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特開2024-35860繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法
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  • 特開-繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法 図1
  • 特開-繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法 図2
  • 特開-繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035860
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/24 20060101AFI20240308BHJP
   B29B 7/14 20060101ALI20240308BHJP
   B01F 27/61 20220101ALI20240308BHJP
   B01F 27/70 20220101ALI20240308BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20240308BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20240308BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20240308BHJP
【FI】
B29B7/24
B29B7/14
B01F27/61
B01F27/70
B01F27/112
B01F35/75
B01F35/213
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140453
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 輝久
【テーマコード(参考)】
4F201
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4F201AB25
4F201AD16
4F201AL01
4F201AL05
4F201AL12
4F201AL14
4F201AL15
4F201AL17
4F201BA01
4F201BC02
4F201BC29
4F201BD05
4F201BK01
4F201BK15
4F201BK25
4F201BK34
4F201BK55
4F201BQ01
4F201BQ07
4F201BQ16
4G037AA13
4G037BD07
4G037EA02
4G078AA03
4G078AB01
4G078AB05
4G078BA03
4G078CA13
4G078DA01
4G078DB01
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】開繊が進み易く嵩密度が低い、綿状に凝集し易い繊維状充填材であっても、スクリュでの均一で安定した搬送を可能とする繊維状充填材の攪拌供給装置。
【解決手段】繊維状充填材を収容するホッパから繊維状充填材を排出部にフィードする装置であって、ホッパと排出部の間に接続タンクを備え、接続タンクの下部には円形の傾斜面が接続タンクの下部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面の攪拌羽根は、攪拌羽根の回転方向に対し内側に10°から70°の角度Θで傾斜していることを特徴とする繊維状充填材の攪拌供給装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状充填材を収容するホッパから繊維状充填材を排出部にフィードする装置であって、ホッパと排出部の間に接続タンクを備え、接続タンクの下部には円形の傾斜面が接続タンクの下部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面の中心から内部に突出する回転軸を中心に回転するシャフトと、該シャフトの先端には繊維状充填材を攪拌するための攪拌羽根が円形傾斜面上を回転するように設けてあり、前記攪拌羽根は、攪拌羽根の回転方向に対し内側に10°から70°の角度Θで傾斜していることを特徴とする繊維状充填材の攪拌供給装置。
【請求項2】
攪拌羽根の先端と接続タンク内壁面の間隔の最短距離が0.2~5cmの範囲にある請求項1に記載の攪拌供給装置。
【請求項3】
攪拌羽根の枚数が2~6枚である請求項1に記載の攪拌供給装置。
【請求項4】
接続タンクの底部に、繊維状充填材を排出部にフィードするためのスクリュを備える請求項1に記載の攪拌供給装置。
【請求項5】
