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特開2024-34051潤滑油用摩擦低減剤、及び潤滑油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034051
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】潤滑油用摩擦低減剤、及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 145/14 20060101AFI20240306BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240306BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
C10M145/14
C10N30:06
C10N40:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138044
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】松村 一成
(72)【発明者】
【氏名】徳江 洋
(72)【発明者】
【氏名】青木 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵里子
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104CB08C
4H104LA03
(57)【要約】
【課題】摩擦低減効果に優れる潤滑油用摩擦低減剤及び潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で示される(メタ)アクリレート(a)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体Aを含有する潤滑油用摩擦低減剤。一般式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、-X-は、-O-または-NH-であり、-Y-は、炭素数1~4のアルキレン基であり、pは、0または1であり、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、及び水酸基から選択されるいずれかであり、R~Rのうち少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基のいずれかである。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される(メタ)アクリレート(a)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体Aを含有する潤滑油用摩擦低減剤。
【化1】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、-X-は、-O-または-NH-であり、-Y-は、炭素数1~4のアルキレン基であり、pは、0または1であり、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、及び水酸基から選択されるいずれかであり、R~Rのうち少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基のいずれかである。)
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート(a)が、トリアルキルシリル基またはトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(メタ)アクリレートである、請求項1に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体Aが、さらに、直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位を含む、請求項1に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【請求項4】
前記アルキル(メタ)アクリレート(b)のアルキル基の炭素数が1~20である、請求項3に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体Aが、グラフト共重合体である、請求項1に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体Aが、ビニル系ラジカル重合性単量体(m1)由来の構成単位と、マクロモノマー(M)由来の構成単位を含む、請求項5に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【請求項7】
前記マクロモノマー(M)が、ビニル系ラジカル重合性単量体(m2)由来の構成単位を含む、請求項6に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【請求項8】
前記マクロモノマー(M)が、下記式(2)の構造を有する、請求項6に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【化2】
(式中、X~Xn-1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はCHOHを示し、Y~Yは、それぞれ独立して、前記マクロモノマー(M)の構成単位であるビニル系ラジカル重合性単量体(m2)のビニル基に結合するX~Xn-1以外の置換基を示す。Zは末端基を表し、nは2~10000の整数を表す。)
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系共重合体Aの質量平均分子量が5000~200000である、請求項1に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑油用摩擦低減剤を含む潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油に使用される潤滑油用摩擦低減剤、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン油や駆動系油等に代表される潤滑油には、摩擦によるエネルギー損失の削減や、焼き付き防止による機器の長寿命化を目的として、各種摩擦摩低減剤が配合されている。近年の省燃費化を目的とした潤滑油の低粘度化を背景に、金属同士の接触面の負荷は過酷さを増しており、摩擦低減剤の役割は一層重要なものとなってきている。
摩擦低減剤としては、長鎖脂肪酸エステル及び脂肪酸アミド等の油性向上剤や、リン酸エステル及びジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、有機硫黄化合物及び有機ハロゲン化合物等の極圧剤、有機モリブデン化合物等の摩擦調整剤等が挙げられるが、使用条件や使用環境によっては、これらの添加剤だけでは、摩擦低減効果が不十分となる課題があった。この課題を克服するために、摩擦低減剤としてポリマー材料を用いる検討が進められている。
