(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035204
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】異種樹脂の混合物もしくは積層体からの再生樹脂の製造方法および再生ポリオレフィン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/14 20060101AFI20240306BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20240306BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20240306BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20240306BHJP
【FI】
C08J11/14 ZAB
B29B9/06
B29C48/08
B29C48/305
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140122
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022136463
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】高波 正充
(72)【発明者】
【氏名】正木 明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
4F401
【Fターム(参考)】
4F201AA03
4F201AA24
4F201AA29
4F201AA50
4F201AB16
4F201AG14
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4F201BD05
4F201BL08
4F207AA03
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4F401AD01
4F401AD03
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA08
4F401CA14
4F401CA33
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401EA46
(57)【要約】
【課題】ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂材料を高温・高圧の水もしくは亜臨界状態の水で分解することで、再生ポリオレフィン樹脂を樹脂として取り出すこと。
【解決手段】2種類以上の樹脂を含有する樹脂材料から再生樹脂を製造する方法であって、前記樹脂材料は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有し、高温、高圧の水もしくは亜臨界状態の水で前記ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を分解する分解工程と、ポリオレフィン樹脂を含有する未分解物と、分解物とに分離する分離工程とを有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の樹脂を含有する樹脂材料から再生樹脂を製造する方法であって、
前記樹脂材料は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有し、
高温、高圧の水もしくは亜臨界状態の水で前記ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を分解する分解工程と、
ポリオレフィン樹脂を含有する未分解物と、分解物とに分離する分離工程と、
前記ポリオレフィン樹脂を含有する未分解物を再生ポリオレフィン樹脂として回収し、前記分解物を再生樹脂の原料として回収する回収工程とを有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂材料が、ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂とを含有する請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記分解工程は、主に前記ポリアミド樹脂が分解する温度及び圧力の水もしくは亜臨界状態の水で分解する第1分解工程と、
主に前記ポリエステル樹脂が分解する温度及び圧力の水もしくは亜臨界状態の水で分解する第2分解工程とを有する請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記第1分解工程と前記第2分解工程との間に、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂とを含有する未分解物と分解物との分離工程と、
再生樹脂の原料として用いるポリアミド樹脂由来の分解物を回収する回収工程とを有する請求項3に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項5】