個々の攪拌羽根の面積に傾斜角のcosΘを乗じた面積が、接続タンク底部のスクリュへの開口部を直上から見た開口面積の0.1倍から1.0倍の範囲にある請求項1に記載の攪拌供給装置。
【請求項6】
ホッパに収容された繊維状充填材を排出部に供給する方法であって、ホッパと排出部の間に接続タンクを備え、接続タンクの下部には円形の傾斜面が接続タンクの下部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面の中心から内部に突出する回転軸を中心に回転するシャフトと、該シャフトの先端には繊維状充填材を攪拌するための攪拌羽根が円形傾斜面上を回転するように設けてあり、前記攪拌羽根は、攪拌羽根の回転方向に対し内側に10°から70°の角度Θで傾斜しているアジテータを備え、アジテータにより繊維状充填材を開繊し、接続タンクの底部に備えたスクリュにより排出部に供給することを特徴とする繊維状充填材の供給方法。
【請求項7】
アジテータの回転速度が、スクリュの回転速度の1~20%である請求項6に記載の繊維状充填材の供給方法。
【請求項8】
ホッパに収容される繊維状充填材の嵩比重Vが0.3~0.7g/cmであり、排出された繊維状充填材の嵩比重VはVより小さく0.1~0.5g/cmの範囲にある請求項6に記載の繊維状充填材の供給方法。
【請求項9】
ホッパに収容された繊維状充填材を開繊して嵩比重が低下した繊維状充填材を製造する方法であって、ホッパと排出部の間に接続タンクを備え、接続タンクの下部には円形の傾斜面が接続タンクの下部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面の中心から内部に突出する回転軸を中心に回転するシャフトと、該シャフトの先端には繊維状充填材を攪拌するための攪拌羽根が円形傾斜面上を回転するように設けてあり、前記攪拌羽根は、攪拌羽根の回転方向に対し内側に10°から70°の角度Θで傾斜しているアジテータを備え、アジテータにより繊維状充填材を開繊し、接続タンクの底部に備えたスクリュにより排出部に供給することを特徴とする嵩比重が低下した繊維状充填材の製造方法。
【請求項10】
ホッパに収容される繊維状充填材の嵩比重Vが0.3~0.7g/cmであり、排出された繊維状充填材の嵩比重VはVより小さく0.1~0.5g/cmの範囲にある請求項9に記載の繊維状充填材の製造方法。
【請求項11】
熱可塑性樹脂に繊維状充填材を配合した熱可塑性樹脂組成物を押出機により製造する方法であって、請求項9に記載の製造方法により得られた、嵩比重が低下した繊維状充填材を、熱可塑性樹脂を含む原料の主投入口より下流側に設けたサイドフィーダからサイドフィードし、溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の組成物を製造するには、原料樹脂と共に各種の添加剤を押出機に供給し、溶融混練して樹脂組成物のペレットとする方法が広く行われている。添加剤として炭素繊維、ガラス繊維等の繊維状充填材を配合した繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、得られる成形品の強度が大きく、色々な分野に広く利用されている。
【0003】
繊維強化熱可塑性樹脂組成物を製造するには、押出機に原料の熱可塑性樹脂の樹脂ペレットを供給し、樹脂ペレットは押出機のシリンダの中で溶融してスクリュによって前方(下流)に送られる。繊維状充填材は、押出機のシリンダの所定位置において、サイドフィーダによりシリンダ内に供給される。押出機内ではスクリュの回転によって溶融した熱可塑性樹脂と繊維状充填材が混練され、繊維状充填材がバラバラに分散すると共に適宜切断され、先端ノズルから押出され、その後冷却、カッティングされて繊維強化熱可塑性樹脂組成物のペレットが製造される。
【0004】
サイドフィーダから各種の添加剤を供給する場合、原料添加剤を収容するホッパ(計量タンク)、その下に接続タンクと、接続タンク内で原料を攪拌するアジテータ、そして接続タンクの底部に添加剤をその排出部に送るためのスクリュを有するスクリュシリンダから構成される攪拌供給装置が備えられている。
【0005】
通常、繊維状充填材はチョップドファイバーとして提供されている。このような繊維状充填材をそのままサイドフィーダから押出機シリンダに供給すると、熱可塑性樹脂との混練時に繊維状充填材にかかる応力が不均一になって繊維状充填材が折れたり切断し易く、繊維長分布が不均一な熱可塑性樹脂組成物となってしまう。
【0006】
