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特開2024-34824カルバゾール誘導体及びそれを用いたペロブスカイト太陽電池
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  • 特開-カルバゾール誘導体及びそれを用いたペロブスカイト太陽電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034824
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】カルバゾール誘導体及びそれを用いたペロブスカイト太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6561 20060101AFI20240306BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240306BHJP
   H10K 30/50 20230101ALN20240306BHJP
【FI】
C07F9/6561 Z CSP
H10K30/40
H10K30/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139334
(22)【出願日】2022-09-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代型太陽電池の開発/次世代型太陽電池基盤技術開発事業/次世代型ペロブスカイト太陽電池の実用化に資する共通基盤技術開発 」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩木 敬
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】近松 真之
【テーマコード(参考)】
4H050
5F151
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB91
5F151AA11
5F151AA20
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】
【課題】ペロブスカイト太陽電池のp型バッファ層に用いることができる化合物を提供し、さらにはこの化合物を用いた良好なペロブスカイト太陽電池を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表されるカルバゾール誘導体。
【化1】

(一般式(I)中、Ar及びArはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、aは1~4の整数である;bは0~4の整数である;cは1~6の整数である;Xはリン酸基、カルボキシ基、若しくはスルホン基、又はこれらの塩に相当する基である)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるカルバゾール誘導体。
【化1】

(一般式(I)中、Ar及びArはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、aは1~4の整数である;bは0~4の整数である;cは1~6の整数である;Xはリン酸基、カルボキシ基、若しくはスルホン基、又はこれらの塩に相当する基である)
【請求項2】
前記一般式(I)における置換アリール基又は置換ヘテロアリール基の置換基が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基及びヘテロ環基からなる群から選択される、請求項1に記載のカルバゾール誘導体。
【請求項3】
前記一般式(I)におけるAr及びArが、それぞれ独立に未置換のアリール基、又は未置換のヘテロアリール基である、請求項1に記載のカルバゾール誘導体。
【請求項4】
前記一般式(I)におけるXが、リン酸基若しくはその塩に相当する基である、請求項1に記載のカルバゾール誘導体。
【請求項5】
前記一般式(I)におけるAr及びArが、それぞれ独立に置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、前記ヘテロアリール基が、環原子として炭素原子以外に窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を1から4個含有する、請求項1に記載のカルバゾール誘導体。
【請求項6】
一般式(II)~(VI)で表される、請求項1に記載のカルバゾール誘導体。
【化2】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のカルバゾール誘導体を備える光電変換素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換素子を備える、ペロブスカイト太陽電池。
【請求項9】
請求項7に記載の光電変換素子を備える、フォトダイオード。
【請求項10】
請求項7に記載の光電変換素子を備える、光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペロブスカイト太陽電池の性能を向上するための機能性材料として用いる新規化合物、及びそれを用いた太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光を効率よく電気に変換できる太陽電池はエネルギー・環境問題の観点から注目されている。実用化されている太陽電池は主にシリコンを用いるものであるが、これらの太陽電池は製造コストが高く、一般家庭に広く普及するには至っていない。また、耐荷重の問題などで設置場所が制限されることもある。今後、再生可能エネルギーを主力電源化するためには、太陽光発電施設のさらなる導入拡大が不可欠であり、シリコン系太陽電池に変わる新しいタイプの太陽電池の研究が進められている。有機系太陽電池は、資源的制約が少ないこと、製造コストが比較的低いこと、軽量・フレキシブルなどの利点があり、その普及が期待されている。しかしながら、エネルギー変換効率や耐久性等の面でシリコン系太陽電池に劣っており、実用化に向けた課題が残っている。
