(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033823
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】印刷システム、印刷検査装置、及び印刷検査方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20240306BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240306BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J29/393 101
B41J29/38 202
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137675
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】森田 紘行
(72)【発明者】
【氏名】北井 正
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS02
2C061HJ10
2C061HK11
2C061HN15
2C061KK13
2C061KK18
2C061KK31
2H270LA19
2H270LA22
2H270LD03
2H270MB12
2H270MB25
2H270MB33
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】印刷装置が印刷した印刷物の裏写りを検査する印刷システムにおいて、裏写りを欠陥として判定しない検査しきい値をより高速に決定できるようにする。
【解決手段】印刷システムは、印刷物の読取画像を取得する読取画像取得部と、基準画像と読取画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、差分画像と検査しきい値とに基づいて、印刷物の欠陥を検査する検査部と、印刷物の裏写りを欠陥と判定しない検査しきい値を決定する決定部と、を有し、決定部は、グラデーション領域とテストパターンとを含むテストチャートを印刷装置で両面印刷し、テストチャートの差分画像におけるグラデーション領域から、検査しきい値の初期値を設定し、検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、テストチャートの差分画像において、テストパターンにおける裏写りを欠陥と判定しない検査しきい値を決定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づいて印刷装置が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する読取画像取得部と、
前記読取画像の比較対象となる基準画像と、前記読取画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像と検査しきい値とに基づいて、前記印刷物の欠陥を検査する検査部と、
前記印刷物の裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する決定部と、
を有し、
前記決定部は、
所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域と、裏写りを判定するテストパターンとを含むテストチャートを前記印刷装置で両面印刷し、
前記テストチャートの前記差分画像における前記グラデーション領域から、前記検査しきい値の初期値を設定し、
前記検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、前記テストチャートの前記差分画像において、前記テストパターンにおける裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する、
印刷システム。
【請求項2】
前記決定部は、決定した前記検査しきい値を、前記テストチャートを両面印刷した記録媒体の情報と対応付けて記憶部に記憶し、
前記検査部は、前記印刷装置が前記記録媒体に印刷物を印刷する場合、前記記憶部に記憶した前記記録媒体の情報に対応する前記検査しきい値を用いて、前記印刷物の欠陥を検査する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記決定部は、
前記検査部が、前記検査しきい値の初期値で、前記テストチャートにおける裏写りを欠陥と判定した場合、
前記検査しきい値を段階的に変更しながら、前記テストパターンにおける裏写りが欠陥と判定されない前記検査しきい値を決定する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記テストチャートは、複数の色に対応する前記グラデーション領域を含む、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記決定部は、前記複数の色ごとに、前記検査しきい値の初期値を求め、前記複数の色ごとに求めた前記検査しきい値のうち、最も厳しい検査しきい値を、前記検査しきい値の初期値とする、請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記決定部が決定した前記検査しきい値に基づいて、裏写りの検査しきい値を設定する設定画面を表示するUI部を有し、前記設定画面で前記検査しきい値を変更可能である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記裏写りの検査しきい値を複数有し、
前記決定部は、複数の前記裏写りの検査しきい値のうち、前記検査しきい値の初期値より厳しい全ての検査しきい値で、前記テストパターンにおける裏写りを判定して、前記裏写りの判定結果を記憶部に記憶し、
前記UI部は、前記設定画面で前記検査しきい値が変更された場合、前記記憶部に記憶した前記裏写りの判定結果に基づいて、変更された前記検査しきい値における前記裏写りが欠陥と判定された場所を表示する、
請求項6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記テストチャートは、表面のテストチャートと裏面のテストチャートとを含み、
前記テストチャートが左右反転して重ねられた場合の前記表面のテストチャート上の画像オブジェクトの範囲を示す座標を記憶した、左右反転座標セットと、
前記テストチャートが上下反転して重ねられた場合の前記表面のテストチャート上の画像オブジェクトの範囲を示す座標を記憶した、上下反転座標セットと、
を有し、
前記決定部は、
前記テストチャートを左右反転して両面印刷した場合、前記左右反転座標セットに含まれていない座標範囲で、前記検査部が検出した欠陥を裏写りの判定から除外し、
前記テストチャートを上下反転して両面印刷した場合、前記上下反転座標セットに含まれていない座標範囲で、前記検査部が検出した欠陥を裏写りの判定から除外する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項9】
