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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035541
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】凍結保存用ラック及び予備凍結装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240307BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 1/04 20060101ALN20240307BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20240307BHJP
   C12N 5/076 20100101ALN20240307BHJP
   C12N 5/075 20100101ALN20240307BHJP
   C12N 5/073 20100101ALN20240307BHJP
【FI】
C12M1/00 A
A61J3/00 301
C12N1/04
C12N5/071
C12N5/076
C12N5/075
C12N5/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140064
(22)【出願日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 栞
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 卓
(72)【発明者】
【氏名】吉村 滋弘
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C047
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B065AA90X
4B065AC12
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA46
4C047AA05
4C047AA31
4C047AA34
4C047CC01
4C047GG37
(57)【要約】
【課題】冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることを可能とした凍結保存用ラックを提供する。
【解決手段】ラック部2が上下方向に複数段に亘って設けられたラック本体3を備え、ラック部2の各々に対して凍結保存用ボックスを収納可能とする凍結保存用ラック1であって、ラック本体3は、ラック部2の各々の底面を構成し、且つ、その底面中央部に開口部が設けられた複数の底板4と、複数の底板4の四隅を支持する4つの支柱6aと、複数の底板4の各々の面上に着脱自在に設置される敷板とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック部が上下方向に複数段に亘って設けられたラック本体を備え、前記ラック部の各々に対して凍結保存用ボックスを収納可能とする凍結保存用ラックであって、
前記ラック本体は、前記ラック部の各々の底面を構成し、且つ、その底面中央部に開口部が設けられた複数の底板と、前記複数の底板の四隅を支持する4つの支柱と、前記複数の底板の各々の面上に着脱自在に設置される敷板とを有することを特徴とする凍結保存用ラック。
【請求項2】
前記ラック部の各々に対して、複数種類の敷板の中から1つの敷板が選択的に設置又は除去されることを特徴とする請求項1に記載の凍結保存用ラック。
【請求項3】
前記凍結保存用ボックスに収納された試料を予備凍結させる予備凍結装置の収容空間に前記ラック本体を収容したときに、前記ラック部の各々に対する冷却度合いに合わせて、前記複数種類の敷板の中から1つの敷板が選択的に設置又は除去されることを特徴とする請求項2に記載の凍結保存用ラック。
【請求項4】
前記凍結保存用ボックスは、その内側に収納される前記試料毎に区画された複数の保存空間を有し、
前記予備凍結装置の収容空間に前記ラック本体を収容したときに、前記凍結保存用ボックスの前記複数の保存空間における冷却度合いに合わせて、前記複数種類の敷板の中から1つの敷板が選択的に設置又は除去されることを特徴とする請求項3に記載の凍結保存用ラック。
