(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034779
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240306BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240306BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240306BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J29/38 104
G03G21/00 398
H04N1/00 885
B41J29/38 203
G03G21/00 510
G03G15/20 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139253
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄児
【テーマコード(参考)】
2C061
2H033
2H270
5C062
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ06
2C061HJ03
2C061HK15
2C061HK19
2C061HK23
2C061HT02
2C061HT08
2H033AA23
2H033CA19
2H033CA20
2H033CA22
2H033CA44
2H270KA46
2H270LA01
2H270LA10
2H270LA75
2H270LA79
2H270LA80
2H270MD17
2H270MD29
2H270MG02
2H270MG06
2H270MG07
2H270MH06
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
2H270ZD01
5C062AA05
5C062AB20
5C062AB22
5C062AB23
5C062AB40
5C062AB42
5C062AB46
5C062AB49
5C062AC04
5C062AC15
5C062AC22
5C062AC24
5C062AF07
(57)【要約】
【課題】複数の回転機構を備える画像形成装置において、回転機構の寿命延長と処理機能の実行開始までの時間短縮を両立可能な技術を提供する。
【解決手段】複数の回転機構を備える画像形成装置であって、シート状の媒体に対し所定の処理機能を実行するときに使用される第一電力、又は当該第一電力よりも低い電力であって処理機能の実行前に使用される第二電力を供給し、処理機能の実行前に遷移条件が成立したときに当該第二電力を供給する第二電力状態から第一電力を供給する第一電力状態へと遷移する電源供給部と、処理機能の実行に用いられた媒体の累積利用枚数と、当該処理機能の実行に利用される回転機構の累積動作量と、を少なくとも記憶する記憶部と、累積利用枚数と累積動作量の比率が所定の閾値を超えているか否かを判定する累積量判定部と、比率が閾値を超えているとき、遷移条件を変更する条件変更部と、を備え、電源供給部は、処理機能の実行に係る実行トリガと遷移条件に基づいて電力状態を遷移させる、画像形成装置による。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転機構を備える画像形成装置であって、
シート状の媒体に対し所定の処理機能を実行するときに使用される第一電力、又は当該第一電力よりも低い電力であって前記処理機能の実行前に使用される第二電力を供給し、前記処理機能の実行前に遷移条件が成立したときに当該第二電力を供給する第二電力状態から前記第一電力を供給する第一電力状態へと遷移する電源供給部と、
前記処理機能の実行に用いられた前記媒体の累積利用枚数と、当該処理機能の実行に利用される前記回転機構の累積動作量と、を少なくとも記憶する記憶部と、
前記累積利用枚数と前記累積動作量の比率が所定の閾値を超えているか否かを判定する累積量判定部と、
前記比率が前記閾値を超えているとき、前記遷移条件を変更する条件変更部と、
を備え、