印刷データに基づいて印刷装置が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する読取画像取得部と、
前記読取画像の比較対象となる基準画像と、前記読取画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像と検査しきい値とに基づいて、前記印刷物の欠陥を検査する検査部と、
前記印刷物の裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する決定部と、
を有し、
前記決定部は、
所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域と、裏写りを判定するテストパターンとを含むテストチャートを前記印刷装置で両面印刷し、
前記テストチャートの前記差分画像における前記グラデーション領域から、前記検査しきい値の初期値を設定し、
前記検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、前記テストチャートの前記差分画像において、前記テストパターンにおける裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する、
印刷検査装置。
【請求項10】
印刷検査システムが、
印刷データに基づいて印刷装置が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する取得処理と、
前記読取画像の比較対象となる基準画像と、前記読取画像との差分画像を生成する生成処理と、
前記差分画像と検査しきい値とに基づいて、前記印刷物の欠陥を判定する判定処理と、
前記印刷物の裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する決定処理と、
を実行し、
前記決定処理は、
所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域と、裏写りを判定するテストパターンとを含むテストチャートを前記印刷装置で両面印刷し、
前記テストチャートの前記差分画像における前記グラデーション領域から、前記検査しきい値の初期値を設定し、
前記検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、前記テストチャートの前記差分画像において、前記テストパターンにおける裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する、
印刷検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、印刷検査装置、及び印刷検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置が印刷した印刷物の裏写りを検査する印刷検査装置がある。例えば、画像が第1面に印刷された印刷物の第2面を読み取り、裏写りが発生しているかを判定し、裏写りが発生している印刷物の第1面の画像と第2面の画像との濃度差を濃度差閾値として記憶するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された技術では、裏写り判定のしきい値を決定するために、裏写りが発生していると判定された印刷物の第1面の画像と、当該印刷物の第2面に裏写りした画像との濃度差を演算する必要がある。
【0004】
本発明の一実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、印刷装置が印刷した印刷物の裏写りを検査する印刷システムにおいて、裏写りを欠陥として判定しない検査しきい値をより高速に決定できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る印刷システムは、印刷データに基づいて印刷装置が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する読取画像取得部と、前記読取画像の比較対象となる基準画像と、前記読取画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像と検査しきい値とに基づいて、前記印刷物の欠陥を検査する検査部と、前記印刷物の裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する決定部と、を有し、前記決定部は、所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域と、裏写りを判定するテストパターンとを含むテストチャートを前記印刷装置で両面印刷し、前記テストチャートの前記差分画像における前記グラデーション領域から、前記検査しきい値の初期値を設定し、前記検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、前記テストチャートの前記差分画像において、前記テストパターンにおける裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、印刷装置が印刷した印刷物の裏写りを検査する印刷システムにおいて、裏写りを欠陥として判定しない検査しきい値をより高速に決定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る印刷システムのシステム構成の例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る印刷システムの機能構成の例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係るジョブ情報の例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る検査しきい値の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る検査レベル、及び欠陥検出フィルタの例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るテストチャートの例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る検査レベルの初期値について説明するための図である。
【
図9】一実施形態に係るテストチャートの読取画像、及び座標テーブルの例を示す図である。
【
図10】一実施形態に係る検査レベルの設定画面の例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係る検査しきい値の決定処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
<システム構成>
図1は、一実施形態に係る印刷システムのシステム構成の例を示す図である。印刷システム1は、一例として、
図1に示すように、DFE(Digital Front End)100、印刷装置110、印刷検査装置120、及びスタッカ130等を含む。
【0010】