然しながら、従来の攪拌供給装置におけるアジテータは接続タンク内の原料を攪拌するもので、接続タンクで繊維状充填材が部分的あるいは全体的に落ちなくなるブリッジングや中央部のみ抜け落ちる現象を抑制するのが目的であった。しかし、繊維状充填材が嵩密度が小さく、開繊し易い繊維状充填材では、スクリュのあるシリンダに安定的に繊維を供給することができなかった。開繊し易い繊維状充填材は、ホッパ(計量タンク)への仕込み、下部への移動、アジテータの回転等により、簡単に開繊が進み、綿状に凝集して、シリンダに落下せず、シリンダ開口部でブリッジングを形成する。そのために、シリンダに繊維状充填材を充分に充填できず、スクリュでの均一な搬送が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的(課題)は、上記従来技術の問題点に鑑み、開繊が進み易く嵩密度が低い、綿状に凝集し易い繊維状充填材であっても、スクリュでの均一で安定した搬送が可能な繊維状充填材の攪拌供給装置及び繊維状充填材の供給方法を提供することにある。また、上記攪拌供給装置あるいは供給方法により、開繊が促進され、嵩密度が低減された繊維状充填材の製造方法、および該製造方法により得られた繊維状充填材を配合した熱可塑性樹脂組成物を安定的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の繊維状充填材の攪拌供給装置は、繊維状充填材を収容するホッパから繊維状充填材を排出部にフィードする装置であって、ホッパと排出部の間に接続タンクを備え、接続タンクの下部には円形の傾斜面が接続タンクの下部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面の中心から内部に突出する回転軸を中心に回転するシャフトと、該シャフトの先端には繊維状充填材を攪拌するための攪拌羽根が円形傾斜面上を周方向に回転するように設けてあり、前記攪拌羽根は、攪拌羽根の回転方向に対し内側に10°から70°の角度Θで傾斜していることを特徴とする。
【0009】
上記攪拌供給装置において、攪拌羽根の先端と接続タンク内壁面の間隔の最短距離は0.2~5cmの範囲にあることが好ましい。
また、攪拌羽根の枚数は2~6枚であることが好ましい。
上記接続タンクの底部に、繊維状充填材を排出部にフィードするためのスクリュを備えることが好ましい。
攪拌羽根の面積に傾斜角のcosΘを乗じた面積が、接続タンク底部のスクリュへの開口部を直上から見た開口面積の0.1倍から1.0倍の範囲にあることが好ましい。
【0010】
また、本発明の繊維状充填材の供給方法は、ホッパに収容された繊維状充填材を排出部に供給する方法であって、ホッパと排出部の間に接続タンクを備え、接続タンクの下部には円形の傾斜面が接続タンクの下部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面の中心から内部に突出する回転軸を中心に回転するシャフトと、該シャフトの先端には繊維状充填材を攪拌するための攪拌羽根が円形傾斜面上を回転するように設けてあり、前記攪拌羽根は、攪拌羽根の回転方向に対し内側に10°から70°の角度Θで傾斜しているアジテータを備え、アジテータにより繊維状充填材を開繊し、接続タンクの底部に備えたスクリュにより排出部に供給することを特徴とする。
【0011】
上記供給方法において、アジテータの回転速度が、スクリュの回転速度の1~20%であることが好ましい。
また、ホッパに収容される繊維状充填材の嵩密度Vが0.3~0.7g/cmであり、排出された繊維状充填材の嵩密度VはVより小さく0.1~0.5g/cmの範囲にあることが好ましい。
【0012】
また、本発明の繊維状充填材の製造方法は、ホッパに収容された繊維状充填材を開繊して嵩比重が低下した繊維状充填材を製造する方法であって、ホッパと排出部の間に接続タンクを備え、接続タンクの下部には円形の傾斜面が接続タンクの下部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面の中心から内部に突出する回転軸を中心に回転するシャフトと、該シャフトの先端には繊維状充填材を攪拌するための攪拌羽根が円形傾斜面上を回転するように設けてあり、前記攪拌羽根は、攪拌羽根の回転方向に対し内側に10°から70°の角度Θで傾斜しているアジテータを備え、アジテータにより繊維状充填材を開繊し、接続タンクの底部に備えたスクリュにより排出部に供給する嵩密度が低下した繊維状充填材の製造方法である。
【0013】
上記繊維状充填材の製造方法において、ホッパに収容される繊維状充填材の嵩密度Vが0.3~0.7g/cmであり、排出された繊維状充填材の嵩密度VはVより小さく0.1~0.5g/cmの範囲にあることが好ましい。
【0014】
そして、熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂に繊維状充填材を配合した熱可塑性樹脂組成物を押出機により製造する方法であって、前記の繊維状充填材の製造方法により得られた嵩密度が低下した繊維状充填材を、熱可塑性樹脂を含む原料の主投入口より下流側に設けたサイドフィーダからサイドフィードし、溶融混練することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の繊維状充填材の攪拌供給装置によれば、開繊が進み易く嵩密度が低い、綿状に凝集し易い繊維状充填材であっても、スクリュでの均一で安定した搬送を可能とすることができる。