再生ポリエステル樹脂の原料として用いるポリエステル樹脂由来の分解物と、再生ポリアミド樹脂の原料として用いるポリアミド樹脂由来の分解物とを分けて回収する請求項4に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記分解工程の前に、前記ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が分解しない高温高圧の水で前記樹脂材料を洗浄する洗浄工程を有する請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄工程の前又は後に、樹脂材料の大きさを小さくする破砕工程を有する請求項6に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料が、多層構造樹脂材料を含有し、多層構造中のポリオレフィン樹脂層は、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有しない請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法で得られた再生ポリオレフィン樹脂をペレット化する再生ポリオレフィン樹脂ペレットの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法で得られた再生ポリオレフィン樹脂をフィルムに成形する再生ポリオレフィン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法で得られた再生ポリオレフィン樹脂と、他のポリオレフィン樹脂とを混錬し、フィルムに成形するポリオレフィン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記樹脂材料が、金属を含有する請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記未分解物を酸性液体で洗浄する工程を有する請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法で得られた分解物を精製して得られたモノマーやオリゴマーを再重合する再生樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂材料を高温及び高圧の水もしくは亜臨界状態の水で分解する工程を有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルなど、単一樹脂材料は、回収して再成形することで、マテリアルリサイクルが行われている。
しかし、多様な樹脂材料を全て種類別に回収してマテリアルリサイクルを行うことは難しい。また、単一の樹脂だけでは、目的とする性能を持たせることが難しいため、複数種類の樹脂を積層や混合した複合樹脂材料も多く使われている。これらの樹脂材料は、埋め立てや、熱として回収するサーマルリサイクルが行われているのが現状である。
【0003】
そこで、樹脂材料を超臨界状態の希硝酸やアルコールで分解し、モノマーやオリゴマーに分解し、ケミカルリサイクルすることが提案されている(例えば特許文献1,2)。
また、縮合重合樹脂フィルムと付加重合樹脂フィルムとを積層した積層体を高温高圧の水で処理して、縮合重合樹脂をモノマー成分に分解し、付加重合樹脂を油化することが提案されている(例えば特許文献3の請求項1,2および明細書の段落[0016])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-237215号公報
【特許文献2】特開2009-126913号公報
【特許文献3】特開平11-323006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケミカルリサイクルによって、モノマーやオリゴマーに分解した場合、分解物の精製とモノマーの再重合によって、再度樹脂を得ることができる。しかしながら、精製と再重合には、多くのエネルギーが必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂材料を高温及び高圧の水もしくは亜臨界状態の水で分解することで、再生ポリオレフィン樹脂を樹脂として取り出すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
第1の態様は、2種類以上の樹脂を含有する樹脂材料から再生樹脂を製造する方法であって、前記樹脂材料は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有し、高温、高圧の水もしくは亜臨界状態の水で前記ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を分解する分解工程と、ポリオレフィン樹脂を含有する未分解物と、分解物とに分離する分離工程と、前記ポリオレフィン樹脂を含有する未分解物を再生ポリオレフィン樹脂として回収し、前記分解物を再生樹脂の原料として回収する回収工程とを有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第2の態様は、前記第1の態様において、前記樹脂材料が、ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂とを含有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第3の態様は、前記第1の態様又は第2の態様において、前記分解工程は、主に前記ポリアミド樹脂が分解する温度及び圧力の水もしくは亜臨界状態の水で分解する第1分解工程と、主に前記ポリエステル樹脂が分解する温度及び圧力の水もしくは亜臨界状態の水で分解する第2分解工程とを有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第4の態様は、前記第3の態様において、前記第1分解工程と前記第2分解工程との間に、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂とを含有する未分解物と分解物とに分離する分離工程と、再生樹脂の原料として用いるポリアミド樹脂由来の分解物を回収する回収工程とを有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第5の態様は、前記第4の態様において、再生ポリエステル樹脂の原料として用いるポリエステル樹脂由来の分解物と、再生ポリアミド樹脂の原料として用いるポリアミド樹脂由来の分解物とを分けて回収する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第6の態様は、前記第1~5のいずれか1の態様において、前記分解工程の前に、前記ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が分解しない(亜臨界状態の水及び超臨界状態の水以外の)高温高圧の水で前記樹脂材料を洗浄する洗浄工程を有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
