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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033601
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】乳房撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240306BHJP
   A61B 6/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 320Z
A61B6/04 309B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137268
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】源馬 耕平
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈恭
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 涼香
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093CA16
4C093DA06
4C093ED21
4C093FA22
4C093FA35
4C093FA36
4C093FA53
4C093FB09
4C093FB20
4C093FF16
(57)【要約】
【課題】構成の複雑化を抑制しつつ、投影距離が異なる2つの面に対する適切な投影が可能な乳房撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影台と、放射線源と、撮影台上の乳房を圧迫する圧迫板であり、放射線源と撮影台との間で移動可能な圧迫板と、撮影台において放射線源と対向する第1面に投影される第1情報と、圧迫板において放射線源と対向する第2面に投影される第2情報とを含む画像を表示する表示器と、投影光学系とを有し、かつ投影光学系のピントが第1面までの投影距離に応じて調整されるプロジェクタと、表示器を制御するプロセッサであって、表示器の画像表示面における画像内の第2情報の表示サイズ又は表示位置のうちの少なくとも一方を、第1情報とは独立に、第2面を有する圧迫板の移動に応じて変化させるプロセッサと、を備える乳房撮影装置。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房が載置される撮影台と、
前記乳房に向けて放射線を照射する放射線源と、
前記撮影台上の前記乳房を圧迫する圧迫板であり、かつ前記放射線源と前記撮影台との間で移動可能な圧迫板と、
前記撮影台において前記放射線源と対向する第1面に投影される第1情報と、前記圧迫板において前記放射線源と対向する第2面に投影される第2情報とを含む画像を表示する表示器と、前記第1面と前記第2面とに向けて前記画像を投影する投影光学系とを有し、かつ前記投影光学系のピントが前記第1面までの投影距離に応じて調整されるプロジェクタと、
前記表示器を制御するプロセッサであって、前記表示器の画像表示面における前記画像内の前記第2情報の表示サイズ又は表示位置のうちの少なくとも一方を、前記第1情報とは独立に、前記第2面を有する前記圧迫板の移動に応じて変化させるプロセッサと、を備える
乳房撮影装置。
【請求項2】
前記画像内の前記第1情報の表示サイズ及び表示位置は、前記第1面までの投影距離に応じて予め設定されており、前記第2情報の表示サイズ又は表示位置が変化した場合でも、固定である、
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項3】
前記投影光学系のピントは、前記第1面と、統計的に求められた前記乳房の厚み分、前記第1面から前記プロジェクタ側に近い位置との範囲内で調整される
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項4】
前記投影光学系のピントは、前記第1面に調整されている、
請求項3に記載の乳房撮影装置。
【請求項5】
前記圧迫板の前記第2面において、前記第2情報が投影される領域に対して光の透過を抑制する光透過抑制処理が施されている
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項6】
前記第1情報は、前記乳房を載置する際の指標となる前記乳房の輪郭を示すスキンラインである、
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項7】
前記第2情報は、前記乳房を撮影する際の撮影条件である、
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乳房撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線を曝射するX線曝射手段と、検出面に入射したX線を検出するX線平面検出器と、乳房を圧迫し固定するための圧迫板と、圧迫板によって乳房を固定する際に参照される参照画像を、圧迫板上又は検出面上に投影する投影手段と、を具備することを特徴とする乳房撮影用X線診断装置が開示されている。特許文献1に記載の技術では、投影手段(例えば、プロジェクタ)を用いて乳房をポジショニングするための参照画像(例えば、スキンライン)を圧迫板又は検出面上に投影することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-236805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧迫板と検出面のそれぞれに対して異なる情報を表示したいという要望がある。しかし、圧迫板と検出面とはプロジェクタからの投影距離が異なる。しかも、検出面の高さは固定であり、投影距離は固定であるのに対して、圧迫板の高さは変化するため、投影距離も変化する。この場合、それぞれに投影する情報の投影倍率及びピントを適切に調整するための解決策としては、画像を投影する場所に応じてピントの調整機構を設けたり、画像を投影する場所ごとに異なるプロジェクタを用いたりすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、画像を投影する場所に応じてピントの調整機構を設けたり、画像を投影する場所ごとに異なるプロジェクタを用いたりすれば構成が複雑化する。