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特開2024-34594内部抵抗測定システム、内部抵抗測定装置及び内部抵抗測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034594
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】内部抵抗測定システム、内部抵抗測定装置及び内部抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240306BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138938
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】温田 透
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA08
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】異常のある放電経路を回避して充電可能なバッテリの内部抵抗の測定を行う。
【解決手段】内部抵抗測定システムは、充電可能なバッテリの電圧と、前記バッテリに接続されたスイッチと前記スイッチに直列に接続された抵抗素子とを含み前記スイッチがオンのときに前記バッテリを放電させる複数の放電経路で前記バッテリから流れる電流とを測定する測定部と、前記放電経路で前記スイッチがオフのときに前記測定部が測定した電流値と、前記放電経路で前記スイッチがオンのときに前記測定部が測定した電流値に基づいて前記放電経路の異常の有無を判定する判定部と、前記判定部で異常がないと判定された前記放電経路で前記バッテリを所定の放電パターンで放電させ、前記放電パターンで前記バッテリの放電が行われているときに前記測定部が測定した電圧と電流とから前記バッテリの内部抵抗値を算出する内部抵抗算出部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能なバッテリの電圧と、前記バッテリに接続されたスイッチと前記スイッチに直列に接続された抵抗素子とを含み前記スイッチがオンのときに前記バッテリを放電させる複数の放電経路で前記バッテリから流れる電流とを測定する測定部と、
前記放電経路で前記スイッチがオフのときに前記測定部が測定した電流値と、前記放電経路で前記スイッチがオンのときに前記測定部が測定した電流値に基づいて前記放電経路の異常の有無を判定する判定部と、
前記判定部で異常がないと判定された前記放電経路で前記バッテリを所定の放電パターンで放電させ、前記放電パターンで前記バッテリの放電が行われているときに前記測定部が測定した電圧と電流とから前記バッテリの内部抵抗値を算出する内部抵抗算出部と、
を備える内部抵抗測定システム。
【請求項2】
前記内部抵抗算出部は、前記判定部で複数の前記放電経路に異常がないと判定された場合、前記バッテリを所定のパターンで放電させる放電経路を予め定められたルールに従って選択する
請求項1に記載の内部抵抗測定システム。
【請求項3】
前記内部抵抗算出部は、前記判定部で複数の前記放電経路に異常がないと判定された場合、複数の前記放電経路毎に算出した内部抵抗値の平均値を前記バッテリの内部抵抗値として算出する
請求項2に記載の内部抵抗測定システム。
【請求項4】
前記内部抵抗算出部は、前記判定部で複数の前記放電経路に異常がないと判定された場合、前記バッテリを放電させる毎に前記放電経路を切り替える
請求項2に記載の内部抵抗測定システム。
【請求項5】
充電可能なバッテリの電圧と、前記バッテリに接続されたスイッチと前記スイッチに直列に接続された抵抗素子とを含み前記スイッチがオンのときに前記バッテリを放電させる複数の放電経路で前記バッテリから流れる電流とを測定する測定部と、
前記放電経路で前記スイッチがオフのときに前記測定部が測定した電流値と、前記放電経路で前記スイッチがオンのときに前記測定部が測定した電流値に基づいて前記放電経路の異常の有無を判定する判定部と、
前記判定部で異常がないと判定された前記放電経路で前記バッテリを所定の放電パターンで放電させ、前記放電パターンで前記バッテリの放電が行われているときに前記測定部が測定した電圧と電流とから前記バッテリの内部抵抗値を算出する内部抵抗算出部と、
を備える内部抵抗測定装置。
【請求項6】
充電可能なバッテリの電圧と、前記バッテリに接続されたスイッチと前記スイッチに直列に接続された抵抗素子とを含み前記スイッチがオンのときに前記バッテリを放電させる複数の放電経路で前記バッテリから流れる電流とを測定する測定ステップと、
前記放電経路で前記スイッチがオフのときに前記測定ステップで測定した電流値と、前記放電経路で前記スイッチがオンのときに前記測定ステップで測定した電流値に基づいて前記放電経路の異常の有無を判定する判定ステップと、
前記判定ステップで異常がないと判定された前記放電経路で前記バッテリを所定の放電パターンで放電させ、前記放電パターンで前記バッテリの放電が行われているときに前記測定ステップで測定した電圧と電流とから前記バッテリの内部抵抗値を算出する内部抵抗算出ステップと、
を備える内部抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部抵抗測定システム、内部抵抗測定装置及び内部抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充電可能なバッテリの状態検知に係る発明として、例えば特許文献1に開示された劣化判定装置や、特許文献2に開示された状態検知装置がある。これらの装置は、バッテリを放電させたときの応答電圧と電流から内部インピーダンスを求め、求めた内部インピーダンスからバッテリの劣化程度を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3960998号公報
【特許文献2】特許第6045984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放電によりバッテリの内部インピーダンスを求める装置では、内部インピーダンスの測定のためにバッテリを放電させる放電経路に異常があると、放電による電圧値と電流値を正確に取得することができず、内部インピーダンスの測定を誤ることとなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異常のある放電経路を回避して充電可能なバッテリの内部抵抗の測定を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る内部抵抗測定システムは、充電可能なバッテリの電圧と、前記バッテリに接続されたスイッチと前記スイッチに直列に接続された抵抗素子とを含み前記スイッチがオンのときに前記バッテリを放電させる複数の放電経路で前記バッテリから流れる電流とを測定する測定部と、前記放電経路で前記スイッチがオフのときに前記測定部が測定した電流値と、前記放電経路で前記スイッチがオンのときに前記測定部が測定した電流値に基づいて前記放電経路の異常の有無を判定する判定部と、前記判定部で異常がないと判定された前記放電経路で前記バッテリを所定の放電パターンで放電させ、前記放電パターンで前記バッテリの放電が行われているときに前記測定部が測定した電圧と電流とから前記バッテリの内部抵抗値を算出する内部抵抗算出部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る内部抵抗測定システムにおいては、前記内部抵抗算出部は、前記判定部で複数の前記放電経路に異常がないと判定された場合、前記バッテリを所定のパターンで放電させる放電経路を予め定められたルールに従って選択するようにしてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る内部抵抗測定システムにおいては、前記内部抵抗算出部は、前記判定部で複数の前記放電経路に異常がないと判定された場合、複数の前記放電経路毎に算出した内部抵抗値の平均値を前記バッテリの内部抵抗値として算出するようにしてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る内部抵抗測定システムにおいては、前記内部抵抗算出部は、前記判定部で複数の前記放電経路に異常がないと判定された場合、前記バッテリを放電させる毎に前記放電経路を切り替えるようにしてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る内部抵抗測定装置は、充電可能なバッテリの電圧と、前記バッテリに接続されたスイッチと前記スイッチに直列に接続された抵抗素子とを含み前記スイッチがオンのときに前記バッテリを放電させる複数の放電経路で前記バッテリから流れる電流とを測定する測定部と、前記放電経路で前記スイッチがオフのときに前記測定部が測定した電流値と、前記放電経路で前記スイッチがオンのときに前記測定部が測定した電流値に基づいて前記放電経路の異常の有無を判定する判定部と、前記判定部で異常がないと判定された前記放電経路で前記バッテリを所定の放電パターンで放電させ、前記放電パターンで前記バッテリの放電が行われているときに前記測定部が測定した電圧と電流とから前記バッテリの内部抵抗値を算出する内部抵抗算出部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様に係る内部抵抗測定方法は、充電可能なバッテリの電圧と、前記バッテリに接続されたスイッチと前記スイッチに直列に接続された抵抗素子とを含み前記スイッチがオンのときに前記バッテリを放電させる複数の放電経路で前記バッテリから流れる電流とを測定する測定ステップと、前記放電経路で前記スイッチがオフのときに前記測定ステップで測定した電流値と、前記放電経路で前記スイッチがオンのときに前記測定ステップで測定した電流値に基づいて前記放電経路の異常の有無を判定する判定ステップと、前記判定ステップで異常がないと判定された前記放電経路で前記バッテリを所定の放電パターンで放電させ、前記放電パターンで前記バッテリの放電が行われているときに前記測定ステップで測定した電圧と電流とから前記バッテリの内部抵抗値を算出する内部抵抗算出ステップと、備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異常のある放電経路を回避して充電可能なバッテリの内部抵抗の測定を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る車両の電源系統を示す図である。
図2図2は、内部抵抗測定装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、制御部において実現する機能の構成を示すブロック図である。
図4図4は、制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、試験放電の処理のタイムチャートである。
図7図7は、制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、制御信号と放電電流のタイムチャートの一例を示す図である。
図10図10は、制御信号と放電電流のタイムチャートの一例を示す図である。
図11図11は、第2実施形態に係る車両の電源系統を示す図である。
図12図12は、第2実施形態に係る制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図13図13は、第3実施形態に係る車両の電源系統を示す図である。
図14図14は、第3実施形態に係る制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図15図15は、第4実施形態に係る車両の電源系統を示す図である。