【0008】
第7の態様は、前記第6の態様において、前記洗浄工程の前又は後に、樹脂材料の大きさを小さくする破砕工程を有する再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第8の態様は、前記第1~7のいずれか1の態様において、前記樹脂材料が、多層構造樹脂材料を含有し、多層構造中のポリオレフィン樹脂層は、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有しない再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第9の態様は、前記第1~8のいずれか1の態様において得られた再生ポリオレフィン樹脂をペレット化する再生ポリオレフィン樹脂ペレットの製造方法である。
第10の態様は、前記第1~8のいずれか1の態様において得られた再生ポリオレフィン樹脂又は前記第9の態様において得られた再生ポリオレフィン樹脂ペレットをフィルムに成形する再生ポリオレフィン樹脂フィルムの製造方法である。
【0009】
第11の態様は、前記第1~8のいずれか1の態様において得られた再生ポリオレフィン樹脂と、他のポリオレフィン樹脂とを混錬し、フィルムに成形するポリオレフィン樹脂フィルムの製造方法である。
第12の態様は、前記第9の態様で得られた再生ポリオレフィン樹脂ペレットと、他のポリオレフィン樹脂ペレットとを混錬し、フィルムに成形するポリオレフィン樹脂フィルムの製造方法である。
第13の態様は、前記樹脂材料が、金属を含有する前記第1~8のいずれか1の態様に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第14の態様は、前記樹脂材料が、金属を含有する前記第9の態様に記載の再生ポリオレフィン樹脂ペレットの製造方法である。
【0010】
第15の態様は、前記第6の態様の洗浄工程とは別に、酸性液体で前記未分解物を洗浄する酸を用いた洗浄工程を有する前記第1~8の態様及び第13の態様から選ばれる1の態様に記載の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法である。
第16の態様は、前記第6の態様の洗浄工程とは別に、酸性液体で前記未分解物を洗浄する酸を用いた洗浄工程を有する前記第9の態様及び第14の態様から選ばれる1の態様に記載の再生ポリオレフィン樹脂ペレットの製造方法である。
第17の態様は、前記第6の態様の洗浄工程とは別に、酸性液体で前記未分解物を洗浄する酸を用いた洗浄工程を有する前記第11~12の態様に記載の再生ポリオレフィン樹脂フィルムの製造方法である。
第18の態様は、前記第1~8の態様で得られた分解物を精製して得られたモノマーやオリゴマーを再重合する再生樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂材料を高温、高圧の水もしくは亜臨界状態の水で処理し、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を分解することで、再生ポリオレフィン樹脂を樹脂として取り出し、分解物を再生樹脂の原料として取り出すことができる。これにより、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂をケミカルリサイクルしつつ、少なくともポリオレフィン樹脂についてはマテリアルリサイクルできるため、モノマー等の精製や再重合にかかるエネルギーを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法の一態様を示す図である。
【
図2】本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、2種類以上の樹脂を含有する樹脂材料から再生樹脂を製造する方法である。
【0014】
(樹脂材料)
本発明において、2種以上の樹脂を含有する樹脂材料としては、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上と、ポリオレフィン樹脂とを含有していればよく、特に制限されないが、例えば、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する混合物や、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する積層体、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する樹脂組成物、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する混合物や、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する積層体、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する樹脂組成物、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する混合物や、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する積層体、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する樹脂組成物などが挙げられる。
前記2種以上の樹脂を含有する樹脂材料としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有していてもよく、樹脂以外にも有機化合物や金属や無機化合物を含有していてもよい。
【0015】
前記ポリエステル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)及びポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)並びにこれらの共重合体及び変性樹脂などが挙げられる。
【0016】
前記ポリアミド樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ε-カプロラクタムなどから得られるポリアミド6(PA6)、11-ウンデカンラクタムなどから得られるポリアミド11(PA11)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸などから得られるポリアミド6,6(PA6,6)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸などから得られるポリアミド6,10(PA6,10)、1,10-デカンジアミンとセバシン酸などから得られるポリアミド10,10(PA10,10)、1,9-ノナンジアミンとテレフタル酸などから得られるポリアミド9T(PA9T)などが挙げられる。
【0017】
前記ポリオレフィン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)やポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体樹脂(EPR)、ポリスチレン樹脂(PS)、エチレン-スチレン共重合体樹脂などが挙げられる。
前記ポリエチレン樹脂(PE)としては、例えば、超高密度ポリエチレン樹脂(UDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)などが挙げられる。
前記ポリプロピレン樹脂(PP)としては、例えば、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
【0018】
前記有機化合物としては、特に制限されないが、樹脂成形品などに用いられる熱安定剤や光安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、増粘剤、染料などが挙げられる。
【0019】
前記金属としては、特に制限されないが、樹脂と一緒に使われる金属として、例えば、アルミニウム、銅、錫、鉛などが挙げられる。
前記樹脂材料としては、例えば、アルミニウム層や銅層を有する積層体や、はんだが付着した樹脂なども含まれる。
【0020】
前記無機化合物としては、例えば、樹脂成形品などに用いられる無機充填剤や、酸化防止剤、熱安定剤、顔料などが挙げられる。
【0021】
特に詰め替え容器やレトルト食品の容器等に用いられるパウチ等の軟包装材料は、ポリオレフィン樹脂層とポリアミド樹脂層とポリエステル樹脂層とアルミニウム層とを有する多層構造樹脂材料であることが多い。このため、本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、特に、パウチ等の軟包装材料を含有する樹脂材料から再生ポリオレフィン樹脂を製造するのに非常に有用である。
前記樹脂材料が多層構造樹脂材料を含有する場合、多層構造中のポリオレフィン樹脂層は、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有しない樹脂層であってもよい。
【0022】
(洗浄工程)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、樹脂材料が汚れている場合などには、洗浄工程を設けてもよい。
前記洗浄工程は、後述する分解工程の前段階の工程として、前記ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が分解しない高温高圧の水で前記樹脂材料を洗浄する工程である。前記洗浄工程は、亜臨界状態の水及び超臨界状態の水以外の高温高圧の水を用いて行うことが好ましく、例えば、温度30~100℃、圧力0.1~5MPaの(亜臨界状態の水及び超臨界状態の水以外の)水を用いることができる。前記水としては、純水だけでなく、添加剤を含有していてもよい。
前記添加剤としては、特に制限されないが、例えば、有機化合物や無機化合物などが挙げられる。前記有機化合物としては、例えば、アルコールや有機溶媒などが挙げられる。前記無機化合物としては、無機酸や水に溶解してアルカリ性を示す無機化合物などが挙げられる。
前記洗浄工程により、溶出する汚れ成分を反応系から分離する工程は、常温で行ってもよく、高温で行ってもよい。また、前記汚れの成分を分離する工程は、常圧下で行ってもよく、減圧下や高圧下で行ってもよい。
前記汚れの成分を分離する工程は、汚れの成分を反応系から排出できるのであれば、どのような方法でもよいが、例えば、焼結体などのフィルターを通して、汚れの成分のみを抜き取る方法などが挙げられる。
前記洗浄工程は、後述する分解工程を行う分解槽の中で行ってもよい。
【0023】
(分解工程)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、分解工程を有する。
前記分解工程は、高温、高圧の水もしくは亜臨界状態の水を用いて行う。ここで、前記高温、高圧の水とは、亜臨界状態の水及び超臨界状態の水以外の高温及び高圧の水をいい、前記高温、高圧の水もしくは亜臨界状態の水とは超臨界状態の水以外の高温及び高圧の水をいう。
