(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034089
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】巻回体、パターン形成方法、積層体の製造方法、回路配線の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240306BHJP
B65H 75/00 20060101ALI20240306BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G03F7/004 512
B65H75/00 Z
H05K3/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138100
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】有年 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山田 仁
【テーマコード(参考)】
2H225
3F058
5E339
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC34
2H225AC36
2H225AC37
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC63
2H225AC64
2H225AC72
2H225AD02
2H225AD06
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2H225AD24
2H225AE08P
2H225AM10N
2H225AM13P
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2H225AM32P
2H225AM53N
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2H225AN02P
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2H225AN12P
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2H225BA32P
2H225CA13
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
2H225DA21
3F058AA03
3F058AB01
3F058BB11
3F058DA04
3F058DB05
5E339AB02
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5E339BC02
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5E339BE11
5E339CE12
5E339CF16
5E339CF17
5E339GG10
(57)【要約】
【課題】 巻回体から巻き出した感光性フィルムを用いてパターンを形成した際に、形成されるパターンにおいて厚みムラ及び欠陥が生じにくい、巻回体を提供する。また、上記巻回体を用いた、パターン形成方法、積層体の製造方法、及び回路配線の製造方法を提供する。
【解決手段】 円筒状の樹脂巻芯と、上記樹脂巻芯に巻回された感光性フィルムと、を有する巻回体であって、
上記樹脂巻芯の平均肉厚が3.0mm以上であり、
上記感光性フィルムが、支持フィルムと、感光性層を含む組成物層と、保護フィルムとを有する、巻回体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の樹脂巻芯と、前記樹脂巻芯に巻回された感光性フィルムと、を有する巻回体であって、
前記樹脂巻芯の平均肉厚が3.0mm以上であり、
前記感光性フィルムが、支持フィルムと、感光性層を含む組成物層と、保護フィルムとを有する、巻回体。
【請求項2】
前記樹脂巻芯の平均肉厚が、5.5mm以上である、請求項1に記載の巻回体。
【請求項3】
前記支持フィルムの幅方向における厚みムラが、5%以内である、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項4】
前記保護フィルムの幅方向における厚みムラが、5%以内である、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項5】
前記感光性層の厚みが70μm以下である、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項6】
前記感光性層の30℃での貯蔵弾性率が0.1~100MPaである、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項7】
前記樹脂巻芯が、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂を含む、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項8】
前記樹脂巻芯の内径が38~155mmである、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項9】
前記樹脂巻芯の肉厚の厚みムラが5%以内である、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の巻回体中の前記感光性フィルムを巻き出し、巻き出した前記感光性フィルムから前記保護フィルムを剥離して得られる積層体の前記支持フィルムとは反対側の表面を、基板に接触させて貼り合わせ、前記基板、前記組成物層、及び、前記支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
前記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された前記組成物層を現像してパターンを形成する現像工程と、
更に、前記貼合工程と前記露光工程との間、又は、前記露光工程と前記現像工程との間に、前記組成物層付き基板から前記支持フィルムを剥離する剥離工程と、を有する、パターン形成方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の巻回体中の前記感光性フィルムを巻き出し、巻き出した前記感光性フィルムから前記保護フィルムを剥離して得られる積層体の前記支持フィルムとは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせ、前記基板、前記導電層、前記組成物層、及び、前記支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
前記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された前記組成物層を現像して、前記導電層を保護する保護膜パターンを形成する現像工程と、
更に、前記貼合工程と前記露光工程との間、又は、前記露光工程と前記現像工程との間に、前記組成物層付き基板から前記支持フィルムを剥離する剥離工程と、を有する、積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の巻回体の前記感光性フィルムを巻き出し、巻き出した前記感光性フィルムから前記保護フィルムを剥離して得られる積層体の前記支持フィルムとは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させ、前記基板、前記導電層、前記組成物層、及び前記支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
前記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された前記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程と、
前記樹脂パターンが配置されていない領域における前記導電層をエッチング処理するエッチング工程、又は、前記樹脂パターンが配置されていない領域にめっきするめっき処理工程と、
前記レジストパターンを剥離するレジスト剥離工程と、
更に、前記めっき処理工程を有する場合は、前記レジスト剥離工程によって露出した前記導電層を除去し、前記基板上に導体パターンを形成する除去工程と、を有し、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、前記組成物層付き基板から前記支持フィルムを剥離する剥離工程と、を含む、回路配線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回体、パターン形成方法、積層体の製造方法、及び回路配線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、所定のパターンを得るための工程数が少ないことから、支持フィルム、感光性層、及び保護フィルムを備えた感光性フィルム(いわゆる転写フィルム)を用いたパターン形成方法が広く採用されている。
感光性フィルムを使用したパターン形成方法は、典型的には、任意の基板上に感光性層を転写して配置する工程、基板上に感光性層に対してマスクを介して露光処理を施す工程、露光後の感光性層に対して現像処理を施す工程を有する。
【0003】
例えば、特許文献1では、支持フィルムと、上記支持フィルム上に設けられた所定組成の感光性樹脂組成物層(感光性層)とを有する感光性エレメント(転写フィルム)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、感光性フィルムは、円筒状の巻芯にロール状に巻き取られた状態で流通されるのが一般的である。
今般、本発明者らは、特許文献1を参照して作製した感光性フィルムを円筒状の巻芯にロール状に巻き取ることで巻回体を作製し、巻回体から巻き出した感光性フィルムを転写フィルムとして用いてパターンを形成し、その性能について検討したところ、パターンの厚みに厚みムラが発生していることを明らかとした。また、巻芯の材質によっては、パターンに欠陥が発生する場合があることも明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、巻回体から巻き出した感光性フィルムを用いてパターンを形成した際に、形成されるパターンにおいて厚みムラ及び欠陥が生じにくい、巻回体を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記巻回体を用いた、パターン形成方法、積層体の製造方法、及び回路配線の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕 円筒状の樹脂巻芯と、上記樹脂巻芯に巻回された感光性フィルムと、を有する巻回体であって、
上記樹脂巻芯の平均肉厚が3.0mm以上であり、
上記感光性フィルムが、支持フィルムと、感光性層を含む組成物層と、保護フィルムとを有する、巻回体。
〔2〕 上記樹脂巻芯の平均肉厚が、5.5mm以上である、〔1〕に記載の巻回体。
〔3〕 上記支持フィルムの幅方向における厚みムラが、5%以内である、〔1〕又は〔2〕に記載の巻回体。
〔4〕 上記保護フィルムの幅方向における厚みムラが、5%以内である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の巻回体。
〔5〕 上記感光性層の厚みが70μm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の巻回体。
〔6〕 上記感光性層の30℃での貯蔵弾性率が0.1~100MPaである、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の巻回体。
〔7〕 上記樹脂巻芯が、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の巻回体。
〔8〕 上記樹脂巻芯の内径が38~155mmである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の巻回体。
〔9〕 上記樹脂巻芯の肉厚の厚みムラが5%以内である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の巻回体。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の巻回体中の上記感光性フィルムを巻き出し、巻き出した上記感光性フィルムから上記保護フィルムを剥離して得られる積層体の上記支持フィルムとは反対側の表面を、基板に接触させて貼り合わせ、上記基板、上記組成物層、及び、上記支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
上記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された上記組成物層を現像してパターンを形成する現像工程と、
更に、上記貼合工程と上記露光工程との間、又は、上記露光工程と上記現像工程との間に、上記組成物層付き基板から上記支持フィルムを剥離する剥離工程と、を有する、パターン形成方法。
〔12〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の巻回体中の上記感光性フィルムを巻き出し、巻き出した上記感光性フィルムから上記保護フィルムを剥離して得られる積層体の上記支持フィルムとは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせ、上記基板、上記導電層、上記組成物層、及び、上記支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
上記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された上記組成物層を現像して、上記導電層を保護する保護膜パターンを形成する現像工程と、
更に、上記貼合工程と上記露光工程との間、又は、上記露光工程と上記現像工程との間に、上記組成物層付き基板から上記支持フィルムを剥離する剥離工程と、を有する、積層体の製造方法。
〔13〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の巻回体の上記感光性フィルムを巻き出し、巻き出した上記感光性フィルムから上記保護フィルムを剥離して得られる積層体の上記支持フィルムとは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させ、上記基板、上記導電層、上記組成物層、及び上記支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
上記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された上記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程と、
上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記導電層をエッチング処理するエッチング工程、又は、上記樹脂パターンが配置されていない領域にめっきするめっき処理工程と、
上記レジストパターンを剥離するレジスト剥離工程と、
更に、上記めっき処理工程を有する場合は、上記レジスト剥離工程によって露出した上記導電層を除去し、上記基板上に導体パターンを形成する除去工程と、を有し、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、上記組成物層付き基板から上記支持フィルムを剥離する剥離工程と、を含む、回路配線の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻回体から巻き出した感光性フィルムを用いてパターンを形成した際に、形成されるパターンにおいて厚みムラ及び欠陥が生じにくい、巻回体を提供できる。
また、本発明は、上記巻回体を用いた、パターン形成方法、積層体の製造方法、及び回路配線の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の巻回体の作用機序を説明するための断面模式図である。
【
図2】本発明の巻回体の実施形態の一例を示す斜視図である。
【
図4】感光性フィルムの実施形態の一例を示す断面模式図である。
【
図5】評価方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本明細書において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
【0013】
本明細書において、「透明」とは、波長400~700nmの可視光の平均透過率が、80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましい。
本明細書において、透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、例えば、日立製作所株式会社製の分光光度計U-3310を用いて測定できる。
【0014】
本明細書において、特段の断りのない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、カラムとして、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、若しくは、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー株式会社製の商品名)、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)、検出器として示差屈折計、及び、標準物質としてポリスチレンを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により測定した標準物質のポリスチレンを用いて換算した値である。
