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特開2024-34059リチウムおよびニオブを含む酸化物およびその製造方法、並びに、電極活物質および固体電解質
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  • 特開-リチウムおよびニオブを含む酸化物およびその製造方法、並びに、電極活物質および固体電解質 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034059
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】リチウムおよびニオブを含む酸化物およびその製造方法、並びに、電極活物質および固体電解質
(51)【国際特許分類】
   C01G 33/00 20060101AFI20240306BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240306BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20240306BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240306BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240306BHJP
【FI】
C01G33/00 A
H01B1/06 A
H01B1/08
H01M4/36 C
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138059
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大介
(72)【発明者】
【氏名】田上 幸治
【テーマコード(参考)】
4G048
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AC08
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
5G301CA02
5G301CA16
5G301CA18
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029DJ16
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ13
5H029HJ14
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】より高いイオン伝導度を発揮するリチウムおよびニオブを含む酸化物およびその製造方法、並びに、当該酸化物を被覆層中に含む電極活物質および固体電解質材料を提供する。
【解決手段】リチウムおよびニオブを含む酸化物であって、前記酸化物は、バナジウムを含み、前記酸化物中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]が0.8以上1.5以下であり、前記酸化物中おける、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が0.01以上0.30以下である、リチウムおよびニオブを含む酸化物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムおよびニオブを含む酸化物であって、
前記酸化物は、バナジウムを含み、
前記酸化物中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]が0.8以上1.5以下であり、
前記酸化物中おける、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が0.01以上0.30以下である、リチウムおよびニオブを含む酸化物。
【請求項2】
前記ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が0.05以上0.30以下である、請求項1に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物。
【請求項3】
前記リチウムおよびニオブを含む酸化物が、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒子径である(D50)の値が0.5μm以上10.0μm以下の粉末である、請求項1に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物。
【請求項4】
前記リチウムおよびニオブを含む酸化物の結晶子径が10nm以上である、請求項1に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物。
【請求項5】
前記リチウムおよびニオブを含む酸化物は、X線回折パターン上にLiNbOに帰属するピークを有する、請求項1に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物。
【請求項6】
リチウムを含有する粉末、ニオブを含有する粉末、および、バナジウムを含有する粉末を混合し、得られた原料混合粉末を焼成して、リチウムおよびニオブを含む酸化物を製造する方法であって、
前記原料混合粉末中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]を0.8以上1.5以下とし、
前記原料混合粉末中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]を0.01以上0.30以下とする、リチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記原料混合粉末中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]を0.05以上0.30以下とする、請求項6に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法。
【請求項8】
前記原料混合粉末を焼成して得られたリチウムおよびニオブを含む酸化物を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒子径である(D50)の値が0.5μm以上10.0μm以下になるよう粉砕する、請求項6に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法。
【請求項9】
前記原料混合粉末を焼成する際、800℃以上1200℃以下で焼成を行う、請求項6に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法。