前記電源供給部は、前記処理機能の実行前の準備トリガと前記遷移条件に基づいて電力状態を遷移させる、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記条件変更部は、前記第二電力状態における前記回転機構の累積動作量が抑制されるように前記遷移条件を切り替える、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記憶部は、所定の前記準備トリガに基づいて前記第二電力状態から前記第一電力状態に遷移した回数と、当該準備トリガによってその後の前記処理機能の実行回数と、を記憶し、
前記電源供給部は、前記遷移した回数と前記実行回数の割合が前記閾値を超えている前記準備トリガが検出されたときは、前記遷移条件に基づくことなく前記電力状態を遷移させる、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶部は、ユーザ毎に前記遷移した回数と前記実行回数を記憶し、
前記電源供給部は、前記ユーザ毎に前記遷移条件を変更する、
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
ユーザが前記電源供給部の遷移条件を指定可能とする操作インターフェースを備え、
当該操作インターフェースを介して、前記条件変更部の動作の有効又は無効を設定可能とする、
請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機能、プリント機能、スキャナ機能などの複数の機能を制御するアプリケーションプログラムを起動して、各処理機能を実行する画像形成装置が知られている。従来の画像形成装置は、処理機能を実行していない状態が一定時間継続したときに、電力消費量を抑制するための省電力モードに移行する省電力機能を備える。
【0003】
省電力機能を備える画像形成装置において、処理機能を実行するときの第一電力状態と、第一電力状態よりも電力消費量が低い第二電力状態と、を切り替えて制御し、第二電力状態においてユーザからの処理機能の開始指示を待機するものが知られている。
【0004】
省電力機能を備える画像形成装置では、待機状態(第二電力状態)から処理機能を実行するまでの時間短縮を図るため、処理機能を実行するための前段階で行われる操作(準備指示)を検知したときに、第二電力状態から第一電力状態へと事前に移行する。しかし、準備指示の後に、処理機能の開始指示がなく一定時間を経過した場合、再び、第二電力状態へと戻る。
【0005】
一方、従来の画像形成装置では、省エネモードから復帰すると、処理機能を実行するために使用される機構の動作を開始させるので、第一電力状態からに移行した後に、処理機能の実行が一定期間行われずに省エネモードに戻ると、機構を浪費することになる。
【0006】
例えば、実際には画像形成装置が使用されないにもかかわらず、HDDのLoad/Unload回数が増加して寿命が短くなるおそれがあることに着目し、HDDの寿命と起動時間の短縮の両立させる技術が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている技術によれば、省エネモードからの復帰を制御することでHDDの寿命を延長させる効果は発揮する。しかし、画像形成装置には、HDDと同様に回転動作をする回転機構が他にも多数備えられているが、特許文献1の技術では、これら他の回転機構の寿命延長に対し課題がある。
【0008】
本発明は、複数の回転機構を備える画像形成装置において、回転機構の寿命延長と処理機能の実行開始までの時間短縮を両立可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、複数の回転機構を備える画像形成装置に関し、シート状の媒体に対し所定の処理機能を実行するときに使用される第一電力、又は当該第一電力よりも低い電力であって前記処理機能の実行前に使用される第二電力を供給し、前記処理機能の実行前に遷移条件が成立したときに当該第二電力を供給する第二電力状態から前記第一電力を供給する第一電力状態へと遷移する電源供給部と、前記処理機能の実行に用いられた前記媒体の累積利用枚数と、当該処理機能の実行に利用される回転機構の累積動作量と、を少なくとも記憶する記憶部と、前記累積利用枚数と前記累積動作量の比率が所定の閾値を超えているか否かを判定する累積量判定部と、前記比率が前記閾値を超えているとき、前記遷移条件を変更する条件変更部と、を備え、前記電源供給部は、前記処理機能の実行に係る実行トリガと前記遷移条件に基づいて電力状態を遷移させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の回転機構を備える画像形成装置において、回転機構の寿命延長と処理機能の実行開始までの時間短縮を両立可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態としてのMFPのハードウェア構成図。