また、本発明の繊維状充填材の供給方法によれば、開繊が進み易く嵩密度が低い繊維状充填材であっても排出部への安定した供給を可能とすることができる。
また、本発明の繊維状充填材の製造方法によれば、開繊が進み嵩密度が低下した繊維状充填材を安定して製造することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、繊維状充填材が均一に分散された熱可塑性樹脂組成物を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の攪拌供給装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】本発明の攪拌供給装置の一実施形態の部分断面図である。
図3】本発明の攪拌供給装置に用いる撹拌羽根の一実施形態を示す平面図、右側面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法について、図面を参照しながら、説明する。ここで示す実施形態はあくまでも一例であって、必ずしもこれらに限定するものではない。
【0018】
図1は、本発明の攪拌供給装置の一実施形態を示す分解斜視図である。図2は、本発明の攪拌供給装置の一実施形態の部分断面図である。
図1-2に示すように、本発明の攪拌供給装置は、投入された繊維状充填材が収容されるホッパ1と、ホッパ1の下に接続タンク2と、接続タンク2の底部の開口部6から繊維状充填材を排出部3に供給するスクリュ5等を備えている。ホッパ1は図1にあるような円錐状あるいは円柱状が好ましいが、角柱状であってもよい。
接続タンク2は、その上部でポッパ1と接続され、接続タンク2の側壁は平面視円形で円錐形状に形成してもよく、また、平面視楕円形で上下方向に同じ又は異なる横断面形状に形成してもよい。接続タンク2の側壁は上方側よりも下方側が大きい横断面形状にすることも好ましい。
【0019】
接続タンク2の内部には、円形の傾斜面11が接続タンクの下部、好ましくは底部から斜め上方に向けて設けられ、円形の傾斜面11の中心から斜め方向に内部に突出する回転軸8を中心に回転するシャフト9と、シャフト9の先端には繊維状充填材を攪拌するための攪拌羽根10が円形傾斜面11の上を回転するアジテータ4が備えられている。
ホッパ1に収容された繊維状充填材は、接続タンク2内に重力で落下し、アジテータ4のシャフト9の先に設けた撹拌羽根10が傾斜面11に沿って回転(旋回)することにより撹拌され、開繊される。
【0020】
図3は、アジテータ4における撹拌羽根の一実施形態を示し、図3(a)は平面図、図3(b)は右側面図、図3(c)は正面図である。なお、図3(b)において、図3(a)中の左右に伸びるシャフト9及びその先端の攪拌羽根10は省略している。また、図3(c)中、左右および後方に伸びるシャフト9及びその先端の攪拌羽根10は省略している。
シャフト9は、図3(a)にあるように2本のシャフトが回転軸8を中心に結合して十字形をして、計4枚の撹拌羽根10を有していてもよい。また、3本のシャフトが回転軸8を中心に交差し結合し、先端に計6枚の撹拌羽根10が、回転軸8を中心点として点対象に備えられていてもよい。回転軸8の中心から120℃間隔で放射状に3つのシャフト9が伸び、それぞれの先端に1枚、合計3枚の撹拌羽根10を備えることでもよい。一本のシャフト9の両端に各1枚の撹拌羽根を有することでもよい。攪拌羽根10の枚数は2~6枚が好ましい。
【0021】
撹拌羽根10は、図3(b)にあるように、シャフト9から傾斜面11の上方に向け、接続タンク2の側壁に沿う形で伸びる形が好ましい。
撹拌羽根10は、図3(c)にあるように、その角度が、撹拌羽根10の回転方向D(旋回する円周の接線方向)に対し、内側、回転軸8方向に角度Θで傾斜しており、角度Θを10°~70°とする。このような角度とすることにより、接続タンク2の底部から排出部3への供給むらが抑制され、均一なフィードが可能になる。角度Θが10°より小さいと、繊維状充填材をシリンダ7に送る力が弱くなり、充分な量の繊維状充填材を接続タンク2底部から排出部3へ供給するためのスクリュ5に充填できず、スクリュによる均一フィードが困難となる。70°より大きいとアジテータの回転軸に掛かる力が強くなりすぎ、回転軸が破損したりしやすい。より好ましくは20°から60°の範囲である。角度Θは好ましくは20°以上であり、好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下である。
【0022】
撹拌羽根10は、図2にあるように、傾斜面11の上を接続タンク2の側壁に沿う形で回転し、攪拌羽根10と接続タンク内壁面の間隔との最短距離を0.2~5cmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.3~3cmである。5cmより大きいと、繊維状充填材をシリンダ7に押し込む力が弱くなり、充分な量の繊維状充填材をシリンダ7に充填できにくく、スクリュ5による均一フィードが困難となりやすく、0.2cm未満だと、攪拌羽根10がホッパ内面に接触し、アジテータ4が破損する可能性が生じる。
