(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034027
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】漢方エキス製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/18 20060101AFI20240306BHJP
A61K 36/17 20060101ALI20240306BHJP
A61K 36/234 20060101ALI20240306BHJP
A61K 36/232 20060101ALI20240306BHJP
A61K 36/804 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240306BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240306BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240306BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K36/18
A61K36/17
A61K36/234
A61K36/232
A61K36/804
A61K47/26
A61K47/22
A61P1/04
A61P1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138015
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 美咲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 統星
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 圭太
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD38T
4C076DD61T
4C076DD67T
4C076DD69T
4C076FF52
4C076FF67
4C088AB04
4C088AB37
4C088AB40
4C088AB41
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA06
4C088NA14
4C088ZA68
4C088ZA69
(57)【要約】
【課題】本発明は、用時に水に溶いて服用する漢方エキス製剤について、空腹時に服用しても、消化器症状、具体的には上部消化器症状を低減できる製剤処方を提供することを目的とする。
【解決手段】漢方エキスと、塩素化糖、スルホンアミド化合物、単糖、二糖、及びオリゴ糖からなる群より選択される甘味料とを含み、水に溶いて服用する漢方エキス製剤は、上部消化器症状の副作用を低減できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢方エキスと、塩素化糖、スルホンアミド化合物、単糖、二糖、及びオリゴ糖からなる群より選択される甘味料とを含み、水に溶いて服用する、漢方エキス製剤。
【請求項2】
前記漢方エキスが、センキュウ、トウキ、ジオウ、及び/又はマオウを含む漢方のエキスである、請求項1に記載の漢方エキス製剤。
【請求項3】
前記漢方エキスが、四物湯、独活葛根湯、及び/又は抑肝散のエキスである、請求項1に記載の漢方エキス製剤。
【請求項4】
前記甘味料が、スクラロース、アセスルファム塩、サッカリン及びその塩、サイクラミン酸及びその塩、グルコース、フルクトース、はちみつ、異性化糖、転化糖、スクロース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、トレハロース、パラチノース、並びにトレハルロースからなる群より選択される、請求項1に記載の漢方エキス製剤。
【請求項5】
前記漢方エキス100重量部に対する前記甘味料の含有量が、0.05~2重量部である、請求項1に記載の漢方エキス。
【請求項6】
前記漢方エキスの抽出に用いられた原生薬中のセンキュウ、トウキ、ジオウ、及びマオウの総量100重量部に対する前記甘味料の含有量が、0.01~2.5重量部である、請求項2に記載の漢方エキス。
【請求項7】
1回当たりの用量が、漢方エキスの抽出に用いられた原生薬中のセンキュウ、トウキ、ジオウ、及びマオウの総量で1.5~6gである、請求項2に記載の漢方エキス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方エキス製剤に関する。より具体的には、本発明は、上部消化管症状の副作用が低減された漢方エキス製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