本開示の技術は、本構成を用いない場合に比べて構成の複雑化を抑制しつつ、投影距離が異なる2つの面に対する適切な投影が可能な乳房撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術に係る第1の態様は、乳房が載置される撮影台と、乳房に向けて放射線を照射する放射線源と、撮影台上の乳房を圧迫する圧迫板であり、放射線源と撮影台との間で移動可能な圧迫板と、撮影台において放射線源と対向する第1面に投影される第1情報と、圧迫板において放射線源と対向する第2面に投影される第2情報とを含む画像を表示する表示器と、第1面と第2面とに向けて画像を投影する投影光学系とを有し、かつ投影光学系のピントが第1面までの投影距離に応じて調整されるプロジェクタと、表示器を制御するプロセッサであって、表示器の画像表示面における画像内の第2情報の表示サイズ又は表示位置のうちの少なくとも一方を、第1情報とは独立に、第2面を有する圧迫板の移動に応じて変化させるプロセッサと、を備える乳房撮影装置である。
【0007】
本開示の技術に係る第2の態様は、画像内の第1情報の表示サイズ及び表示位置は、第1面までの投影距離に応じて予め設定されており、第2情報の表示サイズ又は表示位置が変化した場合でも、固定である、第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0008】
本開示の技術に係る第3の態様は、投影光学系のピントは、第1面と、統計的に求められた乳房の厚み分、第1面からプロジェクタ側に近い位置との範囲内で調整される第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0009】
本開示の技術に係る第4の態様は、投影光学系のピントは、第1面に調整されている、第3の態様に係る乳房撮影装置である。
【0010】
本開示の技術に係る第5の態様は、圧迫板の第2面において、第2情報が投影される領域に対して光の透過を抑制する光透過抑制処理が施されている第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0011】
本開示の技術に係る第6の態様は、第1情報は、乳房を載置する際の指標となる乳房の輪郭を示すスキンラインである、第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0012】
本開示の技術に係る第7の態様は、第2情報は、乳房を撮影する際の撮影条件である、第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【発明の効果】
【0013】
本開示の技術は、構成の複雑化を抑制しつつ、投影距離が異なる2つの面に対する適切な投影が可能な乳房撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】乳房撮影装置の構成の一例を示す外観斜視図である。
図2】乳房撮影装置の構成の一例を示す外観側面図である。
図3】乳房撮影装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】乳房撮影装置における画像の投影の一例を示す側面図である。
図5】乳房撮影装置における画像の投影の一例を示す模式図である。
図6】乳房撮影装置における投影された画像の一例に示す平面図である。
図7】乳房撮影装置における画像の投影の一例を示す側面図である。
図8】プロセッサにおける画像生成処理の一例を示す機能ブロック図である。
図9】乳房撮影装置における投影位置、表示位置並びにサイズ、及びピントについて説明するための図である。
図10】乳房撮影装置における画像の投影の一例を示す側面図である。
図11】乳房撮影装置における画像の投影の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る乳房撮影装置10は、被写体となる被検者の乳房M(図4参照)に放射線を照射して、乳房Mの放射線画像を撮影する放射線撮影装置である。放射線は一例としてX線であるが、γ線でもよい。
【0017】
乳房撮影装置10は、図示しないコンソールに接続されている。コンソールは撮影オーダに応じて乳房撮影装置10を設定する設定機能の他、乳房撮影装置10が撮影した放射線画像を取得して、取得した放射線画像を表示する機能を有する。コンソールは、LAN(Local Area Network)等のネットワーク(図示せず)を介して、画像データベースサーバ(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0018】
乳房撮影装置10は、スタンド20とアーム21とを有する。スタンド20は、放射線撮影室の床面に設置される台座20Aと、台座20Aから高さ方向に延びる支柱20Bとで構成される。アーム21は、横から見た形状が略C字状であり、支柱20Bに接続されている。アーム21は、支柱20Bに対して高さ方向に移動可能であることにより、被検者の身長に応じた高さ調節が可能である。また、アーム21は、支柱20Bに垂直な回転軸回りに回転可能である。
【0019】
アーム21は、線源収容部22、本体部23、及び撮影台24で構成される。線源収容部22には放射線源25が収容されている。撮影台24には、被検者の乳房Mが載置される。撮影台24は、本開示の技術に係る「撮影台」の一例である。撮影台24には放射線検出器26が収容されている。本体部23は、線源収容部22と撮影台24とを一体的に接続する。本体部23は、線源収容部22と撮影台24とを対向する位置に保持する。本体部23の両側には、被検者が把持するための手すり27が設けられている。
【0020】
放射線源25は、撮影台24に載置された乳房Mに向けて放射線を照射する。放射線源25は、本開示の技術に係る「放射線源」の一例である。放射線源25から出射された放射線は、圧迫板30を透過した後、乳房Mに入射する。放射線検出器26は、乳房Mを透過した放射線を検出して放射線画像を出力する。放射線検出器26は、FPD(Flat Panel Detector)と呼ばれる。放射線検出器26は、放射線を可視光に変換するシンチレータを有し、シンチレータが発する可視光を電気信号に変換する間接変換型でもよいし、放射線を直接電気信号に変換する直接変換型でもよい。