【0003】
有機系太陽電池の一つであるペロブスカイト太陽電池は、2009年に溶液型の電池が報告され(非特許文献1)、その後、2012年に固体型の電池が報告されるとエネルギー変換効率が急速に進展した(非特許文献2)。ペロブスカイト太陽電池の基本構造は、通常図1のように、透明電極の上に、光吸収層(ペロブスカイト層)をn型及びp型のバッファ層で挟んだ構造である。n型バッファ層としては、酸化チタンからなる緻密なチタニアの膜が用いられることが多く、p型バッファ層としては、有機半導体の正孔輸送材料が一般的に用いられている。
【0004】
高いエネルギー変換効率が得られるペロブスカイト太陽電池の正孔輸送材料として一般には、spiro-OMeTADやPTAAが用いられているが、これらの化合物は非常に高価であり太陽電池として実用化するために面積を大きくする場合に製造コストが高くなってしまう。そのため、安価で高効率な正孔輸送材料の開発が求められている。
【0005】
そのような正孔輸送材料として、例えば非特許文献3には、下記化学式で表される自己組織化単分子膜を形成可能なカルバゾール誘導体が報告されている。この化合物を、「化合物1」、「化合物2」、及び「化合物3」という。化合物2、及び化合物3を用いた太陽電池は、化合物1を用いた太陽電池と比べるとのエネルギー変換効率が下がっており、性能向上のための構造修飾が達成されているとは言えない。自己組織化単分子膜を形成可能な化合物の導入はコスト低減にも貢献できることからペロブスカイト太陽電池の実用化に有用と言えるが、それを実現しうる化合物はほとんど報告されていないのが現状であり、さらに優れた材料の開発が求められている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. (2009) Vol.131, p.6050-6051
【非特許文献2】Science (2012) Vol.388, p.643-647
【非特許文献3】Energy Environ. Sci., 2019, 12, 3356-3369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術における上記の状況に鑑みてなされたものであり、ペロブスカイト太陽電池のp型バッファ層に用いることができる化合物を提供し、さらにはこの化合物を用いた良好なペロブスカイト太陽電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、新規カルバゾール誘導体をペロブスカイト太陽電池のp型バッファ層に導入することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]~[10]に関する。
[1]一般式(I)で表されるカルバゾール誘導体。
【化2】

(一般式(I)中、Ar及びArはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、aは1~4の整数である;bは0~4の整数である;cは1~6の整数である;Xはリン酸基、カルボキシ基、若しくはスルホン基、又はこれらの塩に相当する基である)
[2]前記一般式(I)における置換アリール基又は置換ヘテロアリール基の置換基が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基及びヘテロ環基からなる群から選択される、[1]に記載のカルバゾール誘導体。
[3]前記一般式(I)におけるAr及びArが、それぞれ独立に未置換のアリール基、又は未置換のヘテロアリール基である、[1]に記載のカルバゾール誘導体。
[4]前記一般式(I)におけるXが、リン酸基若しくはその塩に相当する基である、[1]~[3]のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
[5]前記一般式(I)におけるAr及びArが、それぞれ独立に置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、前記ヘテロアリール基が、環原子として炭素原子以外に窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を1から4個含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
[6]一般式(II)~(VI)で表される、[1]~[5]のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【化3】

[7][1]~[6]のいずれかに記載のカルバゾール誘導体を備える光電変換素子。
[8][7]に記載の光電変換素子を備える、ペロブスカイト太陽電池。
[9][7]に記載の光電変換素子を備える、フォトダイオード。
[10][7]に記載の光電変換素子を備える、光センサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカルバゾール誘導体によれば、ペロブスカイト太陽電池のp型バッファ層に導入することにより、良好な変換効率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のペロブスカイト太陽電池の一例を、模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