漢方薬は、一般的に西洋薬に比べて副作用が少ないといわれているが、医薬品である以上、副作用が無いわけではない(非特許文献1)。漢方薬による副作用の中で最も多いのが、胃もたれ等の消化器症状である(非特許文献2、3)。特に、漢方薬に使用される生薬の中でも、マオウ、ジオウ、トウキ、センキュウは、消化器症状を起こしやすい(非特許文献4、5)。
【0003】
このような消化器症状の副作用への対処としては、服用のタイミングを食後に変更することが一般的である(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“漢方ですこやか生活”,[online],2017年4月,日本漢方生薬製剤協会,[令和4年8月19日検索],インターネット<URL:https://www.nikkankyo.org/kampo/colume/pdf/kampo04.pdf>
【非特許文献2】“表で確認 漢方薬にも副作用がある!その原因と注意したい症状”,[online],株式会社LIFULL senior,[令和4年8月19日検索],インターネット<URL:https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/medicine/about_kanpo/fukusayo/>
【非特許文献3】“漢方スクエア 398号(2021.12.22) 漢方薬の副作用 No.6 漢方薬による消化器症状”,[online],2021年12月22日,株式会社アクセント,[令和4年8月19日検索],インターネット<URL:https://www.kampo-s.jp/web_magazine/back_number/398/fukusayou-398.htm>
【非特許文献4】“くすりの話 18 漢方薬~副作用はないの?”,[online],1998年7月1日,全日本民医連,[令和4年8月19日検索],インターネット<URL:https://www.min-iren.gr.jp/?p=26771>
【非特許文献5】“Web医事新報 No.5092 学術特集 特集-学術 特集:ココに注意!漢方薬の副作用と使い方”,[online],2021年11月27日,日本医事新報社,[令和4年8月19日検索],インターネット<https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=18493>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、服用のタイミングを食後に変更することは、漢方薬による消化器症状の副作用を低減するための対処の1つであるが、漢方エキス製剤の効果を最大化することはできなくなる。漢方エキス製剤の効果を最大化する方法は、服用のタイミングを空腹時とし、且つ、水に溶いて服用するというものである。一方で、医薬品の効果のレベルと副作用のレベルとは一般的に正相関することに鑑みると、漢方エキス製剤を空腹時に水に溶いて服用しても副作用を低減することは本質的に困難である。
【0006】
そこで、本発明は、用時に水に溶いて服用する漢方エキス製剤について、空腹時に服用しても、消化器症状、具体的には上部消化器症状を低減できる製剤処方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、用時に水に溶いて服用する漢方エキス製剤に、所定の甘味料を配合することで、空腹時に服用しても上部消化器症状を低減できることを新たに見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 漢方エキスと、塩素化糖、スルホンアミド化合物、単糖、二糖、及びオリゴ糖からなる群より選択される甘味料とを含み、水に溶いて服用する、漢方エキス製剤。
項2. 前記漢方エキスが、センキュウ、トウキ、ジオウ、及び/又はマオウを含む漢方のエキスである、項1に記載の漢方エキス製剤。
項3. 前記漢方エキスが、四物湯、独活葛根湯、及び/又は抑肝散のエキスである、項1又は2に記載の漢方エキス製剤。
項4. 前記甘味料が、スクラロース、アセスルファム塩、サッカリン及びその塩、サイクラミン酸及びその塩、グルコース、フルクトース、はちみつ、異性化糖、転化糖、スクロース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、トレハロース、パラチノース、並びにトレハルロースからなる群より選択される、項1~3のいずれかに記載の漢方エキス製剤。
項5. 前記漢方エキス100重量部に対する前記甘味料の含有量が、0.05~2重量部である、項1~4のいずれかに記載の漢方エキス。
項6. 前記漢方エキスの抽出に用いられた原生薬中のセンキュウ、トウキ、ジオウ、及びマオウの総量100重量部に対する前記甘味料の含有量が、0.01~2.5重量部である、項2~5のいずれかに記載の漢方エキス。
