(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034658
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】検査システムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240306BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G01N21/89 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139051
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕太
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051BA01
2G051BC01
2G051CA04
2G051CB01
2G051DA01
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、複数の照明を用いた場合にも、作業員の力量に寄らず、簡易かつ短時間に、カメラの撮像範囲を同一の明るさに調整できる検査システムを提供する。
【解決手段】本発明は、対象物が搬送される経路に設置されたカメラと、カメラの撮像領域に対して光を照射するように配置された複数の照明と、照明の光量を照明ごとに調整可能に設置された光量制御装置と、予め設定された基準照射量で照明ごとに照射した光を、前記カメラの視野に対する受光量でグラフ化した個別グラフを作成する個別グラフ作成部と、複数の照明の個別グラフを全て統合した仮想合計グラフを作成する仮想合計グラフ作成部と、光量制御装置による照明の光量の調整結果を個別グラフに反映させる個別グラフ変更部と、個別グラフまたは仮想合計グラフの少なくともいずれかを画面表示する表示装置と、を備える検査システムに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される対象物の画像を撮像し、前記画像を画像処理して検査する検査システムであって、
前記対象物が搬送される経路に設置されたカメラと、
前記カメラの撮像領域に対して光を照射するように配置された複数の照明と、
前記照明の光量を照明ごとに調整可能に設置された光量制御装置と、
予め設定された基準照射量で前記照明ごとに照射した光を、前記カメラの視野に対する受光量でグラフ化した個別グラフを作成する個別グラフ作成部と、
前記複数の照明の前記個別グラフを全て統合した仮想合計グラフを作成する仮想合計グラフ作成部と、
前記光量制御装置による前記照明の光量の調整結果を前記個別グラフに反映させる個別グラフ変更部と、
前記個別グラフまたは前記仮想合計グラフの少なくともいずれかを画面表示する表示装置と、を備える検査システム。
【請求項2】
前記照明をすべて照射した光を、前記カメラの視野に対する前記受光量でグラフ化した全照射グラフ作成部をさらに備える請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記複数の照明は、前記対象物の搬送される方向に対して垂直方向に列状に配置されており、
前記光量制御装置は、前記複数の照明のうち、前記列状の端部に配置された前記照明から順に、光量を変更するように構成された請求項1または請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記複数の照明は、前記対象物の搬送される方向に対して垂直方向に列状に配置されており、
前記光量制御装置は、前記列状に配置された前記複数の照明について、1つ置きに光量を変更するように構成された請求項1または請求項2に記載の検査システム。
【請求項5】
搬送方向に搬送される対象物の画像をカメラで撮像し、前記画像を画像処理して検査する検査方法であって、
前記カメラの撮像領域に対して光を照射するように配置された複数の照明を、照明ごとに基準とする照射量である基準照射量で照射し、前記カメラによる受光量をグラフ化した個別グラフを作成する工程と、
前記複数の照明の前記個別グラフを全て統合したグラフである仮想合計グラフを作成する工程と、
前記個別グラフまたは前記仮想合計グラフの少なくともいずれかを表示装置に画面表示する工程と、
前記照明ごとの光量を光量制御装置により調整する工程と、