【0023】
接続タンク2は平面視円形で円錐形状、あるいは平面視楕円形であることが好ましいが、その内壁面の直径は通常15~60cmであり、好ましくは20~50cmである。
傾斜面11の直径は好ましくは15~60cmであり、より好ましくは20~50cmである。
シャフト9の回転軸8から攪拌羽根10接続部までの長さは、好ましくは8~30cmであり、より好ましくは10~25cmである。
【0024】
本発明において、繊維状充填材としては、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ、竹繊維等を含む)、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。中でも、炭素繊維、ガラス繊維が好ましく、炭素繊維が特に好ましい。
【0025】
使用する繊維状充填材は、数平均繊維長が20mm以下、さらには、10mm以下、1mm以上のものが好ましい。具体的には、チョップドファイバーおよびミルドファイバーが好ましい。
ホッパに収容される原料繊維状充填材の嵩密度Vは0.3~0.7g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.35~0.65g/cm、さらには0.4~0.6g/cmの範囲にあるものが好ましい。嵩密度Vが0.3/cmより小さいと、攪拌羽根が充分な攪拌増嵩性原料をシリンダ内部に押し込めなくなりフィード不均一が発生し易く、0.7g/cmを超えると、アジテータの回転軸に強い力が掛かり、回転軸が破損したりし易い。
特に、本発明において、原料の繊維状充填材として、開繊が進み易く、攪拌により容易に嵩が増大する(嵩密度が減少する)ものを使用すると、本発明による効果が大きいので好適である。攪拌により容易に嵩が増大する繊維状充填材としては、例えば収束剤等を使用していないか、少ない量でしか処理されていない繊維状充填材が挙げられる。
【0026】
なお、本発明において、嵩密度は、一定体積あたりの繊維状充填材の重さを表しており、ゆるみ嵩比重、ゆるみ嵩密度、或いはゆるみ見かけ密度と同じであり、受器に軽く静かに充填した時の嵩密度のことをいう。嵩密度(V、V)の測定方法はISO60に準拠して測定される値である。具体的には、充填する受器として、体積100cc、内径50mmの内面を滑らかに仕上げた金属の円筒を使用し、受器に繊維状充填材を静かにゆっくり充填し、受器が一杯になったら、受器から盛り上がった原料を直線状の板ですり落とし、受器の内容物の重量を0.1gの桁まで測定し、嵩密度を求める。
【0027】
アジテータ4で開繊・撹拌された繊維状充填材は、接続タンク2の底部に設けた開口部6から出て、排出部3にフィードするためのスクリュ5により排出部3に供給される。開口部6は接続タンク2の底部と傾斜面11との間の、撹拌羽根10が直上から繊維状充填材を押し込む位置に設けられる。
スクリュ5は単軸のものでもよいし、2軸のスクリュで構成されるものでもよい。スクリュ5はシリンダ7内に配置され、開口部6からの繊維状充填材がシリンダ7に充填され、スクリュ5が回転駆動して排出部3に供給される。
【0028】
開口部6は、直下にあるスクリュ5に対応する長方形状であり、10°~70°の傾斜角の撹拌羽根10が繊維状充填材を開口部6からシリンダ7内に十分押し込み、嵩密度が小さくなった繊維状充填材の均一フィードが可能となる。
【0029】
1つの攪拌羽根10の面積に傾斜角のcosΘを乗じた面積は、開口部6を直上から見た開口面積の0.1倍から1.0倍の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.2倍から0.8倍の範囲である。0.1倍より小さいと繊維状充填材をシリンダ7に押し込む力が弱くなり、充分な量の繊維状充填材をシリンダ7に充填できず、スクリュ5による均一なフィードが困難となりやすく、1.0倍より大きいとアジテータ4に掛かる力が強くなり、回転軸8が破損したりしやすい。
開口部6の大きさは、長辺が8~25cm程度、短辺は4~15cm程度が好ましく、開口面積としては35~350cm程度が好ましい。
1つの攪拌羽根10の面積に傾斜角のcosΘを乗じた面積としては、5~350cm程度が好ましい。
【0030】
アジテータ4の回転速度は、スクリュ5の回転速度の1~20%であることが好ましく、より好ましくは2~15%、さらに好ましくは3~10%である。1%未満だと、アジテータ4が繊維状充填材を押し込む量が少なくなり、均一フィードが困難となりやすく、20%を超えると、繊維状充填材の開繊が進み過ぎ、毛玉が発生し、シリンダ7内部に押し込まれにくくなり、充分な量の繊維状充填材をシリンダ7に充填できず、スクリュ5による均一フィードが困難となりやすい。
