(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035264
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】磁選機の捕集部材の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
B08B3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139615
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達彦
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA03
3B201AB03
3B201BB22
3B201BB92
(57)【要約】 (修正有)
【課題】捕集用ディスクの洗浄作業における作業者の負担を軽減でき周囲環境の悪化も防止できる磁選機の捕集部材の洗浄装置を提供する。
【解決手段】軸Aに捕集ディスクDが取り付けられた捕集部材CLを洗浄する磁選機の捕集部材の洗浄装置1であって、上部に開口2aを有する中空な本体部2と、本体部2内に軸Aが水平になった状態となるように捕集部材CLを保持する軸保持部と、本体部2の開口2aを開閉可能に覆い、本体部2との間に捕集部材CLの捕集ディスクDを外部から隔離した状態で収容する洗浄空間を形成する蓋部3と、蓋部3内に設けられた、軸保持部に保持された捕集部材CLに向けて洗浄液および/または洗浄気体を噴きつけるノズルと、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に捕集体が取り付けられた捕集部材を洗浄する磁選機の捕集部材の洗浄装置であって、
上部に開口を有する中空な本体部と、
該本体部内に前記軸が水平になった状態となるように前記捕集部材を保持する軸保持部と、
前記本体部の開口を開閉可能に覆い、該本体部との間に前記捕集部材の捕集体を外部から隔離した状態で収容する洗浄空間を形成する蓋部と、
該蓋部内に設けられた、前記軸保持部に保持された前記捕集部材に向けて洗浄液および/または洗浄気体を噴きつけるノズルと、を備えている
ことを特徴とする磁選機の捕集部材の洗浄装置。
【請求項2】
前記捕集部材における軸の一端が設置される捕集部材設置機構を備えており、
該捕集部材設置機構は、
前記捕集部材における軸の一端を保持する保持機構を有する設置部材を備えており、
該設置部材は、
該設置部材に保持された前記捕集部材の軸を鉛直にした状態とする待機位置と、該設置部材に保持された前記捕集部材の軸が水平になった状態とする洗浄位置と、の間で姿勢を変更可能に設けられており、
該捕集部材設置機構は、
前記設置部材を洗浄位置にすると、前記捕集部材が前記軸保持部に保持された状態となる位置に設置されている
ことを特徴とする請求項1記載の磁選機の捕集部材の洗浄装置。
【請求項3】
前記捕集部材から離脱した前記本体部内の磁性体を回収する回収手段を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の磁選機の捕集部材の洗浄装置。
【請求項4】
前記軸保持部に保持された前記捕集部材を振動させる振動機構を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の磁選機の捕集部材の洗浄装置。
【請求項5】
前記捕集体が、板状の捕集用ディスクであり、
前記ノズルを複数備えており、
該複数のノズルは、
前記複数枚の捕集用ディスクの表面に対して洗浄液または洗浄気体を噴きつける位置に配設されている
ことを特徴とする請求項1記載の磁選機の捕集部材の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁選機の捕集部材の洗浄装置に関する。さらに詳しくは、非磁性粉体を製造するプラント等において非磁性粉体に含まれる鉄等の不純物磁性体を除去する磁選機の捕集部材の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池材料等の非磁性粉体を製造するプラント等の設備では、製品である非磁性粉体に鉄等の不純物磁性体(以下単に磁性体という)が含まれていると、非磁性粉体を使用した製品に悪影響を与える可能性がある。そこで、非磁性粉体の製造工程では、永久磁石や電磁式磁石を使用した磁選機を使用し、永久磁石や電磁式磁石によって磁性体を吸着して磁性体を非磁性粉体から除去することが行われている。
