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特開2024-33599光学装置、投写型表示装置、および光学系
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033599
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光学装置、投写型表示装置、および光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20240306BHJP
   G02B 13/16 20060101ALI20240306BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240306BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240306BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/16
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137265
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永利 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】古林 琢
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087KA07
2H087LA27
2H087NA02
2H087PA10
2H087PA12
2H087PA13
2H087PA15
2H087PA16
2H087PA17
2H087PB13
2H087PB15
2H087PB18
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA14
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA37
2H087QA38
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA36
2H087RA41
2H087RA45
2H087RA48
2H087SA23
2H087SA24
2H087SA26
2H087SA29
2H087SA32
2H087SA43
2H087SA44
2H087SA47
2H087SA49
2H087SA53
2H087SA55
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA72
2H087SA76
2H087SB01
2H087SB03
2H087SB04
2H087SB12
2H087SB14
2H087SB21
2H087SB25
2H087SB26
2H087SB32
2H087SB33
2H087SB42
2H087SB43
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA24
2K203FA25
2K203FA34
2K203FA43
2K203FA62
2K203GC02
2K203GC14
2K203GC20
2K203HB17
2K203HB22
2K203HB25
2K203HB28
2K203MA35
(57)【要約】
【課題】非テレセントリックのレンズを用いながら、レンズシフト機能を備えた光学装置、この光学装置を備えた投写型表示装置、およびこの光学装置に用いられる光学系を提供する。
【解決手段】縮小側の画像表示面に表示される画像を拡大側に投写する光学装置であって、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とを含み、第1光学系は、縮小側に非テレセントリックな結像光学系であり、第2光学系は、縮小側にテレセントリックであり、第1光学系は第1鏡筒に収納され、第2光学系は第2鏡筒に収納され、第1光学系の最も拡大側の面から第2光学系の最も縮小側の面までの光路上の光学系を画像表示面に対してシフト可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小側の画像表示面に表示される画像を拡大側に投写する光学装置であって、
拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とを含み、
前記第1光学系は、縮小側に非テレセントリックな結像光学系であり、
前記第2光学系は、縮小側にテレセントリックであり、
前記第1光学系は第1鏡筒に収納され、前記第2光学系は第2鏡筒に収納され、
前記第1光学系の最も拡大側の面から前記第2光学系の最も縮小側の面までの光路上の光学系を前記画像表示面に対してシフト可能な光学装置。
【請求項2】
前記第1光学系と前記第2光学系とは共通の第1光軸を有する共軸系である請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第1光学系は交換可能に構成されている請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第1光学系と前記画像表示面との間の光学系は前記第2光学系のみであり、
前記第1光学系より縮小側に中間像が形成されている請求項2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第2光学系は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含む請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記第1光学系と前記画像表示面との間の光学系は前記第2光学系のみであり、
前記画像から前記光学装置に入射する最大画角の主光線は、前記第1光学系の最も縮小側の面より縮小側では前記第1光軸と交差しない請求項2に記載の光学装置。
【請求項7】
前記第2光学系より縮小側の光路上に第3光学系を含み、
前記第3光学系は、第2光軸を有する共軸系であり、
前記第1光軸と前記第2光軸とは平行であり、
前記第1光学系より縮小側に中間像が形成されている請求項2に記載の光学装置。
【請求項8】
前記第2光学系の最も拡大側の面から前記第2光学系の最も縮小側の面までの間に中間像が形成されている請求項7に記載の光学装置。
【請求項9】
前記第3光学系は第3鏡筒に収納され、
前記第2光学系は交換可能に構成されている請求項7に記載の光学装置。
【請求項10】
前記第3光学系は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含む請求項7に記載の光学装置。
【請求項11】
前記第1光学系と前記画像表示面との間の全ての光学系の合成横倍率をβとし、
βは、拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値とし、
前記光学装置が変倍光学系を含む場合はβは広角端における値とした場合、
0.25<|β|<2 (1)
で表される条件式(1)を満足する請求項1に記載の光学装置。
【請求項12】
前記第2光学系の縮小側に隣接する空気間隔において光軸との角度θ1がsinθ1=0.1を満たす軸上光線を第1軸上光線とし、前記第2光学系の拡大側に隣接する空気間隔における前記第1軸上光線と光軸との角度をθとし、
前記第2光学系の横倍率をβ2とし、
β2は、拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値とし、
前記第2光学系に含まれるレンズの総数をkとし、
1からkまでの自然数をiとし、
前記第2光学系の拡大側からi番目のレンズのd線に対する屈折率をNiとし、
前記第2光学系の拡大側からi番目のレンズの焦点距離をfiとし、
前記第2光学系の最も拡大側の面から前記第2光学系の最も縮小側の面までの光軸上の距離をDU2とし、
前記光学装置が変倍光学系を含む場合はθ、β2、およびDU2は広角端における値とした場合、
|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.2 (2)
【数1】

で表される条件式(2)および(3)を満足する請求項1に記載の光学装置。
【請求項13】
前記第2光学系の縮小側の最大像高をYmaxとし、
前記第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした前記第2光学系の最大像高でのサジタル像面までの光軸の方向の距離をSrとし、
前記第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした前記第2光学系の最大像高でのタンジェンシャル像面までの光軸の方向の距離をTrとし、
SrおよびTrについて、各々の前記基点より拡大側の距離の符号を負、各々の前記基点より縮小側の距離の符号を正とし、
前記光学装置が変倍光学系を含む場合はSr、Tr、およびYmaxは広角端における各値とした場合、
-10<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<20 (4)
|Sr-Tr|×1000/Ymax<30 (5)
で表される条件式(4)および(5)を満足する請求項1に記載の光学装置。
【請求項14】
0.4<|β|<1.5 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する請求項11に記載の光学装置。
【請求項15】
0≦|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.1 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する請求項12に記載の光学装置。
【請求項16】
【数2】

で表される条件式(3-1)を満足する請求項12に記載の光学装置。
【請求項17】
0<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<10 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する請求項13に記載の光学装置。
【請求項18】
0<|Sr-Tr|×1000/Ymax<20 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する請求項13に記載の光学装置。
【請求項19】
前記画像を出力するライトバルブと、
請求項1から18のいずれか1項に記載の光学装置とを備えた投写型表示装置。