スクリュ5の回転速度は、10~600rpm程度が好ましく、アジテータ4の回転速度は2~90rpm程度が好ましい。
【0031】
スクリュが1回転したときに、軸方向に進む距離を「リード」といい、一条スクリュでは、リードとピッチは等しくなる。二条スクリュではリードはピッチの2倍となる。スクリュ径(外径)をDとすると、スクリュ5のリードは0.5D~1.5Dであることが好ましい。1.5Dより大きいと、繊維状充填材を搬送する力が弱くなり、均一フィードが難しくなりやすく、0.5Dより小さくても搬送する力は弱くなり均一フィードが困難になりやすい。スクリュ5のリードは、より好ましくは0.6D~1.4D、更に好ましくは0.7D~1.3Dである。
【0032】
排出部3に供給された繊維状充填材の嵩密度Vは、ホッパに収容される繊維状充填材の嵩密度V(好ましくは0.3~0.7g/cm)より小さくなり、0.1~0.5g/cmの範囲となることが好ましく、より好ましくは0.15~0.45g/cm、さらには0.2~0.4g/cmの範囲が好ましい。
本発明によれば、特に、収束剤等を使用していないか、少ない量でしか処理されていない繊維状充填材を原料であっても、これを上記構成のアジテータにより開繊・撹拌をして、スクリュ5に送り込み、排出部3にフィードすることにより、開繊が進み嵩密度が低い繊維状充填材が得ることが可能となる。
【0033】
得られた繊維状充填材は、これを押出機にサイドフィードすると、繊維状充填材が均一に分散された熱可塑性樹脂組成物を安定的に製造できる繊維状充填材を得ることができる。
【0034】
使用する原料熱可塑性樹脂は、その種類に特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂であれば何れでもよい。本発明での使用に適した熱可塑性樹脂として、結晶性熱可塑性樹脂や非晶性熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;PMMA樹脂等のメタアクリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;液晶ポリマー等を例示することができる。
【0035】
押出機としては一軸または二軸押出機、特に二軸押出機が好ましく、またベント付き又はベントなしの何れでもよいが、ベント付きのものが好ましい。
【0036】
熱可塑性樹脂および必要により配合する樹脂用添加剤を含む原料は、押出機(図示せず。)の根元ホッパの主投入口からペレットまたはパウダーの形状で押出機のシリンダ内にフィードされ、第1混練部へ搬送される。第1混練部で原料は加熱されるが、加熱温度は主成分である熱可塑性樹脂の融点やガラス転移温度などを基準に設定される。第1混練部で溶融混練された原料は、さらに、あとから供給される樹脂に押される。そして、前記攪拌供給装置で得られた繊維状充填材が、主投入口より下流側に設けたサイドフィーダから押出機のシリンダ内にフィードされ、第2混練部で溶融混練される。
【0037】
混練部のスクリュ構成は、順送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、直交ニーディングディスクから選択される2種以上のエレメントの組合せで構成されていることが好ましい。
【0038】
順送りニーディングディスクエレメントは、Rニーディング(以下、Rと称することもある。)とも呼ばれ、通常羽根が2枚以上で、その羽根ねじれ角度は10°から75°であることが好ましい。このように羽根を所定角度ずらして設置していくことにより擬似スクリュ構造を形成し樹脂を送り方向に送り出しつつ強いせん断力を加え、混練を行うゾーンとなる。
逆送りニーディングディスクエレメントは、Lニーディング(以下、Lと称することもある。)とも呼ばれ、通常羽根が2枚以上で、かつ羽根のねじれ角度が-10°から-75°であることが好ましい。逆送りニーディングディスクエレメントは、送られてくる樹脂を堰止めたり、送られてくる樹脂を送り戻す方向に働く昇圧能力のあるエレメントであり、混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰きとめ、強力な混練効果を発揮させるものである。
直交ニーディングディスクエレメントは、Nニーディング(以下、Nと称することもある。)とも呼ばれ、通常羽根が2枚以上で、かつ羽根のねじれ角度が75°から105°である。羽根が略90°ずらして設置されているため樹脂を送り出す力は弱いが混練力は強い。
【0039】
第1混練部のスクリュ構成は、2種以上のエレメントの組合せで構成されていることが好ましく、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。したがって、第1工程の混練ゾーンでは、上流側からR、N及びLから選ばれる2種以上を、R→N→Lの順で配置するのが好ましく、各R、N及びLは複数個配置することも好ましい。