【0003】
電磁式磁石の磁選機としては、特許文献1に記載された構造を有するものがある。特許文献1の磁選機では、磁性体を含む非磁性粉体を流す流路の周囲に励磁用コイルを配置し、流路内に強磁性マトリクスを配置したものが開示されている。この磁選機の場合、励磁用コイルに通電すれば流路内に磁界を発生させることができるので、この磁界によって強磁性マトリクスを磁化することができる。強磁性マトリクスを磁化した状態で流路内に磁性体を含む非磁性粉体を流せば、磁性体は強磁性マトリクスに吸着されるので、磁性体を非磁性粉体から除去することができる。
【0004】
また、強磁性マトリクスに吸着された磁性体が多くなると、強磁性マトリクスが磁性体を吸着する能力が低下するので、強磁性マトリクスに吸着した磁性体は、適宜、強磁性マトリクスから除去されて回収される。具体的には、励磁用コイルへの通電を中止すれば流路内の磁界がなくなり強磁性マトリクスが消磁されるので、強磁性マトリクスから磁性体を除去することができ、強磁性マトリクスから分離された磁性体を回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電磁式磁石の磁選機の場合、励磁用コイルへの通電を中止すれば流路内の磁界はなくなるものの、残留磁束により強磁性マトリクスから磁性体を完全に除去できず、磁性体が強磁性マトリクスに付着したまま残ってしまう場合がある。このような磁性体が多く付着した状態となれば、磁性体の除去効率が低下するので、定期的に強磁性マトリクスを洗浄して磁性体を除去する必要がある。
【0007】
強磁性マトリクスの洗浄には、ブラシによる洗浄や超音波洗浄などの方法が採用されている。具体的には、磁選機を分解して磁選機から人力で強磁性マトリクスを取り外したのち、強磁性マトリクスの洗浄が行われる。
【0008】
ここで、強磁性マトリクスが軸に複数枚の捕集用ディスクが取り付けられた構造を有している場合には、軸から複数枚の捕集用ディスクを取り外して洗浄が行われる。具体的には、養生シート等を敷いてその上に磁選機から取り外した強磁性マトリクスを置き、その状態で強磁性マトリクスの軸から捕集用ディスクを取り外し、養生シート等の上で各捕集用ディスクをブラシによって擦るなどして磁性体を除去している。
【0009】
このような洗浄作業は、作業者にとって非常に労力を要する作業であるし、捕集用ディスクから除去した磁性体によって周囲を汚したり周囲の環境を悪化させたりするという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、磁性体を捕集する捕集部材の洗浄作業における作業者の負担を軽減でき周囲環境の悪化も防止できる磁選機の捕集部材の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の磁選機の捕集部材の洗浄装置は、軸に捕集体が取り付けられた捕集部材を洗浄する磁選機の捕集部材の洗浄装置であって、上部に開口を有する中空な本体部と、該本体部内に前記軸が水平になった状態となるように前記捕集部材を保持する軸保持部と、前記本体部の開口を開閉可能に覆い、該本体部との間に前記捕集部材の捕集体を外部から隔離した状態で収容する洗浄空間を形成する蓋部と、該蓋部内に設けられた、前記軸保持部に保持された前記捕集部材に向けて洗浄液および/または洗浄気体を噴きつけるノズルと、前記捕集部材から離脱した前記本体部内の磁性体を回収する回収手段と、を備えていることを特徴とする。
第2発明の磁選機の捕集部材の洗浄装置は、第1発明において、前記捕集部材における軸の一端が設置される捕集部材設置機構を備えており、該捕集部材設置機構は、前記捕集部材における軸の一端を保持する保持機構を有する設置部材を備えており、該設置部材は、該設置部材に保持された前記捕集部材の軸を鉛直にした状態とする待機位置と、該設置部材に保持された前記捕集部材の軸が水平になった状態とする洗浄位置と、の間で姿勢を変更可能に設けられており、該捕集部材設置機構は、前記設置部材を洗浄位置にすると、前記捕集部材が前記軸保持部に保持された状態となる位置に設置されていることを特徴とする。
第3発明の磁選機の捕集部材の洗浄装置は、第1発明において、前記捕集部材から離脱した前記本体部内の磁性体を回収する回収手段を備えていることを特徴とする。
第4発明の磁選機の捕集部材の洗浄装置は、第1発明において、前記軸保持部に保持された前記捕集部材を振動させる振動機構を備えていることを特徴とする。