【請求項5】
前記ラック本体は、前記凍結保存用ボックスの四隅に位置する前記保存空間と対向する板材を有することを特徴とする請求項4に記載の凍結保存用ラック。
【請求項6】
前記板材は、前記支柱を構成していることを特徴とする請求項5に記載の凍結保存用ラック。
【請求項7】
前記ラック本体は、その最上段に位置する前記ラック部の上面を構成し、且つ、その上面中央部に開口部が設けられた天板を有して、前記4つの支柱に前記天板の四隅が支持されていることを特徴とする請求項1に記載の凍結保存用ラック。
【請求項8】
前記複数種類の敷板は、網目状の敷板と、多孔状の敷板と、前記底板の開口部よりも小さい開口部が設けられた敷板と、前記底板の開口部を閉塞する敷板との何れかを含むことを特徴とする請求項2に記載の凍結保存用ラック。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の凍結保存用ラックを備え、
前記凍結保存用ラックを収容する収容空間を有して、前記凍結保存用ボックスに収納された試料を予備凍結させることを特徴とする予備凍結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結保存用ラック及び予備凍結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、新薬の開発や医療の基礎研究では、血液、実験動物の精子、受精卵、細胞などの生物学的試料(以下、単に「試料」という。)が用いられている。試料は、常温では生物学的作用により劣化する。このため、凍結保存装置などにより試料を凍結保存するのが一般的である。凍結保存装置としては、液体窒素を用いた凍結保存装置が、長期間安定して保存できるため、広く用いられている。
【0003】
上述した試料を例えば-150℃以下の低温下で凍結保存する場合、常温の試料を-150℃まで急冷させると、細胞の生存率が低下することが知られている。このため、試料を凍結保存する前に、例えばプログラムフリーザや機械式冷凍機などの予備凍結装置を用いて、常温から所定の温度(例えば-80℃)まで冷却速度を制御しながら、試料を予備凍結させることが行われている。
【0004】
また、試料を予備凍結させる際は、先ず、試料を培地と共にバイアル等の凍結保存用容器に充填した後、その内側が升目状に区画された凍結保存用ボックスの保存空間に凍結保存用容器を収納する。
【0005】
さらに、凍結保存用ボックスは、凍結保存用ラックに収納される(例えば、下記特許文献1を参照。)。凍結保存用ラックは、ラック部が上下方向に複数段に亘って設けられたラック本体を備え、ラック部毎に凍結保存用ボックスを収納する。
【0006】
そして、試料を予備凍結させる際は、複数の凍結保存用ラックが収容可能なプログラムフリーザ等の予備凍結装置を用いて、凍結保存用ラックのラック部毎に収納された凍結保存用ボックスを冷却する。
【0007】
プログラムフリーザは、温度調節計により設定された温度制御プログラムに従い、液体窒素等からなる冷媒の噴出量又は冷凍機の出力等を調節することによって、凍結保存用ラックを収容する収容空間の温度を適切に冷却制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-061460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した予備凍結装置では、試料の冷却速度により細胞内外での氷晶形成状態が変化するため、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることが重要である。
【0010】
特に、近年では細胞製品等の実用化に伴って、一度に処理する試料の数が増大してきている。このため、ロット間やロット内において、凍結保存用ラック毎の冷却温度の均一化だけでなく、凍結保存用ボックス毎の冷却温度の均一化、更には凍結保存用容器毎の冷却温度の均一化が求められている。
【0011】
しかしながら、上述したプログラムフリーザ等による冷却制御において、収容空間における冷気の伝達状況に差が生じるため、この収容空間における凍結保存用ラックの配置の違いや、複数のラック部に対する凍結保存用ボックスの配置の違い、更には凍結保存用ボックス内における凍結保存用容器の配置の違いによって、試料の冷却温度に差が生じることになる。
