(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003431
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】多層伝送線路板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20240105BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H05K1/03 630F
H05K1/03 610T
H01L23/12 N
H01L23/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102562
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 悦男
(72)【発明者】
【氏名】小林 譲
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
(57)【要約】
【課題】伝送損失が抑制された多層伝送線路板、及び該多層伝送線路板を有する半導体パッケージを提供する。
【解決手段】一対のグランド層と、前記一対のグランド層を両面に有する絶縁層と、前記絶縁層内に設けられた信号線と、を備え、前記絶縁層が、第一の樹脂層と、第一の複合層と、第二の樹脂層と、第三の樹脂層と、第二の複合層と、第四の樹脂層と、をこの順で含み、前記第一の複合層及び前記第二の複合層は、繊維基材及び樹脂組成物の硬化物を含有する層であり、前記第一の樹脂層、前記第二の樹脂層、前記第三の樹脂層及び前記第四の樹脂層は、繊維基材を含有しない樹脂組成物の硬化物から構成される層であり、前記信号線は、前記第二の樹脂層の前記第三の樹脂層側の面上に形成され、かつ該信号線は、前記第二の樹脂層に積層された前記第三の樹脂層に埋め込まれており、前記各層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率が特定の関係を有する多層伝送線路板、及び該多層伝送線路板を有する半導体パッケージである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のグランド層と、
前記一対のグランド層を両面に有する絶縁層と、
前記絶縁層内に設けられた信号線と、を備え、
前記絶縁層が、第一の樹脂層と、第一の複合層と、第二の樹脂層と、第三の樹脂層と、第二の複合層と、第四の樹脂層と、をこの順で含み、
前記第一の複合層及び前記第二の複合層は、繊維基材及び樹脂組成物の硬化物を含有する層であり、
前記第一の樹脂層、前記第二の樹脂層、前記第三の樹脂層及び前記第四の樹脂層は、繊維基材を含有しない樹脂組成物の硬化物から構成される層であり、
前記信号線は、前記第二の樹脂層の前記第三の樹脂層側の面上に形成され、かつ該信号線は、前記第二の樹脂層に積層された前記第三の樹脂層に埋め込まれており、
前記第一の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R1)及び前記第二の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R2)が、いずれも、前記第一の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(C1)より低く、
前記第三の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R3)及び前記第四の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R4)が、いずれも、前記第二の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(C2)より低い、多層伝送線路板。
【請求項2】
前記比誘電率(C1)と前記比誘電率(R1)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R1)〕、前記比誘電率(C1)と前記比誘電率(R2)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R2)〕、前記比誘電率(C2)と前記比誘電率(R3)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R3)〕、及び前記比誘電率(C2)と前記比誘電率(R4)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R4)〕が、いずれも、0.03以上である、請求項1に記載の多層伝送線路板。
【請求項3】
前記比誘電率(R1)、前記比誘電率(R2)、前記比誘電率(R3)及び前記比誘電率(R4)が、いずれも、3.6以下である、請求項1又は2に記載の多層伝送線路板。
【請求項4】
前記繊維基材が、ガラスクロスである、請求項1又は2に記載の多層伝送線路板。
【請求項5】
前記第一の複合層の厚さ及び前記第二の複合層の厚さが、いずれも、30~240μmである、請求項1又は2に記載の多層伝送線路板。
【請求項6】
前記第一の樹脂層の厚さ、前記第二の樹脂層の厚さ、前記第三の樹脂層の厚さ及び前記第四の樹脂層の厚さが、いずれも、10~80μmである、請求項1又は2に記載の多層伝送線路板。
【請求項7】