例えば、特許文献1には、アルコキシシラン構造を有する(メタ)アクリレートを構成単量体とする共重合体を含有する粘度指数向上剤が、潤滑油組成物の金属摩擦低減能を高めることが開示されている。また、特許文献2には、アルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルアクリレートを構成単量体とする共重合体が、潤滑油用摩擦摩耗低減剤として効果を発揮することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-28138号公報
【特許文献2】特開2013-124266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の方法では、摩擦の低減効果が不十分である。
本発明の目的は、摩擦低減効果に優れる潤滑油用摩擦低減剤及び潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1]下記一般式(1)で示される(メタ)アクリレート(a)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体Aを含有する潤滑油用摩擦低減剤。
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、-X-は、-O-または-NH-であり、-Y-は、炭素数1~4のアルキレン基であり、pは、0または1であり、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、及び水酸基から選択されるいずれかであり、R~Rのうち少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基のいずれかである。)
[2]前記(メタ)アクリレート(a)が、トリアルキルシリル基またはトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(メタ)アクリレートである、[1]に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
[3]前記(メタ)アクリル系共重合体Aが、さらに、直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)由来の構成単位を含む、[1]又は[2]に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
[4]前記アルキル(メタ)アクリレート(b)のアルキル基の炭素数が1~20である、[3]に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
[5]前記(メタ)アクリル系共重合体Aが、グラフト共重合体である、[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油用摩擦低減剤。
[6]前記(メタ)アクリル系共重合体Aが、ビニル系ラジカル重合性単量体(m1)由来の構成単位と、マクロモノマー(M)由来の構成単位を含む、[5]に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
[7]前記マクロモノマー(M)が、ビニル系ラジカル重合性単量体(m2)由来の構成単位を含む、[6]に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
[8]前記マクロモノマー(M)が、下記式(2)の構造を有する、[6]に記載の潤滑油用摩擦低減剤。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、X~Xn-1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はCHOHを示し、Y~Yは、それぞれ独立して、前記マクロモノマー(M)の構成単位であるビニル系ラジカル重合性単量体(m2)のビニル基に結合するX~Xn-1以外の置換基を示す。Zは末端基を表し、nは2~10000の整数を表す。)
[9]前記(メタ)アクリル系共重合体Aの質量平均分子量が、5000~200000である、[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油用摩擦低減剤。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の潤滑油用摩擦低減剤を含む潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摩擦低減効果に優れる潤滑油用摩擦低減剤及び潤滑油組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
【0012】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の総称である。「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の総称であり、CH=C(R)-C(=O)-(Rは水素原子又はメチル基)で表される基である。「マクロモノマー」とは、ラジカル重合性基又は付加反応性の官能基を有する重合物を意味する。「ビニル系ラジカル重合性単量体」とは、マクロモノマーではないエチレン性不飽和結合を有する単量体を意味する。
【0013】
本発明の潤滑油用摩擦低減剤は、(メタ)アクリル系共重合体Aを含む。
(メタ)アクリル系共重合体Aは、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリレート(a)(以下、「(a)成分」ともいう。)由来の構成単位を含む。さらに直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)(以下、「(b)成分」ともいう。)由来の構成単位を含んでもよい。
(メタ)アクリル系共重合体Aの総質量に対して、(a)成分と(b)成分を構成単位として、合計で70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0014】
【化3】
【0015】
前記一般式(1)において、「R」は水素原子またはメチル基であり、「p」は0または1であり、「-X-」は、「-O-」または「-NH-」である。
「-Y-」は、炭素数1~4のアルキレン基である。前記炭素数1~4のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基は直鎖であっても、分岐であってもよい。
【0016】
「R~R」は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、水酸基から選択されるいずれかであり、R~Rのうち少なくとも1つは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基のいずれかである。