前記光量制御装置による前記照明の光量の調整結果を前記個別グラフに反映させる工程と、を有する検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムおよび検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインで搬送される製品等の対象物を撮像し、画像処理をして所定の検査を実施するための検査システムでは、画像処理精度の向上のために、照明による照射量を調整し、撮像範囲の明るさを均一に維持できることが求められている。このため、搬送路の大きさ等により、カメラを複数台利用する検査システムとしては、カメラと同数の照明を利用して、一つのカメラに対し一つの照明より光を照射することで、撮像範囲の明るさを均一に維持した装置等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の照明を備える検査システムにおいて、撮像範囲内における明るさを均一に保つには、熟練の職人による光量の調整作業等が行われている。また、検査システムを連続運転する場合、各照明に汚れや経時劣化が発生することにより、定期的に光量を再調整する必要もあり、明るさの調整に時間を要している。
【0005】
そこで本発明は、複数の照明を用いた場合にも作業員の熟練度に寄らず、簡易な手順によりカメラの撮像範囲を均一な明るさに調整できる検査システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、搬送方向に搬送される対象物の画像を撮像し、前記画像を画像処理して検査する検査システムであって、
前記対象物が搬送される経路に設置されたカメラと、
前記カメラの撮像領域に対して光を照射するように配置された複数の照明と、
前記照明の光量を照明ごとに調整可能に設置された光量制御装置と、
予め設定された基準照射量で前記照明ごとに照射した光を、前記カメラの視野に対する受光量でグラフ化した個別グラフを作成する個別グラフ作成部と、
前記複数の照明の前記個別グラフを全て統合した仮想合計グラフを作成する仮想合計グラフ作成部と、
前記光量制御装置による前記照明の光量の調整結果を前記個別グラフに反映させる個別グラフ変更部と、
前記個別グラフまたは前記仮想合計グラフの少なくともいずれかを画面表示する表示装置と、を備える検査システムである。
【0007】
本発明の第2の態様は、前記照明をすべて照射した光を、前記カメラの視野に対する前記受光量でグラフ化した全照射グラフ作成部をさらに備える第1の態様に記載の検査システムである。
【0008】
本発明の第3の態様は、前記複数の照明は、前記対象物の搬送される方向に対して垂直方向に列状に配置されており、
前記光量制御装置は、前記複数の照明のうち、前記列状の端部に配置された前記照明から順に、光量を変更するように構成された第1の態様または第2の態様に記載の検査システムである。
【0009】
本発明の第4の態様は、前記複数の照明は、前記対象物の搬送される方向に対して垂直方向に列状に配置されており、
前記光量制御装置は、前記列状に配置された前記複数の照明について、1つ置きに光量を変更するように構成された第1の態様または第2の態様に記載の検査システムである。
【0010】
本発明の第5の態様は、搬送方向に搬送される対象物の画像をカメラで撮像し、前記画像を画像処理して検査する検査方法であって、
前記カメラの撮像領域に対して光を照射するように配置された複数の照明を、照明ごとに基準とする照射量である基準照射量で照射し、前記カメラによる受光量をグラフ化した個別グラフを作成する工程と、
前記複数の照明の前記個別グラフを全て統合したグラフである仮想合計グラフを作成する工程と、
前記個別グラフまたは前記仮想合計グラフの少なくともいずれかを表示装置に画面表示する工程と、
前記照明ごとの光量を光量制御装置により調整する工程と、
前記光量制御装置による前記照明の前記基準照射量の調整結果を前記個別グラフに反映させる工程と、を有する検査方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の照明を備えた検査システムにおいて、簡易な手順によりカメラの撮像範囲内を均一な明るさに調整できる検査システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一態様にかかる検査システムの概略図である。
【
図2】本開示の一態様にかかる検査システムの複数の照明を示す図である。
【
図3】本態様の検査システムにおける機能部の構成の例である。
【
図4】本態様の検査システムにおける個別グラフの例である。
【
図5】本態様の検査システムにおける仮想合計グラフの例である。
【
図6】照明の光量の調整結果を反映した個別グラフの例である。
【
図7】本開示の一態様にかかる検査方法のフロー図である。
【
図8】本態様の検査システムにおける基準照射量の設定用アプリの例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本開示の一態様>
本開示の一態様は、図面を参照しつつ、以下のように説明される。
【0014】
(1)検査システムの構成