前記信号線が、差動配線である、請求項1又は2に記載の多層伝送線路板。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の多層伝送線路板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、多層伝送線路板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピューターなどの電子機器では、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。また、上述した電子機器の他に、自動車、交通システム関連等のITS分野及び室内の近距離通信分野でも、高周波無線信号を扱う新規システムの実用化又は実用計画が進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に用いられる多層伝送線路板には、高周波信号の伝送損失を低減することが求められている。
【0003】
伝送損失を低減する方法として、例えば、信号線の表面粗さを小さくする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、伝送損失を低減する方法として、基板材料の誘電正接を小さくする方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の通り、近年における伝送損失の低減に対する要求は一層高まりつつあり、上述の方法のみによっては十分に対応することが困難になっている。
【0006】
本実施形態は、このような現状に鑑み、伝送損失が抑制された多層伝送線路板、及び該多層伝送線路板を有する半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記の課題を解決すべく検討を進めた結果、下記の本実施形態により課題を解決できることを見出した。
すなわち、本実施形態は、下記[1]~[8]に関する。
[1]一対のグランド層と、
前記一対のグランド層を両面に有する絶縁層と、
前記絶縁層内に設けられた信号線と、を備え、
前記絶縁層が、第一の樹脂層と、第一の複合層と、第二の樹脂層と、第三の樹脂層と、第二の複合層と、第四の樹脂層と、をこの順で含み、
前記第一の複合層及び前記第二の複合層は、繊維基材及び樹脂組成物の硬化物を含有する層であり、
前記第一の樹脂層、前記第二の樹脂層、前記第三の樹脂層及び前記第四の樹脂層は、繊維基材を含有しない樹脂組成物の硬化物から構成される層であり、
前記信号線は、前記第二の樹脂層の前記第三の樹脂層側の面上に形成され、かつ該信号線は、前記第二の樹脂層に積層された前記第三の樹脂層に埋め込まれており、
前記第一の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R1)及び前記第二の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R2)が、いずれも、前記第一の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(C1)より低く、
前記第三の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R3)及び前記第四の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R4)が、いずれも、前記第二の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(C2)より低い、多層伝送線路板。
[2]前記比誘電率(C1)と前記比誘電率(R1)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R1)〕、前記比誘電率(C1)と前記比誘電率(R2)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R2)〕、前記比誘電率(C2)と前記比誘電率(R3)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R3)〕、及び前記比誘電率(C2)と前記比誘電率(R4)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R4)〕が、いずれも、0.03以上である、上記[1]に記載の多層伝送線路板。
[3]前記比誘電率(R1)、前記比誘電率(R2)、前記比誘電率(R3)及び前記比誘電率(R4)が、いずれも、3.6以下である、上記[1]又は[2]に記載の多層伝送線路板。
[4]前記繊維基材が、ガラスクロスである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の多層伝送線路板。
[5]前記第一の複合層の厚さ及び前記第二の複合層の厚さが、いずれも、30~240μmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の多層伝送線路板。
[6]前記第一の樹脂層の厚さ、前記第二の樹脂層の厚さ、前記第三の樹脂層の厚さ及び前記第四の樹脂層の厚さが、いずれも、10~80μmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の多層伝送線路板。
[7]前記信号線が、差動配線である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の多層伝送線路板。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の多層伝送線路板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、伝送損失が抑制された多層伝送線路板、及び該多層伝送線路板を有する半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の多層伝送線路板の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】本実施形態の多層伝送線路板の別の例を示す模式的断面図である。
【
