が相対的に大きい場合であっても、高精度の濃度ムラ補正データの作成が実施される。
【0258】
〔5〕
第2モードにおいて、複数の画像センサISが具備される場合、ラインマーク部の情報を利用して、複数の画像センサISの撮影領域のオーバーラップ領域のズレが補正される。これにより、印刷媒体の収縮が相対的に大きい場合であっても、高精度の濃度ムラ補正データの作成が実施される。
【0259】
[テストチャートの変形例]
図16は変形例に係るテストチャートの模式図である。
図16に示すテストチャートTC4は、
図5に示すテストチャートTC2に対して、不良ノズル検出パターンNCPが追加される。なお、
図16には、
図5に示すテストチャートTC2に対して、不良ノズル検出パターンNCPが追加されたテストチャートTC4を例示するが、変形例に係るテストチャートTC4は、
図2に示すテストチャートTC1に対して、不良ノズル検出パターンNCPが追加される態様であってもよいし、
図14に示すテストチャートTC1に対して、不良ノズル検出パターンNCPが追加される態様であってもよい。
【0260】
図16には、不良ノズル検出パターンNCPの例として、インクジェットヘッドに具備される各ノズルを用いて描画された第2方向に伸びる複数のラインを含むラダーパターンを例示する。ラダーパターンは、
図16に示すラインと背景とを反転させた反転パターンであってもよい。
【0261】
すなわち、不良ノズル検出パターンNCPは、不良ノズル検出パターンNCPの解析情報に基づき、各ノズルについて正常であるか異常であるかが判断されればよい。例えば、撮影装置を用いて不良ノズル検出パターンNCPを撮影し、撮影データを解析して各ノズルの正常又は異常が判断されてもよい。
【0262】
図16に示す不良ノズル検出パターンNCPは、印刷媒体の第2方向における一方の端部に配置されている。不良ノズル検出パターンNCPは、印刷媒体の第2方向における他方の端部に配置されてもよいし、第2方向について、アライメントマークAM及びラインマークLMと、濃度ステップパターンSPとの間に配置されてもよく、任意の位置への配置が可能である。
【0263】
不良ノズル検出パターンNCPは、印刷媒体の複数の位置に配置されてもよい。例えば、不良ノズル検出パターンNCPは、印刷媒体の第2方向における一方の端部及び他方の端部に配置されてもよい。複数の不良ノズル検出パターンNCPが形成される場合、複数の不良ノズル検出パターンNCPの解析結果が総合的に判断され、各ノズルについて正常であるか異常であるかが判断されてもよい。
【0264】
不良ノズル検出パターンNCPの解析処理では、アライメントマークAMに基づく粗い対応関係を用いて、不良ノズル検出パターンNCPの解析対象データが切り出され、切り出された解析対象データが不良ノズル検出パターンNCPの解析処理部へ入力される。不良ノズル検出パターンNCPの解析対象データの切り出しは、ラインマークLMに基づく詳細な対応関係を用いて実施されてもよい。
【0265】
異常と判断された不良ノズルは、意図的にマスク処理が施される。不良ノズルの印刷位置は、不良ノズルの近傍の正常なノズルを用いて印刷がされる不吐出補正処理が実施される。なお、実施形態に記載の不良ノズル検出パターンNCPは、異常記録素子検出パターンの一例である。
【0266】
ここで、不良ノズルは、不吐出となるノズル及び吐出方向が大きく曲がるノズルなど、打滴位置及び打滴サイズが正常の範囲を超えるノズルである。不良ノズルは、不吐出ノズル、不吐ノズル及び異常ノズル等と称され得る。
【0267】
[インクジェット印刷システムへの適用例]
濃度ムラ補正データ作成方法及び濃度ムラ補正データ作成装置のインクジェット印刷システムへの適用例について説明する。
【0268】
〔インクジェット印刷システムの全体構成〕
図17は実施形態に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。同図に示すインクジェット印刷システム400は、シングルパス方式の印刷を適用して、印刷媒体へカラー画像を印刷するデジタル方式の印刷装置406が具備される。
【0269】
印刷媒体は、枚葉紙及び連続紙等の紙媒体を適用し得る。印刷媒体は布帛等の繊維が織られた構造を有していてもよい。印刷媒体は、ロール状に巻かれたロール紙を適用してもよい。印刷媒体は、印刷用紙及びプリント用紙などと称され得る。
【0270】
インクジェット印刷システム400は、印刷媒体供給装置402、第1中間搬送装置404、印刷装置406、第2中間搬送装置408、検査装置410、乾燥装置412及び集積装置414を備える。以下、各部について詳細に説明する。