前記炭素数1~4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのアルキル基は直鎖であっても、分岐であってもよい。前記炭素数3~12のトリアルキルシロキシ基の具体例としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリプロピルシロキシ基、トリブチルシロキシ基等が挙げられる。これらのトリアルキルシロキシ基が含有するアルキル基は、直鎖であっても、分岐であってもよい。前記炭素数1~4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基は直鎖であっても、分岐であってもよい。前記ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0017】
(a)成分としては、摩擦低減効果を高くできる点から、R~Rが全てアルキル基であるトリアルキルシリル基を有する(メタ)アクリレート、またはR~Rが全てトリアルキルシロキシ基であるトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0018】
(a)成分の具体例としては、
[ジメトキシ(メチル)シリル](メタ)アクリレート、[ジエトキシ(メチル)シリル](メタ)アクリレート、[ジメトキシ(メチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ジエトキシ(メチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、2-[ジメトキシ(メチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、2-[ジエトキシ(メチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、[ジメトキシ(エチル)シリル](メタ)アクリレート、[ジエトキシ(エチル)シリル](メタ)アクリレート、[ジメトキシ(エチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ジエトキシ(エチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、2-[ジメトキシ(エチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、2-[ジエトキシ(エチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、3-[ジメトキシ(エチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、ジクロロメチルシリル(メタ)アクリレート、2-(ジクロロメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート、3-(ジクロロメチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、等のモノアルキルシラン基を有する(メタ)アクリレート;
【0019】
[メトキシジ(メチル)シリル](メタ)アクリレート、[エトキシジ(メチル)シリル](メタ)アクリレート、[メトキシジ(メチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[エトキシジ(メチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、2-[メトキシジ(メチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、2-[エトキシジ(メチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、3-[メトキシジ(メチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[エトキシジ(メチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、[メトキシジ(エチル)シリル](メタ)アクリレート、
[エトキシジ(エチル)シリル](メタ)アクリレート、[メトキシジ(エチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[エトキシジ(エチル)シリル]メチル(メタ)アクリレート、2-[メトキシジ(エチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、2-[エトキシジ(エチル)シリル]エチル(メタ)アクリレート、3-[メトキシジ(エチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[エトキシジ(エチル)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、クロロジメチルシリル(メタ)アクリレート、2-(クロロジメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート、3-(クロロジメチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)シラノール、等のジアルキルシラン基を有する(メタ)アクリレート;
【0020】
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリブチルシリル(メタ)アクリレート、(トリメチルシリル)メチル(メタ)アクリレート、(トリエチルシリル)メチル(メタ)アクリレート、(トリプロピルシリル)メチル(メタ)アクリレート、(トリブチルシリル)メチル(メタ)アクリレート、2-(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(トリエチルシリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(トリプロピルシリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(トリブチルシリル)エチル(メタ)アクリレート、3-(トリメチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリエチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリプロピルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリブチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(トリメチルシリル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(トリエチルシリル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(トリプロピルシリル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(トリブチルシリル)ブチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリル(メタ)アリルアミド、(トリメチルシリル)メチル(メタ)アリルアミド、2-(トリメチルシリル)エチル(メタ)アリルアミド、3-(トリメチルシリル)プロピル(メタ)アリルアミド、4-(トリメチルシリル)ブチル(メタ)アクリルアミド、(トリメチルシロキシ)メチル(メタ)アクリレート、(トリエチルシロキシ)メチル(メタ)アクリレート、(トリプロピルシロキシ)メチル(メタ)アクリレート、(トリブチルシロキシ)メチル(メタ)アクリレート、2-(トリメチルシロキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(トリエチルシロキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(トリプロピルシロキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(トリブチルシロキシ)エチル(メタ)アクリレート、3-(トリメチルシロキシ)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリエチルシロキシ)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリプロピルシロキシ)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリブチルシロキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4-(トリメチルシロキシ)ブチル(メタ)アクリレート、4-(トリエチルシロキシ)ブチル(メタ)アクリレート、4-(トリプロピルシロキシ)ブチル(メタ)アクリレート、4-(トリブチルシロキシ)ブチル(メタ)アクリレート、(トリメチルシロキシ)メチル(メタ)アリルアミド、2-(トリメチルシロキシ)エチル(メタ)アリルアミド、3-(トリメチルシロキシ)プロピル(メタ)アリルアミド、4-(トリメチルシロキシ)ブチル(メタ)アクリルアミド、等のトリアルキルシリル基を有する(メタ)アクリレート;
【0021】
トリス(トリメチルシロキシ)シリル(メタ)アクリレート、トリス(トリエチルシロキシ)シリル(メタ)アクリレート、トリス(トリプロピルルシロキシ)シリル(メタ)アクリレート、トリス(トリブチルシロキシ)シリル(メタ)アクリレート、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリエチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリプロピルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリブチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、2-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]エチル(メタ)アクリレート、2-[トリス(トリエチルシロキシ)シリル]エチル(メタ)アクリレート、2―[トリス(トリプロピルシロキシ)シリル]エチル(メタ)アクリレート、2―[トリス(トリブチルシロキシ)シリル]エチル(メタ)アクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[トリス(トリエチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3―[トリス(トリプロピルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3―[トリス(トリブチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、4-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]ブチル(メタ)アクリレート、4-[トリス(トリエチルシロキシ)シリル]ブチル(メタ)アクリレート、4―[トリス(トリプロピルシロキシ)シリル]ブチル(メタ)アクリレート、4―[トリス(トリブチルシロキシ)シリル]ブチル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリル(メタ)アリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アリルアミド、2―[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]エチル(メタ)アリルアミド、3―[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アリルアミド、4―[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]ブチル(メタ)アリルアミド、等のトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
(a)成分由来の構成単位は、摩擦低減効果を高くできる点から、(メタ)アクリル系共重合体Aの総質量に対して、0.1~70質量%であることが好ましく、0.2~60質量%であることより好ましく、0.3~50質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
前記(b)成分の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ぺンタデシル(メタ)アクリレート、n-セチル(メタ)アクリレート、n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;
i-プロピル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、i-ウンデシル(メタ)アクリレート、i-ドデシル(メタ)アクリレート、i-トリデシル(メタ)アクリレート、i-テトラデシル(メタ)アクリレート、i-ぺンタデシル(メタ)アクリレート、i-セチル(メタ)アクリレート、i-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、i-ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
(b)成分としては、ベースオイルへの溶解性を高くできる点から、アルキル基の炭素数が1~20のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、アルキル基の炭素数が4~14のアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0025】
(b)成分由来の構成単位は、ベースオイルへの溶解性を高くできる点から、(メタ)アクリル系共重合体Aの総質量に対して、30~99.9質量%であることが好ましく、40~99.8質量%であることより好ましく、50~99.7質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
前記(メタ)アクリル系共重合体Aは、(a)成分、(b)成分以外のその他のラジカル重合性ビニル系化合物(以下、「(c)成分」ともいう。)由来の構成単位を含有してもよい。(c)成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、並びに(a)成分及び(b)成分以外の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0027】