第5発明の磁選機の捕集部材の洗浄装置は、第1発明において、前記捕集体が、板状の捕集用ディスクであり、前記ノズルを複数備えており、該複数のノズルは、前記複数枚の捕集用ディスクの表面に対して洗浄液または洗浄気体を噴きつける位置に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、軸保持部によって保持された捕集部材にノズルから洗浄液および/または洗浄気体を噴きつけるので、軸から取り外さなくても捕集体を効果的に洗浄することができる。しかも、捕集部材の捕集体を本体部と蓋部によって形成された洗浄空間内に配置した状態で洗浄するので、洗浄により周囲が汚れることも防止できる。また、軸保持部によって捕集部材の軸が水平に保持されているので、板状の捕集体を使用した場合には、捕集体の表面を鉛直方向と平行にした状態で洗浄できるので、捕集体から分離された磁性体が捕集体に残留することを防止し易くなる。
第2発明によれば、待機位置となっている捕集部材設置機構の設置部材に捕集部材を取り付け、その状態から洗浄位置まで設置部材を回転させれば、捕集部材の軸を軸保持部に保持させることができる。よって、捕集部材を洗浄装置に設置する作業における作業者の負担を軽減できる。
第3発明によれば、捕集部材から離脱した磁性体の回収が容易になる。
第4発明によれば、振動機構による振動を捕集部材に加えることによって、捕集部材に付着している磁性体を除去し易くなる。
第5発明によれば、複数枚の捕集用ディスクの表面に対して複数のノズルから洗浄液または洗浄気体を噴きつけることができるので、捕集用ディスクに付着している磁性体を効果的に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略説明図であり、蓋部3を閉じた状態の正面図である。
【
図2】本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略説明図であり、蓋部3を閉じた状態の側面図である。
【
図3】本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略説明図であり、蓋部3を開いた状態の正面図である。
【
図4】本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略説明図であり、蓋部3を開いた状態における側面図の部分断面図である。
【
図5】本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略説明図であり、蓋部3を閉じた状態における正面図の部分断面図である。
【
図6】捕集部材設置機構20を設けた本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略説明図であり、設置部材22を待機位置にした状態の正面図の部分断面図である。
【
図7】捕集部材設置機構20を設けた本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略説明図であり、設置部材22を洗浄位置にした状態の正面図の部分断面図である。
【
図8】振動機構8を設けた本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1の概略正面図である。
【
図9】乾式自動磁選機DMの概略説明図であり、(A)は概略縦断面図であり、(B)は概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置は、電磁式磁石を使用する磁選機において粉体含まれる磁性体を捕集する捕集部材を洗浄するものであり、捕集部材を洗浄する作業における作業者の負担を軽減でき、洗浄作業の環境の悪化を防止できるようにしたことに特徴を有している。
【0015】
本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置が洗浄対象とする捕集部材(以下、単に捕集部材という場合がある)は、軸と軸に取り付けられた捕集体を有するものであればよく、捕集体の形状や構造はとくに限定されない。例えば、板状の捕集ディスクや棒状の捕集バーや格子状捕集ネット、粉体の安息角を考慮して捕集材を傾斜したデイスク、バー、ネット等を捕集体として採用することができる。
【0016】
また、捕集部材が設置される磁選機の流路、つまり、磁性体を除去する粉体が流れる磁選機の流路もとくに限定されない。捕集部材が、その軸の軸方向が粉体の流れる方向と平行となるように配置される流路であればよい。例えば、鉛直方向に粉体を落下させる流路等を捕集部材が設置される磁選機の流路として挙げることができる。