図1は、本態様における検査システム10の概略図である。検査システム10は、搬送方向Xに搬送される対象物Pの画像を撮像し、画像処理して検査するシステムである。本態様における検査システム10は、カメラ200、複数の照明100、光量制御装置110、情報処理装置220、表示装置230を備える。なお、検査システム10は、これら以外の構成要素を備えていてもよい。
【0015】
カメラ200は、対象物Pの検査に要する画像を撮像するように構成されたものである。カメラ200の種類は特に限定されず、検査のために処理可能な画像が撮像できればよい。また、カメラ200は任意の位置に配置してよい。例えば、
図1のように、対象物Pが搬送される搬送路Rにおいて、(搬送方向Xと垂直な方向Yで示される)搬送路Rの幅全域について画像を撮像することにより、搬送される対象物Pを漏れなく検査できる。搬送路Rの幅全域を撮像範囲とするカメラ200としては、複数の撮像素子を一列に並べたラインカメラを用いることができる。なお、検査システム10は、ラインカメラに代えて複数のカメラ200を列状に設置し、搬送路Rの幅全域を撮像するものとしてもよい。複数のカメラ200を設置する場合、カメラ200の数と照明100の数は同数である場合に限られず、互いに任意の数としてよい。
【0016】
複数の照明100は、カメラ200の撮像領域に対して光を照射するように構成されたものである。照明100による光は、カメラ200の撮像領域の全域に照射することが好ましいが、例えば上記した搬送路Rの幅等によっては、単一の照明100のみで撮像領域の全域に対し均一に光を照射することは困難な場合がある。そこで、本態様の検査システム10は、撮像領域の延伸方向に沿って複数の照明100を配置することにより、撮像領域の全域に対して均一な光の照射を実現すべく、照明100を複数設置するものとしている。ここで、照明100の発光手段は特に限定されず、例えば蛍光灯、有機または無機エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード等を使用できる。照明100を配置する数は複数であればよく、特に限定されない。
【0017】
照明100の配置は、カメラ200の撮像領域を含んだ範囲に光を照射できる配置であればよく、撮像範囲よりも広い範囲に光を照射する配置であってもよい。複数の照明100の配置は、上記したカメラ200の撮像素子の並び方向または複数のカメラ200の並び方向に対して、同方向または同方向とみなせる方向で配置することが好ましい。本態様の検査システム10は、
図2のように、搬送路Rの搬送方向Xに対し、搬送路Rの平面内において垂直方向Yに列状に照明100を配置した場合として説明する。
【0018】
光量制御装置110は、各照明100の光量を調整できるように構成されたものである。光量制御装置110は、後述する情報処理装置220からの指示に従い、照明の光量を調整するものであればよい。照明の光量は、一つ一つの照明100について個別に、独立して調整可能な構成とする。光量制御装置110は、例えば照明100への供給電圧を可変させる方法等で照明100の光量を調整するように構成してよい。
【0019】
情報処理装置220は、
図3に示すように、個別グラフ作成部221と、仮想合計グラフ作成部222と、個別グラフ変更部223とを有するように構成してよい。個別グラフ作成部221は、
図4のように、一つの照明100を照射した際のカメラ視野V(横軸)に対する受光量A(縦軸)をグラフ化した個別グラフを作成するように構成される。仮想合計グラフ作成部222は、
図5のように全ての照明100に対応する個別グラフを統合した仮想合計グラフを作成するように構成される。仮想合計グラフも個別グラフと同様に、カメラ視野V(横軸)に対する受光量A(縦軸)としてグラフ化できる。個別グラフ変更部223は、
図6のように、光量制御装置110による照明100の光量の調整結果を個別グラフに反映させるように構成される。
【0020】
以上の情報処理装置220は、例えば、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のハードウエア資源を組み合わせて構成してよい。また、情報処理装置220は、予めインストールされている所定プログラム(ソフトウエア)の実行により、そのソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されるものとしてよい。以上により、情報処理装置220は、個別グラフ作成部221、仮想合計グラフ作成部222、および、個別グラフ変更部223における処理動作を制御するように構成できる。
【0021】
表示装置230は、上記で作成された個別グラフまたは仮想合計グラフの少なくともいずれかを画面表示するように構成する。表示装置230は、例えば、情報処理装置220に接続したディスプレイにより構成してもよく、情報処理装置220と一体の構成としてもよい。
【0022】
(2)検査方法の手順
本態様の検査方法は、
図7を参照しつつ、以下のように説明される。
