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特開2024-35379分散液、積層体、セラミックグリーンシートの製造方法、セラミックコンデンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035379
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】分散液、積層体、セラミックグリーンシートの製造方法、セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/634 20060101AFI20240307BHJP
   C04B 35/468 20060101ALI20240307BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C04B35/634
C04B35/468
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139796
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】小林 博美
(72)【発明者】
【氏名】竹上 竜太
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E082AA01
5E082AB03
5E082FF05
5E082FG26
(57)【要約】
【課題】基材に対する剥離性に優れるセラミックグリーンシート、積層体、セラミックグリーンシートの製造方法及びセラミックコンデンサの製造方法の提供。
【解決手段】樹脂と、セラミックと、溶媒とを含む分散液であって、樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、分散液。
要件X:樹脂Aが有する分岐鎖状のアルキル基中のメチル基の含有量が、樹脂Aの全質量に対して、25質量%以上である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、セラミックと、溶媒とを含む分散液であって、
前記樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、分散液。
要件X:前記樹脂Aが有する前記分岐鎖状のアルキル基中のメチル基の含有量が、前記樹脂Aの全質量に対して、25質量%以上である。
【請求項2】
前記樹脂が、要件Y1を更に満たす前記樹脂A、要件Y2を満たす前記樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の分散液。
要件Y1:前記樹脂A中のフッ素原子及びケイ素原子以外のヘテロ原子の含有量が、前記樹脂Aの全質量に対して、25質量%以下である。
要件Y2:前記樹脂B中のフッ素原子及びケイ素原子以外のヘテロ原子の含有量が、前記樹脂Bの全質量に対して、25質量%以下である。
【請求項3】
更に、分岐鎖状のアルキル基を有する低分子化合物を含む、請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
前記低分子化合物が、芳香環を有する、請求項4に記載の分散液。
【請求項5】
前記樹脂の分子量をゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した際に、ピークトップの数が2以上である、請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項6】
セラミックグリーンシートと、ポリエステル基材とを有する積層体であって、
前記セラミックグリーンシートが、樹脂と、セラミックとを含み、
前記樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、積層体。
要件X:前記樹脂Aが有する前記分岐鎖状のアルキル基中のメチル基の含有量が、前記樹脂Aの全質量に対して、25質量%以上である。
【請求項7】
分散液をポリエステル基材上に塗布して、セラミックグリーンシートを製造する工程を含む、セラミックグリーンシートの製造方法であって、
前記分散液が、樹脂と、セラミックと、溶媒とを含み、
前記樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、セラミックグリーンシートの製造方法。
要件X:前記樹脂Aが有する前記分岐鎖状のアルキル基中のメチル基の含有量が、前記樹脂Aの全質量に対して、25質量%以上である。
【請求項8】
請求項6に記載の積層体を用いて、セラミックコンデンサを製造する、セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液、積層体、セラミックグリーンシートの製造方法及びセラミックコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックグリーンシートは、積層セラミックコンデンサ、積層チップコイル及び多層セラミック基板等の積層セラミック電子部品の製造のために使用されている。また、セラミックグリーンシートは、一般的には、原料のセラミックを含む分散液を用いて製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の官能基を有するポリマー、及び、親水性部位と疎水性部位との両方を有する離型剤等を含むセラミックスラリーを用いるセラミックグリーンシートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-141394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のセラミックコンデンサの大容量化及び小型化に伴ってセラミックグリーンシートのより一層の薄膜化が検討されている。その薄膜化に伴い、セラミックグリーンシートの基材(ポリエステル基材)に対する剥離性の向上が求められている。セラミックグリーンシートは、セラミックを含む分散液を基材(ポリエステル基材)上に塗工等して形成され、最終的には基材からセラミックグリーンシートが剥離される。その際に、容易に剥離できるように、基材に対する剥離性に優れるセラミックグリーンシートが求められている。
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載された分散液について検討したところ、得られるセラミックグリーンシートの基材に対する剥離性に改善の余地があることを知見した。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、基材に対する剥離性に優れるセラミックグリーンシートを製造できる、分散液の提供を課題とする。
また、本発明は、積層体、セラミックグリーンシートの製造方法及びセラミックコンデンサの製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0009】
〔1〕
樹脂と、セラミックと、溶媒とを含む分散液であって、
樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、後述する要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、分散液。
〔2〕
樹脂が、後述する要件Y1を更に満たす樹脂A、後述する要件Y2を満たす樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、〔1〕に記載の分散液。
〔3〕
更に、分岐鎖状のアルキル基を有する低分子化合物を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の分散液。