【0017】
また、捕集部材が設置される磁選機によって磁性体が除去される粉体もとくに限定されない。例えば、食品製造等の設備であれば、粉体として食品の原料や製品等を挙げることができ、また、除去する磁性体として主に鉄等を挙げることができる。
【0018】
以下では、鉛直方向に粉体を落下させる流路を有する乾式磁選機において、その流路に配置される捕集部材を本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置によって洗浄することを前提に説明する。
なお、本明細書において、「鉛直方向」という場合には、完全に鉛直な状態と、鉛直に対して若干傾いた状態の両方を含んでいる。
【0019】
<乾式自動磁選機DM>
まず、本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置を説明する前に、本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置(以下単に本実施形態の洗浄装置という場合がある)によって洗浄される捕集部材CLおよびこの捕集部材CLが設置される乾式自動磁選機DMについて説明する。
【0020】
図9(A)に示すように、乾式自動磁選機DMは、鉛直方向に伸びる流路FP、つまり、乾式自動磁選機DMによって磁性体が除去される粉体を流す流路FPを備えている。この流路FPの周囲には、流路FP内に磁界を発生する励磁用コイルECが設けられている。そして、流路FP内には、ステンレス(SUS430)等の強磁性体で形成された捕集部材CLが設けられている。この捕集部材CLは、軸Aと複数の捕集ディスクDとから形成されている。複数の捕集ディスクDは板状の部材であり、流路FPの上流側に位置する面(
図9では上側の面、以下第一面Daという)と、流路FPの下流側に位置する面(
図9では下側の面、以下第二面Dbという)と、を貫通する複数の孔Dhが形成されたものである(
図9(B)参照)。例えば、表裏を貫通する複数の貫通孔が形成されたパンチングプレートや金網等を捕集ディスクDとして挙げることができる。
【0021】
このような乾式自動磁選機DMでは、励磁用コイルECによって流路FP内に磁界を発生させれば、捕集部材CLが磁化されるので、その状態で流路FP内に粉体を流せば、捕集部材CLに磁性体を吸着して、磁性体を粉体から除去することができる。
【0022】
そして、流路FP内への粉体の供給を停止し、励磁用コイルECによる流路FP内の磁界発生を停止すれば、捕集部材CLが消磁され捕集部材CLに吸着されていた磁性体を捕集部材CLから離脱させることができ、捕集部材CLに吸着されていた磁性体を回収することができる。
【0023】
<本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1>
つぎに、本実施形態の磁選機の捕集部材の洗浄装置1(以下、単に本実施形態の洗浄装置1という場合がある)について説明する。
【0024】
本実施形態の洗浄装置1は、上述した捕集部材CLの軸Aを軸保持部5によって水平に保持した状態、かつ、本体部2と蓋部3との間に形成される浄化空間1h内に捕集部材CL(より詳しくは捕集部材CLの複数の捕集ディスクD)を収容した状態で、水などの洗浄液体や空気などの洗浄気体によって捕集部材CLを洗浄する装置である。
【0025】
<本体部2>
図1~
図4に示すように、本実施形態の洗浄装置1は、フレーム1fによって保持された本体部2を備えている。この本体部2は、上端に開口2aを有する中空な有底の容器であって、開口2aから下方に凹んだ空間2h、つまり、浄化空間1h(
図5参照)の一部を構成する空間2hを有している。この本体部2は、水などの液体や空気などの気体を透過しない素材(例えば、金属板等)によって形成されている。つまり、本体部2は、捕集部材CLを洗浄した水などの液体や空気などの気体が外部に漏れないように受け止めることができる構造を有している。
【0026】
図4および
図5に示すように、本体部2には、捕集部材CLの軸Aの両軸端を保持する一対の軸受5a,5aが設けられている。この一対の軸受5a,5aは、一対の軸受5a,5a間の距離(
図5では左右方向の距離)が捕集部材CLの軸Aよりも若干短くなるように配設されている。また、一対の軸受5a,5aは、捕集部材CLの軸Aを上方から配置でき、しかも、捕集部材CLの軸Aを配置すると捕集部材CLの軸Aが水平になるように設けられている。
【0027】
