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特開2024-35524アクチュエータ把持力推定装置、アクチュエータ把持力推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035524
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】アクチュエータ把持力推定装置、アクチュエータ把持力推定方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140033
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】沓名 海斗
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081CC29
3H081DD07
3H081DD14
3H081FF13
3H081GG03
3H081GG06
3H081GG09
3H081GG17
(57)【要約】
【課題】容易に流体圧アクチュエータにおける、筒軸と直交する方向に作用する力を推定する。
【解決手段】筒内の内圧上昇により筒周の一方側が筒軸方向に短縮して湾曲する筒状の本体部を有し、筒軸の基端側が基体に固定され、先端が前記基体と相対移動する流体圧アクチュエータの、湾曲により非湾曲時における筒軸と直交する方向に作用する力を把持力として推定する、アクチュエータ把持力推定方法であって、
前記本体部の最も収縮が大きい側面の一端から他端部までの長さをL、前記筒内の内圧をP、前記把持力をFとし、前記流体圧アクチュエータの基礎特性に基づき設定されるパラメータをω、ωとし、前記流体圧アクチュエータの幾何特性に基づく定数をLminをとすると、F=ωP(L-Lmin)+ω の式により、前記把持力を推定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒内の内圧上昇により筒壁の一方側が筒軸方向に短縮して湾曲する筒状の本体部を有し、筒軸の基端側が基体に固定され、先端が前記基体と相対移動する流体圧アクチュエータの、湾曲により非湾曲時における筒軸と直交する方向に作用する力を把持力として推定する、アクチュエータ把持力推定装置であって、
前記本体部の筒内圧を取得する圧力センサと、
前記本体部の最も短縮量が大きい側面の一端から他端部までの長さを取得する長さ取得部と、
前記長さ取得部で得られた長さをL、前記圧力センサで得られた筒内の内圧をP、前記把持力をFとし、前記流体圧アクチュエータの基礎特性に基づき設定されるパラメータをω、ωとし、前記流体圧アクチュエータの幾何特性に基づく定数をLminとすると、
F=ωP(L-Lmin)+ω
の式により、前記把持力を推定する把持力推定部と、
を備えた、アクチュエータ把持力推定装置。
【請求項2】
前記長さ取得部は、一端側が前記基体に取り付けられ、中間部が前記本体部の湾曲する側に湾曲変形に追従するように配置されたワイヤ部材と、前記ワイヤ部材を前記本体部に沿った位置に保持するワイヤ保持部材と、前記ワイヤ部材に張力を付し、前記ワイヤ部材の長さ変化量を測る測定部と、を有する、
請求項1に記載のアクチュエータ把持力推定装置。
【請求項3】
筒内の内圧上昇により筒周の一方側が筒軸方向に短縮して湾曲する筒状の本体部を有し、筒軸の基端側が基体に固定され、先端が前記基体と相対移動する流体圧アクチュエータの、湾曲により非湾曲時における筒軸と直交する方向に作用する力を把持力として推定する、アクチュエータ把持力推定方法であって、
前記本体部の最も収縮が大きい側面の一端から他端部までの長さをL、前記筒内の内圧をP、前記把持力をFとし、前記流体圧アクチュエータの基礎特性に基づき設定されるパラメータをω、ωとし、前記流体圧アクチュエータの幾何特性に基づく定数をLminをとすると、
F=ωP(L-Lmin)+ω
の式により、前記把持力を推定する、アクチュエータ把持力推定方法。
【請求項4】
前記本体部の最も収縮が大きい側面の一端から他端部までの長さは、
一端側が前記基体に取り付けられ、中間部が前記本体部の湾曲する側と筒軸方向に沿うように配置されたワイヤ部材を、前記本体部に沿った位置に保持し、
前記ワイヤ部材に張力を付し、前記ワイヤ部材の長さ変化量を測ることにより得る、