第2混練部のスクリュは、順送りニーディングディスク(R)、逆送りニーディングディスク(L)、直交ニーディングディスク(N)、順送り切欠き型ミキシングスクリュー、逆送り切欠き型ミキシングスクリューから選択されるエレメントで構成されていることが好ましい。
【0040】
第2混練部で溶融混練され、繊維状充填材が十分分散した樹脂組成物は、押出機先端のノズルからストランド状に押し出し、冷却後、カッターでカッティングして、熱可塑性樹脂組成物のペレットが製造される。これにより、繊維状充填材が均一に分散された熱可塑性樹脂組成物を安定的に製造することができる。
【実施例0041】
先ず、原料の繊維状充填材が、攪拌によりどの程度、嵩密度が増大する(嵩密度が減少する)がどうかを判定するため、以下の実験を行った。
クボタ社製の攪拌供給装置「重量式スクリュフィーダCE-W-1(2軸)」(接続タンクは内径が25cmの半球状)を用い、アジテータはクボタ社製の「CE-W-1用アジテータ2」(接続タンクの半球状の側面から出た長さ12.2cmの回転軸を中心に、長さは22.2cm、幅は3.2cmの1枚のシャフトに、長さ11.8cmで先端幅1.0cmの2枚の撹拌羽根付き、回転方向への傾斜角Θ=0°が縦回転)を接続し、スクリュは接続せずに、開口部をシールし、攪拌された繊維状充填材が滞留するようにした。そこにホッパに投入前の嵩密度Vを測定した1kgの繊維状充填材をホッパに仕込み、アジテータを1周/秒の速度で15分間回転した後に嵩密度V(攪拌後嵩密度)を求めた。
攪拌後の嵩密度Vが、原料嵩密度Vの0.8倍以下となる繊維状充填材が、本発明を適用する原料として特に好ましい。
【0042】
以下の原料について、嵩密度Vと、攪拌後嵩密度Vを求め、嵩密度比(V/V)を求めた。結果は以下の通りであった。
1.三菱ケミカル社製炭素繊維チョップドファイバー「ダイヤリードK6371T」
:0.48g/cm、V:0.31g/cm、V/V:0.65
2.三菱ケミカル社製炭素繊維チョップドファイバー「パイロフィルTR06U」
:0.47g/cm、V:0.39g/cm、V/V:0.83
3.日本電気硝子社製、ガラス繊維「チョップドストランドT-187
:0.62g/cm、V:0.54g/cm、V/V:0.87
以上の結果から、「K6371T」は攪拌により増嵩性の原料であることが分かる。
【0043】
[実施例1]
攪拌供給装置として、下部直径29cm、高さ65cm、上部直径60cmの円錐状のホッパ1と、直径29cmの上部開口円から下方に向かって底部直径約40cm相当の略円錐状に伸びる接続タンク2と、その底部には直径26cmの円形の傾斜面11が下部から斜め上方に向けて45°の斜度で設けられた円錐状の接続タンク2を備え、アジテータ4として、円形傾斜面11の中心にある回転軸8を中心に回転するシャフト9と、シャフト9の先端に攪拌羽根10が円形傾斜面上を回転するアジテータを使用した。シャフト9の長さは回転軸から13cm、幅2.5cm、攪拌羽根10の長さは10cmで根本幅は2.9cm、先端幅は2.3cmで、図3のように十字形のシャフト9の先端に、回転方向に30°傾斜した攪拌羽根10を合計で4枚備えるアジテータ(A1)を使用した。攪拌羽根10の先端は接続タンク2の内壁面からの間隔が最も近い場所で0.7cmとなるように設置されている。
開口部6は長辺が11.0cm、短辺は5.5cmで、開口面積は60.5cmである。1つの攪拌羽根10の面積は、26.0cmであり、これに傾斜角のcosΘ(=30°)を乗じた面積は22.5cmであり、開口部6の面積の0.37倍である。
シリンダ7内のスクリュ5は、スクリュ径25.5mm(D)、リードは26mm(1.02D)の1条スクリュを使用した。
【0044】
炭素繊維チョップドファイバー「K6371T」20kgをホッパ1に仕込んだ。スクリュ5の回転速度のモータ比(アジテータの回転速度rpmをスクリュの回転速度rpmで割った値)を5%とした。排出部3への排出量を10kg/hに設定し、定重量運転を行った。60分から100分後の排出量を次のように求めた。
60分後に排出部3の下に容器を置き、36秒の間に排出された炭素繊維の重量W60を求めた。次に70分後に同様に重量を測定しW70とした。同様にW80、W90、W100を求めた。W60からW100の5回のWの最大値と最小値、最大値と最小値の差、5回のWの平均値、及び変動率(%、=5回のWの最大値と最小値の差/5回のWの平均値)を下記表1に記載した。
排出部3に排出された炭素繊維チョップドファイバー「K6371T」20kgを回収し、更に新たな「K6371T」20kgをホッパ1に投入し、同じ条件で排出し、計40kgの「K6371T」を得た。嵩密度を測定すると0.19g/cmであった。
このように「K6371T」は、本発明の攪拌供給装置のアジテータ4の回転や、スクリュ5の回転で開繊が促進し、嵩密度が顕著に低下することが分かった。この排出された「K6371T」を「開繊K6371T」という。