図16図16は、第4実施形態に係る制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図17図17は、変形例に係るECUの構成を示す図である。
図18図18は、変形例に係るサーバ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素については適宜同一の符号を付している。
【0015】
[第1実施形態]
(実施形態の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両2Aの電源系統を示す図である。バッテリ20は、電解液を有する充電可能な電池であり、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、又はニッケル水素電池等によって構成されている。バッテリ20は、オルタネータ25によって充電され、スタータモータ27を駆動するとともに、負荷28に電力を供給する。スタータモータ27は、例えば、直流電動機によって構成され、バッテリ20から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン26を始動する。エンジン26は、例えば、ガソリンエンジン、及びディーゼルエンジン等のレシプロエンジン、又はロータリーエンジン等によって構成されている。エンジン26は、スタータモータ27によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し、車両2Aに推進力を与えるとともに、オルタネータ25を駆動する。オルタネータ25は、エンジン26によって駆動されて交流電力を発生し、発生した交流電力を整流回路によって直流電力に変換してバッテリ20を充電する。負荷28は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、シートヒータ、イグニッションコイル、カーオーディオ、及びカーナビゲーション等によって構成され、バッテリ20から供給される電力によって動作する。
【0016】
直列に接続された第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1は、バッテリ20を所定の放電パターンで放電させる第1放電回路21Aとして構成されている。第1放電回路21Aは、所定のパターンでバッテリ20を放電させる放電経路の一例である。ここで、「所定の放電パターン」とは、所定の放電電流と所定の放電時間を有する。第1スイッチSW1は、例えば、FET(Field Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチまたはリレー等の電磁スイッチによって構成されている。第1スイッチSW1は、一端がバッテリ20の正極に接続され、他端が第1抵抗素子R1に接続されている。第1抵抗素子R1は、一端が第1スイッチSW1に接続され、他端が内部抵抗測定装置1の端子T3と第2抵抗素子R2に接続されて接地されている。第1スイッチSW1は、内部抵抗測定装置1の端子T4から供給される制御信号に応じてオンまたはオフとなる。第1放電回路21Aは、第1スイッチSW1がオンのときに第1抵抗素子R1を介してバッテリ20を放電させ、第1スイッチSW1がオフのときには、第1放電回路21Aを介してのバッテリ20の放電を停止させる。第1抵抗素子R1は、第1スイッチSW1がオンになった場合、バッテリ20から所定の放電電流が流れる。
【0017】
直列に接続された第2スイッチSW2と第3抵抗素子R3は、バッテリ20を所定の放電パターンで放電させる第2放電回路21Bとして構成されている。第2放電回路21Bは、所定のパターンでバッテリ20を放電させる放電経路の一例である。第2スイッチSW2は、例えば、FET又はIGBT等の半導体スイッチまたはリレー等の電磁スイッチによって構成されている。第2スイッチSW2は、一端がバッテリ20の正極に接続され、他端が第3抵抗素子R3に接続されている。第3抵抗素子R3は、一端が第2スイッチSW2に接続され、他端が内部抵抗測定装置1の端子T3と第2抵抗素子R2に接続されて接地されている。第2スイッチSW2は、内部抵抗測定装置1の端子T5から供給される制御信号に応じてオンまたはオフとなる。第2放電回路21Bは、第2スイッチSW2がオンのときに第3抵抗素子R3を介してバッテリ20を放電させ、第2スイッチSW2がオフのときには、第2放電回路21Bを介してのバッテリ20の放電を停止させる。本実施形態では、第3抵抗素子R3の抵抗値は、第1抵抗素子R1と同じである。第3抵抗素子R3は、第2スイッチSW2がオンになった場合、バッテリ20から所定の放電電流が流れる。
【0018】
第2抵抗素子R2は、一端が内部抵抗測定装置1の端子T2とバッテリ20の負極に接続され、他端が内部抵抗測定装置1の端子T3、第1抵抗素子R1、及び第3抵抗素子R3に接続されて接地されている。第2抵抗素子R2は、電流センサを構成し、流れた電流に対応する電圧を発生して内部抵抗測定装置1の端子T2、T3に供給する。この第2抵抗素子R2に生じる電圧を後述するADコンバータ13で変換することで、第2抵抗素子R2に流れる電流を知ることができる。なお、内部抵抗測定装置1は、端子T1、T2に印加される電圧を後述するADコンバータ13で変換することで、電圧センサとして機能してバッテリ20の電圧を検出する。
【0019】
バッテリ20の内部抵抗値を測定する内部抵抗測定装置1は、端子T4から出力する制御信号によって第1スイッチSW1をオンとオフに制御することにより、バッテリ20を所定の放電パターンで放電させる。また、内部抵抗測定装置1は、端子T5から出力する制御信号によって第2スイッチSW2をオンとオフに制御することにより、バッテリ20を所定の放電パターンで放電させる。内部抵抗測定装置1は、この所定の放電パターンでバッテリ20が放電しているときに測定した電圧と電流からバッテリ20の内部抵抗値を求め、求めた内部抵抗値に基づいてバッテリ20の状態を検知する。なお、内部抵抗測定装置1、第1放電回路21A、第2放電回路21B、第2抵抗素子R2、温度センサ23を別々の構成とするのではなく、これらの一部または全てをまとめた構成を内部抵抗測定装置1としてもよい。
【0020】
図2は、内部抵抗測定装置1の構成の一例を示すブロック図である。内部抵抗測定装置1は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、及びRAM(Random Access Memory)10cを含む制御部10、記憶部11、通信部12、ADコンバータ13、及びバス14、を有している。なお、制御部10は、CPU10aの代わりに、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成するようにしてもよい。ここで、内部抵抗測定装置1の各要素(制御部10、記憶部11、通信部12、ADコンバータ13)は、全てまとまっている必要はなく、例えば内部抵抗測定システムとして車両2の内部に各要素が分散していてもよい。
【0021】
バス14は、CPU10a、ROM10b、RAM10c、記憶部11、通信部12、及びADコンバータ13を相互に接続し、これらの間で情報の授受を可能とするための信号線群である。記憶部11は、不揮発性メモリによって構成され、例えば、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、及び第3抵抗素子R3の抵抗値と、後述する各種閾値を記憶する。ADコンバータ13は、アナログ信号をデジタル信号に変換するコンバータであり、端子T1、端子T2、及び端子T3に掛かる電圧をデジタル信号に変換する。通信部12は、車両2Aの駆動系の主要な制御を司る上位装置であるECU(Electronic Control Unit)3との間で通信を行い、各種情報をECU3へ通知する。
【0022】
ROM10bは、不揮発性の半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、CPU10aがプログラム10baを実行する際に生成されるデータや、各種測定結果、測定結果を用いてCPU10aにより算出される各種の値等を記憶する。
【0023】
CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。制御部10の機能は、CPU10aがROM10bからプログラム10baを読み出して実行することで、機能部として実現される。
【0024】
図3は、CPU10aがプログラム10baを実行することにより制御部10において実現する機能の構成を示す機能ブロック図である。制御部10においては、測定部101、判定部102、内部抵抗算出部103が実現する。
【0025】
測定部101は、ADコンバータ13が行ったAD変換の結果、第1抵抗素子R1の抵抗値、第2抵抗素子R2、第3抵抗素子R3の抵抗値を用いて、バッテリ20の電圧やバッテリ20を所定のパターンで放電させる放電経路でバッテリ20から流れる電流を測定する。判定部102は、測定部101の測定結果に基づいて、バッテリ20を所定のパターンで放電させる放電経路の異常の有無を判定する。内部抵抗算出部103は、判定部102で異常がないと判定された放電経路でバッテリ20を所定のパターンで放電させたときの測定部101の測定結果に基づいて、バッテリ20の内部抵抗値を算出する。第1放電回路21A、第2放電回路21B、測定部101、判定部102、及び内部抵抗算出部103は、内部抵抗測定システムとして機能する。
【0026】
(実施形態の動作例)
次に本実施形態の動作例について説明する。図4は、制御部10がバッテリ20の内部抵抗値の測定に際して実行する処理の流れを示すフローチャートである。図4に示す処理は、例えば、車両2Aでイグニッションオフ操作がされる毎、数日、数週、または、数ヶ月おきというように定期的に実行される。なお、図4に示す処理は、ユーザからの要求があった場合や、不定期に実行してもよい。
【0027】
まず制御部10は、バッテリ20の試験放電の処理を行なう(ステップS101)。制御部10がステップS101で行う処理の流れを図5に示す。また、ステップS101の処理のタイムチャートを図6に示す。図6では、端子T4から出力される制御信号による第1スイッチSW1のオン/オフのタイミングと、端子T5から出力される制御信号による第2スイッチSW2のオン/オフのタイミングと、制御部10が測定した電流の変化を図示している。
【0028】
制御部10は、まず、図6に示すように第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とをオフにする(ステップS201)。次に制御部10は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とがオフのときにバッテリ20から流れる電流の基準値となる基準電流値を測定する(ステップS202)。なお、図6に示す電流の変化では、バッテリ20が充電される場合をプラスに定義し、バッテリ20が放電される場合をマイナスに定義しているため、放電電流が流れると電流はマイナス方向に流れる。ここで制御部10は、予め記憶部11に記憶されている第2抵抗素子R2の抵抗値と、ADコンバータ13で変換された第2抵抗素子R2にかかる電圧とから第2抵抗素子R2に流れる電流の電流値を算出し、算出した電流値を基準電流値とする。具体的には、制御部10は、第2抵抗素子R2にかかる電圧を所定の周期で複数回測定し、測定した電圧毎に電流値を算出し、算出した電流値の平均値を基準電流値とする。
【0029】
次に制御部10は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2がオフのときにステップS202の後でバッテリ20から流れる電流の電流値であるオフ電流値I1を測定する(ステップS203)。ここで制御部10は、予め記憶部11に記憶されている第2抵抗素子R2の抵抗値と、ADコンバータ13で変換された第2抵抗素子R2にかかる電圧の電圧値とから第2抵抗素子R2に流れる電流の電流値を算出し、算出した電流値をオフ電流値I1とする。具体的には、制御部10は、第2抵抗素子R2にかかる電圧の電圧値を所定の周期で複数回測定し、測定した電圧値毎に電流値を算出し、算出した電流値の平均値をオフ電流値I1とする。ここで、ステップS202の後、例えば負荷28により電圧が変動した場合、オフ電流値I1は基準電流値と異なる値となる。