【請求項10】
表面の少なくとも一部に被覆層を有する電極活物質であって、
前記被覆層が、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物を含む、電極活物質。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物を含む、固体電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムおよびニオブを含む酸化物およびその製造方法、並びに、当該酸化物を被覆層中に含む電極活物質および固体電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、高性能で安全性も高い全固体リチウム二次電池の開発が盛んに行われている。全固体リチウム二次電池の分野においては、固体電解質や電極活物質の表面を被覆する被覆層としてイオン伝導体が使用されている。例えば、特許文献1には、電極活物質の表面に被覆するイオン伝導体として、リチウムおよびニオブを含む酸化物であるニオブ酸リチウム(LiNbO)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-74240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車の実用化などに伴い、小型・軽量で、かつ高出力の全固体リチウム二次電池が必要とされるようになってきている。全固体電池の小型・軽量化によって固体電解質と電極活物質の使用量が制限されることから、全固体電池の出力向上の為には、より高いイオン伝導度を発揮するイオン伝導体が望まれている。
【0005】
本発明は上述の状況の下でなされたものであり、その解決しようとする課題は、より高いイオン伝導度を発揮するリチウムおよびニオブを含む酸化物およびその製造方法、並びに、当該酸化物を被覆層中に含む電極活物質および固体電解質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究の結果、リチウムおよびニオブを含む酸化物において、当該酸化物中へさらに所定量のバナジウムを添加元素Mとして含有させることによって、イオン伝導度を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
リチウムおよびニオブを含む酸化物であって、
前記酸化物は、バナジウムを含み、
前記酸化物中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]が0.8以上1.5以下であり、
前記酸化物中おける、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が0.01以上0.30以下である、リチウムおよびニオブを含む酸化物である。
第2の発明は、
前記ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が0.05以上0.30以下である、第1の発明に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物である。
第3の発明は、
前記リチウムおよびニオブを含む酸化物が、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒子径である(D50)の値が0.5μm以上10.0μm以下の粉末である、第1の発明に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物である。
第4の発明は、
前記リチウムおよびニオブを含む酸化物の結晶子径が10nm以上である、第1の発明に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物である。
第5の発明は、
前記リチウムおよびニオブを含む酸化物は、X線回折パターン上にLiNbOに帰属するピークを有する、第1の発明に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物である。
第6の発明は、
リチウムを含有する粉末、ニオブを含有する粉末、および、バナジウムを含有する粉末を混合し、得られた原料混合粉末を焼成して、リチウムおよびニオブを含む酸化物を製造する方法であって、
前記原料混合粉末中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]を0.8以上1.5以下とし、
前記原料混合粉末中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]を0.01以上0.30以下とする、リチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法である。
第7の発明は、
前記原料混合粉末中における、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]を0.05以上0.30以下とする、第6の発明に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法である。
第8の発明は、
前記原料混合粉末を焼成して得られたリチウムおよびニオブを含む酸化物を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒子径である(D50)の値が0.5μm以上10.0μm以下になるよう粉砕する、第6の発明に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法である。
第9の発明は、
前記原料混合粉末を焼成する際、800℃以上1200℃以下で焼成を行う、第6の発明に記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法である。
第10の発明は、
表面の少なくとも一部に被覆層を有する電極活物質であって、
前記被覆層が、第1から第5の発明のいずれかに記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物を含む、電極活物質である。
第11の発明は、
