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特開2024-35783透明組成物、ポリウレタン及びポリウレタンの製造方法
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  • 特開-透明組成物、ポリウレタン及びポリウレタンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035783
(43)【公開日】2024-03-14
(54)【発明の名称】透明組成物、ポリウレタン及びポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20240307BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240307BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240307BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20240307BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C08G18/65 011
C08G18/44
C08G18/32 006
C08G64/02
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048517
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2022140090
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】白井 一彰
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 功徳
【テーマコード(参考)】
4J029
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J029AB01
4J029AD01
4J029AD03
4J029AE04
4J029AE17
4J029BA03
4J029BA05
4J029BA07
4J029BF30
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD04
4J034DF02
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB07
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD21
4J034KE02
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB08
4J034QB10
4J034QB14
4J034QC03
4J034RA03
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA10
4J034RA12
4J038DG051
4J038DG121
4J038DG261
4J038NA01
4J038NA03
4J038PA06
4J038PA19
4J038PC02
4J038PC04
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリカーボネートジオールとジオール系化合物とを含む組成物において、揮発性有機化合物(VOC)を用いることなく低粘度で取り扱い性に優れ、且つ、透明性と均一性に優れた透明組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるジオール(A)と、下記式(2)で表される構造単位(I)を含有するポリカーボネートジオール(B)を含む、透明組成物。
HO-CH(R)-CH-OH…(1)
(上記式(1)において、Rは置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基である。)

(上記式(2)において、Rは直鎖、分岐、又は脂環式構造を有する、置換若しくは無置換の炭素数2~20のアルキレン基であって、mは3~50の整数である。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジオール(A)と、下記式(2)で表される構造単位(I)を含有するポリカーボネートジオール(B)を含む、透明組成物。
HO-CH(R)-CH-OH …(1)
(上記式(1)において、Rは置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基である。)
【化1】
(上記式(2)において、Rは直鎖、分岐、又は脂環式構造を有する、置換若しくは無置換の炭素数2~20のアルキレン基であって、mは3~50の整数である。)
【請求項2】
前記ジオール(A)が、1,2-ブタンジオールである、請求項1に記載の透明組成物。
【請求項3】
前記透明組成物が、該透明組成物の総質量100%に対して、前記ジオール(A)1質量%以上50質量%以下と、前記ポリカーボネートジオール(B)50質量%以上99質量%以下を含む、請求項1に記載の透明組成物。
【請求項4】
前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(I)が、下記式(3)で表される構造単位(IIa)、及びイソソルビド、イソマンニド及びイソイジドから選ばれる少なくとも一種のジオールに由来する構造単位(IIb)を含む、請求項1に記載の透明組成物。
【化2】
(上記式(3)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。nは3~50の整数である。)
【請求項5】
前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(IIb)に対する前記構造単位(IIa)のモル比(構造単位(IIa)/構造単位(IIb))が、45/55以上75/25以下の範囲内である、請求項4に記載の透明組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(I)が、下記式(3)で表される構造単位(IIa)及び下記式(4)で表される構造単位(IIc)を含む、請求項1に記載の透明組成物。
【化3】
(上記式(3)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。nは3~50の整数である。)
【化4】
(上記式(4)において、Rは分岐鎖を含む炭素数3~20のアルキレン基であって、kは1~50の整数である。)
【請求項7】
前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(IIc)に対する前記構造単位(IIa)のモル比(構造単位(IIa)/構造単位(IIc))が、55/45以上85/15以下の範囲内である、請求項6に記載の透明組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネートジオール(B)の数平均分子量が400以上4000以下である、請求項1に記載の透明組成物。
【請求項9】
ポリウレタンの製造原料として使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンであって、
前記ジオール(A)に由来する構造単位及び前記ポリカーボネートジオール(B)に由来する構造単位と、イソシアネート化合物に由来する構造単位とを含む、ポリウレタン。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンを含む塗料。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンを含むコーティング剤。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物とイソシアネート化合物を含む塗料。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物とイソシアネート化合物を含むコーティング剤。
【請求項15】
基材と、該基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に積層されたポリウレタンを含む層とを有する積層体であって、該ポリウレタンが、請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンである、積層体。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透明組成物とイソシアネート化合物とを含む組成物を重合してポリウレタンを得る、ポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明組成物、ポリウレタン及びポリウレタンの製造方法に関する。
