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特開2024-34266エネルギーマネジメントシステム、エネルギー管理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034266
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム、エネルギー管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240306BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240306BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/46
H02J3/38 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138398
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松浪 佑宜
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 理亮
(72)【発明者】
【氏名】赤司 泰義
(72)【発明者】
【氏名】宮田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】高 原
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB01
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】種類が異なる複数の再生可能エネルギー発電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用する。
【解決手段】応答性の高い第1の再生可能エネルギー発電装置と応答性の低い第2の再生可能エネルギー発電装置と蓄電装置とを含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムが、蓄電装置の蓄電量を取得するように構成されている蓄電量取得部と、蓄電量に基づいて第1の再生可能エネルギー発電装置の出力を制御するように構成されている発電制御部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
応答性の高い第1の再生可能エネルギー発電装置と応答性の低い第2の再生可能エネルギー発電装置と蓄電装置とを含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄電装置の蓄電量を取得するように構成されている蓄電量取得部と、
前記蓄電量に基づいて前記第1の再生可能エネルギー発電装置の出力を制御するように構成されている発電制御部と、
を備えるエネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記発電制御部は、前記蓄電量が前記蓄電装置の最大蓄電量に近づくと、前記第1の再生可能エネルギー発電装置の出力が低下する制御を行うように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記マイクログリッドは、売電量に上限電力量を課すグリッドに接続されており、
前記発電制御部は、前記マイクログリッドにおける発電量から前記マイクログリッドにおける電力消費量を減算した電力量が前記上限電力量以下となるように、前記第1の再生可能エネルギー発電装置の出力を制御するように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記発電制御部は、前記第1の再生可能エネルギー発電装置に対する制御間隔を前記第2の再生可能エネルギー発電装置に対する制御間隔よりも短く設定するように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記発電制御部は、前記第2の再生可能エネルギー発電装置の出力を制御しないように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記第1の再生可能エネルギー発電装置は、太陽光発電装置であり、
前記第2の再生可能エネルギー発電装置は、バイオマス発電装置である、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項7】
応答性の高い第1の再生可能エネルギー発電装置と応答性の低い第2の再生可能エネルギー発電装置と蓄電装置とを含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムが、
前記蓄電装置の蓄電量を取得する手順と、
前記蓄電量に基づいて前記第1の再生可能エネルギー発電装置の出力を制御する手順と、
を実行するエネルギー管理方法。
【請求項8】
応答性の高い第1の再生可能エネルギー発電装置と応答性の低い第2の再生可能エネルギー発電装置と蓄電装置とを含むマイクログリッドを管理するコンピュータに、
前記蓄電装置の蓄電量を取得する手順と、
