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  • 特開-熱移送システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034801
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】熱移送システム
(51)【国際特許分類】
   F28F 21/08 20060101AFI20240306BHJP
   F28F 23/00 20060101ALI20240306BHJP
   H01F 1/44 20060101ALI20240306BHJP
   H02K 44/04 20060101ALI20240306BHJP
   F28D 21/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F28F21/08 A
F28F23/00 Z
H01F1/44 120
H02K44/04
F28D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139291
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮平
(72)【発明者】
【氏名】三谷 敦己
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 悠宏
(72)【発明者】
【氏名】井門 康司
【テーマコード(参考)】
5E041
【Fターム(参考)】
5E041AB14
5E041BD07
5E041CA09
5E041NN15
(57)【要約】
【課題】優れた熱移送効率を有する熱移送システムを提供する。
【解決手段】磁性流体が循環する循環経路を備え、前記循環経路は、前記磁性流体を循環させる内部空間を規定する流路壁と、前記内部空間に設けられた多孔体と、を含み、前記多孔体は、アルミニウムからなり、前記多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、前記多孔体の空隙率は、75%以上90%以下である、熱移送システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性流体が循環する循環経路を備え、
前記循環経路は、
前記磁性流体を循環させる内部空間を規定する流路壁と、
前記内部空間に設けられた多孔体と、を含み、
前記多孔体は、アルミニウムからなり、
前記多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、
前記多孔体の空隙率は、75%以上90%以下である、熱移送システム。
【請求項2】
前記内部空間に充填された磁性流体と、
前記磁性流体に磁場を印加して前記磁性流体を所定の循環方向に循環させる磁石と、をさらに備え、
前記循環経路は、
前記内部空間の外部からの熱を前記磁性流体が受ける領域である受熱領域と、
前記内部空間の外部に前記磁性流体が熱を放出する領域である放熱領域と、を含む、請求項1に記載の熱移送システム。
【請求項3】
前記内部空間の外部に設けられ、前記受熱領域に存在する前記磁性流体に熱を与える加熱部をさらに備え、
前記多孔体は、前記受熱領域に設けられ、
前記受熱領域の体積に対する前記多孔体の占める体積は30%以上である、請求項2に記載の熱移送システム。
【請求項4】
前記流路壁の内壁と前記多孔体とは互いに接触している、請求項1または請求項2に記載の熱移送システム。
【請求項5】
前記磁性流体は、炭化水素からなる流体基材と、感温性磁性粒子とを含み、
前記感温性磁性粒子は、25℃での飽和磁化が100℃での飽和磁化に対し、3倍以上となる酸化鉄系微粒子である、請求項2または請求項3に記載の熱移送システム。
【請求項6】
前記内部空間の外部に設けられ、前記放熱領域に存在する前記磁性流体から熱を奪う冷却部をさらに備える、請求項2または請求項3に記載の熱移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性流体は、温度により異なる磁気特性を有することができる。この特性を利用して、ループ状の配管の内部に磁性流体を封入して、磁性流体を加熱および冷却し、かつ、磁場を印加することにより、磁性流体を循環させて熱移送を行う熱移送システムが検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-50140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱移送システムでは、磁性流体の加速度が、熱源に近い領域と遠い領域とで異なり、熱移送システム全体の発生流量が不十分となり、熱移送効率が低下する傾向がある。よって、熱移送効率が向上した熱移送システムが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、優れた熱移送効率を有する熱移送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の熱移送システムは、