詳しくは、本発明は、特定構造を有するジオールと特定構造を有するポリカーボネートジオールを含む透明性を有する透明組成物と、該透明組成物を用いて製造されたポリウレタン、該透明組成物を用いて製造されたポリウレタンを含む塗料、コーティング剤、及び積層体、並びに、該透明組成物を用いてポリウレタンを製造するポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業規模で生産されているポリウレタンとして、ソフトセグメント部の原料にポリカーボネートジオールを用いた、ポリカーボネート系ポリウレタンが提案されている(特許文献1)。ポリカーボネート系ポリウレタンは、ポリカーボネート由来の高い耐久性を示すため、塗料やコーティング剤の分野で広く使用されている。
【0003】
ポリカーボネート系ポリウレタンの工業的な製造方法として、ポリカーボネートジオール及びイソシアネート系化合物と、さらに必要に応じて他のジオール系化合物又はポリオール系化合物とを重縮合反応させる方法が知られている。
【0004】
しかしながら、ポリカーボネートジオールは粘度が高いものが多いため、ポリカーボネート系ポリウレタンの製造においては、先ず当該ポリカーボネートジオールを、反応不活性な溶剤で希釈し、低粘度化する必要があった。
また、ポリカーボネートジオールは他のジオール系化合物やポリオール系化合物との相溶性が低いものが多いため、両者の相溶化剤として作用する反応不活性溶剤を用いる必要があった。
【0005】
上述したポリカーボネート系ポリウレタンの重縮合反応では、ポリカーボネートジオールの低粘度化や上述したポリウレタン原料の相溶性向上を目的として、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等の反応不活性な溶剤を用いる方法が知られている。
しかしながら、近年の国内外の塗料・コーティング市場では、製造コスト削減や環境負荷低減の観点から、塗料やコーティング液中の揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の含有量を低減させる、ハイソリッド化の要求があり、上述したジメチルホルムアミド等の反応不活性な溶剤を使用せずに、ポリカーボネート系ポリウレタンを製造する方法が要求されている。
【0006】
反応不活性な溶剤を使用しないポリカーボネート系ポリウレタンの製造方法として、例えば、特許文献2には、ポリイソシアネートと、ポリカーボネートジオール等の高分子量ポリオールと、特定のジオール系化合物とを溶融重合(バルク重合)して、ポリウレタン樹脂を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-108196号公報
【特許文献2】特開2011-213867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されている方法では、反応性希釈剤として用いたジオール系化合物とポリカーボネートジオールとの相溶性が劣るため、反応液における原料の混合性が劣り、得られたポリウレタンの品質が著しく劣るという課題があった。なお、ここで、相溶性は、組成物の透明性で評価することができる。即ち、ジオール系化合物とポリカーボネートジオールとの相溶性が良好であれば、これらを含む組成物は均一であることから透明なものとなる。
このようなことから、ポリウレタンの合成原料として使用することが可能な、均一性、即ち透明性に優れたジオール系化合物とポリカーボネートジオールを含む透明組成物が要求されていた。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、ポリカーボネートジオールとジオール系化合物とを含む組成物において、揮発性有機化合物(VOC)を用いることなく、低粘度で取り扱い性に優れ、且つ、透明性と均一性に優れた透明組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、前記透明組成物を含む塗料及びコーティング剤、並びに前記透明組成物を用いたポリウレタン、前記ポリウレタンを含む塗料及びコーティング剤、及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有するジオールと、特定構造を有するポリカーボネートジオールとを組み合わせた組成物とすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0011】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0012】
[1] 下記式(1)で表されるジオール(A)と、下記式(2)で表される構造単位(I)を含有するポリカーボネートジオール(B)を含む、透明組成物。
HO-CH(R)-CH-OH …(1)
(上記式(1)において、Rは置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基である。)
【0013】
【化1】
【0014】
(上記式(2)において、Rは直鎖、分岐、又は脂環式構造を有する、置換若しくは無置換の炭素数2~20のアルキレン基であって、mは3~50の整数である。)
【0015】
[2] 前記ジオール(A)が、1,2-ブタンジオールである、[1]に記載の透明組成物。
【0016】
[3] 前記透明組成物が、該透明組成物の総質量100%に対して、前記ジオール(A)1質量%以上50質量%以下と、前記ポリカーボネートジオール(B)50質量%以上99質量%以下を含む、[1]又は[2]に記載の透明組成物。
【0017】
[4] 前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(I)が、下記式(3)で表される構造単位(IIa)、及びイソソルビド、イソマンニド及びイソイジドから選ばれる少なくとも一種のジオールに由来する構造単位(IIb)を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の透明組成物。
【0018】
【化2】
【0019】
(上記式(3)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。nは3~50の整数である。)
【0020】
[5] 前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(IIb)に対する前記構造単位(IIa)のモル比(構造単位(IIa)/構造単位(IIb))が、45/55以上75/25以下の範囲内である、[4]に記載の透明組成物。
【0021】
[6] 前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(I)が、下記式(3)で表される構造単位(IIa)及び下記式(4)で表される構造単位(IIc)を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の透明組成物。
【0022】
【化3】
【0023】
(上記式(3)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。nは3~50の整数である。)
【0024】
【化4】
【0025】
(上記式(4)において、Rは分岐鎖を含む炭素数3~20のアルキレン基であって、kは1~50の整数である。)
【0026】
[7] 前記ポリカーボネートジオール(B)において、前記構造単位(IIc)に対する前記構造単位(IIa)のモル比(構造単位(IIa)/構造単位(IIc))が、55/45以上85/15以下の範囲内である、[6]に記載の透明組成物。
【0027】
[8] 前記ポリカーボネートジオール(B)の数平均分子量が400以上4000以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の透明組成物。
【0028】
[9] ポリウレタンの製造原料として使用される、[1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物。
【0029】
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンであって、
前記ジオール(A)に由来する構造単位及び前記ポリカーボネートジオール(B)に由来する構造単位と、イソシアネート化合物に由来する構造単位とを含む、ポリウレタン。
【0030】
[11] [1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンを含む塗料。
【0031】