本発明において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0014】
[カルバゾール誘導体]
本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体(以下、単に「カルバゾール誘導体」ともいう)は、一般式(I)で表されるカルバゾール誘導体であって、種々の化合物となることができる。
【0015】
【化4】

(一般式(I)中、Ar及びArはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、aは1~4の整数である;bは0~4の整数である;cは1~6の整数である;Xはリン酸基、カルボキシ基、若しくはスルホン基、又はこれらの塩に相当する基である)
【0016】
カルバゾール誘導体は、好ましくは一般式(I´)で表される化合物である。
【0017】
【化5】

(一般式(I´)中、Ar及びArはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、aは1~4の整数である;bは0~4の整数である;cは1~6の整数である;Xはリン酸基、カルボキシ基、若しくはスルホン基、又はこれらの塩に相当する基である)
【0018】
一般式(I)及び一般式(I´)におけるaは好ましくは1~2の整数であり、より好ましくは1である。bは好ましくは1~2の整数であり、より好ましくは1である。cは好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2である。また、カルバゾール誘導体は、好ましくは一般式(I´)で表される化合物である。
【0019】
カルバゾール誘導体は、p型バッファ層において、少なくとも一種を導入することができ、複数種を導入することも可能である。
【0020】
一つの実施形態において、一般式(I)及び一般式(I´)におけるAr及びArは、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のヘテロアリール基である。ここで、用語「アリール」とは、炭素数6~14のアリール(C6-14アリール)を意味する。アリール基は、特に限定されないが、例えばフェニル、ナフチル、又はオルト融合した二環式の基で8~10個の環原子を有し少なくとも一つの環が芳香環であるもの(例えばインデニル等)等が挙げられる。
【0021】
また、用語「ヘテロアリール」とは、環原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される1~3種のヘテロ原子を1から4個含有する5~7員の芳香族複素環(単環式)基を意味し、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾールなどに由来する基でありうる。具体的には、フリル、チエニル、ピロリル、チアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリジニウム、ピリミジニル、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニル、ピリダジニウム、トリアジニル、トリアジニウム、 アゼピニル、ジアゼピニル等が挙げられ
る。また、「ヘテロアリール」には、環原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及
び酸素原子から選択される1~3種のヘテロ原子を1から4個含有する5~7員の芳香族複素環がベンゼン環又は上記芳香族複素環(単環式)基に縮合してなる芳香族複素環(2環式又はそれ以上)から誘導される基も含まれ、例えば、インドリル、イソインドリル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、キノリル、イソキノリル等である。
【0022】
一般式(I)及び一般式(I´)におけるAr及びArは、それぞれ独立に置換若しくは未置換のヘテロアリール基であって、前記ヘテロアリール基は、環原子として炭素原子以外に窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を1から4個含有することが好ましい。
【0023】
他の実施形態では、ArとArは置換基を有してもよく、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基などが挙げられる。置換基としてより好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基などが挙げられる。
【0024】
用語「アルキル」とは、通常、炭素数1~15で直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(C1-15アルキル)を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル又はペンチルなどのC1-6アルキルが挙げられ、より好ましくはメチル又はエチルが挙げられ、最も好ましくはメチルである。
【0025】
また、「アルケニル」とは、例えば直鎖状又は分枝鎖状の炭素数2~10のアルケニル(C2-10アルケニル)が挙げられる。具体的には、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、メタクリル、ブテニル、クロチル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等である。
【0026】
さらに、「アルキニル」とは、例えば直鎖状又は分枝鎖状の炭素数2~10のアルキニル(C2-10アルキニル)が挙げられる。具体的には、エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等である。