【0030】
次に制御部10は、図6に示すように第1スイッチSW1と第2スイッチSW2をオフにする(ステップS204)。制御部10は、図6に示すように第1スイッチSW1がオンで第2スイッチSW2がオフのときにバッテリ20から流れる電流の電流値であるオン電流値I11を測定する(ステップS205)。ここで制御部10は、予め記憶部11に記憶されている第1抵抗素子R1の抵抗値と、ADコンバータ13で変換された第1抵抗素子R1にかかる電圧の電圧値とから第1抵抗素子R1に流れる電流の電流値を算出し、算出した電流値をオン電流値I11とする。具体的には、制御部10は、第1抵抗素子R1にかかる電圧の電圧値を所定の周期で複数回測定し、測定した電圧値毎に電流値を算出し、算出した電流値の平均値をオン電流値I11とする。なお、第2抵抗素子R2にも電圧が生じるが、第2抵抗素子R2の抵抗値は、第1抵抗素子R1の抵抗値に比較して無視できる程度に小さいものとされており、第2抵抗素子R2に生じる電圧は無視することができることから、第1抵抗素子R1に係る電圧に替えてバッテリ20の電圧を用いてオン電流値I11を算出してもよい。
【0031】
次に制御部10は、図6に示すように第1スイッチSW1がオンで第2スイッチSW2がオフのときに第1抵抗素子R1に係る電圧の電圧値であるオン電圧値V11を測定する(ステップS206)。ここで制御部10は、ADコンバータ13で変換された第1抵抗素子R1にかかる電圧の電圧値をオン電圧値V11とする。次に制御部10は、図6に示すように第1スイッチSW1と第2スイッチSW2をオフにする(ステップS207)。
【0032】
次に制御部10は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2がオフの状態で所定時間待機する(ステップS208)。制御部10は、所定時間待機した後、図6に示すように第1スイッチSW1をオフにし、第2スイッチSW2をオンにする(ステップS209)。制御部10は、図6に示すように第1スイッチSW1がオフで第2スイッチSW2がオンのときにバッテリ20から流れる電流の電流値であるオン電流値I12を測定する(ステップS210)。ここで制御部10は、予め記憶部11に記憶されている第3抵抗素子R3の抵抗値と、ADコンバータ13で変換された第3抵抗素子R3にかかる電圧の電圧値とから第3抵抗素子R3に流れる電流の電流値を算出し、算出した電流値をオン電流値I12とする。具体的には、制御部10は、第3抵抗素子R3にかかる電圧の電圧値を所定の周期で複数回測定し、測定した電圧値毎に電流値を算出し、算出した電流値の平均値をオン電流値I12とする。なお、第2抵抗素子R2にも電圧が生じるが、第2抵抗素子R2の抵抗値は、第3抵抗素子R3の抵抗値に比較して無視できる程度に小さいものとされており、第2抵抗素子R2に生じる電圧は無視することができることから、第3抵抗素子R3に係る電圧に替えてバッテリ20の電圧を用いてオン電流値I12を算出してもよい。
【0033】
次に制御部10は、図6に示すように第1スイッチSW1がオフで第2スイッチSW2がオンのときに第3抵抗素子R3に係る電圧の電圧値であるオン電圧値V12を測定する(ステップS211)。ここで制御部10は、ADコンバータ13で変換された第3抵抗素子R3にかかる電圧の電圧値をオン電圧値V12とする。次に制御部10は、図6に示すように第1スイッチSW1と第2スイッチSW2をオフにし(ステップS212)、試験放電の処理を終了する。
【0034】
図4に戻り、次に制御部10は、ADコンバータ13に異常がないか判定する(ステップS102)。ここで制御部10は、例えば、ステップS101において電圧を測定する際にADコンバータ13の出力値がレンジオーバーとなっていた場合やAD変換が所定時間内に終了せずにタイムアウトとなっていた場合、ADコンバータ13に異常があると判定する(ステップS102でNO)。また、制御部10は、ADコンバータ13でレンジオーバーやタイムアウトが生じていない場合、ADコンバータ13に異常がないと判定する(ステップS102でYES)。制御部10は、ADコンバータ13に異常がある場合、図4に示す処理を終了する。なお、制御部10は、ステップS102の処理を行なわず、ステップS101の後にステップS103の処理を行なうようにしてもよい。
【0035】
制御部10は、ADコンバータ13に異常がない場合、放電回路診断の処理を行なう(ステップS103)。制御部10がステップS103で行う処理の流れを図7に示す。まず制御部10は、ステップS203で測定したオフ電流値I1が所定範囲内であるか判定する(ステップS301)。ここで制御部10は、例えば、閾値A<(オフ電流値I1-基準電流値)、である場合、所定範囲外であると判定し(ステップS301でNO)、閾値A≧(オフ電流値I1-基準電流値)、である場合、所定範囲内であると判定する(ステップS301でYES)。
【0036】
制御部10は、ステップS301で所定範囲外と判定した場合、第1フラグと第2フラグをオンにする(ステップS302)。また、制御部10は、ここで第1フラグと第2フラグをオンにした回数をカウントする。なお、閾値Aは、予め実験により定めた値である。
【0037】
制御部10は、ステップS301で所定範囲内と判定した場合、ステップS205で測定したオン電流値I11が所定範囲内であるか判定する(ステップS303)。ここで制御部10は、例えば、閾値C≦(オン電流値I11-基準電流値)≦閾値D、である場合、所定範囲内であると判定し(ステップS303でYES)、閾値C≦(オン電流値I11-基準電流値)≦閾値D、ではない場合、所定範囲外であると判定する(ステップS303でNO)。また、制御部10は、例えば、閾値E≦オン電流値I11≦閾値F、である場合、所定範囲内であると判定し(ステップS303でYES)、閾値E≦オン電流値I11≦閾値F、ではない場合、所定範囲外であると判定してもよい(ステップS303でNO)。なお、閾値C、閾値D、閾値E、及び閾値Fは、予め実験により定めた値である。制御部10は、ステップS303で所定範囲外と判定した場合、第1フラグをオンにする(ステップS305)。また、制御部10は、ここで第1フラグをオンにした回数をカウントする。また、制御部10は、ステップS303で所定範囲内と判定した場合、第1フラグをオフにする(ステップS304)。
【0038】
次に制御部10は、ステップS210で測定したオン電流値I12が所定範囲内であるか判定する(ステップS306)。ここで制御部10は、例えば、閾値C≦(オン電流値I12-基準電流値)≦閾値D、である場合、所定範囲内であると判定し(ステップS306でYES)、閾値C≦(オン電流値I12-基準電流値)≦閾値D、ではない場合、所定範囲外であると判定する(ステップS306でNO)。また、制御部10は、例えば、閾値E≦オン電流値I12≦閾値F、である場合、所定範囲内であると判定し(ステップS306でYES)、閾値E≦オン電流値I12≦閾値F、ではない場合、所定範囲外であると判定してもよい(ステップS306でNO)。制御部10は、ステップS306で所定範囲外と判定した場合、第2フラグをオンにする(ステップS308)。また、制御部10は、ここで第2フラグをオンにした回数をカウントする。また、制御部10は、ステップS306で所定範囲内と判定した場合、第2フラグをオフにする(ステップS307)。
【0039】
図4に戻り、次に制御部10は、電流異常診断の処理を行なう(ステップS104)。制御部10がステップS104で行う処理の流れを図8に示す。まず制御部10は、第1抵抗素子R1の抵抗値を記憶部11から取得する(ステップS401)。なお、第1抵抗素子R1の抵抗値に温度依存性がある場合には、温度センサ23で測定された温度に基づいて第1抵抗素子R1の抵抗値を補正するようにしてもよい。例えば、温度係数を記憶部11に記憶しておき、温度Tにこの温度係数を乗算することで、抵抗値を補正することも可能である。もちろん、温度係数が十分に小さい場合には、温度による抵抗値の変化は無視するようにしてもよい。
【0040】
次に制御部10は、ステップS206で測定したオン電圧値V11をステップS401で取得した抵抗値で除算することで電流推定値Ie1を算出する(ステップS402)。また、制御部10は、ステップS205で測定したオン電流値I11と、ステップS402で算出した電流推定値Ie1との差分の絶対値であるΔI1(=|オン電流値I11-電流推定値Ie1|)を算出する(ステップS403)。
【0041】
次に制御部10は、算出したΔI1が所定の閾値以上であるか判定する(ステップS404)。制御部10は、ΔI1が閾値以上である場合(ステップS404でYES)、第3フラグをオンにする(ステップS405)。なお、ステップS404で用いる閾値は、予め実験により定めた値である。また、制御部10は、ここで第3フラグをオンにした回数をカウントする。制御部10は、ΔI1が閾値未満である場合(ステップS404でNO)、第3フラグをオフにする(ステップS406)。
【0042】
次に制御部10は、第3抵抗素子R3の抵抗値を記憶部11から取得する(ステップS407)。この第3抵抗素子R3の抵抗値に温度依存性がある場合には、ステップS401と同様に、温度センサ23で測定された温度に基づいて第3抵抗素子R3の抵抗値を補正するようにしてもよい。
【0043】
次に制御部10は、ステップS211で測定したオン電圧値V12をステップS407で取得した抵抗値で除算することで電流推定値Ie2を算出する(ステップS408)。また、制御部10は、ステップS210で測定したオン電流値I12と、ステップS408で算出した電流推定値Ie2との差分の絶対値であるΔI2(=|オン電流値I12-電流推定値Ie2|)を算出する(ステップS409)。
【0044】
次に制御部10は、算出したΔI2が所定の閾値以上であるか判定する(ステップS410)。制御部10は、ΔI2が閾値以上である場合(ステップS410でYES)、第4フラグをオンにする(ステップS411)。なお、ステップS410で用いる閾値は、予め実験により定めた値である。また、制御部10は、ここで第4フラグをオンにした回数をカウントする。制御部10は、ΔI2が閾値未満である場合(ステップS410でNO)、第4フラグをオフにする(ステップS412)。
【0045】
図4に戻り、次に制御部10は、第1フラグ~第4フラグがオフであるか判断する(ステップS105)。制御部10は、第1フラグ~第4フラグの全てがオフではない場合(ステップS105でNO)、ステップS103の診断とステップS104の診断を所定回数実施したか判定する(ステップS106)。所定回数は、例えば1以上の任意の回数である。制御部10は、診断の回数が所定回数に達していない場合(ステップS106でNO)、処理の流れをステップS101に戻す。
【0046】
制御部10は、診断の回数が所定回数に達している場合(ステップS106でYES)、回路異常フラグを設定する(ステップS107)。ここで制御部10は、図7の処理において第1フラグをオンにした回数と第2フラグをオンにした回数が所定回数ではない場合、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bに異常なしと判定し、第1回路異常フラグと第2回路異常フラグをオフにする。制御部10は、図7の処理で第1フラグをオンにした回数が所定回数である場合、第1回路異常フラグをオンにする。また、制御部10は、図7の処理で第2フラグをオンにした回数が所定回数である場合、第2回路異常フラグをオンにする。制御部10は、第1回路異常フラグがオンである場合、第1放電回路21Aに異常があると判定し、第2回路異常フラグがオンである場合、第2放電回路21Bに異常があると判定する。