前記蓄電量に基づいて前記第1の再生可能エネルギー発電装置の出力を制御する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギーマネジメントシステム、エネルギー管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクログリッド等のエネルギー供給システムの導入が進んでいる。マイクログリッドでは、エネルギーコスト削減や二酸化炭素排出量削減を目的として、太陽光発電装置等の再生可能エネルギー発電装置、電力及び熱を生成可能なコージェネレーションシステム、蓄電装置及び蓄熱装置等の蓄エネルギー装置等、複数種類の発電設備又は複数種類の蓄エネルギー設備が併用されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、マイクログリッドの消費電力量における再生可能エネルギー利用率を向上するために、火力発電設備及び再生可能エネルギー発電装置を含むマイクログリッドにおいて、再生可能エネルギー発電装置の発電量予測結果に基づいて、他の再生可能エネルギー発電装置に接続されたグリッドからの買電量を含む運用計画を立案する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-193861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、マイクログリッドに含まれる複数種類の発電装置の優先制御を行うことができない、という課題がある。例えば、グリッドが逆潮流を制限しているとき、蓄電装置の最大蓄電量を超えないように、マイクログリッドにおける発電量を低減したい場合がある。
【0006】
本開示は、上記のような技術的課題に鑑みて、種類が異なる複数の再生可能エネルギー発電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によるエネルギーマネジメントシステムは、応答性の高い第1の再生可能エネルギー発電装置と応答性の低い第2の再生可能エネルギー発電装置と蓄電装置とを含むマイクログリッドを管理するエネルギーマネジメントシステムであって、蓄電装置の蓄電量を取得するように構成されている蓄電量取得部と、蓄電量に基づいて第1の再生可能エネルギー発電装置の出力を制御するように構成されている発電制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、種類が異なる複数の再生可能エネルギー発電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】マイクログリッドの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】最大エネルギー貯蔵量制御の一例を示す図である。
図3】エネルギー供給量平準化制御の一例を示す図である。
図4】長期短期記憶のネットワーク構造の一例を示すフローチャートである。
図5】コンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図6】エネルギーマネジメントシステムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図7】エネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
[実施形態]
本開示の一実施形態は、マイクログリッドを制御するエネルギーマネジメントシステムである。本実施形態におけるマイクログリッドは、再生可能エネルギーで自給自足することを目的として、複数種類の再生可能エネルギー発電装置を含む発電設備、及び余剰電力を貯蔵する蓄電設備を有する。
【0012】
再生可能エネルギー発電装置は、種々の自然エネルギーを活用して発電を行うため、発電原理やその実装に応じた運転特性を有している。本実施形態では、再生可能エネルギー発電装置の運転特性として、応答性に着目して、複数種類の再生可能エネルギー発電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することが可能なエネルギーマネジメントシステムを実現する。
【0013】
<マイクログリッドの全体構成>
本実施形態におけるマイクログリッドの全体構成を、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態におけるマイクログリッドの全体構成の一例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示されているように、本実施形態におけるマイクログリッド1は、配電ラインEを介して、グリッド2に接続されている。グリッド2は、マイクログリッド1とは異なる電力系統であり、マイクログリッド1の運営主体とは異なるエネルギー供給事業者によって管理される。
【0015】
本実施形態におけるグリッド2は、系統内の設備構成等の理由により、需要家に買電量・売電量に上限を課しているものとする。例えば、逆潮流を制限する場合は売電量の上限を0kWと課すものとする。すなわち、マイクログリッド1では、グリッド2の制限を満たすように、発電設備における発電量及び蓄電設備における蓄電量を制御する必要がある。
【0016】
本実施形態におけるグリッド2は、過去の一定期間内の最大受電電力に応じて基本料金が設定される料金形態であるものとする。すなわち、マイクログリッド1は、基本料金が上昇する閾値を超えないように、グリッド2からの最大受電電力を制御する必要がある。
【0017】
本実施形態におけるマイクログリッド1は、需要家3、エネルギーマネジメントシステム10、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電装置13及び電力需給調整装置14を含む。太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電装置13及び電力需給調整装置14は、配電ラインEに接続される。バイオマス発電装置12は、さらに熱移送ラインHに接続される。需要家3は、配電ラインE及び熱移送ラインHに接続される。マイクログリッド1は、配電ラインE及び熱移送ラインHを通じて、需要家3に電力及び熱エネルギーを供給する。
【0018】
需要家3は、工場やビル等のエネルギー供給対象の施設である。需要家3は、配電ラインEを通じて供給される電力及び熱移送ラインHを通じて供給される熱エネルギーを、施設内に設置された機器に供給することで、電力及び熱エネルギーを消費する。
【0019】