【0021】
線源収容部22と撮影台24との間には、照射野限定器31が設けられている。照射野限定器31はコリメータとも呼ばれ、撮影台24への放射線の照射野を規定する。
【0022】
線源収容部22には、フェイスガード32が取り付けられている。フェイスガード32は、放射線が透過しない材料で形成、又はコーティングされており、被検者の顔を放射線から防護する。
【0023】
撮影台24と照射野限定器31との間には、乳房Mを撮影台24との間に挟んで圧迫する圧迫板30が設けられている。圧迫板30は、本開示の技術に係る「圧迫板」の一例である。圧迫板30は、放射線が透過する材料で形成されている。圧迫板30は、撮影台24と対向する位置に配置されている。本実施形態では、圧迫板30を、上面側が開口された箱形状としている。圧迫板30は、平板形状等の他の形状であってもよい。
【0024】
線源収容部22には、プロジェクタ14が収容されている。プロジェクタ14は、撮影台24の撮影面24Aに向けて画像を投影する。ここで、撮影面24Aは、撮影台24において、放射線源25と対向する面である。また、プロジェクタ14は、圧迫板30における放射線源25と対向する面に向けて画像を投影する。本実施形態の圧迫板30は箱形状をしているので、箱形状の底面30Aが放射線源25と対向する面となっている。プロジェクタ14は、圧迫板30の底面30Aに向けて画像を投影する。プロジェクタ14は、本開示の技術に係る「プロジェクタ」の一例である。撮影面24Aは、本開示の技術に係る「第1面」の一例であり、底面30Aは、本開示の技術に係る「第2面」の一例である。
【0025】
駆動機構35は、放射線源25と撮影台24との間で移動可能に圧迫板30を支持している。また、可動部34は、圧迫板30と駆動機構35との間に配置されている。可動部34は、駆動機構35に設けられたレール28に摺動自在に保持されている。レール28は、上下方向に延伸している。
【0026】
圧迫板30は、可動部34に取り付けられている。可動部34は、後述する駆動機構35によって、圧迫板30と一緒に上下方向に移動する。上下方向は、機能的には、圧迫板30が撮影台24に向かう方向(下方向)と、及び圧迫板30が撮影台24から離れる方向(上方向)である。このように、圧迫板30は、撮影台24との間隔を変化させる態様で移動可能に構成されている。
【0027】
図3に示すように、乳房撮影装置10は、制御装置16を備えている。制御装置16は、放射線源25、放射線検出器26、アーム21、駆動機構35及びプロジェクタ14など、乳房撮影装置10の各部の動作を統括的に制御する。図3においては、制御装置16の制御対象を、駆動機構35及びプロジェクタ14に絞って示し、他は省略している。
【0028】
制御装置16は、例えば、プロセッサ16Aと、RAM(Random Access Memory)16Bと、NVM(Non-volatile memory)16Cと、外部I/F(Inter Face)16Dとを備える。プロセッサ16A、RAM16B、NVM16C、及び外部I/F16Dは、バス16Eを介して電気的に接続されている。プロセッサ16Aは、本開示の技術に係る「プロセッサ」の一例である。
【0029】
プロセッサ16Aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、各部を制御する他、後述するように画像処理を行う。また、RAM16Bは、一時的に情報が格納されるメモリであり、プロセッサ16Aによってワークメモリとして用いられる。NVM16Cは、各種プログラム及び各種パラメータ等を記憶する不揮発性の記憶装置である。NVM16Cの一例としては、フラッシュメモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)及び/又はSSD(Solid State Drive))が挙げられる。なお、フラッシュメモリは、あくまでも一例に過ぎず、HDD(Hard Disk Drive)等の他の不揮発性の記憶装置であってもよいし、2種類以上の不揮発性の記憶装置の組み合わせであってもよい。
【0030】
外部I/F16Dは、制御装置16と、プロジェクタ14及び駆動機構35との間の情報の授受を司る。外部I/F16Dは、例えば、プロジェクタ14に対して、投影する画像を表す投影光Lを出射させるための信号を出力する。また、外部I/F16Dは、例えば、駆動機構35に対して、駆動機構35の動作を制御するための信号を出力する。
【0031】
プロジェクタ14は、投影する画像を表示する表示器14Aと、表示器14Aに表示された画像を拡大投影する投影光学系14Dとを備えている(図4も参照)。制御装置16は、表示器14Aの画像表示面14A1における画像の表示を制御する。表示器14Aは、本開示の技術に係る「表示器」の一例であり、画像表示面14A1は、本開示の技術に係る「画像表示面」の一例である。表示器14Aの一例としては、DMD(Digital Micromirror Device)又はLCD(Liquid Crystal Display)が挙げられる。DMDは、周知のように、複数の画素に対応する複数のマイクロミラーを備えている。一例として、各マイクロミラーの角度を変化させることにより、光源からの光を投影光学系14Dに入射させるオン光と、投影光学系14Dに入射しないオフ光とに反射方向を変更する。そして、オン光の継続時間によって画素毎の光量が調整される。このように複数の画素に対応する複数のマイクロミラーの角度変化によって、投影する画像の情報を投影光Lに載せる光変調を行う。表示器14AがDMDの場合は、複数のマイクロミラーが二次元に配列された配列面が画像表示面14A1に相当し、投影する画像に応じたマイクロミラーの制御が画像表示に相当する。LCDは、周知のように、複数の画素に対応する複数の液晶セルを備えており、液晶セル毎に光源からの光の透過状態を変化させることで、投影する画像に応じた光変調を行う。表示器14AがLCDの場合は、複数の液晶セルが二次元に配列された配列面が画像表示面14A1に相当する。図3及び図4においては、模式的に表示器14Aを示しているが、表示器14Aには光源が含まれている。また、表示器14Aとしては、有機ELなどの自発光型の発光素子を二次元に配列し、これを画像表示面14A1として機能させるものでもよい。
