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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033936
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】車両用フロントガラスとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240306BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20240306BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B60S1/02 300
B60J1/00 J
C03C27/12 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137863
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 直樹
【テーマコード(参考)】
3D225
4G061
【Fターム(参考)】
3D225AA02
3D225AA03
3D225AC10
3D225AD02
3D225AD10
4G061AA26
4G061AA30
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】導電体と端子とを無鉛半田を用いて接合した部分を含み、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めることが可能な車両用フロントガラスの提供。
【解決手段】第1ガラス板(11)と、銀とガラスフリットとを含む材料からなり、端子接合部(20T)を有する導電体(20)と、導電体の端子接合部上に無鉛半田(101)を介して接合された端子(102)とを有する端子付きガラス板(11X)を含み、端子付きガラス板(11X)は、第1ガラス板(11)と端子接合部(20T)との間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜(30)を含む、車両用フロントガラス(1)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス板と第2ガラス板とが中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスを含む車両用フロントガラスであって、
前記合わせガラスは、前記第1ガラス板と、当該第1ガラス板の車内面の上に形成され、銀とガラスフリットとを含む材料からなり、端子が接合される端子接合部を有する導電体と、当該導電体の前記端子接合部上に無鉛半田を介して接合された端子とを有する端子付きガラス板を含み、
前記導電体は、電気的機能部を含むか、電気的機能部に電気的に接続されており、
前記導電体は、前記電気的機能部に給電するための給電部を含み、当該給電部が前記端子接合部を含み、
前記端子付きガラス板は、前記第1ガラス板と前記端子接合部との間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を含む、車両用フロントガラス。
【請求項2】
前記無機薄膜は、気相成長膜である、請求項1に記載の車両用フロントガラス。
【請求項3】
前記端子接合部は、前記無機薄膜の直上に形成され、
前記第1ガラス板の前記車内面と前記導電体の前記端子接合部を除く少なくとも一部との間に、第1遮光層が形成され、
前記第1ガラス板の車外面、および、前記第2ガラス板の2つの表面のうちの少なくとも1つの表面の上に、平面視にて、前記導電体の前記端子接合部を覆う第2遮光層が形成された、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項4】
前記無機薄膜は、B、Al、Si、Ti、Cr、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、In、Sn、Hf、TaおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を含む1つ以上の金属化合物層を含む、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項5】
前記無機薄膜は、B、Al、Si、Ti、Cr、Ni、Ga、Y、Zr、Nb、Hf、TaおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の絶縁性金属化合物を含む1つ以上の絶縁性金属化合物層を含み、
前記無機薄膜が積層構造である場合、当該無機薄膜の少なくとも最表層が前記絶縁性金属化合物層である、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項6】
前記無機薄膜は、1つ以上の絶縁性金属化合物層と、金属および導電性金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む1つ以上の導電体層とを含み、
前記無機薄膜の少なくとも最表層が前記絶縁性金属化合物層である、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項7】
前記無機薄膜は、低反射機能、低放射機能、撥水機能、電熱機能、防曇機能、防汚機能、赤外線遮蔽機能、紫外線遮蔽機能およびp偏光反射機能からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能膜である、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項8】
前記第1ガラス板の前記車内面は、前記第1ガラス板の前記中間膜側の表面であり、かつ、前記第2ガラス板に覆われない露出部を有し、当該露出部に、前記導電体の前記端子接合部が形成された、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項9】
前記第1ガラス板の前記車内面は、前記第1ガラス板の前記中間膜側と反対側の表面である、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項10】
前記第1ガラス板の前記車内面と前記導電体の前記端子接合部を除く少なくとも一部との間に、第1遮光層が形成され、
前記第2ガラス板の前記中間膜側の表面上に、平面視にて、前記導電体の前記端子接合部を覆う第2遮光層が形成された、請求項9に記載の車両用フロントガラス。
【請求項11】
前記端子付きガラス板は、平面視にて、光学装置が取り付けられる光学装置取付領域と、当該光学装置取付領域内に位置し、外部から前記光学装置への入射光および/または前記光学装置からの出射光が通る透光部とを有し、
前記第1遮光層は、平面視にて、前記透光部の少なくとも一部を囲むように形成されており、
前記導電体は、前記透光部の内部に形成された電熱線と、前記透光部の外部に形成された前記給電部と、前記透光部の外部に形成され、前記電熱線と前記給電部とを接続する接続配線とを含む、請求項10に記載の車両用フロントガラス。
【請求項12】
前記端子に、丸線状または箔状の導線からなる給電用部材が固定された、請求項1または2に記載の車両用フロントガラス。
【請求項13】
第1ガラス板と第2ガラス板とが中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスを含み、
前記合わせガラスは、前記第1ガラス板と、当該第1ガラス板の車内面の上に形成され、端子が接合される端子接合部を有する導電体と、当該導電体の前記端子接合部上に接合された端子とを有する端子付きガラス板を含み、
前記導電体は、電気的機能部を含むか、電気的機能部に電気的に接続されており、
前記導電体は、前記電気的機能部に給電するための給電部を含み、当該給電部が前記端子接合部を含む、車両用フロントガラスの製造方法であって、
前記第1ガラス板の前記車内面上の少なくとも前記端子接合部の形成領域に、気相成長法により、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を成膜する工程(S11)と、
前記無機薄膜を成膜した前記第1ガラス板の前記車内面上に、前記導電体の材料である銀とガラスフリットとを含む銀含有ペーストを塗工する工程(S13)と、
前記導電体の材料を塗工した前記第1ガラス板を焼成して、前記導電体を形成して、導電体付きガラス板を得る工程(S14)と、
前記導電体付きガラス板と前記第2ガラス板とを、前記中間膜を介して貼り合わせる工程(S15)と、
前記導電体に含まれる前記端子接合部上に無鉛半田を介して前記端子を接合する工程(S16)とを有する、車両用フロントガラスの製造方法。
【請求項14】
前記車両用フロントガラスは、前記端子接合部が、前記無機薄膜の直上に形成され、前記第1ガラス板の前記車内面と前記導電体の前記端子接合部を除く少なくとも一部との間に、第1遮光層が形成されたものであり、
工程(S11)と工程(S13)との間に、前記無機薄膜を成膜した前記第1ガラス板の前記車内面上に、前記第1遮光層の材料である黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工する工程(S12)を有し、
工程(S14)において、前記第1遮光層の材料および前記導電体の材料を塗工した前記第1ガラス板を焼成して、前記第1遮光層と前記導電体とを形成して、前記導電体付きガラス板を得る、請求項13に記載の車両用フロントガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用フロントガラスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用の窓ガラスには、複数のガラス板が貼り合わされた合わせガラス、または強化ガラスが好ましく用いられる。一般的に、車両用フロントガラスの材料のガラス板は、周縁領域に遮光層が形成され、熱成形により曲面を有する形状に加工される。
電気的機能部を含むか、電気的機能部に接続される導電体と、ハーネスおよびケーブル等の給電用部材とを含む車両用フロントガラスが知られている。電気的機能部としては、電熱線、電熱層、アンテナ、調光層、発光素子およびこれらの組合せ等が挙げられる。導電体は、電気的機能部に給電するための給電部を含むことができる。
本明細書において、導電体を有するガラス板を「導電体付きガラス板」と言う。
【0003】
車両用フロントガラスでは、ワイパーに付着した霜、雪、および氷等を融かし、ワイパーの凍結を防止するために、フロントガラスの下端部および側端部等に、1本以上の電熱線からなる電気的機能部と、一対の給電用電極(バスバーとも言う。)等からなる給電部とを含む導電体が形成される場合がある。
【0004】
また、車両用フロントガラスの内面には、自動運転および衝突事故の防止等のために、車両前方の情報を取得する、ADAS(Advanced Driver Assistance systems)カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、レーダーおよび光センサ等の光学機器と、これを収容するブラケット等と呼ばれる筐体とを含む光学装置が設置される場合がある。かかる構成では、光学装置によるセンシング精度を高めるために、光学機器の前方のガラス部分に、曇り、霜、雪および氷等の除去および付着を防止する1本以上の電熱線からなる電気的機能部と、一対の給電用電極(バスバー)等からなる給電部とを含む導電体が形成される場合がある。
【0005】
上記のような車両用フロントガラスでは、給電部の各給電用電極に、ハーネスおよびケーブル等の給電用部材が接合される。給電部は、発熱を目的としたものではなく、また、給電用部材を接合するための面積を必要とするため、電熱線よりも太く設計される。そのため、従来は、給電部は、車外にいる人に視認されないように、遮光層上に形成されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/138600号
