IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図1
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図2
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図3
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図4
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図5
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図6
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図7
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図8
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図9
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図10
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図11
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図12
  • 特開-圧力変動吸着装置及び方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034463
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】圧力変動吸着装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B01D53/047
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138696
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】浦川 海尋
(72)【発明者】
【氏名】大盛 幹士
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 達央
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA04
4D012CA06
4D012CB16
4D012CD07
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF03
4D012CF10
4D012CG02
4D012CJ01
(57)【要約】
【課題】PSA装置の加圧吸着工程の終了時に、吸着塔に導入される原料ガスの圧力が最大圧力の上限値に到達する蓋然性を高める。
【解決手段】吸着塔2と、原料ガス導入配管9と、圧縮機5と、製品ガス導出配管11と、排ガス導出配管13と、原料ガス排出配管31と、制御部32と、を備える圧力変動吸着装置1であって、圧縮機5は、加圧吸着工程において、吸着塔2に導入される原料ガスの圧力が上限値まで増加すると負荷運転から無負荷運転へと切り替わり、制御部32は、加圧吸着工程において吸着塔2に導入される原料ガスの圧力に基づいて、原料ガス排出配管31から原料ガスの排出を開始する条件を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、
前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、
前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、
少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、
少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、
前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、
前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件を制御する制御部と、
を備える圧力変動吸着装置であって、
前記圧縮機は、前記加圧吸着工程において、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替わり、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記吸着塔に導入される原料ガスの圧力に基づいて前記条件を制御する、圧力変動吸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記制御部は、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁を含み、前記条件として前記圧力設定値を制御する、圧力変動吸着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸気塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時までに前記上限値に到達しなかった場合、前記自動弁の前記圧力設定値を増加させる、圧力変動吸着装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸気塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時よりも前に前記上限値に到達した場合、前記自動弁の前記圧力設定値を減少させる、圧力変動吸着装置。
【請求項5】
請求項2に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記自動弁の下流側に設けられたニードル弁を更に備える、圧力変動吸着装置。
【請求項6】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件を制御する制御部と、を備える圧力変動吸着装置が実行する方法であって、
前記加圧吸着工程において、前記圧縮機の動作を、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替えること、及び
前記制御部が、前記加圧吸着工程において前記吸着塔に導入される原料ガスの圧力に基づいて前記条件を制御すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧力変動吸着装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸着剤として分子篩炭素(MSC:Molecular Sieving Carbon)を用いた圧力変動吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)法によって、原料ガス(例えば、空気)から製品ガス(例えば、窒素富化ガス)を分離して製造する圧力変動吸着装置(以下、PSA装置という。)がある。
【0003】
PSA装置では、吸着剤が充填された吸着塔に対して圧縮機により加圧された原料ガスである空気を導入し、この原料ガス中に含まれる不要成分である酸素を吸着剤に吸着させ、原料ガスから分離された窒素を含む製品ガスを吸着塔から導出する加圧吸着工程と、吸着塔内の圧力を減圧し、吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを吸着塔から導出する減圧再生工程とを交互に繰り返す。
【0004】
なお、窒素富化ガスとは、空気よりも窒素濃度が高く酸素濃度の低いガスのことである。また、窒素富化ガスとして、高純度(95%~99.999%)の窒素ガスを含むものとする。このような窒素富化ガスは、防爆用のパージガスや熱処理炉の雰囲気ガス用など、多くの用途で利用されている。MSCは、活性炭の一種であり、酸素と窒素との吸着速度の差を利用して、空気中から酸素を優先的に吸着し、残りの窒素を高純度で分離するものである。