【0032】
表示器14Aから出射された投影光Lは、投影光学系14Dに入射し、投影光学系14Dを通過して、圧迫板30の底面30Aに投影される。また、圧迫板30を通過した投影光Lは、撮影台24の撮影面24Aに投影される。投影光学系14Dは、複数の光学素子を含んで構成され、表示器14Aにおいて生成された画像を拡大して圧迫板30及び撮影台24へ向けて投影する。投影光学系14Dは、プロジェクタ14の本体内部に内蔵された内蔵光学系14Bと、プロジェクタ14の本体外部に配置された光学素子とで構成される。例えば、内蔵光学系14Bは、光学素子として1枚以上のレンズ14B1を含む。本体外部に配置された光学素子は、本例ではミラー14Cである。ミラー14Cは、例えば、内蔵光学系14Bの光軸に対して45°傾斜した姿勢で配置されており、内蔵光学系14Bから出射された投影光Lの進路を圧迫板30及び撮影台24に向けて90°変更する。投影光学系14Dのピントは、撮影台24の撮影面24Aまでの投影距離に応じて予め調整されている。内蔵光学系14Bは、本開示の技術に係る「投影光学系」の一例である。なお、ここでは、投影光学系14Dのピントが、画像の投影を実施する前に予め調整されている態様を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限られない。撮影台24の撮影面24Aまでの投影距離に応じてピントの調整がされた状態で画像が投影されればよく、例えば、投影開始から予め定められた時間(例えば、2~3秒)内にピントの調整が実施される態様であってもよい。
【0033】
駆動機構35は、モータドライバ35A、モータ35B、及びエンコーダ35Cを含んでいる。モータドライバ35Aは、外部I/F16Dを介してプロセッサ16Aから出力された信号に基づいて、モータ35Bを動作させる。モータ35Bは、モータドライバ35Aが出力する電気的な駆動信号に応じて回転し、図示しない動力伝達機構(例えば、送りねじ機構)を介して、圧迫板30を移動させる。エンコーダ35Cは、モータ35Bの回転の機械的変位量を電気信号に変換し、プロセッサ16Aに対して出力する。
【0034】
エンコーダ35Cは、圧迫板30の移動量を検出するために用いられる。エンコーダ35Cは、例えば、光を透過する複数の小孔が一定間隔で円周上に配列され、モータ35Bの回転軸とともに回転する回転板と、フォトセンサとを組み合わせたロータリーエンコーダである。ロータリーエンコーダは、周知のように回転板の回転に伴って小孔から間欠的に出力されるパルス光をフォトセンサで受光し、受光したパルス光の数に応じたエンコーダパルスを出力する。エンコーダパルスは、モータ35Bの回転の機械的変位量を表す電気信号の一例である。プロセッサ16Aは、エンコーダパルスをカウントすることにより、モータ35Bの回転量を導出し、導出した回転量から圧迫板30の移動量を検出する。なお、エンコーダ35Cは、ロータリーエンコーダの代わりに、圧迫板30の移動量を検出するリニアエンコーダでもよい。また、モータ35Bとしてパルスモータを使用し、プロセッサ16Aがモータ35Bに出力する駆動パルスをカウントすることにより、圧迫板30の移動量を検出してもよい。
【0035】
図4及び図5に示すように、乳房撮影装置10では、プロジェクタ14から投影光Lを出射させることにより、情報を撮影面24A及び圧迫板30の底面30Aに投影する。プロジェクタ14は、撮影面24A及び圧迫板30の底面30Aのそれぞれに異なる情報を投影することが可能である。
【0036】
圧迫板30の底面30Aには、撮影条件を示す情報である撮影条件情報50が投影される。撮影条件とは、例えば、乳房Mに対する現在の圧迫圧力、圧迫厚みt、又は撮影手技の種類が挙げられる。圧迫圧力は、例えば、乳房Mを圧迫板30で圧迫した場合に圧迫板30に加わる反力を圧力測定器(図示せず)によって計測することにより求められる。圧力測定器は例えば撮影台24に設けられる。圧迫厚みtは、乳房Mを圧迫した状態における圧迫板30の撮影面24Aに対する高さを計測することにより求められる。圧迫板30の高さは、例えば、エンコーダ35Cによって検出される圧迫板30の移動量に基づいて計測される。撮影手技としては、例えば、乳房Mを被検者の頭尾方向から圧迫して撮影するCC撮影(CC; Cranio-Caudal)、乳房Mを被検者の頭尾方向に対して傾斜した方向から圧迫して撮影するMLO撮影(MLO; Medio-Lateral)などがある。撮影手技は、例えば、予め操作者によって入力される。また、その他の撮影条件として、例えば、過去の撮影条件(圧迫圧力、圧迫厚みt、及び撮影手技の種類など)が挙げられる。さらに、その他の撮影条件として、被検者を特定可能な情報(例えば、被検者の氏名、性別、年齢、又は被検者ID(identification)等)が挙げられる。さらに、その他の撮影条件として、乳房撮影検査に関する情報(検査日時、検査実施者、放射線照射時間、又は放射線照射時の線源の出力若しくは管電圧等)が挙げられる。撮影条件情報50は、本開示の技術に係る「第2情報」の一例である。
【0037】
圧迫板30の底面30Aにおいて、撮影条件情報50が投影される領域51には、光の透過を抑制する処理が施されている。図6に示す例では、撮影条件情報50が投影される領域51に、粗面化処理が施されている。これにより、撮影条件情報50を表す投影光Lが圧迫板30を透過しにくくなり、圧迫板30上での反射光量が増加する。これにより、圧迫板30上において撮影条件情報50が明瞭に視認される。ここで、粗面化処理の一例としては、ブラスト加工が挙げられる。また、光の透過を抑制する処理のその他の例としては、圧迫板30に撮影条件情報50が投影される領域51に投影光Lに対して不透明な部材が取り付けられてもよい。例えば、圧迫板30の領域51にシールが貼り付けられる態様であってもよい。
【0038】