DFE100は、受信した印刷ジョブに基づいてRIP(Raster Image Processor)処理を行って、印刷対象の印刷データを生成し、生成した印刷データと、印刷ジョブの処理内容を示すジョブ情報とを、印刷装置110に出力する情報処理装置である。
【0011】
印刷装置110は、DFE100から受信した印刷データ、及びジョブ情報に基づいて、記録媒体である用紙への印刷を行う画像形成装置である。例えば、印刷装置110は、給紙部111から用紙を取得し、取得した用紙を、搬送経路112に従って搬送する。また、印刷装置110は、搬送ベルト114に沿って、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)の感光体ドラム113K、113C、113M、及び113Yが並べられている。印刷装置110は、この感光体ドラム113K、113C、113M、及び113Yで各色のトナー像を搬送ベルト114上に重ね、ローラ115で、搬送される用紙にトナー像を転写し、ローラ117で、用紙上に定着させる。
【0012】
印刷装置110は、片面印刷の場合は、用紙をそのまま印刷検査装置120に排出し、両面印刷の場合は、反転パス118で用紙を反転して、再び搬送経路112に従って搬送する。これにより、印刷装置110は、用紙の表面と同様にして、裏面にもトナー像を転写、及び定着し、その後、用紙を印刷検査装置120に排出する。
【0013】
印刷検査装置120は、印刷装置110が印刷した印刷物を検査する検査装置である。例えば、印刷検査装置120は、読取装置121、122を用いて、搬送経路123において用紙の両面を読み取って、読取画像を生成する。印刷検査装置120は、読み取った用紙を、スタッカ130に排出する。
【0014】
また、印刷検査装置120は、読み取った読取画像の比較対象となる基準画像と、読取画像との差分画像を生成し、生成した差分画像と検査しきい値とに基づいて、印刷物の欠陥を検査する。
【0015】
スタッカ130は、印刷検査装置120から排出された用紙を、トレイ131にスタックする。
【0016】
図1の例では、印刷装置110が、操作パネル10を有している。ただし、
図1に示した印刷システム1のシステム構成は一例である。例えば、印刷検査装置120は、操作パネル20を有さず、印刷装置110の操作パネル10で、印刷検査装置120の設定、及び検査結果の表示等を行うものであってもよい。また、印刷検査装置120は、通信ネットワークを介して接続されるPC等の情報端末で、印刷検査装置120の設定、及び検査結果の表示等を行うものであってもよい。
【0017】
<ハードウェア構成>
印刷装置110、及び印刷検査装置120は、例えば、
図2に示すように、専用デバイス209を備えたコンピュータ200のハードウェア構成を有している。
【0018】
図2は、一実施形態に係るコンピュータ200のハードウェア構成の例を示す図である。コンピュータ200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)201、RAM(Random Access Memory)202、ROM(Read Only Memory)203、ストレージデバイス204、通信デバイス205、及びI/F206等がバス210を介して接続されている。また、I/F206には、例えば、出力デバイス207、入力デバイス208、及び専用デバイス209等が接続されている。
【0019】
CPU201は、例えば、ストレージデバイス204、又はROM203等の記憶媒体に記憶した所定のプログラムを実行することにより、印刷装置110、又は印刷検査装置120等の全体を制御するプロセッサである。RAM202は、例えば、CPU201の作業領域等として用いられる揮発性のメモリである。ROM203は、例えば、CPU201の起動用のプログラム等を記憶した不揮発性のメモリである。ストレージデバイス204は、例えば、OS(Operating System)、アプリケーション、データ、又は情報等を記憶する大容量の記憶デバイスである。
【0020】
通信デバイス205は、他のコンピュータ200と通信するための有線、又は無線の様々な通信インタフェースを含む。I/F206は、バス210に、各種のハードウェアを接続するためのインタフェースである。
図2の例では、I/F206には、出力デバイス207、入力デバイス、及び専用デバイス等が接続されている。
【0021】
出力デバイス207は、外部への出力を行う様々なデバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカ、発光素子等)を含む。入力デバイス208は、外部からの入力を受け付ける様々なデバイス(例えば、タッチパネル、キーボード、ポインティングデバイス、マイク、スイッチ、又はボタン等)を含む。なお、出力デバイス207、及び入力デバイス208は、例えば、タッチパネルディスプレイ等の入出力装置であってもよい。
【0022】
専用デバイス209は、印刷装置110、及び印刷検査装置120において、専用の機能を実現するためのハードウェアである。例えば、印刷装置110には、用紙に印刷する印刷デバイス、及び用紙を搬送する搬送機構等の専用デバイス209が接続される。また、印刷検査装置120には、例えば、印刷装置110が印刷した印刷物を読み取る読取装置121、122等の専用デバイス209が接続される。さらに、印刷検査装置120には、画像処理を高速化する、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等の専用デバイス209が接続されていてもよい。なお、専用デバイス209のうち、少なくとも一部は、I/F206を介さずに、バス210に接続してもよい。
【0023】
(DFE、及びスタッカのハードウェア構成)
本実施形態では、DFE100、及びスタッカ130は、既存の装置を利用することを想定しており、そのハードウェア構成は任意の構成であってよいため、ここでは、説明を省略する。
【0024】
<機能構成>
図3は、一実施形態に係る印刷システムの機能構成の例を示す図である。
【0025】
(印刷装置の機能構成)
印刷装置110は、例えば、印刷制御部301、印刷部302、テストチャート生成部303、UI(User Interface)304部、及び記憶部305等を有する。
【0026】
印刷制御部301は、例えば、印刷装置110のCPU201によって実行されるプログラムによって実現される。印刷制御部301は、例えば、DFE100から受信した第1の印刷ジョブ(印刷データ、及びジョブ情報)に基づいて、印刷部302に印刷処理を実行させる第1の印刷制御処理を実行する。また、本実施形態に係る印刷制御部301は、テストチャート生成部303から、テストチャートを印刷するための第2の印刷ジョブを受け付けた場合、第2の印刷ジョブに基づいてテストチャートを印刷部302に印刷される第2の印刷制御処理を実行する。
【0027】
また、印刷制御部301は、印刷部302に、印刷処理を実行させるときに、印刷データ(RIP画像)、及びジョブ情報を、印刷検査装置120に送信する。
【0028】
図4は、一実施形態に係るジョブ情報の例を示す図である。