【0005】
上述した加圧吸着工程では、吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、予め設定された最大圧力の上限値となったときに、原料ガスを加圧する負荷運転(ロード)から原料ガスの加圧を停止する無負荷運転(アンロード)へと切り替わる圧縮機の運転制御が行われる。ここで、製品ガスの生産効率の観点から、加圧吸着工程の終了時に、吸着塔に導入される原料ガスの圧力が最大圧力の上限値に到達し、圧縮機が負荷運転から無負荷運転に切り替わることが望ましい。これに対して、PSA装置に対機械式背圧調整弁を設け、過剰な原料ガスを大気開放することで、吸着塔に導入される原料ガスの圧力を調整することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-054755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、PSA装置の稼働中にユーザが製品ガスの流量を変更することがある。従来のPSA装置では、稼働中に製品ガスの流量が減少すると、原料ガスの大気開放量が不足し、加圧吸着工程の終了時よりも前に、吸着塔に導入される原料ガスの圧力が最大圧力の上限値に到達してしまう可能性がある。逆に、PSA装置の稼働中に製品ガスの流量が増加すると、原料ガスの大気開放量が過剰となり、加圧吸着工程の終了時までに、吸着塔に導入される原料ガスの圧力が最大圧力の上限値に到達しない可能性がある。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、PSA装置の加圧吸着工程の終了時に、吸着塔に導入される原料ガスの圧力が最大圧力の上限値に到達する蓋然性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態に係る圧力変動吸着装置は、
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、
前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、
前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、
少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、
少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、
前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、
前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件を制御する制御部と、
を備える圧力変動吸着装置であって、
前記圧縮機は、前記加圧吸着工程において、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替わり、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記吸着塔に導入される原料ガスの圧力に基づいて前記条件を制御する。
【0010】
本開示の一実施形態に係る方法は、
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件を制御する制御部と、を備える圧力変動吸着装置が実行する方法であって、
前記加圧吸着工程において、前記圧縮機の動作を、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替えること、及び
前記制御部が、前記加圧吸着工程において前記吸着塔に導入される原料ガスの圧力に基づいて前記条件を制御することを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、PSA装置の加圧吸着工程の終了時に、吸着塔に導入される原料ガスの圧力が最大圧力の上限値に到達する蓋然性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る圧力変動吸着装置の一構成例を示す系統図である。
図2図1に示す圧力変動吸着装置において、一方の吸着塔で加圧吸着工程を行い、他方の吸着塔で減圧再生工程を行う状態を示す系統図である。
図3図1に示す圧力変動吸着装置において、一方の吸着塔で減圧均圧工程を行い、他方の吸着塔で加圧均圧工程を行う状態を示す系統図である。
図4図1に示す圧力変動吸着装置において、一方の吸着塔で減圧再生工程を行い、他方の吸着塔で加圧吸着工程を行う状態を示す系統図である。
図5図1に示す圧力変動吸着装置において、一方の吸着塔で加圧均圧工程を行い、他方の吸着塔で減圧均圧工程を行う状態を示す系統図である。
図6図1に示す圧力変動吸着装置において、一方の吸着塔と他方の吸着塔との動作の手順を示す工程図である。
図7】吸着塔に導入される原料ガスの圧力変化の第1例を模式的に示す図である。
図8】吸着塔に導入される原料ガスの圧力変化の第2例を模式的に示す図である。
図9】吸着塔に導入される原料ガスの圧力変化の第3例を模式的に示す図である。
図10】圧力変動吸着装置の稼働中に製品ガスの流量が増加した際の、吸着塔に導入される原料ガスの圧力変化を示すグラフである。
図11図1に示す圧力変動吸着装置及び比較例の、吸着塔に導入される原料ガスの圧力変化を示すグラフである。
図12】圧力変動吸着装置の稼働中に製品ガスの流量が減少した際の、吸着塔に導入される原料ガスの圧力変化を示すグラフである。
図13図1に示す圧力変動吸着装置及び比較例の、吸着塔に導入される原料ガスの圧力変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本開示の一実施形態として、例えば図1に示す圧力変動吸着装置(以下、PSA装置という。)1について説明する。なお、図1は、PSA装置1の一構成例を示す系統図である。
【0014】
本実施形態のPSA装置1は、図1に示すように、原料ガスG1となる空気(Air)から製品ガスG2となる窒素(N2)を含む窒素富化ガスを分離して製造する窒素富化ガス製造装置に本開示を適用したものである。
【0015】
なお、ここで言う窒素富化ガスとは、空気よりも窒素濃度が高く酸素濃度の低いガスのことである。また、窒素富化ガスとして、高純度(95%~99.999%)の窒素を含むものとする。また、窒素富化ガスの純度については、製品ガスG2中に含まれる窒素の濃度を示すものとする。
【0016】
具体的に、このPSA装置1は、吸着剤Sが充填された一対の吸着塔2A,2Bを備えている。一対の吸着塔2A,2Bを構成する一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとは、基本的に同じ構成であり、中空円筒状に形成されて、その下部側に下部側配管3aと、その上部側に上部側配管3bとが各々接続された構成を有している。
【0017】
本実施形態では、吸着剤Sとして、例えば分子篩炭素(MSC)を用いている。MSCは、活性炭の一種であり、酸素と窒素との吸着速度の差を利用して、原料ガスG1となる空気中から酸素を吸着し、残った窒素を含む製品ガスG2を分離するものである。また、吸着剤Sの再生時には、排ガスG3として吸着剤Sから酸素を脱離する。なお、吸着剤Sには、上述したMSC以外にも、圧力差により酸素を選択的に吸着及び脱離できる物質を用いることができる。
【0018】
本実施形態のPSA装置1は、吸着塔2A,2Bに原料ガスG1を導入する原料ガス導入部4と、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1を加圧する圧縮機5と、吸着塔2A,2Bから製品ガスG2を導出する製品ガス導出部6と、吸着塔2A,2Bから排ガスG3を導出する排ガス導出部7と、一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間の圧力を均圧化する圧力均圧部8とを備えている。