【0027】
さらにまた、「アルコキシ」とは、例えば直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~6のアルコキシ(C1-6アルコキシ)が挙げられる。具体的には、メトキシ、エトキシである。また、「ハロアルコキシ」としては、一つ以上のハロゲン原子で置換された上記C1-6アルコキシが挙げられる。
【0028】
置換基の炭素数としては、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3である。ArとArにおける置換基の置換位置は、特に限定されない。
【0029】
一般式(I)及び一般式(I´)におけるXは、リン酸基、カルボキシ基、若しくはスルホン基、又はこれらの塩に相当する基等が挙げられる。
【0030】
カルバゾール誘導体の具体例として、例えば、以下の一般式(II)~(XI)で表される化合物を挙げることができる。なお、以下の一般式におけるHexはヘキシル基である。
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
カルバゾール誘導体の製造方法は、例えば、本発明の化合物10であれば、2-チオフェンボロン酸と3,6-ジブロモカルバゾールを予め反応させて、後述する実施例2で合成する化合物8のような骨格を合成し、さらにこれを2-ブロモエチルホスホン酸ジエチルと反応させた後、ブロモトリメチルシランで処理することにより得ることができる。その他のカルバゾール誘導体についても、上記製造方法及び通常の有機化学合成手法に基づいて得ることができる。
【0034】
[光電変換素子]
カルバゾール誘導体は、光電変換素子のp型バッファ層に導入する化合物として用いることができる。本発明の一実施形態に係る光電変換素子(以下、単に「光電変換素子」ともいう)は、p型バッファ層にカルバゾール誘導体を導入する以外は、通常の光電変換素子の構造を有するものであってよい。具体的には、例えば図1に示すように、導電性支持体上に導電層を有し、さらに導電層上にp型バッファ層を有し、p型バッファ層上にペロブスカイト化合物を含む光吸収層を有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極(n型バッファ層と対極)とを有する光電変換素子であって、導電層とカルバゾール誘導体を含む溶液を接触させることにより、p型バッファ層にカルバゾール誘導体が導入されている光電変換素子が挙げられる。
光電変換素子は、例えば、ペロブスカイト太陽電池、フォトダイオード、光センサなど
に用いることができる。
【0035】
光電変換素子は、p型バッファ層にカルバゾール誘導体を導入する以外は、通常の光電変換素子の製造方法により製造することができる。導電層の表面にカルバゾール誘導体を導入するには、カルバゾール誘導体を含有する液を用いる。この液は、液状のカルバゾール誘導体自体であってもよく、カルバゾール誘導体を含有する溶液でも懸濁液(分散液)であってもよい。溶媒又は分散媒は、カルバゾール誘導体を溶解又は分散できるものであれば特に限定されず、例えば、エタノールを好ましく用いることができる。カルバゾール誘導体の液中の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.001~500mMが好ましく、0.01~50mMがより好ましい。
【0036】
調製した液を導電層の表面に接触させる方法は、特に限定されず、例えば、導電層の表面に液を塗布する方法が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されないが、例えばスピンコート法、スクリーン印刷法、浸漬法などが挙げられる。塗布の温度は、0~50℃が好ましい。
【0037】
塗布後は、液を乾燥することが好ましい。乾燥条件は特に限定されない。乾燥温度は、例えば、20~200℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。乾燥時間は、例えば1分~5時間が好ましく、3分~1時間がより好ましい。
【0038】
導電層の表面上の本発明のカルバゾール誘導体の存在量は、カルバゾール誘導体の種類、目的とする性能等に応じて適宜調整でき、特に限定されないが、例えば、0.0001mg/m~100mg/mが好ましく、0.001mg/m~10mg/mがより好ましい。
【0039】
また、p型バッファ層には、本発明のカルバゾール誘導体以外の材料を含んでいてもよい。従来からp型バッファ層に含ませることができる正孔輸送材料、添加剤、及び酸化剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含めることができる。
【0040】
[ペロブスカイト太陽電池]
カルバゾール誘導体は、例えばペロブスカイト太陽電池のp型バッファ層に導入する化合物として用いることができる。本発明の一実施形態に係るペロブスカイト太陽電池(以下、単に「ペロブスカイト太陽電池」ともいう)は、p型バッファ層にカルバゾール誘導体を導入する以外は、通常のペロブスカイト太陽電池の構造を有するものであってよい。すなわち、導電性支持体、導電層、ペロブスカイト層(光吸収層)、n型バッファ層(電子輸送層)、及び対極は周知のものを用いることができる。ペロブスカイト太陽電池は、p型バッファ層にカルバゾール誘導体を導入する以外は、通常のペロブスカイト太陽電池の製造方法により製造することができる。
【0041】
導電性支持体としては、表面に導電層を有するガラス又はプラスチックなどを好適に用いることができる。導電層としては、金、白金、銀、銅、インジウムなどの金属、導電性カーボン、又はインジウム錫複合化合物、酸化錫にフッ素をドープしたものなどが挙げられる。これらの導電材料を用いて、常法により支持体表面に導電層を形成することができる。また、導電性支持体を受光面とする場合は透明であることが好ましい。