前記水としては、純水だけでなく、添加剤を含有していてもよい。
前記添加剤としては、特に制限されないが、例えば、有機化合物や無機化合物などが挙げられる。前記有機化合物としては、例えば、アルコールや有機溶媒などが挙げられる。前記無機化合物としては、無機酸や水に溶解してアルカリ性を示す無機化合物などが挙げられる。
【0024】
前記分解工程は、前記樹脂材料中のポリエステル樹脂やポリアミド樹脂などを分解する工程である。
前記分解工程における水の温度は、特に制限されないが、再生ポリオレフィン樹脂の劣化を抑制できる観点から、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、270℃以下が特に好ましい。また、前記分解工程における水の温度は、特に制限されないが、再生ポリオレフィン樹脂の生産性向上の観点から、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、230℃以上が特に好ましい。
前記分解工程における水の圧力は、再生ポリオレフィン樹脂の生産性向上の観点から、0.5MPa以上が好ましく、1MPa以上がより好ましく、5MPa以上が特に好ましい。
前記樹脂材料がポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを含有する場合は、主にポリアミド樹脂を分解する温度及び圧力の水もしくは亜臨界状態の水を用いる第1分解工程と、主にポリエステル樹脂を分解する温度及び圧力の水もしくは亜臨界状態の水を用いる第2分解工程に分けることが好ましい。
前記第1分解工程はポリアミド樹脂を分解できる温度及び圧力であればよく、前記第2分解工程はポリエステル樹脂を分解できる温度及び圧力であればよい。前記第1分解工程では、昇温後、ポリアミド樹脂が分解できる温度域を一定時間保つことが好ましい。前記第2分解工程では、前記第1分解工程からさらに昇温後、ポリエステル樹脂が分解できる温度域を一定時間保つことが好ましい。この場合、主にポリエステル樹脂を分解する温度は、主にポリアミド樹脂を分解する温度よりも高い温度域になる。
【0025】
(分離工程)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、分離工程を有する。
前記分離工程は、前記分解工程で分解された分解物と、未分解物とを分離する工程である。未分解物は、ポリオレフィン樹脂を含有する。ポリオレフィン樹脂は、難分解性であるため、主に未分解物に含まれる。
本発明において、未分解物とは、全く分解していない物を指すのではなく、温度25℃、圧力1013hPa雰囲気下で分解工程から抜き出された液体中の凝集物を指す。このため、再生ポリオレフィン樹脂は、原料中のポリオレフィン樹脂よりも分子量が低下していてもよく、一部分解物(ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂のモノマーやオリゴマー)が含まれていてもよい。分解物は、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂のモノマーやオリゴマーを含む。未分解物に含まれるポリオレフィン樹脂の割合は、分離工程で得られた未分解物から水分を除いた全量を100重量%として、例えば50重量%以上、90重量%以上、99重量%以上等が挙げられる。分解物に含まれるポリエステル樹脂やポリアミド樹脂のモノマーやオリゴマーの割合は、分離工程で得られた分解物から水分を除いた全量を100重量%として、例えば50重量%以上、90重量%以上、99重量%以上等が挙げられる。
前記分解工程を第1分解工程と第2分解工程などの複数に分ける場合には、各分解工程の後に、分離工程を設けることが好ましい。これによって、分解物の精製が容易になり、分解物からポリエステル樹脂やポリアミド樹脂のモノマーやオリゴマーなどを分けて取り出すことが容易となる。
【0026】
前記分離工程は、常温で行ってもよく、高温で行ってもよい。また、前記分離工程は、常圧下で行ってもよく、減圧下や高圧下で行ってもよい。複数の分解工程の間に設ける分離工程は、エネルギー損失が少ないことから、高温下や高圧下、高温及び高圧下で行うことが好ましい。
【0027】
前記分離工程は、未分解物と分解物とを分離できるのであれば、どのような方法でもよいが、例えば、焼結体などのフィルターを通して、分解物を抜き取る方法などが挙げられる。分離工程が濾過等の固液分離工程である場合は、凝集物(固形物)が未分解物、流動物(液状物)が分解物であってもよい。
【0028】
(回収工程)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、分解物を回収する回収工程を有する。
回収された分解物は、再生樹脂の原料として用いられる。
前記分解物は、ろ過や、分留、蒸留等により、精製して再生樹脂の原料として用いることができる。
前記分解工程を第1分解工程と第2分解工程などの複数に分ける場合や、各分解工程の後に各々分離工程を設ける場合は、各分解工程又は各分離工程の後に、各工程後の分解物回収工程を設けてもよい。例えば、第1分解工程の後にポリアミド樹脂由来の分解物を回収する第1分解物回収工程を設け、第2分解工程の後にポリエステル樹脂由来の分解物を回収する第2分解物回収工程を設けてもよい。
【0029】
(破砕工程)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、破砕工程を有していてもよい。
前記破砕工程は、前記分解工程で分解しやすくするために、前記樹脂材料の大きさを小さくする工程である。
前記破砕工程における破砕方法は、特に制限されず、例えば、プレス機や回転刃、ボールミル等を用いた方法が挙げられ、これらは1種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0030】