【0012】
また、一度に処理される凍結保存用ボックスや凍結保存用容器の数が増大することによって、このような試料の冷却温度に差が生じる状況がより顕著になっている。特に、凍結保存用ボックス内における凍結保存用容器の収納密度が増加する場合、ボックス内の中央部への冷気の導入が制限されると共に、隣り合う凍結保存用容器の間で潜熱等により冷気を奪い合う。このため、ボックス内の隅部や端部に配置された凍結保存用容器は相対的に冷え易く、ボックス内の中央部に配置された凍結保存用容器は相対的に冷え難くなっている。
【0013】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、凍結保存用ボックスに収納される複数の試料を予備凍結させる際に、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることを可能とした凍結保存用ラック、並びにそのような凍結保存用ラックを備えた予備凍結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 ラック部が上下方向に複数段に亘って設けられたラック本体を備え、前記ラック部の各々に対して凍結保存用ボックスを収納可能とする凍結保存用ラックであって、
前記ラック本体は、前記ラック部の各々の底面を構成し、且つ、その底面中央部に開口部が設けられた複数の底板と、前記複数の底板の四隅を支持する4つの支柱と、前記複数の底板の各々の面上に着脱自在に設置される敷板とを有することを特徴とする凍結保存用ラック。
〔2〕 前記ラック部の各々に対して、複数種類の敷板の中から1つの敷板が選択的に設置又は除去されることを特徴とする前記〔1〕に記載の凍結保存用ラック。
〔3〕 前記凍結保存用ボックスに収納された試料を予備凍結させる予備凍結装置の収容空間に前記ラック本体を収容したときに、前記ラック部の各々に対する冷却度合いに合わせて、前記複数種類の敷板の中から1つの敷板が選択的に設置又は除去されることを特徴とする前記〔2〕に記載の凍結保存用ラック。
〔4〕 前記凍結保存用ボックスは、その内側に収納される前記試料毎に区画された複数の保存空間を有し、
前記予備凍結装置の収容空間に前記ラック本体を収容したときに、前記凍結保存用ボックスの前記複数の保存空間における冷却度合いに合わせて、前記複数種類の敷板の中から1つの敷板が選択的に設置又は除去されることを特徴とする前記〔3〕に記載の凍結保存用ラック。
〔5〕 前記ラック本体は、前記凍結保存用ボックスの四隅に位置する前記保存空間と対向する板材を有することを特徴とする前記〔4〕に記載の凍結保存用ラック。
〔6〕 前記板材は、前記支柱を構成していることを特徴とする前記〔5〕に記載の凍結保存用ラック。
〔7〕 前記ラック本体は、その最上段に位置する前記ラック部の上面を構成し、且つ、その上面中央部に開口部が設けられた天板を有して、前記4つの支柱に前記天板の四隅が支持されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の凍結保存用ラック。
〔8〕 前記複数種類の敷板は、網目状の敷板と、多孔状の敷板と、前記底板の開口部よりも小さい開口部が設けられた敷板と、前記底板の開口部を閉塞する敷板との何れかを含むことを特徴とする前記〔2〕に記載の凍結保存用ラック。
〔9〕 前記〔1〕~〔8〕の何れか一項に記載の凍結保存用ラックを備え、
前記凍結保存用ラックを収容する収容空間を有して、前記凍結保存用ボックスに収納された試料を予備凍結させることを特徴とする予備凍結装置。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、凍結保存用ボックスに収納される複数の試料を予備凍結させる際に、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることを可能とした凍結保存用ラック、並びにそのような凍結保存用ラックを備えた予備凍結装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る凍結保存用ラックを備えた予備凍結装置の構成を示す正面図である。
図2図1に示す凍結保存用ラックを備えた予備凍結装置の構成を示す上面図である。
図3図1に示す凍結保存用ラックの構成を示す正面図である。