【0042】
n型バッファ層を構成する材料は特に限定されず、例えば、フラーレン及びその誘導体、キノン化合物、イミド化合物などを挙げることができる。n型バッファ層の形成方法は問わないが、例えば、スプレー熱分解法による成膜、スピンコーティング法による成膜、真空蒸着法による成膜方法による製造などが挙げられる。
【0043】
ペロブスカイト層としては、組成式ABXで示されるペロブスカイト化合物を少なくとも一種含有していればよく、二種以上のペロブスカイト化合物を含有していてもよい。光吸収層は単層であっても二層以上の積層であってもよい。二層以上の積層構造である場合は、それぞれの層の間に正孔輸送材料などの中間層を積層してもよい。Aは1価のカチオンであり、例えばメチルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン、アルカリ金属カチオンが挙げられる。Bは2価のカチオンであり、例えば鉛カチオン、ゲルマニウムカチオン、スズカチオンなどが挙げられる。Xはハロゲンアニオンなどの1価のアニオンである。ペロブスカイト層は、溶液による塗布法や、共蒸着法などにより形成することができる。
【0044】
対極は導電性を有している限り特に制限はないが、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、タングステン、モリブテン、タンタル、チタン、ニオビウムなどが挙げられる。これらの導電材料を用いて、常法により対極を形成することができる。
【0045】
光電変換素子及び太陽電池の製造方法に使用する溶媒又は分散媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール溶媒、クロロホルム、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの有機溶媒、ならびに、それらの混合溶媒である。好ましくは、エタノールである。
【実施例0046】
以下に、本発明について実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
3,6-ジブロモカルバゾール(3.00 g)、3-チオフェンボロン酸(2.60 g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.07 g)を1,2-ジメトキシエタン(75 mL)に溶解した。この混合物に2 Mの炭酸ナトリウム水溶液(75 mL)を加えて加熱還流した。室温まで冷却後、水とジクロロメタンを加え、分液した。有機層を濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、3.01 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この
生成物は、下記式で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物4」という。
【0048】
【化8】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.33 (2H, d, 1.8), 8.09 (1H, br), 7.70 (2H, dd, 8.4,
1.8), 7.52 (2H, dd, 4.9, 1.4), 7.50 (2H, dd, 3.0, 1.4), 7.47-7.43 (4H, m)
【0049】
化合物4(1.10 g)、1,2-ジブロモエタン(24.9 g)、テトラブチルアンモニウムブ
ロミド(0.107 g)を水酸化カリウム水溶液(50%、9.7 mL)に溶解し、70℃で加熱攪拌した。室温まで冷却後、水とジクロロメタンを加え、分液し、1.57 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるものであることがわかった。こ
の生成物を、「化合物5」という。
【0050】
【化9】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.34 (2H, d, 1.7), 7.75 (2H, dd, 8.5, 1.7), 7.52-7.49 (4H, m), 7.46-7.43 (4H, m), 4.73 (2H, t, 7.4), 3.72 (2H, t, 7.4)
【0051】
化合物5(1.40 g)に亜りん酸トリエチル(22.2 mL)を加え加熱還流した。亜りん酸
トリエチルを減圧留去した後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、1.11 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるものであること
がわかった。この生成物を、「化合物6」という。
【0052】
【化10】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.33 (2H, d, 1.8), 7.75 (2H, dd, 8.4, 1.8), 7.52 (2H, dd, 5.0, 1.4), 7.49 (2H, dd, 3.0, 1.4), 7.47-7.43 (4H, m), 4.67-4.61 (2H, m), 4.11-4.07 (4H, m), 2.35-2.27 (2H, m), 1.29 (6H, t, 7.1)
【0053】
化合物6(1.00 g)、ブロモトリメチルシラン(0.680 g)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し攪拌した。反応混合物にメタノール(10 mL)を加え攪拌し、溶媒を濃縮した。