【
図4】上記MFPにおける累積利用枚数と累積動作量を記録する処理フロー。
【
図5】通常モードにおける電流状態の遷移の例を示す図。
【
図6】通常モードにおいて回転機構を浪費する電流状態の遷移の例を示す図。
【
図7】延命モードにおける電流状態の遷移の例を示す図。
【
図8】上記MFPにおける準備トリガを検知したとき処理を示すフローチャート。
【
図9】上記MFPにおける通常モードと延命モードの切り替え処理を示フローチャート。
【
図10】上記MFPにおける遷移条件の切り替え判定に用いられる第一閾値αを説明する図。
【
図11】上記MFPにおける遷移条件の切り替え処理を示フローチャート。
【
図12】上記MFPにおける準備トリガごとの動作回数の記録テーブルを例示する図。
【
図13】上記MFPにおける第二閾値βの決定方法を説明する図。
【
図14】上記MFPにおける準備トリガごとの動作回数をユーザごとに記録する記録テーブルを例示する図。
【
図15】上記MFPにおける延命モードの自動設定画面の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[画像形成処理の全体構成]
以下、図面を参照しながら、本発明に係る画像形成装置の実施形態について説明する。
図1は、画像形成装置としてのMFP(Multi Function Peripheral)100のハードウェア構成の例を示す。
【0013】
MFP100は、例えば、プリンタ、FAX装置、コピー機、スキャナ装置、又は、これらの機能の二つ以上を備えた複合機と呼ばれる装置である。
図1に示すようにMFP100は、CPU(Central Processing Unit)110、ROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130、HDD(Hard Disk Drive)140、電源供給部150、NVRAM(Non-Volatie Random Access Memory)160、エンジン部170、操作パネル180、通信I/F(Interface)190、を備える。
【0014】
CPU110は、本体の動作を統括的に制御する。CPU110は、RAM130をワークエリア(作業領域)としてROM120またはHDD140等に格納されたプログラムを実行することで、本体全体の動作を制御し、コピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、プリンタ機能などの処理機能を実現する。
【0015】
電源供給部150は、操作パネル180やエンジン部170への電力の供給を操作することができ、省エネ機能を実現する。
【0016】
NVRAM160は、タイマー設定やネットワーク設定などの設定値が保存されている不揮発記憶領域である。HDD140にはユーザのアドレス帳や蓄積された画像データが保存されている。
【0017】
エンジン部170は、コピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、および、プリンタ機能を実現させるための、汎用的な情報処理及び通信以外の処理を行うハードウェアである。例えば、原稿の画像をスキャンして読み取るスキャナ(画像読取部)、シート状の媒体(用紙等)への印刷を行うプロッタ(画像形成部)、ファクス通信を行うファクス部などを備えている。更に、印刷済みシート材を仕分けるフィニッシャや、原稿を自動給送するADF(自動原稿給送装置)のような特定のオプションを備えることもできる。
【0018】
操作パネル180は、ユーザの操作に応じた各種の入力を受け付けるとともに、各種の情報(例えば受け付けた操作に応じた情報、MFP100の動作状況を示す情報、設定状態などを示す情報など)を表示する。ここで各種の入力とは、処理機能を実現する特定のアプリケーションプログラムを選択する操作、処理機能を実行するための設定を行う操作などの準備指示や、選択された処理機能の実行を指示する実行指示などを含む。
【0019】