図3】比較例1及び2で作製された多層伝送線路板の模式的断面図である。
【
図4】比較例3で作製された多層伝送線路板の模式的断面図である。
【
図5】比較例4で作製された多層伝送線路板の模式的断面図である。
【
図6】比較例5で作製された多層伝送線路板の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
例えば、数値範囲「X~Y」(X、Yは実数)という表記は、X以上、Y以下である数値範囲を意味する。そして、本明細書における「X以上」という記載は、X及びXを超える数値を意味する。また、本明細書における「Y以下」という記載は、Y及びY未満の数値を意味する。
本明細書中に記載されている数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「樹脂組成物」とは、後述する各成分の混合物、当該混合物を半硬化させた物を含む。
【0012】
本明細書において、「固形分」とは、溶剤以外の成分を意味し、室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。ここで、本明細書において室温とは25℃を示す。
【0013】
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本実施形態に係る樹脂組成物の効果を奏する機序を限定するものではない。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0014】
[多層伝送線路板]
図1は、本実施形態の多層伝送線路板の一例を示す模式的断面図である。
図1に示すように、多層伝送線路板10は、一対のグランド層11、12と、
一対のグランド層11、12を両面に有する絶縁層13と、
絶縁層13内に設けられた信号線14と、を備える。
【0015】
<グランド層>
グランド層11、12は、絶縁層13の両面に設けられる層である。
グランド層11、12としては、例えば、金属箔から構成される層が挙げられる。
金属箔としては、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性及びコストの観点から、銅箔が好ましい。
金属箔は、防錆性、耐薬品性及び耐熱性の観点から、例えば、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト等によるバリアー層を有していてもよい。
また、金属箔は、絶縁層との接着性を向上させる観点から、例えば、表面粗化処理、シランカップリング剤等による表面処理が施されていてもよい。
【0016】
金属箔は、市販品の金属箔であってもよい。市販品の金属箔としては、例えば、銅箔である「F2-WS」(古河電気工業株式会社製、商品名、粗化面表面粗さRz=2.0μm)、「FV-WS」(古河電気工業株式会社製、商品名、粗化面表面粗さRz=1.5μm)、「3EC-VLP」(三井金属鉱業株式会社製、商品名、粗化面表面粗さRz=3.0μm)等が挙げられる。
【0017】
グランド層11、12は、1種の金属材料からなる単層構造であってもよく、複数の金属材料からなる単層構造であってもよい。また、グランド層11、12は、異なる材質の金属層を複数積層した積層構造であってもよい。
【0018】
グランド層11、12の厚さは、特に限定されず、求める性能等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、10~50μmである。
【0019】
<絶縁層>
絶縁層13は、第一の樹脂層13R(1)と、第一の複合層13C(1)と、第二の樹脂層13R(2)と、第三の樹脂層13R(3)と、第二の複合層13C(2)と、第四の樹脂層13R(4)と、をこの順で含む。
【0020】
本実施形態の多層伝送線路板において、第一の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R1)及び第二の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R2)は、いずれも、第一の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(C1)より低い。
また、本実施形態の多層伝送線路板において、第三の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R3)及び第四の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(R4)は、いずれも、第二の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(C2)より低い。
なお、本実施形態における比誘電率は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0021】
本実施形態の多層伝送線路板においては、各層の樹脂組成物の硬化物の比誘電率が上記関係を有することによって、伝送損失を抑制することができる。その原因の詳細については定かではないが、以下のように推察される。
本実施形態の多層伝送線路板は、一方のグランド層と信号線との間、及び、他方のグランド層と信号線との間に、各々、絶縁層を有する。そして、当該絶縁層は、グランド層及び信号線の近傍に、各々、比誘電率が相対的に低い樹脂層を有し、当該樹脂層同士の間に相対的に比誘電率が高い樹脂組成物の硬化物を含む複合層を有する。当該構成を有することによって、信号を伝送する際に樹脂層と複合層とでインピーダンスに違いが生じ電圧分配が変わり、信号線及びグランド層の近傍に存在する樹脂層がより高電圧になると考えられる。これによって、伝送信号の電気エネルギーは、信号線及びグランド層近傍に集中するようになり、伝送損失が抑制されたと推測される。