【0271】
〔印刷媒体供給装置〕
印刷媒体が連続形態の場合、印刷媒体供給装置402は印刷媒体が巻かれたロールを収容するロール収容部を備える。印刷媒体が枚葉の形態の場合、印刷媒体供給装置402は印刷媒体が収容されるトレイを備える。印刷媒体供給装置402は、印刷装置406の印刷制御に対応して印刷媒体を第1中間搬送装置404へ供給する。印刷媒体供給装置402は、印刷媒体の姿勢を補正する補正機構を備え得る。
【0272】
〔第1中間搬送装置〕
第1中間搬送装置404は、印刷媒体供給装置402から供給された印刷媒体を印刷装置406へ受け渡す。第1中間搬送装置404は、印刷媒体の形態に応じた公知の構成を適用し得る。なお、印刷媒体供給装置402から第1中間搬送装置404へ向かう矢印線は印刷媒体の搬送方向である媒体搬送方向を表す。
【0273】
〔印刷装置〕
印刷装置406は、インクジェットヘッド420C、インクジェットヘッド420M、インクジェットヘッド420Y及びインクジェットヘッド420Kを備える。インクジェットヘッド420C、インクジェットヘッド420M、インクジェットヘッド420Y及びインクジェットヘッド420Kは、媒体搬送方向に沿って上流側から上記の記載の順に配置される。
【0274】
インクジェットヘッド420Cはシアンインクを吐出する。インクジェットヘッド420Mはマゼンタインクを吐出する。インクジェットヘッド420Yはイエローインクを吐出する。インクジェットヘッド420Kはブラックインクを吐出する。
【0275】
インクジェットヘッド420C等は、媒体搬送方向と直交する媒体幅方向であり、印刷媒体の印刷面に対して平行となる媒体幅方向について、印刷媒体の全長以上の長さにわたって複数のノズルが配置されるラインヘッドを適用し得る。ラインヘッドの構成例として、複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせた構成が挙げられる。インクジェットヘッド420C等に具備される複数のノズルはマトリクス配置等の2次元配置が適用される。
【0276】
インクジェットヘッド420C等は、吐出圧力を発生させる吐出圧力素子として、圧電素子を備える圧電吐出方式を適用し得る。インクジェットヘッド420C等は、インクの膜沸騰現象を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用し得る。
【0277】
印刷装置406は、シアンインク等のカラーインクを用いて印刷媒体へカラー画像を形成する。印刷装置406は、ホワイトインクを用いてカラー画像の背景画像となるホワイト画像を形成するインクジェットヘッドなど、シアンインク等のプロセスインク以外の特色インクを吐出させるインクジェットヘッドを備えてもよい。
【0278】
印刷装置406は印刷ドラム422を備える。印刷ドラム422は円筒形状を有し、中心軸を回転軸として回転自在に支持される。印刷ドラム422は周面に印刷媒体を支持する印刷媒体支持領域を備える。
【0279】
インクジェットヘッド420C等は、印刷ドラム422の周面に対してノズル面が対向する位置に配置され、かつ、印刷ドラム422の法線とノズル面の法線とが平行となる姿勢が適用される。
【0280】
印刷ドラム422の回転軸は、図示しない駆動機構を介して図示しないモータと接続される。モータを回転させると、印刷ドラム422は矢印線が示す方向へ回転する。印刷ドラム422を回転させると、印刷ドラム422の周面に支持される印刷媒体は、印刷ドラム422の回転方向に沿って搬送される。
【0281】
印刷ドラム422の周面の印刷媒体支持領域は、複数の吸着穴が形成される。複数の吸着穴は規定のパターンに基づき配置される。複数の吸着穴は図示しない吸着流路と連通する。吸着流路は図示しない吸着ポンプと接続される。吸着ポンプを動作させて複数の吸着穴に発生させた負圧を用いて印刷媒体は印刷ドラム422の周面に吸着支持される。
【0282】
印刷装置406における印刷媒体の搬送形態は、印刷ドラム422を用いた搬送形態に限定されない。例えば、搬送ベルトを用いた搬送形態及び複数のローラを用いた搬送形態などを適用可能である。
【0283】
印刷装置406は、インラインセンサ424を備える。
図1等に示す画像センサISは、
図17に示すインラインセンサ424を適用し得る。インラインセンサ424は、媒体搬送方向におけるインクジェットヘッド420Kの下流側の位置に配置される。インラインセンサ424は、印刷媒体へ印刷されるテストチャートを読み取り、テストチャートの読取信号を出力する。印刷装置406は、テストチャートの読取信号に基づき、インクジェットヘッド420C等に具備されるノズルの異常を検出する。