【特許文献2】国際公開第2020/150324号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遮光層は例えば、黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストの塗工および焼成により形成できる。導電体は例えば、銀粉とガラスフリットとを含む銀含有ペーストの塗工および焼成により形成できる。セラミックペーストおよび銀含有ペーストの焼成は、ガラス板の熱成形と同時に実施できる。
【0008】
従来、給電部と給電用部材との接合は、半田を用いて行われている。
例えば、ワイヤーハーネス等の給電用部材の先端部に端子を固定し、この端子を給電部に半田を用いて接合している。半田としては、有鉛半田と無鉛半田がある。近年、鉛の環境への影響が懸念され、有鉛半田の法的規制が広がりつつあるため、無鉛半田を用いることが望まれている。
【0009】
一般的に、無鉛半田の融点は有鉛半田の融点より高く、例えば220℃程度であり、より高い温度(例えば300℃程度)で半田接合を行う必要がある。導電体付きガラス板において、導電体と端子とを無鉛半田によって接合する場合、ガラス板に局所的な高温加熱と高温から常温への降温とが起こる。降温の際には、ガラス板の熱膨張係数と無鉛半田の熱膨張係数との差に起因して、ガラス板と無鉛半田に熱収縮量の差が生じ、ガラス板と無鉛半田との間に歪みが生じ、導電体付きガラス板に応力(具体的には、引張応力)が発生する。そして、降温後にもこの応力が残留する場合がある。この残留応力が原因となり、車両用フロントガラスの製造後に、ガラス板にクラックが生じる恐れがある。また、無鉛半田は弾性率の低い鉛を含まないため、有鉛半田に比べ弾性率が高く、変形しにくい。よって、導電体付きガラス板に発生した残留応力が緩和しにくい。これら理由から、導電体と端子とを無鉛半田によって接合する場合、接合後のガラス板への残留応力の発生、およびそれによる製造後のクラック発生の問題が起こり得る。
本明細書において、導電体と端子とを有するガラス板を「端子付きガラス板」と言う。
【0010】
端子付け後のガラス板の破壊強度が低い場合、ガラス板に外力が加わった際に、ガラス割れが発生する恐れがある。特に、遮光層上に形成された給電部に対して、無鉛半田を用いて端子を接合する場合、端子付け後のガラス板の破壊強度が低下する傾向がある。
本明細書において、「端子付け前または端子付け後のガラス板の破壊強度」は、端子付け前または端子付け後のガラス板に荷重を加え、破壊した時点の荷重であり、後記[実施例]の項に記載の方法にて測定できる。
【0011】
本開示の関連技術として、特許文献1、2が挙げられる。
特許文献1は、薄いガラスシートに形成された導電体との半田接続方法に関する。この文献には、「導電体(6)をシート(1)に直接プリントすることで、導電体(6)に対して、より信頼性のある第二の導体(8)の半田接続(7)が容易となる。導電体(7)は、例えば、ワイパーレストエリアの加熱素子またはバスバーとすることができ、また、層(5)のおかげで、車両の外側の人の視覚からは隠されている。」ことが開示されている(図2とその説明を参照されたい。)。また、[実施例]の項には、導電体(6)をシート(1)に直接プリントした場合の、半田接合後の割れ抑制の効果についても、記載されている。
本開示の技術によれば、特許文献1に記載の技術よりも、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めることができる。
【0012】
特許文献2には、
第1のガラス板と、
第2のガラス板と、
ポリマー中間膜と、
上記第1のガラス板および上記第2のガラス板の少なくとも一方の少なくとも1つの面の上のコーティングであって、導電性材料が該コーティング上に付着されており、この導電性材料は、500℃を超える熱処理がなされていない、コーティングと、を含む車両用グレージングが開示されている(請求項17)。
上記コーティングは、銀層を含む発熱可能型赤外線反射(IRR)コーティング等である(請求項20~24)。
【0013】
特許文献2において、上記導電性材料はバスバーを含むことができ、このバスバーは、半田ペーストを用いて形成できる(請求項26、29)。
特許文献2には、「発熱可能型IRRコーティング中の金属銀層は導電性であるが、最上層を含む他のほとんどの層は、誘電体または絶縁体であるため、非導電性である。」ことが記載されている。特許文献2にはまた、導電性材料(552)がコーティング(536)内にエッチングされることで、導電性材料(552)がコーティング(536)の導電体層(538)に到達し、バスバー形成のための電気的接続を形成することが記載されている(図5)。
上記記載から分かるように、特許文献2において、バスバーは、コーティング内の導電体層への給電用電極である。特許文献2では、コーティング内の導電体層とバスバーとが電気的に接続されており、コーティング内の導電体層とバスバーとの間は絶縁されていない。コーティングは、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めるために、ガラス板と、コーティング以外の他の電気的機能部に給電するための給電部との間に設けられたものではない。
【0014】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、導電体と端子とを無鉛半田を用いて接合した部分を含み、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めることが可能な車両用フロントガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、以下の車両用フロントガラスとその製造方法を提供する。
[1] 第1ガラス板と第2ガラス板とが中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスを含む車両用フロントガラスであって、
前記合わせガラスは、前記第1ガラス板と、当該第1ガラス板の車内面の上に形成され、銀とガラスフリットとを含む材料からなり、端子が接合される端子接合部を有する導電体と、当該導電体の前記端子接合部上に無鉛半田を介して接合された端子とを有する端子付きガラス板を含み、
前記導電体は、電気的機能部を含むか、電気的機能部に電気的に接続されており、
前記導電体は、前記電気的機能部に給電するための給電部を含み、当該給電部が前記端子接合部を含み、
前記端子付きガラス板は、前記第1ガラス板と前記端子接合部との間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を含む、車両用フロントガラス。
【0016】
[2] 前記無機薄膜は、気相成長膜である、[1]の車両用フロントガラス。
[3] 前記端子接合部は、前記無機薄膜の直上に形成され、
前記第1ガラス板の前記車内面と前記導電体の前記端子接合部を除く少なくとも一部との間に、第1遮光層が形成され、
前記第1ガラス板の車外面、および、前記第2ガラス板の2つの表面のうちの少なくとも1つの表面の上に、平面視にて、前記導電体の前記端子接合部を覆う第2遮光層が形成された、[1]または[2]の車両用フロントガラス。
【0017】
[4] 前記無機薄膜は、B、Al、Si、Ti、Cr、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、In、Sn、Hf、TaおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を含む1つ以上の金属化合物層を含む、[1]~[3]のいずれかの車両用フロントガラス。
【0018】
[5] 前記無機薄膜は、B、Al、Si、Ti、Cr、Ni、Ga、Y、Zr、Nb、Hf、TaおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の絶縁性金属化合物を含む1つ以上の絶縁性金属化合物層を含み、
前記無機薄膜が積層構造である場合、当該無機薄膜の少なくとも最表層が前記絶縁性金属化合物層である、[1]~[4]のいずれかの車両用フロントガラス。
【0019】
[6] 前記無機薄膜は、1つ以上の絶縁性金属化合物層と、金属および導電性金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む1つ以上の導電体層とを含み、
前記無機薄膜の少なくとも最表層が前記絶縁性金属化合物層である、[1]~[5]のいずれかの車両用フロントガラス。
【0020】
[7] 前記無機薄膜は、低反射機能、低放射機能、撥水機能、電熱機能、防曇機能、防汚機能、赤外線遮蔽機能、紫外線遮蔽機能およびp偏光反射機能からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能膜である、[1]~[6]のいずれかの車両用フロントガラス。
【0021】
[8] 前記第1ガラス板の前記車内面は、前記第1ガラス板の前記中間膜側の表面であり、かつ、前記第2ガラス板に覆われない露出部を有し、当該露出部に、前記導電体の前記端子接合部が形成された、[1]~[7]のいずれかの車両用フロントガラス。
【0022】
[9] 前記第1ガラス板の前記車内面は、前記第1ガラス板の前記中間膜側と反対側の表面である、[1]~[7]のいずれかの車両用フロントガラス。
[10] 前記第1ガラス板の前記車内面と前記導電体の前記端子接合部を除く少なくとも一部との間に、第1遮光層が形成され、
前記第2ガラス板の前記中間膜側の表面上に、平面視にて、前記導電体の前記端子接合部を覆う第2遮光層が形成された、[9]の車両用フロントガラス。
【0023】
[11] 前記端子付きガラス板は、平面視にて、光学装置が取り付けられる光学装置取付領域と、当該光学装置取付領域内に位置し、外部から前記光学装置への入射光および/または前記光学装置からの出射光が通る透光部とを有し、
前記第1遮光層は、平面視にて、前記透光部の少なくとも一部を囲むように形成されており、
前記導電体は、前記透光部の内部に形成された電熱線と、前記透光部の外部に形成された前記給電部と、前記透光部の外部に形成され、前記電熱線と前記給電部とを接続する接続配線とを含む、[10]の車両用フロントガラス。
【0024】
[12] 前記端子に、丸線状または箔状の導線からなる給電用部材が固定された、[1]~[11]のいずれかの車両用フロントガラス。
【0025】
[13] 第1ガラス板と第2ガラス板とが中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスを含み、
前記合わせガラスは、前記第1ガラス板と、当該第1ガラス板の車内面の上に形成され、端子が接合される端子接合部を有する導電体と、当該導電体の前記端子接合部上に接合された端子とを有する端子付きガラス板を含み、
前記導電体は、電気的機能部を含むか、電気的機能部に電気的に接続されており、
前記導電体は、前記電気的機能部に給電するための給電部を含み、当該給電部が前記端子接合部を含む、車両用フロントガラスの製造方法であって、
前記第1ガラス板の前記車内面上の少なくとも前記端子接合部の形成領域に、気相成長法により、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を成膜する工程(S11)と、
前記無機薄膜を成膜した前記第1ガラス板の前記車内面上に、前記導電体の材料である銀とガラスフリットとを含む銀含有ペーストを塗工する工程(S13)と、
前記導電体の材料を塗工した前記第1ガラス板を焼成して、前記導電体を形成して、導電体付きガラス板を得る工程(S14)と、
前記導電体付きガラス板と前記第2ガラス板とを、前記中間膜を介して貼り合わせる工程(S15)と、
前記導電体に含まれる前記端子接合部上に無鉛半田を介して前記端子を接合する工程(S16)とを有する、車両用フロントガラスの製造方法。
【0026】
