(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035861
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ディスプレイ変調度測定装置およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 17/04 20060101AFI20240308BHJP
H04N 17/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H04N17/04 C
H04N17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140454
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】正岡 顕一郎
【テーマコード(参考)】
5C061
【Fターム(参考)】
5C061BB03
5C061CC05
5C061EE07
(57)【要約】
【課題】ディスプレイの変調度を測定するディスプレイ変調度測定装置を提供する。
【解決手段】ディスプレイ変調度測定装置1は、ディスプレイ2に対して正対したカメラ3から、ディスプレイ2に表示された正弦波パターン画像を様々な位相で撮影して画像として入力する画像入力部11と、撮影画像から変調度を測定するROI画像を抽出するROI画像抽出部14と、正弦波パターンの変調方向と平行でサブピクセル間隔のビンの投影軸に所定角度の傾きに沿ってROI画像の各画素の位置を対応付けて投影情報を生成する投影情報生成部15と、ROI画像の画素値を投影情報で対応付けられたビンごとに平均化して正弦波プロファイルを生成する正弦波プロファイル生成部17と、正弦波プロファイルの正弦波パターンと白レベルおよび黒レベルとにより変調度を算出する変調度算出部18と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに表示された水平方向または垂直方向に変調させた正弦波パターン画像を、正対させたカメラの光軸を回転軸として所定角度だけ傾けて撮影した撮影画像から、前記ディスプレイの変調度を測定するディスプレイ変調度測定装置であって、
前記カメラから前記撮影画像を入力する画像入力部と、
前記撮影画像から、前記変調度を測定する対象として設定された関心領域のROI画像を抽出するROI画像抽出部と、
前記正弦波パターンの変調方向と平行でサブピクセル間隔のビンの投影軸に、前記所定角度の傾きに沿って前記ROI画像の各画素の位置を対応付けて投影情報を生成する投影情報生成部と、
前記ROI画像の各画素の画素値を、前記投影情報で対応付けられた前記投影軸のビンごとに平均化して、正弦波プロファイルを生成する正弦波プロファイル生成部と、
前記正弦波プロファイルの正弦波パターンと、予め前記カメラで撮影した白画像の白レベルおよび黒画像の黒レベルとにより、前記変調度を算出する変調度算出部と、
を備えることを特徴とするディスプレイ変調度測定装置。
【請求項2】
空間周波数の異なる正弦波パターン画像により、前記変調度算出部で算出された前記空間周波数ごとの変調度をMTFのチャートとして表示するMTF表示部を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ変調度測定装置。
【請求項3】
前記カメラとして、逐次画像を入力するビデオカメラを用いる場合、
前記投影情報生成部は、前記関心領域が設定された前記ROI画像において、最初の1回だけ前記投影情報を生成することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ変調度測定装置。
【請求項4】
前記変調度算出部は、
前記正弦波パターン画像の正弦波パターンの空間周波数を、前記カメラの空間周波数に対する前記ディスプレイの空間周波数であるピクセル比と、前記投影軸の1画素に対応するサブピクセル数であるオーバーサンプリング比とで除算した空間周波数でサンプリングした振幅1の余弦波と正弦波とのそれぞれと、前記正弦波プロファイルの正弦波パターンとの相関の比の逆正接関数の値により、前記正弦波プロファイルの正弦波パターンの位相を検出し、
前記正弦波プロファイルの正弦波パターンと前記位相の正弦波との差に窓関数を乗じた値の和が最小となる前記正弦波の振幅を算出し、
前記白レベルと前記黒レベルとの差に対する前記振幅の割合によって前記変調度を算出することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ変調度測定装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1に記載のディスプレイ変調度測定装置として機能させるためのディスプレイ変調度測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの変調度を測定するディスプレイ変調度測定装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ技術が多様化し、RGBサブピクセルがストライプ上に配置されたパターンではない、例えば、ペンタイル配列、RGBW配列等であったり、ディフューザ(拡散板)、タッチセンサ等のフィルム状のデバイスが表示面に用いられたりして、ディスプレイの解像度特性に影響を及ぼしている。
【0003】
そこで、従来、ディスプレイの解像度特性を測定するため、ディスプレイに矩形波(非特許文献1)や正弦波(非特許文献2)を表示して変調度を測定する手法がある(非特許文献1参照)。
このディスプレイの変調度を測定する従来手法は、水平方向または垂直方向に白黒の矩形波のパターンをディスプレイに表示し、カメラにより高倍率で撮影する。そして、従来手法は、カメラで撮影した画像の垂直方向または水平方向の輝度の平均値から、オーバーサンプリングされた1次元の輝度プロファイルを取得し、ディスプレイの1画素幅の平滑化フィルタをかけてプロファイルの山と谷の値からコントラストを測定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“IDMS(Information Display Measurements Standard)”, SID(Society of Information Display), ICDM(International Committee for Display Metrology), version1.03, pp.109-138, June 1, 2012.