【0019】
原料ガス導入部4は、一方の吸着塔2Aの下部側配管3aと接続された第1の原料ガス導入配管9aと、他方の吸着塔2Bの下部側配管3aと接続された第2の原料ガス導入配管9bと、第1の原料ガス導入配管9a及び第2の原料ガス導入配管9bと接続された第3の原料ガス導入配管9cとを有している。すなわち、一対の吸着塔2A,2Bは、これらの原料ガス導入配管9a~9cを介して互いに共通に接続されている。原料ガス導入部4は、これらの原料ガス導入配管9a~9cを通して各吸着塔2A,2Bの下部側配管3a側から原料ガスG1を導入する。
【0020】
また、原料ガス導入部4は、第1の原料ガス導入配管9aを開閉する第1の原料ガス導入側開閉弁10aと、第2の原料ガス導入配管9bを開閉する第2の原料ガス導入側開閉弁10bとを有している。原料ガス導入部4は、これらの原料ガス導入側開閉弁10a,10bの開閉を切り替えることによって、各吸着塔2A,2Bに対する原料ガスG1の導入を切り替える。
【0021】
第3の原料ガス導入配管9cの入側には、圧縮機5が接続されている。圧縮機5については、原料ガスG1中に含まれる酸素を吸着剤Sに吸着させるのに十分な圧力(例えば、300~999kPaG)まで、原料ガスG1を加圧できるものであればよく、例えば、スクロール式などの様々な方式のものを用いることが可能である。また、圧縮機5により加圧された原料ガスG1は、ドライヤーに導入され、この原料空気G1に同伴されるドレンが除去されてもよい。
【0022】
なお、原料ガス導入部4では、圧縮機5の出側に、この圧縮機5により加圧された状態の原料ガスG1を一時的に貯留するレシーバータンク(原料ガス貯留槽)を設けた構成としてもよい。これにより、圧縮機5の出側における急激な圧力上昇を防ぐことが可能である。
【0023】
製品ガス導出部6は、一方の吸着塔2Aの上部側配管3bと接続された第1の製品ガス導出配管11aと、他方の吸着塔2Bの上部側配管3bと接続された第2の製品ガス導出配管11bと、第1の製品ガス導出配管11a及び第2の製品ガス導出配管11bと接続された第3の製品ガス導出配管11cとを有している。すなわち、一対の吸着塔2A,2Bは、これらの製品ガス導出配管11a~11cを介して互いに共通に接続されている。製品ガス導出部6は、これらの製品ガス導出配管11a~11cを通して各吸着塔2A,2Bの上部側配管3b側から製品ガスG2を導出する。
【0024】
また、製品ガス導出部6は、第1の製品ガス導出配管11aを開閉する第1の製品ガス導出側開閉弁12aと、第2の製品ガス導出配管11bを開閉する第2の製品ガス導出側開閉弁12bとを有している。製品ガス導出部6は、これらの製品ガス導出側開閉弁12a,12bの開閉を切り替えることによって、各吸着塔2A,2Bから製品ガスG2の導出を切り替える。
【0025】
なお、製品ガス導出部6では、第3の製品ガス導出配管11cの出側に、吸着塔2A,2Bから導出された製品ガスG2を一時的に貯留するバッファータンク(製品ガス貯留槽)を設けた構成としてもよい。
【0026】
排ガス導出部7は、一方の吸着塔2Aの下部側配管3aと接続された第1の排ガス導出配管13aと、他方の吸着塔2Bの下部側配管3aと接続された第2の排ガス導出配管13bと、第1の排ガス導出配管13a及び第2の排ガス導出配管13bと接続された第3の排ガス導出配管13cとを有している。すなわち、一対の吸着塔2A,2Bは、これらの排ガス導出配管13a~13cを介して互いに共通に接続されている。排ガス導出部7は、これらの排ガス導出配管13a~13cを通して各吸着塔2A,2Bの下部側配管3a側から排ガスG3を導出する。
【0027】
また、排ガス導出部7は、第1の排ガス導出配管13aを開閉する第1の排ガス導出側開閉弁14aと、第2の排ガス導出配管13bを開閉する第2の排ガス導出側開閉弁14bとを有している。排ガス導出部7は、これらの排ガス導出側開閉弁14a,14bの開閉を切り替えることによって、各吸着塔2A,2Bからの排ガスG3の導出を切り替える。
【0028】
また、第3の排ガス導出配管13cの出側には、排ガスG3を大気中に放出(大気開放)する際の騒音を低減するサイレンサー15が設けられている。
【0029】
圧力均圧部8は、一方の吸着塔2Aの下部側配管3a及び他方の吸着塔2Bの下部側配管3aと接続された第1の均圧配管16aと、一方の吸着塔2Aの上部側配管3b及び他方の吸着塔2Bの上部側配管3bと接続された第2の均圧配管16bと、一方の吸着塔2Aの上部側配管3b及び他方の吸着塔2Bの上部側配管3bと接続された流量調整配管17とを有している。圧力均圧部8は、これらの均圧配管16a,16b及び流量調整配管17を通して一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間の圧力差を解消(均圧化)する。
【0030】
なお、ここで言う「圧力差を解消(均圧化)する」とは、一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間の圧力差を、PSA装置1を運用可能な程度まで小さくすることを意味しており、必ずしも圧力差を完全に無くすことを要さない。すなわち、均圧化が完了しても、実際は一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間でガスが流れる程度の圧力差が存在してもよい。また、製品ガスG2の純度を維持するために、敢えて一定の圧力差を確保した状態で均一化の完了としてもよい。
【0031】
また、圧力均圧部8は、第1の均圧配管15aを開閉する第1の均圧弁18aと、第2の均圧配管15bを開閉する第2の均圧弁18bとを有している。圧力均圧部8は、これらの均圧弁18a,18bの開閉を切り替えることによって、一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間の均圧化を行う。
【0032】
なお、本実施形態のPSA装置1では、上述した流量調整配管17の径及び長さを調整することによって、一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間を流れる再生ガスの流量調整が可能な構成となっている。一方、本実施形態のPSA装置1では、このような流量調整配管17を用いる構成以外にも、例えば流量調整弁(ニードル弁)やオリフィスなどの流量調整が可能な構成を採用することが可能である。
【0033】
また、本実施形態のPSA装置1では、上述した各原料ガス導入配管9a~9c、各製品ガス導出配管11a~11c、各排ガス導出配管13a~13c、各均圧配管16a,16b及び流量調整配管17として、例えば鋼管(SGP)などの金属が用いられているが、原料ガスG1や製品ガスG2、排ガスG3と反応せず、高圧に耐え得ることができる材質のものであればよく、これに必ずしも限定されるものではない。
【0034】
また、本実施形態のPSA装置1では、上述した各原料ガス導入側開閉弁10a,10b、各製品ガス導出側開閉弁12a,12b、各排ガス導出側開閉弁14a,14bとして、自動切替式の開閉弁(自動弁)を用いているが、原料ガスG1や製品ガスG2、排ガスG3と反応せず、高圧に耐え得ることができるものであればよい。
【0035】
以上のような構成を有する本実施形態のPSA装置1では、図6に示す手順に従って、上述した一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間で、加圧均圧工程と、加圧吸着工程と、減圧均圧工程と、減圧再生工程との各工程を順次繰り返す。
【0036】
これにより、原料ガスG1となる空気中に含まれる窒素を連続的に分離して、製品ガスG2である窒素富化ガスを連続的に製造することが可能である。なお、図2は、PSA装置1において、一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの動作の手順を示す工程図である。