第1から第5の発明のいずれかに記載のリチウムおよびニオブを含む酸化物を含む、固体電解質である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物は、従来の技術に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に較べて、より高いイオン伝導度を発揮する。従って、本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物を、全固体リチウム二次電池の電極活物質の少なくとも表面の一部を被覆する被覆層へ含有させることや、固体電解質として用いることで、全固体リチウム二次電池の性能向上に寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1、実施例2および比較例1に係るリチウム及びニオブを含む酸化物粉末のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物は、リチウムおよびニオブを含む酸化物であって、さらに所定量のバナジウムを含み、高いイオン伝導度を発揮するリチウムおよびニオブを含む酸化物である。
以下、本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物について、(1)組成、(2)結晶質と非晶質、(3)X線回折パターン、(4)粒度分布、(5)製造方法、の順に説明する。
【0011】
(1)組成
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物中においては、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[(Li/Nb+V)]が0.8以上1.5以下である。
これは、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比が0.8以上1.5以下であることにより、高いイオン伝導度が担保されることによる。
当該観点より、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比は、0.90以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.95以上である。一方、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比は、1.4以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1.3以下である。
【0012】
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物中においては、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が0.01以上0.30以下である。
これは、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比が0.01以上0.30以下であることにより、高いイオン伝導度が担保されることによる。
ここで、リチウムおよびニオブを含む酸化物へ、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比が0.01以上のバナジウムを含有させることにより、高いイオン伝導度を発揮させる機構について、本発明者らは以下のように推察している。
【0013】
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に対する、後述するXRD測定して得たX線回折パターンにおいてバナジウムの酸化物ピークが観察されないのが好ましい。このことから、添加されたバナジウムは、リチウム、ニオブと共に酸化物を構成していると考えられる。
バナジウムは、周期律においてニオブと同じ5族の元素であり5価の原子価をとり得るので、ニオブと置換することができる。バナジウムはニオブと比較して電気陰性度が高いため、ニオブの一部と置換することにより、リチウムと共有する酸素原子をニオブよりも自身に引き付けることができる。つまり、リチウムおよびニオブを含む酸化物において、ニオブがバナジウムに置換することにより、(Nb、V)-O間の距離は短くなり、Li-O間の距離は長くなると考えられる。すると、Li-O間の距離が長くなったことで、リチウムが酸素から受ける電子反発力は低減し、イオン伝導度が向上したと考えられる。そのため、リチウムおよびニオブを含む酸化物に含まれるバナジウムは5価のバナジウムであることが好ましい。
またバナジウムは、ニオブ酸リチウムの結晶において、結晶構造に大きな歪を与えることなくニオブと置換することができるため、本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物は、結晶子径が10nm以上であってもイオン伝導度の向上効果が得られる。そして、本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物を用いた電極活物質および固体電解質のイオン伝導度を向上させる観点からは、結晶子径が10nm以上であることが好ましい。
【0014】
そして、ニオブ酸リチウムの分子において、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比が0.01以上あれば、イオン伝導度の向上の効果を得ることが出来る。一方、当該モル比が0.30を超えると、バナジウムはニオブを一定以上置換できなくなるため、イオン伝導度が低下すると考えられることから、当該モル比は0.30以下が好ましい。
【0015】
当該観点より、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比は、0.03以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.05以上である。一方、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比は、0.27以下であることがより好ましい。
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物中におけるニオブの含有量は30~70質量%であることが好ましい。本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物中のリチウムとバナジウムの含有量は、ニオブの含有量に応じて、ニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[(Li/Nb+V)]と、ニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が上述の範囲を満たすように含有していればよい。
【0016】
(2)結晶質と非晶質
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物は、上述した観点より、XRD測定して得たX線回折パターンにおいて最も強度の強いピークから算出される結晶子径が10nm以上であることが好ましい。一方、結晶子径の上限は特に限定されないが170nm以下が好ましい。