【0284】
インラインセンサ424は、印刷媒体へ印刷される画像を撮影するイメージセンサを備える。イメージセンサは、CCDイメージセンサ及びCMOSイメージセンサ等を適用し得る。インラインセンサ424は、媒体幅方向における印刷媒体の全幅に対応する撮影領域を有する。インラインセンサ424は、集光レンズ等の光学部材が具備されてもよい。なお、CCDはCharge Coupled Deviceの省略語である。CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの省略語である。
【0285】
〔第2中間搬送装置〕
第2中間搬送装置408は、印刷ドラム422から受け渡された印刷媒体を検査装置410へ受け渡す。第2中間搬送装置408は、第1中間搬送装置404と同様の構成を適用し得る。なお、第2中間搬送装置408に示す矢印線は、第2中間搬送装置408における媒体搬送方向を表す。
【0286】
〔検査装置〕
検査装置410は、印刷媒体へ印刷される印刷画像を撮影する撮影装置を備える。検査装置410は、印刷画像のスキャン画像を出力する。検査装置410は、印刷画像のスキャン画像に基づき、印刷画像における欠陥を検出し得る。なお、検査装置410に示す矢印線は、検査装置410における媒体搬送方向を表す。
【0287】
〔乾燥装置〕
乾燥装置412は、印刷画像を印刷済みの印刷媒体に対して乾燥処理を施す。乾燥装置412は、ヒータ及びファンを備え、印刷済みの印刷媒体に対して温風を吹き付ける構成を適用し得る。乾燥装置412は、印刷媒体を搬送する乾燥搬送部を備える。乾燥搬送部に適用される印刷媒体の搬送形態として、ドラム搬送、ベルト搬送及びローラ搬送など、公知の搬送形態を適用し得る。なお、乾燥装置412に示す矢印線は、乾燥装置412における媒体搬送方向を示す。
【0288】
〔集積装置〕
集積装置414は、乾燥装置412から受け渡された印刷媒体を収容する。印刷媒体が連続形態の場合、集積装置414は印刷媒体が巻き取られたロールを収容するロール収容部を備える。印刷媒体が枚葉の形態の場合、集積装置414は印刷媒体が収容されるトレイを備える。
【0289】
インクジェット印刷システム400は、インクに含有する色材を凝集又は不溶化する処理液が用いられる2液方式を適用してもよい。すなわち、インクジェット印刷システム400は、印刷前の印刷媒体に対して処理液を付与する処理液付与装置を備え、処理液付与装置が媒体搬送方向における印刷装置406の上流側の位置に配置される態様を適用し得る。
【0290】
処理液付与装置を備える態様では、印刷媒体へ付与された処理液を乾燥させる処理液乾燥装置が具備されてもよい。処理液乾燥装置は、媒体搬送方向における処理液付与装置の下流側の位置であり、媒体搬送方向における印刷装置406の上流側の位置に配置される。
【0291】
〔インクジェットヘッドの構成例〕
図18は
図17に示すインクジェットヘッドの構成例を示す斜視図である。
図17に示すインクジェットヘッド420C、インクジェットヘッド420M、インクジェットヘッド420Y及びインクジェットヘッド420Kは、同一の構成を適用し得る。ここでは、インクジェットヘッド420C等をインクジェットヘッド420と総称する。
【0292】
インクジェットヘッド420は、複数のヘッドモジュール430をインクジェットヘッド420の長手方向に沿って一列に繋ぎ合わせた構造を有する。複数のヘッドモジュール430は、ヘッドフレーム432を用いて一体化され支持される。
【0293】
インクジェットヘッド420は、媒体幅方向について印刷媒体の全幅に対応する長さに渡って複数のノズルが配置されるラインヘッドである。なお、
図17ではノズルの図示を省略する。ノズルは符号442を付して
図18に図示する。
【0294】
ヘッドモジュール430のノズル面430Aの平面形状は平行四辺形とされる。ヘッドフレーム432の両端はダミープレート434が取り付けられる。インクジェットヘッド420のノズル面430Aの平面形状は、ヘッドモジュール430とダミープレート434とを合わせて、全体として長方形となる。
【0295】
ヘッドモジュール430は、フレキシブル基板436が取り付けられる。フレキシブル基板436は、ヘッドモジュール430へ供給される駆動電圧を伝送する配線部材である。フレキシブル基板436は、一方の端がヘッドモジュール430と電気接続され、他方の端が駆動電圧供給回路と電気接続される。なお、駆動電圧供給回路の図示は省略する。
【0296】