図4図1に示す凍結保存用ラックの構成を示す側面図である。
図5図1に示す凍結保存用ラックの構成を示す上面図である。
図6図1に示す凍結保存用ラックが備える底板の構成を示し、(A)は円形状の開口部が設けられた底板を示す平面図、(B)は矩形状の開口部が設けられた底板を示す平面図である。
図7図1に示す凍結保存用ラックが備える敷板の構成を示し、(A)は網目状の敷板を示す平面図、(B)は多孔状の敷板を示す平面図である。
図8】多孔状の開口領域が設けられた敷板を示す平面図である。
図9】(A)は底板の円形状の開口部よりも小さい円形状の開口部が設けられた敷板を示す平面図、(B)は底板の矩形状の開口部よりも小さい矩形状の開口部が設けられた敷板を示す平面図である。
図10】底板の開口部を閉塞する敷板を示す平面図である。
図11】凍結保存用ボックスに収納された複数の凍結保存用容器を示す平面図である。
図12図11中に示す線分A-Aによる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
(予備凍結装置)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば図1及び図2に示す凍結保存用ラック1を備えた予備凍結装置100の構成について説明する。
なお、図1は、凍結保存用ラック1を備えた予備凍結装置100の構成を示す正面図である。図2は、凍結保存用ラック1を備えた予備凍結装置100の構成を示す上面図である。
【0019】
本実施形態の予備凍結装置100は、図1及び図2に示すように、複数(本実施形態では3つ)の凍結保存用ラック1を収容する方形状の収容空間Kを有して、温度調節計により設定された温度制御プログラムに従い、液体窒素からなる冷媒の噴出量を調節することによって、凍結保存用ラック1を収容する収容空間Kの温度を適切に冷却制御するプログラムフリーザである。
【0020】
具体的に、この予備凍結装置100は、収容空間Kに冷媒となる液体窒素を供給する供給口101と、供給口101を介して供給された液体窒素を噴出する噴出口102と、噴出口102から噴射された液体窒素を拡散させるファン103と、収容空間Kにおいて気相状態となった液体窒素を排気する排気口104と、収容空間Kに臨む上部開口部を開閉する蓋体105と、各部の制御を行う制御部106とを備えている。
【0021】
本実施形態では、収容空間Kに配置される凍結保存用ラック1の背面側の中央部にファン103が配置されている。噴出口102は、このファン103の近傍に位置して、ファン103に向けて液体窒素を噴出する。排気口104は、収容空間Kの側方に配置されている。
【0022】
(凍結保存用ラック)
次に、上記凍結保存用ラック1の具体的な構成について、図3図10を参照しながら説明する。
【0023】
なお、図3は、凍結保存用ラック1の構成を示す正面図である。図4は、凍結保存用ラック1の構成を示す側面図である。図5は、凍結保存用ラック1の構成を示す上面図である。図6は、凍結保存用ラック1が備える底板4の構成を示し、(A)は円形状の開口部4aが設けられた底板4を示す平面図、(B)は矩形状の開口部4aが設けられた底板4を示す平面図である。図7は、凍結保存用ラック1が備える敷板の構成を示し、(A)は網目状の敷板8Aを示す平面図、(B)は多孔状の敷板8Bを示す平面図である。図8は、多孔状の開口領域Eが設けられた敷板8Cを示す平面図である。図9(A)は、図6(A)に示す底板4の開口部4aよりも小さい円形状の開口部8aが設けられた敷板8Dを示す平面図である。図9(B)は、図6(B)に示す底板4の開口部4aよりも小さい矩形状の開口部8aが設けられた敷板8Eを示す平面図である。図10は、底板4の開口部4aを閉塞する敷板8Fを示す平面図である。
【0024】
本実施形態の凍結保存用ラック1は、図3図4及び図5に示すように、ラック部2が上下方向に複数段(本実施形態では7段)に亘って設けられたラック本体3を備えている。
【0025】
ラック本体3は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属や、耐低温性に優れたステンレス鋼などの金属などからなり、ラック部2の各々の底面を構成する複数(本実施形態では7つ)の底板4と、その最上段に位置するラック部の上面を構成する天板5と、その側面を構成する4つの支柱6a,6bとを有している。