(酸性液体を用いた洗浄工程)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、酸性液体を用いて未分解物を洗浄する工程を有していてもよい。
前記酸性液体を用いた洗浄工程を有することにより、未分解物中のアルミニウムや銅などの金属箔や、無機添加剤、顔料などを除去することができる。
前記酸性液体による洗浄工程は、常温や高温など適当な温度の酸性液体で洗浄することができ、常圧下や減圧下、高圧下で洗浄を行うこともできる。
前記酸性液体としては、特に制限はなく、例えば、塩酸や硫酸、硝酸などの無機酸や、ギ酸や酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物や水で希釈した酸性液体などを用いることができる。
前記酸性液体を用いた洗浄工程は、前記分解工程の後に行うことが好ましく、前記分離工程で未分解物を分離した後にしてもよい。
【0031】
(アルカリ性液体を用いた洗浄工程)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、アルカリ性液体を用いて未分解物を洗浄する工程を有していてもよい。
前記アルカリ性液体を用いた洗浄工程を有することにより、未分解物中の油分や無機物、顔料などを除去することができる。
前記アルカリ性液体による洗浄工程は、常温や高温などの適当な温度のアルカリ性液体で洗浄することができ、常圧下や減圧下、高圧下で洗浄することもできる。
前記アルカリ性液体としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ性物質の溶液などを用いることができる。前記アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の重炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩などが挙げられる。
前記アルカリ性液体を用いた洗浄工程は、前記分解工程の後に行うことが好ましく、前記分離工程で未分解物を分離した後にしてもよい。
【0032】
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法は、前記酸性液体を用いた洗浄工程と前記アルカリ性液体を用いた洗浄工程とのいずれか一方の工程を単独で有していてもよいし、両方を有していてもよい。
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法として、前記酸性液体を用いた洗浄工程と前記アルカリ性液体を用いた洗浄工程との両方を有する場合には、中和による発熱を緩和するために中性又は中性付近のpHを示す液体、pH緩衝液などで洗浄する工程を、前記酸性液体を用いた洗浄工程と前記アルカリ性液体を用いた洗浄工程との間に設けることが好ましい。
【0033】
(ペレット及びフィルムの製造)
本発明の再生ポリオレフィン樹脂の製造方法で得られた再生ポリオレフィン樹脂は、押出機とペレタイザーとを用いて、再生ポリオレフィン樹脂ペレットに加工することができる。
この際、前記再生ポリオレフィン樹脂の他に、バージンのポリオレフィン樹脂などを混合することも可能である。
また、前記再生ポリオレフィン樹脂や前記再生ポリオレフィン樹脂ペレットを押出成形機やインフレーション成形機などを用いて、再生ポリオレフィン樹脂フィルムを製造することができる。
この際、前記再生ポリオレフィン樹脂や前記再生ポリオレフィン樹脂ペレットの他に、バージンのポリオレフィン樹脂やポリオレフィン樹脂ペレットを混合して、ポリオレフィン樹脂フィルムを製造することができる。
【0034】
(再重合による再生樹脂の製造)
前記回収工程で得られた分解物を、精製して、重合触媒等を加え、再重合することで、再生ポリエステル樹脂や再生ポリアミド樹脂を製造することができる。
【0035】
(好適な実施態様)
以下、図面を用いて、好適な実施態様を説明する。
【0036】
図1において、水は、水導入管101から導入され、ポンプ102で昇圧された後、昇温管103に導入されて、高温及び高圧の水となって、分解槽106に導入される。
また、樹脂材料は、樹脂材料導入管104を通って、前記分解槽106に導入される。
前記分解槽106では、前記高温及び高圧の水は、昇温領域105でさらに昇温されて、亜臨界状態の水や、亜臨界状態に近い高温及び高圧の水となり、前記樹脂材料の汚れを洗浄したり、前記樹脂材料のポリエステル樹脂部分やポリアミド樹脂部分などをモノマーやオリゴマーに分解する。
【0037】
前記分解槽106中で、汚れの成分が溶出された後もしくは、前記樹脂材料107が十分に分解された後、背圧弁1091を開けることで、焼結体フィルター113を通して、分解物と、亜臨界状態の水や、亜臨界状態に近い高温及び高圧の水とが、前記分解槽内の圧力を保持したまま、分解物抜き出し管109を通って、油水分離槽110に抜き出される。
すなわち、汚れ成分と、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂の分解物とを一度に除去することができる。また、必要に応じて、汚れ成分の洗浄と、ポリエステル樹脂の分解と、ポリアミド樹脂の分解とを別々に行うこともできる。具体的には、主に汚れ成分の洗浄が行える温度及び圧力の水を用いて洗浄を行って、汚れ成分や分解物を抜き出し、その後、ポリアミド樹脂の分解が行える温度及び圧力で分解を行って、ポリアミド樹脂分解物を抜き出し、さらに、ポリエステル樹脂の分解が行える温度及び圧力で分解を行って、ポリエステル樹脂分解物を抜き出すことにより、各成分を分けて抜き出すこともできる。
【0038】