圧迫板30の領域51以外の部分は、投影光Lに対して透明な材質である。このため、圧迫板30を透過した投影光Lは、撮影面24Aに投影される。撮影面24A上には、乳房Mを載置する際の指標となる乳房Mの輪郭を示すスキンライン24Bが投影される。スキンライン24Bの示す乳房Mの輪郭は、過去の検査において撮影した検査画像から乳房Mの輪郭を抽出することにより得られる。撮影面24Aと放射線検出器26の検出面との相対的な位置関係は既知であるため、放射線検出器26で検出された検査画像に写るスキンラインの位置から、撮影面24A上において投影すべきスキンライン24Bの投影位置を導出することができる。このように過去の検査時のスキンライン24Bを表示することで、過去の検査時と同じ位置で乳房Mを撮影することが可能となり、経過観察を行う際などに有効である。スキンライン24Bは、本開示の技術に係る「第1情報」の一例である。撮影台24の撮影面24A上には、被検者の乳房Mがユーザによってポジショニングされる。乳房Mがポジショニングされた状態で、圧迫板30により乳房Mが圧迫される。そして、図5及び図6に示すように、圧迫板30には、撮影条件情報50が投影され、さらに撮影面24Aには、スキンライン24Bが投影される。なお、撮影面24Aには、スキンライン24Bに代えて、又はスキンライン24Bとともに乳房Mの乳頭の位置を示すマーク(例えば、乳頭の位置に交点を有する十字のマーク)が投影されてもよい。
【0039】
投影光学系14Dの投影倍率は、例えば、画像表示面14A1に表示可能な最大サイズの画像が、撮影面24Aの範囲内に収まるように設定されている。このため、画像表示面14A1に表示される情報のうち、撮影面24Aに到達する投影光Lが担持する情報は、すべて撮影面24Aに投影される。
【0040】
ここで、図7に示すように、圧迫板30は、上下方向(図7中に示すZ方向に沿った方向)に移動する。これにより、圧迫板30とプロジェクタ14との間の距離が変化する。そのため、投影光学系14Dの投影倍率が固定されていても、プロジェクタ14から圧迫板30までの画像の投影距離が変化するため、圧迫板30における投影範囲Rが変化する。より具体的には、圧迫板30における撮影条件情報50の表示サイズが変化する。例えば、圧迫板30がプロジェクタ14に最も近い側で、撮影条件情報50の表示サイズが最も小さくなり、プロジェクタ14から離れるほど、撮影条件情報50の表示サイズが大きくなる。そして、プロジェクタ14から最も離れた位置で、撮影条件情報50の表示サイズが最も大きくなる。また、圧迫板30に対して投影光Lの光束が入射する向きによっては、表示サイズが変化することにより、圧迫板30内における表示位置が変化する場合もある。このように、圧迫板30が移動することで、撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置の少なくとも一方が変化してしまうので、撮影条件情報50が圧迫板30からはみ出したり、撮影条件情報50が小さすぎて内容の判読ができなかったりする。この結果、ユーザによる撮影条件情報50の視認性が低下する。
【0041】
一方、撮影面24Aでは、プロジェクタ14からの投影距離が一定の為、プロジェクタ14から投影されるスキンライン24Bの表示サイズは変化しない。また、上述したようにプロジェクタ14の投影光学系14Dのピントも撮影面24Aまでの距離に応じて予め調整されている。投影光学系14Dのピントは、例えば、投影光学系14Dの光学素子の配置、及び撮影面24Aとプロジェクタ14との距離等に基づいて光学的に設定される。例えば、投影光学系14Dのピントは、撮影面24Aと、統計的に求められた乳房Mの厚みt分、撮影面24Aからプロジェクタ14に近い位置との範囲内に調整される。ここで、統計的に求められた乳房Mの厚みtとは、例えば、複数の被検者の乳房Mの厚みtの平均値であるが、これはあくまでも一例にすぎない。例えば、統計的に求められた乳房Mの厚みtは、複数の被検者の乳房Mの厚みtの最頻値であってもよいし、中央値であってもよい。本例では、投影光学系14Dのピントは、撮影面24Aにあっている。
【0042】
このように、乳房撮影装置10では、プロジェクタ14からの投影距離が変化する圧迫板30において、撮影条件情報50を投影させ、かつ投影距離の変化しない撮影面24Aにおいて、スキンライン24Bを投影する。この場合、例えば、圧迫板30に撮影条件情報50を投影するためのプロジェクタ、及び撮影面24Aにスキンライン24Bを投影するためのプロジェクタの2台を乳房撮影装置10に搭載することも考えられるが、乳房撮影装置10の構成が複雑化する。
【0043】
そこで、本実施形態に係る乳房撮影装置10では、プロセッサ16Aは、1台のプロジェクタ14の表示器14Aを制御することにより、撮影面24Aにはスキンライン24Bを、圧迫板30の底面30Aに対しては撮影条件情報50をというように、投影距離が異なる2つの面に対する適切な投影を実現している。まず、プロジェクタ14の表示器14Aに表示される情報は、撮影条件情報50とスキンライン24Bとを含む画像52である(図8図10及び図11参照)。そして、プロセッサ16Aは、表示器14Aを制御することにより、画像表示面14A1において、スキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置とは独立に、画像52の撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置を圧迫板30の移動に応じて変化させる。また、プロセッサ16Aは、表示器14Aの画像表示面14A1における画像52のスキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置を予め設定する。
【0044】
図8に一例として示すように、プロセッサ16Aは、表示器14Aに表示させるための画像52を生成する画像生成処理を実行する。先ず、プロセッサ16Aは、画像52における撮影条件情報50を取得する。例えば、プロセッサ16Aは、圧力測定器の計測値及び圧迫板30の高さから、撮影条件情報50の圧迫厚みt及び圧迫力等を取得する。また、プロセッサ16Aは、操作者の入力情報から、撮影手技を取得する。また、プロセッサ16Aは、過去に撮影された乳房Mの検査画像から導出されたスキンライン24Bの情報(スキンライン24Bの形状及び位置を表す座標情報)を取得する。そして、プロセッサ16Aは、取得した撮影条件情報50及びスキンライン24Bに基づいて、それぞれの情報を表す画像52A及び52Bを生成する。そして、プロセッサ16Aは、2つの画像52A及び52Bを合成し、撮影条件情報50及びスキンライン24Bを含む画像52を生成する。
【0045】