本明細書において、特段の断りがない限り、高分子の構成単位の比は質量比である。
本明細書において、特段の断りがない限り、分子量分布がある化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
本明細書において、特段の断りがない限り、金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分光分析装置を用いて測定した値である。
本明細書において、特段の断りがない限り、屈折率は、波長550nmでエリプソメーターを用いて測定した値である。
本明細書において、特段の断りがない限り、色相は、色差計(CR-221、ミノルタ株式会社製)を用いて測定した値である。
【0015】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロキシ基」は、アクリロキシ基及びメタアクリロキシ基の両方を包含する概念である。
【0016】
なお、本明細書において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0017】
本明細書において「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。したがって、例えば、水溶性樹脂とは、上述の溶解度条件を満たす樹脂を意図する。
【0018】
本明細書において、組成物の「固形分」とは、組成物を用いて形成される組成物層を形成する成分を意味し、組成物が溶剤(有機溶剤、水等)を含む場合、溶剤を除いたすべての成分を意味する。また、組成物層を形成する成分であれば、液体状の成分も固形分とみなす。
【0019】
本明細書において、特段の断りがない限り、層の厚み(膜厚)は、0.5μm以上の厚みについては走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される平均厚みであり、0.5μm未満の厚みについては透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される平均厚みである。上記平均厚みは、ウルトラミクロトームを用いて測定対象の切片を作製し、任意の5点の厚みを測定して、それらを算術平均した平均厚みである。
【0020】
[巻回体]
本発明の巻回体の特徴点の一つとしては、樹脂巻芯の平均肉厚を3.0mm以上とした点が挙げられる。本発明の巻回体は、上記構成により感光性フィルムに発生する座屈現象が抑制され、引いては、巻回体から巻き出された感光性フィルムにより形成されるパターンの厚みムラが抑制されると推測している。
以下において、図面を参照しながら、本発明の巻回体の推測される作用機序について説明する。
【0021】
図1に示す巻回体1は、円筒状の樹脂巻芯3(以下、単に「巻芯3」ともいう。)と、巻芯3に巻回された感光性フィルム5とを有する。感光性フィルム5は長尺状フィルムであり、巻芯3に巻回されることでロールフィルムの形態となっている。
巻回体1において、感光性フィルム5の巻芯3への巻き始め端部5Aでは、感光性フィルム5の厚みの分の段差5Bが生じるため、巻芯3へ感光性フィルム5を巻き付けていくと段差5Bへの応力集中によって、巻芯3における巻き始め端部5Aの対応位置に微小な変形(凹み)が発生しやすい。巻芯3に凹みが発生すると、巻き上げた感光性フィルム5の一部が巻芯3の上記微小な凹みに入り込み、感光性フィルム5に座屈現象(フィルムが波打ち状・皺状となる現象)が生じ得る。この感光性フィルム5の座屈現象は、巻回体1において巻芯3の凹みと接触していた箇所だけでなく、巻芯3の上記凹みの直上に重畳されて巻き付けられた箇所にも生じるので、感光性フィルム5に周期的な厚みムラが発生する。このような巻回体1から巻き出した感光性フィルム5は、感光性層に厚みムラが発生しているため、形成されるパターンの厚みが不均一となり易い。
【0022】
これに対して、本発明の巻回体では、巻芯3の平均肉厚を3.0mm以上にして厚くしており、これにより、感光性フィルム5の段差5B等に起因した応力集中が生じても巻芯3に凹みが生じにくい。
【0023】
また、本発明の巻回体の他の特徴点としては、巻芯の材質が樹脂である点が挙げられる。巻芯の材質が紙である場合、紙は発塵し易いため、支持体フィルムを介した露光処理を経てパターンを形成する際、支持体フィルムに塵が付着して、形成されるパターンに欠陥が発生し易い。これに対して、本発明の巻回体は、巻芯の材質が樹脂であることから、支持体フィルムを介した露光処理を経てパターンを形成した場合においても、得られるパターンに欠陥が生じにくい。
【0024】
以下、本発明の巻回体の具体的な実施形態の一例について、図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の巻回体の一実施形態を示す斜視図である。
巻回体10は、円筒状の巻芯13と、巻芯13に巻回された感光性フィルム15とを有する。感光性フィルム15は長尺状フィルムであり、巻芯13に巻回されることでロールフィルムの形態となっている。感光性フィルム15は、支持フィルム、感光性層を含む組成物層、及び保護フィルムを備えた構成である(いずれも不図示)。また、巻芯13の材質は、樹脂である。
【0025】
巻芯13の形状は円筒状であり、平均肉厚は3mm以上である。
巻芯13の肉厚とは、内壁(中空壁)17と外壁19に囲まれた領域の厚みであって、(巻芯13の外壁19の直径DO-巻芯13の内壁(中空壁)17の直径DI)×1/2で求められる厚みを意図する。
【0026】
巻芯13の平均肉厚は、下記測定方法により求められる。
巻芯13を軸方向に10等分に割断することで得られる9点の各断面(断面は中空円形状である)において、断面部に形成される、内壁(中空壁)の輪郭線により形成される円の直径(内径)及び外壁の輪郭線により形成される円(外径)をレーザー変位計(例えば、マルチカラーレーザ同軸変位計CL-3000、KEYENCE社製)を用いて測定する。測定に際しては、9点の各断面毎に、断面部における中空円を30°毎に12等分した12点の各々において内径及び外径を測定し、各点での肉厚を求める。
そして、上述の手順により測定された108点(9点の断面×12点の測定点)での肉厚の相加平均値を求め、これを巻芯13の平均肉厚とする。
【0027】
巻芯13の平均肉厚は、3.0mm以上であり、本発明の効果がより優れる点で、5.5mm以上が好ましく、7.5mm以上がより好ましい。また、上限値としては、ハンドリング性がより優れる点で、10.5mm以下が好ましく、8.5mm以下がより好ましい。
【0028】
また、巻芯13の肉厚ムラとしては、本発明の効果がより優れる点で、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。なお、下限値としては、0%以上である。
巻芯13の肉厚ムラは、下記式(1)により求められる値である。
式(1): 巻芯13の肉厚ムラ(%)={(|上述の手順において108点で測定された肉厚の測定値と平均肉厚との差分の最大値|)/平均肉厚}×100
【0029】
また、感光性フィルム5を構成する支持フィルムは、製造の条件により幅方向に厚みムラを有している場合があり、この厚みムラも、感光性フィルム5の座屈現象の原因となり得る。このため、感光性フィルム15において、支持フィルムの幅方向における厚みムラは、5%以下であることが好ましい。
感光性フィルム15における支持フィルムの幅方向における厚みムラが所定値以下である場合、巻回体1において、支持フィルムの厚みが大きい箇所への応力集中によって巻芯3における対応位置に微小な変形(凹み)が生じにくくなり、感光性フィルム5の座屈現象が抑制されやすく、本発明の効果がより優れやすい。
【0030】
支持フィルムの幅方向における厚みムラは、以下の手順により求める。以下では、
図3を参照して支持フィルムの幅方向における厚みムラの測定手順を説明する。
図3は、支持フィルム21をフィルム表面の法線側からみた模式図である。
図3に示すように、支持フィルム21の幅方向(X方向)に100等分することで得られる99点のうちの中心寄りの91点(
図3中の測定箇所P)において、ミクロトームを用い、支持フィルム21の断面を得たうえで、SEM(走査電子顕微鏡)を使用して断面を観察して厚み(膜厚)を測定する。
次いで、得られた91点における厚みの相加平均値(「91点平均厚み」)、及び、得られた91点における厚みの測定値と91点平均厚みとの差分の最大値を求め、下記式(2)により支持フィルム21の幅方向における厚みムラを算出する。
式(2):支持フィルム21の幅方向における厚みムラ(%)={|91点平均厚みと測定厚みとの差分の最大値|/91点平均厚み}×100
上記測定を、支持フィルム21の長手方向(Y方向)の任意の10箇所(
図3中の測定箇所Q)にて各々実施し、各箇所にて得られた値の相加平均値を支持フィルムの幅方向における厚みムラ(%)とする。
【0031】
支持フィルムの幅方向の厚みムラとしては、本発明の効果がより優れる点で、3%以下がより好ましい。なお、下限値としては、0%以上である。
【0032】
以下、巻回体の各構成について説明する。
〔巻芯〕
巻芯13の材質は樹脂である。樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、及びポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
巻芯13を構成する樹脂としては、本発明の効果がより優れる点で、なかでも、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれるのが好ましい。
【0033】
巻芯13の内径DIの下限値としては、送り出し装置への設置がしやすい点で、38mm以上が好ましい。また、巻芯13の内径DIの上限値としては、巻回体10が太くなり過ぎず、ハンドリング性がより優れる点で、155mm以下が好ましい。
巻芯13の内径は、下記測定方法により求められる。
巻芯13を軸方向に10等分に割断することで得られる9点の各断面(断面は中空円形状である)において、断面部に形成される内壁の輪郭線により形成される円の直径(内径)をレーザー変位計(例えば、マルチカラーレーザ同軸変位計CL-3000、KEYENCE社製)を用いて測定する。測定に際しては、9点の各断面毎に、断面部における中空円を30°毎に12等分した12点の各々において内径を求める。そして、上述の手順により測定された108点(9点の断面×12点の測定点)での内径の相加平均値を求め、これを巻芯の内径とする。
【0034】
巻芯13の長さ(軸方向の長さ)は、感光性フィルムの幅と同じであっても、感光性フィルムを巻き取った際に両側に適度な張り出し部が確保できるように、感光性フィルムの幅よりも大きな長さであってもよい。
【0035】
〔感光性フィルム〕
感光性フィルム15は、支持フィルムと、感光性層を含む組成物層と、保護フィルムとを含む。
組成物層は、感光性層を含めば特に制限されない。
感光性層は、ネガ型感光性層であってもよいし、ポジ型感光性層であってもよいが、ネガ型感光性層であるのが好ましい。
また、組成物層は、単層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。
組成物層が感光性層以外の他の組成物層を含む場合、他の組成物層としては、熱可塑性樹脂層、中間層、及び屈折率調整層等が挙げられる。
【0036】
感光性フィルムの態様の一例を以下に示すが、これに制限されない。
(1)「支持フィルム/感光性層/屈折率調整層/保護フィルム」
(2)「支持フィルム/感光性層/保護フィルム」
(3)「支持フィルム/中間層/感光性層/保護フィルム」
(4)「支持フィルム/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性層/保護フィルム」
なお、上記各構成において、感光性層は、ネガ型感光性層であるのが好ましい。また、感光性層が着色樹脂層であることも好ましい。
【0037】
感光性フィルムは、後述するように、用途は限定されず、例えば配線保護膜用の感光性フィルムとして使用されてもよいし、めっき形成用の感光性フィルムとして使用されてもよいし、エッチングレジスト用の感光性フィルムとして使用されてもよい。
配線保護膜用の感光性フィルムとする場合、感光性フィルムは、例えば、上述した(1)又は(2)の構成であるのが好ましい。また、めっき形成用の感光性フィルム及びエッチングレジスト用の感光性フィルムとする場合、感光性フィルムは、例えば、上述した(2)~(4)の構成であるのが好ましい。
【0038】
以下において、具体的な実施形態の一例を挙げて、感光性フィルムについて説明する。
図4に感光性フィルムの断面の一例を示す。感光性フィルム20は、支持フィルム21と、感光性層23及び屈折率調整層25を含む組成物層27と、保護フィルム29とを、この順に有する。
また、
図4で示す感光性フィルム20は屈折率調整層25を配置した形態であるが、屈折率調整層25は、配置されなくてもよい。
以下において、感光性フィルムを構成する各要素について説明する。
【0039】
<<<支持フィルム>>>
感光性フィルムは、支持フィルムを有する。支持フィルムは、組成物層を支持する部材であり、最終的には剥離処理により除去される。
【0040】
支持フィルムは、単層構造及び複層構造のいずれであってもよい。
支持フィルムとしては、可撓性を有し、且つ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮、又は伸びを生じないフィルムが好ましい。
支持フィルムとしては、樹脂フィルムが好ましい。支持フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、及びポリカーボネートフィルム等が挙げられ、なかでも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、支持フィルムとして使用するフィルムには、シワ等の変形、及び、傷等がないことが好ましい。
【0041】
上述のとおり、支持フィルムの幅方向における厚みムラは、5%以下であることが好ましい。支持フィルムの幅方向における厚みムラは、例えば、樹脂シートの溶融押出工程において、押出ダイのスリットクリアランスを幅方向で適切に調整することで、所定数値以下に抑えられる。
以下では、支持フィルムの製造方法の一例について説明する。
支持フィルムの製造方法としては、押出成形工程を有する製造方法が挙げられる。また、上記工程に加えて、更に2軸延伸工程を有しているのも好ましい。
なお、支持フィルムが、支持フィルム本体と支持フィルム本体の表面に他の層を備えた複層構造の場合、支持フィルムの製造方法としては、押出成形工程と塗布工程と有する製造方法、及び、共押出成形工程を有する製造方法とするのが好ましく、更に2軸延伸工程を有する製造方法とするのがより好ましい。
押出成形法としては、例えば、押出機を用いて原料樹脂を押し出すことによって、原料樹脂を所望の形状に成形する方法が挙げられる。
共押出形成工程としては、例えば、押出機を用いて複数の原料樹脂を押し出すことによって、原料樹脂を多層構造を有する形状に成形する方法が挙げられる。
ここで、押出機における押出ダイについて、スリットクリアランスを幅方向の各点で均一になるように調整することで、支持フィルムの幅方向の厚みムラを低減できる。例えば、幅方向に等間隔で設置されたクリアランス調整用ボルトを締めたり開いたりすることで、各点のクリアランスが任意に調整できる。
【0042】
2軸延伸工程としては、縦延伸及び横延伸を同時に行う同時2軸延伸であってもよく、縦延伸及び横延伸を2段階又は2段階以上の多段階に分けて行う逐次2軸延伸であってもよい。逐次2軸延伸の形態としては、例えば、〔縦延伸及び横延伸の順〕、〔縦延伸、横延伸及び縦延伸の順〕、〔縦延伸、縦延伸及び横延伸の順〕、並びに〔横延伸及び縦延伸の順〕の形態が挙げられる。なかでも、縦延伸及び横延伸の順で行うことが好ましい。
【0043】
<<支持フィルムの製造方法の具体例>>
以下、支持フィルムの製造方法について具体的な態様を例に挙げて説明する。
支持フィルムの製造方法は、原料樹脂(例えば、ポリエステル)を溶融押出することにより、未延伸支持フィルムを形成する工程(以下「押出成形工程」ともいう。)と、上記支持フィルムを長手方向に延伸する工程(以下「縦延伸工程」ともいう。)と、上記長手方向に延伸された支持フィルムを幅方向に延伸する工程(以下「横延伸工程」ともいう。)と、を有することが好ましい。
【0044】
<押出成形工程>
押出成形工程においては、原料樹脂(例えば、ポリエステル)を溶融押出することにより、未延伸支持フィルムを形成する。
【0045】
溶融押出の方法としては、例えば、押出機を用いる方法が挙げられる。例えば、溶融押出は、1本又は2本以上のスクリュを備えた押出機を用いて、原料樹脂(例えば、ポリエステル)を融点以上の温度に加熱し、そして、スクリュを回転させて溶融混練しながら行われる。原料樹脂(例えば、ポリエステル)は、加熱及びスクリュによる混練により、押出機内で溶融して溶融体(メルト)となる。
【0046】
溶融体は、ギアポンプ及び濾過器等を通して、押出ダイ(以下「ダイ」ともいう。)から押し出される(JIS B8650:2006、a、押出成形機、番号134)。溶融体は、単層で押出されてもよく、多層で押出されてもよい。
【0047】
溶融押出においては、押出機内での熱分解(例えば、ポリエステルの加水分解)を抑制する観点から、押出機内を窒素置換することが好ましい。また、押出機は、混練温度が低く抑えられる点で2軸押出機であることが好ましい。
【0048】
押出ダイから押し出された溶融体は、冷却されることによってフィルム状に成形される。例えば、溶融体をキャスティングロールに接触させ、キャスティングロール上で溶融体を冷却及び固化することで、溶融体をフィルム状に成形できる。溶融体の冷却においては、更に、溶融体に風(冷風が好ましい)を当てることが好ましい。