尤も、本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物は、その用途(求められる性質)によっては、結晶質であることに限られず、非晶質であってもよい場合がある。
【0017】
(3)X線回折パターン
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物は、当該酸化物をXRD測定して得たX線回折パターン上に、リチウムイオンの伝導体として知られているLiNbO、LiNbO、LiNbおよびLiNbに帰属するピークを有していることが好ましい。リチウムおよびニオブを含む酸化物が、LiNbO、LiNbO、LiNbおよびLiNbに帰属するピークを有するか否かは、当該酸化物をXRD測定して得たX線回折パターンと、データベースに登録されているリチウムおよびニオブを含む酸化物の回折ピークとを照合することにより判定出来る。例えば、LiNbOの場合は、LiNbOのICDD(国際回折データセンター)のPowder Diffraction File(本発明において「PDF」と記載する場合がある。) No.00-020-0631と照合することで判定することが出来る。詳細には、PDF No.00-020-0631と照合する場合では、ピーク強度が高い順から2θ=23.7°±0.5°に観察される(012)面の回折ピーク、2θ=32.7°±0.5°に観察される(104)面の回折ピーク、および2θ=34.8°±0.5°に観察される(110)面の3個の回折ピークが観察されるか否かで判定することができる。
また、LiNbOは、PDF No.01-075-0902と照合する。この場合、ピーク強度が高い順から2θ=25.9°±0.5°に観察される(211)面の回折ピーク、2θ=14.9°±0.5°に観察される(110)面の回折ピーク、および2θ=42.9°±0.5°に観察される(400)面の3個の回折ピークが観察されるか否かで判定することができる。
LiNbの場合は、PDF No.01-070-1566と照合する。この場合、ピーク強度が高い順から2θ=30.2°±0.5°に観察される(014)面の回折ピーク、2θ=21.6°±0.5°に観察される(110)面の回折ピーク、および2θ=24.4°±0.5°に観察される(004)面の3個の回折ピークが観察されるか否かで判定することができる。
LiNbの場合は、PDF No.00-046-0092と照合する。この場合、ピーク強度が高い順から2θ=23.8°±0.5°に観察される回折ピーク、2θ=19.5°±0.5°に観察される回折ピーク、および2θ=10.7°±0.5°に観察される回折ピークの3個の回折ピークが観察されるか否かで判定することができる。
【0018】
一方、リチウムおよびニオブを含む酸化物の結晶子径が10nm未満であってもよい。また、リチウムおよびニオブを含む酸化物が非晶質である場合は、X線回折パターン上にハローが観察される。
【0019】
(4)粒度分布
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物は、全個体リチウム二次電池の固体電解質として用いる場合、正極活物質の表面を被覆する被覆層の材料として用いる場合の成型性、或いは、被覆層を形成するためのコート液としての溶媒に対する溶解し易さ、等の観点から、酸化物粉末の形態とするのが好ましい。
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物を酸化物粉末の形態とする場合、使用用途に応じて適宜な粒子径に調整されていればよい。
尤も、本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物を酸化物粉末の形態とする場合、上述した観点から、当該酸化物粉末の粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により体積基準の粒度分布を測定し、測定によって得られた体積基準の累積50%粒子径(D50)の値が、0.5μm以上10.0μm以下であることが好ましい。当該(D50)の値が1μm以上8.0μm以下であることはより好ましい。
【0020】
(5)製造方法
本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法は、リチウム、ニオブおよびバナジウムを含む酸化物の原料となる粉末を混合し得る原料混合工程と、得られた原料混合粉末を焼成してリチウムおよびニオブを含む酸化物となる焼成物を得る焼成工程とを少なくとも有し、当該原料混合粉末中のリチウム、ニオブおよびバナジウムを所定のモル比になるよう調整したものである。
以下、本発明に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の製造方法を〈1〉原料混合、〈2〉焼成、〈3〉粉砕、の順に説明する。
【0021】
〈1〉原料混合
目的の組成のリチウムおよびニオブを含む酸化物が生成されるように所定の各成分原料を秤量し混合し、原料混合粉末を得る。原料を混合する方法は特に限定されず、公知の混合する方法を実施することができる。
【0022】
各成分原料は、通常使用されるものを好適に使用することができる。例えば、リチウム、ニオブおよびバナジウムのいずれかを含む、水酸化物、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、硝酸塩、有機酸塩などが挙げられる。特に、環境的な側面、入手し易さ等、の理由から、水酸化物または酸化物が好ましい。
なお、バナジウム含む原料については、バナジウムが3価、4価および5価の価数をとるものが一般的であるが、いずれの価数をとるバナジウム含む原料であっても使用することが出来る。
【0023】
原料混合によって得られる原料混合粉中におけるリチウム、ニオブおよびバナジウムの含有量は、原料混合粉中のニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]が0.8以上1.5以下であり、好ましくは0.90以上である、さらに好ましくは0.95以上とする。さらに、好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下とする。
【0024】
一方、原料混合によって得られる原料混合粉中におけるニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]が0.01以上0.30以下であり、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上とする。さらに、好ましくは0.27以下とする。
【0025】
〈2〉焼成
得られた原料混合粉末を焼成し、リチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を得る。