図4に示すように、ジョブ情報400は、例えば、「ジョブ生成元」、「生成時刻」、「ページID」、「印刷面」、「用紙ID」、「部ID」、「ジョブID」、「用紙種類」、「用紙サイズ」、「ジョブ種類」、及び「欠陥検知」等のパラメータを含む。
【0029】
「ジョブ生成元」は、印刷ジョブの生成元を示す情報である。DFEジョブは、ジョブの生成元がDFE100であることを示し、内部ジョブは、ジョブの生成元がテストチャート生成部303等であることを示す。「生成時刻」は、生成元がジョブ情報400を生成した時刻を示す情報である。「ページID」は、印刷画像を識別する識別番号であり、例えば、電源ON時から1ページを出力するごとに1が加算される。「印刷面情報」は、印刷画像が、片面印刷なのか、両面印刷の際に表に印刷されるものか(両面表)、裏に印刷されるものか(両面裏)等を識別する情報である。
【0030】
「用紙ID」は、用紙を識別する識別情報である。例えば、両面印刷の場合、同じ用紙に印刷される2つのページには、同じ用紙IDが付与される。「用紙ID」は、例えば、電源ON時から、用紙1枚を処理するごとに1が加算される。「部ID」は、部単位の識別情報であり、例えば、電源ON時から1部を出力完了するごとに1が加算される。「ジョブID」は、印刷ジョブを識別する識別情報であり、例えば、電源ON時から1つの印刷ジョブを出力完了するごとに1が加算される。
【0031】
「用紙種類」は、用紙の種類を示す情報である。「用紙サイズ」は、用紙のサイズを示す情報である。「ジョブ種類」は、例えば、印刷ジョブが、通常の印刷であるか、テストチャートの印刷であるか等を示す情報である。「欠陥検知」は、例えば、欠陥検知対象であるか否か、及び欠陥が検知されたページに欠陥を検知したことを示す合紙を挿入するか否か等を示す情報である。
【0032】
ジョブ情報400は、例えば、印刷データの1ページごとに生成され、印刷データとともに管理される。また、印刷装置110は、ジョブ情報400に基づいて、各印刷データを印刷する。
【0033】
ここで、
図3に戻り、印刷装置110の機能構成の説明を続ける。印刷部302は、例えば、印刷装置110のCPU201によって実行されるプログラム、及び印刷装置110のI/F206に接続される専用デバイス209(印刷デバイス、及び搬送機構等)によって実現される。印刷部302は、印刷制御部301からの指示と、印刷データとに基づいて、印刷物を印刷する印刷処理を実行する。また、印刷部302は、印刷済の用紙である印刷物を、印刷検査装置120に出力する。
【0034】
テストチャート生成部303は、例えば、印刷装置110のCPU201によって実行されるプログラムによって実現される。テストチャート生成部303は、例えば、印刷検査装置120からの指示に従って、裏写りを判定するテストパターンを含むテストチャートを印刷するための印刷ジョブを生成し、生成した印刷ジョブを印刷制御部301に出力する。なお、テストチャートの印刷データは、例えば、記憶部305等に予め記憶しておく。
【0035】
UI部304は、例えば、印刷装置110のCPU201によって実行されるプログラム、印刷装置110のI/F206に接続する出力デバイス107、及び入力デバイス108等によって実現される。UI部304は、例えば、印刷装置110を操作するための操作画面、又は印刷装置110を設定するための設定画面等を表示し、ユーザによる入力操作を受け付ける。
【0036】
記憶部305は、例えば、印刷装置110のCPU201によって実行されるプログラム、ストレージデバイス204、及びRAM202等によって実現される。記憶部305は、例えば、上述したテストチャート用の印刷データを含む、様々な印刷データ、ジョブ情報、及び設定情報等を記憶する。なお、記憶部305は、印刷装置110内の各機能構成からアクセス可能である。また、記憶部305は、印刷装置110の外部に設けられていてもよい。
【0037】
(印刷検査装置の機能構成)
印刷検査装置120は、例えば、読取画像取得部321、基準画像生成部322、差分画像生成部323、システム制御部310、UI部324、及び記憶部325等を有している。
【0038】
読取画像取得部321は、例えば、印刷検査装置120のCPU201で実行されるプログラム、I/F206に接続される読取装置121、122、及びASIC等によって実現される。読取画像取得部321は、印刷装置110が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する読取画像取得処理を実行する。
【0039】
基準画像生成部322は、例えば、印刷検査装置120のCPU201で実行されるプログラム、及びI/F206に接続されるASIC等によって実現される。基準画像生成部322は、印刷装置110の印刷制御部301から送られてくる印刷データ、及びジョブ情報400等に基づいて、読取画像の比較対象となる基準画像を生成する基準画像生成処理を実行する。
【0040】
差分画像生成部323は、例えば、印刷検査装置120のCPU201で実行されるプログラム、及びI/F206に接続されるASIC等によって実現される。差分画像生成部323は、基準画像生成部322が生成した基準画像と、読取画像取得部321が取得した読取画像との差分を表す差分画像を生成する差分画像生成処理を実行する。
【0041】
システム制御部310は、例えば、印刷検査装置120のCPU201で実行されるプログラムによって実現される。システム制御部310は、例えば、データ管理部311、検査部312、合紙判定部313、及び決定部314等を含む。
【0042】
データ管理部311は、印刷装置110から、印刷データ(RIP画像)、及びジョブ情報を受信し、受信した情報を記憶部325に記憶して管理するデータ管理処理を実行する。また、データ管理部311は、読取画像取得部321、基準画像生成部322、差分画像生成部323、検査部312、合紙判定部313、及びスタッカ130等に、必要な情報を転送する。
【0043】
検査部312は、差分画像生成部323が生成した差分画像と、検査しきい値とに基づいて、印刷物の欠陥を検査する検査処理を実行する。なお、検査部312が実行する検査処理の例については後述する。
【0044】
合紙判定部313は、検査部312による検査結果に基づいて、欠陥を見つけた場所に目印として仕込む合紙の挿入可否を判定し、挿入可と判定した場合、合紙挿入情報を、印刷装置110、又はスタッカ130等の合紙を挿入する装置に通知する。
【0045】
決定部314は、両面おける裏写りを欠陥と判定しない検査しきい値を決定する決定処理を実行する。なお、決定部314が実行する決定処理の例については後述する。
【0046】
UI部324は、例えば、印刷検査装置120のCPU201で実行されるプログラムによって実現される。UI部324は、決定部314が決定した検査しきい値に基づいて、裏写りの検査しきい値を設定する設定画面を、印刷検査装置120が備える操作パネル20等に表示する。なお、UI部324は、裏写りの検査しきい値を設定する設定画面を、印刷装置110が備える操作パネル10等に表示してもよい。或いは、UI部324は、通信ネットワークを介して、印刷検査装置120と通信可能な情報端末等に、裏写りの検査しきい値を設定する設定画面を表示するウェブページを提供してもよい。