(a)成分及び(b)成分以外の(メタ)アクリレート化合物としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、コハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシ基を含有する(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(1-ナフチル)メチル(メタ)アクリレート等の芳香環構造を有する(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレオイルモルフォリン等のヘテロ環構造を有する(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0028】
摩擦低減効果をより高くできる点から、(メタ)アクリル系共重合体Aの総質量に対して、(c)成分由来の構成単位の含有量は、0.01~30質量%であることが好ましく、0.03~20質量であることより好ましく、0.5~10質量であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル系共重合体Aは(c)成分由来の構成単位を含まなくてもよい。
前記(a)~(c)成分由来の構成単位の合計量は前記(メタ)アクリル系共重合体Aの総質量に対して、100質量%を超えない。
【0029】
前記(メタ)アクリル系共重合体Aは、摩擦低減効果を高くできる点から、グラフト共重合体であってもよい。
本明細書において、グラフト共重合体とは、主鎖ポリマー構造(幹ポリマー構造)に、側鎖ポリマー構造(枝ポリマー構造)として化学結合された1種以上のブロックを持つ高分子である。主鎖ポリマーと側鎖ポリマーの構造は、異なってもよいし、同じであってもよい。グラフト共重合体の製造方法としては特に限定されないが、末端にラジカル重合性二重結合を有するマクロモノマーを側鎖ポリマー構造として製造した後に、主鎖ポリマーの構成単位となるモノマーとラジカル重合する方法や、反応点を有する主鎖ポリマーと反応点を有するマクロモノマーを予め製造した後、それらを反応させる方法、主鎖ポリマーの製造後に水素引き抜き能を有する開始剤を使用して主鎖ポリマー上にラジカルを発生させ、側鎖ポリマーの構成単位となるモノマーを反応させて側鎖ポリマー構造を製造する方法等が挙げられる。
【0030】
グラフト共重合体である(メタ)アクリル系共重合体Aは、前記(a)~(c)成分由来の構成単位を主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造とのいずれにも含有してもよい。
(a)成分を側鎖ポリマー構造または主鎖ポリマー構造に含有することで摩擦低減効果を高めることができる。摩擦低減効果をさらに高めることができる点から、主鎖ポリマー構造の構成単位として、アルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、アルキル基の炭素数が2~4のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがより好ましく、アルキル基の炭素数が4のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがさらに好ましい。
ベースオイルへの溶解性を高めることができる点から、側鎖ポリマー構造の構成単位として、アルキル基の炭素数が5~20のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、アルキル基の炭素数が8~18のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがより好ましく、アルキル基の炭素数が10~14のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがさらに好ましい。
【0031】
グラフト共重合体である(メタ)アクリル系共重合体Aは、ビニル系ラジカル重合性単量体(m1)(以下、「(m1)成分」ともいう。)由来の構成単位と、マクロモノマー(M)(以下、「(M)成分」ともいう。)由来の構成単位と、を含んでもよい。(m1)成分と(M)成分を共重合することで、(m1)成分を構成単位とする主鎖ポリマー構造と、(M)成分からなる側鎖ポリマー構造を有するグラフト共重合体を得ることができる。
【0032】
前記(m1)成分としては、前記(a)~(c)成分として挙げた化合物が挙げられる。ラジカル重合性に優れる点から(m1)成分として、(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。
摩擦低減効果をさらに高めることができる点から、(m1)成分が、アルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、アルキル基の炭素数が2~4のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがより好ましく、アルキル基の炭素数が4のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがさらに好ましい。
【0033】
前記(M)成分は、ラジカル重合性基および繰り返し構造を有する化合物であれば特に限定はされず、例えば、ポリイソブチレンや水素化ポリブタジエンの末端をビニル系ラジカル重合性基で変性した化合物や、ビニル系ラジカル重合性基を有する単量体(m2)(以下、「(m2)成分」ともいう。)由来の構成単位を2以上含み、末端にラジカル重合性基を有する化合物等が挙げられる。ベースオイルへの溶解性に対する設計度の高さから、(m2)成分の構成単位を2以上含み、末端にラジカル重合性基を有する化合物であることが好ましい。
【0034】
(m2)成分としては、前記(a)~(c)成分として挙げた化合物が挙げられる。ラジカル重合性に優れる点から(m2)成分として、(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。
ベースオイルへの溶解性を高めることができる点から、(m2)成分が、アルキル基の炭素数が5~20のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、アルキル基の炭素数が8~18のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがより好ましく、アルキル基の炭素数が10~14のアルキル(メタ)アクリレートを含有することがさらに好ましい。
【0035】
さらに前記(M)成分は、ラジカル重合性の点から、以下の式(2)で示される構造が好ましい。
【0036】
【化4】
【0037】
(式中、X~Xn-1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はCHOHを示し、Y~Yは、それぞれ独立して、前記マクロモノマー(M)の構成単位であるビニル系ラジカル重合性単量体(m2)のビニル基に結合するX~Xn-1以外の置換基を示す。Zは末端基を表し、nは2~10000の整数を表す。)
【0038】