【請求項20】
縮小側の画像表示面に表示される画像を拡大側に投写する光学装置に組み込まれる光学系であって、
縮小側に非テレセントリックで第1鏡筒に収納された結像光学系の縮小側の光路上に配置され、
縮小側にテレセントリックであり、
第2鏡筒に収納され、
前記結像光学系と一体的に前記画像表示面に対してシフト可能である光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、光学装置、投写型表示装置、および光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、投写光学系、および投写光学系を備えるプロジェクターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-20231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタルカメラ用の交換レンズのような市販レンズは、投写型表示装置に用いられる通常の投写用レンズに比べて、価格が安く、また、様々な仕様のものが容易に入手可能である。このため、市販レンズを投写用の交換レンズとして使用できれば、上記の利点を有する投写用レンズを実現することができる。
【0005】
一方、投写型表示装置は、画像表示素子に対して投写用レンズをシフトさせることによりスクリーン上での投写像の位置を調整可能にした機能(以下、レンズシフト機能という)を有するものが強く要望されている。投写型表示装置がこのレンズシフト機能を持つためには、投写用レンズがテレセントリックな構成を有することが求められる。
【0006】
しかしながら、上記のような市販レンズの大半は、非テレセントリックであるため、そのまま投写型表示装置に搭載しても、レンズシフト機能を有する投写型表示装置を実現することができない。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みなされたものであり、非テレセントリックのレンズを用いながら、レンズシフト機能を備えた光学装置、この光学装置を備えた投写型表示装置、およびこの光学装置に用いられる光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、縮小側の画像表示面に表示される画像を拡大側に投写する光学装置であって、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とを含み、第1光学系は、縮小側に非テレセントリックな結像光学系であり、第2光学系は、縮小側にテレセントリックであり、第1光学系は第1鏡筒に収納され、第2光学系は第2鏡筒に収納され、第1光学系の最も拡大側の面から第2光学系の最も縮小側の面までの光路上の光学系を画像表示面に対してシフト可能である。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、第1光学系と第2光学系とは共通の第1光軸を有する共軸系として構成されている光学装置である。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、第1光学系は交換可能に構成されている光学装置である。
【0011】
本開示の第4の態様は、第2の態様において、第1光学系と画像表示面との間の光学系は第2光学系のみであり、第1光学系より縮小側に中間像が形成されている光学装置である。
【0012】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、第2光学系は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含む光学装置である。
【0013】
本開示の第6の態様は、第2の態様において、第1光学系と画像表示面との間の光学系は第2光学系のみであり、画像から光学装置に入射する最大画角の主光線は、第1光学系の最も縮小側の面より縮小側では第1光軸と交差しない光学装置である。
【0014】
本開示の第7の態様は、第2の態様において、第2光学系より縮小側の光路上に第3光学系を含み、第3光学系は、第2光軸を有する共軸系であり、第1光軸と第2光軸とは平行であり、第1光学系より縮小側に中間像が形成されている光学装置である。
【0015】
本開示の第8の態様は、第7の態様において、第2光学系の最も拡大側の面から第2光学系の最も縮小側の面までの間に中間像が形成されている光学装置である。
【0016】
本開示の第9の態様は、第7の態様において、第3光学系は第3鏡筒に収納され、第2光学系は交換可能に構成されている光学装置である。
【0017】
本開示の第10の態様は、第7の態様において、第3光学系は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含む光学装置である。
【0018】
本開示の第11の態様は、第1の態様において、第1光学系と画像表示面との間の全ての光学系の合成横倍率をβとし、βは、拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値とし、光学装置が変倍光学系を含む場合はβは広角端における値とした場合、
0.25<|β|<2 (1)
で表される条件式(1)を満足する光学装置である。
【0019】
本開示の第12の態様は、第1の態様において、第2光学系の縮小側に隣接する空気間隔において光軸との角度θ1がsinθ1=0.1を満たす軸上光線を第1軸上光線とし、第2光学系の拡大側に隣接する空気間隔における第1軸上光線と光軸との角度をθとし、第2光学系の横倍率をβ2とし、β2は、拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値とし、第2光学系に含まれるレンズの総数をkとし、1からkまでの自然数をiとし、第2光学系の拡大側からi番目のレンズのd線に対する屈折率をNiとし、第2光学系の拡大側からi番目のレンズの焦点距離をfiとし、第2光学系の最も拡大側の面から第2光学系の最も縮小側の面までの光軸上の距離をDU2とし、光学装置が変倍光学系を含む場合はθ、β2、およびDU2は広角端における値とした場合、
|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.2 (2)
【数1】

で表される条件式(2)および(3)を満足する光学装置である。
【0020】
本開示の第13の態様は、第1の態様において、第2光学系の縮小側の最大像高をYmaxとし、第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系の最大像高でのサジタル像面までの光軸の方向の距離をSrとし、第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系の最大像高でのタンジェンシャル像面までの光軸の方向の距離をTrとし、SrおよびTrについて、各々の基点より拡大側の距離の符号を負、各々の基点より縮小側の距離の符号を正とし、光学装置が変倍光学系を含む場合はSr、Tr、およびYmaxは広角端における各値とした場合、
-10<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<20 (4)
|Sr-Tr|×1000/Ymax<30 (5)
で表される条件式(4)および(5)を満足する光学装置である。
【0021】
本開示の第14の態様は、第11の態様において、
0.4<|β|<1.5 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する光学装置である。
【0022】
本開示の第15の態様は、第12の態様において、
0≦|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.1 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する光学装置である。
【0023】
本開示の第16の態様は、第12の態様において、
【数2】

で表される条件式(3-1)を満足する光学装置である。
【0024】
本開示の第17の態様は、第13の態様において、
0<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<10 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する光学装置である。
【0025】
本開示の第18の態様は、第13の態様において、
0<|Sr-Tr|×1000/Ymax<20 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する光学装置である。
【0026】
本開示の第19の態様は、画像を出力するライトバルブと、第1の態様から第18の態様のいずれか1つに記載の光学装置とを備えた投写型表示装置である。
【0027】
本開示の第20の態様は、縮小側の画像表示面に表示される画像を拡大側に投写する光学装置に組み込まれる光学系であって、縮小側に非テレセントリックで第1鏡筒に収納された結像光学系の縮小側の光路上に配置され、縮小側にテレセントリックであり、第2鏡筒に収納され、結像光学系と一体的に画像表示面に対してシフト可能である光学系である。
【0028】
なお、本明細書の「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的にパワーを有さないレンズ、並びに、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、およびプリズム等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0029】
本明細書の「レンズ群」は、レンズ以外に、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、およびプリズム等のレンズ以外の光学要素を含んでもよい。本明細書の「レンズ群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている「光軸上の距離」は、特に断りが無い限り、幾何学的距離である。
【0030】
本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「F線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)として扱う。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、非テレセントリックのレンズを用いながら、レンズシフト機能を備えた光学装置、この光学装置を備えた投写型表示装置、およびこの光学装置に用いられる光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態に係る光学装置の構成を示す概念図である。