【0047】
好ましくは、UI部324は、裏写りの検査しきい値を設定する設定画面に、決定部314が決定した検査しきい値の推奨値を表示する。
【0048】
記憶部325は、例えば、印刷検査装置120のCPU201によって実行されるプログラム、ストレージデバイス204、及びRAM202等によって実現される。記憶部325は、印刷検査装置120が有する各機能構成からアクセス可能であり、例えば、印刷装置110から受信した印刷データとジョブ情報400、後述する検査レベル情報、初期値の設定情報、及び欠陥検出フィルタ等を記憶する。
【0049】
なお、
図3に示した印刷システム1の機能構成は一例である。例えば、
図3において、印刷装置110が有しているテストチャート生成部303は、印刷検査装置120が有していてもよい。この場合、印刷検査装置120のテストチャート生成部303は、DFE100と同様にして、テストチャートの印刷ジョブを、印刷装置110の印刷制御部301に送信する。これにより、テストチャート生成部303を有していない既存の印刷装置110を用いて、本実施形態に係る印刷システム1を実現してもよい。
【0050】
<処理の流れ>
続いて、本実施形態に係る印刷検査方法における検査しきい値の決定処理の流れについて説明する。
【0051】
[第1の実施形態]
図5は、第1の実施形態に係る検査しきい値の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、
図3で説明した機能構成を有する印刷検査装置120が、両面印刷した印刷物の欠陥を検査する検査処理において、両面印刷の裏写りを欠陥と判定しない検査レベルを決定する処理の一例を示している。
【0052】
なお、検査レベルは、検査しきい値の一例である。印刷検査装置120は、例えば、
図6に示すような、検査レベル情報601を、記憶部325等に記憶している。
図6(A)の例では、検査レベル情報601は、5段階の検査レベル1~5に対応する、点状欠陥、線状欠陥(縦)、及び線状欠陥(横)の検査しきい値の組合せを記憶している。検査レベル1~5は、印刷検査装置120が有する複数の検査しきい値の一例である。検査レベルの数は、5段階未満であってもよいし、6段階以上であってもよい。
図6(A)の例では、検査レベルは、レベル1が最も検査レベルが低く(緩く)、レベル5が最も検査レベルが高く(厳しく)なっている。
【0053】
図6(A)に示した検査レベル情報601において、検査レベル0は、ダミーの検査レベルであり、ユーザは選択することができない。この検査レベル0は、検査部312が全ての欠陥を検出しない、しきい値の最大値を示している。また、検査レベルXは、検査レベル1~5のいずれを設定しても、裏写りを欠陥として判定してしまう場合に、推奨する検査レベルがないことを示すために用いられる。
【0054】
ここで、
図5に戻り、フローチャート説明を行う。ステップS501において、印刷検査装置120のシステム制御部310は、検査しきい値情報があるか否かを判断する。例えば、システム制御部310は、用紙(記録媒体)に対応付けて検査レベル(検査しきい値)を記憶部325に記憶しておく。また、システム制御部310は、設定された用紙に対応する検査レベルが、記憶部325に記憶されている場合、検査しきい値情報があると判断する。
【0055】
検査しきい値情報がある場合、システム制御部310は、処理をステップS502に移行させる。一方、検査しきい値情報がない場合、システム制御部310は、処理をステップS503に移行させる。
【0056】
ステップS502に移行すると、システム制御部310は、検査しきい値情報を再取得するか否かを判断する。一例として、システム制御部310は、印刷システム1を構成するハードウェア等が交換された場合、又は検査しきい値情報を取得してから所定の期間を経過した場合等に、検査しきい値情報を再取得すると判断してもよい。或いは、システム制御部310は、例えば、UI部324を利用して、ユーザに検査しきい値情報の再取得をするか否かを問い合わせてもよい。
【0057】
検査しきい値情報を再取得する場合、システム制御部310は、処理をステップS503に移行させる。一方、検査しきい値情報を再取得しない場合、システム制御部310は、
図5の処理を終了する。なお、検査しきい値情報を再取得しない場合、印刷検査装置120は、記憶部325に記憶した、用紙に対応する検査レベルを用いて、印刷物の欠陥の検査を行う。
【0058】
ステップS503に移行すると、システム制御部310は、テストチャートの差分画像を取得する。
【0059】
例えば、システム制御部310の決定部314は、印刷装置110のテストチャート生成部303に対して、テストチャートの印刷(両面印刷)を指示する。これにより、テストチャート生成部303は、テストチャートの印刷ジョブを印刷制御部301に出力する。印刷装置110の印刷制御部301は、テストチャート生成部303から受け付けたテストチャートの印刷ジョブに基づいて、印刷部302を用いて、テストチャートを両面印刷する。
【0060】
システム制御部310は、読取画像取得部321を用いて、印刷装置110が両面印刷したテストチャートの印刷物を読取り、読取画像を取得する。また、システム制御部310は、差分画像生成部323が生成した、テストチャートの基準画像と読取画像との差分を表す差分画像を取得する。なお、テストチャートの基準画像は、基準画像生成部322が生成してもよいし、記憶部325等に予め記憶したテストチャートの基準画像を用いてもよい。
【0061】
図7は、一実施形態に係るテストチャートの例を示す図である。テストチャート700の表面710には、
図7に示すように、所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域711と、裏写りを判定するテストパターン712とが含まれる。また、テストチャート700の裏面720には、裏写りを判定するテストパターン721が含まれる。なお、
図7の一点鎖線は、グラデーション領域711、及びテストパターン712、721の範囲を説明するためのものであり、実際のテストチャート700には存在しない。
【0062】
図7の例では、グラデーション領域711には、C(シアン)の階調値が段階的に変化するグラデーション画像711C、及びM(マゼンダ)の階調値が段階的に変化するグラデーション画像811Mが含まれる。また、グラデーション領域711には、Y(イエロー)
の階調値が段階的に変化するグラデーション画像711Y、及びK(ブラック)の階調値が段階的に変化するグラデーション画像811Kが含まれる。
【0063】
ステップS504において、システム制御部310の決定部314は、取得した差分画像に基づいて、検査レベルの初期値を設定する。例えば、システム制御部310は、
図6(B)に示すような、初期値の設定情報602を、記憶部325等に記憶しておく。初期値の設定情報602には、検査レベルごとに、C、M、Y、Kの各色のグラデーション領域の階調値が記憶されている。また、決定部314は、グラデーション領域711の差分画像が、どの領域で見つかったかにより、検査レベルの初期値を設定する。
【0064】