【0049】
キャスティングロールの温度は、原料樹脂(例えば、ポリエステル)のガラス転移温度(Tg)に対して、-10℃超+30℃以下が好ましく、-7~+20℃がより好ましく、-5+10℃が更に好ましい。
【0050】
押出成形工程においてキャスティングロールを用いる場合、キャスティングロールと溶融体との密着性を上げることが好ましい。密着性を上げる方法としては、例えば、静電印加法、エアーナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、及びタッチロール法が挙げられる。
【0051】
キャスティングロール等を用いて冷却されたフィルム(未延伸フィルム)は、剥ぎ取りロール等の剥ぎ取り部材を用いて、キャスティングロール等の冷却部材から剥ぎ取られる。
【0052】
<2軸延伸工程>
2軸延伸工程は、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
2軸延伸工程としては、縦延伸工程及び横延伸工程を有することが好ましい。
【0053】
(縦延伸工程)
縦延伸工程においては、上記未延伸フィルムを長手方向に延伸(以下「縦延伸」ともいう。)を行うことが好ましい。
【0054】
縦延伸工程においては、縦延伸前に、未延伸フィルムを予熱することが好ましい。未延伸フィルムを予熱することで、上記フィルムを容易に縦延伸できる。
【0055】
予熱温度は、フィルムのTgに対して、-10~+60℃が好ましく、0~+50℃がより好ましい。具体的に、予熱温度は、60~100℃が好ましく、65~80℃がより好ましい。
【0056】
縦延伸は、例えば、未延伸フィルムを長手方向に搬送しながら、搬送方向に設置した2対以上のニップロール間で緊張を与えることによって行うことができる。例えば、搬送方向上流側に1対のニップロールA、及び、搬送方向下流側に1対のニップロールBを設置した場合、未延伸フィルムを搬送する際にニップロールBの回転速度を、ニップロールAの回転速度より速くすることで、未延伸フィルムが長手方向に延伸される。
【0057】
縦延伸工程における延伸倍率は、後述する横延伸工程における延伸倍率より小さいことが好ましい。縦延伸工程における延伸倍率は、2.0~5.0倍が好ましく、2.5~4.0倍がより好ましく、2.8~4.0倍が更に好ましい。
【0058】
縦延伸工程における加熱温度は、未延伸フィルムのTgに対して、-20~+50℃が好ましく、-10~+40℃より好ましく、0~+30℃が更に好ましい。具体的に、縦延伸工程における加熱温度は、70~120℃が好ましく、80~110℃がより好ましく、85~100℃が更に好ましい。
【0059】
未延伸フィルムを加熱する方法としては、未延伸フィルムに接触するニップロール等のロールを加熱する方法が挙げられる。ロールを加熱する方法としては、例えば、ロール内部にヒーター又は熱溶媒を流すことができる配管を設ける方法が挙げられる。上記の以外に、例えば、未延伸フィルムに温風を当てる方法、ヒーター等の熱源に接触させる方法、及び、熱源の近傍を通過させることによって未延伸フィルムを加熱する方法が挙げられる。
【0060】
縦延伸工程における延伸速度は、800~1500%/秒が好ましく、1000~1400%/秒より好ましく、1200~1400%/秒が更に好ましい。ここで、「延伸速度」とは、延伸前の長さd0から1秒間に延伸された長さΔdを、延伸前の長さd0で除した値を百分率で表した値である。
【0061】
(横延伸工程)
横延伸工程においては、上記長手方向に延伸されたフィルムを幅方向に延伸(以下「横延伸」ともいう。)する。
【0062】
横延伸工程においては、横延伸前に、長手方向に延伸されたフィルムを予熱することが好ましい。フィルムを予熱することで、フィルムの横延伸処理がし易くなる。
【0063】
予熱温度は、フィルムのTgに対して、-10~+60℃が好ましく、0~+50℃がより好ましい。具体的に、予熱温度は、80~120℃が好ましく、90~110℃がより好ましい。
【0064】
横延伸工程における延伸倍率は、上記縦延伸工程における延伸倍率より大きいことが好ましい。横延伸工程における延伸倍率は、3.0~6.0倍が好ましく、3.5~5.0倍がより好ましく、3.5~4.5倍が更に好ましい。
【0065】
縦延伸工程における延伸倍率と、横延伸工程における延伸倍率との積で表される面積倍率は、12.8~15.5倍が好ましく、13.5~15.2倍がより好ましく、14.0~15.0倍が更に好ましい。面積倍率が12.8倍以上であると、フィルムの幅方向における分子配向が良好になる。また、面積倍率が15.5倍以下であると、加熱処理に供された際に分子配向が緩和されにくい状態を維持しやすい。
【0066】
横延伸工程における加熱温度は、フィルムのTgに対して、-10~+80℃が好ましく、0~+70℃がより好ましく、0~+60℃が更に好ましい。具体的に、横延伸工程における加熱温度は、100~140℃が好ましく、110~135℃がより好ましく、115~130℃が更に好ましい。
【0067】
横延伸工程における延伸速度は、10~100%/秒が好ましく、10~70%/秒がより好ましく、20~60%/秒が更に好ましい。
【0068】
<加熱処理工程>
支持フィルムの製造方法は、更に、上記幅方向に延伸されたフィルムを加熱処理する工程(以下「加熱処理工程」ともいう。)を有することが好ましい。加熱処理工程としては、例えば、熱固定工程及び熱緩和工程が挙げられる。加熱処理工程は、熱固定工程及び熱緩和工程の少なくとも一方を有することが好ましく、熱固定工程及び熱緩和工程を有することがより好ましい。
【0069】
(熱固定工程)
熱固定工程においては、上記幅方向に延伸されたフィルムを加熱することで熱固定する。熱固定によって原料樹脂を結晶化させることができるため、上記フィルムの収縮を抑えることができる。
【0070】
熱固定工程における加熱温度は、190~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましく、210~230℃が更に好ましい。
【0071】
熱固定工程において、フィルム幅方向における最高到達膜面温度のばらつきは、0.5~10.0℃が好ましく、0.5~7.0℃がより好ましく、0.5~5.0℃が更に好ましく、0.5~4.0℃が特に好ましい。フィルム幅方向における最高到達膜面温度のばらつきを上記範囲内に調節することで、幅方向における結晶化度のばらつきを抑制できる。
【0072】
加熱方法としては、例えば、フィルムに熱風を当てる方法、フィルムを輻射加熱する方法が挙げられる。輻射加熱する方法において用いられる装置としては、例えば、赤外線ヒーターが挙げられる。
【0073】
熱固定工程における加熱時間は、5~50秒が好ましく、5~30秒がより好ましく、5~10秒が更に好ましい。
【0074】
(熱緩和工程)
熱緩和工程においては、上記幅方向に延伸されたフィルムを加熱することで熱緩和する。熱緩和によってフィルムの残留歪みを緩和できる。
【0075】
熱緩和工程における加熱温度は、熱固定工程における加熱温度より、5℃以上低い温度が好ましく、15℃以上低い温度がより好ましく、25℃以上低い温度が更に好ましく、30℃以上低い温度が特に好ましい。
【0076】
熱緩和工程における加熱温度の下限は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。
【0077】
加熱方法としては、例えば、フィルムに熱風を当てる方法、フィルムを輻射加熱する方法が挙げられる。輻射加熱する方法において用いられる装置としては、例えば、赤外線ヒーターが挙げられる。
【0078】
<冷却工程>
支持フィルムの製造方法は、更に、上記加熱処理されたフィルムを冷却する工程(以下「冷却工程」ともいう。)を有することが好ましい。
【0079】
冷却方法としては、例えば、フィルムに風(好ましくは冷風)を当てる方法、及び、温度調節可能な部材(例えば、温調ロール)にフィルムを接触させる方法が挙げられる。
【0080】
冷却工程における平均冷却速度は、500~4000℃/分が好ましく、1000~3500℃/分がより好ましく、1500~3000℃/分が更に好ましい。平均冷却速度を上記範囲内に調節することで、冷却工程のおける膜面温度を均一にできるため、幅方向における膨張率ムラを小さくできる。平均冷却速度は、非接触式温度計(例えば、放射温度計)を用いて求める。例えば、フィルムの表面温度が150℃になる地点と膜面温度が70℃になる地点との距離Z、及び、フィルムの搬送速度Sから、150℃から70℃までの冷却時間(Z/S)を求める。次に、(150-70)/(Z/S)を計算することにより、平均冷却速度が求められる。
【0081】
<<支持フィルムの製造方法の他の一例>>
支持フィルムが、支持フィルム本体と支持フィルム本体の表面に他の層を備えた複層構造の場合、支持フィルムの製造方法としては、以下の製造方法A又は製造方法Bであるのが好ましい。
製造方法A:
支持フィルムの製造方法Aは、原料樹脂(例えば、ポリエステル)を溶融押出することにより、未延伸支持フィルムを形成する工程(以下「押出成形工程」ともいう。)と、塗布工程と、上記支持フィルムを長手方向に延伸する工程(以下「縦延伸工程」ともいう。)と、上記長手方向に延伸された支持フィルムを幅方向に延伸する工程(以下「横延伸工程」ともいう。)と、を有することが好ましい。
製造方法B:
支持フィルムの製造方法Bは、支持フィルム本体及び他の層の原料樹脂を同時に溶融押出することにより、未延伸支持フィルムを形成する工程(以下「共押出成形工程」ともいう。)と、上記支持フィルムを長手方向に延伸する工程(縦延伸工程)と、上記長手方向に延伸された支持フィルムを幅方向に延伸する工程(横延伸工程)と、を有することが好ましい。
【0082】
製造方法Aは、支持フィルム本体の表面に塗布法により他の層を形成するための塗布工程を有する点以外は、上段部にて説明した製造方法と同じである。塗布工程としては、公知の手法を適用できる。なお、支持フィルム本体の表面に塗布法により他の層を形成するための塗布工程は、押出成形工程後に代えて2軸延伸工程後に実施することもできる。
【0083】
製造方法Bは、押出成形工程に代えて共押出成形工程を実施する点以外は、上段部にて説明した製造方法と同じである。なお、共押出成形工程は、公知の手法を適用できる。
【0084】
<<支持フィルムの好適態様>>
以下、支持フィルムの好適態様について説明する。
支持フィルムは、支持フィルムを介してパターン露光できるという点から、透明性が高いことが好ましい。支持フィルムの波長313nm、波長365nm、波長405nm、及び波長436nmでの透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。
透過率の好ましい値としては、例えば、87%、92%、98%等が挙げられる。
【0085】
支持フィルムを介するパターン露光時のパターン形成性及び支持フィルムの透明性の点から、支持フィルムのヘイズは小さい方が好ましい。具体的には、支持フィルムのヘイズ値は、2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下が更に好ましい。
支持フィルムを介するパターン露光時のパターン形成性及び支持フィルムの透明性の点から、支持フィルムに含まれる微粒子、異物、及び欠陥の数は、少ない方が好ましい。支持フィルムに含まれる微粒子、異物、及び欠陥の数が少ないほど、露光光の散乱が抑制される。支持フィルム中における直径1μm以上の微粒子、異物、及び欠陥の数は、50個/10mm2以下が好ましく、10個/10mm2以下がより好ましく、3個/10mm2以下が更に好ましく、0個/10mm2が特に好ましい。
【0086】
支持フィルムの厚みは特に制限されないが、5~200μmが好ましく、取り扱いやすさ及び汎用性の点から、5~150μmがより好ましく、5~50μmが更に好ましく、5~25μmが特に好ましい。
【0087】
支持フィルムと組成物層との密着性を向上させるために、支持フィルムの組成物層と接する側がUV照射、コロナ放電、プラズマ等により表面改質されていてもよい。
【0088】
UV照射により表面改質される場合、露光量としては、10mJ/cm2~2000mJ/cm2が好ましく、50~1000mJ/cm2がより好ましい。
【0089】
UV照射のための光源としては、150~450nm波長帯域の光を発する低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、及び発光ダイオード(LED)等が挙げられる。光照射量がこの範囲にできる限り、ランプ出力や照度は特に制限はない。
【0090】
支持フィルムとしては、例えば、膜厚16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、膜厚12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び、膜厚9μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0091】
支持フィルムは、リサイクル品であってもよい。リサイクル品としては、使用済みフィルム等を洗浄、チップ化し、これを材料にフィルム化したものが挙げられる。
【0092】
支持フィルムの好ましい形態としては、例えば、特開2014-085643号公報の段落[0017]~[0018]、特開2016-027363号公報の段落[0019]~[0026]、国際公開第2012/081680号の段落[0041]~[0057]、及び、国際公開第2018/179370号の段落[0029]~[0040]に記載が挙げられ、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0093】
ハンドリング性を付与する点で、支持フィルムの表面に、微小な粒子を含む層(滑剤層)を設けてもよい。滑剤層は支持フィルムの片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。滑剤層に含まれる粒子の直径は、0.05~0.8μmが好ましい。
また、滑剤層の膜厚は、0.05~1.0μmが好ましい。
【0094】
<<<組成物層>>>
感光性フィルムは、組成物層を有する。
組成物層は、感光性層を少なくとも含み、単層構成であっても複層構成であってもよい。組成物層が感光性層以外の他の層を含む場合、他の層としては上述の中間層、熱可塑性樹脂層、及び屈折率調整層等が挙げられる。
組成物層の膜厚の下限は、例えば0.5μm以上又は1.0μm以上とすることができ、組成物層の膜厚の上限は、例えば100μm以下又は20μm以下とすることができる。
【0095】
<<感光性層>>
感光性層を被転写体上に転写した後、露光及び現像を行うことにより、被転写体上にパターンを形成できる。
感光性層としては、ネガ型が好ましい。なお、ネガ型感光性層とは、露光により露光部の現像液に対する溶解性が低下する感光性層である。感光性層がネガ型感光性層である場合、形成されるパターンは硬化層に該当する。
【0096】
以下、感光性層に含まれ得る成分について詳述する。
【0097】
<バインダーポリマー>
感光性層は、バインダーポリマーを含んでいるのが好ましい。
バインダーポリマーとしては特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド、及びポリベンゾオキサゾール等が挙げられる。
【0098】
(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有する樹脂であり、(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂中、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、芳香環構造を有する構成単位(例えば、スチレン由来の構成単位、及び、ベンジル(メタ)アクリレート由来の構成単位等)、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位(例えば、トリシクロデカン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルナン環、イソボロン環、及びテトラヒドロジシクロペンタジエン環等の脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位)、酸基を有する構成単位(酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、及びリン酸基が挙げられる)、及び反応性基を有する構成単位等を含んでいるのも好ましい。
【0099】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果がより優れる点から、以下に示すポリマーが好ましい。なお、以下に示す各構成単位の含有比率(a~d)及び重量平均分子量Mw等は目的に応じて適宜変更できる。
【0100】
【0101】
上記ポリマー中の各構成単位の含有比率(a~d)としては、例えば、a:20~60質量%、b:10~50質量%、c:5.0~25質量%、d:10~50質量%が好ましい。
【0102】
【0103】
上記ポリマー中の各構成単位の含有比率(a~d)としては、例えば、a:20~60質量%、b:10~50質量%、c:5.0~25質量%、d:10~50質量%が好ましい。
【0104】
【0105】
上記ポリマー中の各構成単位の含有比率(a~d)としては、例えば、a:30~65質量%、b:1.0~20質量%、c:5.0~25質量%、d:10~50質量%が好ましい。
【0106】
【0107】
上記ポリマー中の各構成単位の含有比率(a~d)としては、例えば、a:1.0~20質量%、b:20~60質量%、c:5.0~30質量%、d:10~50質量%が好ましい。
【0108】
ポリイミドは、イミド構造を有する樹脂であり、環状イミド構造を有する樹脂が好ましい。また、ポリベンゾオキサゾールは、ベンゾオキサゾール環を有する樹脂である。