【0026】
ラック本体3は、これら複数の底板4、天板5及び4つの支柱6a,6bをネジ止めや溶接等(本実施形態ではネジ止め)により接合することによって、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。
【0027】
4つの支柱6a,6bは、複数の底板4及び天板5の四隅を支持している。また、4つの支柱6a,6bのうち、ラック本体3の正面側に位置する2つの支柱6aは、断面略I字状を為す長尺の板材により構成され、ラック本体3の側面側に取り付けられている。一方、ラック本体3の背面側に位置する2つの支柱6bは、断面略L字状を為す長尺の板材により構成され、ラック本体3の背面側及び側面側に取り付けられている。
【0028】
これにより、凍結保存用ラック1では、後述するラック部2の各々に対して収納される凍結保存用ボックス200をラック本体3の正面側から前後方向にスライド自在に出入することが可能となっている。
【0029】
ところで、本実施形態の凍結保存用ラック1では、各ラック部2を構成する底板4の中央部に、例えば図6(A)に示すような円形状の開口部4aが設けられている。また、天板5の中央部にも、図5に示すような円形状の開口部5aが設けられている。さらに、天板5の開口部5aを挟んだ両側には、一対の取手部7が回動自在に取り付けられている。
【0030】
また、底板4の中央部には、例えば図6(B)に示すような矩形状の開口部4aが設けられていてもよい。同様に、天板5の中央部にも、矩形状の開口部5aが設けられていてもよい。
【0031】
本実施形態の凍結保存用ラック1は、例えば図7図10に示すような複数の底板4の各々の面上に着脱自在に設置される複数種類の敷板8A~8Fを備えている。
【0032】
具体的には、図7(A)に示すような網目状の敷板8Aや、図7(B)に示すような多孔状の敷板8B、図8に示すような多孔状の開口領域Eが設けられた敷板8C、図9(A)に示すような底板4の円形状の開口部4aよりも小さい円形状の開口部8aが設けられた敷板8D、図9(B)に示すような底板4の矩形状の開口部4aよりも小さい矩形状の開口部8aが設けられた敷板8E、図10に示すような底板4の開口部4aを閉塞する無開口の敷板8Fのうち、何れかを備えている。
【0033】
複数種類の敷板8A~8Fのうち、網目のサイズが異なる敷板8Aや、孔のサイズや数が異なる敷板8B、孔のサイズや数、開口領域Eのサイズや形状、位置が異なる敷板8C、開口部8aのサイズや形状、位置が異なる敷板8D,8Eのうち、何れかを備えていてもよい。
【0034】
なお、複数種類の敷板8A~8Fについては、上述した全ての敷板8A~8Fを備える必要はなく、敷板8A~8Fの中から適宜選択したものを予め備えておくことが可能である。また、敷板8A~8Fの中から適宜選択したものを別途追加することも可能である。
【0035】
(凍結保存用ボックス及び凍結保存用容器)
次に、図11及び12に示す凍結保存用ボックス200及び凍結保存用容器300の構成について説明する。
【0036】
なお、図11は、凍結保存用ボックス200に収納された複数の凍結保存用容器300を示す平面図である。図12は、図11中に示す線分A-Aによる断面図である。
【0037】
凍結保存用ボックス200は、図11及び図12に示すように、例えば樹脂製又は金属製の箱体からなり、上部が開口した方形状を為すと共に、その内側に収納される凍結保存用容器300毎に、升目状に区画された複数(本実施形態では5×5の25個)の保存空間kを有している。
【0038】
凍結保存用容器300は、バイアルと呼ばれる有底円筒状のキャップ付き容器であり、その内側に試料を培地と共に充填した後、凍結保存用ボックス200の保存空間kに収納される。なお、凍結保存用容器300については、上述したバイアルに限らず、試料を保存可能なものであればよい。
【0039】
ここで、底板4及び天板5の開口部4a,5aは、凍結保存用ボックス200の四隅に位置する凍結保存用容器300(保存空間k)と平面視で重ならない範囲で開口していることが好ましい。
【0040】
凍結保存用ボックス200の四隅に位置する凍結保存用容器300は、上述したとおり、凍結保存用ラック1のラック部2に収納された状態において、他の凍結保存用容器300よりも相対的に冷え易くなっている。
【0041】