さらに、プロセッサ16Aは、圧迫板30の位置及び圧迫板30における投影範囲Rに応じて、生成された画像52内における撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置を調整する。一方、撮影面24Aまでの投影距離は固定であるため、画像52のうち、撮影面24Aに投影されるスキンライン24Bについては、圧迫板30の位置に応じた表示サイズ及び表示位置の調整は行われない。すなわち、プロセッサ16Aは、画像52内におけるスキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置に対する調整とは独立して、撮影条件情報50に対する表示サイズ及び表示位置の調整を行う。
【0046】
プロセッサ16Aは、上述したとおり、駆動機構35のエンコーダ35C(図3参照)からのエンコーダパルスをカウントすることにより、圧迫板30の移動量を検出する。そして、検出した移動量に応じて圧迫板30の位置を求める。プロセッサ16Aは、圧迫板30の位置に基づいて画像52内における撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置を調整する。このように、圧迫板30の位置(すなわち、撮影面24Aからの高さ)に応じた画像52が生成される。図8において、画像生成処理によって生成される高さに応じた画像52は、圧迫板30の位置に応じて撮影条件情報50の表示位置及び表示サイズが変化している様子を示している。
【0047】
プロセッサ16Aは、圧迫板30の位置に応じた画像52を示す信号をプロジェクタ14の表示器14Aに対して出力する。表示器14Aは、プロセッサ16Aから取得した信号に基づいて、画像表示面14A1において画像52を表示する。そして、プロジェクタ14は、内蔵光学系14Bを介して、画像52を示す投影光Lを出射する。
【0048】
以上で説明した、プロジェクタ14が投影する情報毎の投影条件、すなわち、投影箇所、ピント、並びに、表示位置及び表示サイズを整理すると図9のようになる。まず、スキンライン24Bの投影箇所は、撮影面24Aであり、画像52内におけるスキンライン24Bの表示位置及び表示サイズは固定されている。一方、撮影条件情報50の投影箇所は、圧迫板30の底面30Aであり、表示位置及びサイズは、圧迫板30の高さに応じて調整される。具体的には、圧迫板30の位置(すなわち、撮影面24Aからの高さ)が低いほど、投影距離が長くなる。投影距離が長くなる分、画像52の拡大率は相対的に上昇するため、その上昇分を考慮して、表示器14Aに表示される画像52の表示サイズは小さくなる。また、圧迫板30の位置が高いほど投影距離が短くなる。投影距離が短くなる分、画像52の拡大率は相対的に低下するため、その低下分を考慮して、表示器14Aに表示される画像52の表示サイズは大きくなる。そして、プロジェクタ14における投影光学系14Dのピントは、撮影面24Aと、統計的に求められた乳房Mの厚みt分、撮影面24Aからプロジェクタ14に近い位置との範囲内に調整されることで、固定されている。また、投影光学系14Dの投影倍率も固定である。
【0049】
次に、本実施形態に係る乳房撮影装置10の作用について図10及び図11を参照しながら説明する。図10に示すように、先ず、圧迫板30が最もプロジェクタ14に近い位置(すなわち、撮影面24Aからの距離h1)の状態を考える。この場合、表示器14Aの画像表示面14A1における画像52において、スキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置は予め設定されている。例えば、スキンライン24Bが過去の撮影で載置された乳房Mの撮影面24Aにおける位置を示す場合は、画像52のスキンライン24Bの表示サイズは、撮影面24Aにおいて実際の乳房の大きさと等倍になるように調整される。また、画像52のスキンライン24Bの表示位置は、過去の撮影で載置された乳房Mの撮影面24Aにおける位置と同じ位置になるように調整される。こうして調整されたスキンライン24Bの表示位置及び表示サイズは、圧迫板30の位置が変化しても固定である。換言すれば、後述するように、圧迫板30の移動に応じて撮影条件情報50の表示サイズ又は表示位置が変化した場合でも、スキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置は、固定である。
【0050】
一方、画像表示面14A1における画像52において、撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置は、圧迫板30の位置(すなわち、撮影面24Aからの距離h1)に応じて調整される。圧迫板30が最もプロジェクタ14に近い位置にあるため、画像52内において、撮影条件情報50の表示サイズが最も大きくなるように調整される。また、圧迫板30によって表示位置の調整が必要な場合は、撮影条件情報50表示位置も変更される。例えば、撮影条件情報50の圧迫板30上の投影位置をなるべく乳房Mから離した位置、すなわち、反胸壁側(被検者の胸壁の反対側)に投影したい場合がある。この場合において、撮影条件情報50の表示サイズが相対的に縮小すると、圧迫板30の反胸壁側に隙間が生じるので、その隙間を埋めるように撮影条件情報50の表示位置が反胸壁側に寄せられる。
【0051】
そして、プロジェクタ14から画像52が圧迫板30と撮影面24Aに投影される。圧迫板30には、表示サイズ及び表示位置が圧迫板30の位置に応じて調整された撮影条件情報50が投影される。例えば、撮影条件情報50は、圧迫板30の透過を抑制する処理が施された領域51内に投影される。また、撮影面24Aには、スキンライン24Bが投影される。プロジェクタ14の内蔵光学系14Bのピントは、撮影面24Aにあっているので、スキンライン24Bのピントがあった状態で撮影面24Aに投影される。
【0052】
この場合、スキンライン24Bにピントがあっているので、乳房Mの輪郭をスキンライン24Bに合わせることができる。また、圧迫板30に撮影条件情報50が投影されているので、ユーザは、乳房Mの位置合わせをしながら撮影条件を確認することができる。この場合、圧迫板30に投影される撮影条件情報50には、ピントが合っていない。しかし、圧迫板30は、ピントが合っている撮影面24Aの近距離側にあるので、ピントが合っている位置の遠距離側に比べてボケの度合いが小さくて済む。このため、撮影条件についても視認性が良好な適切な投影が可能となる。