なお、感光性層は、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールの前駆体を含んでいてもよい。ポリイミド前駆体とは、加熱処理又は化学処理によってポリイミドに変換される樹脂である。また、ポリベンゾオキサゾール前駆体とは、加熱処理又は化学処理によってポリベンゾオキサゾールに変換される樹脂である。
ポリイミド及びその前駆体としては、例えば、特開2020-154205号公報の段落0086~0143、並びに、特開2022-054416号公報の段落0014~0033及び段落0067に記載されたポリイミド及びその前駆体を好適に使用できる。
また、ポリベンゾオキサゾール及びその前駆体としては、例えば、特開2020-154205号公報の段落0144~0156に記載されたポリベンゾオキサゾール及びその前駆体を好適に使用できる。
【0109】
また、バインダーポリマーとしては、国際公開第2022/045203号の段落[0044]~[0093]に記載された各種バインダーポリマーも好適に使用できる。
【0110】
バインダーポリマーとしては、アルカリ現像性に優れる点で、アルカリ可溶性樹脂であるもの好ましい。
【0111】
バインダーポリマーの酸価は、アルカリ現像性に優れる点で、10~200mgKOH/gが好ましく、60mg~200mgKOH/gがより好ましく、60~150mgKOH/gが更に好ましく、70~130mgKOH/gが特に好ましい。
なお、バインダーポリマーの酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って、測定される値である。
バインダーポリマーの分散度は、現像性の観点から、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0が更に好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
【0112】
感光性層は、バインダーポリマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
バインダーポリマーの含有量は、感光性層の全質量に対して、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、30~70質量%が更に好ましい。
【0113】
<重合性化合物>
感光性層は、重合性化合物を含んでいるのも好ましい。
重合性化合物は、分子中に重合性基を1つ以上有する化合物である。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基及びカチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。
【0114】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
なお、本明細書におけるエチレン性不飽和化合物は、上記バインダーポリマー以外の化合物であり、分子量5,000未満であることが好ましい。
重合性化合物としては、例えば、国際公開第2022/045203号の段落[0099]~[0128]、[0264]~[0273]に記載された重合性化合物も好適に使用できる。
【0115】
感光性層は、重合性化合物として、分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物(2官能以上のエチレン性不飽和化合物)を含むのが好ましい。
2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等(いずれも、2官能のエチレン性不飽和化合物に該当);ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及びグリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物(いずれも、3官能以上のエチレン性不飽和化合物に該当)等が挙げられる。なお、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及び、ヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0116】
感光性層は、重合性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むのも好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの官能基数は特に制限されず、例えば、2~20官能(好ましくは、6~20官能、より好ましくは8~20官能)が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンジ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)、共栄社化学(株)製のAH-600(商品名)、並びに、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、及びUX-5000(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0117】
感光性層は、重合性化合物として、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むのも好ましい。酸基としては、リン酸基、スルホ基、及びカルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、酸基を有する3~4官能のエチレン性不飽和化合物〔ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価:80~120mgKOH/g)〕、酸基を有する5~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの〔酸価:25~70mgKOH/g)〕等が挙げられる。
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物、又は、そのカルボン酸無水物であるのも好ましい。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-510(東亞合成(株)製)が挙げられる。
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落[0025]~[0030]に記載の酸基を有する重合性化合物も好適に使用できる。
【0118】
重合性化合物(特に、エチレン性不飽和化合物)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
感光性層が重合性化合物を含む場合、感光性層における重合性化合物(特に、エチレン性不飽和化合物)の含有量は、感光性層の全質量に対して、1~70質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましく、5~50質量%が特に好ましい。
【0119】
<重合開始剤>
感光性層は、重合開始剤を含んでいるのも好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては特に制限はなく、公知の光重合開始剤を使用できる。
光重合開始剤としては、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、国際公開第2022/045203号の段落[0129]~[0133]に記載された重合開始剤も好適に使用できる。
【0120】
重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用することもできる。
感光性層が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。また、その上限値としては、感光性層の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0121】
<複素環化合物>
感光性層は、複素環化合物を含んでいてもよい。
複素環化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
複素環化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び、硫黄原子が挙げられる。複素環化合物は、窒素原子、酸素原子、及び、硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
【0122】
複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、及びピリミジン化合物が挙げられる。
上記のなかでも、複素環化合物としては、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及びベンゾオキサゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及びベンゾオキサゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0123】
複素環化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2022/045203号の段落[0137]~[0156]に記載された複素環化合物が挙げられる。
【0124】
複素環化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
感光性層が複素環化合物を含む場合、複素環化合物の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.01~20.0質量%が好ましく、0.10~10.0質量%がより好ましく、0.30~8.0質量%が更に好ましく、0.50~5.0質量%が特に好ましい。
【0125】
<熱架橋性化合物>
感光性層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、エチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、エチレン性不飽和化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、及び、ブロックイソシアネート化合物が挙げられ、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0126】
熱架橋性化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2022/045203号の段落[0169]~[0174]に記載された熱架橋性化合物が挙げられる。
【0127】
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
感光性層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0128】
<界面活性剤>
感光性層は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0017]、及び、特開2009-237362号公報の段落[0060]~[0071]に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0129】
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が挙げられる。環境適性向上の観点から、界面活性剤はフッ素原子を含まないことが好ましい。界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、
EXP.MFS-330、EXP.MFS-578、EXP.MFS-578-2、EXP.MFS-579、EXP.MFS-586、EXP.MFS-587、EXP.MFS-628、EXP.MFS-631、EXP.MFS-603、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC株式会社製)、フロラード FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント 710FL、710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、681、683(以上、(株)NEOS製)、U-120E(ユニケム株式会社)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファック DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック DS-21が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
また、フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーも使用できる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく使用できる。
また、フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体も使用できる。メガファック RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0130】
フッ素系界面活性剤としては、環境適性向上の観点から、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物の代替材料に由来する界面活性剤であることが好ましい。
炭化水素系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、等が挙げられる。具体例としては、プルロニック(登録商標) L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック 304、701、704、901、904、150R1、HYDROPALAT WE 3323(以上、BASF社製)、ソルスパース 20000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニン D-1105、D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0131】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマー、側鎖に親水性基を有する構成単位及び側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位を有するポリマーが挙げられる。
中でも側鎖に親水性基を有する構成単位及び側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位を有するポリマーが好ましい。ポリマーはランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
側鎖に親水性基を有する構成単位としては、例えば、下記単量体に基づく構成単位が挙げられる。
【0132】
【0133】
R4は、水素原子又はメチル基を表す。R5は、水素原子又はメチル基を表す。nは、1~4の整数を表す。mは、1~100の整数を表す。
【0134】
側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位としては、下記単量体に基づく構成単位が挙げられる。
【0135】
【0136】
Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R1は、水素原子又はメチル基を表す。L1は、2価の有機基又は単結合を表す。
【0137】
側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位としては、下記単量体に基づく構成単位が挙げられる。
【0138】
【0139】
R1は、水素原子又はメチル基を表す。R2は、炭素数が1~10のアルキレン基を表す。R3は、炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、5~50の整数を表す。
【0140】
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、EXP.S-309-2、EXP.S-315、EXP.S-503-2、EXP.S-505-2(以上、DIC株式会社製);DOWSIL 8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KF-6001、KF-6002、KP-101KP-103、KP-104、KP-105、KP-106、KP-109、KP-109、KP-112、KP-120、KP-121、KP-124、KP-125、KP-301、KP-306、KP-310、KP-322、KP-323、KP-327、KP-341、KP-368、KP-369、KP-611、KP-620、KP-621、KP-626、KP-652(以上、信越シリコーン株式会社製);F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製);BYK300、BYK306、BYK307、BYK310、BYK320、BYK323、BYK325、BYK330、BYK313、BYK315N、BYK331、BYK333、BYK345、BYK347、BYK348、BYK349、BYK370、BYK377、BYK378、BYK323(以上、ビックケミー社製);等が挙げられる。
【0141】
また、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0142】