請求項3に記載のアクチュエータ把持力推定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータについての、アクチュエータ把持力推定装置、及び、アクチュエータ把持力推定方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体圧アクチュエータとして、ゴムチューブと、その外面を覆うスリーブ(高張力繊維を編み込んだもの)とを有する、マッキベン型のものが知られている。このようなマッキベン型の流体圧アクチュエータは、ゴムチューブ及びスリーブの軸方向に沿った長さを変化させることができる。また、ゴムチューブの軸方向における一端側から他端側に亘って、周方向の一部に拘束部材を設けることにより、流体圧アクチュエータの拘束部材が設けられていない側を短縮させ、湾曲変形させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-88999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、このような流体圧アクチュエータについて、複数組み合わせることにより、湾曲変形により物を把持する指として利用することも提案されている。この場合、流体圧アクチュエータで物を把持する力を求める必要が生じる。
【0005】
本開示は、上記事実に鑑みて、容易に、流体圧アクチュエータにおける、筒軸と直交する方向に作用する力を推定する、アクチュエータ把持力推定装置、及び、アクチュエータ把持力推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の態様のアクチュエータ把持力推定装置は、筒内の内圧上昇により筒周の一方側が筒軸方向に短縮して湾曲する筒状の本体部を有し、筒軸の基端側が基体に固定され、先端が前記基体と相対移動する流体圧アクチュエータの、湾曲により非湾曲時における筒軸と直交する方向に作用する力を把持力として推定する、アクチュエータ把持力推定装置であって、前記本体部の筒内圧を取得する圧力センサと、前記本体部の最も短縮量が大きい側面の一端から他端部までの長さを取得する長さ取得部と、前記長さ取得部で得られた長さをL、前記圧力センサで得られた筒内の内圧をP、前記把持力をFとし、前記流体圧アクチュエータの基礎特性に基づき設定されるパラメータをω、ωとし、前記流体圧アクチュエータの幾何特性に基づく定数をLminをとすると、F=ωP(L-Lmin)+ω、の式により、前記把持力を推定する把持力推定部と、を備えている。
【0007】
第1の態様のアクチュエータ把持力推定装置では、流体圧アクチュエータの把持力を上記の式で推定する。これにより、筒内の内圧、及び、本体部の最も収縮が大きい側面の一端から他端部までの長さを用いて、容易に把持力を推定することができる。
【0008】
第2の態様のアクチュエータ把持力推定装置は、前記長さ取得部は、一端側が前記基体に取り付けられ、中間部が前記本体部の湾曲する側に湾曲変形に追従するように配置されたワイヤ部材と、前記ワイヤ部材を前記本体部に沿った位置に保持するワイヤ保持部材と、前記ワイヤ部材に張力を付し、前記ワイヤ部材の長さ変化量を測る測定部と、を有する。
【0009】
第2の態様のアクチュエータ把持力推定装置では、ワイヤ部材の中間部が流体圧アクチュエータの本体部の湾曲する側に湾曲変形に追従するように配置されている。測定部によりワイヤ部材に張力を付し、ワイヤ部材の長さ変化量を測ることにより、湾曲した状態でも、容易に流体圧アクチュエータの湾曲内側の長さを取得することができる。
【0010】
第3の態様のアクチュエータ把持力推定方法は、筒内の内圧上昇により筒周の一方側が筒軸方向に短縮して湾曲する筒状の本体部を有し、筒軸の基端側が基体に固定され、先端が前記基体と相対移動する流体圧アクチュエータの、湾曲により非湾曲時における筒軸と直交する方向に作用する力を把持力として推定する、アクチュエータ把持力推定方法であって、前記本体部の最も短縮量が大きい側面の一端から他端部までの長さをL、前記筒内の内圧をP、前記把持力をFとし、前記流体圧アクチュエータの基礎特性に基づき設定されるパラメータをω、ωとし、前記流体圧アクチュエータの幾何特性に基づく定数をLminとすると、F=ωP(L-Lmin)+ω、の式により、前記把持力を推定する。
【0011】
第3の態様のアクチュエータ把持力推定方法では、流体圧アクチュエータの把持力を上記の式で推定する。これにより、筒内の内圧、及び、本体部の最も収縮が大きい側面の一端から他端部までの長さを用いて、容易に把持力を推定することができる。
【0012】