~Xn-1及びY~Yは、それぞれ独立して、(m2)成分のビニル基に結合する置換基である。Y~Yは、例えば、OR11、ハロゲン原子、COR12、COOR13、CN、CONR1415、NHCOR16、又はR17を示し、R11~R17はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を示す。
【0039】
なお末端基のZは、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子およびラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
【0040】
また、ベースオイルへの(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解性を高くできる点および、摩擦低減効果を高くできる点から、(メタ)アクリル系共重合体Aの総質量に対して、前記(M)成分由来の構成単位の含有量は、1~70質量%が好ましく、2~60質量%がより好ましく、5~50質量%がさらに好ましい。
【0041】
ベースオイルへの(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解性を高くできる点から、(M)成分の総質量に対して、アルキル基の炭素数が5~20のアルキル(メタ)アクリレートを50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することがさらに好ましく、80質量%以上含有することが特に好ましい。
【0042】
ベースオイルへの(メタ)アクリル系グラフト共重合体Aの溶解性を高くできる点および、摩擦低減効果を高くできる点から、前記マクロモノマー(M)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した質量平均分子量(Mw)は、1000以上50000以下が好ましく、2000以上40000以下であることがより好ましく、3000以上30000以下であることがさらに好ましい。
【0043】
ベースオイルへの(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解性を高くできる点および、摩擦低減効果を高くできる点から、前記(M)成分のゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は、500~30000が好ましく、1000~25000がより好ましく、2000~20000が特に好ましい。
【0044】
ベースオイルへの(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解性を高くできる点および、摩擦低減効果を高くできる点から、前記マクロモノマー(M)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Mw/Mn)は、1.0以上10以下が好ましく、1.2以上8以下であることがより好ましく、1.5以上5以下であることがさらに好ましい。
【0045】
前記(M)成分は、公知の方法で製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。前記M成分の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許第4680352号明細書)、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60-133007号公報および米国特許第5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11-240854号公報)が挙げられる。
【0046】
製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。コバルト連鎖移動剤は連鎖移動定数が高いため、少量の添加で分子量が制御されたマクロモノマーを得ることができる。
【0047】
コバルト連鎖移動剤としては、公知のコバルト錯体が使用できる。前記コバルト連鎖移動剤の量は、前記(m2)成分100質量部に対して、0.00001~0.1質量部が好ましく、0.00005~0.05質量部であることがより好ましく、0.0001~0.02質量部であることが特に好ましい。
【0048】
本発明の潤滑油用摩擦低減剤に含まれる(メタ)アクリル系共重合体AのGPCで測定した質量平均分子量(Mw)は、摩擦低減効果を高くできる点及び、潤滑油組成物を低粘度化することで省燃費性能を向上できる点から、5000以上200000以下が好ましく、10000以上150000以下であることがより好ましく、15000以上100000以下であることがさらに好ましい。
【0049】
また本発明の潤滑油用摩擦低減剤に含まれる(メタ)アクリル系共重合体Aのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)は、ベースオイルへの(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解性を高くできる点および、摩擦低減効果を高くできる点から、2000以上100000以下が好ましく、3000以上80000以下であることがより好ましく、5000以上50000以下であることがさらに好ましい。
【0050】
また本発明の潤滑油用摩擦低減剤に含まれる(メタ)アクリル系共重合体Aのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Mw/Mn)は、ベースオイルへの(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解性を高くできる点および、摩擦低減効果を高くできる点から、1.0以上30以下が好ましく、1.2以上20以下であることがより好ましく、1.5以上10以下であることがさらに好ましい。
【0051】
次に本発明の潤滑油用摩擦低減剤の製造方法の一例を示す。
本発明の潤滑油用摩擦低減剤は、ベースオイル中で、前記(a)成分、必要に応じて前記(b)成分および(c)成分を含む単量体混合物を、公知の方法で重合することで製造できる。または、ベースオイル中で、前記(m1)成分、前記(M)成分を含む単量体混合物を、公知の方法で重合することで製造できる。また、重合は公知の条件で行えばよいが、重合時の発熱抑制効果に特に優れることから、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマーを用いることが好ましい。
【0052】
前記ベースオイルとしては、特に限定はされないが、SKルブリカンツ社製のYUBASE3等のAPI規格GroupIIIのベースオイル、SKルブリカンツ社製のYUBASE4等のAPI規格GroupIIIプラスのベースオイル、ポリアルファオレフィン等のAPI規格GroupIVのベースオイル等が挙げられる。
【0053】
また、前記(M)成分は、前記ベースオイル中で、コバルト連鎖移動剤を用いて、ビニル系ラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合したマクロモノマーが好ましい。コバルト連鎖移動剤は連鎖移動定数が高いため、少量の添加で分子量が制御されたマクロモノマーを得ることができる。