[14] 前記車両用フロントガラスは、前記端子接合部が、前記無機薄膜の直上に形成され、前記第1ガラス板の前記車内面と前記導電体の前記端子接合部を除く少なくとも一部との間に、第1遮光層が形成されたものであり、
工程(S11)と工程(S13)との間に、前記無機薄膜を成膜した前記第1ガラス板の前記車内面上に、前記第1遮光層の材料である黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工する工程(S12)を有し、
工程(S14)において、前記第1遮光層の材料および前記導電体の材料を塗工した前記第1ガラス板を焼成して、前記第1遮光層と前記導電体とを形成して、前記導電体付きガラス板を得る、[13]の車両用フロントガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本開示の車両用フロントガラスでは、端子付きガラス板は、ガラス板と端子接合部との間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を含む。かかる構成では、無機薄膜の存在によって、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めることができる。
本開示によれば、導電体と端子とを無鉛半田を用いて接合した部分を含み、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めることが可能な車両用フロントガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る第1実施形態の車両用フロントガラスの全体平面図である。
図2図1の部分拡大平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図3の部分拡大断面図(端子/無鉛半田/端子接合部を含む給電用電極/無機薄膜/第1ガラス板の積層構造の部分拡大断面図)である。
図5図4の部分拡大断面図(端子接合部を含む給電用電極/無機薄膜/第1ガラス板の積層構造の部分拡大断面図)である。
図6A】第1実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図6B】第1実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図6C】第1実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図6D】第1実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図6E】第1実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図6F】第1実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図6G】第1実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図7】第1実施形態の設計変更例を示す断面図である。
図8A】本発明に係る第2実施形態の車両用フロントガラスの全体平面図である。
図8B】第2実施形態の車両用フロントガラスの外ガラス板の全体平面図である。
図9図8Aの部分拡大平面図である。
図10A図9のXA-XA線断面図である。
図10B図9のXB-XB線断面図である。
図10C図9のXC-XC線断面図である。
図11A】第2実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図11B】第2実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図11C】第2実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図11D】第2実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図11E】第2実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図11F】第2実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図11G】第2実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の工程図である。
図12A】端子付け前のガラス板(導電体付きガラス板)の評価結果を示すグラフである。
図12B】端子付け後のガラス板(端子付きガラス板)の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一般的に、薄膜構造体は、厚さに応じて、「フィルム」および「シート」等と称される。本明細書では、これらを明確には区別しない。したがって、本明細書で言う「フィルム」に「シート」が含まれる場合がある。
本明細書において、形状に付く「略」は、その形状の角を丸くした面取り形状、その形状の一部が欠けた形状、その形状に任意の小さな形状が追加した形状等、部分的に変化した形状を意味する。
本明細書において、特に明記しない限り、「ガラス板」は、未強化ガラスを指す。
本明細書において、特に明記しない限り、「ガラス板の表面」は、ガラス板の端面(側面とも言う。)を除く、面積の大きい主面を指す。
本明細書において、特に明記しない限り、「上下」、「左右」、「縦横」、「内外」は、車両用フロントガラスが車両に嵌め込まれた状態(実際の使用状態)で、車内側から見たときの「上下」、「左右」、「縦横」、「内外」である。
本明細書において、特に明記しない限り、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
[車両用フロントガラス]
本開示は、第1ガラス板と第2ガラス板とが中間膜を介して貼り合わされた合わせガラスを含む車両用フロントガラスに関する。
第1ガラス板および第2ガラス板のうち、一方のガラス板が車外側のガラス板(外ガラス板とも言う。)であり、他方のガラス板が車内側のガラス板(内ガラス板とも言う。)である。
合わせガラスの材料であるガラス板の種類としては特に制限されず、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムシリケートガラス、石英ガラス、サファイアガラスおよび無アルカリガラス等が挙げられる。
【0031】
合わせガラスの厚みは特に制限されず、車両用フロントガラスの用途では、好ましくは2~6mmである。
内ガラス板の厚みと外ガラス板の厚みとは、同一でも非同一でもよい。内ガラス板の厚みは、好ましくは0.3~2.3mmである。内ガラス板の厚みは、0.3mm以上であるとハンドリング性が良く、2.3mm以下であると質量が大きくなり過ぎない。外ガラス板の厚みは、好ましくは1.0~3.0mmである。外ガラス板の厚みは、1.0mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が充分であり、3.0mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。外ガラス板の厚みと内ガラス板の厚みがいずれも1.8mm以下であれば、合わせガラスの軽量化と遮音性とを両立でき、好ましい。
【0032】
車両用フロントガラスは、車両に取り付けられたときに、車外側が凸となるような湾曲形状であってよい。車両用フロントガラスが合わせガラスである場合、内ガラス板および外ガラス板は、ともに車外側が凸となるような湾曲形状であってよい。車両用フロントガラスは、左右方向または上下方向のいずれか一方向のみに湾曲した単曲曲げ形状であってもよいし、左右方向と上下方向に湾曲した複曲曲げ形状であってもよい。車両用フロントガラスの曲率半径は2000~11000mmであってよい。車両用フロントガラスは、左右方向と上下方向の曲率半径が同一でも非同一でもよい。車両用フロントガラスの曲げ成形には、重力成形、プレス成形およびローラー成形等が用いられる。
【0033】
合わせガラスは、表面の少なくとも一部の領域に、撥水、低反射性、低放射性、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽および着色等の機能を有する機能膜を有していてもよい。
合わせガラスは、内部の少なくとも一部の領域に、低反射性、低放射性、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽および着色等の機能を有する機能膜を有していてもよい。合わせガラスの中間膜の少なくとも一部の領域が、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽および着色等の機能を有していてもよい。
合わせガラスの中間膜は、単層膜でも積層膜でもよい。
【0034】
本開示の車両用フロントガラスにおいて、合わせガラスは、第1ガラス板と、第1ガラス板の車内面の上に形成され、銀とガラスフリットとを含む材料からなり、端子が接合される端子接合部を有する導電体と、この導電体の端子接合部上に無鉛半田を介して接合された端子とを有する端子付きガラス板を含む。
本明細書において、導電体の「端子接合部」は、導電体における無鉛半田の直下部分を指す。
【0035】
端子付きガラス板において、上記導電体は、電気的機能部を含むか、電気的機能部に電気的に接続されている。電気的機能部としては、1本以上の電熱線、電熱層、アンテナ、調光層、発光素子およびこれらの組合せ等が挙げられる。発光素子としては、LED(Light Emitting Diode)およびOLED(Organic Light Emitting Diode))等が挙げられる。
1本以上の電熱線または電熱層によって、曇り、霜、雪および氷等の除去および付着防止が可能である。1本以上の電熱線または電熱層は例えば、フロントガラス全面の防曇;カメラおよびレーダー等の光学機器を含む光学装置によるセンシング領域の防曇;ワイパーの凍結防止等の目的で、使用できる。電気的機能部は、公知方法にて製造できる。
【0036】
端子付きガラス板において、上記導電体は、電気的機能部に給電するための給電部を含む。給電部は一対の給電用電極(一対のバスバーとも言う。)を含むことができ、各給電用電極が端子接合部を含むことができる。
例えば、一方の給電用電極は正極であり、給電用部材を介して、車両内に設けられた電源または信号源に接続され、他方の給電用電極は負極であり、給電用部材を介して、車体(アース)に接続される。なお、正極用の給電用電極は単数でも複数でもよく、負極用の給電用電極は単数でも複数でもよい。
導電体が電気的機能部に接続されている場合、導電体と電気的機能部とは、同じガラス面の上に形成されていてもよいし、異なるガラス面の上に形成されていてもよい。
端子接合部を有する導電体は、ガラス板の上に銀粉とガラスフリットとを含む銀含有ペーストを塗工し、焼成する方法で形成される。
【0037】
端子には、丸線状または箔状の導線からなる給電用部材が固定されることができる。本明細書で言う「導線」には、1本以上の導線が絶縁材で被覆された被覆導線が含まれるものとする。給電用部材としては、被覆導線が好ましい。
給電用部材の具体的な形態としては、ハーネスおよびケーブル等が挙げられる。丸線状の導線として、ワイヤーハーネス等が挙げられる。箔状の導線として、フラットハーネスおよびフレキシブルプリント基板等が挙げられる。
給電用部材は導体露出部を有し、この導体露出部に端子が固定される。導体露出部の材料は特に制限されず、Cu、Al、Ag、Au、Ti、Sn、Zn、これらの合金、およびこれらの組合せ等が挙げられる。導体露出部は、主金属の表面を他の金属でめっきしたものでもよい。導体露出部は、表面に薄い酸化膜を有していてもよい。
【0038】
無鉛半田は、鉛をほとんど、または全く、含まない半田であり、公知のものを用いることができる。無鉛半田中の鉛含有量は、500ppm以下である。無鉛半田としては、SnおよびAgを含むSnAg系;Sn、Ag、およびCuを含むSnAgCu系;Sn、Zn、およびBiを含むSnZnBi系;SnおよびCuを含むSnCu系;Sn、Ag、In、およびBiを含むSnAgInBi系;Sn、Zn、およびAlを含むSnZnAl系等が挙げられる。