第4の態様のアクチュエータ把持力推定方法は、前記本体部の最も収縮が大きい側面の一端から他端部までの長さは、一端側が前記基体に取り付けられ、中間部が前記本体部の湾曲する側と筒軸方向に沿うように配置されたワイヤ部材を、前記本体部に沿った位置に保持し、前記ワイヤ部材に張力を付し、前記ワイヤ部材の長さ変化量を測ることにより得る。
【0013】
第4の態様のアクチュエータ把持力推定方法では、ワイヤ部材の中間部が流体圧アクチュエータの本体部の湾曲する側に湾曲変形に追従するように配置しているので、ワイヤ部材の長さ変化量を測ることにより、湾曲した状態でも、容易に流体圧アクチュエータの湾曲内側の長さを取得することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、容易に、流体圧アクチュエータにおける、筒軸と直交する方向に作用する力を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るアクチュエータ把持力推定装置の測定対象としての流体圧アクチュエータの側面図である。
図2】流体圧アクチュエータの一部分解斜視図である。
図3】流体圧アクチュエータの断面図である。
図4】アクチュエータ把持力推定装置に流体圧アクチュエータが取り付けられた状態(非湾曲状態)を示す図である。
図5】アクチュエータ把持力推定装置に流体圧アクチュエータが取り付けられた状態(湾曲状態)を示す図である。
図6】試験結果として推定把持力と測定把持力を時系列で示すグラフであり、(A)は目標圧力200kPaでの長さL1が0.074mの場合、(B)は0.072mの場合である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。
【0017】
なお、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。また、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<流体圧アクチュエータの構成>
図1には、本開示のアクチュエータ把持力推定装置10の測定対象としての流体圧アクチュエータ20が示されている。流体圧アクチュエータ20は、アクチュエータ本体部22、封止部材30A、30Bを備えている。
【0019】
図2にも示されるように、アクチュエータ本体部22は、チューブ24、スリーブ26、及び拘束部材28を有している。チューブ24は、弾性変形による伸縮可能な円筒状であり、内部の流体の圧力変化によって膨張及び収縮する。チューブ24の軸方向を「軸方向S」とする。チューブ24は、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成することができる。チューブ24へ供給する流体としては、空気を用いることができ、この場合には、流体圧アクチュエータ20は空気式アクチュエータとなる。なお、流体圧アクチュエータ20を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR 、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0020】
スリーブ26は、チューブ24の外周を覆う円筒状とされている。スリーブ26は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが軸方向Sに対して所定の角度θで交差されている。スリーブ26は、このような形状を有することによって、角度θを変えるパンタグラフのように変形し、チューブ24の収縮及び膨張を規制しつつこの収縮及び膨張に追従する。
【0021】
スリーブ26を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの他の高強度繊維のコードでもよい。
【0022】
拘束部材28は、チューブ24とスリーブ26との間に設けられている。拘束部材28は、長尺板状とされ、長手方向がチューブ24の軸方向に沿った方向に配置され、チューブ24の外周の一部を覆い、チューブ24の一端から他端に渡って配置されている。
【0023】
拘束部材28は、加圧により膨張/収縮のない材料で形成されており、端部同士が近づく方向に撓み変形可能とされている。拘束部材28としては、所謂、板バネ(leaf spring)を用いることができる。板バネの寸法は、流体圧アクチュエータ20のサイズや要求される把持力などに応じて決定される。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、撓み変形し易く、圧縮に強い材料であればよい。他に、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。