【0054】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体Aを含む潤滑油用摩擦低減剤は、自動車や船舶等のモビリティや、産業機械、ロボット等で使用される、エンジン油、駆動系油(ギヤ油、変速機油)、作動油、金属加工油等の潤滑油に添加する潤滑油用摩擦低減剤として使用できる。
【0055】
前記潤滑油のベースオイルとしては、原油から精製された鉱物系基油や、化学的に合成された合成油が挙げられ、例えば、SKルブリカンツ社製のYUBASE3等のAPI規格GroupIIIのベースオイル、SKルブリカンツ社製のYUBASE4等のAPI規格GroupIIIプラスのベースオイル、ポリアルファオレフィン等のAPI規格GroupIVのベースオイル等が挙げられる。
【0056】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の潤滑油用摩擦低減剤をベースオイルに配合したものである。本発明の潤滑油組成物は、本発明の潤滑油用摩擦低減剤以外の、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、腐食防止剤、さび止め剤、消泡剤、乳化剤、防かび剤、抗乳化剤等が挙げられる。また、本発明以外の摩擦低減剤として、長鎖脂肪酸エステル及び脂肪酸アミド等の油性向上剤や、リン酸エステル及びジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、有機硫黄化合物及び有機ハロゲン化合物等の極圧剤、有機モリブデン化合物等の摩擦調整剤等を含有してもよい。
また、本発明の潤滑油組成物は、増ちょう剤を含有したグリースであってもよい。増ちょう剤としては、例えば、石けん系(リチウム石けん、カルシウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん等)や、無機物系(ベントナイト、シリカゲル等)、有機物系(ポリウレア、ポリウレタン等)等が挙げられる。
【0057】
前記潤滑油組成物に含まれる本発明の潤滑油用摩擦低減剤の含有量は、潤滑油組成物100質量%に対して、0.01~30質量%が好ましく、0.05~25質量%がより好ましく、0.1~20質量%がさらに好ましい。潤滑油用摩擦低減剤の含有量を0.01質量%以上とすることで摩擦低減効果を高くできる。30質量%以下とすることで、潤滑油組成物の粘度を低くできる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を表す。また、表1、2中、各単量体に由来する構成単位の含有量を質量%で示す。各構成単位の含有量は、重合反応において使用した単量体の総質量に対する、単量体の質量から算出した。以下の方法によって評価した。
【0059】
<マクロモノマー(M)の分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8320)を用いて測定した。マクロモノマー(M)のテトラヒドロフラン溶液0.2質量%を調製後、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperHZM-M(内径4.6mm、長さ15cm)、HZM-M(内径4.6mm、長さ15cm)、HZ-2000(内径4.6mm、長さ15cm)、TSKguardcolumn SuperHZ-L(内径4.6mm、長さ3.5cm)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量:0.35ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にてMw、Mn、及びMw/Mnを算出した。
【0060】
<(メタ)アクリル系共重合体の分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8320)を用いて測定した。実施例で得られた(メタ)アクリル系共重合体のテトラヒドロフラン溶液0.2質量%を調製後、東ソー社製カラム(TSKgelSuperHZM-H 2本(内径6.0mm、長さ15cm)、TSKguardcolumn SuperHZ-H(内径4.6mm、長さ3.5cm)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量0.5ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0061】
<40℃の摩擦係数>
得られた(メタ)アクリル系共重合体を2質量%含有するYUBASE4溶液を調製し、SRV5試験機(Optimol Instruments Pruftechnik GmbH社製)を用いて、40℃における摩擦係数を測定した。測定条件は以下の通りとし、測定開始30分後の摩擦係数を評価した。
・試験方法:ボールオンディスク(ボールの直径:10mm、ボールとディスクの材質:SUJ2)
・試験モード:往復(50Hz、ストローク1mm)
・荷重:200N
【0062】
[製造例1]
(Co錯体(コバルト連鎖移動剤)の合成)
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬社製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成社製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、25℃で2時間撹拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成社製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間撹拌した。得られたものを濾過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体のCo錯体5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
【0063】
[製造例2]
(マクロモノマーM1の合成)
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、YUBASE4を58部、アクリエステルSL(三菱ケミカル社製、商品名:アクリエステルSL、アルキル基の炭素数が12であるアルキルメタクリレートと、アルキル基の炭素数が13であるアルキルメタクリレートの混合物)を98部、メチルメタクリレート(MMA)を2部、製造例1で作製したCo錯体を0.005部加え、液温を40℃に昇温し攪拌しながら窒素を2時間バブリングして溶存酸素を除いた。YUBASE4(2部)と重合開始剤であるt-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス575)0.1部からなる混合液を投入して液温を90℃に昇温し、2.5時間攪拌した後、YUBASE4(10部)とルペロックス26(0.7部)からなる混合液を1時間かけて滴下した。滴下後105℃に昇温し、1.5時間保持した後、YUBASE4を20部添加して冷却し、マクロモノマーM1を52.6質量%含有するYUBASE4溶液を得た。得られたマクロモノマーM1のGPCの結果を表1に示す。
【0064】
[製造例3]
(マクロモノマーM2の合成)