磁性流体が循環する循環経路を備え、
前記循環経路は、
前記磁性流体を循環させる内部空間を規定する流路壁と、
前記内部空間に設けられた多孔体と、を含み、
前記多孔体は、アルミニウムからなり、
前記多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、
前記多孔体の空隙率は、75%以上90%以下である、熱移送システムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、優れた熱移送効率を有する熱移送システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る熱移送システムの代表的な構成例を説明する図である。
図2図2は、実施形態1に係る熱移送システムの受熱領域近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の熱移送システムは、
磁性流体が循環する循環経路を備え、
前記循環経路は、
前記磁性流体を循環させる内部空間を規定する流路壁と、
前記内部空間に設けられた多孔体と、を含み、
前記多孔体は、アルミニウムからなり、
前記多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、
前記多孔体の空隙率は、75%以上90%以下である、熱移送システムである。
【0010】
本開示によれば、優れた熱移送効率を有する熱移送システムを提供することが可能である。
【0011】
(2)上記(1)において、
前記内部空間に充填された磁性流体と、
前記磁性流体に磁場を印加して前記磁性流体を所定の循環方向に循環させる磁石と、をさらに備え、
前記循環経路は、
前記内部空間の外部からの熱を前記磁性流体が受ける領域である受熱領域と、
前記内部空間の外部に前記磁性流体が熱を放出する領域である放熱領域と、を含むことが好ましい。
【0012】
これによると、優れた熱移送効率を有する熱移送システムを提供することが可能である。
【0013】
(3)上記(2)において、
前記内部空間の外部に設けられ、前記受熱領域に存在する前記磁性流体に熱を与える加熱部をさらに備え、
前記多孔体は、前記受熱領域に設けられ、
前記受熱領域の体積に対する前記多孔体の占める体積は30%以上であることが好ましい。
【0014】
これによると、熱移送効率が更に向上する。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記流路壁の内壁と前記多孔体とは互いに接触していることが好ましい。
【0016】
これによると、熱移送効率が更に向上する。
【0017】
(5)上記(2)または(3)において、
前記磁性流体は、炭化水素からなる流体基材と、感温性磁性粒子とを含み、
前記感温性磁性粒子は、25℃での飽和磁化が100℃での飽和磁化に対し、3倍以上となる酸化鉄系微粒子であることが好ましい。
【0018】
これによると、熱移送効率が更に向上する。
【0019】
(6)上記(2)または(3)において、
前記内部空間の外部に設けられ、前記放熱領域に存在する前記磁性流体から熱を奪う冷却部をさらに備えることが好ましい。
【0020】
これによると、熱移送効率が更に向上する。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の熱移送システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0022】
本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0023】
本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるべきではなく、従来公知のあらゆる原子比が含まれる。
【0024】
本開示において、数値範囲下限及び上限として、それぞれ1つ以上の数値が記載されている場合は、下限に記載されている任意の1つの数値と、上限に記載されている任意の1つの数値との組み合わせも開示されているものとする。例えば、下限として、a1以上、b1以上、c1以上が記載され、上限としてa2以下、b2以下、c2以下が記載されている場合は、a1以上a2以下、a1以上b2以下、a1以上c2以下、b1以上a2以下、b1以上b2以下、b1以上c2以下、c1以上a2以下、c1以上b2以下、c1以上c2以下が開示されているものとする。
【0025】
[実施形態1]