【0024】
封止部材30Aは、封止コネクタ32 、係止リング34、及びかしめ部材36を有している。
【0025】
封止コネクタ32は、一体成形された蓋部32A及び挿入部32Bを有している。蓋部32Aは、チューブ24の外径よりも大径とされた六角柱状とされ、蓋部32Aの一端側の中央から、挿入部32Bが軸方向Sに延出形成されている。挿入部32Bは、所謂タケノコ形状とされ、スリーブ26の内側のチューブ24の一端側に挿入される。蓋部32Aの挿入部32Bと反対側には、取付部33が形成されている。取付部33には、軸方向Sと直交する方向に貫通する取付孔33Aが形成されている。封止部材30Aとしては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0026】
図3に示されるように、封止コネクタ32は、流路Rを有している。流路Rは、挿入部32Bの径方向中央部に軸方向に延出形成されると共に、蓋部32Aの側面の接続孔Hと連通されている。接続孔Hには、空気供給ホース50が接続され、圧縮空気が供給される。空気供給ホース50には、供給空気圧を所望の値に制御するサーボバルブ54が設けられている。
【0027】
係止リング34は、リング状とされ、挿入部32Bとの間にスリーブ26を挟み込むように、スリーブ26の外側に配置され、スリーブ26を封止コネクタ32に係止する。スリーブ26は、係止リング34を介して外周へ折り返される。係止リング34としては、金属、硬質プラスチックや、繊維 、ゴムなどの材料を用いることができる。
【0028】
かしめ部材36は、アクチュエータ本体部22の外周で挿入部32Bが挿入された部分を覆うように配置され、アクチュエータ本体部22を封止コネクタ32にかしめる。これにより、アクチュエータ本体部22は、封止コネクタ32に固定される。かしめ部材36としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。
【0029】
封止部材30Bは、封止部材30Aと同様の、封止コネクタ32 、係止リング34、及びかしめ部材36を有している。但し、封止コネクタ32には、接続孔H及び流路Rは形成されておらず、先端がR形状とされている。
【0030】
<流体圧アクチュエータの動作>
図4に示されるように、流体圧アクチュエータ20は、一端側の封止部材30Aが固定され、他端側の封止部材30Bが自由端となるようにして使用される。
【0031】
空気供給ホース50を介して接続孔Hから圧縮空気を流入させると、流体圧アクチュエータ20内の圧力が上昇する。内圧上昇により、チューブ24が弾性変形して膨張し、スリーブ26は角度θが大きくなるように変形し、アクチュエータ本体部22の長さL0(非短縮時の長さ)が短縮する方向に力が作用する。このとき、アクチュエータ本体部22の拘束部材28が配置された外周側壁は短縮が規制されているため、アクチュエータ本体部22は、軸方向Sからみて拘束部材28が配置されていない側の外周壁(以下「湾曲内側壁22A」という)が短縮する。これにより、拘束部材28が撓み変形し、図5に示されるように、アクチュエータ本体部22の全体が湾曲する。湾曲内側壁22Aの最も短縮量が大きい一端から他端部までの長さをL1とする。
【0032】
このように、アクチュエータ本体部22が湾曲するとき、封止部材30Bが軸方向Sと直交する方向(以下「軸直方向X」と称する)に作用させる力を、把持力Fとする。
【0033】
<アクチュエータ把持力推定装置>
図4に示されるように、アクチュエータ把持力推定装置10は、基体12、ワイヤ巻取部14、測定部15、ワイヤ部材16、ワイヤ保持部材18、圧力センサ52、及びコントローラ40を備えている。
【0034】
基体12は、流体圧アクチュエータ20の一端を固定する部分であり、下面に流体圧アクチュエータ20の封止部材30Aが取付部33を介して固定されている。封止部材30Aの接続孔Hには、空気供給ホース50が接続されている。
【0035】
圧力センサ52は、空気供給ホース50のサーボバルブ54よりも下流側の圧力を検知し、検知した圧力を、コントローラ40の後述するADボード42へ出力する。圧力センサ52により、アクチュエータ本体部22の内圧が検知される。
【0036】