【0023】
本態様の検査方法では、
照明100ごとの光量をカメラ200の受光量Aでグラフ化する「個別グラフ作成工程(工程A)」と、
全ての個別グラフを統合する「仮想合計グラフ作成工程(工程B)」と、
個別グラフまたは仮想合計グラフの少なくともいずれかを画面表示する「グラフ表示工程(工程C)」と、
照明100ごとの光量を光量制御装置110により調整する「光量調整工程(工程D)」と、
光量制御装置110による照明100の光量の調整結果を個別グラフに反映させる「グラフ反映工程(工程E)」と、を行う。
【0024】
個別グラフ作成工程(工程A)
工程Aでは、カメラ200の撮像領域に対して光を照射するように配置された複数の照明100を、照明100ごとに基準とする照射量である基準照射量Cで照射し、カメラ200による受光量Aをグラフ化した個別グラフを作成する。
【0025】
工程Aでは、上記した照明100による光を、予め設定された基準照射量Cで照射する。基準照射量Cは、後述するカメラ200による受光量Aの目標値T(目標光量)に応じて、照明100において設定する光量(照射量)の値である。基準照射量Cは、複数の照明100について、いずれも同じ値にしてもよく、照明100ごとに異なる基準照射量Cを設定してもよい。例えば、事前に各照明100の照射特性を確認した場合には、照明100ごとの照射特性に応じて基準照射量Cを設定しておくことも好ましい。
【0026】
照明100による光の照射は、カメラの視野Vに対する受光量Aとして検出する。例えば、照明100による光が撮像領域である搬送路Rに照射されると、カメラ200では搬送路Rで反射した光を反射光として受光する。このときカメラ200が受光で得られた撮像データの明度に基づいて、受光した光の光量を認識したものを受光量Aとすることができる。この受光量Aは、例えば、カメラ200と接続した検出装置210等を設置して検出してよい。意図しない受光量Aの変動を防ぐために、検査システム10は照明100以外のシステム外部からの光の侵入を低減し、または、遮断した構成にしておくことが好ましい。
【0027】
そして工程Aでは、複数の照明100のうち、一つの照明100を照射した際に、カメラ200の撮像データに基づいて認識した光の光量である受光量Aがグラフ化される。個別グラフは、例えば
図4のように、カメラ視野Vを横軸とし、受光量Aを縦軸とするグラフにおいて、単一照明のスペクトルOを示す構成としてよい。
図4のように、個別グラフは、目標値Tに対応する目標光量ラインSを表示することが好ましい。工程Aでは、複数の照明100の設置数に応じて、一つずつ全ての照明100について光を照射して、全ての照明100についての個別グラフが作成される。作成された各個別グラフは、各照明による光の照射の個体差や、設置位置による相対関係等が反映されたグラフとなる。
【0028】
仮想合計グラフ作成工程(工程B)
工程Bでは、工程Aで作成した個別グラフを全て統合した仮想合計グラフを作成する。仮想合計グラフは、例えば、
図5のように、カメラ視野Vに対する受光量Aのグラフにおいて、全ての照明100の個別スペクトルを統合したスペクトルFを示す構成としてよい。仮想合計グラフは、目標値Tに対応する目標光量ラインSを表示することが好ましい。仮想合計グラフ作成部222による個別グラフの統合は、カメラ視野Vを横軸として、各個別グラフの受光量Aを積算して作成してもよい。
【0029】
また、個別グラフの統合は、各個別グラフの受光量Aを積算した後に、
図2のように照射光101の重複する部分101Dについて、掃き出し法等で重みづけをした受光量Aを表示するものとしてもよい。照射光101の重複する部分101Dでは、関係する各個別グラフを合計した光量よりも、実際に検出される光量の方が少なくなる場合等があり、受光量Aを単純に積算した場合では実際の光量とは異なる仮想合計グラフが示される傾向があるためである。なお、掃き出し法は、行列を用いて連立方程式を解く方法として知られており、掃き出し法で重みづけをするための具体的な手順は公知技術を用いて実現すればよく、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
グラフ表示工程(工程C)
工程Cでは、個別グラフまたは仮想合計グラフの少なくともいずれかを表示装置230に画面表示する。個別グラフと仮想合計グラフは、一度に画面表示してもよく、任意のタイミングで選択して画面表示するように構成してもよい。個別グラフと仮想合計グラフには、受光量Aの目標値Tに基づく目標光量ラインSを表示することが好ましい。
【0031】