【0053】
次に、図11に示すように、圧迫板30がプロジェクタ14から離れる方向に移動した位置(すなわち、撮影面24Aからの距離h2<h1)の状態を考える。この場合、表示器14Aの画像表示面14A1における画像52において、スキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置は固定されたままである。すなわち、圧迫板30が最もプロジェクタ14に近い位置にある状態と同じ設定で、スキンライン24Bが画像52内に表示されている。
【0054】
画像52内において、撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置が、圧迫板30の位置(すなわち、撮影面24Aからの距離h2)に応じて調整される。圧迫板30がプロジェクタ14から離れた位置に移動(すなわち、撮影面24Aからの距離h1から距離h2の位置まで移動)したため、圧迫板30までの投影距離が長くなる。そして、圧迫板30までの投影距離が長くなった分に応じて、画像52内において、撮影条件情報50の表示サイズが小さくなるように調整される。また、撮影条件情報50の表示サイズの調整に合わせて、表示位置の変更が必要な場合は、撮影条件情報50の表示位置も変更される。例えば、プロセッサ16Aは、圧迫板30の位置及び圧迫板30における投影範囲に応じて、表示器14Aを制御することにより、画像表示面14A1における画像52内の撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置を調整する。
【0055】
そして、プロジェクタ14から画像52が圧迫板30と撮影面24Aに投影される。圧迫板30には、表示サイズ及び表示位置が圧迫板30の位置に応じて調整された撮影条件情報50が投影される。すなわち、圧迫板30が移動する前の表示サイズ及び表示位置と同様な表示サイズ及び表示位置で、圧迫板30に撮影条件情報50が表示される。例えば、撮影条件情報50は、圧迫板30の透過を抑制する処理が施された領域51内に投影される。また、撮影面24Aには、スキンライン24Bが投影される。プロジェクタ14の内蔵光学系14Bのピントは、撮影面24Aにあっているので、スキンライン24Bのピントがあった状態で撮影面24Aに投影される。
【0056】
この場合、スキンライン24Bにピントがあっているので、乳房Mの輪郭をスキンライン24Bに合わせることができる。また、圧迫板30に撮影条件情報50が投影されているので、ユーザは、乳房Mの位置合わせをしながら撮影条件を確認することができる。この場合、圧迫板30に投影される撮影条件情報50は、表示サイズ及び表示位置が圧迫板30の位置に応じて調整されている。このため、圧迫板30による乳房Mの圧迫の間、撮影条件情報50を同じ領域内に表示し続けることができる。このため、撮影条件についても視認性が良好な適切な投影が可能となる。
【0057】
なお、ここでは、圧迫板30の位置が最もプロジェクタ14に近い位置(すなわち、撮影面24Aからの距離h1)の場合と、圧迫板30が乳房Mを圧迫している位置(すなわち、撮影面24Aからの距離h2)の場合を挙げて説明したが、これら以外の位置に圧迫板30がある場合にも、撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置が調整される。つまあり、圧迫板30が放射線源25と撮影台24との間で移動する場合において、撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置は、圧迫板30の移動に応じて調整される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る乳房撮影装置10によれば、撮影台24に投影するスキンライン24Bと圧迫板30に投影する撮影条件情報50のそれぞれについて、ピント調整と、投影する位置及びサイズの調整との両方を行う場合と比較して、プロジェクタ14又は投影光学系を複雑化することなく、撮影条件情報50の視認性を保って投影することが可能となる。すなわち、プロジェクタ14の内蔵光学系14Bのピントは撮影面24Aまでの投影距離に応じて調整されている。これにより、プロジェクタ14の構成の簡素化が可能となる。また、投影距離が異なる2つの情報(すなわち、撮影条件情報50及びスキンライン24B)を1つのプロジェクタ14で投影する場合において、近距離側と遠距離側の一方にピントを合わせた場合の他方側のボケ度合いを比較すると、遠距離側にピントを合わせた場合の近距離側のボケ度合いの方が少ない。そのため、上記構成のようにスキンライン24Bが投影される撮影台24側にピントを調整しておくことで、撮影条件情報50の視認性の低下を抑制できる。
【0059】
また、本実施形態に係る乳房撮影装置10では、撮影面24Aに投影されるスキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置は、撮影面24Aまでの投影距離に応じて予め設定されている。これにより、撮影条件情報50に加えて、スキンライン24Bも表示サイズ及び表示位置の調整が行われる場合と比較して、プロジェクタ14の構成の簡素化が可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係る乳房撮影装置10によれば、内蔵光学系14Bのピントは、撮影面24Aと、統計的に求められた乳房Mの厚みt分、撮影面24Aからプロジェクタ14側に近い位置との範囲内で調整される。ピントは上記範囲内で調整されるため、ピントが上記範囲外に調整される場合と比較して、スキンライン24Bと撮影条件情報50の両方についてバランスよく良好な視認性を確保することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る乳房撮影装置10では、ピントは撮影面24Aに合っているため、ピントが撮影面24A以外にあっている場合と比較してスキンライン24Bについて良好な視認性を確保できる。
【0062】
また、本実施形態に係る乳房撮影装置10では、圧迫板30において、撮影条件情報50が投影される領域に対して投影光Lの透過を抑制する光透過抑制処理が施されている。これにより、光透過抑制処理が施されていない場合と比較して、圧迫板30に投影される撮影条件情報50の視認性が向上する。
