(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035161
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】マイクロポンプ用動作液体及びマイクロポンプ
(51)【国際特許分類】
C10M 171/04 20060101AFI20240306BHJP
F04B 9/00 20060101ALI20240306BHJP
C10M 105/36 20060101ALI20240306BHJP
C10M 105/38 20060101ALI20240306BHJP
C10M 147/02 20060101ALI20240306BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20240306BHJP
C10N 40/16 20060101ALN20240306BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20240306BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
C10M171/04
F04B9/00 B
C10M105/36
C10M105/38
C10M147/02
C10N20:04
C10N40:16
C10N40:00 Z
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138720
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2022137614
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】赤井 日出子
(72)【発明者】
【氏名】小川 直記
(72)【発明者】
【氏名】新竹 純
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬太
【テーマコード(参考)】
3H075
4H104
【Fターム(参考)】
3H075AA01
3H075BB08
3H075CC10
3H075CC34
3H075DB01
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104CD01C
4H104EA03A
4H104EA03C
4H104LA20
4H104PA12
4H104PA50
(57)【要約】
【課題】吐出圧力と流量を増加させることができるマイクロポンプ用動作液体と、このマイクロポンプ用動作液体を用いたマイクロポンプとを提供する。
【解決手段】分子量1000以下の絶縁性液体と、数平均分子量10000以上の高分子化合物とを含み、該絶縁性液体と該高分子化合物との合量における該高分子化合物の含有率が0.01wt%~10wt%であるマイクロポンプ用動作液体。このマイクロポンプ用動作液体を用いたマイクロポンプ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量1000以下の絶縁性液体と、
数平均分子量10000以上の高分子化合物と
を含み、
該絶縁性液体と該高分子化合物との合量における該高分子化合物の含有率が0.01wt%~10wt%であるマイクロポンプ用動作液体。
【請求項2】
前記分子量1000以下の絶縁性流体が、芳香族または脂肪族のジエステル体である請求項1のマイクロポンプ用動作液体。
【請求項3】
前記分子量1000以下の絶縁性流体が、ジブチルアジペート、ジブチルセバケート、1,6-ジアセトキシヘキサン、ジエチルへキシルアジペート、ジエチルへキシルフタレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、又はアセチルクエン酸トリブチルである請求項1又は2のマイクロポンプ用動作液体。
【請求項4】
前記数平均分子量10000以上の高分子化合物が、ハロゲンを含む高分子化合物である請求項1のマイクロポンプ用動作液体。
【請求項5】
前記ハロゲンを含む高分子化合物が数平均分子量10000~200000のポリハロゲン化ビニルである請求項4のマイクロポンプ用動作液体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロポンプ用動作液体を用いたマイクロポンプ。
【請求項7】
前記マイクロポンプは、流路内に液体流れ方向に陽極と陰極が間隔をあけて設けられており、陽極と陰極の間に電圧を印加することでマイクロポンプ用動作液体が移動する構造を有する、請求項6のマイクロポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロポンプ用動作液体(電気感応作動媒体)に係り、特に電気流体力学(EHD)効果を利用したマイクロポンプ用動作液体に関する。また、本発明は、このマイクロポンプ用動作液体を用いたマイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
EHDを利用したマイクロポンプは、管などの内側に、液体流れ方向に間隔をあけて
陽極と陰極を設け、陽極と陰極の間に電圧を印加することにより、内部の動作液体が移動し、ポンプとして作動させるよう構成したものである。