残渣に水(5 mL)を加え混合物を濃縮する操作を4回繰り返し、得られた固体を再結晶で
精製することで0.791 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式(II)で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物7」という。
【0054】
【化11】

1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ8.62 (2H, d, 1.8), 7.88-7.84 (4H, m), 7.70-7.67
(4H, m), 7.57 (2H, d, 8.5), 4.60-4.54 (2H, m), 2.11-2.03 (2H, m)
【0055】
<実施例2>
3,6-ジブロモカルバゾール(2.85 g)、2-チオフェンボロン酸(4.49 g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.01 g)を1,2-ジメトキシエタン(80 mL)に溶解した。この混合物に2 Mの炭酸ナトリウム水溶液(80 mL)を加えて加熱還流した。室温まで冷却後、水とジクロロメタンを加え、分液した。有機層を濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、1.13 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この
生成物は、下記式で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物8」という。
【0056】
【化12】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.33 (2H, d, 1.8), 8.11 (1H, br), 7.71 (2H, dd, 8.4,
1.8), 7.43 (2H, d, 8.4), 7.37 (2H, dd, 3.6, 1.2), 7.27 (2H, dd, 5.2, 1.2), 7.12
(2H, dd, 5.2, 3.6)
【0057】
化合物8(1.10 g)にジメチルスルホキシド(10 mL)を加えた後、水素化ナトリウム
(0.146 g)を加え攪拌した。この反応混合物に、2-ブロモエチルホスホン酸ジエチル(0.895 g)を加え、60℃で加熱攪拌した。室温まで冷却後、水と酢酸エチルを加え、分液
した。有機層を濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、1.27 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるものであることがわか
った。この生成物を、「化合物9」という。
【0058】
【化13】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.34 (2H, d, 1.8), 7.76 (2H, dd, 8.6, 1.8), 7.43 (2H, d, 8.6), 7.36 (2H, dd, 3.6, 1.2), 7.28 (2H, dd, 5.1, 1.2), 7.12 (2H, dd, 5.1, 3.6), 4.66-4.59 (2H, m), 4.12-4.04 (4H, m), 2.34-2.26 (2H, m), 1.28 (6H, t, 7.1)
【0059】
化合物9(1.15 g)、ブロモトリメチルシラン(0.783 g)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し攪拌した。反応混合物にメタノール(5 mL)を加え、攪拌した。溶媒を濃縮後の残渣にメタノール(30 mL)と水(100 mL)を加え攪拌し、ろ過した。得られた固体を再
結晶で精製し、0.927 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式(III)で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物10」という。
【0060】
【化14】

1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ8.61 (2H, d, 1.8), 7.81 (2H, dd, 8.5, 1.8), 7.59 (2H, d, 8.5), 7.57 (2H, dd, 3.6, 1.2), 7.51 (2H, dd, 5.1, 1.2), 7.17 (2H, dd, 5.1, 3.6), 4.60-4.54 (2H, m), 2.11-2.02 (2H, m)
【0061】
<実施例3>
水素化ナトリウム(0.181 g)にテトラヒドロフラン(20 mL)を加えた後、化合物4(1.00 g)とDMF(20 mL)を加え攪拌した。この反応混合物に、2-ブロモプロピルホスホ
ン酸ジエチル(1.17 g)を加え、80℃で加熱攪拌した。室温まで冷却後、水と酢酸エチルを加え、分液した。有機層を濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、1.68
gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるもので
あることがわかった。この生成物を、「化合物11」という。
【0062】
