IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 森永製菓株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034341
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】複合食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/48 20060101AFI20240306BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240306BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
A23G9/48
A23L5/00 F
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138520
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松田 侑士
(72)【発明者】
【氏名】新宅 明日香
(72)【発明者】
【氏名】石原 薫
(72)【発明者】
【氏名】松田 真理子
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB20
4B014GE13
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG14
4B014GG17
4B014GK07
4B014GL01
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP18
4B035LC03
4B035LE07
4B035LE12
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG17
4B035LG19
4B035LG26
4B035LG33
4B035LG57
4B035LK13
4B035LP26
(57)【要約】
【課題】吸湿性可食部の食感を維持する新規技術の提供
【解決手段】吸湿性可食部と、前記吸湿性可食部に接触するよう設けられた油脂部と、を備える複合食品であって、
前記油脂部は、吸湿材料を含む、複合食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性可食部と、前記吸湿性可食部に接触するよう設けられた油脂部と、を備える複合食品であって、
前記油脂部は、吸湿材料を含む、複合食品。
【請求項2】
前記油脂部がカカオ原料を含む形態において、前記吸湿材料が、前記カカオ原料に含まれる食物繊維のみからなる形態を除く、請求項1に記載の複合食品。
【請求項3】
前記吸湿材料が、多孔質性の二酸化ケイ素である、請求項1又は2に記載の複合食品。
【請求項4】
前記吸湿材料が多孔質性のセルロースであり、
前記油脂部におけるセルロース/リグニンの比が0.5以上である、請求項1又は2に記載の複合食品。
【請求項5】
前記吸湿材料が多孔質性のセルロースであり、
前記吸湿材料の含有量が0.3質量%以上である、請求項1又は2に記載の複合食品。
【請求項6】
前記セルロースの平均粒子径が10μm以上である、請求項5に記載の複合食品。
【請求項7】
前記吸湿材料が多孔質性のケイ酸カルシウム及び/又は多孔質性の炭酸カルシウムである、請求項1又は2に記載の複合食品。
【請求項8】
前記のケイ酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムの含有量が0.3質量%以上である、請求項7に記載の複合食品。
【請求項9】
前記吸湿材料が親水基を有し、
前記吸湿材料の含有量が0.3質量%以上である、請求項1又は2に記載の複合食品。
【請求項10】
さらに、高含水部を有し、
前記油脂部は、前記吸湿性可食部と前記高含水部との間に設けられている、請求項1又は2に記載の複合食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性可食部を有する複合食品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸湿性可食部の間にクリームを挟んだ複合食品については、クリームから吸湿性可食部の水分吸収をいかに防止し、吸湿性可食部本来の食感を維持するかが検討されてきた。
例えば、モナカ皮の内面に、チョコレートをスプレーし、薄い被膜を形成することで、クリームからモナカ皮への水分移行を防ぐ技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、特許文献2には、食品素材間の水分移行を抑制することを目的とし、油脂部中にキャンデリラワックス(ロウ物質)を含ませる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-312333号公報
【特許文献2】特開2008-178333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術のあるところ、本発明は、吸湿性可食部の食感を維持する新規技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、吸湿性可食部と、前記吸湿性可食部に接触するよう設けられた油脂部と、を備える複合食品であって、
前記油脂部は、吸湿材料を含む、複合食品である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0007】
本発明においては、油脂部に用いられるカカオ原料由来の食物繊維の他に、油脂部が吸湿材料を含む形態とすることにより、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
本発明の好ましい形態では、前記油脂部がカカオ原料を含む場合には、前記吸湿材料が、前記カカオ原料に含まれる食物繊維のみからなる形態を除く。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記吸湿材料が、多孔質性の二酸化ケイ素である。
上記形態とすることで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記吸湿材料が多孔質性のセルロースであり、
前記油脂部におけるセルロース/リグニンの比が0.5以上である。
上記形態とすることで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記吸湿材料が多孔質性のセルロースであり、
前記吸湿材料の含有量が0.3質量%以上である。
上記形態とすることで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記セルロースの平均粒子径が10μm以上である。