[12] [1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンを含むコーティング剤。
【0032】
[13] [1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物とイソシアネート化合物を含む塗料。
【0033】
[14] [1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物とイソシアネート化合物を含むコーティング剤。
【0034】
[15] 基材と、該基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に積層されたポリウレタンを含む層とを有する積層体であって、該ポリウレタンが、[1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンである、積層体。
【0035】
[16] [1]~[8]のいずれかに記載の透明組成物とイソシアネート化合物とを含む組成物を重合してポリウレタンを得る、ポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、特定構造を有するジオールと、特定構造を有するポリカーボネートジオールとを組み合わせて用いることで、揮発性有機化合物(VOC)を用いることなく、低粘度で取り扱い性に優れ、且つ、透明性と均一性に優れた透明組成物を提供することができる。
このような本発明の透明組成物は、前記ジオールと前記ポリカーボネートジオールが均一に混合しているため、この透明組成物を原料として得られたポリウレタン製品は、透明性と機械的強度に優れている。
すなわち、本発明の透明組成物は、ポリウレタンの合成用原料として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例1~4及び比較例1~6で調製された混合物の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0039】
なお、特に断らない限り、本明細書において、「構造単位」とは、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造に用いる原料化合物が重合することにより形成された、前記原料化合物に由来する単位であって、得られた重合体において任意の連結基に挟まれた部分構造を示す。重合体の末端部分で一方が連結基であり、もう一方が重合反応性基である部分構造も含む。構造単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、得られた重合体を処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
本明細書において、「繰り返し単位」とは、「構造単位」と同義である。
【0040】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りのない限り、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0041】
本明細書において、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。
【0042】
[透明組成物]
本発明の透明組成物は、下記式(1)で表されるジオール(A)と、下記式(2)で表される構造単位(I)を含むポリカーボネートジオール(B)を含むことを特徴とする。
HO-CH(R)-CH-OH …(1)
(上記式(1)において、Rは置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基である。)
【0043】
【化5】
【0044】
(上記式(2)において、Rは直鎖、分岐、又は脂環式構造を有する、置換若しくは無置換の炭素数2~20のアルキレン基であって、mは3~50の整数である。)
【0045】
なお、本発明において、アルキル基又はアルキレン基の炭素数とは、当該アルキル基又はアルキレン基が置換基を含む場合、該置換基の炭素数も含めた合計の炭素数を意味する。
【0046】
<ジオール(A)>
本発明で用いるジオール(A)は、下記式(1)で表されるジオールである。
HO-CH(R)-CH-OH …(1)
(上記式(1)において、Rは置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基である。)
ジオール(A)のRの炭素数が1~5の範囲内であれば、ジオール(A)の常温における性状が液体であり、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)とが良好に相溶するため、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)を含む組成物の透明性と均一性が良好となる。Rの炭素数は、2~4の範囲内であることが好ましく、2又は3であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
【0047】
は、その一部が環(脂環及び芳香環)を形成していてもよい。
のアルキル基が有していてもよい置換基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子、水酸基からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子、水酸基からなる群より選択される少なくとも1種を含む炭化水素基が挙げられる。
としては、好ましくは、置換基として水酸基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。
【0048】
ジオール(A)の具体的な一実施態様としては、1分子中に水酸基を2個以上有し、且つ、2級炭素原子を少なくとも1個含むジオールが挙げられる。
このようなジオール(A)として、より具体的には、1,2-プロパンジオール又はその誘導体、1,2-ブタンジオール又はその誘導体、1,2-ヘプタンジオール又はその誘導体、1,2-ヘキサンジオール又はその誘導体、1,2-ペンタンジオール又はその誘導体が挙げられる。
【0049】
なお、前記「誘導体」とは、下記式(1)におけるRが、当該Rの一部が環(脂環及び芳香環)を形成している化合物、又は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子、水酸基からなる群より選択される少なくとも1種を置換基として有する化合物、若しくは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子、水酸基からなる群より選択される少なくとも1種を含有する炭化水素基置換基として有する化合物のことをいう。
【0050】
これらのうち、透明組成物が低粘度で取り扱い性に優れ、且つ、透明組成物の透明性と均一性に優れる観点から、ジオール(A)としては、1,2-ブタンジオールが特に好ましい。
【0051】
これらのジオール(A)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
<ポリカーボネートジオール(B)>
本発明で用いるポリカーボネートジオール(B)は、下記式(2)で表される構造単位(I)を含むポリカーボネートジオールである。
【0053】
【化6】
【0054】
上記式(2)において、Rは直鎖、分岐、又は脂環式構造を有する、置換若しくは無置換の炭素数2~20のアルキレン基であって、mは3~50の整数である。
【0055】
式(2)におけるRのアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、エーテル基、チオエーテル基、アルキル基置換アミノ基が挙げられる。
【0056】
本発明で用いるポリカーボネートジオール(B)は、分子の両末端に水酸基を有し、主鎖中にカーボネート結合を有するものであり、上記式(2)で表される構造単位(I)を含むものであることが、得られたポリウレタンの機械的強度が良好となる観点から好ましい。
【0057】
(ポリカーボネートジオール(B)の実施態様(1))
本発明で用いるポリカーボネートジオール(B)の好ましい一実施態様(1)として、前記構造単位(I)が、2つの2級水酸基を有し、構成原子にヘテロ原子を有していてもよい環式脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(II)とを含むものであることが、得られたポリウレタンの機械的強度が良好となる観点から好ましい。
【0058】
前記構造単位(I)として、具体的には、下記式(3)で表される構造単位(IIa)、及び、イソソルビド、イソマンニド及びイソイジドから選ばれる少なくとも一種のジオールに由来する構造単位(IIb)とを含むことが、得られたポリウレタンの機械的強度がより良好となる観点から好ましい。