【非特許文献2】Triantaphillidou, S. and Jacobson, R.E.,“Measurements of the modulation transfer function of image displays”, Journal of Imaging Science and Technology. 48 (1), pp.58-65, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手法は、カメラのMTF(Modulation Transfer Function)の影響を無視できるように高い倍率で測定する。IDMSでは、ディスプレイの1画素幅に対してカメラの画素が30以上になることが推奨されている。
しかし、従来の手法は、カメラ画像の広い領域を分析するため、レンズシェーディングや光軸中心と周辺で異なる解像度特性(MTF)の差等が影響し、正しく変調度を測定することが困難であるという問題があった。
そこで、本発明は、カメラで撮影した画像の中心部分だけを使用してディスプレイの変調度を高精度で測定することが可能なディスプレイ変調度測定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るディスプレイ変調度測定装置は、ディスプレイに表示された水平方向または垂直方向に変調させた正弦波パターン画像を、正対させたカメラの光軸を回転軸として画素が正方配列となっているイメージセンサを所定角度だけ傾けたカメラで撮影した撮影画像から、ディスプレイの変調度を測定するディスプレイ変調度測定装置であって、画像入力部と、ROI(Region of interest:関心領域)画像抽出部と、投影情報生成部と、正弦波プロファイル生成部と、変調度算出部と、を備える構成とした。
【0007】
かかる構成において、ディスプレイ変調度測定装置は、画像入力部によって、カメラから撮影画像を入力する。このとき、撮影画像は、正弦波パターンの変調方向に対して所定角度傾いているため、撮影画像には、パターンの変調方向に対して様々な位相で正弦波が撮影されることになる。
そして、ディスプレイ変調度測定装置は、ROI画像抽出部によって、撮影画像から、変調度を測定する対象として設定された関心領域のROI画像を抽出する。
【0008】
そして、ディスプレイ変調度測定装置は、投影情報生成部によって、正弦波パターンの変調方向と平行でサブピクセル間隔のビンの投影軸に、所定角度の傾きに沿ってROI画像の各画素の位置を対応付けて投影情報を生成する。
さらに、ディスプレイ変調度測定装置は、正弦波プロファイル生成部によって、ROI画像の各画素の画素値を、投影情報で対応付けられた投影軸のビンごとに平均化して、正弦波プロファイルを生成する。
これによって、オーバーサンプリングされた状態で正弦波パターンの画素値が投影軸に投影された正弦波プロファイルが生成されることになる。
【0009】
そして、ディスプレイ変調度測定装置は、変調度算出部によって、正弦波プロファイルの正弦波パターンと、予めカメラで撮影した白画像の白レベルおよび黒画像の黒レベルとにより変調度を算出する。
なお、ディスプレイ変調度測定装置は、コンピュータを、前記した各部として機能させるためのディスプレイ変調度測定プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正弦波パターンを所定角度で傾けるとともにオーバーサンプリングして変調度を測定するため、比較的小さい関心領域であっても、ディスプレイのサンプリング位置に対して一様にずれた分布を取得することができ、精度よく変調度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るディスプレイ変調度測定装置の構成を示すブロック構成図である。
【
図2】ディスプレイに表示する正弦波パターン画像の一例を示す図である。
【
図3】
図2に正弦波パターン画像の一部を拡大した拡大図である。
【
図4】撮影画像上にROIを設定する例を説明するための説明図である。