図2】角度θおよびθ1を説明するための概念図である。
図3】第2実施形態に係る光学装置の構成を示す概念図である。
図4】第3実施形態に係る光学装置の構成を示す概念図である。
図5】実施例1の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図6】実施例1の光学装置の各収差図である。
図7】実施例1の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図8】実施例2の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図9】実施例2の光学装置の各収差図である。
図10】実施例2の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図11】実施例3の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図12】実施例3の光学装置の各収差図である。
図13】実施例3の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図14】実施例4-1の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図15】実施例4-1の光学装置の各収差図である。
図16】実施例4-1の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図17】実施例4-2の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図18】実施例4-2の光学装置の各収差図である。
図19】実施例4-2の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図20】実施例4-3の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図21】実施例4-3の光学装置の各収差図である。
図22】実施例4-3の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図23】実施例5の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図24】実施例5の光学装置の各収差図である。
図25】実施例5の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図26】実施例6の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図27】実施例6の光学装置の各収差図である。
図28】実施例6の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図29】実施例6の変形例の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図30】実施例7の光学装置の構成と光束を示す断面図である。
図31】実施例7の光学装置の各収差図である。
図32】実施例7の光学装置の第2光学系のみの各収差図である。
図33】一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図34】別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図35】さらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。
【0034】
図1に、本開示の一実施形態に係る光学装置1の構成の概念図を示す。図1は、本開示の第1実施形態に係る光学装置1の構成を示す概念図であるが、まず、図1を参照しながら基本構成と、この基本構成に付加可能な好ましい構成について説明する。基本構成は、後述の本開示の第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態に共通の構成である。図1では、左側を拡大側、右側を縮小側としている。
【0035】
光学装置1は、例えば、投写型表示装置に搭載されて、縮小側の画像表示面5aに表示される画像を拡大側の不図示のスクリーン上に投写する。画像表示面5aは、液晶表示素子又はDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス:登録商標)等の画像表示素子5が出力する画像が表示される面である。投写型表示装置においては、画像表示素子5はライトバルブとも呼ばれる。画像表示面5aから出射する光束は多数あるが、図1では最大画角の光束6のみを示している。画像表示面5aに表示される画像と、光学装置1によってスクリーン上に形成される投写像とは光学的に共役の関係にある。なお、本明細書において「スクリーン」は、光学装置1が形成する投写像が投写される対象物を意味する。スクリーンとしては、専用のスクリーンの他、部屋の壁面、床面、天井、および建物の外壁等でもよい。
【0036】
また、本明細書において、「拡大側」は光路上でのスクリーン側を意味し、「縮小側」は光路上での画像表示面5a側を意味する。本明細書では、「拡大側」および「縮小側」は、光路に沿って決められるものであり、この点は折り曲げられた光路を形成する光学系の場合も同様である。以下では、説明が冗長になるのを避けるため、「拡大側から縮小側へ光路に沿って順に」を「拡大側から縮小側へ順に」と記すことがある。
【0037】
光学装置1は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1と、第2光学系U2とを含む。第1光学系U1および第2光学系U2はそれぞれ、少なくとも1枚のレンズを含む。第1光学系U1および第2光学系U2は、複数のレンズを含む場合もあるが、図1では第1光学系U1および第2光学系U2を概念的に示している。
【0038】
第1光学系U1は、結像光学系である。第1光学系U1としては、例えば、デジタルカメラ用の交換レンズのような市販レンズを用いることができる。このような市販レンズは、安価であり、様々な仕様のものがあり、入手性が良いという長所を有する。
【0039】
光学装置1において、第1光学系U1は縮小側に非テレセントリックであり、かつ、第2光学系U2は縮小側にテレセントリックである。「第1光学系U1が縮小側に非テレセントリック」とは、図1に示すように、第1光学系U1から縮小側へ出射する主光線6cが光軸AX1と平行ではない状態を指す。「第2光学系U2は縮小側にテレセントリック」とは、図1に示すように、第2光学系U2から縮小側へ出射する主光線6cが光軸AX1と平行な状態を指す。但し、本明細書における「平行」は、完全な平行の他に、許容される誤差が含まれる略平行も含む。許容される誤差とは、光軸AX1に対する主光線6cの傾きが-5度以上かつ+5度以下の範囲内であり、より好ましくは-3度以上かつ+3度以下の範囲内である。主光線6cが定まらない光学系においては、光束の上側の最大光線と下側の最大光線との2等分角線を主光線6cの代用としてもよい。
【0040】
光学装置1では、第1光学系U1の最も拡大側の面から第2光学系U2の最も縮小側の面までの光路上の光学系を一体的に画像表示面5aに対してシフト可能なように構成されている。例えば、第1光学系U1から第2光学系U2までを一体的に光軸AX1に垂直な方向にシフト可能である。図1の第1光学系U1および第2光学系U2を囲む二点鎖線の枠と上下方向の矢印は、このシフトの動作を示す。このようにシフトさせることにより、スクリーン上での投写像の位置を調整することができる。
【0041】
第2光学系U2は縮小側にテレセントリックな構成とし、上記のようにシフトを行うことによって、光学装置1は、縮小側に非テレセントリックな第1光学系U1を用いながらも、レンズシフト機能を有することができる。仮に、第2光学系U2の縮小側が非テレセントリックな構成で、上記シフトを行うと、結像用の光束の一部が遮光される、所謂ケラレが生じてしまうことがある。ケラレが生じた状態では、良好な投写像が得られず、実質、レンズシフト機能を備えているとは言えない。これに対して、光学装置1では、第2光学系U2は縮小側にテレセントリックであるため、上記のようにシフトを行っても、ケラレが生じることがなく、良好な投写像を得ることができる。
【0042】
なお、図1では、第1光学系U1と第2光学系U2とは連続的に配置されているが、本開示においては、第1光学系U1と第2光学系U2との間にパワーを有しない光学部材が配置されていてもよい。パワーを有しない光学部材とは、例えば、平面ミラー、フィルタ、カバーガラス、およびプリズム等である。第1光学系U1と第2光学系U2との間にパワーを有しない光学部材が配置されている場合は、上記の「第1光学系U1の最も拡大側の面から第2光学系U2の最も縮小側の面までの光路上の光学系」に、第1光学系U1と第2光学系U2との間のパワーを有しない光学部材も含まれる。また、上記の「一体的にシフト」とは、同時に同方向に同量シフトすることを意味する。
【0043】
また、図1では、光学系としては、第1光学系U1および第2光学系U2のみを示しているが、本開示の基本構成においては、後述の第3実施形態のように、第2光学系U2より縮小側に別の光学系を含んでもよい。
【0044】
光学装置1では、第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。図1では、第1光学系U1は鏡筒61に収納され、第2光学系U2は鏡筒62に収納されている。鏡筒61が本開示の技術の「第1鏡筒」に対応し、鏡筒62が本開示の技術の「第2鏡筒」に対応する。第1光学系U1がレンズを含む場合は、鏡筒61の内部に鏡枠51が設けられ、第1光学系U1の各レンズ又は各レンズ群は鏡枠51内に配置される。第1光学系U1の各レンズ又は各レンズ群が複数存在する場合は、その数の分だけ鏡枠51も複数存在する。鏡筒61は、これらの鏡枠51を一括して収納しており、第1光学系U1全体を保持する部材である。同様に、第2光学系U2がレンズを含む場合は、鏡筒62の内部に鏡枠52が設けられ、第2光学系U2の各レンズ又は各レンズ群は鏡枠52内に配置される。第2光学系U2の各レンズ又は各レンズ群が複数存在する場合は、その数の分だけ鏡枠52も複数存在する。鏡筒62は、これらの鏡枠52を一括して収納しており、第2光学系U2全体を保持する部材である。鏡筒61と鏡筒62とは互いに異なる別個の部材である。鏡筒61および鏡筒62はそれぞれ、個々の光学系を収納する部材である。なお、鏡筒61、62が各レンズ又は各レンズ群を直接保持するように構成することによって、鏡枠51、52を省略することも可能である。