図8は、一実施形態に係る検査レベルの初期値について説明するための図である。例えば、
図8に示すように、グラデーション画像711C、711M、711Kにおいて、検査レベル3、4、5の階調値で、裏写りを示す差分が見つかったものとする。また、グラデーション画像711Yにおいて、検査レベル2、3、4、5の階調値で裏写りを示す差分が見つかったものとする。決定部314は、一例として、各色の中で、裏写りを示す差分が見つかった、最も低い階調値153より、1段階、階調値が低い102に対応する検査レベル4を、検査レベルの初期値に設定する。言い換えると、決定部314は、各色の中で、裏写りを示す差分が見つかった、最も高い検査レベル3より、1段階検査レベルが高い検査レベル4を、検査レベルの初期値に設定する。
【0065】
ステップS505において、システム制御部310の検査部312は、設定された検査レベルで、テストチャートの欠陥を検査する。例えば、システム制御部310は、上述した検査レベル情報601に加えて、
図6(C)~(E)に示すような、点状欠陥検出フィルタ603、線状欠陥(縦)検出フィルタ604、及び線状欠陥(横)検出フィルタ605を、記憶部325等に記憶しておく。
【0066】
図6(C)に示した、点状欠陥検出フィルタ603は、点状欠陥を検出する際に用いる欠陥検出フィルタである。検査部312は、この点状欠陥検出フィルタ603を用いて、差分画像の各画素に対して畳み込み演算を行い、演算結果が点状欠陥の検査しきい値を超えた場合、当該画素を点状欠陥と判定する。
【0067】
なお、点状欠陥検出フィルタ603の値は、正の値の合計値が1、負の値の合計値が-1となるように調整されている。これにより、畳み込み演算の演算結果は、当該画素と、隣接する8画素の平均値との差を表している。
【0068】
図6(D)に示した、線状欠陥(縦)検出フィルタ604は、線状欠陥(縦)を検出する際に用いる欠陥検出フィルタである。検査部312は、この線状欠陥(縦)検出フィルタ604を用いて、差分画像の各画素に対して畳み込み演算を行い、演算結果が点状欠陥の検査しきい値を超えた場合、当該画素を線状欠陥(縦)と判定する。
【0069】
なお、線状欠陥(縦)検出フィルタ604の値も、正の値の合計値が1、負の値の合計値が-1となるように調整されている。これにより、畳み込み演算の演算結果は、当該画素を中心とした縦5画素と、その左右に隣接する10画素それぞれの平均値との差を表している。
【0070】
図6(E)に示した、線状欠陥(横)検出フィルタ605は、線状欠陥(横)を検出する際に用いる欠陥検出フィルタである。検査部312は、この線状欠陥(横)検出フィルタ605を用いて、差分画像の各画素に対して畳み込み演算を行い、演算結果が点状欠陥の検査しきい値を超えた場合、当該画素を線状欠陥(横)と判定する。
【0071】
なお、線状欠陥(横)検出フィルタ605の値も、正の値の合計値が1、負の値の合計値が-1となるように調整されている。これにより、畳み込み演算の演算結果は、当該画素を中心とした横5画素と、その左右に隣接する10画素それぞれの平均値との差を表している。
【0072】
ここで、
図5に戻り、フローチャートの説明を続ける。ステップS506において、システム制御部310の決定部314は、検査部312による検査結果に基づいて、テストチャートの裏写りを判定し、判定結果を記憶部325等に記憶する。例えば、決定部314は、
図9に示すような、左右反転時の座標テーブル910、及び上下反転時の座標テーブル920を、記憶部325等に記憶しておく。
【0073】
また、
図9に示した、読取画像(裏面)900は、テストチャート700を印刷した印刷物の裏面を読み取った読取り画像のイメージを示している。
図7で説明したテストチャート700を両面印刷し、読取画像取得部321が取得した読取画像は、例えば、用紙の透過率、印刷に用いる色材の濃度等により、特に薄い用紙を使用すると裏写りが発生する。裏写りが発生すると、
図9に示すように、読取画像(裏面)900に、テストチャート700の裏面720に、表面710の画像が、薄く重ねられたような画像となる。なお、両面印刷時の丁合の方向によって、左右反転して両面印刷するか、上下反転して両面印刷するかが異なる。
【0074】
左右反転時の座標テーブル910は、左右反転して両面印刷したときに、裏写り判定用のオブジェクト901、902、903、・・・の位置を示す座標(右上座標、及び左上座標)を示している。また、上下反転時の座標テーブル920は、上下反転して両面印刷したときに、裏写り判定用のオブジェクト901、902、903、・・・の位置を示す座標(右上座標、及び左上座標)を示している。
【0075】
決定部314は、テストチャート700を左右反転して両面印刷した場合、左右反転時の座標テーブル910に含まれていない座標範囲で、検査部312が検出した結果を裏写りの判定から除外して、裏写りの有無を判定する。例えば、決定部314は、検査部312が検出した欠陥が、座標テーブル910に記憶された各座標範囲に1つでも含まれる場合、裏写りありと判定する。
【0076】
同様に、決定部314は、テストチャート700を上下反転して両面印刷した場合、上下反転時の座標テーブル920に含まれていない座標範囲で、検査部312が検出した結果を裏写りの判定から除外して、裏写りの有無を判定する。例えば、決定部314は、検査部312が検出した欠陥が、座標テーブル920に記憶された各座標範囲に1つでも含まれる場合、裏写りありと判定する。
【0077】
また、決定部314は、裏写りの判定結果を記憶部325等に記憶する。例えば、決定部314は、裏写りありと判定された座標領域の情報と、検査レベルとを記憶部325等に記憶する。
【0078】
ステップS507において、決定部314は、判定結果が「裏写りなし」である場合、処理をステップS508に移行させ、判定結果が「裏写りあり」である場合、処理をステップS509に移行させる。
【0079】
ステップS508に移行すると、決定部314は、現在の検査レベルを検査しきい値に決定する。なお、ここで決定した検査しきい値は、後述する検査レベルの推奨値となる。
【0080】
一方、ステップS509に移行すると、決定部314は、検査レベルの初期値より検査レベルが低い全ての検査レベルで裏写りを判定したか否かを判断する。検査レベルの初期値より検査レベルが低い全ての検査レベルで裏写りを判定した場合、決定部314は、処理をステップS510に移行させる。一方、検査レベルの初期値より検査レベルが低い全ての検査レベルで裏写りを判定していない場合、決定部314は、処理をステップS511に移行させる。
【0081】
ステップS510に移行すると、決定部314は、裏写りが発生しない検査レベルがないことを示す検査レベルXを検査しきい値に決定する。この場合、後述する検査レベルの推奨値なしとなる。
【0082】
一方、ステップS511に移行すると、決定部314は、現在の検査レベルを1段階下げた後、処理をステップS505に戻す。
【0083】
ステップS512において、決定部314は、決定した検査レベルを、用紙(記録媒体)と対応付けた検査しきい値情報を、記憶部325等に記憶する。
【0084】