前記油水分離槽110では、少なくとも、分解槽106中の高温及び高圧の水もしくは亜臨界状態の水が、液体の水になる程度に降温される。その結果、前記油水分離槽110に抜き出された分解物は、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂のモノマーやオリゴマーなどからなる油相と、水相とに分離される。油水分離槽110に抜き出された液体は、降温のみならず、降圧してもよい。
【0039】
油水分離槽110で油相と水相とに分離された分解物は、水相は水循環路112に抜き出されてポンプ102に戻され、油相は油相抜き出し管111から抜き出される。
水循環路112を保温しておくと、エネルギー損失が少なくて済むため、好ましい。
亜臨界状態の水に対しても難分解性であるポリオレフィン樹脂は、再生ポリオレフィン樹脂として、再生ポリオレフィン樹脂抜き出し管108から抜き出される。
前記再生ポリオレフィン樹脂は、適宜、洗浄などを行い、再生ポリオレフィン樹脂ペレットの製造に用いたり、再生ポリオレフィン樹脂フィルムの製造に用いたり、バージンのポリオレフィン樹脂と混錬してポリオレフィン樹脂フィルムの製造に用いたりすることができる。
図1の態様では、少ない耐圧容器で、状況に応じた分解物の回収と、再生ポリオレフィン樹脂の製造とを行うことができる。
【0040】
図2を用いて、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂との積層体である樹脂材料から、ポリエステル樹脂の分解物と、ポリアミド樹脂の分解物と、再生ポリオレフィン樹脂とを分けて回収する態様を説明する。
水は、水導入管201から導入され、ポンプ202で昇圧された後、昇温管203に導入されて、高温及び高圧の水となって、分解槽206に導入される。
また、樹脂材料は、樹脂材料導入管204を通って、前記分解槽206に導入される。
【0041】
前記分解槽206では、前記高温及び高圧の水は、第1昇温領域205aでさらに昇温されて、高温及び高圧の水となり、樹脂材料に付着した汚れなどを分解や溶解する。この段階で一度、背圧弁2091aを開くことで、図示しない焼結体フィルターを通して、汚れなどと高温高圧の水とが、第1分解物抜き出し管209aを通って、第1油水分離槽210aに抜き出される。
前記第1油水分離槽210aでは、必要に応じて、降温され、汚れなどの油相と水相とに分離される。第1油水分離槽210aに抜き出された液体は、降温のみならず、降圧してもよい。
前記第1油水分離槽210aで分離された水相は、水循環路212に抜き出されてポンプ202に戻され、油相は第1油相抜き出し管211aから抜き出される。
水循環路212を保温しておくと、エネルギー損失が少なくて済むため、好ましい。
【0042】
前記分解槽206では、前記樹脂材料207が、再生ポリオレフィン樹脂抜き出し管208に近づくにしたがって、第1昇温領域205a、第2昇温領域205b、第3昇温領域205cと分解槽206内の温度が上がるようになっている。
【0043】
第2昇温領域205bでは、前記樹脂材料207中の主にポリアミド樹脂が分解するように、温度及び圧力が調整されている。
このため、第2昇温領域205bにおける分解槽206内では、主にポリアミド樹脂が分解され、ポリアミド樹脂由来のモノマーやオリゴマーが分解物として得られる。また、背圧弁2091bを開くことで、図示しない焼結体フィルターを通して、ポリアミド樹脂由来のモノマーやオリゴマーを含有する分解物が、第2分解物抜き出し管209bを通って、第2油水分離槽210bに抜き出される。
【0044】
前記第2油水分離槽210b内の水は、少なくとも、前記分解槽206内の水よりも降温され、ポリアミド樹脂由来のモノマーやオリゴマーを含有する油相と、水相とに分離される。第2油水分離槽210bに抜き出された液体は、降温のみならず、降圧してもよい。
前記第2油水分離槽210bで分離された水相は、水循環路212に抜き出されてポンプ202に戻され、油相は第2油相抜き出し管211bから抜き出され、精製されて再生樹脂の原料となる。
【0045】
第3昇温領域205cでは、前記樹脂材料207中の主にポリエステル樹脂が分解するように、温度及び圧力が調整されている。
このため、第3昇温領域205cにおける分解槽206内では、主にポリエステル樹脂が分解され、ポリエステル樹脂由来のモノマーやオリゴマーが分解物として得られる。また、背圧弁2091cを開くことで、図示しない焼結体フィルターを通して、ポリエステル樹脂由来のモノマーやオリゴマーを含有する分解物が、第3分解物抜き出し管209cを通って、第3油水分離槽210cに抜き出される。
【0046】
前記第3油水分離槽210c内の水では、少なくとも、前記分解槽206内の水よりも降温され、ポリエステル樹脂由来のモノマーやオリゴマーを含有する油相と、水相とに分離される。第3油水分離槽210cに抜き出された液体は、降温のみならず、降圧してもよい。
前記第3油水分離槽210cで分離された水相は、水循環路212に抜き出されてポンプ202に戻され、油相は第3油相抜き出し管211cから抜き出され、精製されて再生樹脂の原料となる。
図2に示す態様では、例えば、汚れ成分と、ポリエステル樹脂分解物と、ポリアミド樹脂分解物とを分けて回収できるため、ポリエステル樹脂分解物やポリアミド樹脂分解物の精製が容易であり、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂の再重合による再生樹脂の製造に有利である。
【0047】
亜臨界状態の水に対しても難分解性であるポリオレフィン樹脂は、再生ポリオレフィン樹脂として、再生ポリオレフィン樹脂抜き出し管208から抜き出される。
前記再生ポリオレフィン樹脂は、適宜、洗浄などを行い、再生ポリオレフィン樹脂ペレットの製造に用いたり、再生ポリオレフィン樹脂フィルムの製造に用いたり、バージンのポリオレフィン樹脂と混錬してポリオレフィン樹脂フィルムの製造に用いたりすることができる。