【0037】
本実施形態のPSA装置1では、図6に示すように、一対の吸着塔2A,2Bのうち、一方の吸着塔2Aが加圧吸着工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが減圧再生工程を行う。また、一方の吸着塔2Aが減圧均圧工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが加圧均圧工程を行う。
【0038】
逆に、一方の吸着塔2Aが減圧再生工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが加圧吸着工程を行う。また、一方の吸着塔2Aが加圧均圧工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが減圧均圧工程を行う。
【0039】
したがって、各吸着塔2A,2Bでは、互いの工程をずらして行う以外は、基本的に同じ手順で、加圧吸着工程と、減圧均圧工程と、減圧再生工程と、加圧均圧工程とを順次繰り返すことになる。
【0040】
具体的に、上記PSA装置1の具体的な動作について、図2図5を参照しながら説明する。
なお、図2は、PSA装置1において、一方の吸着塔2Aで加圧吸着工程を行い、他方の吸着塔2Bで減圧再生工程を行う状態を示す系統図である。図3は、PSA装置1において、一方の吸着塔2Aで減圧均圧工程を行い、他方の吸着塔2Bで加圧均圧工程を行う状態を示す系統図である。図4は、PSA装置1において、一方の吸着塔2Aで減圧再生工程を行い、他方の吸着塔2Bで加圧吸着工程を行う状態を示す系統図である。図5は、PSA装置1において、一方の吸着塔2Aで加圧均圧工程を行い、他方の吸着塔2Bで減圧均圧工程を行う状態を示す系統図である。図2図5において、白色の弁は開状態であることを示し、黒色の弁は閉状態であることを示す。
【0041】
本実施形態のPSA装置1では、先ず、図2に示すように、一対の吸着塔2A,2Bのうち、一方の吸着塔2Aが加圧吸着工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが減圧再生工程を行う。
【0042】
具体的には、第1の原料ガス導入側開閉弁10aと、第1の製品ガス導出側開閉弁12aと、第2の排ガス導出側開閉弁14bとを開放する。一方、第2の原料ガス導入側開閉弁10bと、第2の製品ガス導出側開閉弁12bと、第1の排ガス導出側開閉弁14aと、第1の均圧弁18a及び第2の均圧弁18bとを閉塞する。
【0043】
これにより、一方の吸着塔2A側の加圧吸着工程では、第1の原料ガス導入配管9aを通して一方の吸着塔2Aの下部側配管3a側から加圧された状態の原料ガスG1が導入される。
【0044】
一方の吸着塔2Aでは、内部に充填された吸着剤Sの間を下部側配管3a側から上部側配管3b側に向かって原料ガスG1が通過する間に、この原料ガスG1中に含まれる酸素を吸着剤Sに吸着させ、吸着剤Sを通過した窒素を含む製品ガスG2と分離する。分離された製品ガスG2は、一方の吸着塔2Aの上部側配管3b側から第1の製品ガス導出配管11aを通して導出される。
【0045】
これに対して、他方の吸着塔2B側の減圧再生工程では、第2の排ガス導出側開閉弁14bを開放することによって、他方の吸着塔2B内の圧力が減圧される。
【0046】
他方の吸着塔2Bでは、内部圧力が低下するのに伴って、吸着剤Sから脱離された酸素を含む排ガスG3が、他方の吸着塔2Bの下部側配管3a側から第2の排ガス導出配管13bを通して導出される。
【0047】
また、他方の吸着塔2B側の減圧再生工程では、吸着剤Sを再生するパージガスG4として、一方の吸着塔2A側から導出された製品ガスG2の一部を他方の吸着塔2Bの上部側配管3b側から流量調整配管16を通して導入してもよい。吸着剤Sの再生時に、このようなパージガスG4を導入することによって、吸着剤Sに吸着された酸素の脱離を促進することが可能である。
【0048】
次に、図3に示すように、一方の吸着塔2Aが減圧均圧工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが加圧均圧工程を行う。
【0049】
具体的には、第1の均圧弁17a及び第2の均圧弁17bを開放する。一方、第1の原料ガス導入側開閉弁10a及び第2の原料ガス導入側開閉弁10bと、第1の製品ガス導出側開閉弁12a及び第2の製品ガス導出側開閉弁12bと、第1の排ガス導出側開閉弁14a及び第2の排ガス導出側開閉弁14bとを閉塞する。
【0050】
これにより、一方の吸着塔2Aの減圧均圧工程では、一方の吸着塔2A内に残留した相対的に高圧な残留ガスG5が一方の吸着塔2Aの下部側配管3a及び上部側配管3b側から第1の均圧配管16a及び第2の均圧配管16bを通して導出される。
【0051】
これに対して、他方の吸着塔2Bの加圧均圧工程では、第1の均圧配管16a及び第2の均圧配管16bを通して他方の吸着塔2Bの下部側配管3a及び上部側配管3b側から相対的に高圧な残留ガスG5が導入される。
【0052】
残留ガスG5は、一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間の圧力差が解消(均圧化)されるまで、一方の吸着塔2A側から他方の吸着塔2B側へと導入される。
【0053】
次に、図4に示すように、一対の吸着塔2A,2Bのうち、一方の吸着塔2Aが減圧再生工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが加圧吸着工程を行う。
【0054】
具体的には、第2の原料ガス導入側開閉弁10bと、第2の製品ガス導出側開閉弁12bと、第1の排ガス導出側開閉弁14aとを開放する。一方、第1の原料ガス導入側開閉弁10aと、第1の製品ガス導出側開閉弁12aと、第2の排ガス導出側開閉弁14bと、第1の均圧弁18a及び第2の均圧弁18bとを閉塞する。
【0055】
これにより、他方の吸着塔2B側の加圧吸着工程では、第2の原料ガス導入配管9bを通して他方の吸着塔2Bの下部側配管3a側から加圧された状態の原料ガスG1が導入される。
【0056】
他方の吸着塔2Bでは、内部に充填された吸着剤Sの間を下部側配管3a側から上部側配管3b側に向かって原料ガスG1が通過する間に、この原料ガスG1中に含まれる酸素を吸着剤Sに吸着させ、吸着剤Sを通過した窒素を含む製品ガスG2と分離する。分離された製品ガスG2は、他方の吸着塔2Bの上部側配管3b側から第2の製品ガス導出配管11bを通して導出される。
【0057】
これに対して、一方の吸着塔2A側の減圧再生工程では、第1の排ガス導出側開閉弁14aを開放することによって、一方の吸着塔2A内の圧力が減圧される。
【0058】
一方の吸着塔2Aでは、内部圧力が低下するのに伴って、吸着剤Sから脱離された酸素を含む排ガスG3が、一方の吸着塔2Aの下部側配管3a側から第1の排ガス導出配管13aを通して導出される。
【0059】
また、一方の吸着塔2A側の減圧再生工程では、吸着剤Sを再生するパージガスG4として、他方の吸着塔2B側から導出された製品ガスG2の一部を一方の吸着塔2Aの上部側配管3b側から流量調整配管17を通して導入してもよい。吸着剤Sの再生時に、このようなパージガスG4を導入することによって、吸着剤Sに吸着された酸素の脱離を促進することが可能である。
【0060】
次に、図5に示すように、一方の吸着塔2Aが加圧均圧工程を行っている間、他方の吸着塔2Bが減圧均圧工程を行う。
【0061】
具体的には、第1の均圧弁18a及び第2の均圧弁18bを開放する。一方、第1の原料ガス導入側開閉弁10a及び第2の原料ガス導入側開閉弁10bと、第1の製品ガス導出側開閉弁12a及び第2の製品ガス導出側開閉弁12bと、第1の排ガス導出側開閉弁14a及び第2の排ガス導出側開閉弁14bとを閉塞する。
【0062】
これにより、他方の吸着塔2Bの減圧均圧工程では、他方の吸着塔2B内に残留した相対的に高圧な残留ガスG5が他方の吸着塔2Bの下部側配管3a及び上部側配管3b側から第1の均圧配管16a及び第2の均圧配管16bを通して導出される。