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)における熱移送システムの構成について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態の熱移送システム1は、磁性流体2が循環する循環経路3を備える。循環経路3は、磁性流体2を循環させる内部空間3cを規定する流路壁3aと、内部空間3cに設けられた多孔体4と、を含む。多孔体4は、アルミニウムからなり、多孔体4の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、多孔体4の空隙率は、75%以上90%以下である。
【0026】
熱移送システム1は、循環経路3の内部空間3cに充填された磁性流体2をさらに備えることができる。熱移送システム1は、磁性流体2に磁場を印加して磁性流体2を所定の循環方向に循環させる磁石5をさらに備えることができる。
【0027】
循環経路3は、循環経路3の内部空間3cの外部からの熱を磁性流体2が受ける領域である受熱領域6と、内部空間3cの外部に磁性流体2が熱を放出する領域である放熱領域7と、を備えることができる。
【0028】
熱移送システム1は、内部空間3cの外部に設けられ、受熱領域6に存在する磁性流体2に熱を与える加熱部8をさらに備えることができる。本実施形態において、受熱領域6は、循環経路3において加熱部8に対向する領域である。
【0029】
熱移送システム1は、内部空間3cの外部に設けられ、放熱領域7に存在する磁性流体2から熱を奪う冷却部9をさらに備えることができる。本実施形態において、放熱領域7は、循環経路3において冷却部9に対向する領域である。
【0030】
本実施形態の熱移送システム1の駆動原理について、図1および図2を用いて説明する。磁石5により、磁性流体2に磁場が印加されている。磁石5を基準として、図2の右側には加熱部8が設けられている。該加熱部8により、受熱領域6に存在する磁性流体2を加熱すると、該磁性流体2の磁化が低下する。磁石5を基準として、図2の左側の循環経路の内部空間3cに存在する磁性流体2は、受熱領域6に存在する磁性流体2よりも低温であるため、受熱領域6に存在する磁性流体2よりも磁化が大きい。
【0031】
磁性流体2には、磁化Mおよび磁場勾配ΔHに比例する磁気体積力f(f=M×ΔH)が作用する。本実施形態の熱移送システム1では、図2に示されるように、低温側から高温側へ向かう磁気体積力Faは、高温側から低温側へ向かう磁気体積力Fbよりも大きい。これは、受熱領域6では受熱領域の外側よりも磁化Mが小さくなる磁性流体の特性による効果と磁石中央部の磁場勾配ΔHよりも受熱領域6の磁場勾配ΔHが小さくなる空間の磁場設計による効果の2つの効果が相乗されて実現されている。よって、矢印F1の方向に駆動力が生じ、矢印F1の方向に磁性流体2が移動する。
【0032】
矢印F1の方向に移動し、放熱領域7に到達した磁性流体2は、冷却部9により熱が奪われ、冷却される。冷却された磁性流体2は、磁化が増加する。磁化が増加した磁性流体2は、矢印F2の方向に移動して、受熱領域6に戻る。このようにして、磁性流体2は、循環経路3内を循環する。
【0033】
<循環経路>
本実施形態の熱移送システム1において、循環経路3は、磁性流体2を循環させる内部空間3cを規定する流路壁3aと、内部空間3cに設けられた多孔体4とを含む。該循環経路3は、内部空間3cの外部からの熱を磁性流体2が受ける領域である受熱領域6と、内部空間3cの外部に磁性流体2が熱を放出する領域である放熱領域7とを含むことができる。
【0034】
本実施形態の熱移送システム1において、循環経路3とは、その内部空間3cが少なくとも一つの閉ループを形成するものである。該閉ループは、1つの閉ループ内で、分岐を有していてもよい。また、循環経路3の内部空間3cは、並列に配置された複数の閉ループを形成していてもよい。循環経路3の形状は、その内部空間3cが少なくとも一つの閉ループを形成する限り、特に限定されない。例えば、循環経路3は、管状の流路壁からなる管状であってもよいし、任意の形状(板状、直方体状など)からなる流路壁内に少なくとも一つの閉ループを形成する内部空間3cが形成されている形状であってもよい。
【0035】
磁性流体2の循環方向に対して垂直な断面における内部空間3cの断面の形状は特に限定されない。例えば、該断面の形状は、円形、楕円形、矩形とすることができる。該断面の面積は特に限定されず、用途によって適宜変更することができる。
【0036】
循環経路3の流路壁3aの材質は、非磁性材料であれば磁性流体の溶媒への耐性や熱伝導性、断熱性などを考慮して適宜選択できる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂を使用できる。また、流路壁3aのうち、受熱領域6及び/又は放熱領域7に位置する流路壁の材質を他の部分より熱伝導性の高い材質(例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、酸化アルミニウム)としたり、流路壁と異なる材質(例えば、アルミニウム、銅、ステンレス)で被覆することもできる。