【0059】
【化7】
【0060】
上記式(3)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。nは3~50の整数である。
【0061】
前記式(3)において、nが3未満では得られるポリウレタンの柔軟性が劣る傾向があり、50を超えると当該ポリカーボネートジオール(B)の粘度が高くなり取扱い性が悪くなる傾向がある。よって、nは3~50であり、好ましくは3~40、より好ましくは5~30である。
【0062】
実施態様(1)において、式(3)におけるRのアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、エーテル基、チオエーテル基、アルキル基置換アミノ基が挙げられる。
のアルキレン基の炭素数はポリカーボネートジオール(B)の取扱い性と、本発明の透明組成物をポリウレタン原料として用いた場合に得られるポリウレタンの曲げ強度等の観点から4~6であることが好ましい。
【0063】
実施態様(1)において、構造単位(IIa)を与える原料ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどのジオールが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、工業的入手性、本発明の透明組成物をポリウレタン原料として用いた場合に得られるポリウレタンの曲げ強度と耐熱性が優れる等の観点から、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0064】
実施態様(1)において、構造単位(IIb)を与える具体的な原料ジヒドロキシ化合物としては、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、3,4-テトラヒドロフランジオールなどが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、分子内にヘテロ原子を有し、工業的に製造されているイソソルビド、イソマンニド、イソイジドが好ましく、イソソルビドがより好ましい。
【0065】
実施態様(1)において、ポリカーボネートジオール(B)中の前記構造単位(IIb)に対する前記構造単位(IIa)のモル比(構造単位(IIa)/構造単位(IIb))は、45/55以上75/25以下の範囲が好ましく、48/52以上72/28以下の範囲がより好ましい。前記モル比が上記上限以下であれば、本発明の透明組成物をポリウレタン原料として得られるポリウレタンの曲げ強度が良好となる。前記モル比が上記下限以上であれば、ポリカーボネートジオール(B)の粘度上昇が押さえられ、取扱いが良好となる。
【0066】
(ポリカーボネートジオール(B)の実施態様(2))
本発明で用いるポリカーボネートジオール(B)の好ましい他の実施態様(2)としては、前記構造単位(I)が、下記式(3)で表される構造単位(IIa)、及び、下記式(4)で表される構造単位(IIc)とを含むことが、得られたポリウレタンの機械的強度が良好となる観点から好ましい。
【0067】
【化8】
【0068】
上記式(3)において、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~10のアルキレン基であって、Rのアルキレン基中の炭素原子は1~3級の炭素原子である。nは3~50の整数である。
【0069】
実施態様(2)において、前記式(3)は、ポリカーボネートジオール(B)の実施態様(1)の説明で挙げた、式(3)と同義として扱うことができる。
【0070】
【化9】
【0071】
上記式(4)において、Rは分岐鎖を含む炭素数3~20のアルキレン基である。kは1~50の整数である。
【0072】
前記式(4)において、kが1以上であれば、ジオール(A)との相溶性に優れ、また、得られるポリウレタンの柔軟性と耐久性に優れる。一方、kが50を超えると耐摩耗性が劣る傾向がある。よって、kは1~50であり、好ましくは2~50、より好ましくは2~40、さらに好ましくは2~30である。
【0073】
実施態様(2)において、前記構造単位(IIa)は、ポリカーボネートジオール(B)の好ましい一実施態様(1)の説明で挙げた、構造単位(IIa)と同義として扱うことができる。
【0074】
実施態様(2)において、構造単位(IIa)を与える原料ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどのジオールが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、本発明の透明組成物をポリウレタン原料として用いた場合に得られるポリウレタンの曲げ強度と耐熱性等の観点から、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0075】
実施態様(2)において、式(4)中のRは分岐鎖を含む炭素数3~20、好ましくは炭素数4~12のアルキレン基であり、ジオール(A)との相溶性の観点から、好ましくは、Rにおける分岐鎖の炭素数の割合がRの全炭素数に対して0.05~0.5である分岐アルキレン基である。
【0076】
実施態様(2)において、このような構造単位(IIc)を与える原料ジヒドロキシ化合物としては、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール及び2-メチル-1,4-ブタンジオールなどが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
【0077】
実施態様(2)において、ポリカーボネートジオール(B)中の構造単位(IIc)に対する前記構造単位(IIa)のモル比(構造単位(IIa)/構造単位(IIc))は、55/45以上85/15以下の範囲が好ましく、65/35以上75/25以下の範囲がより好ましい。前記モル比が上記上限以下であれば、本発明の透明組成物をポリウレタン原料として用いた場合に得られるポリウレタンの曲げ強度が良好となる。前記モル比が上記下限以上であれば、ポリカーボネートジオール(B)の粘度上昇が押さえられ、取扱いが良好となる。
【0078】
本発明のポリカーボネートジオール(B)の水酸基価は、28~280mgKOH/gが好ましく、37~190mgKOH/gがより好ましく、56~160mgKOH/gがさらに好ましい。ポリカーボネートジオール(B)の水酸基価が上記下限以上であれば、ポリカーボネートジオール(B)は適当な粘度となり、取り扱い性に優れ、上記上限以下であれば、得られたポリウレタンの柔軟性や低温特性を良好に維持できる。
【0079】
ポリカーボネートジオール(B)の水酸基価から求めた数平均分子量は、400~4000が好ましく、600~3000がより好ましく、700~2000がさらに好ましい。ポリカーボネートジオール(B)の水酸基価から求めた数平均分子量が上記下限以上であれば、本発明の透明組成物をポリウレタン原料として用いた場合に得られるポリウレタンの曲げ強度が良好となり、上記上限以下であれば、ポリカーボネートジオール(B)の粘度上昇が押さえられ、取扱いが容易となる。
【0080】
なお、ポリカーボネートジオール(B)の水酸基価及び数平均分子量、構造単位(IIa)と構造単位(IIb)、又は構造単位(IIa)と構造単位(IIc)のモル比率は以下の方法で求めることができる。
【0081】
(ポリカーボネートジオール(B)の水酸基価・数平均分子量)
JIS K1557-1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にて、ポリカーボネートジオール(B)の水酸基価を測定する。
また、水酸基価から、下記式(4)により数平均分子量(Mn)を求める。
数平均分子量=2×56.1/(水酸基価×10-3) …(4)
【0082】
(ポリカーボネートジオール(B)における、構造単位(IIa)と構造単位(IIb)、又は構造単位(IIa)と構造単位(IIc)のモル比率)
ポリカーボネートジオール(B)をCDClに溶解し、核磁気共鳴装置(NMR)(日本電子株式会社製「AL-400」、400MHz)を用いてH-NMRスペクトルを測定し、各成分のシグナル位置及びシグナル強度より、構造単位(IIa)と構造単位(IIb)、又は構造単位(IIa)と構造単位(IIc)のモル比率をそれぞれ求め、構造単位(IIa)/構造単位(IIb)、又は構造単位(IIa)/構造単位(IIc)を算出する。
【0083】
このようなポリカーボネートジオール(B)は、前記式(2)で表される化合物、好ましくは、前記構造単位(IIa)を与える原料ジヒドロキシ化合物と前記構造単位(IIb)を与える原料ジヒドロキシ化合物とを用いて、或いは、前記構造単位(IIa)を与える原料ジヒドロキシ化合物と前記構造単位(IIc)を与える原料ジヒドロキシ化合物とを用いて、公知のポリカーボネートジオールの製造方法に従って製造することができる。