したがって、底板4及び天板5の開口部4a,5aを凍結保存用ボックス200の四隅に位置する凍結保存用容器300(保存空間k)と平面視で重ならない範囲で開口させることで、四隅に位置する凍結保存用容器300を他の凍結保存用容器300よりも冷却され難くし、凍結保存用ボックス200に収納された各凍結保存用容器300における冷却温度の均一化を図ることが可能である。
【0042】
また、底板4及び天板5の開口部4a,5aが円形の場合、底板4の角部から開口部4aまでの長さをTとし、保存空間kの長さをTとし、底板4の角部から凍結保存用ボックス200の角部までの長さをTとしたときに、下記式(1)の関係を満足することが好ましい。
> T+T×2 …(1)
【0043】
これにより、四隅に位置する凍結保存用容器300を他の凍結保存用容器300よりも冷却され難くし、凍結保存用ボックス200に収納された各凍結保存用容器300における冷却温度の均一化を図ることが可能である。
【0044】
また、本実施形態の凍結保存用ラック1では、凍結保存用ボックス200の四隅に位置する凍結保存用容器300(保存空間k)と対向する板材(支柱6a,6b)をラック本体3に設けることが好ましい。
【0045】
これにより、四隅に位置する凍結保存用容器300を他の凍結保存用容器300よりも冷却され難くし、凍結保存用ボックス200に収納された各凍結保存用容器300における冷却温度の均一化を図ることが可能である。
【0046】
なお、板材は、上述した支柱6a,6bを構成するものに必ずしも限定されるものではなく、支柱6a,6bとは別体に取り付けられるものであってもよい。また、板材の材質や板厚についても、適宜選択を行うことで、適度な熱吸収と防風を行いながら、冷気の侵入を抑制することが可能である。
【0047】
さらに、本実施形態の凍結保存用ラック1では、予備凍結装置100のファン103や排気口104の付近に位置するラック部2の側面における少なくとも一部又は全てを板材で覆うことで、上述した冷却温度の差を小さくすることが可能である。
【0048】
(凍結保存用ラックを用いた予備凍結方法)
次に、上記凍結保存用ラック1を用いた予備凍結方法について説明する。
【0049】
試料を予備凍結させる際は、先ず、試料を培地と共に凍結保存用容器300に充填した後、凍結保存用ボックス200の各保存空間kに凍結保存用容器300を収納する。また、凍結保存用ラック1のラック部2毎に凍結保存用ボックス200を収納する。
【0050】
そして、予備凍結装置100の収容空間Kに凍結保存用ラック1を収容した後、温度調節計により設定された温度制御プログラムに従い、液体窒素の噴出量を調節しながら、凍結保存用ラック1を収容する収容空間Kの冷却温度を制御する。これにより、各凍結保存用容器300に充填された試料を予備凍結させることが可能である。
【0051】
ところで、本実施形態の凍結保存用ラック1では、予備凍結装置100の収容空間Kにラック本体3を収容したときに、ラック部2の各々に対する冷却度合いに合わせて、複数種類の敷板8A~8Fの中から1つの敷板が選択的に設置又は除去される。
【0052】
また、本実施形態の凍結保存用ラック1では、凍結保存用ボックス200の複数の保存空間kにおける冷却度合いに合わせて、複数種類の敷板8A~8Fの中から1つの敷板が選択的に設置又は除去される。
【0053】
すなわち、予備凍結装置100では、収容空間Kにおける凍結保存用ラック1の配置の違いや、複数のラック部2に対する凍結保存用ボックス200の配置の違い、更には凍結保存用ボックス200内における凍結保存用容器300の配置の違いによって、試料の冷却温度に差が生じる。
【0054】
本実施形態の凍結保存用ラック1では、このような試料に生じる冷却温度の差を小さくするため、ラック部2の各々に対する冷却度合いや、凍結保存用ボックス200の複数の保存空間kにおける冷却度合いに合わせて、ラック部2毎に最適な敷板を底板4の面上に設置する。若しくは、底板4の面上から敷板を除去する。
【0055】
すなわち、各ラック部2の底板4及び天板5の中央部には、開口部4a,5aが設けられているため、これらの開口部4a,5aを通して収容空間Kの冷気がラック本体3の上下方向に流れ易くなっている。一方、各ラック部2の底板4の面上に敷板を設置することで、底板4の開口部4aを通過する冷気の流れを調整することが可能である。
【0056】