【0037】
≪多孔体≫
本実施形態の熱移送システム1では、循環経路3の内部空間3cに多孔体4が設けられている。多孔体4はアルミニウムからなり、多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、多孔体の空隙率は、75%以上90%以下である。これによると、熱移送システムの熱移送効率が向上する。この理由は、以下の通りと推察される。
【0038】
アルミニウムは常磁性体であり、その熱伝導率は、磁性流体2の熱伝導率よりも高い。よって、内部空間3cにアルミニウムからなる多孔体4が設けられている循環経路3では、内部空間3cの外部からの熱が多孔体4を通じて磁性流体2に伝わりやすくなる。これにより、多孔体44を通過する磁性流体2の温度が上昇しやすい。よって、磁石5を基準として、多孔体4側(図2において高温側と示される)に存在する磁性流体2の温度と、多孔体4と反対側(図2において低温側と示される)に存在する磁性流体2の温度の差が増加し、高温側の磁性流体2の磁化と、低温側の磁性流体2の磁化の差も増加する。このため、結果として、図2に示される、低温側から高温側へ向かう磁気体積力Faと、高温側から低温側へ向かう磁気体積力Fbとの差Fa-Fbが増加する。本実施形態では、多孔体4により差Fa-Fbを大きくすることができるため、磁性流体の矢印F1方向への加速度を増加させることができる。
【0039】
一方、内部空間3cに多孔体4を設けると、多孔体4により磁性流体2の移動抵抗が増加し、矢印F1方向への加速度が減少する傾向がある。本実施形態の多孔体4は、最大細孔径が10μm以上100μm以下であり、空隙率が75%以上90%以下であるため、移動抵抗が小さい。このため、多孔体4を設けることによる、上記差Fa-Fbの増加に起因する加速度の増加量が、上記流動抵抗の増加に起因する加速度の低下量よりも大きい。よって、熱移送システム全体として、磁性流体の矢印F1の方向への加速度を増加させ、発生流量を増加させ、熱移送効率を向上させることができる。
【0040】
本実施形態の多孔体は、アルミニウムからなる。多孔体の組成は、多孔体の断面の観察像(電子顕微鏡像)に対し、電子顕微鏡(SEM)に付帯のEDX装置(SEM部分:商品名「SUPRA35VP」、カールツァイスマイクロスコピー株式会社製、EDX部分:商品名「octane super」、アメテック株式会社製)を用いて分析することにより特定することができる。
【0041】
本実施形態の多孔体は、本開示の効果を損なわない範囲において、不純物を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態の多孔体は、アルミニウムと不純物とからなることができる。該不純物としては、シリコン、マグネシウム、鉄、亜鉛、スカンジウム、酸素などが挙げられる。
【0042】
本実施形態の多孔体の形状は、連通孔を有するものであれば、特に制限されない。例えば、多孔体は、複数のアルミニウム粒子が結合してなる骨格と、該アルミニウム粒子間に形成される空隙と、からなることができる。
【0043】
本実施形態の多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下である。これによると、多孔体中の空隙の少なくとも一部は、多孔体の第1の表面から、多孔体の内部を通じて、第1の表面とは異なる第2の表面まで連通している。よって、流体は多孔体の空隙を通じて、多孔体の第1の表面側から第2の表面側へ通過することができる。
【0044】
本実施形態の多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下である。多孔体の最大細孔径の下限は、磁性流体の流動抵抗の低減の観点から、10μm以上であり、30μm以上が好ましい。多孔体の最大細孔径の上限は、磁性流体との接触面積を増加し、多孔体と磁性流体との間の熱の移動を促進する観点から、100μm以下であり、70μm以下が好ましい。多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、30μm以上70μm以下が好ましい。
【0045】
多孔体の最大細孔径は、バブルポイント法により測定される。バブルポイント法の一般的な手法は、JIS K 3832-1990に記載される。最大細孔径dは式d=2γcosθ/Pにより求められる。ここで、γは試験流体の表面張力、θは試験流体と多孔体の構成物質(アルミニウム)との濡れ角、Pはバブルポイント圧力である。バブルポイント法では、測定装置としてQuantachrome社のPOROMETER 3G(商標)が用いられる。なお、バブルポイント法により多孔体の最大細孔径を測定できることは、多孔体中の空隙の少なくとも一部が、多孔体の第1の表面から、多孔体の内部を通じて、第1の表面とは異なる第2の表面まで連通していることを示す。