項7. 1回当たりの用量が、漢方エキスの抽出に用いられた原生薬中のセンキュウ、トウキ、ジオウ、及びマオウの総量で1.5~6gである、項2~6のいずれかに記載の漢方エキス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、用時に水に溶いて服用する漢方エキス製剤について、空腹時に服用しても、消化器症状、具体的には上部消化器症状を低減できる製剤処方が供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の漢方エキス製剤は、漢方エキス及び所定の甘味料を含有し、水に溶いて飲用することを特徴とする。以下、本発明の漢方エキス製剤について詳述する。
【0011】
漢方エキス
本発明で用いられる漢方エキスは、特に限定されるものではない。本発明の漢方エキス製剤は上部消化器症状の副作用の低減効果に優れるため、当該副作用を特に起こしやすい生薬を含む漢方のエキスであっても、効果的に当該副作用を低減することができる。このような観点から好適な漢方エキスとして、センキュウ、トウキ、ジオウ、及び/又はマオウを含む漢方のエキスが挙げられる。本発明で用いられる漢方エキスの特に好ましい例としては、四物湯、独活葛根湯、及び抑肝散のエキスが挙げられる。これらの漢方エキスは、1種を単独で用いてもよいし、複数種の組み合わせで用いてもよい。
【0012】
独活葛根湯は、カッコン、ケイヒ、シャクヤク、マオウ、ドクカツ、ショウキョウ、ジオウ、タイソウ、及びカンゾウからなる混合生薬である。独活葛根湯エキスの製造に用いられる生薬調合物を構成する生薬の混合比としては特に制限されないが、例えば、カッコン2.5~5重量部、ケイヒ1.5~3重量部、シャクヤク1.5~3重量部、マオウ1~2重量部、ドクカツ1~2重量部、ショウキョウ0.1~2重量部、ジオウ2~4重量部、タイソウ0.5~2重量部、及びカンゾウ0.5~2重量部が挙げられる。四物湯は、シャクヤク、ジオウ、センキュウ、及びトウキからなる混合生薬である。四物湯エキスの製造に用いられる生薬調合物を構成する生薬の混合比としては特に制限されないが、例えば、シャクヤク1.5~5重量部、ジオウ1.5~5重量部、センキュウ1.5~5重量部、及びトウキ1.5~5重量部が挙げられる。抑肝散は、トウキ、チョウトウコウ、センキュウ、ビャクジュツ、ブクリョウ、サイコ、及びカンゾウからなる混合生薬である。抑肝散エキスの製造に用いられる生薬調合物を構成する生薬の混合比としては特に制限されないが、例えば、トウキ1.5~3重量部、チョウトウコウ1.5~3重量部、センキュウ1.5~3重量部、ビャクジュツ2~4重量部、ブクリョウ2~4重量部、サイコ1~5重量部、及びカンゾウ0.75~1.5重量部が挙げられる。
【0013】
本発明の漢方エキス製剤において、漢方エキスは、漢方エキスの濃縮液の形態で含まれていてもよいし、漢方エキスの乾燥物の形態で含まれていてもよい。漢方エキスの濃縮液とは、漢方エキスと溶媒(例えば、漢方エキスの抽出に用いた抽出溶媒)とを含み、濃縮エキスに含まれる漢方エキス濃度(乾燥エキス換算量)が、その漢方の煎じ薬に含まれる漢方エキス濃度(乾燥エキス換算量)より高められている又は服用時に希釈することを要する程度に高められているものをいう。漢方エキスの乾燥物は、漢方エキスの濃縮液からさらに溶媒が除去されたものをいう。
【0014】
漢方エキスの濃縮液は、漢方処方に従った生薬調合物を抽出処理し、得られた抽出液を濃縮することにより得ることができる。抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されず、水又は含水エタノール、好ましくは水が挙げられる。抽出処理方法としては、生薬調合物に対して、約10~20倍量の抽出溶媒を加え、40~100℃、50~100℃、60~100℃、80~100℃、又は90~100℃程度で1~3時間程度撹拌して抽出する方法が挙げられる。濃縮方法としては特に限定されず、例えば、減圧下濃縮法、膜濃縮法、加熱濃縮法が挙げられる。また、漢方エキスの乾燥物は、漢方エキスの濃縮液を乾燥処理することにより得ることができる。乾燥処理の方法としては特に限定されず、例えば、フリーズドライ法、エキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法、スプレードライ法等が挙げられる。
【0015】
本発明の漢方エキス製剤中の漢方エキスの含有量(乾燥エキス換算量)としては特に限定されず、漢方エキス製剤の剤型により異なりうるが、例えば5~25重量%、好ましくは10~20重量%が挙げられる。
【0016】
所定の甘味料
本発明で用いられる甘味料は、塩素化糖、スルホンアミド化合物、単糖、二糖、及びオリゴ糖からなる群より選択される。
【0017】