〔4〕
上記低分子化合物が、芳香環を有する、〔3〕に記載の分散液。
〔5〕
上記樹脂の分子量をゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した際に、ピークトップの数が2以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の分散液。
〔6〕
セラミックグリーンシートと、ポリエステル基材とを有する積層体であって、
セラミックグリーンシートが、樹脂と、セラミックとを含み、
樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、後述する要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、積層体。
〔7〕
分散液をポリエステル基材上に塗布して、セラミックグリーンシートを製造する工程を含む、セラミックグリーンシートの製造方法であって、
分散液が、樹脂と、セラミックと、溶媒とを含み、
樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、後述する要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、セラミックグリーンシートの製造方法。
〔8〕
〔6〕に記載の積層体を用いて、セラミックコンデンサを製造する、セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基材に対する剥離性に優れるセラミックグリーンシートを製造できる、分散液を提供できる。
また、本発明によれば、積層体、セラミックグリーンシートの製造方法及びセラミックコンデンサの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本明細書において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
本明細書において表記される2価の基の結合方向は、特段の断りがない限り、制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。また、上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく、「X-O-CO-Z」であってもよい。
【0015】
本明細書において、分散液又はセラミックグリーンシート中の各種成分の量は、分散液又はセラミックグリーンシート中に各種成分に該当する物質が複数存在する場合、特段の断りがない限り、分散液又はセラミックグリーンシート中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本明細書において、固形分とは、セラミックグリーンシートを形成する各種成分を意味し、溶媒は含まれない。また、セラミックグリーンシートを形成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0017】
[分散液]
本発明の分散液は、樹脂と、セラミックと、溶媒とを含む分散液であって、樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、後述する要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
以下、樹脂A、樹脂B及び樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む樹脂を、「特定樹脂」ともいう。また、樹脂Aが有する分岐鎖状のアルキル基に含まれるメチル基を、「メチル基X」ともいう。
本発明の分散液に含まれる特定樹脂は、その特徴的な構造を有するため、形成されるセラミックグリーンシートの表面自由エネルギーを低下させることができ、ポリエステル基材との密着力を弱める効果がある。その結果、ポリエステル基材に対する剥離性が向上し得ると推定される。
【0018】
〔特定樹脂〕
分散液は、特定樹脂を含む。
特定樹脂は、樹脂A、樹脂B及び樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
特定樹脂は、樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの少なくとも1つを含んでいれば、樹脂A、樹脂B及び樹脂C以外のその他樹脂を含んでいてもよい。
本明細書において、ある樹脂が、樹脂A、樹脂B及び樹脂Cのうちの2種以上の樹脂に該当する場合、樹脂C又は樹脂Bに優先的に分類する。具体的には、分岐鎖状のアルキル基を有し、メチル基Xの含有量が樹脂Aの全質量に対して25質量%以上である芳香族炭化水素樹脂は、定義上、樹脂A及び樹脂Cに該当するが、本明細書においては樹脂Cに分類して取り扱う。
【0019】
特定樹脂は、後述する要件Y1を更に満たす樹脂A、後述する要件Y2を満たす樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0020】
<樹脂A>
樹脂Aは、分岐鎖状のアルキル基を有し、要件Xを満たす樹脂である。換言すると、分岐鎖状のアルキル基を有し、メチル基Xの含有量が樹脂Aの全質量に対して25質量%以上の樹脂である。
なお、樹脂Aは、後述する各種成分とは異なる成分である。具体的には、樹脂Aは、樹脂B及び樹脂Cのいずれとも異なり、可塑剤とも異なる。
【0021】
要件X:樹脂Aが有する分岐鎖状のアルキル基中のメチル基(メチルX)の含有量が、樹脂Aの全質量に対して、25質量%以上である。
メチル基Xの含有量は、樹脂Aの全質量に対して、25質量%以上であり、28質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。上限は、樹脂Aの全質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
なお、メチル基Xには、樹脂Aの主鎖に直接結合するメチル基は含まれない。具体的には、後述するメチル基Zは、メチル基Xに該当しない。
メチル基Xは、樹脂Aが側鎖に有する分岐鎖状のアルキル基を構成するメチル基であることが好ましい。
【0022】
メチル基Xの含有量は、以下の方法で算出できる。
樹脂Aの合成に用いる原料(モノマー)の構造が既知の場合、その原料の構造及び含有量等から算出できる。具体的には、一例として、以下に示す樹脂AXを用いて詳述する。
樹脂AXは、t-ブチルアクリレートとイソプロピルメタアクリレートとの共重合体(80質量%/20質量%)である。
t-ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位1つ当たりのメチル基Xの数は3個であり、1つ当たりのメチル基Xの分子量は15g/molである。よって、t-ブチルアクリレートに由来する繰り返し単位中のメチル基Xの含有量は、「3×15×0.8=36g/mol」となる。
上記同様に、イソプロピルメタアクリレートに由来する繰り返し単位1つ当たりのメチル基Xの数は2個であり、1つ当たりのメチル基Xの質量は15g/molである。なお、以下の構造式中の矢印で指し示すメチル基は、樹脂Aの主鎖に直接結合するメチル基(メチル基Z)であるため、メチル基Xに該当しない。よって、イソプロピルメタアクリレートに由来する繰り返し単位中のメチル基Xの含有量は、「2×15×0.2=6g/mol」となる。
従って、樹脂AX中のメチル基Xの含有量は、樹脂AXの全質量に対して、「{(36+6)/(t-ブチルアクリレートの分子量×0.8+イソプロピルメタアクリレート×0.2)}×100=32.8質量%」となる。