【0045】
第1光学系U1は交換可能に構成されていることが好ましい。このようにした場合は、様々な仕様の光学系を第1光学系U1として使用可能になるため、第1光学系U1を交換することによって、様々な条件および環境に対応可能な投写型表示装置が実現可能となる。
【0046】
第2光学系U2は交換可能に構成されていることが好ましい。このようにした場合は、第1光学系U1として瞳位置の異なる様々な光学系を使用する場合でも、各瞳位置に対応した第2光学系U2に交換することによって、対応可能となる。
【0047】
光学装置1では、第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納されているため、第1光学系U1と第2光学系U2とは独立に交換することが可能であり、利便性の高い構成となっている。
【0048】
第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系であることが好ましい。このようにした場合は、構成の簡易化に有利となる。
【0049】
第1光学系U1と画像表示面5aとの間の全ての光学系の合成横倍率をβとした場合、光学装置1は下記条件式(1)を満足することが好ましい。βは拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値である。すなわち、光線追跡を行う場合は、第1光学系U1が形成する像の位置を物体位置とし、画像表示面5aを像位置としてβを算出する。光学装置1が変倍光学系を含む場合は、βは広角端における値とする。条件式(1)の対応値が下限以下とならないようにすることによって、シフト量の確保および小型化に有利となる。条件式(1)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、第2光学系U2で形成される像が、画像表示面5aに表示される画像に比べて小さくなり過ぎないため、第1光学系U1に求められる分解能の空間周波数も高くなり過ぎず、良好な性能の確保に有利となる。より良好な特性を得るためには、光学装置1は、下記条件式(1-1)を満足することがより好ましい。
0.25<|β|<2 (1)
0.4<|β|<1.5 (1-1)
【0050】
また、光学装置1は下記条件式(2)を満足することが好ましい。図2に、条件式(2)で用いられる記号を説明するための図を示す。図2は概念図であり、図2のθおよびθ1は必ずしも正確な角度ではない。条件式(2)では、第2光学系U2の縮小側に隣接する空気間隔において光軸AX1との角度θ1がsinθ1=0.1を満たす軸上光線を第1軸上光線7aとしている。そして、第2光学系U2の拡大側に隣接する空気間隔における第1軸上光線7aと光軸AX1との角度をθとしている。第2光学系U2の横倍率をβ2としている。β2は、拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値である。条件式(2)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、正弦条件違反量が大きくなることを抑制できるため、光軸近傍における解像性能の確保に有利となる。より良好な特性を得るためには、光学装置1は、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。条件式(2-1)の下限の「0」は、条件式(2-1)の対応値が絶対値であることから自明である。
|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.2 (2)
0≦|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.1 (2-1)
【0051】
また、光学装置1は下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)では、第2光学系U2に含まれるレンズの総数をkとしている。1からkまでの自然数をiとしている。第2光学系U2の拡大側からi番目のレンズのd線に対する屈折率をNiとしている。第2光学系U2の拡大側からi番目のレンズの焦点距離をfiとしている。第2光学系U2の最も拡大側の面から第2光学系U2の最も縮小側の面までの光軸上の距離をDU2としている。光学装置1が変倍光学系を含む場合はθ、β2、およびDU2は広角端における値とする。条件式(3)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、像面湾曲の補正が容易となり、また、最大像高の5割の像高付近から結像領域周辺部までの範囲における解像性能の確保に有利となる。より良好な特性を得るためには、光学装置1は、下記条件式(3-1)を満足することがより好ましい。条件式(3-1)の下限の「0」は、条件式(3-1)の対応値が距離と絶対値との積であることから自明である。
【数3】

【数4】
【0052】
光学装置1は上記条件式(2)および(3)を同時に満足することが好ましい。単独で諸収差の補正がなされ性能が確保されている市販レンズを第1光学系U1とした場合、第2光学系U2も単独で性能が確保されていることが望まれる。条件式(2)および(3)を同時に満足することによって、第2光学系U2単独での性能の確保が可能となる。光学装置1は上記条件式(2)および(3)を同時に満足した上で、条件式(2-1)および(3-1)の少なくとも一方を満足することがより好ましい。
【0053】
また、光学装置1は下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)では、第2光学系U2の縮小側の最大像高をYmaxとしている。第2光学系U2の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系U2の最大像高でのサジタル像面までの光軸AX1の方向の距離をSrとしている。第2光学系U2の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系U2の最大像高でのタンジェンシャル像面までの光軸AX1の方向の距離をTrとしている。SrおよびTrについて、各々の基点より拡大側の距離の符号を負、各々の基点より縮小側の距離の符号を正とする。光学装置1が変倍光学系を含む場合はSr、Tr、およびYmaxは広角端における各値とする。条件式(4)を満足することによって、結像領域周辺部での像面湾曲の増大を抑制できる。これによって、結像領域周辺部での性能確保が容易になる。なお、デジタルカメラ用の交換レンズのような市販レンズは、一般に撮像素子のカバーガラス込みで収差補正がなされ結像性能が確保されている。このような市販レンズを第1光学系U1とした場合、条件式(4)の対応値はマイナス方向の値の方が許容量が少なくなるため、条件式(4)の下限と上限を以下のように設定すれば、性能確保に有利となる。より良好な特性を得るためには、光学装置1は、下記条件式(4-1)を満足することがより好ましい。
-10<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<20 (4)
0<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<10 (4-1)
【0054】
また、光学装置1は下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)のSr、Tr、およびYmaxは条件式(4)のものと同じである。条件式(5)の対応値が上限以上とならないようにすることによって、結像領域周辺部での非点収差の増大を抑制できる。これによって、結像領域周辺部での性能確保が容易になる。より良好な特性を得るためには、光学装置1は、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。条件式(5-1)の下限の「0」は、条件式(5-1)の対応値が絶対値と最大像高との除算の1000倍であることから自明である。
|Sr-Tr|×1000/Ymax<30 (5)
0<|Sr-Tr|×1000/Ymax<20 (5-1)
【0055】
光学装置1は上記条件式(4)および(5)を同時に満足することが好ましい。単独で諸収差の補正がなされ性能が確保されている市販レンズを第1光学系U1とした場合、第2光学系U2も単独で性能が確保されていることが望まれる。条件式(4)および(5)を同時に満足することによって、第2光学系U2単独での結像領域周辺部での性能確保が容易になる。光学装置1は上記条件式(4)および(5)を同時に満足した上で、条件式(4-1)および(5-1)の少なくとも一方を満足することがより好ましい。
【0056】
次に、本開示の第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態について説明する。第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態はそれぞれ、上述した基本構成を有する。また、第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態はそれぞれ、上述した基本構成に関する好ましい構成を有することが好ましい。以下の各実施形態の説明では、上述した基本構成とその好ましい構成の重複説明を省略している。
【0057】
第1実施形態に係る光学装置1の構成の概念図は図1に示したものである。第1実施形態においては、第1光学系U1と画像表示面5aとの間の光学系は第2光学系U2のみであり、第1光学系U1より縮小側に中間像MIが形成される。つまり、第2光学系U2はリレー光学系としての機能を有する。第1光学系U1より縮小側にリレー光学系を含むことによって、光学装置1の縮小側のバックフォーカスの確保が容易になる。これによって、色合成プリズム等の配置が容易になる。
【0058】
第1実施形態において、第2光学系U2は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含むことが好ましい。すなわち、第2光学系U2は変倍光学系であることが好ましい。このようにした場合は、第1光学系U1が固定焦点光学系であっても、投写像のサイズの変更が容易となり、利便性の高い装置を提供することができる。第2光学系U2は例えばズームレンズとすることができる。
【0059】