工程Cにおける画面表示は、原則として仮想合計グラフを表示することも好ましい。作業者が、表示内容の目標光量ラインSを目安として、横軸のカメラ視野Vの全域で受光量Aが目標光量ラインSに沿って均一になるように、各照明100の光量を調整できるためである。作業者による光量調整において、必要に応じて、各照明100の個別グラフを表示することにより、一つ一つの照明100による光の照射特性(光量がどのように分布しているかの特性)を把握することができる。このため、任意のタイミングで個別グラフを表示することにより、作業者は、どの照明100の光量をどう調整すればよいか、把握しやすくなる。
【0032】
光量調整工程(工程D)
工程Dでは、工程Cにおいて表示された個別グラフと仮想合計グラフに基づいて、照明100の光量を光量制御装置110により調整する。複数の照明100の光量は、照明100ごとに任意の順で調整するものとしてよい。例えば、本態様のように、複数の照明100が、対象物Pの搬送される方向Xに対して、搬送路Rにおける垂直方向Yに列状に配置されている場合(
図2)において、列の端部に配置された照明100より順に光量を変更するように構成してもよい。端部に配置された照明100より光量を変更した場合、カメラ視野Vの全域について受光量Aを均一にするに際して、作業者が各照明100の光量をどの程度調整したら良いかを決定しやすいためである。具体的には、カメラ視野Vにおいて、端部に配置された照明100は、内側に配置された照明100よりも、光の拡散等により光量が低めになる傾向があり、光量の調整が困難な場合がある。そこで、かかる端部の照明100について優先的に光量を調整することで、カメラ視野V全域の光量調整に要する手間と時間を効率化し、光量調整の精度も高めることが可能になる。
【0033】
工程Dにおける照明100の光量の調整は、列状に配置された1つ置きの照明100の光量を変更するように構成してもよい。1つ置きに配置された照明100から順に光量を変更した場合も、カメラ視野Vの全域について受光量Aを均一にするに際し、各照明100の光量をどの程度調整したら良いかを決定しやすくなる。具体的には、隣り合う照明100において光量を調整するには、光が重複して照射される部分(
図2における101D)について、光の重複による影響を考慮して光量をどの程度調整するかを決定する必要がある。この点、1つ置きに配置された照明100から順に光量を調整する場合、作業者は光の重複による影響を考慮せずに、どれくらい光量を調整すべきかを決定しやすくなる。このため、カメラ視野V全域の光量調整に要する手間と時間を効率化し、光量調整の精度も高めることが可能になる。
【0034】
また、工程Dにおいて、照明100の光量の調整を、作業者が行うためのアプリケーションを利用して行うものとしてもよい。アプリケーション画面は、例えば、
図8に示す画面例のように、複数の照明100を列状に配置した検査システム10を例に、カメラ200の受光量スペクトルLを示すものとしてよい。画面例の横軸はカメラ視野Vであり、縦軸はカメラ200の受光量Aである。このアプリケーションでは、作業者が受光量Aの目標値Tを入力すると、目標値Tに対応する目標光量ラインSが示される例となっている。画面例の横軸には、各照明100の機器名M、受光量Aの現在値N、および受光量Aの設定値Iの入力欄が示されている。
アプリケーション画面は、例えば、情報処理装置220にインストールされたソフトウエアにより表示装置230に表示されるように構成してよい。作業者が上記画面例のアプリケーションに設定値Iを入力した場合、情報処理装置220が光量制御装置110に照明100の光量を調整するための指示を送付するものとしてよい。
【0035】
グラフ反映工程(工程E)
工程Eでは、工程Dによる照明100の光量の調整結果を、個別グラフに反映させる。個別グラフ変更部223は、例えば、
図6に示すように、個別グラフの受光量スペクトルLが、スペクトルL1やL2となるように照明100の光量の調整結果を反映するよう構成できる。例えば、基準照射量Cで照射した個別グラフのプロファイルについて、情報処理装置220が所定の演算処理を実施する構成としてよい。具体的には、個別グラフ変更部223は光量を調整した度合いに応じて個別グラフのプロファイルを変更し、受光量Aを増大または減少させることにより、当該個別グラフに光量の調整結果を反映させるものとしてよい。所定の演算処理により光量の調整結果を反映させるのは、個別グラフにおいて、光量を調整した際のグラフの変化が線形的なものになると考えられるためである。このように個別グラフの光量調整結果を反映すると、光量調整後の光量を改めてカメラ200で検出しなくとも仮想合計グラフのシミュレーションを行うことができ、効率的に撮像範囲の光量を均一に調整可能になる。なお、光量の調整結果の反映は例えば、個別グラフの蓄積データを元に決定した内容のデータを反映するものとしてもよい。
【0036】
以上で光量の調整結果を反映した個別グラフは、再度、仮想合計グラフ作成部222により仮想合計グラフを作成することにより、照明100の光量の調整結果を反映した仮想合計グラフを作成することができる。
【0037】