上記の計算式で示したように、メチル基Xの含有量は、樹脂Aを構成する繰り返し単位の構造、及び、その構造中におけるメチル基の含有量を算出することにより求めることができる。また、上記のように、樹脂Aが複数の繰り返し単位を含む場合、各繰り返し単位の樹脂Aの全繰り返し単位に対する含有割合(質量割合)と、各繰り返し単位中におけるメチル基の含有量(含有割合)とを掛け合わせて、得られた数値を合計することにより、上記メチル基Xの含有量を算出できる。
樹脂Aの合成に用いる原料(モノマー)の構造が未知の場合、メチル基Xの含有量は、例えば、NMR(核磁気共鳴)、元素分析及びpy-GC/MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置)等の公知の方法を用いて樹脂Aの構造を特定した後に、上記原料が既知である場合と同様の方法で算出できる。
【0023】
【化1】
【0024】
メチル基Xを有する分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、2-プロピル基、1-イソブチル基、t-ブチル基、2-ブチル基、t-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、3-メチル-2-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2-エチル-1-ヘキシル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、3-メチル-3-ペンチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、2,4-ジメチル-3-ペンチル基、3,5,5-トリメチル-1-ヘキシル基及び2,6,8-トリメチル-4-ノニル基が挙げられ、t-ブチル基が好ましい。
また、メチル基Xを有する分岐鎖状のアルキル基としては、以下の分岐鎖状のアルキル基が好ましい。なお、以下の分岐鎖状のアルキル基におけるかっこ書き内の数値は、メチル基Xの数を示す。*は、結合位置を表す。
【0025】
【化2】
【0026】
樹脂Aとしては、分岐鎖状のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートに由来する繰り返し単位を有する樹脂が好ましく、分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートに由来する繰り返し単位を有する樹脂がより好ましい。
【0027】
樹脂Aは、式(A)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
式(A)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。RA1は、分岐鎖状のアルキル基を表す。RA2は、水素原子又はメチル基を表す。
で表される2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-CONR-、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基及びこれらを組み合わせた2価の連結基が挙げられる。Rは、水素原子又は置換基を表す。
としては、2価の連結基が好ましく、-COO-又は-CONR-がより好ましく、-COO-が更に好ましい。Rとしては、水素原子が好ましい。
A1で表される分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、上述した、メチル基Xを有する分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
A2としては、水素原子が好ましい。
【0030】
樹脂A中のフッ素原子及びケイ素原子以外のヘテロ原子(以下、「特定ヘテロ原子」ともいう。)の含有量は、樹脂Aの全質量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。下限は、樹脂Aの全質量に対して、0質量%以上が好ましい。
樹脂Aは、要件Y1を更に満たすことが好ましい。
要件Y1:樹脂A中のフッ素原子及びケイ素原子以外のヘテロ原子(特定ヘテロ原子)の含有量が、樹脂Aの全質量に対して、25質量%以下である。
なお、特定ヘテロ原子は、フッ素原子及びケイ素原子以外のヘテロ原子である。具体的には、水素原子、炭素原子、フッ素原子及びケイ素原子以外の原子を意味し、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子であることが好ましい。換言すると、上記樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量は、上記樹脂Aにおける水素原子、炭素原子、フッ素原子及びケイ素原子以外の原子の合計含有量を意味し、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の合計含有量であることが好ましい。
特定ヘテロ原子の含有量は、樹脂Aの合成に用いる原料(モノマー)の構造が既知の場合、その原料の構造及び含有量等から算出できる。樹脂Aの合成に用いる原料(モノマー)の構造が未知の場合、NMR(核磁気共鳴)、元素分析及びpy-GC/MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置)等の公知の方法を用いて樹脂Aの構造を特定した後に、その樹脂の構造等から算出できる。
【0031】
樹脂Aは、フッ素原子を実質的に有さないことも好ましい。
フッ素原子を実質的に有さないとは、樹脂Aのフッ素原子の含有量が、樹脂Aの全質量に対して、1質量%以下を意味し、0.1質量%以下が好ましい。
フッ素原子の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量の測定方法を参考にして測定できる。
【0032】
樹脂Aの重量平均分子量は、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上が更に好ましい。上限は、500000以下が好ましく、300000以下がより好ましい。
重量平均分子量は、後述するピークトップの数の測定と同様の方法で測定した際のポリスチレンの換算値である。
【0033】
<樹脂B>
樹脂Bは、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂である。
樹脂Bがシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有さず、トリアルキルシリル基を有するため、ポリエステル基材に対する剥離性を向上させつつ、最終物のセラミックコンデンサにはシロキサン結合が残存せず、静電容量及び電気抵抗等の電気的特性にも優れる。
なお、樹脂Bは、上記各種成分及び後述する各種成分とは異なる成分である。具体的には、樹脂Bは、樹脂A及び樹脂Cのいずれとも異なり、可塑剤とも異なる。
【0034】
樹脂Bが有するトリアルキルシリル基を構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。なお、上記炭素数は、トリアルキルシリル基を構成するアルキル基のそれぞれの炭素数を意味し、アルキル基の合計炭素数ではない。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。
トリアルキルシリル基を構成するそれぞれのアルキル基は、同一又は異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0035】