次に、第2実施形態について説明する。図3に、本開示の第2実施形態に係る光学装置2の構成の概念図を示す。図3の図示方法は基本的に図1と同様である。光学装置2は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1と、第2光学系U2とを含む。第2実施形態においては、光学装置2内部に中間像MIが形成されない。第2実施形態においては、第1光学系U1と画像表示面5aとの間の光学系は第2光学系U2のみであり、画像から光学装置2に入射する最大画角の主光線6cは、第1光学系U1の最も縮小側の面より縮小側では光軸AX1と交差しない構成となっている。この構成によれば、単板式の透過型液晶パネル、又は自発光素子パネルのような、長いバックフォーカスを必要としないタイプの画像表示素子5と組み合わせることによって、装置の小型化を促進できる。
【0060】
次に、第3実施形態について説明する。図4に、本開示の第3実施形態に係る光学装置3の構成の概念図を示す。図4の図示方法は基本的に図1と同様である。光学装置3は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1と、第2光学系U2とを含み、さらに、第2光学系U2より縮小側の光路上に第3光学系U3を含む。第3実施形態では、第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系であり、第3光学系U3は光軸AX2を有する共軸系である。光軸AX1が本開示の技術の「第1光軸」に対応し、光軸AX2が本開示の技術の「第2光軸」に対応する。光軸AX1と光軸AX2とは平行であり、同一直線上には無い。いわば、光軸AX1と光軸AX2とは平行にずれた関係にある。なお、本明細書における「平行」は、完全な平行の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差が含まれる略平行も含む。許容される誤差とは例えば、光軸AX1と光軸AX2とのなす角度が-1度以上かつ+1度以下の範囲内である。
【0061】
第3実施形態では、光軸AX1と光軸AX2とを平行にずれた関係にしており、かつ、第3光学系U3は固定したまま、第1光学系U1と第2光学系U2とを一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能であるため、第3光学系U3のイメージサークルを小さくすることができる。これによって、光学系の小型化が可能となる。
【0062】
第3実施形態では、第1光学系U1より縮小側に中間像MIが形成される。つまり、第1光学系U1より縮小側にリレー光学系を含むことによって、光学装置3の縮小側のバックフォーカスの確保が容易になる。これによって、色合成プリズム等の配置が容易になる。中間像MIは、第2光学系U2の最も拡大側の面から第2光学系U2の最も縮小側の面までの間に形成されることが好ましい。このようにした場合は、第2光学系U2は、フィールドレンズと同様の機能を持つことができるため、第2光学系U2の小型化に有利となる。
【0063】
なお、第2光学系U2と第3光学系U3とは互いに異なる鏡筒に収納されており、第2光学系U2は交換可能に構成されていることが好ましい。図4では、第2光学系U2は鏡筒62に収納され、第3光学系U3は鏡筒63に収納されている。鏡筒63が本開示の技術の「第3鏡筒」に対応する。第3光学系U3がレンズを含む場合は、鏡筒63の内部に鏡枠53が設けられ、第3光学系U3の各レンズ又は各レンズ群は鏡枠53内に配置される。第3光学系U3の各レンズ又は各レンズ群が複数存在する場合は、その数の分だけ鏡枠53も複数存在する。鏡筒63は、これらの鏡枠53を一括して収納しており、第3光学系U3全体を保持する部材である。なお、鏡筒63が各レンズ又は各レンズ群を直接保持するように構成することによって、鏡枠53を省略することも可能である。鏡筒63と鏡筒62とは互いに異なる別個の部材である。そのため、第3光学系U3は固定したまま、第2光学系U2のみを交換することが可能となり、利便性の高い装置とすることができる。
【0064】
また、第3実施形態において、第3光学系U3は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含むことが好ましい。すなわち、第3光学系U3は変倍光学系であることが好ましい。このようにした場合は、第1光学系U1が固定焦点光学系であっても、投写像のサイズの変更が容易となり、利便性の高い装置を提供することができる。第3光学系U3は例えばズームレンズとすることができる。
【0065】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。なお、本開示の光学装置が満足することが好ましい条件式は、式の形式で記載された条件式に限定されず、好ましい、およびより好ましいとされた条件式の中から下限と上限とを任意に組み合わせて得られる全ての条件式を含む。
【0066】
次に、本開示の光学装置の実施例について図面を参照して説明する。以下に述べる実施例および変形例の図面では、主に各光学系を構成するレンズの構成を示し、鏡枠および鏡筒の図示は省略している。各実施例および変形例の断面図に付された光学系およびレンズ群の参照符号は、参照符号の桁数の増大に伴う説明および図面の煩雑化を避けるため、実施例ごとに独立して用いている。従って、異なる実施例の図面において共通の参照符号が付されていても、必ずしも共通の構成ではない。
【0067】
以下に述べる実施例のうち、実施例1および実施例2は第1実施形態に対応し、実施例3は第2実施形態に対応し、実施例4-1、実施例4-2、実施例4-3、実施例5、実施例6、および実施例7は第3実施形態に対応する。以下に述べる実施例の第1光学系U1はいずれもデジタルカメラ用の交換レンズとして適用可能である。
【0068】
[実施例1]
実施例1の光学装置の構成と光束の断面図を図5に示す。図5では、光束として、軸上光束7、および最大画角の光束6を示す。また、図5では、上記の条件式で用いた最大像高Ymaxを一例として示す。実施例1の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、および第2光学系U2を含む。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第1光学系U1と第2光学系U2との間に中間像MIが形成される。図5の中間像MIは、位置を示しており、必ずしも正確な形状を示すものではない。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0069】
図5では、光学装置が投写型表示装置に搭載されることを想定して、第2光学系U2と画像表示面5aとの間に光学部材PPを配置した例を示している。光学部材PPは、フィルタ、カバーガラス、および色合成プリズム等を想定した部材である。光学部材PPはパワー(屈折力)を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0070】
第1光学系U1は、15枚のレンズからなる。第2光学系U2は、13枚のレンズと開口絞りStとからなる。図5の開口絞りStは形状および大きさを示しているのではなく、光軸方向の位置を示している。第2光学系U2は、変倍光学系である。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、および第5レンズ群G5の5つのレンズ群からなる。変倍の際、第1レンズ群G1は画像表示面5aに対して固定されており、その他の4つのレンズ群は隣り合う群との間隔を変化させて光軸AX1に沿って移動する。図5では、変倍の際に固定されているレンズ群の下には接地記号を示し、変倍の際に移動するレンズ群の下には広角端から望遠端へ変倍する際の各レンズの移動方向を概略的に矢印で示す。
【0071】
実施例1の光学装置について、基本レンズデータを表1Aおよび表1Bに、諸元と可変面間隔を表2に、非球面係数を表3に示す。ここでは、1つの表の長大化を避けるため基本レンズデータを表1Aおよび表1Bの2つの表に分けて示している。
【0072】
基本レンズデータの表は以下のように記載されている。「Sn」の列には、最も拡大側の面を第1面とし縮小側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示す。「R」の列には、各面の曲率半径を示す。「D」の列には、各面とその縮小側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。「Nd」の列には、各構成要素のd線に対する屈折率を示す。「νd」の列には、各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。最も右の欄は、光学系ごとに区切り、対応する各光学系の参照符号を示す。例えば、U1と示された欄は第1光学系U1に対応し、U2と示された欄は第2光学系U2に対応する。
【0073】
基本レンズデータでは、拡大側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、縮小側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。開口絞りStに相当する面の面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。基本レンズデータには、光学部材PPも示している。表1BのDの最下欄の値は表中の最も縮小側の面と画像表示面5aとの間隔である。基本レンズデータの表では、可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の拡大側の面番号を付してDの欄に記入している。
【0074】
表2に、変倍比Zr、焦点距離の絶対値|f|、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、および変倍の際の可変面間隔をd線基準で示す。2ωの欄の[°]は単位が度であることを示す。表2では、広角端状態および望遠端状態における各値をそれぞれ、「wide」および「tele」の列に示す。
【0075】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表3において、Snの行には非球面の面番号を示し、KAおよびAmの行には各非球面についての非球面係数の数値を示す。なお、Amのmは3以上の整数であり、面により異なる。例えば実施例1の第20面ではm=3、4、5、・・・、14である。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h/{1+(1-KA×C×h1/2}+ΣAm×h