エネルギーマネジメントシステム10、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電装置13及び電力需給調整装置14は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNに接続される。エネルギーマネジメントシステム10、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12、蓄電装置13及び電力需給調整装置14は、通信ネットワークNを介して相互に通信可能である。
【0020】
太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12及び蓄電装置13は、エネルギーマネジメントシステム10に運転データを提供する。エネルギーマネジメントシステム10は、各装置から提供された運転データに基づいて運転計画を立案する。太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12及び蓄電装置13は、エネルギーマネジメントシステム10により立案された運転計画に従って動作する。
【0021】
太陽光発電装置11は、太陽光を利用して電力を生成し、配電ラインEを通じてマイクログリッド1に電力を供給する再生可能エネルギー発電装置である。太陽光発電装置11により生成された電力は、配電ラインEに供給される。
【0022】
バイオマス発電装置12は、バイオマスを燃料として発電する再生可能エネルギー発電装置である。バイオマス発電装置12は、バイオマスを燃焼する際に生じる廃熱を回収するコージェネレーションシステムでもある。バイオマス発電装置12により発電された電力は、配電ラインEに供給される。バイオマス発電装置12により回収された熱は、熱移送ラインHに供給される。
【0023】
蓄電装置13は、化学反応によって電気を貯蔵する蓄電と、貯蔵されている電気を放出する放電とを繰り返す蓄エネルギー装置である。蓄電装置13は、例えば、リチウムイオン電池又はナトリウム・硫黄電池(NAS電池)等の蓄電池を有する。また、蓄電装置13は、蓄電池を制御する制御装置、パワーコンディショナー(PCS; Power Conditioning System)及び補機類を有する。蓄電装置13は、複数の蓄電池を有してもよく、各蓄電池が異なる種類の蓄電池であってもよい。
【0024】
電力需給調整装置14は、グリッド2からの買電量・売電量を常に計測している。電力需給調整装置14は、エネルギーマネジメントシステム10により指示されるグリッド2からの買電量・売電量の上限に対し、買電量・売電量がその範囲に収まるように蓄電装置13に蓄電量又は放電量の指示を行う。
【0025】
電力需給調整装置14は、マイクログリッド1内の発電量から電力消費量を引いた余剰電力がグリッド2への売電量の設定された上限を上回ったとき、配電ラインEから供給される電力を蓄電するように蓄電装置13を制御する。電力需給調整装置14は、マイクログリッド1内の電力消費量から発電量を引いた不足電力がグリッド2からの買電量の設定された上限を下回ったとき、蓄電電力を配電ラインEに放出するように蓄電装置13を制御する。
【0026】
電力需給調整装置14は、個別の装置として設置してもよい。電力需給調整装置14は、エネルギーマネジメントシステム10又は蓄電装置13に組み込んでもよい。
【0027】
蓄電装置13が複数の蓄電池から構成される場合、電力需給調整装置14は、蓄電又は放電に用いる蓄電池の優先制御を行ってもよい。
【0028】
本実施形態における太陽光発電装置11及びバイオマス発電装置12は、応答性が異なる発電装置である。本実施形態における応答性は、発電量の制御に対して、指定された発電量を実現するまでの遅延時間を含む。また、本実施形態における応答性は、発電装置の計画的又は突発的な起動及び停止における処理時間を含む。
【0029】
例えば、バイオマス発電装置12は、発電するために数時間予熱する必要がある、立上りに時間を要する、停止までに時間を要する、バイオマス供給量で制御するため指定された発電量に達するまでに遅れ時間が生じる、停止から再起動までに時間を要する、発電量の出力調整が難しい、燃料の供給量が制御しづらい、燃料供給機等の複数付属機器が連動して煩雑、熱負荷追従運転の場合発電量が電力負荷の乖離が生じる、メンテナンスで定期的な停止が必要等といった理由により、日射量に対して直接的に発電量が変化する太陽光発電装置11と比べて応答性が低い。
【0030】
エネルギーマネジメントシステム10は、マイクログリッド1に接続される各装置から所定の時間間隔(以下、「計測間隔」とも呼ぶ)で運転データを収集する。また、エネルギーマネジメントシステム10は、収集した運転データに基づいて生成した運転計画を所定の時間間隔(以下、「制御間隔」とも呼ぶ)で各装置に送信する。
【0031】
エネルギーマネジメントシステム10は、太陽光発電装置11及びバイオマス発電装置12に対しては、発電量の収集及び出力の制御を行う。また、エネルギーマネジメントシステム10は、電力需給調整装置14に対しては、蓄電装置13における蓄電量の収集及びグリッド2からの買電量・売電量の上限値の指示を行う。
【0032】
エネルギーマネジメントシステム10は、発電量の制御を行う際に、応答性が高い再生可能エネルギー発電装置を優先して制御する。本実施形態におけるマイクログリッド1には、応答性が高い太陽光発電装置11と応答性が低いバイオマス発電装置12とが接続されている。そのため、エネルギーマネジメントシステム10は、バイオマス発電装置12は出力制御の少ないベース運転をさせ、太陽光発電装置11の出力を優先的に制御する。
【0033】
特に、本実施形態におけるグリッド2は需要家による買電量・売電量に上限を設定しているため、蓄電装置13の蓄電量が最大蓄電量に近づいている場合、太陽光発電装置11の出力を低下させる制御を行う。なお、太陽光発電装置11の出力を低下させることができない場合(例えば、日射がなく発電が停止しているとき)には、バイオマス発電装置12を部分負荷運転させる制御を行うことで、バイオマス発電装置12の出力を低下させてもよい。