【0046】
本実施形態の多孔体の空隙率は、75%以上90%以下である。これによると、多孔体と磁性流体との間の熱の移動量が大きくなり、磁性流体の加速度を増加させることができる。多孔体の空隙率の下限は、磁性流体の流動抵抗の低減の観点から、75%以上であり、80%以上が好ましく、83%以上がより好ましい。多孔体の空隙率の上限は、磁性流体との接触面積を増加し、多孔体と磁性流体との間の熱の移動を促進する観点から、90%以下であり、88%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。多孔体の空隙率は、75%以上90%以下であり、80%以上88%以下が好ましく、83%以上85%以下がより好ましい。
【0047】
多孔体の空隙率は次式で定義される。
空隙率[%]=(空隙の体積[cm]/多孔体の体積[cm])×100
上記空隙の体積の測定方法は、JIS R1655:2003「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法」に規定される水銀圧入法により測定される。上記多孔体の体積とは、骨格および空隙の合計体積である。
【0048】
多孔体の熱伝導率は、15W/mK以上が好ましい。これによると、内部空間の外部からの熱が多孔体を通じて磁性流体により伝わりやすくなる。多孔体の熱伝導率の下限は、15W/mK以上が好ましく、20W/mK以上がより好ましく、25W/mK以上が更に好ましい。多孔体の熱伝導率の上限は特に制限されないが、例えば、製造上の観点から、50W/mK以下とすることができる。多孔体の熱伝導率は、15W/mK以上50W/mK以下が好ましく、20W/mK以上50W/mK以下がより好ましく、25W/mK以上50W/mK以下が更に好ましい。
【0049】
多孔体の熱伝導率の測定方法は、以下の通りである。測定用サンプルを準備する。φ10mm×2.2mmtに加工した多孔材の上下の表面(円部分)を、酸素濃度10000ppmとした非酸化の室温雰囲気でエメリ紙を用いて0.1mm分研磨して、厚み2.0mmとする。削りくずをエアブロー等で除去したうえで、φ10mm×厚み20μmの純アルミニウム箔を、多孔体の上下面(研磨面)に接触させる。この状態で、ハンドプレスで50kgfの加重を加えることにより、アルミニウム箔を多孔体に密着させて測定用サンプルを得る。
【0050】
上記測定用サンプルを用いて、レーザフラッシュ法で熱伝導率が測定される。具体的には、NETZSCH社製のLFA457MicroFlash(商標)を用いて熱拡散係数が測定されるとともに、該熱拡散係数並びに各構成材料の体積比及び比熱に基づいて厚み方向の熱伝導率が算出される。
【0051】
上記の熱伝導率の算出に際して、各構成材料の比熱は、日本金属学会編「金属データブック第4版」(2004年、丸善出版)に基づいて決定される。空隙は空気として取り扱うことができ、その比熱は1.0kJ/(kg・K)として計算する。また、熱伝導率の測定に先立って同一形状の純銅試料の熱伝導率を同一条件下で測定し、その結果をリファレンスとして用いて測定結果の補正を行う。
【0052】
評価対象とする多孔体の平面形状がφ10mmの円形よりも小さい場合は、複数の試料を切り出し、表面が同一平面になるように整列させることによって50mm以上の測定面積を確保して評価してもよい。
【0053】
本実施形態の多孔体4の製造方法の一例について以下に説明する。本実施形態の多孔体の製造方法は、準備工程、混合工程、焼結工程、及び、洗浄工程を含むことができる。
【0054】
≪準備工程≫
アルミニウム粉末(Al粉末)と、塩化ナトリウム粉末(NaCl粉末)を準備する。Al粉末の平均粒径は、5μm以上30μm以下が好ましい。NaCl粉末の平均粒径は、30μm以上500μm以下が好ましい。該平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Sympatec GmbH社製のHELOS(商標)など)で測定される。
【0055】
≪混合工程≫
次に、Al粉末と、NaCl粉末とを混合して、混合粉末を得る。Al粉末とNaCl粉末との混合比は、製造する多孔体の空隙率に応じて、適宜調整することができる。例えば、混合粉末中のNaCl粉末の百分率は70質量%以上88質量%以下が好ましい。
【0056】
混合粉末をφ100mm、肉厚1mmの円筒状ガラス容器に、乾燥した雰囲気下で封入し、ガラス容器の軸方向を回転軸として138rpmの条件で10分間混合する。混合には例えば回転ミルやボールミルを用いることができる。またAl粉末およびNaCl粉末を均一に混合できる場合には、W型混合機、V型混合機、ドラム型混合機を用いてもよい。混合粉末が粉塵爆発する恐れがある場合には、ガラス容器内の雰囲気を、低酸素雰囲気や不活性雰囲気に置換してもよい。