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
感光性層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.01~3.0質量%が好ましく、0.01~1.0質量%がより好ましく、0.05~0.80質量%が更に好ましい。
【0143】
<重合禁止剤>
感光性層は、フェノチアジン等の重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤の具体例としては、例えば、国際公開第2022/045203号の段落[0182]に記載された重合禁止剤が挙げられる。
【0144】
重合禁止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
感光性層が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.001~5.0質量%が好ましく、0.01~3.0質量%がより好ましく、0.02~2.0質量%が更に好ましい。感光性層が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量は、重合性化合物の全質量に対しては、0.005~5.0質量%が好ましく、0.01~3.0質量%がより好ましく、0.01~1.0質量%が更に好ましい。
【0145】
<その他添加剤>
感光性層は、上記各種成分以外に、その他添加剤を含んでいてもよい。
その他添加剤としては、例えば、脂肪族チオール化合物、水素供与性化合物、溶媒、不純物、可塑剤、増感剤、及びアルコキシシラン化合物が挙げられる。
脂肪族チオール化合物及び水素供与性化合物としては、例えば、国際公開第2022/045203号の段落[0158]~[0168]及び[0184]~[0189]に記載された重合禁止剤が挙げられる。
可塑剤、増感剤、及びアルコキシシラン化合物としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0097~0119が挙げられる。
【0146】
感光性層は、不純物を含んでいてもよい。
不純物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン、及びこれらのイオンが挙げられる。ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
【0147】
不純物の含有量は、感光性層の全質量に対して、80質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましく、2質量ppm以下が更に好ましい。下限値としては、感光性層の全質量に対して、0質量ppb以上の場合が多く、1質量ppb以上であっても、0.1質量ppm以上であってもよい。
【0148】
不純物の含有量を調整する方法としては、例えば、感光性層に含まれ得る各種成分の原料として不純物の含有量が少ない原料を用いる方法、感光性層に含まれ得る各種成分を精製して使用する方法、及び感光性層の形成時に不純物の混入を防ぐ方法が挙げられる。
【0149】
不純物の含有量は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
【0150】
感光性層中、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。具体的には、これら化合物の含有量は、感光性層の全質量に対して、それぞれ、100質量ppm以下が好ましく、20質量ppm以下がより好ましく、4質量ppm以下が更に好ましい。下限値としては、感光性層の全質量に対して、それぞれ、10質量ppb以上であってもよく、100質量ppb以上であってもよい。
これらの化合物は、上記不純物と同様の方法により含有量を調整できる。また、これらの化合物は、公知の測定法により定量できる。
【0151】
<感光性層の30℃での貯蔵弾性率>
感光性層の30℃での貯蔵弾性率としては、0.1~100MPaが好ましく、3.6~100MPaがより好ましい。
感光性層の30℃での貯蔵弾性率が上記数値範囲である場合、巻回体において感光性フィルムが座屈しても、感光性層自体は流動性が小さいことから厚みムラが生じにくい。この結果として、本発明の効果がより優れやすい。
【0152】
感光性層の30℃での貯蔵弾性率は、例えば、以下の手順により求めることができる。
(測定サンプルの作製方法)
まず、感光性フィルムから保護フィルムを剥離する。保護フィルムを剥離して得られるフィルムを、保護フィルムを剥離したことで露出した組成物層表面同士が対向するように折り畳んで組成物層表面同士を貼り合わせることで、支持フィルム/組成物層(2層積層)/支持フィルムの積層体1を作製する。次いで、上記積層体1における一方の支持フィルムを剥離する。そして、支持フィルムが剥離された積層体1を、支持フィルムを剥離したことで露出した組成物層(2層積層)同士が対向するように折り畳んで組成物層(2層積層)同士を貼り合せることで、支持フィルム/組成物層(4層積層)/支持フィルムの積層体2を作製する。更に、上記積層体2における一方の支持フィルムを剥離する。そして、支持フィルムが剥離された積層体2を、支持フィルムを剥離したことで露出した組成物層(4層積層)同士が対向するように折り畳んで組成物層(4層積層)同士を貼り合せることで、支持フィルム/組成物層(8層積層)/支持フィルムの積層体3を作製する。同様の手順で組成物層の貼り合わせを繰り返すことで、支持フィルム/所定厚みの組成物層/支持フィルムの積層体Nを作製する。そして、積層体Nから支持フィルムを除去することにより、所定厚みの組成物層からなる測定サンプルが作製される。
ここで、組成物層が、感光性層以外の他の層を備え、他の層が、例えば、熱可塑性樹脂層や中間層等の除去可能な層である場合、サンプル作製に際して、これらの他の層を除去する。除去方法としては、例えば、溶剤除去やテープ剥離除去等の手段が挙げられる。また、組成物層が、感光性層以外の他の層を備え、他の層が、例えば、屈折率調整層等の除去が困難な層である場合、他の層を含めた状態で作製された測定サンプルを用いる。
測定サンプルとなる組成物層の厚みは、使用する動的粘弾性測定装置に適した厚み(通常、0.1~1.0mm)が選択され得る。例えば、レオメータDHR-2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて貯蔵弾性率を測定する場合、ペルチェプレートのGapである0.5mmの厚みとすればよい。
【0153】
<感光性層の厚み>
感光性層の厚みの下限値としては、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、3.0μm以上が更に好ましく、5.0μm以上が特に好ましい。感光性層の厚みの上限値としては、巻芯への巻き始めの端部における段差が小さく、本発明の効果がより優れる点で、80μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、40μm以下が更により好ましく、25μm以下が更に好ましく、20μm以下が特に好ましく、15μm以下が最も好ましい。
【0154】
<<その他の層>>
組成物層は、感光性層以外のその他の層を含んでいてもよい。
その他の層としては、上述のとおり、例えば、屈折率調整層、中間層、熱可塑性樹脂層等が挙げられる。
屈折率調整層としては、国際公開第2022/045203号の段落[0214]~[0222]と同様の態様が挙げられる。中間層としては、国際公開第2022/045203号の段落[0371]~[0378]と同様の態様が挙げられる。熱可塑性樹脂層としては、国際公開第2022/045203号の段落[0343]~[0370]と同様の態様が挙げられる。
【0155】
<<<保護フィルム>>>
感光性フィルムは、保護フィルムを有する。
保護フィルムとしては、耐熱性及び耐溶剤性を有する樹脂フィルムを使用できる。
保護フィルムの具体例としては、例えば、ポリプロピレンフィルム及びポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、並びに、ポリスチレンフィルム等が挙げられる。
また、保護フィルムとして上述の支持フィルムと同じ材料で構成された樹脂フィルムを用いてもよい。
なかでも、保護フィルムとしては、ポリオレフィンフィルムが好ましく、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルムがより好ましく、ポリエチレンフィルムが更に好ましい。
【0156】
保護フィルムの厚みは、1~100μmが好ましく、5~50μmがより好ましく、5~40μmが更に好ましく、5~30μmが特に好ましく、5~25μmが最も好ましい。
保護フィルムの厚みは、機械的強度に優れる点で、1μm以上が好ましく、比較的安価となる点で、100μm以下が好ましい。
【0157】
保護フィルムの幅方向における厚みムラは、5%以下であるのが好ましい。保護フィルムの幅方向における厚みムラが5%以下である場合、巻芯に対して保護フィルムの厚みムラに起因した圧力がかかりにくいため巻芯の凹みが発生しにくく、この結果として本発明の効果がより優れやすい。
保護フィルムの幅方向における厚みムラは、以下の手順により求める。
保護フィルムの幅方向に100等分することで得られる99点のうちの中心寄りの91点において、ミクロトームを用い、保護フィルムの断面を得たうえで、SEM(走査電子顕微鏡を使用して断面を観察することで厚み(膜厚)を測定する。
次いで、得られた91点における厚みの相加平均値(「91点平均厚み」)、及び、得られた91点における厚みの測定値と91点平均厚みとの差分の最大値を求め、下記式(2)により保護フィルムの幅方向における厚みムラを算出する。
式(2):保護フィルムの幅方向における厚みムラ(%)={|91点平均厚みと測定厚みとの差分の最大値|/91点平均厚み}×100
上記測定を、保護フィルムの長手方向の任意の10箇所にて各々実施し、各箇所にて得られた値の相加平均値を保護フィルムの幅方向における厚みムラ(%)とする。
【0158】
なお、保護フィルムの幅方向における厚みムラ(%)の測定は、上段部にて説明した支持フィルムの幅方向における厚みムラ(%)の測定と同様の方法で実施できる。
また、保護フィルムは、段部にて説明した支持フィルムの製造方法と同様の方法で製造可能であり、また、保護フィルムの厚みムラの抑制方法についても、上段部にて説明した支持フィルムの厚みムラの抑制方法と同じである。
【0159】
保護フィルムの幅方向の厚みムラとしては、本発明の効果がより優れる点で、3%以下がより好ましい。なお、下限値としては、0%以上である。
【0160】
また、保護フィルムにおいては、保護フィルム中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が、5個/m2以下であることが好ましい。
なお、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸及びキャスティング法等の方法によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、及び酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0161】
保護フィルムに含まれる直径3μm以上の粒子の数は、30個/mm2以下が好ましく、10個/mm2以下がより好ましく、5個/mm2以下が更に好ましい。
これにより、保護フィルムに含まれる粒子に起因する凹凸が感光性層又は導電層に転写されることにより生じる欠陥を抑制することができる。
【0162】
巻き取り性を付与する点から、保護フィルムの組成物層と接する面とは反対側の表面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が更に好ましい。一方で、0.50μm未満が好ましく、0.40μm以下がより好ましく、0.30μm以下が更に好ましい。
【0163】
保護フィルムは、リサイクル品であってもよい。リサイクル品としては、使用済みフィルム等を洗浄、チップ化し、これを材料にフィルム化したものが挙げられる。
【0164】
保護フィルムは、転写時の欠陥抑制の点から、組成物層と接する面の表面粗さRa、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が更に好ましい。一方で、0.50μm未満が好ましく、0.40μm以下がより好ましく、0.30μm以下が更に好ましい。
【0165】
<<<感光性フィルムの製造方法>>>
感光性フィルムの製造方法は、公知の製造方法を適用できる。
感光性フィルムの製造方法は、支持体フィルム上に、組成物層を形成した後、組成物層上に保護フィルムを圧着する方法が挙げられる。
組成物層の形成方法としては公知の方法が使用できる。
組成物層が感光性層を含む場合、感光性層の形成方法としては、感光性層形成用組成物を塗布して乾燥する方法が挙げられる。
また、組成物層が中間層及び熱可塑性樹脂層を有する場合、これらの層形成方法としては、感光性層の形成方法と同様に塗布液を使用した方法が適用できる。中間層及び熱可塑性樹脂層の形成方法としては、例えば、国際公開第2021/033451号の段落0133~0136及び段落0143~0144を参照できる。
感光性フィルムの製造後、感光性フィルムを直ちに巻芯に巻き取り、本発明の巻回体を構成してもよい。
【0166】
(感光性層の形成方法)
感光性層形成用組成物は、感光性層に含まれ得る各種成分と溶媒とを混合することで形成できる。
感光性層形成用組成物に含まれ得る各種成分としては、例えば、上述した感光性層に含まれ得る各種成分と同義であり、好適態様も同じである。
ただし、感光性層形成用組成物中における各種成分の含有量の好適な数値範囲は、上記「感光性層の全質量に対する各種成分の含有量(質量%)」を「感光性層形成用組成物の全固形分に対する各種成分の含有量(質量%)」に読み替えた好適範囲と同じである。具体的には、「樹脂の含有量は、感光性層の全質量に対して、5.0質量%以上が好ましく」との記載は、「樹脂の含有量は、感光性層形成用組成物の全固形分に対して、5.0質量%以上が好ましく」と読み替える。
【0167】
溶媒としては、感光性層形成用組成物に含まれ得る各種成分を溶解又は分散可能であれば、特に制限されない。
溶媒としては、例えば、水、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(例えば、メタノール及びエタノール等)、ケトン溶剤(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(例えば、トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等)、環状エーテル溶剤(例えば、テトラヒドロフラン等)、エステル溶剤(例えば、酢酸nプロピル等)、アミド溶剤、ラクトン溶剤、及びこれらのうち2種以上を含む溶媒が挙げられる。
溶媒は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
溶媒の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50~1900質量部が好ましく、100~1200質量部がより好ましく、100~900質量部が更に好ましい。
【0168】
塗布方法としては、例えば、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布が挙げられる。
【0169】
〔巻回体の構成〕
巻回体において、巻芯に巻回される感光性フィルムの長さ(巻き長)としては特に制限されないが、例えば、50m以上が好ましく、500m以上がより好ましく、1,000m以上が更に好ましい。なお、上限値としては、例えば、10,000m以下が好ましい。また、巻芯に巻回される感光性フィルムの幅(巻き幅)としては特に制限されないが、例えば、100mm以上とすることができ、300mm以上とすることもできる。なお、上限値としては、例えば、3,200mm以下とすることができ、1,200mm以下とすることもできる。なお、巻回体から巻き出された感光性フィルムは、使用用途に応じた幅及び長さにスリットされて使用に供される。
【0170】
巻回体において、巻芯に巻回される感光性フィルムのフィルムロールの厚み(
図2中のD
R)としては、特に制限されないが、例えば、100mm以上が好ましく、200mm以上がより好ましく、300mm以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、2,000mm以下が好ましい。
【0171】
巻芯にかかる内部圧力としては、運搬時の巻ズレ抑制、エッジフューズの抑制、及びフィルム形状の保存安定性等の観点から、0.1~0.5MPaが好ましく、0.15~0.45MPaがより好ましく、0.2~0.4MPaが更に好ましい。巻芯にかかる内部圧力は、圧力測定フィルム(例えば富士フイルムビジネスサプライ株式会社製のプレスケール)により測定できる。
感光性フィルムの巻き張力としては、巻き崩れが抑制される点で、50N/m以上が好ましく、60N/m以上がより好ましく、70N/m以上が更に好ましい。また、その上限値としては、感光性フィルムの巻き始め端部における段差での圧力が小さくなり、感光性フィルムの座屈現象が抑制し易い点で、180N/m以下が好ましく、150N/m以下がより好ましく、120N/m以下が更に好ましい。感光性フィルムの巻き張力は、市販のテンションメーターにより測定できる。
【0172】
<巻回体の製造方法>
巻回体の製造方法としては特に制限されないが、例えば、感光性フィルムを巻き取る巻芯を回転させる回転駆動装置と、巻芯に巻き取られる感光性フィルムの巻取り張力を調整する巻取張力調整装置とを備えた巻取装置を使用した方法が挙げられる。
感光性フィルムを巻芯に巻き取る際のフィルムの搬送速度(ライン速度)としては、特に制限されないが、例えば、40~200m/sが好ましく、60~150m/sがより好ましく、80~120m/sが更に好ましい。