ワイヤ巻取部14は、支持部12Cに設けられており、巻き取り軸Mを中心に回転可能とされている。ワイヤ巻取部14は、ワイヤ部材16に緩みができないように、ワイヤ部材16の他端側を巻き取るように付勢力を作用させる。当該付勢力は、流体圧アクチュエータ20内の圧力が大気圧に戻されて湾曲状態から直線状態に戻る復元力よりも小さく設定されている。
【0037】
ワイヤ部材16は、他端側が封止部材30Bの外周の拘束部材28と対向する位置(湾曲内側壁22A側)に固定具31Cにより固定されている。ワイヤ部材16の一端側は、ワイヤ巻取部14に取り付けられている。ワイヤ部材16は、巻き取り可能な長尺の線材で形成されており、金属性のコードや繊維などの紐を用いることができる。ワイヤ部材16は、他端側から、ワイヤ巻取部14に巻き取られる手前まで、ワイヤ保持部材18に挿入されている。
【0038】
ワイヤ保持部材18は、チューブ状(管状)とされ、封止部材30Bの外周の拘束部材28と対向する位置(湾曲内側壁22A側)に配置されている。ワイヤ保持部材18は、非圧縮状態におけるアクチュエータ本体部22の一端から他端をカバーする長さ(アクチュエータ本体部22よりも長い)とされている。ワイヤ保持部材18は、軸方向S方向に沿うように配置されている。ワイヤ保持部材18としては、可撓性のチューブを用いることができる。封止部材30Aには、周方向で湾曲内側壁22A側に対応する位置に、係止部31Aが形成されている。係止部31Aは、ワイヤ保持部材18を挿通可能な軸方向Sに開口した孔31Bを有し、孔31Bにワイヤ部材16が挿通されている。係止部31により、ワイヤ保持部材18は、封止部材30Aに対し、周方向及び径方向の移動が規制されている。なお、軸方向Sにおいて、ワイヤ保持部材18と封止部材30Aとの相対移動は許容されている。これにより、ワイヤ保持部材18は、一端から他端に架けて、アクチュエータ本体部22の湾曲内側壁22Aに沿って配置され、アクチュエータ本体部22の動きに追従する。
【0039】
測定部15は、ワイヤ巻取部14の巻き取り軸M周りの回転に応じて信号を検出するロータリーエンコーダで形成されており、検出信号をコントローラ40の後述するカウンターボード44へ送信する。カウンターボード44では、測定部15から送出される信号をカウントし、ワイヤ部材16の巻き取り長さLRを得る。
【0040】
ここで、流体圧アクチュエータ20の動作と湾曲内側壁22Aの長さL1について説明する。湾曲内側壁22Aの長さL1は、流体圧アクチュエータ20が非湾曲状態の時には、長さL0であり、流体圧アクチュエータ20内の圧力が上昇すると短縮する。この短縮により、湾曲内側壁22Aに沿って配置されたワイヤ部材16は、ワイヤ巻取部14によって緩みができないように巻き取られる。ワイヤ部材16の他端側は、流体圧アクチュエータ20の先端(封止部材30B)の湾曲内側壁22A側に固定され、一端側はワイヤ巻取部14に取り付けられている。したがって、ワイヤ巻取部14によるワイヤ部材16の巻き取り回転に応じて、ワイヤ部材16のワイヤ巻取部14からの延出長さを測定することができる。
【0041】
ワイヤ部材16は、ワイヤ保持部材18に挿通されており、アクチュエータ本体部22の湾曲内側壁22Aに沿って配置されているので、ワイヤ部材16の変化量である巻き取り長さLRと、アクチュエータ本体部22が短縮した長さが略同じとなる。そこで、湾曲内側壁22Aの長さL1は、アクチュエータ本体部22が非湾曲状態の時の長さL0から、ワイヤ部材16の巻き取り長さLRを減じた長さとなる。長さL0から長さLRを減じることにより、湾曲内側壁22Aの長さL1を算出することができる。
【0042】
コントローラ40は、不図示のCPU、ROM、RAM、記憶部、等を備えてコンピュータ機能を有している。また、コントローラ40には、カウンタ-ボード44、ADボード42、DAボード46が設けられている。
【0043】
カウンタ-ボード44は、測定部15と接続されており、測定部15から信号が入力される。カウンタ-ボード44は、入力された信号をカウントして、ワイヤ部材16の巻き取り長さLRを得て、長さLRの情報を記憶部へ送る。
【0044】
ADボード42は、圧力センサ52と接続されており、圧力センサ52で検知した圧力信号が入力される。ADボード42は、入力された圧力信号を圧力データへデジタル変換して、記憶部に送る。圧力データは、後述する把持力Fの算出に用いられる。また、圧力データは、DAボード46を介してサーボバルブ54へフィードバックし、サーボバルブ54の開度を調整してもよい。
【0045】