通信I/F190は、ネットワーク200と接続するためのインターフェースである。接続I/Fは、通信路を介して操作部と通信するためのインターフェースである。
【0020】
[画像形成装置の機能ブロック]
次に、本実施形態に係るMFP100が有する機能ブロックについて、
図2を参照しながら説明する。以下において説明する機能ブロックは、CPU110が、RAM130をワークエリア(作業領域)としてROM120またはHDD140等に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0021】
省エネ制御部101は、電力の供給を制御することで消費電力の異なる複数の省エネルギー状態を実現する。例えば、後述する第二電力状態や第三電力状態などに切り替える制御を行う。
【0022】
エンジン制御部106は、エンジン部170が備えるモータ駆動などを制御してコピー機能などの画像形成機能を実現する。
【0023】
印刷制御部103は、各アプリケーション105からの印刷要求をハンドリングし、エンジン制御部106に印刷要求を出す。この印刷要求が処理機能の実行開始指示(実行トリガ)の例となる。印刷制御部103は、処理機能の実行に用いられた媒体の累積利用枚数と、処理機能の実行に利用される回転機構の累積動作量を、NVRAM160などの不揮発性の記憶部に記憶させる。
【0024】
事前復帰可否判断部102は、寿命パラメータとしての累積利用枚数と累積動作量との比率に基づいて遷移条件の変更を判定する。この際の判定は、処理機能(印刷機能)の実行開始までの時間を短縮するために、準備指示(準備トリガ)を検知して事前の準備処理を行い、電力状態を第一電力状態に復帰させるか否かを判定する。すなわち、事前復帰可否判断部102は、累積量判定部、条件変更部を兼ねる。
【0025】
各アプリケーション105は、操作パネル180にユーザの操作インターフェース(UI)を表示しユーザの操作に応じて印刷制御部103に印刷要求を出す。
【0026】
アプリケーション管理部104は、各アプリケーションプログラムの切り替えを制御する。
【0027】
[本実施形態に係る電力状態の説明]
次に、本実施形態に係るMFP100が可能とする複数の電力状態について説明する。
図3は、MFP100において用いられる複数の電力状態を例示する表である。
図3に示すように、MFP100は、各電力状態において操作パネル180、エンジン部170、CPU110への電源供給(ON)、電源供給停止(OFF)が異なる。
【0028】
処理機能を実行するときに使用される第一電力を供給する状態である第一電力状態では、CPU110への電源も供給されていて、操作パネル180への電源は供給されていてるので操作は可能である。また、エンジン部170への電源も供給されているので画像形成機能の実行がすぐに可能な状態である。
【0029】
処理機能を実行するときに使用される第一電力よりも低い電力であって、処理機能の実行前の待機状態に必要な電力を供給する状態である第二電力状態では、CPU110への電源も供給されていて、操作パネル180への電源は供給されていてるので操作は可能である。しかし、エンジン部170を構成する定着装置の温度を、第一電力状態のときよりも下げている状態である。したがって、電源供給はされているが電圧は低いので、第二電力状態では、画像形成機能の実行はすぐに行なえないが、第一電力状態よりも電力を低下させている。
【0030】
第二電力状態よりもさらに供給電力を抑える第三電力状態では、操作パネル180とエンジン部170への給電をオフにし、第二電力状態よりも電力を低下させる。なお、CPU110への電源は供給されている。
【0031】
[累積利用枚数と累積動作量を記録する処理フロー]
次に、MFP100が動作をするときに記録される情報と、当該情報の記録処理フローについて説明する。MFP100は、第二電力状態で待機しているときに、所定の処理機能の実行の準備段階で行われる操作(準備トリガ)を検知したときに、第一電力状態へ遷移するか否かを遷移条件に基づくものとしている。
【0032】
この遷移条件は、処理機能の実行によって、媒体に対して当該処理機能が施された数の累積数(累積利用枚数)と、処理機能の実行によって、当該処理機能に利用される回転機構の動作量の累積数(累積動作量)との比率を用いて行う判定により特定される。
【0033】