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0076】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0077】
【表1A】
【0078】
【表1B】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
図6に、投写距離(最も拡大側のレンズ面からスクリーンまでの光軸上の距離)が無限遠の状態の実施例1の光学装置の各収差図を示す。図6では、「wide」と付した最上段に広角端における各収差図を示し、「tele」と付した下段に望遠端における各収差図を示す。図6では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線に関する収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線に関する収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図では「FNo.=」の後にFナンバーの値を示す。その他の収差図では「ω=」の後に最大半画角の値を示す。
【0082】
図7に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。図7の図示方法は図6と同様である。第2光学系U2のみの各収差図は、投写距離が無限遠の状態で第1光学系U1が形成する像の位置を、第2光学系U2にとっての物体位置として第2光学系U2を光線追跡して得られる。本明細書では、便宜上、この物体位置から第2光学系U2の最も拡大側の面までの光軸上の距離を、「第2光学系U2の物体距離」と呼ぶことにする。第2光学系U2の物体距離の符号は、上記物体位置より第2光学系U2の最も拡大側の面が縮小側にある場合を正、上記物体位置より第2光学系U2の最も拡大側の面が拡大側にある場合を負とする。実施例1では、第2光学系U2の物体距離は16.13mm(ミリメートル)である。
【0083】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても基本的に同様であるので、以下では重複説明を省略する。以下の実施例および変形例の図面では、軸上光束7、最大画角の光束6、および最大像高Ymaxの参照符号の記載を省略する。
【0084】
[実施例2]
実施例2の光学装置の構成と光束の断面図を図8に示す。実施例2の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、および第2光学系U2を含む。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第1光学系U1と第2光学系U2との間に中間像MIが形成される。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0085】
第1光学系U1は、15枚のレンズからなる。第2光学系U2は、13枚のレンズと開口絞りStとからなる。第2光学系U2は、変倍光学系である。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4の4つのレンズ群からなる。変倍の際、第1レンズ群G1は画像表示面5aに対して固定されており、その他の3つのレンズ群は隣り合う群との間隔を変化させて光軸AX1に沿って移動する。
【0086】
実施例2の光学装置について、基本レンズデータを表4Aおよび表4Bに、諸元と可変面間隔を表5に、非球面係数を表6に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図9に示す。図10に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は18.57mm(ミリメートル)である。
【0087】
【表4A】
【0088】
【表4B】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
[実施例3]
実施例3の光学装置の構成と光束の断面図を図11に示す。実施例3の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、および第2光学系U2を含む。第1光学系U1は、特開2022-16016号公報に記載の実施例1の撮像レンズである。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。実施例3の光学装置は、中間像MIを形成しない。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。第1光学系U1は、15枚のレンズと開口絞りStとからなる。第2光学系U2は、3枚のレンズからなる。
【0092】
実施例3の光学装置について、基本レンズデータを表7に、諸元を表8に、非球面係数を表9に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図12に示す。図13に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は-58.3mm(ミリメートル)である。
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】
[実施例4-1]
実施例4-1の光学装置の構成と光束の断面図を図14に示す。実施例4-1の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、第2光学系U2、および第3光学系U3を含む。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第3光学系U3は、共通の光軸AX2を有する共軸系である。光軸AX1と光軸AX2とは平行である。第2光学系U2の内部に中間像MIが形成される。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0097】
第1光学系U1は、15枚のレンズからなる。第2光学系U2は、5枚のレンズからなる。第3光学系U3は、12枚のレンズと開口絞りStとからなる。第3光学系U3は、変倍光学系である。第3光学系U3は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、および第5レンズ群G5の5つのレンズ群からなる。変倍の際、第1レンズ群G1および第5レンズ群G5は画像表示面5aに対して固定されており、その他の3つのレンズ群は隣り合う群との間隔を変化させて光軸AX2に沿って移動する。
【0098】
実施例4-1の光学装置について、基本レンズデータを表10Aおよび表10Bに、諸元と可変面間隔を表11に、非球面係数を表12に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図15に示す。図16に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は-6.49mm(ミリメートル)である。なお、レンズデータおよび収差図は、便宜上、光軸AX1と光軸AX2とを同一直線上にしたものについて示しており、この点は後述の実施例4-2、実施例4-3、実施例5、実施例6、および実施例7も同様である。
【0099】
【表10A】
【0100】
【表10B】
【0101】
【表11】
【0102】
【表12】
【0103】
[実施例4-2]
実施例4-2の光学装置の構成と光束の断面図を図17に示す。実施例4-2の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、第2光学系U2、および第3光学系U3を含む。第1光学系U1は、特開2022-16016号公報に記載の実施例1の撮像レンズである。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第3光学系U3は、共通の光軸AX2を有する共軸系である。光軸AX1と光軸AX2とは平行である。第2光学系U2の内部に中間像MIが形成される。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0104】
第1光学系U1は、15枚のレンズからなる。第2光学系U2は、6枚のレンズからなる。実施例4-2の光学装置の第3光学系U3は、実施例4-1の光学装置の第3光学系U3と共通である。
【0105】
実施例4-2の光学装置について、基本レンズデータを表13Aおよび表13Bに、諸元と可変面間隔を表14に、非球面係数を表15に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図18に示す。図19に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は-7.00mm(ミリメートル)である。
【0106】
【表13A】
【0107】
【表13B】
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】
[実施例4-3]
実施例4-3の光学装置の構成と光束の断面図を図20に示す。実施例4-3の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、第2光学系U2、および第3光学系U3を含む。第1光学系U1は、特開2018-141888号公報に記載の実施例1の撮像レンズである。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第3光学系U3は、共通の光軸AX2を有する共軸系である。光軸AX1と光軸AX2とは平行である。第2光学系U2の内部に中間像MIが形成される。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0111】
第1光学系U1は、16枚のレンズからなる。第2光学系U2は、6枚のレンズからなる。実施例4-3の光学装置の第3光学系U3は、実施例4-1の光学装置の第3光学系U3と共通である。
【0112】
実施例4-3の光学装置について、基本レンズデータを表16Aおよび表16Bに、諸元と可変面間隔を表17に、非球面係数を表18に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図21に示す。図22に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は-7.01mm(ミリメートル)である。
【0113】
【表16A】
【0114】
【表16B】