インクジェットヘッド420に具備される複数のヘッドモジュール430のそれぞれは、インクジェットヘッド420の一方の端に配置されるヘッドモジュール430から順に、ヘッドモジュール430の位置を表すモジュール番号を対応付けることができる。
【0297】
図19は
図18に示すインクジェットヘッドのノズル配置例を示す平面図である。ヘッドモジュール430のノズル面430Aの中央部分は、帯状のノズル配置部440を備える。ノズル配置部440は、実質的なノズル面430Aとして機能する。
【0298】
ノズル配置部440は、複数のノズル442が配置される。ノズル442はノズル面430Aに形成されるノズル開口444が含まれる。ノズル442の構造例は後述する。以下の説明において、ノズル442の配置はノズル開口444の配置と読み替えてもよい。
【0299】
図19に示すヘッドモジュール430は、符号Xを付して図示する媒体幅方向に対して角度βの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、符号Yを付して図示する媒体搬送方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状とされる。
【0300】
ヘッドモジュール430は、V方向に沿う行方向及びW方向に沿う列方向について、複数のノズル442がマトリクス配置される。ノズル442は、媒体幅方向に沿う行方向及び媒体幅方向に対して斜めに交差する列方向に沿って配置されてもよい。
【0301】
複数のノズル442がマトリクス配置されるインクジェットヘッド420の場合、マトリクス配置における各ノズル442をノズル列方向に沿って投影した投影ノズル列は、ノズル列方向について最大の記録解像度を達成する密度で各ノズル442が概ね等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価なものと考えることができる。投影ノズル列は、マトリクス配置における各ノズル442をノズル列方向に沿って正射影したノズル列である。
【0302】
概ね等間隔とは、印刷装置において記録可能な打滴点として実質的に等間隔であることを意味している。例えば、製造上の誤差、及び着弾干渉による印刷媒体上での液滴の移動の少なくともいずれか一方を考慮して僅かに間隔を異ならせたものなどが含まれている場合も、等間隔の概念に含まれる。投影ノズル列は実質的なノズル列に相当する。投影ノズル列を考慮すると、ノズル列方向に沿って並ぶ投影ノズルの並び順に、各ノズル442にノズル位置を表すノズル番号を対応付けることができる。すなわち、複数のノズル442の実質的な配置方向は、媒体幅方向として把握される。
【0303】
なお、
図19には、複数のノズル442がマトリクス配置されるインクジェットヘッド420を例示したが、複数のノズル442は、1列配置が適用されてもよいし、2列のジグザク配置が適用されてもよい。
【0304】
媒体幅方向における実質的なノズル442の密度は、媒体幅方向における印刷解像度に対応する。媒体幅方向における印刷解像度の一例として、1200ドット毎インチが挙げられる。1インチあたりのドット数を表すドット毎インチは、Dot Per Inchの省略語を用いてdpiと称され得る。
【0305】
〔インクジェット印刷システム電気的構成〕
図20は
図17に示すインクジェット印刷システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
図17に示すインクジェット印刷システム400は、
図20に示す制御装置450を備える。制御装置450は、プロセッサを備えるコンピュータが適用される。
【0306】
制御装置450は、各種のプログラムを実行して、インクジェット印刷システム400の各部の動作制御を実施する。制御装置450は、システム制御部451、搬送制御部452、印刷制御部454、乾燥制御部456及び検査制御部458を備える。
【0307】
システム制御部451は、搬送制御部452等の各種の制御部を統括的に制御する全体制御部として機能する。システム制御部451は、メモリ470等の記憶装置に対するデータの読み出し及びデータの記憶を制御するメモリコントローラとして機能する。
【0308】
搬送制御部452は、システム制御部451から送信される指令信号に基づき、搬送装置460の動作を制御する。すなわち、搬送制御部452は、予め設定される媒体搬送条件に基づき搬送装置460を動作させ、印刷媒体の搬送制御を実施する。
【0309】
図20に示す搬送装置460は、
図17に示す第1中間搬送装置404、第2中間搬送装置408、印刷ドラム422、検査装置410に具備される検査搬送装置、乾燥装置412に具備される乾燥搬送装置が含まれる。また、搬送装置460は、