【0039】
耐環境性等の観点から、SnAg系およびSnAgCu系等の無鉛半田が好ましい。
SnAg系およびSnAgCu系等の無鉛半田の融点は有鉛半田の融点より高く、例えば220℃程度である。SnAg系およびSnAgCu系等の無鉛半田を用いる場合、半田接合温度は例えば300℃程度である。本開示は、特に、融点の高いSnAg系およびSnAgCu系等の無鉛半田を用いる場合に、有効である。
【0040】
以下、SnAg系およびSnAgCu系の無鉛半田の好ましい態様について、説明する。
SnAg系およびSnAgCu系の無鉛半田におけるSnの含有量は特に制限されず、好ましくは95質量%以上、より好ましくは95~98.5質量%、特に好ましくは96~98質量%である。Snの含有量が95質量%以上(Agの含有量が5質量%以下)であれば、無鉛半田の融点を比較的低くできるので、半田接合温度を比較的低くでき、ガラス板の温度上昇を比較的小さくできる。その結果、ガラス板に生じる残留応力およびそれによるガラス板の割れを抑制できる。
【0041】
一般的に、Agを含まないSn系の無鉛半田を用いると、無鉛半田中のSnと導電体中のAgとの相溶性が高いため、導電体の端子接合部中のAgがSnを含む無鉛半田中に浸透する、いわゆる「銀くわれ」が起こりやすい。この場合、端子接合部が変質および薄膜化等により変色して、外観不良が生じる恐れがある。
SnとAgとを含む無鉛半田を用いると、無鉛半田中のSnはすでにAgとの化合物を形成しているため、導電体の端子接合部中のAgの無鉛半田中への浸透を抑制でき、端子接合部の変色およびそれによる外観不良を抑制できる。
無鉛半田中のAgの含有量は、好ましくは1.5~5質量%、より好ましくは2~4質量%である。Agの含有量が1.5質量%以上であれば、導電体の端子接合部中のAgの無鉛半田中への浸透を効果的に抑制でき、かつ、良好な接合強度が得られる。Agの含有量が5質量%以下であれば、無鉛半田の材料コストを低く抑え、無鉛半田の融点を比較的低く抑えられる。
【0042】
無鉛半田は、SnおよびAg以外の金属元素としてCuを含んでいてもよい。無鉛半田中のCuの含有量は特に制限されず、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0043】
SnAg系の無鉛半田の組成例としては、Sn:98質量%、Ag:2質量%等が挙げられる。SnAgCu系の無鉛半田の組成例としては、Sn:96.5質量%、Ag:3.0質量%、Cu:0.5質量%等が挙げられる。
【0044】
[発明が解決しようとする課題]の項で説明したように、一般的に、無鉛半田の融点は有鉛半田の融点より高く、例えば220℃程度であり、より高い温度(例えば300℃程度)で半田接合を行う必要がある。導電体付きガラス板において、導電体と端子とを無鉛半田によって接合する場合、ガラス板に局所的な高温加熱と高温から常温への降温とが起こる。降温の際には、ガラス板の熱膨張係数と無鉛半田の熱膨張係数との差に起因して、ガラス板と無鉛半田に熱収縮量の差が生じ、ガラス板と無鉛半田との間に歪みが生じ、導電体付きガラス板に応力(具体的には、引張応力)が発生する。そして、降温後にもこの応力が残留する場合がある。この残留応力が原因となり、窓ガラスの製造後に、ガラス板にクラックが生じる恐れがある。また、無鉛半田は弾性率の低い鉛を含まないため、有鉛半田に比べ弾性率が高く、変形しにくい。よって、導電体付きガラス板に発生した残留応力が緩和しにくい。これら理由から、導電体と端子とを無鉛半田によって接合する場合、接合後のガラス板への残留応力の発生、およびそれによる製造後のクラック発生の問題が起こり得る。
【0045】
本開示の車両用フロントガラスにおいて、端子付きガラス板は、第1ガラス板と端子接合部との間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を含む。換言すれば、端子付きガラス板に含まれる導電体において、少なくとも端子接合部は、第1ガラス板上に形成された上記無機薄膜の上に形成される。本発明者らの研究によれば、かかる構成では、無機薄膜の存在によって、端子接合部を補強でき、端子付け前および端子付け後の第1ガラス板の破壊強度を高めることができることが分かった。
【0046】
無機薄膜の最表面の絶縁性は、表面抵抗率を指標とできる。無機薄膜の最表面の表面抵抗率が1.0×1012Ω/□以上であれば、無機薄膜の最表面は絶縁性であると言える。無機薄膜の最表面の表面抵抗率は例えば、1.0×1012Ω/□以上1.0×1016Ω/□未満である。
【0047】
無機薄膜は、気相成長膜であることができる。
無機薄膜は、1つ以上の金属化合物層を含むことができる。
無機薄膜は、1つ以上の絶縁性金属化合物層を含むことが好ましい。無機薄膜が積層構造である場合、無機薄膜の少なくとも最表層が絶縁性金属化合物層であることが好ましい。
無機薄膜は、1つ以上の上記絶縁性金属化合物層と、1つ以上の導電体層とを含むことができる。この場合、無機薄膜の少なくとも最表層が絶縁性金属化合物層であることが好ましい。
【0048】
無機薄膜は、低反射機能、低放射機能、撥水機能、電熱機能、防曇機能、防汚機能、赤外線遮蔽機能、紫外線遮蔽機能、p偏光反射機能およびこれらの組合せ等の機能を有する機能膜であることができる。これら機能膜は公知のものを用いることができる。
なお、本明細書において、「無機薄膜が機能膜である」ことは、無機薄膜として機能膜を用いることができることを意味し、無機薄膜が上記機能を発現する必要はない。無機薄膜の上に端子接合部が形成されるので、無機薄膜は上記機能を発現しない場合がある。第1ガラス板と端子接合部との間に形成される無機薄膜は、端子接合部の補強用であり、機能発現用ではない。
【0049】
なお、車両用フロントガラスにおいて、気相成長法により上記機能膜を形成すること自体は公知である。しかしながら、通常は遮光層の形成領域内は機能膜が不要であり、機能膜を形成した上に遮光層を形成することで外観不良が生じる場合がある。そのため、遮光層の形成領域(遮光領域とも言う。)には機能膜を形成しない、換言すれば、機能膜は、遮光層の非形成領域(非遮光領域とも言う。)にのみ形成されることが、従来の当業者の常識である。
合わせガラスの第1ガラス板の非遮光領域に機能膜が形成される場合、この機能膜を、遮光領域の少なくとも端子接合部の形成領域に、端子接合部の補強用の無機薄膜として、同じ工程で形成してもよい。この場合、工程数を増やすことなく、低コストに無機薄膜を形成できる。
【0050】
端子付きガラス板は必要に応じて、第1ガラス板の車内面の上に第1遮光層を有することができる。
ただし、端子接合部は、無機薄膜の直上に形成されることが好ましい。換言すれば、端子付きガラス板は、無機薄膜と端子接合部との間に第1遮光層を有さないことが好ましい。
端子付きガラス板はまた、少なくとも端子接合部の形成領域内については、第1ガラス板と無機薄膜との間に第1遮光層を有さないことが好ましい。
【0051】
本発明者らの研究によれば、銀とガラスフリットとを含む導電体は、ガラスフリットの成分が導電体の表面に多く存在することが分かった。特に、遮光層上に導電体を形成する場合、ガラスフリットの成分が導電体の表面により多く存在することが分かった。これらの事実は、導電体形成用材料および遮光層形成用材料の焼成時に、これらの材料に含まれるガラスフリットの成分の一部が表層側に移行するためと推察される。
一般的に、ガラスフリットの成分に対する無鉛半田の濡れ性が低い。導電体の表面にガラスフリットの成分が多く存在すると、導電体に対する無鉛半田の接合強度が低下し、良好な形状の半田フィレットが形成しづらくなるため、端子付け後のガラス板の破壊強度が低下すると考えられる。
【0052】
上記構成では、端子接合部に、遮光層形成用材料由来のガラスフリットの成分が存在しないため、遮光層上に形成された端子接合部に対して、端子接合部の表面に存在するガラスフリットの成分の量を低減できる。その結果、端子接合部に対する無鉛半田の濡れ性を向上でき、端子接合部に対する無鉛半田の接合強度を向上でき、良好な形状の半田フィレットを形成できると考えられる。無機薄膜による端子接合部の補強効果と、端子接合部の表面におけるガラスフリットの成分の低減効果とが相俟って、端子付きガラス板(端子付け後の第1ガラス板)の破壊強度を効果的に高められる。
なお、本開示の技術では、無機薄膜による端子接合部の補強効果が得られるため、端子付きガラス板は、無機薄膜と端子接合部との間に第1遮光層を有してもよい。
【0053】
端子付きガラス板に含まれる導電体の給電部は、車外にいる人から視認されないように、設計することが好ましい。
端子付きガラス板は、少なくとも端子接合部の形成領域内については、第1ガラス板と無機薄膜との間に第1遮光層を有さず、端子接合部が無機薄膜の直上に形成される構成では、第1ガラス板の車内面と導電体の端子接合部を除く少なくとも一部との間に第1遮光層が形成され、第1ガラス板の車外面、および、第2ガラス板の2つの表面のうちの少なくとも1つの表面の上に、平面視にて、導電体の端子接合部を覆う第2遮光層が形成されることが好ましい。かかる構成により、端子付きガラス板に含まれる給電部が、車外にいる人から視認されないように、設計できる。
【0054】
遮光層は公知方法にて形成でき、例えば、ガラス板の表面の所定の領域に、黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工し、焼成することで、形成できる。遮光層の厚さは特に制限されず、例えば5~20μmである。
導電体および遮光層用のガラスフリットとしては、公知のものを用いることができる。金属元素として、Na、Al、Si、P、Zn、BaおよびBi等を含むものを用いることができる。
【0055】
本開示の車両用フロントガラスは例えば、以下の製造方法により製造できる。
本開示の車両用フロントガラスの製造方法は、
第1ガラス板の車内面上の少なくとも端子接合部の形成領域に、気相成長法により、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を成膜する工程(S11)と、
無機薄膜を成膜した第1ガラス板の車内面上に、導電体の材料である銀とガラスフリットとを含む銀含有ペーストを塗工する工程(S13)と、
導電体の材料を塗工した第1ガラス板を焼成して、導電体を形成して、導電体付きガラス板を得る工程(S14)と、
導電体付きガラス板と第2ガラス板とを、中間膜を介して貼り合わせる工程(S15)と、
導電体に含まれる端子接合部上に無鉛半田を介して端子を接合する工程(S16)とを有することができる。
【0056】
車両用フロントガラスは、端子接合部が無機薄膜の直上に形成され、第1ガラス板の車内面と導電体の端子接合部を除く少なくとも一部との間に、第1遮光層が形成されたものであることができる。
この場合、本開示の車両用フロントガラスの製造方法は、工程(S11)と工程(S13)との間に、無機薄膜を成膜した第1ガラス板の車内面上に、第1遮光層の材料である黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工する工程(S12)を有し、
工程(S14)において、第1遮光層の材料および導電体の材料を塗工した第1ガラス板を焼成して、第1遮光層と導電体とを形成して、導電体付きガラス板を得ることができる。
【0057】
[第1実施形態]
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態の車両用フロントガラスの構造について、説明する。
図1は、本実施形態の車両用フロントガラスの全体平面図である。図2は、図1の部分拡大平面図である。図1および図2は、端子接合前の図であり、図示手前側が車内側、図示奥側が車外側である。図3は、図2のIII-III線断面図である。図3において、図示上側が車外側、図示下側が車内側である。これらの図において、平面図および部分拡大平面図はいずれも、透視図である。これらの図はいずれも模式図であり、視認しやすくするため、図面ごとに、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0058】