【0034】
≪モデル予測制御≫
(概要)
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、需要家3のエネルギー需要及び発電量の予測結果に基づいて、様々な目的関数や制約条件に対して適切にマイクログリッド1を制御する手段として、モデル予測制御(MPC; Model Predictive Control)を採用する。本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、2つのモデル予測制御を定式化する。第1のモデル予測制御は、蓄電装置13における最大蓄電量(SOE; State of Energy)を制御し、発電装置の抑制量を最小限に抑えた上で、グリッド2が需要家3に課している売電量の上限を維持することを目的とする。第2のモデル予測制御は、過去の一定期間内における最大受電電力に応じて基本料金が設定される料金形態を前提として、グリッド2からの受電電力のピークを最小限に抑えることを目的とする。
【0035】
ここで、本実施形態における蓄電システムの計算モデルと、その運用手法について説明する。上記のとおり、蓄電装置13は、蓄電池の他に、パワーコンディショナー及び補機類を含む。補機類は、蓄電装置13内の温度調整機能や制御用電源等を含む。
【0036】
本実施形態では、以下の前提条件を設定する。第1に、蓄電装置13のエネルギー損失は、パワーコンディショナーのみで発生し、パワーコンディショナーが入出力する電力量の割合は一定である。第2に、補機類の消費電力は一定である。第3に、蓄電池が入出力する電力量は、蓄電装置13の最大蓄電量の変化量と等しい。
【0037】
上記の前提条件に基づくと、以下の式(1)~(3)が成り立つ。
【0038】
【数1】
【0039】
ただし、PSystemは、システム出力(蓄電装置13の出力)であり、PBatteryは、蓄電池出力であり、PAUXは、補機電力であり、EBattery,tは、時刻tにおける蓄電量であり、ηPCSは、パワーコンディショナーの有効係数である。
【0040】
補機電力PAUX及び有効係数ηPCSは、システム出力PSystem及び蓄電量EBattery,tに基づいて推定することができる。具体的には、各時刻tにおける蓄電量EBattery,tの実測値の差分と、式(1)~(3)に基づいて推定した蓄電量の差分との残差が最小となる補機電力PAUX及び有効係数ηPCSを算出することができる。
【0041】
(受電一定制御)
本実施形態における蓄電装置13は、グリッド2からの買電量・売電量の上限が同一かつ一定の場合、すなわち受電電力が常に設定値に近づくようにシステム出力を決定する受電一定制御(CPR; Constant Power-Reception Control)を採用する。受電一定制御では、各時刻の蓄電量と定格出力値とに基づいて定まるシステム出力の制約条件の中で、受電電力が設定値に最も近づく出力値が決定される。以下、受電電力の設定値は、「受電目標値」とも呼ぶ。受電目標値は、グリッド2の料金形態及び応答遅れ等による制御誤差を考慮して定めればよい。受電一定制御に関しては、下記参考文献1に開示されている。
【0042】
〔参考文献1〕Y Matsunami, et al., "Development of a grid independent energy system using energy supply and demand prediction (Part 1) Concept and problem identification from operational data", Vol.9, pp.1-4, Technical papers of annual meeting, The Society of Heating, Air-Conditioning and Sanitary Engineers of Japan, 2021.
【0043】
(定式化)
モデル予測制御では、与えられた予測期間の中で目的関数を定め、各時刻の操作量を変数とした最適化問題を逐次的に解くことが求められる。以下、第1のモデル予測制御である最大エネルギー貯蔵量制御、及び第2のモデル予測制御であるエネルギー供給量平準化制御について、詳細に説明する。
【0044】
((最大エネルギー貯蔵量制御))
最大エネルギー貯蔵量制御(MCC; Maximum Capacity Control)は、逆潮流を防止することを目的として、蓄電装置13の最大蓄電量を制御するモデル予測制御である。図2は、最大エネルギー貯蔵量制御の一例を示す図である。最大エネルギー貯蔵量制御の目的関数及び制約条件は、式(4)で表される。なお、「^」は本来直後の文字の真上に表記されるべき記号であるが、テキスト記法の制限により本文中では直前に表記している。数式中では本来の文字の真上に表記する。
【0045】
【数2】
【0046】
ただし、^EBattery_maxは最大蓄電量の予測値であり、EBattery_setは最大蓄電量の閾値である。^PLoadは消費電力の予測値であり、^PPV_MAXは太陽光発電装置11の最大発電量の予測値であり、^PCHPはバイオマス発電装置12の発電量の予測値であり、^PSystemはシステム出力の予測値であり、^PGridは受電電力の予測値であり、^rPVは太陽光発電装置11の出力率であり、fCPRは受電一定制御の関数である。
【0047】
最大エネルギー貯蔵量制御では、予測期間Twにおける最大蓄電量の予測値^EBattery_maxと、予め設定した最大蓄電量の閾値EBattery_setとの残差二乗を目的関数objMCCとし、目的関数objMCCを最小化する各時刻の太陽光発電装置の出力率rPVを最適解とした。予測期間Twにおける最大蓄電量^EBattery_maxが最大蓄電量の閾値EBattery_setを超過することが予測された場合、予測期間Twにおける太陽光発電装置11の出力に出力率rPVを乗じる。これにより、蓄電装置13の満充電を回避し、グリッド2への逆潮流を防止することができる。