上記形態とすることで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記吸湿材料が多孔質性のケイ酸カルシウム及び/又は多孔質性の炭酸カルシウムである。
上記形態とすることで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記のケイ酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムの含有量が0.3質量%以上である。
上記形態とすることで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記吸湿材料が親水基を有し、
前記吸湿材料の含有量が0.3質量%以上である。
上記形態とすることで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、複合食品は、さらに、高含水部を有し、
前記油脂部は、前記吸湿性可食部と前記高含水部との間に設けられている。
上記形態においても、油脂部が吸湿材料を含むことで、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持する新規技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の複合食品の一実施形態について説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0018】
本発明の複合食品は、吸湿性可食部と、前記吸湿性可食部に接触するよう設けられた油脂部と、を備える複合食品である。
そして、本発明の複合食品において、油脂部が、吸湿材料を含むことを特徴とする。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0019】
以下、本発明の複合食品のより好ましい実施の形態について説明する。
【0020】
(1)吸湿性可食部
本発明において、吸湿性可食部は、喫食可能な食材からなり、複合食品を構成するものである。そして、本発明において吸湿性可食部は、空気中の水分や他の食材/食品からの水分を吸収する性質を有し、その水分の吸収により品質(食感、味)の劣化の生じるものである。
【0021】
ここで、吸湿性可食部として、乾燥食材を挙げることができる。
また、吸湿性可食部として、焼成菓子を挙げることができる。
【0022】
より具体的には、吸湿性可食部として、ビスケット、クッキー、シュガーコーン、ワッフルコーン、ウェハース、モナカ皮、あられ、を好ましく挙げることができる。中でも、吸湿性可食部として、モナカ皮を好ましく挙げることができる。
【0023】
上記食材からなる吸湿性可食部は、空気中の水分や他の食材/食品からの水分を吸収することで、品質(食感、味)の劣化の生じるものである。
そのため、上記食材からなる吸湿性可食部を用いる形態において、本発明は特に望ましい効果を発揮する。
【0024】
吸湿性可食部の形状として、他の食材/食品(例えば、後述する高含水部)を内部に収容できる程度の凹形状を有する形状を挙げることができる。
また、他の吸湿性可食部の形状として、二つの吸湿性可食部により挟み込むことで、他の食材/食品(例えば、後述する高含水部)を保持可能な形状を挙げることができる。
【0025】
上記の吸湿性可食部の形状として、箱形、舟形、椀形、凹形状を有する円錐形、コップ形、円盤形状、板形状を好ましく挙げることができる。
【0026】
ここで、吸湿性可食部の形状は、他の食材/食品(例えば、後述する高含水部)との組み合わせにより複合食品を構成することが可能な形状であれば足り、吸湿性可食部の形状に特に制限はない。
【0027】
また、吸湿性可食部がモナカ皮である場合の、複合食品における吸湿性可食部の15日経過後の水分量は、好ましくは12%未満、より好ましくは11%以下、より好ましくは9.8%以下である。
上記形態の吸湿性可食部は、その食感に優れる。
【0028】
(2)油脂部
油脂部は、吸湿性可食部に接触するよう設けられ、複合食品を構成する食材である。
【0029】
油脂部は、吸湿性可食部内面及び/又は外面に付着させて形成される形態であることが好ましい。中でも、油脂部は、吸湿性可食部内面に付着させて形成される形態であることが好ましい。
なお、本発明においては、油脂部は、吸湿性可食部に接触するよう設けられていれば、後述する高含水部に付着させて形成される形態であってもよい。
【0030】
以下油脂部に含まれる吸湿材料の好ましい実施の形態、及び、吸湿材料以外の油脂部全体の組成の好ましい実施の形態について説明する。
【0031】
(2-1)吸湿材料
以下、油脂部に含まれる吸湿材料のより好ましい実施の形態を説明する。
【0032】
本明細書において、「吸湿材料」とは、空気中の水分や他の食材/食品からの水分を吸収することで、吸湿性可食部の品質(食感、味)の劣化を抑える作用を発揮するものである。
【0033】
ここで、本発明において、油脂部がカカオ原料を含む形態では、吸湿材料はカカオ原料に含まれる食物繊維のみからなる形態は含まない。
油脂部に用いられるカカオ原料由来の食物繊維の他に、油脂部が吸湿材料を含む形態とすることにより、より確実に、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0034】
本発明における吸湿材料として、多孔質性の吸湿材料を好ましく挙げることができる。
【0035】
吸湿材料が多孔質性である場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0036】
また、吸湿材料が多孔質性である場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0037】
また、本発明における吸湿材料として、親水基を有する吸湿材料を好ましく挙げることができる。
【0038】
吸湿材料が親水基を有する場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0039】
また、親水基を有する場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0040】
ここで、吸湿材料として、多孔質性の二酸化ケイ素、多孔質性のセルロース、多孔質性のケイ酸カルシウム及び/又は多孔質性の炭酸カルシウムを好ましく挙げることができる。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0041】
吸湿材料が多孔質性の二酸化ケイ素、多孔質性のセルロース、多孔質性のケイ酸カルシウム及び/又は多孔質性の炭酸カルシウムである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0042】