車両用フロントガラス1の平面形状は適宜設計でき、図1に示すような、平面視略台形状の板が全体的に湾曲した形状等が挙げられる。
図3に示すように、本実施形態の車両用フロントガラス1は、外ガラス板11(車外側のガラス板、本実施形態では第1ガラス板)と、内ガラス板13(車内側のガラス板、本実施形態では第2ガラス板)とが、中間膜12を介して貼り合わされた合わせガラス10を含む。
本実施形態において、合わせガラス10は、外ガラス板11と、外ガラス板11の車内面(中間膜12側の表面)S2の上に形成され、銀とガラスフリットとを含む材料からなり、端子102が接合される端子接合部20Tを有する導電体20と、導電体20の端子接合部20T上に無鉛半田101を介して接合された端子102とを有する端子付きガラス板11Xを含む。
【0059】
図1に示すように、本実施形態の車両用フロントガラス1は、周縁領域に1つ以上の遮光層BLを有する。1つ以上の遮光層BLが形成された周縁領域を合わせガラス10の遮光領域と言い、それより内側の領域を非遮光領域と言う。遮光層BLの数、遮光層BLが形成されるガラス面および遮光層BLの形成領域は、適宜設計できる。
【0060】
図示例では、車両用フロントガラス1は、1つ以上の遮光層BLとして、遮光層BL2、および必要に応じて遮光層BL4を有することができる。具体的には、図3に示すように、ガラス板11の車内面S2(中間膜12側の表面)の所定の領域に遮光層BL2が形成されている。必要に応じて、内ガラス板13の車内面S4(中間膜12側と反対側の表面)の所定の領域に、遮光層BL4を形成できる。
【0061】
本実施形態において、導電体20は、ワイパーに付着した霜、雪および氷等を融かし、ワイパーの凍結を防止する機能を有する。図1中、符号WPを付した破線で示す領域は、ワイパーの可動領域である。
図1および図2に示すように、導電体20は、1本以上の電熱線20Lまたは電熱層からなる電気的機能部を含む。ここでは、導電体20が複数の電熱線20Lを含む場合を例として、図示してある。導電体20はさらに、一対の給電用電極(一対のバスバー)20Bを含む給電部を含むことができる。一対の給電用電極(一対のバスバー)20Bは、一方が正極であり、他方が負極である。導電体20は例えば、車両用フロントガラス1の下端部および/または少なくとも一方の側端部に形成できる。導電体20の構成、パターンおよび形成領域は、適宜設計できる。
【0062】
図2に示すように、内ガラス板13は下端部に切欠部13Nを有し、これによって、端子付きガラス板11Xは、中間膜12を介して対向する内ガラス板13に覆われない露出部11Eを有する。本実施形態において、導電体20は、端子付きガラス板11Xの中間膜12側に形成されている。一対の給電用電極(一対のバスバー)20Bはいずれも、少なくとも一部が、端子付きガラス板11Xの露出部11Eに形成され、内ガラス板13に覆われずに露出している。
【0063】
図2および図3に示すように、一対の給電用電極(一対のバスバー)20Bはいずれも、給電用電極20Bの露出部20Eが端子接合部20Tを含み、端子接合部20T上に無鉛半田101を介して端子102が接合されている。端子102には、丸線状または箔状の導線からなる給電用部材103が固定されている。
導電体20の端子接合部20Tは、無鉛半田101の直下部分である。図中、端子接合部20Tの形成領域は、2つの破線T1、T2で挟まれる領域である。なお、導電体20の端子接合部20Tは、はじめから明確に位置が定まっている訳ではない。給電用電極20Bにおいて、無鉛半田101を介して端子102を接合した後の無鉛半田101の直下部分が、端子接合部20Tである。
【0064】
図3に示すように、端子付きガラス板11Xは、外ガラス板11と端子接合部20Tとの間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜30を含む。
図示例では、無機薄膜30は、給電用電極20Bの露出部20E上に、少なくとも端子接合部20Tの形成領域を含むように、形成されている。
なお、図3では、視認しやすくするため、露出部11Eおよび露出部20Eは、両矢印線で形成範囲を示してある。
上記構成では、無機薄膜30の存在によって、端子付け前および端子付け後の外ガラス板11の破壊強度を高めることができる。
【0065】
図4は、図3に示される端子102/無鉛半田101/端子接合部20Tを含む給電用電極20B/無機薄膜30/外ガラス板11の積層構造の断面を、図3の左方から見た部分拡大断面図である。ここでは、視認しやすくするため、積層構造の上下を反転させてある。
給電用部材103としては、丸線状または箔状の導線が好ましく、丸線状または箔状の被覆導線がより好ましい。ワイヤーハーネスおよびフラットハーネス等が好ましい。
給電用部材103は先端部が導体露出部であり、この導体露出部に端子102が固定されている。
端子102としては、公知の圧着端子が好ましい。圧着端子としては、給電用部材103の先端部(導体露出部)と接する給電用部材接合部102A(図3を参照されたい。)と、無鉛半田101と接する半田接合部102B(図3および図4を参照されたい。)とを有するものが好ましい。
【0066】
給電用部材103としてワイヤーハーネスを用いる場合、圧着端子としては、図3および図4に示すような、ワイヤーハーネスの先端部(導体露出部)をかしめ固定する給電用部材接合部102Aと、両端部に半田接合部102Bを有する橋状部とからなる圧着端子が好ましい。圧着端子としては、橋状部を有さず、1つの半田接合部102Bを有するものでもよい。
【0067】
端子102としては、金属製の端子が好ましい。端子の構成金属としては特に制限されず、Cu、Fe、Cr、NiおよびZn等の金属;Cu、Fe、Cr、NiおよびZn等の1種以上の金属元素を含む合金;これらの組合せが挙げられる。合金としては、ステンレス(SUS)および真鍮等が挙げられる。端子102は、表面に錫メッキ等の表面加工が施されていてもよい。端子102は、少なくとも一部が絶縁材で被覆されていてもよい。端子102の厚みは特に制限されず、好ましくは0.4~0.8mmである。単一材料からなる端子102は例えば、金属板を打ち抜き加工(抜型を用いたプレス加工)して所望サイズの金属板を得、これを屈曲加工(ベンディング加工)することにより、製造できる。
例えば、給電用部材103の先端部(導体露出部)に端子102(好ましくは圧着端子)がかしめ固定され、その端子102が給電用電極20B内の端子接合部20Tに、無鉛半田101を介して接合される。なお、給電用部材103の先端部(導体露出部)と端子102とは、半田で接続されていてもよいし、溶着により接続されてもよい。
【0068】
無機薄膜30は、気相成長膜であることができる。気相成長膜は、公知の気相成長法により成膜された膜である。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法(IP法)、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(CVD法)およびプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)等が挙げられる。
【0069】
無機薄膜30は、B、Al、Si、Ti、Cr、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、In、Sn、Hf、TaおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を含む1つ以上の金属化合物層を含むことができる。
上記金属化合物としては、Al、SiO、TiO、ZnO、Ga、Y、ZrO、Nb、In、ITO(インジウム錫酸化物)、SnO、HfO、TaおよびWO等の金属酸化物;AlN、SiNおよびTiN等の金属窒化物;AlONおよびSiON等の金属酸窒化物;これらの組合せ等が挙げられる。
金属化合物層は、上記以外の1種以上の元素および/または不可避不純物を含んでいてもよい。金属化合物層は例えば、上記金属化合物に、任意の元素をドープした組成からなるものでもよい。
【0070】
無機薄膜30は、B、Al、Si、Ti、Cr、Ni、Ga、Y、Zr、Nb、Hf、TaおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の絶縁性金属化合物を含む1つ以上の絶縁性金属化合物層を含むことが好ましい。無機薄膜30が積層構造である場合、無機薄膜30の少なくとも最表層が上記絶縁性金属化合物層であることが好ましい。
上記絶縁性金属化合物としては、Al、SiO、TiO、Ga、Y、ZrO、Nb、HfO、TaおよびWO等の金属酸化物;AlN、SiNおよびTiN等の金属窒化物;AlONおよびSiON等の金属酸窒化物;これらの組合せ等が挙げられる。
絶縁性金属化合物層は、上記以外の1種以上の元素および/または不可避不純物を含んでいてもよい。金属化合物層は例えば、上記絶縁性金属化合物に、任意の元素をドープした組成からなるものでもよい。
【0071】
無機薄膜30は、1つ以上の上記絶縁性金属化合物層と、金属および導電性金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む1つ以上の導電体層とを含むことができる。この場合、無機薄膜30の少なくとも最表層が上記絶縁性金属化合物層であることが好ましい。
金属としては、Ag、Au、Cu、Pd、Pt、Ti、Cr、Ni、Al、Zr、W、V、Rh、Ir、これらの合金、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
導電性金属化合物としては、ITO(インジウム錫酸化物)、TiドープZnO(TZO)、FドープSnO(FTO)、SbドープSnO(ATO)、AlドープSnO、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
【0072】
無機薄膜30の全体厚みは、厚い方が、端子接合部20Tの補強効果が高まる傾向がある。ただし、全体厚みが厚いと、成膜時間が長くなり、高コストになる。無機薄膜30の全体厚みは1000nm以下であり、成膜時間および成膜コストの観点から、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。無機薄膜30の全体厚みの下限値は特に制限されず、端子接合部20Tの補強効果の観点から、好ましくは100nm、より好ましくは150nmである。
【0073】
図5に、図4で示した、端子接合部20Tを含む給電用電極20B/無機薄膜30/外ガラス板11の積層構造の拡大模式断面図を示す。
図示例では、無機薄膜30は、複数の絶縁性金属化合物層31と、複数の絶縁性金属化合物層31の間に挟持された導電体層32とからなる。無機薄膜30の少なくとも最表層(端子接合部20Tに接する層)が絶縁性金属化合物層31である。
無機薄膜30の層数は1以上であり、2以上または3以上であることができる。無機薄膜30の層数の上限値は特に制限されず、例えば5である。
【0074】
特許文献1とは異なり、本実施形態において、一対の給電用電極20Bを含む給電部は、無機薄膜30の給電用ではなく、一対の給電用電極20Bを含む給電部に流れる電流は、無機薄膜30に流れ込まない。無機薄膜30が導電体層32を含む場合も、一対の給電用電極20Bを含む給電部と導電体層32との間は、絶縁されている。
【0075】
無機薄膜30は、低反射機能、低放射機能、撥水機能、電熱機能、防曇機能、防汚機能、赤外線遮蔽機能、紫外線遮蔽機能、p偏光反射機能およびこれらの組合せ等の機能を有する機能膜であることができる。この場合、外ガラス板11の車内面S2上の、合わせガラス10の非遮光領域に、機能膜が形成されてもよい。