なお、一対の軸受5a,5aは、捕集部材CLの軸Aを保持しておくことができる構造であればよく、その構造はとくに限定されない。例えば、単に捕集部材CLの軸Aを載せて配置できる凹みが形成されただけの構造としてもよいし、捕集部材CLの軸Aをその軸方向の移動やその軸周りの回転の両方または一方ができないように保持する構造としてもよい。
【0028】
また、上述した「捕集部材CLの軸Aが水平」とは、捕集部材CLの軸Aが完全に水平になっている状態に限られず、軸Aがある程度水平に対して傾いている状態であっても、捕集部材CLの表面そのものが垂直になっている場合も含まれる。つまり、本実施形態の洗浄装置1を水平な場所に設置した状態でも一対の軸受5a,5aによって捕集部材CLの軸Aを保持する高さに差があり捕集部材CLの軸Aが水平に対して傾いている場合や、本実施形態の洗浄装置1を設置する場所が傾斜しているため捕集部材CLの軸Aが水平に対して傾いている場合も含んでいる。なお、本明細書で水平という場合には、上述した状態を含んでいる。
【0029】
<蓋部3>
図1~
図4に示すように、本実施形態の洗浄装置1は、本体部2の開口2aを開閉する蓋部3を備えている。この蓋部3は、本体部2と同様に、水などの液体や空気などの気体を透過しない素材(例えば、金属やプラスチック(PVC等)によって形成されている。
【0030】
この蓋部3は、下端に開口3aを有する中空な部材であって、開口3aから上方に凹んだ空間3h、つまり、浄化空間1h(
図5参照)の一部を構成する空間3hを有している。
図2および
図4に示すように、蓋部3は、その一端部(
図2、
図4では右側端部)が回転軸3gによって本体部2の一端部(
図2、
図4では右側端部)と連結されている。つまり、蓋部3は、回転軸3gを支点として本体部2に対して上下方向に揺動できるように設けられている。そして、蓋部3を下方に揺動させて蓋部3の下端3aと本体部2の上端2aとを接触させて蓋部3を本体部2に載せると(
図1、
図2参照)、蓋部3の空間3hと本体部2の空間2hとによって捕集部材CLを収容する浄化空間1hが形成され(
図5参照)、かつ、浄化空間1hを外部から隔離できるように蓋部3は形成されている。また、蓋部3の下端3aと本体部2の上端2aとを接触させた状態から、蓋部3を上方に揺動させれば、本体部2の空間2hを露出させることができる。なお、以下では、蓋部3を本体部2に載せることを「蓋部3を閉じる」といい、蓋部3を本体部2から離間することを「蓋部3を開く」という場合がある。
【0031】
図4および
図5に示すように、蓋部3には、一対の軸受5b,5bが設けられている。この一対の軸受5b,5bは、蓋部3を閉じた状態において、一対の軸受5a,5aと対応する位置に設けられている。そして、蓋部3を閉じると、一対の軸受5a,5aと一対の軸受5a,5aとによって捕集部材CLの軸Aを挟んで保持できるようになっている。なお、一対の軸受5a,5aと一対の軸受5b,5bとが、特許請求の範囲にいう軸保持部に相当する。
【0032】
そして、蓋部3は、蓋部3を閉じた状態で連結部4によって本体部2と連結できる構造となっている。つまり、蓋部3を閉じた状態において、本体部2に対する蓋部3の移動(つまり蓋部3の揺動)を連結部4によって固定できる構造となっている。
【0033】
<ノズル10>
図3~
図4に示すように、蓋部3の内面には、複数のノズル10が設けられている。この複数のノズル10は、水などの洗浄液および/または空気などの洗浄気体を噴き出すことができるものであり、配管等を介して高圧の洗浄液等を複数のノズル10に供給するポンプやコンプレッサーなどに連通されている。この複数のノズル10は、蓋部3を閉じた状態において、その噴出口が浄化空間1h内に収容されている捕集部材CLに向いた状態となるように設置されている。つまり、蓋部3を閉じた状態では、噴出口から噴出された高圧の洗浄液等が捕集部材CLに吹き付けられるように、複数のノズル10は蓋部3の内面に配設されている。
【0034】
<捕集部材CLの洗浄作業>
本実施形態の洗浄装置1は以上のごとき構造を有するので、以下のようにすれば、捕集部材CLを洗浄することができる。
【0035】
まず、蓋部3を開き、捕集部材CLを軸保持部5の一対の軸受5a,5aに載せて捕集部材CLを本体部2に設置する。すると、捕集部材CLは、軸Aが水平になった状態で、複数枚の捕集ディスクDが本体部2の空間内2hに収容された状態となる(
図3および
図4参照)。
【0036】
上記状態としたのち、蓋部3を閉じて連結部4によって蓋部3と本体部2とを連結すると、洗浄準備が完了する(