【0045】
[実施例2]
実施例1において、アジテータ(A1)を、一本のシャフト9の両端に回転方向に30°傾斜した攪拌羽根10を計2枚有するアジテータ(A2)に変更した以外は実施例1と同様にして、行った。1つの攪拌羽根10の面積は、26.0cmであり、これに傾斜角のcosΘ(=30°)を乗じた面積は22.5cmであり、開口部6の面積の0.37倍である。
【0046】
[比較例1]
アジテータ4を、一本のシャフト9の両端に傾斜していない攪拌羽根10を計2枚有するアジテータ(AX)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0047】
以上の結果を下記表1に示す。
表1中、評価として、変動率(5回のWの最大値と最小値の差/5回のWの平均値)により、以下の基準で判定した。
◎:変動率が7%以下
〇:変動率が7%超~10%以下
△:10%超~15%以下
×:15%超
【0048】
【表1】
【0049】
[熱可塑性樹脂組成物の製造実施例1]
押出機として、日本製鋼所社製2軸押出機「TEX44αII」を使用した。スクリュ構成は第1位混練部をRRNNL、第2混練部をRNLとした。Rは順送ニーディングディスク、Nは直交ニーディングディスク、Lは逆送りニーディングディスクで各5枚パドル、44mmの長さのものを使用した。シリンダ設定温度は260℃とした。
主原料として三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリブチレンテレフタレート樹脂「ノバデュラン5008」を使用し、スクリュ根本にベルトフィーダ゛で180kg/hでフィードし、第1混練部で溶融した。第1混練部と第2混練部の間にはサイドフィードスクリューを設置し、前記実施例1の方法で得られた炭素繊維チョップドファイバー「K6371T」を20kg/hでフィードし、第2混練部で混練した。スクリュ回転は250rpmとした。ダイスからストランドを出し、水槽冷却し、ペレタイザでカットし、ペレットを得た。
押し出しを1時間継続したが、押し出し、ストランドは安定であり、トルクオーバやストランド切れは無かった。そのペレット1gを良溶媒であるフェノール/テトラクロロエタン=1/1混合溶媒で溶解し、炭素繊維をろ過乾燥し、重量を測定した。取りだされた炭素繊維の重量は0.096gであった(0.1gの炭素繊維のうちサイジング剤を除いた炭素分は0.098gとなる)。このことから、炭素繊維チョップドファイバー「K6371T」が均一にフィードされていることを確認した。
【0050】
[熱可塑性樹脂組成物の製造比較例1]
上記製造例1において、炭素繊維チョップドファイバーのフィードを前記比較例1で得られたものとした以外は同様にして行った。トルク変動が大きく、1時間の間に1回トルクオーバが発生し押出機が停止した。またストランドは3回切れた。1gから取り出された炭素繊維の重量は0.085gであり、炭素繊維チョップドファイバーのフィードが変動していることが良く分かった。
【0051】
[熱可塑性樹脂組成物の製造実施例2]
主原料として三菱エンジニアリング社製ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS3000F」を使用し、溶解する溶媒をメチレンクロライドとした以外は熱可塑性樹脂組成物の製造実施例1と同様に行った。押し出し、ストランドは安定であり、トルクオーバやストランド切れは無かった。取りだされた炭素繊維の重量は0.096gであり、炭素繊維チョップドファイバーK6371Tが均一にフィードされていることを確認した。
【0052】
[熱可塑性樹脂組成物の製造実施例3]
主原料として三菱ガス化学社製ポリアミド樹脂「MXDナイロン6000」を使用し、溶媒をヘキサフルオロイソプロパノールとした以外は製造実施例1と同様に行った。押し出し、ストランドは安定であり、トルクオーバやストランド切れは無かった。取りだされた炭素繊維の重量は0.099gであり、炭素繊維チョップドファイバーK6371Tが均一にフィードされていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の繊維状充填材の攪拌供給装置、供給方法、製造方法、及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、開繊が進み易く嵩密度が低い繊維状充填材であっても、スクリュでの均一で安定した搬送を可能とし、繊維状充填材が均一に分散した熱可塑性樹脂組成物を安定して製造することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:ホッパ
2:接続タンク
3:排出部
4:アジテータ
5:スクリュ
6:開口部
7:シリンダ
8:回転軸
9:シャフト
10:撹拌羽根
11:傾斜面
図1
図2
図3