【0047】
次に制御部10は、電流異常フラグを設定する(ステップS108)。ここで制御部10は、図7の処理において第3フラグをオンにした回数と第4フラグをオンにした回数が所定回数ではない場合、第1放電回路21Aを流れる電流と第2放電回路21Bを流れる電流に異常なしと判定し、第1電流異常フラグと第2電流異常フラグをオフにする。制御部10は、図8の処理で第3フラグをオンにした回数が所定回数である場合、第1電流異常フラグをオンにする。また、制御部10は、図8の処理で第4フラグをオンにした回数が所定回数である場合、第2電流異常フラグをオンにする。制御部10は、第1電流異常フラグがオンである場合、第1放電回路21Aに異常があると判定し、第2電流異常フラグがオンである場合、第2放電回路21Bに異常があると判定する。
【0048】
次に制御部10は、バッテリ20の内部抵抗値を測定可能か判定する(ステップS109)。制御部10は、第1回路異常フラグがオフであり、且つ、第1電流異常フラグがオフである場合、バッテリ20の内部抵抗値を測定可能と判定し(ステップS109でYES)、処理の流れをステップS112へ移す。また、制御部10は、第2回路異常フラグがオフであり、且つ、第2電流異常フラグがオフである場合、バッテリ20の内部抵抗値を測定可能と判定し(ステップS109でYES)、処理の流れをステップS112へ移す。制御部10は、第1回路異常フラグ、第2回路異常フラグ、第1電流異常フラグ、及び第2電流異常フラグがオンである場合、バッテリ20の内部抵抗値を測定不可と判定し(ステップS109でNO)、図4の処理を終了する。また、制御部10は、第1回路異常フラグと第1電流異常フラグの一方がオンであり、且つ、第2回路異常フラグと第2電流異常フラグの一方がオンである場合も、バッテリ20の内部抵抗値を測定不可と判定し(ステップS109でNO)、図4の処理を終了する。
【0049】
ステップS105に戻り、制御部10は、第1フラグ~第4フラグのいずれもオフである場合(ステップS105でYES)、回路異常フラグを設定する(ステップS110)。ここで制御部10は、第1回路異常フラグ、及び第2回路異常フラグをオフにする。制御部10は、ステップS110の後、電流異常フラグを設定する(ステップS111)。ここで制御部10は、第1電流異常フラグ、及び第2電流異常フラグをオフにする。制御部10は、第1回路異常フラグと第1電流異常フラグがオフである場合、第1放電回路21Aに異常がないと判定し、第2回路異常フラグと第2電流異常フラグがオフである場合、第2放電回路21Bに異常がないと判定する。
【0050】
制御部10は、ステップS112で、バッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。ここで制御部10は、例えば、第1回路異常フラグ、第1電流異常フラグ、第2回路異常フラグ、第2電流異常フラグのいずれもオフである場合、予め定められたルールに従って第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの一方を選択し、選択した放電回路を用いてバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。例えば、制御部10は、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの一方を選択する場合、前回の内部抵抗値の測定で用いた放電回路と異なる放電回路を選択するようにしてもよい。また、制御部10は、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの一方を選択する場合、常に同じ放電回路を選択するようにしてもよい。
【0051】
なお、第1回路異常フラグ、第1電流異常フラグ、第2回路異常フラグ、第2電流異常フラグのいずれもオフである場合、内部抵抗値については、第1放電回路21Aを用いた測定と第2放電回路21Bを用いた測定とを行い、予め定められたルールに従っていずれか一方の放電回路の測定結果を採用するようにしてもよい。例えば、制御部10は、第1放電回路21Aを用いた測定結果と第2放電回路21Bを用いた測定結果の一方を採用する場合、前回の内部抵抗値の測定で用いた放電回路と異なる放電回路を用いたときの測定結果を採用するようにしてもよい。また、制御部10は、第1放電回路21Aを用いた測定結果と第2放電回路21Bを用いた測定結果の一方を採用する場合、常に同じ放電回路での測定結果を採用するようにしてもよい。
【0052】
また、制御部10は、内部抵抗値の測定については、第1回路異常フラグ、第1電流異常フラグ、第2回路異常フラグ、第2電流異常フラグを設定する前に、第1放電回路21Aを用いた測定と第2放電回路21Bを用いた測定とを行うようにしてもよい。この場合、制御部10は、第1回路異常フラグ、第1電流異常フラグ、第2回路異常フラグ、第2電流異常フラグの状態に応じて、第1放電回路21Aを用いた測定結果と第2放電回路21Bを用いた測定結果の採用の可否を判断する。
【0053】
例えば、制御部10は、前述の異常フラグの全てがオフである場合、上述したように予め定められたルールに従っていずれか一方の放電回路の測定結果を採用するようにしてもよい。また、制御部10は、第1回路異常フラグと第1電流異常フラグの両方がオフであり、第2回路異常フラグと第2電流異常フラグの一方がオンの場合、第1放電回路21Aを用いた測定結果を採用し、第1回路異常フラグと第1電流異常フラグの一方がオンであり、第2回路異常フラグと第2電流異常フラグの両方がオフの場合、第2放電回路21Bを用いた測定結果を採用してもよい。また、制御部10は、ステップS109でNOと判定した場合、異常フラグの設定前に測定した最新の内部抵抗値を採用せず、過去にステップS109でYESと判断したときに採用した内部抵抗値を採用するようにしてもよい。また、制御部10は、ステップS109でNOと判定した場合、異常フラグの設定前に測定した最新の内部抵抗値について、測定値を無効としてもよい。
【0054】
制御部10は、第1回路異常フラグと第1電流異常フラグがオフであり、少なくとも第2回路異常フラグと第2電流異常フラグの一方がオンである場合、第1放電回路21Aを選択し、選択した第1放電回路21Aを用いてバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。また、制御部10は、少なくとも第1回路異常フラグと第1電流異常フラグの一方がオンであり、第2回路異常フラグと第2電流異常フラグがオフである場合、第2放電回路21Bを選択し、選択した第2放電回路21Bを用いてバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。
【0055】
なお、制御部10は、第1放電回路21Aを用いた内部抵抗値の測定と第2放電回路21Bを用いた内部抵抗値の測定とを行い、第1回路異常フラグと第1電流異常フラグがオフであり、少なくとも第2回路異常フラグと第2電流異常フラグの一方がオンである場合、第1放電回路21Aを用いた測定結果を採用してもよい。また、制御部10は、第1放電回路21Aを用いた内部抵抗値の測定と第2放電回路21Bを用いた内部抵抗値の測定とを行い、少なくとも第1回路異常フラグと第1電流異常フラグの一方がオンであり、第2回路異常フラグと第2電流異常フラグがオフである場合、第2放電回路21Bを用いた測定結果を採用してもよい。
【0056】
バッテリ20の内部抵抗値は、例えば、選択された第1放電回路21A又は第2放電回路21Bを制御部10が制御することによりバッテリ20からの放電が所定のパターンで行われ、放電を所定のパターンで行ったときのバッテリ20の電圧および電流の変化を、電圧センサ21および電流センサ22によって測定し、測定結果から内部抵抗値を算出することにより得られる。制御部10は、第1放電回路21Aを選択した場合、端子T4からの制御信号によって第1スイッチSW1を交互にオンとオフにすることによりバッテリ20を所定の放電パターンで放電させたときのバッテリ20の電圧及び電流を測定し、測定結果からバッテリ20の内部抵抗値を求める。また、制御部10は、第2放電回路21Bを選択した場合、端子T5からの制御信号によって第2スイッチSW2を交互にオンとオフにすることによりバッテリ20を所定の放電パターンで放電させたときのバッテリ20の電圧及び電流を測定し、測定結果からバッテリ20の内部抵抗値を求める。
【0057】
バッテリ20からの放電を所定のパターンで行って内部抵抗値を算出する方法としては、例えば特許第3960998号公報に開示されている方法や特許第4494904号公報に開示されている方法などがあるが、他の公知の方法で算出してもよい。なお、バッテリ20の内部抵抗値の測定に際し、バッテリ20を所定のパターンで放電させるときには、放電の周波数が異なるパターンを複数設け、それぞれのパターンでの電流と電圧の応答結果に基づいて内部抵抗値を測定してもよい。
【0058】
制御部10は、例えば、測定した内部抵抗値に基づいて、バッテリ20の状態として、OCV(Open Circuit Voltage)、SOC(State Of Charge)や、SOH(State Of Health)、SOF(State of Function)などを算出又は推定することができる。また、バッテリ20の内部抵抗値とバッテリ20の温度は関係があるため、制御部10は測定した内部抵抗値に基づいて所定の計算式によりバッテリ20の温度を推定してもよい。OCV、SOC、SOH、SOFの算出又は推定については、例えば特開2021-196174号公報に開示されているようにバッテリ20の等価回路モデルを用いて算出又は推定することができる。例えばOCVについては、制御部10は、バッテリ20の起動直前に測定されたバッテリ20の端子電圧又はバッテリ20の充放電状態から推定した電圧値をOCVとする。また、SOCについては、制御部10は、例えば測定した電流値及び電圧値から算出した内部抵抗、又はOCVと電流積算値との組み合わせに基づいて推定する。また、SOH及びSOFについては、制御部10は、OCVに基づいた推定、等価回路モデルの定数と関係式等を用いた推定により取得する。
【0059】
なお、制御部10は、第1放電回路異常フラグ、第1電流異常フラグ、第2放電回路異常フラグ、第2電流異常フラグのいずれもオフである場合、バッテリ20の内部抵抗値の測定を行うときに第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの両方を用いて内部抵抗値の測定を行ってもよい。図9は、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの両方を用いて内部抵抗値の測定を行うときの制御信号とバッテリ20から流れる放電電流のタイムチャートの一例を示す図である。
【0060】
制御部10は、まず図9に示すように端子T4から制御信号を出力して第1スイッチSW1をオンとオフにすることにより所定のパターンでバッテリ20を放電させ、バッテリ20の内部抵抗値を測定する。なお、制御部10は、第1スイッチSW1を制御しているときには、第2スイッチSW2をオフにする。次に制御部10は、図9に示すように端子T5から制御信号を出力して第2スイッチSW2をオンとオフにすることにより所定のパターンでバッテリ20を放電させ、バッテリ20の内部抵抗値を測定する。制御部10は、第2スイッチSW2を制御しているときには、第1スイッチSW1をオフにする。制御部10は、第1放電回路21Aを用いて測定した内部抵抗値と、第2放電回路21Bを用いて測定した内部抵抗値の平均値をバッテリ20の内部抵抗値としてもよい。第1放電回路21Aを用いて測定した内部抵抗値と第2放電回路21Bを用いて測定した内部抵抗値との平均値をバッテリ20の内部抵抗値とすることにより、内部抵抗値の測定の精度を向上させることができる。