樹脂Bは、トリアルキルシリル基と重合性基とを有する単量体に由来する繰り返し単位を有することが好ましく、トリアルキルシリル基とアリル基とを有する単量体に由来する繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0036】
樹脂Bは、式(B)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0037】
【化4】
【0038】
式(B)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。RB1~RB3は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。RB4は、水素原子又はメチル基を表す。
で表される2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-CONR-、アルキレン基(シクロアルキレン基であってもよい。)、アルケニレン基、アリーレン基及びこれらを組み合わせた2価の連結基が挙げられる。Rは、水素原子又は置換基を表す。
としては、2価の連結基が好ましく、-COO-、-CONR-又はアルキレン基がより好ましく、アルキレン基が更に好ましい。Rとしては、水素原子が好ましい。
で表されるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。
上記アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
上記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基が挙げられる。
B1~RB3で表されるアルキル基としては、例えば、樹脂Bが有するトリアルキルシリル基を構成するアルキル基が挙げられる。
B4としては、水素原子が好ましい。
【0039】
樹脂B中のメチル基Yの含有量は、樹脂Bの全質量に対して、1~50質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~40質量%が更に好ましい。
なお、メチル基Yは、主鎖に直接結合するメチル基以外のメチル基である。メチル基Yは、分岐鎖状のアルキル基に含まれるメチル基であってもよく、分岐鎖状のアルキル基以外のアルキル基に含まれるメチル基であってもよい。
メチル基Yの含有量は、メチル基Xの含有量と同様の方法で測定できる。
【0040】
樹脂Bの特定ヘテロ原子の含有量は、樹脂Bの全質量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。下限は、樹脂Bの全質量に対して、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
樹脂Bは、要件Y2を満たすことが好ましい。
要件Y2:樹脂B中のフッ素原子及びケイ素原子以外のヘテロ原子(特定ヘテロ原子)の含有量が、樹脂Bの全質量に対して、25質量%以下である。
特定ヘテロ原子の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量と同様の方法で測定できる。
【0041】
樹脂Bは、フッ素原子を実質的に有さないことも好ましい。
フッ素原子を実質的に有さないとは、樹脂Bのフッ素原子の含有量が、樹脂Bの全質量に対して、1質量%以下を意味し、0.1質量%以下が好ましい。
フッ素原子の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量の測定方法を参考にして測定できる。
【0042】
樹脂Bの重量平均分子量は、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上が更に好ましい。上限は、300000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。
重量平均分子量は、樹脂Aの重量平均分子量と同様の方法で測定できる。
【0043】
<樹脂C>
樹脂Cは、炭素原子と水素原子とのみからなり、芳香環を有する樹脂(芳香族炭化水素樹脂)である。
樹脂Cは、炭素原子と水素原子とのみからなり、ヘテロ原子を有さないため、樹脂Cを含む分散液を用いて形成されるセラミックグリーンシートの表面自由エネルギーを低下させることができる結果、剥離性に優れる。
なお、樹脂Cは、上記各種成分及び後述する各種成分とは異なる成分である。具体的には、樹脂Cは、樹脂A及び樹脂Bのいずれとも異なり、可塑剤とも異なる。
【0044】
樹脂Cが有する芳香環は、単環及び多環のいずれであってもよく、単環が好ましい。
上記芳香環の炭素数は、6~30が好ましく、6~12がより好ましい。
上記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。
樹脂Cは、更に脂肪族炭化水素基を有していてもよい。なお、上記芳香環が脂肪族炭化水素基を有していてもよく、上記芳香環以外の部分構造に脂肪族炭化水素基を有していてもよい。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
上記脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。
上記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
【0045】
樹脂Cは、式(C)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0046】
【化5】
【0047】
式(C)中、Lは、単結合又はアルキレン基を表す。Arは、芳香環基を表す。RC1は、アルキル基を表す。RC2は、水素原子又はメチル基を表す。ncは、0~5の整数を表す。
で表されるアルキレン基としては、例えば、Lで表されるアルキレン基が挙げられる。
としては、単結合が好ましい。
Arで表される芳香環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
上記芳香環基の炭素数は、6~30が好ましく、6~12がより好ましい。
上記芳香環基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基及びアントラセン環基が挙げられ、ベンゼン環基が好ましい。
C1で表されるアルキル基としては、例えば、樹脂Cが有し得る脂肪族炭化水素基のうちのアルキル基が挙げられる。
C2としては、水素原子が好ましい。
ncとしては、0~3の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。
C1が複数存在する場合、RC1同士は同一又は異なっていてもよい。
【0048】
樹脂Cは、耐熱性及び分散液の塗布性の点で、α位に置換基を有するスチレンに由来する繰り返し単位(例えば、α-メチルスチレンに由来する繰り返し単位等)を有さないことが好ましい。また、樹脂Cは、分散液の塗布性の点で、樹脂Cの主鎖に芳香環を有する繰り返し単位を有することも好ましい。更に、樹脂Cは、ポリスチレン樹脂(無置換のスチレンに由来する繰り返し単位からなる樹脂)を含まないことも好ましい。
【0049】
樹脂C中のメチル基Yの含有量は、樹脂Cの全質量に対して、1~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、20~40質量%が更に好ましい。
なお、メチル基Yは、上記のとおりである。
メチル基Yの含有量は、メチル基Xの含有量と同様の方法で測定できる。
【0050】
樹脂Cの重量平均分子量は、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上が更に好ましい。上限は、500000以下が好ましく、300000以下がより好ましい。
重量平均分子量は、樹脂Aの重量平均分子量と同様の方法で測定できる。