【0084】
ポリカーボネートジオール(B)は1種のみを用いてもよく、構造単位の種類や組成、物性等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
<ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)の含有量>
本発明の透明組成物に含まれる、ジオール(A)の含有割合の下限は、特に限定されるものではないが、透明組成物の低粘度性と透明性を良好に維持できる観点から、該透明組成物の総質量100%に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、前記含有割合の上限は、特に限定されるものではないが、得られたポリウレタンの機械的強度を良好に維持できる観点から、該透明組成物の総質量100%に対して、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
上記の上限下限は、任意に組み合わせることができる。則ち、本発明の透明組成物に含まれるジオール(A)の含有割合は、特に限定されるものではないが、該透明組成物の総質量100%に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上45質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上30質量%以下が特に好ましい。
【0086】
本発明の透明組成物に含まれる、ポリカーボネートジオール(B)の含有割合の下限は、特に限定されるものではないが、得られたポリウレタンの機械的強度を良好に維持できる観点から、該透明組成物の総質量100%に対して、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、前記含有割合の上限は、特に限定されるものではないが、透明組成物の低粘度性と透明性を良好に維持できる観点から、該透明組成物の総質量100%に対して、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
上記の上限下限は、任意に組み合わせることができる。則ち、本発明の透明組成物に含まれるポリカーボネートジオール(B)の含有割合は、特に限定されるものではないが、該透明組成物の総質量100%に対して、50質量%以上99質量%以下が好ましく、55質量%以上95質量%以下がより好ましく、60質量%以上90質量%以下がさらに好ましく、70質量%以上80質量%以下が特に好ましい。
【0087】
また、上述した観点から、本発明の透明組成物において、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)の夫々の含有比率は、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)との合計質量100%に対して、ジオール(A)1質量%以上50質量%以下及びポリカーボネートジオール(B)50質量%以上99質量%以下であることが好ましく、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)との合計質量100%に対して、ジオール(A)5質量%以上45質量%以下及びポリカーボネートジオール(B)55質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)との合計質量100%に対して、ジオール(A)10質量%以上40質量%以下及びポリカーボネートジオール(B)60質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましく、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)との合計質量100%に対して、ジオール(A)20質量%以上30質量%以下及びポリカーボネートジオール(B)70質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
【0088】
<その他の成分>
本発明の透明組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、即ち、組成物の透明性と低粘度性を損なわない範囲で、ジオール(A)及びポリカーボネートジオール(B)以外のその他の成分を含んでいてもよい。この場合、ジオール(A)及びポリカーボネートジオール(B)以外のその他の成分としては、例えば、公知の有機溶媒、(メタ)アクリレート系モノマー等の公知の活性エネルギー線反応性モノマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等の公知の活性エネルギー線硬化性オリゴマー、公知の重合開始剤、酸化防止剤や熱安定剤等の公知の添加剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0089】
ただし、均一で透明性に優れたポリウレタン原料としてのジオール成分を提供するという本発明の目的において、本発明の透明組成物がジオール(A)及びポリカーボネートジオール(B)以外のその他の成分を含有する場合、その含有量は本発明の透明組成物100質量%中に好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であることが好ましく、本発明の透明組成物は、実質的にジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)から構成されることが最も好ましい。
【0090】
<透明組成物の製造>
本発明の透明組成物は、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)とを所定の割合で攪拌混合することにより製造することができる。
この混合時の条件には特に制限はなく、混合温度も常温でよい。
【0091】
<透明性>
本発明の透明組成物は、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)との相溶性に優れ、これらが均一に混合されていることで、優れた透明性を有するものである。
本発明の透明組成物の透明性は、目視観察により評価することができ、透明組成物の製造直後~製造後100時間経過した後も沈殿物や濁質、浮遊物がなく、透明なガラス瓶に入れたときに、透明組成物を透過して向こう側が透けて見える状態をさす。
【0092】
[ポリウレタン]
本発明の透明組成物は、反応性希釈剤としてのジオール(A)と、ポリカーボネート系ポリウレタンの製造原料としてのポリカーボネートジオール(B)とが均一な混合状態を維持しているものであり、これをポリウレタンの製造原料として用いることで、高品質のポリウレタンを製造することができる。
【0093】
以下に本発明の透明組成物を用いた本発明のポリウレタンについて、その製造方法に従って説明する。
【0094】
本発明のポリウレタンは、本発明の透明組成物に含まれるジオール(A)に由来する構造単位及びポリカーボネートジオール(B)に由来する構造単位と、イソシアネート化合物に由来する構造単位とを含むポリウレタンであり、本発明の透明組成物とイソシアネート化合物とを含む組成物を、公知のポリウレタンの製造方法に従って重合することにより製造することができる。
本発明のポリウレタンの製造において、本発明の透明組成物中のジオール(A)は鎖延長剤及び反応性希釈剤として機能する。
【0095】
ここで、本発明のポリウレタンの製造に当たり、溶媒を用いてもよい。しかしながら、成形時に溶媒を除去する工程が必要となるため工業的に有利ではない。また溶媒は環境への負荷が大きいため、反応は無溶媒(溶媒の不存在下)で行うことがより好ましい。
本発明の透明組成物は、ジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)とが均一に相溶化しているため、無溶媒で円滑に重合反応を行うことができる。
【0096】
製造方法の一例として、例えば国際公開第2018/088575号に開示されるように、本発明の透明組成物とイソシアネート化合物をワンショット法で連続的に反応(一段法)させることにより、本発明のポリウレタンを効率よく製造することができる。
また、製造方法の別の一例として、例えば国際公開第2018/088575号に開示されるように、本発明の透明組成物と過剰のイソシアネート化合物とをまず反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤と反応させて(二段法)重合度を上げて、本発明のポリウレタンを製造することもできる。
【0097】
<イソシアネート化合物>