したがって、本実施形態の凍結保存用ラック1では、複数のラック部2の間を流れる冷気の量を調整しながら、これら複数のラック部2の間における冷却温度の均一化を図ることが可能である。
【0057】
ここで、予備凍結装置100の収容空間Kに収容された3つの凍結保存用ラック1の各々に設けられた7段のラック部2の各々に対して選択的に設置される敷板の一例を表1に示す。
【0058】
なお、表1は、予備凍結装置100の収容空間Kに収容された3つの凍結保存用ラック1の(ラック番号1~3)と、各凍結保存用ラック1に設けられた7段のラック部2の(棚番号1~7)とを示し、ラック部2の各々に対して選択的に設置される敷板の種類と敷板の有無を表す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、3つの凍結保存用ラック1(ラック番号1~3)のうち、中央に位置する凍結保存用ラック1(ラック番号2)は、両端に位置する凍結保存用ラック1(ラック番号1,3)よりも冷却し難い。
【0061】
したがって、中央に位置する凍結保存用ラック1(ラック番号2)には、両端に位置する凍結保存用ラック1(ラック番号1,3)よりも開口率の大きい敷板を使用することで、収容空間Kにおける凍結保存用ラック1の配置の違いによる冷却温度の差を小さくする。
【0062】
一方、各凍結保存用ラック1(ラック番号1~3)の7段のラック部(棚番号1~7)のうち、中段に位置するラック部(棚番号3~5)は、上下段に位置するラック部(棚番号1,2,6,7)よりも冷却し難い。
【0063】
したがって、中段に位置するラック部2(棚番号3~5)には、上下段に位置するラック部2(棚番号1,2,6,7)よりも開口率の大きい敷板を使用することで、複数のラック部2に対する凍結保存用ボックス200の配置の違いによる冷却温度の差を小さくする。
【0064】
なお、敷板による冷却調整については、敷板の材質や厚みを変更することによって行うことも可能である。例えば、中段に位置するラック部2(棚番号3~5)には、上下段に位置するラック部2(棚番号1,2,6,7)よりも板厚が小さい敷板を使用することで、複数のラック部2に対する凍結保存用ボックス200の配置の違いによる冷却温度の差を小さくすることも可能である。
【0065】
また、敷板による冷却調整については、上述した複数種類の敷板8A~8Fの中から1つの敷板を選択的に設置又は除去する場合に限らず、少なくとも1種類の敷板を選択的に設置又は除去するようにしてもよい。
【0066】
以上のようにして、本実施形態の凍結保存用ラック1を用いた予備凍結方法では、上述した収容空間Kにおける凍結保存用ラック1の配置の違いや、複数のラック部2に対する凍結保存用ボックス200の配置の違い、更には凍結保存用ボックス200内における凍結保存用容器300の配置の違いなどによって、試料の冷却温度に差が生じることを抑制しながら、冷却温度の均一化を図ることが可能である。
【0067】
したがって、本実施形態の凍結保存用ラック1を用いた予備凍結方法では、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることが可能である。
【0068】
なお、本実施形態の凍結保存用ラック1を用いた予備凍結方法では、表1に示す例に必ずしも限定されるものではなく、例えば、ファン103及び排気口10の配置などによっても、収容空間Kにおける冷却傾向が変化する。したがって、このような冷却傾向に変化に応じた冷却調整を行うことも可能である。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明が適用される予備凍結装置については、上述したプログラムフリーザに必ずしも限定されるものではなく、例えば機械式冷凍機などであってもよく、上記凍結保存用ラックを用いた予備凍結方法により、試料を予備凍結させるものであればよい。
【符号の説明】
【0070】
1…凍結保存用ラック 2…ラック部 3…ラック本体 4…底板 4a…開口部 5…天板 5a…開口部 6a,6b…支柱 7…取手部 8A~8F…敷板 8a…開口部 E…開口領域 K…収容空間 k…保存空間 100…予備凍結装置 200…凍結保存用ボックス 300…凍結保存用容器
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