【0063】
これに対して、一方の吸着塔2Aの加圧均圧工程では、第1の均圧配管16a及び第2の均圧配管16bを通して一方の吸着塔2Aの下部側配管3a及び上部側配管3b側から相対的に高圧な残留ガスG5が導入される。
【0064】
残留ガスG5は、一方の吸着塔2Aと他方の吸着塔2Bとの間の圧力差が解消(均圧化)されるまで、他方の吸着塔2B側から一方の吸着塔2A側へと導入される。
【0065】
以上のようにして、本実施形態のPSA装置1では、各吸着塔2A,2Bにおいて、上述した図6に示す各工程を順次繰り返すことによって、原料ガスG1となる空気から製品ガスG2となる窒素富化ガスを分離して製造することが可能である。
【0066】
ところで、本実施形態のPSA装置1は、図1に示すように、吸着塔2A,2Bに加圧された状態で導入される原料ガスG1の一部を外部に排出する原料ガス排出部30を備えている。
【0067】
原料ガス排出部30は、第3の原料ガス導入配管9cから分岐された原料ガス排出配管31と、原料ガス排出配管31に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値(以下、開設定値という。)を制御(変更)可能な自動弁32(制御部32)とを有している。本実施形態において、自動弁32は電磁弁であるがこれに限られず、例えば空気作動弁又は制御弁等であってもよい。原料ガス排出部30は、原料ガス排出配管31を通して圧縮機5により加圧された原料ガスG1の一部を大気中に放出(大気開放)する。詳細には、加圧吸着工程において、原料ガス排出配管31における自動弁32の上流側で原料ガスG1の圧力が開設定値まで増加すると、閉状態から開状態となった自動弁32を通して原料ガスG1の大気中への放出が開始される。原料ガスG1の大気中への放出が開始すると、吸気塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力は緩やかに増加するようになる。
【0068】
ここで自動弁32は、加圧吸着工程において吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力に基づき、原料ガス排出配管31から原料ガスG1の排出を開始する条件として開設定値を制御(変更)するプロセッサを含む。開設定値の制御の詳細については後述する。
【0069】
また、原料ガス排出部30は、原料ガス排出配管31において自動弁32の下流側に設けられたニードル弁33を更に有してもよい。ニードル弁33を予め定めた開度に固定しておくことで、原料ガス排出部30を通して大気中に放出する原料ガスG1の流量を調節可能である。
【0070】
ところで、本実施形態のPSA装置1において、吸着塔2A,2Bに加圧された状態で導入される原料ガスG1の最大圧力の上限値及び下限値が予め定められている。圧縮機5は、上述した加圧吸着工程において、吸着塔2A,2Bに加圧された状態で導入される原料ガスG1の圧力が最大圧力の上限値(無負荷運転設定値)まで増加すると、原料ガスG1を加圧する負荷運転(ロード)から原料ガスG1の加圧を停止する無負荷運転(アンロード)へと切り替わり、最大圧力の下限値まで減少すると、無負荷運転から負荷運転へと切り替わる運転制御を行っている。
【0071】
ここで、図7図9を参照して、吸着塔2A,2Bで交互に行う加圧吸着工程及び減圧均圧工程における、PSA装置1の動作について説明する。なお、吸着塔2A,2Bで交互に行う加圧吸着工程及び減圧均圧工程を1サイクルとしたとき、図8図10のそれぞれは、吸着塔2A,2Bに加圧された状態で導入される原料ガスG1の2サイクル分の圧力変化を模式的に示している。
【0072】
上述したように、製品ガスG2の生産効率の観点から、加圧吸着工程の終了時に、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が最大圧力の上限値(無負荷運転設定値)に到達することが望ましい。このような場合における原料ガスG1の圧力変化の様子について図7を参照して説明する。図7に示すように、加圧吸着工程が開始すると、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が増加し始める。その後、原料ガスG1の圧力が開設定値に到達すると、原料ガス排出部30の自動弁32が閉状態から開状態に切り替わって原料ガスG1の大気中への放出が開始されることにより、原料ガスG1の圧力の増加が緩やかになる。なお、開状態となった自動弁32による原料ガスG1の排出量(換言すると、開状態であるときの自動弁32の開度)は、原料ガスG1の圧力が加圧吸着工程の終了時に無負荷運転設定値に到達するように予め調整されている。このため、原料ガスG1の圧力は、加圧吸着工程の終了時に無負荷運転設定値に到達する。
【0073】
一方で、上述したように、PSA装置1の稼働中にユーザが製品ガスG2の流量を変更することがある。例えばPSA装置1の稼働中に製品ガスG2の流量が増加すると、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力の増加が緩やかになるため、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が加圧吸着工程の終了時までに無負荷運転設定値に到達しない場合がある。これに対して本実施形態に係るPSA装置1では、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が、あるサイクルの加圧吸着工程の終了時までに無負荷運転設定値に到達しなかった場合、自動弁32は、原料ガス排出配管31から原料ガスG1の排出を開始する条件である開設定値を増加させる。本実施形態では、自動弁32は、以下の式(1)に従って開設定値を増加させる。
Pn+1=Pn+α×ΔP 式(1)
ここでPn+1は、n+1回目のサイクルの加圧吸着工程において適用される開設定値であり、Pnは、n回目のサイクルの加圧吸着工程において適用される開設定値である。またαは、調整係数であり、例えば0.1以上1.0以下の範囲内で予め設定される。またΔPは、無負荷運転設定値から、n回目のサイクルの加圧吸着工程の終了時における原料ガスG1の圧力値を減算した値(以下、差分圧力値という。)である。
【0074】
このような場合における原料ガスG1の圧力変化の様子について図8を参照して説明する。図8に示すように、あるサイクル(図中左側)の加圧吸着工程が開始すると、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が増加し始めるが、製品ガスG2の流量が増加したことに起因して、図7と比較して圧力の増加は緩やかになる。その後、原料ガスG1の圧力が開設定値に到達すると、原料ガス排出部30の自動弁32が閉状態から開状態に切り替わって原料ガスG1の大気中への放出が開始されることにより、原料ガスG1の圧力の増加が更に緩やかになる。そして、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達することなく当該サイクルの加圧吸着工程が終了する。ここで自動弁32は、上述した式(1)に従って開設定値を増加させる。続いて次のサイクル(図中右側)の加圧吸着工程では、原料ガスG1の圧力が増加後の開設定値に到達したときに原料ガスG1の大気中への放出が開始される結果、前のサイクルと比較して加圧吸着工程の終了時における原料ガスG1の圧力が増加し無負荷運転設定値に近づく。このように、本実施形態に係るPSA装置1によれば、PSA装置1の稼働中にユーザが製品ガスG2の流量を増加させた場合であっても、加圧吸着工程のサイクルを繰り返すことにより、加圧吸着工程において吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力変化を望ましい状態(すなわち図7に示すように、加圧吸着工程の終了時に、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達する状態)に近づけることができる。したがって、PSA装置1の加圧吸着工程の終了時に、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が最大圧力の上限値(無負荷運転設定値)に到達する蓋然性が高まる。