したがって、MFP100は、処理機能の実行に用いられた媒体の数(印刷枚数)と、処理機能に利用される回転機構(例えば、定着装置)の回転動作量(走行距離)をHDD140に記憶する。
【0034】
図4に例示するように、まず、処理機能の一種を実行するためのプログラムであるコピーアプリ(アプリケーション105)が、印刷制御部103にジョブスタートを要求する(S401)。
【0035】
続いて、印刷制御部103は、エンジン制御部106に印刷要求を通知する(S402)。
【0036】
続いて、エンジン制御部106は、エンジン部170を制御して画像形成機能を実現する(S403)。
【0037】
続いて、エンジン制御部106は、定着装置が備える回転機構としてのローラーを回転させた回数とローラーの円周から走行距離を計算して不揮発メモリ(HDD140)に記憶する(S404)。
【0038】
最後に、印刷要求が完了したときに、使用した媒体の枚数(印刷枚数)のカウントアップし、HDD140に記憶する(S405)。
【0039】
[通常モードの電力状態遷移]
次に、通常モードにおける電力状態遷移について説明する。なお、MFP100は、第二電力状態から第一電力状態への遷移を、従来と同様の条件で行う遷移条件により、電力状態を切り替える通常モードと、回転機構の寿命を延命させることを目的とする第二遷移条件により電力状態を切り替える延命モードを備える。
【0040】
図5は、通常モードでの電力状態遷移を表す図である。まず、第三電力状態でユーザが省エネキーを押下すると(T1)、MFP100は第二電力状態に復帰し操作パネル180がONして(動作して)ホーム画面が表示される。
【0041】
ユーザがコピーアプリを選択するとMFP100は第一電力状態に復帰する(T2)。この復帰が印刷時間短縮のための事前復帰となる。したがって、ここでは、コピーアプリの選択が準備トリガとなる。
【0042】
ユーザが、別の準備トリガとしてのトレイの選択などを行い(T3)、実行トリガとして実行指示を行うためにスタートキーを押下する(T4)。これによってMFP100は印刷を開始する。
【0043】
印刷完了後、MFP100はタイマーで再び省エネ状態(第二電力状態)へ移行する(T5)。第二電力状態に遷移してから所定の時間が経過すると第三電力状態へ移行する(T6)。
【0044】
[比較例]
次に、本実施形態に係るMFP100における電力状態の遷移において、延命モードが用いられないときに、通常モードで動作することで余分な省エネ移行復帰が実施される例を比較例として
図6を用いながら説明する。
【0045】
まず、第三電力状態でユーザが省エネキーを押下すると(T11)、MFP100は第二電力状態に復帰し、操作パネル180がONして(動作して)ホーム画面が表示される。
【0046】
ユーザがコピーアプリを選択するとMFP100は第一電力状態に復帰する(T12)。この復帰が印刷時間短縮のための事前の復帰となる。
【0047】
ユーザの操作パネル180の時間間隔が空き、所定のタイミングまでに、次のパネル操作が行われないとき、MFP100はタイマーで再び第二電力状態に移行する(T13)。
【0048】
ユーザが操作パネル180を操作して、「トレイの選択」などの次の操作を行うと、MFP100は第一電力状態に復帰する(T14)。この復帰が印刷時間短縮のための事前の復帰となる。
【0049】
ここで、再び、ユーザの操作パネル180の時間間隔が空き、所定のタイミングまでに、次のパネル操作が行われないと、MFP100はタイマーで再び第二電力状態に移行する(T15)。
【0050】
その後、ユーザがスタートキーを押下するとMFP100は第一電力状態に復帰する
実行開始指示としてのスタートキーを押下する(T16)。これによってMFP100は印刷を開始する。
【0051】
印刷完了後、MFP100はタイマーで再び省エネ状態(第二電力状態)へ移行する(T7)。第二電力状態に遷移してから所定の時間が経過すると第三電力状態へ移行する(T18)。
【0052】
以上説明をしたとおり、T12からT13までの間、及びT14からT15までの間は、第一電力状態にあるので、定着装置は高温状態であって、回転機構も、印刷処理を即時的に開始可能な状態で動作をしている。すなわち、回転機構の累積動作量は増加する状態になっている。この第一電力状態に一旦移行してから処理機能を実行することなく第二電力状態に戻ることを繰り返すと、処理機能の実行回数(累積利用枚数)は増加せずとも、回転機構は動作することで寿命が短くなる。