【
図6】(a)~(j)は、それぞれ空間周波数の異なる正弦波パターン画像から抽出したROI画像の例を示す図である。
【
図7】ROI画像の傾きを説明するための説明図である。
【
図8】ROI画像の画素の位置と投影軸のビンの位置との対応関係を説明するための説明図である。
【
図9】(a)はROI画像の画素値を投影軸のビンに割り当てた状態を示す図、(b)は各ビンの画素値を平均化した正弦波プロファイルの例を示す図である。
【
図10】(a)はROI画像を示し、(b)はROI画像に対応した正弦波プロファイルおよび正弦波パターンの例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るディスプレイ変調度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[ディスプレイ変調度測定装置の構成]
最初に、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るディスプレイ変調度測定装置1の構成について説明する。
【0013】
ディスプレイ変調度測定装置1は、ディスプレイ2の変調度を測定するものである。
ディスプレイ変調度測定装置1は、ディスプレイ2に表示された正弦波パターン画像を、正弦波パターンの変調方向に対して所定角度だけ傾けたカメラで撮影した撮影画像から、ディスプレイ2の変調度を測定する。
【0014】
ディスプレイ2は、変調度を測定する対象となる表示装置である。このディスプレイ2は、UHDTV、スマートフォン、タブレットデバイス、プロジェクタ等、画像を表示する装置であればなんでもよい。また、ディスプレイ2の画素構造は、RGBストライプに限定されず、ペンタイル配列、RGBW配列等、どのような画素構造であっても構わない。
ディスプレイ変調度測定装置1は、ディスプレイ2、カメラ3および表示装置4を接続して動作する。
【0015】
カメラ3(輝度測定用カメラ)は、ディスプレイ2が表示する画面を撮影する輝度測定用の撮影装置である。
カメラ3は、ピクセル比1以上でディスプレイ2の画面を撮影する。ここで、ピクセル比とは、カメラ3で撮影されるディスプレイ2の入力信号フォーマットの1画素幅分に対応するカメラ出力信号の画素数である。
このピクセル比は、特に限定するものではないが、例えば、1.5倍から2.5倍程度である。
【0016】
また、カメラ3は、ディスプレイ2と正対させるとともに、カメラ3が撮影する画像が、ディスプレイ2が表示する画像に対して、カメラ光軸を回転軸として所定角度傾いた状態で配置する。この角度は、ディスプレイ2に表示する正弦波パターン画像の正弦波パターンの位相が一様にカメラ3のイメージセンサのサンプリング位置に撮影される角度であって、数度程度(例えば、3度)である。
【0017】
表示装置4は、ディスプレイ変調度測定装置1を操作するユーザインタフェースを提供するとともに、カメラ3が撮影した画像、変調度の測定結果等を表示するものである。例えば、表示装置4は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
以下、ディスプレイ変調度測定装置1の構成について詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、ディスプレイ変調度測定装置1は、測定用画像表示部10と、画像入力部11と、傾き検出部12と、ROI設定部13と、ROI画像抽出部14と、投影情報生成部15と、投影情報記憶部16と、正弦波プロファイル生成部17と、変調度算出部18と、MTF表示部19と、を備える。
【0019】
測定用画像表示部10は、ディスプレイ2の変調度を測定するための画像(測定用画像)を表示するものである。測定用画像表示部10は、正弦波パターンを描画した画像(正弦波パターン画像)を、測定用画像としてディスプレイ2に表示する。
なお、測定用画像表示部10は、空間周波数の異なる正弦波パターンを描画した正弦波パターン画像を、外部から指定されることで、あるいは、予め定めた順番で表示する。