【0048】
((エネルギー供給量平準化制御))
エネルギー供給量平準化制御(ESL; Energy Supply Leveling)は、受電電力のピークを受電目標値まで下げることを目的として、受電一定制御の設定値を制御するモデル予測制御である。図3は、エネルギー供給量平準化制御の一例を示す図である。エネルギー供給量平準化制御の目的関数及び制約条件は、式(5)で表される。
【0049】
【数3】
【0050】
ただし、^PGrid_maxは最大受電電力の予測値であり、PGrid_targetは受電電力の目標値である。
【0051】
エネルギー供給量平準化制御では、予測期間Twにおける受電電力の最大値PGrid_maxと、受電電力の目標値PGrid_targetとの残差二乗を目的関数objESLとする。予測期間Twにおける受電一定制御の設定値PGrid_setを変数とし、目的関数objESLを用いて最大受電電力の予測値^PGrid_maxが最も低くなる受電一定制御の設定値PGrid_setを探索する。
【0052】
≪長期日射量予測≫
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAXを予測するために、モデル予測制御に長期日射量予測を採用する。本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、長期日射量の不確実性に対応するために、高度な深層学習モデルを利用する。
【0053】
従来からモデル予測制御に日射量予測を採用することが広く研究されている。従来のモデル予測制御では、最適解を得るためにより長い予測期間を必要とするが、予測の精度は最終的な最適化結果に影響を与える。一般的なアプローチは、回帰モデルによる予測を反復し、複数ステップでの予測により目的を達成することである。しかしながら、日射量の不確実性により、予測範囲が広がるほど予測の精度が低下する傾向がある。各ステップにおける予測誤差が蓄積し、最終的な結果では大きな誤差となることが一因である。
【0054】
回帰モデルによって引き起こされる誤差蓄積の問題を回避するために、本実施形態では高度な深層学習モデルを利用して、長期時系列データを処理及び学習する。従来のディープニューラルネットワークは、多層順伝播型ニューラルネットワークを積層する。ニューラルネットワークの各層間の非線形活性化関数は、ディープニューラルネットワークを特徴づける大きな要素である。しかしながら、この種のネットワークでは、ネットワーク全体の計算プロセスが並列であり、時間依存性がない。そのため、時系列データを効果的に処理及び学習することができない。
【0055】
従来のディープニューラルネットワークの欠点を考慮し、本実施形態では、モデルを構築するための基本単位として、長期短期記憶(LSTM; Long Short Term Memory)を利用する。長期短期記憶は時系列処理において、独自のネットワーク構造上の利点を有する。
【0056】
図4は、長期短期記憶のネットワーク構造の一例を示す図である。図4に示されているように、長期短期記憶の主要構造には、3つの異なるゲート構造が含まれる。長期短期記憶は、異なるゲート構造の重みを制御することによって、異なる時間ステップで出力される情報の変化を制御する。
【0057】
長期短期記憶では、その性質上、時系列データを繰り返し入力して処理する必要がある。
【0058】
本実施形態における長期短期記憶は、例えば、気象庁が収集し公開している天気予報データを用いて学習される。天気予報データは、主に2つの部分で構成されている。
【0059】
第1の部分は、日(年の何日目か)、週(年の何週目か)、月、時間及び日の出(日が昇っている状態か否か)からなる5つの特徴を含む。年、週及び月は、一年間における異なる観測点の時間変化を表す。これは、太陽の日射量が季節や月によって大きく異なるため、これらのデータは予測に役立つように人工的に構築されているためである。第2の部分は、主に日射量と温度を含む実測データである。日射量は、長期短期記憶における予測対象である。
【0060】
<エネルギーマネジメントシステムのハードウェア構成>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムのハードウェア構成を、図5を参照しながら説明する。
【0061】
≪コンピュータのハードウェア構成≫
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、例えばコンピュータにより実現される。図5は、本実施形態におけるコンピュータ500のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0062】
図5に示されているように、コンピュータ500は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、HDD(Hard Disk Drive)504、入力装置505、表示装置506、通信I/F(Interface)507及び外部I/F508を有する。CPU501、ROM502及びRAM503は、いわゆるコンピュータを形成する。コンピュータ500の各ハードウェアは、バスライン509を介して相互に接続されている。なお、入力装置505及び表示装置506は外部I/F508に接続して利用する形態であってもよい。
【0063】
CPU501は、ROM502又はHDD504等の記憶装置からプログラムやデータをRAM503上に読み出し、処理を実行することで、コンピュータ500全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0064】