図17に示す印刷媒体供給装置402及び集積装置414が含まれてもよい。
【0310】
印刷制御部454は、システム制御部451から送信される指令信号に基づき、印刷装置406の動作を制御する。すなわち、印刷制御部454は、予め設定される印刷条件に基づき印刷装置406を動作させて、印刷媒体への印刷を制御する。
【0311】
印刷制御部454は、画像処理部を備える。画像処理部は、印刷データに対して色分解処理、色変換処理及びハーフトーン処理を実施して、印刷用のドットデータを生成する。画像処理部は、濃度ムラ補正処理及び不吐補正処理等の各種の補正処理を実施する。濃度ムラ補正処理は、濃度ムラ補正データ作成装置100を用いて作成され、濃度ムラ補正データ記憶部214へ記憶される濃度ムラ補正データを用いて、ノズルごとに濃度ムラ補正処理を行う。
【0312】
印刷制御部454は、色ごとのハーフトーンデータに基づき、インクジェットヘッド420へ供給される駆動電圧を生成する駆動電圧生成部を備える。印刷制御部454は、インクジェットヘッド420へ供給さされる駆動電圧を出力する駆動電圧出力部を備える。駆動電圧出力部は電力増幅回路が含まれる。
【0313】
印刷制御部454は、吐出制御部を備える。吐出制御部は、画像処理部を用いて生成されるドットデータから、ノズルごとの吐出タイミングが規定される吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部は、予め生成され記憶される駆動波形データを用いて、駆動電圧に適用される駆動波形信号を生成する。
【0314】
印刷制御部454は、ヘッド駆動回路を備える。ヘッド駆動回路は、駆動波形信号を用いてインクジェットヘッド420に具備されるノズルごとの圧電素子へ供給される駆動電圧を生成する。ヘッド駆動回路は、ノズルごと圧電素子のオンオフを制御する吐出タイミング信号を生成する。ヘッド駆動回路は、ノズルごと圧電素子のそれぞれに対して、規定の吐出タイミングにおいて駆動電圧を供給する。
【0315】
乾燥制御部456は、システム制御部451から送信される指令信号に基づき、乾燥装置412の動作を制御する。すなわち、乾燥制御部456は、予め設定される乾燥条件に基づき乾燥装置412を動作させて、印刷媒体への乾燥処理を制御する。
【0316】
検査制御部458は、システム制御部451から送信される指令信号に基づき、検査装置410の動作を制御する。すなわち、検査制御部458は、予め設定される検査条件に基づき検査装置410を動作させて、印刷物の検査を制御する。検査制御部458は、印刷物の検査結果をシステム制御部451へ送信する。システム制御部451は、印刷物の検査結果に応じて、搬送制御部452等の各種の制御部へ、印刷物の検査結果に応じた動作の指令信号を送信する。
【0317】
制御装置450は、メモリ470を備える。メモリ470は、制御装置450が使用するプログラム、パラメータ及びデータが記憶される。システム制御部451は、メモリ470へ記憶される各種プログラムを読み出して実行し、インクジェット印刷システム400の各種の機能を実現する。システム制御部451は、各種プログラムを実行する際に必要なパラメータ及びデータをメモリ470から読み出す。
【0318】
システム制御部451は、インクジェット印刷システム400に具備される各種のセンサ472から各種の検出情報を取得する。各種のセンサ472の例として、温度センサ及び印刷媒体の位置検出センサ等が挙げられる。システム制御部451は、取得した各種のセンサ情報に応じて、各種の制御部へ指令信号を送信する。
【0319】
図21は
図20に示す電気的構成のハードウェア構成の例を概略的に示すブロック図である。なお、
図21に示すプロセッサ502、通信インターフェース506、入出力インターフェース508、バス510、入力装置512及びディスプレイ装置514は、
図7に示すプロセッサ102、通信インターフェース106、入出力インターフェース108、バス110、入力装置120及びディスプレイ装置122と同様の構成要素であり、ここでの説明を、適宜、省略する。
【0320】
図21に示すコンピュータ可読媒体504は、
図7に示すコンピュータ可読媒体504と同様に、メモリ520及びストレージ522を備える。メモリ520は、インクジェット印刷システム400の各種の機能を実現させる各種プログラムが記憶される。また、ストレージ522は、各種のプログラムが実行される際に使用される各種のデータ及び各種のパラメータが記憶される。
【0321】
メモリ520は、搬送制御プログラム530、印刷制御プログラム532、乾燥制御プログラム534及び検査制御プログラム536が記憶される。搬送制御プログラム530は、