【0020】
例えば、測定用画像表示部10は、
図2に示すような正弦波パターン画像Gを予め異なる空間周波数ごとに準備し、あるいは適宜描画して、指定された正弦波パターン画像Gをディスプレイ2に表示する。
図3は、
図2の正弦波パターン画像Gの一部を拡大した正弦波パターン画像GXである。
正弦波パターン画像Gは、明るさを反転(位相反転)したものであっても構わない。正弦波パターン画像Gの入力信号の値(画素値)は、ディスプレイ2の諧調特性の逆特性となるように補正し、測定するディスプレイ2に表示される輝度が正弦波状になるようにする。
【0021】
正弦波パターン画像Gの正弦波パターンの空間周波数は、例えば、0.05(cycles/pixelDISP)から0.5(cycles/pixelDISP)までの0.001刻み、0.01刻み等である。水平方向に変調された正弦波パターン画像Gは、リニアに補正された信号でA sin(2πfx)/2+Bで表される。ここで、xは整数で、ROIの中心に近い画素のサンプリング位置を原点とした、ディスプレイ2の水平方向の画素位置を表し、pixelDISPは、ディスプレイ2の画素間隔を示す。フルレンジの場合、Aは信号の最大値で、BはA/2となる。
なお、正弦波パターン画像Gは、ディスプレイ2の水平方向の変調度を測定するための画像であって、垂直方向の変調度を測定する場合、正弦波パターン画像Gを90°回転した正弦波パターン画像を用いればよい。
【0022】
ここでは、測定用画像表示部10は、変調度を測定する測定段階の前に、初期段階として、カメラ3の光軸の傾きを検出するため、測定する正弦波パターン画像Gの正弦波パターンの変調方向に対して水平または垂直のラインを描画したライン画像をディスプレイ2に表示する。また、測定用画像表示部10は、初期段階として、ディスプレイ2の白レベルを測定するための白画像および黒レベルを測定するための黒画像をディスプレイ2に表示する。これらの画像は、外部からの指示により切り替えられる。
【0023】
画像入力部11は、カメラ3が撮影した画像(撮影画像)を入力するものである。
なお、画像入力部11は、カメラ3がビデオカメラの場合、逐次入力される撮影画像(フレーム)を予め定めたフレーム数ごとに加算平均することが好ましい。
画像入力部11は、入力した撮影画像を、図示を省略したメモリに記憶する。
画像入力部11が入力しメモリに記憶した撮影画像は、図示を省略した画像出力部を介して表示装置4に出力されるとともに、ROI画像抽出部14によって読み出される。
【0024】
なお、画像入力部11は、変調度の測定前の初期段階において、ディスプレイ2が表示する白画像をカメラ3で撮影し、白レベルの画素値を、図示を省略したメモリに記憶し、ディスプレイ2が表示する黒画像をカメラ3で撮影し、黒レベルの画素値を、図示を省略したメモリに記憶しておく。この白レベルおよび黒レベルの画素値は、変調度算出部18で使用される。
また、画像入力部11は、変調度の測定前の初期段階において、ディスプレイ2が表示するライン画像を傾き検出部12に出力する。
【0025】
傾き検出部12は、画像入力部11で入力されたライン画像において、水平方向および垂直方向の軸を2軸とする座標系(xy座標系)において、予め定めた基準軸(ここでは、y軸とする)に対する正弦波の変調方向と垂直な軸の傾き角度を検出するものである。
この傾き角度は、一般的な手法で求めることができる。例えば、ライン画像において、傾き検出部12は、Sobelエッジ検出によりエッジを検出し、ハフ(Hough)変換により、エッジの傾き角度を検出する。
これによって、傾き検出部12は、カメラ3の光軸の回転角度を傾き角度として検出することができる。
傾き検出部12は、検出した傾き角度を投影情報生成部15に出力する。
【0026】