【0003】
従来、この動作液体としては、DBA(ジブチルアジペート)、DBD(デカン二酸ジブチル)や、フルオロカーボン類が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-88174号公報
【特許文献2】特開平11-125173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来に比べ、同じ印加電圧で、吐出圧力と流量を増加させることができるマイクロポンプ用動作液体と、このマイクロポンプ用動作液体を用いたマイクロポンプとを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
[1] 分子量1000以下の絶縁性液体と、
数平均分子量10000以上の高分子化合物と
を含み、
該絶縁性液体と該高分子化合物との合量における該高分子化合物の含有率が0.01wt%~10wt%であるマイクロポンプ用動作液体。
【0008】
[2] 前記分子量1000以下の絶縁性流体が、芳香族または脂肪族のエステル体である[1]のマイクロポンプ用動作液体。
【0009】
[3] 前記分子量1000以下の絶縁性流体が、ジブチルアジペート、ジブチルセバケート、1,6-ジアセトキシヘキサン、ジエチルへキシルアジペート、ジエチルへキシルフタレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、又はアセチルクエン酸トリブチルである[1]又は[2]のマイクロポンプ用動作液体。
【0010】
[4] 前記数平均分子量10000以上の高分子化合物が、ハロゲンを含む高分子化合物である[1]~[3]のいずれかのマイクロポンプ用動作液体。
【0011】
[5] 前記ハロゲンを含む高分子化合物が数平均分子量10000~200000のポリハロゲン化ビニルである[4]のマイクロポンプ用動作液体。
【0012】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載のマイクロポンプ用動作液体を用いたマイクロポンプ。
【0013】
[7] 前記マイクロポンプは、流路内に液体流れ方向に陽極と陰極が間隔をあけて設けられており、陽極と陰極の間に電圧を印加することでマイクロポンプ用動作液体が移動する構造を有する、[6]のマイクロポンプ。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、電気流体力学(EHD)を利用したマイクロポンプ用動作液体として、ジブチルアジペート等の分子量1000以下の絶縁性液体にポリ塩化ビニル樹脂等の数平均分子量10000以上の高分子化合物を、該絶縁性液体と該高分子化合物との合量における該高分子化合物の含有率が0.01wt%~10wt%となるように添加する。これにより、同じ印加電圧で、マイクロポンプの吐出圧力と流量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2a】測定に用いたマイクロポンプの外観図である。
【
図2c】測定に用いたマイクロポンプの構成を示す模式的分解斜視図である。
【
図3】圧力及び流量の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のマイクロポンプ用動作液体は、分子量1000以下の絶縁性液体と数平均分子量10000以上の高分子化合物とを含む。なお、本発明において、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算である。
【0017】
[分子量1000以下の絶縁性液体]
分子量1000以下の絶縁性液体としては、芳香族または脂肪族のエステル体が好適であり、モノエステル体として、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、9,10-エポキシブチルステアレート、1-エトキシ-2-アセトキシプロパン等があげられる。ジエステル体としては、ジブチルアジペート(DBA)、ジエチルサクシネート、ジエチルアジペート、ジブチルサクシネート、ジブチルセバケート、ジエチルへキシルアジペート、ジエチルヘキシルセバケート、フマル酸ジブチル(DBF)、メチルアセチルリシノレート(MAR-N)、ジブチルイタコネート(DBI)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、テトラヒドロフタル酸ジオクチルエステル、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソドデシルフタレート、1,4-ジアセトキシブタン、1,5-ジアセトキシペンタン、1,6-ジアセトキシヘキサン等があげられる。トリエステル体としては、トリアセチン、アセチルクエン酸トリブチル等があげられる。これらの1種又は2種以上が例示されるが、中でもジブチルアジペートやジブチルセバケート、1,6-ジアセトキシヘキサン、ジエチルへキシルアジペート、ジエチルへキシルフタレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、又はアセチルクエン酸トリブチルなどが好適であり、特にジブチルアジペートが好適である。この理由は、電気流体力学(EHD)を利用したマイクロポンプ用動作液体として導電率や粘度が適切な範囲にあり、また、合わせて用いる高分子化合物との親和性が高く、溶解性がよいためである。