また、感光性フィルムを巻芯に巻き取る工程を実施する環境の温度としては、20~27℃が好ましく、21~26℃がより好ましく、22~24℃が更に好ましい。また、湿度としては、40~60%RHが好ましく、42~58%RHがより好ましく、45~55%RHが更に好ましい。
上記手順により、感光性フィルムは、支持体側の表面と巻芯とが対向するように巻芯に巻回されてロールフィルムの形態となり、巻回体が構成されることが好ましい。
なお、感光性フィルムを巻芯に巻回するに際して、感光性フィルムの巻き始めの端部と巻芯とを接触させる方法としては特に制限されず、例えば、両面粘着テープで貼り付けたり、糊で貼り付けたりすることができる。また、感光性フィルムの貼り付ける端面を、巻芯の軸方向と平行に貼り付けることができ、斜めに貼り付けることもできる。
【0173】
製造された巻回体のラミネートに供されるまでの間の保管環境としては、特に制限されないが、5℃以下の環境(冷蔵環境又は冷凍環境)が好ましく、-30~5℃程度の環境(冷蔵環境又は冷凍環境)がより好ましい。
【0174】
本発明の巻回体には、感光性フィルムのロールの軸方向における両端のうちの少なくとも一方に、ロール端面保護部材が配置されてもよい。ロール端面保護部材は、例えば、基材と粘着層とを備えた構成であり、粘着層と感光性フィルムのロールとが対向するように、感光性フィルムのロールの端面に配置される。巻回体がロール端面保護部材を備える場合、エッジフューズの抑制、及び水の侵入が抑制され得る。
上述したように、本発明の巻回体が、巻芯の長さを感光性フィルムの幅よりも長く、感光性フィルムのロールの両端に張り出し部を有する構成の場合においては、張り出し部に挿通するようにロール端面保護部材を配置してもよい。なお、張り出し部に挿通するように配置されるロール端面保護部材としては、円形状のリング状であるのが好ましい。
ロール端面保護部材の基材としては、発塵しない樹脂が好ましく、例えば、ポリエステル及びポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
ロール端面保護部材としては、例えば、特開2017-071445号公報に記載された構成であるのも好ましい。
【0175】
本発明の巻回体は、コアホルダーを有していてもよい。コアホルダーは、巻回体を軸方向の両端で支持する部材である。
コアホルダーの材質としては、輸送時の振動から巻回体を保護する緩衝性能、積み重ねた際に上部の荷重を支える強度の観点で、樹脂であるのが好ましい。コアホルダーの材質の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビーズ法発泡ポリエチレン、及びビーズ法発泡ポリプロピレン等が挙げられる。
【0176】
コアホルダーの構造は特に制限されず、公知の構造を適用できる。
巻回体がその両端部に張り出し部を有する場合には、張り出し部を支持する支持部を備えたコアホルダーを使用できる。このようなコアホルダーとしては、巻回体の両端部を支持する一対の支持部材を備え、支持部材における巻回体の張り出し部を支持する支持部の位置よりも上端が切り欠かれた(開放された)切り欠きを有する構造のものが挙げられる。
【0177】
また、コアホルダーの構造としては上記構造に制限されない。コアフォルダーとしては、例えば、巻回体の巻芯の中空部に挿入される挿入部を備えたコアホルダーも使用できる。このようなコアホルダ-の構造としては、具体的には、例えば、平板状に形成された支持板部と、上記支持板部から突出して配置され、巻回体の巻芯の中空部に挿入される挿入部とを備えた構造が挙げられる。上記構造において、挿入部は、少なくとも一部が切り欠かれた形状であるのが好ましく、支持板部は、少なくとも挿入部の上記切り欠きに対応する部分(挿入部の切り欠きに接続される部分)が切りかかれていることが好ましい。
なお、挿入部の切り欠きの位置は特に制限されず、挿入部を巻回体の巻き芯に挿入した状態において、巻回体の上側及び下側のいずれに位置していてもよいが、巻回体の上側に位置しているのが好ましい。また、支持板部の切り欠きの位置は、挿入部の上側及び下側のいずれに位置していてもよいが、挿入部の上側に位置しているのが好ましい。
コアホルダーとしては、例えば、特開2013-100133号公報に記載された支持体も好適に使用できる。
【0178】
本発明の巻回体は、包装材に収容されてもよい。
包装材は特に制限されず、公知の構造を適用できる。
包装材としては、可撓性であり、平膜、袋、又はチューブであるのが好ましい。
包装材の材質としては、例えば、樹脂、金属、及び、紙等が例示される。樹脂の具体例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンセルローストリアセテート、及び、塩化ビニルと塩化ビニリデンとの共重合体等が挙げられる。また、金属の具体例としては、鉄、ステンレス、及びアルミニウム等の非鉄金属等が挙げられる。
包装材としては、樹脂フィルム又はアルミニウム蒸着フィルムが好ましい。また、包装材は、内部又は表面に無機粉末等の吸水能又は吸湿能を有する物質(例えば、シリカゲル、ゼオライト、モンモリロナイト等)を有していてもよい。
包装材は、巻回体の感光を抑制する点で、紫外線吸収性を有しているのも好ましい。紫外線吸収性を有する包装材としては、包装材の内部又は表面に紫外線吸収剤を含んでいるものや黒色包装材が挙げられる。
包装材は、ゴミや異物を抑制する観点から、帯電防止処理されていることが好ましい。
【0179】
本発明の巻回体は、梱包箱に収容されてもよい。
梱包箱は特に制限されず、公知の構造を適用できる。以下、梱包箱の実施形態の一例を示す。
梱包箱は、巻回体の軸方向がX軸方向に配置されるように巻回体を収納するものであり、X軸方向に長い直方体に形成されている。梱包箱は、X方向の両端部において対向配置される一対の短側板と、Y方向の両端部において対向配置される一対の長側板と、一対の短側板及び一対の長側板に隣接する底板とを備えている。一対の長側板は、底板に固定的に接続されており、一対の短側板は、開閉可能となっていることが好ましい。また、巻回体が一対の長側板、底板、及び蓋に接触しないように、梱包箱の内寸法が、巻回体の外寸法よりも大きくなっていることが好ましい。
巻回体を形成する素材としては、軽量、高強度、及び成形性の観点から、紙製のダンボール、プラスチック製のダンボールが好ましい。
【0180】
本発明の巻回体を梱包箱へ収容する際、コアフォルダーで支持された状態の巻回体を梱包箱に収容されてもよいし、コアフォルダーで支持されていない状態の巻回体を梱包箱に収容してもよい。
【0181】
また、梱包箱は、巻回体の軸方向の両端を支持可能なように、一対の短側板において少なくとも一部が切りかかれた(開放された)形状を有しているのも好ましい。
短側板の具体的な構造の一例としては、短側板が、短側板の中央部に巻回体の張り出し部が載置される載置部を有し、載置部の上側が切り欠かれた構造が挙げられる。
また、短側板の具体的な構造の他の一例としては、短側板が、短側板から突出して配置され、巻回体の巻芯の中空部に挿入される挿入部を有する構造が挙げられる。なお、上記構造において、挿入部は、少なくとも一部が切り欠かれた形状であるのが好ましく、短波板は、少なくとも挿入部の上記切り欠きに対応する部分(挿入部の切り欠きに接続される部分)が切りかかれていることが好ましい。
【0182】
本発明の巻回体が含む感光性フィルムは、種々の用途に適用できる。
本発明の巻回体が含む感光性フィルムの適用用途としては、例えば、電極保護膜、絶縁膜、平坦化膜、オーバーコート膜、ハードコート膜、パッシベーション膜、隔壁、スペーサ、マイクロレンズ、光学フィルター、反射防止膜、エッチングレジスト、及びめっき部材等が挙げられる。より具体的な例としては、タッチパネル電極の保護膜又は絶縁膜、プリント配線板の保護膜又は絶縁膜、TFT基板の保護膜又は絶縁膜、カラーフィルター、カラーフィルター用オーバーコート膜、及び、配線形成のためのエッチングレジスト等が挙げられる。
【0183】
[パターン形成方法]
本発明の巻回体が含む感光性フィルムを用いることにより、被転写体へ組成物層を転写でき、所望のパターンを形成できる。以下、本発明の巻回体が含む感光性フィルムを用いたパターン形成方法について説明する。
本発明の巻回体が含む感光性フィルムを使用したパターン形成方法としては、
巻回体中の感光性フィルムを巻き出し、巻き出した感光性フィルムから保護フィルムを剥離して得られる積層体の支持フィルムとは反対側の表面を、基板に接触させて貼り合わせ、基板、組成物層、及び、支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された組成物層を現像してパターンを形成する現像工程と、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、組成物層付き基板から支持フィルムを剥離する剥離工程と、を有する。
以下、上記工程の手順について詳述する。
【0184】
〔貼合工程〕
貼合工程は、巻回体中の感光性フィルムを巻き出し、巻き出した感光性フィルムから保護フィルムを剥離して得られる積層体の支持フィルムとは反対側の表面を、基板に接触させて貼り合わせ、基板、組成物層、及び支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る工程である。
【0185】
上記貼合においては、上記基板と上記組成物層の表面とが接触するように圧着させる。
上記圧着の方法としては特に制限はなく、公知の転写方法及びラミネート方法を使用できる。なかでも、組成物層の表面を基板に重ね、ロール等による加圧及び加熱が行われることが好ましい。
貼り合せには、真空ラミネーター及びオートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用できる。
ラミネート温度としては特に制限されないが、例えば、70~130℃であるのが好ましい。
【0186】
<<基材>>
基材としては特に制限されず、例えば、ガラス基板、シリコン基板、及び樹脂基板、並びに、導電層を有する基板が挙げられる。導電層を有する基板が含む基板としては、ガラス基板、シリコン基板、及び樹脂基板が挙げられる。
上記基材は、透明であることが好ましい。
上記基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
上記基材は、ガラス基板等の透光性基板で構成されていてもよく、例えば、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラス等も使用できる。また、上記基材に含まれる材料としては、特開2010-086684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に用いられている材料も好ましい。
上記基材が樹脂基板を含む場合、樹脂基板としては、光学的な歪みが小さい及び/又は透明度が高い樹脂フィルムを使用することがより好ましい。具体的な素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、及びシクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0187】
導電層を有する基板が含む基板としては、ロールツーロール方式で製造する点から、樹脂基板が好ましく、樹脂フィルムがより好ましい。
【0188】
導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる任意の導電層が挙げられる。
導電層としては、導電性及び細線形成性の点から、金属層(金属箔等)、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層、及び導電ポリマー層からなる群より選ばれる1種以上の層が好ましく、金属層がより好ましく、銅層又は銀層が更に好ましい。
また、導電層を有する基板中の導電層は、1層であっても、2層以上であってもよい。
導電層を有する基板が、導電層を2層以上含む場合、各導電層は、互いに異なる材質の導電層であることが好ましい。
導電層の材料としては、金属単体及び導電性金属酸化物等が挙げられる。
金属単体としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag、及びAu等が挙げられる。
導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、及びSiO2等が挙げられる。なお、「導電性」とは、体積抵抗率が1×106Ωcm未満であることをいい、体積抵抗率が1×104Ωcm未満が好ましい。
【0189】
導電層を有する基板中の導電層が2層以上である場合、導電層のうち少なくとも一つの導電層は導電性金属酸化物を含むことも好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であるのも好ましい。
導電層は、透明層であることも好ましい。
【0190】
〔露光工程〕
露光工程は、組成物層をパターン露光する工程である。
なお、ここで、「パターン露光」とは、パターン状に露光する形態、すなわち、露光部と非露光部とが存在する形態の露光を指す。
パターン露光における露光領域と未露光領域との位置関係は特に制限されず、適宜調整される。
組成物層の基板とは反対側から露光してもよく、組成物層の基板側から露光してもよい。
【0191】
パターン露光の光源としては、少なくとも感光性層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して使用できる。なかでも、パターン露光の露光光の主波長は、365nmが好ましい。なお、主波長とは、最も強度が高い波長である。
【0192】
光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及びメタルハライドランプが挙げられる。
露光量は、5~200mJ/cm2が好ましく、10~200mJ/cm2がより好ましい。
【0193】
感光性フィルムを用いて基板上に感光性層を設けた場合、パターン露光は、支持フィルムを組成物層から剥離してから行ってもよいし、支持フィルムを剥離する前に、支持フィルムを介して露光し、その後、支持フィルムを剥離してもよい。感光性層とマスクの接触によるマスクの汚染を防止する観点、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避ける観点からは、支持フィルムを剥離せずに露光することが好ましい。支持フィルムによる露光光の散乱を抑制すること、及びマスクを透過した光の回折を抑制することによって、解像度を向上させる観点からは、支持フィルムを剥離した後に露光することが好ましい。
【0194】
なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたダイレクト露光でもよい。
露光マスクを介して露光する場合のマスクの基材としては、石英マスク、ソーダライムガラスマスク、及びフィルムマスク等が挙げられる。なかでも、石英マスクは寸法精度に優れる点が好ましく、フィルムマスクは大サイズ化が容易である点で好ましい。
フィルムマスクの基材としては、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
フィルムマスクの基材の具体例としては、XPR-7S SG(富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)製)が挙げられる。
【0195】
露光に使用する光源、露光量及び露光方法の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落[0146]~[0147]に記載があり、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0196】
露光工程及び後述する現像工程を行うことで、基板上に所望の形状のパターンが形成される。
【0197】
〔現像工程〕
現像工程は、露光された組成物層を現像して、パターンを形成する工程である。
上記組成物層の現像は、現像液を用いて実施できる。
現像液としては、アルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、及びコリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。
【0198】
現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、スピン現像、及びディップ現像等の方式が挙げられる。
【0199】
本明細書において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落[0194]に記載の現像液が挙げられ、好適に用いられる現像方式としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落[0195]に記載の現像方式が挙げられる。
【0200】
〔剥離工程〕
剥離工程は、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と後述する現像工程との間に、組成物層付き基板から支持フィルムを剥離する工程である。
剥離方法は特に制限されず、特開2010-072589号公報の段落[0161]~[0162]に記載されたカバーフィルム剥離機構と同様の機構を使用できる。
【0201】
〔パターン形成方法が有していてもよい任意の工程〕
パターン形成方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
【0202】
<<ポスト露光工程及びポストベーク工程>>
上記パターン形成方法は、上記現像工程によって得られたパターンを、露光する工程(ポスト露光工程)及び/又は加熱する工程(ポストベーク工程)を有していてもよい。