ROI設定部13は、カメラ3が撮影した撮影画像内で、ディスプレイ2の変調度を測定したい領域をROIとして設定するものである。例えば、ROI設定部13は、表示装置4が表示している撮影画像内において、測定者が操作するポインティングデバイス(不図示)で閉領域(円、楕円、矩形、任意形状等)を指定されることで、ROIを特定する情報(位置および形状、閉領域のマスクデータ等)をROI情報として設定する。
【0027】
例えば、ROI設定部13は、測定者によって、
図4に示すように、撮影画像Dにおいて、長方形によってROIを指定されることで、ROI情報を設定する。このROIによって、
図5に示すように、正弦波パターンを含んだROI画像Rが特定されることになる。
図5は、実際の測定で用いることができる100(W)×200(H)カメラ画素のROIサイズで、ピクセル比は1.8としている。
【0028】
なお、測定用画像表示部10において、空間周波数の異なる正弦波パターンを描画した場合、ROI設定部13は、
図6(a)~(j)の例に示すような空間周波数の異なる正弦波パターン画像をROIとして設定することになる。
図6(a)~(e)は、それぞれ、0.05,0.20,0.45,0.49,0.50(cycles/pixel
DISP)の空間周波数で、ピクセル比(ディスプレイ入力信号のサンプリング間隔/カメラの出力信号のサンプリング間隔)が1.8、サイズが垂直200画素、水平100画素(なお、画素はカメラ3の画素)の例を示している。また、
図6(f)~(j)は、それぞれ
図6(a)~(e)の正弦波の位相を90°ずらしたものである。
【0029】
このROI設定部13によるROIの設定は、ROIを変更する必要がなければ、一度の設定でよい。
ROI設定部13は、設定したROIを特定するROI情報をROI画像抽出部14に出力する。
【0030】
ROI画像抽出部14は、画像入力部11で入力された撮影画像から、ROI設定部13で変調度を測定する対象として設定されたROI情報で示されるROIの画像を、ROI画像として抽出するものである。
ROI画像抽出部14は、抽出したROI画像を投影情報生成部15に出力する。
また、ROI画像抽出部14は、投影情報生成部15における投影情報の生成の完了後、ROI画像を正弦波プロファイル生成部17に出力する。
ここでは、ROI画像抽出部14は、ROI画像を投影情報生成部15に出力し、投影情報生成部15から投影情報の生成の完了通知を入力した後に、ROI画像を正弦波プロファイル生成部17に出力する。
【0031】
投影情報生成部15は、ROI画像中の正弦波パターンの変調方向と平行でサブピクセル間隔のビンの投影軸に、所定角度の傾きに沿ってROI画像の各画素の位置を対応付けて投影情報を生成するものである。
なお、カメラ3がビデオカメラで、連続して撮影画像が入力される場合、投影情報生成部15は、ディスプレイ2とカメラ3との傾斜角度を一定とみなし、最初の1回だけ投影情報を生成し、ROIが再設定されるまで、投影情報の生成を省略する。これによって、動画像であっても、最初に生成した投影情報を再利用することで、リアルタイムで変調度の測定が可能になる。
【0032】
投影情報生成部15は、ROI画像の各画素と、ROI画像中の正弦波の変調方向と平行でサブピクセル間隔のビンの投影軸に、傾き検出部12で検出された傾き角度で画素を投影した位置とを対応付けるものである。投影軸は、ROI画像の画素よりも小さいサブピクセル間隔とし、例えば、1画素の1/4や1/8とする。
なお、カメラ3がビデオカメラで、連続して撮影画像が入力される場合、投影情報生成部15は、ディスプレイ2とカメラ3との傾斜角度を一定とみなし、最初の1回だけ投影情報を生成し、ROIが再設定されるまで、投影情報の生成を省略する。これによって、動画像であっても、最初に生成した投影情報を再利用することで、リアルタイムで変調度の測定が可能になる。
【0033】
具体的には、
図7に示すように、正弦波の変調方向と垂直な軸eが、基準軸(ここでは、y軸)に対して、傾き検出部12で検出された傾き角度θeだけ回転しているとする。なお、
図7は、
図5の一部を拡大したものである。
この場合、投影情報生成部15は、