塩素化糖の具体例としては、スクラロースが挙げられる。スルホンアミド化合物としては、アセスルファム塩(カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等)、サッカリン及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、サイクラミン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。
【0018】
単糖としては、グルコース、フルクトース、及びそれらの混合物が挙げられ、当該混合物としては、はちみつ、異性化糖、転化糖が挙げられる。二糖としては、スクロース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、トレハロース、及びスクロース異性体が挙げられ、スクロース異性体としては、パラチノース、トレハルロースが挙げられる。オリゴ糖としては、カップリングシュガー、フラクトオリゴ糖が挙げられる。
【0019】
これらの甘味料は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの甘味料の中でも、上部消化器症状の副作用の低減効果を高める観点から、好ましくは、塩素化糖、スルホンアミド化合物、単糖、二糖が挙げられ、より好ましくは、スクラロース、アセスルファム塩、サッカリン及びその塩、サイクラミン酸及びその塩、グルコース、フルクトース、はちみつ、異性化糖、転化糖、スクロース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、トレハロース、パラチノース、並びにトレハルロースが挙げられ、さらに好ましくは、スクラロース、アセスルファムカリウム、グルコース、フルクトース、はちみつ、スクロースが挙げられる。
【0020】
本発明の漢方エキス製剤中の甘味料の含有量としては特に限定されず、漢方エキス製剤の剤型により異なりうるが、例えば0.02~0.1重量%、好ましくは0.03~0.08重量%が挙げられる。
【0021】
本発明の漢方エキス製剤において、漢方エキスの含有量(乾燥エキス換算量)と甘味料の含有量の比率については、上記の各含有量に応じて定まるが、上部消化器症状の副作用の低減効果を高める観点から、漢方エキスの含有量(乾燥エキス換算量)100重量部に対する甘味料の含有量として、好ましくは0.05~2重量部、より好ましくは0.1~1.5重量部、さらに好ましくは0.5~1.2重量部、一層好ましくは0.7~1重量部が挙げられる。
【0022】
本発明の漢方エキス製剤において、漢方エキスとして、センキュウ、トウキ、ジオウ、及び/又はマオウを含む漢方のエキスを用いる場合、漢方エキスの抽出に用いられた原生薬中のセンキュウ、トウキ、ジオウ、及びマオウの総量100重量部に対する甘味料の含有量としては、例えば0.01~2.5重量部が挙げられ、上部消化器症状の副作用の低減効果を高める観点から、好ましくは0.05~2重量部、より好ましくは0.1~1.4重量部、さらに好ましくは0.4~1.2重量部が挙げられる。
【0023】
その他の成分
本発明の漢方エキス製剤は、上記成分に加え、他の成分として、製剤形態に応じた添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、上記所定の甘味料以外の矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、漢方エキス製剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0024】
また、本発明の漢方エキス製剤は、上記成分に加え、他の成分として、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0025】
製剤形態
本発明の漢方エキス製剤の製剤形態については特に限定されないが、具体的な製剤形態としては、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられ、好ましくは液状製剤が挙げられる。本発明の漢方エキス製剤をこれらの製剤形態に調製するには、有効成分である上記所定の漢方エキス、及び必要に応じて添加される添加剤、基剤、及び薬理成分を用いて、通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0026】
服用方法
本発明の漢方エキス製剤は、服用時に水に溶いて飲用する。本発明の漢方エキス製剤の1回当たりの用量としては、漢方エキスの乾燥エキス換算量で、例えば0.5~5g、
好ましくは1~4g、より好ましくは2~3.5g、さらに好ましくは2.2~3.3gが挙げられる。また、本発明の漢方エキス製剤の1回当たりの用量としては、漢方エキスの抽出に用いられた原生薬中のセンキュウ、トウキ、ジオウ、及びマオウの総量で、例えば1.5~6g、好ましくは2.2~5g、より好ましくは2.5~4g、さらに好ましくは2.8~3.4gが挙げられ、当該用量を、1日2~3回、好ましくは2回に分けて服用することができる。水の温度としては特に限定されず、例えば10~80℃、好ましくは20~75℃、より好ましくは30~65℃、より好ましくは38~50℃が挙げられる。水に溶くとは、水に完全に溶解させることは要さず、水中に分散させることも含まれる。水の使用量としては、水に溶いた後の希釈漢方エキス製剤中の甘味料の含有量が、0.002~0.02重量%、好ましくは0.005~0.015重量%となる量が挙げられる。