図5の処理により、決定部314は、検査レベルの初期値で、テストチャート700における裏写りが欠陥と判定された場合、検査レベルを段階的に下げながら、テストパターンにおける裏写りが欠陥と判定されない検査しきい値を決定する。これにより、印刷装置110が印刷した印刷物の裏写りを検査する印刷システム1において、裏写りを欠陥として判定しない検査しきい値をより高速に決定できる。
【0085】
また、印刷検査装置120は、決定した検査しきい値を、用紙(記録媒体)の情報と対応付けて記憶部325に記憶するので、次回から、同じ用紙で印刷するときに、記憶部315等に記憶した検査しきい値を利用して、処理をさらに高速化することができる。
【0086】
(検査レベルの設定画面)
印刷検査装置120は、
図5の処理で決定した検査しきい値に基づいて、例えば、
図10に示すような、検査レベルの設定画面を表示することができる。
【0087】
図10は、一実施形態に係る検査レベルの設定画面の例を示す図である。この図は、印刷検査装置120のUI部324が、操作パネル10、20、又は外部の情報端末等に表示させる検査レベルの設定画面1000の一例を示している。UI部324は、検査レベルの設定画面1000に、例えば、検査レベルの推奨レベル1001、検査レベルの変更ボタン1002、1003、「検査レベル決定」ボタン1004、「キャンセル」ボタン1005、及び欠陥検出結果1010等を表示する。
【0088】
推奨レベル1001は、例えば、
図5のステップS508で決定した検査しきい値に対応する検査レベルである。ユーザは、この検査レベルを、検査レベルの変更ボタン1002、1003で変更することができる。また、ユーザは、「検査レベル決定」ボタン1004を選択することにより、検査レベルを更新することができる。さらに、ユーザは、例えば、用紙上に裏写り以外の欠陥が発生していた、再度、
図5の処理を実行する場合、「キャンセル」ボタン1005を選択することにより、検査レベルの決定をキャンセルすることができる。
【0089】
なお、
図5のステップS510において、検査しきい値に、検査レベルXが設定されている場合、UI部324は、推奨レベル1001を表示せずに、どの検査レベルでも裏写りが欠陥として判定されてしまうことを通知するメッセージ等を表示することが望ましい。
【0090】
好ましくは、UI部324は、欠陥検出結果1010に、例えば、
図9で説明した、読取画像(裏面)900と、現在の検査レベルで、裏写りが欠陥として検出された座標範囲を示す表示要素1011を表示する。これにより、ユーザは、裏写りが欠陥として検出された個所を確認しながら、検査レベルを容易に設定することができる。
【0091】
[第2の実施形態]
図5で説明した第1の実施形態に係る検査レベルの設定処理により、裏写りを欠陥として判定しない検査しきい値をより高速に決定できる。ただし、この方法では、例えば、
図10に示すような検査レベルの設定画面1000において、検査レベルを変更したときに、欠陥検出結果1010に、裏写りが欠陥として検出された座標範囲を示す表示要素1011を表示できない場合がある。これは、
図5で説明した検査レベルの設定処理では、最小限の検査レベルのみで、テストチャートの裏写りを判定するためである。
【0092】
第2実施形態では、処理時間の増大を抑制しつつ、全ての検査レベルで、欠陥検出結果1010に、裏写りが欠陥として検出された座標範囲を示す表示要素1011を表示できるようにする場合の処理の例について説明する。
【0093】
<処理の流れ>
図11は、第2の実施形態に係る検査しきい値の決定処理の例を示すフローチャートである。なお、
図11に示す処理のうち、ステップS501~S503の処理は、
図5で説明した第1の実施形態の処理と同様なので、ここでは説明する。また、ここでは、第1の実施形態の同様の処理内容に対する詳細な説明は省略する。
【0094】
ステップS1101において、システム制御部310の決定部314は、ステップS503で取得した差分画像に基づいて、検査レベルの初期値を設定する。第2の実施形態では、決定部314は、各色の中で、裏写りを示す差分が見つかった、最も低い高い検査レベルより、1段階検査レベルが低い検査レベルを、検査レベルの初期値に設定する。
【0095】
ステップS1102において、システム制御部310の検査部312は、設定された検査レベルで、第1の実施形態と同様にしてテストチャートの欠陥を検査する。
【0096】
ステップS1103において、システム制御部310の決定部314は、検査部312による検査結果に基づいて、第1の実施形態と同様にしてテストチャートの裏写りを判定し、判定結果を記憶部325等に記憶する。
【0097】
ステップS1004において、システム制御部310は、現在の検査レベルが最大であるか否かを判断する。現在の検査レベルが最大である場合、システム制御部310は、処理をステップS1106に移行させる。一方、現在の検査レベルが最大でない場合、システム制御部310は、処理をステップS1105に移行させる。
【0098】
ステップS1105に移行すると、システム制御部310の決定部314は、検査レベルを1段階上げて、処理をステップS1102に戻す。
【0099】
一方、ステップS1106に移行すると、決定部314は、ステップS1102~S1105の処理で、裏写りなしと判定された検査レベルがあるか否かを判断する。裏写りなしと判定された検査レベルがある場合、決定部314は、処理をステップS1107に移行させる。一方、裏写りなしと判定された検査レベルがない場合、決定部314は、処理をステップS1108に移行させる。
【0100】
ステップS1107に移行すると、決定部314は、裏写りなしと判定された検査レベルのうち、最大の検査レベルを検査しきい値に決定する。なお、ここで決定した検査しきい値は、検査レベルの推奨値となる。
【0101】
一方、ステップS1108に移行すると、決定部314は、裏写りが発生しない検査レベルがないことを示す検査レベルXを検査しきい値に決定する。この場合、後述する検査レベルの推奨値なしとなる。
【0102】
ステップS1109において、決定部314は、決定した検査レベルを、用紙(記録媒体)と対応付けた検査しきい値情報を、記憶部325等に記憶する。
【0103】
図5の処理により、システム制御部310は、検査レベルの初期値より検査レベルが高い全ての検査レベルにおける裏写りの判定結果を取得することができる。また、検査レベルの初期値より検査レベルが低い場合、裏写りが発生しないと判断し、裏写りの判定処理を省略することにより、処理を高速化している。
【0104】
このように、第2の実施形態によれば、検査レベルの設定画面1000において、検査レベルを変更したときに、欠陥検出結果1010に、裏写りが欠陥として検出された座標範囲を示す表示要素1011を表示できるようになる。
【0105】
以上、本発明の各実施形態によれば、印刷装置110が印刷した印刷物の裏写りを検査する印刷システム1において、裏写りを欠陥として判定しない検査しきい値をより高速に決定できるようになる。
【0106】
<補足>
上記で説明した各実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0107】