図8に示すように、ROI画像Rの各画素位置(x,y)を、傾き検出部12で検出された傾き角度θeの回転方向と逆方向の傾き角度(-θe)だけ、予め定めた回転中心(例えば、ROI画像の画素のxy座標の平均値)で回転させる。
そして、投影情報生成部15は、ROI画像Rの回転前の各画素位置(x,y)と、画素を投影したサブピクセル単位の投影軸のサブピクセル幅で区切られたビンの位置とを対応付けることで投影情報を生成する。
投影情報生成部15は、生成した投影情報を投影情報記憶部16に記憶する。
なお、投影情報生成部15は、投影情報を投影情報記憶部16に記憶した後、投影情報の生成の完了通知をROI画像抽出部14に出力する。
【0034】
投影情報記憶部16は、投影情報生成部15で生成された投影情報を記憶するものである。この投影情報記憶部16は、例えば、半導体メモリ等の一般的な記憶装置である。
投影情報記憶部16に記憶された投影情報は、正弦波プロファイル生成部17によって参照される。
【0035】
正弦波プロファイル生成部17は、ROI画像抽出部14で抽出されたROI画像の各画素の画素値を、投影情報生成部15で生成された投影情報で対応付けられた投影軸のビンごとに平均化して、正弦波プロファイルを生成するものである。正弦波プロファイルは、正弦波の画素分布形状を示す情報である。
具体的には、正弦波プロファイル生成部17は、投影情報記憶部16に記憶されている投影情報に基づいて、
図9(a)に示すように、ROI画像抽出部14で抽出されたROI画像から、投影軸の同じビンに画素値を投影する。そして、正弦波プロファイル生成部17は、ビンごとに画素値を平均化することで、
図9(b)に示すように、投影軸のサブピクセル位置と画素値とを対応付けた、正弦波プロファイルPを生成する。
【0036】
正弦波プロファイルPは、正確な正弦波を示すものではなく、例えば、
図10(a)に示す垂直200画素、水平100画素(なお、画素はカメラ3の画素)のROI画像Rに対して、
図10(b)のドットで示す離散的な情報である。
図10(b)に示す正弦波Sは、後記する変調度算出部18で特定されることになる。なお、
図10(b)の横軸は、サブピクセル単位の投影軸の座標位置を示し、縦軸は、相対輝度を示す。
これによって、正弦波プロファイル生成部17は、投影軸のサブピクセル位置に一様に画素が分布した正弦波プロファイルを生成することができる。
正弦波プロファイル生成部17は、生成した正弦波プロファイルを、変調度算出部18に出力する。
【0037】
変調度算出部18は、正弦波プロファイル生成部17で生成された正弦波プロファイルの正弦波パターンと、予めカメラ3で撮影された白画像の白レベルおよび黒画像の黒レベルとにより、ディスプレイ2の変調度を算出するものである。
【0038】
具体的には、変調度算出部18は、以下の演算により変調度を算出する。以下では、ディスプレイ2で表示された正弦波パターン画像で特定される正弦波パターンを表示正弦波と呼び、正弦波プロファイル生成部17で生成された正弦波プロファイルで特定される正弦波パターンをオーバーサンプリング正弦波と呼ぶ。
まず、変調度算出部18は、オーバーサンプリング正弦波の位相を検出する。
ここでは、変調度算出部18は、オーバーサンプリング正弦波と、表示正弦波の空間周波数fをピクセル比mとオーバーサンプリング比Nbinとで除算した空間周波数(f/m/Nbin)でサンプリングした振幅1の正弦波(sin(2πfx/m/Nbin))と余弦波(cos(2πfx/m/Nbin)とのそれぞれの相関a,bを求め、b/aの逆正接関数(arctan)の値により位相φを検出する。ここで、xは、表示の画素を単位とした一次元の位置である。
【0039】
ここで、空間周波数fは、ディスプレイ2の1画素(pixelDISP)あたりの波数(cycles)であって、表示正弦波の既知の空間周波数(cycles/pixelDISP)である。すなわち、空間周波数fは、測定用画像表示部10で表示した正弦波パターン画像の正弦波の空間周波数である。