【0053】
[延命モードの電力状態遷移の例]
次に、本実施形態に係るMFP100における電力状態の遷移において、延命モードが用いられるときの省エネ移行復帰について
図7を用いながら説明する。
【0054】
まず、第三電力状態でユーザが省エネキーを押下すると(T21)、MFP100は第二電力状態に復帰し操作パネル180がONして(動作して)ホーム画面が表示される。
【0055】
続いて、ユーザが、準備トリガとしてのコピーアプリの選択をする。このとき、MFP100は延命モードであるから、第一電力状態に復帰することなく第二電力状態を維持する(T22)。
【0056】
さらに、続いてユーザが、操作パネル180を操作して、準備トリガとしての「トレイの選択」などの操作を行う(T23)。このときも、MFP100は第一電力状態に復帰しない(T23)。
【0057】
その後、ユーザが実行指示(実行トリガ)としてのスタートキーを押下する(T24)。これによってMFP100は印刷を開始する。
【0058】
印刷完了後、MFP100はタイマーで再び省エネ状態(第二電力状態)へ移行する(T25)。第二電力状態に遷移してから所定の時間が経過すると第三電力状態へ移行する(T26)。
【0059】
以上説明をしたとおり、T22、T23のように、処理機能の実行前の準備トリガが検知されたときでも、延命モードのMFP100は、処理機能の実行状態となる第一電力状態への移行をせず、処理機能の実行開始トリガ(T24)が検知されたときに移行する。これによって、実際に回転機構(定着装置など)を高温状態にする必要があるタイミングに基づいて、電力状態を移行するので、一旦、第一電力状態に移行したのに、その後の準備トリガが整わずに、第二電力状態に戻ることを抑制できる。すなわち、処理機能の実行回数(累積利用枚数)は増加しないのに、回転機構を動作させて寿命を縮める状態を回避できる。
【0060】
[通常モード/延命モード時の省エネ復帰フロー]
次に、準備トリガ(事前の省エネ復帰トリガ)を検知したときのMFP100の動作の流れについて、
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
まず、事前の省エネ復帰トリガ(準備トリガ)が検知されるまでの待機処理を実行する(S801)。すなわち、MFP100は印刷時間短縮のための準備トリガの検知を待機する。
【0062】
続いて、電力状態の遷移条件を判定し、MFP100が延命モードであるか否かを判定する(S802)。MFP100が延命モードであれば(S802:Yes)、処理をS801に戻し、延命モードでなければ(S802:NO)、第二電力状態から第一電力状態に移行して省エネ復帰を実行し(S803)、その後、処理をS801に移行する。
【0063】
[通常モード/延命モードの切り替えフロー]
次に、通常モードと延命モードの切り替え処理について
図9のフローチャートを用いて説明する。まず、MFP100は、累積利用枚数と累積動作量を一定期間に亘って更新し、判定時期に至るまで記録を継続する。一定期間が経過して判定時期に至ったとき(S901)、不揮発性の記憶部に記憶されている、累積利用枚数(印刷枚数)と、累積動作量(走行距離)を記憶から取得する(S902)。
【0064】
続いて、積動作量(走行距離)と累積利用枚数(印刷枚数)の比率(走行距離/印刷枚数)を算出し、算出した値が、第一閾値αを超えているか否かを判定する(903)。
【0065】
第一閾値αを超えていないとき(S903:NO)、遷移条件を変更して通常モードに切り替える(S904)。その後、処理をS901に戻す。第一閾値αを超えているとき(S903:YES)、遷移条件を変更して延命モードに切り替える(S905)。その後、処理をS901に戻す。
【0066】
なお、S903の判定前の遷移条件が、すでに通常モードだったときに、第一閾値αを超えていないとき(S903:NO)は、遷移条件の切り替えは行わずに、S901に移行する。同様に、S903の判定前の遷移条件が、すでに延命モードだったときに、第一閾値αを超えているとき(S903:YES)は、遷移条件の切り替えは行わずに、S901に移行する。
【0067】
[本実施形態に係る第一閾値αの説明]
次に、本実施形態に係るMFP100において遷移条件の切り替え判定に用いられる第一閾値αについて説明する。