原料混合粉末の焼成温度は、リチウムおよびニオブを含む酸化物を得ることができれば、特に限定はされないが、例えば原料混合粉末を800℃以上1200℃以下の温度で焼成するのが、好ましい。焼成開始から焼成温度までの昇温速度は1℃/min以上30℃/min以下が好ましい。焼成時間は、1時間以上10時間以下、焼成雰囲気は、酸化物を得るために大気雰囲気または酸素雰囲気で良い。
【0026】
〈3〉粉砕
得られたリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を、使用用途に応じた適宜な粒子径や結晶子径へ粉砕する粉砕工程を実施してもよい。
粉砕工程により得られたリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、0.5μm以上10.0μm以下に粉砕することが好ましく、当該(D50)が1μm以上8.0μm以下に粉砕するのがより好ましい。そして、結晶子径は、10nm以上であることが好ましい。
焼成物を粉砕する装置は特に限定されるものではないが、遊星ボールミルなどの公知の装置を用いて粉砕することができる。
なお、粉砕を長時間行うことで、結晶子径が10nm未満のリチウムおよびニオブを含む酸化物を得ることも可能である。
【実施例0027】
(実施例1)
原料として水酸化リチウム・1水和物(和光純薬製、LiOH・HO)1.04g、ニオブ酸(HCスタルク製、Nb・nHO、Nb含有率40.6%)5.32g、五酸化バナジウム(和光純薬製、V)0.14gを秤量し、乳鉢にて混合して原料混合粉末を得た。
原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]を1.0とした。また、原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]を0.06とした。
【0028】
得られた原料混合粉末をアルミナ製筐体に入れ、箱型電気炉内に設置し大気雰囲気中において、室温から昇温速度5℃/minで900℃まで昇温し、900℃で2時間保持して焼成し、リチウムおよびニオブを含む酸化物である焼成物を得た。
得られた焼成物3gとφ10mmのジルコニアビーズを17個とを、ジルコニア製の45mlポッドに入れ、遊星ボールミル(レッチェ製P-2)を用いて回転数380rpmにて16時間粉砕工程を実施し、実施例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を得た。
【0029】
得られた実施例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に対して(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定、(IV)粒度分布測定、を行った。以下、それぞれの方法および結果について説明する。
【0030】
(I)元素分析
実施例1で得られた粉砕後のリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末試料を0.1g秤量した。当該粉末試料に少量の純水と、濃度46質量%のフッ化水素酸1mLとを添加し、ホットプレートで140~170℃程度で加熱して溶解した。当該溶解液を20~30℃程度の室温まで冷却した後、メスフラスコを用いて定容し、適宜希釈後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES、アジレント・テクノロジー(株)社製CP-720)を用いて希釈液のニオブ、リチウム、および、バナジウムの濃度を測定した。得られた測定値を表1に記載する。
【0031】
また、得られた測定値から、リチウムおよびニオブを含む酸化物中のニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]の値と、リチウムおよびニオブを含む酸化物中のニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]の値を算出した。算出した値を表1に記載する。
【0032】
(II)イオン伝導度評価
実施例1に係る粉砕後のリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末試料0.5gを、直径10mmの円筒容器中に投入し、プレス機によって20MPaでプレスして圧粉体を得た。得られた圧粉体に対し、大気雰囲気の下、温度50℃にて、ポテンショ/ガルバノスタット(ソーラトロン社製 1470E)と周波数応答分析器(ソーラトロン社製 1255B)を用い、交流インピーダンス法により100Hz~4MHzの範囲でイオン伝導度測定を行った。
【0033】
そして、当該測定値のCole-Coleプロット(複素インピーダンス平面プロット)から、実施例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末試料の抵抗値を求め、得られた抵抗値から実施例1に係るイオン伝導体粉末のイオン伝導度を算出した。算出されたイオン伝導度の値を表1に記載する。
【0034】
(III)X線回折パターン測定
実施例1に係る粉砕後のリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末に対して、下記測定条件にてX線回折パターン測定を実施した。
<XRD測定条件>
測定装置 :XRD-6100(島津製作所製)
管球 :Cu
管電圧 :40kv
管電流 :30mA
発散スリット:1.0°
散乱スリット:1.0°
受光スリット:0.3mm
ステップ幅 :0.02°/step
計測時間 :0.25sec
【0035】
実施例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末のX線回折パターン測定結果と、LiNbOの粉末回折データであるICDDのPDF No.00-020-0631とを照合した。
まず、PDF No.00-020-0631では、2θ=23.68°±0.5°付近に観察される(012)面の回折ピーク、2θ=32.67°付近に観察される(104)面の回折ピーク、および2θ=34.80°付近に観察される(110)面の回折ピークが観察される。
そして、実施例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末においては、LiNbOに帰属する(012)面の回折ピークが2θ=23.68°±0.5°に観察され、(104)面の回折ピークが、2θ=32.67°±0.5°に観察され、(110)面の回折ピークが2θ=34.80°±0.5°に観察された。
一方、バナジウムの酸化物ピークは確認されなかった。このことからニオブの一部を5価のバナジウムが置換し、リチウム、ニオブと共に酸化物を構成していると思われる。