【0048】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【実施例0049】
(実施例1)
図1に示す装置を用いて、異種樹脂の積層体を処理した例を示す。
異種樹脂の積層体として、ポリエチレン(68.9wt%)、アルミニウム蒸着層付きポリエチレンテレフタレート(12.6wt%)、ナイロン6(12.6wt%)、接着層等(5.9wt%)からなる積層体を用意し、2~3mm角の小片に切り分けたもの0.1gを分解槽106に導入した。
前記分解槽に導入される高温高圧の水の圧力は10MPaとなるようにポンプ102を調整しながら、背圧弁1091から分解物と高温高圧の水を0.5g/分の流量で連続的に抜き出した。
この際、昇温領域105の温度は、5℃/分の速度で100℃まで昇温(1段目の昇温過程)し、100℃を30分間保持した後、再び5℃/分の速度で300℃まで昇温(2段目の昇温過程)し、300℃で30分間保持した。
抜き出した分解物は、液体クロマトグラフィー質量分析法により分析し、ナイロン6由来の分解物を21種、ポリエチレンテレフタレート由来の分解物を25種同定し、ピーク面積から半定量解析を行った。
図3に前記背圧弁1091から連続的に抽出された分解物を用いた半定量解析の結果を示す。ナイロン6由来の分解物のピーク面積値の合算値と、ポリエチレンテレフタレートの分解物のピーク面積値の合算値とをそれぞれ薄い灰色の棒グラフと濃い灰色の棒グラフで示した。
【0050】
ナイロン6由来の分解物は1段階目の昇温過程において増加し、100℃で極大値を取った。その後100℃を30分間保持しているときは、徐々に指数関数的にナイロン6由来の分解物量(ピーク面積)は減少した。100℃での30分間の保持終了後、再び昇温開始と同時に、ナイロン6由来の分解物の生成が再開し、275℃付近で極大値を取った。また同温度でポリエチレンテレフタレート由来の分解物は極大値を取り、300℃到達後は減少した。
反応終了後、回収された固形分を赤外線分光法により解析した結果、ポリエチレンであることを確認した。
したがって、100℃で温度を保持している段階で、ナイロン6由来の分解物のみを個別回収することができ、反応終了後の固形分からポリエチレンが回収できた。
【0051】
(実施例2)
前記昇温領域105の温度を、5℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃を30分間保持した後、再び5℃/分の速度で300℃まで昇温し、300℃で30分間保持した以外は、実施例1と全て同じ条件で実施した。
【0052】
ナイロン6由来の分解物の生成量(液体クロマトグラフィーのピーク面積)は125℃で極大値を迎え、150℃の保持中においても微量であるがナイロン6由来の分解物が生成した。昇温を再開すると、再度ナイロン6由来の分解物が生成した。またナイロン6由来の分解物とポリエチレンテレフタレート由来の分解物の生成量(液体クロマトグラフィーのピーク面積)は275℃で極大値を得た。300℃到達後は、いずれの分解物も指数関数的に減少した。
反応終了後、回収された固形分を赤外線分光法により解析した結果、ポリエチレンであることを確認した。
したがって、150℃で温度を保持している段階で、ナイロン6由来の分解物のみを個別回収することができ、反応終了後の固形分からポリエチレンが回収できた。
結果を
図4に示す。ナイロン6由来の分解物のピーク面積値の合算値と、ポリエチレンテレフタレートの分解物のピーク面積値の合算値とをそれぞれ薄い灰色の棒グラフと濃い灰色の棒グラフで示した。
【0053】
(実施例3)
前記昇温領域105の温度を、5℃/分の速度で250℃まで昇温し、250℃を90分間保持した後、再び5℃/分の速度で300℃まで昇温し、300℃で30分間保持した以外は、実施例1と全て同じ条件で実施した。
ナイロン6由来の分解物の生成量(液体クロマトグラフィーのピーク面積)は100℃で一旦極大値を迎え、更に、ナイロン6由来の分解物とポリエチレンテレフタレート由来の分解物の生成量(液体クロマトグラフィーのピーク面積)は250℃で極大値を得た後、指数関数的に生成物量は減少した。250℃の保持終了後,再度昇温を開始しても分解物ピークは確認されなかった。
このことから、250℃で積層製品の加水分解反応は完全に終了することが分かった。
反応終了後、回収された固形分を赤外線分光法により解析した結果、ポリエチレンであることを確認した。このことから、250℃の亜臨界水処理により、積層製品からポリエチレンを回収できることを確認した。
結果を
図5に示す。ナイロン6由来の分解物のピーク面積値の合算値と、ポリエチレンテレフタレートの分解物のピーク面積値の合算値とをそれぞれ薄い灰色の棒グラフと濃い灰色の棒グラフで示した。
101…水導入管、102…ポンプ、103…昇温管、104…樹脂材料導入管、1041…バルブ、105…昇温領域、106…分解槽、107…樹脂材料、108…再生ポリオレフィン樹脂抜き出し管、1081…バルブ、109…分解物抜き出し管、1091…背圧弁、110…油水分離槽、111…油相抜き出し管、1111…バルブ、112…水循環路、113…焼結体フィルター、201…水導入管、202…ポンプ、203…昇温管、204…樹脂材料導入管、2041…バルブ、205a…第1昇温領域、205b…第2昇温領域、205c…第3昇温領域、206…分解槽、207…樹脂材料、208…再生ポリオレフィン樹脂抜き出し管、2081…バルブ、209a…第1分解物抜き出し管、2091a…背圧弁、209b…第2分解物抜き出し管、2091b…背圧弁、209c…第3分解物抜き出し管、2091c…背圧弁、210a…第1油水分離槽、210b…第2油水分離槽、210c…第3油水分離槽、211a…第1油相抜き出し管、2111a…バルブ、211b…第2油相抜き出し管、2111b…バルブ、211c…第3油相抜き出し管、2111c…バルブ、212…水循環路