【0051】
特定樹脂の特定ヘテロ原子の含有量は、特定樹脂の全質量に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。下限は、特定樹脂の全質量に対して、0質量%以上が好ましい。
特定ヘテロ原子の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量と同様の方法で測定できる。
【0052】
特定樹脂の分子量を、以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際に、ピークトップの数が2以上であることが好ましい。換言すると、特定樹脂は、重量平均分子量の異なる2以上の樹脂を含むことが好ましい。
・カラム:TSK gel Super HZM-N(東ソー社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計
・流速:0.35mL/min
・カラム温度:40℃
・測定濃度:1mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
【0053】
特定樹脂は、以下の要件を満たすことも好ましい。なお、以下の各要件を満たす数が多いほどより好ましい。
要件1:特定樹脂が、シロキサン結合を実質的に有さない。
要件2:特定樹脂が、フッ素原子を実質的に有さない。
要件3:特定樹脂が、酸基を実質的に有さない。
要件4:特定樹脂が、アルコール性水酸基を実質的に有さない。
要件5:特定樹脂の特定ヘテロ原子の含有量が、特定樹脂の全質量に対して、25質量%以下である。
要件6:特定樹脂が、t-ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位の含有量が樹脂の全質量に対して98質量%であり、メタクリル酸に由来する繰り返し単位の含有量が樹脂の全質量に対して2質量%である樹脂を含まない。
【0054】
要件1を満たす場合、特定樹脂が、シロキサン結合を実質的に有さない。
シロキサン結合を実質的に有さないとは、シロキサン結合の含有量が、特定樹脂の全質量に対して、1質量%以下を意味し、0.1質量%以下が好ましい。
シロキサン結合の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量の測定方法を参考にして測定できる。
【0055】
要件2を満たす場合、特定樹脂が、フッ素原子を実質的に有さない。
フッ素原子を実質的に有さないとは、フッ素原子の含有量が、特定樹脂の全質量に対して、1質量%以下を意味し、0.1質量%以下が好ましい。
フッ素原子の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量の測定方法を参考にして測定できる。
【0056】
要件3を満たす場合、特定樹脂が、酸基を実質的に有さない。
酸基としては、例えば、フェノール性水酸基及びカルボキシ基が挙げられる。
酸基を実質的に有さないとは、酸基の含有量が、特定樹脂の全質量に対して、1質量%以下を意味し、0.1質量%以下が好ましい。
酸基の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量の測定方法を参考にして測定できる。
【0057】
要件4を満たす場合、特定樹脂が、アルコール性水酸基を実質的に有さない。
アルコール性水酸基を実質的に有さないとは、アルコール性水酸基の含有量が、特定樹脂の全質量に対して、1質量%以下を意味し、0.1質量%以下が好ましい。
アルコール性水酸基の含有量は、樹脂Aの特定ヘテロ原子の含有量の測定方法を参考にして測定できる。
【0058】
要件5を満たす場合、特定樹脂の特定ヘテロ原子の含有量が、特定樹脂の全質量に対して、25質量%以下である。
特定樹脂の特定ヘテロ原子の含有量については、上記のとおりである。
【0059】
要件6を満たす場合、特定樹脂が、t-ブチルメタクリレートに由来する繰り返し単位の含有量が樹脂の全質量に対して98質量%であり、メタクリル酸に由来する繰り返し単位の含有量が樹脂の全質量に対して2質量%である樹脂を含まない。
特定樹脂は、メタクリル酸又はアクリル酸に由来する繰り返し単位を含まないことが好ましい。
【0060】
特定樹脂は、樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの少なくとも1つを含んでいれば、更に樹脂A、樹脂B及び樹脂C以外のその他樹脂を含んでいてもよい。
その他樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。
【0061】
特定樹脂は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
特定樹脂の含有量は、分散液の全固形分に対して、1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、1~10質量%が更に好ましい。
樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの合計含有量は、特定樹脂の全質量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。
【0062】
〔セラミック〕
分散液は、セラミックを含む。
セラミックとしては、例えば、チタン酸バリウム、フェライト、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素及び窒化アルミニウムが挙げられ、チタン酸バリウムが好ましい。
【0063】
セラミックの平均粒子径は、0.01~5.0μmが好ましく、0.02~3.0μmがより好ましく、0.05~1.0μmが更に好ましい。
分散液中のセラミックの平均粒子径は、例えば、動的光散乱法による粒度分布測定装置(例えば、ナノトラックUPA EX150、日機装株式会社製)を用いて測定できる。
【0064】
セラミックは、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
セラミックの含有量は、分散液の全固形分に対して、10~98質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、70~95質量%が更に好ましい。
【0065】
〔可塑剤〕
分散液は、可塑剤を含んでいてもよい。
可塑剤は、上述した各種成分(例えば、特定樹脂(例えば、樹脂A、樹脂B、樹脂C及びその他樹脂))とは異なる成分である。
分散液が可塑剤を含む場合、分散液中のセラミックの分散性がより向上するため、分散液中のセラミックの含有量を増加させることができる。
可塑剤は、繰り返し単位を含まず、かつ、分子量が1000未満である化合物である。
可塑剤は、特定樹脂等を可塑化し得る化合物であり、公知の化合物(界面活性剤を含む)を用いることができる。
可塑剤としては、例えば、分岐鎖状のアルキル基を有する低分子化合物(以下、「低分子化合物S」ともいう。)、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、トリエチレングリコールジヘキサノアート及びポリエチレングリコール等のアルキレングリコールを有する低分子化合物、アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル及びフタル酸ジブチル等のアルキルエステル類が挙げられる。
可塑剤は、芳香環を有することが好ましい。
【0066】
可塑剤としては、特定樹脂との相溶性が良好になる点で、低分子化合物Sを含むことが好ましく、低分子化合物Sであることがより好ましい。
低分子化合物Sは、繰り返し単位を含まず、かつ、分子量が1000未満である化合物であり、分岐鎖状のアルキル基を有する化合物である。