【0075】
反対に、PSA装置1の稼働中に製品ガスG2の流量が減少すると、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力の増加が急になるため、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が加圧吸着工程の終了時よりも前に無負荷運転設定値に到達する場合がある。これに対して本実施形態に係るPSA装置1では、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が、あるサイクルの加圧吸着工程の終了時よりも前に無負荷運転設定値に到達した場合、自動弁32は、原料ガス排出配管31から原料ガスG1の排出を開始する条件である開設定値を減少させる。本実施形態では、自動弁32は、以下の式(2)に従って開設定値を減少させる。
Pn+1=Pn-β×ΔP 式(2)
ここでPn+1は、n+1回目のサイクルの加圧吸着工程において適用される開設定値であり、Pnは、n回目のサイクルの加圧吸着工程において適用される開設定値である。またβは、調整係数であり、例えば0.1以上1.0以下の範囲内で予め設定される。なおβは、上述した式(1)のαと同値であってもよく、異なってもよい。またΔPは、差分圧力値である。
【0076】
このような場合における原料ガスG1の圧力変化の様子について図9を参照して説明する。図9に示すように、あるサイクル(図中左側)の加圧吸着工程が開始すると、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が増加し始めるが、製品ガスG2の流量が減少したことに起因して、図7と比較して圧力の増加は急になる。その後、原料ガスG1の圧力が開設定値に到達すると、原料ガス排出部30の自動弁32が閉状態から開状態に切り替わって原料ガスG1の大気中への放出が開始されることにより、原料ガスG1の圧力の増加が緩やかになる。しかしながら、加圧吸着工程の終了時よりも前に原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達し、圧縮機5が負荷運転から無負荷運転に切り替わることによって、原料ガスG1の圧力は減少していき、当該サイクルの加圧吸着工程が終了する。ここで自動弁32は、上述した式(2)に従って開設定値を減少させる。続いて次のサイクル(図中右側)の加圧吸着工程では、原料ガスG1の圧力が減少後の開設定値に到達したときに原料ガスG1の大気中への放出が開始される結果、前のサイクルと比較して、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達するタイミングが加圧吸着工程の終了時に近づく。このように、本実施形態に係るPSA装置1によれば、PSA装置1の稼働中にユーザが製品ガスG2の流量を減少させた場合であっても、加圧吸着工程のサイクルを繰り返すことにより、加圧吸着工程において吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力変化を望ましい状態(すなわち図7に示すように、加圧吸着工程の終了時に、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達する状態)に近づけることができる。したがって、PSA装置1の加圧吸着工程の終了時に、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力が最大圧力の上限値(無負荷運転設定値)に到達する蓋然性が高まる。
【0077】
次に、図10図13を参照して、PSA装置1の上述した動作による効果について説明する。
【0078】
まず、PSA装置1の稼働中に製品ガスG2の流量が増加した場合について説明する。図10は、吸着塔2A,2Bに加圧された状態で導入される原料ガスG1の7サイクル分の圧力変化の実測値を示すグラフである。図10に示すように、1サイクル目では、加圧吸着工程の終了時に、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達している。そして、1サイクル目の終了間際に、製品ガスG2の流量が増加している。このため、図8を参照して説明したように、2サイクル目では原料ガスG1の圧力の増加が1サイクル目に比べて緩やかになっており、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達することなく加圧吸着工程が終了している。そして3サイクル目以降は、上述したように自動弁32の開設定値が逐次増加することによって、加圧吸着工程の終了時における原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に近づいていることが分かる。
【0079】
図11は、本実施形態に係るPSA装置1及び比較例に係るPSA装置それぞれの稼働中に製品ガスG2の流量が増加した後、十分な数のサイクルを経た際の(定常状態となった際の)原料ガスG1の圧力変化の実測値を示すグラフである。ここで「比較例に係るPSA装置」は、本実施形態に係るPSA装置1と比較して、原料ガス排出部30の自動弁32を機械式背圧調整弁に置き換えたものである。比較例に係るPSA装置では、稼働前に当該機械式背圧調整弁の開設定値が所望の値に固定されており、稼働中には変化しない点が、本実施形態に係るPSA装置1と異なる。比較例に係るPSA装置では、各サイクルにおいて、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達することなく加圧吸着工程が終了している。これに対して、本実施形態に係るPSA装置1では、各サイクルにおいて、加圧吸着工程の終了時に、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達している。このように、本実施形態に係るPSA装置1によれば、比較例に係るPSA装置と比べて、稼働中に製品ガスG2の流量が増加した場合における製品ガスG2の生産効率が向上する。
【0080】
次に、PSA装置1の稼働中に製品ガスG2の流量が減少した場合について説明する。図12は、吸着塔2A,2Bに加圧された状態で導入される原料ガスG1の7サイクル分の圧力変化の実測値を示すグラフである。図12に示すように、1サイクル目では、加圧吸着工程の終了時に、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達している。そして、1サイクル目の終了間際に、製品ガスG2の流量が減少している。このため、図9を参照して説明したように、2サイクル目では原料ガスG1の圧力の増加が1サイクル目に比べて急になっており、加圧吸着工程の終了時よりも前に原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達している。なお2サイクル目では、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達し圧縮機5が無負荷運転に切り替わった後、原料ガスG1の圧力が最大圧力の下限値まで減少し圧縮機5が再び負荷運転に切り替わったことによって、その後原料ガスG1の圧力は再び増加している。そして3サイクル目以降は、上述したように自動弁32の開設定値が逐次減少することによって、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達するタイミングが加圧吸着工程の終了時に近づいていることが分かる。
【0081】