換言すれば、外ガラス板11の車内面S2上の、合わせガラス10の非遮光領域に、機能膜として無機薄膜が形成される場合、この無機薄膜を、端子接合部20Tの補強用の無機薄膜30として、端子接合部20Tの形成領域を含む領域にも形成できる。この場合、無機薄膜30を、合わせガラス10の非遮光領域に機能膜として形成される無機薄膜と、同じ工程で形成できる。
【0076】
上記したように、本実施形態の車両用フロントガラス1は、周縁領域に1つ以上の遮光層BLを有する。
図1に示すように、本実施形態において、外ガラス板11の車内面S2の周縁領域に、遮光層BL2(第1遮光層)が形成されている。ただし、外ガラス板11の車内面S2の、合わせガラス10の遮光領域内に、遮光層BL2の非存在領域が存在する。
【0077】
図3図5に示すように、端子接合部20Tは、無機薄膜30の直上に形成されることが好ましい。換言すれば、端子付きガラス板11Xは、無機薄膜30と端子接合部20Tとの間に遮光層BL2を有さないことが好ましい。
端子付きガラス板11Xはまた、少なくとも、端子接合部20Tの形成領域内については、外ガラス板11と無機薄膜30との間に遮光層BL2を有さないことが好ましい。
【0078】
図2および図3において、符号NBL2は、端子接合部20Tの形成領域を含む遮光層BL2の非形成領域である。図示例では、露出部11Eが、遮光層BL2の非形成領域NBL2であるが、遮光層BL2の非形成領域NBL2は、端子接合部20Tの形成領域を含む範囲内で適宜設計できる。
【0079】
なお、実際には、無機薄膜30の全体厚みは、遮光層BL2の厚みに対して、非常に薄いが、図3では視認しやすくするため、厚く図示してある。
図3ではまた、無機薄膜30と遮光層BL2とは、重ならず、かつ、間に隙間を空けずに隣接しているが、無機薄膜30と遮光層BL2とは、部分的に重なっていてもよい。無機薄膜30と遮光層BL2との重なり部分では、無機薄膜30上に遮光層BL2が重なる。無機薄膜30と遮光層BL2とは、間に隙間を空けて隣接してもよい。
【0080】
本実施形態において、遮光層BL2は、外ガラス板11の車内面S2の、遮光領域内の端子接合部20Tの形成領域を除く領域に形成されている。そして、この遮光層BL2上に、1本以上の電熱線20Lまたは電熱層からなる電気的機能部を含み、少なくとも端子接合部20Tを除く、導電体20の大部分が形成されている。
【0081】
上記構成ではまた、端子接合部20Tに、遮光層形成用材料由来のガラスフリットの成分が存在しないため、遮光層上に形成された端子接合部に対して、端子接合部20Tの表面に存在するガラスフリットの成分の量を低減できる。無機薄膜30による端子接合部20Tの補強効果と、端子接合部20Tの表面におけるガラスフリットの成分の低減効果とが相俟って、端子付きガラス板11Xの破壊強度を効果的に高められる。
【0082】
なお、本開示の技術では、無機薄膜30による端子接合部20Tの補強効果が得られるため、端子付きガラス板11Xは、無機薄膜30と端子接合部20Tとの間に遮光層BL2を有してもよい。
【0083】
本実施形態ではまた、図3に示すように、内ガラス板13の少なくとも一方の表面の周縁領域に、遮光層BL4が形成されてもよい。図示例では、内ガラス板13の車内面S4の周縁領域に、遮光層BL4が形成されている。
【0084】
(製造方法)
図面を参照して、本実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の一例について、説明する。図6A図6Gは、図3に対応した模式断面図である。
【0085】
(工程(S11))
はじめに、図6Aに示すように、外ガラス板11(車外側のガラス板、本実施形態では第1ガラス板)の車内面S2上の少なくとも端子接合部20Tの形成領域に、公知の気相成長法により、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜30を成膜する。
【0086】
(工程(S12))
次に、図6Bに示すように、無機薄膜30を成膜した外ガラス板11の車内面S2の、端子接合部20Tの形成領域を除く所定の領域に、遮光層BL2(本実施形態では、第1遮光層)の材料である黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工し、乾燥させて、セラミックペースト層BLPを形成する。
また、必要に応じて、内ガラス板13の車内面S4の所定の領域に、遮光層BL4の材料である黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工し、乾燥させて、セラミックペースト層BLPを形成する(図示略)。
セラミックペーストの乾燥条件はペースト組成に応じて適宜設計でき、例えば、120~150℃、約5分間が好ましい。
【0087】
(工程(S13))
次に、図6Cに示すように、無機薄膜30を成膜した外ガラス板11の車内面S2上に、導電体20の材料である銀とガラスフリットとを含む銀含有ペーストを塗工し、乾燥させて、導電ペースト層20Pを形成する。銀含有ペーストの乾燥条件はペースト組成に応じて適宜設計でき、例えば、120~150℃、約5分間が好ましい。
【0088】
(工程(S14))
次に、上記工程後の外ガラス板11および内ガラス板13を、同時にまたは個別に、軟化点以上の温度(例えば700~800℃)に加熱し、各ガラス板を曲げ成形する。この工程では、同時に、セラミックペースト層BLPおよび導電ペースト層20Pが焼成され、遮光層BL2、必要に応じて遮光層BL4、および導電体20が形成される。焼成後、各ガラス板は徐冷される。
以上の工程後に、図6Dに示すように、導電体付きガラス板11Yと、遮光層BL4を有してもよい内ガラス板13が得られる。
【0089】
(工程(S15))
次に、図6Eに示すように、導電体付きガラス板11Yと、遮光層BL4を有してもよい内ガラス板13とを、中間膜12の材料の樹脂フィルム12Fを介して貼り合わせる(貼合せ工程)。
樹脂フィルム12Fの構成樹脂は特に制限されず、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリウレタン(PU)、およびアイオノマー樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂が好ましい。樹脂フィルム12Fは必要に応じて、樹脂以外の1種以上の添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、顔料等の着色剤等が挙げられる。樹脂フィルム12Fは、無色透明でも有色透明でもよい。樹脂フィルム12Fは、単層構造でも2層以上の積層構造でもよい。
【0090】
貼合せは、熱圧着により行うことができる。熱圧着法としては、図6Eに示す複数の部材を重ねて得られた仮積層体をゴム製等の袋の中に入れ、真空中で加熱する方法;自動加圧加熱処理装置およびオートクレーブ等を用いて仮積層体を加圧加熱する方法;これらの組合せが挙げられる。
温度、圧力および時間の熱圧着条件は特に制限されず、樹脂フィルム12Fの種類と温度に応じて設計される。熱圧着条件は、樹脂フィルム12Fが軟化し、充分に加圧され、導電体付きガラス板11Yと遮光層BL4を有してもよい内ガラス板13とが樹脂を介して充分に接着される条件であればよい。熱圧着は、方法または条件を変えて、複数段階で実施してもよい。
なお、樹脂フィルム12Fの構成樹脂は軟化し、導電体付きガラス板11Yと遮光層BL4を有してもよい内ガラス板13との間の空間を埋めるように、広がる。
以上の工程後に、図6Fに示すように、合わせガラス10が得られる。
【0091】
(工程(S16))
次に、図6Gに示すように、各給電用電極20Bに含まれる端子接合部20T上に無鉛半田101を介して端子102を接合する。各給電用電極20Bの少なくとも端子接合部20Tは、あらかじめ、砂消しゴム等を用いた公知方法にて表面研磨しておくことが好ましい。端子102にはあらかじめ、公知方法にて、好ましくは丸線状または箔状の導線からなる給電用部材103が固定(好ましくは、かしめ固定)されている。半田接合については、図4も参照されたい。
【0092】
半田接合は、公知方法にて行うことができ、半田ごてまたは抵抗加熱を用いる方法が好ましい。
半田ごてを用いる場合、例えば、以下のように接合を実施できる。
端子の各半田接合部に、適量(例えば0.05~0.10g)の無鉛半田を付着させる。この端子を、導電体の端子接合部の上に配置する。この状態で、端子の半田接合部に、無鉛半田の融点以上の温度に設定した半田ごてのこて先を押し当て、無鉛半田を加熱溶融させる。その後、端子から半田ごてを離し、自然冷却により無鉛半田を凝固させる。
半田接合の前に、未溶融の無鉛半田の表面および/または端子の半田接合部の表面に、フラックスを塗布しておくことが好ましい。フラックスの作用により金属酸化膜が溶け、良好な接合状態を得ることができる。
半田接合の前に、半田ごてのこて先に適量の無鉛半田を載せ、加熱溶融しておくことが好ましい。この半田は予備半田と呼ばれ、半田接合時の熱伝導を高めることができる。
【0093】
一般的に、導電体と半田とを良好に接合するには、導電体と半田との接合界面に、導電体に含まれる1種以上の金属元素と半田に含まれる複数の金属元素との合金を含む合金層を形成する必要がある。そのため、半田をその融点以上に加熱して、半田接合を行う。
SnAg系およびSnAgCu系等の無鉛半田の融点は、例えば220℃程度であり、この場合、半田接合温度は例えば300℃程度が好ましい。
以上のようにして、本実施形態の車両用フロントガラス1が製造される。
【0094】
[第1実施形態の設計変更例]
第1実施形態では、導電体20が、1本以上の電熱線20Lまたは電熱層からなる電気的機能部と、一対の給電用電極(一対のバスバー)20Bを含む給電部とを含む態様について、説明した。導電体20は、電気的機能部を含まず、給電部のみを含み、この給電部が導電体20に含まれない電気的機能部に接続される構成としてもよい。
【0095】
例えば、図7に示すように、中間膜12の材料の樹脂フィルム12F上に、電気的機能部を含む導電体40を形成できる。例えば、導電体40は、1本以上の電熱線または電熱層からなる電気的機能部を含み、さらに必要に応じて、一対の給電用電極(一対のバスバー)を含む給電部を含むことができる。図7において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
例えば、樹脂フィルム12F上に、1本以上の電熱線としての1本以上の金属ワイヤー(例えば、タングステンワイヤー等)、および必要に応じて一対の給電用電極(バスバー)としての一対の金属箔(例えば、銅箔等)を配置できる。代替的に、樹脂フィルム12F上に、表面に1本以上の電熱線および一対の給電用電極が形成された樹脂フィルム(例えば、ポリビニルブチラール(PVB)フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム、およびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等)を配置してもよい。
【0096】
樹脂フィルム12F上に形成された電気的機能部は、導電体付きガラス板11Yと樹脂フィルム12Fと内ガラス板13とを貼り合わせた後、導電体付きガラス板11Yに含まれる給電部のみからなる導電体20に接続される。樹脂フィルム12F上に形成された電気的機能部は、樹脂フィルム12F上に形成された給電部を介して、導電体付きガラス板11Yに含まれる給電部のみからなる導電体20に接続されてもよい。
なお、樹脂フィルム12F上に形成される、電気的機能部および必要に応じて給電部を含む導電体40、並びに、導電体付きガラス板11Yに含まれる給電部のみからなる導電体20の構成、材料、形成方法、パターンおよび形成領域は、適宜設計できる。
【0097】
この設計変更例においても、第1実施形態と同様、外ガラス板11と端子接合部20Tとの間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜30が形成される。無機薄膜30の形成領域は、少なくとも端子接合部20Tの形成領域を含むように、設計される。