低分子化合物Sが有する分岐鎖状のアルキル基中のメチル基の含有量は、特に制限されない。つまり、上記メチル基の含有量は、低分子化合物Sの全質量に対して、25質量%以上であってよく、25質量%未満であってもよい。
上記分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、3~30が好ましく、3~10がより好ましい。
上記分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、樹脂Aが有する分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
低分子化合物Sは、芳香環を有することが好ましい。
上記芳香環は、単環及び多環のいずれであってもよい。
上記芳香環の炭素数は、6~30が好ましく、6~12がより好ましく、6~8が更に好ましい。
上記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。
【0067】
低分子化合物Sとしては、例えば、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等の分岐鎖状のアルキル基を有するフタル酸エステル、及び、分岐鎖状のアルキル基を有するベンゼン(例えば、アルケンL、新日本石油社製)が挙げられる。
【0068】
可塑剤の分子量は、1000未満であり、800以下が好ましく、500以下がより好ましい。下限は、200以上が好ましい。
【0069】
可塑剤は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
可塑剤の含有量は、分散液の全固形分に対して、0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%が更に好ましい。
【0070】
〔溶媒〕
分散液は、溶媒を含む。
なお、溶媒は、上述した各種成分とは異なる成分(例えば、特定樹脂及び可塑剤等)である。
溶媒としては、例えば、有機溶媒が挙げられ、具体的には、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン及びターピネオール等の炭化水素溶媒;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びn-ブタノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル溶媒;が挙げられる。
溶媒は、混合溶媒であってもよく、炭化水素溶媒とアルコール溶媒との混合溶媒が好ましく、トルエンとエタノールとの混合溶媒がより好ましい。
【0071】
溶媒の分子量は、200未満が好ましい。下限は、15以上が好ましい。
【0072】
溶媒は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
溶媒の含有量は、分散液の全質量に対して、10~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
【0073】
〔その他成分〕
分散液は、上記各種成分以外のその他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、例えば、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤及び焼結助剤が挙げられる。
【0074】
[分散液の製造方法]
分散液の製造方法は、特に制限されないが、上記各種成分を混合し、分散する方法が挙げられる。また、必要に応じて、分散後に溶媒又は添加剤を更に添加してもよい。
分散する方法としては、例えば、公知の分散機を用いる方法が挙げられる。分散機としては、例えば、ボールミル分散機、ペイントシェイカー及びサンドグラインダーミル分散機が挙げられる。また、分散する方法としては、ビーズを用いて分散する方法が好ましく、ジルコニアビーズの存在下でビーズミル分散する方法がより好ましい。
各種成分の添加方法は、一括添加及び逐次添加のいずれであってもよい。
【0075】
[積層体]
積層体は、セラミックリーンシートと、ポリエステル基材とを有する積層体であって、セラミックグリーンシートが、樹脂と、セラミックとを含み、樹脂が、分岐鎖状のアルキル基を有し、要件Xを満たす樹脂A、シロキサン結合を有さず、トリアルキルシリル基を有する樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む、積層体。
上記特定樹脂は、分散液が含む特定樹脂と同義であり、好適態様も同じである。
上記セラミックは、分散液が含むセラミックと同義であり、好適態様も同じである。
【0076】
〔セラミックグリーンシート〕
積層体は、セラミックグリーンシートを有する。
セラミックグリーンシートは、上記分散液を用いて形成されることが好ましい。
セラミックグリーンシートは、上記分散液が含み得る溶媒以外の各種成分と同じであり、好適範囲も同じである。
セラミックグリーンシート中における各種成分の含有量の好適な数値範囲は、上記「分散液の全固形分に対する各種成分の含有量(質量%)」を「セラミックグリーンシートの全質量に対する各種成分の含有量(質量%)」に読み替えた好適範囲と同じである。具体的には、「特定樹脂の含有量は、分散液の全固形分に対して、1~30質量%が好ましく」との記載は、「特定樹脂の含有量は、セラミックグリーンシートの全質量に対して、1~30質量%が好ましく」と読み替える。
なお、セラミックグリーンシートの製造方法については、後述する。
【0077】
セラミックグリーンシートの厚みは、0.5~100μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましい。
【0078】
〔ポリエステル基材〕
積層体は、ポリエステル基材を含む。
ポリエステル基材は、主たる樹脂成分としてポリエステル樹脂を含むフィルム状の物体である。
「主たる樹脂成分」とは、ポリエステル基材に含まれる全ての樹脂のうち最も含有量(質量)が多い樹脂を意味する。
【0079】
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂は、主鎖にエステル結合を有する樹脂である。
ポリエステル樹脂は、例えば、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを重縮合させることにより得られる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)及びそれらの共重合体が挙げられ、PETが好ましい。
【0080】
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知の方法を利用できる。例えば、触媒存在下で、少なくとも1種のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種のジオール化合物とを重縮合させることによりポリエステル樹脂を製造できる。
【0081】
ポリエステル樹脂の合成方法としては、例えば、特許第5575671号公報の[0033]~[0070]に記載された方法が挙げられ、それらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0082】
ポリエステル基材は、2軸配向ポリエステル基材であることが好ましい。
「2軸配向」とは、2軸方向に分子配向性を有する性質を意味する。分子配向性は、マイクロ波透過型分子配向計(例えば、MOA-6004、株式会社王子計測機器社製)を用いて測定できる。2軸方向のなす角は、90°±5°の範囲内が好ましく、90°±3°の範囲内がより好ましく、90°±1°の範囲内が更に好ましい。