図10は、本実施形態に係る回転機構としての定着装置の種別(定着種別)と、各定着種別において規定される走行寿命及び印刷枚数と、これらに基づいて規定される第一閾値αの例を示す表である。
【0068】
MFP100は、NVRAM160に、
図10に例示したデータテーブルを記憶している。MFP100に複数の異なる種別の定着装置を装着できる場合、装着された定着装置に基づいて、第一閾値αを決定することができる。
【0069】
[延命モード時の処理機能の実行実績を取得するフロー]
次に、準備トリガ(事前の省エネ復帰トリガ)を検知したときのMFP100の実行トリガが検知されて、処理機能が実行されたか否かを取得して、遷移条件を切り替える処理の流れについて
図11のフローチャートを用いて説明する。
【0070】
まず、準備トリガとしての事前の省エネ復帰トリガの検知を待機する。すなわち、MFP100は印刷時間短縮のための準備トリガの検知を待機する(S1101)。
【0071】
準備トリガを検知したとき、続いて、遷移条件が「延命モード」であるか否かを判定する(S1102)。遷移条件が「延命モード」であるとき(S1102:YES)、MFP100は、S1101において検知した準備トリガに係る「その後処理機能が実行された回数/準備トリガの発生回数」を取得する(S1103)。
【0072】
続いて、MFP100は取得した値が、第二閾値βを超えているか否かを判定する(S1104)。
【0073】
S1102において、延命モードではないとき(S1102:NO)、S1104において、第二閾値βを超えていないときは、第二電力状態から第一電力状態へと移行する、省エネ復帰を実施する(S1105)。
【0074】
S1105に続いて、又は、S1104において第二閾値βを超えていないとき(S1104;NO)、MFP100は、S1101において検知した準備トリガに対して累積回数をカウントアップする(S1106)。
【0075】
続いて、第一電力状態に移行しているMFP100において、一定時間の間に印刷処理が実行されたか否かを判定する(S1107)。一定時間の間に印刷処理が開始されないとき(S1107:NO)、処理はS1101に戻る。この場合、遷移条件が通常モードであれば第二電力状態に戻ることになる。一定時間の間に印刷処理が開始されたときは(S1107:YES)、準備トリガに対する印刷実行回数をカウントアップして(S1108)、処理をS1101に戻す。
【0076】
[準備トリガ毎の処理機能実行回数と、トリガ発生回数の例]
図12は、
図11の処理において更新されるデータテーブルの例を示す表である。すなわち、一定の期間において検知された準備トリガに対して、実際に印刷処理が実行された回数と、準備トリガの検知回数をNVRAM160に記憶する。合わせてこれらの割合も記録する。
【0077】
なお、準備トリガの例である「IDカードコピーアプリ選択」とは、免許証などのコピーを簡単に実施できる特定用途のアプリケーションを選択した場合に相当する。
【0078】
[第二閾値βの決定方法]
次に、本実施形態に係るMFP100において用いられる第二閾値βの決定方法について説明する。
図13(a)は、横軸を印刷可能想定枚数、縦軸を走行距離とした場合に、遷移条件を切り替える第一閾値αを示すグラフである。また、準備トリガの検知で第一電力状態に移行したときに実際に処理機能(印刷処理)が実行された実績に基づいて遷移条件を切り替えるための第二閾値βも例示している。
図13(b)は、
図13(a)の矩形領域を拡大した図であって、第二閾値βの決定方法を説明する図である。
【0079】
図13(b)に示すように、第二閾値βは「D/(C+D)」によって算出される。ここで、「D」は、事前に想定していた印刷以外の走行距離である。また、「C」は、想定を超えた走行距離である。
【0080】
なお、
図13(b)において、「A」は、前回の印刷処理と今回の印刷処理の利用枚数の差分に相当する。また、「B」は、前回までの走行距離と今回の走行距離の差分に相当する。「傾きk」は、定着装置毎の固有のパラメータとして予めMFP100が保持している値である。これらを用いることで、上記の「C」は、「B-D-A×k」で算出される。また、上記の「D」は、「B-A×α」で算出される。
【0081】