また、本実施形態の多層伝送線路板は、第一の複合層及び第二の複合層を有することによって、機械強度、取り扱い性及び生産性が良好になる傾向にある。
【0022】
各層の比誘電率を上記関係に調整する方法は、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。例えば、各層の形成に用いる樹脂組成物に含有される成分において、樹脂組成物の硬化物の比誘電率に影響を及ぼす成分の配合比を調整することによって、各層の比誘電率を上記関係に調整すればよい。
【0023】
比誘電率(C1)及び比誘電率(C2)は、特に限定されないが、伝送損失をより抑制するという観点から、いずれも、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.4以下である。
また、比誘電率(C1)及び比誘電率(C2)は、特に限定されないが、製造容易性の観点から、2.0以上であってもよく、2.5以上であってもよく、3.0以上であってもよい。
なお、比誘電率(C1)及び比誘電率(C2)のうち、いずれか一方のみが上記範囲であってもよい。
【0024】
比誘電率(R1)、比誘電率(R2)、比誘電率(R3)及び比誘電率(R4)は、特に限定されないが、伝送損失をより抑制するという観点から、いずれも、好ましくは3.6以下、より好ましくは3.4以下、さらに好ましくは3.2以下である。
また、比誘電率(R1)、比誘電率(R2)、比誘電率(R3)及び比誘電率(R4)は、特に限定されないが、製造容易性の観点から、1.8以上であってもよく、2.3以上であってもよく、2.8以上であってもよい。
なお、比誘電率(R1)、比誘電率(R2)、比誘電率(R3)及び比誘電率(R4)のうち、いずれか1つ、2つ又は3つのみが上記範囲であってもよい。
【0025】
比誘電率(C1)と比誘電率(C2)との差の絶対値は小さいことが好ましく、特に限定されないが、好ましくは0~0.1、より好ましくは0~0.05、さらに好ましくは0~0.02である。
【0026】
比誘電率(R1)と比誘電率(R2)との差の絶対値、比誘電率(R2)と比誘電率(R3)との差の絶対値、比誘電率(R3)と比誘電率(R4)との差の絶対値は小さいことが好ましく、特に限定されないが、好ましくは0~0.1、より好ましくは0~0.05、さらに好ましくは0~0.02である。
なお、比誘電率(R1)と比誘電率(R2)との差の絶対値、比誘電率(R2)と比誘電率(R3)との差の絶対値、比誘電率(R3)と比誘電率(R4)との差の絶対値のうち、いずれか1つ又は2つのみが上記範囲であってもよい。
【0027】
比誘電率(C1)と比誘電率(R1)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R1)〕、比誘電率(C1)と比誘電率(R2)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R2)〕、比誘電率(C2)と比誘電率(R3)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R3)〕、及び、比誘電率(C2)と比誘電率(R4)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R4)〕は、特に限定されないが、伝送損失をより抑制するという観点から、いずれも、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.08以上である。
また、比誘電率(C1)と比誘電率(R1)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R1)〕、比誘電率(C1)と比誘電率(R2)との差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R2)〕、比誘電率(C2)と比誘電率(R3)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R3)〕、及び、比誘電率(C2)と比誘電率(R4)との差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R4)〕は、特に限定されないが、製造容易性の観点から、1.0以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.6以下であってもよい。
なお、差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R1)〕、差〔比誘電率(C1)-比誘電率(R2)〕、差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R3)〕及び差〔比誘電率(C2)-比誘電率(R4)〕のうち、いずれか1つ、2つ又は3つのみが上記範囲であってもよい。
【0028】
次に、絶縁層13に含まれる各層についてより詳細に説明する。
【0029】
(第一及び第二の複合層)
多層伝送線路板10において、第一の複合層13C(1)は、第一の樹脂層13R(1)と第二の樹脂層13R(2)との間に配置されており、第二の複合層13C(2)は、第三の樹脂層13R(3)と第四の樹脂層13R(4)との間に配置されている。
本実施形態の多層伝送線路板は、第一の複合層及び第二の複合層を有することによって、機械強度、取り扱い性及び生産性が良好になる傾向にある。
【0030】
第一の複合層13C(1)及び第二の複合層13C(2)は、繊維基材及び樹脂組成物の硬化物を含有する層である。
第一の複合層13C(1)及び第二の複合層13C(2)が含有する繊維基材は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