図1、
図2、
図5参照)。
【0037】
洗浄準備が完了すると、複数のノズル10に高圧の洗浄液等を供給する。すると、複数のノズル10から高圧の洗浄液等が噴き出し、高圧の洗浄液等が捕集部材CLの複数枚の捕集ディスクDに噴きつけられるので、高圧の洗浄液等によって複数枚の捕集ディスクDが洗浄される。
【0038】
ある程度の時間、高圧の洗浄液等を噴き付けると、複数のノズル10への高圧の洗浄液等の供給を停止し洗浄を終了する。その後、連結部4による蓋部3と本体部2との連結を解除し、蓋部3を開けば、洗浄された捕集部材CLを本体部2から取り出すことができる。
【0039】
以上のように、本実施形態の洗浄装置1を使用すれば、一対の軸受5a,5aおよび一対の軸受5b,5bによって保持された状態で浄化空間1hに収容されている捕集部材CLに複数のノズル10から洗浄液および/または洗浄気体を噴きつけることができるので、軸Aから複数の捕集用ディスクDを取り外さなくても複数の捕集用ディスクDを効果的に洗浄することができる。
【0040】
また、一対の軸受5a,5aおよび一対の軸受5b,5bによって捕集部材CLの軸Aが水平に保持されており、複数の捕集用ディスクDの表面を鉛直方向と平行にした状態で洗浄するので、複数の捕集用ディスクDから分離された磁性体が複数の捕集用ディスクDに残留することを防止できる。
【0041】
そして、作業者は、捕集部材CLを本実施形態の洗浄装置1にセットするだけであるので、複数の捕集用ディスクDを軸Aから取り外したり、取り外した複数の捕集用ディスクDをそれぞれ洗浄する必要がない。また、洗浄後も複数の捕集用ディスクDを軸Aに取り付ける作業も不要になるので、作業者の洗浄作業の負担を大幅に軽減できる。
【0042】
さらに、捕集部材CLの捕集用ディスクDを本体部2と蓋部3によって形成された洗浄空間1h内に配置した状態で洗浄するので、洗浄に使用した洗浄水等や複数の捕集用ディスクDから分離された磁性体が周囲に飛散することを防止できる。したがって、洗浄作業によって周囲が汚れることも防止できる。すると、洗浄作業のための準備、例えば、周囲の汚れを防止するための養生などの作業も簡単になるので、洗浄作業のための準備作業も軽減できる。
【0043】
<捕集部材設置機構20>
本実施形態の洗浄装置1は、以下のような捕集部材設置機構20を設けていれば、作業者の洗浄作業の負担をより軽減することができる。
【0044】
図6および
図7に示すように、本体部2の側方には、捕集部材設置機構20が設けられている。この捕集部材設置機構20は、捕集部材CLをその軸Aを鉛直にした状態(
図6参照)と、捕集部材CLの軸Aを水平にした状態(
図7参照)と、の間で姿勢を変更できる機能を有するものである。つまり、捕集部材設置機構20は、鉛直方向に伸びる流路FPを有する乾式自動磁選機DMに設置される捕集部材CL(
図9参照)を、その流路FPに設置されている状態とほぼ同じ姿勢と、その姿勢からから90度回転させた状態と、の間で姿勢を変更できる機能を有するものである。
【0045】
図6および
図7に示すように、捕集部材設置機構20は、軸21と、設置部材22と、設置部23と、を備えている。
【0046】
軸21は、ブラケット等を介して、その軸方向が水平となるようにフレーム1fに回転可能に設置されている。しかも、軸21は、その軸方向が一対の軸受5a,5aによって保持されている状態の捕集部材CLの軸Aと直交するように設置されている。
【0047】
この軸21には、設置部材22が取り付けられている。具体的には、設置部材22は、軸21がその中心軸周りに回転すると、軸21とともに回転するように設けられている。この設置部材22は、本体部2の一対の軸受5a,5aの側方に位置するように軸22に取り付けられている。
【0048】
この設置部材22の側面には、捕集部材CLの軸Aの一端を設置できる設置部23が設けられている。この設置部23には、捕集部材CLの軸Aの一端を収容する穴23aが形成されている。この穴23aは、その軸方向が軸21の中心軸と直交するように形成され、かつ、その直径が捕集部材CLの軸Aの直径よりも若干大きくなるように形成されている。つまり、穴23aは、捕集部材CLの軸Aの一端を挿入すると、捕集部材CLの軸Aが傾いたりしないように保持できる大きさに形成されている。なお、設置部23に、穴23aに挿入した捕集部材CLの軸Aが傾いたりすることを防止する固定機構を設けてもよい。
【0049】
しかも、穴23aは、設置部材22が軸21とともに回転すると、穴23aの中心軸が鉛直となった状態(