また、多孔質性の二酸化ケイ素、多孔質性のセルロース、多孔質性のケイ酸カルシウム及び/又は多孔質性の炭酸カルシウムである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0043】
以下、吸湿材料が多孔質性のセルロースである場合の、より好ましい実施の形態を説明する。
【0044】
吸湿材料が多孔質性のセルロースである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0045】
また、吸湿材料が多孔質性のセルロースである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0046】
また、吸湿材料が多孔質性のセルロースである場合の、油脂部におけるセルロース/リグニンの比は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.3以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0047】
また、吸湿材料が多孔質性のセルロースである場合の、油脂部におけるセルロース/リグニンの比は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0048】
ここで、セルロース/リグニンの値は、各々測定した油脂部中のセルロース含有量をリグニン含有量で割ることで、算出することができる。
また、油脂部中のセルロースとリグニンの含有量は、公知の成分分析方法により、測定することができる。
【0049】
また、セルロースの平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0050】
また、セルロースの平均粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0051】
ここで、セルロースの平均粒子径には、公知のレーザー解析装置を用い算出した値を用いることができる。
【0052】
また、セルロースの繊維幅は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは13μm以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0053】
以下、吸湿材料が多孔質性の二酸化ケイ素である場合の、より好ましい実施の形態を説明する。
【0054】
吸湿材料が多孔質性の二酸化ケイ素である場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0055】
また、吸湿材料が多孔質性の二酸化ケイ素である場合の、二酸化ケイ素の含有量は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0056】
また、二酸化ケイ素の細孔径は、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0057】
二酸化ケイ素の比表面積は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上、より好ましくは200m/g以上、さらに好ましくは500m/g以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0058】
以下、吸湿材料が多孔質性のケイ酸カルシウムである場合の、より好ましい実施の形態を説明する。
【0059】
吸湿材料が多孔質性のケイ酸カルシウムである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0060】
また、吸湿材料が多孔質性のケイ酸カルシウムである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0061】
以下、吸湿材料が多孔質性の炭酸カルシウムである場合の、より好ましい実施の形態を説明する。
【0062】
吸湿材料が多孔質性の炭酸カルシウムである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上である。
上記形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0063】
また、吸湿材料が多孔質性の炭酸カルシウムである場合の、油脂部における吸湿材料の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以下である。
上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0064】
(2-2)吸湿材料以外の、油脂部全体の組成について
油脂部は、一般的な家庭用冷凍庫内の温度(-18℃)において固体となるものであれば、特に限定されない。
【0065】
ここで、本発明の油脂部はチョコレートコーチングであることが好ましい。チョコレートコーチングの組成としては、一般的な家庭用冷凍庫内の温度(-18℃)において固体となるものであれば、特に限定されず、使用することができる。
【0066】
なお、本明細書において「チョコレート」は、規約や法規上の規定によって限定されるものではなく、カカオマス、ココア、ココアバター等のカカオ原料、及びココアバター代用脂等を使用した油脂加工食品全般を意味するものとする。すなわち、準チョコレート、チョコレート利用食品の他、これらを利用した食品も含まれる。なお、チョコレートはブラウンタイプのものであってもホワイトタイプのものであってもよい。
【0067】
したがって油脂部には、菜種油、ヤシ油、大豆油、パーム油、パーム核油等の植物油脂、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、オリゴ糖、マルトース、パラチノース、ガラクトース等の糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチュロース等の糖アルコール、グルチルリチン、ステビオサイド、レバウディオサイド等の天然甘味料、スクラロース、アステルパーム等の人工甘味料、牛乳、全粉乳及び脱脂粉乳等の乳原料、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤等並びに香料等を含んでも良い。
【0068】
以下、油脂部の物性について、より好ましい形態を説明する。
【0069】
本発明において、油脂部は、水分が3%以下であることが好ましい。
油脂部の物性を上記形態とすることで、より効率よく、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0070】
また、油脂部の総脂肪分は、好ましくは30~60質量%、より好ましくは35~55質量%である。