また、ピクセル比(空間周波数比)mは、既知の比であって、ディスプレイ入力信号のサンプリング間隔(pixelDISP)/カメラの出力信号のサンプリング間隔(pixelCAM)である。
また、オーバーサンプリング比Nbinは、既知の比であって、投影軸におけるカメラ3の1画素(pixelCAM)あたりのビン数である。
【0040】
次に、変調度算出部18は、振幅a(a>0)とオフセットdをパラメータとした正弦波a sin(2πfx/m/Nbin+φ)+dと、オーバーサンプリング正弦波との差が最小となる振幅aとオフセットdとを探索する。例えば、変調度算出部18は、正弦波a sin(2πfx/m/Nbin+φ)+dと、オーバーサンプリング正弦波との差に窓関数(例えば、ハン〔Hann〕窓)を乗算した値の和(二乗和)を計算し、その値が最小となるパラメータ値(a,d)を算出する。これによって、オーバーサンプリング正弦波の形状が特定される。
【0041】
そして、変調度算出部18は、振幅aと、予め変調度測定を行う同じカメラ3で撮影されたディスプレイ2の白レベルWおよび黒レベルKとにより、白レベルWと黒レベルKとの差に対する振幅の割合として、Msin=2×a/(W-K)を演算することで変調度Msinを算出する。
また、同様に、変調度算出部18は、振幅a(a>0)とオフセットdをパラメータとした余弦波a cos(2πfx/m/Nbin+φ)+dと、オーバーサンプリング正弦波との差が最小となる振幅aによって、白レベルWと黒レベルKとの差に対する振幅の割合として、Mcos=2×a/(W-K)を演算することで変調度Mcosを算出する。
【0042】
そして、変調度算出部18は、変調度Msinと変調度Mcosとの平均値((Msin+Mcos)/2)を、空間周波数fにおける変調度Mとして算出する。
変調度算出部18は、算出した空間周波数に対応した変調度をMTF表示部19に出力する。
【0043】
MTF表示部19は、変調度算出部18で算出された空間周波数ごとの変調度を、ディスプレイ2のMTFのチャートとして表示するものである。
MTF表示部19は、変調度算出部18で算出された異なる空間周波数ごとの変調度をMTFのチャートとして生成し、表示装置4に表示する。
例えば、MTF表示部19は、
図11に示すように、横軸を空間周波数(cycles/pixel
DISP)、縦軸をMTF(変調度)とするチャート上に、個々の空間周波数に対応する変調度をプロットし、線形補間することで、MTFのチャートを生成する。
なお、
図11において、参考として、変調度算出部18で正弦波により求められる変調度M
sinを一点鎖線で示し、余弦波により求められる変調度M
cosを破線で示している。
【0044】
以上説明したように、ディスプレイ変調度測定装置1は、正弦波パターンを所定角度で傾けるとともに、オーバーサンプリングされた正弦波パターンから変調度を測定するため、小さい領域であっても、ディスプレイのサンプリング位置に対して一様にずれた分布を取得することができる。これによって、ディスプレイ変調度測定装置1は、ディスプレイ2の変調度を精度よく測定することができる。
なお、ディスプレイ変調度測定装置1は、図示を省略したコンピュータを、前記した各部として機能させるためのディスプレイ変調度測定プログラムで動作させることができる。
【0045】
[ディスプレイ変調度測定装置の動作]
次に、
図12を参照(構成については、
図1参照)して、本発明の実施形態に係るディスプレイ変調度測定装置1の動作について説明する。
なお、ディスプレイ変調度測定装置1は、画像入力部11によって、予めディスプレイ2の白レベルおよび黒レベルが取得されているものとする。また、ディスプレイ変調度測定装置1は、傾き検出部12によって、正弦波の変調方向と垂直な軸の傾き角度が検出されているものとする。
【0046】
ステップS1において、測定用画像表示部10は、ディスプレイ2の変調度を測定するための画像(測定用画像)として、ディスプレイ2の表示面の水平方向または垂直方向に正弦波パターンを描画した画像(正弦波パターン画像)をディスプレイ2に表示する。