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、YUBASE4を58部、アクリエステルSLを78部、(a)成分として、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート(東京化成工業社製)を20部、メチルメタクリレート(MMA)を2部、製造例1で作製したCo錯体を0.005部加え、液温を40℃に昇温し攪拌しながら窒素を2時間バブリングして溶存酸素を除いた。YUBASE4(2部)と重合開始剤であるルペロックス575(0.1部)からなる混合液を投入して液温を90℃に昇温し、2.5時間攪拌した後、YUBASE4(10部)とルペロックス26(0.7部)からなる混合液を1時間かけて滴下した。滴下後105℃に昇温し、1.5時間保持した後、YUBASE4を20部添加して冷却し、マクロモノマーM2を52.6質量%含有するYUBASE4溶液を得た。得られたマクロモノマーM2のGPCの結果を表1に示す。
【0065】
<実施例1>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、ベースオイルとしてYUBASE4を900部、(a)成分として、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート(東京化成工業社製)を5部、(b)成分として、ラウリルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名:LA)を75部、n-ブチルアクリレート(三菱ケミカル社製)を20部、重合開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーオクタO)を2部加え、室温で攪拌しながら窒素を1時間吹き込んで反応液中の溶存酸素を除いた。その後、液温を80℃に昇温して4時間攪拌した後95℃に昇温した。さらに2時間攪拌した後に冷却し(メタ)アクリル系共重合体を10質量%含有するYUBASE4溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体のGPCの結果を表2に示す。
得られた潤滑油用摩擦低減剤の評価結果を表2に示す。
【0066】
<実施例2~7、比較例1~3>
用いた(a)~(c)成分を表2の内容に変更した以外は、実施例1と同様の手法で(メタ)アクリル系共重合体を製造し、評価を実施した。
【0067】
<実施例8>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、YUBASE4を30部、製造例2で得られたマクロモノマーM1のYUBASE4溶液を47.6部加え、攪拌しながら窒素をバブリングして溶存酸素を除いた。液温を85℃に昇温し、YUBASE4を25部、(a)成分として、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートを5部、(b)成分として、n-ブチルアクリレートを56部、ラウリルアクリレートを14部、重合開始剤としてルペロックス575を0.1部、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー(日油社製、商品名:ノフマーMSD)を0.9部加えた混合液を4時間かけて滴下した。85℃で1時間保持した後にYUBASE4(50部)とルペロックス575(0.5部)の混合液を1.5時間かけて滴下した。110℃に昇温して1時間保持した後、YUBASE4(58.1部)を添加して冷却し、(メタ)アクリル系共重合体を35質量%含有するYUBASE4溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体のGPCの結果を表2に示す。
得られた潤滑油用摩擦低減剤の評価結果を表2に示す。
なお、表2のモノマー組成は、マクロモノマーM1を25質量%含み、マクロモノマーM1を構成するモノマーが、SLMAの24.5質量%及びMMAの0.5質量%であり、(а-1)に由来する構成単位がグラフト共重合体の主鎖に存在することを表す。
【0068】
<実施例9>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、YUBASE4を30部、製造例3で得られたマクロモノマーM2(3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート由来の構成単位を20質量%含有するマクロモノマー)のYUBASE4溶液を47.6部加え、攪拌しながら窒素をバブリングして溶存酸素を除いた。液温を85℃に昇温し、YUBASE4を25部、(b)成分として、n-ブチルアクリレートを56部、ラウリルアクリレートを19部、重合開始剤としてルペロックス575を0.1部、連鎖移動剤としてノフマーMSDを0.9部加えた混合液を4時間かけて滴下した。85℃で1時間保持した後にYUBASE4(50部)とルペロックス575(0.5部)の混合液を1.5時間かけて滴下した。110℃に昇温して1時間保持した後、YUBASE4(58.1部)を添加して冷却し、(メタ)アクリル系共重合体を35質量%含有するYUBASE4溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体のGPCの結果を表2に示す。
得られた潤滑油用摩擦低減剤の評価結果を表2に示す。
なお、表2のモノマー組成は、マクロモノマーM2を25質量%含み、マクロモノマーM2を構成するモノマーが、(а-1)の5質量%、SLMAの19.5質量%、及びMMAの0.5質量%であり、(а-1)に由来する構成単位がグラフト共重合体の側鎖に存在することを表す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1、2中の略語は下記の通りである。
【0072】
・(a-1):3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート(東京化成工業社製)
・(a-2): 2-(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレート(東京化成工業社製)
・M1:製造例2で合成したマクロモノマー
・M2:製造例3で合成したマクロモノマー
・SLMA:アルキル基の炭素数が12であるアルキルメタクリレートと、アルキル基の炭素数が13であるアルキルメタクリレートの混合物(三菱ケミカル社製、商品名:アクリエステルSL)
・MMA:メチルメタクリレート(三菱ケミカル社製、商品名:アクリエステルM)
・LA:ラウリルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名:LA)
・nBA:n-ブチルアクリレート(三菱ケミカル社製)
・KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製、商品名:KBM-503)
・2HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名:HEA)
【0073】
表1から明らかなように、各実施例で得られた潤滑油用摩擦低減剤は、摩擦係数の低減効果が高かった。一方、各比較例で得られた潤滑油用摩擦低減剤は、摩擦係数の低減効果が低かった。