ROM502は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROM502は、HDD504にインストールされている各種プログラムをCPU501が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶装置として機能する。具体的には、ROM502には、コンピュータ500の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、EFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラムや、OS(Operating System)設定、ネットワーク設定等のデータが格納されている。
【0065】
RAM503は、電源を切るとプログラムやデータが消去される揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。RAM503は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等である。RAM503は、HDD504にインストールされている各種プログラムがCPU501によって実行される際に展開される作業領域を提供する。
【0066】
HDD504は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。HDD504に格納されるプログラムやデータには、コンピュータ500全体を制御する基本ソフトウェアであるOS、及びOS上において各種機能を提供するアプリケーション等がある。なお、コンピュータ500はHDD504に替えて、記憶媒体としてフラッシュメモリを用いる記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive等)を利用するものであってもよい。
【0067】
入力装置505は、ユーザが各種信号を入力するために用いるタッチパネル、操作キーやボタン、キーボードやマウス、音声等の音データを入力するマイクロホン等である。
【0068】
表示装置506は、画面を表示する液晶や有機EL(Electro-Luminescence)等のディスプレイ、音声等の音データを出力するスピーカ等で構成されている。
【0069】
通信I/F507は、通信ネットワークに接続し、コンピュータ500がデータ通信を行うためのインタフェースである。
【0070】
外部I/F508は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、ドライブ装置510等がある。
【0071】
ドライブ装置510は、記録媒体511をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体511には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体511には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。これにより、コンピュータ500は外部I/F508を介して記録媒体511の読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0072】
なお、HDD504にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体511が外部I/F508に接続されたドライブ装置510にセットされ、記録媒体511に記録された各種プログラムがドライブ装置510により読み出されることでインストールされる。あるいは、HDD504にインストールされる各種プログラムは、通信I/F507を介して、通信ネットワークとは異なる他のネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0073】
<エネルギーマネジメントシステムの機能構成>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムの機能構成を、図6を参照しながら説明する。図6は本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0074】
≪エネルギーマネジメントシステムの機能構成≫
図6に示されているように、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10は、運転データ収集部101、発電量予測部102、消費量予測部103、発電制御部104及び蓄電制御部105を含む。
【0075】
運転データ収集部101、発電量予測部102、消費量予測部103、発電制御部104及び蓄電制御部105は、図5に示されているHDD504からRAM503上に展開されたプログラムがCPU501に実行させる処理によって実現される。
【0076】
運転データ収集部101は、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12及び蓄電装置13から運転データを収集する。運転データ収集部101は、所定の計測間隔で運転データを収集する。所定の計測間隔は、例えば1分としてもよい。計測間隔は、収集元の装置に応じて異なってもよい。
【0077】
太陽光発電装置11から収集される運転データには、太陽光発電装置11の発電量が含まれる。バイオマス発電装置12から収集される運転データには、バイオマス発電装置12の発電量及び熱回収量が含まれる。蓄電装置13から収集される運転データには、蓄電装置13の蓄電量及びシステム出力が含まれる。
【0078】
発電量予測部102は、運転データ収集部101により収集された運転データに基づいて、所定の予測期間における太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX及びバイオマス発電装置12の発電量PCHPを予測する。発電量の予測は、各装置が有するセンサ等の実測値に基づいて算出してもよいし、過去の運転データに基づく回帰モデルに基づいて行ってもよい。回帰モデルの構造は、機械学習モデルであってもよく、ニューラルネットワークであってもよく、ディープニューラルネットワークであってもよい。太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAXは、ディープニューラルネットワークの一例である長期短期記憶に基づく日射予測結果を用いて予測してもよい。