【0057】
≪焼結工程≫
次に、混合粉末をグラファイト製の成形型に装填し、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering)装置などをもちいて加圧焼結を行い、焼結体を得る。加圧焼結の条件は、温度500~650℃、圧力5~80MPa、時間1~60分とする。
【0058】
≪洗浄工程≫
得られた焼結体を水中に浸漬し、NaClを水中に溶出させる。これにより、焼結体中でNaClの存在していた領域が空隙となり、本実施形態のアルミニウムからなる多孔体を得ることができる。
【0059】
本実施形態において、多孔体4は、受熱領域6に設けられ、受熱領域6の体積に対する多孔体4の占める体積は30%以上であることが好ましい。これによると、多孔体4から磁性流体2への熱の移動量が増加し、磁性流体の加速度が更に向上し、熱移送システム全体の発生流量が更に向上し、熱移送効率が更に向上する。
【0060】
受熱領域6の体積に対する多孔体4の占める体積の下限は、熱移送効率向上の観点から、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。受熱領域6の体積に対する多孔体4の占める体積の上限は、100%以下とすることができる。受熱領域6の体積に対する多孔体4の占める体積は、30%以上100%以下が好ましく、40%以上100%以下がより好ましく、90%以上100%以下が更に好ましい。
【0061】
循環経路3の流路壁3aの内壁3bと、多孔体4とは互いに接触してることが好ましい。これによると、多孔体4から磁性流体2への熱の移動量が増加し、磁性流体の加速度が更に向上し、熱移送システム全体の発生流量が更に向上し、熱移送効率が更に向上する。なお、本開示の効果を損なわない限りにおいて、上記内壁3bと多孔体4とが接触していない構成も本開示の権利範囲に含まれる。このような構成としては、例えば、内壁3bと多孔体4との間に非常に小さい間隙が存在する場合や、内壁3bと多孔体4との間に、非常に熱伝導度の高い別の部材が間に挟まれている場合が挙げられる。
【0062】
≪受熱領域≫
本実施形態の熱移送システム1において、受熱領域6とは、内部空間3cの外部からの熱を磁性流体2が受ける領域である。熱移送システム1の駆動時において、受熱領域6に存在する磁性流体2の温度は、該磁性流体2の磁化が、磁石5を基準として、受熱領域6と反対側(受熱領域6よりも低温側)に存在する磁性流体2の磁化よりも小さくなる温度である。これによると、磁性流体2は、低温側から高温側(受熱領域6側)へ移動する。
【0063】
≪放熱領域≫
本実施形態の熱移送システム1において、放熱領域7とは、内部空間3cの外部に磁性流体2が熱を放出する領域である。熱移送システム1の駆動時において、放熱領域7に存在する磁性流体2の温度は、該磁性流体2の磁化が、受熱領域6に存在する磁性流体2の磁化よりも大きくなる温度である。これによると、磁石5を基準として、受熱領域6と反対側(低温側)に存在する磁性流体2の磁化が、受熱領域6側(高温側)に存在する磁性流体2の磁化よりも大きくなり、磁性流体2の低温側から高温側への移動が促進される。
【0064】
<磁性流体>
本実施形態の熱移送システム1は、循環経路3の内部空間3cに充填された磁性流体2を含むことができる。磁性流体2とは、強磁性微粒子の表面を親溶媒化処理し、水や油類からなる流体基材に安定に分散させたものである。本実施形態において、強磁性微粒子としては、マグネタイト(Fe)やスピネル型フェライト(MeO・Fe:Meは亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マンガン(Mn)またはMnZn1-x)などの酸化鉄系微粒子からなる感温性磁性粒子を用いることができる。流体基材としては、水、炭化水素からなる炭化水素系オイル(ケロシン、アルキルナフタレンなど)、フッ素系オイル(パーフルオロポリエーテルなど)を用いることができる。
【0065】
本実施形態において、磁性流体2は、炭化水素からなる流体基材と、感温性磁性粒子とを含み、該感温性磁性粒子は、温度50℃付近において、温度上昇に伴い磁化が著しく減少する性質を有するものが好ましい。例えば、感温性磁性粒子は、25℃での飽和磁化が100℃での飽和磁化に対し、3倍以上となる酸化鉄系微粒子であることが好ましい。該感温性磁性粒子を含む磁性流体2を用いることにより、60℃~90℃の温度域における温度上昇に伴って、矢印F1の方向への加速度を効率的に増加させることができる。磁性流体としては、市販されているものを使用することができる。例えば、上記特性を有する磁性流体として、フェローテックマテリアルテクノロジー社のTC3030Sが挙げられる。
【0066】
<磁石>