【0061】
図10は、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの両方を用いて内部抵抗値の測定を行うときの制御信号とバッテリ20から流れる放電電流のタイムチャートの別の例を示す図である。制御部10は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とが交互にオンとなるように端子T4と端子T5から制御信号を出力する。制御部10は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とが交互にオンとなってバッテリ20が放電しているときに取得した電圧センサ21および電流センサ22の測定結果に基づいて、内部抵抗値を測定する。
【0062】
第1放電回路21Aと第2放電回路21Bでバッテリ20を放電させることにより第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3に電流が流れて第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3が発熱するが、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とを交互にオンにすることにより、第1抵抗素子R1に電流が流れる周期と、第3抵抗素子R3に電流が流れる周期とが長くなるため、第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3の温度上昇を抑えることができる。
【0063】
なお、制御部10は、第1放電回路異常フラグ、第1電流異常フラグ、第2放電回路異常フラグ、第2電流異常フラグのいずれもオフの場合、ECU3に対して、異常がないことを通知するようにしてもよい。また、制御部10は、第1放電回路異常フラグと第1電流異常フラグがオフである場合、第1放電回路21Aに異常がないことをECU3へ通知し、第2放電回路異常フラグと第2電流異常フラグがオフである場合、第2放電回路21Bに異常がないことをECU3へ通知してもよい。
【0064】
また、制御部10は、第1放電回路異常フラグと第2放電回路異常フラグの両方がオンの場合や、第1電流異常フラグと第2電流異常フラグの両方がオンの場合、異常の発生をアラートとしてECU3へ通知するようにしてもよい。この結果、ECU3は、ユーザに対して例えばインストルメントパネルである計器パネルでの表示やスピーカからの音で異常の発生を通知することができる。また、ECU3では、制御部10から異常の発生を通知されたことを契機としてフェールセーフの動作を行うようにしてもよい。また、ECU3は、内部抵抗を用いた制御がある場合には、制御部10から異常の発生を通知された場合、内部抵抗を用いた制御の停止など制御の切り替えを行ってもよい。
【0065】
また、制御部10は、推定したSOC、SOH、SOFをECU3へ通知し、ECU3は、通知されたSOC、SOH、SOFに基づいて、バッテリ20の充電率、劣化状態、放電性能を計器パネルでユーザに通知してもよい。また、制御部10は、通知されたSOHやSOFに基づいて、アイドリングストップの可否やバッテリ20の交換などを判定し、判定結果を計器パネルでユーザにバッテリ20の交換を通知してもよい。
【0066】
本実施形態によれば、バッテリ20の内部抵抗値を測定するための放電経路である第1放電回路21Aと第2放電回路21Bについて異常の有無を判定するため、バッテリ20の状態を検知するための放電経路の異常を検知することができる。また、本実施形態によれば、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bとの一方に異常がある場合には、異常が無い放電経路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用い、異常がある放電経路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用いないため、異常がある放電経路を用いて内部抵抗値を測定することを回避することができ、バッテリ20の内部抵抗値の測定精度を向上させることができる。また、本実施形態によれば、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bについて異常をECU3へ知らせ、ECU3から計器パネルでの表示やスピーカからの音で異常の発生をユーザに知らせることができる。なお、ECU3において内部抵抗値を用いた処理がある場合、制御部10からの通知に応じて、バッテリ20の異常を加味した処理に切り替えるようにしてもよい。
【0067】
なお、制御部10は、第1放電回路21Aを使用して測定したバッテリ20の内部抵抗値と、第2放電回路21Bを使用して測定したバッテリ20の内部抵抗値との差が所定範囲内である場合、両方の放電回路は異常なしと判定してもよい。この所定範囲は、試験によりばらつきを確認して予め設定される。
【0068】
制御部10は、例えば、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの一方で異常が無いと判定した場合には、この一方の放電回路を用いて測定したバッテリ20の内部抵抗値に対して他方の放電回路を用いて測定したバッテリ20の内部抵抗値が所定範囲内である場合、他方の放電回路について異常が無いと判定し、バッテリ20の内部抵抗値の測定に用いるようにしてもよい。また、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの一方を異常無しと判定した場合、他方の放電回路については、測定した基準電流値、オフ電流値、オン電流値、及びオン電圧と、異常なしと判定した放電回路で測定した基準電流値、オフ電流値、オン電流値、及びオン電圧との差が所定範囲内である場合、異常なしと判定してもよい。
【0069】
[第2実施形態]
図11は、本発明の第2実施形態に係る車両2Bの電源系統を示す図である。車両2Bは、第1放電回路21A及び第2放電回路21Bに替えて第3放電回路21Cを備えている点で相違する。以下の説明では、車両2Aと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、車両2Aとの相違点について説明する。
【0070】
第3放電回路21Cは、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第1抵抗素子R1を備えている。第1スイッチSW1は、一端がバッテリ20の正極に接続され、他端が第1抵抗素子R1に接続されている。第2スイッチSW2は、一端がバッテリ20の正極に接続され、他端が第1抵抗素子R1に接続されている。第1抵抗素子R1は、一端が第1スイッチSW1と第2スイッチSW2に接続され、他端が内部抵抗測定装置1の端子T3と第2抵抗素子R2に接続されて接地されている。第2抵抗素子R2は、一端が内部抵抗測定装置1の端子T2とバッテリ20の負極に接続され、他端が内部抵抗測定装置1の端子T3、及び第1抵抗素子R1に接続されて接地されている。
【0071】
第1スイッチSW1は、内部抵抗測定装置1の端子T4から供給される制御信号に応じてオンまたはオフの状態となる。第2スイッチSW2は、内部抵抗測定装置1の端子T5から供給される制御信号に応じてオンまたはオフの状態となる。第3放電回路21Cは、第1スイッチSW1がオン又は第2スイッチSW2がオンのときに第1抵抗素子R1を介してバッテリ20を放電させ、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2がオフのときには、第3放電回路21Cを介してのバッテリ20の放電を停止させる。第1抵抗素子R1は、第1スイッチSW1がオンになった場合、又は第2スイッチSW2がオンになった場合、バッテリ20から所定の放電電流が流れる。第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とからなる経路と、第2スイッチSW2と第3抵抗素子R3とからなる経路は、バッテリ20を放電させる放電経路の一例である。
【0072】
第2実施形態に係る制御部10が実行する処理は、ステップS101の試験放電の処理と、ステップS104の電流異常診断の処理が第1実施形態と異なる。試験放電の処理では、制御部10は、ステップS210でオン電流値I12を測定するときに、予め記憶部11に記憶されている第1抵抗素子R1の抵抗値と、ADコンバータ13で変換された第1抵抗素子R1にかかる電圧とから第1抵抗素子R1に流れる電流の電流値を算出し、算出した電流値をオン電流値I12とする。また、ステップS211で制御部10はオン電圧値V12を測定するときにADコンバータ13で変換された第1抵抗素子R1にかかる電圧をオン電圧値V12とする。
【0073】
図12は、第2実施形態においてステップS104で行われる電流異常診断の処理の流れを示すフローチャートである。まず制御部10は、第1抵抗素子R1の抵抗値を記憶部11から取得する(ステップS501)。なお、第1抵抗素子R1の抵抗値に温度依存性がある場合には、温度センサ23で測定された温度に基づいて第1抵抗素子R1の抵抗値を補正するようにしてもよい。次に制御部10は、ステップS206で測定したオン電圧値V11をステップS501で取得した抵抗値で除算することで電流推定値Ie1を算出する(ステップS502)。また、制御部10は、ステップS205で測定したオン電流値I11と、ステップS502で算出した電流推定値Ie1との差分の絶対値であるΔI1(=|オン電流値I11-電流推定値Ie1|)を算出する(ステップS503)。
【0074】
次に制御部10は、算出したΔI1が所定の閾値以上であるか判定する(ステップS504)。制御部10は、ΔI1が閾値以上である場合(ステップS504でYES)、第3フラグをオンにする(ステップS505)。なお、ステップS504で用いる閾値は、予め実験により定めた値である。また、制御部10は、ここで第3フラグをオンにした回数をカウントする。制御部10は、ΔI1が閾値未満である場合(ステップS504でNO)、第3フラグをオフにする(ステップS506)。
【0075】
次に制御部10は、ステップS211で測定したオン電圧値V12をステップS501で取得した抵抗値で除算することで電流推定値Ie2を算出する(ステップS507)。また、制御部10は、ステップS210で測定したオン電流値I12と、ステップS507で算出した電流推定値Ie2との差分の絶対値であるΔI2(=|オン電流値I12-電流推定値Ie2|)を算出する(ステップS508)。
【0076】
次に制御部10は、算出したΔI2が所定の閾値以上であるか判定する(ステップS509)。制御部10は、ΔI2が閾値以上である場合(ステップS509でYES)、第4フラグをオンにする(ステップS510)。なお、ステップS509で用いる閾値は、予め実験により定めた値である。また、制御部10は、ここで第4フラグをオンにした回数をカウントする。制御部10は、ΔI2が閾値未満である場合(ステップS509でNO)、第4フラグをオフにする(ステップS511)。
【0077】
第2実施形態に係る制御部10は、第1回路異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1の経路に異常があると判定し、第2回路異常フラグがオンである場合、第2スイッチSW2と第1抵抗素子R1の経路に異常があると判定する。また、制御部10は、第1電流異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1の経路に異常があると判定し、第2電流異常フラグがオンである場合、第2スイッチSW2と第1抵抗素子R1の経路に異常があると判定する。また、制御部10は、第1回路異常フラグ、及び第1電流異常フラグがオフである場合、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1の経路に異常がないと判定し、第2回路異常フラグ、及び第2電流異常フラグがオフである場合、第2スイッチSW2と第1抵抗素子R1の経路に異常がないと判定する。