図13は、本実施形態に係るPSA装置1及び比較例に係るPSA装置それぞれの稼働中に製品ガスG2の流量が増加した後、定常状態となった際の原料ガスG1の圧力変化の実測値を示すグラフである。ここで「比較例に係るPSA装置」は、本実施形態に係るPSA装置1と比較して、原料ガス排出部30の自動弁32を機械式背圧調整弁に置き換えたものである。比較例に係るPSA装置では、稼働前に当該機械式背圧調整弁の開設定値が所望の値に固定されており、稼働中には変化しない点が、本実施形態に係るPSA装置1と異なる。比較例に係るPSA装置では、各サイクルにおいて、加圧吸着工程の終了時よりも前に原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達している。これに対して、本実施形態に係るPSA装置1では、各サイクルにおいて、加圧吸着工程の終了時に、原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達している。このように、本実施形態に係るPSA装置1によれば、比較例に係るPSA装置と比べて、稼働中に製品ガスG2の流量が減少した場合における製品ガスG2の生産効率が向上する。また、定常状態の加圧吸着工程において、比較例に係るPSA装置では圧縮機5が負荷運転、無負荷運転、負荷運転の順に切り替わっているのに対して、本実施形態に係るPSA装置1では圧縮機5は無負荷運転に切り替わっていない。したがって、本実施形態に係るPSA装置1によれば、比較例に係るPSA装置と比べて、圧縮機5の負荷運転と無負荷運転が切り替わる頻度が低減するので、圧縮機5の劣化を低減することができる。
【0082】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0083】
例えば、上記PSA装置1では、上述した一対の吸着塔2A,2Bを備えた構成を例示しているが、そのような構成に必ずしも限定されるものではなく、1つ以上の吸着塔を備えていればよい。例えば、4つ、6つ又は8つの吸着塔を備えた構成など、PSA装置1が備える吸着塔の数について適宜変更することが可能である。
【0084】
また例えば、上述した実施形態において、PSA装置1の自動弁32が、あるサイクルの加圧吸着工程において吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力に基づき、次のサイクルに適用する開設定値を制御(変更)する例について説明した。しかしながら、開設定値の制御手法は、当該例に限られない。例えば、自動弁32は、あるサイクルの加圧吸着工程における原料ガスG1の圧力に基づき、当該サイクルに適用する開設定値を制御(変更)してもよい。詳細には、自動弁32は、あるサイクルの加圧吸着工程が開始してから所定時間が経過するまでの圧力変化に基づいて、当該サイクルの加圧吸着工程終了時までの原料ガスG1の圧力変化を予測してもよい。圧力変化の予測には、例えばシミュレーション又は機械学習等、任意の手法が採用可能である。そして自動弁32は、当該サイクルの加圧吸着工程の終了時までに原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達しないと予測した場合、当該サイクルに適用する開設定値を増加させてもよい。反対に、自動弁32は、当該サイクルの加圧吸着工程の終了時よりも前に原料ガスG1の圧力が無負荷運転設定値に到達すると予測した場合、当該サイクルに適用する開設定値を減少させてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…PSA装置(圧力変動吸着装置) 2A…一方の吸着塔 2B…他方の吸着塔 3a…下部側配管 3b…上部側配管 4…原料ガス導入部 5…圧縮機 6…製品ガス導出部 7…排ガス導出部 8…圧力均圧部 9a…第1の原料ガス導入配管 9b…第2の原料ガス導入配管 9c…第3の原料ガス導入配管 10a…第1の原料ガス導入側開閉弁 10b…第2の原料ガス導入側開閉弁 11a…第1の製品ガス導出配管 11b…第2の製品ガス導出配管 11c…第3の製品ガス導出配管 12a…第1の製品ガス導出側開閉弁 12b…第2の製品ガス導出側開閉弁 13a…第1の排ガス導出配管 13b…第2の排ガス導出配管 13c…第3の排ガス導出配管 14a…第1の排ガス導出側開閉弁 14b…第2の排ガス導出側開閉弁 15…サイレンサー 16a…第1の均圧配管 16b…第2の均圧配管 17…流量調整配管 18a…第1の均圧弁 18b…第2の均圧弁 30…原料ガス排出部 31…原料ガス排出配管 32…自動弁(制御部) 33 ニードル弁 G1…原料ガス(空気) G2…製品ガス(窒素富化ガス) G3…排ガス(酸素) G4…パージガス G5…残留ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、
前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、
前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、
少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、
少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、
前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、
前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、
を備える圧力変動吸着装置であって、
前記圧縮機は、前記加圧吸着工程において、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替わり、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸気塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時までに前記上限値に到達しなかった場合、前記自動弁の前記圧力設定値を増加させる、圧力変動吸着装置。
【請求項2】
請求項に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸気塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時よりも前に前記上限値に到達した場合、前記自動弁の前記圧力設定値を減少させる、圧力変動吸着装置。
【請求項3】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、
前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、
前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、
少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、
少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、
前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、
前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、
を備える圧力変動吸着装置であって、
前記圧縮機は、前記加圧吸着工程において、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替わり、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸気塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時よりも前に前記上限値に到達した場合、前記自動弁の前記圧力設定値を減少させる、圧力変動吸着装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記自動弁の下流側に設けられたニードル弁を更に備える、圧力変動吸着装置。