本発明のポリウレタンの製造原料として使用されるイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2以上有するものであればよく、芳香族又は脂肪族、脂環族の各種公知のイソシアネート化合物が挙げられる。
【0098】
例えば、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート)、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。これらは適宜イソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体となっていてもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
これらの中でも得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート)が、耐候性に優れる点で4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましい。なおこれらはイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体であってもよい。
【0100】
<鎖延長剤>
鎖延長剤としては、本発明の透明組成物中のジオール(A)が用いられるが、更に低分子量のポリオール化合物を併用してもよい。
【0101】
その具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類等を挙げることができる。
【0102】
これらの鎖延長剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
これらの中でも得られるポリウレタンのソフトセグメントとハードセグメントの相分離性に優れることによる柔軟性と応力緩和性に優れる点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖ジオールが好ましい。側鎖を有するジオールを用いるとポリウレタンのハードセグメントの凝集力が低下して機械物性等の諸物性が低下することもある。これらの直鎖ジオールの中では物性のバランスの点で1,4-ブタンジオールが最も好ましい。
【0104】
<鎖停止剤>
本発明のポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を少量添加使用することもできる。
これらの鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
<触媒>
本発明のポリウレタンを製造する際に、ウレタン化反応のためにウレタン化反応触媒を使用してもよい。ウレタン化反応触媒としては、例えば、有機スズ系化合物、有機亜鉛系化合物、有機ビスマス系化合物、有機チタン系化合物、有機ジルコニウム系化合物、アミン系化合物等を挙げることができる。ウレタン化反応触媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタン化反応触媒を使用する場合、該触媒の配合量は、特定に限定されるものではないが、通常は、製造されるポリウレタンの質量に対して、0.1~100質量ppmの範囲内でその使用量を調整することができる。
【0106】
前記ウレタン化反応触媒の中でも、有機スズ系化合物が好ましい。有機スズ系化合物としては、例えば、スズ含有アシレート化合物、スズ含有メルカプトカルボン酸塩等が挙げられ、具体的には、オクチル酸スズ、モノメチルスズメルカプト酢酸塩、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、モノブチルスズマレイン酸ベンジルエステル塩、モノオクチルスズマレイン酸塩、モノオクチルスズチオジプロピオン酸塩、モノオクチルスズトリス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、モノフェニルスズトリアセテート、ジメチルスズマレイン酸エステル塩、ジメチルスズビス(エチレングリコールモノチオグリコレート)、ジメチルスズビス(メルカプト酢酸)塩、ジメチルスズビス(3-メルカプトプロピオン酸)塩、ジメチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズモノデカネート、ジブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジブチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸アルキルエステル)塩、ジブチルスズビス(3-メルカプトプロピオン酸アルコキシブチルエステル)塩、ジブチルスズビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジブチルスズ(3-メルカプトプロピオン酸)塩、ジオクチルスズマレイン酸塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジオクチルスズビス(3-メルカプトプロピオン酸)塩等が挙げられる。
【0107】
脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物をイソシアネート化合物原料として使用する場合は、芳香族イソシアネート化合物より反応性が低いため、スズ系等の触媒を使用するのが好ましく、特に反応性の低い4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いる場合は触媒を使用することがさらに好ましい。
【0108】
特に反応性の低い4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いる場合は触媒を使用した場合でも、重合後の硬化発現が遅いので、20~120℃の温度で10時間以上熟成させるのが好ましく、100~120℃で10時間以上熟成させるのがさらに好ましい。熟成を十分に実施しないとポリウレタンの重合度が十分に上がらず、諸物性が悪化することがある。
【0109】
本発明の透明組成物と、イソシアネート化合物を反応させて本発明のポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用でき、具体的には、後述する一段法又は後述する二段法が挙げられる。
【0110】
<一段法>
ポリウレタンの製造における一段法は、ワンショット法ともよばれ、工業的な製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば単軸又は多軸スクリュー型押出機、あるいはスタティックミキサーに、ポリウレタン原料として、本発明の透明組成物及びイソシアネート化合物、並びに必要に応じて他の成分を、同時又はほぼ同時に連続的に供給して40~300℃の範囲内、好ましくは80~220℃の範囲内で連続溶融重合させて、ポリウレタンを製造する方法が挙げられる。
また、本発明の透明組成物及びイソシアネート化合物、並びに、必要に応じて他の成分を混ぜておき、その混合物を剥離シートにキャストして加熱により硬化させる方法が挙げられる。
【0111】
本発明のポリウレタンを製造する際に本発明の透明組成物とイソシアネート化合物を溶媒系で急速攪拌して十分に混合した後、前記の単軸又は多軸スクリュー型押出機、あるいはスタティックミキサーに連続的に供給してポリウレタンを連続的に製造する方法は、反応性の低い脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物の場合は有効である。
【0112】
前記一段法は、押出機に反応成分のすべてを同時又はほぼ同時に供給するだけで、極めて簡単に目的とするポリウレタンを連続して製造することができるので好ましい。
【0113】
<二段法>
ポリウレタンの製造における二段法は、プレポリマー法ともよばれ、工業的な製造方法としては、特に限定されるものではないが、以下の方法が挙げられる。
(a) ポリウレタン原料として、予め本発明の透明組成物と、過剰のイソシアネート化合物とを、イソシアネート化合物/本発明の透明組成物の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに、後述する公知の鎖延長剤を加えることによりポリウレタンを製造する方法。
(b) ポリウレタン原料として、予めイソシアネート化合物と、過剰の本発明の透明組成物とを、イソシアネート化合物/本発明の透明組成物の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤として、末端がイソシアネート基のイソシアネート化合物を反応させてポリウレタンを製造する方法。
【0114】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法によるポリウレタンのより具体的な製造方法としては、以下に記載の(1)~(3)のいずれかの方法を用いることができる。