【0115】
【表17】
【0116】
【表18】
【0117】
[実施例5]
実施例5の光学装置の構成と光束の断面図を図23に示す。実施例5の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、第2光学系U2、および第3光学系U3を含む。第1光学系U1は、特開2022-16016号公報に記載の実施例1の撮像レンズである。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第3光学系U3は、共通の光軸AX2を有する共軸系である。光軸AX1と光軸AX2とは平行である。第2光学系U2の内部に中間像MIが形成される。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0118】
第1光学系U1は、15枚のレンズからなる。第2光学系U2は、6枚のレンズからなる。第3光学系U3は、14枚のレンズと開口絞りStとからなる。第3光学系U3は、変倍光学系である。第3光学系U3は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、および第5レンズ群G5の5つのレンズ群からなる。変倍の際、第1レンズ群G1および第5レンズ群G5は画像表示面5aに対して固定されており、その他の3つのレンズ群は隣り合う群との間隔を変化させて光軸AX2に沿って移動する。
【0119】
実施例5の光学装置について、基本レンズデータを表19Aおよび表19Bに、諸元と可変面間隔を表20に、非球面係数を表21に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図24に示す。図25に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は-7.01mm(ミリメートル)である。
【0120】
【表19A】
【0121】
【表19B】
【0122】
【表20】
【0123】
【表21】
【0124】
[実施例6]
実施例6の光学装置の構成と光束の断面図を図26に示す。実施例6の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、第2光学系U2、および第3光学系U3を含む。第1光学系U1は、特開2021-117472号公報に記載の実施例1の撮像レンズである。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第3光学系U3は、共通の光軸AX2を有する共軸系である。光軸AX1と光軸AX2とは平行である。第2光学系U2の内部に中間像MIが形成される。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0125】
第1光学系U1は、13枚のレンズからなる。第2光学系U2は、6枚のレンズからなる。第3光学系U3は、11枚のレンズと開口絞りStとからなる。
【0126】
実施例6の光学装置について、基本レンズデータを表22Aおよび表22Bに、諸元を表23に、非球面係数を表24に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図27に示す。図28に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は-8.91mm(ミリメートル)である。
【0127】
【表22A】
【0128】
【表22B】
【0129】
【表23】
【0130】
【表24】
【0131】
[実施例6の変形例]
図29に、実施例6の変形例に係る光学装置の構成と光束を示す。図29の変形例の第3光学系U3は、光路折り曲げ部材であるミラーMrを含み、ミラーMrによって光路を折り曲げている点が実施例6の光学装置の第3光学系U3と異なる。図29の光学装置のその他の構成は、実施例6の光学装置と同様である。第40面とミラーMrとの光軸上の間隔は40mm(ミリメートル)である。光路を折り曲げることによって、コンパクトな構成が可能になる。
【0132】
[実施例7]
実施例7の光学装置の構成と光束の断面図を図30に示す。実施例7の光学装置は、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系U1、第2光学系U2、および第3光学系U3を含む。第1光学系U1と第2光学系U2とは共通の光軸AX1を有する共軸系である。第3光学系U3は、共通の光軸AX2を有する共軸系である。光軸AX1と光軸AX2とは平行である。第2光学系U2の内部に中間像MIが形成される。第1光学系U1と第2光学系U2とは互いに異なる鏡筒に収納される。第1光学系U1および第2光学系U2は一体的に画像表示面5aに平行な方向にシフト可能である。
【0133】
第1光学系U1は、15枚のレンズからなる。第2光学系U2は、6枚のレンズからなる。第3光学系U3は、12枚のレンズと開口絞りStとからなる。第3光学系U3は、変倍光学系である。第3光学系U3は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4の4つのレンズ群からなる。変倍の際、第1レンズ群G1は画像表示面5aに対して固定されており、その他の3つのレンズ群は隣り合う群との間隔を変化させて光軸AX2に沿って移動する。
【0134】
実施例7の光学装置について、基本レンズデータを表25Aおよび表25Bに、諸元と可変面間隔を表26に、非球面係数を表27に、投写距離が無限遠の状態の各収差図を図31に示す。図32に、第2光学系U2のみの各収差図を示す。第2光学系U2の物体距離は-7.03mm(ミリメートル)である。
【0135】
【表25A】
【0136】
【表25B】
【0137】
【表26】
【0138】
【表27】
【0139】
表28に上記実施例の条件式(1)~(5)に関する値を示す。表28中の「E-n」(n:整数)は「×10-n」を意味する。表29に上記実施例の条件式(1)~(5)の対応値を示す。表28および表29にはd線を基準とした場合の値を示す。表29に示す実施例の対応値を条件式の上限又は下限として用いて、条件式の好ましい範囲を設定してもよい。
【0140】
【表28】
【0141】
【表29】
【0142】
上記実施例の光学装置はいずれも、市販レンズのような非テレセントリックのレンズを第1光学系U1として用いることができ、かつ、レンズシフト機能を備えている。また、第2光学系U2のみ収差図からわかるように、上記実施例の第2光学系U2はいずれも、第2光学系U2単独で性能が確保されている。
【0143】
次に、本開示の実施形態に係る投写型表示装置について説明する。図33は、本開示の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図33に示す投写型表示装置100は、本開示の実施形態に係る光学装置10と、光源15と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての透過型表示素子11a~11cとを有する。また、投写型表示装置100は、色分解のためのダイクロイックミラー12、13と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14と、コンデンサレンズ16a~16cと、光路を偏向するための全反射ミラー18a~18cとを有する。なお、図33では、光学装置10は概略的に図示している。また、光源15とダイクロイックミラー12の間にはインテグレーターが配されているが、図33ではその図示を省略している。
【0144】
光源15からの白色光は、ダイクロイックミラー12、13で3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解された後、それぞれコンデンサレンズ16a~16cを経て各色光光束にそれぞれ対応する透過型表示素子11a~11cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム14により色合成された後、光学装置10に入射する。光学装置10は、透過型表示素子11a~11cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン105上に投写する。
【0145】
図34は、本開示の別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図34に示す投写型表示装置200は、本開示の実施形態に係る光学装置210と、光源215と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしてのDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)素子21a~21cとを有する。また、投写型表示装置200は、色分解および色合成のためのTIR(Total Internal Reflection)プリズム24a~24cと、照明光と投写光を分離する偏光分離プリズム25とを有する。なお、図34では光学装置210を概略的に図示している。また、光源215と偏光分離プリズム25の間にはインテグレーターが配されているが、図34ではその図示を省略している。
【0146】
光源215からの白色光は、偏光分離プリズム25内部の反射面で反射された後、TIRプリズム24a~24cにより3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ対応するDMD素子21a~21cに入射して変調され、再びTIRプリズム24a~24cを逆向きに進行して色合成された後、偏光分離プリズム25を透過して、光学装置210に入射する。光学装置210は、DMD素子21a~21cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン205上に投写する。
【0147】
図35は、本開示のさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図35に示す投写型表示装置300は、本開示の実施形態に係る光学装置310と、光源315と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての反射型表示素子31a~31cとを有する。また、投写型表示装置300は、色分離のためのダイクロイックミラー32、33と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム34と、光路偏向のための全反射ミラー38と、偏光分離プリズム35a~35cとを有する。なお、図35では、光学装置310は概略的に図示している。また、光源315とダイクロイックミラー32の間にはインテグレーターが配されているが、図35ではその図示を省略している。