【請求項5】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、を備える圧力変動吸着装置が実行する方法であって、
前記加圧吸着工程において、前記圧縮機の動作を、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替えること、及び
前記制御部が、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸気塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時までに前記上限値に到達しなかった場合、前記自動弁の前記圧力設定値を増加させること
を含む、方法。
【請求項6】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、を備える圧力変動吸着装置が実行する方法であって、
前記加圧吸着工程において、前記圧縮機の動作を、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替えること、及び
前記制御部が、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸気塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時よりも前に前記上限値に到達した場合、前記自動弁の前記圧力設定値を減少させること
を含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、
前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、
前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、
少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、
少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、
前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、
前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、
を備える圧力変動吸着装置であって、
前記圧縮機は、前記加圧吸着工程において、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替わり、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時までに前記上限値に到達しなかった場合、前記自動弁の前記圧力設定値を増加させる、圧力変動吸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時よりも前に前記上限値に到達した場合、前記自動弁の前記圧力設定値を減少させる、圧力変動吸着装置。
【請求項3】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、
前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、
前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、
少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、
少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、
前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、
前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、
を備える圧力変動吸着装置であって、
前記圧縮機は、前記加圧吸着工程において、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替わり、
前記制御部は、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時よりも前に前記上限値に到達した場合、前記自動弁の前記圧力設定値を減少させる、圧力変動吸着装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の圧力変動吸着装置であって、
前記自動弁の下流側に設けられたニードル弁を更に備える、圧力変動吸着装置。
【請求項5】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、を備える圧力変動吸着装置が実行する方法であって、
前記加圧吸着工程において、前記圧縮機の動作を、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替えること、及び
前記制御部が、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時までに前記上限値に到達しなかった場合、前記自動弁の前記圧力設定値を増加させること
を含む、方法。
【請求項6】
吸着剤が充填された1つ以上の吸着塔と、前記1つ以上の吸着塔に原料ガスを導入する原料ガス導入配管と、前記原料ガス導入配管から導入される原料ガスを加圧する圧縮機と、少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガス中に含まれる不要成分を前記吸着剤に吸着させる加圧吸着工程において、前記原料ガスから分離された製品ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する製品ガス導出配管と、少なくとも1つの吸着塔内の圧力を減圧する減圧再生工程において、前記吸着剤から脱離した不要成分を含む排ガスを前記少なくとも1つの吸着塔から導出する排ガス導出配管と、前記原料ガス導入配管から分岐されて、前記原料ガスの一部を外部に排出する原料ガス排出配管と、前記原料ガス排出配管から原料ガスの排出を開始する条件として、前記原料ガス排出配管に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値を制御可能な自動弁の前記圧力設定値を制御する制御部と、を備える圧力変動吸着装置が実行する方法であって、
前記加圧吸着工程において、前記圧縮機の動作を、前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が予め設定された最大圧力の上限値まで増加すると、前記原料ガスを加圧する負荷運転から前記原料ガスの加圧を停止する無負荷運転へと切り替えること、及び
前記制御部が、前記加圧吸着工程において前記少なくとも1つの吸着塔に加圧された状態で導入される原料ガスの圧力が、前記加圧吸着工程の終了時よりも前に前記上限値に到達した場合、前記自動弁の前記圧力設定値を減少させること
を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
原料ガス排出部30は、第3の原料ガス導入配管9cから分岐された原料ガス排出配管31と、原料ガス排出配管31に設けられた、閉状態から開状態に切り替わる圧力設定値(以下、開設定値という。)を制御(変更)可能な自動弁32(制御部32)とを有している。本実施形態において、自動弁32は電磁弁であるがこれに限られず、例えば空気作動弁又は制御弁等であってもよい。原料ガス排出部30は、原料ガス排出配管31を通して圧縮機5により加圧された原料ガスG1の一部を大気中に放出(大気開放)する。詳細には、加圧吸着工程において、原料ガス排出配管31における自動弁32の上流側で原料ガスG1の圧力が開設定値まで増加すると、閉状態から開状態となった自動弁32を通して原料ガスG1の大気中への放出が開始される。原料ガスG1の大気中への放出が開始すると、吸着塔2A,2Bに導入される原料ガスG1の圧力は緩やかに増加するようになる。