この設計変更例においても、第1実施形態と同様、導電体付きガラス板11Yと、内ガラス板13とを、中間膜12を介して貼り合わせた後、導電体20に含まれる端子接合部20T上に無鉛半田を介して端子を接合して、車両用フロントガラスを製造できる。
【0098】
[第2実施形態]
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態の車両用フロントガラスの構造について、説明する。
図8Aは、本実施形態の車両用フロントガラスの全体平面図である。図8Bは、外ガラス板の全体平面図である。図9は、図8Aの部分拡大平面図である。図8Aおよび図9は、端子接合前の図である。図8A図8Bおよび図9は、図示手前側が車内側、図示奥側が車外側である。図10Aは、図9のXA-XA線断面図である。図10Bは、図9のXB-XB線断面図である。図10Cは、図9のXC-XC線断面図である。図10A図10Cにおいて、図示上側が車外側、図示下側が車内側である。これらの図はいずれも模式図であり、視認しやすくするため、図面ごとに、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は適宜省略する。
【0099】
車両用フロントガラス2の平面形状は適宜設計でき、例えば、図8Aに示すような平面視略台形状の板が全体的に湾曲した形状等が挙げられる。
図10Cに示すように、本実施形態の車両用フロントガラス2は、外ガラス板11(車外側のガラス板、本実施形態では第2ガラス板)と、内ガラス板13(車内側のガラス板、本実施形態では第1ガラス板)とが、中間膜12を介して貼り合わされた合わせガラス50を含む。
【0100】
本実施形態において、合わせガラス50は、内ガラス板13と、内ガラス板13の車内面S4(中間膜12側と反対側の表面)の上に形成され、銀とガラスフリットとを含む材料からなり、端子102が接合される端子接合部60Tを有する導電体60と、導電体60の端子接合部60T上に無鉛半田101を介して接合された端子102とを有する端子付きガラス板13Xを含む。
【0101】
図8Aに示すように、車両用フロントガラス2は、光学装置が取り付けられる光学装置取付領域OPと、光学装置取付領域OP内に位置し、外部から光学装置への入射光および/または光学装置からの出射光が通る透光部TPとを有する。
図示するように、透光部TPは、車両用フロントガラス2の一端辺50E(図示例では上端辺)に比較的近い領域に形成できる。
【0102】
光学装置は例えば、自動運転および衝突事故の防止等のために、車両前方の情報を取得する、ADAS(Advanced Driver Assistance systems)カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、レーダー、および光センサ等の光学機器と、これを収容するブラケット等と呼ばれる筐体とを含むことができる。
光学装置取付領域OPおよび透光部TPの形状は光学装置の形状に合わせて適宜設計でき、略台形状および略矩形状等が挙げられる。光学装置取付領域OPおよび透光部TPの形状は、相似形でも非相似形でもよい。図示例では、光学装置取付領域OPおよび透光部TPの形状は、略台形状である。
【0103】
第1実施形態と同様、図8Aおよび図8Bに示すように、本実施形態の車両用フロントガラス2は、周縁領域を含む領域に1つ以上の遮光層BLを有する。1つ以上の遮光層BLが形成された領域を合わせガラス50の遮光領域と言い、それより内側の領域を非遮光領域と言う。
遮光層BLの数、遮光層BLが形成されるガラス面および遮光層BLの形成領域は、適宜設計できる。図示例では、車両用フロントガラス2は、1つ以上の遮光層BLとして、複数の遮光層(遮光層BL2、BL4)を有することができる。これら複数の遮光層は、異なるガラス面上に形成されている。具体的には、図10Cに示すように、外ガラス板11の車内面S2(中間膜12側の表面)の所定の領域に遮光層BL2が形成され、内ガラス板13の車内面S4(中間膜12側と反対側の表面)の所定の領域に遮光層BL4が形成されている。
【0104】
図8Aに示すように、遮光層BL4の形成領域は、光学装置取付領域OPから透光部TPを除いた領域と、光学装置取付領域OPの周囲の領域と、車両用フロントガラス2の周縁領域とを含むことができる。
図示例では、遮光層BL4の形成領域は、光学装置取付領域OPから透光部TPを除いた領域と光学装置取付領域OPの周囲の領域とを含み、合わせガラス50の一端辺50E(図示例では上端辺)および辺B41~B43を輪郭とする略台形状の領域から透光部TPを除いた領域R41と、車両用フロントガラス2の周縁領域R42とを含む。なお、詳細については後記するが、領域R41内において、部分的に遮光層BL4の非形成領域NBL4がある。
図示例では、遮光層BL4は透光部TPの四辺すべてを囲んでいるが、遮光層BL4は透光部TPの少なくとも一部を囲んでいればよく、例えば、略台形状または略矩形状の透光部TPの三辺のみを囲むものであってもよい。
透光部TPが透過する光の波長域は特に制限されず、例えば、可視光域、赤外光域、および可視光域~赤外光域等である。
【0105】
図9に示すように、本実施形態において、導電体60は、透光部TPの内部に形成された電熱線60Lからなる電気的機能部を含む。導電体60はさらに、透光部TPの外部に形成された一対の給電用電極(一対のバスバー)60Bからなる給電部を含む。導電体60はさらに、透光部TPの外部に形成され、電熱線60Lと一対の給電用電極(一対のバスバー)60Bとを接続する2つの接続配線60Mを含む。
【0106】
光学装置に含まれるカメラおよびレーダー等の光学機器の前方に位置する透光部TPを含む領域に、曇りおよび霜の防止のための電熱線60Lを設けることで、光学装置のセンシング精度を向上できる。
電熱線60Lの数、接続配線60Mの数、給電用電極60Bの数、電熱線60Lと接続配線60Mのラインパターンおよび配列パターン、給電用電極60Bの形状と配置パターン等は、適宜設計できる。
例えば、平面視にて、電熱線60Lが透光部TPを複数回以上横断するように折り返されていると、透光部TPに付着した霜および水滴を効率良く除去でき、好ましい。
一方の給電用電極から他方の給電用電極に至るまでの間、電熱線60Lおよび/または接続配線60Mの線幅は、実質的に同一であってもよいし、変化してもよい。
【0107】
図10Cに示すように、本実施形態において、導電体60は、内ガラス板13の車内面S4上に形成されている。
第1実施形態と同様、一対の給電用電極(一対のバスバー)60Bはいずれも、端子接合部60Tを含み、導電体60の端子接合部60T上に無鉛半田101を介して端子102が接合されている。端子102には、丸線状または箔状の導線からなる給電用部材103が固定されている。
第1実施形態と同様、導電体60の端子接合部60Tは、無鉛半田101の直下部分である。図中、端子接合部60Tの領域は、2つの破線T1、T2で挟まれる領域である。なお、導電体60の端子接合部60Tは、はじめから明確に位置が定まっている訳ではない。給電用電極60Bにおいて、無鉛半田101を介して端子102を接合した後の無鉛半田101の直下部分が、端子接合部60Tである。
【0108】
第1実施形態と同様、図10Cに示すように、端子付きガラス板13Xは、内ガラス板13と端子接合部60Tとの間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜30を含む。無機薄膜30は、少なくとも端子接合部60Tの形成領域を含むように、形成されている。かかる構成では、無機薄膜30の存在によって、端子付け前および端子付け後の内ガラス板13の破壊強度を高めることができる。
【0109】
無機薄膜30の構造および好ましい態様は、第1実施形態と同様である。また、端子102/無鉛半田101/端子接合部60Tを含む給電用電極60B/無機薄膜30/内ガラス板13の積層構造は、第1実施形態において、図4および図5を参照して説明した積層構造と同様である。
【0110】
本実施形態においても、無機薄膜30は、低反射機能、低放射機能、撥水機能、電熱機能、防曇機能、防汚機能、赤外線遮蔽機能、紫外線遮蔽機能、p偏光反射機能およびこれらの組合せ等の機能を有する機能膜であることができる。この場合、内ガラス板13の車内面S4上の、合わせガラス50の非遮光領域に、機能膜が形成されてもよい。
換言すれば、内ガラス板13の車内面S4上の、合わせガラス50の非遮光領域に、機能膜として無機薄膜が形成される場合、この無機薄膜を、端子接合部60Tの補強用の無機薄膜30として、端子接合部60Tの形成領域を含む領域にも形成できる。この場合、無機薄膜30を、合わせガラス50の非遮光領域に機能膜として形成される無機薄膜と、同じ工程で形成できる。
【0111】
上記したように、本実施形態の車両用フロントガラス2は、1つ以上の遮光層BLを有する。
図8Aに示すように、本実施形態において、内ガラス板13の車内面S4の周縁領域を含む領域に、遮光層BL4(第1遮光層)が形成されている。ただし、合わせガラス50の遮光領域内に、遮光層BL4の非形成領域が存在する。
第1実施形態と同様、端子接合部60Tは、無機薄膜30の直上に形成されることが好ましい。換言すれば、端子付きガラス板13Xは、無機薄膜30と端子接合部60Tとの間に遮光層BL4を有さないことが好ましい。
端子付きガラス板13Xはまた、少なくとも、端子接合部60Tの形成領域内については、内ガラス板13と無機薄膜30との間に遮光層BL4を有さないことが好ましい。
図8Aおよび図9において、符号NBL4は、遮光層BL4の非形成領域である。
遮光層BL4の非形成領域NBL4は、端子接合部60Tの形成領域を含み、好ましくは、図示例のように、給電部(一対の給電用電極60B)の形成領域を含む。
【0112】
なお、実際には、無機薄膜30の全体厚みは、遮光層BL4の厚みに対して、非常に薄いが、図10Cでは視認しやすくするため、厚く図示してある。
図10Cではまた、無機薄膜30と遮光層BL4とが重ならずに、間に隙間を開けずに隣接しているが、無機薄膜30と遮光層BL4とは、部分的に重なっていてもよい。重なり部分では、無機薄膜30上に遮光層BL4が重なる。
また、無機薄膜30と遮光層BL4との間は、隙間があってもよい。
【0113】
第1実施形態と同様、本実施形態において、遮光層BL4は、内ガラス板13の車内面S4の、遮光領域内の端子接合部60Tを除く領域に形成されている。そして、この遮光層BL4上に、1本以上の電熱線60Lからなる電気的機能部を含み、少なくとも端子接合部60Tを除く、導電体60の大部分が形成されている。
本実施形態ではまた、図10Cに示すように、外ガラス板11の車内面S2の遮光領域に、平面視にて、少なくとも端子接合部60Tを覆う遮光層BL2(第2遮光層)が形成されている。遮光層BL2の形成領域は、端子接合部60Tを覆う範囲内で適宜設計でき、好ましくは、平面視にて、給電部(一対の給電用電極60B)を覆う。
【0114】
図8Bに示すように、遮光層BL2の形成領域は、遮光層BL4と同様、光学装置取付領域OPから透光部TPを除いた領域と、光学装置取付領域OPの周囲の領域と、車両用フロントガラス2の周縁領域とを含むことができる。
図示例では、遮光層BL2の形成領域は、遮光層BL4と同様、光学装置取付領域OPから透光部TPを除いた領域と光学装置取付領域OPの周囲の領域とを含み、合わせガラス50の一端辺50E(図示例では上端辺)および辺B21~B23を輪郭とする略台形状の領域から透光部TPを除いた領域R21と、車両用フロントガラス2の周縁領域R22とを含む。領域R21内には、部分的に遮光層BL2の非形成領域を設けなくてもよい。
【0115】
なお、遮光層BL2の領域R21の平面形状と遮光層BL4の領域R41の平面形状とは、それぞれ独立に設計でき、これら領域の平面形状は同一でも非同一でもよい。例えば、遮光層BL2の領域R21の平面形状を、遮光層BL4の領域R41より幅広に設計してもよい。