【0083】
ポリエステル樹脂の含有量は、ポリエステル基材中の樹脂の全質量に対して、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。上限は、ポリエステル基材中の樹脂の全質量に対して、100質量%以下が好ましい。
【0084】
ポリエステル基材がPETを含む場合、PETの含有量は、ポリエステル基材中のポリエステル樹脂の全質量に対して、90~100質量%が好ましく、95~100質量%がより好ましく、98~100質量%が更に好ましい。
【0085】
ポリエステル基材は、ポリエステル樹脂以外の成分(例えば、触媒、未反応の原料成分、粒子及び水等)を含んでいてもよい。
ポリエステル基材は、セラミックグリーンシートを平滑に形成する点で、粒子を実質的に含まないことが好ましい。
【0086】
ポリエステル基材の厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。下限は、強度が向上し、加工性が向上する点で、3μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。
ポリエステル基材の厚みは、例えば、触針式膜厚計により測定される5か所の厚さの算術平均値とできる。
【0087】
〔剥離層〕
積層体は、剥離層を有していてもよい。剥離層は、ポリエステル基材とセラミックグリーンシートとの間に配置される。
剥離層は、ポリエステル基材の表面に直接設けてもよく、他の層を介してポリエステル基材上に設けてもよい。
剥離層は、剥離剤を含むことが好ましい。
剥離剤としては、樹脂が好ましい。上記樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、各種ワックス及び脂肪族オレフィンが挙げられ、セラミックグリーンシートの剥離性により優れる点で、シリコーン樹脂が好ましい。
【0088】
シリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂を意味する。シリコーン樹脂としては、例えば、硬化型シリコーン樹脂、シリコーングラフト樹脂及びアルキル変性等の変性シリコーン樹脂が挙げられ、反応性の硬化型シリコーン樹脂が好ましい。
反応性の硬化型シリコーン樹脂としては、付加反応系のシリコーン樹脂、縮合反応系のシリコーン樹脂及び紫外線又は電子線硬化系のシリコーン樹脂が挙げられる。
【0089】
剥離層の厚みは、剥離性能及び剥離層表面の平滑性のバランスが優れる点で、10~1000nmが好ましく、30~700nmがより好ましい。
剥離層の厚みは、例えば、剥離層の主面に対して垂直な断面を有する切片を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される、上記切片の5か所の厚みの算術平均値とできる。
【0090】
<ポリエステル基材の製造方法>
ポリエステル基材の製造方法は、特に制限されないが、押出成形によってポリエステル基材(未配向のポリエステル基材)を形成する押出成形工程を含む製造方法が挙げられる。
1軸配向又は2軸配向のポリエステル基材の製造方法である場合、ポリエステル基材の製造方法は、更に、未配向のポリエステル基材を搬送方向及び幅方向のいずれか一方に延伸して1軸配向のポリエステル基材を形成する第1配向工程、及び/又は、1軸配向のポリエステル基材を搬送方向及び幅方向の他方に延伸して2軸配向のポリエステル基材を形成する第2配向工程を段階的又は同時に実施する配向工程、を含む製造方法が挙げられる。
【0091】
(押出成形工程)
押出成形工程は、押出成形によってポリエステル基材(未配向のポリエステル基材)を形成する工程である。
具体的には、原料のポリエステル樹脂を含む溶融樹脂をフィルム状に押し出して、未配向のポリエステル基材を形成する工程である。原料のポリエステル樹脂については、上記ポリエステル樹脂において説明したポリエステル樹脂と同義である。
なお、粒子を実質的に含まないポリエステル基材を作製するため、押出成形の際に、粒子を含まないポリエステルペレットを用いることが好ましい。
【0092】
押出成形法は、例えば、押出機を用いて原料の樹脂の溶融体を押し出すことによって、原料の樹脂を所望の形状に成形する方法である。
押出ダイから押し出された溶融体は、冷却されることによってフィルム状に成形される。例えば、溶融体をキャスティングロールに接触させ、キャスティングロール上で溶融体を冷却及び固化することで、溶融体をフィルム状に成形できる。溶融体の冷却においては、更に、溶融体に風(好ましくは冷風)を当てることが好ましい。
【0093】
(配向工程)
配向工程は、未配向のポリエステル基材を搬送方向及び幅方向のいずれか一方に延伸して1軸配向のポリエステル基材を形成する第1配向工程、及び、1軸配向のポリエステル基材を搬送方向及び幅方向の他方に延伸して2軸配向のポリエステル基材を形成する第2配向工程を段階的又は同時に実施する工程である。
第1配向工程及び第2配向工程の一方は、ポリエステル基材を搬送方向に延伸(以下、「縦延伸」ともいう。)する縦配向工程であり、第1配向工程及び第2配向工程の他方は、ポリエステル基材を幅方向に延伸(以下、「横延伸」ともいう。)する横配向工程である。延伸時には、それぞれの方向にポリエステル高分子が配列する。
【0094】
上記配向工程は、縦延伸及び横延伸を同時に行う同時2軸延伸であってもよく、縦延伸及び横延伸を段階的に分けて行う逐次2軸延伸であってもよい。逐次2軸延伸の形態としては、例えば、縦延伸→横延伸、縦延伸→横延伸→縦延伸、及び、縦延伸→縦延伸→横延伸が挙げられ、縦延伸→横延伸が好ましい。
【0095】
ポリエステル基材の製造方法は、上記工程以外に、その他工程を含んでいてもよい。
その他工程としては、例えば、熱固定工程、熱緩和工程及び冷却工程が挙げられる。
【0096】
ポリエステル基材の製造方法は、例えば、国際公開第2022/019113号の段落0105~0157に記載の各工程を含んでいてもよく、それらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0097】
[セラミックグリーンシートの製造方法]
セラミックグリーンシートの製造方法は、特に制限されないが、上記分散液をポリエステル基材上に塗布して、セラミックグリーンシートを製造する工程を含む、セラミックグリーンシートの製造方法が挙げられる。
分散液を塗布する方法としては、例えば、リバースロール法、ダイコーティング法、スプレー法、引き上げ法、インクジェット法及びグラビア印刷法が挙げられる。
また、必要に応じて、塗布して形成された塗膜に対して、自然乾燥、熱風乾燥及び減圧乾燥等の乾燥処理を施してもよい。
【0098】
[積層体の製造方法]
積層体の製造方法は、上記セラミックグリーンシートの製造方法を含む製造方法であれば、特に制限されない。
【0099】
[セラミックコンデンサの製造方法]
セラミックコンデンサの製造方法は、上記積層体を用いる製造方法であれば、特に制限されない。
例えば、上記積層体の製造方法で製造される積層体におけるセラミックグリーンシートの露出面上に、導電性ペーストの塗布又は印刷等によって内部電極を設ける。次に、内部電極付きセラミックグリーンシートを積層体から剥離し、得られた内部電極付きセラミックグリーンシートを順次積層して得られる積層物をプレスすることにより、中間積層物を作製する。中間積層物を所望の形状に切断した後、切断した中間積層物を焼成してセラミック素体を得る。次に、焼成された中間積層物の2つの端面に、銀等の導電性ペーストを用いて内部電極と電気的に接続する外部電極をそれぞれ形成することにより、セラミックコンデンサが得られる。
【0100】