図7に示すように、工程Eの後、作業者は、光量の調整結果を反映した仮想合計グラフ等を確認し、カメラ視野内が目標値Tで均一になっているかどうかを確認することが好ましい。作業者は、目標受光量をチェックした後、照明100を全て照射した全照射グラフを確認し、カメラ視野内が目標値Tで均一になっているかどうかを確認することが好ましい。全照射グラフは、照明100をすべて照射した際の光を、カメラ視野Vに対する受光量Aでグラフ化して作成することができ、例えば情報処理装置220により作成するものとしてよい。
【0038】
(3)効果
本態様によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0039】
(a)個別グラフおよび個別グラフを統合した仮想合計グラフが画面表示されることにより、作業者は、複数の照明100のうち、いずれの照明100について光量の調整が必要かの目安を得ることができる。また、個別グラフおよび仮想合計グラフに目標光量ラインSを表示した場合、作業者は光量の調整をどの程度要するかの指標を得やすい。
【0040】
(b)照明100の光量の調整結果を反映した個別グラフを用いて、光量の調整結果を反映した仮想合計グラフを作成できるため、作業者が光量を調整した際の受光量Aを模擬的に察知できる。よって、どの照明100の光量をどの程度調整したらよいか、作業者が事前に検討しやすくなり、複数の照明100の光量の調整が容易になる。また、アプリケーション画面を用いた場合、カメラ視野Vに対する受光量Aのグラフを見ながら光量の均一化を図ることができ、視覚的に調整しやすくなる。
【0041】
ここで、検査システム10は、仮想合計グラフに代えて、照明100をすべて照射した際の光量をカメラ200で検出して受光量Aのプロファイルを全照射グラフとして作成する構成としてもよい。この場合、全照射グラフを元に作業者が各照明100の光量を調整することも可能であるが、実際に照明100の光量を調整し、調整した都度、全照射グラフを作成し、受光量Aのグラフを確認する必要が生じる。これに対し、上記のように個別グラフに基づいて仮想合計グラフを作成する場合、作業者が光量を調整する際の利便性に優れる。実際に光量調整を行う前の段階で調整後の受光量Aのプロファイルを仮想合計グラフとして把握でき、光量調整のシミュレーションが可能になるためである。また、個別グラフは各照明100の光量の実測に基づくものであり、実際に各照明100の光量を個別に調整した際の光量変化は線形的なものと考えられることから、仮想合計グラフには、光量調整による変化を適切に反映しやすい。
【0042】
(c)照明100をすべて照射した全照射グラフを作成した場合、仮想合計グラフと比較して差分を抽出することで、差分に基づき仮想合計グラフを補正し、仮想合計グラフの特定精度を向上することが可能になる。すなわち、全照射グラフと仮想合計グラフとの差分を、補正係数としてデータ蓄積することにより、検査システム10が仮想合計グラフ作成の精度を向上する構成としてもよい。
【0043】
(d)列状に配置された複数の照明100は、端部に配置された照明100から順に光量を変更することとした場合、光量の調整に要する時間を短縮しやすい。
図2に示されるように、他の部分よりも光量が低くなりやすい端部の照射光101Eを優先して調整するからである。
【0044】
<他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0045】
例えば、本態様では、搬送路Rにおいて、搬送方向Xに対し、垂直方向に列状にカメラ200を配置した場合について説明したが、カメラ200の配置はこれに限定されない。
【0046】
個別グラフ作成部221、仮想合計グラフ作成部222、および個別グラフ変更部223を、情報処理装置220に構成した例について説明したが、各部は検査システム10内に有していればよく、例えば、検出装置210や光量制御装置等に構成してもよい。
【0047】
本態様では、検出装置210がカメラ200と別の構成として設置された場合について説明したが、検出装置210が情報処理装置220と、一体として構成されてもよい。カメラ200または検出装置210は、撮像した画像を画像処理するための画像処理装置(図示せず)と接続した構成としてもよく、画像処理装置は情報処理装置220や検出装置210等と一体の構成にしてもよい。
【0048】
情報処理装置220は、全照射グラフを作成する構成を追加で有してもよく、全照射グラフと仮想合計グラフとを比較して差分を抽出し、差分に基づき仮想合計グラフが補正される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 検査システム
100 照明
110 光量制御装置
200 カメラ
210 検出装置
220 情報処理装置
230 表示装置
101 照射光
101D 重複部の照射光
101E 端部の照射光
P 対象物
R 搬送路