<付記>
本明細書には、下記の各項の印刷システム、印刷検査装置、及び印刷検査方法が開示されている。
(第1項)
印刷データに基づいて印刷装置が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する読取画像取得部と、
前記読取画像の比較対象となる基準画像と、前記読取画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像と検査しきい値とに基づいて、前記印刷物の欠陥を検査する検査部と、
前記印刷物の裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する決定部と、
を有し、
前記決定部は、
所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域と、裏写りを判定するテストパターンとを含むテストチャートを前記印刷装置で両面印刷し、
前記テストチャートの前記差分画像における前記グラデーション領域から、前記検査しきい値の初期値を設定し、
前記検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、前記テストチャートの前記差分画像において、前記テストパターンにおける裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する、
印刷システム。
(第2項)
前記決定部は、決定した前記検査しきい値を、前記テストチャートを両面印刷した記録媒体の情報と対応付けて記憶部に記憶し、
前記検査部は、前記印刷装置が前記記録媒体に印刷物を印刷する場合、前記記憶部に記憶した前記記録媒体の情報に対応する前記検査しきい値を用いて、前記印刷物の欠陥を検査する、
第1項に記載の印刷システム。
(第3項)
前記決定部は、
前記検査部が、前記検査しきい値の初期値で、前記テストチャートにおける裏写りが欠陥と判定した場合、
前記検査しきい値を段階的に変更しながら、前記テストパターンにおける裏写りが欠陥と判定されない前記検査しきい値を決定する、
第1項又は第2項に記載の印刷システム。
(第4項)
前記テストチャートは、複数の色に対応する前記グラデーション領域を含む、第1項~第3項のいずれかに記載の印刷システム。
(第5項)
前記決定部は、前記複数の色ごとに、前記検査しきい値の初期値を求め、前記複数の色ごとに求めた前記検査しきい値のうち、最も厳しいしきい値を、前記検査しきい値の初期値とする、第4項に記載の印刷システム。
(第6項)
前記決定部が決定した前記検査しきい値に基づいて、裏写りの検査しきい値を設定する設定画面を表示するUI部を有し、前記設定画面で前記検査しきい値を変更可能である、第1項~第5項のいずれかに記載の印刷システム。
(第7項)
前記裏写りの検査しきい値を複数有し、
前記決定部は、複数の前記裏写りの検査しきい値のうち、前記検査しきい値の初期値より厳しい全ての検査しきい値で、前記テストパターンにおける裏写りを判定して、前記裏写りの判定結果を記憶部に記憶し、
前記UI部は、前記設定画面で前記検査レベルが変更された場合、前記記憶部に記憶した前記裏写りの判定結果に基づいて、変更された前記検査しきい値における前記裏写りが欠陥と判定された領域を表示する、
第6項に記載の印刷システム。
(第8項)
前記テストチャートは、表面のテストチャートと裏面のテストチャートとを含み、
前記テストチャートが左右反転して重ねられた場合の前記表面のテストチャート上の画像オブジェクトの範囲を示す座標を記憶した、左右反転座標セットと、
前記テストチャートが上下反転して重ねられた場合の前記表面のテストチャート上の画像オブジェクトの範囲を示す座標を記憶した、上下反転座標セットと、
を有し、
前記決定部は、
前記テストチャートを左右反転して両面印刷した場合、前記左右反転座標セットに含まれていない座標範囲で、前記検査部が検出した欠陥を裏写りの判定から除外し、
前記テストチャートを上下反転して両面印刷した場合、前記上下反転座標セットに含まれていない座標範囲で、前記検査部が検出した欠陥を裏写りの判定から除外する、
第1項~第7項のいずれかに記載の印刷システム。
(第9項)
印刷データに基づいて印刷装置が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する読取画像取得部と、
前記読取画像の比較対象となる基準画像と、前記読取画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像と検査しきい値とに基づいて、前記印刷物の欠陥を検査する検査部と、
前記印刷物の裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する決定部と、
を有し、
前記決定部は、
所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域と、裏写りを判定するテストパターンとを含むテストチャートを前記印刷装置で両面印刷し、
前記テストチャートの前記差分画像における前記グラデーション領域から、前記検査しきい値の初期値を設定し、
前記検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、前記テストチャートの前記差分画像において、前記テストパターンにおける裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する、
印刷検査装置。
(第10項)
印刷検査システムが、
印刷データに基づいて印刷装置が印刷した印刷物を読み取った読取画像を取得する取得処理と、
前記読取画像の比較対象となる基準画像と、前記読取画像との差分画像を生成する生成処理と、
前記差分画像と検査しきい値とに基づいて、前記印刷物の欠陥を判定する判定処理と、
前記印刷物の裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する決定処理部と、
を実行し、
前記決定処理は、
所定の色の階調値が段階的に変化するグラデーション領域と、裏写りを判定するテストパターンとを含むテストチャートを前記印刷装置で両面印刷し、
前記テストチャートの前記差分画像における前記グラデーション領域から、前記検査しきい値の初期値を設定し、
前記検査しきい値の初期値を含む1つ以上の前記検査しきい値の候補から、前記テストチャートの前記差分画像において、前記テストパターンにおける裏写りを前記欠陥と判定しない前記検査しきい値を決定する、
印刷検査方法。
【符号の説明】
【0108】
1 印刷システム
110 印刷装置
120 印刷検査装置
306、325 記憶部
312 検査部
314 決定部
321 読取画像取得部
322 基準画像生成部
323 差分画像生成部
324 UI部
700 テストチャート
711 グラデーション領域
712、721 テストパターン
910 左右反転時の座標テーブル(左右反転座標セット)
920 上下反転時の座標テーブル(上下反転座標セット)
1000 設定画面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】