【0018】
分子量1000以下の絶縁性液体の導電率は、1×10-5S/m以下、特に1×10-6S/m以下であることが好ましい。また、1×10-11S/m以上、特に1×10-10S/m以上であることが好ましい。複数の絶縁性液体を混合して使用する際には、混合後の導電率が上述の範囲になることが好ましく、より好ましくは混合するそれぞれの絶縁性液体が、それぞれ上述の範囲内にあることである。また複数の絶縁性液体を使用するよりは、どれか一つを90重量%以上、より好ましくは単一成分であることが、廃棄時の手間等を考えると好ましい。
【0019】
[数平均分子量10000以上の高分子化合物]
数平均分子量10000以上の高分子化合物としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ペンタフルオロアルコキシフッ素樹脂などのハロゲンを含む高分子化合物や、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアクリロニトリル、シリコーンゴム等が例示される。
【0020】
数平均分子量10000以上の高分子化合物は、好ましくはハロゲン、より好ましくは、塩素又は臭素、もっとも好ましくは塩素を含む。この理由は、絶縁性液体との親和性が高く溶解性が高いためである。
【0021】
数平均分子量10000以上の高分子化合物は、特にポリハロゲン化ビニルとりわけポリ塩化ビニル(PVC)が、構造が簡単で粘度も低くしやすいため好ましい。
【0022】
数平均分子量10000以上の高分子化合物の数平均分子量は、特に15000以上、とりわけ20000以上が好ましく、また、200000以下、特に150000以下、とりわけ100000以下が好ましい。数平均分子量が上記下限値以上であることで同じ印加電圧でマイクロポンプの吐出圧力と流量を増加させることができるという本発明の効果が顕著になり、一方、数平均分子量が上記上限値以下であることで流動性を高く維持することができる。
【0023】
分子量1000以下の絶縁性液体と、数平均分子量10000以上の高分子化合物との合計量における数平均分子量10000以上の高分子化合物の含有率は、0.01wt%以上、好ましくは0.02wt%以上であり、10wt%以下、好ましくは5wt%以下、より好ましくは1wt%以下、特に好ましくは0.5wt%以下である。この含有率が上記下限値以上であることにより同じ印加電圧でマイクロポンプの吐出圧力と流量を増加させることができるという本発明の効果が顕著になり、一方、上記上限値以下であることで粘度が高くなりすぎることが無くなり、流動性が高くなる。
【0024】
[その他の成分]
本発明のマイクロポンプ用動作液体は、その他の成分として、熱安定剤等を含んでいてもよい。熱安定剤としては、燐系熱安定剤、フェノール系熱安定剤、アミン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、Mg、Ba、Zn、Sn等の無機化合物などが例示される。マイクロポンプ用動作液体中のこれらのその他成分の含有率は0.01wt%以下、特に0.001wt%以下であることが好ましい。
【0025】
[マイクロポンプ用動作液体の導電率と粘度]
本発明のマイクロポンプ用動作液体の導電率と粘度については、目的によって異なるため特に限定されないが、導電率は1×10-5S/m以下、特に1×10-6S/m以下で、1×10-11S/m以上、特に1×10-10S/m以上であることが好ましい。また、粘度は23℃の温度において、1Pa・s以下、特に0.1Pa・s以下で、1×10-4Pa・s以上、特に1×10-3Pa・s以上であることが好ましい。
【0026】
[マイクロポンプの構造]
本発明のマイクロポンプは、本発明のマイクロポンプ用動作液体を使用するものである。マイクロポンプの構造は、従来から使用されている、マイクロポンプ用動作液体を満たし、交互に陽極と陰極を組み込んだチャンネル状のマイクロポンプなどが例示される。
【0027】
図1にマイクロポンプの動作原理図の一例を示す。陽極2と陰極1は、くし形にパターニングされており、互いに向き合った位置に設置されている。電極(陽極2と陰極1)上にチャンネル状の流路を設置し、両端にチュープを設置した。チャンネル内にマイクロポンプ用動作液体3を満たし、電極間に電界を印加すると、液体に電荷がチャージされ加速されることで流体となり、マイクロポンプとして駆動する。すなわちカソードから電子が液体中へ投入され、その結果、イオン(X-)が電界によって加速され、陽極で放電し、液体を引きずりながら流れることで流体となる。
【実施例0028】
下記の実施例1~3及び比較例1、2のマイクロポンプ用動作液体を調製し、
図1に示すマイクロポンプで23℃にて送液し、流量及び吐出圧力を測定した。
【0029】
測定に用いたEHDマイクロポンプの外観図を
図2aに示した。これを構成要素ごとに分解して示したものが