【化15】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.34 (2H, d, 1.7), 7.74 (2H, dd, 8.4, 1.7), 7.53 (2H, dd, 4.9, 1.4), 7.50 (2H, dd, 3.0, 1.4), 7.47 (2H, d, 8.4), 7.44 (2H, dd, 4.9, 3.0), 4.45 (2H, t, 7.0), 4.14-4.03 (4H, m), 2.29-2.18 (2H, m), 1.82-1.74 (2H,
m), 1.29 (6H, t, 7.1)
【0063】
化合物11(1.50 g)、ブロモトリメチルシラン(0.991 g)をジクロロメタン(15 mL)に溶解し攪拌した。反応混合物にメタノール(30 mL)を加え、攪拌した。溶媒を濃縮
後の残渣にメタノール(30 mL)と水(100 mL)を加え攪拌し、ろ過した。得られた固体
を再結晶で精製し、0.789 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式(IV)で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物12」という。
【化16】

1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ8.62 (2H, d, 1.8), 7.86-7.83 (4H, m), 7.71-7.67
(6H, m), 4.52 (2H, t, 6.9), 2.04-1.95 (2H, m), 1.59-1.51 (2H, m)
【0064】
<実施例4>
3,6-ジブロモカルバゾール(1.36 g)、チエノ[3,2-b]チオフェン-2-ボロン酸(1.70 g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.485 g)を1,2-ジメトキシエタン(60 mL)に溶解した。この混合物に2 Mの炭酸ナトリウム水溶液(40 mL)を加
えて加熱還流した。室温まで冷却後、水とジクロロメタンを加え、分液した。有機層を濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、0.380 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物13」という。
【0065】
【化17】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.36 (2H, d, 1.8), 8.18 (1H, br), 7.75 (2H, dd, 8.4,
1.8), 7.52 (2H, s), 7.47 (2H, d, 8.4), 7.36 (2H, d, 5.2), 7.29 (2H, d, 5.2)
【0066】
水素化ナトリウム(0.0514 g)にテトラヒドロフラン(20 mL)を加えた後、化合物1
3(0.380 g)とDMF(20 mL)を加え攪拌した。この反応混合物に、2-ブロモエチルホスホン酸ジエチル(0.315 g)を加え、80℃で加熱攪拌した。室温まで冷却後、水と酢酸
エチルを加え、分液した。有機層を濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、0.322 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物14」という。
【0067】
【化18】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.37 (2H, d, 1.8), 7.80 (2H, dd, 8.6, 1.8), 7.55 (2H, d, 0.7), 7.47 (2H, d, 8.6), 7.36 (2H, d, 5.2), 7.29 (2H, dd, 5.2, 0.7), 4.68-4.62 (2H, m), 4.12-4.05 (4H, m), 2.35-2.27 (2H, m), 1.28 (6H, t, 7.1)
【0068】
化合物14(0.300 g)、ブロモトリメチルシラン(0.378 g)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し攪拌した。反応混合物にメタノール(10 mL)を加え、攪拌した。溶媒を濃縮後の残渣にメタノール(10 mL)と水(50 mL)を加え攪拌し、ろ過した。得られた固体をDMFに加熱溶解し、ヘキサンとジクロロメタンの混合溶媒(5/1、200 mL)に投入し、得られた固体をろ過することで0.262 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式(V)で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物15」という。
【0069】
【化19】

1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ8.64 (2H, d, 2.0), 7.91 (2H, s), 7.86 (2H, dd, 8.6, 2.0), 7.66-7.63 (4H, m), 7.49 (2H, d, 5.3), 4.63-4.57 (2H, m), 2.13-2.05 (2H, m)
【0070】
<実施例5>
3,6-ジブロモカルバゾール(1.00 g)、ベンゾ[b]チオフェン-3-ボロン酸(1.21 g
)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.357 g)を1,2-ジメトキシエタン(60 mL)に溶解した。この混合物に2 Mの炭酸ナトリウム水溶液(40 mL)を加えて
加熱還流した。室温まで冷却後、水とジクロロメタンを加え、分液した。有機層を濃縮後の残渣をヘキサンとジクロロメタンの混合溶媒(2/1、150 mL)で洗浄し、1.22 gの生成