図20に示す搬送制御部452へ適用される。搬送制御プログラム530は、印刷媒体を搬送させる搬送装置460の機能を実現する。
【0322】
印刷制御プログラム532は、印刷制御部454へ適用される。印刷制御プログラム532は、印刷装置406の各種の機能を実現させる。乾燥制御プログラム534は、乾燥制御部456に適用される。乾燥制御プログラム534は、印刷済みの印刷媒体を乾燥させる乾燥装置412の機能を実現させる。検査制御プログラム536は、検査制御部458へ適用される。検査制御プログラム536は、印刷画像の検査を実施する検査装置410の機能を実現させる。
【0323】
メモリ520は、濃度ムラ補正データ更新プログラム130が記憶される。
図21に示す濃度ムラ補正データ更新プログラム130は、
図7に示す濃度ムラ補正データ更新プログラム130と同一である。メモリ520は、
図9に示す濃度ムラ補正データ更新プログラム130Aが記憶されてもよい。
【0324】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要素を変更、追加、又は削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0325】
100 濃度ムラ補正データ作成装置
100A 濃度ムラ補正データ作成装置
102 プロセッサ
104 コンピュータ可読媒体
106 通信インターフェース
108 入出力インターフェース
110 バス
112 メモリ
112A メモリ
114 ストレージ
120 入力装置
122 ディスプレイ装置
130 濃度ムラ補正データ更新プログラム
131 検出向上処理プログラム
132 アライメントマーク部検出プログラム
134 ラインマーク部中心推定プログラム
136 濃度データ推定プログラム
138 濃度ムラ補正データ作成プログラム
150 濃度ムラ補正データ
180 印刷装置
190 画像センサシステム
200 濃度ムラ補正データ取得部
202 印刷データ作成部
204 スキャン画像作成部
205 検出向上処理部
206 アライメントマーク部検出部
208 ラインマーク部中心推定部
210 濃度データ推定部
212 濃度ムラ補正データ作成部
214 濃度ムラ補正データ記憶部
300 対応関係データ
302 濃度ムラ補正データ
400 インクジェット印刷システム
402 印刷媒体供給装置
404 第1中間搬送装置
406 媒体搬送方向における印刷装置
406 印刷装置
408 第2中間搬送装置
410 検査装置
412 乾燥装置
414 集積装置
420 インクジェットヘッド
420C インクジェットヘッド
420K インクジェットヘッド
420M インクジェットヘッド
420Y インクジェットヘッド
422 印刷ドラム
424 インラインセンサ
430 ヘッドモジュール
430A ノズル面
432 ヘッドフレーム
434 ダミープレート
436 フレキシブル基板
440 ノズル配置部
442 ノズル
444 ノズル開口
450 制御装置
451 システム制御部
452 搬送制御部
454 印刷制御部
456 乾燥制御部
458 検査制御部
460 搬送装置
470 メモリ
472 センサ
502 プロセッサ
504 コンピュータ可読媒体
506 通信インターフェース
508 入出力インターフェース
510 バス
512 入力装置
514 ディスプレイ装置
520 メモリ
522 ストレージ
530 搬送制御プログラム
532 印刷制御プログラム
534 乾燥制御プログラム
536 検査制御プログラム
1000 ラインマーク調整画面
1002 ラインマーク表示領域
1004 下部にスケール
1010 中心濃度設定部
1012 周辺濃度設定部
1014 中心濃度入力部
1016 周辺濃度入力部
1020 縦横比設定部
1021 縦横比入力部
1022 中心幅設定部
1023 中心幅入力部
1024 周辺幅設定部
1025 周辺幅入力部
1026 ラインマーク数設定部
1027 ラインマーク数入力部
1028 間隔設定部
1029 間隔入力部
1030 設定ボタン
1032 キャンセルボタン
AM アライメントマーク
CP 濃度パターン
IS 画像センサ
LM ラインマーク
LMC 中心ライン部
LMP 周辺ライン部
LP ラインパターン
NCP 不良ノズル検出パターン
NP 非パターン部
S20からS26 濃度ムラ補正データ更新処理の各工程
S40からS42 濃度ムラ補正データ生成シーケンスの各工程
S100からS102 複数のモードを備える場合の濃度ムラ補正データ作成方法の各工程