【0148】
光源315からの白色光はダイクロイックミラー32、33により3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ偏光分離プリズム35a~35cを経て、各色光光束それぞれに対応する反射型表示素子31a~31cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム34により色合成された後、光学装置310に入射する。光学装置310は、反射型表示素子31a~31cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン305上に投写する。
【0149】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術について説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。例えば、各光学系が含むレンズの枚数、変倍光学系が含むレンズ群の数、各レンズ群が含むレンズの枚数は上記例と異なる数にしてもよい。また、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0150】
また、本開示の技術に係る投写型表示装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、光束分離又は光束合成に用いられる光学部材、およびライトバルブは、種々の態様の変更が可能である。ライトバルブは、光源からの光を画像表示素子により空間変調して、画像データに基づく光学像として出力する態様に限定されず、自発光型の画像表示素子から出力された光自体を、画像データに基づく光学像として出力する態様であってもよい。自発光型の画像表示素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)等の発光素子が2次元配列された画像表示素子が挙げられる。
【0151】
以上の実施形態および実施例に関し、さらに以下の付記項を開示する。
[付記項1]
縮小側の画像表示面に表示される画像を拡大側に投写する光学装置であって、
拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とを含み、
前記第1光学系は、縮小側に非テレセントリックな結像光学系であり、
前記第2光学系は、縮小側にテレセントリックであり、
前記第1光学系は第1鏡筒に収納され、前記第2光学系は第2鏡筒に収納され、
前記第1光学系の最も拡大側の面から前記第2光学系の最も縮小側の面までの光路上の光学系を前記画像表示面に対してシフト可能な光学装置。
[付記項2]
前記第1光学系と前記第2光学系とは共通の第1光軸を有する共軸系である付記項1に記載の光学装置。
[付記項3]
前記第1光学系は交換可能に構成されている付記項1又は2に記載の光学装置。
[付記項4]
前記第1光学系と前記画像表示面との間の光学系は前記第2光学系のみであり、
前記第1光学系より縮小側に中間像が形成されている付記項1から3のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項5]
前記第2光学系は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含む付記項1から4のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項6]
前記第1光学系と前記画像表示面との間の光学系は前記第2光学系のみであり、
前記画像から前記光学装置に入射する最大画角の主光線は、前記第1光学系の最も縮小側の面より縮小側では前記第1光軸と交差しない付記項1から3のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項7]
前記第2光学系より縮小側の光路上に第3光学系を含み、
前記第3光学系は、第2光軸を有する共軸系であり、
前記第1光軸と前記第2光軸とは平行であり、
前記第1光学系より縮小側に中間像が形成されている付記項1から3のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項8]
前記第2光学系の最も拡大側の面から前記第2光学系の最も縮小側の面までの間に中間像が形成されている付記項7に記載の光学装置。
[付記項9]
前記第3光学系は第3鏡筒に収納され、
前記第2光学系は交換可能に構成されている付記項7又は8に記載の光学装置。
[付記項10]
前記第3光学系は、変倍の際に隣り合う群との間隔を変化させて移動する群を含む付記項7から9のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項11]
前記第1光学系と前記画像表示面との間の全ての光学系の合成横倍率をβとし、
βは、拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値とし、
前記光学装置が変倍光学系を含む場合はβは広角端における値とした場合、
0.25<|β|<2 (1)
で表される条件式(1)を満足する付記項1から10のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項12]
前記第2光学系の縮小側に隣接する空気間隔において光軸との角度θ1がsinθ1=0.1を満たす軸上光線を第1軸上光線とし、前記第2光学系の拡大側に隣接する空気間隔における前記第1軸上光線と光軸との角度をθとし、
前記第2光学系の横倍率をβ2とし、
β2は、拡大側を物体側、縮小側を像側とした場合の値とし、
前記第2光学系に含まれるレンズの総数をkとし、
1からkまでの自然数をiとし、
前記第2光学系の拡大側からi番目のレンズのd線に対する屈折率をNiとし、
前記第2光学系の拡大側からi番目のレンズの焦点距離をfiとし、
前記第2光学系の最も拡大側の面から前記第2光学系の最も縮小側の面までの光軸上の距離をDU2とし、
前記光学装置が変倍光学系を含む場合はθ、β2、およびDU2は広角端における値とした場合、
|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.2 (2)
【数5】

で表される条件式(2)および(3)を満足する付記項1から11のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項13]
前記第2光学系の縮小側の最大像高をYmaxとし、
前記第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした前記第2光学系の最大像高でのサジタル像面までの光軸の方向の距離をSrとし、
前記第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした前記第2光学系の最大像高でのタンジェンシャル像面までの光軸の方向の距離をTrとし、
SrおよびTrについて、各々の前記基点より拡大側の距離の符号を負、各々の前記基点より縮小側の距離の符号を正とし、
前記光学装置が変倍光学系を含む場合はSr、Tr、およびYmaxは広角端における各値とした場合、
-10<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<20 (4)
|Sr-Tr|×1000/Ymax<30 (5)
で表される条件式(4)および(5)を満足する付記項1から12のいずれか1項に記載の光学装置。
[付記項14]
0.4<|β|<1.5 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する付記項11に記載の光学装置。
[付記項15]
0≦|{sin|θ|/(|β2|×0.1)-1}×100|<0.1 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する付記項12に記載の光学装置。
[付記項16]
【数6】

で表される条件式(3-1)を満足する付記項12に記載の光学装置。
[付記項17]
0<{(Sr+Tr)/2}×1000/Ymax<10 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する付記項13に記載の光学装置。
[付記項18]
0<|Sr-Tr|×1000/Ymax<20 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する付記項13に記載の光学装置。
[付記項19]
前記画像を出力するライトバルブと、
付記項1から18のいずれか1項に記載の光学装置とを備えた投写型表示装置。
[付記項20]
縮小側の画像表示面に表示される画像を拡大側に投写する光学装置に組み込まれる光学系であって、
縮小側に非テレセントリックで第1鏡筒に収納された結像光学系の縮小側の光路上に配置され、
縮小側にテレセントリックであり、
第2鏡筒に収納され、
前記結像光学系と一体的に前記画像表示面に対してシフト可能である光学系。
【符号の説明】
【0152】
1 光学装置
2 光学装置
3 光学装置
5 画像表示素子
5a 画像表示面
6 最大画角の光束
6c 主光線
7 軸上光束
7a 第1軸上光線
10 光学装置
11a~11c 透過型表示素子
12 ダイクロイックミラー
13 ダイクロイックミラー
14 クロスダイクロイックプリズム
15 光源
16a~16c コンデンサレンズ
18a~18c 全反射ミラー
21a~21c DMD素子
24a~24c TIRプリズム
25 偏光分離プリズム
31a~31c 反射型表示素子
32 ダイクロイックミラー
33 ダイクロイックミラー
34 クロスダイクロイックプリズム
35a~35c 偏光分離プリズム
38 全反射ミラー
51 鏡枠
52 鏡枠
53 鏡枠
61 鏡筒
62 鏡筒
63 鏡筒
100 投写型表示装置
105 スクリーン
200 投写型表示装置
205 スクリーン
210 光学装置
215 光源
300 投写型表示装置
305 スクリーン
310 光学装置
315 光源
AX1 光軸
AX2 光軸
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
MI 中間像
Mr ミラー
PP 光学部材
St 開口絞り
U1 第1光学系
U2 第2光学系
U3 第3光学系
Ymax 最大像高
θ 角度
θ1 角度
図1
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