【0078】
制御部10は、例えば、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1の経路と、第2スイッチSW2と第1抵抗素子R1の経路にも異常がない場合、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2の一方を選択し、選択したスイッチを用いてバッテリ20を所定のパターンで放電させて内部抵抗値の測定を行う。なお、制御部10は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2の一方を選択する場合、前回の内部抵抗値の測定で用いたスイッチと異なるスイッチを選択するようにしてもよい。また、制御部10は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2の一方を選択する場合、常に同じスイッチを選択するようにしてもよい。
【0079】
制御部10は、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1の経路に異常がなく、第2スイッチSW2と第1抵抗素子R1の経路に異常がある場合、第1スイッチSW1を選択し、選択した第1スイッチSW1を用いてバッテリ20を所定のパターンで放電させて内部抵抗値の測定を行う。また、制御部10は、第2スイッチSW2と第1抵抗素子R1の経路に異常がなく、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1の経路に異常がある場合、第2スイッチSW2を選択し、選択した第2スイッチSW2を用いてバッテリ20を所定のパターンで放電させて内部抵抗値の測定を行う。
【0080】
本実施形態によれば、バッテリ20の内部抵抗値を測定するための第3放電回路21Cについて異常の有無を判定するため、バッテリ20の状態を検知するための構成の異常を検知することができる。また、本実施形態によれば、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1との放電経路と、第2スイッチSW2と第1抵抗素子R1との放電経路との一方に異常がある場合には、異常が無い放電経路に係るスイッチをバッテリ20の内部抵抗値の測定に用い、異常がある放電経路に係るスイッチをバッテリ20の内部抵抗値の測定に用いないため、異常がある放電経路で内部抵抗値を測定することを回避することができ、バッテリ20の内部抵抗値の測定精度を向上させることができる。また、本実施形態によれば、第3放電回路21Cについて異常をECU3へ知らせ、ECU3から計器パネルでの表示やスピーカからの音で異常の発生をユーザに知らせることができる。なお、ECU3において内部抵抗値を用いた処理がある場合、制御部10からの通知に応じて、バッテリ20の異常を加味した処理に切り替えるようにしてもよい。
【0081】
[第3実施形態]
図13は、本発明の第3実施形態に係る車両2Cの電源系統を示す図である。車両2Cは、第1放電回路21A及び第2放電回路21Bに替えて第4放電回路21Dを備えている点で相違する。以下の説明では、車両2Aと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、車両2Aとの相違点について説明する。
【0082】
第4放電回路21Dは、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、第1抵抗素子R1、及び第3抵抗素子R3を備えている。第1スイッチSW1は、一端がバッテリ20の正極に接続され、他端が第3スイッチSW3の共通端子に接続されている。第3スイッチSW3は、双投式のスイッチであり、共通端子が第1スイッチSW1に接続されている。また、第3スイッチSW3は、第1スイッチSW1が接続されていない端子のうちの一方が第1抵抗素子R1に接続され、他方が第3抵抗素子R3に接続されている。第1抵抗素子R1は、一端が第3スイッチSW3に接続され、他端が第2抵抗素子R2、第3抵抗素子R3、及び内部抵抗測定装置1の端子T3に接続されて接地されている。第3抵抗素子R3は、一端が第3スイッチSW3に接続され、他端が第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、及び内部抵抗測定装置1の端子T3に接続されて接地されている。第2抵抗素子R2は、一端が内部抵抗測定装置1の端子T2とバッテリ20の負極に接続され、他端が内部抵抗測定装置1の端子T3、第1抵抗素子R1及び第3抵抗素子R3に接続されて接地されている。
【0083】
第1スイッチSW1は、内部抵抗測定装置1の端子T4から供給される制御信号に応じてオンまたはオフの状態となる。第3スイッチSW3は、内部抵抗測定装置1の端子T6から供給される制御信号に応じて、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とを接続する状態、第1スイッチSW1と第3抵抗素子R3とを接続する状態、又はオフ状態となる。
【0084】
第4放電回路21Dは、第1スイッチSW1がオンで第3スイッチSW3により第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とが接続されている状態、又は第1スイッチSW1がオンで第3スイッチSW3により第1スイッチSW1と第3抵抗素子R3とが接続されている状態のときには、第4放電回路21Dを介してバッテリ20を放電させる。また、第4放電回路21Dは、第1スイッチSW1がオフ又は第3スイッチSW3がオフのときには、第4放電回路21Dを介してのバッテリ20の放電を停止させる。第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3は、第1スイッチSW1がオンであり、且つ、第3スイッチSW3により第1スイッチSW1と接続された状態になった場合、バッテリ20から所定の放電電流が流れる。第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1からなる経路と、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3からなる経路は、バッテリ20を放電させる放電経路の一例である。
【0085】
第3実施形態に係る制御部10が実行する処理は、ステップS101の試験放電の処理が第1実施形態と異なる。図14は、第3実施形態においてステップS101で行われる試験放電の処理の流れを示すフローチャートである。制御部10は、まず、第1スイッチSW1と第3スイッチSW3とをオフにする(ステップS601)。次に制御部10は、第1スイッチSW1と第3スイッチSW3とがオフのときにバッテリ20から流れる電流の基準値となる基準電流値を測定する(ステップS602)。次に制御部10は、第1スイッチSW1と第3スイッチSW3がオフのときにステップS602の後でバッテリ20から流れる電流の電流値であるオフ電流値I1を測定する(ステップS603)。
【0086】
次に制御部10は、第1スイッチSW1をオンにし、第3スイッチSW3をオンにすることにより、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とを接続する(ステップS604)。制御部10は、第1スイッチSW1がオンで第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とが接続されている状態で、バッテリ20から流れる電流の電流値であるオン電流値I11の測定(ステップ605)と、第1抵抗素子R1に係る電圧の電圧値であるオン電圧値V11の測定(ステップS606)と、を行う。
【0087】
次に制御部10は、第1スイッチSW1をオフにし、第3スイッチSW3をオフにする(ステップS607)。
【0088】
次に制御部10は、第1スイッチSW1と第3スイッチSW3がオフの状態で所定時間待機する(ステップS608)。制御部10は、所定時間待機した後、第1スイッチSW1をオンにし、第3スイッチSW3をオンにすることにより、第1スイッチSW1と第3抵抗素子R3とを接続する(ステップS609)。制御部10は、第1スイッチSW1がオンで第1スイッチSW1と第3抵抗素子R3とが接続されている状態で、バッテリ20から流れる電流の電流値であるオン電流値I12の測定(ステップS610)と、第3抵抗素子R3に係る電圧の電圧値であるオン電圧値V12の測定(ステップS611)と、を行う。次に制御部10は、第1スイッチSW1と第3スイッチSW3をオフにし(ステップS612)、試験放電の処理を終了する。
【0089】
第3実施形態に係る制御部10は、第1回路異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1の経路に異常があると判定し、第1電流異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1の放電経路に異常があると判定する。また、制御部10は、第2回路異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3の放電経路に異常があると判定し、第2電流異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3の放電経路に異常があると判定する。また、制御部10は、第1回路異常フラグ、及び第1電流異常フラグがオフである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1の放電経路に異常がないと判定し、第2回路異常フラグ、及び第2電流異常フラグがオフである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3の放電経路に異常がないと判定する。
【0090】
第3実施形態に係る制御部10は、例えば、第1抵抗素子R1を含む放電経路と第3抵抗素子R3を含む放電経路の両方に異常がない場合、一方の放電経路を選択し、選択した放電経路を用いてバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。なお、制御部10は、2つの放電経路から一方の放電経路を選択する場合、前回の内部抵抗値の測定で用いた放電経路と異なる放電経路を選択するようにしてもよい。また、制御部10は、2つの放電経路から一方の放電経路を選択する場合、常に同じ放電経路を選択するようにしてもよい。
【0091】
制御部10は、第1抵抗素子R1を含む放電経路に異常がなく、第3抵抗素子R3を含む放電経路に異常がある場合、第1抵抗素子R1を含む放電経路を選択し、選択した放電経路を用いてバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。制御部10は、第3抵抗素子R3を含む放電経路に異常がなく、第1抵抗素子R1を含む放電経路に異常がある場合、第3抵抗素子R3を含む放電経路を選択し、選択した放電経路を用いてバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。
【0092】
制御部10は、第1抵抗素子R1を含む放電経路を選択した場合、端子T6からの制御信号で第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とを接続し、端子T4からの制御信号によって第1スイッチSW1を交互にオンとオフにすることによりバッテリ20を所定の放電パターンで放電させたときのバッテリ20の電圧及び電流を測定し、測定結果からバッテリ20の内部抵抗値を求める。また、制御部10は、第3抵抗素子R3を含む放電経路を選択した場合、端子T6からの制御信号で第1スイッチSW1と第3抵抗素子R3とを接続し、端子T4からの制御信号によって第1スイッチSW1を交互にオンとオフにすることによりバッテリ20を所定の放電パターンで放電させたときのバッテリ20の電圧及び電流を測定し、測定結果からバッテリ20の内部抵抗値を求める。