油脂部の物性を上記形態とすることで、より効率よく、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0071】
また、油脂部の品温60℃における固体脂含有率は、好ましくは0~40%、より好ましくは0~35%、さらに好ましくは0~30%である。
油脂部の物性を上記形態とすることで、より効率よく、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0072】
以下、吸湿性可食部に接触するよう設けられる油脂部の態様について、より好ましい形態を説明する。
吸湿性可食部に接触するよう設けられる油脂部の厚みは均一である必要はなく、好ましくは0.3mm以上2mm以下である。
また、可食容器の表面1cm当たりの油脂部の量は、0.02~0.2gとすることが好ましい。
油脂部の態様を上記形態とすることで、複合食品全体の味、品質を不必要に阻害せず、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持することができる。
【0073】
(3)複合食品の全体構成について
次に、本発明の複合食品について述べる。
本発明において複合食品とは、複数の食材が一体となって形成される、食品をいう。
本発明において複合食品とは、少なくとも油脂部と吸湿性可食部とを組み合わせた製品をいう。
【0074】
ここで、特に、吸湿性可食部の食感を維持し、かつ、吸湿性可食部の水分吸収抑制効果をより向上させることができるという効果を考慮したときに、複合食品の構成要素として、高含水部を備える形態であることが好ましい。
【0075】
ここで、本明細書において、高含水部とは、前述の吸湿性可食部よりも水分含有量の多い食品をいう。
本発明は、高含水部と複合させた形態において、望ましい効果を発揮する。
【0076】
高含水部としては、例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓(アイスキャンディ等)、ゼリー、などを挙げることができる。
【0077】
ここで、高含水部を含む複合食品の形態としては、例えば、上述の高含水部が吸湿性可食部の凹部に充填された形態、高含水部が吸湿性可食部で挟みこまれた形態を挙げることができる。
このとき、高含水部と吸湿性可食部との間に、前述の油脂部が配置されていることが好ましい。
【0078】
また、本発明において、複合食品は、複合冷菓であることが好ましい。
本発明は、冷温条件下で保存されるような複合冷菓である形態において、特に望ましい効果を発揮する。
【実施例0079】
(1)複合食品の製造
(1-1)モナカ皮(本発明における、吸湿性可食部に相当)の形成
従来知られている任意の方法により、モナカ皮を製造した。
【0080】
(1-2)油脂部の製造
下記表1に示すチョコレートコーチングを用意した。
下記表1に示すチョコレートコーチングに、吸湿材料を表2~4(実施例、比較例)に示す含有量となるよう、添加することで、油脂部を用意した。
ここで、表2~4の実施例1~22に示す吸湿材料は、何れも、多孔質性の吸湿材料である。
【0081】
【表1】
【0082】
(1-3)複合冷菓(本発明における、複合食品に相当)の製造
(1-1)で製造したモナカ皮の内面に油脂部をコーティングした。
そして、油脂部をコーティングしたモナカ皮に、アイスクリーム(本発明における、高含水部に相当)を、アイスクリームとモナカ皮との間に油脂部が配置されるよう、載置した。
その後、油脂部のコーティングされたモナカ皮を、アイスクリームとモナカ皮との間に油脂部が配置されるよう、アイスクリームに載せることで、モナカアイス(複合冷菓;本発明における、複合食品に相当)を製造した。
【0083】
(2)食感評価及び吸湿試験
(i) 食感評価
製造後15日経過後のモナカアイスを、冷菓の製造を専門とするパネラー3名が食し、比較例1の食感を基準(1点)として、パリパリとした食感であるか否かの観点から、1点~4点(得点が高いほどパリパリとした食感であり、4点をモナカアイス作製翌日の食感と大きな差がない状態とする)で評価した。
評点は専門パネラー3名の平均値とした。
(ii) 吸湿試験
製造した複合冷菓をビニール袋に個包装した後、-30℃冷凍庫にて1日置き、テスト用複合冷菓を得た。
テスト用複合冷菓を、-20℃の冷凍庫へ入れ(1日2回のデフロストあり)、10日後、15日後にそれぞれモナカ皮部分の水分を測定した。
モナカ皮部分の水分は、複合冷菓からモナカ皮を分離したうえで、乾燥減量法(ケツト科学研究所社製赤外線水分計FD-620にて105℃10分)にて測定した。
【0084】
結果を表2~4に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
(3)結果及び考察
実施例と比較例の対比から、油脂部が吸湿材料を含むことで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持できることがわかった。
【0089】
また、実施例1~12と比較例1の対比から、カカオ原料に含まれる食物繊維ではなく、別途油脂部に吸湿材料を添加する形態とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持できることがわかった。
【0090】
また、実施例1~12と比較例1の対比から、多孔質性のセルロースを吸湿材料として用いる場合に、油脂部におけるセルロース/リグニンの比を0.5以上とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持できることがわかった。
【0091】
また、実施例1~12と比較例1の対比から、多孔質性のセルロースを吸湿材料として用いる場合に、吸湿材料の含有量を0.3質量%以上とすることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持できることがわかった。
【0092】
また、実施例13~19と比較例2の対比から、多孔質性の二酸化ケイ素を吸湿材料として用いることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持できることがわかった。
【0093】
また、実施例13~20と比較例2の対比から、多孔質性の二酸化ケイ素を吸湿材料として用いることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持できることがわかった。
【0094】
また、実施例21と実施例22に示すように、多孔質性のケイ酸カルシウム及び/又は多孔質性の炭酸カルシウムを吸湿材料として用いることで、複合食品における吸湿性可食部の水分吸収を抑制し、吸湿性可食部の食感を維持できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、モナカアイスなどの複合食品に利用できる。