第一の複合層13C(1)及び第二の複合層13C(2)が含有する樹脂組成物の硬化物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0031】
〔繊維基材〕
繊維基材としては、例えば、ヤーンを高密度に編んだもの、開繊された繊維糸が、比誘電率の不均一性をより軽減する観点から好ましい。
繊維基材の材質としては、例えば、紙、コットンリンター等の天然繊維;ガラス繊維、アスベスト等の無機物繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、比誘電率の不均一性をより軽減する観点から、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラスクロスが好ましい。ガラスクロスは、縦糸と横糸に、含浸する樹脂に近い比誘電率のガラス繊維糸を用いたもの等を用いることで比誘電率の不均一性をさらに軽減できる。また、縦糸と横糸に同種のガラス繊維糸を用いれば、同様に比誘電率の不均一性をより軽減できる。
繊維基材の比誘電率は、比誘電率の不均一性を軽減する観点から、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。
【0032】
〔第一の複合層及び第二の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物〕
第一の複合層及び第二の複合層に含有される樹脂組成物の硬化物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂組成物に含有される熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び導体接着性の観点から、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂以外に、例えば、エラストマー、硬化剤等の樹脂成分;無機充填材;硬化促進剤;難燃剤;その他の添加剤などを含有していてもよい。
これらは各々について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
第一の複合層13C(1)中における樹脂組成物の硬化物の含有量及び第二の複合層13C(2)中における樹脂組成物の硬化物の含有量は、特に限定されないが、いずれも、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
また、第一の複合層13C(1)中における樹脂組成物の硬化物の含有量及び第二の複合層13C(2)中における樹脂組成物の硬化物の含有量は、特に限定されないが、いずれも、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。
なお、第一の複合層13C(1)中における樹脂組成物の硬化物の含有量及び第二の複合層13C(2)中における樹脂組成物の硬化物の含有量のうち、いずれか一方のみが上記範囲であってもよい。
【0036】
第一の複合層13C(1)の厚さ及び第二の複合層13C(2)の厚さは、特に限定されないが、多層伝送線路板の機械強度の観点から、いずれも、好ましくは30~240μm、より好ましくは40~150μm、さらに好ましくは60~130μmである。
なお、第一の複合層13C(1)の厚さ及び第二の複合層13C(2)の厚さのうち、いずれか一方のみが上記範囲であってもよい。
【0037】
第一の複合層13C(1)の厚さと第二の複合層13C(2)の厚さとの差の絶対値は、多層伝送線路板の反りを抑制するという観点から小さい方が好ましく、特に限定されないが、好ましくは0~20μm、より好ましくは0~10μm、さらに好ましくは0~5μmである。
【0038】
第一の複合層13C(1)の10GHzにおける比誘電率及び第二の複合層13C(2)の10GHzにおける比誘電率は、特に限定されないが、伝送損失をより抑制するという観点から、いずれも、好ましくは4.7以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.3以下である。
また、第一の複合層13C(1)の10GHzにおける比誘電率及び第二の複合層13C(2)の10GHzにおける比誘電率は、特に限定されないが、いずれも、3.0以上であってもよく、3.5以上であってもよく、4.0以上であってもよい。
なお、第一の複合層13C(1)の10GHzにおける比誘電率及び第二の複合層13C(2)の10GHzにおける比誘電率のうち、いずれか一方のみが上記範囲であってもよい。
第一の複合層13C(1)の10GHzにおける比誘電率は、比誘電率(C1)よりも高いことが好ましく、第二の複合層13C(2)の10GHzにおける比誘電率は、比誘電率(C2)よりも高いことが好ましい。
【0039】
(第一~第四の樹脂層)
多層伝送線路板10において、第一の樹脂層13R(1)は、グランド層12と第一の複合層13C(1)との間に配置されており、第二の樹脂層13R(2)は、第一の複合層13C(1)と第三の樹脂層13R(3)との間に配置されている。
また、第三の樹脂層13R(3)は、第二の樹脂層13R(2)と第二の複合層13C(2)との間に配置されており、第四の樹脂層13R(4)は、第二の複合層13C(2)とグランド層11との間に配置されている。
なお、以下の説明で、「第一の樹脂層13R(1)、第二の樹脂層13R(2)、第三の樹脂層13R(3)及び第四の樹脂層13R(4)」を「第一~第四の樹脂層13R(1)~(4)」と記載する場合がある。
【0040】
第一~第四の樹脂層13R(1)~(4)は、繊維基材を含有しない樹脂組成物の硬化物から構成される層である。
第一~第四の樹脂層13R(1)~(4)を構成する樹脂組成物の硬化物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