【0079】
消費量予測部103は、運転データ収集部101により収集された運転データに基づいて、所定の予測期間におけるマイクログリッド1の電力消費量PLoadを予測する。消費量予測部103は、熱エネルギー消費量を予測してもよい。電力消費量の予測は、各装置が有するセンサ等の実測値に基づいて算出してもよいし、過去の運転データに基づく回帰モデルに基づいて行ってもよい。回帰モデルの構造は、機械学習モデルであってもよく、ニューラルネットワークであってもよく、ディープニューラルネットワークであってもよい。
【0080】
発電制御部104は、発電量予測部102により予測された太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX及びバイオマス発電装置12の発電量PCHPと、消費量予測部103により予測されたマイクログリッド1の電力消費量PLoadとに基づいて、太陽光発電装置11の出力率rPVを最適化する。出力率rPVの最適化は、最大エネルギー貯蔵量制御の目的関数objMCCに基づいて行う。発電制御部104は、最適化された出力率rPVを含む運転計画を太陽光発電装置11に送信する。
【0081】
発電制御部104は、所定の制御間隔で運転計画を送信する。所定の制御間隔は、例えば10分としてもよい。制御間隔は、送信先の装置に応じて異なってもよい。例えば、送信先の装置の応答性に応じて、制御間隔を決定してもよい。すなわち、応答性の低い装置に対しては、制御間隔を長くし、応答性の高い装置に対しては、制御間隔を短くしてもよい。
【0082】
応答性の低い装置は、安定した運転が継続することから、定期保全の間隔を長めにし、応答性の高い装置は、日常の運転データを状態監視することで保全の省力化を図ってもよい。応答性の高い装置は、制御間隔を短くすれば、発電量予測値の変動に対して高い応答性で制御でき、蓄電量制御の精度を高めることが出来る。
【0083】
例えば、バイオマス発電装置12に対する制御間隔は、太陽光発電装置11に対する制御間隔よりも長く設定してもよい。例えば、バイオマス発電装置12に対する制御間隔は、1時間又は1日等としてもよい。本実施形態において、バイオマス発電装置12はベース機器として運転するため、出力を制御することは稀である。あるいは、バイオマス発電装置12に対しては、運転計画を定期的に送信しなくてもよい。
【0084】
蓄電制御部105は、発電量予測部102により予測された太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX及びバイオマス発電装置12の発電量PCHPと、消費量予測部103により予測されたマイクログリッド1の電力消費量PLoadと、発電制御部104により最適化された太陽光発電装置11の出力率rPVとに基づいて、受電一定制御の設定値PGrid_setを最適化する。受電一定制御の設定値PGrid_setの最適化は、エネルギー供給量平準化制御の目的関数objESLに基づいて行う。蓄電制御部105は、最適化された設定値PGrid_setを含む運転計画を電力需給調整装置14に送信する。
【0085】
<エネルギーマネジメントシステムの処理手順>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステム10が実行するエネルギー管理方法の処理手順を、図7を参照しながら説明する。図7は、本実施形態におけるエネルギー管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0086】
ステップS1において、エネルギーマネジメントシステム10の運転データ収集部101は、太陽光発電装置11、バイオマス発電装置12及び蓄電装置13から運転データを収集する。運転データ収集部101は、収集した運転データをHDD504等の記憶装置に記憶する。
【0087】
ステップS2において、エネルギーマネジメントシステム10の発電量予測部102は、記憶装置に記憶されている運転データを読み出す。発電量予測部102は、読み出した運転データに基づいて、所定の予測期間における太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAXを予測する。また、発電量予測部102は、バイオマス発電装置12の発電量PCHPを予測する。発電量予測部102は、予測した太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX及びバイオマス発電装置12の発電量PCHPを発電制御部104及び蓄電制御部105に送る。
【0088】
ステップS3において、エネルギーマネジメントシステム10の消費量予測部103は、記憶装置に記憶されている運転データを読み出す。消費量予測部103は、読み出した運転データに基づいて、所定の予測期間におけるマイクログリッド1の電力消費量PLoadを予測する。消費量予測部103は、予測したマイクログリッド1の電力消費量PLoadを発電制御部104及び蓄電制御部105に送る。
【0089】
ステップS4において、エネルギーマネジメントシステム10の発電制御部104は、発電量予測部102から太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX及びバイオマス発電装置12の発電量PCHPを受け取る。また、発電制御部104は、消費量予測部103からマイクログリッド1の電力消費量PLoadを受け取る。
【0090】
発電制御部104は、太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX、バイオマス発電装置12の発電量PCHP、及びマイクログリッド1の電力消費量PLoadに基づいて、太陽光発電装置11の出力率rPVを最適化する。発電制御部104は、最適化された太陽光発電装置11の出力率rPVを含む運転計画を生成し、太陽光発電装置11に送信する。