ポスト露光工程及びポストベーク工程の両方を含む場合、ポスト露光の後、ポストベークを実施することが好ましい。
ポスト露光の露光量は、100~5000mJ/cm2が好ましく、200~3000mJ/cm2がより好ましい。
ポストベークの温度は、80℃~250℃が好ましく、90℃~160℃がより好ましい。
ポストベークの時間は、1分~180分が好ましく、10分~60分がより好ましい。
【0203】
<<エッチング工程>>
基板が導電層を有する基板である場合、現像工程を経て形成されたパターン(樹脂パターン)をエッチングレジスト膜として、このエッチングレジスト膜が配置されていない領域における導電層をエッチング処理する工程(エッチング工程)を含むことが好ましい。
エッチング処理の方法としては、特開2010-152155号公報の段落0048~0054等に記載のウェットエッチングによる方法、及び公知のプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法等を適用できる。
【0204】
例えば、エッチング処理の方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、及びリン酸等の酸性成分単独の水溶液、並びに、酸性成分と塩化第二鉄、フッ化アンモニウム、又は過マンガン酸カリウム等の塩との混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及びテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、並びに、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩との混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
【0205】
エッチング液の温度は特に制限されないが、45℃以下が好ましい。パターン形成方法において、エッチングレジスト膜として使用される、現像工程を経て形成されたパターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。上記構成により、エッチング工程中にエッチングレジスト膜が剥離することが防止され、エッチングレジスト膜の存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
エッチング工程後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて、エッチング処理された基板を洗浄する洗浄工程、及び洗浄された基板を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
【0206】
<<エッチングレジスト膜剥離工程>>
エッチング工程を実施した場合、エッチング工程の後に、エッチングレジスト膜剥離工程を有しているのも好ましい。
エッチングレジスト膜剥離工程は、残存するエッチングレジスト膜(レジストパターン)を剥離する工程である。
残存するエッチングレジスト膜を除去する方法としては特に制限されないが、薬品処理により除去する方法が挙げられ、剥離液を用いて除去する方法が好ましい。
また、剥離液を使用し、スプレー法、シャワー法、及びパドル法等の公知の方法により除去してもよい。
【0207】
剥離液としては、例えば、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又はこれらの混合溶液に溶解させた剥離液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、及び第4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。アルカリ性有機化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又はアルカノールアミン化合物が好ましい。
剥離液は、導電層を溶解しないことも好ましい。
【0208】
エッチングレジスト膜の除去方法としては、液温が好ましくは30~80℃、より好ましくは50~80℃である撹拌中の剥離液に、残存するレジストパターンを有する基板を、1~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0209】
剥離処理する際の剥離液のpHは、11以上が好ましく、12以上がより好ましく、13以上が更に好ましい。上限は、14以下が好ましく、13.8以下がより好ましい。pHは、公知のpHメーターを用いて、JIS Z8802-1984に準拠した方法により測定できる。pHの測定温度は25℃とする。
剥離処理する際の剥離液の液温は、現像処理する際の現像液の液温よりも高いことが好ましい。具体的には、上記剥離液の液温から上記現像液の液温を引いた値(上記剥離液の液温-上記現像液の液温)は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。上限は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
剥離処理する際の剥離液のpHは、現像処理する際の現像液のpHよりも高いことが好ましい。具体的には、上記剥離液のpHから上記現像液のpHを引いた値(上記剥離液のpH-上記現像液のpH)は、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。上限は、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0210】
剥離液によりエッチングレジスト膜を剥離した後、基板上に残存する剥離液を除去するリンス処理を実施することも好ましい。リンス処理には、水等を使用できる。
剥離液によるエッチングレジスト膜及び/又はリンス処理の後、余分な液を基板上から除去する乾燥処理を行ってもよい。
【0211】
<<めっき処理工程>>
基板が導電層を有する基板である場合、上記パターン形成方法は、現像工程を経て形成されたパターン(樹脂パターン)をめっきレジスト膜として、このめっきレジスト膜が配置されていない領域における導電層に、めっき処理を行う工程(めっき処理工程)を含むことが好ましい。
めっき処理工程は、めっきレジスト膜が配置されていない領域にある導電層(好ましくは金属層)に、めっき処理を行う工程である。
上記めっき処理工程は、より具体的には、めっきレジスト膜が配置されていない領域にある導電層(現像工程によって表面に露出した導電層)上に、めっき処理によってめっき層を形成する工程である。
めっき処理の方法としては、例えば、電解めっき法及び無電解めっき法が挙げられ、生産性の点から、電解めっき法が好ましい。
めっき処理工程を実施すると、導電層付き基板上に、めっきレジスト膜が配置されていない領域(パターンの開口部)と同様のパターン形状を有するめっき層が得られる。
【0212】
めっき層に含まれる金属としては、例えば、公知の金属が挙げられる。
具体的には、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、及び亜鉛等の金属、並びに、これらの金属の合金が挙げられる。
なかでも、めっき層は、導電パターンの導電性がより優れる点から、銅又はその合金を含むことが好ましい。また、導電パターンの導電性がより優れる点から、めっき層は、主成分として銅を含むことが好ましい。
【0213】
めっき層の厚みとしては、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。上限は、20μm以下が好ましい。
【0214】
<<めっきレジスト膜剥離工程>>
上述のめっき処理工程を実施した場合、めっき処理工程の後にめっきレジスト膜剥離工程を有しているのが好ましい。
めっきレジスト膜剥離工程としては、既述のエッチングレジスト膜剥離工程と同様の方法にて実施できる。
【0215】
<<除去工程>>
上述のめっき処理工程を実施した場合、めっき処理工程の後に実施されるめっきレジスト膜剥離工程の後に、更に除去工程(導電層除去工程)を有しているのも好ましい。
導電層除去工程は、めっきレジスト膜を剥離することにより露出した導電層を除去して、基板上に導体パターンを形成する工程である。
導電層除去工程では、めっき処理工程によって形成されためっき層をエッチングレジスト膜として使用し、非パターン形成領域(言い換えると、めっき層で保護されていない領域)に位置する導電層のエッチング処理を行う。
【0216】
導電層の一部を除去する方法としては特に制限されないが、公知のエッチング液を使用することが好ましい。
公知のエッチング液の一態様としては、例えば、塩化第二鉄溶液、塩化第二銅溶液、アンモニアアルカリ溶液、硫酸-過酸化水素混合液、及びリン酸-過酸化水素混合液等が挙げられる。
【0217】
導電層除去工程を行うと、基板上から表面に露出していた導電層が除去されるとともに、パターン形状を有するめっき層(導体パターン)が残存し、導体パターンを有する基板が得られる。
【0218】
<<その他の工程>>
パターン形成方法は、上述した工程以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。
例えば、国際公開第2019/022089号の段落[0172]に記載の可視光線反射率を低下させる工程、国際公開第2019/022089号の段落[0172]に記載の絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程等が挙げられるが、これらの工程に制限されない。また、可視光線反射率を低下させる工程の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058にも記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0219】
[積層体の製造方法]
本発明の巻回体が含む感光性フィルムを用いることにより、被転写体へ組成物層を転写できる。感光性フィルムは、タッチパネルの製造に用いられることが好ましい。
以下、本発明の巻回体が含む感光性フィルムを用いて積層体を製造する方法について説明する。
【0220】
本発明の巻回体が含む感光性フィルムを使用した積層体の製造方法としては、
巻回体中の感光性フィルムを巻き出し、巻き出した感光性フィルムから保護フィルムを剥離して得られる積層体の支持フィルムとは反対側の表面を、導電部を有する基板に接触させて貼り合わせ、基板、導電層、組成物層、及び支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された組成物層を現像して、導電層を保護する保護膜パターンを形成する現像工程と、を有し、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、組成物層付き基板から支持フィルムを剥離する剥離工程と、を有するのが好ましい。
【0221】
以下において、積層体の製造方法の具体的な手順について説明する。
積層体の製造方法における貼合工程、露光工程、現像工程、及び剥離工程については、上述したパターン形成方法における貼合工程、露光工程、現像工程、及び剥離工程と同じであり、好適態様も同じである。
【0222】
〔積層体の用途〕
本発明の積層体の製造方法により製造される積層体は、種々の装置に適用することができる。上記積層体を備えた装置としては、例えば、表示装置、プリント配線板、半導体パッケージ、及び入力装置等が挙げられ、タッチパネルが好ましく、静電容量型タッチパネルがより好ましい。また、上記入力装置は、有機EL表示装置及び液晶表示装置等の表示装置に適用できる。積層体がタッチパネルに適用される場合、組成物層から形成されるパターンは、タッチパネル用電極又はタッチパネル用配線の保護膜として用いられることが好ましい。
【0223】
[回路配線の製造方法]
上述した感光性フィルムを用いることにより、回路配線も製造できる。
回路配線の製造方法は、上記の感光性フィルムを用いる回路配線の製造方法であれば、特に制限されない。
なかでも、回路配線の製造方法としては、巻回体の感光性フィルムを巻き出し、巻き出した感光性フィルムから保護フィルムを剥離して得られる積層体の支持フィルムとは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させ、基板、導電層、組成物層、及び支持フィルムをこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と
組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程と、
樹脂パターンが配置されていない領域における導電層をエッチング処理するエッチング工程、又は、樹脂パターンが配置されていない領域にめっきするめっき処理工程と、
前記レジストパターンを剥離するレジスト剥離工程と、
めっき処理工程を有する場合は、レジスト剥離工程によって露出した導電層を除去し、基板上に導体パターンを形成する除去工程と、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、組成物層付き基板から支持フィルムを剥離する剥離工程と、を含むのが好ましい。
【0224】
以下において、回路配線の製造方法の具体的な手順について説明する。
回路配線の製造方法における貼合工程、露光工程、現像工程、及び剥離工程については、上述したパターン形成方法における貼合工程、露光工程、現像工程、及び剥離工程と同じであり、好適態様も同じである。
また、回路配線の製造方法におけるエッチング工程、めっき処理工程、除去工程については、上述したパターン形成方法におけるエッチング工程、めっき処理工程、除去工程と同じであり、好適態様も同じである。
また、回路配線の製造方法におけるレジスト膜剥離工程については、上述したパターン形成方法におけるエッチングレジスト膜剥離工程又はめっきレジスト膜剥離工程と同じであり、好適態様も同じである。
【0225】
なお、回路配線の製造方法は、基材の両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、基材の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成できる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
【0226】
〔回路配線の用途〕
回路配線の製造方法により製造される回路配線は、種々の装置に適用することができる。上記の製造方法により製造される回路配線を備えた装置としては、例えば、表示装置、プリント配線板、半導体パッケージ、及び入力装置が挙げられ、タッチパネルが好ましく、静電容量型タッチパネルがより好ましい。また、上記入力装置は、有機EL表示装置及び液晶表示装置等の表示装置に適用できる。
【実施例0227】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限りにおいて、いずれも質量基準である。
【0228】
[巻回体の作製]
〔感光性層形成用組成物1~5の調製〕
表1に示す成分を同表に記載の配合量となるように撹拌混合した後、得られた混合液を、ポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(孔径:0.3μm)を用いて濾過することにより、感光性層形成用組成物1~5を調製した。
【0229】
【0230】
なお、感光性層形成用組成物1~5中に含まれる成分の詳細は、以下のとおりである。
・A-DCP(新中村化学工業(株)製):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
・アロニックス(登録商標)TO-2349(東亜合成(株)製):カルボキシ基含有モノマー(5官能モノマーと6官能モノマーとの混合物)
・8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製):15官能のウレタンアクリレート
・Omnirad(登録商標)OXE-02(IGM Resins B.V社製):オキシム系光重合開始剤
・Irgacure(登録商標)907(BASF社製):α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤
・デュラネート(登録商標)X3071.04(旭化成ケミカルズ社製):ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート化合物
・メガファック(登録商標)F-551-A:フッ素系界面活性剤、DIC(株)製のメガファックF-551-A、固形分:30質量%(PGMEA溶液)
・重合体Dの固形分36.3質量%溶液:以下の手順により合成した合成品
【0231】
(重合体Dの固形分36.3質量%溶液)
重合体Dの固形分36.3質量%溶液は、下記に示す重合工程及び付加工程により準備した。以下、手順を示す。
なお、重合体Dにおいて、各構成単位に添えた数値は、各構成単位の組成比(モル%)を表す。
【0232】
-重合工程-
2000mLのフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三和化学産業製、商品名PGM-Ac)60g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(三和化学産業製、商品名PGM)240gを導入した。得られた液体を、撹拌速度250rpm(round per minute;以下同じ。)で撹拌しつつ90℃に昇温した。
滴下液(1)の調製として、メタクリル酸(三菱レイヨン製、商品名アクリエステルM)107.1g、メタクリル酸メチル(三菱ガス化学製、商品名MMA)5.46g、及びシクロヘキシルメタクリレート(三菱ガス化学製、商品名CHMA)231.42gを混合し、PGM-Ac 60gで希釈することにより、滴下液(1)を得た。