本実施形態の熱移送システム1は、磁性流体2に磁場を印加して磁性流体2を所定の循環方向に循環させる磁石5を備えることができる。図1および図2では、1組の磁石5が、受熱領域6の左側に循環経路3を挟んで同極が対向するように配置されている。これによると、矢印F1の方向への駆動力が生じ、該方向に磁性流体2が移動する。
【0067】
本実施形態において磁石5の配置は上記に限定されない。例えば、図1および図2において、1組の磁石5は、受熱領域6の右側に循環経路3を挟んで同極が対向するように配置されることができる。これによると、矢印F1と反対側の方向への駆動力が生じ、該方向に磁性流体2が移動する。また、1組の磁石に代えて、1つの磁石を配置することもできるし、複数の磁石を組み合わせて配置することもできる。
【0068】
磁石5としては、永久磁石および電磁石のいずれも用いることができる。本実施形態においては、永久磁石を用いることが好ましい。これによると、外部からの電力供給が不要である。
【0069】
永久磁石としては、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石などを用いることができる。永久磁石の形状は、特に限定されず、例えば、角柱、円柱、楕円柱とすることができる。受熱部の温度で熱減磁を起こさない耐熱性の良い磁石を選択することや、反磁界の影響が小さい形状の磁石を選択することが好ましい。
【0070】
<加熱部>
本実施形態の熱移送システム1は、循環経路3の内部空間3cの外部に設けられ、受熱領域6に存在する磁性流体2に熱を与える加熱部8をさらに備えることができる。加熱部8の加熱手段は特に限定されない。例えば、電気ヒーター、エアーヒーター、及び、ランプヒーターなどの直接的な熱源や太陽光やエンジン、熱処理炉などから回収される廃熱などを用いることができる。
【0071】
図1では、加熱部8は磁石5の右側を加熱して、図2の矢印Fbで示される方向の磁気体積力を減少させることにより、矢印F1方向の駆動力が生じる。逆に、図1において、加熱部8が磁石5の左側を加熱すると、矢印F1方向と反対方向の駆動力が生じる。磁石5と加熱部8との位置関係を調整することにより、磁性流体の駆動方向を制御することができる。
【0072】
<冷却部>
本実施形態の熱移送システム1は、循環経路3の内部空間3cの外部に設けられ、放熱領域7に存在する磁性流体2から熱を奪う冷却部9をさらに備えることができる。冷却部9の冷却手段は特に限定されない。例えば、ラジエータなどの冷媒との熱交換機構や、冷却ファンによる強制空冷などを用いることができる。
【0073】
[付記1]
磁性流体が循環する循環経路を備え、
前記循環経路は、
前記磁性流体を循環させる内部空間を規定する流路壁と、
前記内部空間に設けられた多孔体と、を含み、
前記多孔体は、アルミニウムからなり、
前記多孔体の最大細孔径は、10μm以上100μm以下であり、
前記多孔体の空隙率は、75%以上90%以下である、熱移送システム。
【0074】
[付記2]
前記内部空間に充填された磁性流体と、
前記磁性流体に磁場を印加して前記磁性流体を所定の循環方向に循環させる磁石と、をさらに備え、
前記循環経路は、
前記内部空間の外部からの熱を前記磁性流体が受ける領域である受熱領域と、
前記内部空間の外部に前記磁性流体が熱を放出する領域である放熱領域と、を含む、付記1に記載の熱移送システム。
【0075】
[付記3]
前記内部空間の外部に設けられ、前記受熱領域に存在する前記磁性流体に熱を与える加熱部をさらに備え、
前記多孔体は、前記受熱領域に設けられ、
前記受熱領域の体積に対する前記多孔体の占める体積は30%以上である、付記2に記載の熱移送システム。
【0076】
[付記4]
前記流路壁の内壁と前記多孔体とは互いに接触している、付記1から付記3のいずれかに記載の熱移送システム。
【0077】
[付記5]
前記磁性流体は、炭化水素からなる流体基材と、感温性磁性粒子とを含み、
前記感温性磁性粒子は、25℃での飽和磁化が100℃での飽和磁化に対し、3倍以上となる酸化鉄系微粒子である、付記2または付記3に記載の熱移送システム。
【0078】
[付記6]
前記内部空間の外部に設けられ、前記放熱領域に存在する前記磁性流体から熱を奪う冷却部をさらに備える、付記2、付記3または付記5に記載の熱移送システム。
【実施例0079】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0080】
<多孔体の製造>
≪準備工程≫
アルミニウム粉末(Al粉末)、及び、塩化ナトリウム粉末(NaCl粉末)を準備した。各粉末の平均粒径は、表1に記載される通りである。
【0081】
≪混合工程≫
Al粉末と、NaCl粉末とを、表1の「混合工程」欄に記載の量で混合して、混合粉末を得た。混合粉末をφ100mm、肉厚1mmの円筒状ガラス容器に、乾燥した雰囲気下で封入し、回転ミルを用いて、ガラス容器の軸方向を回転軸として138rpmの条件で10分間混合した。