【0091】
太陽光発電装置11では、エネルギーマネジメントシステム10から受信した運転計画に含まれる出力率rPVに従って、配電ラインEに出力する電力を制御する。
【0092】
ステップS5において、エネルギーマネジメントシステム10の蓄電制御部105は、発電量予測部102から太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX及びバイオマス発電装置12の発電量PCHPを受け取る。また、蓄電制御部105は、消費量予測部103からマイクログリッド1の電力消費量PLoadを受け取る。さらに、蓄電制御部105は、発電制御部104から太陽光発電装置11の出力率rPVを受け取る。
【0093】
蓄電制御部105は、太陽光発電装置11の最大発電量PPV_MAX、バイオマス発電装置12の発電量PCHP、マイクログリッド1の電力消費量PLoad、及び太陽光発電装置11の出力率rPVに基づいて、受電一定制御の設定値PGrid_setを最適化する。蓄電制御部105は、最適化された受電一定制御の設定値PGrid_setを含む運転計画を作成し、電力需給調整装置14に送信する。
【0094】
電力需給調整装置14では、エネルギーマネジメントシステム10から受信した運転計画に含まれる設定値PGrid_setに従って、蓄電装置13の蓄電量又は放電量を制御する。
【0095】
<実施形態の効果>
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、応答性が異なる複数の再生可能エネルギー発電装置と蓄電装置とを含むマイクログリッドにおいて、蓄電装置の蓄電量に基づいて、応答性が高い再生可能エネルギー発電装置の出力を制御する。言い替えると、エネルギーマネジメントシステムは、応答性が低い再生可能エネルギー発電装置の出力を制御しない。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、制御負荷の低減、エネルギー供給の安定化、発電装置及び蓄電装置の安定化等を実現することができる。すなわち、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、種類が異なる複数の発電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することができる。
【0096】
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、需要家からの売電量がグリッドから課せられている上限に近づくと、応答性が高い再生可能エネルギー発電装置の出力が低下するように制御する。また本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、需要家の買電量がグリッドから課せられている上限を超えないように、応答性が高い再生可能エネルギー発電装置の出力を極力抑制しないように制御する。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、グリッドから課せられている買電量・売電量の上限を維持するように適切に発電量を制御することができる。
【0097】
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、応答性が異なる複数の再生可能エネルギー発電装置を含むマイクログリッドにおいて、応答性が高い再生可能エネルギー発電装置の制御間隔を、応答性が低い再生可能エネルギー発電装置の制御間隔よりも短く設定する。本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムでは、応答性が高い再生可能エネルギー発電装置の出力を優先して制御するため、応答性が低い再生可能エネルギー発電装置を頻繁に制御すると非効率である。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、種類が異なる複数の発電装置を含むマイクログリッドをさらに効率的に運用することができる。
【0098】
本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、太陽光発電装置、バイオマス発電装置及び蓄電装置を含むマイクログリッドにおいて、蓄電装置の蓄電量に基づいて、太陽光発電装置の出力を制御する。バイオマス発電装置は、発電するために数時間の余熱を必要とする、出力の調整が困難である、燃料の供給を止めることができない等の制約があるため、応答性が低い。本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムは、応答性が低いバイオマス発電装置をベース機器として運転し、太陽光発電装置の出力を優先して制御する。したがって、本実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムによれば、太陽光発電装置及びバイオマス発電装置を含むマイクログリッドを効率的に運用することができる。
【0099】
[補足]
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等の機器を含むものとする。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 マイクログリッド
2 グリッド
3 需要家
10 エネルギーマネジメントシステム
11 太陽光発電装置
12 バイオマス発電装置
13 蓄電装置
14 電力需給調整装置
101 運転データ収集部
102 発電量予測部
103 消費量予測部
104 発電制御部
105 蓄電制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7