【0063】
また、本実施形態に係る乳房撮影装置10では、撮影面24Aに投影される情報は、乳房Mを載置する際の指標となる乳房Mの輪郭を示すスキンライン24Bである。スキンライン24Bが撮影面24Aに表示されるので、スキンライン24Bが表示されない場合と比較して、乳房Mを撮影台24に載置する際の位置決め精度が向上する。
【0064】
また、本実施形態に係る乳房撮影装置10では、撮影条件情報50は、乳房Mを撮影する際の撮影条件である。撮影条件が圧迫板30に表示されるので、撮影条件が表示されない場合と比較して、撮影条件を確認することが容易になる。
【0065】
なお、上記実施形態では、撮影条件情報50の表示サイズ及び表示位置の両方が圧迫板30の移動に応じて調整される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。撮影条件情報50の表示サイズ又は表示位置のうちの一方が、圧迫板30の移動に応じて調整される態様であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、表示器14Aの画像表示面14A1における画像52内で、スキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置が予め設定されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、スキンライン24Bの表示サイズ及び表示位置は、一旦設定された後、ユーザの入力に基づいて調整されてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、圧迫板30に撮影条件情報50が投影され、撮影面24Aにスキンライン24Bが表示される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、圧迫板30に撮影条件情報50及びスキンライン24Bが表示される態様であってもよい。この場合、圧迫板30において、スキンライン24Bが表示される領域にも透過抑制処理が施される。ただし、この場合、圧迫板30を通して乳房Mが見えづらくなるので、上記実施形態で説明したように、投影光Lが圧迫板30を透過し、撮影面24Aにスキンライン24Bが表示される態様がより好ましい。
【0068】
上記のプロセッサには、CPUの他、GPU(Graphics Processing Unit)が含まれる。また、上記のプロセッサは、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能するCPU等の汎用的なプロセッサに限られず、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0069】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる
【0070】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0071】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0072】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<付記1>
乳房が載置される撮影台と、
上記乳房に向けて放射線を照射する放射線源と、
上記撮影台上の上記乳房を圧迫する圧迫板であり、上記放射線源と上記撮影台との間で移動可能な圧迫板と、
上記撮影台において上記放射線源と対向する第1面に投影される第1情報と、上記圧迫板において上記放射線源と対向する第2面に投影される第2情報とを含む画像を表示する表示器と、上記第1面と上記第2面とに向けて上記画像を投影する投影光学系とを有し、かつ上記投影光学系のピントが上記第1面までの投影距離に応じて調整されるプロジェクタと、
上記表示器を制御するプロセッサであって、上記表示器の画像表示面における上記画像内の上記第2情報の表示サイズ又は表示位置のうちの少なくとも一方を、上記第1情報とは独立に、上記第2面を有する上記圧迫板の移動に応じて変化させるプロセッサと、を備える
乳房撮影装置。
<付記2>
上記画像内の上記第1情報の表示サイズ及び表示位置は、上記第1面までの投影距離に応じて予め設定されており、上記第2情報の表示サイズ又は表示位置が変化した場合でも、固定である、
付記1に記載の乳房撮影装置。
<付記3>
上記投影光学系のピントは、上記第1面と、統計的に求められた上記乳房の厚み分、上記第1面から上記プロジェクタ側に近い位置との範囲内で調整される
付記1又は付記2に記載の乳房撮影装置。
<付記4>
上記投影光学系のピントは、上記第1面に調整されている、
付記1から付記3のうちの何れか一つに記載の乳房撮影装置。
<付記5>
上記圧迫板の上記第2面において、上記第2情報が投影される領域に対して光の透過を抑制する光透過抑制処理が施されている
付記1から付記4のうちの何れか一つに記載の乳房撮影装置。
<付記6>
上記第1情報は、上記乳房を載置する際の指標となる上記乳房の輪郭を示すスキンラインである、
付記1から付記5のうちの何れか一つに記載の乳房撮影装置。
<付記7>
上記第2情報は、上記乳房を撮影する際の撮影条件である、
付記1から付記6のうちの何れか一つに記載の乳房撮影装置。
【符号の説明】
【0073】
10 乳房撮影装置
14 プロジェクタ
14A 表示器
14A1 画像表示面
14B 内蔵光学系
14B1 レンズ
14C ミラー
14D 投影光学系
16 制御装置
16A プロセッサ
16B RAM
16C NVM
16D 外部I/F
16E バス
20 スタンド
20A 台座
20B 支柱
21 アーム
22 線源収容部
23 本体部
24 撮影台
24A 撮影面
24B スキンライン
25 放射線源
26 放射線検出器
28 レール
30 圧迫板
30A 底面
31 照射野限定器
32 フェイスガード
34 可動部
35 駆動機構
35A モータドライバ
35B モータ
35C エンコーダ
50 撮影条件情報
51 領域
52,52A,52B 画像
L 投影光
M 乳房
t 乳房圧迫厚み
h1 距離
h2 距離
R 投影範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11