方法(1):溶媒を使用せず、まず直接イソシアネート化合物と本発明の透明組成物とを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応を行い、ポリウレタンを得る。
方法(2):(1)の方法で合成したプレポリマーを溶媒に溶解し、次いで鎖延長反応を行い、ポリウレタンを得る。
方法(3):溶媒存在下でイソシアネート化合物と本発明の透明組成物とを反応させ、プレポリマーを合成し、その後、溶媒存在下で鎖延長反応を行い、ポリウレタンを得る。
【0115】
方法(1)においては、鎖延長反応を行うにあたり、後述する公知の鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を溶解したりするなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることができる。
【0116】
二段法による場合は、上述した方法(1)~(3)の製造方法の中でも、溶融成形性および力学的特性に優れるポリウレタンを製造する観点から、実質的に溶媒の不存在下で溶融重合することが好ましく、多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合法がより好ましい。連続溶融重合法で得られたポリウレタンは、一般に、重合温度40~300℃の範囲内で、固相重合で得られたポリウレタンに比べて、強度の点において優れている。
【0117】
<反応モル比>
上述した一段法及び二段法のいずれにおいても、本発明のポリウレタンを製造する際のウレタン化反応には、本発明の透明組成物とイソシアネート化合物のモル比が、得られたポリウレタンのポリカーボネートジオール(B):イソシアネート化合物:鎖延長剤としてのジオール(A)=1:2~6:1~5のモル比となるように反応させる。この際、原料のモル比は生成物のモル比に反映される。
【0118】
原料のモル比において、ポリカーボネートジオール(B)のモル量(Ma)と鎖延長剤としてジオール(A)のモル量(Mb)の和(Ma+Mb)に対する前記イソシアネート化合物のモル量(Mc)の比、(Mc)/(Ma+Mb)が0.95~1.10の範囲となるようにこれらを用いることが好ましい。
(Mc)/(Ma+Mb)モル比が上記下限以上であれば得られるポリウレタンの強度が十分なものとなり、上記上限以下であれば得られるポリウレタンの柔軟性が十分なものとなり、好ましい。
【0119】
[塗料・コーティング剤]
本発明の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンは、機械的特性や透明性等の各種物性等に優れ、塗料又はコーティング剤として好適である。
【0120】
本発明の塗料又はコーティング剤の第一の実施形態として、具体的には、本発明の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンを含む組成物が挙げられる。
本発明の塗料又はコーティング剤の第二の実施形態として、本発明の透明組成物と前述のイソシアネート化合物を含む組成物が挙げられる。
【0121】
上述した第一の実施形態又は第二の実施形態における塗料又はコーティング剤を、後述する方法を用いて硬化させることにより、優れた機械的強度を有する塗膜又はコーティング膜を形成することができる。
【0122】
なお、本発明の塗料又はコーティング剤には、必要に応じて、所望の性能を損なわない程度に、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤などの公知の添加剤を加えてもよい。
【0123】
本発明の塗料又はコーティング剤により塗膜又はコーティング膜が形成された成形品の形態は、特に限定されず、例えば、塗膜又はコーティング膜が形成される基材として、ポリプロピレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、PET系樹脂、PBT系樹脂等のポリエステル系樹脂;ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AES(アクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレン)樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂又は公知の熱硬化性樹脂;PBT(ポリブチレンレテフタレート)/PET(ポリエチレンテレフタレート)等の公知のアロイ樹脂;鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料:ガラス等などを基材として含む各種成形品が挙げられる。その他の基材として、モルタル、コンクリート、木材、窯業系材料等を基材として含む成形品であってもよい。
【0124】
これら成形品に、本発明の第一の実施形態における塗料又はコーティング剤を用いて塗膜又はコーティング膜を形成する方法としては、前記塗料又はコーティング剤を、後述する公知の塗布方法を用いて成形品(基材)の表面に塗付し、必要に応じて、後述する公知の方法を用いて加熱及び又は乾燥させる方法が挙げられる。
また、これら成形品に、本発明の第二の実施形態における塗料又はコーティング剤を用いて塗膜又はコーティング膜を形成する方法としては、前記塗料又はコーティング剤を、後述する公知の塗布方法を用いて成形品(基材)の表面に塗付し、後述する公知の方法を用いて加熱することにより硬化(加熱硬化)させる方法が挙げられる。
【0125】
塗布後の塗料又はコーティング剤の膜厚は、特に限定されるものではなく、その用途に従って適宜選択することができ、通常は、硬化後の塗膜又はコーティング膜の厚さが10~1000μmの範囲であることが好ましい。
【0126】
塗料又はコーティング剤の塗布方法としては、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピコート、フローコート等の公知の塗布方法を用いることができる。
【0127】
塗布後の塗料又はコーティング剤の加熱硬化方法としては、加熱手段として、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉のような、公知の加熱手段を用いることができる。加熱温度は、特に制限されるものではないが、通常は、50~180℃程度が好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、1~60分間程度が好ましい。
【0128】
塗料組成物の塗装後、加熱硬化を行う前に、塗膜欠陥の発生を防止するために、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で、予備加熱、エアブロー等を行ってもよい。
予備加熱の温度は、30~100℃程度が好ましい。予備加熱の時間は、30秒~15分間程度が好ましい。
エアブローは、通常、塗装面に30~100℃程度の温度に加熱された空気を30秒~15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
【0129】
塗膜を加熱硬化させた後、塗膜の硬度を高めるために、養生(保管)を行うことができる。養生条件は、例えば0~60℃で1~10日間程度とすることができる。
【0130】
本発明の塗料又はコーティング剤は、低粘度であり、且つ、透明性と均一に優れることから、自動車内装用部材又は自動車外装用部材、パソコンや携帯電話等の筐体や表示窓等の各種部品、家具用外装材、内装建材、外装建材、家屋の内装面化粧材等への塗装といった幅広い分野で好適に利用できる。
【0131】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、該基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に積層されたポリウレタンを含む層とを有する積層体であって、該ポリウレタンを含む層(以下、「ポリウレタン含有層」という。)に含まれるポリウレタンが、本発明の透明組成物を用いて製造された本発明のポリウレタンであることを特徴とする。
【0132】
本発明の積層体を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、基材の一方又は双方の表面の少なくとも一部に、前述の本発明の透明組成物とイソシアネート化合物とを含む塗料又はコーティング剤を、公知の方法を用いて塗布した後、さらに公知の方法を用いて硬化することにより、塗膜又はコーティング膜を形成する方法(製造方法1)が挙げられる。