【0093】
本実施形態によれば、バッテリ20の内部抵抗値を測定するための第4放電回路21Dについて異常の有無を判定するため、バッテリ20の状態を検知するための構成の異常を検知することができる。また、本実施形態によれば、第1抵抗素子R1を含む放電経路と、第3抵抗素子R3を含む放電経路との一方に異常がある場合には、異常が無い放電経路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用い、異常がある放電経路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用いないため、異常がある放電経路を用いて内部抵抗値を測定することを回避することができ、バッテリ20の内部抵抗値の測定精度を向上させることができる。
【0094】
なお、第3実施形態においては、第4放電回路21Dが第1スイッチSW1を有していない構成としてもよい。この場合、制御部10は、ステップS601とステップS607において、第3スイッチSW3の共通端子が第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3のいずれにも接続されていないオフ状態にする。また、第4放電回路21Dが第1スイッチSW1を有していない構成においては、第3スイッチSW3の共通端子が第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3のいずれにも接続されていないオフ状態と、第3スイッチSW3の共通端子が第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3のいずれかに接続される状態とを切り替えることにより、バッテリ20を所定のパターンで放電させてバッテリ20の内部抵抗値を測定する。
【0095】
[第4実施形態]
図15は、本発明の第4実施形態に係る車両2Dの電源系統を示す図である。車両2Dは、第1放電回路21A及び第2放電回路21Bに替えて第5放電回路21Eを備えている点で相違する。以下の説明では、車両2Aと同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、車両2Aとの相違点について説明する。
【0096】
第5放電回路21Eは、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、第1抵抗素子R1、及び第3抵抗素子R3を備えている。第1スイッチSW1と第2スイッチSW2は、一端がバッテリ20の正極に接続され、他端が第3スイッチSW3に接続されている。第3スイッチSW3は、双投式のスイッチであり、共通端子が第1スイッチSW1と第2スイッチSW2に接続されている。また、第3スイッチSW3は、第1スイッチSW1が接続されていない端子のうちの一方が第1抵抗素子R1に接続され、他方が第3抵抗素子R3に接続されている。第1抵抗素子R1は、一端が第3スイッチSW3に接続され、他端が第2抵抗素子R2、第3抵抗素子R3、及び内部抵抗測定装置1の端子T3に接続されて接地されている。第3抵抗素子R3は、一端が第3スイッチSW3に接続され、他端が第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2、及び内部抵抗測定装置1の端子T3に接続されて接地されている。第2抵抗素子R2は、一端が内部抵抗測定装置1の端子T2とバッテリ20の負極に接続され、他端が内部抵抗測定装置1の端子T3、第1抵抗素子R1及び第3抵抗素子R3に接続されて接地されている。
【0097】
第1スイッチSW1は、内部抵抗測定装置1の端子T4から供給される制御信号に応じてオンまたはオフの状態となる。第2スイッチSW2は、内部抵抗測定装置1の端子T5から供給される制御信号に応じてオンまたはオフの状態となる。第3スイッチSW3は、内部抵抗測定装置1の端子T6から供給される制御信号に応じて、第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とを接続する状態、第1スイッチSW1と第3抵抗素子R3とを接続する状態、又はオフ状態となる。
【0098】
第5放電回路21Eは、第1スイッチSW1、又は第2スイッチSW2がオンであって、第3スイッチSW3がオンのときに第5放電回路21Eを介してバッテリ20を放電させる。また、第5放電回路21Eは、第1スイッチSW1がオフ且つ第2スイッチSW2がオフのとき、又は第3スイッチSW3がオフのときには、第5放電回路21Eを介してのバッテリ20の放電を停止させる。第1抵抗素子R1と第3抵抗素子R3は、第1スイッチSW1又は第2スイッチSW2がオンで且つ第3スイッチSW3がオフ以外の場合、バッテリ20から所定の放電電流が流れる。第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1からなる経路と、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3からなる経路は、バッテリ20を放電させる放電経路の一例である。
【0099】
第4実施形態に係る制御部10が実行する処理は、ステップS101の試験放電の処理が第1実施形態と異なる。図16は、第4実施形態においてステップS101で行われる試験放電の処理の流れを示すフローチャートである。制御部10は、まず、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3をオフにする(ステップS701)。次に制御部10は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3がオフのときにバッテリ20から流れる電流の基準値となる基準電流値を測定する(ステップS702)。次に制御部10は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3がオフのときにステップS702の後でバッテリ20から流れる電流の電流値であるオフ電流値I1を測定する(ステップS703)。
【0100】
次に制御部10は、第1スイッチSW1をオン、第2スイッチSW2をオフ、第3スイッチSW3をオンにして第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とを接続する(ステップS704)。制御部10は、第1スイッチSW1がオンで第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とが接続されているときにバッテリ20から流れる電流の電流値であるオン電流値I11を測定する(ステップ705)。
【0101】
次に制御部10は、第1スイッチSW1をオン、第2スイッチSW2をオフ、第3スイッチSW3をオンにして第1スイッチSW1と第1抵抗素子R1とが接続されているときに第1抵抗素子R1に係る電圧の電圧値であるオン電圧値V11を測定する(ステップS706)。次に制御部10は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3をオフにする(ステップS707)。
【0102】
次に制御部10は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3がオフの状態で所定時間待機する(ステップS708)。制御部10は、所定時間待機した後、第1スイッチSW1をオフ、第2スイッチSW2をオン、第3スイッチSW3をオンにして第2スイッチSW2と第3抵抗素子R3とを接続する(ステップS709)。制御部10は、第2スイッチSW2がオンで第2スイッチSW2と第3抵抗素子R3とが接続されているときにバッテリ20から流れる電流の電流値であるオン電流値I12を測定する(ステップS710)。
【0103】
次に制御部10は、第1スイッチSW1をオフ、第2スイッチSW2をオン、第3スイッチSW3をオンにすることにより第2スイッチSW2と第3抵抗素子R3とが接続されているときに第3抵抗素子R3に係る電圧の電圧値であるオン電圧値V12を測定する(ステップS711)。次に制御部10は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び第3スイッチSW3をオフにし(ステップS712)、試験放電の処理を終了する。
【0104】
第4実施形態に係る制御部10は、第1回路異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1を含む放電経路に異常があると判定し、第2回路異常フラグがオンである場合、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3を含む放電経路に異常があると判定する。また、制御部10は、第1電流異常フラグがオンである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1を含む放電経路に異常があると判定し、第2電流異常フラグがオンである場合、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3を含む放電経路に異常があると判定する。また、制御部10は、第1回路異常フラグ、及び第1電流異常フラグがオフである場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1を含む放電経路に異常がないと判定し、第2回路異常フラグ、及び第2電流異常フラグがオフである場合、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3を含む放電経路に異常がないと判定する。
【0105】
制御部10は、例えば、両方の経路に異常がない場合、放電経路の一方を選択し、選択した放電経路を用いてバッテリ20を所定のパターンで放電させて内部抵抗値の測定を行う。なお、制御部10は、異常がない2つの放電経路から一方の放電経路を選択する場合、前回の内部抵抗値の測定で用いた放電経路と異なる放電経路を選択するようにしてもよい。また、制御部10は、一方の放電経路を選択する場合、常に同じ放電経路を選択するようにしてもよい。
【0106】
制御部10は、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1を含む放電経路に異常がなく、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3を含む放電経路に異常がある場合、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1を含む放電経路を選択し、選択した放電経路を用いてバッテリ20を所定のパターンで放電させて内部抵抗値の測定を行う。また、制御部10は、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3を含む放電経路に異常がなく、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第1抵抗素子R1を含む放電経路に異常がある場合、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第3抵抗素子R3を含む放電経路を選択し、選択した放電経路を用いてバッテリ20を所定のパターンで放電させて内部抵抗値の測定を行う。
【0107】