印刷が発生しなかった割合が「D/(C+D)」以下の準備トリガは、延命モードに移行しやすくしたほうが、回転機構の寿命を延長する観点から好ましい。そこで、「D/(C+D)」以下の準備トリガが次に検出されたときには、省エネ復帰を抑制することで次回の傾きを第一閾値α以下にする。
【0082】
[準備トリガ毎の処理機能実行回数と、トリガ発生回数の別例]
図14は、
図12において示したデータテーブルの別例を示す表である。すなわち、一定の期間において検知された準備トリガに対して、実際に印刷処理が実行された回数と、準備トリガの検知回数をユーザごとに記録してもよい。これらは、NVRAM160に記憶する。合わせてこれらの割合も記録する。
【0083】
ユーザを識別する情報は、MFP100へのログイン情報から取得すればよい。ユーザごとに割合を記録することで、各ユーザの利用実態に即して、遷移条件の切り替え判定を行うことができるようになる。
【0084】
なお、準備トリガの例である「IDカードコピーアプリ選択」とは、免許証などのコピーを簡単に実施できる特定用途のアプリケーションを選択した場合に相当する。
【0085】
[延命モード実施可否の初期設定]
図15は、操作パネル180に表示される設定画面の例であって、延命モード機能の実施可否を初期設定できるようにした設定画面のイメージ図である。
【0086】
図15の設定画面において、[有効]を選択すると、延命モードを用いた電力状態の移行制御が行われる。[無効]を選択すると、延命モードの判定は行わずに、準備トリガが検知されたときには、必ず事前の省エネ復帰(第二電力状態から第一電力状態への移行)が行われる。
【0087】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0088】
[本発明の態様]
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
<1>
複数の回転機構を備える画像形成装置であって、
シート状の媒体に対し所定の処理機能を実行するときに使用される第一電力、又は当該第一電力よりも低い電力であって前記処理機能の実行前に使用される第二電力を供給し、前記処理機能の実行前に遷移条件が成立したときに当該第二電力を供給する第二電力状態から前記第一電力を供給する第一電力状態へと遷移する電源供給部と、
前記処理機能の実行に用いられた前記媒体の累積利用枚数と、当該処理機能の実行に利用される前記回転機構の累積動作量と、を少なくとも記憶する記憶部と、
前記累積利用枚数と前記累積動作量の比率が所定の閾値を超えているか否かを判定する累積量判定部と、
前記比率が前記閾値を超えているとき、前記遷移条件を変更する条件変更部と、
を備え、
前記電源供給部は、前記処理機能の実行前の準備トリガと前記遷移条件に基づいて電力状態を遷移させる、
を備えることを特徴とする画像形成装置である。
<2>
前記条件変更部は、前記第二電力状態における前記回転機構の累積動作量が抑制されるように前記遷移条件を切り替える、
前記<1>に記載の画像形成装置である。
<3>
前記記憶部は、所定の前記準備トリガに基づいて前記第二電力状態から前記第一電力状態に遷移した回数と、当該準備トリガによってその後の前記処理機能の実行回数と、を記憶し、
前記電源供給部は、前記遷移した回数と前記実行回数の割合が前記閾値を超えている前記準備トリガが検出されたときは、前記遷移条件に基づくことなく前記電力状態を遷移させる、
前記<1>又は前記<2>に記載の画像形成装置である。
<4>
前記記憶部は、ユーザ毎に前記遷移した回数と前記実行回数を記憶し、
前記電源供給部は、前記ユーザ毎に前記遷移条件を変更する、
前記<3>に記載の画像形成装置である。
<5>
ユーザが前記電源供給部の遷移条件を指定可能とする操作インターフェースを備え、
当該操作インターフェースを介して、前記条件変更部の動作の有効又は無効を設定可能とする、
前記<1>乃至前記<4>のいずれかに記載の画像形成装置である。
【符号の説明】
【0089】
100 :MFP
101 :省エネ制御部
102 :事前復帰可否判断部
103 :印刷制御部
104 :アプリケーション管理部
105 :アプリケーション
106 :エンジン制御部
110 :CPU
120 :ROM
130 :RAM
140 :HDD
150 :電源供給部
170 :エンジン部
180 :操作パネル
190 :通信I/F
200 :ネットワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】