図6参照)と、中心軸が水平となった状態(
図7参照)との間で姿勢が変更されるように形成されている。なお、穴23aの中心軸が鉛直となった状態が、特許請求の範囲にいう設置部材22の待機状態に相当し、穴23aの中心軸が水平となった状態が、特許請求の範囲にいう設置部材22の洗浄位置に相当する。
【0050】
さらに、穴23aは、中心軸が水平となった状態(設置部材22を洗浄位置とした状態では、その中心軸が、軸保持部5の一対の軸受5a,5aに捕集部材CLの軸Aを保持させた状態における軸Aの中心軸とほぼ同軸になるように形成されている。ここでいう「ほぼ同軸」には、捕集部材CLの軸Aの中心軸と穴23aの中心軸とが完全に同軸となる状態、捕集部材CLの軸Aの中心軸と穴23aの中心軸とが穴23aの半径方向において若干のずれがある状態、捕集部材CLの軸Aの中心軸と穴23aの中心軸とに若干の傾きがある状態、を含んでいる。
【0051】
捕集部材設置機構20が上記のごとき構成を有するので、設置部材22を待機位置に配置すれば、捕集部材CLをその軸Aの軸方向を鉛直にした状態で保持することができ(
図6参照)、その状態から設置部材22を回転させて設置部材22を水平位置にすれば、捕集部材CLをその軸Aの軸方向を水平にした状態とすることができる(
図7参照)。そして、設置部材22を洗浄位置とした状態とすれば、捕集部材CLの軸Aを、その軸方向が水平になった状態で保持部5の一対の軸受5a,5aに保持させることができる。
【0052】
また、設置部材22を待機位置に配置しておけば、作業者は、捕集部材CLを、乾式自動磁選機DMの流路FPに設置されている状態のまま、言い換えれば、乾式自動磁選機DMの流路FPから取り外した姿勢のままで設置部材22に設置することができる。そして、設置部材22に捕集部材CLを設置すれば、捕集部材CLの軸Aを設置部材22に保持させた状態で捕集部材CLの軸Aを倒すだけで、捕集部材CLをその軸Aの軸方向を水平にして保持部5の一対の軸受5a,5aに保持させかつ複数の捕集ディスクDを本体部2の開口(つまり空間2h)に配置することができるので、作業者が本実施形態の洗浄装置1に捕集部材CLを設置する作業の負担を軽減することができる。なお、設置部材22に設置した捕集部材CLの軸Aを操作しやすくするために、ハンドルHを捕集部材CLの軸Aに取り付けてもよい。
【0053】
上述した設置部材22の設置部23の穴23aが特許請求の範囲にいう設置部材の保持機構に相当する。
【0054】
なお、設置部材の保持機構は、捕集部材CLの軸Aを軸21の中心軸と直交するように設置でき、かつ、設置部材を待機位置から洗浄位置まで回転させても捕集部材CLの軸Aの一端部を保持しておくことがでるのであれば、上記の構成に限定されない。
【0055】
また、軸21はフレーム1fに回転が固定されていてもよく、その場合には、軸21の中心軸周りに移動できるように設置部材22を軸21に取り付ければ、上記と同様の効果を得ることができる。
【0056】
<本体部2および蓋部3について>
図6および
図6に示すように、本体部2は、その底部に、空間2h内と外部との間を連通する排出口2bを設けてもよい。排出口2bを設けておけば、液体によって捕集部材CLを洗浄した場合には、洗浄使用した液体と捕集部材CLから除去された磁性体等を排出口2bを通して外部に排出することができる。また、排出口2bを配管などを介して吸引装置に接続しておけば、空間2h内の液体の回収が容易になるし、気体で洗浄した場合でも空間2h内の気体と捕集部材CLから除去された磁性体等を回収することができる。なお、吸引装置が特許請求の範囲の請求項3にいう回収装置に相当する。
【0057】
蓋部3は、必ずしも本体部2の上端に載せた状態で連結部4によって本体部2に連結できる構造となっていなくてもよく、単に本体部2の上端に載せておくだけの構造としてもよい。しかし、連結部4によって蓋部3を本体部2に連結するようにしておけば、ノズル10から高圧の洗浄液等を噴き出した際に、蓋部3ががたついたり蓋部3と本体部2との間に隙間ができたりすることを防止できる。
【0058】
また、上記のように、蓋部3を本体部2に対して揺動可能に設ければ、簡単に蓋部3の開閉を行うことができるが、蓋部3は、本体部2の開口を開閉可能に覆うことができるようになっていればよく、上記のごとき構造に限られない。例えば、蓋部3は、本体部2から着脱できるように設けてもよい。この場合でも、連結部4によって蓋部3を本体部2の上端に載せた状態で両者を連結できる構造となっていれば、蓋部3ががたついたり蓋部3と本体部2との間に隙間ができたりすることを防止できる。