物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるものであること
がわかった。この生成物を、「化合物16」という。
【0071】
【化20】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.31 (2H, d, 1.8), 8.25 (1H, br), 8.02-7.99 (2H, m), 7.96-7.93 (2H, m), 7.69 (2H, dd, 8.3, 1.8), 7.58 (2H, d, 8.3), 7.46 (2H, s), 7.42-7.39 (4H, m)
【0072】
水素化ナトリウム(0.0712 g)にテトラヒドロフラン(10 mL)を加えた後、化合物1
6(0.500 g)とDMF(10 mL)を加え攪拌した。この反応混合物に、2-ブロモエチルホスホン酸ジエチル(0.426 g)を加え、80℃で加熱攪拌した。室温まで冷却後、水と酢酸
エチルを加え、分液した。有機層を濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、0.652 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物17」という。
【0073】
【化21】

1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.33 (2H, d, 1.7), 8.00-7.98 (2H, m), 7.96-7.94 (2H, m), 7.75 (2H, dd, 8.4, 1.7), 7.59 (2H, d, 8.4), 7.46 (2H, s), 7.42-7.40 (4H,
m), 4.77-4.71 (2H, m), 4.18-4.07 (4H, m), 2.43-2.35 (2H, m), 1.33 (6H, t, 7.1)
【0074】
化合物17(0.550 g)、ブロモトリメチルシラン(0.623 g)をジクロロメタン(5 mL)に溶解し攪拌した。反応混合物にメタノール(5 mL)を加え、攪拌した。溶媒を濃縮後の残渣にメタノール(10 mL)と水(50 mL)を加え攪拌し、ろ過した。得られた固体を再結晶で精製し、0.348 gの生成物を得た。1H-NMRで分析したところ、この生成物は、下記式(VI)で表されるものであることがわかった。この生成物を、「化合物18」という。
【0075】
【化22】

1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ8.54 (2H, d, 2.0), 8.11-8.08 (2H, m), 8.02-8.00
(2H, m), 7.83 (2H, s), 7.78-7.72 (4H, m), 7.48-7.43 (4H, m), 4.71-4.65 (2H, m), 2.19-2.11 (2H, m)
【0076】
<ペロブスカイト太陽電池の作製>
ガラス表面に透明導電性支持体である酸化インジウムスズが蒸着された透明導電性ガラスの表面に、化合物7、化合物10、化合物12、化合物15、及び化合物18を含む溶液をスピンコートした後、100℃まで加熱し、p型バッファ層を形成した。化合物7、化合物10、化合物12、化合物15、化合物18の溶液は、それぞれの化合物をエタノールに溶解し、2mMの溶液を調製し、フィルターでろ過してから用いた。
【0077】
その後、ヨウ化鉛、ヨウ化ホルムアミジニウム、臭化鉛、臭化メチルアンモニウム、及びヨウ化セシウムをN,N-ジメチルホルムアミドとジメチルスルホキシドの混合溶液(4/1)に溶解し、ペロブスカイトの前駆体溶液を調製した。上記のp型バッファ層を形成した基板上に、溶液をスピンコートし、続いてクロロベンゼンをスピンコートすることにより製膜した。上記溶液を製膜した基板を100℃まで加熱し、ペロブスカイト層(光吸収層)を形成した。
【0078】
最後に、n型バッファ層を形成した基板の上に金を蒸着し、目的の太陽電池を得た。同太陽電池は、図1に相当するものである。太陽電池性能はソーラーシュミレーター(YSS-150A、山下電装製)(AM1.5、100mWcm-2)を用いて評価した。
【0079】
表1に示す化合物を用い、上記の方法により作製した電池を用いて短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(ff)、光電変換効率(PCE)を測定し初期性能を評価した。具体的には、各化合物を用いた電池を同一条件で8個作成し、平均値を求
めた。求めた平均値を、各化合物を用いた太陽電池の初期変換効率とした。なお、表1には参考例として、一般的に用いられるPTAAと非特許文献3において報告されている化合物2について同様の評価を行った結果を併記した。また、表1におけるFWは順方向の電圧掃引であり、BWは逆方向の電圧掃引である。
【0080】
【表1】
【0081】
表1の結果から、本発明の化合物をペロブスカイト太陽電池に導入することにより、参考例と同等若しくはより良好な変換効率を達成でき、p型バッファ層に用いる化合物として有用であることがわかった。なお、初期変換効率が参考例と比べて若干減少した化合物についても、条件等の変更により良好な変換効率を達成できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明により、ペロブスカイト太陽電池のp型バッファ層に用いることができる新規カルバゾール誘導体を得ることができる。本発明の新規カルバゾール誘導体は、光電変換素子などとして用いることができる。また、本発明の光電変換素子は、ペロブスカイト太陽電池、フォトダイオード、光センサなどとして有用である。
図1