本実施形態によれば、バッテリ20の内部抵抗値を測定するための第5放電回路21Eについて異常の有無を判定するため、バッテリ20の状態を検知するための構成の異常を検知することができる。また、本実施形態によれば、2つの放電経路の一方に異常がある場合には、異常が無い放電経路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用い、異常がある放電経路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用いないため、異常がある放電経路を用いて内部抵抗値を測定することを回避することができ、バッテリ20の内部抵抗値の測定精度を向上させることができる。
【0108】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0109】
上述した実施形態においては、第1抵抗素子R1の抵抗値と第3抵抗素子R3の抵抗値が異なっていてもよい。
【0110】
本発明においては、内部抵抗測定装置1と各放電回路は、バッテリ20に対して後付けで取り付けられるようにしてもよい。
【0111】
上述した実施形態においては、ステップS103の処理とステップS104の処理を並行して実行するようにしてもよい。
【0112】
上述した実施形態においては、ステップS105でNOとなった場合、ステップS103の処理、即ち図7の処理を複数回実行するが、ステップS301で用いる閾値を実行する毎に異なる値としてもよい。
【0113】
本発明においては、ステップS103の前にステップS103以降の処理を実行するか否かの判定を行なうようにしてもよい。例えば、制御部10は、オン電圧が所定の電圧値以上であり、オフ電流値が予め定められた所定値以下であるとの条件を満たしている場合、ステップS103以降の処理を実行し、この条件を満たしていない場合、図4の処理を終了するようにしてもよい。
【0114】
本発明においては、各スイッチが半導体スイッチを有するIPD(Intelligent Power Device)である場合、IPDが自身の半導体スイッチの状態を検知し、制御部10は、IPDが検知した半導体スイッチの状態を取得してもよい。この場合、制御部10は、取得した状態が、半導体スイッチが異常であることを示す場合、半導体スイッチを含む放電経路が異常であると判定してもよい。
【0115】
本発明においては、基準電流値、オフ電流値及びオン電流値を測定する電流センサと、バッテリ20の電圧を測定する電圧センサとを内部抵抗測定装置1に外付けで設ける構成としてもよい。
【0116】
上述した実施形態においては、車両2Aが備える内部抵抗測定装置1が各種診断とバッテリ20の内部抵抗値の測定を行っているが、これらの処理をECU3が行う構成としてもよい。図17は、各種診断とバッテリ20の状態の検知をECU3が行う実施形態の構成を示すブロック図である。
【0117】
ECU3は、制御部30、記憶部31、通信部32、ADコンバータ33、及び図示省略したバスを有している。また、制御部30は、制御部10と同様にCPU、ROM、RAMを有している。なお、制御部30は、CPUの代わりに、DSP、FPGA、または、ASIC等によって構成するようにしてもよい。CPU、ROM、RAM、記憶部31、通信部32、ADコンバータ33は、バスにより相互に接続され、これらの間で情報の授受を行なう。記憶部31は、不揮発性メモリによって構成され、例えば、前述の各抵抗素子の抵抗値と、前述した各種閾値を記憶する。
【0118】
CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、制御部30においては、測定部301、判定部302、及び内部抵抗算出部303が実現する。測定部301は、バッテリ20の電圧やバッテリ20を所定のパターンで放電させる放電経路でバッテリ20から流れる電流をADコンバータ33により測定する。判定部302は、測定部301の測定結果に基づいて、バッテリ20を所定のパターンで放電させる放電経路の異常の有無を判定する。内部抵抗算出部303は、判定部302で異常がないと判定された放電経路でバッテリ20を所定のパターンで放電させたときの測定部301の測定結果に基づいて、バッテリ20の内部抵抗値を算出する。第1放電回路21A、第2放電回路21B、測定部301、判定部302、及び内部抵抗算出部303は、内部抵抗測定システムとして機能する。
【0119】
制御部30は、第1実施形態の制御部10と同様の処理を行って第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの異常の有無を判定する。制御部30は、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの異常の有無の判定結果に応じて、予め定められたルールに従って第1放電回路21Aと第2放電回路21Bの一方を選択し、選択した放電回路を用いてバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う。
【0120】
この構成でも、バッテリ20の内部抵抗値を測定するための第1放電回路21Aと第2放電回路21Bについて異常の有無を判定するため、バッテリ20の状態を検知するための構成の異常を検知することができる。また、この構成でも、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bとの一方に異常がある場合には、異常が無い放電回路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用い、異常がある放電回路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用いないため、異常がある放電回路を用いて内部抵抗値を測定することを回避することができ、バッテリ20の内部抵抗値の測定精度を向上させることができる。
【0121】
また、本発明においては、各種診断とバッテリ20の内部抵抗値の測定を通信ネットワークに接続されたサーバ装置が行う構成としてもよい。図18は、各種診断とバッテリ20の状態の検知をサーバ装置4が行う実施形態の構成を示すブロック図である。
【0122】
サーバ装置4は、制御部40、記憶部41、通信部42、及び図示省略したバスを有している。また、制御部40は、制御部10と同様にCPU、ROM、RAMを有している。CPU、ROM、RAM、記憶部41、及び通信部42は、バスにより相互に接続され、これらの間で情報の授受を行なう。通信部42は、通信ネットワーク1000を介して内部抵抗測定装置1との間で通信を行い、内部抵抗測定装置1との間で情報の授受を行なう。記憶部41は、例えば、前述の各抵抗素子の抵抗値と、前述した各種閾値を記憶する。なお、サーバ装置4は、情報の入力を行なうためのマウスやキーボードや、情報の表示を行なうためのディスプレイ装置をユーザインターフェースとして有する構成であってもよい。
【0123】
CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、制御部40においては、判定部402、及び内部抵抗算出部403が実現する。判定部402は、測定部101の測定結果に基づいて、バッテリ20を所定のパターンで放電させる放電経路の異常の有無を判定する。内部抵抗算出部403は、判定部402で異常がないと判定された放電経路でバッテリ20を所定のパターンで放電させたときの測定部101の測定結果に基づいて、バッテリ20の内部抵抗値を算出する。測定部101、判定部402、及び内部抵抗算出部403は、内部抵抗測定システムとして機能する。
【0124】
制御部10は、図5の処理を行い、測定部101で測定された基準電流値、オフ電流値、オン電流値、及びオン電圧値を通信部12から無線通信により通信ネットワーク1000を介してサーバ装置4へ送信する。制御部40は、送信された基準電流値、オフ電流値、オン電流値、及びオン電圧値を受信し、受信した基準電流値、オフ電流値、オン電流値、及びオン電圧値を用いてステップS103の放電回路診断の処理と、ステップS104の電流異常診断の処理を実行する。制御部40は、放電回路診断の処理と、電流異常診断の処理の結果に基づいて、回路異常フラグと電流異常フラグを設定する。制御部40は、設定された回路異常フラグと電流異常フラグに基づいて、バッテリ20の内部抵抗値の測定に用いる放電経路を選択する。制御部40は、選択した放電経路での内部抵抗値の測定指示を内部抵抗測定装置1へ送信する。制御部10は、測定指示を受信すると、指示された放電経路でバッテリ20を所定のパターンで放電させる。制御部10は、バッテリ20が所定のパターンで放電しているときの電圧値と電流値の測定結果をサーバ装置4へ送信する。制御部40は、内部抵抗測定装置1から送信された電圧値と電流値の測定結果を用いてバッテリ20の内部抵抗値を算出する。
【0125】
この構成でも、バッテリ20の内部抵抗値を測定するための第1放電回路21Aと第2放電回路21Bについて異常の有無を判定するため、バッテリ20の状態を検知するための構成の異常を検知することができる。また、この構成でも、第1放電回路21Aと第2放電回路21Bとの一方に異常がある場合には、異常が無い放電回路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用い、異常がある放電回路をバッテリ20の内部抵抗値の測定に用いないため、異常がある放電回路を用いて内部抵抗値を測定することを回避することができ、バッテリ20の内部抵抗値の測定精度を向上させることができる。なお、サーバ装置4で行う処理を通信ネットワーク1000に接続されたパーソナルコンピュータ等の端末装置が実行するようにしてもよい。
【0126】
また、サーバ装置4は、受信した基準電流値、オフ電流値、オン電流値、及びオン電圧を履歴として記憶し、記憶した値を学習して各種閾値を更新してもよい。また、内部抵抗測定装置1が各種診断とバッテリ20の内部抵抗値の測定を行う場合、内部抵抗測定装置1が記憶している閾値をサーバ装置4が更新した閾値で更新するようにしてもよい。内部抵抗測定装置1が記憶している閾値を所定のタイミングでサーバ装置4から更新する構成とすれば、閾値を診断に適した値に更新することができる。
【0127】
上述した実施形態においては、内部抵抗測定装置1と前述の放電回路を車両が有する構成であるが、モータボート等の船舶、ドローン等の航空機、農業機械、建築機械等の移動体が内部抵抗測定装置1と前述の放電回路を有し、放電回路の診断と、船舶、航空機、農業機械、建築機械が有するバッテリの内部抵抗値の測定を、内部抵抗測定装置1が行うようにしてもよい。また、内部抵抗測定装置1と放電回路を有するものは移動体に限定されるものではなく、ガス、水道、鉄道、通信、電力設備等でバッテリ20を用いる装置が内部抵抗測定装置1と放電回路を有し、放電回路の診断と、バッテリの内部抵抗値の測定を、内部抵抗測定装置1が行うようにしてもよい。
【0128】
上述した実施形態では、車両2A~2Dにおいてエンジン26のみが駆動力を出力する構成としたが、車両2A~2Dは、例えば、エンジン26をアシストする電動モータを具備したハイブリッド車又は電動モータで駆動される電気自動車などの電動車であってもよい。ハイブリッド車の場合、バッテリ20は、リチウム電池等によって構成される高圧システム(電動モータを駆動するシステム)を起動し、高圧システムがエンジン26を始動する。また、車両2が電気自動車などの電動車の場合、高圧システムが電動モータを駆動して走行する。
【符号の説明】
【0129】
1 内部抵抗測定装置
2A、2B、2C、2D 車両
3 ECU
4 サーバ装置
10 制御部
11 記憶部
12 通信部
13、33 ADコンバータ
14 バス
20 バッテリ
21A 第1放電回路
21B 第2放電回路
21C 第3放電回路
21D 第4放電回路
21E 第5放電回路
101、301 測定部
102、302 判定部
103、303、403 内部抵抗算出部
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
R1 第1抵抗素子
R2 第2抵抗素子
R3 第3抵抗素子
図1
図2
図3
図4
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