或いは又、本発明の積層体を得る他の方法としては、基材の一方又は双方の表面の少なくとも一部に、前述の本発明の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンを含む塗料又はコーティング剤を公知の方法を用いて塗布した後、さらに公知の方法を用いて硬化又は乾燥することにより、塗膜又はコーティング膜を形成する方法(製造方法2)が挙げられる。
或いは又、本発明の積層体を得る他の方法としては、基材の一方又は双方の表面の少なくとも一部に、前述の本発明の透明組成物を用いて製造されたポリウレタンよりなるフィルム又はシートを、公知の方法を用いて接着する方法(製造方法3)が挙げられる。
上述した方法の中でも、積層体の層間の密着性を高める観点から、製造方法1が好ましい。
【0133】
本発明の積層体は、前記基材上に前記ポリウレタン含有層が形成されたものであれば特に制限されないが、前記基材以外の層及び/又は前記ポリウレタン含有層以外の層を、前記基材と前記ポリウレタン含有層との間に有していてもよいし、その外側に有していてもよい。また、本発明の積層体は、基材や前記ポリウレタン含有層を複数層有していてもよい。
【0134】
本発明の積層体に用いることができる基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、PET系樹脂、PBT系樹脂等のポリエステル系樹脂;ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AES(アクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレン)樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂又は公知の熱硬化性樹脂;PBT(ポリブチレンレテフタレート)/PET(ポリエチレンテレフタレート)等の公知のアロイ樹脂;鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料:ガラス等が挙げられる。これらの中でも、公知の熱可塑性樹脂、公知の熱硬化性樹脂、又は公知のアロイ樹脂が好ましい。また、これらの基材の形状は、特に限定されるものではなく、フィルム状、シート状等の平坦なものであってもよく、種々の形状に成形されたものであってもよい。
【0135】
本発明の積層体に用いることができる基材の厚さは、特に限定されないが、10μm以上5mm以下が好ましく、20μm以上1mm以下がより好ましく、30μm以上500μm以下がさらに好ましく、50μm以上100μm以下が特に好ましい。基材の厚さが薄過ぎると、積層体の強度や加工性が不足する。基材の厚さが厚過ぎると射出成形時の金型への追従性が劣ることになる。
【0136】
本発明の積層体に用いることができるポリウレタン含有層の厚さは、特に限定されないが、10μm以上1000μm以下が好ましく、20μm以上500μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下がさらに好ましい。ポリウレタン含有層の厚さが厚すぎると、積層体が屈曲されるような使用条件下においてポリウレタン含有層が基材から剥離しやすくなる傾向があり、また、薄過ぎると、ポリウレタン含有層自体の強度が不足したり、ポリウレタン含有層が本来有している機能を積層体に十分に付与できないおそれがある。
【0137】
本発明の積層体は、例えば、自動車内装用部材、自動車外装用部材、パソコンや携帯電話等の筐体や表示窓等の各種部品、家具用外装材、内装建材、外装建材、家屋の内装面化粧材等、各種用途に好適に使用することができる。その中でも、特に自動車内装用部材に好適である。
【実施例0138】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0139】
[原材料]
以下の実施例及び比較例で使用した化合物の略号は以下の通りである。
1,2BG:1,2-ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社製)
1,4BG:1,4-ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社製)
EG:エチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製)
PCD1:1,4-ブタンジオール単位とイソソルビド単位を含む共重合ポリカーボネートジオール(数平均分子量=800、水酸基価=140mgKOH/g、1,4-ブタンジオール単位/イソソルビド単位=70/30[モル比])
PCD2:1,6-ヘキサンジオール単位とイソソルビド単位を含む共重合ポリカーボネートジオール(数平均分子量=800、水酸基価=140mgKOH/g、1,6-ヘキサンジオール単位/イソソルビド単位=60/40[モル比])
PCD3:1,6-ヘキサンジオール単位とイソソルビド単位を含む共重合ポリカーボネートジオール(数平均分子量=800、水酸基価=140mgKOH/g、1,6-ヘキサンジオール単位/イソソルビド単位=50/50[モル比])
PCD4:1,4-ブタンジオール単位とネオペンチルグリコール単位を含む共重合ポリカーボネートジオール(数平均分子量=1000、水酸基価=112.1mgKOH/g、1,4-ブタンジオール単位/ネオペンチルグリコール単位=70/30[モル比])
TPA-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デュラネートTPA-100、旭化成株式会社製)
U-830:ジオクチルスズモノデカネート(商品名:ネオスタンU-830、日東化成株式会社製)
【0140】
[実施例1]
ジオール(A)として1,2BG 25質量部と、ポリカーボネートジオール(B)としてPCD1 75質量部とをガラス製スクリュー瓶に量り取り、均一になるまで攪拌混合して、混合物を得た。得られた混合物を、室温下で24時間静置した後、外観を目視で観察したところ、外観が透明な混合物(透明組成物)であることが確認された。得られた透明混合物の外観写真を図1に示した。
【0141】
[実施例2~4、比較例1~6]
実施例1におけるジオール(A)又はポリカーボネートジオール(B)の種類を、表1記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様の条件で混合物を得た。
得られた混合物を実施例1と同様の方法で評価した結果を表1及び図1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
実施例1~4の混合物は、いずれも外観が透明な混合物(透明組成物)であり、表1及び図1に示されるように、透明性に優れていた。
一方、比較例1~6の混合物は、ジオール系化合物としてジオール(A)を用いていないため、表1及び図1に示されるように、透明性が劣っていたり、沈殿物が生成したりした。
【0144】
[実施例5]
実施例1で得られた透明組成物50質量部、イソシアネート化合物としてTPA-100を68.5質量部、触媒としてU-830を0.005質量部用い、これらを均一になるまで攪拌混合し、混合物を得た。得られた混合物を、クリアランスが100μmのアプリケーターを用いて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上に塗布した後、温度80℃で5時間静置し、PTFEシートの表面にポリウレタンの硬化物からなる塗膜が形成された積層体を得た。
得られたポリウレタン硬化物からなる塗膜は、厚さが50μmであり、透明且つ表面が平滑であり外観が優れていた。
【0145】
[実施例6]
実施例5において、実施例1で得られた透明組成物の代わりに、実施例2で得られた透明組成物を用いた以外は、実施例5と同様の方法にして、混合物を得、得られた混合物を、クリアランスが100μmのアプリケーターを用いて、ガラス基板上に塗布した後、温度80℃で5時間静置し、ガラス基板の表面にポリウレタンの硬化物からなる塗膜が形成された積層体を得た。
得られたポリウレタン硬化物からなる塗膜は、厚さが50μmであり、透明かつ表面が平滑であり外観が優れていた。
【0146】
[実施例7]
実施例4で得られた透明組成物50質量部、イソシアネート化合物としてTPA-100を40.8質量部、触媒としてU-830を0.005質量部用い、これらを均一になるまで攪拌混合し、混合物を得た。得られた混合物を、クリアランスが100μmのアプリケーターを用いて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上に塗布した後、温度80℃で5時間静置し、PTFEシートの表面にポリウレタンの硬化物からなる塗膜が形成された積層体を得た。
得られたポリウレタン硬化物からなる塗膜は、厚さが50μmであり、透明且つ表面が平滑であり外観が優れていた。
【0147】
以上の結果から明らかなように、本発明の透明組成物は、透明性及び塗膜強度が要求される塗料・コーティング剤用途に好適に使用できることが期待される。
図1