ステップS2において、画像入力部11は、ステップS1で表示された正弦波パターン画像を、ディスプレイ2に対して数度傾けたカメラ3で撮影し、撮影画像として入力する。
ステップS3において、ROI設定部13は、ステップS2で入力された撮影画像内で、ディスプレイ2の変調度を測定したい領域を関心領域(ROI)として設定する(
図4参照)。
ステップS4において、ROI画像抽出部14は、ステップS2で入力された撮影画像から、ステップS3で設定されたROIの画像(ROI画像)を抽出する。
【0047】
ステップS5において、投影情報生成部15は、ステップS4で抽出されたROI画像の各画素と、ROI画像中の正弦波の変調方向と平行な軸(投影軸)に、傾き角度に沿って画素を投影した位置とを対応付けて投影情報を生成する(
図8参照)。このとき、投影軸は、ROI画像の画素単位よりも小さいサブピクセル単位とする。
ステップS6において、投影情報生成部15は、ステップS5で生成された投影情報を投影情報記憶部16に記憶する。
【0048】
ステップS7において、正弦波プロファイル生成部17は、ステップS4で抽出されたROI画像と、投影情報記憶部16に記憶に記憶されている投影情報とから、正弦波パターンを生成する。ここでは、正弦波プロファイル生成部17は、投影情報に基づいて、ROI画像から、投影軸の同じビンに画素値を投影し、平均化することで、投影軸のサブピクセル位置と画素値とを対応付けた、正弦波プロファイルを生成する(
図9参照)。
【0049】
ステップS8において、変調度算出部18は、ステップS7で生成された正弦波プロファイルと、予めカメラ3で撮影された白画像の白レベルおよび黒画像の黒レベルとにより、ディスプレイ2の変調度を算出する。
ステップS9において、MTF表示部19は、ステップS8で算出された空間周波数に対応する変調度をプロットしたMTFのチャートを表示装置4に表示する。
【0050】
ステップS10において、測定用画像表示部10は、まだ異なる空間周波数の測定用画像が存在するか否かを判定する。
ここで、異なる空間周波数の測定用画像が存在する場合(ステップS10でYes)、ディスプレイ変調度測定装置1は、ステップS1に戻って動作を継続する。
一方、測定用画像をすべて表示した場合(ステップS10でNo)、ディスプレイ変調度測定装置1は、動作を終了する。
【0051】
以上の動作によって、ディスプレイ変調度測定装置1は、オーバーサンプリングされた正弦波パターンから変調度を測定するため、小さい領域であっても、ディスプレイのサンプリング位置に対して一様にずれた分布を取得することができ、ディスプレイ2の変調度を精度よく測定することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
ここでは、変調度算出部18は、正弦波a sin(2πfx/m/N
bin+φ)+dと、余弦波a cos(2πfx/m/N
bin+φ)+dとから、それぞれ変調度を算出し、その平均値を空間周波数fにおける変調度とした。
しかし、空間周波数が、ナイキスト周波数(0.5cycles/pixel
DISP)近傍、例えば、0.45~0.5cycles/pixel
DISPを対象としない場合、正弦波または余弦波のいずれか一方のみで算出した変調度を空間周波数fにおける変調度と近似すればよい(
図11参照)。
【0053】
また、ここでは、MTFチャートを表示するMTF表示部19を備える構成としたが、所望の空間周波数における変調度のみを測定するのであれば、MTF表示部19を省略して構成しても構わない。
【符号の説明】
【0054】
1 ディスプレイ変調度測定装置
10 測定用画像表示部
11 画像入力部
12 傾き検出部
13 ROI設定部
14 ROI画像抽出部
15 投影情報生成部
16 投影情報記憶部
17 正弦波プロファイル生成部
18 変調度算出部
19 MTF表示部
2 ディスプレイ
3 カメラ
4 表示装置