コントローラ40の記憶部には、長さL0、後述する把持力推定モデル、入力された長さLR、圧力データ等の各種データが格納されている。
【0046】
<把持力推定モデル>
把持力推定モデルは、流体圧アクチュエータ20の把持力Fを推定するモデルである。アクチュエータ本体部22の本体部の最も収縮が大きい側面の一端から他端部までの長さである湾曲内側壁22AをL1(m)、アクチュエータ本体部22の内圧をP(Pa)、把持力をF(N)とし、流体圧アクチュエータ20の基礎特性に基づき設定されるパラメータをω(m)、ω(N)とし、長さL0(m)に関連する流体圧アクチュエータ20の幾何特性に基づく定数をLmin(m)として、以下の式(1)により把持力F(N)を求めるものである。
【0047】
F=ωP(L1-Lmin)+ω (1)
【0048】
パラメータのω、ωは、流体圧アクチュエータ20の基礎特性の計測を実施して得られた計測値から決定する。例えば、流体圧アクチュエータ20の圧力制御を行い、異なる複数の圧力において、長さL1、把持力Fを計測する。把持力Fの計測は、図4に示される把持力センサ60により実施することができる。把持力センサ60には、力受部62、移動脚部64が設けられており、流体圧アクチュエータ20の先端で力受部62を押圧するようにして実際の把持力Fを計測する。そして、P(L-Lmin)を説明変数とした最小二乗法によって、ω、ωを決定する。
【0049】
コントローラ40では、入力された長さLRを予め記憶しておいた長さL0から減じて長さL1を求め、この長さL1、及び、入力された圧力データPを式(1)に当てはめて、把持力Fを算出する。算出された把持力Fは、要求に応じて出力する。当該出力は、表示部への表示であってもよいし、次処理のためのフィードバック用の出力であってもよい。
【0050】
本実施形態のアクチュエータ把持力推定装置10では、ワイヤ保持部材18により、ワイヤ部材16が流体圧アクチュエータ20のアクチュエータ本体部22の湾曲内側壁22Aの湾曲変形に追従するように配置される。したがって、ワイヤ部材16の変化量である長さLRを測ることにより、湾曲した状態でも、容易に流体圧アクチュエータ20の湾曲内側の長さを測ることができる。
【0051】
また、長さL1と圧力データPの2つの変数のみの式(1)により、簡易に把持力Fを推定することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、長さL1をワイヤ部材16の変化量により求めたが、他の方法によりながさL1を求めてもよい。例えば、湾曲長さを測定可能なセンサを用いることも可能である。
【0053】
<把持力推定モデルの評価実験>
把持力推定モデルに対し,テストデータを計測し、その評価を行った。流体圧アクチュエータ20に対し、内圧目標を振幅200kPa、平均200kPaの正弦波で圧縮空気を供給し、圧力データP、長さL1、実際の把持力FRを計測した。本評価実験で得られたテストデータの圧力データP、長さL1を把持力推定モデルへ入力して把持力F求め、実際に計測で得られた把持力FRと比較した。本評価試験では内圧200kPaの時に流体圧アクチュエータ20の先端が力受部62と接触し、長さL1が0.074mと0.072mとなる二通りの状況について測定を行った。
【0054】
流体圧アクチュエータ20の長さL1と屈曲角度の関係は、
L1=-3.2×10-4θ +0.085 (6)
であり、L=0.074mに相当する屈曲角度θは約34deg、L=0.072mでは約40degであった。
【0055】
図6に推定把持力FG、及び、計測した把持力Fの結果を示す。グラフ中、点線は計測値(把持力FR)、実線は把持力推定モデルの式から得られる把持力Fである。流体圧アクチュエータ20の先端が受ける外力は常に反力方向と仮定し,本試験では推定された把持力Fが0N(ゼロニュートン)以下となった場合、把持力Fを0N(ゼロニュートン)とする閾値処理を行った。計測した把持力FRのピーク約15Nに対し推定把持力FGは最大約1N程度の誤差であり、ピーク付近における推定精度が、特に向上している。
【符号の説明】
【0056】
10 アクチュエータ把持力推定装置
12 基体
15 測定部(長さ取得部)
16 ワイヤ部材
18 ワイヤ保持部材
20 流体圧アクチュエータ
22 アクチュエータ本体部
22A 湾曲内側壁
31 係止部(ワイヤ保持部材)
31C 固定具(ワイヤ保持部材)
40 コントローラ(把持力推定部)
52 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6