【実施例0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
(1)漢方エキス製剤の調製
(1-1)四物湯エキスの濃縮液
原料生薬として、シャクヤク1.5g、ジオウ1.5g、センキュウ1.5g、及びトウキ1.5gの割合で用い、これらを刻んだ後、水15倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮し、四物湯エキスの濃縮液の濃縮液を得た。全ての原生薬100重量部から得られた四物湯エキス(乾燥エキス換算量)の量は40重量部である。濃縮液の1日用量は10g(漢方エキスの乾燥エキス換算量2.46g、乾燥漢方エキス2.46gの抽出に用いられた原生薬中のセンキュウ及びトウキの総量は、3.08g)とした。
【0029】
(1-2)独活葛根湯エキスの濃縮液
原料生薬として、カッコン2.5g、ケイヒ1.5g、シャクヤク1.5g、マオウ1.0g、ドクカツ1.0g、ショウキョウ0.167g、ジオウ2.0g、タイソウ0.5g、及びカンゾウ0.5gの割合で用い、これらを刻んだ後、水15倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮し、独活葛根湯エキスの濃縮液を得た。全ての原生薬100重量部から得られた独活葛根湯エキス(乾燥エキス換算量)の量は30重量部である。濃縮液の1日用量は10g(漢方エキスの乾燥エキス換算量3.14g、乾燥漢方エキス3.14gの抽出に用いられた原生薬中のマオウ及びジオウの総量は、2.94g)とした。
【0030】
(1-3)抑肝散エキスの濃縮液
原料生薬として、トウキ1.5g、チョウトウコウ1.5g、センキュウ1.5g、ビャクジュツ2.0g、ブクリョウ2.0g、サイコ1.0g、及びカンゾウ0.75gの割合で用い、これらを刻んだ後、水15倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮し、抑肝散エキスの濃縮液を得た。全ての原生薬100重量部から得られた抑肝散エキス(乾燥エキス換算量)の量は24重量部である。濃縮液の1日用量は10g(漢方エキスの乾燥エキス換算量2.7g、乾燥漢方エキス2.7gの抽出に用いられた原生薬中のトウキ及びセンキュウの総量は、3.3g)とした。
【0031】
(1-4)漢方エキス製剤
上記(1-1)~(1-3)で調製した漢方エキスの濃縮液を用い、表1~4に示す漢方エキス製剤を調製した。
【0032】
(2)上部消化器症状の副作用の評価
過去に医薬品で胃腸障害を起こしたことがある胃虚弱の被験者45名を、四物湯エキス服用群、独活葛根湯エキス服用群、及び抑肝散エキス服用群の3群(各15名)に振り分け、6週間の間、毎日、上記1日用量を2回に分けて漢方製剤を服用させた。漢方製剤は、用時に、40℃~50℃の水を約100mL(10倍体積量)加え、よくかき混ぜて、空腹時に服用した。なお、各群において、試験期間中は、1週間ごとに、服用する比較例(1種類)又は実施例の漢方エキス製剤(5種類)を変更した。なお、比較例(1種)及び実施例(5種)の漢方エキス製剤を服用する順番は、全ての被験者に対して、ランダムに割り当てた。
【0033】
検体の服用開始から1週間ごとに消化器症状を評価した。具体的には、当該1週間の最後の日に、過去1週間の消化器症状を振り返って評価した。消化器症状の評価は、消化器症状に関する問診票である「出雲スケール」(日本消化器病学会雑誌 2009;106:1478-1487)を用い上部消化器症状(胸やけ、胃痛、胃もたれ)及び下部消化器症状(便秘、下痢)を評価した。出雲スケールは、0~15の数値で消化器症状の程度が評価され、数値が小さいほど症状が軽いことを示す。結果を表1~4に示す。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
表1~3に示す通り、実施例1~15の漢方エキス製剤は、消化器症状の副作用を示す生薬であるセンキュウ、トウキ、ジオウ、及び/又はマオウを含む漢方のエキスを含有しているにも関わらず、所定の甘味料(塩素化糖、スルホンアミド化合物、単糖、二糖)を配合することにより、上部消化器症状を顕著に低減できることが確認できた。なお、表4に示す通り、所定の甘味料とは異なる甘味料を用いた場合は、上部消化器症状の低減効果は認められなかった。つまり、実施例1~15の漢方エキス製剤による上部消化器症状の顕著な低減効果は、所定の甘味料を用いたことによる特有の効果であることが判った。