【0059】
蓋部3の下端3aと本体部2の上端2aとは、直接接するようになっていてもよいが、両者間にパッキン等を設けてもよい。その場合には、蓋部3を閉じた状態において、浄化空間1hを外部から気密液密に分離することも可能になる。この場合には、一対の軸受5a,5aや一対の軸受5b,5bにおいて捕集部材CLの軸Aと接触する面にもパッキン等を設けることが望ましい。
【0060】
また、本体部2と蓋部3とは同じ素材によって形成してもよいが、別な素材で形成してもよい。蓋部3は作業者が操作して開閉するのできるだけ軽量な素材が好ましく、例えば、金属板等が好ましい。なお、蓋部3には、浄化空間1h内を確認できるように、アクリル等によって形成された窓を設けても良い。
【0061】
<複数のノズル10について>
複数のノズル10は、噴出口から噴出された高圧の洗浄液等が捕集部材CLに吹き付けられるように設けられていればよく、その設置位置などはとくに限定されない。複数枚の捕集用ディスクDに付着した磁性体を除去する効率を向上させる上では、複数枚の捕集用ディスクDの表面(第一面Daや第二面Db)に高圧の洗浄液等を噴きつけることができるように配設されていることが望ましい。かかる構成とすれば、複数枚の捕集用ディスクDの表面に付着した磁性体に洗浄液等を直接噴きつけることができるので、捕集用ディスクDの表面に付着している磁性体を効果的に除去できる。
【0062】
例えば、複数のノズル10から噴き出す高圧の洗浄液等がある程度の噴き出し角を有している場合(例えば円錐状に高圧の洗浄液等を噴き出す場合)であれば、複数枚の捕集用ディスクDの表面に高圧の洗浄液等を噴きつけ易くなる。とくに、噴き出し角が小さノズル10を使用してノズル10から噴き出す高圧の洗浄液等の噴出軸が複数枚の捕集用ディスクDの表面と交差するようにすれば、高圧の洗浄液等による磁性体の除去効果を高くできる。
【0063】
<振動機構8について>
図8に示すように、本実施形態の洗浄装置1は、バイブレータや振動発振子、ノッカー等の振動機8aを備えた振動機構8を設けてもよい。振動機構8を設ければ、一対の軸受5a,5aと一対の軸受5b,5bに保持された状態で浄化空間1h内に収容されている捕集部材CLに対して振動を加えることができるので、捕集部材CLに高圧の洗浄液等を噴きつけた際に、複数枚の捕集用ディスクDの表面から磁性体を除去し易くなる。つまり、捕集部材CLに振動を加えることによって、複数枚の捕集用ディスクDと磁性体の付着力を弱めることができるので、捕集部材CLの複数枚の捕集用ディスクDの洗浄効果を高めることができる。
【0064】
振動機構8の構成はとくに限定されず、捕集部材CLに対して振動を加えることができる構成であればよい。例えば、
図8に示すように、本体部2が設置されているフレーム1fの部材faをバネなど緩衝部材8bを介してフレーム1fの基礎fbに連結する構成とし、部材faに振動機8aを取りつければ、振動機8aを作動させれば、部材faとともに本体部2および捕集部材CLを振動させることができる。
【0065】
なお、捕集部材CLに対する磁性体の付着が弱い場合や簡易洗浄を行う場合には、洗浄作業の際に、高圧の洗浄液等を捕集部材CLに噴きつけずに、振動機構8から捕集部材CLに対して振動を加えるだけとしてもよい。
【0066】
<軸固定部>
振動機構8を設けた場合には、一対の軸受5a,5aと一対の軸受5b,5bに保持された状態における捕集部材CLの軸Aが上方に移動することを抑える軸固定部を設けることが望ましい。軸固定部を設ければ、捕集部材CLの軸Aを下方に押さえておくことができるので、振動機構8によって捕集部材CLに振動が加わっても、捕集部材CLの軸Aが上方への移動することを抑えることができる。すると、振動機構8から加わる振動によって、捕集部材CLの軸Aが軸保持部5の軸受部5aから外れることを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の磁選機の捕集部材の洗浄装置は、非磁性粉体製造プラント等において搬送される粉体に含まれる鉄等の不純物磁性体を除去する装置として適している。
【符号の説明】
【0068】
1 洗浄装置
1h 浄化空間
1f フレーム
2 本体部
2a 開口
2h 空間
3 蓋部
3a 開口
3h 空間
5 軸保持部
5a 軸受
8 振動機構
10 ノズル
20 捕集部材設置機構
21 軸
22 設置部材
23 設置部
23a 穴
CL 捕集部材
A 軸
D 捕集ディスク