【0082】
≪焼結工程≫
次に、混合粉末をグラファイト製の成形型に装填し、放電プラズマ焼結装置をもちいて加圧焼結を行い、焼結体を得た。加圧焼結の条件は、温度580℃、圧力30MPa、時間10分とした。
【0083】
≪洗浄工程≫
次に、焼結体を水中に浸漬し、NaClを水中に溶出させ、各試料の多孔体を得た。試料1~試料5、試料1-1~試料1-4では、多孔体の形状は円柱である。これらの多孔体の底面の径および高さは、表1の「多孔体」の「外径」および「高さ」欄に示される通りである。試料6および試料7では、多孔体の形状は円筒である。これらの多孔体の底面の外径および内径ならびに高さは、表1の「多孔体」の「外径」、「内径」および「高さ」欄に示される通りである。
【0084】
【表1】
【0085】
<多孔体の評価>
得られた多孔体について、最大細孔径、空隙率及び熱伝導率を測定した。各項目の測定方法は、実施形態1に記載の通りであるため、その説明は繰り返さない。結果を表1に示す。
【0086】
<熱移送システムの作製>
各試料の多孔体を、図1に示される構成を有する熱移送システム1の受熱領域6の内部空間3cに配置して、各試料の熱移送システム1を作製した。この際、流路壁3aの内壁3bと多孔体4とは、少なくとも一部が互いに接触するように配置した。
【0087】
該熱移送システム1の循環経路3の流路壁3aの材質はポリテトラフルオロエチレンである。磁性流体2の循環方向に対して垂直な断面における内部空間3cの断面の形状は楕円形であり、該断面の最大径は2.0mm、最小径は1.6mm、断面積は2.0mmである。
【0088】
磁性流体2としては、市販の感温性磁性流体(フェローテックマテリアルテクノロジー社製の「TC3030S」(商標))を用いた。
【0089】
磁石5としては、市販のネオジム磁石(N52材)を用いた。加熱部8としては、電気ヒーターを用いた。放熱領域7は流路壁の材質を酸化アルミニウムとして、さらに冷却部9である金属板(アルミ板)に接触させた。
【0090】
試料1-5では、熱移送システムに多孔体を装填しなかった。
【0091】
<熱移送システムの熱移送効率評価試験>
加熱部8を作動して受熱領域6に存在する磁性流体2に熱を与えて、熱移送システム1を駆動させて、発生流量をSensirion社製のフローセンサSLI-2000(商標)で測定した。加熱部8の電力が0.12Wの時の熱移送システムの発生流量を表1に示す。発生流量が大きいほど、熱移送効率が優れていることを示す。本開示では、該熱移送効率評価試験において、熱移送システムの発生流量が、多孔体を装填しない試料1-5の熱移送システムの発生流量に比べて10%以上増加する場合、該熱移送システムは優れた熱移送効率を有すると判断される。
【0092】
<考察>
試料1~試料7の熱移送システムは、実施例に該当する。試料1-1~試料1-5の熱移送システムは、比較例に該当する。試料1~試料7の熱移送システム(実施例)は、多孔体を装填しない場合(試料1-5)に比べて、発生流量が10%以上大きく、熱移送効率が優れていることが確認された。
【0093】
試料1-1の熱移送システムは多孔体を備えるが、試料1-5の熱移送システムよりも発生流量が小さかった。これは、試料1-1の多孔体の最大細孔径が10μm未満であるため、多孔体の両端側における磁性流体の温度差による加速度の増加量よりも、多孔体が存在することによる磁性流体の移動抵抗による加速度の減少量が大きかったためと推察される。
【0094】
試料1-2の熱移送システムは多孔体を備えるが、試料1-5の熱移送システムに対する発生流量の増加率が10%未満であった。これは、試料1-2の多孔体の最大細孔径が100μm超であるため、磁性流体との接触面積が小さく、多孔体と磁性流体との間の熱の移動が不十分であったためと推察される。
【0095】
試料1-3の熱移送システムは多孔体を備えるが、試料1-5の熱移送システムよりも発生流量が小さかった。これは、試料1-3の多孔体の空隙率が75体積%未満であり、多孔体の両端側における磁性流体の温度差による加速度の増加量よりも、多孔体が存在することによる磁性流体の移動抵抗による加速度の減少量が大きかったためと推察される。
【0096】
試料1-4の熱移送システムは多孔体を備えるが、試料1-5の熱移送システムに対する発生流量の増加率が10%未満であった。これは、試料1-4の多孔体の空隙率が90%超であるため、多孔体の熱伝導率が低くなり加熱部から管中心部付近への磁性流体への熱の移動が不十分であったためと推察される。
【0097】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0098】
1 熱移送システム
2 磁性流体
3 循環経路
3a 流路壁
3b 内壁
3c 内部空間
4 多孔体
5 磁石
6 受熱領域
7 放熱領域
8 加熱部
9 冷却部
図1
図2