〔第一~第四の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物〕
第一~第四の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
第一~第四の樹脂層に使用できる熱硬化性樹脂組成物を構成する成分についての説明は、第一の複合層及び第二の複合層に使用できる熱硬化性樹脂組成物における説明と同じである。各層の比誘電率の調整は、上述の通り、比誘電率に影響を及ぼす成分の配合量の調整によって行えばよい。
【0042】
第一~第四の樹脂層13R(1)~(4)の厚さは、特に限定されないが、伝送損失をより抑制するという観点から、いずれも、好ましくは10~80μm、より好ましくは15~60μm、さらに好ましくは20~40μmである。
なお、第一~第四の樹脂層13R(1)~(4)の厚さのうち、いずれか1つ、2つ又は3つのみが上記範囲であってもよい。
【0043】
第一の樹脂層13R(1)の厚さと第二の樹脂層13R(2)の厚さとの差の絶対値、第二の樹脂層13R(2)の厚さと第三の樹脂層13R(3)の厚さとの差の絶対値、及び第三の樹脂層13R(3)の厚さと第四の樹脂層13R(4)の厚さとの差の絶対値は、多層伝送線路板の反りを抑制するという観点から小さい方が好ましく、特に限定されないが、いずれも、好ましくは0~20μm、より好ましくは0~10μm、さらに好ましくは0~5μmである。
なお、第一の樹脂層13R(1)の厚さと第二の樹脂層13R(2)の厚さとの差の絶対値、第二の樹脂層13R(2)の厚さと第三の樹脂層13R(3)の厚さとの差の絶対値、及び第三の樹脂層13R(3)の厚さと第四の樹脂層13R(4)の厚さとの差の絶対値のうち、いずれか1つ又は2つのみが上記範囲であってもよい。
【0044】
第一の樹脂層13R(1)の厚さは、基板の機械的強度の観点から、第一の複合層13C(1)の厚さよりも小さいことが好ましい。
また、第二の樹脂層13R(2)の厚さは、基板の機械的強度の観点から、第一の複合層13C(1)の厚さよりも小さいことが好ましい。
また、第三の樹脂層13R(3)の厚さは、基板の機械的強度の観点から、第二の複合層13C(2)の厚さよりも小さいことが好ましい。
また、第四の樹脂層13R(4)の厚さは、基板の機械的強度の観点から、第二の複合層13C(2)の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0045】
第一の複合層13C(1)の厚さと第一の樹脂層13R(1)の厚さとの差〔第一の複合層-第一の樹脂層〕、第一の複合層13C(1)の厚さと第二の樹脂層13R(2)の厚さとの差〔第一の複合層-第二の樹脂層〕、第二の複合層13C(2)の厚さと第三の樹脂層13R(3)の厚さとの差〔第二の複合層-第三の樹脂層〕、及び第二の複合層13C(2)の厚さと第四の樹脂層13R(4)の厚さとの差〔第二の複合層-第四の樹脂層〕は、特に限定されないが、いずれも、好ましくは10~150μm、より好ましくは30~100μm、さらに好ましくは50~80μmである。
なお、上記厚さの差〔第一の複合層-第一の樹脂層〕、上記厚さの差〔第一の複合層-第二の樹脂層〕、上記厚さの差〔第二の複合層-第三の樹脂層〕及び上記厚さの差〔第二の複合層-第四の樹脂層〕のうち、いずれか1つ、2つ又は3つのみが上記範囲であってもよい。
【0046】
第三の樹脂層13R(3)の厚さは、信号線14を埋め込むために、信号線14の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0047】
絶縁層13は、絶縁層として、第一~第四の樹脂層13R(1)~(4)、第一の複合層(C1)及び第二の複合層(C2)のみを有していてもよいし、さらに、これら以外の絶縁層を有していてもよい。
絶縁層13において、第二の樹脂層13R(2)と第三の樹脂層13R(3)とは、信号線14を形成する位置以外において、直接積層された構成を有する。また、第一の樹脂層13R(1)とグランド層12、及び、第四の樹脂層13R(4)とグランド層11とは直接積層された構成を有する。
一方、第一の樹脂層13R(1)と第一の複合層13C(1)とは直接積層されていてもよく、他の層を介していてもよいが、直接積層されていることが好ましい。
また、第一の複合層13C(1)と第二の樹脂層13R(2)とは直接積層されていてもよく、他の層を介していてもよいが、直接積層されていることが好ましい。
また、第三の樹脂層13R(3)と第二の複合層13C(2)とは直接積層されていてもよく、他の層を介していてもよいが、直接積層されていることが好ましい。
また、第二の複合層13C(2)と第四の樹脂層13R(4)とは直接積層されていてもよく、他の層を介していてもよいが、直接積層されていることが好ましい。
【0048】
<信号線>
信号線14は、第二の樹脂層13R(2)の第三の樹脂層13R(3)側の面上に形成され、かつ第二の樹脂層13R(2)に積層された第三の樹脂層13R(3)に埋め込まれている。
【0049】
信号線14を形成する材料は、特に限定されず、例えば、グランド層に適用可能な金属箔を使用することができる。また、信号線14は、めっきにより形成されたものであってもよい。
信号線14の断面視における形状は、特に限定されないが、例えば、矩形である。
信号線14の厚さは、特に限定されず、求める性能等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、5~35μmである。
【0050】
図1に示す多層伝送線路板10において、信号線14は単線であるが、本実施形態の多層伝送線路板が有する信号線の形態は特に限定されず、例えば、差動配線であってもよい。
図2に、差動配線14aを有する多層伝送線路板20を示す。