図1に実施例1のX線回折パターンを示す。なお、図1には、後述する実施例2および比較例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末のX線回折パターンも示した。
【0036】
実施例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物粉末の結晶子径を求めるために、以下の条件にて、X線回折パターン測定を実施した。
装置名 :Ultima IV(株式会社リガク)
管球 :Cu
管電圧 :40kV
管電流 :40mA
発散スリット:1/2°
散乱スリット:8mm
受光スリット:解放
ステップ幅 :0.02°/step
スキャンスピード:0.666667
【0037】
X線回折パターン測定結果より結晶子径の計算には、リガク製粉末X線解析ソフトPDXL2を使用した。その際、バックグランドとピークのしきい値となるσカット値は3.0とした。
結晶子径の計算には、X線回折パターン測定において最も強度の強いピークである結晶面(012)のピークデータを使用した。
その結果、実施例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物粉末の結晶子径は、表1に記載するように10nm以上であり、結晶質であることがわかった。
【0038】
(IV)粒度分布測定
実施例1に係る粉砕後のリチウムおよびニオブを含む酸化物粉末に対し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 へロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS(窒素気流式の分散モジュール)))を使用して、分散圧5barで体積基準の粒度分布を測定し、体積基準の累積50%粒子径(D50)を測定した。測定結果を表1に記載する。
【0039】
(実施例2)
原料として水酸化リチウム・1水和物(和光純薬製、LiOH・HO)1.15g、ニオブ酸(HCスタルク製、Nb・nHO、Nb含有率40.6%)4.72g、五酸化バナジウム(和光純薬製、V)0.63gを秤量し、乳鉢にて混合して原料混合粉末を得た。
原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]は1.0であった。また、原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]は0.25であった。
原料混合粉末中のリチウム、ニオブおよびバナジウムの配合を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を得た。
【0040】
得られた実施例2に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に対して実施例1と同様に(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定、(IV)粒度分布測定、を行った。
(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定から算出した結晶子径、(IV)粒度分布測定、の測定結果を表1に示す。
また、(III)X線回折パターン測定において、実施例2に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末のX線回折パターンを実施例1と同様に、LiNbOの粉末回折データであるICDDのPDF No.00-020-0631と照合したところ、LiNbOに帰属する(012)面の回折ピークが2θ=23.68°±0.5°に観察され、(104)面の回折ピークが、2θ=32.67°±0.5°に観察され、(110)面の回折ピークが2θ=34.80°±0.5°に観察された。一方、バナジウムの酸化物ピークは観察されなかった。このことからニオブの一部を5価のバナジウムが置換し、リチウム、ニオブと共に酸化物を構成していると思われる。
【0041】
(比較例1)
原料として水酸化リチウム・1水和物(和光純薬製、LiOH・HO)0.93g、ニオブ酸(HCスタルク製、Nb・nHO、Nb含有率40.6%)5.07gを秤量し、五酸化バナジウム(和光純薬製、V)は添加せずに乳鉢にて混合して原料混合粉末を得た。
原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブに対するリチウムのモル比(Li/Nb)は1.0となった。
原料混合粉末中のリチウム、ニオブおよびバナジウムの配合を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を得た。
【0042】
得られた比較例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に対して実施例1と同様に(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定、(IV)粒度分布測定、を行った。但し、「(I)元素分析」においては、希釈液のニオブ、リチウムの濃度を測定した。
(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定から算出した結晶子径、(IV)粒度分布測定、の測定結果を表1に示す。
また、(III)X線回折パターン測定において、比較例1に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末のX線回折パターンを実施例1と同様に、LiNbOの粉末回折データであるICDDのPDF No.00-020-0631と照合したところ、LiNbOに帰属する(012)面の回折ピークが2θ=23.68°±0.5°に観察され、(104)面の回折ピークが、2θ=32.67°±0.5°に観察され、(110)面の回折ピークが2θ=34.80°±0.5°に観察された。
【0043】
(比較例2)
原料として水酸化リチウム・1水和物(和光純薬製、LiOH・HO)1.21g、ニオブ酸(HCスタルク製、Nb・nHO、Nb含有率40.6%)4.41g、五酸化バナジウム(和光純薬製、V)0.88gを秤量し、乳鉢にて混合して原料混合粉末を得た。
原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびバナジウムの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+V)]は1.0となった。また、原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびバナジウムの合計に対するバナジウムのモル比[V/(Nb+V)]は0.33となった。