〔用途〕
分散液は、セラミックグリーンシートの製造のために用いることが好ましい。
上記分散液を用いて製造されるセラミックグリーンシートは、小型化及び大容量化に伴って内部電極の多層化が求められているセラミックコンデンサの製造に好適に用いることができる。
【実施例0101】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容及び処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜又は変更することができる。従って、本発明の範囲は、以下に示す具体例に制限されない。なお、特段の断りがない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0102】
[実施例1]
まず、下記に示す各種成分をジルコニアビーズ存在下でボールミルを用いて混合させてジルコニアビーズを除去することにより、実施例1の分散液を得た。
【0103】
・セラミック:チタン酸バリウム粉末(BaTiO、製品名「BT-03」、平均粒子径0.3μm、堺化学工業社製):100質量部
・溶媒:トルエン及びエタノールの混合溶媒(質量比6:4):135質量部
・TBST-1:p-(t-ブチル)スチレンのホモポリマー、重量平均分子量5万:8質量部
・フタル酸ジオクチル(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、鹿1級、関東化学社製)
【0104】
次いで、PETフィルム(国際公開第2022/019113の実施例1のフィルム)の平滑面に、上記分散液をダイコーターにて乾燥後の膜厚が3μmになるように、幅250mm及び長さ10mにわたって塗工して塗膜を形成した。その後、得られた塗膜を乾燥機にて100℃で2分間乾燥させた後、ロール状に巻き取ってセラミックグリーンシート付きフィルム(積層体)を作製した。なお、PETフィルムは、剥離層を有さないものを用いた。
【0105】
[実施例2~14、比較例1~3]
実施例2~14及び比較例1~3は、下記表に示す樹脂及び必要に応じて可塑剤を用いた以外は、実施例1と同様の手順で分散液を調製し、セラミックグリーンシート付きフィルム(積層体)を作製した。
なお、実施例2~14及び比較例1~3の分散液におけるセラミック及び溶媒は、実施例1と同一物を同一量使用した。
また、比較例2の分散液は、特許文献1の実施例3における試料21を参考にした。
【0106】
〔樹脂〕
・TBST-1:p-(t-ブチル)スチレンのホモポリマー、重量平均分子量5万
・TBST-2:p-(t-ブチル)スチレンのホモポリマー、重量平均分子量5千
・pTBA-1:t-ブチルアクリレートのホモポリマー、重量平均分子量3万
・pTBA-2:t-ブチルアクリレートのホモポリマー、重量平均分子量8万
・TMAS/TBA:トリメチルアリルシランとt-ブチルアクリレートとの共重合体(40モル%/60モル%)、重量平均分子量1万
・TMAS/TfBA:トリメチルアリルシランとt-ブチル-α-CF-アクリレートとの共重合体(40モル%/60モル%)、重量平均分子量8千
・PVB:ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名「エスレック(登録商標)B・K BM-2」、重量平均分子量5万、アセタール化度約69mol%)
・pNIPAM:ポリイソプロピルアクリルアミドのホモポリマー
・NPST:p-(n-プロピル)スチレンのホモポリマー
・TBOST:p-(t-ブトキシ)スチレンのホモポリマー
・PEO-AA/MMA:ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート(分子量480)とメタクリル酸との共重合体(50質量%/50質量%)、重量平均分子量4万
・pIBMA:i-ブチルメタクリレートのホモポリマー、重量平均分子量2万
【0107】
〔可塑剤〕
・フタル酸ジオクチル(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、鹿1級、関東化学社製)
・分岐型アルキルベンゼン:分岐鎖状のアルキル基を有するベンゼン、アルケンL、新日本石油社製
【0108】
[評価]
〔剥離性〕
得られたセラミックグリーンシート付きフィルムを、幅30mm及び長さ80mmにカットし、剥離性測定用サンプルとした。室温(25℃)における剥離力について剥離試験機を用いて測定し、以下の評価基準に従ってセラミックグリーンシートの剥離性を評価した。
A:比較例1よりも、かなり容易に剥離できた(かなり小さい力で剥離できた)。
B:比較例1よりも、容易に剥離できた(小さい力で剥離できた)。
C:比較例1と同程度の力で剥離できた。
【0109】
〔分散性〕
得られた分散液(調製直後)について粒度分布測定装置(ナノトラックUPA EX150、日機装社製)を用いて平均粒径を測定し、以下の評価基準に従って分散液の分散性を評価した。A評価であれば、分散性が良好であったことを示す。
A:平均粒径1μm以下
B:平均粒径が1μm超
【0110】
〔GPCのピークトップ数〕
固形分1mgとなる量の分散液を、テトラヒドロフランで以下の測定濃度になるように調整してGPC測定用サンプルを得たそのサンプルを用いて、特定樹脂の分子量を以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した際に、得られるスペクトルからピークトップの数を求めた。
・カラム:TSK gel Super HZM-N(東ソー社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計
・流速:0.35mL/min
・カラム温度:40℃
・測定濃度:1mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
なお、GPCのピークトップ数が2以上である場合、その分散液は、重量平均分子量の異なる2以上の樹脂を含んでいることを示す。
【0111】
表中の各記載は、以下を示す。
「メチル基Xの含有量」の欄は、分散液が樹脂Aを含む場合であって、その樹脂A中の樹脂Aの全質量に対するメチル基の含有量を示す。なお、「メチル基Xの含有量」の欄が、「25質量%以上」である場合は、要件Xを満たすことを示す。
「メチル基Yの含有量」の欄は、分散液が樹脂B又は樹脂Cを含む場合、その樹脂B又は樹脂C中の、樹脂B又は樹脂Cの全質量に対するメチル基Yの含有量を示す。
「特定ヘテロ原子の含有量」の欄は、樹脂A、樹脂B、樹脂C及びその他樹脂のそれぞれの樹脂の全質量に対する特定ヘテロ原子の含有量を示す。なお、樹脂Aの「特定ヘテロ原子の含有量」の欄が、「25質量%以上」である場合は、要件Y1を満たすことを示す。樹脂Bの「特定ヘテロ原子の含有量」の欄が、「25質量%以上」である場合は、要件Y2を満たすことを示す。
なお、メチル基X、メチル基Y及び特定ヘテロ原子の含有量については上記のとおりであり、各メチル基及び特定ヘテロ原子の含有量は各樹脂の合成に用いる原料(モノマー)の構造及び含有量から算出した値である。
【0112】
【表1】
【0113】
表に示す結果より、本発明の分散液を用いて形成されるセラミックグリーンシートは、基材に対する剥離性に優れることが確認された。
特定樹脂の分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した際に、ピークトップの数が2以上である場合、分散性がより優れることが確認された(実施例9~11)。
樹脂が、要件Y1を更に満たす樹脂A、要件Y2を満たす樹脂B、及び、芳香族炭化水素樹脂Cからなる群から選択される少なくとも1つを含む場合、剥離性がより優れることが確認された(実施例3及び12)。