図2に示す多層伝送線路板20は、
図1の多層伝送線路板10において、単一配線である信号線14を差動配線14aに変えた構成を有する。
【0051】
<多層伝送線路板の製造方法>
次に、本実施形態の多層伝送線路板の製造方法を、
図1に示す多層伝送線路板10を例にして説明するが、本実施形態の多層伝送線路板の製造方法は、所望する構成を有する多層伝送線路板を製造できる方法であれば如何なる方法であってもよい。
【0052】
多層伝送線路板10は、例えば、第一の複合層13C(1)及び第二の複合層13C(2)を形成するためのプリプレグ、及び、第一~第四の樹脂層13R(1)~(4)を形成するための樹脂フィルムを用いて製造することができる。
【0053】
プリプレグとしては、例えば、所定の樹脂組成物を有機溶剤で希釈した樹脂ワニスを、繊維基材に含浸及び乾燥する方法によって製造することができる。
プリプレグは市販品を使用してもよく、市販品のプリプレグとしては、例えば、昭和電工マテリアルズ株式会社製の「GWA-900G」、「GWA-910G」、「GHA-679G」、「GHA-679G(S)」、「GZA-71G」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0054】
樹脂フィルムとしては、例えば、所定の樹脂組成物を有機溶剤で希釈した樹脂ワニスを支持体に塗布し、乾燥する方法によって製造することができる。
樹脂フィルムは市販品を使用してもよく、市販品の樹脂フィルムとしては、例えば、昭和電工マテリアルズ株式会社製の「AS-400HS」(商品名)等が挙げられる。
【0055】
多層伝送線路板10は、例えば、下記(1)~(3)を含む方法によって製造することができる。
(1)第一の複合層13C(1)を形成するためのプリプレグ1枚の一方の面に、第一の樹脂層13R(1)を形成するための樹脂フィルム1枚、他方の面に第二の樹脂層13R(2)を形成するための樹脂フィルム1枚を重ね、さらに、両面に銅箔を配置してから、加熱加圧成形することによって、グランド層12としての銅箔、第一の樹脂層13R(1)、第一の複合層13C(1)、第二の樹脂層13R(2)及び銅箔をこの順に有する両面銅張積層板を形成する。
(2)上記(1)で得られた両面銅張積層板の第二の樹脂層13R(2)側の銅箔を、エッチングによってパターニングして、信号線14を形成する。
(3)上記(2)で形成した信号線14上に、第三の樹脂層13R(3)を形成するための樹脂フィルム1枚、第二の複合層13C(2)を形成するためのプリプレグ1枚、第四の樹脂層13R(4)を形成するための樹脂フィルム1枚及びグランド層11を形成するための銅箔をこの順に重ね、加熱加圧成形することによって、多層伝送線路板10を得る。
その後、必要に応じて、穴あけ、スルーホールメッキ等を施してもよい。
加熱加圧成形の方法及び条件は、使用する材料等を考慮して、公知の方法及び条件を適用することができる。
図2に示す多層伝送線路板20等の多層伝送線路板10以外の構成を有する本実施形態の多層伝送線路板についても、上記に準ずる方法によって製造することができる。
【0056】
本実施形態の多層伝送線路板は、1GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いられ、特に10GHz以上の高周波信号又は30GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いられる。
【0057】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態の多層伝送線路板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージである。
本実施形態の半導体パッケージは、例えば、本実施形態の多層伝送線路板に、公知の方法によって、半導体素子、メモリ等を搭載することによって製造することができる。
【実施例0058】
以下、実施例に基づいて本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されない。
【0059】
[比誘電率の測定方法]
各例で用いたプリプレグ又は樹脂フィルムの形成材料である樹脂組成物を、厚さ38μmのPETフィルム(帝人株式会社製、商品名:G2-38)に塗布した後、170℃で5分間加熱乾燥して、Bステージ状態の樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムをPETフィルムから剥離した後、粉砕してBステージ状態の樹脂粉末とし、厚さ0.8mm×長さ50mm×幅35mmのサイズに型抜きしたテフロン(登録商標)シートに投入した。次いで、該樹脂粉末を投入したテフロン(登録商標)シートの上下に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:3EC-VLP-18)を配置し、加熱加圧成形前の積層物を得た。なおロープロファイル銅箔は、M面を樹脂粉末側にして配置した。続いて、該積層物を、温度230℃、圧力2.0MPa、時間120分間の条件で加熱加圧成形し、樹脂粉末を樹脂板に成形及び硬化させることで、両面銅箔付き樹脂板を作製した。得られた両面銅箔付き樹脂板の樹脂板部分の厚さは0.8mmであった。
上記で得られた両面銅箔付き樹脂板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することにより銅箔を除去し、試験片を作製した。次いで、スプリットポスト誘電体共振器法に準拠して、雰囲気温度25℃にて10GHz帯で、上記試験片の比誘電率を測定した。
【0060】
[多層伝送線路板の製造]
次に各例における多層伝送線路板の製造方法について説明する。