原料混合粉末中のリチウム、ニオブおよびバナジウムの配合を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を得た。
【0044】
得られた比較例2に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に対して実施例1と同様に(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定、(IV)粒度分布測定、を行った。
(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定から算出した結晶子径、(IV)粒度分布測定、の測定結果を表1に示す。
また、(III)X線回折パターン測定において、比較例2に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末のX線回折パターンを実施例1と同様に、LiNbOの粉末回折データであるICDDのPDF No.00-020-0631と照合したところ、LiNbOに帰属する(012)面の回折ピークが2θ=23.68°±0.5°に観察され、(104)面の回折ピークが、2θ=32.67°±0.5°に観察され、(110)面の回折ピークが2θ=34.80°±0.5°に観察された。一方、バナジウムの酸化物ピークが観察された。
【0045】
(比較例3)
原料として水酸化リチウム・1水和物(和光純薬製、LiOH・HO)1.01g、ニオブ酸(HCスタルク製、Nb・nHO、Nb含有率40.6%)4.15g、五酸化バナジウムに替えて五酸化タンタル(和光純薬製 Ta)1.34gを秤量し、乳鉢にて混合して原料混合粉末を得た。
原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびタンタルの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+Ta)]は1.0となった。また、原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびタンタルの合計に対するタンタルのモル比[Ta/(Nb+Ta)]は0.25となった。
原料混合粉末中のリチウム、ニオブおよびタンタルの配合を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を得た。
【0046】
得られた比較例3に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に対して実施例1と同様に(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定、(IV)粒度分布測定、を行った。但し、「(I)元素分析」においては、希釈液のニオブ、リチウム、および、タンタルの濃度を測定した。
(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定から算出した結晶子径、(IV)粒度分布測定、の測定結果を表1に示す。
また、(III)X線回折パターン測定において、比較例3に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末のX線回折パターンを実施例1と同様に、LiNbOの粉末回折データであるICDDのPDF No.00-020-0631と照合したところ、LiNbOに帰属する(012)面の回折ピークが2θ=23.68°±0.5°に観察され、(104)面の回折ピークが、2θ=32.67°±0.5°に観察され、(110)面の回折ピークが2θ=34.80°±0.5°に観察された。一方、タンタルの酸化物ピークは観察されなかった。
【0047】
(比較例4)
原料として水酸化リチウム・1水和物(和光純薬製、LiOH・HO)1.02g、ニオブ酸(HCスタルク製、Nb・nHO、Nb含有率40.6%)5.23g、五酸化バナジウムに替えてチタン酸(富士チタン製、TiO・nH2O、チタン濃度52.5wt%)0.14gを秤量し、乳鉢にて混合して原料混合粉末を得た。
原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびチタンの合計に対するリチウムのモル比[Li/(Nb+Ti)]は1.0となった。また、原料添加量より算出した、原料混合粉末中のニオブおよびチタンの合計に対するチタンのモル比[Ti/(Nb+Ti)]は0.06となった。
原料混合粉末中のリチウム、ニオブおよびチタンの配合を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例4に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末を得た。
【0048】
得られた比較例4に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物に対して実施例1と同様に(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定、(IV)粒度分布測定、を行った。但し、「(I)元素分析」においては、希釈液のニオブ、リチウム、および、チタンの濃度を測定した。
(I)元素分析、(II)イオン伝導度評価、(III)X線回折パターン測定から算出した結晶子径、(IV)粒度分布測定、の測定結果を表1に示す。
また、(III)X線回折パターン測定において、比較例3に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物の粉末のX線回折パターンを実施例1と同様に、LiNbOの粉末回折データであるICDDのPDF No.00-020-0631と照合したところ、LiNbOに帰属する(012)面の回折ピークが2θ=23.68°±0.5°に観察され、(104)面の回折ピークが、2θ=32.67°±0.5°に観察され、(110)面の回折ピークが2θ=34.80°±0.5°に観察された。一方、チタンの酸化物ピークは観察されなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
(まとめ)
表1の結果より、本発明の実施例1、2に係る所定量のバナジウムを含んだリチウムおよびニオブを含む酸化物は、比較例1~4に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物よりも高いイオン伝導度を有することがわかった。即ち、本発明に係る所定量のバナジウムを含んだリチウムおよびニオブを含む酸化物は、従来の技術に係るリチウムおよびニオブを含む酸化物より、高いイオン伝導度を有するイオン伝導体であり、全固体リチウム二次電池の電極活物質を被覆する被覆層や、全固体リチウム二次電池の固体電解質として好適に用いることができ、全固体リチウム二次電池の性能向上に寄与しうるものである。
図1