滴下液(2)の調製として、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業製、商品名V-601)9.637gをPGM-Ac 136.56gで溶解させることにより、滴下液(2)を得た。
滴下液(1)と滴下液(2)とを同時に3時間かけて、上述した2000mLのフラスコ(詳細には、90℃に昇温された液体が入った2000mLのフラスコ)に滴下した。次に、滴下液(1)の容器をPGM-Ac 12gで洗浄し、洗浄液を上記2000mLのフラスコに滴下した。次に、滴下液(2)の容器をPGM-Ac 6gで洗浄し、洗浄液を上記2000mLのフラスコに滴下した。これらの滴下中、上記2000mLのフラスコ内の反応液を90℃に保ち、撹拌速度250rpmで撹拌した。更に、後反応として、90℃で1時間撹拌した。
後反応後の反応液に、開始剤の追加添加1回目として、V-601の2.401gを添加した。更に、V-601の容器をPGM-Ac 6gで洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後、90℃で1時間撹拌した。
次に、開始剤の追加添加2回目として、V-601の2.401gを反応液に添加した。更にV-601の容器をPGM-Ac 6gで洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後90℃で1時間撹拌した。
次に、開始剤の追加添加3回目として、V-601の2.401gを反応液に添加した。更に、V-601の容器をPGM-Ac 6gで洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後90℃で3時間撹拌した。
【0233】
-付加工程-
90℃で3時間撹拌後、PGM-Ac 178.66gを反応液へ導入した。次に、テトラエチルアンモニウムブロミド(和光純薬工業社製)1.8gとハイドロキノンモノメチルエーテル(和光純薬工業社製)0.8gとを反応液に添加した。更にそれぞれの容器をPGM-Ac 6gで洗浄し、洗浄液を反応液へ導入した。その後、反応液の温度を100℃まで昇温させた。
次に、グリシジルメタクリレート(日油社製、商品名ブレンマーG)76.03gを1時間かけて反応液に滴下した。ブレンマーGの容器をPGM-Ac 6gで洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。この後、付加反応として、100℃で6時間撹拌した。
次に、反応液を冷却し、ゴミ取り用のメッシュフィルター(100メッシュ)でろ過し、重合体Dの溶液を1158g得た(固形分濃度36.3質量%)。得られた重合体Dの重量平均分子量は27000、数平均分子量は15000、酸価は95mgKOH/gであった。
【0234】
【0235】
〔感光性層形成用組成物6の調製〕
以下に記載の配合量で各成分を撹拌混合した後、得られた混合液を、ポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(孔径:0.3μm)を用いて濾過することにより、感光性層形成用組成物6を調製した。
(感光性層形成用組成物6)
・化合物B3(バインダー) 19.9質量部
・BPE-500(重合性化合物) 5.4質量部
・アロニックスM-270(重合性化合物) 0.59質量部
・2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(光重合開始剤) 0.89質量部
・4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(増感剤) 0.04質量部
・フェノチアジン(重合禁止剤) 0.04質量部
・フェニドン1%MEK溶液(重合禁止剤) 0.14質量部
・N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン(連鎖移動剤)
0.02質量部
・ロイコクリスタルバイオレット(色素) 0.05質量部
・カルボキシベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.01質量部
・メガファックF-552(界面活性剤) 0.14質量部
・1-メトキシ-2-プロピルアセテート(溶媒) 21.5質量部
・メチルエチルケトン(溶媒) 46.5質量部
・1-メトキシ-2-プロパノール(溶媒) 2.2質量部
・メタノール(溶媒) 2.6質量部
【0236】
なお、感光性層形成用組成物6中に含まれる成分の詳細は、以下のとおりである。
「化合物B3」:スチレン(St)/メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)=52/19/29(質量比)、Mw:50,000、酸価:148mgKOH/g、ガラス転移温度:131℃、固形分:30質量%
【0237】
「BPE-500」:(2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業(株)製「NKエステルBPE-500」
「アロニックスM-270」:ポリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成(株)製「アロニックスM-270」
2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体:黒金化成(株)製「B-CIM」
4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン:三洋貿易(株)「EAB-F」
「フェノチアジン」:富士フイルム和光純薬(株)製
「フェニドン1%MEK溶液」:1質量%のフェニドンを含むメチルエチルケトン溶液
「N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン」:富士フイルム和光純薬(株)製
「ロイコクリスタルバイオレット」:東京化成工業(株)製
「カルボキシベンゾトリアゾール」:城北化学工業(株)製「CBT-1」
「メガファックF-552」:フッ素系界面活性剤、DIC(株)製のメガファックF-552、固形分:30質量%(メチルエチルケトン溶液)
【0238】
〔感光性フィルムの作製〕
以下の手順により、各種感光性フィルムを作製した。なお、支持フィルム、保護フィルム、及び組成物層(感光性層、中間層、熱可塑性樹脂層、屈折率調整層)の厚みの測定方法については、既述のとおりである。
<感光性フィルムAの作製>
表3に示す厚みムラを有する厚み16μmの支持フィルム(2軸延伸PETフィルム)の上に、スリット状ノズルを用いて、表3に示す感光性層形成用組成物を塗布して塗膜を得た後、100℃の乾燥温度にて乾燥させることにより、感光性層を形成した。ここで、感光性層形成用組成物の塗布量は、乾燥後の厚みが表3に記載の厚みになるように調整した。
次に、感光性層の上に、表3に示す厚みムラを有する厚み12μmの保護フィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム)を圧着することにより、支持フィルム/感光性層/保護フィルムの積層構造を有する感光性フィルムを作製した。
【0239】
<感光性フィルムBの作製>
表3に示す厚みムラを有する厚み25μmの支持フィルム(2軸延伸PETフィルム)の上に、スリット状ノズルを用いて、表3に示す感光性層形成用組成物を塗布して塗膜を得た後、100℃の乾燥温度にて乾燥させることにより、感光性層を形成した。ここで、感光性層形成用組成物の塗布量は、乾燥後の厚みが表3に記載の厚みになるように調整した。得られた感光性層上に、下記表2に示す配合の屈折率調整層形成用塗布液(材料B-1)(表2中の各成分の含有量は、質量部基準である。)を乾燥後の厚みが70nmになるよう塗布し、塗膜を乾燥させることにより、屈折率調整層を形成した。
次に、感光性層の上に、表3に示す厚みムラを有する厚み16μmの保護フィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム)を圧着することにより、支持フィルム/感光性層/屈折率調整層/保護フィルムの積層構造を有する感光性フィルムを作製した。
【0240】
【0241】
<感光性フィルムCの作製>
表3に示す厚みムラを有する厚み16μmの支持フィルム(2軸延伸PETフィルム)の上に、スリット状ノズルを用いて、以下に示す熱可塑性樹脂層形成用組成物を塗布して塗膜を得た後、80℃で2分間乾燥することで熱可塑性樹脂層を形成した。ここで、熱可塑性樹脂層形成用組成物の塗布量は、乾燥後の厚みが6.0μmになるように調整した。
次いで、得られた熱可塑性樹脂層の上に、スリット状ノズルを用いて、以下に示す中間層形成用組成物を塗布して塗膜を得た後、90℃で2分間乾燥することで中間層を形成した。ここで、中間層形成用組成物の塗布量は、乾燥後の厚みが1.0μmになるように調整した。
次いで、得られた中間層の上に、スリット状ノズルを用いて、表3に示す感光性層形成用組成物を塗布して塗膜を得た後、100℃の乾燥温度にて乾燥させることにより、感光性層を形成した。ここで、感光性層形成用組成物の塗布量は、乾燥後の厚みが表3に記載の厚みになるように調整した。
次に、感光性層の上に、表3に示す厚みムラを有する厚み12μmの保護フィルム(2軸延伸ポリプロピレンフィルム)を圧着することにより、支持フィルム/感光性層/保護フィルムの積層構造を有する感光性フィルムを作製した。
【0242】
(熱可塑性樹脂層形成用組成物の組成)
化合物B1(アルカリ可溶性樹脂) 39.8質量部
A-DCP(重合性化合物) 5.8質量部
8UX-015A(重合性化合物) 2.9質量部
TO-2349(重合性化合物) 1.3質量部
フェノチアジンブリル(添加剤) 0.69質量部
CBT-1(添加剤) 0.04質量部
F-552(界面活性剤) 0.05質量部
メチルエチルケトン(溶媒) 49.4質量部
【0243】
(中間層形成用組成物の組成)
PVA(水溶性樹脂) 2.7質量部
PVP(水溶性樹脂) 1.3質量部
F-444(界面活性剤) 0.004質量部
メタノール(溶媒) 70質量部
純水(溶媒) 26質量部
【0244】
熱可塑性樹脂層形成用組成物及び中間層形成用組成物の各配合成分の詳細は以下のとおりである。
「化合物B1」:メタクリル酸ベンジル(BzMA)/メタクリル酸(MAA)/アクリル酸(AA)=78/14.5/7.5(質量比)、Mw:12,500、酸価:187mgKOH/g、ガラス転移温度:75℃、固形分:30質量%
「A-DCP」:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業(株)製のNKエステルA-DCP
「8UX-015A」:UV硬化型ウレタンクリレート、大成ファインケミカル(株)製8UX-015A
「TO-2349」:東亞合成(株)製アロニックスTO-2349
「フェノチアジンプリル」:フェノチアジンの粉末、富士フイルム和光純薬(株)製
「CBT-1」:カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学工業(株)製CBT-1
「F-552」:フッ素系界面活性剤、DIC(株)製のメガファックF-552、固形分:30質量%(メチルエチルケトン溶液)
「MEK」:メチルエチルケトン
「PVA」:ポリビニルアルコール、(株)クラレ製PVA205
「PVP」:ポリビニルピロリドン、(株)日本触媒製K-30
「F-444」:DIC(株)製のメガファックF-444、フッ素系界面活性剤
「MeOH」:メタノール
【0245】
<各支持フィルム及び保護フィルムの作製>
表3に示す各支持フィルムは、上段部において説明した支持体の製造方法に基づいて作製したものを使用した。また、表3に示す各保護フィルムについても、上段部において説明した支持体の製造方法に基づいて作製したものを使用した。得られた各支持フィルム及び保護フィルムについて、既述の方法により、厚みムラを測定した。
【0246】
〔巻回体の作製及び評価〕
<巻芯>
巻芯としては、表3に示す材質、平均肉厚、内径、及び厚みムラを満たす巻芯(巻芯1~14)を作製して使用した。巻芯における、平均肉厚、内径、及び厚みムラの測定方法は、既述のとおりである。
【0247】
<巻回体の作製、試験フィルムの作製>
次に、作製した感光性フィルムを、支持フィルム側が巻芯に対向するように、張力「100N/m」で巻芯に500m長巻きつけて、巻回体を作製した。なお、感光性フィルムの幅方向の長さは、500mmとした。
作製した巻回体を、温度30℃dry環境下にて、2日間静置した。
その後、巻回体から感光性フィルムを巻き出して、巻き出した感光性フィルムの所定領域において試験片を切り出した。
以下、
図5を参照して、所定領域での試験片の切り出し方法について説明する。
図5は、巻き出し後の感光性フィルムの断面模式図である。
【0248】
感光性フィルムを観察し、
図1の巻き始め端部5Aの直上に重畳されて巻き付けられた箇所において巻き始め端部5A(
図1参照)の転写跡が目視観察によって確認できる場合、感光性フィルムの長手方向(
図5に示すX方向)に25m離れた位置及びその近傍において、目視観察によって巻き始め端部の転写跡が最も顕著な部分を含むように5cm×5cmに切り出し、これを試験片とする。
感光性フィルムを観察し、
図1の巻き始め端部5Aの直上に重畳されて巻き付けられた箇所において巻き始め端部5A(
図1参照)の転写跡が目視観察によって確認できない場合、感光性フィルムの試験片は、
図5に示す領域A1にて採取する。
以下、領域A1について説明する。
領域A1は、巻き出した感光性フィルム30中の巻き始め端部(巻芯側の端辺P1)から長手方向(X方向)に25m離れた位置p2を基準位置として、位置p2を中心とした長手方向の左右100mmの領域に相当する(なお、この領域は、巻き出し前の巻回体において感光性フィルム30中の巻芯側の端辺p1の直上に重畳されて巻き付けられた箇所(
図1の巻き始め端部5Aの直上に重畳されて巻き付けられた箇所に相当する。)を含む、幅500mm×長さ200mmの領域である)。
この領域A1内から、感光性フィルム30の幅方向(Y方向)の端部T1を含む領域であって、且つ、巻き出し前の巻回体において感光性フィルム30中の巻芯側の端辺p1の直上に重畳されて巻き付けられた箇所を含む領域に相当する箇所を5cm×5cmに切り出し、これを試験片とする。
【0249】
<パターン形成>
得られた感光性フィルムの試験片から保護フィルムを剥離し、試験片における剥離面を基板に接触させて貼合し、積層体を得た。次いで、この積層体の感光性層に対し、支持フィルム側からマスクを介してパターン露光(条件:150mJ/cm2(i線)、マスク形状:100μm幅のライン/300μmのスペースの格子状)を実施した。露光後、支持フィルムを剥離した後、液温35℃の1質量%の炭酸ナトリウム溶液に、35℃にて50秒間浸漬して現像することで、パターンを形成した。
【0250】
次いで、得られたパターンを観察して、以下の手順により、パターンの厚みムラ及びパターンの欠陥数を評価した。
【0251】
<パターンの厚みムラの評価>
パターンの厚みをSEMによる観察により測定し、下記式(4)に基づいて厚みムラ(%)を算出し、下記評価基準に基づいてパターンの厚みムラを評価した。
なお、式(4)中、パターンの厚み(膜厚)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される任意の5か所における厚みを算術平均した平均厚みである。
式(4):厚みムラ(%)={(最大厚み-最小厚み)/厚み}×100
下記評価基準において、実用上、「C」以上が好ましく、「B」以上がより好ましく、「A」が最も好ましい。
(評価基準)
「A」:3%未満
「B」:3%以上5%未満
「C」:5%以上10%未満
「D」:10%以上
【0252】
<パターンの欠陥の評価>
得られたパターン(格子パターン)について抜けが生じた箇所の数を計測し、下記評価基準に基づいてパターンの欠陥を評価した。
下記評価基準において、実用上、「C」以上が好ましく、「B」以上がより好ましく、「A」が最も好ましい。
(評価基準)
「A」:0.1個/cm2未満
「B」:0.1個/cm2以上1個/cm2未満
「C」:1個/cm2以上3個/cm2未満
「D」:3個/m2以上
【0253】
以下、表3を示す。
なお、表中の貯蔵弾性率(30℃)の測定方法は既述のとおりである。
また、表中の「感光性フィルムの種類」は、感光性フィルムの積層形態を示している。
「A」は、既述の感光性フィルムAにより作製された感光性フィルムを表し、「B」は、既述の感光性フィルムBにより作製された感光性フィルムを表し、「C」は、既述の感光性フィルムCにより作製された感光性フィルムを表している。
【0254】
【0255】
【0256】
実施例の巻回体によれば、巻回体から巻き出した感光性フィルムを用いてパターンを形成した際に、形成されるパターンにおいて厚みムラ及び欠陥が生じにくいことが明らかである。
また、実施例の対比(特に、実施例1~7の対比)から、巻芯の平均肉厚が5.5mm以上(好ましくは、7.5mm以上)である場合、形成されるパターンの厚みムラがより抑制できることが確認された。
また、実施例の対比(特に、実施例5及び実施例13~17の対比)から、支持フィルムの幅方向における厚みムラが5%以内(好ましくは3%以内)である場合、形成されるパターンの厚みムラがより抑制できることが確認された。
また、実施例の対比(特に、実施例5及び実施例28~30の対比)から、保護フィルムの幅方向における厚みムラが3%以内である場合、形成されるパターンの厚みムラがより抑制できることが確認された。
また、実施例の対比(特に、実施例5及び実施例18~23の対比)から、感光性層の厚みが70μm以下(好ましくは15μm以下)である場合、形成されるパターンの厚みムラがより抑制できることが確認された。
また、実施例の対比(特に、実施例5及び実施例24~27の対比)から、感光性層の30℃での貯蔵弾性率が3.6~100MPaである場合、形成されるパターンの厚みムラがより抑制できることが確認された。
【0257】
一方、比較例の巻回体では、所望の効果が発現しないことが確認された。