同様に、遮光層BL2の領域R22の平面形状と遮光層BL4の領域R42の平面形状とは、それぞれ独立に設計でき、これら領域の平面形状は同一でも非同一でもよい。
【0116】
図8A図8B図9および図10Aに示すように、本実施形態では、透光部TP内には、遮光層BLは形成されない。
図9および図10Bに示すように、接続配線60Mの少なくとも一部が遮光層BL4上に形成される。図9に示すように、接続配線60Mにおいて、給電用電極60Bの近傍部分を除く大部分が、遮光層BL4上に形成されることが好ましい。
接続配線における「給電用電極の近傍部分」は、例えば、給電用電極から4.0mm以内の範囲である。
遮光層BL4の非形成領域NBL4は、非形成領域NBL4が端子接合部60Tの形成領域を含む条件を充足する範囲内で、適宜設計できる。図9に示すように、遮光層BL4の非形成領域NBL4は、非形成領域NBL4が端子接合部60Tの形成領域を含み、接続配線60Mにおいて給電用電極60Bの近傍部分を除く大部分が遮光層BL4上に配置されるよう、設計することが好ましい。
【0117】
上記構成では、端子付きガラス板13Xに含まれる導電体60の給電部が、車外にいる人から視認されないように設計できる。
上記構成ではまた、端子接合部60Tに、遮光層形成用材料由来のガラスフリットの成分が存在しないため、遮光層上に形成された端子接合部に対して、端子接合部60Tの表面に存在するガラスフリットの成分の量を低減できる。無機薄膜30による端子接合部60Tの補強効果と、端子接合部60Tの表面におけるガラスフリットの成分の低減効果とが相俟って、端子付きガラス板13Xの破壊強度を効果的に高められる。
なお、本開示の技術では、無機薄膜30による端子接合部60Tの補強効果が得られるため、無機薄膜30と端子接合部60Tとの間に遮光層BL4を有してもよい。
【0118】
(製造方法)
図面を参照して、本実施形態の車両用フロントガラスの製造方法の一例について、説明する。図11A図11Gは、図10Cに対応した模式断面図である。
【0119】
(工程(S11))
はじめに、図11Aに示すように、内ガラス板13(車内側のガラス板、本実施形態では第1ガラス板)の車内面S4上の少なくとも端子接合部60Tの形成領域に、気相成長法により、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜30を成膜する。成膜方法は、第1実施形態と同様である。
【0120】
(工程(S12))
次に、図11Bに示すように、無機薄膜30を成膜した内ガラス板13の車内面S4の、導電体60の端子接合部60Tの形成領域を除く所定の領域に、遮光層BL4(本実施形態では、第1遮光層)の材料である黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工し、乾燥させて、セラミックペースト層BLPを形成する。
また、外ガラス板11の車内面S2の、導電体60の端子接合部60Tの形成領域を含む所定の領域に、遮光層BL2(本実施形態では、第2遮光層)の材料である黒色顔料とガラスフリットとを含むセラミックペーストを塗工し、乾燥させて、セラミックペースト層BLPを形成する。
セラミックペースト層の乾燥条件は、第1実施形態と同様である。
【0121】
(工程(S13))
次に、図11Cに示すように、無機薄膜30を成膜した内ガラス板13の車内面S4上に、導電体60の材料である銀とガラスフリットとを含む銀含有ペーストを塗工し、乾燥させて、導電ペースト層60Pを形成する。導電ペースト層の乾燥条件は、第1実施形態と同様である。
【0122】
(工程(S14))
次に、上記工程後の外ガラス板11および内ガラス板13を軟化点以上の温度に加熱し、各ガラス板を曲げ成形する。この工程では、同時に、セラミックペースト層BLPおよび導電ペースト層60Pが焼成され、遮光層BL2、BL4および導電体60が形成される。焼成後、各ガラス板は徐冷される。焼成温度は、第1実施形態と同様である。
以上の工程後に、図11Dに示すように、遮光層BL2を有する外ガラス板11と、導電体付きガラス板13Yとが得られる。
【0123】
(工程(S15))
次に、図11Eに示すように、遮光層BL2を有する外ガラス板11と、導電体付きガラス板13Yとを、中間膜12の材料の樹脂フィルム12Fを介して貼り合わせる(貼合せ工程)。貼合方法は、第1実施形態と同様である。
以上の工程後に、図11Fに示すように、合わせガラス50が得られる。
【0124】
(工程(S16))
次に、図11Gに示すように、各給電用電極60Bに含まれる端子接合部60T上に無鉛半田101を介して端子102を接合する。接合方法は、第1実施形態と同様である。
以上のようにして、本実施形態の車両用フロントガラス2が製造される。
【0125】
以上説明したように、本開示の車両用フロントガラスでは、端子付きガラス板は、ガラス板と端子接合部との間に、1つ以上の金属化合物層を含み、少なくとも最表面は絶縁性を有し、全体厚みが1000nm以下の、単層構造または積層構造の無機薄膜を含む。かかる構成では、無機薄膜の存在によって、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めることができる。
本開示によれば、導電体と端子とを無鉛半田を用いて接合した部分を含み、端子付け後のガラス板の破壊強度を高めることが可能な車両用フロントガラスを提供できる。
本開示によればまた、複数の遮光層を適切に配置することで、給電部が車外にいる人に視認されないように設計できる。
【実施例0126】
以下に、実施例に基づいて本発明について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。例2が実施例、例11が比較例である。
【0127】
[評価項目と評価方法]
評価項目と評価方法は、以下の通りである。
(破壊強度)
常温(20~25℃)の環境下で、オ-トグラフ(島津製作所社製「AGS-X」、最大荷重:荷重5kN)を用いて、ASTM-C1499-1に準拠して、リング曲げ試験を実施した。
端子付け前のガラス板(導電体付きガラス板)または端子付け後のガラス板(端子付きガラス板)を、導電体を形成した面を下側にして、直径98mmの支持リング上に載置した。この評価用ガラス板上に直径46mmの負荷リングを載置した。支持リングの中心軸とガラス板の中心軸と負荷リングの中心軸を合わせた。
上記評価用ガラス板の導電体の周囲に、負荷リングにより、荷重をかけた。ガラス板の変位量が1mm/minとなるように荷重を連続的に増加させ、ガラス板が割れた時点の荷重を破壊強度とした。
各ガラス板について、計4サンプルまたは計5サンプルの測定を実施し、それらの平均値を破壊強度のデータとした。
【0128】
[例1、例2]
例1および例2の各例において、100mm×100mmの正方形状の2.0mm厚の未強化のガラス板(G1)(AGC社製「VFL」、グリーン色)を用意した。このガラス板の一方の表面の全面に、公知のスパッタリング法により、積層構造の無機薄膜を成膜した。
【0129】
例1では、ZrドープTiO膜(65nm厚、Zr含有量:35質量%)、SiO膜(121nm厚)を順次成膜して、2層構造の無機薄膜(IM1)(総厚み:186nm)を成膜した。この無機薄膜は、3つの絶縁性金属化合物層からなり、p偏光反射膜として機能できる。
【0130】
例2では、ZrドープTiO膜(10nm厚、Zr含有量:35質量%)、SiO膜(35nm厚)、インジウム錫酸化物(ITO)膜(120nm厚)、SiO膜(70nm厚)、およびZrドープSiO膜(20nm厚、Zr含有量:10質量%)を順次成膜して、5層構造の無機薄膜(IM2)(総厚み:255nm)を成膜した。この無機薄膜は、4つの絶縁性金属化合物層と、これらの4つの絶縁性金属化合物層の間に挟持された1つの導電体層(ITO層)とからなり、最表層は絶縁性金属化合物層である。この無機薄膜は、低放射膜として機能できる。
【0131】
次いで、各例において、成膜した無機薄膜の上に、スクリーン印刷法により、銀粉とガラスフリットとを含む市販の導電体形成用の銀含有ペースト(AgP1)を塗工し、乾燥させて、導電ペースト層を形成した。乾燥条件は、120℃、10分間とした。
次いで、導電ペースト層を焼成した。常温(20~25℃)から昇温速度約180℃/分で600℃まで昇温し、600℃で400秒間焼成した後、常温(20~25℃)まで自然冷却した。このようにして、導電体を形成した。
導電体の平面形状は、50mm×50mmの正方形状とし、その中心と対角線は、ガラス板の中心と対角線に合わせた。導電体の厚みは、7μm程度であった。
導電体の表面を市販の研磨用消しゴムを用いて、車両用フロントガラスの製造に一般的な方法で研磨した。研磨後の導電体の厚みは、6μm程度であった。
以上のようにして、導電体/無機薄膜/ガラス板の積層構造を有する導電体付きガラス板を製造した。この端子付け前の導電体付きガラス板の破壊強度を測定した。
【0132】
各例において、得られた導電体付きガラス板の導電体上に、SnAg系の無鉛半田(Sn:98質量%、Ag:2.0質量%、融点:220℃程度)を用いて、ワイヤーハーネスの先端部(導体露出部)が挿入される筒状の給電用部材接合部と、図4に示したような、両端部に半田接合部を有する橋状部とからなる、真鍮製の圧着端子を接合した。
具体的な方法は、以下の通りである。
半田ごてのこて先に0.04gの無鉛半田を載せ、加熱溶融した。この半田は予備半田と呼ばれる。
端子の各半田接合部に、0.05gの無鉛半田チップを付着させた。この端子を、導電体の端子接合部の上に配置した。この状態で、端子の半田接合部に、300℃に設定した半田ごてのこて先を押し当て、無鉛半田チップを加熱溶融させた。その後、端子から半田ごてを離し、自然冷却により無鉛半田を凝固させた。
以上のようにして、端子付きガラス板を製造した。
導電体上に無鉛半田を介して端子を接合した時点から、1時間経過した後に、導電体付きガラス板の破壊強度を測定した。
【0133】
[例11]
無機薄膜の成膜を実施しなかった以外は、例2と同様にして、導電体/ガラス板の積層構造を有する導電体付きガラス板を製造した。得られた導電体付きガラス板に対して、例1、2と同様にして、端子付きガラス板を製造した。例1、2と同様に、端子付け前の導電体付きガラス板および端子付きガラス板の破壊強度を測定した。
【0134】
[評価結果]
端子付け前のガラス板(導電体付きガラス板)の評価結果を、図12Aに示す。端子付け後のガラス板(端子付きガラス板)の評価結果を、図12Bに示す。図中、Nは、平均値の算出に用いたサンプル数である。
図12Aに示すように、端子付け前のガラス板(導電体付きガラス板)で比較した場合、ガラス板と導電体との間に無機薄膜を成膜した例1、2では、ガラス板と導電体との間に無機薄膜を成膜しなかった例11に対して、ガラス板の破壊強度を有意に向上できた。
図12Bに示すように、端子付け後のガラス板(端子付きガラス板)で比較した場合、ガラス板と導電体との間に無機薄膜を成膜した例1、2では、ガラス板と導電体との間に無機薄膜を成膜しなかった例11に対して、ガラス板の破壊強度を有意に向上できた。
【0135】
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更できる。
【符号の説明】
【0136】
1、2:車両用フロントガラス、10、50:合わせガラス、11:外ガラス板、11E:露出部、13:内ガラス板、11X、13X:端子付きガラス板、11Y、13Y:導電体付きガラス板、12:中間膜、20、60:導電体、20B、60B:給電用電極、20E:露出部、20L、60L:電熱線、60M:接続配線、20T、60T:端子接合部、30:無機薄膜、31:絶縁性金属化合物層、32:導電体層、40:導電体、101:無鉛半田、102:端子、103:給電用部材、BL、BL2、BL4:遮光層、NBL2、NBL4:遮光層の非形成領域、OP:光学装置取付領域、TP:透光部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12A
図12B