図2cである。一番下に陰極1,陽極2が設置されたプリント回路板4があり、ここにPDMS製の流路5を設置する。流路の両端に液体の出入口となるフッ素樹脂(テフロン(登録商標))チューブ9を設置し、ガラスエポキシ製蓋材6及び2枚のアクリル製の蓋材7,8でシールした。測定セットアップの概要を
図2bに示す。セットアップは流量計(Flow meter:サーパス工業製、NTFZ-3S-5)、圧力計(Pressure sensor:パナソニック製、ADP5160)、三方バルブ(アズワン製、5-5368-11)、ローラークランプ(圧力制御バルブ;ケック製、KT-4.5)、リザーバタンク(Reservoir)、EHDポンプ(EHDpump)から構築されている。流路(点線で囲われたLiquid loop内)は循環するように接続されており、圧力制御バルブを開放した状態では流量を、閉鎖した状態では圧力を測定することができる。
【0030】
リザーバタンクは内部に接地極が取り付けてあり、流体の圧力を大気圧と等しくすると同時に、溜まった電荷を取り除き同条件で測定できる。EHDポンプは高圧電源(EMCO製、CB101)によって10kVで稼働されており、高圧電源は4ch電源装置(キクスイ製、PMX32-2QU)によって制御されている。流量計と圧力計の記録はArduino UNOを通じてCSV形式でPCに保存されており、サンプリング周波数は10Hzである。
【0031】
EHD特性の測定ではまず、流路内を測定する絶縁流体で満たし、圧力制御バルブを開放した状態でポンプを稼働させ30秒間流量を記録した。ポンプを止め30秒のインターバルを取った後、圧力制御バルブを閉めた状態でポンプを稼働させ30秒間圧力を記録した。得られた値についてそれぞれ100点移動平均を取り、測定データとした。流量のデータの代表例を
図3aに、圧力を
図3bに示す。定常状態になっている部分を平均し測定値とした。また、電圧印加直後の増加量(Δy)と経過時間(t)から応答速度(Δy/t)を算出した。
【0032】
[実施例1]
ジブチルアジペート(東京化成社製)99.95重量部にポリ塩化ビニル(信越化学工業株式会社製TK-500(平均重合度520)、数平均分子量32500)を0.05重量部(ポリ塩化ビニルの添加率0.05wt%)混合し、100℃で30分攪拌し、動作液体を得た。この動作液体を
図1に示すマイクロポンプに給液し、電圧を10kV印加して送液したところ、流速は5.3μl/s、吐出圧力は0.77kPaであった。また、流速の応答速度は0.53μl/s
2、吐出圧力の応答速度は0.089kPa/sであった。
【0033】
[実施例2]
ジブチルアジペート(東京化成社製)99.9重量部にポリ塩化ビニル(信越化学工業株式会社製TK-500(平均重合度520))を0.1重量部混合した以外は実施例1と同様にして実験したところ、流速は5.5μl/s、吐出圧力は0.77kPaであった。また、流速の応答速度は0.56μl/s2、吐出圧力の応答速度は0.085kPa/sであった。
【0034】
[実施例3]
ジブチルアジペート(東京化成社製)99.7重量部にポリ塩化ビニル(信越化学工業株式会社製TK-500(平均重合度520))を0.3重量部混合したこと以外は実施例1と同様にして実験したところ、流速は4.1μl/s、吐出圧力は0.59kPaであった。また、流速の応答速度は0.39μl/s2、吐出圧力の応答速度は0.074kPa/sであった。
【0035】
[比較例1]
ジブチルアジペートにポリ塩化ビニルを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして実験したところ、流速は3.8μl/s、吐出圧力は0.51kPaであった。また、流速の応答速度は0.44μl/s2、吐出圧力の応答速度は0.076kPa/sであった。
【0036】
[比較例2]
ジブチルアジペートの代わりにスリーエム ジャパン株式会社製、商品名フロリナートFC40を用いたこと以外は比較例1と同様にして実験したところ、流速は2.0μl/s、吐出圧力は0.33kPaであった。また、流速の応答速度は0.10μl/s2、吐出圧力の応答速度は0.044kPa/sであった。
【0037】
<考察>
以上の実施例1~3及び比較例1,2から明らかな通り、分子量1000以下の絶縁性液体と、数平均分子量10000以上の高分子化合物とを含み、該絶縁性液体と該高分子化合物との合量における該高分子化合物の含有率が0.01wt%~10wt%である実施例1~3のマイクロポンプ用動作液体は、比較例1,2に比べて、同じ印加電圧で、マイクロポンプの吐出圧力と流量を増加させることができる。
【0038】
[参考測定例:ジブチルアジペートに対するポリ塩化ビニルの添加率を変えた場合の動作液体の23℃における導電率及び粘度の測定]
ジブチルアジペート(DBA)に対するポリ塩化ビニル(PVC)の添加率を変えた場合の動作液体の23℃における導電率及び粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
表1の通り、ジブチルアジペートにポリ塩化ビニルを0.1~0.5wt%添加することにより、導電率、粘度ともに増加し、マイクロポンプ用動作液体としてより好ましい性質となることが認められる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。