なお、各例において、銅箔は、三井金属鉱業株式会社製、商品名「3EC-VLP-18」(粗化処理面表面粗さRz:3.0μm、厚さ18μm)を使用した。
また、各構成部材を積層一体化処理する際の加熱加圧条件は、温度230℃、圧力3.0MPa、時間80分の条件とした。
【0061】
実施例1~3
実施例1~3の多層伝送線路板は、絶縁層の構成が表1に記載の構成になるように以下の手順で製造した。
なお、実施例1及び2で製造した多層伝送線路板の模式的断面図を
図1に示し、実施例3で製造した多層伝送線路板の模式的断面図を
図2に示す。
【0062】
表1に記載の樹脂フィルム1枚、プリプレグ1枚及び樹脂フィルム1枚をこの順に重ね、さらに、その両外側に銅箔を重ね合わせてから積層一体化処理を施し、グランド層12としての銅箔、第一の樹脂層13R(1)、第一の複合層13C(1)、第二の樹脂層13R(2)及び銅箔をこの順に有する両面銅張積層板を形成した。
次いで、上記で製作した両面銅張積層板の第二の樹脂層13R(2)側の銅箔をエッチングによってパターニングして、単一配線である信号線14又は差動配線である信号線14aを形成した。
上記で形成した信号線上に、表1に記載の樹脂フィルム1枚、プリプレグ1枚、樹脂フィルム1枚及び銅箔をこの順に重ね合わせて積層一体化処理を施して、
図1又は
図2に示す構成を有する多層伝送線路板を得た。
その後、得られた多層伝送線路板に穴あけ、スルーホールメッキを施した後、両面をエッチングによってパターニングして、後述する伝送損失の測定に用いるプロービングパターンを形成した。
【0063】
比較例1及び2
比較例1及び2の多層伝送線路板は、絶縁層の構成が表1に記載の構成になるように以下の手順で製造した。なお、比較例1及び2で製造した多層伝送線路板の模式的断面図を
図3に示す。
表1に示すプリプレグの両面に銅箔を重ね合わせから積層一体化処理を施すことによって、グランド層12としての銅箔、絶縁層13C及び銅箔をこの順に有する積層板を得た。
次に、上記で得た積層板の銅箔をエッチングでパターニングすることによって、絶縁層13C上に信号線14を形成した。
上記で形成した信号線14上に、表1に記載のプリプレグ1枚及び銅箔をこの順に重ね合わせて積層一体化処理を施して、
図3に示す構成を有する多層伝送線路板を得た。
【0064】
比較例3
比較例3の多層伝送線路板は、絶縁層の構成が表1に記載の構成になるように以下の手順で製造した。なお、比較例3で製造した多層伝送線路板の模式的断面図を
図4に示す。
表1に示すプリプレグを2枚重ね、その両面に銅箔を重ね合わせ、積層一体化処理を施すことによって、グランド層12、絶縁層13C、絶縁層13C及び銅箔をこの順に有する積層板を得た。
次に、上記で得た積層板の銅箔をエッチングでパターニングすることによって、絶縁層13C上に信号線14を形成した。
上記で形成した信号線14上に、表1に記載のプリプレグ2枚及び銅箔をこの順に重ね合わせて積層一体化処理を施して、
図4に示す構成を有する多層伝送線路板を得た。
【0065】
比較例4
比較例4の多層伝送線路板は、比較例1の多層伝送線路板において、信号線14を、差動配線14aに変えたこと以外は、比較例1の多層伝送線路板と同様にして製造した。なお、比較例4で製造した多層伝送線路板の模式的断面図を
図5に示す。
【0066】
比較例5
比較例5の多層伝送線路板は、絶縁層の構成が表1に記載の構成になるように以下の手順で製造した。なお、比較例5で製造した多層伝送線路板の模式的断面図を
図6に示す。
表1に記載の樹脂フィルムを1枚、プリプレグ1を1枚、樹脂フィルムを1枚この順に重ね、さらに、その両外側に銅箔を重ね合わせてから積層一体化処理を施し、銅箔、樹脂層13R、複合層13C、樹脂層13R及び銅箔をこの順に有する両面銅張積層板を形成した。
次いで、上記で製作した両面銅張積層板の一方の銅箔をエッチングによってパターニングして、差動配線14aを形成した。
上記で形成した差動配線14a上に、表1に記載のプリプレグ2を1枚と銅箔をこの順に重ね合わせて積層一体化処理を施して、
図6に示す構成を有する多層伝送線路板を得た。
【0067】
[伝送損失の測定方法]
各例で得られた多層伝送線路板の伝送損失は、ネットワークアナライザー(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名「N5227A」)を用いて以下の手順で測定した。
上記各例で製造した多層伝送線路板のプロービングパターンに、多層伝送線路板の信号線への入力側及び出力側のプローブを取り付け、所定の周波数の信号を入力し、出力信号を測定することによって、各周波数における伝送損失を測定した。
なお、プロービングパターンの影響は、TRL校正(Thru-Reflect-Line校正)によって校正した。
伝送損失はマイナスの値であり、その絶対値が小さいほど伝送損失が小さいことを意味する。
【0068】
【0069】
表1に記載のプリプレグ及び樹脂フィルムの詳細は以下の通りである。
プリプレグ1~4:昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名「GHA-679G(S)」(但し、表1に記載の厚さ及び樹脂組成物の含有量を有するもの。)
樹脂フィルム1:昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名「AS-400HS」
樹脂フィルム2:昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名「AS-400HS」に使用される樹脂組成物に対してエポキシ樹脂を固形分全量に対して10質量%添加して、樹脂フィルムにしたもの。
【0070】
表1の結果から、本実施形態の実施例1~3の多層伝送線路板は、比較例1~5の多層伝送線路板よりも伝送損失を抑制できていることが分かる。